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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G02F 審判 全部申し立て 発明同一 G02F 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 G02F |
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管理番号 | 1336167 |
異議申立番号 | 異議2017-700534 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-05-30 |
確定日 | 2017-12-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6032385号発明「液晶表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6032385号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕、[6、7]について訂正することを認める。 特許第6032385号の請求項1、2、4ないし7に係る特許を維持する。 特許第6032385号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6032385号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成28年3月2日に特許出願され、平成28年11月14日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人鈴木美香により請求項1ないし5に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。 以後の手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 7月14日:取消理由通知(7月20日発送) 同年 9月19日:訂正請求・意見書 同年10月 4日:通知書(10月6日発送) 同年11月 2日:意見書(鈴木美香) 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成29年9月19日付けの訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。また、本件訂正請求書による訂正を、以下「本件訂正」という。)は、特許第6032385号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正することを求めるものであって、以下の訂正事項1ないし訂正事項7からなる。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下である、 液晶表示装置。」と記載されているのを、 「前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下であり、 前記400nm以上495nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をBx、半値幅とByとし、 前記495nm以上600nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をGx、半値幅をGyとしたときに、 By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上であり、かつ、 Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上である、液晶表示装置(但し、液晶セルよりも視認側の偏光子に積層された配向フィルムが書き(1)?(4)のずれかを満たす液晶表示装置を除く: (1)リタデーションが1200nm以上である (2)リタデーションが5000nmであり、且つ、nx-nyが0.10である (3)リタデーションが8000nmであり、且つ、nx-nyが0.10である (4)リタデーションが10000nmであり、且つ、nx-nyが0.10である)。」に訂正する(本件訂正請求書第2ないし3頁)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上700nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有する、請求項1に記載の液晶表示装置。」と記載されているのを、 「バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、 前記2つの偏光板のうち少なくとも液晶セルよりも光源側の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に配向フィルムが積層されたものであり、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上700nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、 600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとし、前記配向フィルムが有するリタデーションをReとしたときに、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上であり、 前記400nm以上495nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をBx、半値幅とByとし、 前記495nm以上600nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をGx、半値幅をGyとしたときに、 By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上であり、かつ、 Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上であり、 前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下である、 液晶表示装置。」に訂正する(本件訂正請求書第3ないし4頁)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する(本件訂正請求書第4頁)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「前記Rxが630nm以上である、請求項1?3のいずれかに記載の液晶表示装置。」と記載されているのを、 「前記Rxが630nm以上である、請求項1又は2に記載の液晶表示装置。」に訂正する(本件訂正請求書第5頁)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「前記Ryが180nm以下である、請求項1?4のいずれかに記載の液晶表示装置。」と記載されているのを、 「前記Ryが180nm以下である、請求項1、2、又は4のいずれかに記載の液晶表示装置。」に訂正する(本件訂正請求書第5頁)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項4に「前記Rxが630nm以上である、請求項1?3のいずれかに記載の液晶表示装置。」とあるうち、請求項3及び請求項1を直接的に引用するものについて、独立形式に改め、 「バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、 前記2つの偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に配向フィルムが積層されたものであり、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、 600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとし、前記配向フィルムが有するリタデーションをReとしたときに、 Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上であり、 前記Rxが630nm以上である、 前記400nm以上495nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をBx、半値幅とByとし、 前記495nm以上600nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をGx、半値幅をGyとしたときに、 By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上であり、かつ、 Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上であり、、 前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下である、 液晶表示装置。」