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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
管理番号 1339156
異議申立番号 異議2017-700096  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-02 
確定日 2018-02-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5959180号発明「照明光学装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5959180号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第5959180号の請求項1ないし2、4ないし5、7ないし11に係る特許を維持する。 特許第5959180号の請求項3及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5959180号の請求項1?11に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成23年11月16日(優先権主張 平成22年11月16日)に特許出願され、平成28年7月1日に特許権の設定登録がされ、同年8月2日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成29年2年2日に特許異議申立人カール ツァイス ミクロスコピー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングにより特許異議の申立てがなされ、同年6月23日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月28日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年11月17日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成29年8月28日になされた訂正請求による訂正(以下、当該訂正請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲及び明細書についての、請求項1?11からなる一群の請求項に係る訂正であって、訂正事項1ないし11からなり、その内容は次のアないしサのとおりである(下線は、合議体において、本件訂正前後の対応箇所を表すものとして付与した。)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、」とあるのを、「該波面変調素子を透過した照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項7?11も同様に訂正する。)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、」とあるのを、「該波面変調素子を透過した照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、」に訂正する(請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項7?11も同様に訂正する。)。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置。」とあるのを、「前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置。」に訂正する(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項7?11も同様に訂正する。)。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置。」とあるのを、「前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置。」に訂正する(請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項7?11も同様に訂正する。)。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から請求項6のいずれかに記載の照明光学装置。」とあるのを、「請求項1、請求項2、請求項4および請求項5のいずれかに記載の照明光学装置。」に訂正する(請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8?11も同様に訂正する。)

ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1から請求項7のいずれかに記載の照明光学装置。」とあるのを、「請求項1、請求項2、請求項4、請求項5および請求項7のいずれかに記載の照明光学装置。」に訂正する。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から請求項7のいずれかに記載の照明光学装置。」とあるのを、「請求項1、請求項2、請求項4、請求項5および請求項7のいずれかに記載の照明光学装置。」に訂正する。

コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1から請求項7のいずれかに記載の照明光学装置。」とあるのを、「請求項1、請求項2、請求項4、請求項5および請求項7のいずれかに記載の照明光学装置。」に訂正する(請求項10の記載を直接的に引用する請求項11も同様に訂正する。)。

サ 訂正事項11
本件特許明細書の段落【0005】を「上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記フーリエ変換光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる照明光学装置を提供する。
また、本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記逆フーリエ変換光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる照明光学装置を提供する。
また、本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記フーリエ変換光学系および前記対物光学系において、該対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる照明光学装置を提供する。
また、本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記フーリエ変換光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置を提供する。
また、本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記逆フーリエ変換光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置を提供する。
また、本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記フーリエ変換光学系において、該対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置を提供する。」と記載されているのを、「上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子を透過した照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記フーリエ変換光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる照明光学装置を提供する。
また、本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と該波面変調素子を透過した照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記逆フーリエ変換光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる照明光学装置を提供する。
また、本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記フーリエ変換光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置を提供する。
また、本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記逆フーリエ変換光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置を提供する。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア) 上記訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「フーリエ変換光学系」が「集光しフーリエ変換を施す」「該波面変調素子から射出された照明光」について、「該波面変調素子を透過した」ものに限定するものであるから、上記訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。訂正後の請求項1の記載を引用する訂正後の請求項7?11についても同様である。
(イ) 上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、上記訂正事項1に係る訂正は、訂正後の請求項1の記載を引用する訂正後の請求項7?11についても、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ) 上記訂正事項1に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0032】には、「波面変調素子4は、例えば、液晶素子からなり、レーザ光の光束を透過させる際に、・・・これにより、波面変調素子4を透過するレーザ光の波面は、液晶素子に発生させたホログラムの位相パターンに従って変調させられるようになっている。」と記載され、段落【0033】には、「フーリエ変換光学系5は、波面変調素子4により波面が変調されたレーザ光を集光してその焦点面において、レーザ光の光束にフーリエ変換を施すようになっている。」と記載されていることから、「フーリエ変換光学系」が、「該波面変調素子を透過した」「照明光を集光しフーリエ変換を施す」ことは、本件特許明細書に記載されているものと認められる。
よって、上記訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。

イ 訂正事項2について
(ア) 上記訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2の「フーリエ変換光学系」が「集光しフーリエ変換を施す」「該波面変調素子から射出された照明光」について、「該波面変調素子を透過した」ものに限定するものであるから、上記訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。訂正後の請求項2の記載を引用する訂正後の請求項7?11についても同様である。
(イ) 上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、上記訂正事項2に係る訂正は、訂正後の請求項2の記載を引用する訂正後の請求項7?11についても、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ) 上記訂正事項2に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0032】には、「波面変調素子4は、例えば、液晶素子からなり、レーザ光の光束を透過させる際に、・・・これにより、波面変調素子4を透過するレーザ光の波面は、液晶素子に発生させたホログラムの位相パターンに従って変調させられるようになっている。」と記載され、段落【0033】には、「フーリエ変換光学系5は、波面変調素子4により波面が変調されたレーザ光を集光してその焦点面において、レーザ光の光束にフーリエ変換を施すようになっている。」と記載されていることから、「フーリエ変換光学系」が、「該波面変調素子を透過した」「照明光を集光しフーリエ変換を施す」ことは、本件特許明細書に記載されているものと認められる。
よって、上記訂正事項2は、新規事項の追加に該当しない。

ウ 訂正事項3について
(ア) 上記訂正事項3に係る訂正は、請求項3を削除するものである。
したがって、上記訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項の追加に該当しない。

