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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
管理番号 1337014
異議申立番号 異議2017-700470  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-15 
確定日 2017-12-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6027412号発明「積層体および装飾性付与方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6027412号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを認める。 特許第6027412号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許6027412号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成24年11月16日を出願日とする出願であって、平成28年10月21日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人村戸良至(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年7月5日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年9月4日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)に対して申立人から平成29年10月10日に意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
本件訂正の内容は、以下の訂正事項からなるものである。それぞれの訂正事項を訂正箇所に下線を付して示す。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に、
「前記基材は、一色で着色されており、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする積層体。」とあるのを、
「前記基材は、一色で着色されており、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料であり、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする積層体。」と訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の明細書の段落【0007】に、
「前記基材は、一色で着色されており、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする」とあるのを、
「前記基材は、一色で着色されており、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料であり、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする」と訂正する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項2に、
「前記基材と前記表面図柄層との間に設けられた一色で着色された下地層と、を備え、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする積層体。」とあるのを、
「前記基材と前記表面図柄層との間に設けられた一色で着色された下地層と、を備え、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料であり、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする積層体。」と訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の明細書の段落【0007】に、
「前記基材と前記表面図柄層との間に設けられた一色で着色された下地層と、を備え、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする。」とあるのを、
「前記基材と前記表面図柄層との間に設けられた一色で着色された下地層と、を備え、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料であり、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする。」と訂正する。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項3に、
「前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成する
ことを特徴とする装飾性付与方法。」とあるのを、
「前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成し、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料である
ことを特徴とする装飾性付与方法。」と訂正する。

(6)訂正事項6
訂正前の明細書の段落【0008】に、
「前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成する
ことを特徴とする。」とあるのを、
「前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成し、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料である
ことを特徴とする。」と訂正する。


(7)訂正事項7
訂正前の請求項4に、
「前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成する
ことを特徴とする装飾性付与方法。」とあるのを、
「前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成し、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料である
ことを特徴とする装飾性付与方法。」と訂正する。

(8)訂正事項8
訂正前の明細書の段落【0008】に、
「前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成する
ことを特徴とする。」とあるのを、
「前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成し、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料である
ことを特徴とする。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1、3、5、7について
訂正事項1、3、5、7は、本件訂正前の請求項1、2、3、4にそれぞれ記載された基材の厚みについて、「5μm以上1mm以下」と数値により限定し、同様に基材の材質について、「合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料」と限定するものであるから、いずれの訂正事項も、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書の段落【0014】には、「基材2の厚さ寸法は、特に限定されるものではなく、例えば、3μm以上10mm以下が好ましく、特に5μm以上1mm以下が好ましい。」と記載され、同段落【0013】には、「基材2としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、・・・などの合成樹脂フィルムや、上質紙、含浸紙、・・・などの紙材や、不織布、木材等のシート材料や板状材料を用いることができる。」との記載があるから、訂正事項1、3、5、7は、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものでないことは、明らかであるから、特許法第120の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2、4、6、8について
訂正事項2、4、6、8は、本件訂正前の請求項1、2、3、4をそれぞれ訂正する上記訂正事項1、3、5、7と整合させるために、本件特許明細書の段落【0007】あるいは【0008】に記載された基材の厚みや材質について訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、上記(1)に示したように、訂正事項1、3、5、7は、新規事項を追加するものではないから、訂正事項2、4、6、8も新規事項を追加するものではないことは明らかであり、さらに、特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものでないことも、明らかである。したがって、訂正事項2、4、6、8は、特許法第120の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正事項2、4、6、8は、願書に添付した明細書を訂正するものであって、それぞれの訂正事項に係る当該明細書の訂正に係る請求項の全て、すなわち、訂正事項2は請求項1を、訂正事項4は請求項2を、訂正事項6は請求項3を、訂正事項8は請求項4について行うものである。したがって、訂正事項2、4、6、8は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条4項の規定に適合する。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、本件訂正後の請求項1?4について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて

1.本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
基材と、
前記基材の一方の面の上にインクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて形成された図柄を有する表面図柄層と、
前記基材の他方の面に形成された粘着剤層と、を備え、
前記基材は、一色で着色されており、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料であり、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
基材と、
前記基材の一方の面の上にインクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて形成された図柄を有する表面図柄層と、
前記基材の他方の面に形成された粘着剤層と、
前記基材と前記表面図柄層との間に設けられた一色で着色された下地層と、を備え、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料であり、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする積層体。
【請求項3】
一色で着色された基材の一方の面の上に、インクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて凸部の高さが13μm以上495μm以下の図柄をインクジェット印刷し、
前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成し、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料である
ことを特徴とする装飾性付与方法。
【請求項4】
基材の一方の面の上に形成された一色で着色された下地層に、インクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて凸部の高さが13μm以上495μm以下の図柄をインクジェット印刷し、
前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成し、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料である
ことを特徴とする装飾性付与方法。」

2.取消理由の概要
本件発明1?4のそれぞれに係る特許に対して平成29年7月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
なお、申立人が主張する全ての申立理由は、当該取消理由に含まれている。

【理由1】 下記の本件発明は、本件特許に係る出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
なお、以下、甲第1号証等を、「甲1」等といい、甲第1号証に記載された発明を、「甲1発明」等という。



(1)本件発明1
本件発明1は、甲1発明?甲3発明のいずれかの発明、及び、従来周知の事項(例えば、甲4?8に例示)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件特許発明2
本件発明2は、甲1発明?甲3発明のいずれかの発明、及び、従来周知の事項(例えば、甲4?8に例示)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件特許発明3
本件発明3は、甲1発明?甲3発明のいずれかの発明、及び、従来周知の事項(例えば、甲4?8に例示)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明4
本件発明4は、甲1発明?甲3発明のいずれかの発明、及び、従来周知の事項(例えば、甲4?8に例示)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

