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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F16J
管理番号 1336194
異議申立番号 異議2017-700995  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-17 
確定日 2018-01-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第6122901号発明「組合せオイルリング」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6122901号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6122901号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成27年4月17日(国内優先権主張 平成26年7月31日)に特許出願され、平成29年4月7日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人松永健太郎(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第6122901号の請求項1ないし5の特許に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.申立理由の概要
異議申立人は、次の理由により、請求項1ないし5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1)特許法第29条第2項
請求項1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[証拠]
甲1号証:特開平8-35559号公報(以下「甲1」という。)
甲2号証:特開2014-35038号公報(以下「甲2」という。)
甲3号証:特開2003-49705号公報(以下「甲3」という。)
甲4号証:特開2002-323133号公報(以下「甲4」という。)

(2)特許法第36条第6項第2号
請求項1ないし5の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たさない。

4.甲1ないし4の記載
(1)甲1
甲1には、「組合せオイルリング」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 環状のスペーサエキスパンダとこれに組合わされるサイドレールとからなる組合せオイルリングにおいて、前記サイドレールの上面を平坦に形成し、その内周側上面に切欠き溝を形成したことを特徴とする組合せオイルリング。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

(イ)「【0004】本発明はかかる点に鑑み、サイドレールとスペーサエキスパンダとの不要な摩耗を防止し、サイドレールの動きを安定させることができ、しかもピストン上昇時に一旦オイルリングの上に昇ってしまったオイルをピストンのドレンホールから再びクランクケースに確実に戻すことができ、オイル消費量の低減を図ることができる組合せオイルリングを提供することを目的とする。」(段落【0004】)

(ウ)「【0007】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。図1において、シリンダ1内にはピストン2が収納され、このピストン2の外周面上部には第1圧力リング3が設けられ、この下方に第2圧力リング4が設けられ、更に最下位にオイルリング5が設けられている。前記オイルリング5はリング溝7内に設けられ、このリング溝7内にはシリンダとピストンの間隙内に残された潤滑油をクランクケース側に戻すためのドレンホール6が設けられている。前記オイルリング5は図2及び図3に示すように環状のスペーサエキスパンダ9を有し、この環状エキスパンダ9の上下に上側サイドレール10及び下側サイドレール11がそれぞれ配置されている。前記スペーサエキパンダ9はほぼ工程をなし、その外周側は前記サイドレール10,11を支持するための外側支持部9a、前記外側支持部9aよりも上下に大きく張り出した内側支持部9bを有し、これら外側支持部9aと内側支持部9bが連結板部9cによって連結されている。
【0008】前記上側サイドレール10の内周側上面には所定間隔で切欠き溝12,12,12,…12が切欠き形成されている。前記切欠き溝12は図2乃至図4に示すように傾斜切欠き溝でもよいし、図5に示すように矩形の切欠き溝13であってもよい。なお、前記傾斜切欠き溝12のサイドレール10の内周縁の切欠き深さhはサイドレールの幅Bの1/2よりも小さく設定されている。なお、矩形溝13の場合もその深さhはサイドレール10の幅Bの1/2以下に設定されている。また、切欠き溝12,13の幅bはサイドレール10の厚さTからピストンクリアランスC(図3)の2倍を引いたものより小さく設定されている。また、スペーサエキスパンダ9の外周側は下方を向くようにピストンの軸に直交する平面に対して1乃至5°下方にツイストとされている。」(段落【0007】及び【0008】)

(エ)「【0012】なお、本発明の実施例においては、前記スペーサエキスパンダ9,20は1乃至5°下方にツイストされて設けられているが、本発明のサイドレールは従来のツイストされていないスペーサエキスパンダにも適用できることは言うまでもない。」(段落【0012】)

(オ)上記(ア)の記載を図1及び2に照らし合わせると、甲1に記載された組合せオイルリングにおいて、オイルリング5の上側サイドレール10と下側サイドレール11は、環状に形成されるとともに、全体として平板状に形成され、シリンダ1と摺接する摺接部位を有し、さらに、上側サイドレールの内周側上面に切欠き溝12が形成されることが分かる。

これらの記載事項及び図示事項を、本件特許発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「第1圧力リング3及び第2圧力リング4並びにオイルリング5から成るピストンリングが設けられる溝が形成されたピストン2のリング溝7内に設けられ、環状に形成されるとともに、全体として平板状に形成され、シリンダ1と摺接する摺接部位を有する上側サイドレール10及び下側サイドレール11と、上側サイドレール10及び下側サイドレール11を上下に配置したスペーサエキスパンダ9を備え、さらに、上側サイドレールの内周側上面に切欠き溝12が形成された組合せオイルリング。」

