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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する F16C
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する F16C
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する F16C
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する F16C
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する F16C
管理番号 1338428
審判番号 訂正2017-390142  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2017-12-11 
確定日 2018-03-01 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5321211号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5321211号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第5321211号は、平成21年4月14日に特許出願され、その請求項1?4に係る発明は、平成25年7月26日にその特許権の設定登録がなされたものであって、平成29年12月11日に本件訂正審判が請求された。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5321211号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである。(審決注:下線部分が訂正箇所である。)

1 訂正事項1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に「転がり軸受の内輪、外輪、転動体、保持器及びシール部材の少なくとも1つの機械部品であり、かつ、ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させてなることを特徴とする生分解性樹脂製機械部品。」とあるのを、
「転がり軸受の内輪、外輪、転動体、保持器及びシール部材の少なくとも1つの機械部品であり、かつ、ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させてなることを特徴とする生分解性樹脂製機械部品の製造方法。」に訂正する。

2 訂正事項2
本件特許の特許請求の範囲の請求項2に「イミド系架橋剤がカルボジイミド化合物であることを特徴とする請求項1記載の生分解性樹脂製機械部品。」とあるのを、
「イミド系架橋剤がカルボジイミド化合物であることを特徴とする請求項1記載の生分解性樹脂製機械部品の製造方法。」に訂正する。

3 訂正事項3
本件特許の特許請求の範囲の請求項3に「ポリビニルアルコールが、鹸化度73?98モル%、オキシアルキレン基量0.1?5モル%、重合度500?1500であることを特徴とする請求項1または2記載の生分解性樹脂製機械部品。」とあるのを、
「ポリビニルアルコールが、鹸化度73?98モル%、オキシアルキレン基量0.1?5モル%、重合度500?1500であることを特徴とする請求項1または2記載の生分解性樹脂製機械部品の製造方法。」に訂正する。

4 訂正事項4
本件特許の特許請求の範囲の請求項4を削除する。

5 訂正事項5
本件特許の明細書の【発明の名称】に「生分解性樹脂製機械部品及び転がり軸受」とあるのを、
「生分解性樹脂製機械部品の製造方法」に訂正する。

6 訂正事項6
本件特許の明細書の段落【0001】に「本発明は、生分解製樹脂を成形してなる内輪や外輪、転動体、保持器、シール部材に関する。また、前記内輪や外輪、転動体、保持器、シール部材を備える転がり軸受に関する。」とあるのを、
「本発明は、生分解製樹脂を成形してなる内輪や外輪、転動体、保持器、シール部材の少なくとも1つの機械部品の製造方法に関する。」に訂正する。

7 訂正事項7
本件特許の明細書の段落【0007】に「上記目的を達成するために本発明は、下記の生分解性樹脂製機械部品及び転がり軸受を提供する。(1)転がり軸受の内輪、外輪、転動体、保持器及びシール部材の少なくとも1つの機械部品であり、かつ、ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させたことを特徴とする生分解性樹脂製機械部品。(2)イミド系架橋剤がカルボジイミド化合物であることを特徴とする上記(1)記載の生分解性樹脂製機械部品。(3)ポリビニルアルコールが、鹸化度73?98モル%、オキシアルキレン基量0.1?5モル%、重合度500?1500であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の生分解性樹脂製機械部品。(4)内輪と外輪との間に保持器を介して複数の転動体を転動自在に保持してなり、シール部材を備える転がり軸受であって、内輪、外輪、転動体、保持器及びシール部材の少なくとも1つが上記(1)?(3)の何れか1項に記載の生分解性樹脂製機械部品であることを特徴とする転がり軸受。」とあるのを、
「上記目的を達成するために本発明は、下記の生分解性樹脂製機械部品の製造方法を提供する。(1)転がり軸受の内輪、外輪、転動体、保持器及びシール部材の少なくとも1つの機械部品であり、かつ、ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させたことを特徴とする生分解性樹脂製機械部品の製造方法。(2)イミド系架橋剤がカルボジイミド化合物であることを特徴とする上記(1)記載の生分解性樹脂製機械部品の製造方法。(3)ポリビニルアルコールが、鹸化度73?98モル%、オキシアルキレン基量0.1?5モル%、重合度500?1500であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の生分解性樹脂製機械部品の製造方法。」に訂正する。