エ 訂正事項4について
(ア) 上記訂正事項4に係る訂正は、「波面変調素子」が、集光補正機構として、対物光学系による集光位置を調節するにあたり、「フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与する」ものであることに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。訂正後の請求項4の記載を引用する訂正後の請求項7?11についても同様である。
(イ) 上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、上記訂正事項4に係る訂正は、訂正後の請求項4の記載を引用する訂正後の請求項7?11についても、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ) 上記訂正事項4に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0010】には、「前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記対物光学系による集光位置を調節することで、対物光学系の瞳位置と波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、フーリエ変換光学系または逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更した結果、発生する対物光学系の焦点位置のズレ分だけフーリエ変換光学系の焦点位置を戻す方向に移動させるような波面を波面変調素子によって照明光の光束に追加して付与することにより、」と記載されており、「波面変調素子」が、集光補正機構として、対物光学系による集光位置を調節するにあたり、「フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与する」ことは、本件特許明細書に記載されているものと認められる。
よって、上記訂正事項4は、新規事項の追加に該当しない。

オ 訂正事項5について
(ア) 上記訂正事項4に係る訂正は、波面変調素子が、集光補正機構として、対物光学系による集光位置を調節するにあたり、「逆フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向にフーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与する」ものであることに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。訂正後の請求項5の記載を引用する訂正後の請求項7?11についても同様である。
(イ) 上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項5に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、上記訂正事項5に係る訂正は、訂正後の請求項5の記載を引用する訂正後の請求項7?11についても、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ) 上記訂正事項5に関し、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0010】には、「前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記対物光学系による集光位置を調節することで、対物光学系の瞳位置と波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、フーリエ変換光学系または逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更した結果、発生する対物光学系の焦点位置のズレ分だけフーリエ変換光学系の焦点位置を戻す方向に移動させるような波面を波面変調素子によって照明光の光束に追加して付与することにより、」と記載されており、波面変調素子が、集光補正機構として、対物光学系による集光位置を調節するにあたり、「逆フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向にフーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与する」ことは、本件特許明細書に記載されているものと認められる。
よって、上記訂正事項5は、新規事項の追加に該当しない。

カ 訂正事項6について
(ア) 上記訂正事項6に係る訂正は、請求項6を削除するものである。
したがって、上記訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項の追加に該当しない。

キ 訂正事項7について
(ア) 上記訂正事項7に係る訂正は、上記訂正事項3及び6に係る訂正により、請求項3及び6が削除されたことに伴って、請求項7において、引用する請求項を「請求項1から請求項6」から、「請求項1、請求項2、請求項4および請求項5」とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。訂正後の請求項7の記載を引用する訂正後の請求項7?11についても同様である。
(イ) 上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項の追加に該当しない。

ク 訂正事項8について
(ア) 上記訂正事項8に係る訂正は、上記訂正事項3及び6に係る訂正により、請求項3及び6が削除されたことに伴って、請求項8において、引用する請求項を「請求項1から請求項7」から、「請求項1、請求項2、請求項4、請求項5および請求項7」とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ) 上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項の追加に該当しない。

ケ 訂正事項9について
(ア) 上記訂正事項9に係る訂正は、上記訂正事項3及び6に係る訂正により、請求項3及び6が削除されたことに伴って、請求項9において、引用する請求項を「請求項1から請求項7」から、「請求項1、請求項2、請求項4、請求項5および請求項7」とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ) 上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項の追加に該当しない。

コ 訂正事項10について
(ア) 上記訂正事項10に係る訂正は、上記訂正事項3及び6に係る訂正により、請求項3及び6が削除されたことに伴って、請求項10において、引用する請求項を「請求項1から請求項7」から、「請求項1、請求項2、請求項4、請求項5および請求項7」とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。訂正後の請求項10の記載を引用する訂正後の請求項11についても同様である。
(イ) 上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項の追加に該当しない。

サ 訂正事項11について
(ア) 上記訂正事項11に係る訂正は、上記訂正事項1ないし6に係る請求項1ないし6の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の【課題を解決するための手段】【0005】の記載との整合を図るためのものであって、上記訂正事項11に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ) 上記(ア)から明らかなように、上記訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ) 上記訂正事項11に係る訂正は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0010】、【0032】及び【0033】に記載されていた事項に基づくものであるから、上記訂正事項11は、新規事項の追加に該当しない。

シ 訂正における一群の請求項の存否
訂正前の請求項1?11について、請求項7?11は、それぞれ直接的又は間接的に請求項1?6の記載を引用しているものであって、訂正事項1?6によって記載が訂正される請求項1?6に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1?11に対応する訂正後の請求項1?11は、一群の請求項に該当するものである。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項である、請求項1?11ごとにされたものである。

(3) むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正後の請求項1、2、4、5、7?11に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1、2、4、5、7?11に記載されたとおりの、次のものである(以下、本件特許の請求項1、2、4、5、7?11に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1」等という。)。

【請求項1】
光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子を透過した照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、
該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、
該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
前記フーリエ変換光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、
前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、
前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる照明光学装置。

【請求項2】
光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子を透過した照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、
該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、
該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
前記逆フーリエ変換光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、
前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、
前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる照明光学装置。

【請求項4】
光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、
該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、
該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
前記フーリエ変換光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、
前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、
前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置。

【請求項5】
光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、
該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、
該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
前記逆フーリエ変換光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、
前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、
前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置。

【請求項7】
前記波面変調素子に対して光学的に共役な位置に配置され、前記光源から射出された照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段を備える請求項1、請求項2、請求項4および請求項5のいずれかに記載の照明光学装置。

【請求項8】
前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系のうち前記可変機構を備える少なくとも一方が、焦点距離の異なる複数組のレンズ群を備え、
前記可変機構が、前記レンズ群を切り替える請求項1、請求項2、請求項4、請求項5および請求項7のいずれかに記載の照明光学装置。

