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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部無効 2項進歩性  A23L
管理番号 1338476
審判番号 無効2016-800048  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-04-11 
確定日 2018-03-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第4059705号発明「家庭用の豆乳、水豆腐、豆腐製造装置の水切れ感知警報装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4059705号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4059705号に係る出願は,2002年5月10日(優先権主張2002年1月30日 韓国)の出願であって,平成19年12月28日にその特許権の設定登録がされた。
これに対し,平成28年4月11日に請求人より本件無効審判が請求され,審判請求書の副本を被請求人に送達し,期間を指定して,答弁書を提出する機会を与えたが,被請求人からは,答弁書の提出はなされなかった。また,平成29年6月15日付けで,審決の予告を行い,期間を指定して,訂正を請求するための機会を与えたが,被請求人からの応答はなされなかった。
第2 本件特許発明
本件特許第4059705号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は,特許明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】上部に蓋が設けられた本体と,前記蓋の内部に設置されており,電源が印加されると回転動力を発生させる駆動モータと,前記駆動モータの回転動力を伝達するための短駆動軸3と,前記短駆動軸の端部に連結されている粉砕刃と,漉し網と,ラウンドバー8と,前記胴体の内容物を加熱するヒータ6と,前記本体の内周に設けられた内筒と
を含んでなる家庭用の豆乳,水豆腐,豆腐製造装置において,
前記本体内の構成部品中から選択された2つのそれぞれに接続される接地電極E1及び信号電極E2と,
前記信号電極E2に接続された第1の抵抗R24および第1のスイッチングトランジスタQ9と,
前記第1のスイッチングトランジスタQ9に接続されており,該スイッチングトランジスタQ9によって前記本体内に必要とされる水がないことを感知した場合,これを警報するための制御信号を出力するコントローラI.C1と,
前記コントローラI.C1に接続された第2の抵抗R21および第2のスイッチングトランジスタQ5と,
前記第2のスイッチングトランジスタQ5に接続され,該スイッチングトランジスタQ5の駆動により警報音を出力するブザーBUZと
を含み,
前記接地電極E1および前記信号電極E2のいずれか一方が前記ヒータ6に電気的に接続され,
前記接地電極E1および前記信号電極E2のいずれか他方が,前記短駆動軸3,前記漉し網,前記内筒および前記ラウンドバー8のうちのいずれか1つの構成部品に電気的に接続され,
前記第1の抵抗R24および前記第1のスイッチングトランジスタQ9は,前記信号電極E2を介して入力された信号を,前記コントローラI.C1に送り,該コントローラI.C1は前記第2の抵抗R21および前記第2のスイッチングトランジスタQ5を使用して前記ブザーBUZを動作させる
ことを特徴とする家庭用の豆乳,水豆腐,豆腐製造装置の水切れ感知警報装置。」

第3 請求人の主張及び証拠方法
請求人は,「特許第4059705号発明の特許請求の範囲の請求項第1項に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め,無効理由の概要は以下のとおりであると主張している。

無効理由1(明確性要件違反)
特許請求の範囲に規定される「ラウンドバー」は,どのような物を指すのか,どのような機能を有するのか,明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても,その技術的意味を理解することができない。したがって,特許請求の範囲の記載において特許を受けようとする発明が明確でないので,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,その特許は同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。

無効理由2(進歩性欠如)
(1) 本件発明は,その特許出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明,甲第2号証及び甲第4号証に記載された事項,又は,甲第1号証に記載された発明,甲第6号証及び甲第4号証に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。
(2) 本件発明は,甲第5号証に記載された発明,甲第2号証,甲第4号証及び甲第3号証に記載された事項,又は,甲第5号証に記載された発明,甲第6号証,甲第4号証及び甲第3号証に記載された事項,又は,甲第5号証に記載された発明,甲第2号証,甲第4号証及び甲第1号証に記載された事項,又は,甲第5号証に記載された発明,甲第6号証,甲第4号証及び甲第1号証に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

また,請求人は,証拠方法として,以下の甲第1号証?甲第6号証の2を提出している。

[証拠方法]
甲第1号証:中国実用新案第2432871号明細書
甲第1号証の2:甲第1号証の訳文
甲第2号証:中国特許出願公開第1059643号明細書
甲第2号証の2:甲第2号証の訳文
甲第3号証:中国実用新案第2107792号明細書
甲第3号証の2:甲第3号証の訳文
甲第4号証:中国実用新案第2240325号明細書
甲第4号証の2:甲第4号証の訳文
甲第5号証:中国実用新案第2406594号明細書
甲第5号証の2:甲第5号証の訳文
甲第6号証:中国実用新案第2135992号明細書
甲第6号証の2:甲第6号証の訳文

第4 甲各号証の記載事項
甲第1号証,甲第2号証,甲第3号証,甲第4号証,甲第5号証及び甲第6号証には,以下の各事項が記載されている。

[甲第1号証]
(1a) 「

」(第1ページ)
(和訳:【要約】
本実用新案には家庭用の自動豆乳製造機が開示されており,現在の自動豆乳製造機が複数のセンサが設けられるため,洗浄が困難になり,構成が複雑になるという問題を解決した。その技術的特徴は,ベース4の下でモータ15付近に,センサベース20と,胴体21と,センサベースねじ山に被せられている絶縁ワッシヤ部品19と,ナット17と,胴体21の間に取り付けられるサーミスタ22で構成される複合センサ8が取り付けられることにある。伝動軸6を水位検出プローブとし,センサの設計を簡単にした。構成が簡単であり,洗浄が便利で,信頼性が高いというメリットを有し,同じタイプの豆乳製造機のモデルチェンジ商品として良い。」

