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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08J |
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管理番号 | 1336140 |
異議申立番号 | 異議2016-701029 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-10-31 |
確定日 | 2017-11-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5916308号発明「樹脂ペレットの製造方法及び自動車内装部品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5916308号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、5について訂正することを認める。 特許第5916308号の請求項1ないし2、5に係る特許を取り消す。 特許第5916308号の請求項3及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯等 特許第5916308号(設定登録時の請求項の数は5。以下、「本件特許」という。)は、平成23年7月20日を出願日とする特願2011-158580号に係るものであって、平成28年4月15日に設定登録された。 特許異議申立人 東レ株式会社(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成28年10月31日(受理日:同年11月2日)、本件特許の請求項1ないし5に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。 当審において、平成29年1月23日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年3月27日付け(受理日:同月28日)で、訂正請求書(この訂正請求は、後の訂正請求がなされたことによって取り下げられたものとみなされる。(特許法第120条の5第7項))及び意見書を提出したので、同年3月31日付けで異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、同年4月26日付け(受理日:同月27日)で異議申立人から意見書が提出され、平成29年5月22日付けで取消理由<決定の予告>を通知したところ、特許権者は、同年7月25日付け(受理日:同月26日)で、訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)及び意見書を提出したので、同年7月28日付けで異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、同年9月4日付け(受理日:同月5日)で異議申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1ないし7である。なお、下線については訂正箇所に合議体が付したものである。 訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下のポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、」 とあるのを 「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下であり、末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、」 に訂正する。請求項1を直接引用する請求項2も同様に訂正する。 訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、」 とあるのを 「ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、」 に訂正する。また、請求項1を直接に引用する請求項2も同様に訂正する。 訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項3を削除する。 訂正事項4 訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除する。 訂正事項5 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に 「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下のポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、」 とあるのを 「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下であり、末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、」 に訂正する。 訂正事項6 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に 「原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、」 とあるのを 「ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、」 に訂正する。 訂正事項7 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に 「前記樹脂ペレットは、下記の方法で測定したアセトアルデヒド濃度、ホルムアルデヒド濃度が、それぞれ0.20μg以下である自動車内装部品の製造方法。」 とあるのを 「前記樹脂ペレットは、下記の方法で測定したアセトアルデヒド濃度、ホルムアルデヒド濃度が、それぞれ0.20μg以下である自動車内装部品の製造方法。 (測定方法) 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂又はそれを含む組成物から構成される100mm×40mm×2mmの試験片2枚を、テドラーバッグ内に入れ、65℃の条件で2時間処理したときに、発生するアセトアルデヒドガス濃度、ホルムアルデヒドガス濃度を測定する。」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項 (1) 訂正事項1について ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1の原料ペレットの原料である「ポリブチレンテレフタレート樹脂」として、「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下」であったものを、「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下であり、末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下である」ものに限定するものであるから、当該訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。そして、当該訂正事項1は、本件明細書の段落【0026】、訂正前の請求項1、3、4の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (2) 訂正事項2について ア 訂正事項2は、訂正前の請求項1の「第一ペレット化工程」において、「ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて」製造することを限定するものであるから、当該訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。そして、第一ペレット化工程において、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて製造することは、訂正前の請求項4に記載されていた事項であるし、また、第一ペレット化工程に関する本件明細書の段落【0030】の記載から、第一ペレット化工程として、「原料ペレットを製造する方法は、特に限定されない」とされ、並列的に「重合工程を経てポリブチレンテレフタレート樹脂の吐出ペレットとして得られる場合」、「重合工程でポリブチレンテレフタレート樹脂以外の成分を添加し組成物ペレットとして得られる場合」、「従来公知の1軸又は2軸押出機を使用して樹脂組成物ペレットを得る場合」が記載されていて、それらのいずれかの場合を選択することによる効果については一切記載されていないことから、訂正事項2は、「ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて」行うことによる新たな効果を主張する等の新たな技術事項が追加されない限りにおいて新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (3) 訂正事項3について ア 訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項3を削除するというものであるから、当該訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。そして、当該訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (4) 訂正事項4について ア 訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除するというものであるから、当該訂正事項4は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。そして、当該訂正事項4は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (5) 訂正事項5について ア 訂正事項5は、訂正前の請求項5の原料ペレットの原料である「ポリブチレンテレフタレート樹脂」として、「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下」であったものを、「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下であり、末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下である」ことに限定するものであるから、当該訂正事項5は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。