8 訂正事項8
本件特許の明細書の段落【0019】に「耐加水分解性の点から特に好ましく、」とあるのを、
「耐加水分解性の点から特に好ましい。」に訂正する。

第3 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的について
訂正前請求項1の記載は、「……なることを特徴とする生分解性樹脂製機械部品。」であるから、訂正前の請求項1に係る発明(以下、「訂正前請求項1発明」という。)の対象は、「生分解性樹脂製機械部品」という「物」であることは明らかである。
そして、訂正前請求項1には、「ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させてなる」と特定されていることから、「生分解性樹脂製機械部品」に関し、その「製造方法」が記載されている。
ここで、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である」(最高裁第二小法廷判決平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号))と判示されている。
そこで、上記判示事項を踏まえて検討すると、訂正前請求項1には、「ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させてなる」との「生分解性樹脂製機械部品」の製造方法が記載されているから、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるものである。
そして、訂正事項1は、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがある訂正前請求項1を、「生分解性樹脂製機械部品の製造方法」として、「ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させてなる」ことを特定する訂正後請求項1に訂正するものであって、「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
本件特許の明細書の段落【0024】には「上記のポリビニルアルコール及びイミド系架橋剤、更には補強材や添加剤を混練して樹脂組成物とし、機械部品の形状に合せて成形する。混練は樹脂やゴム用の混練機を使用でき、例えばヘンシェルミキサーやタンブラー等を用いてドライブレンドしてもよく、バンバリーミキサーやニーダー、押出機、ロールミル等の混練り機を用いて溶融混練してもよい。成形方法にも制限はなく、樹脂やゴム用の成形機を用いることができが、生産性の点では射出成形が好ましい。また、成形後に切削加工してもよい。」、同段落【0025】には「本発明では、成形品を熱処理して機械的強度を高める。熱処理温度は120?170℃であり、140?150℃がより好ましい。120℃未満では架橋反応が進行せず、機械的強度等の物性向上が十分ではなく、170℃を超えると樹脂の熱劣化が起こるおそれがある。……」、同段落【0030】には「(実施例1?3、比較例1?3) ポリビニルアルコール系樹脂として日本合成化学工業社製『エコマティAX-300』(鹸化度93%、オキシアルキレン基含有)、ガラス繊維として日東紡マテリアル社製『ECS03』(エポキシ系シランカップリング剤処理品)を用い、ポリビニルアルコール系樹脂:ガラス繊維=70:30で配合したものに、イミド系架橋剤として日清紡績社製『カルボジライトLA-1』(4,4´-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、カルボイミド当量248)を表1に示す割合で添加し、東洋精機製作所製『ラボプラストミル』にて溶融混練(200℃、回転数30rpmで5分間)した。尚、表1に示すイミド系架橋剤量は、ポリビニルアルコール100質量部に対する量である。」、同段落【0031】には「得られた混練物を粉砕した後、成形温度190?210℃、金型温度50℃、冷却時間50秒にて日本精工社製深溝玉軸受用『6203』用の保持器(図2参照)及びシール部材を射出成形した。その後、145℃で24時間熱架橋処理を施した後……」と記載されており、また、同段落【0037】の【表1】には実施例1?3及び比較例1?3について、イミド系架橋剤(質量部)及び架橋条件がそれぞれ記載されている。
したがって、本件特許の明細書には、訂正後の請求項1に係る発明(以下、「訂正後請求項1発明」という。)に対応する「ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させてなる」「生分解性樹脂製機械部品の製造方法」が記載されていると解されるから、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
ア 発明が解決しようとする課題とその解決手段について
特許法第126条第6項は、第1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない旨を規定したものである。
また、特許法第36条第4項第1号の規定により委任された特許法施行規則の第24条の2には、「特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定されているから、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明において、発明が解決しようとする課題及びその解決手段が、実質的に変更されたものか否かにより、訂正後請求項1発明の技術的意義が、訂正前請求項1発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更されたものであるか否かについて検討する。

