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審決分類 |
審判 全部無効 1項2号公然実施 D06F 審判 全部無効 2項進歩性 D06F |
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管理番号 | 1335353 |
審判番号 | 無効2016-800046 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2016-04-08 |
確定日 | 2017-11-20 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第5835786号発明「ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第5835786号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第5835786号の請求項1及び4に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5835786号の請求項2及び3についての本件審判の請求を却下する。 審判費用は,被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第5835786号の請求項1ないし請求項4に係る発明についての出願(以下「本件出願」という。)は,出願日が平成26年11月26日であって,平成26年12月2日(4日受付)に新規性の喪失の例外証明書提出書の提出がなされた実用新案登録第3195843号(登録日:平成27年1月14日)を平成27年6月10日に特許出願に変更した特許出願であって,平成27年11月13日に特許権の設定登録(請求項の数4)がされたものである。 そして,その後の手続の経緯の概要は,以下のとおりである。 平成28年 4月 6日 審判請求書 平成28年 7月15日 審判事件答弁書 平成28年 9月28日 審理事項通知書 平成28年10月27日 口頭審理陳述要領書(請求人) 平成28年11月14日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成28年11月16日 審理事項通知書 平成28年11月28日 口頭審理陳述要領書(請求人) 平成28年11月28日 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人) 平成28年11月28日 第1回口頭審理 平成28年12月 5日 上申書(被請求人) 平成28年12月12日 上申書(請求人) 平成29年 2月22日 審決の予告 平成29年 5月 1日 訂正請求書 平成29年 6月 9日 審判事件弁駁書 平成29年 6月27日 審尋 平成29年 7月10日 審判事件回答書(請求人) 平成29年 7月20日 補正許否の決定及び通知書 平成29年 8月25日 審判事件答弁書(2) 第2 訂正について 1 訂正の内容 平成29年5月1日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は,本件特許明細書及び特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1ないし請求項4について訂正することを求めるものであって,具体的な訂正事項は以下のとおりである。 (1) 訂正事項1 訂正前の請求項1に「矩形の通水性シート」とあるのを,「矩形で,目付が60g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シート」に訂正する(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。 (2) 訂正事項2 訂正前の請求項2を削除する。 (3) 訂正事項3 訂正前の請求項3を削除する。 (4) 訂正事項4 訂正前の請求項4に「請求項1,2又は3記載」とあるのを,「請求項1記載」に訂正する。 (5) 訂正事項5 特許明細書の発明の詳細な説明の【0009】に「矩形の通水性シート」とあるのを,「矩形で,目付が60g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シート」に訂正する。 (6) 訂正事項6 特許明細書の発明の詳細な説明の【0010】を削除する。 (7) 訂正事項7 特許明細書の発明の詳細な説明の【0011】を削除する。 2 訂正の適否 (1) 訂正事項1について 訂正事項1に係る本件訂正は,「通水性シート」に関し,その形態及び材質を具体的に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして,訂正前の請求項2には「通水性シートが,合成樹脂製の不織布シートからなることを特徴とする請求項1記載のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ。」と,請求項3には「不織布シートが,ポリエステルモノフィラメント製の不織布シートからなることを特徴とする請求項2記載のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ。」と記載されるとともに,本件特許明細書には, 「使い捨てフィルタ1を構成する合成樹脂製の不織布シートは,均一かつ良好な通水性能を長期間に亘って維持することができるものである限りにおいて,各種の不織布シートを使用することができるが,耐薬品性に優れ,嵩高性及び弾力性があり,熱セット性及び形態安定性に優れ,吸水性がほとんどない,ポリエステル樹脂製,特に,ポリエステルモノフィラメント製の不織布シートを好適に用いることができる。 不織布シートは,リントフィルタ24の内面に沿って装着した状態でリントフィルタ24の通水性を損ねることがないように,目付が60?100g/m^(2)程度,好ましくは,80g/m^(2)程度,厚さが3?5mm程度,好ましくは,4mm程度の不織布シートを好適に用いることができる。」(【0022】) と記載されていることから,訂正事項1に係る本件訂正は,本件特許明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2及び3について 訂正事項2及び3に係る本件訂正は,請求項2及び3を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (3) 訂正事項4について 訂正事項4に係る本件訂正は,引用する請求項を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (4) 訂正事項5ないし7について 訂正事項5ないし7に係る本件訂正は,訂正事項1ないし3に係る本件訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と明細書の発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (5) 訂正前の請求項2ないし請求項4は,訂正前の請求項1を引用しているから,本件訂正は,一群の請求項1ないし請求項4に対して請求されたものである。 3 むすび よって,本件訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ同条第3項並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 第3 本件特許に係る発明 前記第2のとおり,本件訂正は認められるので,本件特許に係る発明は,訂正特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された次のとおりのものである。以下,各請求項に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などといい,総称して「本件発明」という。 【請求項1】 ドラム式洗濯機の格子状に形成されたリントフィルタに装着して使用する使い捨てフィルタであって,リントフィルタの内面に沿って装着される矩形で,目付が60g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートからなる本体部を備え,該本体部に,本体部の長手方向に断続するスリットを,本体部の幅方向に複数列形成してなることを特徴とするドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 本体部の長手方向の端部に摘み部を一体に備えてなることを特徴とする請求項1記載のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ。 第4 無効理由についての当事者の主張の概要 1 請求人の主張 (1) 無効理由1 本件発明は,その出願前,日本国内で生活協同組合連合会グリーンコープ連合(本部 福岡県福岡市博多区博多駅前一丁目5番1号 博多大博通ビルディング3階 代表理事 田中 裕子。以下「グリーンコープ連合」という。)により販売された「593 洗濯機の毛ごみフィルター」(以下「593 洗濯機の毛ごみフィルター」を「本件フィルター」という。)