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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60K |
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管理番号 | 1339091 |
審判番号 | 不服2017-12797 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-30 |
確定日 | 2018-04-24 |
事件の表示 | 特願2013-203459「ハイブリッド車両」拒絶査定不服審判事件〔平成27年4月13日出願公開、特開2015-67124、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年9月30日の出願であって、平成29年1月30日付けで拒絶理由が通知され、平成29年3月7日に意見書が提出されたが、平成29年7月25日付けで拒絶査定がされ、それに対して平成29年8月30日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は次のとおりである。 ●特許法第29条第2項(進歩性)について ・請求項1 ・引用文献1ないし3 先に通知した引用文献1には、駆動源としてのエンジン21及びモータ22と、上記エンジン21と上記モータ22との間に設けられた第2クラッチ27(本願発明の「第1クラッチ」に相当)と、上記モータ22と変速機26との間に設けられた第1クラッチ26(本願発明の「第2クラッチ」に相当)と、を有し、上記第2クラッチ27及び上記第1クラッチ2を締結することで上記エンジン21の動力が駆動輪23に伝達されるハイブリッド車両において、上記第2クラッチ27が滑り異常、不完全接続異常又は固着異常であるか判定を行い、該第2クラッチ27が滑り異常、不完全接続異常又は固着異常のいずれかと判定されると上記エンジン21を停止するハイブリッド車両の発明が記載されている(特に、段落【0040】ないし【0042】、【0094】、【0095】、【0097】、【0103】及び【0107】並びに図1、図3及び図5を参照)。 請求項1に係る発明と、引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者の相違点は、以下のとおりである。 請求項1に係る発明は、第1クラッチの共振判定を行い、該第1クラッチが共振していると判定されると内燃機関を停止するのに対し、引用文献1に記載された発明は、第2クラッチ27が滑り異常、不完全接続異常又は固着異常であるか判定を行い、該第2クラッチ27が滑り異常、不完全接続異常又は固着異常のいずれかと判定されるとエンジン21を停止する点。 上記相違点について検討すると、車両の動力伝達系やそれを構成する要素が共振しているかどうか判定することは周知技術であり(例えば、引用文献2の段落【0048】、【0055】及び図9、並びに、引用文献3の段落【0016】及び図3を参照。以下、「周知技術1」という。)、引用文献1に記載された発明と周知技術1は、ハイブリッド電動車両の構成要素の異常を検出する点で関連するから、引用文献1に記載された発明と周知技術1を組み合わせ、引用文献1に記載された発明の第2クラッチ27の滑り異常、不完全接続異常又は固着異常であるかの判定に換えて、共振判定を行う構成とし、第2クラッチ27が共振していると判定されるとエンジン21を停止するものとすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 出願人は、平成29年3月7日付け意見書において、引用文献1に記載された発明における故障と、周知技術における共振とは、全く異なる概念であることから、引用文献1に記載された発明のクラッチ故障判定に換えて周知技術である共振判定を行う構成とする動機が存在せず、引用文献1に記載された発明に基づいて本願発明を容易に想到できるものでないと主張している。 出願人の主張について検討すると、上記相違点についての検討に記載したとおり、引用文献1に記載された発明と周知技術1は、ハイブリッド電動車両の構成要素の異常を検出する点で関連するから、引用文献1に記載された発明と周知技術1を組み合わせ、本願発明とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、出願人の主張は、採用できない。 よって、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2及び3に記載された周知技術に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項2 ・引用文献1ないし3 ・備考 引用文献1には、上記発明に加え、上記モータ22の故障時においては、上記エンジン21だけで車両1を駆動する第5のフェールセーフ制御または第7のフェールセーフ制御を実行することが記載されている(特に、段落【0100】、【0104】、図4及び図5を参照)。ここで、図1の図示事項から、エンジン21だけで車両1を駆動する際に、第2クラッチ27が締結された状態にあることは明らかである。 共振しているかどうかの判定をエンジンの回転数により行うことは周知技術であり(例えば、引用文献2の段落【0048】、【0052】及び図9、並びに、引用文献3の段落【0024】、【0026】及び図3を参照。以下、「周知技術2」という。)、引用文献1に記載された発明と周知技術2を組み合わせる場合に、エンジン21の回転数をどのように用いて第2クラッチ27が共振しているかどうか判定するか設定することは設計的事項にすぎない。 