訂正前の本件特許の明細書の段落【0005】?【0007】の記載から、訂正前請求項1発明の課題は、「ポリビニルアルコールは、200℃以上の高融点であるものの、100℃程度で機械的性質が大きく低下する。また、分子内に水酸基を多量に有するために耐水性に劣り、大気中の水分でも吸水が進んで機械的性質の経時的な低下を起こし易い。そのため、特に転がり軸受の内輪や外輪、転動体として広範囲な用途に使用するには強度不足が懸念される場合がある。また、保持器やシール部材においても、更なる強度向上が求められている。」ことであり、その解決手段は、「生分解性樹脂製機械部品」について、「ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させてなる」ことである。
一方、訂正後の本件特許の明細書の段落【0005】?【0007】の記載から、訂正後請求項1発明の課題は、「ポリビニルアルコールは、200℃以上の高融点であるものの、100℃程度で機械的性質が大きく低下する。また、分子内に水酸基を多量に有するために耐水性に劣り、大気中の水分でも吸水が進んで機械的性質の経時的な低下を起こし易い。そのため、特に転がり軸受の内輪や外輪、転動体として広範囲な用途に使用するには強度不足が懸念される場合がある。また、保持器やシール部材においても、更なる強度向上が求められている。」ことであり、その解決手段は、「生分解性樹脂製機械部品の製造方法」について、「ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させてなる」ことである。
そうすると、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明の課題には、何ら変更はなく、また、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明の課題解決手段には、実質的な変更はない。
したがって、訂正後請求項1発明の技術的意義は、訂正前請求項1発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正による第三者の不測の不利益について
特許請求の範囲は、「特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」が記載されたもの(特許法第36条第5項)である。
また、特許法第126条第6項は、第1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない旨を規定したものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、言い換えれば、訂正前の発明の「実施」に該当しないとされた行為が訂正後の発明の「実施」に該当する行為となる場合、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるため、そうした事態が生じないことを担保したものである。
以上を踏まえ、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明において、それぞれの発明の「実施」に該当する行為の異同により、訂正後請求項1発明の「実施」に該当する行為が、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものであるか否かについて検討する。

ここで、特許法第2条第3項第1号に規定された「物の発明」(訂正前請求項1発明)及び第3号に規定された「物を生産する方法の発明」(訂正後請求項1発明)の実施について比較する。
「物の発明」の実施(第1号)とは、「その物の生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」であり、「物を生産する方法」の実施(第3号)とは、「その方法の使用をする行為」(第2号)のほか、その方法により生産した「物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」である。ここで、「物を生産する方法」の実施における「その方法の使用をする行為」とは、「その方法の使用により生産される物の生産をする行為」と解されることから、「物の発明」の実施における「その物の生産」をする行為に相当する。

すると、「物の発明」の実施においては、物の生産方法を特定するものではないのに対して、「物を生産する方法の発明」の実施においては、物の生産方法を「その方法」に特定している点で相違するが、その実施行為の各態様については、全て対応するものである。

そして、訂正前請求項1発明は、「ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させてなる」という製造方法(以下、「特定の製造方法」という)により「生分解性樹脂製機械部品」という物が特定された「物の発明」であるから、前記特定の製造方法により製造された「生分解性樹脂製機械部品」に加え、前記特定の製造方法により製造された「生分解性樹脂製機械部品」と同一の構造・特性を有する物も、特許発明の実施に含むものである。
一方、訂正後請求項1発明は、上記特定の製造方法を更に限定した製造方法により「生分解性樹脂製機械部品の製造方法」という方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから、前記特定の製造方法を更に限定した製造方法により製造された「生分解性樹脂製機械部品」を、特許発明の実施に含むものである。
したがって、訂正後請求項1発明の「実施」に該当する行為は、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえない。