【請求項9】
前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系のうち前記可変機構を備える少なくとも一方が、焦点距離を変更可能な液体レンズを含み、
前記可変機構が、焦点距離を変化させるように前記液体レンズを駆動する請求項1、請求項2、請求項4、請求項5および請求項7のいずれかに記載の照明光学装置。

【請求項10】
前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系のうち前記可変機構を備える少なくとも一方が、ズーム光学系により構成されている請求項1、請求項2、請求項4、請求項5および請求項7のいずれかに記載の照明光学装置。

【請求項11】
前記ズーム光学系が、相互の間隔を調節可能な正のレンズ群および負のレンズ群を備える請求項10に記載の照明光学装置。

(2) 取消理由の概要
請求項1?11に係る特許に対して、平成29年6月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

本件訂正前の特許の請求項4、6、7、10及び11に係る発明(以下、「訂正前発明1等」という。)は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明である。また、訂正前発明1?11は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし14号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許は、特許法第29条第1項ないし第2項の規定に違反してされたものである。


(引用例等一覧)
甲第1号証:特開2004-102225号公報
甲第2号証:特開2005-49363号公報
甲第3号証:特表2007-531025号公報
甲第4号証:特表2002-509287号公報
甲第5号証:英国特許出願公開第2184562号明細書
甲第6号証:Eugene Hecht, Optik, 4., uberarbeitete Auflage, Oldenbourg Verleg Munchen Wien,Munchen, Oldenbourg Wissenschaftverlag GmbH, 2005, 844ページ-845ページ(ただし、ウムラウトは省略して記載した。)
甲第7号証:Encyclopedia of Applied Physics, edited by George L. Trigg, Vol.11/12, Weinheim, WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, 2004, 474ページ
甲第8号証:特開2002-131649号公報
甲第9号証:特表2004-527255号公報
甲第10号証:特表2001-509278号公報
甲第11号証:Volodymyr Nikolenko 外5名, "SLM microscopy: scanless two-photon imaging and photostimulation with spatial light modulators", Frontiers in Neural Circuits, December 2008, Volume 2, Article 5, p.1-14
甲第12号証:Handbook of Biological Confocal Microscopy, Third Edition, edited by James B. Pawley, New York, Springer Science+Business Media LLC, 2006, p.207-220, Ernst H.K. Stelzer, Chapter 9: "The Intermediate Optical System of Laser-Scanning Confocal Microscopes"
甲第13号証:American Laboratory, "A Zoom Fluorescence Research Microscope for Macro- to Microfluorescence Imaging", November 25, 2005, p.1/3-3/3, http://www.americanlaboratory.com/913-Technical- Articles/19162-A-Zoom-Fluorescence-Research-Microscope-for-Macro-to-Micro-fluorescence-imaging/, 印刷日 2017.1.23
甲第14号証:Peter Drent, "Properties and Selection of Objective Lenses for Light Microscopy Applications", Microscopy and Analysis, November 2005, p.5-7
(以下、甲第1ないし14号証を、それぞれ「甲1」ないし「甲14」という。)

1 訂正前発明1について
訂正前発明1は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
あるいは、訂正前発明1は、甲1に記載された発明、及び、顕微鏡において、補正リングを備えた対物レンズを用いて収差等の補正を行うという周知技術(甲2、甲13及び甲14等参照。)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 訂正前発明2について
訂正前発明2は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、甲9に記載された発明、甲10に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 訂正前発明3について
訂正前発明3は、訂正前発明1と同一であるから、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 訂正前発明4について
訂正前発明4は、甲1に記載された発明である。
あるいは、訂正前発明4は、甲1に記載された発明及び周知技術(例えば、甲6ないし10等参照。)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 訂正前発明5について
訂正前発明5は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 訂正前発明6について
訂正前発明6は、訂正前発明4と同一であるから、訂正前発明6は、甲1に記載された発明である。
あるいは、訂正前発明6は、甲1に記載された発明及び周知技術(例えば、甲6ないし10等参照。)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 訂正前発明7について
訂正前発明7は、甲1に記載された発明である。あるいは、訂正前発明7は、当業者が容易に発明をすることができたものである。

8 訂正前発明8について
訂正前発明8は、甲1に記載された発明及び光学顕微鏡の分野において周知技術(甲3、甲4参照。)であるレボルバーや甲3に記載された鏡筒回転装置に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

9 訂正前発明9について
訂正前発明9は、甲1に記載された発明及び、甲5に記載された液体レンズに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

