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審決分類 審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正  A45D
審判 全部申し立て 2項進歩性  A45D
管理番号 1339140
異議申立番号 異議2017-700597  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-14 
確定日 2018-02-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6042126号発明「人工爪組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6042126号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6042126号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6042126号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成24年7月24日に特許出願され、平成28年11月18日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人坂田純子により特許異議の申立てがされ、平成29年8月25日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年10月28日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人坂田純子(以下、単に「申立人」という。)から平成29年12月8日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成29年10月28日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下の(1)?(10)のとおりである。

(1)訂正事項1
請求項1に係る「(a)2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートの少なくとも1種、(b)メタクリル酸、α-β不飽和カルボン酸の(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸及びその無水物、カルボキシポリカプロラクトン(n=1.8)モノ(メタ)アクリレートの少なくとも1種、(c)光重合性モノマー(但し、前記(a)及び(b)の光重合性モノマーを除く。)及び(d)光重合開始剤を含有することを特徴とする人工爪組成物」を
「(a)2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート、(b)メタクリル酸、α-β不飽和カルボン酸の(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸及びその無水物、カルボキシポリカプロラクトン(n=1.8)モノ(メタ)アクリレートの少なくとも1種、(c)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びイソボロニル(メタ)アクリレートを含む光重合性モノマー(但し、前記(a)及び(b)の光重合性モノマーを除く。)及び(d)光重合開始剤を含有することを特徴とする人工爪組成物」に訂正する。

(2)訂正事項2
発明の詳細な説明の段落【0015】の「1. (a)2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートの少なくとも1種、(b)メタクリル酸、α-β不飽和カルボン酸の(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸及びその無水物、カルボキシポリカプロラクトン(n=1.8)モノ(メタ)アクリレートの少なくとも1種、(c)光重合性モノマー(但し、前記(a)及び(b)の光重合性モノマーを除く。)及び(d)光重合開始剤を含有することを特徴とする人工爪組成物。
2. 前記(a)、(b)、(c)及び(d)の成分の合計を100重量部としたとき、前記(a)の光重合性モノマー5?50重量部、前記(b)の光重合性モノマー1?25重量部、前記(c)の光重合性モノマー20?93.5重量部及び前記(d)の光重合開始剤0.5?5重量部を含有する、前記項1に記載の人工爪組成物。
3. 人工爪組成物の性状が液状である、前記項1又は2に記載の人工爪組成物。
4. 有機溶剤を含まない、前記項1?3のいずれかに記載の人工爪組成物。
5. 天然爪の表面上に人工爪を形成させるために用いる、前記項1?4のいずれかに記載の人工爪組成物。
6. 天然爪の表面上に人工爪を形成させる方法であって、(1)前記項3に記載の液状の人工爪組成物を天然爪の表面に塗布することにより塗膜を形成する工程及び(2)前記塗膜に光を照射することにより当該光重合性モノマーを重合させる工程を含む、人工爪の形成方法。」を
「1. (a)2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート、(b)メタクリル酸、α-β不飽和カルボン酸の(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸及びその無水物、カルボキシポリカプロラクトン(n=1.8)モノ(メタ)アクリレートの少なくとも1種、(c)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びイソボロニル(メタ)アクリレートを含む光重合性モノマー(但し、前記(a)及び(b)の光重合性モノマーを除く。)及び(d)光重合開始剤を含有することを特徴とする人工爪組成物。
2. 前記(a)、(b)、(c)及び(d)の成分の合計を100重量部としたとき、前記(a)の光重合性モノマー5?50重量部、前記(b)の光重合性モノマー1?25重量部、前記(c)の光重合性モノマー20?93.5重量部及び前記(d)の光重合開始剤0.5?5重量部を含有する、前記項1に記載の人工爪組成物。
3. 人工爪組成物の性状が液状である、前記項1又は2に記載の人工爪組成物。
4. 有機溶剤を含まない、前記項1?3のいずれかに記載の人工爪組成物。
5. 天然爪の表面上に人工爪を形成させるために用いる、前記項1?4のいずれかに記載の人工爪組成物。
6. 天然爪の表面上に人工爪を形成させる方法であって、(1)前記項3に記載の液状の人工爪組成物を天然爪の表面に塗布することにより塗膜を形成する工程及び(2)前記塗膜に光を照射することにより当該光重合性モノマーを重合させる工程を含む、人工爪の形成方法。」に訂正する。

(3)訂正事項3
発明の詳細な説明の段落【0022】の「a成分として使用できる光重合性モノマーは、特に限定されず、例えば2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ハイドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ハイヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ハイドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ハイドロキシデシル(メタ)アクリレ-ト等のモノハイドロシキアルキル(メタ)アクリレート類;1,2-又は1,3-ジハイドロキシプロパン(メタ)アクリレート等のジハイドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールの(メタ)アクリレート類;N-(1,3-ジハイドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類等を挙げることができる。これらのa成分は、1種又は2種以上で使用することができる。これらの中でも、特に2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の少なくとも1種が好適である。」を「a成分として使用できる光重合性モノマーは、特に限定されず、例えば2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ハイドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ハイヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ハイドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ハイドロキシデシル(メタ)アクリレ-ト等のモノハイドロシキアルキル(メタ)アクリレート類;1,2-又は1,3-ジハイドロキシプロパン(メタ)アクリレート等のジハイドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールの(メタ)アクリレート類;N-(1,3-ジハイドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類等を挙げることができる。これらのa成分は、1種又は2種以上で使用することができる。これらの中でも、特に2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート等が好適である。」に訂正する。

(4)訂正事項4
発明の詳細な説明の段落【0052】の
「[実施例において人工爪組成物の調製に用いた成分とその略号]
(c)光重合性モノマー
・PUDA:ウレタンジアクリレートオリゴマー(分子量:15000)
・IBMA:イソボロニルメタクリレート
・TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
(a)分子内に少なくとも1個の第一級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマー
・2HEMA:2-ハイドロキシエチルメタクリレート
・2HPMA:2-ハイドロキシプロピルメタクリレート
(a’) 分子内に1個の第二級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマー
・GM:グリセロールジメタクリレート
(b)分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有する光重合性モノマー
・MA:メタクリル酸
・4META:4メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物
・A-SA:2-アクリロイルオキシエチルサクシネート
・A-PCLA:カルボキシポリカプロラクトン(n=1.8)モノアクリレート
(d)光重合開始剤
・MAPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド
・BP:ベンゾフェノン
・2HMPP:2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン」を
「[実施例において人工爪組成物の調製に用いた成分とその略号]
(c)光重合性モノマー
・PUDA:ウレタンジアクリレートオリゴマー(分子量:15000)
・IBMA:イソボロニルメタクリレート
・TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
(a)分子内に少なくとも1個の第一級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマー
・2HEMA:2-ハイドロキシエチルメタクリレート
(a’) 分子内に1個の第二級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマー
・2HPMA:2-ハイドロキシプロピルメタクリレート
・GM:グリセロールジメタクリレート
(b)分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有する光重合性モノマー
・MA:メタクリル酸
・4META:4メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物
・A-SA:2-アクリロイルオキシエチルサクシネート
・A-PCLA:カルボキシポリカプロラクトン(n=1.8)モノアクリレート
(d)光重合開始剤
・MAPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド
・BP:ベンゾフェノン
・2HMPP:2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン」に訂正する。