ウ 小括
訂正後請求項1発明の技術的意義は、訂正前請求項1発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではなく、訂正後請求項1発明の「実施」に該当する行為は、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。

2 訂正事項2及び3について
上記「1」と同様の理由により、上記訂正事項2及び3は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、また、特許法第126条第5項、第6項の規定に適合する。

3 訂正事項4について
上記訂正事項4は、請求項4を削除するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、また、特許法第126条第5項、第6項の規定に適合する。
なお、訂正事項4は、請求項を削除する訂正であるから、特許法第126条第7項に規定する独立特許要件についての判断を要しない。

4 訂正事項5?7について
上記訂正事項5?7は、上記訂正事項1?4の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と、明細書の記載との整合を図るものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、また、特許法第126条第5項、第6項の規定に適合する。

5 訂正事項8について
訂正前の明細書の段落【0019】の末尾は、「耐加水分解性の点から特に好ましく、」と記載されており、日本語表記として適切ではなく、誤記であったと解されるところ、上記訂正事項8は、当該段落の末尾を、日本語表記として適切である「耐加水分解性の点から特に好ましい。」に訂正するものであるから、上記訂正事項8は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当し、また、特許法第126条第5項から第7項までの規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求に係る訂正事項1?8は、特許法第126条第1項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項から第7項までの規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
生分解性樹脂製機械部品の製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解製樹脂を成形してなる内輪や外輪、転動体、保持器、シール部材の少なくとも1つの機械部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性樹脂は、土壌中等に放置されるとバクテリア等により二酸化炭素及び水等に徐々に分解する。この生分解性樹脂からなる機械部品は、自然環境に放出されても原形を留めなくなるまで自然に分解するため、自然環境に対して悪影響を及ぼし難い。また、植物やその他の生物資源等のように再生可能な原料から生産されるバイオマスプラスチックも、カーボンニュートラルな素材として注目を浴びている。
【0003】
これらの環境対応型プラスチックは、ごみ袋、ボトル容器、食品用トレイ、農業用マルチフィルム等の材料が主たる用途であったが、最近、機械部品や構造部品材料としての研究開発が活発になり、転がり軸受用の保持器やシール部材への適用も検討されている。本出願人も先に、ポリビニルアルコールに補強繊維材を配合した樹脂組成物からなる保持器やシールを備える転がり軸受を提案している(特許文献1?4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-92732号公報
【特許文献2】特開2004-92769号公報
【特許文献3】特許第3791439号公報
【特許文献4】特許第4117478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリビニルアルコールは、200℃以上の高融点であるものの、100℃程度で機械的性質が大きく低下する。また、分子内に水酸基を多量に有するために耐水性に劣り、大気中の水分でも吸水が進んで機械的性質の経時的な低下を起こし易い。そのため、特に転がり軸受の内輪や外輪、転動体として広範囲な用途に使用するには強度不足が懸念される場合がある。また、保持器やシール部材においても、更なる強度向上が求められている。
【0006】
そこで本発明は、生分解性に優れるポリビニルアルコールをベース樹脂とする成形品の耐熱性及び機械的特性を向上させ、更には高強度を長期間維持し、転がり軸受の内輪や外輪、転動体、保持器、シール部材として十分に使用可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、下記の生分解性樹脂製機械部品の製造方法を提供する。
(1)転がり軸受の内輪、外輪、転動体、保持器及びシール部材の少なくとも1つの機械部品であり、かつ、ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させたことを特徴とする生分解性樹脂製機械部品の製造方法。
(2)イミド系架橋剤がカルボジイミド化合物であることを特徴とする上記(1)記載の生分解性樹脂製機械部品の製造方法。
