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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して差戻し G06F
審判 査定不服 審理方式、審理手続 取り消して差戻し G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して差戻し G06F
管理番号 1337512
審判番号 不服2017-4390  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-03 
確定日 2018-03-03 
事件の表示 特願2012- 64403「風圧発電車両など車両発電電力を、社会電力エネルギー一大供給インフラ源とする目的とし、また当該車両走行動力エネルギーにも汎用する、スマートグッリド管理方式でのビジネスモデル。」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月12日出願公開、特開2013-182610、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願は、更に審査に付すべきものとする。  
理由 1.手続の経緯

本願は、平成24年3月2日に出願された特許出願であって、平成24年10月9日及び平成25年2月15日に手続補正がなされた後に審査請求がなされ、平成28年2月9日付で拒絶の理由が通知されたのに対して同年6月14日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものの、同年11月28日付(同年12月6日発送)で拒絶査定がなされた。
これに対し、平成29年3月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、これと同時に手続補正がなされた。

2.平成29年3月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年3月3日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正の内容について
本件補正は、特許請求の範囲について、補正前は、

「【請求項1】クリーン電力社会大規模給電インフラ構築システムの主要構成要素装置として、走行により発生する風圧を利用しクリーン発電をする発電機能装置を保持あるいは搭載し、その発電した電力を外部社会電力供給インフラ網への常時給電を可能とする発電車両。
【請求項2】上記請求項1に記載される発電車両が、発電したクリーン電力を外部社会電力給電網へ送電中継機能を担当する、送電接続中継機能装置。
【請求項3】上記請求項1に記載される発電車両、および請求項2に記載される電力給送電接続中継機能装置と情報通信回線で結合され、クリーン電力社会大規模給電インフラ構築システムの全体稼働を制御管理する中央コンピューター装置システム。」

であったものを、補正後は、

「【請求項1】システム構成機能基本要素装置である「発電車両」、「中継送電機能装置」及び「コンピューター制御管理機能システム装置」がシステム稼働し、個々発電車両が常時走行発電した電力を、車両走行路線沿いに配置される「中継電気機能装置」が網羅的に、社会既存大規模送電(給電)網装置へ接続給電可能とすることで、新方式社会大規模電力発電源を提供するシステム。」

とし、さらに、明細書の段落【0001】?【0005】の各段落の記載を変更するものである。

(2)判断
ア 本件補正による補正後の特許請求の範囲の「個々発電車両が常時走行発電した電力を、車両走行路線沿いに配置される「中継電気機能装置」が網羅的に、社会既存大規模送電(給電)網装置へ接続給電可能とする」との記載によれば、「中継電気機能装置」は、「車両走行路線沿いに配置される」ものである。また、この点に関連して、本件補正による補正後の明細書には、「中継送電機能装置」が「車両走行路線沿いに張り巡らした」ものである旨(段落【0001】)、「発電車両」は「走行中にも当該車両外へ給電(送電)可能とする」旨及び「中継送電機能装置」を「走行路線沿いに配置する」旨(段落【0003】)、「発電車両」が「走行で発電した電力の車両外送電(給電)方式」が「無線送電」となり「車両走行中も送電可能となる」旨及び「中継送電機能装置」は「車両走行路線沿いに配置され」、「発電車両からの車両外へ送電(給電)される電力」は「走行中も送電を可能とするため無線送電方式とな」る旨(段落【0004】)の記載がある。
これに対し、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等という。)には、これらに対応する技術的事項は記載されていない。当初明細書等においては、「発電車両」からの「電力供給」は「駐車区分毎に設置される端末機器装置」においてなされるのであり、この点に鑑みれば、「車両走行路線沿いに張り巡らされた装置(中継送電機能装置)」と「無線送電」により「走行中」に車両から車両外への給電を行う旨は、当初明細書等の記載から自明な事項であるといえない。してみると、本件補正は、当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

