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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A47J
審判 全部申し立て 2項進歩性  A47J
管理番号 1337043
異議申立番号 異議2017-700506  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-24 
確定日 2018-01-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6028985号発明「調理器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6028985号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項〔1-4〕について、訂正することを認める。 特許第6028985号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6028985号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、2013年(平成25年)2月15日(優先権主張2012年10月5日、日本国(JP))を国際出願日とする特願2013-548521号の一部を平成27年3月6日に新たな特許出願としたものであって、平成28年10月28日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 パク ジェフン より請求項1ないし4に係る発明の特許に対し特許異議の申立てがされ、平成29年8月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内に特許権者より平成29年9月21日差出で意見書の提出及び平成29年9月21日付けで訂正の請求がされ、特許異議申立人より平成29年11月29日付けで意見書の提出があったものである。

第2 訂正の適否
1 平成29年9月21日付けの訂正の請求の訂正の内容
平成29年9月21日付けの訂正の請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。以下、同じ。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「を備える調理器。」と記載されているのを
「を備え、
前記保存容器は、上端を開口させ、
前記保存容器の開口を閉じて前記保存容器の上部に着脱可能に接続される蓋部材を備え、
前記蓋部材は、前記減圧手段による前記第2の収納空間からの空気の流出を許しこの逆の空気の流れを止める蓋側逆止弁が設けられた前記保存容器用の蓋部材、又は前記閉じ部材であり、
前記閉じ部材が上部に接続された前記調理容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、
前記保存容器用の蓋部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記蓋側逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、又は、前記閉じ部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になる調理器。」
と訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記減圧手段は、前記筐体外にあり、前記逆止弁を介して前記第1の収納空間および前記第2の収納空間の少なくともいずれかを減圧する」と記載されているのを「前記減圧手段は、前記筐体外にあり、前記逆止弁を介して接続された前記第1の収納空間又は前記第2の収納空間を減圧する」と訂正する。

(3) したがって、特許権者は、特許請求の範囲を、以下の訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを請求する。
「【請求項1】
台を有する筐体と、
前記台に載置され、上端を開口させた調理容器と、
前記調理容器の開口を閉じて前記調理容器の上部に着脱可能に接続される閉じ部材と、
前記調理容器と前記閉じ部材で形成された第1の収納空間内に配置され、前記第1の収納空間内の食品を加工する加工具と、
前記筐体内に設けられ、前記加工具を回転させるモータと、
前記閉じ部材外に設けられた減圧手段と、
前記閉じ部材に設けられ、前記減圧手段による前記第1の収納空間からの空気の流出を許し、この逆の空気の流れを止める逆止弁と、
前記加工具を有さない前記調理容器とは別の保存容器と、
前記減圧手段により前記第1の収納空間の減圧を行う第1運転モードと、前記減圧手段により減圧した後に前記モータにより前記加工具を回転させる第2運転モードと、前記減圧手段により前記保存容器内の第2の収納空間の減圧を行う第3運転モードを行う制御手段と、
を備え、
前記保存容器は、上端を開口させ、
前記保存容器の開口を閉じて前記保存容器の上部に着脱可能に接続される蓋部材を備え、
前記蓋部材は、前記減圧手段による前記第2の収納空間からの空気の流出を許しこの逆の空気の流れを止める蓋側逆止弁が設けられた前記保存容器用の蓋部材、又は前記閉じ部材であり、
前記閉じ部材が上部に接続された前記調理容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、
前記保存容器用の蓋部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記蓋側逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、又は、前記閉じ部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になる調理器。
【請求項2】
前記減圧手段は、前記筐体内に設けられ、
前記減圧手段と前記逆止弁を接続して空気を流通させる接続部材をさらに備えた請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記減圧手段は、前記筐体外にあり、前記逆止弁を介して接続された前記第1の収納空間又は前記第2の収納空間を減圧する請求項1に記載の調理器。
【請求項4】
前記筐体は、前記台に前記調理容器を載置した状態で、前記調理容器と横方向に並んで配置される筐体主部を有し、
前記モータと前記減圧手段は、前記筐体主部内で上下方向に配置させた請求項1に記載の調理器。」