また、引用文献1に記載された発明のモータ22が故障し、第5のフェールセーフ制御または第7のフェールセーフ制御を実行中、第2クラッチ27が共振していると判定され、エンジン21を停止する場合に、第1クラッチ26をどのような係合状態とするかは設計的事項にすぎない。 ・請求項3 ・引用文献1ないし4 ・備考 引用文献4には、エンジン1を停止時にクラッチ12を解放するハイブリッド車両の発明が記載されている(特に、段落【0056】ないし【0059】、図1及び図6を参照)。 引用文献1に記載された発明と周知技術2を組み合わせる場合に、エンジン21の回転数をどのように用いて第2クラッチ27が共振しているかどうか判定するか設定することは設計的事項にすぎない。 また、引用文献1及び4に記載された発明は、エンジンの停止時に行われるものである点で関連し、引用文献1に記載された発明の第2クラッチ27と引用文献4に記載された発明のクラッチ12は、エンジンとモータの動力伝達状態を接続又は非接続状態とする点で共通の機能を有するから、引用文献1に記載された発明と周知技術1を組み合わせる場合に、引用文献4に記載された発明のように、第2クラッチ27が共振していると判定されると、第2クラッチ27を解放するとともに、エンジン21を停止する構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 ・請求項4及び5 ・引用文献1ないし5 ・備考 引用文献1には、上記発明に加え、上記第2クラッチ26は、接続状態と非接続状態とに制御可能なものであること(特に、段落【0041】、【0046】及び図1を参照)、変速機25は、複数の変速段を達成可能な自動変速機であること(特に、段落【0043】及び図1を参照)が記載されている。 引用文献5には、モータMG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ44の正常時には、モータMG2の回転数Nm2に前記回転位置検出センサ44により検出されたモータMG2の回転数Nm2aを設定し、前記回転位置検出センサ44が異常時には、モータMG2の回転数Nm2aの代わりにエンジン22の回転数Neに基づく値を設定するハイブリッド車両の発明が記載されている(特に、段落【0024】、【0032】、【0033】、図1及び図3を参照)。 引用文献1及び5に記載された発明は、モータの故障時に行われるものである点で関連するから、引用文献1、5に記載された発明を組み合わせ、引用文献1に記載された発明の第1クラッチ27及び変速機25の制御において、モータ22の正常時には、モータ22の回転数を使用し、異常時には、モータ22の回転数の代わりにエンジン21の回転数を使用する構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 <引用文献等一覧> 1.特開2012-131435号公報 2.国際公開第2013/088501号(周知技術を示す文献) 3.特開2013-122315号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2009-120125号公報 5.特開2006-304389号公報 第3 本願発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)。 「【請求項1】 駆動源としての内燃機関及びモータと、 上記内燃機関と上記モータとの間に介在する第1クラッチと、 上記モータと変速機との間に介在する第2クラッチと、を有し、 上記第1クラッチ及び上記第2クラッチを締結することで上記内燃機関の出力トルクが駆動輪に伝達されるハイブリッド車両において、 上記第1クラッチの共振判定を行い、該第1クラッチが共振していると判定されると上記内燃機関を停止することを特徴とするハイブリッド車両。 【請求項2】 上記モータの故障時においては、上記第1クラッチを締結して上記内燃機関の出力トルクにより車両を駆動するフェイルセーフモードで走行し、 フェイルセーフモード時に上記内燃機関の機関回転数が予め設定された所定回転数以下になると、上記第1クラッチが共振していると判定し、上記内燃機関を停止するとともに、上記第2クラッチを解放することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。 【請求項3】 上記モータの正常時に上記内燃機関を駆動源として走行中には、上記内燃機関の回転と上記モータの回転の位相差が所定値以上になると上記第1クラッチが共振していると判定し、上記第1クラッチを解放するとともに、上記内燃機関を停止することを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車両。 【請求項4】 上記第2クラッチは、伝達トルク容量を変更可能なものであり、 上記モータの正常時における上記第2クラッチの伝達トルク容量の制御には、上記モータの回転数が使用され、 上記モータの故障時における上記第2クラッチの伝達トルク容量の制御には、上記モータの回転数に代わり上記内燃機関の機関回転数が使用されることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のハイブリッド車両。 【請求項5】 上記変速機は、複数の変速段を達成可能な自動変速機であって、 上記モータの正常時における上記変速機の変速比の制御には、上記モータの回転数が使用され、 上記モータの故障時における上記変速機の変速比の制御には、上記モータの回転数に代わり上記内燃機関の機関回転数が使用されることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載のハイブリッド車両。」 第4 引用文献 1.引用文献1について 原査定の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記引用文献1には、「車両用動力制御装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。 (1)引用文献1の記載事項 1a)「【0039】 (第1実施形態) 図1は、本発明を適用した第1実施形態に係る車両1の構成を示すブロック図である。車両1は、内燃機関(以下、エンジンという)と電動発電機(以下、モータという)とを搭載し、それらを組み合わせて走行用の動力を得るいわゆるハイブリッド車両である。車両1は、駆動系機器2と、制御系機器3とを備える。 【0040】 駆動系機器2は、車両1の走行用動力を供給する動力源として、エンジン(EG)21とモータ(MG)22とを備える。駆動系機器2は、駆動輪23に接続されたディファレンシャルギヤ(DF)24と、変速機(TM)25とを備える。変速機25の入力軸は、エンジン21およびモータ(MG)22の少なくともいずれか一方によって駆動される。すなわち、エンジン21のみ、モータ22のみ、またはエンジン21とモータ22との両方が動力源として使用される。エンジン21は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンである。モータ22は、電動発電機である。モータ22は、電力を供給されるとき電動機として機能して、走行用動力を供給する。また、モータ22は、電力を供給されるとき電動機として機能して、エンジン21を回転させ、エンジン21を始動、またはアシストすることができる。さらに、モータ22は、モータ22が駆動輪23によって、またはエンジン21によって駆動されるとき発電機として機能することができる。この場合、モータ22は、車両1の減速装置、またはバッテリへの充電装置として機能することができる。エンジン21とモータ22とは、変速機25の入力軸に対して直列に接続されている。よって、エンジン21の出力軸の動力は、モータ22を経由して変速機25の入力軸に伝達される。 【0041】 変速機25の入力軸とモータ22の回転軸との間には、第1クラッチ26が設けられている。第1クラッチ26は、接続状態のとき、モータ22の回転軸と変速機25の入力軸とを完全に接続する。第1クラッチ26は、非接続状態のとき、変速機25の入力軸への動力入力を完全に遮断する。第1クラッチ26は、エンジン21およびモータ22を含む動力装置と、駆動輪23との間の機械的な連動を断続する断続手段を提供する。 【0042】 エンジン21の出力軸とモータ22の回転軸との間には、第2クラッチ27が設けられている。第2クラッチ27は、接続状態のとき、エンジン21の出力軸とモータ22の回転軸とを完全に接続する。第2クラッチ27は、非接続状態のとき、エンジン21の出力軸とモータ22の回転軸との間を完全に開放する。第2クラッチ27は、エンジン21の出力軸とモータ22の回転軸との間の機械的な連動を断続する断続手段を提供する。」 1b)「【0076】 (異常状態の判定) さらに加えて、組合せ判定モジュール52は、異常機器の異常の状態、すなわち異常の種類を判定する。これにより、ハイブリッド制御装置31は、異常を生じている機器の異常の状態に応じた異常時制御を実行することができる。 【0077】 組合せ判定モジュール52は、クラッチ判定55の場合に、固着判定56と、不完全接続判定57とを提供する。固着判定56は、第2クラッチ27が固着していることを示す。例えば、上記(B)、(E)、および(I)のすべてが満たされる場合、固着異常が判定される。この場合、固着判定56が提供される。このように、組合せ判定モジュール52は、第2クラッチ27の固着異常を判定する固着異常判定手段を提供する。なお、固着異常を判定するにあたって、上記条件に加えて、第2クラッチ27を非接続状態に制御する制御信号を与えても第2クラッチ27が接続状態であることを示す(E)が検出されることを追加条件として使用してもよい。 【0078】 不完全接続判定57は、第2クラッチ27が不完全な接続状態にあることを示す。例えば、上記(A)および(F)の両方が満たされる場合、不完全接続異常が判定される。この場合、不完全接続判定57が提供される。このように、組合せ判定モジュール52は、第2クラッチ27の不完全接続異常を判定する不完全接続異常判定手段を提供する。 【0079】 加えて、組合せ判定モジュール52は、第2クラッチ27の異常の状態をさらに詳細に識別する。組合せ判定モジュール52は、不完全接続判定57の場合に、開放判定58と、滑り判定59とを提供する。開放判定58は、第2クラッチ27が接続状態に制御されているにもかかわらず、非接続状態、すなわち開放状態であることを示す。滑り判定59は、第2クラッチ27が完全な接続状態になく、滑りを生じていることを示す。」 1c)「【0092】 ステップ173では、回転数NEと回転数NMとが比較される。さらに、ステップ173には、比較結果の状態が所定時間の間にわたって継続したことを判定する処理が含まれている。よって、それぞれの比較状態が所定時間にわたって継続した場合に、プロセスは、ステップ173から分岐して進行する。ステップ173は、回転数比較モジュール50を提供する。 【0093】 NE=NMの場合、ステップ174に進み、システムが正常であることが判定され、記憶される。ステップ175では、通常のハイブリッド制御が実行される。 【0094】 NE>NMの場合、ステップ176に進み、システムが異常であることが判定され、記憶される。ステップ176では、第2クラッチ27の異常が判定される。ステップ176では、不完全接続異常が判定される。ステップ176では、第2クラッチ27の滑り異常が判定される。ステップ177では、第2クラッチ27の滑り異常に対応した第1のフェールセーフ制御が実行される。ステップ177では、第2クラッチ27において滑りを生じないようにエンジン21の出力を制限する第1段階制御と、第1段階制御でもなお滑りが生じる場合にエンジン21を停止させる第2段階制御とを実行する。