<刊 行 物 一 覧>
甲1:国際公開第2008/044515号
甲2:国際公開第2010/013667号
甲3:特開2011-6537号公報
甲4:特開2002-103552号公報
甲5:特開2005-246892号公報
甲6:特開2005-105256号公報
甲7:特開2001-219515号公報
甲8:特開2010-228179号公報
甲9:特開2010-83139号公報

【理由2】 本件特許の特許請求の範囲の記載は、下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。


1.本件発明1及び3について
本件発明1の「基材は、一色で着色されており」及び本件発明3の「一色で着色された基材」の「一色」が、具体的にどのような着色方法で、どの範囲までを一色とするか、どのような色の種類を示すか、一色とは具体的に色差としてどの範囲までを示すのか等が不明である。
また、本件特許明細書には、「一色で着色された基材」としては、基材表面全面が黒色又はシルバー色でベタ状に印刷された基材のみしか記載されておらず、本件発明1及び3は、発明の詳細に記載した範囲を超えている。

2.請求項2及び4について

(1)本件発明2及び4の「一色で着色された下地層」の「一色」が、具体的にどのような着色方法で、どの範囲までを一色とするか、どのような色の種類を示すか、一色とは具体的に色差としてどの範囲までを示すのか等が不明であり、本件特許明細書の実施例にも基材上に下地層を備えた積層体の例は全く記載されていない。

(2)本件特許明細書の実施例には基材上に下地層を備えた積層体の例は全く記載されておらず、凸部の高さを「13μm以上495μm以下」とすることの作用・効果は、あくまで基材上に直接凸部を形成した場合であり、基材上に下地層を備えた構成にまで及ぶものではないことから、下地層を有する構成に係る請求項2及び4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えている。

3.当審の判断

(1)【理由2】について
事案に鑑み、まず、【理由2】から検討する。

(1-1)【理由2】の1について
基材の着色について、本件特許明細書には以下の記載がある。

「【0006】
本発明は、新規な装飾性を有する積層体および装飾性付与方法を提供することである。」
「【0009】
本発明の積層体は、基材上に透明インクで形成された表面図柄層を備えるので、当該積層体を目視する角度や、当該積層体に当たる光の角度によって、表面図柄層に当たった光の反射の仕方が変化し、図柄や積層体の印象が大きく変化する。ゆえに、本発明によれば、従来に無い、新規な装飾性を有する積層体を提供することができる。
なお、本発明において透明インクにおける透明とは、無色透明および有色透明である場合を含む。また、本発明において図柄とは、絵画、イラスト、写真、模様などを含み、いわゆるベタ状に印刷されたものとは異なる。
【0010】
また、本発明の装飾性付与方法は、基材の上に、透明インクを用いて図柄を印刷するので、上述の本発明の積層体と同様、当該図柄の見え方や積層体の印象が、目視する角度等によって変化する。ゆえに、本発明の装飾性付与方法によれば、従来に無い、新規な装飾性を積層体へ付与することができる。」
「【0012】
〔実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
・・・
積層体1は、基材2と、基材2に一方の面に形成された下地層3と、下地層3の上に形成された表面図柄層4と、基材2の他方の面に形成された粘着剤層5と、を備える。このように、積層体1は、表面図柄層4による装飾性と、粘着剤層5による粘着性とを有する装飾性粘着シートである。」
「【0015】
下地層3は、基材2と表面図柄層4との間に設けられた一色以上の色で着色されている層であり、図柄が印刷されていてもよい。図柄は、絵画、イラスト、写真、模様などを含む。
下地層3は、例えば、印刷、印字、塗料の塗布、転写シートからの転写、蒸着、スパッタリング等の方法によって形成することができる。基材2の一方の面には、下地層3を形成するための易接着コート、あるいはグロス調整用コート等のアンダーコート層が形成されていてもよい。また、下地層3は、基材2の全面に形成されていてもよいし、部分的に形成されていてもよい。・・・
【0016】
表面図柄層4は、下地層3の上に透明インクを用いて図柄を印刷することで形成された層である。図柄は、絵画、イラスト、写真、模様などを含み、いわゆるベタ状に印刷されたものとは異なり、部分的に印刷されたものである。」
「【0019】
表面図柄層4の図柄は、下地層3の図柄の一部もしくは全体と対応した位置に形成されていてもよい。下地層3の図柄の上に、透明インクで表面図柄層4が形成されていることで、下地層3の図柄を立体的に視認させたり、下地層3の図柄に光沢感を付与させたりすることができ、積層体1の付加価値を高めることができる。」
「【0026】
また、前記実施形態では、基材と表面図柄層との間に下地層が設けられた積層体を例に挙げて説明したが、下地層が無い積層体であってもよい。
例えば、基材が着色されている着色基材であって、当該基材に直接、透明インクで図柄を印刷して表面図柄層を形成してある態様でもよい。
・・・」
「【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の積層体は、内装材(壁、天井、柱)、看板、マーキングフィルム(車両、鉄道、船舶、航空機)、ガラス、パネル、ふすま、包装紙、包装袋等の種々の用途の新規装飾性付与に利用できる。」

