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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01G |
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管理番号 | 1335664 |
審判番号 | 不服2016-10276 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-07 |
確定日 | 2017-12-21 |
事件の表示 | 特願2014-222793「保温性と透明性を有する温室および保温カバー」拒絶査定不服審判事件〔平成28年1月7日出願公開、特開2016-26〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年10月31日(優先権主張 平成25年11月6日)の出願であって、平成28年1月25日付けで拒絶理由が通知され、同年3月10日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年4月8日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成28年7月29日付けで審査官により前置報告書が作成され、その後、当審において平成29年7月13日付けで拒絶理由が通知され、それに対し平成29年8月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成29年8月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 下記一般式(1)で表され、かつ、 Mg_(X)Al_(2)(OH)_(2X+4)(CO_(3))・mH_(2)O (1) (上記式のXは4.0<X≦6.5の範囲にあり、mは0または正数を表す。) X線回折法による(110)面の2θより求められるモル比R_(1)と化学分析より求められるモル比R_(2)が|R_(1)-R_(2)|≦0.7を満たすハイドロタルサイト類化合物の、平均二次粒子径0.2?1.5μm、BET法比表面積5?30m^(2)/gである粒子からなる保温剤であって、 合成樹脂100重量部に対し1?20重量部含有させて、ヘイズ値6.2以下、保温指数65以上である保温性と透明性を兼備した温室または保温カバー用の合成樹脂フィルムを製造するための保温剤。 但し、 モル比とはMg/Al_(2)比の値である。 保温指数:100μm厚のフィルムを作成し、FT-IRで吸収パターンを測定し、2000cm^(‐1)から400cm^(‐1)までの吸収強度より算出した。 ヘイズ値:日本電色製ヘイズメータを用い、100μm厚のフィルムのヘイズを測定した。」 以下、上記本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。 第3 原査定の理由 原査定における拒絶の理由は次の理由を含むものである。 「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1,2について ・請求項 1 ・引用文献等 1?3 (中略) <引用文献等一覧> 1.特開2004-041223号公報 2.特開2004-244512号公報 3.特開2007-166993号公報 (以下、省略)」 第4 当審の拒絶理由 当審において平成29年7月13日付けで通知した拒絶の理由は、この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、という理由を含むものであり、以下の追記を含むものである。 「第1 本願発明 本願請求項1?6に係る発明は、平成28年7月7日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項によって特定されるとおりのものである。 本願請求項1?6に係る発明について、合議体が新規性及び進歩性の要件のみならず記載要件等も含めて総合的に拒絶理由の有無を判断する必要があるため、原査定における拒絶の理由1及び2(新規性及び進歩性)が解消したか否かの判断を留保した上で、以下、第2?第5の拒絶の理由を示す。 なお、原査定の新規性及び進歩性に関する拒絶の理由が解消していることを審判請求人がより的確に立証するためには、自身が本願優先日前から販売していたことが明らかであって、原査定の引用例1の段落【0016】にも記載されている、合成ハイドロタルサイト「DHT-4A」(協和化学工業)について、本願請求項1でいうところの「|R_(1)-R_(2)|」の値を具体的に示されたい(自社で販売しているものであるため、本願明細書の記載に基づけば通常、測定が容易であると考えられる。)。また、可能であれば、本願請求項1に係る一般式(1)の化学式の条件を満たしつつ、|R_(1)-R_(2)|≦0.7という条件を満たさないハイドロタルサイト類化合物を用いた場合に、本願発明の所期の効果を発揮しないかどうかについてもあわせて証明されたい。 第2 理由1(委任省令要件)について 特許法第36条第4項第1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)では、発明が解決しようとする課題、その解決手段などの、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を、明細書の発明の詳細な説明に記載することが規定されている。 ここで、本願請求項1?6の「|R_(1)-R_(2)|」の値、すなわちX線回折法による(110)面の2θより求められるモル比R_(1)と化学分析より求められるモル比R_(2)の差の絶対値、に関わる発明の技術上の意義について検討する。 本願明細書の段落[0010]には、次のとおり記載されている。 「本発明者は、上記式(1)で表されるハイドロタルサイト類化合物でX線回折法による(110)面の2θより求めるモル比R_(1)と化学分析より求められるモル比R_(2)が0.05≦|R_(1)-R_(2)|≦0.7を満たすことが、合成樹脂に配合し、フィルムとした時にフィルムの保温性及び透明性を高めることを見出した。すなわち、モル比の差が0.05≦|R_(1)-R_(2)|≦0.7、好ましくは0.05≦|R_(1)-R_(2)|≦0.5、さらに好ましくは0.05≦|R_(1)-R_(2)|≦0.4であり、0.7より高い場合は、所望の透明性を得られない。」 そして、本願明細書の段落[0030]?[0051]には、具体的に調製されたハイドロタルサイト類化合物の|R_(1)-R_(2)|の値として、合成例1では0.01、合成例2では0.31、比較合成例1では0.89、比較合成例2では0.81のものが得られた旨記載されている。 しかしながら、比較合成例1及び2は、いずれも一般式(1)におけるXの値も満たしていないことから、ハイドロタルサイト類化合物が一般式(1)を満たすことに加えて、|R_(1)-R_(2)|≦0.7という条件を満たすことが、フィルムの透明性や保温性に関する発明の課題を解決するために必要であることが具体的に示されているとはいえず、「|R_(1)-R_(2)|≦0.7」という条件の技術上の意義を理解することができない。 よって、本願請求項1?6に係る発明ついて、本願の発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでない。 