(5)訂正事項5
発明の詳細な説明の段落【0059】の
「【表1】

」を
「【表1】

」に訂正する。

(6)訂正事項6
発明の詳細な説明の段落【0063】の
「【表2】

」を
「【表2】

」に訂正する。

(7)訂正事項7
発明の詳細な説明の段落【0064】の「表2に記載の実施例5?7は、成分(a)、(b)、(c)及び(d)からなる人工爪組成物である。また、比較例3?6は、成分(b)、(c)及び(d)からなり、かつ、成分(a)を含有しない人工爪組成物である。ここで、比較例3?6において使用した成分(a’)は、分子内に1個の第二級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマーである。」を
「表2に記載の実施例5?7は、成分(a)、(a’)、(b)、(c)及び(d)からなる人工爪組成物である。また、比較例3?6は、成分(a’)、(b)、(c)及び(d)からなり、かつ、成分(a)を含有しない人工爪組成物である。ここで、実施例5?7及び比較例3?6において使用した成分(a’)は、分子内に1個の第二級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマーである。」に訂正する。

(8)訂正事項8
発明の詳細な説明の段落【0066】の「さらに、実施例7、比較例3及び比較例6の美的外観耐久性については、表2に示すように、実施例7は14日以上という良好な結果が得られた。これに対し、成分(b)、(c)及び(d)を含み、かつ、成分(a)を含有しない人工爪組成物である比較例3及び比較例6の美的外観耐久性は不十分であった。」を
「さらに、実施例7、比較例3及び比較例6の美的外観耐久性については、表2に示すように、実施例7は14日以上という良好な結果が得られた。これに対し、成分(a’)、(b)、(c)及び(d)を含み、かつ、成分(a)を含有しない人工爪組成物である比較例3及び比較例6の美的外観耐久性は不十分であった。」に訂正する。

(9)訂正事項9
発明の詳細な説明の段落【0067】の
「【表3】

」を
「【表3】

」に訂正する。

(10)訂正事項10
発明の詳細な説明の段落【0068】の「表3に記載の実施例8?15は、成分(a)、(b)、(c)及び(d)からなる人工爪組成物である。ここで、表3の接着強度からも明らかなように、実施例8?15は15.5?1.2MPaという優れた接着強度を示した。」を
「表3に記載の実施例8?15は、成分(a)、(b)、(c)及び(d)又は成分(a)、(a’)、(b)、(c)及び(d)からなる人工爪組成物である。ここで、表3の接着強度からも明らかなように、実施例8?15は15.5?25.2MPaという優れた接着強度を示した。」に訂正する。


2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正の目的について
ア 訂正事項1について
訂正事項1により訂正された請求項1の「(a)2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート」なる事項は、「(a)2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートの少なくとも1種」なる事項から、「2-ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレート」を削除したものであるから、当該訂正事項は、択一的に記載されていた化合物名の一つを削除するものであり、特許請求の範囲の減縮(特許法120条の5第2項ただし書第1号)を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1により訂正された請求項1の「(c)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びイソボロニル(メタ)アクリレートを含む光重合性モノマー」は、「光重合性モノマー」を、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びイソボロニル(メタ)アクリレートを含む」ものに限定したものであるから、当該訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項2,3について
訂正事項2,3は、訂正事項1により訂正された請求項1に対し、明細書の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明(特許法120条の5第2項ただし書第3号)を目的とするものに該当する。

ウ 訂正事項4について
訂正事項4は、明細書にて「・2HPMA:2-ハイドロキシプロピルメタクリレート」が「(a)分子内に少なくとも1個の第一級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマー」とされていたものを、「(a’) 分子内に1個の第二級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマー」に改めるものである。
そして、「2-ハイドロキシプロピルメタクリレート」が、「分子内に1個の第二級アルコール性水酸基を有する」ものであることは、技術常識より自明であることから、訂正前の記載が誤記であることは明らかである。
よって、訂正事項4は、誤記の訂正(特許法120条の5第2項ただし書第2号)を目的とするものに該当する。

エ 訂正事項5,6,9について
訂正事項5,6,9は、いずれも、訂正事項4と同じく、明細書にて「2HPMA」が「(a)」とされていたものを、「(a’)」に改めるものである。
よって、訂正事項5,6,9は、訂正事項4と同じく、誤記の訂正を目的とするものに該当する。

オ 訂正事項7,8,10について
訂正事項7,8,10は、いずれも、訂正事項5,6,9より訂正された【表1】?【表3】の記載に対し、明細書の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

カ まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1から10は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1、2及び3号に掲げる事項を目的とするものである。


(2)新規事項の追加について
ア 訂正事項1について
特許第6042126号の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書(以下、「特許明細書等」という)の特許請求の範囲の請求項1の「(a)2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートの少なくとも1種」なる記載からみて、特許明細書等には「2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート」が記載されていることは明らかである。
また、特許明細書等の明細書段落【0031】の「1個の重合性官能基を有する化合物として、例えば・・・イソボロニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。」という記載、及び、段落【0035】の「分子内に少なくとも1個以上の重合性官能基を有するオリゴマーとしては、・・・特にウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを好適に用いることができる。」という記載からみて、特許明細書等には、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」、及び、「イソボロニル(メタ)アクリレート」が記載されている。
そして、段落【0059】の【表1】、段落【0063】の【表2】、段落【0067】の【表3】の実施例1ないし9には、PUDA及びIBMAを成分(c)として含むことが記載されており、段落【0052】の
「(c)光重合性モノマー
・PUDA:ウレタンジアクリレートオリゴマー(分子量:15000)
・IBMA:イソボロニルメタクリレート」
なる記載とあわせてみると、特許明細書等には、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びイソボロニル(メタ)アクリレートを含む光重合性モノマー」なる事項が記載されていることは明らかである。
よって、特許明細書等には、訂正事項1に係る事項が記載されている。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、明細書に訂正事項1と同一の事項を追加するものであり、当該訂正に係る事項は、訂正事項1に係る事項と同じく、特許明細書等に記載されている。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、明細書中に記載されている化合物名を削除する訂正であり、新たな事項を追加するものでないことは明らかである。

エ 訂正事項4について
訂正事項4は、「・2HPMA:2-ハイドロキシプロピルメタクリレート」について、「(a)分子内に少なくとも1個の第一級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマー」とされていたものを、「(a’) 分子内に1個の第二級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマー」に改めるものである。
そして、「2-ハイドロキシプロピルメタクリレート」が、「分子内に1個の第二級アルコール性水酸基を有する」ものであることは、技術常識より自明であることから、特許明細書等には、訂正事項4に係る事項が記載されている。

オ 訂正事項5,6,9について
訂正事項5,6,9は、いずれも、訂正事項4と同じく、明細書にて「2HPMA」が「(a)」とされていたものを、「(a’)」に改めるものである。
よって、訂正事項4に係る事項と同じく、特許明細書等には、訂正事項5,6,9に係る事項が記載されている。

カ 訂正事項7,8,10について
訂正事項7,8,10は、いずれも、訂正事項5,6,9により訂正された【表1】?【表3】の記載に対し、明細書の記載を整合させるものである。
よって、訂正事項5,6,9に係る事項と同じく、特許明細書等には、訂正事項7,8,10に係る事項が記載されている。

キ まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1ないし10は、いずれも、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。


(3)特許請求の範囲の拡張又は変更について
ア 訂正事項1について
上記「(1)ア」で示したとおり、訂正事項1は、いずれも、特許請求の範囲の減縮に該当するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当しないことは明らかである。

イ 訂正事項2ないし10について
訂正事項2ないし10は、いずれも、明瞭でない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とするものであり、請求項に記載された事項の解釈に影響を与えるものではないから、訂正事項1と同じく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当しないことは明らかである。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1ないし10は、いずれも、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。


3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号から第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。