以上の記載から、本件発明は、内装材(壁、天井、柱)、看板、マーキングフィルム(車両、鉄道、船舶、航空機)、ガラス、パネル、ふすま、包装紙、包装袋等の種々の用途の新規装飾性付与に利用できる積層体に関するもので、従来の積層体とは異なる新規な装飾性を有する積層体および装飾性付与方法を提供することを課題とするものである(【0034】、【0006】、【0009】)。
そのために、本件発明の積層体は、基材と、基材の一方の面に形成された下地層と、下地層の上に形成された表面図柄層と、基材の他方の面に形成された粘着剤層と、を備えるものである。そして、下地層は、基材と表面図柄層との間に設けられた一色以上の色で着色されている層であり、図柄が印刷されていてもよいものであり、図柄は、絵画、イラスト、写真、模様などを含むものである(【0012】、【0015】)。
また、上記本件発明は、基材が着色されている着色基材であって、当該基材に直接、透明インクで図柄を印刷して表面図柄層を形成してある態様をとることもできる(【0026】)。
したがって、本件発明は、一色以上の色で着色されている下地層、あるいは基材の図柄の上に、透明インクで表面図柄層が形成されていることで、下地層の図柄を立体的に視認させたり、下地層の図柄に光沢感を付与させたりすることができ、積層体の付加価値を高めることができるとの格別な作用効果を奏するものである(【0019】)。

そうすると、本件発明が上記課題を解決するのは、一色、すなわち一つ以上の色で着色されているか、あるいは図柄が印刷された下地層、もしくは、基材の上に、透明インクで表面図柄層を形成することで、下地層等に印刷した図柄を立体的に視認させたり、図柄に光沢感を付与させたりすることができ、積層体の付加価値を高められるからである。したがって、透明インクで形成された表面図柄層を透して視認できるならば、上記本件発明の課題が解決できることは当業者にとって明らかである。

ここで、「一色」について、一般的な意味をみると、「一つの色」(広辞苑 第六版)であるが、上記本件発明の課題を解決するにあたっては、下地層、もしくは、基材の上に印刷した色が表面図柄層を透して視認できればよいのであるから、「一色」とは、視覚によって一つの色であると認識できる程度のもので十分であって、そのように解して、本件特許明細書の他の箇所と矛盾は生じない。

また、本件発明1及び3の基材はいずれも一色で着色されたものであって、その上にインクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて印刷が施されたものであるから、当該透明インクを透して、着色された基材が視認できることは明らかである。そうすると、本件特許明細書に記載されている「一色」が「黒色」と「シルバー」のみであり、本件発明1及び3が他の色の場合であったとしても、本件発明1及び3が、上記本件特許の課題を解決することは明らかである。
よって、本件発明1及び3は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものではない、ということはできない。

(1-2)【理由2】の2.(1)について
本件発明2及び4の下地層はいずれも一色で着色されたものであって、かつ、その上にインクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて印刷が施されたものである。そうすると、本件発明2及び4も、一色で着色された下地層を、当該透明インクを用いて印刷が施された部分を透して視認することができ、上記(1-1)に示した本件発明の課題を解決するものであることは、当業者にとって明らかである。
よって、本件発明2及び4は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものではない、ということはできないから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない、とはいえない。

(1-3)【理由2】の2.(2)について
上記(1-1)に示したように、本件発明が解決しようとする課題は、インクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクにより形成あるいは印刷された箇所を透して、その下の一色で着色された基材、あるいは下地層が視認できれば解決するものである。したがって、着色、もしくは、印刷される対象が、下地層であるか基材であるかによって、当該課題が解決されるか否かが左右されないことは明らかである。
したがって、本件特許明細書に記載された凸部の高さを「13μm以上495μm以下」とした実施例が、基材上に直接凸部を形成した場合のみであったとしても、下地層に当該凸部を有する本願発明2及び4が、上記課題を解決することは明らかであるから、本件発明2及び4は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない、ということはできないから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない、とはいえない。

(2)【理由1】について

(2-1)甲1発明を主とする【理由1】について

ア.甲1に記載された事項及び発明
甲1には、3ページ24?27行、4ページ7?9、14?22、24?25行、7ページ8?13行、11ページ1?14行、14ページ20?28行の記載があり、当該記載から、以下の甲1物発明及び甲1方法発明が記載されていると認める。

甲1物発明
「天然皮革と、
天然皮革の一方の面の上にインクジェットプリンター用紫外線硬化型インクを用いて形成された模様を有する樹脂部と、
前記天然皮革と前記樹脂部との間に設けられた着色された下塗り層と、を備え、
前記樹脂部の最大厚みは20μm?400μmである、
下塗り層を有する天然皮革。」

甲1方法発明
「天然皮革の一方の面の上に形成された着色された下塗り層に、インクkじぇっとプリンター用紫外線硬化型インクを用いて模様をインクジェット印刷する、
方法。」

イ.本件発明1と甲1物発明との対比・検討
本件発明1と甲1物発明とを対比すると、少なくとも以下の<相違点1>で相違する。

<相違点1>
本件発明1は、「合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料」を基材とするものであるのに対し、甲1発明の天然皮革は、「合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料」ではない点。

そこで相違点1について検討する。甲1には、以下の記載がある。

「発明の目的
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、皮革表面に立体模様が形成された天然皮革であって、小さな点や細い線など細やかな立体表現 が可能で、 立体模様の自由度が高く、かつ、経時による立体模様の消失がなく、しかも、天然皮革特有の持ち味が維持された天然皮革を提供することにある。
発明の要約
すなわち、本発明は第1に、下塗り層が形成された天然皮革の下塗り層表面に、模様状に部分的に被覆した樹脂部からなる立体模様をもち、該樹脂部の最大厚みが20?400μmの範囲内にあることを特徴とする立体模様形成天然皮革である。樹脂部が下塗り層表面を被覆する割合は、3?60%の範囲内にあることが好ま しい。
・・・
本発明は第2に、天然皮革の表面に下塗り層形成用塗料を塗布し、熱処理を施して、下塗り層を形成する工程、および、該下塗り層表面に樹脂部形成用塗料を模様状に部分的に塗布し、熱処理または紫外線照射を施して、樹脂部からなる立体模様を形成する工程を含む立体模様形成天然皮革の製造方法であって、該樹脂部の最大厚みが20?400μmの範囲内にあることを特徴とする、立体模様形成天然皮革の製造方法である。
発明の効果
本発明によれば、小さな点や細い線など細やかな立体表現が可能で、自由度の高い立体模様が形成された天然皮革を提供することができる。しかも、経時による立体模様の消失がなく、天然皮革特有の持ち味が損なわれることもない。 」(2ページ12行?3ページ10行)