イ なお、平成25年2月15日になされた手続補正による補正後の特許請求の範囲及び明細書(以下、「拒絶理由通知時の明細書等」という。)について、平成28年2月9日付の拒絶理由通知において、理由1として、
『平成25年2月15日付け手続補正書でした補正は、以下の記載(A)?(C)に係る事項について、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。よって、特許を受けることができない。・・
(A) 略
(B) 略
(C)発電車両が走行しながら走行路線に敷設する非接触方式受電装置への送電(補正後の段落[0001]及び[0004]、並びに、請求項4-7)』
という新規事項追加禁止要件違反の拒絶理由が通知されている。(この理由1は、査定の理由とはされていない。)
そして、アで上述した、本件補正における、「車両走行路線沿いに張り巡らされた装置(中継送電機能装置)」と「無線送電」により「走行中」に車両から車両外への給電を行う旨が当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである旨の判断は、この拒絶理由通知に示された判断と実質的に同じ内容のものである。
いうなれば、拒絶理由通知時の明細書等について通知された新規事項追加禁止要件違反の拒絶理由が、補正によって一旦解消したものの、審判請求時の補正によって再度生じたのであり、この意味で、アで上述した判断と実質的に同じ拒絶理由が既に出願人に通知されているものである。

以上のとおり、本件補正は、当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものである。

(3)小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものであるから、同法159条第1項で読み替えて準用する同法53条第1項の規定により、却下すべきものである。

3.原査定の理由の概要

(1)原査定の記載
『この出願については、平成28年2月9日付け拒絶理由通知書に記載した理由4によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
備考
●理由4(特許法第29条第2項)について
出願人は、平成28年6月15日付けで手続補正書を提出し、請求項1-3を補正している。
しかし、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、依然として、平成28年2月9日付け拒絶理由通知書に記載した理由4に記載したとおり、進歩性を有していない。
まず、本願の請求項1に記載された発明について検討すると、走行による風圧を利用した発電システムを備えた車両と、外部に供給する構成は、引用文献1に記載されており、また、発電した電力を車両内部に保持する構成は、引用文献2に記載されている。したがって、本願の請求項1に記載された発明は、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に為し得たものである。
なお、請求項1では「クリーン電力社会大規模給電インフラ構築システム」との用語を用いているが、クリーン電力に係るシステムも、社会的に大規模な給電インフラとして構築されたシステムも、電力システムとしてはよく知られているシステムである。
また、本願の請求項2に記載された発明について検討すると、発電した電力を外部に送電する装置は、引用文献1に記載されている。
また、本願の請求項3に記載された発明について検討すると、電力を供給するシステムに於いて、発電を管理または制御する構成を備える事は、当業者にとって周知の技術に過ぎない。
したがって、本願の請求項1-3に記載された発明は、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に為し得たものである。
よって、本願の請求項1-3に係る発明は、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2011/148321号
2.特開2009-281331号公報』

(2)平成28年2月9日付の拒絶理由通知(以下、「拒絶理由通知」という。)の記載
『 理由
1.?3. 略
4.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(新規事項)について 略
●理由2(明確性)について 略
●理由3(新規性)、及び、理由4(進歩性)について
・請求項 2-3
・引用文献 1
引用文献1は、段落[0011]-[0043]及び図1-2等を参照されたい。引用文献1には、発電車両からの電力の供給、それを利用した電力系統システムを制御する装置が記載されている。
したがって、本願の請求項2-3に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願の請求項2-3に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
●理由4(進歩性)について
・請求項 1,4-7
・引用文献 1-2
・備考
引用文献1は、段落[0011]-[0043]及び図1-2等を参照されたい。
引用文献2の段落[0019]には、車両において風力発電を行い、二次電池に充電する構成が記載されている。
したがって、本願の請求項1及び4-7に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2011/148321号
2.特開2009-281331号公報』

4.当審の判断

(1)原査定(3.(1))及び拒絶理由通知(3.(2))の記載によれば、原査定は、引用文献1を主引用文献とする進歩性欠如を拒絶の理由とするものであるところ、原査定と拒絶理由通知のいずれについても、引用文献1として「国際公開第2011/148321号」と記載されている。
そして、原査定には、「走行による風圧を利用した発電システムを備えた車両と、外部に供給する構成」及び「発電した電力を外部に送電する装置」が引用文献1に記載されている旨が示されており(3.(1))、他方、拒絶理由通知においては、引用文献1の参照箇所として「段落[0011]-[0043]及び図1-2等」が示され、さらに「発電車両からの電力の供給、それを利用した電力系統システムを制御する装置」が引用文献1に記載されている旨が示されている(3.(2))。
しかしながら、当審において、「国際公開第2011/148321号」を確認したところ、この文献は、タイトルを「MITRO SAW(当審訳:「固定具付きの鋸」)」とするものであって、「走行による風圧を利用した発電システムを備えた車両と、外部に供給する構成」、「発電した電力を外部に送電する装置」、「発電車両からの電力の供給、それを利用した電力系統システムを制御する装置」はもとより、送電に関係した技術的事項を記載したものでない。さらには、そもそも「国際公開第2011/148321号」には段落番号が付されておらず、「段落[0011]-[0043]」に対応する参照箇所がない。これらを踏まえれば、原査定及び拒絶理由通知に記載された「国際公開第2011/148321号」は、進歩性欠如の主引用文献として示されるべき文献ではなかったのであって、原査定及び拒絶理由通知の記載中の引用文献の表示に誤りがあることは、明らかである。
また、このような主引用文献の表示の誤りによって、出願人においては正しい主引用文献を特定することができなかったのであり、そのことによって、特許法第52条第1項が予定する査定不服審判の請求に際して拒絶の理由に対して具体的に反論する機会及び同法第50条本文が予定する拒絶理由通知に対する意見書提出期間において通知された拒絶の理由に対して具体的に反論する機会が失われ、その意味で反論の機会が実質的に与えられないまま拒絶査定がなされたものである。