に係る発明であり,特許法第29条第1項第2号の規定に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。 (2) 無効理由2(補正許否の決定により許可) 目付が60g/m^(2)であるポリエステルモノフィラメントは本件特許の出願前に周知であり,かつ,かかる数値限定の臨界的意味はないから,本件発明は,「本件フィルター」に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定に違反し,特許を受けることができないものであるから,本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 <証拠方法> 甲第1号証の1:平成26年10月10日にグリーンコープ連合より購入した本件フィルターの写真及び図面 甲第1号証の2:本件フィルターの包装袋に同封されていた説明書 甲第1号証の3:本件フィルターをグリーンコープ連合より購入した際の納品書 甲第1号証の4:本件フィルターが掲載されたグリーンコープ連合発行のチラシ 甲第2号証:生活協同組合連合会コープ九州事業連合から平成26年7月21日以前(7月14日)に発行されたチラシ「ぱれっと」 甲第3号証:生活協同組合連合会コープ中国四国事業連合から平成26年11月17日に発行されたチラシ「おすすめBest」 甲第4号証:生活協同組合連合会コープきんき事業連合から平成26年9月15日に発行されたチラシ「くらしのパートナー」 甲第5号証:株式会社アーランド(請求人)の社員である榎木晶仁氏の「陳述書」 甲第6号証:特許第5835786号公報(本件特許公報) 甲第7号証:「[特許]2015-117617[受付日]平成27.06.10」の【書類名】特許願(本件特許の願書) 甲第8号証:新規性の喪失の例外証明書提出書 甲第9号証:考案の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書 甲第10号証:日本生活協同組合連合会のウェブページ“キーワードで読み解く日本生協連”からの印刷物,2016年10月17日,<URL:http://jccu.coop/jccu/keyword/#anc02> 甲第11号証:日本生活協同組合連合会のウェブページ“コープ・生協の商品”からの印刷物,2016年10月17日,<URL:https://www.coop-takuhai.jp/takuhai/product> 甲第12号証:日本生活協同組合連合会のウェブページ“生協について”からの印刷物,2016年10月25日,<URL:http://jccu.coop/about/question/coop/#anc03> 甲第13号証:株式会社アーランド(請求人)が作成した生協企画決定案内一覧 甲第13-1号証:コープCSネットに関する“採用打ち合わせ書・予測数”,2016年6月8日 甲第13-2号証:コープネットに関する“企画決定案内”,2016年5月16日 甲第14号証:株式会社アーランド(請求人)の社員である榎木晶仁氏作成の「報告書」,2017年5月16日 甲第15号証:特開2011-58135号公報 2 被請求人の主張 (1) 無効理由1 請求人が主張する,公然実施の事実は,被請求人が本件出願の基礎とした実用新案登録第3195843号の出願手続の過程で行った発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続によって担保されており,本件発明は,特許法第29条第1項2号に該当するに至らなかったものとみなされるものである。 (2) 無効理由2 本件発明は,特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。 <証拠方法> 乙第1号証の1:日本生活協同組合連合会のウェブページ“トップブページ”からの印刷物,2016年7月14日,<URL:http://jccu.coop/> 乙第1号証の2:日本生活協同組合連合会のウェブページ“お近くの生協”からの印刷物,2016年7月14日,<URL:http://jccu.coop/coopmap/> 乙第1号証の3:日本生活協同組合連合会のウェブページ“東京都でご利用いただける生協”からの印刷物,2016年7月14日,<URL:http://jccu.coop/coopmap/tokyo> 乙第1号証の4:日本生活協同組合連合会のウェブページ“福岡県でご利用いただける生協”からの印刷物,2016年7月14日,<URL:http://jccu.coop/coopmap/fukuoka> 乙第1号証の5:乙第1号証の2の2頁”日本生協連合の会員名簿”からの印刷物 乙第2号証:トップ産業株式会社(被請求人)とグリーンコープ連合とで交わした「取り扱い商品確認書」 乙第3号証:トップ産業株式会社(被請求人)に対するグリーンコープ連合からの「請求書」 乙第4号証:生活協同組合コープこうべが作成した商品カタログ「coop めーむ」 乙第5号証:生活協同組合連合会コープ九州事業連合が作成した商品カタログ「ぱれっと」 乙第6号証の1:トップ産業株式会社(被請求人)が作成した他生協ヒット商品情報 乙第6号証の2:トップ産業株式会社(被請求人)が作成した他生協ヒット商品情報(実績) 乙第7号証:トップ産業株式会社(被請求人)が作成したチラシ「愛着良品」2014年6月4週に関係するトップ産業株式会社の売約伝票 乙第8号証:トップ産業株式会社(被請求人)が作成したグリーンコープ連合に対する商談内容確認書 第5 各証拠およびその内容 [甲第1号証の1] 「593 洗濯機の毛ごみフィルター」(本件フィルター)の写真及び,フィルタに形成されたスリットを明瞭にするための図面が示されている。 [甲第1号証の2] 本件フィルターに同封されていた説明書であって,「593」の記載,その下に「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」,「使用方法」に「ゴミや髪くずがいっぱいになりましたら,お取り替えください。」,「フィルターの凸部分を異物フィルターの取っ手側に装着してください。」,「ご注意」の欄に「フィルターが汚れた状態のまま長期間使用されますと,フィルターが目詰まりし水があふれる場合がありますので,ご使用の度にフィルターをご確認ください。・・・洗濯機にエラーが表示される場合は使用中止してください。」,「<材質>ポリエステル <サイズ>8cm×21cm <内容量>10枚」との記載があり,【本品】の図,【異物フィルター】の図,【断面図】の図が示されている。 [甲第1号証の3] 本件フィルターをグリーンコープ連合より購入した際の納品書であって,「グリーンコープ」と書かれたロゴ,「納品明細書 10月10日お届け商品」,「デポ07 小倉南」,「組合員13810869 (株)アーランド松本様」,「593洗濯機の毛ごみフィルター」,「27号受」,「♪グリーンコープは,・・・カタログGREEN30号 28ページは,せっけん特集!」と記載され,さらに,「593洗濯機の毛ごみフィルター」の「本体価格」が「448円」であることを示している。 [甲第1号証の4] 本件フィルターが掲載されたグリーンコープ連合発行のチラシであって,その1頁に「GREEN」,右上の「グリーンコープ」と書かれたロゴ,「2014.10」,「27号」との記載があり,2頁に「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」,「448円(税込価格483.84円)」,「10枚入」,「材質/ポリエステル サイズ(約)/8×21cm」の記載と,それに隣接して商品の写真が掲載されている。また,同チラシには,「つまんで捨てるだけ!」の記載と共に商品の写真が掲載されている。 [甲第2号証] 生活協同組合連合会コープ九州事業連合から平成26年7月21日以前(7月14日)に発行されたチラシ「ぱれっと」であって,「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」の記載と,それに隣接して商品の写真が掲載されている。 [甲第3号証] 生活協同組合連合会コープ中国四国事業連合から平成26年11月17日に発行されたチラシ「おすすめBest」であって,「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」の記載と,それに隣接して商品の写真が掲載されている。 [甲第4号証] 生活協同組合連合会コープきんき事業連合から平成26年9月15日に発行されたチラシ「くらしのパートナー」であって,「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」の記載と,それに隣接して商品の写真が掲載されている。 [甲第5号証] 株式会社アーランド(請求人)の社員である榎木晶仁氏の陳述書であって,「今回問題となっております『洗濯機の毛ごみフィルター』(本件フィルター)につきましては,2014年6月2日に新規性喪失の例外規定の適用となった,東都生活協同組合のチラシが配布され,その後,同年7月第5週として同様の本件フィルターが掲載されたコープ九州パレット7月号が,同年9月には,甲1号証の3の,グリーンコープ27号が配布され,当社もフィルター関連製品を多数製造販売していることから,本件フィルターが目に留まりました。 