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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03F 審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 取り消して特許、登録 G03F |
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管理番号 | 1338456 |
審判番号 | 不服2017-2542 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-22 |
確定日 | 2018-04-03 |
事件の表示 | 特願2015-538394「パターニングデバイス支持体、リソグラフィ装置及びパターニングデバイスの温度制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日国際公開、WO2014/067802、平成27年12月21日国内公表、特表2015-536476、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1 手続の経緯 平成25年10月21日 国際特許出願(優先権主張外国庁受理2012 年10月31日、2013年1月15日、20 13年2月22日、いずれもアメリカ合衆国) 平成28年 2月10日 拒絶理由通知(同年2月16日発送) 平成28年 5月12日 意見書・補正書 平成28年10月20日 拒絶査定(同年10月24日送達) 平成29年 2月22日 本件審判請求書・補正書 平成29年12月26日 拒絶理由通知(同年12月27日発送、以下「 当審拒絶理由」という) 平成30年 1月31日 意見書・補正書 2 本願発明 本願の請求項1-9に係る発明(以下、その順に「本願発明1」等といい、本願発明1-9をまとめて「本願発明」という。)は、平成30年1月31日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 パターニングデバイスを支持する可動コンポーネントを備えるパターニングデバイス支持体と、 前記可動コンポーネントの近傍に前記可動コンポーネントと離間して配置され、前記パターニングデバイスの第1の表面を横切るガス流を形成して前記パターニングデバイスの温度を変更するためにガスを供給し、動作時の使用中に前記パターニングデバイスと共に移動するガス入口と、 前記可動コンポーネント及び前記パターニングデバイスの上方に配置され、前記ガス流を抽出し、動作中の使用時に静止状態に保たれるガス出口と、を備える、リソグラフィシステム。 【請求項2】 前記ガス入口は、前記パターニングデバイスの長さに近似する長さのノズルを備える、請求項1に記載のリソグラフィシステム。 【請求項3】 前記システム内のある位置で温度を判定する温度センサと、 前記ガス流の特性を制御し、それによって前記パターニングデバイスの所望の温度を達成するために前記温度センサに動作可能に結合されたコントローラと、をさらに備える、請求項1に記載のリソグラフィシステム。 【請求項4】 前記ガス入口及び前記ガス出口は、前記可動コンポーネントの反対端に位置する、請求項1に記載のリソグラフィシステム。 【請求項5】 前記可動コンポーネントと前記パターニングデバイスとの上方に配置された固定プレートをさらに備え、 前記ガス出口は前記固定プレートの開口に結合される、請求項1に記載のリソグラフィシステム。 【請求項6】 前記固定プレートの開口の長さは、前記可動コンポーネントの軸に沿った前記パターニングデバイスの全運動範囲に近似する、請求項5に記載のリソグラフィシステム。 【請求項7】 前記ガスはヘリウムを含む、請求項1に記載のリソグラフィシステム。 【請求項8】 前記可動コンポーネントは、前記パターニングデバイスを微動させるショートストロークモジュールである、請求項1に記載のリソグラフィシステム。 【請求項9】 前記可動コンポーネントに実質的に従動する第2の可動コンポーネントをさらに備え、前記ガス入口は前記第2の可動コンポーネントに結合される、請求項8に記載のリソグラフィシステム。」 3 引用文献、引用発明等 (1)引用文献1について ア 原査定の拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2009/0207394号明細書(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(注:訳は、ファミリー文献である再公表特許2009-078422号を参考に当審が訳した。また、下線は当審が付加した。以下、同様である。) (ア)「BACKGROUND」(背景)の記載 「[0007]An aspect of the present invention is to provide a stage device that can suppress temperature change on a mask. Another aspect of the present invention is to provide an exposure apparatus that suppress the production of exposure defects. …」 ([0007]本発明の態様は、マスクの温度変化を抑制できるステージ装置を提供することを目的とする。また本発明の態様は、露光不良の発生を抑制できる露光装置を提供することを目的とする。