10 訂正前発明10について
訂正前発明10は、甲1に記載された発明である。あるいは、訂正前発明10は、当業者が容易に発明をすることができたものである。

11 訂正前発明11について
訂正前発明11は、甲1に記載された発明である。あるいは、訂正前発明11は、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 甲号証の記載
ア 甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、当合議体が付したものである。以下、同じ。)。
(ア) 「【請求項1】
顕微鏡光路内に適応光学装置を有するほか、
少なくとも1つが適応光学素子として形成されていて、双方ともその反射鏡面が顕微鏡光路の光軸に垂直に配置されている2つの反射素子と、
スプリッタ層が、顕微鏡光路の2本の直交アームの、または1本の折りたたまれた顕微鏡光路の2本の直交する部分の交点に存在する、偏光性ビームスプリッタであって、適応素子の第1が一方のアームに、他がもう一方のアームに属しており、各アームにおいてビームスプリッタと反射性適応素子との間にλ/4板が存在するビームスプリッタと、
検出光の方向に向けられた、評価装置および調整装置を通じて適応素子と結合している検出装置と、
を含む顕微鏡。
【請求項2】
・・・(略)・・・
【請求項6】
適応素子が、それぞれ顕微鏡光路のひとみ平面内に位置しており、ビームスプリッタと顕微鏡対物レンズ間の光路内に、適応素子の平面を顕微鏡配置のひとみ平面内へ結像するための光学系が存在していることを特徴とする先行請求項の1つに記載の顕微鏡。
【請求項7】
ひとみ平面が、走査装置の反射面と同一であって、走査移動に基づき横方向に試料全体にわたり導かれる回折抑制スポットが試料内に作り出されるように、走査光学系、顕微鏡対物レンズならびに鏡胴レンズが位置設定されていることを特徴とする請求項6に記載の顕微鏡。
【請求項8】
適応素子ミラーに区分調整可能な鏡面、薄膜ミラーまたは反射させる空間光変調器が配備されていることを特徴とする先行請求項の1つに記載の顕微鏡。
【請求項9】
適応素子の少なくとも1つに、この適応素子の口径を顕微鏡対物レンズの口径へ適合させるのに用いられるズーム光学系が属していることを特徴とする先行請求項の1つに記載の顕微鏡。
【請求項10】
適応光学装置を有するほか、
照明光路のひとみ平面内に配置された適応凹面鏡であって、それに対応してスプリッタ面内に透過領域および反射領域を有する光学的ビームスプリッタが中間像平面内に組み込まれていて、照明光がまずスプリッタ面に、次にその反射領域から凹面鏡へ向けられ、凹面鏡から透過領域にフォーカシングされ、およびこれを通って試料に到達する適応凹面鏡、および/または、
検出光路のひとみ平面内に配置された適応凹面鏡であって、それに対応してスプリッタ面内に透過領域および反射領域を有する光学的ビームスプリッタが中間像平面内に組み込まれていて、検出光がまずスプリッタ面に、次にその反射領域から凹面鏡へ向けられ、凹面鏡から透過領域にフォーカシングされ、およびこれを通って検出装置に到達する適応凹面鏡、ならびに、
照明光路内の適応素子と、および/または検出光路内の適応素子と結びつけられている評価装置および調整装置であって、検出装置の出力信号が、照明光もしくは検出光の波面を適応制御するために利用される評価装置および調整装置、
を含む顕微鏡。
【請求項11】
・・・(略)・・・
【請求項12】
点走査する装置が、試料を走査するために配備されていて、スプリッタ面の透過領域が、円形または楕円系の孔として形成されていることを特徴とする請求項10または11に記載の顕微鏡。
【請求項13】
・・・(略)・・・
【請求項16】
適応素子が、光軸方向での移動装置と結合しており、移動装置も同様に評価装置および調整装置と結合していて、その場合適応素子の移動によるだけでなく、凹面鏡面の焦点距離変更によっても照明光の光線幅に影響が現われることを特徴とする請求項11から15の1つに記載の顕微鏡。」

(イ) 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、照明光路および/または検出光路を光学的構成グループの特性および/または試料の特性に可変的に適合させるための適応光学装置を有する顕微鏡、特にレーザ走査型顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
適応光学系を顕微鏡に利用することは、現状の技術ではすでにそれ自体知られており、たとえばPCT/WO99/06656に記述されている。もっとも、そこで開示された照明光路内および/または検出光路内での適応光学系の場合、少なくとも1つのビームスプリッタを使用して構造上の配列をする必要があり、それによって光学的損失が現われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
原理的に示されている現状の技術の添付図6中では、適応素子をミラーにより光路内へ損失なく結合させる手段も、たしかに同様に知られているが、しかし光路が反射鏡面に斜めに当たるため、かなりの収差が追加発生する。その上現状の技術では、適応光学素子と波面センサが連携する必要があり、それによって一般には別の損失が発生する。
【0004】
波面センサとしては、この関連において、たとえばシャック・ハルトマン・センサまたは干渉計のような、たとえばPCT/GB99/03194に述べられているような古典的なセンサが利用される。しかしこの種のセンサは、共焦点レーザ走査型顕微鏡で意図されているような、試料の3次元走査にはあまり適していない。これは共焦点検出とは異なり、焦点外れの光が比較的多く入射センサの方へ向かうという事実に起因している。
【0005】
この現状の技術から出発して、本発明の基礎となる課題は、上記種類の顕微鏡を、適応光学系の照明光路内および/または検出光路内への、損失のない、収差のない結合が保証されるように改良することである。本発明のもう1つの課題は、適応光学系の適正な制御を、特別な波面センサを使用せずに実現することである。」