そうすると、甲1物発明は、天然皮革特有の持ち味を損なわないことが、発明の効果であるから、甲1物発明において下塗り層や樹脂部を設けるものとして、「合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料」を選択する動機付けはないし、むしろ天然皮革以外のものを選択することに阻害事由があるといわざるを得ない。
したがって、甲1物発明を、上記<相違点1>に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明1は、甲1物発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
よって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。

ウ.本件発明2と甲1物発明との対比・検討
本件発明2と甲1物発明とを対比すると、少なくとも上記イ.に示した<相違点1>において相違する。
そして、甲1物発明において、<相違点1>に係る構成を備えたものとすることは、上記イ.に示したように、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明2は、甲1物発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

エ.本件発明3と甲1方法発明との対比・検討
本件発明3と甲1方法発明とを対比すると、少なくとも上記イ.に示した<相違点1>で相違する。

そして、上記イ.に示した甲1の摘記から、甲1方法発明においても、天然皮革特有の持ち味を損なわないことが、発明の効果であり、甲1方法発明において下塗り層や樹脂部を設けるものとして、「合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料」を選択する動機付けはないし、むしろ天然皮革以外のものを選択することに阻害事由があるといわざるを得ない。
したがって、甲1方法発明を、上記<相違点1>に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明3は、甲1方法発明及び従来周知の事項に基いて、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができたいものではない。

オ.本件発明4と甲1方法発明との対比・検討
本件発明4と甲1方法発明とを対比すると、少なくとも上記イ.に示した<相違点1>で相違する。
そして、甲1方法発明において、<相違点1>に係る構成を備えたものとすることは、上記イ.に示したように、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明4は、甲1方法発明及び従来周知の事項に基いて、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

(2-2)甲2発明を主とする【理由1】について

ア.甲2に記載された事項及び発明
甲2には、[0015]、[0016]、[0021]、[0039]、[0044]、[0052]?[0054]、[0073]、[図6]の記載があり、当該記載から、以下の甲2物発明及び甲2方法発明が記載されていると認める。

甲2物発明
「合成樹脂成形品である基材と、
基材の一方の面の上にインクジェットプリンター用紫外線硬化型インクを用いて形成された凸状部と、
前記基材と前記凸状部との間に設けられた、着色されたベース塗装部と、を備え、
前記立体模様の凸状部の高さが20μm以上200μm以下である、
ことを特徴とする積層体。」

甲2方法発明
「合成樹脂成形品である基材の一方の面の上に形成された着色されたベース塗装部に、インクジェットプリンター用紫外線硬化型インクを用いて凸部の高さが20μm以上200μm以下の立体模様をインクジェット印刷する、
方法。」

イ.本件発明1と甲2物発明との対比・検討
本件発明1と甲2物発明とを対比すると、少なくとも以下の<相違点2>で相違する。

<相違点2>
本件発明1の基材は、図柄を有する側の面を一方の面としたときに、他方の面に粘着剤層が形成され、厚みが5μm以上1mm以下であり、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料であるのに対し、甲2物発明の合成樹脂成形品である基材が、凸状部を有する側の面を一方の面としたときに、他方の面に粘着剤層が形成されるか否か、そしてその厚みが5μm以上1mm以下であるか、そして甲2物発明が、シート材料であるかが明らかではない点。

そこで相違点2について検討する。甲2には、甲2物発明の合成樹脂成形品である基材の厚みを5μm以上1mm以下とし、かつ、図柄を有する側の面を一方の面としたときに、他方の面に粘着剤層を形成する点が記載されていないし、示唆する記載もない。また、他の甲号証にも、この点記載はないし、示唆する記載もない。
本件発明1は、上記相違点2に係る構成を備えることで、「・・・厚みが3μm未満だと厚みが薄いために基材2のコシが弱く、下地層3、表面図柄層4、および粘着剤層5の形成工程における基材2の硬さが不足し、支持体としての機能を果たせないために各種加工工程で支障をきたす場合がある。厚みが10mmを超えると、厚みが増してコシが強すぎて、長尺のロール状に巻くことが困難となったり、重量が増したりする場合がある。・・・」(本件特許明細書の【0014】)との問題点がなく、「・・・当該積層体を目視する角度や、当該積層体に当たる光の角度によって、表面図柄層に当たった光の反射の仕方が変化し、図柄や積層体の印象が大きく変化する。ゆえに、本発明によれば、従来に無い、新規な装飾性を有する積層体」(同【0009】)を、「・・・被着体に貼り合わせる」(同【0020】)ことで、「・・・壁、窓、天井、柱などの内装に用いたり、ガラスや透明プラスチック等の透明素材の装飾に用いたり、看板に用いたり、車両や自動車のマーキングに用いたり、小物類に用いたりすることができる」との格別な作用効果を奏するものである。
したがって、甲2物発明を、上記<相違点2>に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明1は、甲2物発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
よって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

ウ.本件発明2と甲2物発明との対比・検討
本件発明2と甲2物発明とを対比すると、少なくとも上記イ.に示した<相違点2>において相違する。
そして、甲2物発明において、<相違点2>に係る構成を備えたものとすることは、上記イ.に示したように、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明2は、甲2物発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

