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審決分類 |
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 A23L 審判 全部無効 産業上利用性 A23L |
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管理番号 | 1336590 |
審判番号 | 無効2016-800074 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2016-06-24 |
確定日 | 2018-02-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3966527号発明「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第3966527号(以下「本件特許」という。)に係る手続の経緯は、以下のとおりである。 平成10年 6月12日 出願(特願平10-165696号) 平成19年 6月 8日 特許権の設定登録(請求項の数5) 平成22年 1月18日 訂正審判請求(訂正2010-390006号) 平成22年 2月25日 訂正2010-390006号審決(訂正認容、確定) (平成25年 3月25日 無効2012-800065号審決(請求不成立、確定)) (平成26年 5月 2日 無効2013-800173号審決(請求不成立、確定)) (平成26年 9月 3日 無効2014-800012号審決(請求不成立、確定)) 平成28年 6月24日 本件無効審判の請求 平成28年 9月 9日 答弁書の提出、乙1の1?11の5 (平成28年 9月14日 無効2015-800211号審決(請求不成立)) 平成28年10月13日 審理事項通知 (平成28年12月 9日 無効審判の請求(無効2016-800134号)) 平成28年12月19日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人) 平成28年12月26日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人) 平成29年 1月20日 第1回口頭審理 以下、本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まない。 また、「・・・」は記載の省略を意味し、証拠は、例えば甲第1号証を甲1のように略記する。 第2 本件特許に係る発明 本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1?5」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、確定した上記訂正2010-390006号審決(甲13)により訂正された訂正明細書及び図面(以下「本件明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 生海苔排出口を有する選別ケーシング、及び回転板、この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段、並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において、 前記防止手段を、突起・板体の突起物とし、この突起物を、前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。 【請求項2】 生海苔排出口を有する選別ケーシング、及び回転板、この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段、並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において、 前記防止手段を、突起・板体の突起物とし、この突起物を、前記生海苔混合液槽の内底面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。 【請求項3】 生海苔排出口を有する選別ケーシング、及び回転板、この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段、並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において、 前記防止手段を、突起・板体の突起物とし、この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。 【請求項4】 生海苔排出口を有する選別ケーシング、及び回転板、この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段、並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において、 前記防止手段を、突起・板体の突起物とし、この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。 【請求項5】 請求項1?請求項4に記載の生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置において、 前記突起・板体の突起物を、回転板の回転方向に傾斜する構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。」 第3 請求人の主張及び証拠方法 請求人は、「特許第3966527号は、これを無効とする」との審決を求め、以下の証拠方法を提出し、次の無効理由を主張する。 