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否並びに一群の請求項
(1) 訂正事項1は、請求項1の「保存容器」、「蓋部材」及び「調理容器」について、その構成を
「前記保存容器は、上端を開口させ、
前記保存容器の開口を閉じて前記保存容器の上部に着脱可能に接続される蓋部材を備え、
前記蓋部材は、前記減圧手段による前記第2の収納空間からの空気の流出を許しこの逆の空気の流れを止める蓋側逆止弁が設けられた前記保存容器用の蓋部材、又は前記閉じ部材であり、
前記閉じ部材が上部に接続された前記調理容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、
前記保存容器用の蓋部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記蓋側逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、又は、前記閉じ部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になる」
と訂正することで、特許請求の範囲を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、本件特許明細書の【0126】?【0148】及び図18?図20に記載された「第5の実施の形態」並びに同【0345】?【0379】及び図45?図49に記載された「第15の実施の形態」等の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。また、一群の請求項(請求項1ないし4)ごとに請求された訂正である。

(2) 訂正事項2は、請求項3「減圧手段」について、その構成を「前記逆止弁を介して接続された前記第1の収納空間又は前記第2の収納空間を減圧する」と訂正することで、特許請求の範囲を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、本件特許明細書の【0126】?【0148】及び図18?図20に記載された「第5の実施の形態」並びに同【0345】?【0379】及び図45?図49に記載された「第15の実施の形態」等の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(3) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、平成29年11月29日付け意見書(2ページ下から12行?3ページ1行)において、訂正要件違反として、訂正事項1に係る訂正は、「前記保存容器用の蓋部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記蓋側逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、又は、前記閉じ部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になる」の点について、特に「保存容器が」「台に載置された状態」及び逆止弁と減圧手段との「接続解除が可能」の点に関し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではない旨、主張する。
しかし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲において、「第5実施形態のミキサー1は、調理容器41の他に保存容器87を更に備えている。保存容器87の構成は、回転軸46を有していない他は、第2実施形態で説明した調理容器41と同じである」(【0143】)こと、及び「第5実施形態のミキサー1が付属品として備えた保存容器87は、他の各実施形態にも適用することが可能である」(【0148】)ことの記載から、「調理容器とは別の保存容器」を第15の実施の形態に適用できることが理解でき、さらに、「蓋51が取付けられた調理容器41を筐体3の台4bに載置する」(【0368】)こと、「蓋51が取付けられた調理容器41が、図47に示すように台4bと昇降部材205とで挟まれる。この状態では、シールリング35が蓋51と昇降部材205とで圧縮された状態に挟まれ、吸気管20の先端開口と蓋側逆止弁55とがシールリング35を介して連通される」(【0369】)こと、「昇降機構211を動作させ、昇降部材205を上昇させる」(【0371】)こと、「調理容器41から蓋51を一旦取外す。引き続いて、工具軸63を掴んで調理容器41外に加工具61を取出す。この後、蓋51を再度、調理容器41に取付ける」(【0374】)こと、「蓋51が取付けられた調理容器41が、図49に示すように台4bと昇降部材205とで挟まれる」(【0375】)こと、「最後に、再び第2スイッチ216を押して、昇降部材205を上昇させた上で、調理容器41を蓋51とともに台4b上から外す。外された調理容器41と蓋51は、調理容器41内のジュースを低酸素状態に保っている。この収納容器41は、そのまま保存容器として冷蔵庫などで保管されるか、携帯することができる」(【0376】)こと、及び図45?図49の記載から、「保存容器が」「台に載置された状態」について理解でき、及び逆止弁と減圧手段との「接続解除が可能にな」ることについて理解できるのであって、結局、「加工具を有さない前記調理容器とは別の保存容器」を第15の実施の形態に適用したものとしての「前記保存容器用の蓋部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記蓋側逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、又は、前記閉じ部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になる」ことが当業者に理解できる。したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲においてしたものでないとはいえず、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