なお、この拒絶理由を解消するためには、例えば、一般式(1)は満たすが、「|R_(1)-R_(2)|≦0.7」という条件は満たさないハイドロタルサイト類化合物についての実験データ(比較例)などを提示されたい。 (以下、省略)」 第5 当審の判断 1 特許法第29条第2項(進歩性)について (1)引用例1の記載 原査定における拒絶の理由において引用文献2として引用された、本願の優先日前に頒布されたことが明らかな刊行物である特開2004-244512号公報(以下、「引用例1」という)には、以下の事項ア?キが記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリオレフィン系樹脂(A)、ポリビニルアルコール系樹脂(B)および変性ポリオレフィン系樹脂(C)を含有してなることを特徴とする樹脂組成物。 【請求項2】 ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有量がポリオレフィン系樹脂(A)100重量部に対して5?100重量部で、変性ポリオレフィン系樹脂(C)の含有量がポリオレフィン系樹脂(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計量(A+B)100重量部に対して0.1?50重量部であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。 【請求項3】 ポリオレフィン系樹脂(A)がポリエチレンまたは酢酸ビニル含有量が5?30重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。 【請求項4】 ポリビニルアルコール系樹脂(B)のケン化度が80モル%以上であることを特徴とする請求項1?3いずれか記載の樹脂組成物。 【請求項5】 変性ポリオレフィン系樹脂(C)が不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂あるいはナイロングラフト変性ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1?4いずれか記載の樹脂組成物。 【請求項6】 さらにハイドロタルサイト類(D)を含有してなることを特徴とする請求項1?5記載の樹脂組成物。」 イ 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、本発明者が上記の各樹脂組成物について、詳細に検討を行ったところ、前者の樹脂組成物では、ポリオレフィン系樹脂に保温性を付与することはできるが、耐衝撃性等の機械的強度の向上は見られず、後者の樹脂組成物においても十分な保温性を確保するためにはエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物を多量に添加する必要があり、その結果透明性が低下する恐れがあり、成形性に優れ、フィルム等に成形したときの保温性、透明性、耐衝撃性に優れた樹脂組成物が望まれるところである。 【0007】 【課題を解決するための手段】 そこで、本発明者は、かかる事情に鑑みて鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂(A)、ポリビニルアルコール系樹脂(B)および変性ポリオレフィン系樹脂(C)を含有してなる樹脂組成物が、上記の目的に合致することを見出して本発明を完成するに至った。 【0008】 本発明においては、さらに、ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有量がポリオレフィン系樹脂(A)100重量部に対して5?100重量部で、変性ポリオレフィン系樹脂(C)の含有量がポリオレフィン系樹脂(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計量(A+B)100重量部に対して0.1?50重量部であるとき、本発明の作用効果をより顕著に得ることができ、また、変性ポリオレフィン系樹脂(C)として不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂あるいはナイロングラフト変性ポリオレフィン系樹脂、特に前者の不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いることも好ましく、さらには、ハイドロタルサイト系化合物(D)を含有させることも好ましい本発明の実施態様である。」 ウ 「【0033】 かくして本発明の樹脂組成物が得られるのであるが、本発明においてはさらにハイドロタルサイト類(D)を含有させることが保温性のさらなる向上の点で好ましい。 【0034】 かかるハイドロタルサイト類(D)としては、ハイドロタルサイト系化合物及びハイドロタルサイト系固溶体を挙げることができ、かかるハイドロタルサイト系化合物は、例えば、一般式、 MxAly(OH)_(2x+3y-2z)(E)z・aH_(2)O (式中MはMg,Ca又はZn、EはCO_(3)又はHPO_(4)、x,y,zは正数、aは0又は正数)で示される化合物で、具体的には、Mg_(4.5)Al_(2)(OH)_(13)CO_(3)・3.5H_(2)O、Mg_(5)Al_(2)(OH)_(14)CO_(3)・4H_(2)O,Mg_(6)Al_(2)(OH)_(16)CO_(3)・4H_(2)O、Mg_(8)A_(l2)(OH)_(20)CO_(3)・5H_(2)O,Mg_(10)Al_(2)(OH)_(22)(CO_(3))_(2)・4H_(2)O、Mg_(6)Al_(2)(OH)_(16)HPO_(4)・4H_(2)O,Ca_(6)Al_(2)(OH)_(16)CO_(3)・4H_(2)O、Zn_(6)Al_(6)(OH)_(16)CO_(3)・4H_(2)O等が挙げられる。」 エ 「【0039】 かかるハイドロタルサイト類(D)の含有割合は特に限定されないが、樹脂組成物全体に対して1?15重量%(さらには1?10重量%、特には1?10重量%、殊に3?8重量%)とすることが好ましく、かかる含有割合が1重量%未満では含有効果に乏しく、逆に15重量%を越えると得られるフィルムの機械的強度やフィルムの成形性が低下する傾向にあり好ましくない。」 オ 「【0055】 【実施例】 以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。 なお、例中「%」、「部」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。【0056】 実施例1 酢酸ビニル含有量15%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)80部、ケン化度92.5モル%、平均重合度650のポリビニルアルコール(B)20部及び無水マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体〔マレイン酸含有量0.8%、酢酸ビニル含有量28%〕(C)10部をドライブレンドした後、225℃で溶融混合して本発明樹脂組成物を得た。 【0057】 得られた樹脂組成物を用いて以下の要領で単軸押出機によりフィルム(厚み25μm)を成形した。 【0058】 上記の条件で72時間のロングラン成形を行って、最終的に得られたフィルムの外観を以下の基準で目視観察して成形性の評価とした。 (成形性) ○・・・表面荒れがなく、ゲルの発生も認められない ×・・・表面荒れが発生し、ゲルも認められる 【0059】 また、上記で得られたフィルムの保温性、知透明性及び耐衝撃性を以下の要領で評価した。なお、透明性及び耐衝撃性には、厚さ65μmのフィルムを成形して評価に用いた。 (保温性) 特公平2-41410号公報に開示のデュワービンを用いた保温性能の評価方法に従い、得られたフィルムの遠赤外線の透過量を、アルミニウム板を100とし、ブランク状態を0として測定し、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA;酢酸ビニル含有量15%)フィルム(厚さ25μm)のそれとの比較を行って、以下の基準で評価した。 ○・・・透過量がEVAフィルムの2倍以上 △・・・ 〃 の1.5倍以上2倍未満 ×・・・ 〃 の1.5倍未満 【0060】 (透明性) 得られたフィルムの内部ヘイズをヘイズメータで測定して、以下の基準で評価した。 ○・・・内部ヘイズが10未満 △・・・ 〃 が10以上30未満 ×・・・ 〃 が30以上 【0061】 (耐衝撃性) 得られたフィルムを用いて、JIS K7124に準じてダートインパクト強度(ダート先端径38mm、23℃、50%RHの雰囲気下)の測定を行って、50%破壊エネルギー値を算出して、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA;酢酸ビニル含有量15%)フィルム(厚さ65μm)のそれとの比較を行って、以下の基準で評価した。 ○・・・50%破壊エネルギー値がEVAフィルムの1.5倍以上 △・・・ 〃 がEVAフィルムの1倍以上1.5倍未満 ×・・・ 〃 がEVAフィルムの1倍未満 (中略) 【0063】 実施例3 実施例1において、さらにハイドロタルサイト〔Mg_(4.5)Al_(2)(OH)_(13)CO_(3)・3.5H_(2)O、平均粒径0.4μm、協和化学工業社製「DHT-4A」〕を樹脂組成物全体に対して8%になるように添加して同様に樹脂組成物を得て、同様にフィルムを成形して同様に評価を行った。」 カ 「【0074】 実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。 【0075】 」 キ 「【0076】 【発明の効果】 本発明の樹脂組成物は、成形性に優れ、単層フィルム等に成形したときの保温性、透明性、耐衝撃性に優れ、さらには多層フィルムにしたときの保温性にも優れ、農業用フィルム、液状加工食品やスープの食品包装、壁紙、防水シート、建築・土木用シート等の用途に用いることができ、中でも農業用フィルムとして有用で、より具体的には、農業用ハウス、トンネルハウス、マルチィング、農業用カーテン等の用途に有用である。」 (2)引用例1に記載された発明 引用例1は、事項イによると、成形性に優れ、フィルム等に成形したときの保温性、透明性、耐衝撃性に優れた樹脂組成物を提供することを課題とし、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂および変性ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂組成物に係る発明を開示する文献であって、さらに事項キによると、当該樹脂組成物をフィルム等に成形したとき、農業用フィルムとして有用で、具体的には、農業用ハウス、トンネルハウス、マルチィング、農業用カーテン等の用途に有用なものである。 かかる樹脂組成物に添加する成分として、事項アの請求項6には、「ハイドロタルサイト類(D)」が記載されているところ、事項ウによれば、「ハイドロタルサイト類(D)を含有させることが保温性のさらなる向上の点で好ましい」と記載されている。そうすると、当該ハイドロタルサイト類は、フィルムの保温性を向上させる目的で添加されているのであるから、保温剤として用いられているといえる。 このことを踏まえて、引用例1の事項オの実施例3をみると、実施例1において調製される合成樹脂組成物にさらに、「ハイドロタルサイト〔Mg_(4.5)Al_(2)(OH)_(13)CO_(3)・3.5H_(2)O、平均粒径0.4μm、協和化学工業社製「DHT-4A」〕」を添加したことが記載されているので、これに着目すると、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 引用発明: 「ハイドロタルサイト〔Mg_(4.5)Al_(2)(OH)_(13)CO_(3)・3.5H_(2)O、平均粒径0.4μm、協和化学工業社製「DHT-4A」〕からなる保温剤であって、 酢酸ビニル含有量15%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)80部、ケン化度92.5モル%、平均重合度650のポリビニルアルコール(B)20部及び無水マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体〔マレイン酸含有量0.8%、酢酸ビニル含有量28%〕(C)10部をドライブレンドした後、225℃で溶融混合して得られる樹脂組成物全体に対して8重量%になるように添加して、農業用フィルム、具体的には、農業用ハウス、トンネルハウス、マルチィング、農業用カーテン等の用途に用いる合成樹脂フィルムを製造するための保温剤。」 (3)カタログの記載 協和化学工業株式会社の製品「DHT-4A」のカタログである「DHT-4A〔ハイドロタルサイト類化合物〕、協和化学工業株式会社、1996年1月発行」(以下、単に「カタログ」という。)は、下記事項スに記載されているとおり、1996年1月に発行されたものであり、本願の優先日前に頒布された刊行物であると認められる。そして、当該カタログには、次の事項ク?スが記載されている。 ク 「 」 ケ 「 」 コ 「 」 サ 「 」 シ 「 」 ス 「 」 (4)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「ハイドロタルサイト」は、本願発明の「ハイドロタルサイト類化合物」に相当する。 引用発明における「酢酸ビニル含有量15%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)80部、ケン化度92.5モル%、平均重合度650のポリビニルアルコール(B)20部及び無水マレイン酸変性エチレン-酢酸ビニル共重合体〔マレイン酸含有量0.8%、酢酸ビニル含有量28%〕(C)10部をドライブレンドした後、225℃で溶融混合して得られる樹脂組成物」は、複数種類の樹脂成分を混合して得られるものであるので、本願発明の「合成樹脂」に相当する。 また、引用発明の有効成分であるハイドロタルサイトは、「平均粒径」を有する物質であることから粒子の形状であり、この点は本願発明の「粒子」に相当する。 引用発明ではハイドロタルサイトを樹脂組成物全体に対して8重量%になるように添加していることから、これを本願発明と対比しやすいように、ハイドロタルサイトを除いた樹脂100重量部に対するハイドロタルサイトの添加量(重量部)に計算すると、約8.7重量部(=8+100/92)となる。そうすると、本願発明におけるハイドロタルサイト類化合物の添加量である、合成樹脂100重量部に対し1?20重量部という数値範囲を満たしている。 したがって、本願発明と引用発明とは次の点で一致している。 「ハイドロタルサイト類化合物の粒子からなる保温剤であって、 合成樹脂100重量部に対し1?20重量部含有させて、合成樹脂フィルムを製造するための保温剤。」 