(ウ) 「【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による場合、適応光学装置としては以下のものがある:
双方ともそれらの反射鏡面が、顕微鏡光路の光軸に垂直に向けられている2つの反射性適応素子と、そのスプリッタ層が顕微鏡光路の2つの直交するアームの交点に存在する1つの偏光性ビームスプリッタ。
但し、第1の適応素子が一方のアームに、他の適応素子がもう一方のアームに属していて、各アーム内にはビームスプリッタと適応素子との間に1枚のλ/4板が存在するものとする。ならびに検出光に向けて配置された、評価装置および調整装置を通じて適応素子と結びつけられている1つの検出装置。
この場合検出装置としては、レーザ走査型顕微鏡内に元々存在している検出装置を利用するのが好ましい。
【0007】
この配置を用いて、検出器信号を評価もしくは加工するごとに、3次元での試料読み取り時に、迅速な深さ走査を顕微鏡対物レンズまたは試料を動かすことなく達成すること、試料に起因する収差を均衡化すること、ならびに誤って利用されまたは不完全に補正された光学部品、それも特に顕微鏡対物レンズに起因する収差を補正することが可能である。
【0008】
本発明の1つの構成において、偏光性ビームスプリッタが使用され、各アームの中でビームスプリッタと適応素子との間に1枚のλ/4板が存在する。この配置において、照明光源から来る光は、一方のアームの中で、その偏光状態に依存してスプリッタ層および1枚のλ/4板を通って第1の適応素子に向かい、その反射鏡面からスプリッタへ戻し反射され、そこから顕微鏡対物レンズの方向に伝播する。第1の適応素子の方向に拡散する光に関して、直交偏光を有する光は、その終端には第2の適応素子が存在する他方のアームの方向に導かれる。光は、この素子において反射し、1枚のλ/4板を通過した後スプリッタ層へ戻され、これを通って顕微鏡対物レンズに到達する。
【0009】
試料から放射され、顕微鏡対物レンズを通過した検出光は、その偏光状態に依存して一方のアームまたは他方のアームを通り抜け、適合した反射性適応素子からスプリッタ層へ戻り反射し、そこから検出装置へと伝播する。
【0010】
検出装置は、1つの第2偏光性ビームスプリッタ、ならびに2つの光電子変換器を有する。その偏光状態に依存して、検出光はこのビームスプリッタのスプリッタ層を通って一方の光電子変換器へ移動するか、またはスプリッタ層から他方の光電子変換器へ方向転換する。変換器からの信号は、適応素子を持つビームスプリッタ配置の一定アームを通じて検出器側に送られる光に明確に組み入れることができる。
この配置の本質的な長所は、適応光学系を損失なく、収差なく顕微鏡の照明光路内および/または検出光路内へ結合させることが可能な点である。その上、以下により詳しく説明する通り、適応光学系の調整においてさまざまな有利なモードが判明する。本発明に基づく配置は、点走査レーザ走査型顕微鏡においてだけでなく、線走査レーザ走査型顕微鏡においても利用できる。
【0011】
適応素子と組み合わされるビームスプリッタと検出装置との間に、共焦点レーザ走査型顕微鏡に適合した構成、検出光をピンホールへフォーカシングするためのピンホール光学系、ならびに検出光を平行化するための光学系が配備されている。」

(エ) 「【0015】
適応素子は、好ましくは、顕微鏡光路のひとみ平面内に設置する。
有利なのは、ひとみ平面が走査装置の反射面と同一であること、および試料全体にわたる横方向の走査移動に従って導かれる回折抑制スポットが試料内に作り出されるよう、走査光学系、顕微鏡対物レンズならびに円筒レンズ間で互いの位置づけがなされていることである。すでに詳述したように、ここでは点走査のみならず線走査も対象にすることができる。
適応反射素子としては、たとえば区分調整可能な鏡面を有するミラー、薄膜ミラーまたは反射式空間光変調器が使用の対象となる。
本発明に基づく特に好ましい配置構成は、各適応素子の口径を顕微鏡対物レンズの口径に適合させるのに利用できるズーム光学系が適応素子に組み込まれていることにある。
【0016】
また、以下のものを含む別な構成も可能である:
スプリッタ面内に透過領域および反射領域を有する光学的ビームスプリッタが、中間像平面内において組み込まれている照明光路のひとみ平面内に配置された適応凹面鏡であって、但し、照明光が、まずスプリッタ面へ、次にその反射領域から凹面鏡へ向けられ、凹面鏡から透過領域へ焦点合わせされ、そこを通って試料に到達する適応凹面鏡、および/または、
スプリッタ面内に透過領域および反射領域を有する光学的ビームスプリッタが、中間像平面内に組み込まれている検出光路のひとみ平面内に配置された適応凹面鏡であって、但し、検出光が、まずスプリッタ面へ、次にその反射領域から凹面鏡へ向けられ、凹面鏡から透過領域へ焦点合わせされ、そこを通って検出装置に到達する適応凹面鏡、ならびに、
入力側で顕微鏡の検出装置と、出力側で1つのまたは両方の凹面鏡の形を変化させるための、および/または各凹面鏡とそれに対応するビームスプリッタ間の距離を変更するための調整装置と結合している評価装置。
【0017】
この配置によって、迅速に焦点合わせするため、または光学的構成グループや検査対象試料に起因する像誤差を補正するため、適応凹面鏡を照明光路内で利用することができる。この場合、スプリッタ面の透過領域は、共焦点絞りもしくは空間フィルタとしての作用はせず、少なくとも5エアリより大きい直径を有している。
【0018】
・・・(略)・・・
【0019】
さらに、有利な態様として、それぞれ対応のスプリッタ面の透過領域を通って入る照明光および/または検出光には、入射するビーム成分が当たり、当該光のビーム強度を評価するのに用いられる検出器を後置することができる。
本発明に基づく配置内に配備されているすべての適応凹面鏡について言えるが、それらを光軸の方向に移動させるために1つの装置と結合させることができる。尚、この移動装置も同様に評価装置および調整装置と結合している。その場合、適応凹面鏡の移動だけでなく、鏡面の幾何構造を然るべき制御により変更することから生ずる焦点距離の変化も焦点合わせに影響を及ぼす。このようにして、なかでも凹面鏡の口径を、使用顕微鏡対物レンズのひとみへ適合させることが可能になる。
【0020】
特に最後に挙げた態様の長所は、ほとんど損失なく、収差なく適応素子を顕微鏡光路内へ結合させることのほか、屈折素子を避けることによって理想的な色補正が達成される点にある。
適応凹面鏡としては、すでに上に挙げた反射適応素子が使用対象となる。そのほか、焦点距離を短くするため適応凹面鏡に屈折素子を付けることもできる。加えて、特に蛍光検出の場合では、照明光を抑制するため、波長フィルタを検出光路の方向へ向けさせる装置が配備できる。
さらに、適応凹面鏡の場所にそれぞれ1つずつひとみを作るのに用いるリレー光学系も光路内へ組み入れることができる。」