3 むすび
よって、本件訂正に係る訂正事項1及び訂正事項2は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条4項、並びに、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、請求項〔1-4〕について、訂正することを認める。

第3 取消理由についての判断
1 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、本件訂正により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものである(「第2 1 (3)」参照。)。

2 平成29年8月2日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである(なお、上記取消理由通知は本件特許異議の申立てにおいて申立てられたすべての申立理由を含んでいる。)。
(取消理由1) 本件発明1ないし4は、本件特許の出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(取消理由2) 本件特許は、特許請求の範囲の請求項3の記載が、その「減圧手段」は第1及び第2の両収納空間を減圧する態様も含んでいるが、「減圧手段」により第1及び第2の両収納空間を減圧する具体例が発明の詳細な説明に記載されておらず、発明の詳細な説明に記載されたものではないから不備のため、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。

<甲号証一覧>
甲第1号証:韓国公開実用新案第20-2009-0011261号公報
甲第2号証:韓国公開実用新案第20-2011-0010122号公報
甲第3号証:特開2008-206907号公報
甲第4号証:米国特許出願公開第2003/0200874号明細書
甲第5号証:韓国登録実用新案第20-0395836号公報
甲第6号証:米国特許第7047875号明細書
なお、甲第1ないし4号証は特許異議申立書に添付して、甲第5及び6号証は平成29年11月29日付け意見書に添付して、それぞれ特許異議申立人が提出したものである。

3 上記取消理由1については、以下のとおり理由がない。
(1) 本件発明1について
ア 甲第1号証に記載された発明について
甲第1号証には、特に、明細書の段落<11>?<21>及び図面1?3の記載からすると、
「カップ容器10を載置する部分(本件発明1の「台」に相当する。以下同様。)を有する駆動本体20(「筐体」)と、
前記カップ容器10を載置する部分に載置され、上端を開口させたカップ容器10(「調理容器」)と、
前記カップ容器10の開口を閉じて前記カップ容器10の上部に着脱可能に接続される蓋(「閉じ部材」)と、
前記カップ容器10と前記蓋で形成された第1の収納空間内に配置され、前記第1の収納空間内の飲食品や薬味材料(「食品」)を混合又は粉砕する(「加工する」)粉砕刃(「加工具」)と、
前記駆動本体20内に設けられ、前記粉砕刃を回転させる回転手段(「モータ」)と、
前記駆動本体20内(「蓋外」)に設けられた真空手段(「減圧手段」)と、
前記粉砕刃を有さない前記カップ容器10とは別の真空容器30(「保存容器」)と、
前記回転手段により前記粉砕刃を回転させる運転モードと、前記真空手段により前記真空容器30内の第2の収納空間の内部空気の除去(「減圧」)を行う第3運転モードを行う制御手段と、
を備え、
前記真空容器30は、上端を開口させ、
前記真空容器30の開口を閉じて前記真空容器30の上部に着脱可能に接続される蓋部材を備え、
前記蓋部材は、前記真空手段による前記第2の収納空間からの空気の流出を許しこの逆の空気の流れを止める空気弁(「蓋側逆止弁」)が設けられた前記真空容器30用の蓋部材であり、
前記真空容器30用の蓋部材が上部に接続された前記真空容器30がミキサの周辺に位置している状態で前記空気弁と前記真空手段との接続および接続解除が可能になるミキサ(「調理器」)。」の発明が記載されている。
本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、少なくとも、「調理容器とは別の保存容器」に関し、本件発明1では、「前記保存容器用の蓋部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記蓋側逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、又は、前記閉じ部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になる」ことが特定されているのに対し、甲第1号証に記載された発明では、「ミキサの周辺に位置している状態で」あり、そのような構成について不明である点で相違し、甲第2ないし6号証にもこの相違点に係る本件発明1の構成が記載されていない(なお、甲第6号証(特に、ABSTRACT等参照。)には、「食品マリネ装置」が記載され、その回転される「容器」は、食品をマリネの存在下で撹拌し、マリネの吸収を速めるものといえるから、本件発明1の「調理容器」に相当するというべきである。)。そして、甲第1号証の記載、特に図面の記載を参酌すると、仮に、本件発明1の「保存容器」に相当する甲第1号証に記載された発明の「真空容器30」が、本件発明1の「台」に相当する甲第1号証に記載された発明の「カップ容器10を載置する部分」に載置された状態を検討しても、「カップ容器10」を載置する「カップ容器10を載置する部分」の構造からして、「真空容器30」が「カップ容器10を載置する部分」に安定して載置される状態ということはできないから、当業者であっても「真空容器30」を「カップ容器10を載置する部分」に載置することはしないといえるし、また、甲第1号証に記載された発明をして、上記相違点に係る本件発明1の構成とする動機付けも見当たらない。
そうすると、甲第1ないし6号証に記載された事項からしても、甲第1号証に記載された発明をして、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1ないし6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、上記取消理由1について理由がない。