そして、当該訂正事項5は、本件明細書の段落【0026】、訂正前の請求項1、3、4の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (6) 訂正事項6について ア 訂正事項6は、訂正前の請求項5の「第一ペレット化工程」おいて、「ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて」製造することを限定するものであるから、当該訂正事項6は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるといえる。そして、当該訂正事項6は、訂正事項2で検討した同様の理由により、この点を限定することによって新たな技術事項が追加されない限りにおいて新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (7) 訂正事項7について ア 訂正事項7は、訂正前の請求項5において、「アセトアルデビド濃度、ホルムアルデビド濃度」の測定方法として「下記の方法で測定した」ことを特定しているが、当該記載以降の記載には、「下記の方法」の記載がないため、明瞭でなかったものを、測定方法を追加することで、下記の方法を明らかにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。そして、当該訂正事項7は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (8) 一群の請求項について 訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項1?4について、請求項2?4はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。そうすると、訂正前の請求項1ないし4は、一群の請求項であるから、訂正事項1ないし4は、訂正前の請求項1ないし4という一群の請求項ごとに請求されたものといえ、訂正事項5ないし6は、訂正前の独立した請求項5についての訂正であって、訂正後に新たな独立した請求項5となるものであるから、これら訂正事項1ないし6は、訂正前の請求項1ないし4及び請求項5という、一群の請求項毎になされたものであって、特許法第120条の5第4項に適合するものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?4]、5について訂正することを認める。 第3 本件発明 1 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、平成29年7月25日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。 「【請求項1】 自動車内装部品を成形するための樹脂ペレットの製造方法であって、 エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下であり、末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、 前記原料ペレットを原料として、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程とを含み、 前記樹脂ペレットは、下記の方法で測定したアセトアルデヒド濃度、ホルムアルデヒド濃度が、それぞれ0.20μg以下である樹脂ペレットの製造方法。 (測定方法) 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂又はそれを含む組成物から構成される100mm×40mm×2mmの試験片2枚を、テドラーバッグ内に入れ、65℃の条件で2時間処理したときに、発生するアセトアルデヒドガス濃度、ホルムアルデヒドガス濃度を測定する。 【請求項2】 前記樹脂ペレットは、ドイツ自動車工業会VDA277に規定のVOC測定法によるVOCが、40μgC/g以下である請求項1に記載の樹脂ペレットの製造方法。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下であり、末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、 前記原料ペレットを原料として、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程と、 前記樹脂ペレットから自動車内装部品を成形する成形工程とを含み、 前記樹脂ペレットは、下記の方法で測定したアセトアルデヒド濃度、ホルムアルデヒド濃度が、それぞれ0.20μg以下である自動車内装部品の製造方法。 (測定方法) 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂又はそれを含む組成物から構成される100mm×40mm×2mmの試験片2枚を、テドラーバッグ内に入れ、65℃の条件で2時間処理したときに、発生するアセトアルデヒドガス濃度、ホルムアルデヒドガス濃度を測定する。」 2 本件発明の解決課題や技術的意義など (1) 独立請求項に係る発明である本件発明1について、本件特許明細書には、次の記載がある。(下線は、審決で付記、以下同じ) ア「【技術分野】 【0001】 本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂から構成される樹脂ペレットの製造方法、及び当該製造方法で製造された樹脂ペレットを成形してなる自動車内装部品に関する。」 イ「【0003】 上記のポリエチレンテレフタレート樹脂は、成形時に熱分解して、アセトアルデヒドを生成する。具体的には、成形時に高温環境下に曝されたポリエチレンテレフタレート樹脂が熱分解することにより、高分子鎖中のエステル結合が開裂して、エチレングリコール等の成分が生成し、このエチレングリコール等の成分がアセトアルデヒドになる。 【0004】 アセトアルデヒドは、悪臭、異臭の原因となる物質である。このため、ポリエチレンテレフタレート樹脂の成形時における、アセトアルデヒドの発生を抑える技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。 【0005】 ところで、ポリブチレンテレフタレート樹脂では、アセトアルデヒドが成形時に生じることはほとんど無いと考えられている。ポリブチレンテレフタレート樹脂からアセトアルデヒドが生成するためには、炭素間の単結合が開裂する必要があるが、炭素間の単結合は、容易に開裂しないからである。」 ウ「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 以上の通り、ポリブチレンテレフタレート樹脂の成形時にアセトアルデヒドが生成することは無いと考えられている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート樹脂からのアセトアルデヒドの生成量よりは少ないものの、ポリブチレンテレフタレート樹脂からも、成形時にアセトアルデヒドが生成することを、本発明者らは見出した。 【0008】 また、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドは、揮発性有機化合物(VOC)の一種である。VOCは、大気汚染の主要な原因の一つであり、アセトアルデヒド等のみならず、VOC全体の樹脂成形体からの排出量を抑制する必要がある。 【0009】 本発明の目的は、ポリブチレンテレフタレート樹脂ペレットからの、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドの排出量、またVOCの排出量を抑えるための技術を提供することにある。 【0010】 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、ポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、上記原料ペレットを原料として、樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程とを含む、樹脂ペレットの製造方法を採用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。」 エ「【発明の効果】 【0014】 本発明の方法で製造された樹脂ペレットは、樹脂ペレットが排出するアセトアルデヒド、ホルムアルデヒドの量が少ない。その結果、上記樹脂ペレットを原料として用いれば、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドの排出量が少ない樹脂成形体を製造することができる。 【0015】 特に、本発明方法で製造された樹脂ペレットが排出するVOC量が少ない。その結果、本発明の樹脂ペレットを用いて製造された樹脂成形体が排出するVOCの量も少なくなる。」 オ「【0024】 なお、エチレングリコールを用いる場合には、ポリエチレンテレフタレート樹脂の場合と同様に、炭素間の単結合が開裂することなくアセトアルデヒドが生成する。ポリブチレンテレフタレート樹脂中のエチレングリコール成分が多くなるほど、ポリエチレンテレフタレート樹脂から排出されるVOCを構成する成分とポリブチレンテレフタレート樹脂から排出されるVOCを構成する成分とが、類似するといえる。一方、ポリブチレンテレフタレート樹脂中のエチレングリコール成分が少なくなるほど、ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂とで、VOCを構成する成分の共通性が低くなる。したがって、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、エチレングリコール成分が含まれない場合、エチレングリコール成分が微量しか含まれない場合には、ポリブチレンテレフタレート樹脂から排出されるVOCとポリエチレンテレフタレート樹脂から排出されるVOCとを同様に考えることはできないといえる。ここで、「エチレングリコール成分が含まれない場合、エチレングリコール成分が微量しか含まれない場合」とは、ポリブチレンテレフタレート樹脂中に、エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下の場合を指す。」 カ「【0026】 本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に制限されない。本発明において用いるポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。上記末端カルボキシル基量がかかる範囲にあるポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が湿熱環境下での加水分解による強度低下を受けにくくなる。」 キ「【0029】 [製造工程] 次いで、本発明の樹脂ペレットの製造方法について説明する。本発明の製造方法は、ポリブチレンテレフタレート樹脂又は当該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、上記原料ペレットを原料として、樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程とを備える。 