(オ) 「【0021】
【発明の実施の形態】
以下では本発明を実施例に基づき説明する。
図1には、本発明に基づく配置が、共焦点レーザ走査型顕微鏡の光路を基に示されており、その場合照明光源1から出る照明光2は試料3に向いている。その場合、走査光学系4、円筒レンズ5および顕微鏡対物レンズ6によって、回折抑制スポットが生成され、画像取得のため、走査装置7により試料3全体にわたり横方向に動かされる。
【0022】
試料3から放出された光は、逆方向に顕微鏡対物レンズ6、円筒レンズ5、走査光学系4を通過し、検出光路9と照明光路2との分岐に用いられるビームスプリッタ8を通って、検出装置10に向けられる。その場合、検出光路9内にはビームスプリッタ8の後ろにピンホール光学系11、ピンホール12およびコリメーション光学系13が配置されている。
その上、特に蛍光検出において、照明光2が検出装置10に到達するのを妨ぐ波長フィルタ14が配備されている。
【0023】
本発明に従えば、顕微鏡光路の一方のアーム16の光軸に垂直に反射鏡面が向いている第1の適応ミラー15が設置されている。そのほか、顕微鏡光路のもう一方のアーム18の光軸に垂直に向けられている反射鏡面を有する別の適応ミラー17がある。
【0024】
両アーム16および18が互いになす角の交点には、そのスプリッタ層が両アーム16,18内の光線方向に対して45°傾いた状態の偏光性ビームスプリッタ19が配置されている。
さらに、ビームスプリッタ19と適応ミラー15との間には、1枚のλ/4板20ならびに1つのズーム光学系21が、そしてビームスプリッタ19と適応ミラー17との間には、1枚のλ/4板22および1つのズーム光学系23が存在する。
【0025】
以上のほか、適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるレンズ24も配備されている。しかしこの課題は、構成の適合化と同時にズーム光学系21もしくは23に担わせることもでき、その場合レンズ24は不要である。
【0026】
試料3を走査する際、照明光2は、ビームスプリッタ8で偏向した後、その偏光状態に依存してビームスプリッタ19のスプリッタ層を通って適応ミラー15へ、またはスプリッタ層により偏向して、適応ミラー17へ達することも、あるいは両適応ミラー15,17に達することもある。
その場合、光は、それぞれ当たった適応ミラー15または17から、再びビームスプリッタ19へ戻り反射する。それにより、それぞれビームスプリッタ19の方向へ戻る照明光は、λ/4板20もしくは22を再度通過後、それぞれ入射光に垂直に偏光される。その結果、照明光はビームスプリッタ19のスプリッタ層を通じて再び顕微鏡光路内へ組み入れられ、試料3に向けられる。
この結合は、適応ミラー15,17、偏光性ビームスプリッタ19のみならずλ/4板20,22も含む、本発明に基づく適応装置により損失なく行われる。
【0027】
試料3から放出される光は、ビームスプリッタ19もしくは適応ミラー15,17を通って逆の順序で光路を通過する。その後、検出光はその偏光状態に依存して、ビームスプリッタ19のスプリッタ層から適応ミラー15へ偏向するか、またはビームスプリッタ19のスプリッタ層を通って適応ミラー17に、または両適応ミラー15,17に到る。この場合でも、検出光は適応ミラー15,17でそれぞれ反射し、λ/4板20もしくは22を再度通過した後、向かってくる検出光に垂直に偏光する。これは、適応ミラー15を経由して検出装置10に到達する光が、適応ミラー17から来る光に垂直に偏光していることを意味する。
【0028】
このことを前提として、検出装置10内には偏光性ビームスプリッタ26ならびに2つの光電子変換器27.1,27.2が配備されている。それにより、適応ミラー15からの検出光は、光電子変換器27.1により、また適応ミラー17からの検出光は光電子変換器27.2により検出することが可能である。すなわち、検出側では適応ミラー15と17に別々に分類される信号が、光電子変換器27.1,27.2の出力部においては隣接する。
【0029】
さらに本発明に従えば、光電子変換器27.1の出力信号は、図示されていない評価装置および調整装置を通じて、適応ミラー15と結合しており、また光電子変換器27.2の出力側も同様に、やはり図示されていない評価装置および調整装置を通じて、適応ミラー17と結合している。
このほか、ズーム装置21および23もまたそれぞれ対応の評価装置および調整装置と結合している。
【0030】
本発明に基づく配置によれば、迅速に焦点合わせするために、または光学的構成グループまたは検査すべき試料に起因する像誤差を補正するためには、適応光学系の利用が比較的少ない機器技術コストのもと高い効率で可能である。当該方法はずっと後段でより詳しく説明する。」

