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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01L
管理番号 1338915
審判番号 不服2017-7351  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-23 
確定日 2018-03-29 
事件の表示 特願2015-540479「内燃機関のバルブタイミング制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年4月9日国際公開、WO2015/050070〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014年9月29日(優先権主張2013年10月1日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成27年11月27日に国内書面及び特許協力条約第19条補正の写し提出書が提出され、平成28年7月25日付けで拒絶理由が通知され、平成28年9月30日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成29年2月20日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成29年5月23日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1ないし5に係る発明は、国内書面、平成28年9月30日の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び国際出願時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
クランクシャフトから回転力が伝達される駆動回転体と、
前記駆動回転体の内部に収容され、該駆動回転体に対し所定角度の範囲内で相対回転可能に設けられた従動回転体と、
前記駆動回転体に設けられた収容部内を径方向へと進退可能に設けられ、前記進退方向の一端に油圧が作用する受圧部を一端に有し、かつ前記進退方向の他端に凹状のばね着座部を有する板状の部材であって、前記駆動回転体の回転軸方向において前記ばね着座部及びその両側の範囲に中空部が形成されたロック板と、
前記ばね着座部に着座可能に設けられ、前記ロック板を前記従動回転体側へと付勢するスプリングと、
前記従動回転体に設けられ、前記駆動回転体に対する前記従動回転体の相対回転位相が所定位相となった際に前記ロック板の一端が係合可能な係合溝と、
を備えたことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。」

第3 引用文献に記載された発明

1 引用文献1の記載事項

原査定に引用され、本願の優先日の前に頒布された特開2006-249970号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「弁開閉時期制御装置」について、次の事項が図面(特に、図1ないし7参照。)とともに記載されている。

(1)「【0009】
また、ロック部材105の摺動抵抗が大きい状態でもロック解除を確実に行えるようにするためには、付勢ばね106の付勢力を小さく抑える必要があった。そのため、ロック部材105が係合凹部107内に没入する方向への動作速度を高めることができない問題や、弁開閉時期制御装置の回転による遠心力で係合凹部107に作動油を供給する前にロック解除されてしまう場合があるという問題があった。」(段落【0009】。下線は、理解の一助のために当審で付した。以下同様。)

(2)「【0018】
〔第一の実施形態〕
以下に、本発明の第一の実施形態について図面に基づいて説明する。ここでは、本発明を自動車用エンジンの弁開閉時期制御装置1に適用した場合について説明する。図1は、本実施形態に係る弁開閉時期制御装置1の全体構成を示す側断面図であり、図2は、図1のA-A断面図である。
【0019】
〔基本構成〕
本実施形態に係る弁開閉時期制御装置1は、エンジンのクランクシャフト(図示省略)に対して同期回転する駆動側回転部材としての外部ロータ2と、外部ロータ2に対して同軸状に配置され、カムシャフト11に対して同期回転する従動側回転部材としての内部ロータ3とを備えて構成されている。
【0020】
内部ロータ3は、エンジンの吸気弁又は排気弁の開閉を制御するカムの回転軸を構成するカムシャフト11の先端部に一体的に組付けられている。このカムシャフト11は、エンジンのシリンダヘッドに回転自在に組み付けられている。
【0021】
外部ロータ2は、内部ロータ3に対して所定の相対回転位相の範囲内で相対回転可能に外装される。そして、カムシャフト11が接続される側にリアプレート21が、カムシャフト11が接続される側の反対側にフロントプレート22が、それぞれ一体的に取り付けられている。また、外部ロータ2の外周にはタイミングスプロケット23が形成されている。このタイミングスプロケット23とエンジンのクランクシャフトに取り付けられたギアとの間には、タイミングチェーンやタイミングベルト等の動力伝達部材12が架設されている。」(段落【0018】ないし【0021】)

(3)「【0027】
〔ロック機構の構成〕
また、外部ロータ2と内部ロータ3との間には、内部ロータ3と外部ロータ2との相対回転位相の変位を所定のロック位相(図2に示す位相)で拘束可能なロック機構5が設けられている。このロック機構5は、外部ロータ2に設けられた摺動溝52と、この摺動溝52に沿って摺動可能なロック部材53と、このロック部材53を径方向内側(内部ロータ3側、図3における下方側)に付勢する付勢ばね54と、内部ロータ3に設けられ、相対回転位相がロック位相の状態でロック部材53が係合可能に形成された係合凹部51とを有して構成されている。
以下、このロック機構5の構成について詳細に説明する。ここで、図3は、このロック機構5の構成を示す側断面図、図4は図3のB-B断面図、図5は図3の矢印C方向の矢視図である。また、図6は、このロック機構5の分解斜視図である。
【0028】
これらの図に示すように、本実施形態においては、ロック部材53は、長方形断面(図4に示される形状)を有する正面視が略長方形(図3に示される形状)の平板形状を有している。また、ロック部材53には、径方向外側(図3における上方側)に、付勢ばね54の一端部を保持するばね保持部53aが形成されている。そして、このロック部材53は、摺動溝52に沿って摺動可能に配置されている。」(段落【0027】及び【0028】)