に訂正する(本件訂正請求書第5ないし6頁)。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項5に「前記Ryが180nm以下である、請求項1?4のいずれかに記載の液晶表示装置。」とあるうち、請求項4を引用するものについて、訂正後の請求項6を引用するように改め、 「前記Ryが180nm以下である、請求項6に記載の液晶表示装置。」に訂正する(本件訂正請求書第6頁)。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項 (1)訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の「配向フィルム」から、特定の物性値を有する配向フィルムを除くものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項2が、請求項1の記載を引用する記載であったところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式に書き改めるとともに、光源の種類、配向フィルムの関係を特定するとともに、さらに、偏光板の位置を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、請求項の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、訂正前の請求項4が引用していた請求項3を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、訂正前の請求項5が引用していた請求項3を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (6)訂正事項6 訂正事項6は、訂正前の請求項4が引用してた請求項3を引用しないものとして独立形式に書き改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (7)訂正事項7 訂正事項7は、訂正前の請求項5が請求項4を引用する記載であったものを、請求項4を引用しないものとして独立形式に書き改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (8)一群の請求項 訂正前の請求項1ないし5は、訂正前の請求項2ないし5が、請求項1の記載を引用し、訂正事項1により記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前において「一群の請求項」に該当するものである。 よって、本件訂正は、一群の請求項ごとになされたものであって、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 3 訂正の適否のまとめ 訂正事項1ないし訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第4号、同条第4項及び同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 また、特許権者から、訂正後の請求項2、6、7については、引用関係の解消を目的とするものであるから、訂正後の請求項2、6、7の訂正が認められる場合には、請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項[1ないし7]について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正は、上記「第2 訂正の適否についての判断」で検討したように認められるものであるから、本件訂正により訂正された請求項1、2、4ないし7に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、 前記2つの偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に配向フィルムが積層されたものであり、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、 600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとし、前記配向フィルムが有するリタデーションをReとしたときに、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上であり、 前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下であり、 前記400nm以上495nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をBx、半値幅とByとし、 前記495nm以上600nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をGx、半値幅をGyとしたときに、 By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上であり、かつ、 Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上である、液晶表示装置(但し、液晶セルよりも視認側の偏光子に積層された配向フィルムが下記(1)?(4)のずれかを満たす液晶表示装置を除く: (1)リタデーションが12000nm以上である (2)リタデーションが5000nmであり、且つ、nx-nyが0.10である (3)リタデーションが8000nmであり、且つ、nx-nyが0.10である (4)リタデーションが10000nmであり、且つ、nx-nyが0.10である)。 【請求項2】 バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、 前記2つの偏光板のうち少なくとも液晶セルよりも光源側の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に配向フィルムが積層されたものであり、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上700nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、 600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとし、前記配向フィルムが有するリタデーションをReとしたときに、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上であり、 前記400nm以上495nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をBx、半値幅とByとし、 前記495nm以上600nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をGx、半値幅をGyとしたときに、 By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上であり、かつ、 Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上であり、 前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下である、 液晶表示装置。 【請求項3】 削除。 【請求項4】 前記Rxが630nm以上である、請求項1又は2に記載の液晶表示装置。 【請求項5】 前記Ryが180nm以下である、請求項1、2又は4に記載の液晶表示装置。 【請求項6】 バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、 前記2つの偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に配向フィルムが積層されたものであり、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、 600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとし、前記配向フィルムが有するリタデーションをReとしたときに、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上であり、 前記Rxが630nm以上である、 前記400nm以上495nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をBx、半値幅とByとし、 前記495nm以上600nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をGx、半値幅をGyとしたときに、 By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上であり、かつ、 Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上であり、、 前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下である、 液晶表示装置。 