第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

・本件発明1
「(a)2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート、(b)メタクリル酸、α-β不飽和カルボン酸の(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸及びその無水物、カルボキシポリカプロラクトン(n=1.8)モノ(メタ)アクリレートの少なくとも1種、(c)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びイソボロニル(メタ)アクリレートを含む光重合性モノマー(但し、前記(a)及び(b)の光重合性モノマーを除く。)及び(d)光重合開始剤を含有することを特徴とする人工爪組成物」
・本件発明2
「前記(a)、(b)、(c)及び(d)の成分の合計を100重量部としたとき、前記(a)の光重合性モノマー5?50重量部、前記(b)の光重合性モノマー1?25重量部、前記(c)の光重合性モノマー20?93.5重量部及び前記(d)の光重合開始剤0.5?5重量部を含有する、請求項1に記載の人工爪組成物。」
・本件発明3
「人工爪組成物の性状が液状である、請求項1又は2に記載の人工爪組成物。」
・本件発明4
「有機溶剤を含まない、請求項1?3のいずれかに記載の人工爪組成物。」
・本件発明5
「天然爪の表面上に人工爪を形成させるために用いる、請求項1?4のいずれかに記載の人工爪組成物。」
・本件発明6
「天然爪の表面上に人工爪を形成させる方法であって、(1)請求項3に記載の液状の人工爪組成物を天然爪の表面に塗布することにより塗膜を形成する工程及び(2)前記塗膜に光を照射することにより当該光重合性モノマーを重合させる工程を含む、人工爪の形成方法。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし6に係る特許に対して平成29年8月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

・請求項1-6に係る発明は、下に示す刊行物1に記載された発明、及び、特開2010-75366号公報(申立人の甲3号証)、特開平7-323043号公報(申立人の甲11号証)、特開2011-20956号公報(申立人の甲20号証)に例示される従来周知の技術的事項に基づき、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1-6に係る特許は、取り消されるべきものである。

刊行物1:特開平7-97306号公報(申立人の甲1号証)


3 引用例の記載
刊行物1には、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付したものである。)

(1)「【請求項6】 (A2)(a)分子内に酸性基を有する重合性単量体、(b)分子内に水酸基を有する重合性単量体、(c)重合開始剤 および(d)上記(a)、(b)成分と共重合可能な他の重合性単量体からなりそしてこれらの(a)、(b)および(c)成分の合計重量を基準にして、(a)成分が1?50重量%、(b)成分が1?98.99重量%および(c)成分が0.01?50重量%を占め、また(d)成分は(a)、(b)、(c)および(d)成分の合計重量を基準にして3?50重量%含有し、そして
(B1)37.5℃における粘度が100?30,000cPの範囲にある、ことを特徴とする硬化性組成物。」

(2)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、歯牙に対して簡単な操作で表面処理ができるプライマー組成物および接着できる硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、歯牙などの表面コーティング材の修復もしくはPMMA系レジン、レジンセメント、コンポジットレジンなどの歯科用修復レジンの修復に有利に用いられるプライマー組成物および硬化性組成物に関する。」

(3)「【0020】(a)成分として使用できる重合性単量体のうち、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する重合性単量体としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはこれらの誘導体を挙げることができ、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、p-ビニル安息香酸、11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸(メタクリレートの場合:MAC-10)、1,4-ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6-(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン-1,2,6-トリカルボン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸およびその無水物、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸(メタクリレートの場合:4-MET)およびその無水物(メタクリレートの場合:4-META)、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物、4-[2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシ]ブチルトリメリット酸およびその無水物、2,3-ビス(3,4-ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、N,O-ジ(メタ)アクリロイルオキシチロシン、O-(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N-(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N-(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン、N-(メタ)アクリロイルp-アミノ安息香酸、N-(メタ)アクリロイルO-アミノ安息香酸、N-(メタ)アクリロイル5-アミノサリチル酸(メタクリレートの場合:5-MASA)、N-(メタ)アクリロイル4-アミノサリチル酸、2または3または4-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物の付加生成物(メタクリレートの場合:PMDM)、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水マレイン酸または3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(メタクリレートの場合:BTDA)または3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の付加反応物、2-(3,4-ジカルボキシベンゾイルオキシ)1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、N-フェニルグリシンまたはN-トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物、4-[(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3または4-[N-メチルN-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸などを挙げることができる。このうち、MAC-10、4-MET、4-METAおよび5-MASAが好ましく用いられる。これらのカルボキシル基を含有する重合性単量体は単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0021】(a)成分として使用できる重合性単量体のうち、1分子中に少なくとも1個のリン酸基を有する重合性単量体としては、例えば2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート、2および3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシドホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルアシドホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルアシドホスフェート、ビス{2-(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシドホスフェート、ビス{2または3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル}アシドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルp-メトキシフェニルアシドホスフェートなどを挙げることができる。これらの化合物におけるリン酸基は、チオリン酸基に置き換えることができる。このうち、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェートが好ましく用いられる。これらのリン酸基を有する重合性単量体は単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0022】(a)成分として使用できる重合性単量体のうち、1分子中に少なくとも1個のスルホン酸基を有する重合性単量体としては、例えば2-スルホエチル(メタ)アクリレート、2または1-スルホ-1または2-プロピル(メタ)アクリレート、1または3-スルホ-2-ブチル(メタ)アクリレート、3-ブロモ-2-スルホ-2-プロピル(メタ)アクリレート、3-メトキシ-1-スルホ-2-プロピル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-2-スルホエチル(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。このうち、2-メチル-2-(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸が好ましく用いられる。これらのスルホン酸基を有する重合性単量体は単独でまたは組み合わせて使用できる。上記の(a)成分はすべて単独でまたは組み合わせて使用することができる。」

(4)「【0023】本発明の硬化性組成物において、(b)成分は分子内に水酸基を含有する重合性単量体である。さらに、これらの水酸基含有する重合性単量体は、さらに分子内にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、グリシジル基などの官能基を併せて含有することもできる。
【0024】(b)成分として使用できる重合性単量体としては、例えば(メタ)アクリロイル基を有する単量体では、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2または3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレ-ト、1,2-または1,3-および2,3-ジヒドロキシプロパン(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有の(メタ)アクリレート類;メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイル-2,3-ジヒドロキシプロピルアミン、N-(メタ)アクリロイル-1,3-ジヒドロキシプロピルアミンなどの水酸基含有の(メタ)アクリルアミド類;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート(メタクリレートの場合HPPM)、2-ヒドロキシ-3-ナフトキシプロピル(メタ)アクリレート(メタクリレートの場合HNPM)、1モルのビスフェノールAと2モルのグリシジル(メタ)アクリレート(メタクリレートのの場合GMA)の付加反応生成物(メタクリレートの場合Bis-GMA)などのGMAと脂肪族もしくは芳香族ポリオール(フェノールを含む)との付加生成物などを挙げることができる。これらの重合性単量体は単独でもしくは組み合わせて使用できる。」

(5)「【0026】水への溶解度が0.5g/100cc以上を示す(b)成分としては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-または3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,3-または2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイル-2,3-ジヒドロキシルプロピルアミン、N-(メタ)アクリロイル-1,3-ジヒドロキシルプロピルアミンなどを挙げることがきる。これらの単量体は単独でまたは組み合わせて使用できる。これらの重合性単量体のうち、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(メタクリレートの場合HEMA)が特に好ましく、(a)から(c)成分の合計100重量部のうち、(b)成分の少なくとも一部として40?98.99重量部の範囲で含有することが好ましい。」