(2)甲2
甲2には、「テーパフェイス形圧力リング用線材及びテーパフェイス形圧力リング」に関して、図1(a)及び(b)並びに図3とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、内燃機関、圧縮機関等に使用されるピストンリングに関し、特にテーパ形状の外周面を持つテーパフェイス形圧力リングを製造するための線材、及びテーパフェイス形圧力リングに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のピストンには、3?4本のピストンリングが装着される。上部の2?3本のピストンリングは圧力リングと呼ばれ、燃焼室とクランク室との気密を保持するとともに、ピストンの熱をシリンダに伝達して放熱する機能を有する。また、下部の1?2本のピストンリングはオイルリングと呼ばれ、シリンダ内面に油膜を形成し、且つ、過剰なオイルを掻き落とす機能を有する。
【0003】
圧力リングにはテーパ形状の外周面を持つテーパフェイス形ピストンリングが知られており、適正なテーパ角度θの設定によって、ピストンの下降行程時にはシリンダライナ又はシリンダの内壁(以下「シリンダ内壁」という。)に付着するオイルを掻き落とすとともに、上昇行程時にはテーパ面とシリンダ内壁間のくさび効果により油膜を形成するという特徴を有している。このような特徴から、主に自動車エンジンのセカンドリング(第二圧力リング)又はサードリング(第三圧力リング)として広く用いられている。
【0004】
テーパフェイス形圧力リングでは、上述したように、機密性はもとより充分なオイルコントロール機能を備えていることが必要であり、そのためには初期なじみの時点から長期間に亘ってテーパフェイス形状を維持させることが重要となる。…(後略)…」(段落【0001】ないし【0004】)

(イ)「【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その課題は、テーパフェイス形圧力リングの製造工程において、外周面の当たり幅を増加させることなく、均一且つ迅速に、初期なじみ面(当たり面)を形成することが可能なテーパフェイス形圧力リング用線材を提供することを課題とする。また、当たり幅を小さくし、エンジン走行距離に対応して摩耗が進んでも当たり幅の拡大が抑制され、よって、ピストンリング外周面とシリンダライナ壁面の間のフリクションを低減して燃費向上にも繋がる長寿命のテーパフェイス形圧力リングを提供することを課題とする。…(後略)…」(段落【0007】)

(ウ)「【0010】
すなわち、本発明のテーパフェイス形圧力リング用線材は、テーパフェイス形圧力リングの製造に使用される長尺の線材において、リングの外周面となる面に、互いに隣接し外周側に傾斜した第一のテーパ部と第二のテーパ部を有し、前記第二のテーパ部の傾斜角度θ2が前記第一のテーパ部の傾斜角度θ1よりも大きく、前記第二のテーパ部の外周側端部が前記第一のテーパ部の外周側端部より外周側に0.005?0.05 mm突出していることを特徴とする。前記第一のテーパ部の傾斜角度θ1は1?5°、前記第二のテーパ部の傾斜角度θ2は3?10°の範囲であることが好ましい。また、前記第二のテーパ部はリング幅寸法h1の1/2以下であることが好ましい。」(段落【0010】)

(エ)「【0014】…(中略)…さらに、本発明のテーパフェイス形圧力リングは、所定の当たり幅L’の当たり面が形成されているため、初期なじみに必要な時間が短く、第二のテーパ部が存在する限り当たり幅の著しい増加がないため、実質的にシリンダ壁への所定の面圧を長期間に亘って維持することが可能となり、よってオイル消費量も長期間に亘って低く維持することが可能となる。」(段落【0014】)

(オ)「【0016】
図1(a)は本発明の線材10の一実施形態を示す断面図、図1(b)はリング製造工程で第二のテーパ部2がラップ加工された部分の拡大図である。リングの外周面となる面に、互いに隣接し外周側に傾斜した幅Mの第一のテーパ部1と幅Lの第二のテーパ部2が形成されている。ここで、第二のテーパ部2の傾斜角度θ2は第一のテーパ部1の傾斜角度θ1よりも大きい。また、外周面となる面と上下面となる面との角部は、面取り又はR形状に成形され、特に、第二のテーパ部の下端はできるだけ小さなR形状(例えば、R0.1 mm)であることが好ましい。スリーブ中でラップ加工を施すと、第二のテーパ部2が優先的にスリーブ内周面に接触し、比較的短時間で幅L’の当たり面4が形成される。第二のテーパ部2の外周側端部Aは第一のテーパ部1の外周側端部Bより外周側に突出し、その突出量Hは0.005?0.05 mmとする。突出量Hが0.005 mm未満であると、ラップ加工により又はリングとして使用中に短時間で第二のテーパ部2が消失してしまい、エンジン運転中に摩耗が進んだ場合は初期性能の維持が困難になり好ましくない。また、リングの成形精度の影響を受けやすくなる点でも好ましくない。突出量Hが0.05 mmを超えると、この線材から製造されたリングは、ピストンの上昇行程でシリンダ壁に付着するオイルを掻き上げてオイル消費を増加させてしまう。突出量Hは0.01?0.04 mmが好ましい。また、第一のテーパ部1の傾斜角度θ1は1?5°、第二のテーパ部2の傾斜角度θ2は3?10°の範囲であることが好ましい。さらに、第二のテーパ部2の軸方向幅Lもリング幅寸法h1の1/2以下であることが好ましい。さらに、θ1/θ2が0.1?0.6の関係を満足することがより好ましい。」(段落【0016】)