イ 甲第3号証に記載された発明について
甲第3号証には、特に、明細書の段落【0016】?【0041】及び図1?2の記載からすると、
「容器基台7(本件発明1の「台」に相当する。以下同様。)を有する本体1(「筐体」)と、
前記容器基台7に載置され、容器上部16(「上端」)を開口させた容器6(「調理容器」)と、
前記容器6の開口を閉じて前記容器6の上部に着脱可能に接続される蓋15(「閉じ部材」)と、
前記容器6と前記蓋15で形成された第1の収納空間内に配置され、前記第1の収納空間内の食品を切削する(「加工する」)カッター9(「加工具」)と、
前記本体1内に設けられ、前記カッター9を回転させるモータ2(「モータ」)と、
前記蓋15内部に設けられた吸引手段16(「減圧手段」)と、
前記蓋15内部に設けられ、前記吸引手段16による前記第1の収納空間からの空気の流出を許し、この逆の空気の流れを止める切り替え弁20(「逆止弁」)と、
前記吸引手段16により前記第1の収納空間の吸引(「減圧」)を行う第1運転モードと、前記吸引手段16により吸引した後に前記モータ2により前記カッター9を回転させる第2運転モードを行う制御手段と、
を備え、
前記蓋15が容器上部16(「上部」)に接続された前記容器6が前記容器基台7に載置された状態で前記吸引が可能になる電動調理器(「調理器」)。」の発明が記載されている。
本件発明1と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、少なくとも、本件発明1では、「加工具を有さない」「調理容器とは別の保存容器」を備え、「前記保存容器用の蓋部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記蓋側逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、又は、前記閉じ部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になる」のに対し、甲第3号証に記載された発明では「加工具を有さない」「調理容器とは別の保存容器」を備えていない点で相違し、特に、「前記保存容器用の蓋部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記蓋側逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、又は、前記閉じ部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になる」点について上記「ア」において述べたように、甲第1、2、4ないし6号証にもこの相違点に係る本件発明1の構成が記載されていない。そして、甲第3号証の記載、及び甲第1号証の記載、特に両者の図面の記載を参酌すると、仮に、本件発明1の「台」に相当する甲第3号証に記載された発明の「容器基台7」に、本件発明1の「保存容器」に相当する甲第1号証に記載された「真空容器30」が載置された状態を検討しても、甲第3号証に記載された「容器6」を載置する「容器基台7」の構造からして、甲第1号証に記載された「真空容器30」が甲第3号証に記載された「容器基台7」に安定して載置される状態ということはできないから、当業者であっても甲第1号証に記載された「真空容器30」を甲第3号証に記載された「容器基台7」に載置することはしないといえるし、また、甲第3号証に記載された発明をして、上記相違点に係る本件発明1の構成とする動機付けも見当たらない。
そうすると、甲第1ないし6号証に記載された事項からしても、甲第3号証に記載された発明をして、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1ないし6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、上記取消理由1について理由がない。