1 無効理由 (1) 無効理由1[特許法29条1項柱書] 本件明細書には、どのような構成の凹凸が本件発明の作用効果を発揮するものであるかについては全く開示されていないので、本件発明の目的を達成することができず、発明未完成であり、本件発明1?5は自然法則を利用した技術的思想の創作とは認められないので、特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしておらず、同法123条1項2号の規定に該当する。 (2) 無効理由2[特許法36条4項1号] 本件明細書には、どのような構成の凹凸が本件発明の作用効果を発揮するものであるかについては全く開示されていないので、本件発明の目的を達成することができず、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、同法36条4項1号に規定する要件を満たしておらず、同法123条1項4号の規定に該当する。 (3) 無効理由3[特許法36条6項1号] 本件明細書には、どのような構成の凹凸が本件発明の作用効果を発揮するものであるかについては全く開示されていないので、本件発明の目的を達成することができず、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されておらず、同法第36条6項1号に規定する要件を満たしておらず、同法123条1項4号の規定に該当する。 (4) 無効理由4[特許法36条6項2号] 本件明細書には、どのような構成の凹凸が本件発明の作用効果を発揮するものであるかについては全く開示されていないので、本件発明の目的を達成することができず、特許を受けようとする発明が明確ではなく、同法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず、同法123条1項4号の規定に該当する。 2 証拠方法 審判請求書に添付して甲1?甲8、口頭審理陳述要領書に添付して甲9?甲13が提出された。 甲1:特許第3966527号公報 甲2:平成28年(ワ)第2720号 特許権侵害差止等請求事件における訴状(平成28年1月29日付)(写し) 甲3:平成28年(ワ)第2720号 特許権侵害差止等請求事件における原告第4準備書面(平成28年3月31日付)(写し) 甲4:特願2015-154133号に係る平成27年9月25日付け拒絶理由通知書(写し) 甲5:甲4の拒絶理由通知書に対する平成27年10月5日付け手続補正書及び意見書(写し) 甲6:特許5843273号公報 甲7:無効2015-800211号に係る平成27年11月17日付け審判請求書(写し) 甲8:無効2015-800211号に係る平成28年6月10日付け審理事項通知書(写し) 甲9:無効2015-800211号に係る平成28年9月14日付け審決(写し) 甲10:特許第3966527号についての平成28年12月9日付け特許無効審判の審判請求書(写し) 甲11:登録実用新案第3053035号公報 甲12:フルタ電機株式会社製生海苔異物除去装置を撮像した写真(撮影者:(写真1?5)有限会社金子商会専務取締役金子武樹、(写真6?11)伊藤高英、撮影日:平成28年12月1日)(写し) 甲13:訂正2010-390006号の特許審決公報 なお、当事者間に甲1?甲13の成立に争いはない。 また、甲10は、本件発明1?5が無効理由1?4を有することを直接立証する証拠ではないものとされた(第1回口頭審理調書参照)。 第4 被請求人の主張 被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、以下の証拠方法を提出し、請求人が主張する無効理由は理由がないものであると主張する。 1 証拠方法 答弁書に添付して乙1の1?乙11の5が提出された。 乙1の1:判例時報2185号115?141頁(東地裁平成24年11月2日判決) 乙1の2:判例時報2192号105?122頁(知高裁平成25年4月11日判決) 乙2:無効2012-800065号に係る平成25年3月25日付け審決(写し) 乙3:東地裁平成26年(ヨ)第22019号仮処分命令申立事件に係る平成26年10月31日付け仮処分決定(写し) 乙4の1:平成25年(ワ)第32555号特許権侵害差止等請求事件に係る平成27年3月18日付け東京地裁判決(写し) 乙4の2:平成27年(ネ)第10048号に係る平成27年11月12日付け知財高裁判決(写し) 乙4の3:平成28年(受)第436号に係る平成28年8月16日付け最高裁調書(決定)(写し) 乙5の1:無効2013-800173号に係る平成26年5月2日付け審決(写し) 乙5の2:平成26年(行ケ)第10135号に係る平成27年7月16日付け知財高裁判決(写し) 乙5の3:平成27年(行ヒ)第428号に係る平成28年8月16日付け最高裁調書(決定)(写し) 乙6の1:無効2014-800012号に係る平成26年9月3日付け審決(写し) 乙6の2:平成26年(行ケ)第10223号に係る平成27年7月16日知財高裁判決(写し) 乙6の3:平成27年(行ヒ)第429号に係る平成28年8月16日付け最高裁調書(決定)(写し) 乙7:平成27年(ワ)第12480号特許権侵害差止等請求事件に係る平成28年6月30日付け東京地裁判決(写し) 乙8:無効2015-800211号に係る平成28年7月13日付け被請求人口頭審理陳述要領書(写し) 乙9:無効2015-800211号に係る平成28年7月13日付け請求人口頭審理陳述要領書(写し) 乙10:無効2015-800211号に係る平成28年7月26日付け請求人口頭審理陳述要領書(2)(写し) 乙11の1:無効2015-800211号に係る平成28年7月12日付け直送書(兼)7月13日付け受領書(写し) 乙11の2:無効2015-800211号に係る平成28年7月13日付け直送書(写し) 乙11の3:無効2015-800211号に係る平成28年7月22日付け直送書(写し) 乙11の4:無効2015-800211号に係る平成28年7月22日付け通知書(写し) 乙11の5:無効2015-800211号に係る平成28年7月25日付けFAX送信票及びFAX送付書(写し) なお、当事者間に乙1の1?