【0030】 原料ペレットを製造する第一ペレット化工程は、ポリブチレンテレフタレート樹脂又は当該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、原料ペレットを製造する工程である。原料ペレットを製造する方法は、特に限定されない。例えば、重合工程を経てポリブチレンテレフタレート樹脂の吐出ペレットとして得られる場合、重合工程でポリブチレンテレフタレート樹脂以外の成分を添加し組成物ペレットとして得られる場合、もしくは、従来公知の1軸又は2軸押出機を使用して樹脂組成物ペレットを得る場合等が挙げられる。上記のようにして得られたペレットが原料ペレットである。 【0031】 第二ペレット化工程では、上記第一ペレット化工程にて得られた原料ペレットを原料として、樹脂ペレットを製造する。樹脂ペレットは、1軸又は2軸押出機を使用して製造することができる。このとき、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外の成分を添加することもできる。」 ク「【0043】 押出機によるペレット化工程において、ベントから減圧を行うことが行われている。減圧操作により揮発成分を除去しながら樹脂ペレットを作製することで、揮発成分の少ない樹脂ペレットを作製することができる。」 ケ「【実施例】 【0048】 以下、実施例及び比較例によって本発明を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。 【0049】 <材料> 実施例、及び比較例で、ポリブチレンテレフタレート樹脂材料として、以下の成分を使用した。 (原料ペレット) テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとの重縮合体、固有粘度(IV)が0.69、ウィンテックポリマー社製「ジュラネックス300FP」 【0050】 <樹脂ペレットの製造> 上記ポリブチレンテレフタレート樹脂(原料ペレット)を二軸押出機(JSW製、TEX-30)に投入した。下記の条件にて、上記原料をベントからの減圧操作を行いながら溶融混練して樹脂ペレットを製造した。 <溶融混練条件> シリンダー温度:260℃ スクリュー回転数:130rpm 押出量:12kg/hr 【0051】 上記の方法で得られた樹脂ペレットを、140℃の恒温乾燥機内で3時間保持し、ペレットを乾燥した。乾燥させたペレットを用いて、射出成形機(JSW製、J75EP)により、100mm×40mm×2mmの試験片を成形した。 <射出成形条件> シリンダー温度:250℃ 金型温度:60℃ 射出速度:16.7mm/秒 【0052】 原料ペレットを用いた成形品を比較例1とし、上記の方法にて得られた樹脂ペレットを用いた成形品を実施例1として、実施例1、比較例1のアセトアルデヒドガス濃度及びホルムアルデヒドガス濃度、VOC排出量の評価を行った。 ・・・ 【表1】 【0057】 実施例、比較例から確認できる通り、原料ペレットを原料として、樹脂ペレットを製造すれば、樹脂ペレットに含まれるアセトアルデヒド量、ホルムアルデヒド量、VOC量のいずれも低減される。」 (2) 上記摘記から、本件発明1について、概ね次のことがいえる。 ア 本件発明は、従来、ポリブチレンテレフタレート樹脂の成形時にアセトアルデヒドが生成することは無いと考えられていたが、本発明者らは、ポリエチレンテレフタレート樹脂からのアセトアルデヒドの生成量よりは少ないものの、ポリブチレンテレフタレート樹脂からも、成形時にアセトアルデヒドが生成することを見出すことでなされたものとされている。 イ そして、本件発明は、「ポリブチレンテレフタレート樹脂ペレットからの、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドの排出量、またVOCの排出量を抑えるための技術を提供すること」を課題としてなされたものであり、「ポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、上記原料ペレットを原料として、樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程とを含む、樹脂ペレットの製造方法を採用すること」で解決できるとされている。 ウ ここで、第一ペレット化工程は特に制限されないとされており、押出機を使用してペレットを得る工程以外に、重合工程を経てポリブチレンテレフタレート樹脂の吐出ペレットとして得られる場合、重合工程でポリブチレンテレフタレート樹脂以外の成分を添加し組成物ペレットとして得られる場合等が例示されている。一方、第二ペレット化工程は、1軸又は2軸押出機を使用して製造されるとされていて、押出機によるペレット化工程において、ベントから減圧を行う減圧操作により揮発成分を除去しながら樹脂ペレットを作製することで、揮発成分の少ない樹脂ペレットを作製することができるとされている。 エ 原料ペレットを製造する原料であるポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物におけるエチレングリコール由来の繰り返し単位について、「エチレングリコール成分が含まれない場合、エチレングリコール成分が微量しか含まれない場合」が、ポリブチレンテレフタレート樹脂中に、エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下の場合を指すとされているが、エチレングリコール由来単位が0モル%以上1モル%以下であることの技術的な意義については、それ以外の記載はない。 オ 原料ペレットを製造する原料であるポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物における末端カルボキシル基量は、特に制限はされないが、30meq/kg以下であると、湿熱環境下での加水分解による強度低下を受けにくくなるとされている。 カ 具体的に、原料ペレットとしてウィンテックポリマー社製「ジュラネックス300FP」を利用し、第二ペレット化工程において二軸押出機でベントから減圧操作を行いながら溶融混練して樹脂ペレットを得たものを実施例とし、原料ペレットを用いた成形品を比較例としているから、本件特許明細書において実施例とされているものは、ベントから減圧を行う第一ペレット化工程を有していないため、本件発明1ないし5の実施例とはいえず、本件発明1ないし5についての具体的な効果は、本件特許明細書において確認されていない。 第4 取消理由の概要 平成29年5月22日付けで通知した取消理由<決定の予告>は、以下の理由を含む。 「【理由2】 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 1 理由1及び理由2(特許法第29条第1項第3号、同第29条第2項) (1)刊行物 刊行物1: 特開2010-215827号公報(異議申立書の証拠方法である甲第1号証。以下、単に「甲1」という。) 刊行物2: 特開平8-197609号公報(異議申立書の証拠方法である甲第5号証。以下、単に「甲5」という。) ・・・・ ・・・本件特許の請求項1ないし3及び5に係る特許は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」 第5 合議体の判断 当合議体は、以下述べるように、上記取消理由2には、理由があると判断する。 1 刊行物等 甲5 :特開平8-197609号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第5号証。) 甲1 :特開2010-215827号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第1号証。) (周知技術を示す文献として) 甲第2号証 :2016年10月12日付け実験証明書(特許異議申立書の証拠方法である甲第2号証。以下、単に「甲2」という。甲1に記載の東レ(株)製”トレコン”1100M及び比較例1に記載の樹脂組成物について、本件特許発明に記載の各項目の数値を測定したもの) 甲第3号証 :特開2010-17894号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第3号証。以下、単に「甲3」という。) 甲第4号証 :特開2000-309019号公報(特許異議申立書の証拠方法である甲第4号証。以下、単に「甲4」という。) 参考資料1 :特開平10-168295号公報(異議申立人の平成29年4月26日付け意見書に添付された参考資料1。以下、単に「参考資料1」という。) 参考資料2 :特開2005-194499号公報(異議申立人の平成29年4月26日付け意見書に添付された参考資料2。以下、単に「参考資料2」という。) 参考資料3 :特開平10-310713号公報(異議申立人の平成29年4月26日付け意見書に添付された参考資料3。以下、単に「参考資料3」という。) 参考資料4 :特開2006-1969号公報(異議申立人の平成29年9月4日付け意見書に添付された参考資料4。以下、単に「参考資料4」という。) 参考資料5 :特開2010-106078号公報(異議申立人の平成29年9月4日付け意見書に添付された参考資料5。以下、単に「参考資料5」という。) 参考文献7 :2017年8月30日付け実験証明書(異議申立人の平成29年9月4日付け意見書に添付された参考資料7。参考資料5において利用されているノバデュラン(登録商標)5020及び5008に含まれるエチレングリコール由来の繰り返し単位が、それぞれ、0.21モル%、0.18モル%であること、末端カルボキシル基量がそれぞれ、19meg/kg、14meg/kgで有ることを示す。以下、単に「参考資料7」という。) 参考資料8 :特開2010-24362号公報(異議申立人の平成29年9月4日付け意見書に添付された参考資料8。以下、単に「参考資料8」という。) 2 甲5の記載事項 本件の出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である甲5には、以下の事項が記載されている。 (1) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 原料供給ホッパにベント部を併設してフィードバレル部に連結した押出機。 【請求項2】 ベント部に減圧吸引部を直結した請求項1記載の押出機。 【請求項3】 熱可塑性樹脂を請求項1記載の押出機を用いて製造することを特徴とする熱可塑性樹脂の製造方法。 【請求項4】 ベント部の圧力を0を超え1000mmH_(2)O以下の減圧にする請求項3記載の熱可塑性樹脂の製造方法。 【請求項5】 熱可塑性樹脂の製造が重合反応である請求項3記載の熱可塑性樹脂の製造方法。 【請求項6】 熱可塑性樹脂がポリアミドである請求項5記載の熱可塑性樹脂の製造方法。 【請求項7】 ポリアミドがテレフタル酸由来のアミド構造を有するものである請求項6記載の熱可塑性樹脂の製造方法。 【請求項8】 熱可塑性樹脂がオキシメチレン構造を有するポリマである請求項3記載の熱可塑性樹脂の製造方法。 【請求項9】 熱可塑性樹脂と配合剤を請求項1記載の押出機を用いて溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 【請求項10】 熱可塑性樹脂組成物が熱可塑性樹脂および無機充填剤を含有するものである請求項9記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。」 (2) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物を製造するための押出機、並びに熱可塑性樹脂の製造方法および熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来から、押出機を用いて熱可塑性樹脂を重合する方法が提案されている。例えば、融点の高いポリアミドを製造するに当たり、ポリアミドの低重合体を押出機を用いて高重合度化する方法が提案されている(特開平4-31070号公報) 。またオキシメチレン構造を有する重合体を得るに当たり、粗オキシメチレン共重合体の不安定末端部分を押出機で加熱溶融し分解除去することも提案されている(特開平5-1125号公報) 。また、熱可塑性樹脂組成物を製造するにあたり、押出機を用いて混練する方法は数多くの文献で知られている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述した従来の押出機を用いた熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物の製造においては、いずれも原料や材料の持ち込み水分、重縮合を伴う場合には縮合水、またその他の揮発性成分が、溶融混練によって揮発し、その結果ベントアップが度々発生し、生産性が低下するという問題があった。」 (3) 「【0006】図1は、本発明の押出機の一例を示す概念図である。図1において、押出機10は、基本構造が複数本の筒型のバレル11が連結されて構成されたシリンダに、スクリュー7を貫通するように配置して構成されている。スクリュー7は一端に連結したモーター12により回転駆動されることにより、内容物を図1の右から左方向へ混練しながら押出すようになっている。」 (4) 「【0012】また、ベント部を減圧にする装置については、通常の減圧装置、真空装置などいずれであってもよく特に制限はない。例えば、排気ブロワ、水流式アスピレーターなどを好ましく使用することができる。さらに、発生ガス回収用のトラップを設けるようにしてもよい。また、熱可塑性樹脂や添加剤から発生する揮発性成分や抱き込んだ気泡による物性低下や外観不良を防止する目的から、図1に示すようにフィードバレル部8以外にもベント口9を設けることが望ましい。脱気する場合は、ベント口9の上流部を、公知の短フライトピッチや浅溝のスクリュウ、更に逆フライトやニーディングディスクを使用してシールすることが望ましい。 【0013】次に、上述した押出機を用いて、熱可塑性樹脂を製造する方法について説明する。本発明において熱可塑性樹脂とは、加熱によって流動性を生じる性能を有し、それを利用して成形加工できる樹脂であり、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマ、ポリエーテルスルフォン、SBS、SEBS、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体、などを挙げることができる。」 (5) 「【0023】 【実施例】以下に、本発明を具体的な実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の諸特性は次の方法で測定した。 1)相対粘度 JIS K6810に従って、サンプル1gを98%濃硫酸100mlに溶解し、25℃の相対粘度を測定した。 【0024】〈実施例1〉水分率2.0wt%、相対粘度2.60の66ナイロン70重量部に対し、長さ3mm、直径13μmのガラス繊維チョップドストランド30重量部をドライブレンドし、図2に示すベント部を有する供給ホッパーを設けた44mmφ二軸押出機(同方向回転、L/D=30、ベント口1箇所) を用いて、供給ホッパーのベント部=-300mmH_(2)O、ベント口=-720mmHg、シリンダ設定温度280℃で溶融混練しペレット化した。原料の持込み水分、縮合水の除去は良好で原料の供給口詰まりやベントアップは発生しなかった。 【0025】〈比較例1〉ベント部を有する供給ホッパーを使用しなかったこと以外は実施例1と同様に運転を実施した。原料の持込み水分、縮合水の影響で原料の供給口詰まりが頻繁に発生し、しばしばベントアップも発生した。 【0026】〈実施例2〉水分率0.5wt%のポリブチレンテレフタレート80重量部に対し、長さ3mm、直径13μmのガラス繊維チョップドストランド20重量部をドライブレンドし、図3に示すベント部を有する供給ホッパーを設けた44mmφ二軸押出機(同方向回転、L/D=30、ベント口1箇所) を用いて、供給ホッパーのベント部=-300mmH_(2)O、ベント口=-730mmHg、シリンダ設定温度250℃で溶融混練しペレット化した。原料の持込み水分および揮発性成分の除去は良好で原料の供給口詰まりやベントアップは発生しなかった。」 (6) 「 」 3 甲5に記載された発明 甲5には、上記2(1)ないし(6)、特に(5)における実施例2から、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。 「水分率0.5wt%のポリブチレンテレフタレート80重量部に対し、長さ3mm、直径13μmのガラス繊維チョップドストランド20重量部をドライブレンドし、ベント部を有する供給ホッパーを設けた44mmφ二軸押出機(同方向回転、L/D=30、ベント口1箇所) を用いて、供給ホッパーのベント部=-300mmH_(2)O、ベント口=-730mmHg、シリンダ設定温度250℃で溶融混練しペレット化するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットの製造方法。」 4 甲5に基づく本件発明1の進歩性 本件発明1と甲5発明とを対比する。 甲5発明のガラス繊維チョップドストランドをドライブレンドする「水分率0.5wt%のポリブチレンテレフタレート」は、ドライブレンドしていることから、市販のポリブチレンテレフタレート樹脂のペレットと考えるのが自然であるから、本件発明1の「ポリブチレンテレフタレート樹脂」の「原料ペレット」に相当し、当該原料ペレットを製造する何らかの第一ペレット化工程が存するのは当然のことである。 甲5発明の「ベント部を有する供給ホッパーを設けた44mmφ二軸押出機(同方向回転、L/D=30、ベント口1箇所) を用いて、供給ホッパーのベント部=-300mmH_(2)O、ベント口=-730mmHg、シリンダ設定温度250℃で溶融混練しペレット化する」工程は、本件発明1の「原料ペレットを原料として、押出機を用いて樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程」に相当する。そして、用いられている押出機には、「ベント口1箇所」(44mmφ二軸押出機についての(・・・)内の説明における「ベント口」)が設けられているから、甲5発明においても、ベントから減圧を行いながら押し出されているといえる。 そうすると、本件発明1と甲5発明とは 「樹脂ペレットの製造方法であって、 原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、 ポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、前記原料ペレットを原料として、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程とを含む、 樹脂ペレット製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 樹脂ペレットの用途について、本件発明1は、「自動車内装部品を成形するための」と特定するのに対して、甲5発明はこのような特定はない点。 <相違点2> 原料ペレットを製造する原料として、本件発明1は、「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物」と特定するのに対して、甲5発明は、この点を特定しない点。 <相違点3> 原料ペレットを製造する原料として、本件発明1は、「末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物」と特定するのに対して、甲5発明は、この点を特定しない点。 <相違点4> 第一ペレット化工程に関し、本件発明1は、「ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて」と特定するのに対して、甲5発明はこのような特定はない点。 <相違点5> 製造された樹脂ペレットに関し、本件発明1は、「樹脂ペレットは、下記の方法で測定したアセトアルデヒド濃度、ホルムアルデヒド濃度が、それぞれ0.20μg以下である (測定方法) 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂又はそれを含む組成物から構成される100mm×40mm×2mmの試験片2枚を、テドラーバッグ内に入れ、65℃の条件で2時間処理したときに、発生するアセトアルデヒドガス濃度、ホルムアルデヒドガス濃度を測定する。」と特定するのに対して、甲5発明は、この点を特定しない点。 以下、相違点について検討する。 相違点1について 繊維強化ポリブチレンテレフタレート樹脂の用途として、自動車用内装部品を含む自動車用部品は周知(甲1の段落【0071】参照)であるから、当業者は、甲5発明の樹脂ペレットの用途として、自動車用内装部品を選択することは容易想到である。 相違点2について ポリブチレンテレフタレート樹脂の原料ペレットを製造するための原料として、「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下である」ものを利用する点については、ポリブチレンテレフタレート樹脂とはエチレングリコールは含まれていないものをいうものであることから、通常はエチレングリコール由来の繰り返し単位は含まれないものであるといえる。さらに、市販されているポリブチレンフタレートをみても、この条件を満足している(参考資料7)から、この点は相違点とはいえない。仮に、相違点であったとしても、求められる性能等に応じてグレードを上げてより純粋な材料を利用することは当業者が容易想到である。 相違点3について ポリブチレンテレフタレート樹脂の原料ペレットを製造するための原料として、「末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂」を利用することは、通常に行われていること(参考文献4、参考文献5(ただし、参考文献7を参照することによる))といえるから、この点も相違点とはいえない。仮に、相違点であったとしても、末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を利用することで、耐加水分解性が向上することは当業者において周知の技術事項(参考文献8:段落【0033】)であるから、甲5発明において、耐加水分解性を向上させるために、原料として末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を利用することは、容易想到である。 