(6)「【0027】本発明の硬化性組成物において、(c)成分は重合開始剤である。かかる重合開始剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、アルキルボラン、アルキルボランの部分酸化物、α-ジケトン化合物、有機アミン化合物、有機スルフィン酸、有機スルフィン酸塩、無機硫黄化合物およびバルビツール酸類を挙げることができる。これらは1種または2種以上用いることができる。これらの重合開始剤は、便宜上、常温化学重合タイプ、光重合タイプ、またはこれらの複合したデュアルタイプなどが挙げられる。常温化学重合タイプで使用される過酸化物(重合開始剤)としては、例えばジアセチルペルオキシド、ジプロピルペルオキシド、ジブチルペルオキシド、ジカプリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)、p,p'-ジクロルベンゾイルペルオキシド、p,p'-ジメトキシベンゾイルペルオキシド、p,p'-ジメチルベンゾイルペルオキシド、p,p'-ジニトロジベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物および過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウムおよび過リン酸カリウムなどの無機過酸化物を挙げることができる。これらのうちでは、BPOが好ましい。
【0028】また、光重合タイプで使用される重合開始剤としては、紫外光線もしくは可視光線を照射することによって光重合することができる重合開始剤である。かかる光重合の際に使用できる重合開始剤に特に制限はないが、例えばベンジル、4,4'-ジクロロベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、9,10-アントラキノン、ジアセチル、d,l-カンファーキノン(CQ)の如きジケトン化合物などの紫外線または可視光線増感剤が挙げられる。」

(7)「【0041】以下、上記(d)、(e)成分の両方を含まないものを本発明の第1の硬化性組成物といい、(d)成分のみを含有する本発明の硬化性組成物を本発明の第2の硬化性組成物という。(d)成分は(a)および(b)成分の少なくともいずれか一方と共重合可能な重合性単量体である。かかる重合性単量体は、例えば(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基などを有するラジカル重合可能な不飽和基を有する単量体を挙げることができる。1分子内にこれらの重合性基から選択される基が少なくとも1個含有していればよい。さらに、これらの重合性単量体は、分子内にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、グリシジル基などの官能基を含有することができる。
【0042】(d)成分として使用できる重合性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の脂肪族エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類;上記のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類のどちらか一方の(メタ)アクリロイル基がメチル基およびエチル基などに置換されたモノ(メタ)アクリレート類;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートまたは2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートまたは1,3,5-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加物などのウレタン結合を有する(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAにオキシエチレンを付加させた生成物にさらに(メタ)アクリル酸を縮合させた2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン類;スチレン、4-メチルスチレン、4-クロルメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体類;酢酸ビニルなどを挙げることができる。これらの重合性単量体は単独で、もしくは組み合わせて使用できる。
【0043】上記(d)成分として、上記に挙げた種々の重合性単量体はそれぞれ単独でまたは組み合わせて使用することができる。」

(8)「【0088】実施例2
コンポジットレジン用ボンディング材としての本発明の硬化性組成物として、45.5重量部のHEMA、35重量部のVR90、6.5重量部のトリエチレングリコールジメタクリレート(3G)、6.5重量部の2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(2.6E、新中村化学)、6.5重量部の4-MET、0.5重量部のCQおよび0.5重量部のNPGを混合して溶解した。調製直後に使用して接着試験を行った結果、象牙質に対する接着強さは99±49kgf/cm2であり、ギャップの形成は認められなかった。NPGを溶解した溶液は調製後約1日でゲル化して使用不能となった。」

(9)「【0090】実施例4
本発明の硬化性組成物として、実施例2における4-METを4-METAに変更したものを使用した(粘度:280cP)。その結果、象牙質に対する接着強さが78±18kgf/cm^(2)であり、ギャップの形成は認められなかった。」


以上の記載によれば、刊行物1には以下の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「45.5重量部の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、6.5重量部の4-メタアクリロイルオキシエチルトリメリット酸、または、その無水物、6.5重量部のトリエチレングリコールジメタクリレート、35重量部のVR90、重合開始剤である0.5重量部のCQ、を含む、歯科用硬化性組成物。」


4 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 特許法第29条第2項について
(本件発明1について)
本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、両者は以下の点で相違する。

・相違点1
本件発明1は、人工爪組成物であるのに対し、刊行物1発明は、歯科用硬化性組成物である点。

・相違点2
本件発明1は、“ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びイソボロニル(メタ)アクリレートを含む光重合性モノマー”を有しているのに対し、刊行物1発明は、当該成分を含む光重合性モノマーを有していない点。

事案に鑑み、上記相違点のうち、相違点2について検討するに、当該相違点に係る事項は刊行物1に記載されておらず、かつ、当該事項が従来周知の技術的事項であると認める根拠もない。よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物1発明及び従来周知の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(本件発明2?6について)
上記のように、本件発明1が、刊行物1発明及び従来周知の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1の発明特定事項を全て有しつつ、更に限定したものである本件発明2?6も、刊行物1発明及び従来周知の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。


(2)申立人の意見について
ア 平成29年12月8日付け意見書における意見について
(ア)新たな相違点(上記相違点2)についての主張
申立人は、当該意見書にて、上記相違点2に関し、刊行物1発明、及び、甲20号証(特開2011-20956号公報)、甲22号証(特許第4981184号公報)の記載事項から当業者が容易に想到し得たものである旨主張している。
しかしながら、甲20号証には、「ウレタンアクリレートオリゴマー」に関する記載はあるものの、それと「イソボロニル(メタ)アクリレートオリゴマー」とを併用することに関する記載がない。
また、甲22号証には、「ウレタンメタアクリレートオリゴマー」と「イソボルニルメタアクリレート」を併用することに関する記載はあるものの、これらの成分を、上記刊行物1発明における“2-ヒドロキシエチルメタクリレート”、“4-メタアクリロイルオキシエチルトリメリット酸、または、その無水物”に混合することに関する記載がないから、刊行物1発明に当該成分を混合することにより、密着性が向上する等の効果が生じるか否かは不明であるため、当業者が容易に想到することができるとは言えない。
さらに、甲22号証においては、「ウレタンメタアクリレートオリゴマー」の含有量として、100重量部なる数値が示されており、他の成分よりも多くの割合を占めることが記載されている(請求項1参照)から、「ウレタンメタアクリレートオリゴマー」は、甲22号証に示されるジェルネイル用下地剤の主要成分であると言える。一方、刊行物1には、各成分の含有量から見て(a)?(c)成分を主要成分とすることが記載されていると認められる(上記「第3 3」記載事項(1)参照)ところ、それに対して、さらに、甲22号証に記載された発明の主要成分である「ウレタンメタアクリレートオリゴマー」を追加することには、動機付けが存在せず、当業者が容易に想到することができるとは言えない。

よって、本件発明1が甲1号証に記載された発明、甲20号証及び甲22号証に記載された事項、並びに、従来周知の技術的事項から容易に想到しえたものであるとはいえない。

(イ)本件特許発明の効果について、及び、相違点についての主張
上記「(ア)」のとおり、上記相違点2に係る事項に関して、本件発明1は、甲1号証に記載された発明、甲20号証及び甲22号証に記載された事項、並びに、従来周知の技術的事項から容易に想到しえたものであるとはいえない。当該判断は、その他の相違点、及び、本件発明1の効果についての申立人の主張に左右されるものではない。
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲20号証及び甲22号証に記載された事項、並びに、従来周知の技術的事項から容易に想到しえたものであるとはいえない。


イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(ア)特許法第29条第2項について
申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、上記取消理由通知にて採用した文献のほか、甲2号証、甲4号証?甲10号証、甲12号証?甲19号証、及び、甲21号証を挙げ、本件発明1?6が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであると主張している。
しかしながら、上記文献のいずれにも「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及びイソボロニル(メタ)アクリレートを含む光重合性モノマー」に関する記載が無いから、かかる主張には理由がない。

(イ)特許法第17条の2第2項第3号について
申立人は、平成28年9月27日付け手続補正書によってなされた補正により、請求項1に追加された「(a)2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートの少なくとも1種」なる事項が、願書に最初に添付された特許請求の範囲、及び、明細書に記載されていないため、当該補正は、第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであると主張している。
しかしながら、訂正事項1により、当該主張に係る事項における「2-ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレート」なる記載が削除されたため、この申立理由が解消したことは明らかである。