(1b) 「

」(第2ページ)
(和訳:【実用新案登録請求の範囲】
1.複合センサを備えるスマート自動豆乳製造機において,ベース(4)と,フィルタカバーベース(5)と,モータ(15)と,伝動軸(6)及び粉砕刃(7)と,ブラケット(10)付きのフィルタカバー(9)と,電熱管(16)と,回路基板(3)と,電源変圧器(14)と,ベース(4)と一緒に固定し,握り(1),放熱孔(12),コンセント(13)を有するハウジング(2)と,ハウジング(2)と一体に係合できる容器体(11)とからなり,ベース(4)の下でモータ(15)付近に複合センサ(8)が取り付けられる,ことを特徴とする。
2.請求項1に記載の複合センサを備えるスマート豆乳製造機において,複合センサ(8)はねじ山を有するセンサベース(20)と,センサペース(20)と一体に接続する胴体(21)からなり,ナット(17)でそれをベース(4)に取り付けて固定し,胴体(21)の内壁に絶縁層(23)があり,胴体(21)の間にサーミスタ(22)が取り付けられ,サーミスタ引出線(24)と接続し,胴体(21)から引出し,センサベース(20)のねじ山部の間から引出し,ナット(17)と胴体(21)との間にケース引出線(18)が設けられる,ことを特徴とする。
3.請求項1に記載の複合センサを備えるスマート豆乳製造機において,複合センサ(8)は外形が円柱形であり,長さが20?30ミリメートル,直径が4?8ミリメートルである,ことを特徴とする。
4.請求項1に記載の複合センサを備えるスマート自動豆乳製造機において,伝動軸(6)はハウジングと絶縁的に接続され,回路基板3のS端に接続されて,直流通路を形成し,水位検出プローブを形成する,ことを特徴とする。)(下線は当審で付与。以下同様。)

(1c) 「

」(第3ページ?4ページ)
(和訳:複合センサを備えるスマート豆乳製造機
本実用新案は家庭用の自動豆乳製造機が開示し,小型家電の製造技術分野に属する。
現在,市場で流行っている家庭用のスマート自動豆乳製造機は質,口当たりが一致する豆乳が加工でき,電気加熱管にスケールが付着することがない。それは温度,水位,吹き零れ等の複数のセンサを使用しており,電子的な自動スマート制御回路を通じて豆乳加工の全過程を完成させる。短所は複数のセンサが設けられるため,洗浄が困難になり,構成の複雑度が高まるということである。
本実用新案はスマート自動豆乳製造機に関する複数のセンサを備える設計方案を簡単にし,複合センサを備えるスマート自動豆乳製造機を提供することを目的とする。
本実用新案の技術的特徴は,サーミスタを内装し,金属ケースと絶縁的に取り付けられる温度センサを使用しており,金属ケースを吹き零れプローブとし,センサの設計を簡単にした。
以下,明細書の添付図面を参照しながら,本実用新案の具体的な構成を詳しく紹介する。複合センサを備えるスマート自動豆乳製造機であって,ベース4と,フィルタカバーベース5と,モータ15と,伝動軸6及び粉砕刃7と,ブラケット10付きのフィルタカバー9と,電熱管16と,回路基板3と,電源変圧器14と,ベース4と一緒に固定され,握り1,放熱孔12,コンセント13を有するハウジング2と,ハウジング2と一体的に係合できる容器体11とからなり,ベース4の下でモータ15付近に複合センサ8が取り付けられる,ことを特徴とする。
複合センサ8はねじ山を有するセンサペース20と,センサベース20と一体的に接続する胴体21からなり,ナット17でそれをベース4に取り付けて固定し,胴体21の内壁に絶縁層23があり,胴体21の間にサーミスタ22が取り付けられ,サーミスタ引出線24と接続し,胴体21から引出し,センサベース20のねじ山部の間から引出し,ナット17と胴体21との間にケース引出線18が設けられる。
複合センサ8が作動時,ケース引出線18が回路中の吹き零れセンサ入力端Y端と接続し,吹き零れ信号入力回路になる。サーミスタ22は図3のRTであり,電熱管16ケースは共通アース端である。本実用新案の作業プロセスは周知の豆乳製造機スマート制御プロセスであり,ここでは説明を省略する。
本実用新案のメリットは,スマート豆乳製造機における当初の複数のセンサ設計を簡単にし,構成がコンパクトになり,メンテナンス洗浄が便利になる。豆乳製造機の制御信頼性の向上には顕著な作用を有する。同じタイプの家庭用のスマー卜自動豆乳製造機のモデルチェンジ商品として良い。
明細書の図1は本実用新案の概略構成を示す図である。ここで,1握り,2ハウジング,3回路基板,4ベース,5フィルタカバーベース,6伝動軸,7粉砕刃,8複合センサ,9フィルタカバー,10ブラケット,11容器体,12放熱孔,13コンセント,14電源変圧器,15モータ,16電熱管である。
明細書の図2は本実用新案における複合センサ8の構成を示す図である。ここで,17ナット,18ケース引線,19絶縁ワッシヤ部品,20センサベース,21胴体,22サーミスタ,23絶縁層,24サーミスタ引出線である。
明細書の図3は本実用新案の回路基板3の回路図である。ここで,DJはモータであり,DYは電熱管であり,RTは温度センサであり,S端は水位検出入力端であり,Y端は吹き零れセンサ入力端である。
本実用新案の一つの実施例において,伝動軸6はハウジングと絶縁的に接続して,水位検出プローブを形成し,回路基板3のS端に接続し,直流通路を形成し,共通アース端と水位検出入力回路を形成する。水位検出センサの設置を省略でき,豆乳製造機のセンサ設計を最大限に簡単にできる。複合センサ8は外形が円柱形であり,長さが20?30ミリメートル,直径が4?8ミリメートルである。
本実用新案の他の実施例において,ベース4は金属材料であり,胴体21とベース4が絶縁になるように,複合センサ8のセンサペース20ねじ山に絶縁ワッシヤ部品19を被せてもよい。)

(1d) 「

」(第5ページ)

(1e) 「

」(第6ページ)

(1f) 「

」(第7ページ)

以上の記載事項,図面及び図面中の回路記号を総合すると,豆乳製造機における,複合センサなど種々のセンサを用いた「複合検出装置」の発明が認識できるところ,甲第1号証には,以下の発明(以下「甲1発明」ともいう。)が記載されている。