第1段階制御では、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27に対して接続状態を継続し続ける制御信号を出力する。さらに、ハイブリッド制御装置31は、エンジン21の出力トルクを制限する。第2段階制御では、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27に対して非接続状態を継続し続ける制御信号を出力する。さらに、ハイブリッド制御装置31は、エンジン21の運転を停止させるようにエンジン制御装置32に制御信号を出力する。さらに、ハイブリッド制御装置31は、モータ22だけによって車両1を走行させるようにモータ制御装置33に制御信号を出力する。 【0095】 NE<NMの場合、ステップ178に進み、システムが異常であることが判定され、記憶される。ステップ178では、第2クラッチ27の異常が判定される。ステップ178では、不完全接続異常が判定される。ステップ178では、第2クラッチ27の開放異常が判定される。ステップ179では、第2クラッチ27の開放異常に対応した第2のフェールセーフ制御が実行される。ステップ179では、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27に対して非接続状態を継続し続ける制御信号を出力する。さらに、ハイブリッド制御装置31は、エンジン21の運転を停止させるようにエンジン制御装置32に制御信号を出力する。さらに、ハイブリッド制御装置31は、モータ22だけによって車両1を走行させるようにモータ制御装置33に制御信号を出力する。 【0096】 ステップ180では、回転数NEと回転数NMとが比較される。さらに、ステップ180には、比較結果の状態が所定時間の間にわたって継続したことを判定する処理が含まれている。よって、それぞれの比較状態が所定時間にわたって継続した場合に、プロセスは、ステップ180から分岐して進行する。ステップ180は、回転数比較モジュール50を提供する。NE=NMの場合、ステップ174に進む。NE>NMの場合、ステップ178に進む。NE<NMの場合、ステップ181に進む。 【0097】 ステップ181では、システムが異常であることが判定され、記憶される。ステップ181は、第2クラッチ27の異常が判定される。ステップ181では、不完全接続異常が判定される。ステップ181では、第2クラッチ27の滑り異常が判定される。ステップ182では、第2クラッチ27の滑り異常に対応した第3のフェールセーフ制御が実行される。ステップ182では、第2クラッチ27において滑りを生じないようにモータ22の出力を制限する第1段階制御と、第1段階制御でもなお滑りが生じる場合にエンジン21を停止させる第2段階制御とを実行する。第1段階制御では、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27に対して接続状態を継続し続ける制御信号を出力する。さらに、ハイブリッド制御装置31は、モータ22の出力トルクを制限する。第2段階制御では、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27に対して非接続状態を継続し続ける制御信号を出力する。さらに、ハイブリッド制御装置31は、エンジン21の運転を停止させるようにエンジン制御装置32に制御信号を出力する。さらに、ハイブリッド制御装置31は、モータ22だけによって車両1を走行させるようにモータ制御装置33に制御信号を出力する。」 1d)「【0102】 ステップ190では、回転数NEと回転数NMとが比較される。さらに、ステップ190には、比較結果の状態が所定時間の間にわたって継続したことを判定する処理が含まれている。よって、それぞれの比較状態が所定時間にわたって継続した場合に、プロセスは、ステップ190から分岐して進行する。ステップ190は、回転数比較モジュール50を提供する。 【0103】 NE=NMの場合、ステップ191に進み、システムが異常であることが判定され、記憶される。ステップ191では、第2クラッチ27の異常が判定される。ステップ191では、第2クラッチ27の固着異常が判定される。ステップ192では、第2クラッチ27の固着異常に対応した第6のフェールセーフ制御が実行される。ステップ192では、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27を接続状態としたまま、エンジン21だけで車両1を走行させるようにエンジン制御装置32とモータ制御装置33とに制御信号を出力する。例えば、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27に対して接続状態を継続し続ける制御信号を出力する。さらに、ハイブリッド制御装置31は、TTQe>TTQmになるようにエンジン制御装置32とモータ制御装置33とに制御信号を出力する。例えば、モータ22の出力トルクを制限する。つまり、ハイブリッド制御装置31は、モータ22による回生運転を許容しながら、エンジン21だけによって車両1を走行させるようにエンジン制御装置32とモータ制御装置33とに制御信号を出力する。 【0104】 NE<NMの場合、ステップ193に進み、システムが異常であることが判定され、記憶される。ステップ193では、モータ22の異常が判定される。ステップ193では、モータ22の出力トルクの異常が判定される。ステップ194では、モータ22の異常に対応した第7のフェールセーフ制御が実行される。ステップ194では、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27を接続状態としたまま、エンジン21だけで車両1を走行させるようにエンジン制御装置32とモータ制御装置33とに制御信号を出力する。