そして,これらのチラシに掲載された本件フィルターを調査研究するため,私は,2014年9月26日に請求人名下で,グリーンコープに本件フィルター10枚入り一セットを発注しました。本体価格は448円でした。 商品受取日は甲1号証の4の納品書に記載されたとおり,2014年10月10日でした。甲第1号証の1に記載の本件フィルターはこの時購入したものであり,甲第1号証の2の説明書も同封されていたことに間違いありません。 入手した製品を,社員の家庭などで実際に使用させてみたところ,いろいろと改善すべき点があることがわかりましたし,後発メーカーとして本件フィルターとの違いも明確に出す必要がありますので,苦労しながらも,私なりに,大きさや,突起,またスリット形状などいろいろと試行錯誤を繰り返し,約2カ月ほどかけて当社の製品が完成いたしました。」と陳述している。 [甲第6号証] 特許第5835786号公報であって,本件特許公報である。 [甲第7号証] 「[特許]2015-117617[受付日]平成27.06.10」の【書類名】特許願であって,【基礎とした実用新案登録及びその実用新案登録出願の表示】欄に【出願番号】実願2014-6265との記載がある。 [甲第8号証] 新規性の喪失の例外証明書提出書であって,【事件の表示】欄に【出願番号】実願2014-6265との記載がある。 [甲第9号証] 考案の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書であって,「販売開始日(チラシ配布開始日) 平成26年6月2日」,「販売した場所 東都生活協同組合」,「公開者 トップ産業株式会社」,「公開された考案の内容 トップ産業株式会社が,一般消費者に,添付のチラシ記載の「ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ(商品名:ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター)」を販売した。」との記載があり,添付のチラシには,「東都生活協同組合」「愛着良品」,「2014 6月」,「4回」との記載,「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」の記載とそれに隣接して商品の写真が掲載されている。 [甲第10号証] 日本生活協同組合連合会のウェブページ“キーワードで読み解く日本生協連”からの印刷物であって,「全国の生協は,それぞれが別法人として事業や活動を行っています。各生協の大切にするテーマや事業・活動の内容は,それぞれの生協の組合員の願いを反映しており,生協によって異なります。日本生協連は,各地の生協が加入する全国連合会です。日本生協連と会員生協は,本部-支部という関係ではありません。」との記載がある。 [甲第11号証] 日本生活協同組合連合会のウェブページ“コープ・生協の商品”からの印刷物であって,「商品はコープ・生協ごとに異なります。」との記載がある。 [甲第12号証] 日本生活協同組合連合会のウェブページ“生協について”からの印刷物であって,「一つひとつの生協は,地域や職場の人々が力をあわせて設立したもので,歴史や特徴もそれぞれ異なる独立した組織です。そのため,商品の取り扱いやポイント制度なども,生協によって異なります。」との記載がある。 [甲第13号証] 株式会社アーランド(請求人)が作成した生協企画決定案内一覧であって,扇風機用のホコリ取りフィルターの商品が平成28年に企画決定された生協のリストと企画決定されていない生協のリストを示している。 [甲第13-1号証] コープCSネットに関する“採用打ち合わせ書・予測数”であって,扇風機用のホコリ取りフィルターがコープCSネットに企画決定されたことを示している。 [甲第13-2号証] コープネットに関する“企画決定案内”であって,扇風機用のホコリ取りフィルターがコープネットに企画決定されたことを示している。 [甲第14号証] 株式会社アーランド(請求人)の社員である榎木晶仁氏作成の「報告書」であって,「甲第1号証に示されたフィルタと同じ商品10枚の重量を測定したところ,添付写真のとおり8.8gであり,1枚の重量は0.88gである。 1枚の面積 長方形部 0.17m×0.08m=0.0136m^(2) 摘み部 (0.02+0.04)×0.04÷2=0.0012m^(2) 合計 0.0136+0.0012=0.0148m^(2) である。 したがって,1m^(2)当たりの重量(目付)は,0.88÷0.0148=59.459・・・ ≒60g/m^(2) となる。」との記載がある。 [甲第15号証] 本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開2011-58135号公報であって,以下の記載がある。 「【請求項1】 ポリエステルからなるモノフィラメントであって,二価金属とリン化合物からなりかつ1辺の長さが5?100nm,層間間隔が1?5nmである層状ナノ粒子を含むことを特徴とするポリエステルモノフィラメント。」 「【0001】 本発明はポリエステルモノフィラメント及びそれからなる繊維構造体に関し,さらに詳しくは,フィブリル等の欠点が少なく強力に優れたポリエステルモノフィラメント及びそれからなる繊維構造体に関する。」 「【0002】 ポリエステルモノフィラメントはその優れた物理的特性及び化学的特性を有するため,製紙用ファブリック,フィルター,スクリーン用紗,さらには衣料用途としても各種使用されている。しかし通常の細いポリエステル繊維と比べるとモノフィラメントは繊度が大く,溶融吐出後のポリマーの冷却・固化を均一に行うことが困難であるため,物性を向上させることが困難であった。」 「【0047】 そしてもう一つの本発明である繊維構造体は,上記の本発明のポリエステルモノフィレラメントからなる構造体である。繊維構造体の形態としては,織物,編物,不織布など任意のものを採用することができるが,強度,および経方向,緯方向のバランスの面から,織物であることがもっとも好ましい。また織物の場合には本発明のポリエステルモノフィメントを経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用した織物であることが好ましい。このような織物の場合,一本の単糸にて使用される以外に,モノフィラメントを複数本組み合わせたもの,さらには複数本組み合わせた単糸を撚り合わせたものなど,織物を構成する経糸及び/または緯糸の少なくとも一部に使用することもできる。織物の織り方としては,平織り,綾織などの一重織のほか,二重織,三重織といった織物を使用することも好ましい。例えば平織りであれば,織密度15?200本/インチ,さらには20?170本/インチであることが好ましい。目付けとしては30?300g/m^(2)の範囲が好ましい。」 [乙第1号証の1] 日本生活協同組合連合会のウェブページ“トップブページ”からの印刷物である。 [乙第1号証の2] 日本生活協同組合連合会のウェブページ“お近くの生協”からの印刷物であって,事業連合に「コープ九州事業連合」,「コープ中国四国事業連合」及び「コープきんき事業連合」が含まれていることを示している。 [乙第1号証の3] 日本生活協同組合連合会のウェブページ“東京都でご利用いただける生協”からの印刷物であって,東京都で利用できる生協に「東都生活協同組合」が含まれていることを示している。 [乙第1号証の4] 日本生活協同組合連合会のウェブページ“福岡県でご利用いただける生協”からの印刷物であって,福岡県で利用できる生協に「グリーンコープ生活協同組合ふくおか」が含まれていることを示している。 [乙第1号証の5] 乙第1号証の2の2頁“日本生協連合の会員名簿”からの印刷物であって,日本生活協同組合連合会の会員名簿に「東都生活協同組合」,「生活協同組合連合会グリーンコープ連合」,「生活協同組合連合会コープ九州事業連合」,「生活協同組合連合会コープ中国四国事業連合」及び「生活協同組合連合会コープきんき事業連合」が含まれていることを示している。 [乙第2号証] トップ産業株式会社(被請求人)とグリーンコープ連合とで交わした「取り扱い商品確認書」であって,「トップ産業(株)」と「生活協同組合連合会グリーンコープ連合」との間で,「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」について,「暮らしのGREEN 201427号」に関し,発注日・納品日や納品場所等を確認していることを示している。 [乙第3号証] トップ産業株式会社(被請求人)に対するグリーンコープ連合からの請求書であって,特企カタログ掲載料9月次27号等に関する請求書であることを示している。 [乙第4号証] 商品カタログ「coop めーむ」であって,「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」に関し,「全国の生協で518,296点(2種合計)ご利用をいただきました。」との記載がある。 [乙第5号証] 商品カタログ「ぱれっと」であって,「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」との記載とそれに隣接して商品の写真が掲載されている。 [乙第6号証の1] 他生協ヒット商品情報であって,ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターに関し,東都生協での販売情報を示している。 [乙第6号証の2] 他生協ヒット商品情報(実績)であって,ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターに関し,コープきんき事業連合での販売情報を示している。 [乙第7号証] チラシ「愛着良品」2014年6月4週に関係する被請求人と東都生活協同組合との売約伝票であって,得意先東都生協とのチラシの配布日や部数,ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターの組価,納入価等を示している。 [乙第8号証] グリーンコープ連合に対する商談内容確認書であって,お取引先名欄に「グリーンコープ連合様」,商談日欄に「2014年7月25日」と記載があり,商談・確認事項欄に「毛ごみフィルター新規で企画予定」との記載がある。 第6 当審の判断 1 引用発明について 請求人が主張する引用発明は,本件出願前に,グリーンコープ連合が公然と販売した本件フィルターに係る発明である。 (1) 認定事実 ア 本件フィルターに関する経緯について (ア) 甲第1号証の2は,本件フィルターの包装袋に同封されていた説明書であって,「593」の記載,その下に「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」との記載がある。 そして,甲第1号証の3は,「593洗濯機の毛ごみフィルター」とあることから,本件フィルターの納品書と認められ,さらに,甲第1号証の3には,「グリーンコープ」と書かれたロゴ,「27号受」,「593洗濯機の毛ごみフィルター」の「本体価格」が「448円」とあり,甲第1号証の4のチラシには,グリーンコープ発行の「2014.10 27号」,「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」の価格が「448円(税込価格483.84円)」とあることから,本件フィルターは,甲第1号証の4のチラシを介して販売されたことが分かる。 そして,甲第1号証の3に「納品明細書 10月10日お届け商品」という記載及び甲第1号証の4に「2014.10」という記載があることから,本件フィルターは,2014年10月10日にグリーンコープ連合から販売されたことが分かる。 また,甲第5号証の陳述書において,株式会社アーランド(請求人)の社員榎木晶仁氏は,本件フィルターを,2014年9月26日に請求人名下で発注し,2014年10月10日にグリーンコープ連合より購入したことを陳述している。 乙第2号証には,トップ産業株式会社とグリーンコープ連合との間で,「暮らしのGREEN 201427号」に関し,ドラム式洗濯機の毛ごみフィルターを含む商品に関し,発注日・納品日や納品場所等を確認していることを示しており,甲第1号証の4のチラシには,トップ産業株式会社の社名が記載されていないところ,トップ産業株式会社は,グリーンコープ連合に本件フィルターを納品していることが分かる。 (イ) 上記(ア)より,次のことが分かる。 a 遅くとも平成26年9月26日までに,グリーンコープ連合は,本件フィルターが記載されたチラシを公然に頒布した(甲第1号証の4チラシ,甲第1号証の3納品明細書,甲第1号証の5陳述書)。 b 平成26年10月10日,グリーンコープ連合は,請求人に対し,本件フィルターを納品した(甲第1号証の3納品明細書)。 c 平成26年11月26日,本件原出願人(被請求人)は,本件出願の原出願(実願2014-6265号)をした(甲第7号証)。 イ 本件フィルターの構成について (ア) 甲第1号証の1,甲第1号証の2及び甲第1号証の4は,本件フィルターに関するものと認められる。 (イ) 甲第1号証の2の説明書において,【本品】の図,【異物フィルター】の図及び「フィルターの凸部分を異物フィルターの取っ手側に装着して下さい。」との記載から,本件フィルターは,矩形状の本体部分と凸部分を有し,【本品】の図から,矩形状の本体部分には,長手方向に断続するスリットを,本体部の幅方向に複数列形成してなることが看取できる。 (ウ) 甲第1号証の2の説明書の【異物フィルター】の図,【断面図】の図及び「フィルターの凸部分を異物フィルターの取っ手側に装着して下さい。」との記載から,本件フィルターは,「異物フィルター」の内面に沿って装着されるといえ,また,当該【異物フィルター】の図及び甲第1号証の4のチラシの商品の写真から,「異物フィルター」は格子状に形成されていることが看取できる。 (エ) 甲第1号証の2の説明書の「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」の記載,「使用方法」の「ゴミや髪くずがいっぱいになりましたら,お取り替えください。」との記載,甲第1号証の4のチラシの「つまんで捨てるだけ!」という記載及び商品の写真から,本件フィルターは,ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタといえる。 (オ) 甲第1号証の2の説明書の「ご注意」の「フィルターが汚れた状態のまま長期間使用されますと,フィルターが目詰まりし水があふれる場合がありますので,ご使用の度にフィルターをご確認ください。」との記載から,本件フィルターの本体部分は,通水性シートから構成されているといえる。 (カ) 甲第1号証の2の説明書には材質がポリエステルであることが記載され,この記載及び甲第1号証の1の写真から,本件フィルターは,ポリエステルモノフィラメント製の不織布シートからなると認められる。 (キ) 甲第1号証の2の説明書における【異物フィルター】の図及び「フィルターの凸部分を異物フィルターの取っ手側に装着して下さい。」との記載,甲第1号証の4のチラシにおける「つまんで捨てるだけ!」の記載及び商品の写真から,本件フィルターは,その凸部分をつまんで捨てるものであると認められる。 (2) 判断 ア 本件フィルターに係る発明が本件出願前に公然実施されていたか 前記(1)アによれば,本件フィルターは,遅くとも平成26年10月10日までには,公然と販売されていたものと認められる。 したがって,本件フィルターに係る発明は,本件出願前に公然実施されていたものと認められる。 イ 本件フィルターに係る発明 前記(1)イによれば,本件フィルターは,ドラム式洗濯機の格子状に形成された異物フィルターに装着して使用する使い捨てフィルタであって,異物フィルターの内面に沿って装着される矩形の通水性シートからなる本体部を備え,該本体部に,本体部の長手方向に断続するスリットを,本体部の幅方向に複数列形成してなるドラム式洗濯機用使い捨てフィルタと認められる。 また,本件フィルターは,該通水性シートが,合成樹脂製の不織布シートからなると認められ,該不織布シートが,ポリエステルモノフィラメントからなると認められる。 そして,本件フィルターは,該本体部の長手方向の端部に凸部を一体に備えてなると認められる。 そうすると,本件フィルターに係る発明は,以下のとおりと認められる。 「ドラム式洗濯機の格子状に形成された異物フィルターに装着して使用する使い捨てフィルタであって,異物フィルターの内面に沿って装着される矩形で,ポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートからなる本体部を備え,該本体部に,本体部の長手方向に断続するスリットを,本体部の幅方向に複数列形成してなり, 本体部の長手方向の端部に凸部を一体に備えてなるドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ。」 2 特許法第30条第2項の適用の適否について これに対し,被請求人は,引用発明が特許法第30条第2項の規定の適用を受けることができる発明である旨主張するので,以下,検討する。 (1) 認定事実 ア 平成26年6月2日,東都生活協同組合は,「ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター」の販売を開始した(甲第9号証)。 イ 同年9月25日,グリーンコープ連合は,被請求人に対し,本件フィルターを発注し,同年10月1日,被請求人は,グリーンコープ連合に対し,本件フィルターを納品した(乙第2号証)。 ウ 遅くとも同年9月26日までに,グリーンコープ連合は,本件フィルターが掲載された甲1の4チラシを公然に頒布し(甲第1号証の4チラシ,甲第1号証の3納品明細書,甲第1号証の5陳述書),同年10月10日,グリーンコープ連合は,請求人に対し,本件フィルターを納品した(甲第1号証の3納品明細書)。 エ 同年11月26日,本件出願人(被請求人)は,本件出願の原出願(実願2014-6265号)をした(甲第7号証)。 オ 同年12月2日,本件出願人は,原出願につき,新規性の喪失の例外の規定を受けるための証明書(以下「本件証明書」という。甲第9号証)を提出した(甲第8号証)。なお,本件証明書は,特許法第44条第4項の規定により特許出願と同時に提出されたものとみなされる。 