(2)そして、本願については、2.に示した決定によって平成29年3月3日にされた手続補正が却下されることを前提とした更なる審理が必要となるところ、(1)において上述した事情に鑑みれば、当審においてこの点を審理し自判するのは、特許法が審査と審判の審級を設けた趣旨に照らして妥当でない。(参考:審判便覧61-07の「1.(2)イ」)

5.むすび

よって、原査定を取り消すとともに本願について更に審査に付すべきものとし、結論のとおり、審決する。

<付言>
これまでの経緯に鑑み、本願に係る更なる審査に際し、審査官及び審判請求人(出願人)のそれぞれが留意すべき点を示すこととする。

(1)審査官に対し
ア 更なる審査に際しては、進歩性要件のみならず、平成28年6月14日になされた手続補正についての補正要件及びこの手続補正による補正後の明細書及び特許請求の範囲についての記載要件(実施可能要件明確性要件、サポート要件)の検討も必要となる。とりわけ、実施可能要件違反については、査定の理由とされておらず拒絶理由通知でも示されていないところ、この手続補正によって特許請求の範囲のみならず明細書も変更されていることに鑑みても、改めて検討を行う必要がある。
進歩性要件の欠如の拒絶理由を改めて通知するにあたっては、3.に示した原査定及び拒絶理由通知のように引用文献の番号と段落番号のみを単に示すのではなく、認定した主引用発明の内容を含めた進歩性欠如の理由の論旨を十分に示す必要がある。

(2)審判請求人(出願人)に対し
更なる審査を行う審査官が、原査定と同様に、平成28年6月14日になされた手続補正によって平成28年2月9日付の拒絶理由通知の新規事項追加禁止要件の違反の拒絶理由(理由1)が解消したと判断した場合、更なる審査において改めて拒絶理由を通知するにあたって、新規事項追加禁止要件の違反の拒絶理由は通知されないことになる。
しかし、この更なる審査における拒絶理由の通知に対して、出願人において、平成25年2月15日になされた手続補正や平成29年3月6日にされた手続補正(本件補正)と実質的に同じ内容の手続補正により応答すると、更なる審査を行う審査官は、この審決の2.(2)で示した判断(新規事項追加禁止要件の違反の判断(2.(2)ア)及びこの判断と同内容の拒絶理由が平成28年2月9日付の拒絶理由通知として既に通知されているという判断(2.(2)イ))に拘束される(特許法第160条第2項を参照)。その結果として、その後に改めて拒絶理由が通知されないまま、この審決の2.(2)の判断と同様の拒絶理由によって拒絶査定がなされることも考えられる。
このことを踏まえ、更なる審査において通知された拒絶理由に対する意見書提出期間に補正を行う際は、通知された拒絶理由を解消するにあたってこの審決の2.(2)の判断と同内容の拒絶理由が新たに生じないよう、留意されたい。
 
審理終結日 2018-01-23 
結審通知日 2018-01-30 
審決日 2018-02-13 
出願番号 特願2012-64403(P2012-64403)
審決分類 P 1 8・ 561- W (G06F)
P 1 8・ 05- W (G06F)
P 1 8・ 121- W (G06F)
最終処分 差戻し  
前審関与審査官 木方 庸輔  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 相崎 裕恒
石川 正二
発明の名称 風圧発電車両など車両発電電力を、社会電力エネルギー一大供給インフラ源とする目的とし、また当該車両走行動力エネルギーにも汎用する、スマートグッリド管理方式でのビジネスモデル。  

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