エ.本件発明3と甲2方法発明との対比・検討
本件発明3と甲2方法発明とを対比すると、少なくとも上記イ.に示した<相違点2>において相違する。
そして、甲2方法発明の基材において、<相違点2>に係る構成を備えたものとすることは、上記イ.に示したように、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明3は、甲2方法発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明3は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

オ.本件発明4と甲2方法発明との対比・検討
本件発明4と甲2方法発明とを対比すると、少なくとも上記イ.に示した<相違点2>において相違する。
そして、甲2方法発明の基材において、<相違点2>に係る構成を備えたものとすることは、上記イ.に示したように、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明4は、甲2方法発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明4は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

(2-3)甲3発明を主とする【理由1】について

ア.甲3に記載された事項及び発明
甲3には、【0006】、【0010】、【0013】、【0033】、【0036】、【0042】、【0048】?【0051】、【0053】、【0054】の記載があり、当該記載から、以下の甲3物発明及び甲3方法発明が記載されていると認める。

甲3物発明
「基材と、
前記基材の一方の面の上にインクジェットプリント用インクを用いて形成された凸模様と、
前記凸模様のインクによる高さが85μm以上95μm以下である、
シート。」

甲3方法発明
「基材の一方の面の上に、インクジェットプリンタ用紫外線硬化型インクを用いて、凸模様の高さが85μm以上95μm以下の模様をインクジェット印刷する
シートの製造方法」

イ.本件発明1と甲3物発明との対比検討
本件発明1と甲3物発明とを対比すると、少なくとも以下の<相違点3>で相違する。

<相違点3>
本件発明1の基材は、図柄を有する側の面を一方の面としたときに、他方の面に粘着剤層が形成され、厚みが5μm以上1mm以下であり、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料であるのに対し、甲3物発明の基材が、凸模様を有する側の面を一方の面としたときに、他方の面に粘着剤層が形成されるか否か、そしてその厚みが5μm以上1mm以下であるかが不明である点。

そこで相違点3について検討する。甲3には、甲3物発明の基材の厚みを5μm以上1mm以下とし、かつ、図柄を有する側の面を一方の面としたときに、他方の面に粘着剤層を形成する点が記載されていないし、示唆する記載もない。また、他の甲号証にも、この点記載はないし、示唆する記載もない。
本件発明1は、上記相違点3に係る構成を備えることで、上記(2-2)イ.に示した格別な作用効果を奏するものである。
したがって、甲3物発明を、上記<相違点3>に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明1は、甲3物発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
よって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

ウ.本件発明2と甲3物発明との対比・検討
本件発明2と甲3物発明とを対比すると、少なくとも上記イ.に示した<相違点3>において相違する。
そして、甲3物発明において、<相違点3>に係る構成を備えたものとすることは、上記イ.に示したように、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明2は、甲3物発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

エ.本件発明3と甲3方法発明との対比・検討
本件発明3と甲3方法発明とを対比すると、少なくとも上記イ.に示した<相違点3>において相違する。
そして、甲3方法発明の基材において、<相違点3>に係る構成を備えたものとすることは、上記イ.に示したように、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明3は、甲3方法発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明3は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