(4)「【0035】
〔ロック機構の動作〕
図2に示すように、ロック部材53が係合凹部51内に突出してロック機構5がロック姿勢となっている状態で、制御弁73により進角通路43に作動油が供給されると、ロック解除兼進角通路43aからはまず係合凹部51に作動油が供給される。そして、流入口58から係合凹部51内に作動油が供給されることによりロック解除が行われる。すなわち、係合凹部51内に作動油が供給されて充満し、この作動油の圧力によってロック部材53を径方向外側に付勢する力が、付勢ばね54の付勢力より大きくなると、図7に示すように、ロック部材53は係合凹部51から離脱してロック解除姿勢となり、内部ロータ3と外部ロータ2との相対回転位相の変位を許容する状態となる。また、ロック部材53が図2に示すロック姿勢から径方向外側に変位した段階で、連通溝45を介してロック機構5と隣接する進角室41にも作動油が供給される。」(段落【0035】)

(5)上記(1)ないし(4)及び図面の記載より分かること

ア 上記(3)、図2及び図3の記載によれば、ロック部材53は、外部ロータ2に設けられた摺動溝52に沿って径方向に摺動可能に設けられることが分かる。

イ 上記(3)、図3及び図6の記載によれば、ばね保持部53aは凹状であることが分かる。

ウ 上記(3)、(4)、図3及び図6の記載によれば、ロック部材53のばね保持部53aが設けられている側と反対側、すなわち、径方向内側に作動油の圧力を受ける部分を有することが分かる。

(6)引用発明

上記(1)ないし(5)を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>

「クランクシャフトに対して同期回転する外部ロータ2と、
外部ロータ2の内側に配置され、外部ロータ2に対して所定の相対回転位相の範囲内で相対回転可能に設けられた内部ロータ3と、
外部ロータ2に設けられた摺動溝52に沿って径方向に摺動可能に設けられ、径方向内側に作動油の圧力を受ける部分を有し、径方向外側に凹状のばね保持部53aを有する平板形状を有しているロック部材53と、
ばね保持部53aに保持され、ロック部材53を内部ロータ3側に付勢する付勢ばね54と、
内部ロータ3に設けられ、相対回転位相がロック位相の状態でロック部材53が係合可能に形成された係合凹部51と、
を備えた自動車用エンジンの弁開閉時期制御装置1。」

2 引用文献2の記載事項

原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された特開2006-177212号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「バルブタイミング調整装置」について、次の事項が図面(特に、図1ないし4参照。)とともに記載されている。

(1)「【0019】
以上説明した実施の形態1によれば、第1の回転体2であるケース4のシュー6に設けられた径方向のロックピン収納溝13内に円形軸状のロックピン14を、当該ロックピン14の径方向が前記ロックピン収納溝13内への嵌合方向(ロックピン14の径方向がケース4の径方向を向く方向)となるように嵌合し、そのロックピン14の外周面のほぼ半周面部を、第2の回転体であるロータ3に形成されてロック解除油路20が接続されたロック穴16内にスプリング15の付勢力で嵌入係合させるように構成したので、前記ロック解除油路20からのロック解除油圧印加時のロックピン14は、その軸方向全長にわたる外周面ほぼ半周がロック解除油圧の受圧面となり、このため、従来例のロックピンやロックプレートの場合よりもロック解除油圧の受圧面を広く確保することができて、ロック解除油圧印加時のロックピン14を素早く安定して応答動作させることができ、その応答動作性が向上するという効果がある。」(段落【0019】)

(2)「【0022】
さらに、前記実施の形態1によれば、ロックピンを円筒状に加工して軽量化することが可能であり、遠心力の影響を緩和する効果がある。」(段落【0022】)

(3)引用文献2技術

上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2技術」という。)が記載されている。

<引用文献2技術>

「遠心力の影響を緩和するために、ロックピンを円筒状に加工して軽量化する技術。」

3 引用文献3の記載事項

原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された特開2001-227307号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「内燃機関のバルブタイミング制御装置」について、次の事項が図面(特に、図2及び図3参照。)とともに記載されている。

(1)「【0034】そして、ロックピン40は、全体がほぼ有底円筒状に形成されており、シリンダ穴44に収容される基端部の外周には、前記カラー45の端面に当接可能なストッパフランジ47が延設されている。このストッパフランジ47はカラー45の端面に当接することによってロックピン40の突出方向の変位を規制し、それによってベーン部材7から同ピン40が抜脱するのを防止すると共に、ベーン部材7が進角側に回動したときにロックピン40の先端がハウジング部材5の内周面に接触するのを防止する。
【0035】また、ロックピン40は先端部を残し中空に形成されているが、この中空部48には同ピン40を突出方向に付勢する前記ばね部材41が配置されている。そして、シリンダ穴44から突出するロックピン40の先端部は裁頭円錐状に形成されており、その先端面には後述する油圧を受けるための窪み49が形成されている。ロックピン40は前記の中空部48と窪み49によって軽量化も図られている。尚、ベーン部材7の胴部16には、図2に示すようにシリンダ穴44の底部と装置外部を連通する通気孔50が形成され、シリンダ穴44の底部が大気圧に維持されるようになっている。」(段落【0035】)