「ベース(4)と,フィルタカバーベース(5)と,モータDJ(15)と,伝動軸(6)及び粉砕刃(7)と,ブラケット(10)付きのフィルタカバー(9)と,電熱管DY(16)と,回路基板(3)と,電源変圧器(14)と,ベース(4)と一緒に固定し,握り(1),放熱孔(12),コンセント(13)を有するハウジング(2)と,ハウジング(2)と一体に係合できる容器体(11)とからなり,ベース(4)の下でモータ(15)付近に複合センサ(8)が取り付けられるスマート自動豆乳製造機の複合検出装置であって,前記複合センサ(8)はねじ山を有するセンサベース(20)と,センサベース(20)と一体に接続する胴体(21)とからなり,ナット(17)でそれをベース(4)に取り付けて固定し,胴体(21)の内壁に絶縁層(23)があり,胴体(21)の間にサーミスタRT(22)が取り付けられ,サーミスタ引出線(24)と接続し,胴体(21)から引出し,センサベース(20)のねじ山部の間から引出し,ナット(17)と胴体(21)との間にケース引出線(18)が設けられ,
電熱管(16)ケースは共通アース端であり,
回路基板(3)のS端は水位検出入力端であり,回路基板(3)のY端は吹き零れセンサ入力端であり,
伝動軸(6)はハウジング(2)と絶縁的に接続して水位検出プローブを形成し,回路基板(3)のS端に接続し,直流通路を形成し,共通アース端と水位検出入力回路を形成し,水位検出センサの設置を省略でき,豆乳製造機のセンサ設計を最大限に簡単にできる,
スマート自動豆乳製造機の複合検出装置。」

[甲第2号証]
(2a) 「

」(第1ページ)
(和訳:【要約】
豆乳製造機であって,筒体,粉砕分離装置,加熱装置,位置限定センサ2を有する水位制御装置を備えており,前記豆乳製造機は安全を保障するための最低水位制御装置を更に備え,該制御装置はまた前記筒体下部筒壁Eに取り付けられたセンサ1を有し,前記筒体の底部にはセンシングプレートBが設置される。豆乳の水位がセンサ1の位置より低い場合,豆乳製造機は自動停止保護機能を有し,豆乳が吹きこぼれる又は焦げる現象が発生することを避けることができる。)

(2b) 「

」(第2ページ)
(和訳:【特許請求の範囲】
1.豆乳製造機であって,筒体,粉砕分離装置,加熱装置,位置限定センサ2を有する水位制御装置を備えており,前記豆乳製造機は安全を保障するための最低水位制御装置を更に備え,該制御装置はまた前記筒体下部筒壁Eに取り付けられたセンサ1を有し,前記筒体の底部にはセンシングプレートBが設置される,とを特徴とする豆乳製造機。
2.請求項1に記載の豆乳製造機であって,前記水位制御装置及び前記最低水位制御装置の制御回路はコマンド回路3,コマンド回路4,センサ1と2及びセンシングプレートBで構成され,センサ1はセンシングプレートBとコマンド回路4で形成された回路を通じて常閉状態の継電器J1を制御し,センサ2はセンジンクプレートBとコマンド回路3で形成された回路を通じて常開状態の継電器J2を制御し,前記加熱装置は継電器J1とJ2を通じて電源と接続する,ことを更なる特徴とする豆乳製造機。
3.請求項1又は請求項2に記載の豆乳製造機であって,前記筒体はホリガーボネート製で,前記継電器J1とJ2は銀酸化カドミウムを接点とする継電器である,ことを更なる特徴とする豆乳製造機。)

(2c) 「

」(第5ページ?6ページ)
(和訳:本考案の原理及びメリットを更に説明するために,以下では,図面とあわせて本考案の実施例を詳細に説明する。
図面の説明
図1は,本考案の豆乳製造機の構造説明図である。
図2は,本考案の豆乳製造機の水位制御部分のブロック図である。
図3は,本考案の豆乳製造機の水位制御回路の原理説明図である。
本考案の豆乳製造機は図1に示すように,6は粉砕分離装置で,7は筒体である。センサ1は筒体7の筒壁の最低水位制御位置E部に設置され,センサ2は筒体7の筒壁の最高水位制御位置に設置され,センシングプレートBは筒体7の底部に設置され,電気部品全ては筒体7の下部に設置される。本考案の豆乳製造機の機械構造と原理については,ここで記述展開を加えない。
図2は本考案の豆乳製造機の水位制御原理を示している。このうち,センサ1とセンシングプレートBが導通するとき,センサ1はコマンド回路4に対し動作信号を出力して継電器J1を作動させることで加熱装置10は作業する。センサ2とセンシングプレートBが導通するとき,センサ2はコマンド回路3に対し作業コマンドを出力して継電器J2を作動させることで加熱装置は作業を停止する。
当該豆乳製造機の水位制御回路は図3に示す通りである。
220Vの電源は変圧器Bの降圧を経て,二極管DそれからコンデンサC1の作用を経て直流電圧となり,Dポイントの引き出し端子はセンシングプレートBと接続する。Dポイント(センシングプレートB)がセンサ1又はセンサ2と接続するとき,三極管G1とG2はいずれもオフ状態にあり,継電器J1は常閉状態でJ2は常開状態にある。筒体7内に水を入れてE部に到達したとき,Dポイントとセンサ1は水の導通作用で接続し,D→センサ1→抵抗R1→G1→F→M→D1→Dの回路を形成してコマンド回路4を構成し,G1が作動されることで継電器J1を作動させるD→J1→G1→F→M→D1→Dの回路を形成する。このとき継電器J1が作動して加熱装置10を導通することで加熱装置が作業する。同時に,動力装置は粉砕分離装置を駆動して,該装置の中の大豆を粉砕し筒体7内の水と融合させて豆乳を製造する。加熱装置10が生じさせた熱は,豆乳を沸騰させ,沸騰した豆乳の泡がセンサ2の位置に到達したとき,豆乳と豆乳の泡の伝導作用で,Dポインドとセンサ2は導通してD→センサ2→R2→G2→F→M→D1→Dの回路を形成してコマンド回路3を構成し,該回路の作用でG2が作動されてC→J2→G2→F→M→D→Cの回路を形成して継電器J2を作動させ,過熱装置10の電流が切断することで加熱が停止する。加熱装置10と豆乳の温度が下がり,これに伴って豆乳の泡かセンサ2の高さ以下に下がった場合,Dポイント(センシングプレートB)とセンサ2の通路は切断し,G2が作動された回路は切断され,G2はオフ状態に戻り,継電器J2は,作業電流が切断されることで復位し且つ加熱装置10の電流を新たに導通して豆乳の泡がセンサ2の高さにまで上がることでDポイントとセンサ2の通路が再び導通されるまで再び豆乳を加熱するようにする。豆乳の泡の昇降が繰り返し導通/切断されることで,加熱プロセスが制御され,豆乳の吹きこぼれを防止する。筒体7内に入れた水が少なすぎる又は豆乳を煮る時間が長すぎて水分が蒸発してしまい豆乳の水位がE部より低い場合,Dポイントとセンサ1の通路は導通しない又は導通を切断され,Gはオフ状態に戻る。継電器J1は作業電流が切断されることで常閉状態に復位し,加熱装置10の電流は切断され,作業しない。)