乙11の5の成立に争いはない。 第5 当審の判断 1 無効理由1?4の前提となる主張について (1) 請求人は、本件発明1?5は、発明の構成要件である「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段としての突起・板体の突起物」が「凹凸部である」とした場合に、本件明細書及び図面における当該凹凸部に関する記載内容が不十分であり、本件明細書には、本件発明について「突起物として含まれる凹凸」の大きさについての具体的な数値は全く開示されておらず、凹凸によって異物を除去するメカニズムも全く開示されていないから、無効理由1?4を有する旨主張する(請求書7頁5?20行、同17頁24?26行)。 (2) そこで、まず上記主張について検討する。 本件発明1?5は、上記「第2」に示したとおり、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものと認められるところ、当該請求項1?5には、請求人が主張するような、「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段としての突起・板体の突起物」が「凹凸部である」という記載は見当たらない。 そして、上記請求項1?5の「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段・・・を、突起・板体の突起物と(する)」という記載は、その記載のとおりに、「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」としての「突起物」が「突起」又は「板体」に特定されていることを明確に理解できる。 そうすると、請求人の上記主張は、本件発明1?5の請求項の記載に基づかない事項を主張するものであり、採用することはできない。 よって、請求人の上記主張は当を得たものとはいえず、採用することはできない。 (3) なお、仮に、請求人の上記主張が、本件特許の請求項1?5中の「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段・・・を、突起・板体の突起物と(する)」という記載が明確でなく、当該「突起・板体の突起物」には「凹凸部」あるいは「凹凸」が含まれるという主張であるとしても、以下のとおり、当を得たものとはいえず、採用することはできない。 本件発明1?5の「生海苔の共回りを防止する防止手段」について本件明細書の記載を確認すると、本件明細書には、「防止手段6は、一例として寸法差部Aに設ける。図3、図4の例では、選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。また図5の例は、生海苔混合液槽2の内底面21に1ケ所又は数ヶ所設ける。さらに他の図6の例は、回転板34の円周面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示す。)に切り溝、凹凸、ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所、或いは全周に設ける。また図7の例は、選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは、このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。また図8の例では、回転板34の回転方向に傾斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(【0026】)と記載され、本件発明1?5の「防止手段」の実施例として、「突起・板体・ナイフ等の突起物」及び「切り溝、凹凸、ローレット等の突起物」が例示されている。 よって、本件発明1?5において、生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発生した生海苔の共回りを解消するとともに(防止効果)、生海苔の動きを矯正し、効率的にクリアランスに導く(矯正効果)ことによって、共回りの発生をなくし、クリアランスの目詰まりをなくすという機能を果たす構成が「突起・板体の突起物」であることを踏まえれば、本件発明1?5には、上記例示のうち、「ナイフ等の突起物」及び「切り溝、凹凸、ローレット等の突起物」は含まれないと解される。 その上で、請求人の主張する「凹凸部」あるいは「凹凸」が本件発明1?5に含まれ得るか否かを検討すると、「突起物」とは、円周端面等の所定の面から突き出たあるいはクリアランスに突き出たものと解されるところ、「凹凸部」あるいは「凹凸」の「凸」部分が、円周端面等の所定の面から突き出たあるいはクリアランスに突き出たものであって、生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発生した生海苔の共回りを解消するとともに(防止効果)、生海苔の動きを矯正し、効率的にクリアランスに導く(矯正効果)ことによって、共回りの発生をなくし、クリアランスの目詰まりをなくすという機能を果たす場合には、上記「凹凸部」あるいは「凹凸」の「凸」部分については、本件発明1?5の「突起・板体の突起物」に該当するものといえるが、「凹」部分を含めた「凹凸部」あるいは「凹凸」全体が「突起・板体の突起物」に該当するとまではいえない。 