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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1337643 |
審判番号 | 不服2017-7603 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-26 |
確定日 | 2018-02-22 |
事件の表示 | 特願2015-255775「画像送信装置、画像送信方法および画像送信装置を備えた画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 7日出願公開、特開2016- 48965〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年7月22日の出願である特願2010-165289号の一部を、特許法44条1項の規定により、平成26年11月18日に新たな特許出願(特願2014-233784号)とし、さらにその一部を、平成27年12月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年11月14日付け:拒絶理由の通知 平成29年 1月16日 :意見書、手続補正書の提出 平成29年 2月17日付け:拒絶査定(同月28日送達) 平成29年 5月26日 :審判請求書、手続補正書の提出 平成29年 6月28日付け:前置報告 平成29年 8月 7日 :上申書の提出 第2 平成29年5月26日にされた手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成29年5月26日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 画像データを入力する入力手段と、前記入力手段から入力される画像データに基づいて画像出力を行う出力手段とを備えるとともに、入力された画像データに基づいてプレビュー表示する画像を生成する表示画像生成手段と、前記表示画像生成手段により生成されたプレビュー画像を表示する表示手段と、前記表示画像生成手段により生成されたプレビュー画像を前記表示手段にプレビュー表示する表示制御手段とを具備する画像表示操作装置を備え、ユーザがプレビュー画像を確認後に画像送信を行うことができる画像送信装置において、 前記表示制御手段は、 プレビュー画像を表示する際に、入力された画像データの向きに依らず、前記プレビュー画像を予め設定された向きで表示し、 前記出力手段は、 画像出力を実行する際に、前記プレビュー画像の向きに依らず、画像出力の指示により、入力された画像データの向きに対応して、入力された画像データの向きと同じ向きで画像出力することを特徴とする画像送信装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成29年1月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 画像データを入力する入力手段と、前記入力手段から入力される画像データに基づいて画像出力を行う出力手段とを備えるとともに、入力された画像データに基づいてプレビュー表示する画像を生成する表示画像生成手段と、前記表示画像生成手段により生成されたプレビュー画像を表示する表示手段と、前記表示画像生成手段により生成されたプレビュー画像を前記表示手段にプレビュー表示する表示制御手段とを具備する画像表示操作装置を備え、ユーザがプレビュー画像を確認後に画像送信を行うことができる画像送信装置において、 前記表示制御手段は、 プレビュー画像を表示する際に、入力された画像データの向きに依らず、前記プレビュー画像を予め設定された向きで表示し、 前記出力手段は、 画像出力を実行する際に、画像出力の指示により、入力された画像データの向きと同じ向きで出力することを特徴とする画像送信装置。」 2.補正の適否 本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法17条の2第3項(新規事項)の規定に適合している。 上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「出力手段」が、「画像出力を実行する際に、画像出力の指示により、入力された画像データの向きと同じ向きで画像出力する」ことについて、「前記プレビュー画像の向きに依らず」という事項、及び、「入力された画像データの向きに対応して」という事項を付加して限定するものであり、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、発明の単一性の要件を満たしており、特許法17条の2第4項(発明の単一性)の規定に適合している。 そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりであり、下記のとおり説明のために当審において(A)ないし(J)の符号を付して再掲する(以下、構成Aないし構成Jと称する。)。 