(2d) 「

」(第7ページ)

(2e) 「

」(第8ページ)

(2f) 「

」(第9ページ)

[甲第4号証]
(4a) 「

」(第1ページ)
(和訳:【要約】
本考案は,電子制御装置技術分野に属し,シングルチップコンピュータ,水晶発振器,水位判断回路,あふれ判断回路,自己テスト回路,機能選択スイッチ,モータ制御回路,加熱制御回路,音・光警報と表示回路及び火花消去回路で構成され,各回路の間は電気接続し,安定化電源は,24Vと5Vの直流電圧を出力して家庭用多機能マイコン式豆乳機コントローラのために電気を供給する。本考案は,複数の機能を有し,作業が知能的で,安定的且つ信頼性を有する。

(4b) 「

」(第2ページ)
(和訳:【実用新案登録請求の範囲】
1.家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラであって,シングルチップコンピュータ,水晶発振器,水位判断回路,あふれ判断回路,自己テスト回路,機能選択スイッチ,モータ制御回路,加熱制御回路,音・光警報と表示回路及び火花消去回路で構成され,水晶発振器,水位判断回路,あふれ判断回路,自己テスト回路,機能選択スイッチ,モータ制御回路,加熱制御回路,音・光警報と表示回路は,シングルチップコンピュータと接続し,モータ制御回路と加熱制御回路は,二つの継電器とそれぞれ接続し,二つの継電器は,モータ及び加熱器とそれぞれ接続し,二つの火花消去回路はモータと加熱器を橋渡しし,上述した回路は一つの回路基板に溶接される,ことを特徴とする家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラ。
2.請求項1に記載の家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラであって,シングルチップコンピュータは,下記の型番,(1)Z86E04,(2)Z86E03,(3)Z86E08,(4)Z86C04,(5)Z86C03,15(6)Z86C08のうちの一つを使用することができる,ことを特徴とする家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラ。
3.請求項1に記載の家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラであって,水晶発振器は,基本周波数が4-8MHZのものを使用することができる,ことを特徴とする家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラ。
4.請求項1に記載の家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラであって,前記自己テスト回路の抵抗R3の抵抗値は1-20KΩである,ことを特徴とする家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラ。
5.請求項1に記載の家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラであって,前記機能選択スイッチはマイクロスイッチである,ことを特徴とする家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラ。
6.請求項1に記載の家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラであって,二つの火花消去回路はそれぞれR16及びC3,R17及びC4で構成され,R16の抵抗値は10-100Ωで,R17の抵抗値は5-15Ωであり,コンデンサC3とC4の電気容量は0.1-0.47μf/400Vである,こと。」