上記(1)の記載から、引用文献3には、次の技術(以下、「引用文献3技術」という。)が記載されている。

<引用文献3技術>

「ロックピン40に中空部48を形成して、有底円筒状とすることによって、軽量化する技術。」

第4 対比・判断

本願発明と引用発明とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用発明における「クランクシャフトに対して同期回転する」ことは、本願発明における「クランクシャフトから回転力が伝達される」ことに相当し、以下同様に、「外部ロータ2」は「駆動回転体」に、「内側に配置され」ることは「内部に収容され」ることに、「所定の相対回転位相」は「所定角度」に、「内部ロータ3」は「従動回転体」に、「摺動溝52」は「収容部」に、「摺動可能」は「進退可能」に、「摺動溝52に沿って径方向に摺動可能に設けられ」ることは「収容部内を径方向へと進退可能に設けられ」ることに、「径方向内側」は「進退方向の一端」に、「作動油の圧力を受ける部分」は「油圧が作用する受圧部」に、「径方向内側に作動油の圧力を受ける部分を有」することは「進退方向の一端に油圧が作用する受圧部を一端に有」することに、「径方向外側」は「進行方向の他端」に、「ばね保持部53a」は「ばね着座部」に、「平板形状を有している」ことは「板状の部材である」ことに、「ロック部材53」は「ロック板」に、「ばね保持部53aに保持され」ることは「ばね着座部に着座可能に設けられ」ることに、「内部ロータ3側に付勢する」ことは「従動回転体側へと付勢する」ことに、「付勢ばね54」は「スプリング」に、「相対回転位相がロック位相の状態」は「駆動回転体に対する従動回転体の相対回転位相が所定位相とな」ることに、「ロック部材53が係合可能に形成された」ことは「ロック板の一端が係合可能な」ことに、「係合凹部51」は「係合溝」に、「自動車用エンジン」は「内燃機関」に、「弁開閉時期制御装置1」は「バルブタイミング制御装置」に、それぞれ相当する。

してみると、本願発明と引用発明とは、
「クランクシャフトから回転力が伝達される駆動回転体と、
前記駆動回転体の内部に収容され、該駆動回転体に対し所定角度の範囲内で相対回転可能に設けられた従動回転体と、
前記駆動回転体に設けられた収容部内を径方向へと進退可能に設けられ、前記進退方向の一端に油圧が作用する受圧部を一端に有し、かつ前記進退方向の他端に凹状のばね着座部を有する板状の部材であるロック板と、
前記ばね着座部に着座可能に設けられ、前記ロック板を前記従動回転体側へと付勢するスプリングと、
前記従動回転体に設けられ、前記駆動回転体に対する前記従動回転体の相対回転位相が所定位相となった際に前記ロック板の一端が係合可能な係合溝と、
を備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置。」の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
ロック板について、本願発明は、「駆動回転体の回転軸方向において前記ばね着座部及びその両側の範囲に中空部が形成され」ているのに対し、
引用発明は、かかる構成を有していない点(以下、「相違点」という。)。

ここで、上記相違点について検討する。
本願発明及び引用文献2技術は、内燃機関のバルブタイミング制御装置という同一の技術分野に属するものであるから、本願発明と引用文献2技術とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用文献2技術における「ロックピン」は、本願発明における「ロック板」と、「ロック部材」という限りにおいて一致する。
してみると、引用文献2技術は、本願発明の用語を用いると、以下のものとなる。

「遠心力の影響を緩和するために、ロック部材を円筒状に加工して軽量化する技術。」

本願発明及び引用文献3技術は、内燃機関のバルブタイミング制御装置という同一の技術分野に属するものであるから、本願発明と引用文献3技術とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用文献3技術における「中空部48」は、本願発明における「中空部」に相当する。
また、引用文献3技術における「ロックピン40」は、本願発明における「ロック板」と、「ロック部材」という限りにおいて一致する。

してみると、引用文献3技術は、本願発明の用語を用いると、以下のものとなる。

「ロック部材に中空部を形成して、有底円筒状とすることによって、軽量化する技術。」

第3 1(1)で示されるように、引用文献1には、遠心力によりロック部材53が外れてしまうという問題が生じる旨の示唆がある。
そして、引用発明において、遠心力の影響を緩和するために、ロック部材53の軽量化を図ることは、引用文献2技術に鑑み、当業者が容易になし得ることであり、軽量化のために、中空部を形成することは、引用文献3技術に示されるように、常套手段である。
そして、引用発明において、ロック部材53に中空部を形成する際、軽量化を促進するために、該中空部を、ロック部材53の内部全体に設けて、ばね保持部53a及びその両側の範囲とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
よって、引用発明において、引用文献2技術及び引用文献3技術を適用して、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば、容易に想到できたことである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

以上のとおり、本件発明は、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび

上記第2ないし第4で述べたとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-24 
結審通知日 2018-01-30 
審決日 2018-02-13 
出願番号 特願2015-540479(P2015-540479)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 敏行  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 八木 誠
西山 智宏
発明の名称 内燃機関のバルブタイミング制御装置  
代理人 小林 博通  
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