相違点4について 甲5には、第一ペレット化工程についての具体的な記載はないが、ペレットを製造する方法として、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて行うことは、周知慣用(甲3び甲4、参考資料1?3参照。)な事項であるから、当業者において容易想到である。また、そのことによる効果も、ベントから減圧を行いながら押出機を用いて原料ペレットを製造すると、揮発成分がより減少することは技術常識であるから、当業者の予測の範囲内である。 相違点5について ベントから減圧を行いながら押出機を用いてペレットを製造すると、揮発成分がより減少することは技術常識であるから、甲5発明の樹脂ペレットについても、下記の方法で測定すれば、揮発成分であるアセトアルデヒド濃度、ホルムアルデヒド濃度は減少しており、それぞれ0.20μg以下である蓋然性が高い。 (測定方法) 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂又はそれを含む組成物から構成される100mm×40mm×2mmの試験片2枚を、テドラーバッグ内に入れ、65℃の条件で2時間処理したときに、発生するアセトアルデヒドガス濃度、ホルムアルデヒドガス濃度を測定する。 したがって、相違点5は、相違点ではない。仮に、相違点であったとしても、具体的な製品の種類によって要求される程度に応じて、アセトアルデビド濃度、ホルムアルデビド濃度を適宜調整することは、当業者が容易に想到しえたことであって、その数値に臨界的意義は認められない。 そうすると、本件発明1は、甲5発明から当業者が容易に想到し得た発明である。 5 甲5に基づく本件発明2の進歩性 本件発明2と甲5発明とを対比すると、上記4での検討のとおり、上記相違点1ないし5に加えて、以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点6> 製造された樹脂ペレットに関し、本件発明2は、「ドイツ自動車工業会VDA277に規定のVOC測定法によるVOCが、40μgC/g以下である」と特定するのに対して、甲5発明はこのような特定はない点。 以下、相違点について検討する。 相違点1ないし5については、上記4のとおりである。 相違点6について 甲5発明で行っているように、ベントから減圧を行いながら押出機を用いて樹脂ペレットを製造すると、揮発成分がより減少することは技術常識であるから、甲5発明の樹脂ペレットについても揮発成分が減少しており、「ドイツ自動車工業会VDA277に規定のVOC測定法によるVOCが、40μgC/g以下である」蓋然性が高い。 したがって、相違点6は、相違点ではない。仮に、相違点であったとしても、具体的な製品の種類によって要求される程度に応じて、VOC濃度を適宜調整することは、当業者が容易に想到しえたことであって、その数値に臨界的意義は認められない。 そうすると、本件発明2は、甲5発明から当業者が容易に想到し得た発明である。 6 甲5に基づく本件発明5の進歩性 甲5には、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットの用途については記載はないが、当業者において、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを、自動車用内装部品の製造に利用することは周知(甲1の段落【0071】参照)であるから、甲5発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを利用して、自動車用内装部品を製造することは当業者において容易想到である。 そうすると、本件発明5は、甲5に記載の発明から当業者が容易に想到し得た発明である。 7 甲1の記載事項 本件の出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である甲1には、以下の事項が記載されている。 (1) 「【請求項1】 (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(B)4価以上のアルコールと炭素数15以上の高級脂肪酸からなる高級脂肪酸エステル0.05?5.0重量部、(C)炭素数20以上の高級脂肪酸金属塩0.01?1.0重量部を含有し、さらに、(B)4価以上のアルコールと炭素数15以上の高級脂肪酸からなる高級脂肪酸エステルと(C)炭素数20以上の高級脂肪酸金属塩の配合比率が(B)/(C)=1/1?20/1(重量比)であるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 【請求項2】 (C)炭素数20以上の高級脂肪酸金属塩の金属塩が、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩である請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 【請求項3】 (C)炭素数20以上の高級脂肪酸金属塩を、窒素雰囲気下130℃で30分加熱処理後、窒素雰囲気下260℃で30分加熱処理したときの重量減量が1.50%以下である請求項1または2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 【請求項4】 さらに、(D)非晶性樹脂1?100重量部を含有する請求項1?3のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 【請求項5】 (D)非晶性樹脂が、スチレン系樹脂および/またはポリカーボネート樹脂である請求項1?4のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 【請求項6】 さらに、(E)難燃剤1?100重量部および/または(F)難燃助剤1?150重量部を含有する請求項1?5のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。 【請求項7】 (E)難燃剤が、臭素系難燃剤、または、リン系難燃剤、(F)難燃助剤が、アンチモン化合物または含窒化合物である請求項6に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。」(特許請求の範囲) (2) 「【技術分野】 本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、良離型性、低ガス性、低金型汚染性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関するものである。 【背景技術】 熱可塑性ポリエステル樹脂の中で代表的なエンジニアリンブプラスチックであるポリブチレンテレフタレートは、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、その他の物理的、化学的特性に優れていることから、自動車部品、電気・電子部品、精密機器部品などの射出成型品に広く使用されると共に、その優れた性質を活かし、フィルム、シート、モノフィラメント、繊維などの分野でも広く使用されている。しかしながら、ポリブチレンテレフタレート単体では射出成形品、押出成形品等の取出しの際に、樹脂の収縮に伴う金型への抱きつきが発生し、離型しないという現象が起こることがあった。そのため、金型とのすべり性を改善するため、ポリブチレンテレフタレートに離型剤を添加する方法が一般的である。 特許文献1および2に記載されているように、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂に、多価アルコールと脂肪酸からなる高級脂肪酸エステルを添加することで、流動性及び金型腐食性に優れた樹脂組成物が提案されている。 また、特許文献3に記載されているように、ポリブチレンテレフタレートに、パラフィンワックスや高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩等の離型剤を添加することで、離型性を得ると共に、成形時の金型との融着を抑制する樹脂組成物が提案されている。しかし、いずれの離型剤も単体で使用しているため、成形時の発生ガスが多く、十分な離型性が得られない問題があった。 【先行技術文献】 【特許文献】 【特許文献1】特開2001-302897公報 【特許文献2】特開2005-41912公報 【特許文献3】特開2007-15160公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、高い離型性を示すと共に成形時の発生ガス成分低減に伴う金型汚染性に優れた特性を示す、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することを課題とする。」(段落【0001】?【0006】) (3) 「本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、公知の重縮合法や開環重合法などにより製造することができ、バッチ重合および連続重合のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による反応のいずれでも適用することができる。本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、カルボキシル末端基量を少なくすることができ、かつ、流動性向上効果が大きくなるという点で、連続重合が好ましく、コストの点で、直接重合が好ましい。なお、エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に重合反応触媒を添加することが好ましく、重合反応触媒の具体例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ-n-プロピルエステル、テトラ-n-ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ-tert-ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステル、あるいはこれらの混合エステルなどの有機チタン化合物、ジブチルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキシド、シクロヘキサヘキシルジスズオキシド、ジドデシルスズオキシド、トリエチルスズハイドロオキシド、トリフェニルスズハイドロオキシド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイドおよびブチルヒドロキシスズオキシド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などのアルキルスタンノン酸などのスズ化合物、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシドなどのジルコニア化合物、三酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられる。重合反応触媒は、有機チタン化合物およびスズ化合物が好ましく、さらに、チタン酸のテトラ-n-プロピルエステル、テトラ-n-ブチルエステルおよびテトライソプロピルエステルがより好ましく、チタン酸のテトラ-n-ブチルエステルが特に好ましい。これらの重合反応触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。重合反応触媒の添加量は、機械特性、成形性および色調の点で、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、0.005?0.5重量部の範囲が好ましく、0.01?0.2重量部の範囲がより好ましい。」(段落【0016】) (4) 「本発明の樹脂組成物はこれら配合成分が均一に分散されていることが好ましい。その配合方法は特に限定されるものではなく、任意の方法を用いることができる。代表例として、単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーあるいはミキシングロール等、公知の溶融混練機を用いて、200?350℃の温度で、溶融混練する方法を挙げることができる。各成分は、予め一括して混合しておき、それから溶融混練してもよい。また液体成分はギアポンプ等により単体で溶融混練機に投入しても良い。あるいは(A)?(H)成分の合計100重量部に対し、例えば1重量部以下であるような少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法等で混練しペレット化した後、成形前に添加することもできる。なお、各成分に付着している水分は少ない方がよく、予め事前乾燥しておくことが望ましいが、必ずしも全ての成分を乾燥させる必要がある訳ではない。 本発明の樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、トランスファー成形法、真空成形法、注型法等一般に熱可塑性樹脂の公知の成形法により成形することができるが、所望の形状を精度よく再現でき、加えて生産性の高い射出成形法が好ましい。 本発明の樹脂組成物は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に幅広く利用することができる。具体的な用途としては、ドアロックプロテクタ、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクター、電気用コネクター、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジング、および内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD-R、DVD-RW、DVD-RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農ビの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業部材、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器、ゴルフティー、文房具、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、台所キャビネット、ペンキャップなどとして有用である。 【実施例】 以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。実施例および比較例に使用した配合組成物および特性の評価方法を以下に示す。 ポリブチレンテレフタレート樹脂成分 (A-1) ポリブチレンテレフタレート樹脂:固有粘度0.85(東レ(株)製″トレコン″1100M)。 4価以上のアルコールと炭素数15以上の高級脂肪酸からなる高級脂肪酸エステル (B-1) ペンタエリスリトール-ステアリン酸テトラエステル:(コグニス ジャパン(株)″ロキシオール″VPG861)。 上記以外の脂肪酸エステル (B-2) グリセリン-ステアリン酸ジエステル:(コグニス ジャパン(株)″ロキシオール″P1206)。 炭素数20以上の高級脂肪酸金属塩 (C-1) ベヘン酸カルシウム:(日東化成(株)製”CS-7”、重量減量1.27%)。 上記以外の脂肪酸金属塩 (C-2) 12ヒドロキシステアリン酸ナトリウム:(日東化成(株)製”NS-6”、重量減量1.68%) (C-3) モンタン酸ナトリウム:(クラリアントジャパン(株)製”リコモントNaV101”重量減量1.80%)。」(段落【0069】?【0077】) (5) 「[実施例1?23][比較例1?22] 表1?4に示したように樹脂組成物の組成を変更し、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)成分、並びにその他添加剤全てを2軸押出機の元込め部から供給し、(H)成分を主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から供給してシリンダー温度260℃に設定したスクリュー径57mmφの2軸押出機で溶融混練を行った。 ダイスから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化した。得られた各ペレットを、130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した後、離型性、加熱減量、金型汚染性の評価を行った。なお、実施例、比較例中の物性測定および試験は、次の方法で行った。」(段落【0087】?【0088】) (6) 「【表3】 」(段落【0095】) 8 甲1に記載された発明 甲1には、上記7(2)ないし(6)の記載から、比較例1のペレットの製造方法として次の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されていると認める。 「ポリブチレンテレフタレート樹脂:固有粘度0.85(東レ(株)製”トレコン”1100M)を100.0部、ベヘン酸カルシウム:(日東化成(株)製”CS-7”重量減量1.27%)0.5部を2軸押出機の元込め部から供給し、シリンダー温度260℃に設定したスクリュー径57mmφの2軸押出機で溶融混練を行い、ダイスから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化したペレット製造方法。」 また、上記7(1)ないし(6)の記載から、ペレットの製造方法として、次の発明(以下、「甲1発明B」という。)が記載されていると認める。 「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(B)4価以上のアルコールと炭素数15以上の高級脂肪酸からなる高級脂肪酸エステル0.05?5.0重量部、(C)炭素数20以上の高級脂肪酸金属塩0.01?1.0重量部を含有し、さらに、(B)4価以上のアルコールと炭素数15以上の高級脂肪酸からなる高級脂肪酸エステルと(C)炭素数20以上の高級脂肪酸金属塩の配合比率が(B)/(C)=1/1?20/1(重量比)となる各成分を2軸押出機を用いて、200℃?350℃の温度で混練しペレット化するペレット製造方法。」 さらに、上記7(1)ないし(6)、特に(4)の記載から、甲1発明A又は甲1発明Bで製造されたペレットを利用して、部品を製造する方法として、次の発明(以下、「甲1発明C」という。)が記載されていると認める。 「甲1発明A又は甲1発明Bのペレットを利用して部品を製造する製造方法。」 9 本件発明1と甲1発明Aとの対比・判断 本件発明1と甲1発明Aとを対比する。 甲1発明Aの「ポリブチレンテレフタレート樹脂:固有粘度0.85(東レ(株)製”トレコン”1100M)」は、本件発明1の「ポリブチレンテレフタレート樹脂」の「原料ペレット」に相当し、当該原料ペレットを製造する第一ペレット化工程が存するのは当然のことである。 甲1発明Aの「シリンダー温度260℃に設定したスクリュー径57mmφの2軸押出機で溶融混練を行い、ダイスから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化した」工程は、本件発明1の「原料ペレットを原料として、押出機を用いて樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明Aとは 「樹脂ペレットの製造方法であって、 ポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、 前記原料ペレットを原料として、押出機を用いて樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程とを含む、 樹脂ペレット製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点7> 樹脂ペレットの用途について、本件発明1は、「自動車内装部品を成形するための」と特定するのに対して、甲1発明Aはこのような特定はない点。 <相違点8> 原料ペレットを製造する原料として、本件発明1は、「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下のポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物」と特定するのに対して、甲1発明Aは、この点を特定しない点。 <相違点9> 原料ペレットを製造する原料として、本件発明1は、「末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物」と特定するのに対して、甲1発明Aは、この点を特定しない点。 <相違点10> 第一ペレット化工程に関し、本件発明1は、「ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて前記原料ペレットを製造する」と特定するのに対し、甲1発明Aは、この点を特定しない点。 <相違点11> 第二ペレット化工程において使用する押出機に関し、本件発明1は、「ベントから減圧を行いながら」と特定するのに対し、甲1発明Aは、この点を特定しない点。 <相違点12> 製造された樹脂ペレットに関し、本件発明1は、「樹脂ペレットは、下記の方法で測定したアセトアルデヒド濃度、ホルムアルデヒド濃度が、それぞれ0.20μg以下である (測定方法) 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂又はそれを含む組成物から構成される100mm×40mm×2mmの試験片2枚を、テドラーバッグ内に入れ、65℃の条件で2時間処理したときに、発生するアセトアルデヒドガス濃度、ホルムアルデヒドガス濃度を測定する。」と特定するのに対して、甲1発明Aは、この点を特定しない点。 以下、相違点について検討する。 相違点7について 甲1には、甲1のポリブチレンテレフタレート樹脂ペレットの具体的な用途として、自動車用内装部品の記載がある(上記7(4)参照)から、相違点7は、当業者において容易想到である。 