(4c) 「

」(第3?4ページ)
(和訳:家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラ
本考案は,マイコン付きコントローラに関し,電子制御装置技術分野に属する。
既存の豆乳製造機コントローラにはたくさんの欠点がある。1)構造が複雑である。どれもロジックチップで構成され,一部は比較器,カウンタ等のチップが必要で,一部はGALチップを使用してプログラムし,チップは通常4-5枚使用され,少なくとも2-3枚必要であり,純粋なハードウェアで豆乳製造のプロセスフローを完成させる。部品が多く,構造が複雑なため,豆乳製造機コントローラの故障率が高く,干渉防止能力が極めて低い。2)回路が完全でない。継電器はどれも接点の火花消去回路を有しておらず,継電器の寿命が短く,RC共振回路の時間軸が正確でなく,調整が難しい。3)機能が単一である。プロセスフローの各セグメントをフレキシブルに変更することができず,決まった豆乳製造プロセスフローの制御を完成することしかできない。
本考案は,既存の技術の問題点を解決して,構造が簡単で,動作の信頼性が高く,撹絆のみ,加熱のみ又は撹絆と加熱を同時に行うことを選択できる家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラを提供することを目的とする。
本考案の目的は,以下の技術手段を通じて完成される。
家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラは,シングルチップコンピュータ,水晶発振器,水位判断回路,あふれ判断回路,自己テスト回路,機能選択スイッチ,モータ制御回路,加熱制御回路,音・光警報と表示回路及び火花消去回路で構成され,水晶発振器,水位判断回路,あふれ判断回路,自己テスト回路,機能選択スイッチ,モータ制御回路,加熱制御回路,音・光警報と表示回路は,シングルチップコンピュータと接続し,モータ制御回路と加熱制御回路は,二つの継電器とそれぞれ接続し,二つの継電器は,モータ及び加熱器とそれぞれ接続し,二つの火花消去回路はモータと加熱器を橋渡しし,上述した回路は一つの回路基板に溶接される。安定化電源は24Vと5Vの直流電圧を出力して家庭用多機能マイコン式豆乳機コントローラのために電気を供給する。
シングルチップコンピュータはZ86E04又は,Z86E03,Z86E08,Z86C04,Z86C03,Z86C08を使用することができ,水晶発振器の基本周波数は4-8MHzである。水位判断回路,あふれ判断回路及び自己テスト回路はいずれもRC回路で構成され,機能選択スイッチK1,K2,K3はマイクロスイッチである。モータ制御回路は抵抗R9,三極管BG1及び継電器J1,二極管D5で構成される。加熱制御回路は抵抗R10,三極管BG2及び継電器J2,二極管D6で構成される。BG1とBG2は9013を使用し,J1とJ2は4130/24Vを使用する。音警報回路は,抵抗R11,三極管BG3及び受動ブザーBPで構成され,BG3は9013を使用する。四つの光警報と表示回路は,それぞれ抵抗R12-R15及び発光二極管D1-D4で構成される。二つの火花消去回路はRC直列回路で構成され,R16の抵抗値は10-100Ωで,R17の抵抗値は5-15Ωであり,コンデンサC3とC4の電気容量は0.11-0.47μf/400Vである。
以下は,図面の説明である。
図1は,本考案の電気原理説明図である。
図2は,本考案の構造ブロック図である。
ここで,1はシングルチップコンピュータ,2は水晶発振器,3は水位判断回路,4はあふれ判断回路,5は自己テスト回路,6は機能選択スイッチ,7はモータ制御回路,8は加熱制御回路,9は音・光警報と表示回路,10は火花消去回路,11は安定化電源である。
以下,図面と実施例を組み合わせて本考案について更に説明する。
実施例:図1と図2に示すように,シングルチップコンピュータ,水晶発振器,水位判断回路,あふれ判断回路,自己テスト回路,機能選択スイッチ,モータ制御回路,加熱制御回路,音・光警報と表示回路及び火花消去回路を図1に示される電気接続関係の通りに一つの回路基板に溶接する。シングルチップコンピュータはZ86E04を使用し,水晶発振器は基本周波数8MHzを採用し,三つの三極管は9013を採用して,二つの継電器は4130/24Vを採用し,R16とR17の抵抗値はそれぞれ68Ωと10Ωで,
電源を入れた後,シングルチップコンピュータは水晶発振器が提供する時間軸通りに作業を開始しており,シングルチップコンピュータは機能選択待ちで,撹絆加熱が選択された場合,シングルチップコンピュータは水位を判断し,水位が適切である場合,モータを制御して4回の撹絆を行い,10秒の間隔をおきながら毎回15秒撹件すると同時に加熱を行う。豆乳が沸いてあふれる場合,シングルチップコンピュータは加熱管を制御して10秒聞加熱を停止し,一回目のあふれから5分後に加熱を終了し,同時に音光警報を出す。撹絆のみを選択した場合,加熱せず四回の撹絆のみを行い,撹絆終了後に音光警報を出す。加熱のみを選択した場合,撹絆せず加熱のみを行い,一回目のあふれから5分後に加熱を終了し,同時に音光警報を出す。作業の途中,水がない又は故障した場合,シングルチップコンピュータは自動的に停止し,同時に音光警報信号を出す。自己テスト回路は空運転時に各回路の性能をテストすることができ,ユニット回路の調整に用いられる。火花消去回路は継電器が切断されたときに負荷の誘導電流を流すことができ,継電器の接点における電気火花の発生を防ぐ。
本考案は,複数の機能を有し,作業が知能的で,安定的且つ信頼性を有する。)

(4d) 「

」(第5ページ)

[甲第6号証]
(6a) 「

」(第1ページ)
(和訳:【要約】
粉砕,濾過及び煮込み機能を有する家庭用豆乳製造機であって,豆乳を入れるための内容器はステンレス鋼製であり,電熱装置は内容器の底部の外側に設置され,且つ内容器の内壁には吹きこぼれ防止センサ及び水不足を防止する下水位センサが設置され,豆乳製造機のタイムスイッチ回路には,高速交流モータに隙間周期運転させる,双方向の時間をそれぞれ調整できるマルチ振動回路が設置されることを主な特徴とする。本考案は操作が便利で,洗浄がしやすいというメリットを有し,隙間運転するモータの特徴はモータの作業条件を改善し,豆乳製造機の寿命を大きく高めた。)

(6b) 「

」(第2ページ)
(和訳:【実用新案登録請求の範囲】
1.全自動家庭用豆乳製造機であり,蓋1,殼体2及び台座9で構成される外殼と,内容器4と,高速交流モータ10及び下軸継手12で構成される駆動装置と,ネット23付きのホッパー19及びその中に取り付けられた粉砕刃20,21で構成される粉砕及び分離装置と,電熱管22と,水位制御装置と,タイムスイッチ回路とを備え,モータ10は台座9に固定配置され,モータの主軸11は内容器4の中心孔を通ってその端部において下軸継手12と接続し,ホッパー19は内容器4の底部に設置された支持台17と係合し,ホッパー19の中にある粉砕刃20,21は回転軸18に固定配置され,該回転軸18の端部の上軸継手13はモータ主軸11の下軸継手12と噛合い,
(1) 内容器4はステンレス鋼製であり,内容器4の内壁の上部には一つの吹きこぼれ防止センサ3が設置され,内壁下部の底面に近い所には下水位センサ5が取り付けられ,環状電熱管22は内容器4の外壁の底部を抱き込み,
(2) タイムスイッチ回路のモータ制御回路には,モータ10を制御して隙間周期運転させ,集積回路IC4と,充電抵抗R14,放電抵抗R15,時限コンデンサC7,分圧抵抗R12,R13,二極管D6,D7等の周辺部品とで構成された一つの双方向の時間をそれぞれ調整できるマルチ振動回路が設置され,IC4の3番ピンはモータ10を制御する逆三極管T3のベースと接続し,時限ココンデンサC7の正極はIC4の1番ピンと6番ピンに接続され,一端が電源の正極と接続するR12は,前段のIC3と接続するR13と直列で連結された後,該R12とR13の連結ポイントにおいて充電抵抗R14に接続され,且つR14の他端において二極管D6と正方向に直列で連結された後,C7の正極に接続され,C7の放電プロセスは二極管D7と,IC4の7番ピンと接続する放電抵抗R15を通じて行われ,R15はD7と反対方向に直列で連結された後,C7の正極に接続される,ことを特徴とする全自動家庭用豆乳製造機。」