本件証明書には,公開の事実として,1)販売開始日が平成26年6月2日であること,2)販売した場所が東都生活協同組合であること,3)公開者がトップ産業株式会社であること,4)公開された考案の内容が「トップ産業株式会社が,一般消費者に,添付のチラシ記載の『ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ(商品名:ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター)』を販売した。」であること,5)トップ産業株式会社が,一般消費者に,添付のチラシ記載の「ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ(商品名:ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター)を販売したことが記載され,これらを証明するための資料として,「愛着良品」と称するチラシ(以下「本件証明書添付チラシ」という。)が添付されている(甲第9号証)。 (2) 判断 特許法第30条第2項の規定の適用を受けるためには,出願人は,ア)「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して第29条第1項各号のいずれかに該当するに至つた発明」につき,イ)当該発明が特許法第30条第2「項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面」を特許庁長官に提出しなければならない(特許法第30条第3項)。 そこで,ア)引用発明が「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して第29条第1項各号のいずれかに該当するに至つた発明」といえるか,そして,イ)本件出願人(被請求人)が,引用発明が特許法第30条第2「項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面」を提出したといえるか,について検討する。 ア 引用発明が「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して第29条第1項各号のいずれかに該当するに至つた発明」といえるか 引用発明は,グリーンコープ連合が,遅くとも平成26年10月10日までには,公然に譲渡した本件フィルターに係る発明であるが,前記(1)イ及び前記1(2)によれば,その公然譲渡は,被請求人がグリーンコープ連合に本件フィルターを納品した行為に起因してなされたものと認められる。 したがって,引用発明は,特許を受ける権利を有する者の行為に起因して特許法第29条第1項第2号に該当するに至った発明といえる。 イ 本件出願人が,引用発明が特許法第30条第2「項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面」を提出したといえるか 本件出願人が特許法第30条第3項規定の証明書として提出したとみなされたものは,本件証明書以外には認められない。そこで,本件証明書が,引用発明が特許法第30条第2項の適用を受けることができる発明であることを証明する書面といえるのかが問題となり,より具体的には,本件証明書が,特許法第30条第3項規定の「第29条第1項各号のいずれかに該当するに至つた発明」として,引用発明を特定しているのか否かが問題となる。 そして,本件では,上記「第29条第1項各号のいずれか」の「各号」として2号が対象となっているから,本件証明書がいかなる発明を特定しているのかを,「公然実施」に該当する具体的事実に基づいて判断する。 (ア) 本件証明書により特定される発明について検討するに,前記(1)オのとおり,本件証明書には,公開者がトップ産業株式会社であり,公開された発明はトップ産業株式会社が一般消費者に対して販売した本件証明書添付のチラシ記載の「ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ(商品名:ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター)」である旨が記載されている一方で,公開場所として,東都生活協同組合が特定されており,また,本件証明書添付チラシを見ると,販売者としてトップ産業株式会社を示す記載はなく,その体裁から,東都生活協同組合が販売主体であることが明らかである。 そうすると,本件証明書の「…トップ産業株式会社が,一般消費者に,…ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター…を販売した。」とは,トップ産業株式会社の当該フィルターの東都生活協同組合への納品等の行為に起因して,東都生活協同組合が当該フィルターを販売したことを意味すると解される。 よって,本件証明書により特定され,かつ,証明された発明は,東都生活協同組合により販売された「ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ(商品名:ドラム式洗濯機の毛ごみフィルター)」であると認めるのが相当である。 (イ) しかるに,前記(1)ウのとおり,引用発明の「公然実施」に該当する具体的事実は,遅くとも平成26年10月10日までに,グリーンコープ連合がした本件フィルターの公然譲渡行為であるところ,グリーンコープ連合と東都生活協同組合とは法人格を異にし(甲第10号証ないし甲第12号証),販売地域も異なるほか(乙第1号証の3,乙第1号証の4),グリーンコープ連合による前記公然譲渡行為と東都生活協同組合による販売とが同一主体による販売であるとみることができることを示す証拠もないから,本件証明書が,グリーンコープ連合による本件フィルターの販売を示す具体的事実を記載していると認めることはできない。 よって,本件証明書は,特許法第30条第3項規定の「第29条第1項各号のいずれかに該当するに至つた発明」として,引用発明をも特定するものと認めることはできない。 (ウ) 以上のとおりであるから,本件出願人が,引用発明が特許法第30条第2「項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面」を提出したとはいえない。 ウ 被請求人の主張について 被請求人は,グリーンコープ連合と東都生活協同組合が,いずれも日本生活協同組合連合会の傘下にある(乙第1号証の1ないし乙第1号証の5)ことからすれば,東都生活協同組合への納品行為とグリーンコープ連合への納品行為は,日本生活協同組合連合会という単一の流通グループにおける納品行為として密接に関連しているから,引用発明について別途証明書の提出を要しない旨主張する。 しかしながら,本件証明書及び本件証明書添付チラシには,日本生活協同組合連合会に関する記載はなく,日本生活協同組合連合会傘下の組合において販売された商品が他の組合においても販売されることを示す証拠もないところ,かえって,一部の組合において販売されたとしても,他の組合において販売される場合には,別途契約が必要であることが認められることから(乙第2号証,乙第7号証,乙第6号証の1,乙第6号証の2),本件証明書により特定された東都生活協同組合における販売行為と,グリーンコープ連合による本件フィルターの公然譲渡行為との間に,流通ルートを同一にする等の何らかの関連性があることを認めることはできず,本件証明書においてそのような関連性が客観的に示されているということもできない。 また,前記のとおり,東都生活協同組合による販売と,グリーンコープ連合による販売とが,別個の契約及び納品行為に基づくものであることから,各販売行為について特許法第30条第3項規定の証明書の提出をそれぞれ別に求めたとしても,酷とまではいえない。 以上検討したところによれば,特許法第30条の趣旨に鑑みても,引用発明について同条第3項の証明書の提出を要しないということはできず,被請求人の主張は採用できない。 エ 小括 したがって,引用発明は,特許法第30条第2項の適用を受けることができない。 3 無効理由1(特許法第29条第1項第2号)について (1) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と本件フィルターに係る発明とを,その有する機能に照らして対比すると,本件フィルターの「異物フィルター」は,本件発明1の「リントフィルタ」に相当するから,本件発明1と本件フィルターに係る発明とは, 「ドラム式洗濯機の格子状に形成されたリントフィルタに装着して使用する使い捨てフィルタであって,リントフィルタの内面に沿って装着される矩形で,ポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートからなる本体部を備え,該本体部に,本体部の長手方向に断続するスリットを,本体部の幅方向に複数列形成してなるドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ。」 である点で一致するが, 本件発明1が「目付が60g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートからなる本体部を備え(る)」のに対し,本件フィルターに係る発明においては,目付が不明であるポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートからなる本体部を備える点 で相違すると認められる(以下「相違点」という。)。 