第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
人工爪組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な人工爪組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人工爪組成物は、一般にジェルネイルと呼ばれる人工爪形成材料であって、天然爪(自爪)上に塗布・重合硬化させることにより天然爪に特別な美的外観を与える場合のほか、天然爪を伸長する場合にも使用される。さらに、顔料を含むカラージェルネイルを使用することによってネイルアート、人工爪の造形等にも使用される。
【0003】
ジェルネイルを使用した基本的な施術方法としては、一般にナチュラルネイルジェルフローターと呼ばれる方法が知られている。ナチュラルネイルジェルフローターとはジェルネイルを天然爪上に塗布・重合/硬化させ、特別な美的外観を与える手法である。その他にも、ジェルネイル材料を使用してネイルチップ上に施術を行う場合もある。
【0004】
一般的な施術方法であるナチュラルネイルジェルフローターの場合は、通常は次に記載する施術工程を順次行う。
(工程1)天然爪表面をスポンジファイルでサンディングする。
(工程2)ネイルクレンザーを染込ませたワイプで油分・ダストを拭取る。
(工程3)クリアジェル(人工爪組成物)を天然爪全体に塗布する。
(工程4)光重合装置を使用して光重合を行う。
(工程5)重合した人工爪組成物の上面にカラージェル(人工爪組成物)を使用してカラーリング又はネイルアートを行う。
(工程6)光重合装置を使用して光重合を行う。
(工程7)必要に応じて工程5及び工程6を繰り返し行う。
(工程8)トップジェル(人工爪組成物)を天然爪全体に塗布する。
(工程9)光重合装置を使用して光重合を行う。
(工程10)ジェルリムーバー又はジェルクレンザーを染込ませたワイプを使用して表面未硬化ジェル(人工爪組成物)を拭取る。
【0005】
ジェルネイル材料は、一般的な爪化粧料であるマニキュア(ネイルポリッシュ又はネイルラッカーと呼ばれる場合もある。)と比較して、接着耐久性、美的外観等に優れており、上記のように施術工程に関しても比較的簡便であることから、ネイルサロン等の主要施術メニューの一つである。
【0006】
しかし、指先に施術された人工爪組成物は、日常生活の様々な負荷により剥離又は脱落することが問題となっている。このような天然爪と人工爪との低い接着性による人工爪組成物の剥離又は脱落は、美的不快感を与えるだけでなく、グリーンネイルを代表とする人工爪被施術者の感染症の主たる原因であると考えられている。そのため、優れた接着性を有する人工爪組成物の開発が求められている。
【0007】
本発明者等は、先に、天然爪と人工爪組成物との接着性向上を目的として、(a)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物、(b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物および、(c)ラジカル重合開始剤を含む人工爪組成物を提案している(特許文献1)。ところが、(b)分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する酸性リン化合物を含む人工爪組成物は、商品寿命あるいは接着性という点についてさらなる改善の余地が残されている。
【0008】
これに対し、特許文献2には、天然爪に対する接着性能を改善することを目的とした2個以上のカルボニル基を含有するモノエチレン性不飽和ビニルモノマー及び1個以上の付加重合可能なエチレン性不飽和モノマーを含む人工爪組成物が提案されている。しかし、かかる人工爪組成物においても十分な接着性は得られていない。
【0009】
特許文献3には、紫外線照射により硬化してなる人工爪組成物であって、該組成物中に紫外線の照射により重合可能なイオン性モノマーを含有してなることを特徴とする人工爪組成物が開示されている。ところが、当該発明は施術後の人工爪組成物の除去工程の生体安全性を改善することを目的としており、天然爪に対する接着性に関して考慮された発明ではない。
【0010】
特許文献4では、分子中にメタクリロイル基を含むプライマーを主成分として含有することを特徴とする爪の保護剤及び保護剤キットが提案されている。特許文献4によれば、爪の蛋白質(コラーゲン)に接着できる種々の薬剤を調査・試験したところ、歯科の口腔内(歯の充填物、被覆物)に使用され、人体に無害であることが証明されている高分子化合物のプライマーを、爪の表面に塗布して硬化させた後、その表面を研磨すれば、完璧な爪の保護剤として使用できることが開示されている。しかし、当該発明はあくまで爪保護剤に係るものであって、疾病及び外力による手足の爪の変形の防止及び原形回復を目的とする材料である。すなわち、特許文献4においては、天然爪に対して特別な美的外観を与える美粧材料としての検討はなされていない。
【0011】
特許文献5には、天然爪及び人工爪を含む爪の支持と保護に作用するマニキュア組成物として、手足の指の爪に塗布して紫外線下で硬化することのできる、脂肪族ウレタンアクリレートとトリプロピレングリコールジアクリレート及びトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、メタクリル酸、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ブチルアセテートを含む組成物が開示されている。当該発明において、人工爪(プラスチック爪)とマニキュア組成物との間の接着には、アルキルシランアルコキシドを成分とするプライマーが使用されている。しかし、かかる組成物においても、十分な接着性は得られていない。
特許文献6には、ラジカル重合性不飽和二重結合と抗菌性基を有する化合物や抗菌性フィラーを含む人工爪組成物が抗菌効果を持つことが開示されている。しかし、特許文献5の人工爪組成物においても自爪との接着性についての検討はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010-53097
【特許文献2】特表2002-505915
【特許文献3】特開2009-126833
【特許文献4】特許第3208519号
【特許文献5】特開平2-19313
【特許文献6】特開2010‐75366
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の主な目的は、天然爪(自爪)との接着性が改善された人工爪組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
1. (a)2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート、(b)メタクリル酸、α-β不飽和カルボン酸の(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸及びその無水物、カルボキシポリカプロラクトン(n=1.8)モノ(メタ)アクリレートの少なくとも1種、(c)ウレタンアクリレートオリゴマー及びイソボロニル(メタ)アクリレートを含む光重合性モノマー(但し、前記(a)及び(b)の光重合性モノマーを除く。)及び(d)光重合開始剤を含有することを特徴とする人工爪組成物。
2. 前記(a)、(b)、(c)及び(d)の成分の合計を100重量部としたとき、前記(a)の光重合性モノマー5?50重量部、前記(b)の光重合性モノマー1?25重量部、前記(c)の光重合性モノマー20?93.5重量部及び前記(d)の光重合開始剤0.5?5重量部を含有する、前記項1に記載の人工爪組成物。
3. 人工爪組成物の性状が液状である、前記項1又は2に記載の人工爪組成物。
4. 有機溶剤を含まない、前記項1?3のいずれかに記載の人工爪組成物。
5. 天然爪の表面上に人工爪を形成させるために用いる、前記項1?4のいずれかに記載の人工爪組成物。
6. 天然爪の表面上に人工爪を形成させる方法であって、(1)前記項3に記載の液状の人工爪組成物を天然爪の表面に塗布することにより塗膜を形成する工程及び(2)前記塗膜に光を照射することにより当該光重合性モノマーを重合させる工程を含む、人工爪の形成方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、天然爪(自爪)との接着性が改善された人工爪組成物を提供することができる。これにより、人工爪の剥離又は脱落を効果的に抑制できる結果、比較的長期にわたって人工爪の美観を維持することができる。
【0017】
このような特徴をもつ本発明の人工爪組成物は、人工爪の形態形成(爪の伸長、形状形成)を行う場合はもとより、例えばネイルアート呼ばれるデザインを施す場合、医療補助目的で脆弱な天然爪の強度付与、変形・変色した爪の再生又は保護する場合等に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.人工爪組成物
本発明の人工爪組成物(本発明組成物)は、(a)分子内に少なくとも1個の第一級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマー(但し、当該光重合性モノマーは、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基も有するものを含む。)(以下、a成分ともいう。)、(b)分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有する光重合性モノマー(但し、前記(a)の光重合性モノマーを除く。)(以下、b成分ともいう。)、(c)光重合性モノマー(但し、前記(a)及び(b)の光重合性モノマーを除く。)(以下、c成分ともいう。)及び(d)光重合開始剤(以下、d成分ともいう。)を含有することを特徴とする。
【0019】
特に、本発明組成物では、a?c成分という3種類の異なる光重合性モノマーを含有することが特徴の一つである。これらの光重合性モノマーは、重合性官能基を有するものである。重合性官能基としては限定的でなく、例えばメタクリロイル基、アクリロイル基、アリル基、ビニル基等が挙げられる。本発明では、それらの中でもアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種の重合性官能基を有する化合物を好適に使用することができる。なお、本発明においては、(メタ)アクリロイル又は(メタ)アクリレートをもって、アクリロイル基含有光重合性モノマーとメタクリロイル基含有光重合性モノマーの両者を包括的に表記する。
【0020】
a?c成分における光重合性モノマーは、重合性官能基を有するものであれば以下に示すようなモノマーのほかにも、そのオリゴマー、ポリマー等も使用することができる。オリゴマー又はポリマーの重量平均分子量としては400?55000程度とすることが好ましい。この範囲に設定することによって、本発明組成物の反応性を損なうことなく、より良好な接着性、硬化特性等を得ることができる。
【0021】
a成分
a成分として、分子内に少なくとも1個の第一級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマーを用いる。但し、前記光重合性モノマーは、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基も有するものを含む。つまり、本発明組成物では、分子内に少なくとも1個の第一級アルコール性水酸基を有するとともに分子内に少なくとも1個のカルボキシル基も有する光重合性モノマーは、後記のb成分ではなく、a成分に含めるものとする。
【0022】