(3)ポリビニルアルコールが、鹸化度73?98モル%、オキシアルキレン基量0.1?5モル%、重合度500?1500であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の生分解性樹脂製機械部品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生分解性に優れるとともに、耐熱性や機械的強度にも優れ、長寿命の、転がり軸受の内輪や外輪、転動体、保持器、シール部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の転がり軸受の一実施形態を示す深溝玉軸受の断面図である。
【図2】図1の深溝玉軸受に組み込まれる保持器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0011】
本発明では、ベース樹脂として生分解性に優れるポリビニルアルコールを用いる。ポリビニルアルコールとしては、下記一般式(I)で表される基本骨格を有するものが好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
式中、R1はオキシアルキレン基、ポリエーテル基またはポリエステル基であり、l、m、nは整数である。鹸化度はm/(1+m+n)で表わされるが、73?98モル%であることが好ましく、85?95モル%であることがより好ましい。鹸化度が73モル%未満では、機械部品が耐湿性に劣るようになり、98モル%を超えると生分解性が悪くなる。
【0014】
また、(l+m+n)は重合度を示すが、500?3000であることが好ましく、500?1500であることがより好ましい。分子量が500未満では機械部品の耐熱性が十分ではなく、3000を超えると成形時における流動性が低く、成形性に悪影響を与える。
【0015】
本発明では、上記ポリビニルアルコールをイミド系架橋剤で架橋して機械的特性を高める。イミド系架橋剤の中でも、ポリビニルアルコールの活性水素との反応性に富み、また室温下で安定に存在して自己反応もなく、ポリビニルアルコールと溶融混練することもでき、更には耐水性や耐熱性、耐摺動性を付与できること等から、分子中に2個以上のカルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物が好ましい。
【0016】
カルボジイミド化合物としては、下記一般式(II)で表わされる基本骨格を持つものが好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
具体的には、4,4´-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(式中のXが4,4´-ジシクロヘキシル基、n=2?20)、テトラメチルキシリレンカルボジイミド(式中のXがテトラメチルキシリレン基、n=2?20)、N,N´-ジメチルフェニルカルボジイミド(式中のXがN,N´-ジメチルフェニル基、n=2?20)、N,N´-ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(式中のXがN,N´-ジ-2,6-ジイソプロピルフェニル基、n=2?20)等を例示できる。
【0019】
中でも、色相、安全性、安定性、更には耐加水分解性、耐候性、耐熱性の点から、芳香族カルボジイミド化合物よりも脂肪族カルボジイミド化合物の方が好ましい。また、TG5%重量減少率温度が250℃以上である耐熱性の点から、重合度5以上の脂肪族カルボジイミド化合物が特に好ましい。更には、脂肪族カルボジイミド化合物の中でもイソシアネート末端のものが、耐加水分解性の点から特に好ましい。
【0020】
イミド系架橋剤の添加量は、ポリビニルアルコール100質量部に対し2?5質量部である。イミド系架橋剤の添加量が2質量部未満では、十分な架橋密度が得られず、耐水性や機械的強度に優れた機械部品が得られない。一方、イミド系架橋剤の添加量が5質量部を超えると、機械部品の靭性が大幅に低下し、特に転がり軸受の保持器とした場合に保持器先端(爪部)が白化したり、最悪の場合破損する。更には、加工性が低下して射出成形が困難になる、生分解性も悪くなる等の弊害を発生するおそれもある。
【0021】
また、ポリビニルアルコールには、機械的強度の向上を目的として、補強材を配合してもよい。補強材は、炭素繊維やガラス繊維が一般的であり、コスト面からはガラス繊維が最も適当であるが、ポリビニルアルコールが分解して土壌中に残存したときの環境への影響が少ないことから、軽質炭酸カルシウム(結晶形:カルサイト、アルゴナイト)、天然含水ケイ酸アルミニウム(カオリン、クレー)、タルク、ベントナイト、繊維状水酸化マグネシウム、ウォラストナイト、セピオライト、マイカ、二酸化ケイ素、珪藻土等が好適である。補強材は、ポリビニルアルコール100質量部に対し、15?40質量部が適当であり、15質量部未満では機械的強度が不十分であり、40質量部を超えると流動性が低下して成形性が悪くなるとともに、土壌中に残存したときの環境負荷が高くなる。
【0022】
また、補強材は、ポリビニルアルコールの水酸基との反応性が高いエポキシ基を有するシランカプリング剤で表面されていることが好ましい。
【0023】
更に、目的に応じて他の添加物を添加することもできる。例えば、形成時や使用時の熱による劣化を防止するための酸化防止剤や、紫外線等による劣化を防止するための紫外線吸収剤、充填材等が好適であるが、何れも環境面を考慮して生分解性プラスチック研究会(BPS)の運用によるグリーンプラ識別表示制度のポジティブリスト(PL)に登録されている材料を選択することが好ましい。
【0024】