(カ) 「【0031】
以下では図2に基づく別の実施例を説明する。
照明光源28から出た照明光29は、ここでも走査光学系30、円筒レンズ31および顕微鏡対物レンズ32を通って試料33へ向けられる。回折抑制スポットが横方向に試料33全体にわたって走査装置34によって導かれ、それにより試料33の像情報が取得される。
試料33から放出された光は、逆方向に顕微鏡対物レンズ32および円筒レンズ31を通過し、ビームスプリッタ35により照明光路から分離され、別の検出光路36としてピンホール光学系37を通じて検出器38に向けられる。
【0032】
本発明に従えば、照明光29の光路内で、照明光源28と走査装置34との間に1枚の適応ミラー39および1枚の従来型非適応ミラー40が配備され、それらの反射鏡面が照明光路の2つあるアーム41,42にそれぞれ垂直に向けられている。このとき両アーム41,42は直角をなし、それらの交点には偏光性ビームスプリッタ43のスプリッタ面が存在する。スプリッタ面は両アーム41,42内の光線方向に対してそれぞれ45°傾斜している。
ビームスプリッタ43とミラー40との間の光路内にはさらにλ/4板44が、適応ミラー39とビームスプリッタ43との間の光路内にはλ/4板45ならびにズーム光学系46が組み入れられている。
【0033】
この顕微鏡装置を操作する際には、前記実施例に準じて、照明光29は、その偏光状態に依存してビームスプリッタ43のスプリッタ面を通ってλ/4板45、およびズーム光学系46を通じて適応ミラー39へ到り、そこから同じ道を辿ってビームスプリッタ43のスプリッタ面へ戻り反射する。スプリッタ面からは、試料33の方へ転向する。それは照明光29がλ/4板45の再通過後、入射する照明光29に対して垂直に偏光しているためである。
【0034】
逸脱偏光の場合、照明光29は、まずビームスプリッタ43のスプリッタ層からミラー40の方向へ偏向し、そこでスプリッタ層へ戻り反射し、λ/4板44を2回通過する。照明光はλ/4板44の2回通過後、入射する照明光26に対して垂直な偏光方向を持ち、その結果今度はスプリッタ層を通って試料33に到達する。試料33から放出された光は既述の経路を辿って検出器38に達するが、当検出器は図示されていない評価装置および調整装置を通じて適応ミラー39と、および/またはズーム装置46と結合している。
像取得におけるこの配置の利用方法については、以下により詳しく説明する。ズーム光学系46用の評価装置内で発生する調整信号は、顕微鏡対物レンズへ最適適合させるために光の広がりを利用することができる。」

(キ) 「【0035】
図3aは本発明に基づく配置の別な実施例についての模式図である。
この場合照明光源48から発する照明光49は、光学的ビームスプリッタのスプリッタ面50に当たる。
図3bから、スプリッタ面50は、円形開口として形成された透過領域51を有していて、これが反射領域52によって囲まれているのが分かる。透過領域51は、これに代え楕円形の開口として形成することもできる。図3aがさらに示すように、スプリッタ面50は、衝突する照明光49に対し45°傾斜している。それによって、反射領域52に衝突する照明光49のビーム成分49.1は、顕微鏡配置のひとみ内に存在する適応凹面鏡53の方向へ転向することが可能になる。
【0036】
適応凹面鏡53は、ビーム成分49.1を、配置の中間像平面内にり照明光路内の共焦点絞りとして作用する透過領域51へ、戻り方向にて焦点合わせする。この場合、さまざまな直径の透過領域を有するスプリッタ面を使用することによって、顕微鏡配置の光学的分解能に影響を与えたり、調整したりすることができる。透過領域51が、楕円形であれば、スプリッタ面50が45°傾斜していることから、凹面鏡53から来る光線は見かけ上円形形態を取る。
【0037】
透過領域51へフォーカシングされたビーム成分49.1は、透過領域51を通って進み、続いてレンズ54によって平行化される。走査光学系55、円筒レンズ56および顕微鏡対物レンズ57により、試料58の中に、、試料58の撮像に用いられる回折抑制されたスポットが生成される。その目的のため走査装置59によりスポットを横方向に試料58全体にわたり移動させる。
試料58から発し、像情報を運ぶ検出光は、戻り経路を辿って顕微鏡対物レンズ57、円筒レンズ56、走査光学系55および走査装置59を通り、検出光路61を照明光路から分離するダイクロイック・ビームスプリッタ60に到達し、別のビームスプリッタのスプリッタ面62に達する。スプリッタ面62は、その幾何構造および検出光路61への位置設定に関し、スプリッタ面50と同様に形成されている。
【0038】
従って、スプリッタ面62も同様に反射領域52(図3b参照)を有するから、検出光の主要ビーム成分61.1が適応凹面鏡63へ偏向する。凹面鏡63はビーム成分61.1を透過領域51へ戻し反射させ、焦点合わせしてこれを通過させる。その後検出光は検出器64に達する。検出器64により検出光の強度が測定され、測定値は、適応凹面鏡53および63の鏡面の幾何構造を変更させるための調整装置と結合している評価装置(図示してない)へ送られる。
ミラーの幾何構造を調整することで、最適の収差補正が得られるように、もしくは求める通りに焦点ぼけが調整されるように、一方の凹面鏡において、または両方の凹面鏡53,63において、反射した波面に対し影響を与えるものとする。
【0039】
・・・(略)・・・
【0040】
さらに、検出光路61内、適応凹面鏡63の場所に、ひとみ生成用のリレー光学系67を組み入れれば有利になることも明らかである。これは、同時にズーム光学系として形成することができ、ビーム幅の可変的調整を可能にする。その場合、スプリッタ面62は顕微鏡配置の中間像平面内にあり、検出光路61内の共焦点絞りとして作用する。
スプリッタ面62上へ落ちる光線の直径またはスプリッタ面62の透過領域51の直径を変更するが、もしくはさまざまな直径の透過領域51を有するスプリッタ面を相互交換すれば、このように顕微鏡配置の光学的分解能に影響を与えることができ、もしくは調整することができる。」