【請求項7】 前記Ryが180nm以下である、請求項6に記載の液晶表示装置。」 第4 取消理由 当審において、訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 【理由1】(拡大先願) 本件発明1ないし本件発明3及び本件発明5は、本件の優先日前の特許出願(甲第1号証を参照。)であって、本件の出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者が本件の出願前の特許出願に係る発明をした者と同一ではなく、また本件出願の時において、本件の出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないことから、本件発明1ないし本件発明3及び本件発明5に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきものである。 。 【理由2】(サポート要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備があり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件発明1ないし本件発明5に係る特許は、取り消すべきものである。 【理由3】(委任省令違反) 本件特許は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備があり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件発明1ないし本件発明5に係る特許は、取り消すべきものである。 記 【理由1】(拡大先願)について 1 本件の出願後に出願公開がされた特許出願 特願2015-41705号(平成27年3月3日出願) 甲第1号証:特開2016-161833号公報(上記特許出願の公開公報) 2 本件発明1ないし本件発明3及び本件発明5について 特許異議申立人鈴木美香が提出した特許異議申立書の第13頁第8行ないし第24頁第2行に記載された「3-4-2.申立理由1……特許を受けることができない。」との理由により、本件発明1ないし本件発明3及び本件発明5に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。 【理由2】(サポート要件違反) 特許異議申立人鈴木美香が提出した特許異議申立書の第24頁第3行ないし第32頁末行に記載された「3-4-3.申立理由2……発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」との理由により、本件発明1ないし本件発明5に係る特許は、取り消すべきものである。 【理由3】(委任省令違反) 特許異議申立人鈴木美香が提出した特許異議申立書の第33頁第1行ないし第36頁第16行に記載された「3-4-4.申立理由3……発明の技術上の意義が不明であり、委任省令違反に該当する。」との理由により、本件発明1ないし本件発明5に係る特許は、取り消すべきものである。 第5 当審の判断 1 【理由1】(拡大先願)について 理由1の概要 訂正前の請求項1ないし3、及び5に係る発明は、本件の優先日前の特許出願(特願2015-41705号)に記載された発明と同一である。 (1)特願2015-41705号の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)には、以下の記載がある(なお、下線は、当審で付した。)。 ア 「【請求項1】 バックライト光源、液晶セル、カラーフィルター、偏光板及び偏光板保護フィルムがこの順序で配置された構成を有する液晶表示装置であって、 前記バックライト光源は、量子ドットを含有する光透過層を含み、 前記偏光板保護フィルムは、12000nm以上のリタデーションを有するものであり、かつ、前記偏光板の吸収軸と前記偏光板保護フィルムの遅相軸とのなす角度が、0°±10°又は90°±10°となるように配設されている ことを特徴とする液晶表示装置。」 イ 「【0015】 本発明者らは、鋭意検討した結果、量子ドット(QD)を含有する光透過層を含むバックライト光源(QD光源)を用いることで、広い色域を再現でき、液晶表示装置の表示画面側の偏光板保護フィルムを、極めて高いリタデーションを有し、かつ、特定の方向に配置させることで、表示画像にニジムラが生じることを抑制できることを見出した。」 ウ 「【発明の効果】 【0127】 本発明の液晶表示装置は、上述した構成を有するため、高輝度かつ広色域で表示画像にニジムラが生じることを極めて高度に抑制することができる。 【図面の簡単な説明】 【0128】 【図1】本発明の液晶表示装置の一例を模式的に示す断面図である。 【図2】量子ドットを含有する光透過層を含むバックライト光源の一例を模式的に示す断面図である。 【図3】透過像鮮明度の算出方法を説明する図である。 【図4】実施例及び比較例で使用した液晶表示装置のバックライトの発光スペクトルを示すグラフである。」 エ 「【0142】 (ニジムラ評価) 実施例及び比較例にて作製した液晶表示装置を、暗所及び明所(液晶モニター周辺照度400ルクス)にて、5人の人間が、正面及び斜め方向(約50度)から目視及び偏光サングラス越しに表示画像の観測を行い、ニジムラの有無を以下の基準に従い評価した。 ◎:ニジムラが観測されない。 ○:ニジムラが観測されるが、薄く、実使用上問題ないレベル。 △:ニジムラが観測される。 ×:ニジムラが強く観測される。 【0143】 【表1】(横長に表示した。) ![]() 【0144】 表1に示したように、実施例に係る液晶表示装置は、目視及び偏光サングラス越しのいずれでもニジムラが観察されなかった。 これに対し、比較例1?9に係る液晶表示装置では、比較例1及び比較例5に係る液晶表示装置のニジムラの評価に劣っていたが、それ以外の比較例ではニジムラの評価は実施例と同等であった。しかしながら、図4に示したように、比較例1?9に係る液晶表示装置1のバックライト光源である蛍光体を使用したLEDの発光スペクトルは、実施例で使用した液晶表示装置2のバックライト光源であるQD光源の発光スペクトルと比較してピークが小さく半値全幅も広く、色純度が低いものであった。なお、図4は、実施例及び比較例で使用した液晶表示装置の正面での発光スペクトルを、分光放射計SR-UL1R(トプコン社製)にて測定したグラフである。 また、比較例10?14に係る液晶表示装置は、偏光板保護フィルムのリタデーション値が小さく、また、比較例15に係る液晶表示装置は、偏光板保護フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度が45°であったため、目視又は偏光サングラス越しの何れか又は両方の評価に劣っていた。 また、バックライトにQD光源を備えた液晶表示装置2を用いた実施例及び比較例10?15では、いずれにおいても高輝度で高色域化を図ることができたが、バックライトに蛍光体を使用した白色LEDを備えた液晶表示装置1を用いた比較例1?9では、液晶表示装置2を用いた実施例等と比較して高輝度で高色域化は図ることができなかった。」 オ 図4は、以下のものである。 ![]() (2)先願明細書に記載された発明 ア 上記(1)ア及びイの記載からして、先願明細書には、 「バックライト光源、液晶セル、カラーフィルター、偏光板及び表示画面側の偏光板保護フィルムがこの順序で配置された構成を有する液晶表示装置であって、 前記バックライト光源は、量子ドットを含有する光透過層を含み、 前記表示画面側の偏光板保護フィルムは、12000nm以上のリタデーションを有するものであり、かつ、前記偏光板の吸収軸と前記偏光板保護フィルムの遅相軸とのなす角度が、0°±10°又は90°±10°となるように配設されている、液晶表示装置。」が記載されているものと認められる。 イ 上記(1)ウ及びエの記載を踏まえて、図4を見る、以下のことが理解できる。 (ア)上記アの「バックライト光源」は、約447nm(半値幅約21nm)、約547nm(半値幅約33nm)及び約608nm(半値幅約40nm)に、それぞれ発光スペクトルのピークトップを有すること。 (イ)上記アの「表示画面側の偏光板保護フィルム」は、12000nm以上のリタデーションを有するものであることから、 上記「バックライト光源」のそれぞれ発光スペクトルのピークトップにおける、半値幅/[波長/(リタデーション/波長)]の値は、何れも「0.55」以上になること。 