〔本件補正発明〕 【請求項1】 (A)画像データを入力する入力手段と、 (B)前記入力手段から入力される画像データに基づいて画像出力を行う出力手段とを備えるとともに、 (C)入力された画像データに基づいてプレビュー表示する画像を生成する表示画像生成手段と、 (D)前記表示画像生成手段により生成されたプレビュー画像を表示する表示手段と、 (E)前記表示画像生成手段により生成されたプレビュー画像を前記表示手段にプレビュー表示する表示制御手段とを具備する (F)画像表示操作装置を備え、 (G)ユーザがプレビュー画像を確認後に画像送信を行うことができる (H)画像送信装置において、 (I)前記表示制御手段は、 プレビュー画像を表示する際に、入力された画像データの向きに依らず、前記プレビュー画像を予め設定された向きで表示し、 (J)前記出力手段は、 画像出力を実行する際に、前記プレビュー画像の向きに依らず、画像出力の指示により、入力された画像データの向きに対応して、入力された画像データの向きと同じ向きで画像出力することを特徴とする (H)画像送信装置。 (2)引用文献、引用発明 (2-1)引用文献の記載 原審の拒絶理由に引用された、特開2009-225157号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「画像処理装置」(発明の名称)として、図面とともに以下の記載がなされている(下線は強調のため当審で付与した。)。 【0001】 本発明は、画像処理装置に関し、詳細には、原稿画像のプレビュー画像及び/またはサムネイル画像を作成して表示する画像処理装置に関する。 【0016】 図1?図6は、本発明の画像処理装置の第1実施例を示す図であり、図1は、本発明の画像処理装置の第1実施例を適用した複合装置1の正面概略構成図である。 【0017】 図1において、複合装置1は、下部から、給紙バンク2、プリンタ部3、スキャナ部4、操作表示部5及びADF(Auto Document Feeder)6が順次積み重ねられた状態で、構築されており、給紙バンク2には、大容量の用紙を収納する大容量給紙トレイ7が接続されている。複合装置1は、フィニッシャ10が接続されており、また、プリンタ部3とスキャナ部4との間に排紙トレイ8が設けられている。 【0019】 プリンタ部(印刷手段)3は、例えば、電子写真方式で給紙バンク2から搬送されてきた用紙に画像を印刷し、印刷済の用紙を排紙トレイ8またはフィニッシャ10に排出する。プリンタ部3は、両面ドライブユニット3aを備えており、両面ドライブユニット3aは、両面印刷時に、片面(表面)に印刷した用紙を表裏面反転して再度印刷実行位置に搬送し、印刷実行位置で他面(裏面)に印刷を実行させる。 【0021】 操作表示部(原稿向き取得手段)5は、テンキーやスタートキー等の各種操作キーを備えるとともに、ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ)を備え、操作キーからは、送信操作、コピー操作、スキャナ操作等の各種命令操作が行われ、ディスプレイ(表示手段)には、操作キーから入力された命令内容や複合装置1からユーザに通知する各種情報が表示される。 【0022】 複合装置1は、PBX(構内交換機)15等を介して公衆電話回線等のファクシミリ通信可能な回線に接続されており、また、複合装置1に印刷対象のデータを送って複合装置1のプリンタ部3に印刷させ、また、スキャナ部4で読み取った原稿の画像データを取得するホスト装置HSが接続されている。 【0023】 スキャナ部(画像読み取り手段)4は、例えば、CCD(Charge Coupled Device )を利用したイメージスキャナ等が利用されており、スキャナ部4の上部にADF6が備えられている。ADF6には、複数枚の原稿がセットされ、ADF6は、セットされた原稿を1枚ずつスキャナ部4の原稿読み取り位置に送給する。スキャナ部4は、ADF6から搬送されてきた原稿を走査し、原稿の画像を所定の解像度で読み取って、2値化して出力する。 【0031】 次に、本実施例の作用を説明する。本実施例の複合装置1は、原稿の読み取りと読み取りの間にプレビュー画像及び/またはサムネイル画像を作成して保管し、該保管したプレビュー画像及び/またはサムネイル画像を要求に応じて表示する。なお、以下の説明では、コピー処理を行う場合について、説明する。本実施例の複合装置1は、コピー処理を、スキャナ部4で読み取った原稿の画像データをハードディスク、大容量RAM(Random Access Memory)等のメモリ(記憶手段)に一旦保管するとともに、該原稿の画像のプレビュー画像及び/またはサムネイル画像を作成して該原稿の画像データに関連付けて該メモリに保管した後、操作表示部5での指示に応じて、該メモリのプレビュー画像及び/またはサムネイル画像を操作表示部5のディスプレイに表示し、また、原稿の画像データに基づいて画像をプリンタ部3で用紙に印刷出力する。 【0032】 本実施例の複合装置1は、図3に示すような処理フローに従って画像処理を実行する。すなわち、複合装置1は、ADF6に複数枚の原稿がセットされ、必要なコピー等の動作内容の指示操作が操作表示部5で行われて、スタートキーが操作されると、コントロール22が、ADF6から、まず、1枚の原稿(紙原稿)を分離してスキャナ部4に送って、スキャナ部4で、読み取り処理を行うという画像入力処理を行う。