そして、両者は次の点で相違している。 相違点1: 添加されているハイドロタルサイト類化合物の粒子が、本願発明では、「下記一般式(1)で表され、かつ、 Mg_(X)Al_(2)(OH)_(2X+4)(CO_(3))・mH_(2)O (1) (上記式のXは4.0<X≦6.5の範囲にあり、mは0または正数を表す。) X線回折法による(110)面の2θより求められるモル比R_(1)と化学分析より求められるモル比R_(2)が|R_(1)-R_(2)|≦0.7を満たし」かつ「平均二次粒子径0.2?1.5μm、BET法比表面積5?30m^(2)/g」である粒子であるのに対し、 引用発明では、組成式が「Mg_(4.5)Al_(2)(OH)_(13)CO_(3)・3.5H_(2)O」であり、かつ平均粒径0.4μmで、協和化学工業社製「DHT-4A」という製品の粒子である点。 なお、本願発明におけるモル比とはMg/Al_(2)比の値である。 相違点2: 合成樹脂フィルムについて、本願発明は、「ヘイズ値6.2以下、保温指数65以上である保温性と透明性を兼備した温室または保温カバー用」のものであるのに対し、引用発明では、「農業用フィルム、具体的には、農業用ハウス、トンネルハウス、マルチィング、農業用カーテン等の用途に用いる」ものである点。 なお、本願発明において「保温指数」と「ヘイズ値」は次のとおり定義されている。 保温指数:100μm厚のフィルムを作成し、FT-IRで吸収パターンを測定し、2000cm^(‐1)から400cm^(‐1)までの吸収強度より算出した。 ヘイズ値:日本電色製ヘイズメータを用い、100μm厚のフィルムのヘイズを測定した。 (5)判断 上記相違点1について、まず、引用発明に係る「DHT-4A」という製品名のハイドロタルサイト類化合物が実際にどのような物性を有するものかという観点から検討する。 カタログに記載された製品「DHT-4A」についての記載内容をまとめると、概略次のとおりである。 ・「DHT-4A」の特徴として、表面コーティングされた超微粒子であり、粒子の平均粒径は約0.4μmであること(事項ケより)。 ・「DHT-4Aの一般的性質」として、化学式が「Mg_(1-X)Al_(X)(OH)_(2)(CO_(3))_(X/2)・mH_(2)O(0<X≦0.5)」であり、「分析一例」として、モル比(MgO/Al_(2)O_(3))は4.5であり、比表面積(BET)は10±5m^(2)/gであること(事項コより)。 ・「TECHNICAL INFORMATION OF DHT-4A」の頁で「結晶学的性質」として、「化学式:Mg_(4.3)Al_(2)(OH)_(12.6)CO_(3)・mH_(2)O」かつ「空間群:R3M a_(0)=3.048Å、Co=22.90Å」であること(事項サより)。 ここで、カタログは製品「DHT-4A」を広く紹介するために請求人自身が本願優先日前に頒布したものであるから、当該カタログに記載された内容は、本願優先日前の技術常識であるといえる。そして、引用発明に係る「ハイドロタルサイト」とカタログに掲載された「ハイドロタルサイト」とは、製品名が「DHT-4A」であり、協和化学工業株式会社製という点で共通していることからみて、引用発明に係るハイドロタルサイト「DHT-4A」は、基本的にはカタログに掲載された物性を有しているものと認められる。 なお、化学組成式については、カタログの事項クやサには「DHT-4A〔Mg_(4.3)Al_(2)(OH)_(12.6)CO_(3)・mH_(2)O〕」と記載されているのに対し、引用発明に係るハイドロタルサイト「DHT-4A」の組成式は「Mg_(4.5)Al_(2)(OH)_(13)CO_(3)・3.5H_(2)O」となっており、Al(アルミニウム)の数は2で一致しているものの、Mg(マグネシウム)の数、OH(水酸基)の数が異なっている。しかしながら、カタログの事項コに「DHT-4Aの一般的性質」として「Mg_(1-X)Al_(X)(OH)_(2)(CO_(3))_(X/2)・mH_(2)O(0<X≦0.5)」と記載されているため、同じ「DHT-4A」という製品であっても、Mgの数は、Alの数と炭酸イオンの数とのバランスにおいて本来ある程度の幅があるものと認められる。これは、同じく事項コにおいて「分析一例」という記載となっていることとも矛盾しない。そして、上記MgとOH基の数の差自体もごく小さいことからみて、当該数の違いは、例えば計算上の有効数字の取り方の違い或いは製造ロットの違いによる差などであると認められる。そして、Mgの数が4.3であっても4.5であっても、DHT-4Aの結晶学的性質は事項サに「TECHNICAL INFORMATION OF DHT-4A」として示されるとおりの性質であると推認することができる。なお、水和水の数に関してはカタログでは任意の数値mであることから、その数は製品の物性には影響しないものと認められる。 したがって、引用発明に係るハイドロタルサイト「DHT-4A」の物性をまとめると、数値上の多少の差はあり得るものの、次のとおりであると認められる。 ・化学組成式はMg_(4.5)Al_(2)(OH)_(13)CO_(3)・3.5H_(2)O ・平均粒径は0.4μm ・比表面積(BET)は10±5m^(2)/g ・結晶学的性質のうちa_(0)は3.048Å そして、引用発明に係るハイドロタルサイト「DHT-4A」と本願発明に係るハイドロタルサイト類化合物の物性値の異同について検討する。 引用発明における平均粒径とは、一般的に、二次粒子径の平均値を意味するものと認められるところ、その値は約0.4μmであり、これは本願発明の二次粒子径0.2?1.5μmの条件を満たすものである。 引用発明における比表面積(BET)は10±5m^(2)/gであるから、これを数値範囲に換算すると5?15m^(2)/gであるところ、本願発明におけるBET法比表面積は「5?30m^(2)/g」であるから、引用発明における比表面積(BET)は、本願発明の条件を満たすものである。 次に、引用発明における組成式「Mg_(4.5)Al_(2)(OH)_(13)CO_(3)・3.5H_(2)O」は、本願発明の組成式「Mg_(X)Al_(2)(OH)_(2X+4)(CO_(3))・mH_(2)O」において、X=4.5とし、m=3.5としたものであるから、本願発明の組成式の条件を満たすものである。なお、参考までにカタログに記載された組成式「Mg_(4.3)Al_(2)(OH)_(12.6)CO_(3)・mH_(2)O」についても、本願発明においてX=4.3としたものであるから、本願発明の組成式の条件を満たすものである。 そして、引用発明のハイドロタルサイト「DHT-4A」の物性において、本願発明でいうところの|R_(1)-R_(2)|の値について検討する。まず、引用発明におけるハイドロタルサイト「DHT-4A」について、本願発明でいう「化学分析より求められるモル比R_(2)」は、組成式中のマグネシウムの数4.5とアルミニウムの数2に基づいて求められるものであるから、R_(2)=Mg/Al_(2)という定義に基づいて計算すると、引用発明におけるR_(2)は4.5である。次に、本願発明に係るX線回折法による(110)面の2θにより求められるR_(1)については、本願明細書の段落【0009】の記載によると、X線回折法より求められる単位格子距離a_(0)から計算できる値である。