例えば、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27に対して接続状態を継続し続ける制御信号を出力する。さらに、ハイブリッド制御装置31は、TTQe>TTQmになるようにエンジン制御装置32とモータ制御装置33とに制御信号を出力する。つまり、ハイブリッド制御装置31は、モータ22による回生運転を許容しながら、エンジン21だけによって車両1を走行させる。 【0105】 NE>NMの場合、ステップ195に進み、システムが異常であることが判定され、記憶される。ステップ195では、エンジン21の異常が判定される。ステップ195では、エンジン21の出力トルクの異常が判定される。ステップ196では、エンジン21の異常に対応した第8のフェールセーフ制御が実行される。ステップ196では、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27を非接続状態としたまま、モータ22だけで車両1を走行させるようにエンジン制御装置32とモータ制御装置33とに制御信号を出力する。例えば、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27に対して非接続状態を継続し続ける制御信号を出力する。さらに、ハイブリッド制御装置31は、TTQe>TTQmになるようにエンジン制御装置32とモータ制御装置33とに制御信号を出力する。つまり、ハイブリッド制御装置31は、モータ22だけによって車両1を走行させる。 【0106】 ステップ197では、回転数NEと回転数NMとが比較される。さらに、ステップ197には、比較結果の状態が所定時間の間にわたって継続したことを判定する処理が含まれている。よって、それぞれの比較状態が所定時間にわたって継続した場合に、プロセスは、ステップ197から分岐して進行する。ステップ197は、回転数比較モジュール50を提供する。NE>NMの場合、ステップ193に進む。NE<NMの場合、ステップ195に進む。NE=NMの場合、ステップ198に進む。 【0107】 ステップ198では、システムが異常であることが判定され、記憶される。ステップ198では、第2クラッチ27の異常が判定される。ステップ198では、第2クラッチ27の固着異常が判定される。ステップ199では、第2クラッチ27の固着異常に対応した第9のフェールセーフ制御が実行される。ステップ199では、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27を接続状態としたまま、エンジン21だけで車両1を走行させるようにエンジン制御装置32とモータ制御装置33とに制御信号を出力する。例えば、ハイブリッド制御装置31は、第2クラッチ27に対して接続状態を継続し続ける制御信号を出力する。さらに、ハイブリッド制御装置31は、ステップ189におけるTTQe≦TTQmとの判定にもかかわらず、強制的にエンジン21を始動し、エンジン21を運転するようにエンジン制御装置32に制御信号を出力する。ハイブリッド制御装置31は、TTQe>TTQmになるようにエンジン制御装置32とモータ制御装置33とに制御信号を出力することが望ましい。つまり、ハイブリッド制御装置31は、モータ22による回生運転を許容しながら、エンジン21だけによって車両1を走行させる。」 1e)上記1a)の特に段落【0040】の「エンジン21とモータ22とは、変速機25の入力軸に対して直列に接続されている。よって、エンジン21の出力軸の動力は、モータ22を経由して変速機25の入力軸に伝達される。」の記載から、第2クラッチ及び第1クラッチ26を締結することでエンジン21の動力が駆動輪23に伝達されることが明らかである。 (2)引用発明 上記(1)及び図面からみて、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「動力源としてのエンジン21及びモータ22と、 上記エンジン21と上記モータ22との間に設けられている第2クラッチ27と、 上記モータ22と変速機25との間に設けられている第1クラッチ26と、を有し、 上記第2クラッチ27及び上記第1クラッチ26を締結することで上記エンジン21の動力が駆動輪23に伝達されるハイブリッド車両において、 上記第2クラッチ27の異常状態の判定を行い、該第2クラッチ27に滑り異常が判定されるとエンジン21の出力を制限する第1段階制御を実行し、第1段階制御でもなお滑りが生じる場合にはエンジン21を停止させる第2段階制御を実行し、該第2クラッチ27に開放異常が判定されると第2クラッチ27に対して非接続状態を継続し続ける制御信号を出力し、さらに、エンジン21の運転を停止させ、該第2クラッチ27に固着異常が判定されると第2クラッチ27を接続状態としたまま、エンジン21だけで車両1を走行させるハイブリッド車両。」 2.引用文献2について 原査定の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記引用文献2には、「ハイブリッド車両の駆動制御装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)引用文献2の記載事項 2a)「[0046] 図9は、前記電子制御装置40に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図9に示す共振判定部70は、前記駆動装置10が適用されたハイブリッド車両における動力伝達系の共振を判定する。すなわち、動力伝達系における共振の発生を検出乃至予測する。