上記のポリビニルアルコール及びイミド系架橋剤、更には補強材や添加剤を混練して樹脂組成物とし、機械部品の形状に合せて成形する。混練は樹脂やゴム用の混練機を使用でき、例えばヘンシェルミキサーやタンブラー等を用いてドライブレンドしてもよく、バンバリーミキサーやニーダー、押出機、ロールミル等の混練り機を用いて溶融混練してもよい。成形方法にも制限はなく、樹脂やゴム用の成形機を用いることができが、生産性の点では射出成形が好ましい。また、成形後に切削加工してもよい。
【0025】
本発明では、成形品を熱処理して機械的強度を高める。熱処理温度は120?170℃であり、140?150℃がより好ましい。120℃未満では架橋反応が進行せず、機械的強度等の物性向上が十分ではなく、170℃を超えると樹脂の熱劣化が起こるおそれがある。尚、熱処理は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で行なうことが好ましく、最も好ましくは熱による寸法変化を防ぐために金型に嵌め込んだ状態で行なう。
【0026】
尚、機械部品の種類として本発明では転がり軸受の内輪、外輪、転動体、保持器、シール部材に適用することができる。図1は深溝玉軸受10の断面図であり、内輪11と外輪12との間に、複数の転動体である玉13が保持器14により転動自在に保持された状態で組み込まれており、シール部材15でグリース等の潤滑剤(図示せず)を封止している。また、保持器14は、図2に示すように冠型保持器である。尚、シール部材15は、その一端に設けた係合部15aを外輪12の両外端の係止溝12aに嵌入して固定され、他端のリップ部15cが内輪11の軌道面に摺接している。また、符号15bは、係合部15aとリップ部15cとを連結する本体部である。
【0027】
特許文献1?4でも、保持器14やシール部材15をポリビニルアルコール樹脂組成物製としていたが、本発明では機械的強度が更に向上しているため内輪11や外輪12、玉13にも適用することができる。
【0028】
尚、潤滑剤には制限はないが、生分解性を有するものが好ましく、例えば、植物油や生分解性合成エステル油、あるいはこれらの油を各種金属石けん、ウレア化合物等の増ちょう剤によって増ちょうさせた生分解性グリースを例示できる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0030】
(実施例1?3、比較例1?3)
ポリビニルアルコール系樹脂として日本合成化学工業社製「エコマティAX-300」(鹸化度93%、オキシアルキレン基含有)、ガラス繊維として日東紡マテリアル社製「ECS03」(エポキシ系シランカップリング剤処理品)を用い、ポリビニルアルコール系樹脂:ガラス繊維=70:30で配合したものに、イミド系架橋剤として日清紡績社製「カルボジライトLA-1」(4,4´-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、カルボイミド当量248)を表1に示す割合で添加し、東洋精機製作所製「ラボプラストミル」にて溶融混練(200℃、回転数30rpmで5分間)した。尚、表1に示すイミド系架橋剤量は、ポリビニルアルコール100質量部に対する量である。
【0031】
得られた混練物を粉砕した後、成形温度190?210℃、金型温度50℃、冷却時間50秒にて日本精工社製深溝玉軸受用「6203」用の保持器(図2参照)及びシール部材を射出成形した。その後、145℃で24時間熱架橋処理を施した後、下記に従い機械的強度(円環強度)、生分解性、耐水性を評価した。
【0032】
(1)生分解性評価
保持器を粉砕し、菱三商事社製微生物酸化分解測定装置「MODA」(JIS K6953、ISO14855対応)の反応筒部分(完熟堆肥+海砂)に投入し、生分解により発生した二酸化炭素を定量して生分解の進行度を測定した。結果を表1に示すが、生分解度は6ヶ月経過時の生分解の進行度、生分解速度は比較例1が50%まで生分解するまでに要した日数を1とする相対値とした。
【0033】
(2)機械的強度(円環強度)
保持器の円環強度を、室温(23℃)または120℃にて測定した。結果を表1に示すが、比較例1の測定値に対する相対値とした。
【0034】
(3)引張破断伸び
JIS K7113法に準じて引張試験を行い、試験片が破断したときの伸び率を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
(4)耐湿性試験
保持器及びシール部材を60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽中に吊り下げて100時間放置した後、円環強度を測定した。そして、試験前の円環強度を1とし、100時間放置後の円環強度との相対比を求めた。結果を表1に示す。
【0036】
(5)軸受回転試験
保持器及びシール部材を用いて6203玉軸受(内輪、外輪、玉は何れもSUJ2製)を組み立て、リチウム石けん-エステル油系の生分解可能なグリース(混和ちょう度250)を軸受空間容積の20%となるように封入して試験軸受とした。尚、通常のグリース封入量は軸受空間の35%程度であるが、本試験では加速させるために20%とした。そして、下記条件にて連続回転させ、保持器が変形するなどして回転に支障を来たすまでの回転時間を計測した。尚、回転は2000時間を目処に行い、2000時間経過時に回転に支障がない場合は試験を停止した。結果を表1に示すが「○」は2000時間経過時に回転に支障がない場合を示す。
・雰囲気温度:120℃
・回転数:10,000min^(-1)(内輪回転)
・荷重:ラジアル荷重98N、アキシアル荷重245N
【0037】
【表1】