相違点8について ポリブチレンテレフタレート樹脂の原料ペレットを製造するための原料として、「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下である」ものを利用する点については、ポリブチレンテレフタレート樹脂とはエチレングリコールは含まれていないものをいうものであることから、通常はエチレングリコール由来の繰り返し単位は含まれないものであるといえる。さらに、市販されているポリブチレンフタレートをみても、この条件を満足している(参考資料7)から、相違点8は、実質上の相違点とはいえない。仮に、相違点であったとしても、求められる性能等に応じてグレードを上げてより純粋な材料を利用することは当業者が容易想到である。 相違点9について ポリブチレンテレフタレート樹脂の原料ペレットを製造するための原料として、「末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂」を利用することは、通常に行われていること(参考文献4、参考文献5(ただし、参考文献7を参照することによる)といえるから、相違点9は、実質上の相違点とはいえない。仮に、相違点であったとしても、末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を利用することで、耐加水分解性が向上することは当業者において周知の技術事項(参考文献8)であるから、甲5発明において、耐加水分解性を向上させるために、原料として末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を利用することは、容易想到である。 相違点10について 甲1発明Aには、第一ペレット化工程についての具体的な記載はないが、ペレットを製造する方法として、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて行うことは、周知慣用な事項(甲3ないし5及び参考資料1ないし3を参照のこと)であるから、当業者において容易想到である。 相違点11について ペレットの製造時の押出機において、ベントから減圧しながら押し出すことは、周知慣用な技術事項(甲3ないし甲5及び参考資料1ないし3を参照)であるから、当業者において容易想到である。 そして、甲1発明Aの製造方法で製造した樹脂ペレットのアセトアルデビド濃度、ホルムアルデビド濃度は、甲2によれば、本件発明1の条件を満足しているから、ベントから減圧しながら行うことによる効果に格別なものがあるとは認められないし、当業者の予測の範囲内といえる。 相違点12について 甲1発明Aの製造方法で製造した樹脂ペレットのアセトアルデビド濃度、ホルムアルデビド濃度は、甲2によれば、本件発明1の条件を満足しているから、相違点12は、相違点ではない。 そうすると、本件発明1は、甲1発明Aから当業者が容易に想到し得た発明である。 10 本件発明2と甲1発明Aとの対比・判断 本件発明2と甲1発明Aとを対比すると、上記9での検討のとおり、上記相違点7ないし12に加えて、以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点13> 製造された樹脂ペレットに関し、本件発明2は、「ドイツ自動車工業会VDA277に規定のVOC測定法によるVOCが、40μgC/g以下である」と特定するのに対して、甲1発明Aはこのような特定はない点。 以下、相違点について検討する。 相違点7ないし12については、上記9のとおりである。 相違点13について 甲1発明Aの製造方法で製造した樹脂ペレットの「ドイツ自動車工業会VDA277に規定のVOC測定法によるVOC」は、甲2によれば、21μgC/gであって、40μgC/g以下であるから、相違点13は、相違点ではない。 そうすると、本件発明2は、甲1発明Aから当業者が容易に想到し得た発明である。 11 本件発明1と甲1発明Bとの対比・判断 本件発明1と甲1発明Bとを対比する。 甲1発明Bの「ポリブチレンテレフタレート樹脂」は、本件発明1の「ポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料」とした「原料ペレット」に相当し、当該原料ペレットを製造する第一ペレット化工程が存するのは当然のことである。 甲1発明Bの「2軸押出機を用いて、200℃?350℃の温度で混練しペレット化する」工程は、本件発明1の「原料ペレットを原料として、押出機を用いて樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明Bとは 「樹脂ペレットの製造方法であって、 ポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、 前記原料ペレットを原料として、押出機を用いて樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程とを含む、 樹脂ペレット製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点14> 樹脂ペレットの用途について、本件発明1は、「自動車内装部品を成形するための」と特定するのに対して、甲1発明Bはこのような特定はない点。 <相違点15> 原料ペレットを製造する原料について、本件発明1は、「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下のポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物」と特定するのに対して、甲1発明Bは、この点を特定しない点。 <相違点16> 原料ペレットを製造する原料として、本件発明1は、「末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物」と特定するのに対して、甲1発明Bは、この点を特定しない点。 <相違点17> 第一ペレット化工程に関し、本件発明1は、「ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて前記原料ペレットを製造する」と特定するのに対し、甲1発明Bは、この点を特定しない点。 <相違点18> 第二ペレット化工程において使用する押出機に関し、本件発明1は、「ベントから減圧を行いながら」と特定するのに対し、甲1発明Bは、この点を特定しない点。 <相違点19> 製造された樹脂ペレットに関し、本件発明1は、「樹脂ペレットは、下記の方法で測定したアセトアルデヒド濃度、ホルムアルデヒド濃度が、それぞれ0.20μg以下である (測定方法) 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂又はそれを含む組成物から構成される100mm×40mm×2mmの試験片2枚を、テドラーバッグ内に入れ、65℃の条件で2時間処理したときに、発生するアセトアルデヒドガス濃度、ホルムアルデヒドガス濃度を測定する。」と特定するのに対して、甲1発明Bは、この点を特定しない点。 以下、相違点について検討する。 相違点14について 甲1には、甲1のポリブチレンテレフタレート樹脂ペレットの具体的な用途として、自動車用内装部品の記載がある(上記7(4)参照)から、甲1発明Bの具体的な用途として自動車用内装部品とすることは、当業者において容易想到である。 相違点15について ポリブチレンテレフタレート樹脂の原料ペレットを製造するための原料として、「エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下である」ものを利用する点については、ポリブチレンテレフタレート樹脂とはエチレングリコールは含まれていないものをいうものであることから、通常はエチレングリコール由来の繰り返し単位は含まれないものであるといえる。さらに、市販されているポリブチレンフタレートをみても、この条件を満足している(参考資料7)から、相違点15は、実質上の相違点とはいえない。仮に、相違点であったとしても、求められる性能等に応じてグレードを上げてより純粋な材料を利用することは当業者が容易想到である。 相違点16について ポリブチレンテレフタレート樹脂の原料ペレットを製造するための原料として、「末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂」を利用することは、通常に行われていること(参考文献4、参考文献5(ただし、参考文献7(実験証明書)を参照することによる)といえるから、相違点16は、実質上の相違点とはいえない。仮に、相違点であったとしても、末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を利用することで、耐加水分解性が向上することは当業者において周知の技術事項(参考文献8)であるから、甲1発明Bにおいて、耐加水分解性を向上させるために、原料として末端カルボキシル基量が、30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を利用することは、容易想到である。 相違点17について 甲1発明Bには、第一ペレット化工程についての具体的な記載はないが、ペレットを製造する方法として、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて行うことは、周知慣用な事項(甲3ないし5及び参考資料1ないし3を参照のこと)であるから、当業者において容易想到であって、そのことによる効果も、ベントから減圧を行いながら押出機を用いて原料ペレットを製造すると、揮発成分がより減少することは技術常識であるから、当業者の予測の範囲内である。 相違点18について ペレットの製造時の押出機において、ベントから減圧しながら押し出すことは、周知慣用な技術事項(異議申立人の提示した甲3ないし5及び参考資料1ないし3参照)であるから、当業者において容易想到である。 そして、甲2によれば、甲1発明Bの製造方法で製造した具体的な実施例に対応する比較例1ですら樹脂ペレットのアセトアルデビド濃度、ホルムアルデビド濃度は、本件発明1の条件を満足しているのであるから、甲1発明Bの樹脂ペレットのアセトアルデビド濃度、ホルムアルデビド濃度は、本件発明1の条件を満足している蓋然性が高いから、ベントから減圧しながら行うことによる効果に格別なものがあるとは認められないし、当業者の予測の範囲内ともいえる。 相違点19について 甲1発明Bのポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットのアセトアルデビド濃度、ホルムアルデビド濃度は特定されていないが、甲2によれば、甲1発明Bの製造方法で製造した具体的な実施例に対応する比較例1ですら樹脂ペレットのアセトアルデビド濃度、ホルムアルデビド濃度は、本件発明1の条件を満足しているのであるから、甲1発明Bにおいても、アセトアルデヒド濃度、ホルムアルデヒド濃度が、それぞれ0.20μg以下である蓋然性が高い。 してみれば、相違点19は、相違点ではない。 そうすると、本件発明1は、甲1発明Bから当業者が容易に想到し得た発明である。 12 本件発明2と甲1発明Bとの対比・判断 本件発明2と甲1発明Bとを対比すると、上記11での検討のとおり、上記相違点14ないし19に加えて、以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点20> 製造された樹脂ペレットに関し、本件発明2は、「ドイツ自動車工業会VDA277に規定のVOC測定法によるVOCが、40μgC/g以下である」と特定するのに対して、甲1発明Bはこのような特定はない点。 