…) (イ)「SUMMARY」(概要)の記載 「[0009]According to a second aspect of the present invention, there is provided a stage device that includes a mobile member having a retaining section for retaining a mask illuminated by exposure light, the mobile member retaining the mask and moving along a predetermined plane including the illumination position of the exposure light; and an intake structure including an intake port taking in gas, a first gas passage enabling flow of gases from the intake port and a supply port supplying gases flowing from the first gas passage to a surface of the mask retained on the retaining section.」 ([0009]本発明の第2の態様に従えば、露光光が照射されているマスクを保持する保持部を有し、露光光の照射位置を含む所定面に沿って、マスクを保持して移動する移動部材と、気体を取り入れる取入口と、取入口より取り入れた気体が流れる第1通気路と、第1通気路を流れた気体を保持部に保持されたマスクの表面に供給する供給口とを含むインテーク機構と、を備えたステージ装置が提供される。) (ウ)「First Embodiment」(第1実施形態)の記載 「[0040]Next the mask stage 1 will be described making reference to FIG. 2 , FIG. 3 and FIG. 4 . FIG. 2 is a perspective view showing adjacent components to the mask stage 1 , the counter mass 18 and the second plate 13 according to this embodiment. FIG. 3 is a perspective view enlarging a section of the mask stage 1 . FIG. 4 is a sectional arrow view along the line A-A in FIG. 3 . … [0089]In the embodiment, the intake structure 50 including the nozzle member 54 disposed rearward of the mask M moving in the Y axis direction directions as an outlet structure (outlet mechanism, flow control section) which includes an inflow port ( 53 ) into which flows at least a portion of the gas flowing over the upper face Ma of the mask M, a second gas passage ( 52 ) into which flows gas from the inflow port ( 53 ) and an outlet port ( 51 ) from which is discharged gas flowing from the second gas passage ( 52 ). In the description below, the supply port 53 of the nozzle member 54 disposed rearward of the mask M moving in the Y axis direction is termed, as suitable, the inflow port 53 , the first gas passage 52 of the nozzle member 54 is termed the second gas passage 52 , and the intake port 51 of the nozzle member 54 is termed the outlet port 51 . [0090]The positional relationship relative to the mask M and structure of the nozzle member 54 functioning as an intake structure disposed at the +Y side of the mask M is the same as the positional relationship relative to the mask M and the structure of the nozzle member 54 functioning as an outlet structure disposed at the -Y side.」 ([0040]次に、図2、図3及び図4を参照して、マスクステージ1について説明する。図2は、本実施形態に係るマスクステージ1、カウンタマス18及び第2プレート13近傍の斜視図、図3は、マスクステージ1の一部を拡大した斜視図、図4は、図3のA-A線断面矢視図である。 … [0089]本実施形態において、Y軸方向に関して移動するマスクMの後方に配置されているノズル部材54を含むインテーク機構50は、マスクMの上面Maを通過した気体の少なくとも一部が流入する流入口(53)と、流入口(53)より流入した気体が流れる第2通気路(52)と、第2通気路(52)を流れた気体を排出する排気口(51)とを含むアウトレット機構(流れ制御部)として機能する。