ウ また、上記(1)エの表1を見ると、 上記アの「表示画面側の偏光板保護フィルム」のリタデーションを、5000nm、8000nm及び10000nmとした比較例が記載されており、このうち、半値幅/[波長/(リタデーション/波長)]の値が、何れも「0.55」以上になるのは、8000nm(Δn0.10)及び10000nm(Δn0.10)の比較例であることが理解できる。 エ 上記アないしウより、先願明細書には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。 「バックライト光源、液晶セル、カラーフィルター、偏光板及び表示画面側の偏光板保護フィルムがこの順序で配置された構成を有する液晶表示装置であって、 前記バックライト光源は、 量子ドットを含有する光透過層を含み、約447nm(半値幅約21nm)、約547nm(半値幅約33nm)及び約608nm(半値幅約40nm)に、それぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、 前記表示画面側の偏光板保護フィルムのリタデーションは、 12000nm以上、 8000nm(Δn0.10)、 10000nm(Δn0.10)であり、 半値幅/[波長/(リタデーション/波長)]の値は、何れも0.55以上であり、かつ、前記偏光板の吸収軸と前記偏光板保護フィルムの遅相軸とのなす角度が、0°±10°又は90°±10°となるように配設されている、液晶表示装置。」 (3)本件訂正発明1について ア 本件訂正発明1と先願発明とを対比すると、以下の点で一致する。 <一致点> バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、 前記2つの偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に配向フィルムが積層されたものであり、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、 600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとし、前記配向フィルムが有するリタデーションをReとしたときに、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上であり、 前記400nm以上495nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をBx、半値幅とByとし、 前記495nm以上600nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をGx、半値幅をGyとしたときに、 By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上であり、かつ、 Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上であり、、 前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下である、液晶表示装置。」 イ 一方、両者は、以下の点で相違する。 <相違点> 配向フィルムが有するリタデーションに関して、 本件訂正発明1は、「液晶セルよりも視認側の偏光子に積層された配向フィルムが下記(1)?(4)のいずれかを満たす液晶表示装置を除く: (1)リタデーションが12000nm以上である (2)リタデーションが5000nmであり、且つ、nx-nyが0.10である (3)リタデーションが8000nmであり、且つ、nx-nyが0.10である (4)リタデーションが10000nmであり、且つ、nx-nyが0.10である。」ものであるのに対して、 先願発明は、12000nm以上、8000nm(Δn0.10)及び10000nm(Δn0.10)であって、本件訂正発明1において除外されたものである点。 ウ そうすると、本件訂正発明1は、先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。 (4)本件訂正発明2について ア 本件訂正発明2と先願発明とを対比すると、以下の点で一致する。 <一致点> バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、 前記2つの偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に配向フィルムが積層されたものであり、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上700nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、 600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとし、前記配向フィルムが有するリタデーションをReとしたときに、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上であり、 前記400nm以上495nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をBx、半値幅とByとし、 前記495nm以上600nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をGx、半値幅をGyとしたときに、 By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上であり、かつ、 Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上であり、 前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下である、液晶表示装置。」 イ 一方、両者は、以下の点で相違する。 <相違点> 2つの偏光板のうち少なくとも一方の偏光板に関して、 本件訂正発明は、「液晶セルよりも光源側の偏光板」であるのに対して、 先願発明は、液晶セルよりも視認側の偏光板である点。 ウ そうすると、本件訂正発明2は、先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。 (5)本件訂正発明4及び本件訂正発明5について 本件訂正発明4及び本件訂正発明5は、本件訂正発明1又は本件訂正発明2の発明特定事項を備えていることから、本件訂正発明1又は本件訂正発明2と同様に、先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。 (6)本件訂正発明6について ア 本件訂正発明6と先願発明とを対比すると、以下の点で一致する。 <一致点> 「バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、 前記2つの偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に配向フィルムが積層されたものであり、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、 600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとし、前記配向フィルムが有するリタデーションをReとしたときに、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上であり、 前記400nm以上495nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をBx、半値幅とByとし、 前記495nm以上600nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をGx、半値幅をGyとしたときに、 By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上であり、かつ、 Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上であり、、 前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下である、液晶表示装置。」 イ 一方、両者は、以下の点で相違する。 ピークトップの波長Rxに関して、 本件訂正発明6は、「630nm以上である」のに対して、 先願発明は、608nmである点。 ウ そうすると、本件訂正発明6は、先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。 (7)本件訂正発明7について 本件訂正発明7は、本件訂正発明6の発明特定事項を備えていることから、本件訂正発明6と同様に、先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。 (8)まとめ 本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7は、先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえないから、本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7に係る特許は、【理由1】によっては、取り消すことができない。 2 【理由2】(サポート要件違反) 理由2の概要 理由2の1 訂正前の請求項1、2、4、5の記載は、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕を0.55以上としているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕を0.55以上とすることで、本件特許の課題を解決できることを当業者において認識できることを裏付ける記載はなく、また、本件出願時の技術常識を参酌しても、かかる認識は不可能であるから、請求項1、2、4、5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 理由2の2 訂正前の請求項3の記載は、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕、By/〔Bx/(Re/Bx)〕及びGy/〔Gx/(Re/Gx)〕をそれぞれ、0.55以上としているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には、これらを0.55以上とすることで、本件特許の課題を解決できることを当業者において認識できることを裏付ける記載はなく、また、本件出願時の技術常識を参酌しても、かかる認識は不可能であるから、訂正前の請求項3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 訂正により、本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7は、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕、By/〔Bx/(Re/Bx)〕及びGy/〔Gx/(Re/Gx)〕をそれぞれ、0.55以上とするものになったことから、理由2の1は、理由がない。 よって、理由2の2の観点から、サポート要件について検討する。 (1)訂正後の特許請求の範囲の記載 本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7の「バックライト光源」は、「400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し」、 各波長領域にピークトップを形成する発光スペクトルの、ピークトップ(波長)、半値幅及び配向フィルムのリタデーションについて、 ア Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上 イ By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上 ウ Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上 が成立するものである。 ここで、「バックライト光源」が発光する光は、「400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下」(以下「各波長領域」という。)に、ピークトップを形成する発光スペクトルにより生成される「白色系の光」であるから、各波長領域における半値幅及び発光強度が「白色系の光」を生成するように調節(バランス)されていることは、当業者にとって明らかである。 また、特許請求の範囲には、光源の種類について明示されていないことから、レーザー光源や冷陰極管等を包含するものと解され、配向フィルムを配置する位置についても明示されていないことから、偏光子のどちらの面であってもよいものと解される。 この点、本件特許明細書には、光源の種類及び配向フィルムの配置は特に限定されない旨記載されているから、上記解釈は、本件特許明細書の記載に沿うものである。 そうすると、上記アないしウの式は、「白色系の光」を生成するように、各波長領域における半値幅及び発光強度が調節(バランス)された「白色光源」において、各波長領域にピークトップを形成する発光スペクトルの、それぞれの半値幅とリタデーションについて、半値幅/[波長/(リタデーション/波長)]が「0.55以上」となるように規定するものである。 そこで、上記のクレーム解釈に基づき、本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7のサポート要件充足性につき判断する。 (3)本件特許明細書の記載 ア 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 液晶表示装置のバックライト光源として、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体(YAG系黄色蛍光体)とを組み合わせた発光素子からなる白色発光ダイオード(白色LED)が、従来から広く用いられている。この白色光源の発光スペクトルは、可視光領域で幅広いスペクトルを有しているとともに、発光効率にも優れるため、バックライト光源として汎用されている。しかし、この白色LEDをバックライト光源とした液晶表示装置では、人間の目が認識可能なスペクトルの20%程度しか色を再現することが出来ない。 【0007】 一方、近年の色域拡大要求の高まりから、白色光源の発光スペクトルが、R(赤)、G(緑)、B(青)の各波長領域に、それぞれ明確なピーク形状を有する液晶表示装置が開発されている。例えば、量子ドットを技術を利用した白色光源、励起光によりR(赤)、G(緑)の領域に明確な発光ピークを有する蛍光体と青色LEDを用いた蛍光体方式の白色LED光源、3波長方式の白色LED光源、赤色レーザーを組み合わせた白色LED光源等、様々な種類の光源を用いた、広色域化対応の液晶表示装置が開発されている。量子ドット技術を利用した白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の場合、人間の目が認識可能なスペクトルの60%以上の色を再現することが可能になると言われている。これらの白色光源は、いずれも従来のYAG系黄色蛍光体を用いた白色発光ダイオードからなる光源と比較してピークの半値幅が狭く、リタデーションを有する配向フィルムを偏光板の構成部材である偏光子保護フィルムとして用いた場合に、光源の種類によっては虹斑が発生する場合があることが新たにわかった。 【0008】 本発明では、R,G,Bの各波長領域にピークトップを持つ発光スペクトルを有する白色光源を用いた液晶表示装置において、偏光板の構成部材である偏光子保護フィルムとして配向フィルムを用いた場合でも、虹斑の発生が抑制された液晶表示装置を提供することを課題とする。」 イ 「【0015】 バックライトの構成としては、導光板や反射板などを構成部材とするエッジライト方式であっても、直下型方式であっても構わないが、本発明では、液晶表示装置のバックライト光源として400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有する白色光源が好ましい。一実施形態において、光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上700nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有することが好ましい。CIE色度図にて定義される青色、緑色、赤色の各ピーク波長は、それぞれ435.8nm(青色)、546.1nm(緑色)、及び700nm(赤色)であることが知られている。前記400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域は、それぞれ青色領域、緑色領域、及び赤色領域に相当する。上記のような光源としては、例えば、量子ドット技術を利用した白色光源、励起光によりR(赤)、G(緑)の領域にそれぞれ発光ピークを有する蛍光体と青色LEDを用いた蛍光体方式の白色LED光源、3波長方式の白色LED光源、赤色レーザーを組み合わせた白色LED光源等があるが、本発明において光源の種類は特に限定されない。上述したように、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有する白色光源であればよい。前記蛍光体のうち赤色蛍光体としては、例えば、CaAlSiN3:Eu等を基本組成とする窒化物系蛍光体、CaS:Eu等を基本組成とする硫化物系蛍光体、Ca2SiO4:Eu等を基本組成とするシリケート系蛍光体、その他が例示される。