次に、複合装置1は、画像入力処理で入力された原稿の画像データからプレビュー・サムネイル処理部30で表示用画像としてプレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGを生成して、該生成したプレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGを該元の画像データと関連付けた状態でメモリMAに保存する。なお、このプレビュー・サムネイル処理部30は、コントロール22の制御下でアプリケーションロジック23の必要な各コンポーネント23a、23b、・・・を使用して実現される。複合装置1は、操作表示部5からプレビュー表示の指示操作が行われると、メモリMAに保管されているプレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGをそのまま利用して、操作表示部5のディスプレイにプレビュー表示し、操作表示部5の操作でコピー開始が指示操作されると、メモリMAから原稿の画像データを読み出してプリンタ部3で用紙に印刷出力する。 【0041】 図7及び図8は、それぞれ本発明の画像処理装置の第2実施例を適用した複合装置によるプレビュー・サムネイル画像作成処理を伴う画像読み取り処理を示すフローチャートである。 【0042】 なお、本実施例は、上記第1実施例の複合装置1と同様の複合装置に適用したものであり、本実施例の説明においては、必要に応じて、第1実施例で用いた符号をそのまま用いて説明する。 【0043】 本実施例の複合装置1は、プレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGを、セットされた原稿の方向から回転させた状態で生成して保管する。 【0044】 この作成するプレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGの方向としては、ユーザから操作表示部5のディスプレイに表示されるサムネイル画像SGを見たときに該ユーザに対して適切に向く方向、プリンタ部3でのプリント出力時に実際に印刷出力される方向等を用いる。 【0045】 まず、操作表示部5のディスプレイに表示されるプレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGをユーザから見たときに、該プレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGがユーザの方向に向く方向に、プレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGを回転させて作成する場合のプレビュー・サムネイル画像作成処理を伴う画像読み取り処理について、図7に基づいて説明する。すなわち、原稿をスキャナ部4で読み取る場合、ADF6やスキャナ部4の原稿台の形状と原稿サイズ等との関係から、原稿セット方向のままプレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGを作成して操作表示部5のディスプレイに表示させた場合、必ずしもユーザから見て原稿が読める方向(ユーザの方向)に向いているプレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGが作成されるとは限らない。この場合、原稿セット方向のまま、プレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGを作成して保管して、操作表示部5のディスプレイに表示しても、ユーザにとっては、見難い方向の画像表示となる。そこで、プレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGの表示時に、ユーザの見やすい方向にプレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGを表示すると、表示処理に時間を要することとなるため、プレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGの作成時に、ユーザの見やすい方向に画像の回転処理を行ってプレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGを作成して保管する。 【0046】 複合装置1は、ADF6に複数枚の原稿がセットされて、操作表示部5で読み取り指示が行われると、まず、ADF6にセットされた原稿を1枚だけ分離してスキャナ部4に送り、スキャナ部4で該原稿の画像の読み取りを行うと(ステップS301)、該読み取った原稿のRGBの画像データをメモリMAに保存するとともに、次の原稿の読み取りを開始する前に、上記プレビュー・サムネイル処理部30でプレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGの作成を開始する(ステップS302)。複合装置1は、プレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGの作成を開始すると、読み取り原稿の方向を取得し(ステップS303)、該原稿方向と操作表示部5のディスプレイへの表示がユーザ方向となる方向とを比較して、原稿方向からプレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGの方向を回転する必要があるかチェックする(ステップS304)。この原稿方向の取得は、例えば、操作表示部5のディスプレイに、原稿方向指定画面を表示して、該原稿方向指定画面で指定された原稿方向を取得することで行う。なお、この場合、例えば、操作表示部5のディスプレイに、プレビュー画像PG及び/またはサムネイル画像SGの回転の要否及び回転方向と回転角度を指定する画面を表示して、該画面による指定を取得してもよい。 (2-2)引用発明 (2-2-1)【0001】には、原稿画像のプレビュー画像を作成して表示する画像処理装置について記載され、【0016】、【0017】には、画像処理装置としての「複合装置」が、「プリンタ部」、「スキャナ部」、「操作表示部」などからなることが記載されている。 また、【0019】には、「プリンタ部」が、印刷手段として、用紙に画像を印刷することが、【0023】には、「スキャナ部」が、画像読み取り手段として、原稿の画像を読み取って、2値化した画像データを出力することが、それぞれ記載されている。 (2-2-2)【0021】には、「操作表示部」が、送信操作、コピー操作、スキャナ操作等の各種命令操作が行われる「操作キー」とともに、ユーザに通知する情報を表示する「ディスプレイ」を備えることが記載されている。 (2-2-3)【0022】には、複合装置が、ファクシミリ通信可能な回線に接続されていることが記載されている。 ここで、【0021】における「操作表示部」の操作キーにより「送信操作」の命令操作が行われるとの記載を考慮すれば、引用文献1の複合装置は、「スキャナ部」により読み取った画像を、「送信操作」により、画像送信する機能を備えることは、当業者にとって明らかである。 したがって、引用文献1には、複合装置が、「送信操作に応じて、画像送信を行う」ことが記載されているといえる。 (2-2-4)【0031】、【0032】には、複合装置がコピー処理を行う場合に、「プレビュー・サムネイル処理部」が、スキャナ部で読み取った「原稿の画像データからプレビュー画像を生成」して、原稿の画像データと関連付けてメモリに保存し、操作表示部からプレビュー表示の指示操作が行われると、保存したプレビュー画像を「ディスプレイに表示」し、「操作表示部」から「コピー開始の指示」操作が行われると、メモリから「原稿の画像データ」を読み出して「プリンタ部で印刷出力する」ことが記載されている。 したがって、引用文献1には、複合装置が、「原稿の画像データから、プレビュー画像を作成するプレビュー・サムネイル処理部」を備え、「ディスプレイ」に「プレビュー画像を表示する」こと、及び、「プレビュー画像を表示した後、操作表示部でのコピー開始操作に応じて、プリンタ部により原稿の画像データを印刷出力する」こと、が記載されているといえる。 (2-2-5)【0043】、【0044】には、プレビュー画像を、セットされた原稿の方向から回転させた状態で生成すること、及び、作成するプレビュー画像の方向として、ユーザから操作表示部のディスプレイに表示される画像を見たときに該ユーザに対して適切に向く方向を用いることが記載されている。ここで、「ユーザに対して適切に向く方向」とは、【0045】の記載によれば、ディスプレイに表示させた場合、「ユーザから見て原稿が読める方向」であると解され、その方向について、【0046】には、操作表示部のディスプレイに、プレビュー画像の回転の要否及び回転方向と回転角度を指定する画面を表示して、該画面による指定を取得することが記載されている。 したがって、引用文献1には、「操作表示部で指定された方向に基づいて、ユーザから見て原稿が読める方向のプレビュー画像を作成する」ことが記載されているといえる。 以上より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成aないし構成gと称する。 (引用発明) (a)原稿の画像を読み取って、画像データを出力するスキャナ部と、 (b)読み取った原稿の画像データを印刷出力するプリンタ部と、 (c)原稿の画像データから、操作表示部で指定された方向に基づいて、ユーザから見て原稿が読める方向のプレビュー画像を作成するプレビュー・サムネイル処理部と、 (d)プレビュー画像を表示するディスプレイと操作キーとを有する操作表示部を備え、 (e)プレビュー画像を表示した後、操作表示部でのコピー開始操作に応じて、プリンタ部により原稿の画像データを印刷出力し、 (f)送信操作に応じて、画像送信を行う、 (g)複合装置。 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (3-1)本件補正発明の構成A、Bと、引用発明の構成a、bとの対比 引用発明の「スキャナ部」は、原稿の画像を読み取って、画像データを出力する機能、すなわち、複合装置に画像データを入力する機能を有するから、本件補正発明の「入力手段」に相当する。また、引用発明の「プリンタ部」は、画像データを印刷出力するから、本件補正発明の「出力手段」に相当する。 (3-2)本件補正発明の構成C?F及びIと、引用発明の構成c、dとの対比 引用発明の「操作表示部」の「ディスプレイ」は、プレビュー画像を表示するから、本件補正発明の「画像表示操作装置」の「表示手段」に相当し、引用発明の「プレビュー・サムネイル処理部」は、画像データからプレビュー画像を作成して、ディスプレイに表示させる点で、本件補正発明の「表示画像生成手段」の機能と「表示制御手段」の機能とを果たしているといえるから、引用発明の「プレビュー・サムネイル処理部」と「操作表示部」とを併せると、本件補正発明の「表示画像生成手段」と「表示手段」と「表示制御手段」とを具備する「画像表示操作装置」に対応するといえる。 ここで、引用発明の構成cで作成する「プレビュー画像」の向きについて検討する。 引用発明の構成cの「操作表示部で指定された方向に基づいて」作成するプレビュー画像の「ユーザから見て原稿が読める方向」は、操作表示部のディスプレイに、プレビュー画像の回転の要否及び回転方向と回転角度を指定する画面を表示して、該画面による指定を取得するのであるから、読み取られる原稿の「文字や図画の方向」に基づいて、原稿が読める方向に指定されるものであり、入力された「画像データ」そのものの向き、即ち、スキャナ部に対する原稿のセット方向の縦横には依らないことは、当業者にとって自明であるといえる。 そして、引用発明において、「方向」を「操作表示部で指定」することは、プレビュー画像の作成及び表示に先だって行われるから、「プレビュー画像の向き」を「予め設定」することといえる。 してみれば、引用発明において、「操作表示部で指定された方向に基づいて、ユーザから見て原稿が読める方向のプレビュー画像を作成」して「表示する」ことは、本件補正発明において、「入力された画像データの向きに依らず、前記プレビュー画像を予め設定された向きで表示する」ことに相当するといえる。 したがって、引用発明の構成c、dと、本件補正発明の構成C?F及びIとは、一致する。 (3-3)本件補正発明の構成Jと、引用発明の構成eとの対比 引用発明の構成eは、操作表示部での操作に応じて、画像データを印刷出力するものであるから、本件補正発明の構成Jとは、「画像出力を実行する際に、画像出力の指示により、画像出力する」点で共通する。 ただし、本件補正発明が、「プレビュー画像の向きに依らず、入力された画像データの向きに対応して、入力された画像データの向きと同じ向きで」画像出力するのに対し、引用発明は、「プレビュー画像の向きに依らず、入力された画像データの向きに対応して、入力された画像データの向きと同じ向きで」印刷出力すると特定されていない点で相違する。 (3-4)本件補正発明の構成G、Hと、引用発明の構成f、gとの対比 引用発明の構成fによれば、引用発明の「複合装置」は、「画像送信を行う」機能を有するから、「画像送信装置」であるということができる。 よって、引用発明の構成f、gと本件補正発明の構成G、Hとは、「画像送信を行うことができる画像送信装置」である点で共通する。 ただし、本件補正発明が、「ユーザがプレビュー画像を確認後に」画像送信を行うことができるのに対し、引用発明は、「ユーザがプレビュー画像を確認後に」画像送信を行うと特定されていない点で相違する。 (3-5)一致点、相違点 したがって、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 画像データを入力する入力手段と、 前記入力手段から入力される画像データに基づいて画像出力を行う出力手段とを備えるとともに、 入力された画像データに基づいてプレビュー表示する画像を生成する表示画像生成手段と、 前記表示画像生成手段により生成されたプレビュー画像を表示する表示手段と、 前記表示画像生成手段により生成されたプレビュー画像を前記表示手段にプレビュー表示する表示制御手段とを具備する 画像表示操作装置を備え、 画像送信を行うことができる画像送信装置において、 前記表示制御手段は、 プレビュー画像を表示する際に、入力された画像データの向きに依らず、前記プレビュー画像を予め設定された向きで表示し、 前記出力手段は、 画像出力を実行する際に、画像出力の指示により、画像出力する、 画像送信装置。 (相違点1) 「画像送信」について、本件補正発明は「ユーザがプレビュー画像を確認後」に行うことができるのに対し、引用発明は、「ユーザがプレビュー画像を確認後」に行うと特定されていない点。 (相違点2) 出力手段による「画像出力」について、本件補正発明は「前記プレビュー画像の向きに依らず、入力された画像データの向きに対応して、入力された画像データの向きと同じ向きで」行うのに対し、引用発明は、「プレビュー画像の向きに依らず、入力された画像データの向きに対応して、入力された画像データの向きと同じ向きで」行うと特定されていない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 (4-1)相違点1について 引用発明における、プレビュー画像の表示は、構成eにもあるように、スキャナ部で読み取った原稿を、印刷出力前に確認するために行うものである。