以下、相違点について検討する。 相違点14ないし19については、上記11のとおりである。 相違点20について 甲1発明Bのポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットの「ドイツ自動車工業会VDA277に規定のVOC測定法によるVOC」は特定されていないが、甲1発明Bの具体的な実施例に対応する比較例1のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットの「ドイツ自動車工業会VDA277に規定のVOC測定法によるVOC」は、甲2によれば、21μgC/gであって、40μgC/g以下であるから、より成形時の発生ガスが低減していると想定される甲1発明Bのポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットについても、本件発明2での特定を満足している蓋然性が高い。 よって、相違点20は、実質上の相違点ではない。 そうすると、本件発明2は、甲1発明Bから当業者が容易に想到し得た発明である。 13 本件発明5と甲1発明Cとの対比・判断 甲1には、ポリブチレンテレフタレート樹脂ペレットの用途について、自動車用内装部品が例示されている(上記7(4)参照)から、甲1発明Cの部品として、自動車用内装部品を選択することは当業者において容易想到である。 そうすると、本件発明5は、甲1発明Cから当業者が容易に想到し得た発明である。 16 特許権者の主張の検討 特許権者は、平成29年7月25日付け意見書において、甲1発明A及びB及び甲5発明に基づく進歩性に関し、主に以下の主張1及び2を行っている。 主張1:「”トレコン”の組成は明らかではありませんが、通常、市販されているペレット状のポリブチレンテレフタレートは、酸化防止剤や安定剤等の各種添加剤を含有しており、例えばエポキシ等のように末端カルボキシル基と反応する官能基を有する添加剤が添加されている場合には、ペレット化の過程で末端カルボキシル基量が低下する可能性があります。したがって、”トレコン”の末端カルボキシル基量が22meq/kgであることを以って、この”トレコン”を製造するための原料であるポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量が30meq/kg以下であると直ちには認定することはできません。 本件特許発明1においては、原料ペレットの原料であるポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量が30meq/kg以下であることにより、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が湿温環境下での加水分解を受けにくくなり(本件明細書の段落【0029】)、その結果として、得られる樹脂ペレット及びそれを用いて製造される自動車内装部品より排出されるVOCをより低減することができます。そして、後述するポリブチレンテレフタレート樹脂中のエチレングリコール由来の繰り返し単位の量、各工程におけるベントを組み合わせることにより、発生するアセトアルデビド濃度を抑制することができます。」 主張2:「甲5にも甲1にも、エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下であり、末端カルボキシル基量が30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を、原料ペレットを製造するための原料として用いることは記載されていません。ましてや、このような特徴を有する樹脂又はこれを含む樹脂組成物を含む原料として、ベントから減圧を行いながら押出機を用いて原料ペレットを製造し、その後、さらにベントから減圧を行いながら押出機を用いて樹脂ペレットを製造することにより、発生するアセトアルデビド濃度を極めて低く抑制することができるという効果については、甲5にも甲1にも記載も示唆もされておらず、このような効果は甲5及び甲1からは予測されない格別の効果であると思料致します。」 以下、各主張について検討する。 主張1について まず、トレコン1100Mは、「難燃性、剛性、耐熱性、耐薬品性、高寸法安定性を有したポリブチレンテレフタレート樹脂(http://plastics.ulprospector.com/ja/datasheet/e16592/clariant-pbt-pbt-1100参照)であって、エポキシ基等の末端カルボキシル基量を減少させる添加剤が配合されていないといえるので、請求人の主張は失当であるし、上記の検討のとおり、相違点であったとしても、当業者が容易に想到し得るものといえる。 次に、「末端カルボキシル基量が30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を、原料ペレットを製造するための原料として用いること」で「生ずるアセトアルデビド濃度を極めて低く抑制することができる」という効果を主張しているが、本件明細書の記載内容は上記第3 2での検討のとおりであるから、当該主張は本件明細書の記載に基づかない主張であって失当である。そして、「末端カルボキシル基量が30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を、原料ペレットを製造するための原料として用いること」で、湿温環境下での加水分解を受けにくくなることは、上記での検討のとおり、当業者において周知の効果である。 よって、主張1は採用できない。 主張2について 確かに、甲5にも甲1にも、エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下であり、末端カルボキシル基量が30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を、原料ペレットを製造するための原料として用いることは記載されていないが、この点については、上記での相違点として検討したとおりであって、相違点といえないか、仮に相違点であっても当業者において容易に想到し得たことである。一方で、本件明細書において実施例として記載されている事例においても、原料ペレットとして、市販品を利用していることから、原料ペレットの原料が、前記のエチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下であり、末端カルボキシル基量が30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂を利用しているものであるかどうか不明であって、請求人が主張する効果は、上記第3 2での検討のとおり、本件明細書においては確認されていないし、記載も示唆もされていない。 よって、主張2は採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし2及び5に係る特許は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 本件特許の請求項3及び4に係る特許は、本件訂正請求により削除されたので、本件特許の請求項3及び4に対して、異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないので、本件特許の請求項3及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 自動車内装部品を成形するための樹脂ペレットの製造方法であって、 エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下であり、末端カルボキシル基量が30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、 前記原料ペレットを原料として、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程とを含み、 前記樹脂ペレットは、下記の方法で測定したアセトアルデヒド濃度、ホルムアルデヒド濃度が、それぞれ0.20μg以下である樹脂ペレットの製造方法。 (測定方法) 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂又はそれを含む組成物から構成される100mm×40mm×2mmの試験片2枚を、テドラーバッグ内に入れ、65℃の条件で2時間処理したときに、発生するアセトアルデヒドガス濃度、ホルムアルデヒドガス濃度を測定する。 【請求項2】 前記樹脂ペレットは、ドイツ自動車工業会VDA277に規定のVOC測定法によるVOCが、40μgC/g以下である請求項1に記載の樹脂ペレットの製造方法。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 エチレングリコール由来の繰り返し単位が0モル%以上1モル%以下であり、末端カルボキシル基量が30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂又は該樹脂を含む樹脂組成物を原料として、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて原料ペレットを製造する第一ペレット化工程と、 前記原料ペレットを原料として、ベントから減圧を行いながら、押出機を用いて樹脂ペレットを製造する第二ペレット化工程と、 前記樹脂ペレットから自動車内装部品を成形する成形工程とを含み、 前記樹脂ペレットは、下記の方法で測定したアセトアルデヒド濃度、ホルムアルデヒド濃度が、それぞれ0.20μg以下である自動車内装部品の製造方法。 (測定方法) 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂又はそれを含む組成物から構成される100mm×40mm×2mmの試験片2枚を、テドラーバッグ内に入れ、65℃の条件で2時間処理したときに、発生するアセトアルデヒドガス濃度、ホルムアルデヒドガス濃度を測定する。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-09-29 |
出願番号 | 特願2011-158580(P2011-158580) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZAA
(C08J)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 大村 博一 |
特許庁審判長 |
原田 隆興 |
特許庁審判官 |
藤原 浩子 大島 祥吾 |
登録日 | 2016-04-15 |
登録番号 | 特許第5916308号(P5916308) |
権利者 | ウィンテックポリマー株式会社 |
発明の名称 | 樹脂ペレットの製造方法及び自動車内装部品 |
代理人 | 正林 真之 |
代理人 | 林 一好 |
代理人 | 林 一好 |
代理人 | 正林 真之 |