また、前記蛍光体のうち緑色蛍光体としては、例えばβ-SiAlON:Eu等を基本組成とするサイアロン系蛍光体、(Ba,Sr)2SiO4:Eu等を基本組成とするシリケート系蛍光体、その他が例示される。 【0016】 後述するが、各ピークの半値幅には好ましい上限、下限がある。半値幅が好ましい下限値未満であると、虹状の色斑が発生しやすくなること、配向フィルムのリタデーション(Re)を高くするために配向フィルムを厚くする必要があり表示装置が薄型化し難くなること等から好ましくない。半値幅が好ましい上限を超えると色域拡大効果が得られ難くなる。各波長領域でのピークの半値幅が狭いほど色域が広がるが、ピークの半値幅が狭くなると発光効率が低下することから、要求される色域と発光効率のバランス、使用する配向フィルムのリタデーション(Re)から発光スペクトルの形状を設計すればよい。なお、ここで半値幅とは、ピークトップの波長におけるピーク強度の、1/2の強度におけるピーク幅(nm)のことである。」 ウ 「【0026】 直交ニコル間の対角位に複屈折体を配し、バックライト光源として白色光源を用いた場合に直交ニコルを透過する光を干渉色として定義すると、光の透過率は式(1)で表される。 … ここで、Rx/(Re/Rx)は、波長Rxでの透過強度の繰り返しの間隔(nm)に相当する。よって、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕は、半値幅Ryの間に、透過強度の繰り返しが何個存在するかを示す指標である。半値幅Ryの間に、透過強度の繰り返しが多いほど、表示画面に観察される虹斑を抑制することができる。 【0027】 …… 【0030】 上述したRy/〔Rx/(Re/Rx)〕と同様に、Bx/(Re/Bx)は、波長Bxでの透過強度の繰り返しの間隔(nm)に相当するものであり、By/〔Bx/(Re/Bx)〕は、半値幅Byの間に、透過強度の繰り返しが何個存在するかを示す指標である。また、Gx/(Re/Gx)は、波長Gxでの透過強度の繰り返しの間隔(nm)に相当するものであり、Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕は、半値幅Gyの間に、透過強度の繰り返しが何個存在するかを示す指標である。半値幅By、Gyのそれぞれの間における、透過強度の繰り返しが多いほど、表示画面に観察される虹斑をより抑制することができる。 【0031】 …… 【0041】 本発明では、偏光子保護フィルムの少なくとも一つが配向フィルムであることが好ましい。当該配向フィルムの配置は特に限定されないが、入射光側(光源側)に配される偏光板と、液晶セルと、出射光側(視認側)に配される偏光板とが配された液晶表示装置の場合、入射光側に配される偏光板の入射光側の偏光子保護フィルム、及び/又は出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが配向フィルムであることが好ましい。上記以外の位置に配向フィルムを配する場合は、液晶セルの偏光特性を変化させてしまう場合がある。偏光特性が必要とされる箇所には本発明の高分子フィルムを用いることは好ましくない為、このような特定の位置の偏光板の保護フィルムとして使用されることが好ましい。」 エ 「【0060】 ポリエステルフィルムは一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもかまわないが、二軸延伸フィルムを偏光子保護フィルムとして用いた場合、フィルム面の真上から観察しても虹状の色斑が見られないが、斜め方向から観察した時に虹状の色斑が観察される場合があるので注意することが好ましい。」 オ 「【0072】 (3)虹斑観察 各実施例で得られた液晶表示装置を、正面、及び斜め方向から暗所で目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。 ○: 虹斑が観察されない △: 虹斑が僅かに観察される ×: 虹斑が観察される 」 カ 「【0106】 各実施例で得た液晶表示装置について、虹斑観察を測定した結果を以下の表1に示す。 【0107】 【表1】 ![]() 」 上記記載からして、以下のことが理解できる。 (ア)本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7は、液晶表示装置を正面及び斜め方向から観察した際に虹斑が発生するという事情に鑑みて、各波長領域にピークトップを形成する発光スペクトルの、波長、半値幅及び配向フィルムのリタデーションの関係を規定することにより、上記課題を解決したものであること。 (イ)光源の種類及び配向フィルムの配置は、特に限定されないこと。 (ウ)Rx/(Re/Rx)、Bx/(Re/Bx)及びGx/(Re/Gx)は、各波長領域にピークトップを形成する発光スペクトルの、それぞれの透過強度の繰り返しの間隔(nm)であること。 (エ)Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕、By/〔Bx/(Re/Bx)〕及びGy/〔Gx/(Re/Gx)〕は、各波長領域にピークトップを形成する発光スペクトルの、それぞれの半値幅の間における透過強度の繰り返し回数を意味すること。 (オ)実施例及び比較例を対比すると、一つでも「0.55」を下回ると、評価が低くなること。 してみると、本件特許明細書に接した当業者は、 400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域にピークトップを形成する発光スペクトルを有する白色光源において、 各波長領域にピークトップを形成する発光スペクトルの、それぞれの半値幅と配向フィルムのリタデーションについて、半値幅/[波長/(リタデーション/波長)]の値を「0.55以上」とすることにより、表示画面に観察される虹斑を抑制できるものとして認識できる。 (3)サポート要件について 本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7における「バックライト光源」は、「白色系の光」を発光する「白色光源」であり、かつ、 ア Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上 イ By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上 ウ Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上 が成立するものであるから、訂正後の特許請求の範囲の記載は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであり、サポート要件を充足していると認められる。 (4)特許異議申立人の主張について ア 平成29年11月2日提出の意見書において、以下のように主張することから、この点について検討する。 (ア)本件特許明細書の記載からは、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕、By/〔Bx/(Re/Bx)〕及びGy/〔Gx/(Re/Gx)〕の3つの値のバランスが取られていない範囲において虹斑を抑制できるとは理解できない(第1ないし2頁)。 (イ)バックライト光源の発光スペクトルが冷陰極管のよに極めてシャープなものである場合に、リタデーションを極めて高くしても、虹斑を抑制できないことは、例えば、特開2011-107198号公報の表2に示されているように技術常識であるから、本件特許明細書の記載からは、バックライト光源の発光スペクトルが極めてシャープである場合においても、虹斑を抑制できるとは理解できない(第3ないし4頁)。 イ 上記(ア)について 本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7の「バックライト光源」は、各波長領域における半値幅及び発光強度が「白色系の光」を生成するように調節(バランス)されているものであるから、配向フィルムを透過した各波長領域の光も混色により「白色系の光」を生成するものである。 そうすると、By/〔Bx/(Re/Bx)〕及びGy/〔Gx/(Re/Gx)〕により算出される、それぞれの半値幅の間における透過強度の繰り返し回数についても、混色により「白色系の光」を生成する関係になっているものと解される。 ウ 上記(イ)について 特許異議申立人が指摘する特開2011-107198号公報の図5に示された冷陰極管の発光スペクトル図からでは、正確な半値幅を読み取ることができないことから、証拠としては採用できない。 一方、同公報の【0019】には「また、従来からバックライト光源として広く用いられている冷陰極管や熱陰極管等の蛍光管についても、本発明に使用することは出来ない。なぜなら、これらの光源の発光スペクトルは特定波長にピークを有する不連続な発光スペクトルしか有していないため、このような発光スペクトルから干渉色により白色光を奏するためには、100000nmを超えるリタデーションを有する特殊な無機系素材を用いなければならず、液晶表示装置の装置設計に大きな制約をもたらすことになるからである。」