2 無効理由1について 請求人が無効理由1の根拠として主張する「本件明細書には、どのような構成の凹凸が本件発明1?5の作用効果を発揮するものであるかについては全く開示されていない」という理由は、上記1のとおり、本件発明1?5の請求項の記載に基づかない事項を主張するものであり、本件発明1?5が「自然法則を利用した技術的思想の創作」とは認められないとする理由ともならない。 また、請求人は、「本件訂正明細書には、明らかに本件発明の共回り防止機能を発揮することのない「切り溝」が開示されており、「防止手段としての突起・板体の突起物」の技術的範囲の判断基準となる構成に、発明の目的を達成することのできない構成の「切り溝」が存在し、発明未完成の構成を部分的に含むので、依然として無効理由1は存在するものであると思料する。」(口頭審理陳述要領書8頁14?18行)と主張する。 しかしながら、本件発明1?5の「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段・・・を、突起・板体の突起物と(する)」という構成から理解されるとおり、本件発明1?5には、本件発明1?5の「防止手段」の実施例として本件明細書に例示された「突起・板体・ナイフ等の突起物」及び「切り溝、凹凸、ローレット等の突起物」のうち、「ナイフ等の突起物」及び「切り溝、凹凸、ローレット等の突起物」は含まれないと解されるし(上記1(3)参照)、そもそも「本件発明の共回り防止機能を発揮することのない」ものは、本件発明1?5には含まれないことは明らかである。 よって、請求人の主張する上記理由によって、本件発明1?5が未完成発明であるとすることはできない。 また、甲1?12を参酌しても、上記判断を左右するものは見当たらない。 したがって、本件発明1?5は、特許法29条柱書に規定する要件を満たしていないとはいえず、同法123条1項2号に該当しない。 よって、本件発明1?5についての特許は、無効理由1により無効とすることはできない。 3 無効理由2について 請求人が無効理由2の根拠として主張する「本件明細書には、どのような構成の凹凸が本件発明1?5の作用効果を発揮するものであるかについては全く開示されていない」という理由は、上記1のとおり、本件発明1?5の請求項の記載に基づかない事項を主張するものであり、本件発明1?5が「その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない」とする理由とはならない。 そして、本件発明1?5の「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段・・・を、突起・板体の突起物と(する)」という構成については、本件明細書に、「防止手段6は、一例として寸法差部Aに設ける。図3、図4の例では、選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。また図5の例は、生海苔混合液槽2の内底面21に1ケ所又は数ヶ所設ける。さらに他の図6の例は、回転板34の円周面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示す。)に切り溝、凹凸、ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所、或いは全周に設ける。また図7の例は、選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは、このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。また図8の例では、回転板34の回転方向に傾斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(【0026】)と記載されるとおり、本件発明1?5の上記構成に対応する実施例が具体的かつ実施可能な程度に開示されている。 よって、請求人の主張する上記理由によって、本件発明1?5が「その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない」とすることはできない。 また、甲1?12を参酌しても、上記判断を左右するものは見当たらない。 したがって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないとはいえず、同法123条1項4号に該当しない。 よって、本件発明1?5についての特許は、無効理由2により無効とすることはできない。 4 無効理由3について 請求人が無効理由3の根拠として主張する「本件明細書には、どのような構成の凹凸が本件発明1?5の作用効果を発揮するものであるかについては全く開示されていない」という理由は、上記1のとおり、本件発明1?5の請求項の記載に基づかない事項を主張するものであり、本件発明1?5が「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでない」とする理由とはならない。 そして、本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書に「前記生海苔の異物分離除去装置・・・においては、・・・この共回りが発生すると、回転板の停止、又は作業の停止となって、結果的に異物分離作業の能率低下、当該装置の停止、海苔加工システム全体の停止等の如く、最悪の状況となることも考えられる。・・・共回りの発生を無くし、かつクリアランスの目詰まりを無くすこと、又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下、当該装置の停止、海苔加工システム全体の停止等の回避)を図ることにある。またこの防止手段を、簡易かつ確実に適切な場所に設置することを意図する。」(【0003】?【0005】)と記載されるところ、本件発明1?5の「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段・・・を、突起・板体の突起物と(する)」という構成は、「防止手段6は、一例として寸法差部Aに設ける。