一方、引用発明に係るハイドロタルサイトの結晶学的性質において単位格子距離であるa_(0)はカタログにあるとおり3.048Åであるから、この数値を用いて引用発明に係るハイドロタルサイトのR_(1)を計算で求めることができる。すなわち、本願明細書の段落【0009】の記載、 「3.147-a_(0)=0.33543y (2) a_(0):XRDより求められる単位格子距離 y=Al/(Al+Mg) 上記式(2)を用いることでX線回折角度より計算されたa0よりyを求める事が出来、yからモル比を求めることができる。」 の(2)式にa_(0)の値を当てはめると、 (3.147-3.048)=0.33543y となり、これをyについて求めると y=0.295143 となる。一方、 y=Al/(Al+Mg)という式を変形すると、Mg/Al=(1-y)/yであるから、R1は、 R_(1)=Mg/Al_(2)=2(1-y)/y という式で求めることができ、これに上記で求めたy=0.295143を代入すると、 R_(1)=Mg/Al_(2)=2(1-0.295143)/0.295143=約4.77 となる。 よって、引用発明のハイドロタルサイトにおける|R_(1)-R_(2)|は|4.77-4.5|=0.27であるから、これは0.7以下であることは明らかであり、本願発明の|R_(1)-R_(2)|≦0.7という条件を満たすものである。なお、仮に引用発明に係るハイドロタルサイトの化学組成式が実際にはカタログに記載された組成式「Mg_(4.3)Al_(2)(OH)_(12.6)CO_(3)・mH_(2)O」であった場合でも、R_(1)は4.3であるから、|R_(1)-R_(2)|は|4.77-4.3|=0.47となり、いずれにしても本願発明の条件を満たすものである。 以上のことからみて、引用発明のハイドロタルサイト類化合物の粒子は、本願発明における化学組成式、|R_(1)-R_(2)|、平均二次粒子径及びBET法比表面積に関するいずれの条件も満たしているのであるから、本願発明におけるハイドロタルサイト類化合物の粒子に相当するものであるといえる。 したがって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。 次に相違点2について検討する。 引用発明の保存剤を合成樹脂に添加した際に、得られるフィルムの物性、例えばヘイズ値や保温指数については、農業用のフィルムに用いるものであることを踏まえつつ、農作物の種類、使用者のニーズ及び製造コスト等を考慮して適宜決定する程度の設計事項にすぎないといえる。実際、引用例1の事項カにおいても、フィルムの「保温性」やヘイズ値に対応する「透明性」について、評価の対象としていることからみて、ヘイズ値や保温指数に着目し、その値を設定することは当業者が容易に想到する事項である。 そして、本願明細書の実施例を含むすべての記載を考慮しても、「ヘイズ値6.2以下、保温指数65以上」という数値範囲に効果の点で臨界的な意義があるとは認められないし、そもそもフィルムの物性としてヘイズ値や保温指数は、合成樹脂自体の種類や他の添加物によっても影響され得る数値であることは明らかであるところ、本願発明では合成樹脂の種類等について何ら特定されていないのであるから、当該数値範囲に格別の技術的な意義があるとも認められない。 また、引用発明は農業用フィルム、具体的には、農業用ハウス、トンネルハウス、マルチィング、農業用カーテン等の用途に用いるものであることを考慮すると、これは本願発明の温室または保温カバー用と同じことであるといえるし、仮に異なる用途であるとしても、両者は農業に用いるフィルムで保温性が要求されるという点において同種の用途であると認められるから、引用発明における合成樹脂フィルムを温室または保温カバー用という用途に用いることは、当業者が容易に想到する事項である。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)請求人の主張について 平成28年7月7日提出の審判請求書において、請求人は概略以下の主張をしている。 (主張) 引用例1にはハイドロタルサイト類化合物を添加することが記載され、実施例3に「平均粒径0.4μm」のものが添加されているが、その平均粒径とフィルムの透明性の関係に言及する記載は全く存在しない。 本願発明は、用途限定した特定の用途のために、ハイドロタルサイト類化合物を選択した構成が規定されている。本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明には用途限定の記載がない点、およびその用途限定が「下記一般式(1)で表され、 Mg_(X)Al_(2)(OH)_(2X+4)(CO_(3))・mH_(2)O (1) (上記式のXは4.0<X≦6.5の範囲にあり、mは0または正数を表す。) X線回折法による(110)面の2θより求められるモル比R_(1)と化学分析より求められるモル比R_(2)が|R_(1)-R_(2)|≦0.7を満たすハイドロタルサイト類化合物の、平均二次粒子径0.2?1.5μm、BET法比表面積5?30m^(2)/gである粒子」を特定するための事項という意味を有する点で、相違している。よって、拒絶査定の理由に示された理由は妥当ではない。 (主張についての検討) 請求人自身の製品に関するカタログの記載に基づくと、本願発明に係るハイドロタルサイト類化合物の粒子自体は、引用例1に記載された引用発明に係るハイドロタルサイト類化合物の粒子と同じものであると認められる点は、先に説示したとおりであるし、そのハイドロタルサイト類化合物の添加量についても、引用発明のそれは本願発明に包含されている。かかる認定の下、引用例1には、本願発明と同じ技術分野である農業用フィルムに使用すべく、実施例における評価の項目として「保温性」や「透明性」を検証しているのであるから、それらに一定の数値限定を付して所望の農業用フィルムの用途に用いる程度のことは、当業者が容易に想到する事項である。 したがって、請求人の上記主張については理由がない。 また、平成29年7月13日付けの当審拒絶理由通知において、本願発明の進歩性に関する原査定の理由を覆すための一つの手段として、請求人自身が本願優先日前から販売していたことが明らかであって、引用例1等にも記載されている、合成ハイドロタルサイト「DHT-4A」(協和化学工業)について、|R_(1)-R_(2)|の値を具体的に提示するよう求めた(自社で販売しているものであるため、本願明細書の記載に基づけば通常、測定が容易であると考えられたため。)。 これに対して、請求人は、|R_(1)-R_(2)|の値を提示せず、引用発明に係るハイドロタルサイト「DHT-4A」が、本願発明の|R_(1)-R_(2)|≦0.7を満たすものとの判断について反論をしていない。 そして、請求人は、平成29年8月25日提出の意見書中、委任省令要件についての意見の部分において、本願明細書の段落【0010】に記載されるとおり0.05≦|R_(1)-R_(2)|≦0.7を満たすことに発明の本質部分があると主張しつつ、以下のとおり述べている。 「出願発明と引用例に記載された発明との間に技術思想の本質部分において相違点があるのであり、発明は技術的思想の創作であるから,創作の動機付けの面から進歩性否定の論理付けは可能ではなく、その引用例の中にある合成ハイドロタルサイトについて「|R1-R2|」を求めることは妥当なものとは言えないと思慮する。」 かかる主張について検討する。合成ハイドロタルサイト「DHT-4A」(協和化学工業)の|R_(1)-R_(2)|の値は結局のところ請求人により明らかにされなかったため、引用発明におけるハイドロタルサイト「DHT-4A」が、本願発明に係るハイドロタルサイト類化合物と同じものであるという認定に変わりはない。