以下の説明において、Y軸方向に関して移動するマスクMの後方に配置されているノズル部材54の供給口53を適宜、流入口53、と称し、そのノズル部材54の第1通気路52を適宜、第2通気路52、と称し、そのノズル部材54の取入口51を適宜、排気口51、と称する。 [0090]なお、マスクMの+Y側に配置されている、インテーク機構として機能するノズル部材54の構造及びマスクMに対する位置関係と、-Y側に配置されている、アウトレット機構として機能するノズル部材54の構造及びマスクMに対する位置関係とは、同じである。) (エ)「Fourth Embodiment」(第4実施形態)の記載 「[0112]A fourth embodiment will be described hereafter. In the description below, the constituent sections which are the same or equivalent to those described in the embodiment above are denoted by the same reference numerals and description thereof will be simplified or omitted. [0113]FIG. 9 shows an example of au intake structure 50 E according to a fourth embodiment. In FIG. 9 , the intake structure 50 B is provided with a passage formation member 64 enabling formation of at least a section of the intake port 51 , the first gas passage 52 and the supply port 53 with the upper face 41 of the first member 28 . [0114]The passage formation member 64 is a plate member having a lower face (control face) 65 that an oppose with the upper face 41 of the first member 28 . The passage formation member 64 forms the intake port 51 , the first gas passage 52 and the supply port 53 between the lower face 65 and the upper face 41 . As shown in FIG. 9 , the lower face 65 of the passage formation member 64 is inclined with respect to the upper face 41 and the first gas passage 52 gradually narrows from the intake port 51 towards the supply port 53 . [0115]A support device 66 supports the passage formation member 64 to enable movement thereof. The support device 66 includes an actuator and can move the passage formation member 64 in order to adjust the positional relationship of the first member 28 (mask stage 1 ) and the passage formation member 64 . [0116]The support device 66 can move the passage formation member 64 synchronously with the movement of the first member 28 (mask stage 1 ). The support device 66 moves the passage formation member 64 synchronously with the movement of the mask stage 1 to maintain (fix) the positional relationship of the moving mask stage 1 and the passage formation member 64 . Also in the embodiment, temperature increase of the mask M is suppressed.」 ([0112]第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の各実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。 [0113]図9は、第4実施形態に係るインテーク機構50Eの一例を示す図である。図9において、インテーク機構50Eは、第1部材28の上面41との間で、取入口51、第1通気路52及び供給口53の少なくとも一部を形成可能な流路形成部材64を備えている。 [0114]流路形成部材64は、第1部材28の上面41と対向可能な下面(制御面)65を有するプレート部材である。流路形成部材64は、下面65と上面41との間に、取入口51、第1通気路52及び供給口53を形成する。図9に示すように、流路形成部材64の下面65は、上面41に対して傾斜しており、第1通気路52は、取入口51から供給口53に向かって除々に狭くなっている。 [0115]流路形成部材64は、支持装置66によって移動可能に支持されている。