(6c) 「

」(第7ページ)
(和訳:水不足防止と吹きこぼれ防止機能はNPN三極管T1,T2,センサ3と5及び一部の周辺回路で完成される。NPN三極管T1のベースはベース抵抗R5を通じて下水位センサ5の電極と接続し,ステンレス鋼製内容器は限流抵抗R7を通じて+12V端子に接続される。内容器の水位が下水位センサ5の電極より高い場合,T1は導通され,電熱管22は継電器J1を制御して通電させ,電熱管22は加熱する。反対の場合,内容器の水位が下水位センサ5の電極より低い場合,T1は切断され,他の部品の作業状況と関係なく,J1は通電せず,J1の常開接点は閉じることができず,電熱管も加熱することがなく,水不足の場合に電熱管22が焼損しないように保護する目的に達した。NPN三極管T2のベースはベース抵抗R6を通じて吹きこぼれ防止センサ3の電極と接続し,豆乳の泡が溢れて吹きこぼれ防止センサの電極3に到達した場合,+12V→R7→内容器→泡→R6→T2のベースーエミッタ間に形成された回路を通じて,T2が導通され,T1のベース電流をバイパスさせて接地させ,T1を切断する。J1は接地回路を構成せず,電熱管22は加熱を停止し,泡は戻っていき,泡の吹きこぼれを防止する目的に達した。)

(6d) 「

」(第12ページ)

第5 当審の判断
1 無効理由1(明確性要件違反)について
(1) 請求人の主張
「本件特許の請求項1には『前記接地電極E1および前記信号電極E2のいずれか他方が,前記短駆動軸3,前記漉し網,前記内筒および前記ラウンドバー8のうちのいずれか1つの構成部品に電気的に接続され』との記載があるが,従来技術における豆乳,水豆腐,豆腐製造装置では『ラウンドバー』という構成部材はなく,また,本件特許の明細書等においても『ラウンドバー』の構造,機能等について何ら説明がない。したがって,当業者は,本件特許等の記載および出願時の技術常識を考慮しても,『ラウンドバー』の技術的意味を理解することができない。したがって,特許請求の範囲の記載において特許を受けようとする発明が明確でないので,同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」(審判請求書9ページ下から3行?10ページ7行)と主張している。

(2) 判断
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面には,「ラウンドバー」について,以下の事項が記載されている。

(ア) 「【0011】
【課題を解決するための手段】
・・・前記短駆動軸の端部に連結されている粉砕刃と,漉し網と,ラウンドバー8と,・・・前記接地電極E1および前記信号電極E2のいずれか他方が,前記短駆動軸3,前記漉し網,前記内筒および前記ラウンドバー8のうちのいずれか1つの構成部品に電気的に接続され,・・・」

(イ) 「【0022】
・・・図6は接地電極E1及び信号電極E2がヒータ6とラウンドバー8に電気的に接続されている形態を各々示している。」

(ウ) 「【図面の簡単な説明】
・・・
【図6】本発明の実施の形態にかかる家庭用の豆乳,水豆腐,豆腐製造装置の水切れ感知警報装置の電極がヒータとラウンドバーとに接続されている構成を示す断面図である。」

(エ) 「

」(【図6】)

イ これらの事項を総合してみると,「ラウンドバー8」は,「信号電極E2」に接続されて,豆腐製造装置の内部に配置されているものと認めることができるが,「ラウンドバー8」自体がどのような構造・機能を有するものとして豆腐製造装置に配置されているものであるのかは明らかでない。
また,「ラウンドバー」という用語自体が,通常用いられている技術用語とも認めることもできず,「ラウンドバー」を「ラウンド」と「バー」との合成語としてみると,「ラウンド」が「丸いさま。円形の。」(広辞苑第六版)を意味し,「バー」が「棒。横木。」( 広辞苑第六版)を意味することから,せいぜい「丸い棒」と理解し得るとしても,特許請求の範囲における発明特定事項として,「ラウンドバー」が,豆乳,水豆腐,豆腐製造装置において,どのような機能を有するものであるのか特定できないことから,特許を受けようとする発明が不明確であることに変わりはない。