そして、引用例1には、ハイドロタルサイト「DHT-4A」を添加した樹脂組成物から調製したフィルムについて、その保温性や透明性といった特性を評価しているのであるから、かかる記載に基づいて、本願発明が容易に発明できるものであるという判断は依然として覆らない。したがって、上記主張についても理由がない。 (7)小括 上記したとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 2 特許法第36条第4項第1号(委任省令要件)について (1)委任省令要件について 特許法第36条第4項第1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)では、「特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定されているから、本願明細書の発明の詳細な説明は、出願時の技術水準に照らして、本願発明がどのような技術上の意義を有するかを理解できるように記載することが必要である。 ここで、発明を特定するための事項に数式を含む本願発明にあっては、当業者が本願明細書の記載及び出願時の技術常識に基づいて、発明の課題が解決されることと当該数式との実質的な関係を理解することができ、発明の課題の解決手段を理解できることが必要であるといえ、それが理解できない場合には、発明の技術上の意義が不明であるといえる。 そこで、本願発明について、当業者が本願明細書の記載及び出願時の技術常識に基づいて、発明の課題が解決されることと当該数式との実質的な関係を理解することができるか否かを検討する。 (2)本願明細書の記載 本願明細書には次のとおり記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、フィルムの保温性と透明性を利用した温室および保温カバーに関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明の目的は、透明性と保温性を兼備するフィルムを温室に設けることにより、温室内における光の利用性および保温性を兼備した温室を提供する。さらに、透明性と保温性を兼備するフィルムをトンネル状に設立した支柱群の外側を被覆することにより、トンネル内において光の利用性および保温性を兼備した保温カバーを提供する。 【課題を解決するための手段】 【0005】 合成樹脂100重量部に対し、下記一般式(1)で表され、 Mg_(X)Al_(2)(OH)_(2X+4)(CO_(3))・mH_(2)O (1) (上記式のXは4.0<X≦6.5の範囲にあり、mは0または正数を表す。) X線回折法による(110)面の2θより求められるモル比R_(1)と化学分析より求められるモル比R_(2)が|R_(1)-R_(2)|≦0.7を満たすハイドロタルサイト類化合物を1?20重量部含有する透明なフィルムを備えた温室または保温カバー。 但しモル比とはMg/Al_(2)比の値である。 【発明の効果】 【0006】 本発明によれば、保温性と透明性を兼備した温室または保温カバーが提供される。例えば動植物等の生育に使用する場合には、生育に必要な温度と光量を確保することに寄与する。」 「【0008】 本発明において使用される保温剤は、下記式(1)であらわされ、 Mg_(X)Al_(2)(OH)_(2X+4)(CO_(3))・mH_(2)O (1) (上記式のXは4.0<X≦6.5の範囲にあり、mは0または正数を表す。) Xは4.0<X≦6.5の範囲、好ましくは4.3≦X≦6.3、より好ましくは4.5≦X≦6.0の範囲にある。mは0または正数を表す。mは好ましくは0?5、より好ましくは0?4である。 【0009】 ハイドロタルサイト類化合物はブルーサイトの8面体構造の一部がAlの様な3価の金属イオンの組み合わせにより構成されている。このX線回折ピークパターンの(110)面より求められる単位格子a0は8面体構造の金属元素半径により変化し、このa_(0)の距離を求めることでハイドロタルサイトのモル比を計算することが出来る。このMg-Alで構成されるハイドロタルサイトの場合、次式(2)であらわす事ができる。 3.147-a_(0)=0.33543y (2) a_(0):XRDより求められる単位格子距離 y=Al/(Al+Mg) 上記式(2)を用いることでX線回折角度より計算されたa_(0)よりyを求める事が出来、yからモル比を求めることができる。 【0010】 本発明者は、上記式(1)で表されるハイドロタルサイト類化合物でX線回折法による(110)面の2θより求めるモル比R_(1)と化学分析より求められるモル比R_(2)が0.05≦|R_(1)-R_(2)|≦0.7を満たすことが、合成樹脂に配合し、フィルムとした時にフィルムの保温性及び透明性を高めることを見出した。すなわち、モル比の差が0.05≦|R_(1)-R_(2)|≦0.7、好ましくは0.05≦|R_(1)-R_(2)|≦0.5、さらに好ましくは0.05≦|R_(1)-R_(2)|≦0.4であり、0.7より高い場合は、所望の透明性を得られない。」 「【0030】 (合成例1) 塩化マグネシウム1.5mol/L水溶液240mLと液体塩化アルミニウム1mol/L水溶液120mLをガラスビーカーに準備し、それらが同時になくなるように、また水酸化ナトリウム8mol/L水溶液120mLと炭酸ナトリウム1mol/L水溶液60mLを混合した混合溶液を、あらかじめ少量の水を張っている1L容積の反応槽の中に撹拌下pH9.5になるように同時注加して反応物を得た。得られた反応物700mLを130℃で6時間水熱処理した。冷却後全量取り出し80℃に加熱し予め用意していたステアリン酸ナトリウム1.55gの80℃水溶液を撹拌下に徐々に加え30分間維持した。その後ヌッチェにより固液分離しイオン交換水800mL で水洗し得られたケーキを105℃で18時間乾燥した。得られた乾燥物をハンマーミルで粉砕し150ミクロンのフィルターで篩過した。得られたハイドロタルサイト類化合物の化学式はMg_(5.9)Al_(2)(CO_(3))(OH)_(15.9)・4.0H_(2)Oであった。 【0031】 このハイドロタルサイト類化合物の平均二次粒子径は0.26μmであり、BET法比表面積は17m^(2)/gであった。さらに、この物質のX線回折法による(110)面の2θより求めるモル比は6.03であり、化学分析によるモル比は5.93であったことから、これらの差は0.10であった。 【0032】 ここで得られたハイドロタルサイト類化合物粒子4gと住友化学製LDPE36gを、ブラベンダー社製プラストミルを用いて130℃で混練りした後、油圧式圧縮成型機を用い160℃で製膜した。その結果、得られたフィルムの保温指数は69.33及びヘイズ値は5.7であった。 【実施例1】 【0033】 温室のフレームとして、直径20mmのスチール製のパイプを、幅700mm、奥行400mmおよび高さ1200mmの直方体状に組み、この天井面および側面を合成例1で得られたフィルムによって覆い、当該フィルムの700mm×1200mmの一側面の鉛直方向に全長1200mmの開閉部を設け、温室を作製した。このようにすることで、温室内に収容される植物等の手入れを容易にすることができる。さらに直方体状の枠内部には地上から30mm、400mm、800mmの高さに水平にスチール製の網棚を設けた。 