ここで、動力伝達系とは、駆動源から駆動輪までの動力伝達に係る装置すなわち所謂ドライブライン(drive line)であり、前記駆動装置10が適用されたハイブリッド車両においては、駆動源としての前記エンジン12、第1電動機MG1、及び第2電動機MG2等から駆動輪としてのタイヤ68(図12を参照)までの間の動力伝達経路に設けられた、前記第1遊星歯車装置14、第2遊星歯車装置16、入力軸28、出力歯車30、ダンパ62、差動歯車装置64、タイヤ66、及びボデー68等(図10及び図12を参照)を含む動力伝達装置である。」 2b)「[0052] 図9に示す共振点変更制御部76は、前記共振判定部70により前記動力伝達系における共振の発生が検出乃至予測された場合には、その動力伝達系における共振点を変更する制御を行う。図10?図13を用いて説明したように、前記駆動装置10においては、前記クラッチCL及びブレーキBKの少なくとも一方の係合状態が切り換えられることにより、動力伝達系の共振周波数(共振点)が変更される。従って、前記共振点変更制御部76は、具体的には、前記動力伝達系における共振点を変更する制御として、前記油圧制御回路60を介して前記クラッチCL及びブレーキBKの少なくとも一方の係合状態を切り替える制御を行う。すなわち、好適には、シフトポジションが停車位置とされており、且つ、前記動力伝達系の温度が予め定められた閾値T_(bo)以下である場合には、前記クラッチCL及びブレーキBKの少なくとも一方の係合状態を切り替える。好適には、予め定められた関係から車速V及びエンジン回転速度N_(E)に基づいて、前記動力伝達系へ前記共振周波数に対応する変動の入力が検出乃至予測される場合には、前記クラッチCL及びブレーキBKの少なくとも一方の係合状態を切り替える。」 (2)引用文献2技術 上記(1)及び図面の記載からみて、引用文献2には以下の技術(以下、「引用文献2技術」という。)が記載されている。 「ハイブリッド車両において、動力伝達系における共振の発生を検出乃至予測し、共振の発生が検出乃至予測された場合には、その動力伝達系における共振点を変更する技術。」 3.引用文献3について 原査定の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記引用文献3には、「ダンパクラッチ制御方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)引用文献3の記載事項 3a)「【0016】 以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。 図2は、本発明に係るダンパクラッチ制御システムの構成図である。図3は、ダンパクラッチ制御方法のフローチャートである。図2?図3に示すように、ダンパクラッチ制御方法は、車両走行状態でダンパクラッチのスリップまたはロックアップを判断する段階(S10)、車両の状態がダンパクラッチによって異常振動が発生し得る共振領域に該当するかを判断する段階(S20)、車両のトルクがダンパクラッチによって異常振動が発生し得る共振トルク領域に該当するかを判断する段階(S30)、車両の状態とトルクが共振領域および共振トルク領域に該当するするとき、低調波値(A)を把握する段階(S40)、および低調波算出値が予め設定された所定値を超えたとき、ダンパクラッチをスリップまたはオープンに制御する段階(S50)を行っていく。」 (2)引用文献3技術 上記(1)及び図面の記載からみて、引用文献3には以下の技術(以下、「引用文献3技術」という。)が記載されている。 「車両の状態がダンパクラッチによって異常振動を発生し得る共振領域に該当し、低調波算出値が予め設定された所定値を超えたとき、ダンパクラッチをスリップまたはオープンにする技術。」 4.引用文献4について 原査定の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記引用文献4には、「ハイブリッド車両の制御装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)引用文献4の記載事項 4a)「【0055】 (第2の制御例) つぎに、この発明の制御装置による第2の制御例の説明する。この第2の制御例は、エンジン1を停止する際に、エンジン1の回転が停止する直前にクラッチ12を解放してエンジン1と動力分配機構14との間の動力伝達を遮断することにより、エンジン1の回転が停止する際の振動やトルク変動による歯車のがた打ち音を解消するようにした制御例である。 【0056】 図6は、その第2の制御例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図6において、先ず、エンジン1を停止させる信号が出力されたか否かが判断される(ステップS21)。エンジン1の停止信号が未だ検出されていないことにより、このステップS21で否定的に判断された場合は、それ以降の制御は実行されず、このルーチンを一旦終了する。 【0057】 これに対して、エンジン1の停止信号が検出されたことにより、ステップS21で肯定的に判断された場合には、ステップS22へ進み、クラッチ12が解放されて、エンジン1と動力分配機構14との間の動力伝達が遮断される。 【0058】 クラッチ12が解放されると、エンジン1への燃料の供給が停止させらて、例えばエンジン1への燃料噴射が停止させられて、エンジン1の運転が停止させられる(ステップS23)。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。 【0059】 上記のように、この第2の制御例では、エンジン1が停止させられることが検出されると、先ず、クラッチ12が解放されて、エンジン1と動力分配機構14との間の動力伝達が遮断される。そして、クラッチ12が解放された後に、エンジン1への燃料の供給が停止させられ、エンジン1の運転が停止させられる。