オ.本件発明4と甲3方法発明との対比・検討
本件発明4と甲3方法発明とを対比すると、少なくとも上記イ.に示した<相違点3>において相違する。
そして、甲3方法発明の基材において、<相違点3>に係る構成を備えたものとすることは、上記イ.に示したように、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明4は、甲3方法発明及び従来周知の事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、本件発明4は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?4に係る特許については、上記取消理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件発明1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
積層体および装飾性付与方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および装飾性付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な手法により積層体に加工を施して、装飾性の向上や多様化が検討されている。積層体は、内装材、包装紙、包装袋等の用途で適用されている。
例えば、特許文献1には、光輝性ホログラム装飾シートが記載されている。この光輝性ホログラム装飾シートは、ベースシートと、ポリエステル層と、光反射層と、絵柄層と、ホログラムエンボス層とが、順次、積層された積層体である。特許文献1によれば、絵柄層に透明な常温硬化型樹脂を塗布した後、ホログラムエンボス版を用いて賦形し、乾燥および硬化を経ることで、ホログラムエンボス層の凹凸面をシャープに仕上げることが可能であると記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、チューブ容器に用いる積層体が記載されている。この積層体は、内面樹脂層と、表面印刷投影層と、立体装飾樹脂層と、表面印刷とが、この順に積層されて構成される。表面印刷は、立体装飾樹脂層上に、文字や絵柄などを印刷して形成する。特許文献2によれば、表面印刷の文字や絵柄等の影が表面印刷投影層中の金属箔層面に投影され、文字や絵柄等が、その投影された影と多少のずれを生じて重なって、表面に印刷された文字や絵柄を立体的に表現できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-55633号公報
【特許文献2】特開2010-234719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、装飾性のさらなる向上や多様化の観点から、特許文献1や特許文献2に記載された積層体とは異なる新規な装飾性を有する積層体が要望されている。
【0006】
本発明は、新規な装飾性を有する積層体および装飾性付与方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積層体は、
基材と、
前記基材の一方の面の上にインクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて形成された図柄を有する表面図柄層と、
前記基材の他方の面に形成された粘着剤層と、を備え、
前記基材は、一色で着色されており、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料であり、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする。
また、本発明の積層体は、
基材と、
前記基材の一方の面の上にインクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて形成された図柄を有する表面図柄層と、
前記基材の他方の面に形成された粘着剤層と、
前記基材と前記表面図柄層との間に設けられた一色で着色された下地層と、を備え、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料であり、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の装飾性付与方法は、
一色で着色された基材の一方の面の上に、インクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて凸部の高さが13μm以上495μm以下の図柄をインクジェット印刷し、
前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成し、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料である
ことを特徴とする。
また、本発明の装飾性付与方法は、
基材の一方の面の上に形成された一色で着色された下地層に、インクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて凸部の高さが13μm以上495μm以下の図柄をインクジェット印刷し、
前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成し、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料である
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の積層体は、基材上に透明インクで形成された表面図柄層を備えるので、当該積層体を目視する角度や、当該積層体に当たる光の角度によって、表面図柄層に当たった光の反射の仕方が変化し、図柄や積層体の印象が大きく変化する。ゆえに、本発明によれば、従来に無い、新規な装飾性を有する積層体を提供することができる。
なお、本発明において透明インクにおける透明とは、無色透明および有色透明である場合を含む。また、本発明において図柄とは、絵画、イラスト、写真、模様などを含み、いわゆるベタ状に印刷されたものとは異なる。
【0010】
また、本発明の装飾性付与方法は、基材の上に、透明インクを用いて図柄を印刷するので、上述の本発明の積層体と同様、当該図柄の見え方や積層体の印象が、目視する角度等によって変化する。ゆえに、本発明の装飾性付与方法によれば、従来に無い、新規な装飾性を積層体へ付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る積層体1の断面図である。
積層体1は、基材2と、基材2に一方の面に形成された下地層3と、下地層3の上に形成された表面図柄層4と、基材2の他方の面に形成された粘着剤層5と、を備える。このように、積層体1は、表面図柄層4による装飾性と、粘着剤層5による粘着性とを有する装飾性粘着シートである。
【0013】
基材2としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂などの合成樹脂フィルムや、上質紙、含浸紙、グラシン紙、コート紙などの紙材や、不織布、木材等のシート材料や板状材料を用いることができる。
基材2は、透明であってもよく、顔料や染料等の着色剤を使用して着色された着色基材であってもよい。また、空隙を有するような発泡状態として、基材2に不透明性を付与してもよい。
【0014】
基材2の厚さ寸法は、特に限定されるものではなく、例えば、3μm以上10mm以下が好ましく、特に5μm以上1mm以下が好ましい。厚みが3μm未満だと厚みが薄いために基材2のコシが弱く、下地層3、表面図柄層4、および粘着剤層5の形成工程における基材2の硬さが不足し、支持体としての機能を果たせないために各種加工工程で支障をきたす場合がある。厚みが10mmを超えると、厚みが増してコシが強すぎて、長尺のロール状に巻くことが困難となったり、重量が増したりする場合がある。
基材2の形状は特に限定されることはないが、正方形や長方形などの矩形状や三角形、五角形、六角形などの多角形状、円形状、楕円形状、不定形状、長尺のロール形状など最終製品の用途により様々選択されればよく、本実施形態においては長方形状に形成されている。
【0015】
下地層3は、基材2と表面図柄層4との間に設けられた一色以上の色で着色されている層であり、図柄が印刷されていてもよい。図柄は、絵画、イラスト、写真、模様などを含む。
下地層3は、例えば、印刷、印字、塗料の塗布、転写シートからの転写、蒸着、スパッタリング等の方法によって形成することができる。基材2の一方の面には、下地層3を形成するための易接着コート、あるいはグロス調整用コート等のアンダーコート層が形成されていてもよい。また、下地層3は、基材2の全面に形成されていてもよいし、部分的に形成されていてもよい。下地層3の印刷方法としては、後述する透明インクの印刷方法で例示するものから適宜選択して用いることができる。
【0016】
表面図柄層4は、下地層3の上に透明インクを用いて図柄を印刷することで形成された層である。図柄は、絵画、イラスト、写真、模様などを含み、いわゆるベタ状に印刷されたものとは異なり、部分的に印刷されたものである。