(カ)「【0021】…(中略)…第二のテーパ部2の下端5はR0.1 mmとした。」(段落【0016】)

(3)甲3
甲3には、「内燃機関の1本リング構成ピストン」に関して、図1及び3とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、1本のリングのみを備えた内燃機関の1本リング構成ピストンに関する。」(段落【0001】)

(イ)「【0008】さらに、1本の圧力リングとオイルリングの組み合せからなる1本リング構成ピストンは、リング下面のガスシールができないため、ブローバイガスの抑制が不十分である。又、このピストンはリング溝が比較的広いため、リング溝に滞留するオイルが多くなるだけでなく、ピストンリングは、重量が増加し、実働時にピストンリングに作用するガス圧力、慣性力、摩擦力により各リングの挙動が複雑になり、姿勢が不安定となるため、リング本来の機能を発揮することができない。このため、この1本リング構成ピストンは、特に回転数が増加するとシール機能を失い燃焼室へのオイル上がりが生じてオイル消費量が増加するため、やはり実用にはならない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その課題は、1本リング構成ピストンの実用化である。このためには、ピストンに刻設された軸方向幅が比較的狭い1本のリング溝に装着することが可能であり、かつ十分なガスシール機能及びオイルコントロール機能を有するピストンリングを提供する必要がある。」(段落【0008】及び【0009】)

(ウ)「【0031】図3では、上側及び下側サイドレールをテーパ状としているが、上側又は下側サイドレールのどちらか一方をテーパ状に形成してもよい。」(段落【0031】)

(4)甲4
甲4には、「圧力リング用線材及び圧力リングとその製造方法」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関、圧縮機等に使用される圧力リングを製造するための線材、及び圧力リングとその製造方法に関する。」(段落【0001】)

(イ)「【0013】線材の上下面の判別を容易にするために、次の手段を採ることもできる。すなわち、リングの上面となる面に長手方向に沿って凹溝を形成する(請求項7)。凹溝の断面形状は特に問わず、円弧状や矩形形状などに形成される。」(段落【0013】)

(ウ)「【0019】上記製造方法によって、リング外周のテーパ面がロール成形やダイス引き抜き成形時の塑性加工面のままか、あるいは塑性加工面上に表面処理を施した面であり、平坦面がラッピング等による研磨加工面あるいは研磨加工面上に表面処理を施した面である圧力リング(請求項9)を得ることができる。これにより、テーパ面の研磨加工が不要で、平坦面の研磨加工の時間も短縮でき、安価な圧力リングを提供できる。なお、上記表面処理としては、燐酸塩皮膜処理、四三酸化鉄皮膜処理、硬質Crめっき、窒化、PVD等が適宜使用される。」(段落【0019】)