イ 判断 (ア) 目付の程度は,ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタの性能(ごみの捕集性能,通水性能等)に影響を与える事項であるから,前記相違点は実質的なものと認められる。 よって,本件発明1と本件フィルターに係る発明は同一であるとは認められない。 (イ) この点に関し,請求人は,甲第1号証に示されたものと同等商品の目付が約60g/m^(2)であるから(甲第14号証),本件発明は甲第1号証に示す製品そのものであって,新規性がない旨主張している(審判事件弁駁書3頁)。 しかしながら,甲第14号証の「報告書」に「甲第1号証に示されたフィルタと同じ商品・・・を測定した」旨記載され,請求人も「甲第1号証に示されたと同等商品」というように,甲第14号証には本件フィルターを測定した結果が記載されているものとは認められない。 そして,本件フィルターの目付が60g/m^(2)であることを客観的に示す証拠はなく,本件フィルターの販売時期から甲第14号証の作成時期(2017年5月16日)までの間に,目付に関し設計変更が行われた可能性を否定することはできない。なお,被請求人は,2015年10月1日から,本件フィルターの目付を,70g/m^(2)から60g/m^(2)に変更しており,甲第1号証に係る本件フィルターの目付は70g/m^(2)である旨主張している(審判事件答弁書(2)2?3頁)。 よって,本件フィルターの目付が60g/m^(2)であるとは認められない。 (2) 本件発明4について ア 対比 本件発明4と本件フィルターに係る発明とを,その有する機能に照らして対比すると,本件フィルターの「異物フィルター」及び「凸部」は,それぞれ本件発明4の「リントフィルタ」及び「摘み部」に相当するから,本件発明4と本件フィルターに係る発明とは, 「ドラム式洗濯機の格子状に形成されたリントフィルタに装着して使用する使い捨てフィルタであって,リントフィルタの内面に沿って装着される矩形で,ポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートからなる本体部を備え,該本体部に,本体部の長手方向に断続するスリットを,本体部の幅方向に複数列形成してなるドラム式洗濯機用使い捨てフィルタであって, 本体部の長手方向の端部に摘み部を一体に備えてなるドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ。」 である点で一致するが,前記相違点と同じ点で相違すると認められる。 イ 判断 既に述べたように,前記相違点は実質的なものと認められるから(前記(1)イ),本件発明4と本件フィルターに係る発明は同一であるとは認められない。 (3) 小括 以上のとおり,本件発明1及び4は,本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた本件フィルターに係る発明であるとは認められないから,特許法第29条第1項第2号の規定に該当するものとは認められない。 4 無効理由2(第29条第2項)について (1) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と本件フィルターとは,前記3(1)アの点で一致し,相違する。 イ 判断 (ア) 前記相違点について検討する。 本件フィルターは,ドラム式洗濯機の格子状に形成された異物フィルターに装着して使用する使い捨てフィルタであるが,ドラム式洗濯機には各種あり,異物フィルターに係る状況も異なることが予想されるから,各種のドラム式洗濯機に実際に装着しその性能(ごみの捕集性能,通水性能等)を確認,検討するといったことは,当業者であれば研究開発を行う上で通常行う事項であると認められる。 特に,ドラム式洗濯機は,本来備えられている異物フィルターにより,通水性能を妨げることなくごみを捕集可能となっているものと認められるところ,本件フィルターはさらにごみの捕集性能を高めようとするものであるから,本件フィルターの装着がドラム式洗濯機の所与の通水性能,ひいては運転性能に影響を与える可能性があることは技術的に明らかである。 この点,甲第1号証の2には,「フィルターが汚れた状態のまま長時間使用されますと,フィルターが目詰まりし水があふれる場合があります」,「洗濯機にエラーが表示される場合は使用中止してください。」と記載され,本件フィルターの装着がドラム式洗濯機の通水性能に影響する可能性が窺われる。また,請求人社員榎木氏が「入手した製品を,社員の家庭などで実際に使用させてみたところ,いろいろと改善すべき点があることがわかりました」(甲第5号証)と陳述していること,被請求人も「甲1に係る『本件フィルター』の目付が70g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートでは,糸屑の捕集性能は十分ある反面,通水性能が必ずしも十分でなく,頻繁ではないものの使用中にドラム式洗濯機が停止する問題があった。」旨主張していること(審判事件答弁書(2)3頁)に照らしても,実際に装着し,本件フィルターの性能を確認,検討することは研究開発上必要な事項といえるとともに,当業者にとって格別困難なこととも認められない。 そして,本件フィルターの性能を決める上で目付の程度が重要であること(目付量が大きければ捕集性能が向上する反面,通水性能が低下し,目付量が小さければ捕集性能が向上しないが,通水性能は低下しないこと)は技術的に明らかであるから,本件フィルターの性能を確認,検討し,ごみの捕集性能と通水性能のバランスを図りながら,その目付を最適化することは,当業者が通常の創作能力の発揮の範囲内にてなすことと認められる。 この点に関し,本件特許明細書をみても,「リントフィルタ24の通水性を損ねることがないように,目付が60?100g/m^(2)程度,好ましくは,80g/m^(2)程度,・・・を好適に用いることができる。」(【0022】)と記載されているものの,想定される目付の範囲の中で,特に60g/m^(2)に限定することの技術的な意味合いについて特段記載はなく,目付を60g/m^(2)に限定することに臨界的意義は認められない。 また,甲第15号証に記載されているように,30?300g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布が従前より知られていることからしても,目付を60g/m^(2)にすることはおよそ採用し得ない事項とも認められないから,本件フィルターの目付を60g/m^(2)にすることは,当業者が容易に想到できる事項と認められる。 (イ) なお,本件フィルターの目付の具体的な数値は不明であるが,本件フィルターは,本件発明1と同じく,ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタであるから,目付の程度が本件発明1と大きく異なるとは考えられず,同程度であると解される。本件出願は,本件フィルターに関し特許法第30条第2項の適用を受けようとしたものであるという背景事情があるところ,本件特許明細書に「60?100g/m^(2)程度,好ましくは,80g/m^(2)程度」(【0022】)と記載され,被請求人も,本件フィルターの目付は70g/m^(2)である旨主張していること(審判事件答弁書(2)2?3頁)に照らすと,本件フィルターの目付はおよそ70?80g/m^(2)程度であると推認することができ,本件発明1と格別の差があるものとは認められない。 そして,本件フィルターの装着がドラム式洗濯機の所与の通水性能に影響を与える可能性があることから,より小さい目付を選択することは合理的であるともいえるので,本件フィルターの目付を70?80g/m^(2)程度から60g/m^(2)に変更することは,当業者が適宜になし得ることであると認められる。 よって,本件フィルターに係る発明において,上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できる事項と認められる。 (ウ) さらに,本件発明1の効果をみても,本件フィルターに係る発明から当業者が十分に予測し得る範囲内のものであって格別ではない。 被請求人は,本件発明1が「目付が60g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シート」を構成要件とすることで,糸屑の捕集性能と通水性能のバランスを維持しながら,形態安定性(復元力)が高い本体部及び摘み部をリントフィルタの胴部の内面に沿って安定して装着できるものであり,この点で,かかる数値限定に臨界的意味があるといえる,と主張している(審判事件答弁書(2)3頁)。 しかしながら,ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタにおいて,糸屑の捕集性能と通水性能のバランスを図りながら,形態や材質を最適化することは当然で,その際,目付の程度が重要であることは,当業者であれば容易に理解できる。 そして,既に述べたように,本件特許明細書には目付を60g/m^(2)に限定することに関し特段記載はない。被請求人が「甲1に係る『本件フィルター』の目付が70g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートでは,糸屑の捕集性能は十分ある反面,通水性能が必ずしも十分でなく,頻繁ではないものの使用中にドラム式洗濯機が停止する問題があった。」