【0034】 (比較合成例1) 塩化マグネシウム1.5mol/L水溶液154mLと液体塩化アルミニウム1mol/L水溶液120mLをガラスビーカーに準備し、それらが同時になくなるように、また水酸化ナトリウム8mol/L水溶液88mL、炭酸ナトリウム1mol/L水溶液60mLを混合した混合溶液を、あらかじめ少量の水を張っている1L容積の反応槽の中に撹拌下pH9.5になるように同時注加して反応物を得た。得られた反応物700mLを170℃で6時間水熱処理した。冷却後全量取り出し80℃に加熱し予め用意していたステアリン酸ナトリウム0.55gの80℃水溶液を撹拌下に徐々に加え30分間維持した。その後ヌッチェにより固液分離しイオン交換水800mLで水洗し得られたケーキを105℃で18時間乾燥した。得られた乾燥物をハンマーミルで粉砕し150ミクロンのフィルターで篩過した。得られたハイドロタルサイト類化合物の化学式はMg_(3.9)Al_(2)(CO_(3))(OH)_(11.7)・2.9H_(2)Oであった。 【0035】 このハイドロタルサイト類化合物の平均二次粒径は0.85μmであり、BET法比表面積は11m^(2)/gであった。さらに、この物質のX線回折法による(110)面の2θより求めるモル比は4.74であり、化学分析によるモル比は3.85であったことから、これらの差は0.89であった。 【0036】 ここで得られたハイドロタルサイト類化合物粒子4gと住友化学製LDPE36gをブラベンダー社製プラストミルによって130℃で混練りした後、油圧式圧縮成型機を用い160℃でフィルム化した。その結果、保温指数は63.82、及びヘイズ値は10.1であった。 【0037】 (比較例1) 合成例1のフィルムを比較合成例1のフィルムに置き換え、それ以外は実施例1と同じ温室を作製した。 【0038】 実施例1で作製した温室と比較例1で作製した温室を、2014年5月7日に香川県坂出市林田町協和化学工業株式会社敷地内の屋外環境に設置し、それぞれの温室内の気温を2014年5月8日0時から24時まで1時間間隔で測定した。 【0039】 その結果、実施例1で作製した温室内の気温は、比較例1で作製した温室内の気温と比べて常に同等かそれ以上であった(表1)。 【0040】 【表1】 【0041】 (合成例2) 塩化マグネシウム1.5mol/L水溶液192mLと液体塩化アルミニウム1mol/L水溶液120mLをガラスビーカーに準備し、それらが同時になくなるように、また水酸化ナトリウム8mol/L水溶液85mLと炭酸ナトリウム1mol/L水溶液60mLを混合した混合溶液を、あらかじめ少量の水を張っている1L容積の反応槽の中に撹拌下pH9.5になるように同時注加して反応物を得た。得られた反応物700mLを130℃で6時間水熱処理した。冷却後全量取り出し80℃に加熱し予め用意していたステアリン酸ナトリウム1.36gの80℃水溶液を撹拌下に徐々に加え30分間維持した。その後ヌッチェにより固液分離しイオン交換水800mLで水洗し得られたケーキを105℃で18時間乾燥した。得られた乾燥物をハンマーミルで粉砕し150ミクロンのフィルターで篩過した。得られたハイドロタルサイト類化合物の化学式はMg_(4.8)Al_(2)(CO_(3))(OH)_(13.6)・3.4H_(2)Oであった。 【0042】 このハイドロタルサイト類化合物の平均二次粒子径は0.28μmであり、BET法比表面積は21m^(2)/gであった。 さらに、この物質のX線回折法による(110)面の2θより求めるモル比は5.10であり、化学分析によるモル比は4.79であったことから、これらの差は0.31であった。 【0043】 ここで得られたハイドロタルサイト類化合物粒子4gと住友化学製LDPE36gをブラベンダー社製プラストミルによって130℃で混練りした後、油圧式圧縮成型機を用い160℃でフィルム化した。その結果、保温指数は65.72、及びヘイズ値は6.2であった。 【実施例2】 【0044】 樹脂で被覆された全長1000mmのスチール線を、両先端部間の幅が300mmかつ湾曲部が円弧になるようにU字に湾曲させた支柱を、並行かつトンネル状に3本35cm間隔で配置し、これを合成例2で得られたフィルムで覆って保温カバーを作製した。 【0045】 (比較合成例2) 塩化マグネシウム1.5mol/L水溶液160mLと液体塩化アルミニウム1mol/L水溶液120mLをガラスビーカーに準備し、それらが同時になくなるように、また水酸化ナトリウム8mol/L水溶液90mL、炭酸ナトリウム1mol/L水溶液60mLを混合した混合溶液を、あらかじめ少量の水を張っている1L容積の反応槽の中に撹拌下pH9.5になるように同時注加して反応物を得た。得られた反応物700mLを170℃で13時間水熱処理した。冷却後全量取り出し80℃に加熱し予め用意していたステアリン酸ナトリウム0.55gの80℃水溶液を撹拌下に徐々に加え30分間維持した。その後ヌッチェにより固液分離しイオン交換水800mL で水洗し得られたケーキを105℃で18時間乾燥した。得られた乾燥物をハンマーミルで粉砕し150ミクロンのフィルターで篩過した。得られたハイドロタルサイト類化合物の化学式はMg_(4.0)Al_(2)(CO_(3))(OH)_(12.1)・3.0H_(2)Oであった。 【0046】 このハイドロタルサイト類化合物の平均二次粒径は0.56μmであり、BET法比表面積は8.2m^(2)/gであった。さらに、この物質のX線回折法による(110)面の2θより求めるモル比は4.85であり、化学分析によるモル比は4.04であったことから、これらの差は0.81であった。 【0047】 ここで得られたハイドロタルサイト類化合物粒子4gと住友化学製LDPE36gをブラベンダー社製プラストミルによって130℃で混練りした後、油圧式圧縮成型機を用い160℃でフィルム化した。その結果、保温指数は64.37、及びヘイズ値は11.0であった。 【0048】 (比較例2) 合成例2のフィルムを比較合成例2のフィルムに置き換え、それ以外は実施例2と同じ保温カバーを作製した。 【0049】 実施例2作製した保温カバーと比較例2で作製した保温カバーを、土を入れた個別のプランターの土表面を覆うように設置し、該プランターを2014年5月3日に香川県坂出市林田町協和化学工業株式会社敷地内の屋外環境に設置し、それぞれ保温カバー内の気温を2014年5月4日0時から24時まで1時間間隔で測定した。 【0050】 その結果、実施例2で作製した保温カバー内の気温は、比較例2で作製した保温カバー内の気温と比べて常に同等かそれ以上であった(表2)。 【0051】 【表2】 【0052】 以上本発明の代表的と思われる実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例の構造のみに限定されるものではない。例えば、温室の外形状やサイズ、温室内の棚数、保温カバーに用いられるフレームの長さや数は、任意に変更して実施することが可能である。」 (3)判断 まず、特許法施行規則第24条の2に規定されるとおり、発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の一つとして、発明が解決しようとする課題については、本願明細書の段落【0004】等の記載から、 「透明性と保温性を兼備するフィルムを温室に設けることにより、温室内における光の利用性および保温性を兼備した温室を提供する。」 ことであると認められる。 