a成分として使用できる光重合性モノマーは、特に限定されず、例えば2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ハイドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ハイヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ハイドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ハイドロキシデシル(メタ)アクリレ-ト等のモノハイドロシキアルキル(メタ)アクリレート類;1,2-又は1,3-ジハイドロキシプロパン(メタ)アクリレート等のジハイドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールの(メタ)アクリレート類;N-(1,3-ジハイドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類等を挙げることができる。これらのa成分は、1種又は2種以上で使用することができる。これらの中でも、特に2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート等が好適である。
【0023】
本発明組成物において、a成分としては、第一級アルコール性水酸基のほかにも、分子内に例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミノ基、グリシジル基等の官能基の少なくとも1つを有していても良い。
【0024】
a成分の含有量は、用いるa成分の種類等に応じて適宜設定することができるが、a?d成分の合計を100重量部として、通常は5?50重量部とすることが好ましく、特に5?20重量部とすることがより好ましい。かかる範囲内に設定することによって、優れた接着性を有するとともに、人工爪組成物として適切な粘性及び機械的強度をより効果的に付与することができる。
【0025】
b成分
b成分として、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有する光重合性モノマーを用いる。この場合、b成分としては、前記aの光重合性モノマーを除く。従って、例えばa成分として第一級アルコール性水酸基とカルボキシル基とを有する光重合性モノマーを採用した場合は、これとは別途にb成分を用いる。換言すれば、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有し、かつ、第一級アルコール性水酸基を有しない光重合性モノマーは、b成分として用いる。
【0026】
b成分として使用できる光重合性モノマーは、特に限定されず、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等のα-β不飽和カルボン酸の(メタ)アクリル酸エステル化合物;4-ビニル安息香酸等のビニル芳香環化合物;11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸等の(メタ)アクリロイルオキシ基とカルボン酸基の間に直鎖炭化水素基が存在するカルボン酸化合物;6-(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン-1,2,6-トリカルボン酸等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルナフタレン(ポリ)カルボン酸;4-(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸、4-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸;4-[2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシ]ブチルトリメリット酸等に水酸基を含有する化合物;2,3-ビス(3,4-ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレ-ト等のカルボキシベンゾイルオキシを有する化合物;N,O-ジ(メタ)アクリロイルオキシチロシン、O-(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N-(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N-(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン、O-(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン、N,O-ジ(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン等のN-及び/又はO-位置換のモノ又はジ(メタ)アクリロイルオキシアミノ酸;N-(メタ)アクリロイル-4-アミノ安息香酸、N-(メタ)アクリロイル-5-アミノ安息香酸、2-又は3-又は4-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4-又は5-(メタ)アクリロイルアミノサリチル酸等のN-及び/又はO-モノ又はジ(メタ)アクリロイル(アミノ又はオキシ)安息香酸系化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物の付加生成物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-トと無水マレイン酸又は3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物又は3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の付加反応物等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと不飽和ポリカルボン酸無水物の付加反応物;2-(3,4-ジカルボキシベンゾイルオキシ)-1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン等のポリカルボキシベンゾイルオキシと(メタ)アクリロイルオキシを有する化合物;N-フェニルグリシン又はN-トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレ-トとの付加物;4-[N-(2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3又は4-[N-メチル-N-(2-ヒドロキシ‐3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸等のN-アルキル-N-(ヒドロキシ(メタ)アクリロイルオキシアルキル)アミノフタル酸化合物等を挙げることができる。これらのb成分は、1種又は2種以上で使用することができる。これらの中でも、特にメタクリル酸、α-β不飽和カルボン酸の(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸及びその無水物、カルボキシポリカプロラクトン(n=1.8)モノ(メタ)アクリレートの少なくとも1種が好適である。
【0027】
本発明組成物において、b成分としては、カルボキシル基のほかにも、分子内に例えばリン酸基、スルホン酸基、アミノ基、グリシジル基等の官能基の少なくとも1つを有していても良い。
【0028】
b成分の含有量は、用いるb成分の種類等に応じて適宜設定することができるが、a?d成分の合計を100重量部として、通常は1?25重量部とすることが好ましく、特に2?20重量部とすることがより好ましい。かかる範囲内に設定することによって、優れた接着性を有するとともに、人工爪組成物として適切な粘性及び機械的強度をより効果的に付与することができる。
【0029】
c成分
c成分として、a成分及びb成分に該当しない光重合性モノマーを用いる。すなわち、分子内にアルコール性水酸基及びカルボキシル基のいずれも有しない光重合性モノマーをc成分として用いる。
【0030】
c成分として使用できる光重合性モノマーは、特に限定されず、例えば重合性官能基の個数で分類すると、以下のような化合物が例示される。
【0031】
1個の重合性官能基を有する化合物として、例えばメトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサフタル酸、ステアリル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
2個の重合性官能基を有する化合物として、例えば1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
3個以上の重合性官能基を有する化合物として、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
これらのc成分は、1種又は2種以上を使用することができる。例えば、特定のc成分の粘性が室温で極めて高い場合、あるいは固体である場合は、別のc成分として低粘度の光重合性モノマーと組み合わせて混合物として好適に使用することができる。例えば、有機溶媒を使用することなく本発明組成物を液状組成物とする場合、光重合性モノマーを選択することによって、本発明組成物を液状組成物として提供することができる。
【0035】
c成分として、上記光重合性モノマー以外に人工爪組成物の目的に応じて他の光重合性モノマー、例えば分子内に少なくとも1個以上の重合性官能基を有するオリゴマー又はポリマーを用いても良い。また、酸性基、フルオロ基等の置換基を同一分子内に有していても良い。ここで、分子内に少なくとも1個以上の重合性官能基を有するオリゴマーとしては、例えばウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、アクリルオリゴマー、ポリエステルオリゴマー等の公知のオリゴマーが使用でき、特にウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを好適に用いることができる。オリゴマー又はポリマーの重量平均分子量としては、前記で示した場合と同様、400?55000程度とすることが好ましい。この範囲にすることによって、本発明組成物の反応性を損なうことなく、より優れた接着性、硬化特性等を得ることができる。
【0036】
これらのc成分は、1種又は2種以上を使用することができる。例えば、特定のc成分の粘性が室温で極めて高い場合、あるいは固体であるような場合は、別のc成分として低粘度の光重合性モノマーと組み合わせて混合物として好適に使用することができる。
【0037】
c成分の含有量は、用いるc成分の種類等に応じて適宜設定することができるが、a?d成分の合計を100重量部として、通常は20?93.5重量部とすることが好ましく、特に50?90重量部とすることがより好ましい。かかる範囲内に設定することによって、人工爪組成物として適切な粘性及び機械的強度、熱的特性等をより効果的に付与することができる。
【0038】
d成分
d成分である光重合開始剤は公知又は市販のものを使用することができる。
例えば、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α-ジアルコキシアセトフェノン類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、チタノセン類等が挙げられる。本発明では、この中でもα-ヒドロキシアルキルフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類等の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0039】
d成分の含有量は、用いるd成分の種類等に応じて適宜設定することができるが、a?d成分の合計を100重量部として、通常は0.5?5重量部とすることが好ましく、特に0.5?3重量部とすることがより好ましい。かかる範囲内に設定することによって、優れた光硬化性をより効果的に付与することができる。
【0040】