(審判事件答弁書(2)3頁)と主張するように,目付が70g/m^(2)であれば必然的に支障を来すといったものではなく,要するに程度の問題であって,臨界的意味は格別認められない。 (2) 本件発明4について ア 対比 本件発明4と本件フィルターに係る発明とは,前記3(2)アの点で一致し,前記3(1)アの点で相違する。 イ 判断 既に述べたように,本件フィルターに係る発明において,前記相違点に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できる事項と認められるところ,同様の理由により,本件フィルターに係る発明において,上記相違点に係る本件発明4の構成とすることは,当業者が容易に想到できる事項と認められる。 (3) 小括 以上のとおり,本件発明1及び4は,本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた本件フィルターに係る発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるから,特許法第29条第2項の規定に違反し,特許を受けることができないものである。 4 まとめ 本件発明1及び4は,本件特許出願前にグリーンコープ連合が公然と販売した本件フィルターに係る発明であるとは認められないから,特許法第29条第1項第2号の規定に該当するものとは認められない。 しかしながら,本件発明1及び4は,本件フィルターに係る発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるから,特許法第29条第2項の規定に違反し,特許を受けることができない。 そして,本件特許出願前にグリーンコープ連合が公然と販売した本件フィルターに係る発明は,被請求人の行為に起因して特許法第29条第1項第2号に該当するに至った発明であるが,被請求人が,特許法第30条第2「項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面」を特許庁長官に提出したとはいえず,また,当該証明書の提出を要しないということもできないから,本件特許出願前にグリーンコープ連合が公然と販売した本件フィルターに係る発明は,発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けることができない。 第7 本件特許の請求項2及び3についての本件審判の請求について 前記第2のとおり,本件訂正が認められるので,本件特許の請求項2及び3についての本件審判の請求は,その対象が存在しないものとなった。 したがって,本件特許の請求項2及び3についての本件審判の請求は,不適法であって,その補正をすることができないものであることから,特許法第135条の規定により,却下すべきものである。 第8 むすび 以上のとおり,本件特許明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 本件発明1及び4は,特許法第29条第1項第2号に該当するものとは認められないから,無効理由1によって,本件発明1及び4に係る特許を無効にすることはできない。 本件発明1及び4は,特許法第29条第2項の規定に違反し,同法第30条第2項の適用を受けることができないから,本件発明1及び4に係る特許は,無効理由2により無効とすべきものである。 本件特許の請求項2及び3についての本件審判の請求は,特許法第135条の規定により却下する。 審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ 【技術分野】 【0001】 本発明は、ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタに関するものである。 【背景技術】 【0002】 現在汎用されているドラム式洗濯機においては、例えば、図3に示すように、フィルタケース21の側部に排水ポンプ22と循環ポンプ23を配設し、フィルタケース21に内設され外方から取り外し可能なリントフィルタ24を備えるようにしている。 リントフィルタ24は、フィルタケース21の内設部分に上方が開口して設置されるように、断面が略コ字状の格子状に形成されている。 ここで、リントフィルタ24の格子は、排水ポンプ22側に排水側格子24aによって、循環ポンプ23側に排水側格子24aよりも格子の単位開口面積が小さい循環側格子24bによって、それぞれ構成するようにしている。 【0003】 そして、排水時は、排水ポンプ22を駆動することによって、水槽(図示省略)から排水管25を介してフィルタケース21に導入された洗濯水は、リントフィルタ24に形成された排水側格子24aを通過して、排水ポンプ22を通り、排水ホース26から機外へ排水される。 このとき、洗濯水に含まれる大きい糸屑は排水側格子24aに捕集され、それより小さい糸屑は機外に排出される。 【0004】 一方、洗濯水循環時は、循環ポンプ23を駆動することによって水槽から排水管25を介してフィルタケース21に導入された洗濯水は、リントフィルタ24に形成された循環側格子24bを通過して、循環ポンプ23を通り、吐出側経路27から回転ドラム(図示省略)に供給される。 このとき、洗濯水に含まれる糸屑は循環側格子24bに捕集される。 【0005】 そして、リントフィルタ24に捕集された糸屑は、使用者が外方からリントフィルタ24の胴部24cに形成されたフィルタ摘み24dを回転させて取り外し、掃除をすることができるようにされている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特開2012-170693号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 ところで、上記従来のドラム式洗濯機の格子状に形成されたリントフィルタには、捕集された糸屑が複雑に絡み付くため、掃除をする際に手数を要するとともに、使用者の手や衣服を汚すという問題があった。 また、リントフィルタは、掃除の手数を低減するために、格子の単位開口面積が比較的大きく設定することが一般的であるため、糸屑が、捕集されることなく機外に排出されて排水経路を詰まらせたり、循環する洗濯水と共に回転ドラムに供給されるという問題があった。 【0008】 本発明は、上記従来のドラム式洗濯機の格子状に形成されたリントフィルタの有する問題点に鑑み、リントフィルタの掃除をする際の手数を軽減するとともに、糸屑の捕集性能を向上することができるドラム式洗濯機用使い捨てフィルタを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上記目的を達成するため、本発明のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタは、ドラム式洗濯機の格子状に形成されたリントフィルタに装着して使用する使い捨てフィルタであって、リントフィルタの内面に沿って装着される矩形で、目付が60g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートからなる本体部を備え、該本体部に、本体部の長手方向に断続するスリットを、本体部の幅方向に複数列形成してなることを特徴とする。 【0010】 (削除) 【0011】 (削除) 【0013】 また、本体部の長手方向の端部に摘み部を一体に備えてなるようにすることができる。 【発明の効果】 【0014】 本発明のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタによれば、リントフィルタの内面に沿って装着される矩形の通水性シートからなる本体部を備えてなるようにすることにより、糸屑が使い捨てフィルタに捕集されてリントフィルタに絡み付くことがなくなるため、糸屑を捕集した使い捨てフィルタをリントフィルタから離脱させてそのまま廃棄することで、リントフィルタの掃除をすることができ、掃除をする際に手数を要することがなく、使用者の手や衣服を汚すという問題を解消することができる。 また、通水性シートによって、糸屑の捕集性能を向上することができ、糸屑が、捕集されることなく機外に排出されて排水経路を詰まらせたり、循環する洗濯水と共に回転ドラムに供給されるという問題を解消することができる。 そして、本体部に、本体部の長手方向に断続するスリットを、本体部の幅方向に複数列形成してなるようにすることにより、使い捨てフィルタの本体部を、ドラム式洗濯機の機種によって異なる形状をしているリントフィルタの内面に沿って安定して装着することができ、汎用性を高めることができるとともに、フィルタの通水性能を維持することができる。 【0015】 また、通水性シートを、合成樹脂製の不織布シートから構成することにより、均一かつ良好な通水性能を長期間に亘って維持することができる。 【0016】 さらに、不織布シートを、ポリエステルモノフィラメント製の不織布シートから構成することにより、形態安定性に優れたものとなり、リントフィルタへの装着安定性を高めることができる。 【0018】 また、本体部の長手方向の端部に摘み部を一体に備えてなるようにすることにより、糸屑を捕集した使い捨てフィルタを摘み部を持ってリントフィルタから容易に離脱させることができる。 