支持装置66は、アクチュエータを含み、第1部材28(マスクステージ1)と流路形成部材64との位置関係を調整するために、流路形成部材64を移動可能である。 [0116]支持装置66は、第1部材28(マスクステージ1)の移動と同期して、流路形成部材64を移動可能である。支持装置66は、移動するマスクステージ1と流路形成部材64との位置関係が維持(固定)されるように、マスクステージ1の移動と同期して流路形成部材64を移動する。本実施形態においても、マスクMの温度上昇を抑制することができる。) (オ)Fig.5、Fig.9は、以下のとおりである。 イ 上記ア(ウ)の記載を踏まえて図5を見ると、マスクMの+Y側に配置されているノズル部材54はインテーク機構として機能し、マスクMの-Y側に配置されているノズル部材54はアウトレット機構として機能することが理解できる。 ウ 上記ア(ア)?(エ)の記載を踏まえて上記ア(オ)の図9を見ると、1対の流路形成部材64の一方は流路の供給側の部材として機能し、他方は流路の排出側の部材として機能することが看取できる。 エ してみると、引用文献1には、以下の発明が開示されている。 「露光光が照射されているマスクの温度変化を抑制できるステージ装置であって、 マスクMを保持する第1部材28(マスクステージ1)と、 マスクMの一方の側の下面65と上面41との間に、取入口51、第1通気路52及び供給口53を形成する、インテーク機構として機能する流路形成部材64と、 マスクMの他方の側の下面65と上面41との間に、排気口51、第2通気路52及び流入口53を形成する、アウトレット機構として機能する流路形成部材64と 移動するマスクステージ1と流路形成部材64との位置関係が維持(固定)されるように、マスクステージ1の移動と同期して流路形成部材64を移動する支持装置66とを備える、 ステージ装置。」(以下「引用発明1」という。) (2)引用文献2について ア 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-31647号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、レチクル上に描画されたパターンをウェーハ上に投影露光する投影露光装置に関するものである。」 (イ)「【0027】実施の形態1 図1は、本発明の実施の形態1による投影露光装置を概略的に示す構成図である。 【0028】図1に示されるように、実施の形態1においては、エンバイロンメンタル・チャンバ2の内部、即ち、投影露光装置1の周辺環境が、クーラ3と、ヒータ4と、送風機5と、ULPAフィルタ6とを有する空調ユニットによって、温度管理及び塵埃の除去がなされている。尚、図1における、白抜きの矢印は、エンバイロンメンタル・チャンバ2内におけるクリーンエアの流れを示す。 【0029】また、図1に示されるように、実施の形態1の投影露光装置1は、例えば、ArFエキシマレーザ等の光源7と、レチクル(例えば、4倍レチクル)8を載せるレチクルテーブル9と、縮小投影レンズ10と、ウェーハ11を載せるウェーハテーブル及びXYステージ部12とを有する。露光に際しては、光源7からの光により、レチクル8上に描画されたパターンをウェーハ11上に投影する。 【0030】また、実施の形態1の投影露光装置1は、設定温度の±0.1℃の範囲内に温度調節されたクリーンエアをレチクル8に直接当てることによってレチクル8の温度を調節する第1の温調ユニット(温度調節ユニット)20を備えている。第1の温調ユニット20は、温度調節及び塵埃除去されたクリーンエアの供給部21と、クリーンエアを投影露光装置1の筐体1aの内部に送る送風部22と、レチクル8の周囲を通過したクリーンエアを投影露光装置1の筐体1aから排出して供給部21に戻す排出部23とを有する。 【0031】図2は、供給部21を示す構成図である。図2に示されるように、供給部21は、クーラ24と、ヒータ25と、送風機26と、ULPAフィルタ27とを有する。また、供給部21は、温度センサ28と、クーラ24及びヒータ25の駆動回路29と、温度センサ28の検出値に基づいてクーラ24及びヒータ25の動作を制御する制御回路30とを有する。制御回路30は、供給部21から排出されるクリーンエアが設定温度の±0.1℃以内になるようクーラ24及びヒータ25の動作を制御する。ここで、設定温度の±0.1℃以内に設定する理由は、先に説明したように、6インチのレチクル(有効エリアが125mm□)が0.3℃温度上昇した場合にはレチクル上のパターン位置が約0.0281μmずれるが、この値はULSIの製作に要求されるレチクル露光機精度(重ね合わせ許容精度)として採用されている値(例えば、0.05μm又は0.06μm)の50%程度を占めるので、残された許容誤差が極めて小さくなるからである。また、現在実用化されている温調ユニットの設定温度の誤差範囲だからである。尚、温度センサ28の設置位置は、図示の位置には限定されず、レチクル8の近傍等の他の位置であってもよい。」 (ウ)図1は、以下のとおりである。 以上によれば、引用文献2には、レチクル冷却システム中のガスの温度を判定する温度センサと制御回路が開示されている。また、上記(ア)、(イ)の記載を踏まえて図1を見ると、ガス流をとどめるためにレチクルテーブルを筐体1a中に保持すること、ガス流を循環する経路が看取できる。 (3)引用文献3について ア 原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-63847号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、半導体集積回路、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド、その他のマイクロデバイス、又はフォトマスク等をリソグラフィ技術を用いて製造する際に使用される露光装置及び露光方法、並びに該露光装置等に適用可能なステージ装置に関する。」 (イ)「【0045】 この気流生成装置150は、気流制御装置151、気体供給装置152、気体温度調整装置(温調装置)153、気体回収装置154、モード切換装置155、管路158,159,160,161、及び気体給排部(管路の気体給排気口近傍の部分)156,157を備えて構成されている。」 (ウ)「【0058】 上述した実施形態では、環境チャンバ内を窒素ガスによりパージするとともに、ウエハ空間内に窒素ガスを用いて気流を生成するようにしたが、これらのガスとしては、ヘリウムガス、アルゴン、ネオン、その他の希ガスであってもよい。ヘリウムガスを用いる場合には、ヘリウムガスは比較的に高額であるので、供給したヘリウムガスを回収した後に、これを浄化して再度供給に用いるようにするとよい。さらに、露光光の波長によっては、ドライエアを用いてもよい。」 上記記載によれば、引用文献3には、露光装置の光学系の冷却用ガスとしてヘリウムを使用すること、気流生成装置に気体供給装置を備えることが記載されている。 4 対比・判断 (1)本願発明1と引用発明を対比する。 引用発明の「マスク」は本願発明1の「可動コンポーネントを備えるパターニングデバイス支持体」に相当し、以下同様に、「第1部材28(マスクステージ1)」は「可動コンポーネント」に、「流入口53」が「ガス入口」に、「」が「ガス出口」に、「ステージ装置」が「リソグラフィシステム」にそれぞれ相当する。 してみると、両者は、 「パターニングデバイスを支持する可動コンポーネントを備えるパターニングデバイス支持体と、 前記可動コンポーネントの近傍に前記可動コンポーネントと離間して配置され、前記パターニングデバイスの第1の表面を横切るガス流を形成して前記パターニングデバイスの温度を変更するためにガスを供給し、動作時の使用中に前記パターニングデバイスと共に移動するガス入口と、 前記可動コンポーネント及び前記パターニングデバイスの上方に配置され、前記ガス流を抽出するガス出口と、を備える、リソグラフィシステム。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点 ガス出口に関し、「動作中の使用時に」、本願発明1では「静止状態に保たれる」のに対し、引用発明は「マスクステージ1の移動と同期して」「移動」する点。 (2)以下、上記相違点について検討する。 引用発明は、アウトレット機構として機能する流路形成部材64が、マスクステージ1の移動と同期して移動するところ、引用文献1には、流路形成部材64をマスクステージ1に対して静止させることは記載されていない。引用文献1には、「[0116]支持装置66は、第1部材28(マスクステージ1)の移動と同期して、流路形成部材64を移動可能である。」との記載があり、該記載のみによれば、流路形成部材は移動可能なもの(言い換えると、移動しなくてもよいもの)との解釈ができないわけはない。しかしながら、引用文献1のその余の記載を見ても、流路形成部材を移動しないものとする記載や示唆はなく、引用文献1全体の記載を総合すれば、引用文献1には流路形成部材を静止状態に保つ技術は開示されていないものと認める。また、引用文献2、3を見ても、流路形成部材を静止状態に保つ技術は開示されていない。そして、引用発明において、ガス出口を「動作中の使用時に静止状態に保たれる」ようになすことに動機付けがあるともいえない。 したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本願発明2-9について 本願発明2-9は、本願発明1をさらに減縮する発明であって、本願発明1と同様に、「動作中の使用時に静止状態に保たれるガス出口」との発明特定事項を備える。したがって、本願発明2-9は本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1-2、4、8-9に係る発明は、引用文献1に基づいて、請求項3、5、6に係る発明は、引用文献1、2に基づいて、請求項7に係る発明は、引用文献1、3に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許を受けることができないというものである。 しかしながら、本願発明1-9は、上記4のとおり、当業者であっても引用発明、引用文献2、3記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。 6 当審拒絶理由について 当審拒絶理由は、請求項1-9に係る発明(「動作中の使用時に静止状態に保たれるガス出口」を発明特定事項として備える発明)と、請求項10-22に係る発明(「ガス流の容積を増幅するガス増幅器」を発明特定事項として備える発明)は、経済産業省令で定める技術的関係を有さず、発明の単一性の要件を満たさないから、この出願は、特許法第37条に規定する要件を満たしていないというものである。 平成30年1月31日付けの手続補正により、請求項10-22が削除された結果、この拒絶理由は解消した。 7 むすび 以上のとおり、本願発明1-9は、当業者が引用発明および引用文献2、3記載された技術事項に基づいて容易に発明することができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-03-22 |
出願番号 | 特願2015-538394(P2015-538394) |
審決分類 |
P
1
8・
65-
WY
(G03F)
P 1 8・ 121- WY (G03F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松岡 智也、田口 孝明 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
野村 伸雄 小松 徹三 |
発明の名称 | パターニングデバイス支持体、リソグラフィ装置及びパターニングデバイスの温度制御方法 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 内藤 和彦 |