表面図柄層4は、図1に示すように、複数の凸部41と凹部42とで構成される凹凸形状を有することが好ましい。凸部41の高さ寸法は、1μm以上5mm以下が好ましく、5μm以上3mm以下がより好ましく、8μm以上2mm以下がさらに好ましく、13μm以上1mm以下が特に好ましい。凸部41の高さ寸法が1μm以上であれば、図柄を認識でき、さらに、5μm以上であれば、積層体1を視認する角度によっては、図柄をはっきり認識できるようになり、見る角度を変化させることで、図柄が見えたり見えにくくなったりするような外観の変化が生じ、従来にない新規な装飾性が積層体1に付与される。さらに、凸部41の高さ寸法が8μm以上であれば、上述の図柄による装飾性に加えて、鮮やかな光沢感が得られ、13μm以上であれば、さらに、光が当たった時の陰影等による立体感が得られる。また、凸部41の高さ寸法が5mmを超えると、突起部が高くなり、指で触ったり、物がぶつかったりした時に凸部41が欠けてしまう場合がある。
【0017】
透明インクとしては、光透過性に加え、良好な接着性、耐湿性、及び耐熱性等を備えているのが好ましい。
また、透明インクは、硬化後に適度の硬度を発揮するのが好ましい。例えば、透明インクは、透明なポリマーやワックス等の膜形成性成分の1種又は2種以上を溶剤等に溶解させたものなどを、適宜、用いることができる。
また、透明インクは、溶媒として水系溶媒を用いたインクや、有機溶剤を用いたインク等であってもよい。
また、透明インクは、紫外線で硬化する紫外線硬化型インク、常温で硬化する常温硬化型インク、湿気で硬化する湿気硬化型インク、加熱によって硬化する加熱硬化型インク等であってもよい。これらの中でも、紫外線硬化型インクは、印字層を多数積層させることができる点や迅速に表面図柄層4の形成を行うことができる点、さらに、溶媒を含まない点において好ましい。紫外線硬化型インクとしては、反応性モノマー、樹脂、顔料、分散剤、添加剤(安定化剤、界面活性剤)、重合開始剤等を含んで構成される。反応性モノマーとしては、カチオン系モノマーやラジカル系モノマーを挙げることができ、特にアクリレート、ビニルエーテル等のラジカル系モノマーが好ましい。樹脂としては、ポリオールアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、又はエポキシアクリレート樹脂といったアクリレート樹脂、メタクリレート樹脂やポリオール(メタ)アクリレート樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂などから1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系の化合物を挙げることができる。
また、透明インクは、無色透明でも有色透明でもよい。
【0018】
透明インクを印刷する方法としては、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法、凸版印刷法などが挙げられる。これらの印刷法の中では、少ないロットに対応可能な点や、精度良く積層印刷が可能な点で、インクジェット印刷法が好ましい。絵画、イラスト、写真、模様など図柄を、画像データやベクトルデータ等のデジタルデータとして予め作成し、このデジタルデータを用いて、例えば、インクジェット印刷法にて透明インクを印刷して表面図柄層4を形成して装飾性を積層体に付与することが好ましい。
【0019】
表面図柄層4の図柄は、下地層3の図柄の一部もしくは全体と対応した位置に形成されていてもよい。下地層3の図柄の上に、透明インクで表面図柄層4が形成されていることで、下地層3の図柄を立体的に視認させたり、下地層3の図柄に光沢感を付与させたりすることができ、積層体1の付加価値を高めることができる。
【0020】
粘着剤層5は、積層体1を被着体に貼り合わせるものである。粘着剤層5は、基材2の下地層3が設けられた面とは反対側の面に設けられている。粘着剤層5は、積層体1を被着体に接着することができる充分な接着力があれば、その材質は特に限定されず広く適用でき、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ポリエステル系の粘着剤を用いることができる。中でも、アクリル系粘着剤は接着力及び耐久性の面でバランスがとれているので、好ましい。粘着剤層5の厚さ寸法は特に限定されないが、例えば、1μm以上300μm以下が好ましく、5μm以上150μm以下が更に好ましい。粘着剤層5の厚さ寸法を300μm以下とすることで、搬送中の積層体1全体の厚さ寸法が過剰に大きくなることが防止されるので、軽量かつコンパクトになって搬送や被着体への貼付作業が容易になる。粘着剤層5の厚さ寸法を1μm以上とすることで、被着体に対する十分な接着力を付与することができる。
【0021】
積層体1は、装飾性と、粘着性とを有する粘着シートであることが好ましく、その用途としては、壁、窓、天井、柱などの内装に用いたり、ガラスや透明プラスチック等の透明素材の装飾に用いたり、看板に用いたり、車両や自動車のマーキングに用いたり、小物類に用いたりすることができる。
【0022】
次に、本実施形態に係る積層体1の製造方法および装飾性付与方法について説明する。
基材2の一方の面に、インクジェットプリンターにて下地層3を印刷する。
次に、下地層3の上に、透明インクを用いて図柄を印刷し表面図柄層4を形成する。表面図柄層4の形成も、インクジェットプリンターにて行う。透明インクは、紫外線硬化型のインクを用いることが好ましい。紫外線硬化型の透明インクを用いることで、表面図柄層4の硬化による製膜化が瞬時に行われるため凸部41の高さ寸法を大きくし、表面図柄層4の厚膜化が可能になる。
基材2の他方の面には、粘着剤を塗布して粘着剤層5を形成する。粘着剤層5の表面には積層体1を使用するまでの保護部材として剥離シートを貼り合わせておくことが好ましい。剥離シートとしては、特に限定されるものではなく、例えば、上述の基材2で説明したシート材料や板状材料を用いることができる。剥離シートは、構成材料自体の剥離性を利用してもよいし、剥離処理層を形成して剥離性を付与してもよい。当該剥離処理層は、特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、テトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、長鎖アルキル樹脂、長鎖アルキル基含有カルバメート樹脂、アルキド樹脂、或いは、これらの混合物等から成る剥離剤を剥離シートの表面に塗工することで形成される。
【0023】
本実施形態に係る積層体1によれば、次のような効果を奏する。
積層体1の透明インクで形成された表面図柄層4によって、積層体1を目視する角度や、積層体1に当たる光の角度によって、表面図柄層4に当たった光の反射の仕方が変化し、表面図柄層4や下地層3の図柄や積層体1の印象が大きく変化する。例えば、当該積層体1を目視する角度によって、図柄の見え方が、ほのかに認識できたり、くっきり認識できたりするなど、様々に変化する。このように、積層体1によれば、光の陰影を使った立体的デザインと下地層3の色や柄を活かした装飾が可能になる。
ゆえに、積層体1によれば、従来に無い、新規な装飾性を有する積層体を提供することができる。
また、本実施形態に係る装飾性付与方法は、基材2の上に下地層3を形成し、下地層3のさらに上に透明インクを用いて図柄を印刷して表面図柄層4を形成するので、当該図柄の見え方が、目視する角度等によってさまざまに変化する。ゆえに、積層体1への装飾性付与方法によれば、上述と同様、従来に無い、新規な装飾性を積層体へ付与することができる。
【0024】
<変形例>
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0025】
積層体は、粘着剤層が設けられていない印刷物であってもよい。例えば、当該印刷物を、両面テープ等による貼り付け媒体、あるいは接着剤等を用いて被着体に貼り付けて使用してもよい。
また、基材の両面に表面図柄層が形成された積層体であってもよい。
【0026】
また、前記実施形態では、基材と表面図柄層との間に下地層が設けられた積層体を例に挙げて説明したが、下地層が無い積層体であってもよい。
例えば、基材が着色されている着色基材であって、当該基材に直接、透明インクで図柄を印刷して表面図柄層を形成してある態様でもよい。
また、例えば、透明な基材の上に透明インクで図柄、例えば、木目調を印刷して表面図柄層を形成した積層体を作製し、この積層体を木板の上に載せることで、立体的な木目調の表現が可能になる。ここでは、木目調を例に挙げたが、その他の図柄であってもよい。
したがって、装飾性を有する積層体の製造方法としては、基材の上に、透明インクを用いて図柄を印刷する工程を備えればよい。
【実施例】
【0027】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
本実施例では、予め着色された基材上に、種々の印刷条件で図柄を印刷して表面図柄層を形成し、積層体の装飾性を確認した。
【0028】
<実施例1>
基材は、リンテックサインシステム株式会社製の黒色の装飾用粘着シート(製品名:パロア PMO-022)であって、1220mm幅で、30m巻きのロール形状のものを用いた。当該シートの黒色面に、紫外線硬化型の透明インクを用いて図柄をA4サイズ(縦297mm×横210mm)で印刷した。図柄としては、蝶、花、及び市松模様が配されたデザインを用いた。なお、市松模様の格子を構成するそれぞれの四角形状(縦10mm×横10mm)には、ストライプ状に線を設けたデザインとした。透明インクは、富士フイルム株式会社製のインクジェットプリンタ用UV硬化型インク(製品名:UV-IJ INK LL391 CLEAR 600ML)を用いた。透明インクの印刷には、富士フイルムグラフィックシステムズ株式会社製のインクジェットプリンター(製品名:Acuity LED 1600)を用いた。インクジェットプリンターによる印刷条件は、表1に示す通り設定した。
【0029】
【表1】