【図面の簡単な説明】 【0019】 【図1】本発明のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタの一実施例を示し、(a)はその説明図、(b)はリントフィルタの内面に沿って装着した状態を示す斜視図、(c)は同断面図である。 【図2】本発明のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタの変形実施例の説明図である。 【図3】ドラム式洗濯機のリントフィルタの説明図である。 【発明を実施するための形態】 【0020】 以下、本発明のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタの実施の形態を、図面に基づいて説明する。 【0021】 図1に、本発明のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタの一実施例を示す。 このドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ1は、図3に示すようなドラム式洗濯機の格子状に形成されたリントフィルタ24に装着して使用することができるもので、リントフィルタ24の内面に沿って装着される矩形の通水性シート、より具体的には、合成樹脂製の不織布シートからなる本体部11を備えてなるとともに、この本体部11の長手方向の端部に摘み部12を一体に備えてなるようにしている。 【0022】 使い捨てフィルタ1を構成する合成樹脂製の不織布シートは、均一かつ良好な通水性能を長期間に亘って維持することができるものである限りにおいて、各種の不織布シートを使用することができるが、耐薬品性に優れ、嵩高性及び弾力性があり、熱セット性及び形態安定性に優れ、吸水性がほとんどない、ポリエステル樹脂製、特に、ポリエステルモノフィラメント製の不織布シートを好適に用いることができる。 不織布シートは、リントフィルタ24の内面に沿って装着した状態でリントフィルタ24の通水性を損ねることがないように、目付が60?100g/m^(2)程度、好ましくは、80g/m^(2)程度、厚さが3?5mm程度、好ましくは、4mm程度の不織布シートを好適に用いることができる。 【0023】 そして、使い捨てフィルタ1を構成する通水性シートには、上記の合成樹脂製の不織布シートのほか、フィルタケース21に導入されてリントフィルタ24に形成された排水側格子24a又は循環側格子24bを通過する洗濯水によって溶解したり、型くずれしない各種のシート材料、例えば、合成樹脂製のネット(網)状のシートや微細な孔を有することにより通水性を備えた紙や合成樹脂製のシートを用いることもできる。 【0024】 使い捨てフィルタ1の本体部11の大きさは、特に限定されるものではないが、例えば、8cm×17cm程度に形成し、図1(c)のX部に示すように、リントフィルタ24に装着したときにリントフィルタ24の開口縁部からはみ出ないように、必要に応じて、リントフィルタ24の形状に合わせて、その周囲11aをハサミ等を用いてカットして使用するようにする。 【0025】 使い捨てフィルタ1の本体部11には、本体部11の長手方向に断続するスリット13を、本体部11の幅方向に複数列(本実施例においては、6列。)形成するようにしている。 このスリット13は、本体部11を構成する通水性シートに、切り込みを入れることによって形成することができる。 これにより、通水性シートが形態安定性に優れた不織布シートからなる使い捨てフィルタ1の場合であっても、使い捨てフィルタ1の本体部11を、ドラム式洗濯機の機種によって異なる形状をしているリントフィルタ24の内面に沿って安定して装着することができ、汎用性を高めることができるとともに、使い捨てフィルタ1自体の通水性能を維持し、リントフィルタ24の通水性を損ねることがないようにすることができる。 【0026】 また、使い捨てフィルタ1の本体部11には、使い捨てフィルタ1自体の通水性能を維持し、リントフィルタ24の通水性を損ねることがないようにするために、図2に示す変形実施例のように、スリット13と共に(又はスリット13に代えて)、多数の小孔14を形成することもできる。 【0027】 使い捨てフィルタ1の本体部11の長手方向の端部に一体に備えるようにした摘み部12は、特に限定されるものではないが、例えば、本体部11の幅より狭く(2?3cm程度)、本体部11の長手方向に4cm程度延出するように形成し、図1(b)に示すように、リントフィルタ24の通水性を損ねることがないように、リントフィルタ24の胴部24cの内面に沿って装着されるようにする。 この場合において、使い捨てフィルタ1の本体部11と摘み部12の接合部、すなわち、摘み部12の付け根の部分に両側から切り込みを入れることにより、リントフィルタ24の胴部24cの内面に沿って安定して装着することができる。 これにより、糸屑を捕集した使い捨てフィルタ1を、摘み部12を持つことによって、リントフィルタ24から使用者の手や衣服を汚すことなく容易に離脱させることができる。 【0028】 このドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ1は、糸屑が使い捨てフィルタ1に捕集されてリントフィルタ24に絡み付くことがなくなるため、糸屑を捕集した使い捨てフィルタ1をリントフィルタ24から離脱させてそのまま廃棄することで、リントフィルタ24の掃除をすることができ、掃除をする際に手数を要することがなく、使用者の手や衣服を汚すという問題を解消することができる。 また、通水性シートによって、糸屑の捕集性能を向上することができ、糸屑が、捕集されることなく機外に排出されて排水経路を詰まらせたり、循環する洗濯水と共に回転ドラムに供給されるという問題を解消することができる。 そして、特に、通水性シートに装着安定性の高い形態安定性に優れた不織布シートを用いた使い捨てフィルタ1の場合であっても、使い捨てフィルタ1の本体部11に、本体部11の長手方向に断続するスリット13を、本体部11の幅方向に複数列形成するようにすることによって、使い捨てフィルタ1の本体部11を、ドラム式洗濯機の機種によって異なる形状をしているリントフィルタ24の内面に沿って安定して装着することができ、汎用性を高めることができるとともに、使い捨てフィルタ1自体の通水性能を維持し、リントフィルタ24の通水性を損ねたり、ドラム式洗濯機に不具合を生じさせることがないようにすることができる。 【0029】 以上、本発明のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。 【産業上の利用可能性】 【0030】 本発明のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタは、リントフィルタの掃除をする際の手数を軽減するとともに、糸屑の捕集性能を向上することができるという特性を有していることから、ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタの用途に好適に用いることができる。 【符号の説明】 【0031】 1 ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ 11 本体部 12 摘み部 13 スリット 24 リントフィルタ (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ドラム式洗濯機の格子状に形成されたリントフィルタに装着して使用する使い捨てフィルタであって、リントフィルタの内面に沿って装着される矩形で、目付が60g/m^(2)のポリエステルモノフィラメント製の不織布通水性シートからなる本体部を備え、該本体部に、本体部の長手方向に断続するスリットを、本体部の幅方向に複数列形成してなることを特徴とするドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 本体部の長手方向の端部に摘み部を一体に備えてなることを特徴とする請求項1記載のドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2017-09-26 |
結審通知日 | 2017-09-28 |
審決日 | 2017-10-11 |
出願番号 | 特願2015-117617(P2015-117617) |
審決分類 |
P
1
113・
112-
ZAA
(D06F)
P 1 113・ 121- ZAA (D06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 村山 睦 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
窪田 治彦 井上 哲男 |
登録日 | 2015-11-13 |
登録番号 | 特許第5835786号(P5835786) |
発明の名称 | ドラム式洗濯機用使い捨てフィルタ |
代理人 | 森 博 |
代理人 | 林 裕悟 |
代理人 | 都筑 康一 |
代理人 | 平山 博史 |
代理人 | 南瀬 透 |
代理人 | 平山 博史 |
代理人 | 林 裕悟 |
代理人 | 加藤 久 |
代理人 | 森 治 |
代理人 | 森 治 |
代理人 | 都筑 康一 |
代理人 | 遠坂 啓太 |