と記載されており、リタデーションを極めて大きくすることで、半値幅/[波長/(リタデーション/波長)]の値を「0.55以上」にすることは可能であると解されるから、光源が「冷陰極管」であることを理由に、直ちに、虹斑を抑制できないとはいえない。 エ よって、特許異議申立人の主張は、上記判断を左右するものではない。 (5)まとめ 本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7に係る特許は、【理由2】によっては、取り消すことができない。 3 【理由3】(委任省令違反)について 理由3の概要 訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、発明の課題とパラメータとの関係を理解することができず、発明の技術上の意義が不明である。 (1)本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7は、「バックライト光源」から発光される「白色系の光」と配向フィルムのリタデーションについて、 ア Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上 イ By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上 ウ Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上 が成立するものである。 (2)本件特許明細書の記載 ア 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 液晶表示装置のバックライト光源として、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体(YAG系黄色蛍光体)とを組み合わせた発光素子からなる白色発光ダイオード(白色LED)が、従来から広く用いられている。…しかし、この白色LEDをバックライト光源とした液晶表示装置では、人間の目が認識可能なスペクトルの20%程度しか色を再現することが出来ない。 【0007】 一方、近年の色域拡大要求の高まりから、白色光源の発光スペクトルが、R(赤)、G(緑)、B(青)の各波長領域に、それぞれ明確なピーク形状を有する液晶表示装置が開発されている。例えば、…広色域化対応の液晶表示装置が開発されている。量子ドット技術を利用した白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の場合、人間の目が認識可能なスペクトルの60%以上の色を再現することが可能になると言われている。これらの白色光源は、いずれも従来のYAG系黄色蛍光体を用いた白色発光ダイオードからなる光源と比較してピークの半値幅が狭く、リタデーションを有する配向フィルムを偏光板の構成部材である偏光子保護フィルムとして用いた場合に、光源の種類によっては虹斑が発生する場合があることが新たにわかった。 【0008】 本発明では、R,G,Bの各波長領域にピークトップを持つ発光スペクトルを有する白色光源を用いた液晶表示装置において、偏光板の構成部材である偏光子保護フィルムとして配向フィルムを用いた場合でも、虹斑の発生が抑制された液晶表示装置を提供することを課題とする。」 イ 「【0015】 バックライトの構成としては、導光板や反射板などを構成部材とするエッジライト方式であっても、直下型方式であっても構わないが、…本発明において光源の種類は特に限定されない。上述したように、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満、及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有する白色光源であればよい。 【0016】 後述するが、各ピークの半値幅には好ましい上限、下限がある。半値幅が好ましい下限値未満であると、虹状の色斑が発生しやすくなること、配向フィルムのリタデーション(Re)を高くするために配向フィルムを厚くする必要があり表示装置が薄型化し難くなること等から好ましくない。半値幅が好ましい上限を超えると色域拡大効果が得られ難くなる。各波長領域でのピークの半値幅が狭いほど色域が広がるが、ピークの半値幅が狭くなると発光効率が低下することから、要求される色域と発光効率のバランス、使用する配向フィルムのリタデーション(Re)から発光スペクトルの形状を設計すればよい。なお、ここで半値幅とは、ピークトップの波長におけるピーク強度の、1/2の強度におけるピーク幅(nm)のことである。」 ウ 「【0030】 上述したRy/〔Rx/(Re/Rx)〕と同様に、Bx/(Re/Bx)は、波長Bxでの透過強度の繰り返しの間隔(nm)に相当するものであり、By/〔Bx/(Re/Bx)〕は、半値幅Byの間に、透過強度の繰り返しが何個存在するかを示す指標である。また、Gx/(Re/Gx)は、波長Gxでの透過強度の繰り返しの間隔(nm)に相当するものであり、Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕は、半値幅Gyの間に、透過強度の繰り返しが何個存在するかを示す指標である。半値幅By、Gyのそれぞれの間における、透過強度の繰り返しが多いほど、表示画面に観察される虹斑をより抑制することができる。」 エ 「【0035】 偏光子保護フィルムに用いられる配向フィルムは、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上という要件を満たせば特に限定されるものではないが、3000?30000nmのリタデーションを有することが好ましい。リタデーションが3000nm未満では、偏光子保護フィルムとして用いた場合、斜め方向から観察した時に干渉色を呈し、良好な視認性を確保することができない恐れがある。好ましいリタデーションの下限値は4500nm、次に好ましい下限値は5000nm、より好ましい下限値は6000nm、更に好ましい下限値は8000nm、より更に好ましい下限値は10000nmである。 【0036】 …… 【0037】 なお、リタデーションは、2軸方向の屈折率と厚みを測定して求めることもできるし、KOBRA-21ADH(王子計測機器株式会社)といった市販の自動複屈折測定装置を用いて求めることもできる。リタデーションは、波長589nmにおける値である。」 オ 「【0060】 ポリエステルフィルムは一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもかまわないが、二軸延伸フィルムを偏光子保護フィルムとして用いた場合、フィルム面の真上から観察しても虹状の色斑が見られないが、斜め方向から観察した時に虹状の色斑が観察される場合があるので注意することが好ましい。」 カ 「【0072】 (3)虹斑観察 各実施例で得られた液晶表示装置を、正面、及び斜め方向から暗所で目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。 ○: 虹斑が観察されない △: 虹斑が僅かに観察される ×: 虹斑が観察される 」 上記記載からして、以下のことが理解できる。 (ア)本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7は、液晶表示装置を正面及び斜め方向から観察した際に虹斑が発生するという事情に鑑みて、各波長領域にピークトップを形成する発光スペクトルの、波長、半値幅及び配向フィルムのリタデーションの関係を規定することにより、上記課題を解決したものであること。 (イ)Rx/(Re/Rx)、Bx/(Re/Bx)及びGx/(Re/Gx)は、各波長領域にピークトップを形成する発光スペクトルの、それぞれの透過強度の繰り返しの間隔(nm)であること。 (ウ)Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕、By/〔Bx/(Re/Bx)〕及びGy/〔Gx/(Re/Gx)〕は、各波長領域にピークトップを形成する発光スペクトルの、それぞれの半値幅の間における透過強度の繰り返し回数を意味すること。 ここで、本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7の「バックライト光源」は、各波長領域における半値幅及び発光強度が「白色系の光」を生成するように調節(バランス)されているものであるから、配向フィルムを透過した各波長領域の光も混色により「白色系の光」を生成するものである。 そうすると、By/〔Bx/(Re/Bx)〕及びGy/〔Gx/(Re/Gx)〕により算出される、それぞれの半値幅の間における透過強度の繰り返し回数についても、混色により「白色系の光」を生成する関係になっているものと解される。 