また、本発明では、上記光重合開始剤に光重合促進剤を組み合わせて用いることも好ましい。特に、光重合促進剤として第三級アミンを用いることが好ましい。具体的には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ-n-ブチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン、m-クロロ-N,N-ジメチルアニリン、p-ジメチルアミノベンズアルデヒド、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、p-ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N-ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン、p-ジメチルアミノフェニルアルコール、p-ジメチルアミノスチレン、N,N-ジメチル-3,5-キシリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチル-α-ナフチルアミン、N,N-ジメチル-β-ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルステアリルアミン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’-(n-ブチルイミノ)ジエタノール等を使用することができる。
【0041】
光重合促進剤を使用する場合の配合量は、用いる光重合促進剤の種類等に応じて適宜設定することができるが、a?d成分の合計を100重量部として、通常は0.1?5.0重量部とすることが好ましく、特に0.1?2.0重量部とすることがより好ましい。かかる範囲内に設定することによって、より優れた表面硬化性又は内部硬化性を付与するとともに、より低い黄変性を得ることができる。
【0042】
その他の成分
本発明組成物では、上記a?d成分のほかにも、本発明の効果を妨げない範囲内において、必要に応じて公知の人工爪組成物に配合されている添加剤を添加することもできる。例えば、着色材(顔料等)、重合禁止剤、変色防止剤、蛍光剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防腐剤等を挙げることができる。特に、本発明組成物では、作業環境等の見地より、有機溶剤を含まないことが好ましい。
【0043】
なお、本発明組成物中におけるa?dの合計量が占める割合は限定されないが、通常は本発明組成物中80?100重量%とし、好ましくは90?100重量%とし、より好ましくは95?100重量%とすれば良い。
【0044】
本発明組成物の性状
本発明組成物の性状は限定的ではないが、通常は液状組成物として提供される。すなわち、常温(特に25℃)及び常圧下で液体状の成分を含む組成物として使用することができる。このような性状は、a?d成分の少なくとも1種として常温・常圧下で液体の成分を使用することにより実現することができる。
【0045】
本発明組成物が液状である場合の粘度(25℃)は特に限定されないが、通常は1.0?100[Pa.s]程度の範囲内で適宜設定することができる。このような粘度に設定することにより、より優れた塗工性、作業性等を達成することができる。
【0046】
2.本発明組成物の調製
本発明組成物は、前記の各成分を均一に混合することによって調製することができる。混合する方法は限定的でなく、例えばミキサー、ニーダー等の公知の混合攪拌装置を使用することにより実施することができる。
【0047】
なお、本発明組成物は、使用時に光の照射(LED照射、UV照射等)下で重合することにより硬化する組成物である場合には、調製工程中及び調製後は本発明組成物を暗室下におくことが必要である。
【0048】
3.人工爪組成物の使用
本発明組成物は、天然爪(自爪)の表面上に人工爪を形成させるために好適に用いることができる。より具体的には、(1)液状の人工爪組成物を天然爪の表面に塗布することにより塗膜を形成する工程(塗布工程)及び(2)前記塗膜に光を照射することにより当該光重合性モノマーを重合させる工程(硬化工程)を含む人工爪形成方法に使用することができる。
【0049】
前記の塗布工程では、液状の人工爪組成物を天然爪の表面に塗布することにより塗膜を形成する。塗布する場合の条件は、公知の方法に従って実施することができる。また、本発明では、塗布工程に先立って、前処理として、例えば爪表面のサンディング工程、油分・ダストの拭取り工程等の公知の工程を実施しても良い。
【0050】
前記の硬化工程では、前記塗膜に光を照射することにより当該光重合性モノマーを重合させる。すなわち、本発明組成物は、光重合性モノマーを光の照射下(好ましくはLED照射下)で重合させることが好ましい。光照射する場合の光の波長は限定的ではないが、通常は360?500nmの範囲内にあることが好ましい。このような波長をもつ光(光源)としては、公知又は市販の光源を使用することができる。例えば、LED照射装置、UV照射装置等を使用することができる。本発明で使用する光源としてLED照射装置を使用することが望ましい。LED照射を採用する場合には、容易に高出力の照射光が得られるとともに、コンパクトな照射装置を設計できるという点で望ましい。
【実施例】
【0051】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0052】
[実施例において人工爪組成物の調製に用いた成分とその略号]
(c)光重合性モノマー
・PUDA:ウレタンジアクリレートオリゴマー(分子量:15000)
・IBMA:イソボロニルメタクリレート
・TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
(a)分子内に少なくとも1個の第一級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマー
・2HEMA:2-ハイドロキシエチルメタクリレート
(a’) 分子内に1個の第二級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマー
・2HPMA:2-ハイドロキシプロピルメタクリレート
・GM:グリセロールジメタクリレート
(b)分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有する光重合性モノマー
・MA:メタクリル酸
・4META:4メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物
・A-SA:2-アクリロイルオキシエチルサクシネート
・A-PCLA:カルボキシポリカプロラクトン(n=1.8)モノアクリレート
(d)光重合開始剤
・MAPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド
・BP:ベンゾフェノン
・2HMPP:2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン
【0053】
実施例1?15及び比較例1?6
表1?表3に示す配合割合に従い、それぞれの成分を大気圧下23℃の条件で自転・公転式混合機を使用して混合し、均一液状の人工爪組成物を調製した。調製した人工爪組成物約10gを黒色遮光ジャー容器に充填し、各試験例に使用した。
【0054】
試験例1
各実施例及び比較例で得られた人工爪組成物について接着試験を実施した。試験方法は、次に示す通りである。
【0055】
天然爪代替としてナイロン6製平板(縦15.0mm×横15.0mm×厚さ3.0mm)を被着体として使用したせん断接着試験を実施した。ナイロン6製平板を耐水研磨紙(1200番)にて流水下で研磨し、超音波洗浄と乾燥を行うことにより被着体とした。接着面に直径5mmの穴を開けた両面テープを貼り付け、接着面積を規定した。次に、直径5mm×高さ2mmのプラスティックモールドを接着規定面に固定した後、モールド内に人工爪組成物を填入した。次いで、市販ジェルネイル用ライト(プレストLEDライト)を使用して240秒間光照射を行い、人工爪組成物を重合させた(試験体数は6個とした)。接着試験片作製当日中にインストロン万能試験機(インストロン5550型)を使用し、クロスヘッドスピード10mm/minの条件下でせん断接着強度を測定した。その結果を表1?表3に示す。
【0056】
試験例2
各実施例及び比較例で得られた人工爪組成物のいくつかを用い、実際の自爪に施術し、その外観について調べた。試験方法は、次に示す通りである。
【0057】
(1)施術方法
日本ネイリスト協会認定ネイリストの施術者が各3名の被験者に対し、下記の施術方法に従って施術を実施し、施術後の人工爪組成物の接着耐久性及び美的外観耐久性を評価した。
ここで、施術者は2名であり、5名の被験者に対して両手指(10本)に施術した。また、施術術式は一般的な施術方法であるナチュラルネイルジェルフローターとした。すなわち、ナチュラルネイルジェルフローターを次の工程に従って施術した。
(工程1)天然爪表面をスポンジファイルでサンディングする。
(工程2)ネイルクレンザーを染込ませたワイプで油分・ダストを拭取る。
(工程3)実施例又は比較例の人工爪組成物を天然爪全体に塗布する。
(工程4)光重合装置(市販製品:プレストLEDライト)を使用して20秒間光重合を行う。
(工程5)重合した人工爪組成物の上面にカラージェル(市販製品:プレストカラージェル)を使用してカラーリングを行う。
(工程6)光重合装置(市販製品:プレストLEDライト)を使用して20秒間光重合を行う。
(工程7)再度(工程5)を実施する。
(工程8)再度(工程6)を実施する。
(工程9)トップジェル(市販製品:プレストトップジェル)を天然爪全体に塗布する。
(工程10)光重合装置(市販製品:プレストLEDライト)を使用して20秒間光重合を行う。
(工程11)ジェルリムーバー又はジェルクレンザーを染込ませたワイプを使用して表面未硬化ジェルを拭取る。
【0058】
(2)評価方法
美的外観耐久性の試験方法に関し、美的外観とは、本発明に係る人工爪組成物を使用して形態形成(爪の伸長又は形状形成)あるいはネイルアート呼ばれるデザインを施すことによって得られる外観を示している。美的外観の試験方法として、施術後の日常生活において施術直後の美的外観が維持されているかを目視にて観察し、人工爪組成物の天然爪からの剥離及び脱落の有無を確認した。
調査期間は14日間とし、施術後から人工爪組成物の天然爪からの剥離、脱落等が発生して美的外観が損なわれるまでの期間を記録し、これを美的外観耐久性とした。美的外見耐久性は長期間であるほど好ましく、試験期間である14日経過後においても優れた美的外観を示していた場合は「14日以上」と表記した。その結果を表1?表3に示す。各表におけるA?Cの内容は、以下に示す通りである。
A:全ての被験者について施術後約14日経過後においても、人工爪組成物の剥離及び脱落のいずれも認められない。
B:全ての被験者において施術7日後以内に、人工爪組成物の剥離又は脱落が認められた。
C:全ての被験者において施術3日後以内に、人工爪組成物の剥離又は脱落が認められた。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に記載の実施例1?4は、成分(a)、(b)、(c)及び(d)からなる人工爪組成物である。また、比較例1は、成分(b)、(c)及び(d)からなり、かつ、成分(a)を含有しない人工爪組成物であり、比較例2は、成分(a)、(c)及び(d)からなり、かつ、成分(b)を含有しない人工爪組成物である。
【0061】
表1の接着強度から明らかなように、実施例1?4は19.2?25.2MPaという優れた接着強度を示したが、比較例1は12.3MPa、比較例2は9.1MPaという低い接着強度を示した。
【0062】
実施例1、実施例4、比較例1及び比較例2の美的外観耐久性については、表1に示す通り、実施例1及び実施例4では14日以上という良い結果が得られた。一方、成分(b)、(c)及び(d)からなり、かつ、成分(a)を含有しない人工爪組成物の比較例1あるいは成分(a)、(c)及び(d)からなり、かつ、成分(b)を含有しない人工爪組成物の比較例2の美的外観耐久性は不十分であった。
【0063】
【表2】

【0064】
表2に記載の実施例5?7は、成分(a)、(a’)、(b)、(c)及び(d)からなる人工爪組成物である。また、比較例3?6は、成分(a’)、(b)、(c)及び(d)からなり、かつ、成分(a)を含有しない人工爪組成物である。ここで、実施例5?7及び比較例3?6において使用した成分(a’)は、分子内に1個の第二級アルコール性水酸基を有する光重合性モノマーである。
【0065】
表2の接着強度からも明らかなように、実施例5?7は20.0?23.7MPaという優れた接着強度を示したのに対し、比較例3?6は2.8?2.9MPaという低い接着強度を示した。
【0066】
さらに、実施例7、比較例3及び比較例6の美的外観耐久性については、表2に示すように、実施例7は14日以上という良好な結果が得られた。これに対し、成分(a’)、(b)、(c)及び(d)を含み、かつ、成分(a)を含有しない人工爪組成物である比較例3及び比較例6の美的外観耐久性は不十分であった。
【0067】
【表3】

【0068】
表3に記載の実施例8?15は、成分(a)、(b)、(c)及び(d)又は成分(a)、(a’)、(b)、(c)及び(d)からなる人工爪組成物である。ここで、表3の接着強度からも明らかなように、実施例8?15は15.5?25.2MPaという優れた接着強度を示した。
【0069】
さらに、実施例9、実施例11及び実施例14の美的外観耐久性については、表3に示すように、実施例9、実施例11及び実施例14はいずれも14日以上という良好な結果を得ることができた。
【0070】
これら表1?表3の結果から総合的に勘案すると、本発明組成物は比較例に比べて優れた接着性、ひいては美的外観耐久性等を有することがわかる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)2-ハイドロキシエチル(メタ)アクリレート、(b)メタクリル酸、α-β不飽和カルボン酸の(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸及びその無水物、カルボキシポリカプロラクトン(n=1.8)モノ(メタ)アクリレートの少なくとも1種、(c)ウレタンアクリレートオリゴマー及びイソボロニル(メタ)アクリレートを含む光重合性モノマー(但し、前記(a)及び(b)の光重合性モノマーを除く。)及び(d)光重合開始剤を含有することを特徴とする人工爪組成物。
【請求項2】前記(a)、(b)、(c)及び(d)の成分の合計を100重量部としたとき、前記(a)の光重合性モノマー5?50重量部、前記(b)の光重合性モノマー1?25重量部、前記(c)の光重合性モノマー20?93.5重量部及び前記(d)の光重合開始剤0.5?5重量部を含有する、請求項1に記載の人工爪組成物。
【請求項3】人工爪組成物の性状が液状である、請求項1又は2に記載の人工爪組成物。
【請求項4】有機溶剤を含まない、請求項1?3のいずれかに記載の人工爪組成物。
【請求項5】天然爪の表面上に人工爪を形成させるために用いる、請求項1?4のいずれかに記載の人工爪組成物。
【請求項6】天然爪の表面上に人工爪を形成させる方法であって、(1)請求項3に記載の液状の人工爪組成物を天然爪の表面に塗布することにより塗膜を形成する工程及び(2)前記塗膜に光を照射することにより当該光重合性モノマーを重合させる工程を含む、人工爪の形成方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-01-31 
出願番号 特願2012-164216(P2012-164216)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A45D)
P 1 651・ 561- YAA (A45D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大瀬 円  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 五閑 統一郎
平瀬 知明
登録日 2016-11-18 
登録番号 特許第6042126号(P6042126)
権利者 株式会社松風
発明の名称 人工爪組成物  
代理人 藤井 淳  
代理人 藤井 淳  
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