次に、その解決手段としては、本願発明の発明特定事項及び本願明細書の段落【0005】の記載等に基づくと、式Mg_(X)Al_(2)(OH)_(2X+4)(CO_(3))・mH_(2)Oで表され(上記式のXは4.0<X≦6.5の範囲にあり、mは0または正数を表す。)、X線回折法による(110)面の2θより求められるモル比R_(1)と化学分析より求められるモル比R_(2)が|R_(1)-R_(2)|≦0.7を満たし、平均二次粒子径0.2?1.5μmで、かつBET法比表面積5?30m^(2)/gであるハイドロタルサイト類化合物の粒子からなる保温剤であって(但しモル比とはMg/Al_(2)比の値)、これを合成樹脂100重量部に対して1?20重量部含有させて、ヘイズ値6.2以下、保温指数65以上である保温性と透明性を兼備した温室または保温カバーとなるような保温剤、を提供することによって上記課題を解決することができるものとされている。 ここで、ハイドロタルサイト類化合物は、引用例1にも記載があるとおり、従来からフィルムの保温性を向上させる目的で利用されてきたものであるから、ハイドロタルサイト類化合物が保温剤としての用途に用いることができる点は技術常識であるといえる。そのような技術常識の下、ハイドロタルサイト類化合物の粒子に関する各種のパラメータの数値範囲が特定された本願発明の技術的意義を検討すると、平均二次粒子径や比表面積のパラメータについては、樹脂組成物中におけるハイドロタルサイト類化合物の粒子の分散性やフィルムの透明性に影響するものであることは技術常識から類推することが可能である。 しかし、|R_(1)-R_(2)|というパラメータについては、以下に示す理由によって、その数値範囲を0.7以下とすることが、課題解決手段の上でどのような意義を有するかについて不明である。 すなわち、本願明細書の段落【0009】や【0010】を参照しても、|R_(1)-R_(2)|というパラメータの算出方法が記載されるとともに、0.7以下とすることによりフィルムの保温性及び透明性を高めることを見出したという定性的な内容が記載されているにとどまっており、かかるパラメータが具体的にどのような物理的・化学的理由によって、保温性や透明性に影響するのかといった点については説明されていない。また、本願明細書の段落【0030】?【0051】には、具体的に調製されたハイドロタルサイト類化合物の|R_(1)-R_(2)|の値として、合成例1では0.01、合成例2では0.31、比較合成例1では0.89、比較合成例2では0.81のものが得られた旨記載されているが、当該比較合成例1及び2は、いずれも本願発明に係る一般式(1)におけるXの値も満たしていないものである。そうすると、ハイドロタルサイト類化合物が一般式(1)の条件を満たすことに加えて、|R_(1)-R_(2)|≦0.7という条件をも満たすことが、フィルムの透明性や保温性に関する発明の課題を解決するために必要であることが実験的根拠に基づいて実証されているとも認められない。そして、X線回折法による(110)面の2θより求められるモル比R_(2)の値を用いた|R_(1)-R_(2)|というパラメータについて、フィルムの保温性や透明性に影響を及ぼすといった技術常識が本願出願時に存在していたとも認められない。 以上より、ハイドロタルサイト類化合物が|R_(1)-R_(2)|≦0.7という条件を満たすことが、発明の課題を解決することに貢献しているものとは認めることができないため、本願明細書の記載及び出願時の技術常識に基づいて、発明の課題が解決されることと|R_(1)-R_(2)|≦0.7という条件との実質的な関係を理解することができない。 したがって、発明の課題の解決手段を理解できるものとはいえないから、本願の発明の詳細な説明については、発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとは認められない。 (4)請求人の主張について 請求人は、平成29年8月25日提出の意見書において、 「本願明細書【0010】に『本発明者は、上記式(1)で表されるハイドロタルサイト類化合物でX線回折法による(110)面の2θより求めるモル比R_(1)と化学分析より求められるモル比R_(2)が0.05≦|R_(1)-R_(2)|≦0.7を満たすことが、合成樹脂に配合し、フィルムとした時にフィルムの保温性及び透明性を高めることを見出した。』とあるように、本願発明は、式(1)で表され、かつ、X線回折法による(110)面の2θより求めるモル比R_(1)と化学分析より求められるモル比R_(2)が0.05≦|R_(1)-R_(2)|≦0.7を満たすハイドロタルサイト類化合物について、フィルムの保温性及び透明性を高める機能を発見したことに、発明の本質部分があることが示されている。」 と主張している。 しかしながら、本願明細書には、ハイドロタルサイト類化合物が0.05≦|R_(1)-R_(2)|≦0.7という条件を満たせば、フィルムの保温性及び透明性を高めることができるという点が発明の本質であると理解できるような、物理的・化学的な説明もないし、具体的な実験結果に基づく裏付けもない。 そして、当審拒絶理由通知において、上記の発明の本質を証明するために、例えば本願発明の一般式(1)は満たすが、|R_(1)-R_(2)|≦0.7という条件は満たさないハイドロタルサイト類化合物についての実験データ(比較例)などを提示するよう求めたところ、そのような実験データは示されなかった。 したがって、依然として、|R_(1)-R_(2)|≦0.7を満たすことが、フィルムの保温性及び透明性を高めるための発明の本質的な部分であるとは認められない。 (5)小括 したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、発明が解決しようとする課題や、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」が理解できるように記載されていないから、特許法36条4項1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則24条の2)で定めるところにより記載されたものとはいえない。 第6 むすび 上記第5において検討したとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 また、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものである。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこれらの理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-10-23 |
結審通知日 | 2017-10-24 |
審決日 | 2017-11-09 |
出願番号 | 特願2014-222793(P2014-222793) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(A01G)
P 1 8・ 121- WZ (A01G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杉江 渉、新留 豊 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
佐久 敬 井上 猛 |
発明の名称 | 保温性と透明性を有する温室および保温カバー |
代理人 | 須藤 晃伸 |
代理人 | 須藤 阿佐子 |