ウ 以上のとおり,本件発明に係る特許請求の範囲の記載は,明確でなく,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 無効理由2(進歩性欠如)(1)について
(1) 本件発明と甲1発明との対比・判断
本件発明と甲1発明とを対比すると,各文言の意味,機能,または作用等からみて,後者の「スマート自動豆乳製造機」,「ハウジング(2)」,「容器体(11)」,「モータDJ(15)」,「伝動軸(6)」,「粉砕刃(7)」,「フィルタカバー(9)」,及び「電熱管DY(16)」は,それぞれ前者の「家庭用の豆乳,水豆腐,豆腐製造装置」,「蓋」,「本体」,「駆動モータ」,「短駆動軸3」,「粉砕刃」,「漉し網」及び「ヒータ」に相当する。
また,甲第1号証の図1(上記記載事項(1d))から,後者の「容器体(11)」の上部には「ハウジング(2)」が設けられ,「ハウジング(2)」の内部に設置された「モータDJ(15)」は,電源が印加されると回転駆動力を発生することは明らかであるので,後者は,前者の「上部に蓋が設けられた本体と,前記蓋の内部に設置されており,電源が印加されると回転動力を発生させる駆動モータ」を備えた態様を有している。
後者の「伝動軸(6)」は,「モータDJ(15)」の回転動力を「粉砕刃(7)」に伝えるよう,その端部に「粉砕刃(7)」連結しているので,後者は,前者の「前記駆動モータの回転動力を伝達するための短駆動軸3と,前記短駆動軸の端部に連結されている粉砕刃」を備えた態様を有している。
また,後者の「容器体(11)」は,同じく図1からみて,胴体を備えたものといえ,また,「容器体(11)」の内周部分は内筒の形態を有しており,電熱管DY(16)は,胴体の内容物を加熱していることも,その配置から明らかである。そうすると,後者は,前者の「前記胴体の内容物を加熱するヒータ6と,前記本体の内周に設けられた内筒とを含んでなる」態様を有している。
後者の「電熱管(16)ケースは共通アース端であ」り,「伝動軸(6)はハウジング(2)と絶縁的に接続して水位検出プローブを形成」していることから,「電熱管(16)」と「伝動軸(6)」は,前者の「前記本体内の構成部品中から選択された2つ」に相当し,「電熱管(16)」は,共通アース端とされていることから,接地電極に接続され,「伝動軸(6)」は,信号電極側に接続されることは技術的に明らかである。そうすると,後者は,前者の「前記本体内の構成部品中から選択された2つのそれぞれに接続される接地電極E1及び信号電極E2」との態様を有しており,同時に前者の「前記接地電極E1および前記信号電極E2のいずれか一方が前記ヒータ6に電気的に接続され,
前記接地電極E1および前記信号電極E2のいずれか他方が,前記短駆動軸3,前記漉し網,前記内筒および前記ラウンドバー8のうちのいずれか1つの構成部品に電気的に接続され」た態様も併せて有している。
さらに,後者の「回路基板(3)」は,同じく図3(上記記載事項(1f))の回路図からみて,制御信号を出力するとともに,信号が送られるコントローラを有していることは明らかである。
また,後者の「スマート自動豆乳製造機の複合検出装置」は,「伝動軸(6)はハウジング(2)と絶縁的に接続して水位検出プローブを形成し,回路基板(3)のS端に接続し,直流通路を形成し,共通アース端と水位検出入力回路を形成」するものであるから,前者の「水切れ感知警報装置」とは,「水切れ感知装置」との限りで一致する。

そこで本件発明の用語を用いて表現すると,本件発明は,甲1発明と以下の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「上部に蓋が設けられた本体と,前記蓋の内部に設置されており,電源が印加されると回転動力を発生させる駆動モータと,前記駆動モータの回転動力を伝達するための短駆動軸3と,前記短駆動軸の端部に連結されている粉砕刃と,漉し網と,前記胴体の内容物を加熱するヒータ6と,前記本体の内周に設けられた内筒と
を含んでなる家庭用の豆乳,水豆腐,豆腐製造装置において,
前記本体内の構成部品中から選択された2つのそれぞれに接続される接地電極E1及び信号電極E2と,
を含み,
前記接地電極E1および前記信号電極E2のいずれか一方が前記ヒータ6に電気的に接続され,
前記接地電極E1および前記信号電極E2のいずれか他方が,前記短駆動軸3,前記漉し網,前記内筒および前記ラウンドバー8のうちのいずれか1つの構成部品に電気的に接続される,
家庭用の豆乳,水豆腐,豆腐製造装置の水切れ感知装置。」

(相違点1)
本件発明は,「ラウンドバー8」を含んでいるのに対して,甲1発明は,そのような特定はなされていない点。

(相違点2)
コントローラについて,本件発明は,「信号電極E2に接続された第1の抵抗R24および第1のスイッチングトランジスタQ9と,
前記第1のスイッチングトランジスタQ9に接続されており,該スイッチングトランジスタQ9によって前記本体内に必要とされる水がないことを感知した場合,これを警報するための制御信号を出力するコントローラI.C1」を備えているのに対して,甲1発明は,そのような特定はなされていない点。

(相違点3)
「水切れ感知装置」について,本件発明は,「前記コントローラI.C1に接続された第2の抵抗R21および第2のスイッチングトランジスタQ5と,
前記第2のスイッチングトランジスタQ5に接続され,該スイッチングトランジスタQ5の駆動により警報音を出力するブザーBUZとを含み」,「前記第1の抵抗R24および前記第1のスイッチングトランジスタQ9は,前記信号電極E2を介して入力された信号を,前記コントローラI.C1に送り,該コントローラI.C1は前記第2の抵抗R21および前記第2のスイッチングトランジスタQ5を使用して前記ブザーBUZを動作させ」て「水切れ感知警報装置」をなしているのに対して,甲1発明は,そのような特定はなされていない点。

そこで,上記各相違点について以下に検討する。

(相違点1について)
本件発明の「ラウンドバー」は,家庭用の豆乳,水豆腐,豆腐製造装置おおける「本体の内部に水がない場合には製造装置が作動できないようにすることにより,使用者が水を入れないままに作動させた場合に,製造装置が損傷されることを防止する」(【0010】)という課題を解決する上で,「前記接地電極E1および前記信号電極E2のいずれか他方」が「短駆動軸3,前記漉し網,前記内筒」に「電気的に接続される」場合は,必須の構成ではなく,上記相違点1は,実質的な相違点といえない。
また,実質的な相違点だとしても,当業者が容易に想到し得た程度のものである。