図3、図4の例では、選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。また図5の例は、生海苔混合液槽2の内底面21に1ケ所又は数ヶ所設ける。さらに他の図6の例は、回転板34の円周面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示す。)に切り溝、凹凸、ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所、或いは全周に設ける。また図7の例は、選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは、このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。また図8の例では、回転板34の回転方向に傾斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(【0026】)との記載中に例示されているとおり、発明の詳細な説明に記載されたものであり、かかる「防止手段」は、「このクリアランスに導かれる際に、生海苔の共回りが発生しても、本発明では、防止手段に達した段階で解消される(防止効果)。尚、前記防止手段は、単なる解消に留まらず、生海苔の動きを矯正し、効率的にクリアランスに導く働きも備えている(矯正効果)。」(【0020】)という効果を発揮し、「生海苔が回転板とともに回転すること、及び喰込んだ状態で回転すること、等の共回りの解消に役立つ。またクリアランスの目詰まり解消、又は生海苔の矯正と、効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下、当該装置の停止、海苔加工システム全体の停止等の回避)を図る。」(【0029】)ものであって、上記課題を解決できると認識できるものである。 そうすると、本件発明1?5は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、請求人の主張する上記理由によって、本件発明1?5が「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでない」とすることはできない。 また、甲1?12を参酌しても、上記判断を左右するものは見当たらない。 したがって、本件特許は、本件発明1?5に係る請求項の記載が、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないとはいえず、同法123条1項4号に該当しない。 よって、本件発明1?5についての特許は、無効理由3により無効とすることはできない。 5 無効理由4について 請求人が無効理由4の根拠として主張する「本件明細書には、どのような構成の凹凸が本件発明1?5の作用効果を発揮するものであるかについては全く開示されていない」という理由は、上記1のとおり、本件発明1?5の請求項の記載に基づかない事項を主張するものであり、本件発明1?5が「特許を受けようとする発明が明確でない」とする理由とはならない。 そして、本件発明1?5の特許請求の範囲の記載は、その記載のとおりに発明を明確に理解することができる。 なお、仮に、請求人の上記主張が、本件発明1?5の「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段・・・を、突起・板体の突起物と(する)」という記載が明確でなく、当該「突起・板体の突起物」には「凹凸」が含まれるという主張であるとしても、上記1(3)に示したとおり、当を得たものではなく、本件発明1?5が「特許を受けようとする発明が明確でない」とする理由とはならない。 よって、請求人の主張する上記理由によって、本件発明1?5が「特許を受けようとする発明が明確でない」とすることはできない。 また、甲1?12を参酌しても、上記判断を左右するものは見当たらない。 したがって、本件特許は、本件発明1?5に係る請求項の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないとはいえず、同法123条1項4号に該当しない。 よって、本件発明1?5についての特許は、無効理由4により無効とすることはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1?4はいずれも理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては本件発明1?5に係る特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-02-28 |
結審通知日 | 2017-03-03 |
審決日 | 2017-03-14 |
出願番号 | 特願平10-165696 |
審決分類 |
P
1
113・
536-
Y
(A23L)
P 1 113・ 537- Y (A23L) P 1 113・ 14- Y (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山中 隆幸、千葉 直紀、三原 健治 |
特許庁審判長 |
中村 則夫 |
特許庁審判官 |
千壽 哲郎 窪田 治彦 |
登録日 | 2007-06-08 |
登録番号 | 特許第3966527号(P3966527) |
発明の名称 | 生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置 |
代理人 | 中尾 俊輔 |
代理人 | 伊藤 高英 |
代理人 | 伊藤 高英 |
代理人 | 小南 明也 |
代理人 | 中尾 俊輔 |