5.判断
(1)特許法第29条2項
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「第1圧力リング3及び第2圧力リング4」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件特許発明1における「圧力リング」に相当し、以下同様に、「オイルリング5」及び「組合せオイルリング」は「組合せオイルリング」に、「ピストンリング」は「ピストンリング」に、「ピストンリングが設けられる溝が形成されたピストン2」は「ピストンリングが組み付けられる溝が形成されたピストン」に、「リング溝7」は「オイルリング溝」に、「上側サイドレール10及び下側サイドレール11」は「上下一対のサイドレール」に、「スペーサエキスパンダ9」は「スペーサエキスパンダ」に、それぞれ相当する。
そして、甲1発明において「上側サイドレール10及び下側サイドレール11」が「環状に形成されるとともに、全体として平板状に形成され、シリンダ1と摺接する摺接部位を有」し、「上側サイドレールの内周側上面に切欠き溝12が形成され」ることと、本件特許発明1において「上下一対のサイドレール」が「平板で且つ環状に形成されると共に、シリンダと摺接する摺接部を有する」ことは、「上下一対のサイドレール」が「平板で且つ環状に形成されると共に、シリンダと摺接する摺接部を有する」という点で共通する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、
「少なくとも一本以上の圧力リングと一本の組合せオイルリングとから成るピストンリングが組み付けられる溝が形成されたピストンのオイルリング溝に装着され、平板で且つ環状に形成されると共に、シリンダと摺接する摺接部を有する上下一対のサイドレールと、
前記上下一対のサイドレールの間に配置されるスペーサエキスパンダを備えた組合せオイルリング」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本件特許発明1においては、「上下一対のサイドレールの少なくとも上側のサイドレールは、摺接部におけるピストンの軸方向に沿った断面形状が、前記ピストンの上方から下方に向かって直線状に拡がるテーパ形状であり、前記テーパ形状は、スペーサエキスパンダの中心軸に対し8?12°の角度を有し、前記サイドレールの下端から0.15mm以内に前記テーパ形状の頂点が位置し、前記頂点の位置より下端側が曲率でR0.01?0.5の曲線形状に形成されている」のに対し、甲1発明においては、そのような構成を有していない点(以下、「相違点」という。)。

上記相違点に関し、異議申立人は、「オイルの消費量の低減を図る」という点で共通の課題を有する甲2の記載事項を甲1発明に適用することによって、当業者が容易に想到し得たものであると主張している。
この異議申立人の主張について検討すれば、甲2には、内燃機関に使用されるピストンリングにおいて、リングの外周面となる面に、互いに隣接し外周側に傾斜した第一のテーパ部と第二のテーパ部を形成し、前記第二のテーパ部の傾斜角度θ2を3ないし10°の範囲とし、第二のテーパ部の下端はできるだけ小さなR形状(例えば、R0.1mm)とする旨が記載されている。
しかし、甲2記載の該ピストンリングは、「圧力リング」であって、上記甲2の記載事項「内燃機関のピストンには、3?4本のピストンリングが装着される。上部の2?3本のピストンリングは圧力リングと呼ばれ、燃焼室とクランク室との気密を保持するとともに、ピストンの熱をシリンダに伝達して放熱する機能を有する。また、下部の1?2本のピストンリングはオイルリングと呼ばれ、シリンダ内面に油膜を形成し、且つ、過剰なオイルを掻き落とす機能を有する」(上記4.(2)(ア)の段落【0002】参照。)からみて、「オイルリング」とは異なる位置に設けられ、主たる機能を異にするものである。
そして、甲2記載の技術事項は、「テーパフェイス形圧力リングの製造工程において、外周面の当たり幅を増加させることなく、均一且つ迅速に、初期なじみ面(当たり面)を形成することが可能なテーパフェイス形圧力リング用線材を提供すること」、及び「当たり幅を小さくし、エンジン走行距離に対応して摩耗が進んでも当たり幅の拡大が抑制され、よって、ピストンリング外周面とシリンダライナ壁面の間のフリクションを低減して燃費向上にも繋がる長寿命のテーパフェイス形圧力リングを提供すること」を技術課題とし(上記4.(2)(イ)参照。)、同課題の解決のために圧力リングの外周面にテーパ部を形成し、その傾斜角度及び該テーパ部の下端のR形状を特定したものである。
したがって、組合せオイルリングに係る甲1発明において、技術課題の異なる甲2記載の圧力リングに係る技術事項を適用することの動機づけがあったとすることはできない。ゆえに、上記相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項が、甲2の記載事項を甲1発明に適用することによって、当業者が容易に想到し得たとする異議申立人の主張は理由がない。
また、上記相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項は、甲3及び4に記載又は示唆されていない。
以上から、本件特許発明1は、甲1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、甲1ないし4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)特許法36条第2項
異議申立書の「3 申立ての理由」には、「(3)申立ての根拠」として、「・請求項1?5 条文 特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)」と記載されているが、特許請求の範囲の記載において、特許を受けようとする発明がどのような点で明確でないのか具体的な理由が記載されていない。
したがって、請求項1ないし5の記載が特許法第36条第6項第2号の要件を満たしているか否かについては判断しない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-12-26 
出願番号 特願2015-85042(P2015-85042)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F16J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐々木 佳祐  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 中村 達之
内田 博之
登録日 2017-04-07 
登録番号 特許第6122901号(P6122901)
権利者 日本ピストンリング株式会社
発明の名称 組合せオイルリング  
代理人 石橋 良規  
代理人 特許業務法人 インテクト国際特許事務所  

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