エンジン1の回転が停止する際には、エンジン1および動力伝達系統PTのイナーシャトルクや固有振動数などの影響により、振動やトルク変動が生じる場合があるが、エンジン1の回転が停止する直前に、クラッチ12が解放されて、エンジン1と動力分配機構14との間の動力伝達が遮断されているため、エンジン1の停止時におけるトルク変動や回転数の変化に起因する動力伝達系統PTの各歯車の噛み合い部分でのがた打ち音の発生を防止もしくは抑制することができる。」 (2)引用文献4技術 上記(1)及び図面の記載からみて、引用文献4には以下の技術(以下、「引用文献4技術」という。)が記載されている。 「エンジン1を停止する際に、エンジン1の回転が停止する直前にクラッチ12を解放してエンジン1と動力分配機構14との間の動力伝達を遮断することにより、エンジン1の回転が停止する際の振動やトルク変動による歯車のがた打ち音を解消するようにした技術。」 5.引用文献5について 原査定の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記引用文献5には、「車両およびその制御方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)引用文献5の記載事項 5a)「【0024】 駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2a,バッテリ50の出力制限Wout,進行方向αなど制御に必要なデータを入力する処理を実行すると共に(ステップS100)、図3に例示するモータ回転数設定処理によりモータMG2の回転数Nm2を設定する(ステップS110)。ここで、エンジン22の回転数Neは、クランクシャフト26に取り付けられたクランクポジションセンサ23からの信号に基づいて計算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2aは、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の出力制限Woutは、温度センサ51により検出されたバッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。進行方向αは、Gセンサ89により検出される車両前後方向の進行方向(前進または後進)に基づいて設定されて(車両が前進するときには値1,後進するときには値(-1))RAM76の所定アドレスに書き込まれたものを読み込むことにより入力するものとした。図3のモータ回転数設定処理については後述する。」 5b)「【0032】 次に、図3のモータ回転数設定処理について説明する。モータ回転数設定処理では、まず、モータMG2の回転数Nm2aを算出するための電動機回転数センサとしてモータMG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ44の状態を調べ(ステップS200)、回転位置検出センサ44が正常であるか否かを判定する(ステップS210)。ここで、回転位置検出センサ44の状態は、回転位置検出センサ44からモータECU40への信号が所定時間に亘って途絶えていないか否かなどを判定することにより調べることができる。回転位置検出センサ44が正常であるときには、モータMG2の回転数Nm2に図2の駆動制御ルーチンのステップS100で入力した回転数Nm2aを設定し(ステップS220)、モータ回転数設定処理を終了する。 【0033】 一方、回転位置検出センサ44が正常でないと判定されたときには、エンジン22の回転数Neを算出するためのエンジン回転数センサとしてクランク角を検出するクランクポジションセンサ23の状態を調べると共にモータMG1の回転数Nm1を算出するための発電機回転数センサとしてモータMG1の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43の状態を調べ(ステップS230)、クランクポジションセンサ23および回転位置検出センサ43が正常であるか否かを判定する(ステップS240,S250)。ここで、クランクポジションセンサ23の状態は、クランクポジションセンサ23からエンジンECU24への信号が所定時間に亘って途絶えていないか否かなどを判定することにより調べることができ、回転位置検出センサ43の状態は、前述した回転位置検出センサ44の状態と同様に調べることができる。クランクポジションセンサ23および回転位置検出センサ43が正常であるときには、図2の駆動制御ルーチンのステップS100で入力したエンジン22の回転数NeおよびモータMG1の回転数Nm1と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて次式(5)によりモータMG2の回転数Nm2を設定し(ステップS260)、モータ回転数設定処理を終了する。これにより、回転位置検出センサ44が正常でないときでもモータMG2の回転数Nm2を設定してモータMG2を制御することができる。この結果、エンジン22やモータMG1,MG2を制御して走行することができる。なお、式(5)は、前述した図6の共線図から容易に導き出すことができる。 【0034】 Nm2=(Ne・(1+ρ)-Nm1・ρ)・Gr (5)」 (2)引用文献5技術 上記(1)及び図面の記載からみて、引用文献5には以下の技術(以下、「引用文献5技術」という。)が記載されている。 「モータMG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ44の状態が正常であるか否かを判定し、回転位置検出センサ44が正常であるときには、モータMG2の回転数Nm2に回転数Nm2aを設定し、回転位置検出センサ44が正常でないと判定されたときには、エンジン22の回転数NeおよびモータMG1の回転数Nm1と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いた式によりモータMG2の回転数Nm2を設定する技術。