そして、正面から観察した際に見られる虹斑は、配向フィルムを垂直方向に透過する光の干渉より発生するものであり、斜め方向から観察した際に見られる虹斑は、配向フィルムを斜め方向に透過する光の干渉により発生するものであるところ、配向フィルムを斜め方向に透過する光については、リタデーションが小さくなり、各波長領域の半値幅における「透過強度の繰り返し回数」のバランスが崩れ、「白色系の光」とならない場合のあることから、配向フィルムを斜め方向に透過する光について、一定以上のリタデーションが確保されるように、予め、(面内)リタデーションを大きく設定する必要のあることは、当業者であれば容易に理解し得ることである。 そうすると、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕、By/〔Bx/(Re/Bx)〕及びGy/〔Gx/(Re/Gx)〕は、配向フィルムを斜め方向に透過する光について、一定以上のリタデーションが確保されるように、(面内)リタデーションの下限値を規定するものであると解される。 以上のことから、 本件特許明細書の記載は、本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7の課題と、Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕、By/〔Bx/(Re/Bx)〕及びGy/〔Gx/(Re/Gx)〕の関係及びその技術的意義を理解することができるものであるから、本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7に係る特許は、【理由3】によっては、取り消すことができない。 4 まとめ 本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7に係る特許は、取消理由通知に記載した理由、つまり、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 第6 むすび 本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 他に本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明4ないし本件訂正発明7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項3に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、 前記2つの偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に配向フィルムが積層されたものであり、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、 600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとし、前記配向フィルムが有するリタデーションをReとしたときに、 Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上であり、 前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下であり、 前記400nm以上495nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をBx、半値幅とByとし、 前記495nm以上600nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をGx、半値幅をGyとしたときに、 By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上であり、かつ、 Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上である、 液晶表示装置(但し、液晶セルよりも視認側の偏光子に積層された配向フィルムが下記(1)?(4)のいずれかを満たす液晶表示装置を除く: (1)リタデーションが12000nm以上である (2)リタデーションが5000nmであり、且つ、nx-nyが0.10である (3)リタデーションが8000nmであり、且つ、nx-nyが0.10である (4)リタデーションが10000nmであり、且つ、nx-nyが0.10である)。 【請求項2】 バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、 前記2つの偏光板のうち少なくとも液晶セルよりも光源側の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に配向フィルムが積層されたものであり、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上700nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、 600nm以上700nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとし、前記配向フィルムが有するリタデーションをReとしたときに、 Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上であり、 前記400nm以上495nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をBx、半値幅とByとし、 前記495nm以上600nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をGx、半値幅をGyとしたときに、 By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上であり、かつ、 Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上であり、 前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下である、 液晶表示装置。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記Rxが630nm以上である、請求項1又は2に記載の液晶表示装置。 【請求項5】 前記Ryが180nm以下である、請求項1、2、又は4に記載の液晶表示装置。 【請求項6】 バックライト光源、2つの偏光板、及び前記2つの偏光板の間に配置された液晶セルを有する液晶表示装置であって、 前記2つの偏光板のうち少なくとも一方の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に配向フィルムが積層されたものであり、 前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、 600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとし、前記配向フィルムが有するリタデーションをReとしたときに、 Ry/〔Rx/(Re/Rx)〕が0.55以上であり、 Rxは630nm以上であり、 前記400nm以上495nm未満の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をBx、半値幅とByとし、 前記495nm以上600nm未満の波長領域に在在するピークのピークトップの波長をGx、半値幅をGyとしたときに、 By/〔Bx/(Re/Bx)〕が0.55以上であり、かつ、 Gy/〔Gx/(Re/Gx)〕が0.55以上であり、 前記偏光子の吸収軸と前記配向フィルムの遅相軸とは略平行又は略垂直であり、略平行であるとは、吸収軸と遅相軸とが平行な状態からのずれが±15°以下であり、略垂直とは吸収軸と遅相軸とが垂直な状態からのずれが±15°以下である、 液晶表示装置。 【請求項7】 前記Ryが180nm以下である、請求項6に記載の液晶表示装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-11-28 |
出願番号 | 特願2016-515170(P2016-515170) |
審決分類 |
P
1
651・
161-
YAA
(G02F)
P 1 651・ 536- YAA (G02F) P 1 651・ 537- YAA (G02F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 廣田 かおり、磯崎 忠昭 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 星野 浩一 |
登録日 | 2016-11-04 |
登録番号 | 特許第6032385号(P6032385) |
権利者 | 東洋紡株式会社 |
発明の名称 | 液晶表示装置 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |