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審決分類 審判 一部申し立て 特29条の2  C01B
審判 一部申し立て 2項進歩性  C01B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C01B
管理番号 1338181
異議申立番号 異議2017-701193  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-14 
確定日 2018-03-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第6147554号発明「疎水性無機酸化物粉末及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6147554号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6147554号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成25年4月26日に出願されたものであって、平成29年5月26日に特許の設定登録(特許掲載公報発行日 平成29年6月14日)がされ、平成29年12月14日に、その請求項1ないし5に係る特許に対して、特許異議申立人 田中都子 により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6147554号の請求項1ないし9に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1ないし5に記載された発明は以下に記すとおりのものである。
以下、請求項1ないし5に記載された発明を「本件発明1」ないし「本件発明5」といい、総称して「本件発明」ということがある。
また、本件発明1については、以下のようにa)ないしf)に分説して検討する。

【請求項1】
a)球状の無機酸化物粒子よりなる粉末であって、
b)レーザー回折・散乱式粒度分布測定法におけるメジアン径が0.05?1.5μmの範囲にあり、且つ
c)変動係数が35%以下であり、
且つ下記(1)?(2)の要件を満たすものであることを特徴とする
d)疎水性無機酸化物粉末。
e)(1)疎水化度が40?70容量%
f)(2)目開き45μmの篩(直径75mmの、JIS Z8801準拠の篩である。)に、該疎水性無機酸化物粉末10gを乗せ、振幅1mm及び振動数60Hzで上下に60秒間振動を行った後に、篩上に残存した凝集粒子量が40質量%以下
但し、凝集粒子量(%)=篩残存粒子量(g)/10(g)×100
【請求項2】
圧壊強度測定法における解砕強度が0.01N以下である請求項1に記載の疎水性無機酸化物粉末。
【請求項3】
メジアン径6.1μmのスチレン-アクリル樹脂粒子20gに前記疎水性無機酸化物粉末を0.1g添加した際の、上記スチレン-アクリル樹脂粒子への前記無機酸化物粒子の被覆率が4%以上である請求項1又は2に記載の疎水性無機酸化物粉末。
【請求項4】
粒子の表面がヘキサメチルジシラザンにより表面処理された、請求項1?3のいずれか
1項に記載の疎水性無機酸化物粉末。
【請求項5】
トナー用外添剤である請求項1?4のいずれか1項に記載の疎水性無機酸化物粉末。

第3 異議申立理由の概要
特許異議申立人は、後記する甲各号証を提出し、以下の異議申立ての理由を主張した。

<異議申立理由1:特許法第29条第1項第3号について>
(1)本件発明1は、甲第1ないし4号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その特許は取り消されるべきものである。
(2)本件発明2は、甲第1号証又は甲第4号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その特許は取り消されるべきものである。
(3)本件発明4及び5は、甲第1号証又は甲第2号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その特許は取り消されるべきものである。

<異議申立理由2:特許法第29条第2項について>
本件発明1ないし5は、甲第1ないし4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は取り消されるべきものである。

<異議申立理由3:特許法第29条の2について>
(1)本件発明1は、その出願前に出願された特許出願であって、その出願後に出願公開(甲第12号証)がされた先願1の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願前において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、その特許は取り消されるべきものである。
(2)本件発明3は、その出願前に出願された特許出願であって、その出願後に出願公開(甲第16号証)がされた先願2(甲第17号証)の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願前において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、その特許は取り消されるべきものである。

<証拠>
○甲第1号証:特開2012-173665号公報
○甲第2号証:特開2011-236089号公報
○甲第3号証:特開2011-213514号公報
○甲第4号証:株式会社アドマテックス、アドマナノ/製品一覧、製品紹介 についてのウエブページのプリントアウト、平成29年12月7日印刷
○甲第5号証:アドマナノYC100C-Google検索 についてのウエブページのプリントアウト、平成29年12月9日印刷、甲第4号証の記載内容が2013年(平成25年)4月25日よりも前に電子媒体で公開されていたことの証拠
○甲第6号証:MONO TRENDY NIKKEISTYLE、期間指定は「ピリオド2つ」、あなたの知らない検索ワザ、一歩先行くグーグル検索のコツ(上) についてのウエブページのプリントアウト、平成29年12月7日印刷、甲第5号証の検索方法についての説明
○甲第7号証:アドマナノ技術資料、2014年(平成26年)5月8日
○甲第8号証:特開2013-60005号公報
○甲第9号証:特開2013-60576号公報
○甲第10号証:特開2014-151496号公報
○甲第11号証:特開2014-162856号公報
○甲第12号証:特開2014-46463号公報
○甲第13号証:特開2013-227435号公報
○甲第14号証:特開2015-161858号公報
○甲第15号証:特許第6170922号公報
○甲第16号証:特開2015-134898号公報
○甲第17号証:特願2013-88911号の特許請求の範囲、明細書、要約書及び添付図面(以下、「明細書等」と記す。)(甲第16号証の優先権主張の基礎出願の一つ)
○甲第18号証:事実実験公正証書

第4 当審の判断
1.甲第1ないし4号証、甲第12号証、甲第17号証に記載の発明の認定
1-1.甲第1号証に記載の発明の認定
甲第1号証には、「トナーの外添剤」に用いられる「微粒子」について記載されている。 そして、同「微粒子」に着目すると、次のi)?v)のことが記載されている。
i)同「微粒子」の「一次粒子の個数平均粒子径が80nm以上300nm以下」であること(【請求項1】)、「微粒子A及びその他無機微粒子の一次粒子の個数平均粒子径については、透過型電子顕微鏡にて・・・観察し、粒子の長軸と短軸の平均値を粒径とした。また粒子100個の粒径を測定してその平均値を一次粒子の個数平均粒子径・・・とした。」(【0089】)こと
ii)同「微粒子」は「ゾルゲル法により得られる球状の疎水性シリカ」であること(【請求項4】)
iii)「ゾルゲル法により得られたシリカ微粒子は、適度な粒径と粒度分布を有し、単分散かつ球形である」こと(【0032】)
iv)同「微粒子」の「表面は、疎水化処理をされていることが好ましい」ものであり(【0070】)、「疎水化処理」の「処理後の疎水化度が40以上98以下であることが好ましい」こと(【0075】)
v)実施例について、「〔処理微粒子A-1、A-4、A-6の製造例〕撹拌機、滴下ロート、温度計をガラス製反応器にセットし、エタノールにアンモニア水を加え撹拌し、20℃に保った。つぎにこの溶液にテトラメトキシシランを60分間で滴下し反応させた。滴下終了後さらに20℃にて5時間撹拌を続けシリカゾル懸濁液を得た。つぎにこのシリカゾル懸濁液を加熱し、エタノールを除去した後トルエンを加え更に加熱し、水を除去した。次に懸濁液中のシリカ粒子に対して40%のヘキサメチルジシラザンと、パラフィンワックス1(Mw:500、融点66℃)を表1に示す添加量になるように調整して加えた後、120℃で2時間反応させシリカの疎水化処理を行った。その後、懸濁液を加熱し、トルエンを除去し、乾燥させたあと、目開き106μmの篩分網にて粗大粉を取り除き、表1に示す物性の微粒子A-1、A-4、A-6を得た。」ものであること(【0107】)
vi)以上から、本件請求項1の記載に則して整理すれば、甲第1号証には、
「疎水性シリカの球形微粒子であって、透過型電子顕微鏡にて観察した一次粒子の個数平均粒子径が80nm以上300nm以下であり、単分散であって、疎水化度が40以上98以下である、トナーの外添剤に用いられる疎水性シリカの球形微粒子。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

1-2.甲第2号証に記載の発明の認定
甲第2号証には、「表面改質球状シリカ粉末及びその製造方法」における「球状シリカ粉末」について記載されている。
そして、同「球状シリカ粉末」に着目すると、次のi)?iii)のことが記載されている。
i)同「球状シリカ粉末」の「疎水化度」が「65%」以上であること(【請求項1】)
ii)同「球状シリカ粉末」は「原料球状シリカ粉末の凝集を著しく緩和し、高分散状態を作り出」されたものであること(【0018】)
iii)同「球状シリカ粉末」は「比表面積としては、3?150m^(2)/g」であって、「比表面積は、BET測定機」で測定されるものであること(【0023】)
iv)以上から、本件請求項1の記載に則して整理すれば、甲第2号証には、
「球状シリカ粉末であって、BET測定器で測定された比表面積が3?150m^(2)/gであって、凝集を著しく緩和し高分散状態にできるものであって、疎水化度が65%以上である、球状シリカ粉末。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

1-3.甲第3号証に記載の発明の認定
甲第3号証には、「シリカ粒子材料、シリカ粒子材料含有組成物、およびシリカ粒子の表面処理方法」における「シリカ粒子材料」について記載されている。
そして、同「シリカ粒子材料」に着目すると、次のi)?ii)のことが記載されている。
i)同「シリカ粒子材料」が「疎水性の高」い「基」を持つ「シランカップリング剤およびオルガノシラザンによってシリカ粒子を表面処理」するものであり、「オルガノシラザン」として「ヘキサメチルジシラザン」を用い得る(【0012】【0033】【0040】【0064】)ものであって、「凝集しがたい」こと(【0012】)
ii)当該「シリカ粒子材料」の粒径と粒度分布について、「ヘキサメチルジシラザン」で疎水化処理された「シリカ粒子材料」を「メチルエチルケトン」に混合した分散試料で、「シリカ粒子材料」の粒度分布を「粒祖分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラック)により測定」し、その結果が「シリカ粒子材料の粒度分布」(実施例4【0064】)として【図4】に示されていること(【0070】)が記載されており、「マイクロトラック」は「レーザー回折・散乱式粒度分布測定法」を意味するので、「シリカ粒子材料」の「レーザー回折・散乱式粒度分布測定法におけるメジアン径」は「0.012μm?0.2μmの範囲」にあることが【図4】からみてとれる。
iii)以上から、本件請求項1の記載に則して整理すれば、甲第3号証には、
「シリカ粒子材料であって、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法おけるメジアン径が0.012μm?0.2μmの範囲にあり、疎水化処理され、凝集しがたいシリカ粒子材料。」の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

1-4.甲第4号証に記載の発明の認定
甲第6号証の説明と甲第5号証の記載から公知文献と認められる甲第4号証には、「株式会社アドマテックス」の製品「アドマナノ」には、「パウダータイプ」(2頁)の製品が3種類あり、その内の「YA050C」「YC100C」について、次のi)?iv)のことが記載されている。
i)「YA050C」「YC100C」は、共に「SiO_(2)」が「95%以上」でなり、「メタクリル、ビニル、フェニル等」の「表面処理」が可能であり、「分散可能な溶剤」として有機溶媒が列挙されていることから、疎水性であること
ii)「YA050C」について、粒度分布のグラフ(5頁)と共に、「メジアン径」が「50nm」、「比表面積」が「65m^(2)/g」であること
iii)「YC100C」について、粒度分布のグラフ(7頁)と共に、「メジアン径」が「100nm」、「比表面積」が「30m^(2)/g」であること
iv)粒度の分布のグラフは、「動的光散乱式粒度分布計」により測定されたもの(8頁)であること
v)以上から、本件請求項1の記載に則して整理すれば、甲第4号証には、
「SiO_(2)が95%以上の疎水性のパウダー製品であって、動的光散乱式粒度分布計で測定されたメジアン径が50nmで比表面積が65m^(2)/gであるアドマナノYA050C、又は、動的光散乱式粒度分布計で測定されたメジアン径が100nmで比表面積が30m^(2)/gであるアドマナノYC100C。」の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

1-5.甲第12号証に記載の発明の認定
i)甲第12号証には、「硬化層」を「硬化性樹脂」と「微粒子」で形成する「基材フィルムの表裏両側に硬化層を有する積層フィルム」(【0012】)において、「微粒子」の一部に「透明微粒子D(株式会社アドマテックス製、商品名『YA050C-SM1』)」を用いること(【0070】)が記載されている。
ii)したがって、甲第12号証には「透明微粒子『YA050C-SM1』。」の発明(以下、「引用発明12」という。)が記載されていると認められる。

1-6.甲第16号証に記載の発明の認定
i)甲第16号証には、「シリカ被覆有機物粒子およびその製造方法」における「シリカ粒子」について記載され、優先権主張を享受できる範囲で、同粒子の「体積平均粒径」が「1?200nm」(甲16【0026】、甲17【0016】)で、「ヘキサメチルジシラザン」で表面処理(甲16【0059】、甲17【0048】)して「疎水性」(甲16【0068】、甲17【0058】)にして「凝集し難い」(甲16【0047】、甲17【0037】)ものとして、「スプレードライ法にて噴霧乾燥」する(甲16【0072】、甲17【0062】)ことが記載されている。
ii)したがって、甲第16号証には、
「シリカ粒子であって、体積平均粒径が1?200nmの範囲にあり、疎水性であるシリカ粒子。」の発明(以下、「引用発明16」という。)が記載されていると認められる。

2.異議申立理由1(特許法第29条第1項第3号)についての判断
事案に鑑み、引用発明1ないし4が、本件発明1の構成f)を有するか否かについて検討する。

2-1.引用発明1について
引用発明1の「疎水性シリカの球形微粒子」が含む粗大分について考察するに、上記「1-1.v)」より、甲第1号証には「目開き106μmの篩分網にて粗大粉を取り除き、表1に示す物性の微粒子A-1、A-4、A-6を得た」(【0107】)と記載されているにすぎず、この記載からは「目開き45μm」の篩分網にて粗大粉を取り除いた際に、どの程度の粗大分が残存するか不明だから、上記記載をもって引用発明1が本件発明1の構成f)を有するとはいえない。

2-2.引用発明2について
引用発明2は、「凝集を著しく緩和し高分散状態にできる」ものであるが、凝集状態、粒度分布状態が具体的にどの程度であるのか明らかでないから、本件発明1の構成f)を有するとはいえない。

2-3.引用発明3について
引用発明3は、「シリカ粒子材料」について「凝集しがたい」とするものであるが、そのことをもって、本件発明1の構成f)を有するとはいえない。

2-4.引用発明4について
i)特許異議申立人は、本件出願時に非公知文献である甲第7号証に記載された、試料A(アドマナノYA050C-SM1)、試料B(アドマナノYA050C-SP3)、試料C(アドマナノYC100C-SP3)、試料D(アドマナノYC100C-SM1)について、凝集粒子量について本件発明1と同様に実験して全て0%であることを確認したと主張している。
ii)しかしながら、甲第7号証の記載によれば、上記試料A及びBは引用発明4の「YA050C」をそれぞれメタクリルとフェニルで表面処理したものであり、上記試料C及びDは引用発明4の「YC100C」をそれぞれフェニルとメタクリルで表面処理したものであると認められる。
してみると、表面処理により粒子の凝集性が変化するのは明らかだから、試料AないしDが、本件発明1の構成f)を有するからといって、引用発明4が構成f)を有することにはならない。

2-5.異議申立理由1(特許法第29条第1項第3号)についての結言
以上から、構成f)を有する本件発明1及びこれを直接又は間接的に引用する本件発明2ないし5は、同発明が、甲第1ないし4号証のいずれかに記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないものではない。

3.異議申立理由2(特許法第29条第2項)についての判断
上記したように、本件発明1の構成f)について、甲第1ないし4号証のいずれにも記載や示唆がない。
したがって、構成f)を有する本件発明1ないし5は、同発明が、甲第1ないし4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

4.異議申立理由3(特許法第29条の2)についての判断
4-1.本件発明1と引用発明12について
i)引用発明12は、甲第18号証の(試料A)の計測結果から「疎水化度51.03%」であり、上記「2-4.i)」の特許異議申立人の主張から、凝集粒子量について本件発明1と同様に実験して0%であると一応解される。
ii)しかしながら、引用発明12の「アドマナノYA050C-SM1」は、上記「2-4.」でみたように引用発明4の「アドマナノYA050C」ではないから、「アドマナノYA050C-SM1」のメジアン径と変動係数について明らかでない。
この点に関し、特許異議申立人は甲第4号証に記載の粒度分布から「アドマナノYA050C」の「メジアン径」「変動係数」を計算している。
しかし、上記「1-4.iv)」でみたように、「アドマナノYA050C」の「メジアン径」「変動係数」は「動的光散乱式粒度分布計」で測定された粒度分布に基づくものであり、「レーザー回折・散乱式粒度分布測定法」に基づくものではないから、仮に、「アドマナノYA050C-SM1」が「アドマナノYA050C」と同様の粒度分布を有するとしても、「アドマナノYA050C-SM1」の「レーザー回折・散乱式粒度分布測定法」に基づく粒度分布が明らかになるわけではない。
iii)すると、引用発明12は、本件発明1の構成b)c)を有するとはいえないから、本件発明1と同一とはいえない。
iv)したがって、本件発明1は、その出願前に出願された特許出願であって、その出願後に出願公開(甲第12号証)がされた先願1の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一でなく、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものではない。

4-2.本件発明1と引用発明16について
i)本件発明1の構成b)c)における「レーザー回折・散乱式粒度分布測定法」は「体積平均粒径」を求めるものともいえるので、引用発明16の「体積平均粒径が1?200nmの範囲にあ」ることは、本件発明1の構成b)を有するといえるが、「変動係数」は明らかでなく、「疎水性」をもって「疎水化度が40?70容量%」であるということまではいえず、凝集粒子量についても明らかでない。
ii)すると、引用発明16は、少なくとも本件発明1の構成c)e)f)を有するといえないから、本件発明1を引用する本件発明3と同一とはいえない。
iii)したがって、本件発明3は、その出願前に出願された特許出願であって、その出願後に出願公開(甲第16号証)がされた先願2(甲第17号証)の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一でなく、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、異議申立理由によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-03-09 
出願番号 特願2013-93488(P2013-93488)
審決分類 P 1 652・ 16- Y (C01B)
P 1 652・ 113- Y (C01B)
P 1 652・ 121- Y (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増山 淳子村岡 一磨浅野 昭粟野 正明  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 中澤 登
後藤 政博
登録日 2017-05-26 
登録番号 特許第6147554号(P6147554)
権利者 株式会社トクヤマ
発明の名称 疎水性無機酸化物粉末及びその製造方法  

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