してみれば、印刷出力前に行うプレビュー画像の表示による読み取り原稿の確認を、画像送信前にも行うようにすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。 よって、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正発明の構成を得ることは、引用文献1の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得ることと認められる。 (4-2)相違点2について 引用発明のような「複合装置」における「コピー処理」は、引用文献1の【0052】において、「ユーザから複合装置1のプリンタ部3で出力される用紙を見てA4タテの向きに出力したい場合であっても、給紙バンク2にA4タテの用紙がなく、A4ヨコの用紙がある場合には、読み取り画像を回転して出力することになる」と記載されるような、例外的な状況を除き、読み取り原稿の原稿セット方向のまま印刷出力することが、当業者の技術常識である。 また、引用文献1の【0046】によれば、引用発明の実施態様として、スキャナ部で読み取った原稿の画像データをメモリに保存し、読み取った原稿の向きと表示させるプレビュー画像の向きとが異なり、回転させる必要がある場合はプレビュー画像の回転処理を行い、その必要がない場合には回転処理を行わずに、プレビュー画像を作成し、原稿の画像データと関連付けてメモリに保存することが記載されていると認められ、かかる処理手順によりメモリに保存された、原稿の画像データは、プレビュー画像の回転処理の有無に関わらず、原稿セット方向のまま、すなわち、入力された画像データの向きと同じ向きであることは、当業者にとって明らかである。 このような引用発明の実施態様について、上記した技術常識を踏まえて検討すると、プレビュー画像の回転処理の有無に関わらず、入力された画像データの向きと同じ向きで保存された原稿の画像データを、その向きのまま読み出して印刷出力する構成は、当業者が普通に採用する構成であるといえる。 してみれば、引用発明における画像出力を、「プレビュー画像の向きに依らず、入力された画像データの向きに対応して、入力された画像データの向きと同じ向きで」行う構成とすることに、当業者が困難を要するものとは認められない。 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点2に係る本件特許発明の構成を得ることは、引用文献1の記載ならびに技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得ることと認められる。 (4-3)まとめ 上記(4-1)及び(4-2)において判断したとおり、相違点1,2はいずれも格別なものとはいえない。そして、本件補正発明に関する作用・効果も、引用発明及び引用文献1の記載ならびに技術常識から、当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1の記載ならびに技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成29年5月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年1月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。 2.引用文献、引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項ならびに引用発明は、前記第2の[理由]の2.(2)及び(4)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2[理由]の2.にて検討した本件補正発明から、「出力手段」についての限定事項である、「前記プレビュー画像の向きに依らず」という事項、及び、「入力された画像データの向きに対応して」という事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]の2.(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献1の記載ならびに技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献1の記載ならびに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-12-13 |
結審通知日 | 2017-12-19 |
審決日 | 2018-01-05 |
出願番号 | 特願2015-255775(P2015-255775) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石田 信行 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
篠原 功一 渡辺 努 |
発明の名称 | 画像送信装置、画像送信方法および画像送信装置を備えた画像形成装置 |
代理人 | 藤本 英介 |
代理人 | 神田 正義 |
代理人 | 馬場 信幸 |
代理人 | 宮尾 明茂 |