(相違点2について)
甲第2号証は,豆乳製造機に関するものであって,「筒体7内に水を入れてE部に到達したとき,Dポイントとセンサ1は水の導通作用で接続し,D→センサ1→抵抗R1→G1→F→M→D1→Dの回路を形成してコマンド回路4を構成し,G1が作動されることで継電器J1を作動させるD→J1→G1→F→M→D1→Dの回路を形成する」(上記記載事項(2c))ことが記載されている。
そして,甲第2号証の「センサ1」,「抵抗R1」及び「トランジスタG1」は,各文言の意味,機能,または作用等からみて,それぞれ本件発明の「信号電極E2」,「抵抗R24」及び「トランジスタQ9」に相当し,これらにより指令回路がなされているといえる。
そうすると,甲第2号証には,実質的に,本件発明の「信号電極E2に接続された第1の抵抗R24および第1のスイッチングトランジスタQ9」の態様が記載されている。
また,甲第4号証には,「作業の途中,水がない又は故障した場合,シングルチップコンピュータは自動的に停止し,同時に音光警報信号を出す。」(上記記載事項(4c))記載され,甲第4号証のマイコン式豆乳製造機コントローラが水がないという信号を受け取るとブザーを動作させて警報を行う態様を開示しているといえる。
そうすると,甲1発明において,「信号電極E2」に接続される「伝動軸(6)」からの信号を甲第2号証に記載のある上記事項を参考に,本件発明の「信号電極E2に接続された第1の抵抗R24および第1のスイッチングトランジスタQ9」との構成とし,また,甲第4号証に上記記載事項の示唆のもと,指令回路をなすトランジスタの信号により「容器体11」内に水があるか否か検出し,水がない状況において,コントローラによって警報のための出力信号を出力することは,当業者が容易になし得たことである。
また,甲第6号証は,全自動家庭用豆乳製造機に関するものであって,「ステンレス鋼製内容器は限流抵抗R7を通じて+12V端子に接続される。内容器の水位が下水位センサ5の電極より高い場合,T1は導通され,電熱管22は継電器J1を制御して通電させ,電熱管22は加熱する。反対の場合,内容器の水位が下水位センサ5の電極より低い場合,T1は切断され」(上記記載事項(6c))と記載され,甲第6号証の図3(上記記載事項(6d))を併せてみると,「ステンレス鋼製内容器4」,「センサ5」,「抵抗R5」及び「NPN三極管T1」を備えた制御信号回路が記載されているといえる。そして,甲第6号証における「センサ5」,「抵抗R5」及び「NPN三極管T1」は,各文言の意味,機能,または作用等からみて,それぞれ本件発明の「信号電極E2」,「第1の抵抗R24」及び「第1のスイッチングトランジスタQ9」に相当するので,甲第6号証においても,本件発明の「信号電極E2に接続された第1の抵抗R24および第1のスイッチングトランジスタQ9」の態様が記載されている。
そうすると,甲1発明において,「信号電極E2」に相当する「伝動軸(6)」からの信号を甲第6号証に記載のある上記事項を参考に本件発明の「信号電極E2に接続された第1の抵抗R24および第1のスイッチングトランジスタQ9」との構成とし,また,甲第4号証の上記記載事項の示唆のもと,指令回路をなすトランジスタの信号により「容器体11」内に水があるか否かを検出し,水がない状況において,コントローラによって警報のための出力信号を出力することは,当業者が容易になし得たことである。
よって,甲1発明において,本件発明の相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

(相違点3について)
甲第4号証は,家庭用多機能マイコン式豆乳製造装置コントローラに関するものであって,「家庭用多機能マイコン式豆乳製造機コントローラは,シングルチップコンピュータ,水晶発振器,水位判断回路,あふれ判断回路,自己テスト回路,機能選択スイッチ,モータ制御回路,加熱制御回路,音・光警報と表示回路及び火花消去回路で構成され,水晶発振器,水位判断回路,あふれ判断回路,自己テスト回路,機能選択スイッチ,モータ制御回路,加熱制御回路,音・光警報と表示回路は,シングルチップコンピュータと接続し」,「音警報回路は,抵抗R11,三極管BG3及び受動ブザーBPで構成され」ると記載されている(上記記載事項(4c))。
そして,甲第4号証の「シングルチップコンピュータ」,「抵抗R11」,「三極管BG3」及び「受動ブザーBP」は,各文言の意味,機能,または作用等からみて,それぞれ本件発明の「コントローラI.C1」,「第2の抵抗R21」,「第2のスイッチングトランジスタQ5」及び「ブザーBUZ」に相当する。
そうすると,甲第4号証には,本件発明の「前記コントローラI.C1に接続された第2の抵抗R21および第2のスイッチングトランジスタQ5と,
前記第2のスイッチングトランジスタQ5に接続され,該スイッチングトランジスタQ5の駆動により警報音を出力するブザーBUZとを含」んだ態様が記載されている。
そして,甲第4号証には,「作業の途中,水がない又は故障した場合,シングルチップコンピュータは自動的に停止し,同時に音光警報信号を出す」との記載がなされ(上記記載事項(4c)),このことから,甲第4号証には,コントローラが水がないとの信号を受け取った後,ブザーを作動させる事項が記載されているといえる。
よって,甲1発明の水位検出において,「前記第1の抵抗R24および前記第1のスイッチングトランジスタQ9は,前記信号電極E2を介して入力された信号を,前記コントローラI.C1に送り,該コントローラI.C1は前記第2の抵抗R21および前記第2のスイッチングトランジスタQ5を使用して前記ブザーBUZを動作させ」て「水切れ感知警報装置」とすることは,当業者が容易になし得たことである。
したがって,甲1発明において,本件発明の相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

(2) 以上のとおりであるから,本件発明は,甲第1号証に記載された発明,甲第2号証及び甲第4号証に記載された事項,又は,甲第1号証に記載された発明,甲第6号証及び甲第4号証に記載された事項に基づき当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第6 むすび
したがって,本件発明についての特許は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされ,また,同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第123条第1項第2号及び第4号に該当し,無効とすべきである。
審判に関する費用については,特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担するものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-12 
結審通知日 2017-11-09 
審決日 2017-10-31 
出願番号 特願2002-135813(P2002-135813)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (A23L)
P 1 113・ 537- Z (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷川 茜  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 山崎 勝司
莊司 英史
登録日 2007-12-28 
登録番号 特許第4059705号(P4059705)
発明の名称 家庭用の豆乳、水豆腐、豆腐製造装置の水切れ感知警報装置  
代理人 西内 盛二  

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