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明における「動力源」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「駆動源」に相当し、以下同様に、「エンジン21」は「内燃機関」に、「モータ22」は「モータ」に、「設けられている」は「介在する」に、「第2クラッチ27」は「第1クラッチ」に、「変速機25」は「変速機」に、「第1クラッチ26」は「第2クラッチ」に、「動力」は「出力トルク」に、「駆動輪23」は「駆動輪」に、それぞれ相当する。 また、引用発明における「上記第2クラッチ27の異常状態の判定を行い、該第2クラッチ27に滑り異常が判定されるとエンジン21の出力を制限する第1段階制御を実行し、第1段階制御でもなお滑りが生じる場合にはエンジン21を停止させる第2段階制御を実行し、該第2クラッチ27に開放異常が判定されると第2クラッチ27に対して非接続状態を継続し続ける制御信号を出力し、さらに、エンジン21の運転を停止させ、該第2クラッチ27に固着異常が判定されると第2クラッチ27を接続状態としたまま、エンジン21だけで車両1を走行させる」ことと、本願発明1における「上記第1クラッチの共振判定を行い、該第1クラッチが共振していると判定されると上記内燃機関を停止すること」とは、「上記第1クラッチの異常判定を行い、該第1クラッチの異常が判定されると異常に応じた制御を行う」ことという限りにおいて一致する。 したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「駆動源としての内燃機関及びモータと、 上記内燃機関と上記モータとの間に介在する第1クラッチと、 上記モータと変速機との間に介在する第2クラッチと、を有し、 上記第1クラッチ及び上記第2クラッチを締結することで上記内燃機関の出力トルクが駆動輪に伝達されるハイブリッド車両において、 上記第1クラッチの異常判定を行い、該第1クラッチの異常が判定されると異常に応じた制御を行うハイブリッド車両 」 [相違点] 「上記第1クラッチの異常判定を行い、該第1クラッチの異常が判定されると異常に応じた制御を行う」ことに関して、 本願発明1においては、「上記第1クラッチの共振判定を行い、該第1クラッチが共振していると判定されると上記内燃機関を停止すること」であるのに対し、 引用発明においては、上記第2クラッチ27の共振判定を行うことではなく、また、該第2クラッチ27が共振していると判定されると上記エンジン21を停止することではなく、上記第2クラッチ27の異常状態の判定を行い、該第2クラッチ27に滑り異常が判定されるとエンジン21の出力を制限する第1段階制御を実行し、第1段階制御でもなお滑りが生じる場合にはエンジン21を停止させる第2段階制御を実行し、該第2クラッチ27に開放異常が判定されると第2クラッチ27に対して非接続状態を継続し続ける制御信号を出力し、さらに、エンジン21の運転を停止させ、該第2クラッチ27に固着異常が判定されると第2クラッチ27を接続状態としたまま、エンジン21だけで車両1を走行させることである点。 (2)相違点の判断 上記相違点について検討する。 引用発明は、第2クラッチ27の異常状態の判定を行い、第2クラッチ27の異常状態が、滑り異常の場合、開放異常の場合、固着異常の場合で、それぞれ異なる制御を行うものである。 一方、引用文献2技術は、動力伝達系において共振の発生が検出乃至予測された場合に、その動力伝達系の共振点を変更する技術であり、引用文献3技術は、車両の状態がダンパクラッチによって異常振動を発生し得る共振領域に該当し、低調波算出値が予め設定された所定値を超えたとき、ダンパクラッチをスリップまたはオープンにする技術であり、引用文献2技術及び引用文献3技術から、クラッチの共振を判定することが周知技術であることまでは認定できるとしても、いずれも、クラッチが共振していると判定されると内燃機関を停止するものではない。 したがって、仮に、引用発明において、クラッチの共振を判定する周知技術を適用して、第2クラッチ27の共振判定を行うものとしたとしても、直ちに、第2クラッチ27が共振していると判定されるとエンジン21を停止させる構成には至らない。 さらに、引用文献4及び引用文献5にも、「第1クラッチの共振判定を行い、該第1クラッチが共振していると判定されると内燃機関を停止すること」の開示はない。 したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2技術ないし引用文献5技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2.本願発明2ないし5について 本願の特許請求の範囲における請求項2ないし5は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし5は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。 したがって、本願発明2ないし5は、本願発明1と同様の理由で、引用発明及び引用文献2技術ないし引用文献5技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし5は、いずれも引用発明及び引用文献2技術ないし引用文献5技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-04-09 |
出願番号 | 特願2013-203459(P2013-203459) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 田中 将一 |
特許庁審判長 |
金澤 俊郎 |
特許庁審判官 |
佐々木 芳枝 松下 聡 |
発明の名称 | ハイブリッド車両 |
代理人 | 富岡 潔 |
代理人 | 小林 博通 |