(2) 本件発明2ないし4について
請求項2ないし4は請求項1を引用するものであり、本件発明2ないし4は本件発明1の発明特定事項をすべて含むところ、上述のとおり本件発明1は上記取消理由1について理由がないから、同様の理由により、本件発明2ないし4は、上記取消理由1について理由がない。

4 上記取消理由2については、以下のとおり理由がない。
本件訂正による、特許請求の範囲の請求項3の記載は、その「減圧手段」が第1又は第2の収納空間を減圧する態様を特定し、第1及び第2の両収納空間を減圧する態様を含まないものである。そして、「減圧手段」により第1及び第2の両収納空間を減圧する具体例が発明の詳細な説明に記載されていないとしても、既に「第2 2 (2)」に述べたように、特許請求の範囲の請求項3の記載は発明の詳細な説明に記載された範囲内のものであるから、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとはいえず、上記取消理由2について理由がない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、上記取消理由通知に記載した上記取消理由1及び2によっては、本件発明1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台を有する筐体と、
前記台に載置され、上端を開口させた調理容器と、
前記調理容器の開口を閉じて前記調理容器の上部に着脱可能に接続される閉じ部材と、
前記調理容器と前記閉じ部材で形成された第1の収納空間内に配置され、前記第1の収納空間内の食品を加工する加工具と、
前記筐体内に設けられ、前記加工具を回転させるモータと、
前記閉じ部材外に設けられた減圧手段と、
前記閉じ部材に設けられ、前記減圧手段による前記第1の収納空間からの空気の流出を許し、この逆の空気の流れを止める逆止弁と、
前記加工具を有さない前記調理容器とは別の保存容器と、
前記減圧手段により前記第1の収納空間の減圧を行う第1運転モードと、前記減圧手段により減圧した後に前記モータにより前記加工具を回転させる第2運転モードと、前記減圧手段により前記保存容器内の第2の収納空間の減圧を行う第3運転モードを行う制御手段と、
を備え、
前記保存容器は、上端を開口させ、
前記保存容器の開口を閉じて前記保存容器の上部に着脱可能に接続される蓋部材を備え、
前記蓋部材は、前記減圧手段による前記第2の収納空間からの空気の流出を許しこの逆の空気の流れを止める蓋側逆止弁が設けられた前記保存容器用の蓋部材、又は前記閉じ部材であり、
前記閉じ部材が上部に接続された前記調理容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、
前記保存容器用の蓋部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記蓋側逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になり、又は、前記閉じ部材が上部に接続された前記保存容器が前記台に載置された状態で前記逆止弁と前記減圧手段との接続および接続解除が可能になる調理器。
【請求項2】
前記減圧手段は、前記筐体内に設けられ、
前記減圧手段と前記逆止弁を接続して空気を流通させる接続部材をさらに備えた請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記減圧手段は、前記筐体外にあり、前記逆止弁を介して接続された前記第1の収納空間又は前記第2の収納空間を減圧する請求項1に記載の調理器。
【請求項4】
前記筐体は、前記台に前記調理器を載置した状態で、前記調理器と横方向に並んで配置される筐体主部を有し、
前記モータと前記減圧手段は、前記筐体主部内で上下方向に配置させた請求項1に記載の調理器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-12-21 
出願番号 特願2015-45271(P2015-45271)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A47J)
P 1 651・ 121- YAA (A47J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 中村 則夫
特許庁審判官 田村 嘉章
佐々木 正章
登録日 2016-10-28 
登録番号 特許第6028985号(P6028985)
権利者 テスコム電機株式会社
発明の名称 調理器  
代理人 特許業務法人青莪  

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