【0030】
形成した表面図柄層の凸部の高さ寸法を測定した。その寸法測定結果を表1に示す。
【0031】
<実施例2?13>
実施例2?9の積層体は、表1に示すように印刷条件を変更した以外は、実施例1の積層体と同様にして作製した。
実施例10?13の積層体は、表1に示すように、基材としてシルバー色の基材を用い、表1に示すように印刷条件を変更した以外は、実施例1の積層体と同様にして作製した。シルバー色の基材は、リンテックサインシステム株式会社製のシルバー色の装飾用粘着シート(製品名:パロア PME-335)であって、1220mm幅で、30m巻きのロール形状のものを用いた。
【0032】
<積層体の評価>
実施例1?13の積層体を見る角度を変えながら観察し、装飾性を評価した。評価は、次に示す基準に基づいて行った。
A:鮮やかな光沢感および立体感が有る。
B:鮮やかな光沢感が有る。
C:見る角度によっては、図柄をはっきり認識できる。
D:ほのかに図柄を認識できる。
表1に、評価結果を示す。
【0033】
表1に示すように、2μm以上の凸部の高さ寸法であれば、少なくとも図柄を認識でき、さらに、5μm以上の凸部の高さ寸法であれば、見る角度によっては、図柄をはっきり認識できるようになった。このように、見る角度を変化させることで、図柄が見えたり見えにくくなったりするような外観の変化が生じ、従来に無い新規な装飾性が積層体に付与されたことを確認できた。
さらに、8μm以上の凸部の高さ寸法であれば、上述の図柄による装飾性に加えて、鮮やかな光沢感が得られることを認識でき、13μm以上の凸部の高さ寸法であれば、光が凸凹に当たることで生じる陰影によって立体感を認識でき、従来に無い新規な装飾性が積層体に付与されたことを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の積層体は、内装材(壁、天井、柱)、看板、マーキングフィルム(車両、鉄道、船舶、航空機)、ガラス、パネル、ふすま、包装紙、包装袋等の種々の用途の新規装飾性付与に利用できる。
【符号の説明】
【0035】
1…積層体
2…基材
3…下地層
4…表面図柄層
41…凸部
42…凹部
5…粘着剤層
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一方の面の上にインクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて形成された図柄を有する表面図柄層と、
前記基材の他方の面に形成された粘着剤層と、を備え、
前記基材は、一色で着色されており、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料であり、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
基材と、
前記基材の一方の面の上にインクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて形成された図柄を有する表面図柄層と、
前記基材の他方の面に形成された粘着剤層と、
前記基材と前記表面図柄層との間に設けられた一色で着色された下地層と、を備え、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料であり、
前記表面図柄層の凸部の高さは、13μm以上495μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さ寸法は、1μm以上300μm以下である
ことを特徴とする積層体。
【請求項3】
一色で着色された基材の一方の面の上に、インクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて凸部の高さが13μm以上495μm以下の図柄をインクジェット印刷し、
前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成し、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料である
ことを特徴とする装飾性付与方法。
【請求項4】
基材の一方の面の上に形成された一色で着色された下地層に、インクジェットプリンター用紫外線硬化型透明インクを用いて凸部の高さが13μm以上495μm以下の図柄をインクジェット印刷し、
前記基材の他方の面に、粘着剤を塗布して、厚さ寸法が1μm以上300μm以下である粘着剤層を形成し、
前記基材の厚みは、5μm以上1mm以下であり、
前記基材は、合成樹脂フィルム、紙材、及び不織布のいずれかのシート材料である
ことを特徴とする装飾性付与方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-12-13 
出願番号 特願2012-252712(P2012-252712)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 相田 元  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 小野田 達志
久保 克彦
登録日 2016-10-21 
登録番号 特許第6027412号(P6027412)
権利者 リンテック株式会社
発明の名称 積層体および装飾性付与方法  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  

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