【0038】
表1から、本発明に従いポリビニルアルコール100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を添加して架橋させて得た保持器及びシール部材は、生分解性に優れることに加え、機械的強度及び耐久性にも優れることがわかる。
【符号の説明】
【0039】
10 深溝玉軸受
11 内輪
12 外輪
13 玉
14 保持器
15 シール部材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受の内輪、外輪、転動体、保持器及びシール部材の少なくとも1つの機械部品であり、かつ、ポリビニルアルコールをベース樹脂とし、前記ベース樹脂100質量部に対し2?5質量部のイミド系架橋剤を含有する樹脂組成物を前記機械部品に成形した後、成形品を120?170℃で熱処理して架橋反応を進行させてなることを特徴とする生分解性樹脂製機械部品の製造方法。
【請求項2】
イミド系架橋剤がカルボジイミド化合物であることを特徴とする請求項1記載の生分解性樹脂製機械部品の製造方法。
【請求項3】
ポリビニルアルコールが、鹸化度73?98モル%、オキシアルキレン基量0.1?5モル%、重合度500?1500であることを特徴とする請求項1または2記載の生分解性樹脂製機械部品の製造方法。
【請求項4】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-01-29 
結審通知日 2018-01-31 
審決日 2018-02-19 
出願番号 特願2009-98071(P2009-98071)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (F16C)
P 1 41・ 853- Y (F16C)
P 1 41・ 854- Y (F16C)
P 1 41・ 851- Y (F16C)
P 1 41・ 856- Y (F16C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 矢澤 周一郎  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 小関 峰夫
内田 博之
登録日 2013-07-26 
登録番号 特許第5321211号(P5321211)
発明の名称 生分解性樹脂製機械部品及び転がり軸受  
代理人 松山 美奈子  
代理人 松山 美奈子  
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