(ク) 「【0042】
以下では本発明に基づく配置の作業法を、共焦点レーザ走査型顕微鏡のさまざまな操作法ごとに記述する。この説明には、図1の実施例だけを用いることとする。その他の実施例に基づく配置は、それに準じて適用することができる。
反射顕微鏡法
この操作法では、試料3から散乱または反射した光が像生成のために使用される。
試料3が複屈折しないか、あるいは偏光に顕著に依存する反射能を持たない場合、以下のように操作することができる。
照明光の偏光は、強度の等しい光が適応ミラー15および17に当たるように配位されている。検出光路9内では、試料から反射した光は、両アーム16および18を通過する際に再び適応ミラー15および17に当たる。その場合、変換器27.1に当たる光は、励起側ばかりでなく検出側でも適応ミラー15から反射したもので、変換器27.2に達する光は、励起側ばかりでなく検出側でも適応ミラー17から反射したものである。
【0043】
その場合、共焦点配置内の検出器において、収差のない結像の場合より弱い光強度が記録されるのは、焦点ぼけ、試料、または光学素子に起因する収差が原因である。この場合受信信号は、試料内のある特別な点についてだけの評価ではなく、予備設定した試料上の走査面全体にわたる平均値として評価することもできる。適応ミラー15および17の鏡面の幾何構造を変更して、その場合の受信信号への影響を測定すれば、測定結果を基に、ミラーの幾何構造を確認し調整することができ、それにより最適の受信信号が得られると共に光学システムの収差が補正される。


(ケ) 「【図面の簡単な説明】
【図1】2つの適応ミラーを含む、本発明に基づく適応光学装置を有する共焦点レーザ走査型顕微鏡の光路
【図2】1つの適応ミラーおよび1つの非適応ミラーを含む、本発明に基づく適応光学装置を有する共焦点レーザ走査型顕微鏡の変形光路態様
【図3】1つの反射領域および1つの透過領域を持つビームスプリッタを有する本発明に基づく配置の、また別な実施例の模式図
・・・(略)・・・
【図6】現状の技術の原理図
【符合の説明】
1 照明光源
2 照明光
3 試料
4 走査光学系
5 鏡胴レンズ
6 顕微鏡対物レンズ
7 走査装置
8 ビームスプリッタ
9 検出光路
10 検出装置
11 ピンホール光学系
12 ピンホール
13 コリメーション光学系
14 波長フィルタ
15 適応ミラー
16,18 直交アーム
17 適応ミラー
19 ビームスプリッタ
20,22 λ/4板
21 ズーム光学系
23 ズーム光学系
24 レンズ
25 ひとみ平面
26 ビームスプリッタ
27.1,27.2 変換器
28 照明光源
29 照明光
30 走査光学系
31 鏡胴レンズ
32 顕微鏡対物レンズ
33 試料
34 走査装置
35 ビームスプリッタ
36 検出光路
37 ピンホール光学系
38 検出器
39 適応ミラー
40 非適応のミラー
41,42 アーム
43 ビームスプリッタ
44,45 λ/4板
46 ズーム光学系
48 照明光源
49 照明光
49.1 ビーム成分
50 スプリッタ面
51 透過領域
52 反射領域
53 凹面鏡
54 レンズ
55 走査光学系
56 円筒レンズ
57 顕微鏡対物レンズ
58 試料
59 走査装置
60 ビームスプリッタ
61 検出光路
61.1 ビーム成分
62 スプリッタ面
63 凹面鏡
64,65 検出器
66 波長フィルタ
67 リレー光学系」

(コ) 「【図1】



(サ) 「【図2】



(シ) 「【図3】



(ス) 引用例1の図1(上記(コ)参照)に示された2つの適応ミラーを含む、本発明に基づく適応光学装置を有する共焦点レーザ走査型顕微鏡の光路によれば、引用例1の段落【0021】?【0030】に記載された実施例の共焦点レーザ走査型顕微鏡において、照明光源1からの照明光2は、ビームスプリッタ8、ビームスプリッタ19、λ/4板20,22、ズーム光学系21,23、適応ミラー15,17、ズーム光学系21,23、λ/4板20,22、ビームスプリッタ19、レンズ24、走査装置7、走査光学系4、円筒レンズ5、顕微鏡対物レンズ6を順に経由していることが把握できる。
また、図1より、照明光2は、レンズ24により集光され、走査光学系4により再度集光された後、円筒レンズ5により平行光とされた後、顕微鏡対物レンズ6に入射して試料3上に集光されていることが把握できる。

(セ) 引用例1の請求項9、あるいは、段落【0015】の記載によれば、引用例1の段落【0021】?【0030】に記載された実施例の共焦点レーザ走査型顕微鏡における「ズーム光学系21」及び「ズーム光学系23」の機能は、「各適応素子の口径を顕微鏡対物レンズの口径に適合させる」ことにあることが把握できる。また、該「各適応素子」は、引用例1に実施例においては、「第1の適応ミラー15」及び「別の適応ミラー17」に対応する。
また、段落【0025】の記載によれば、「レンズ24」が不要となる時に、「ズーム光学系21もしくは23」が「構成の適合化と同時に」「担う」ことになる「この課題」とは、「レンズ24」が担っていた、「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させる」という課題であることは明らかである。

(ソ) 引用例1の図1(上記(コ)参照)によれば、「レンズ24」により、「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させ」た際の「ひとみ平面25」が、「回折抑制スポット」を「試料3全体にわたり横方向に動か」す「走査装置7」の位置にあることが把握できる(引用例1の請求項6,7の記載、あるいは段落【0015】の記載からも明らかな事項である。)。

(タ) 上記(ア)ないし(ソ)より、引用例1の段落【0021】?【0030】、段落【0042】?【0043】及び図1から、以下の共焦点レーザ走査型顕微鏡が把握できる(以下、「引用発明」という。)。

「共焦点レーザ走査型顕微鏡であって、
照明光源1から出る照明光2は試料3に向き、走査光学系4、円筒レンズ5および顕微鏡対物レンズ6によって、回折抑制スポットが生成され、画像取得のため、走査装置7により試料3全体にわたり横方向に動かされ、試料3から放出された光は、逆方向に顕微鏡対物レンズ6、円筒レンズ5、走査光学系4を通過し、検出光路9と照明光路2との分岐に用いられるビームスプリッタ8を通って、検出装置10に向けられ、検出光路9内にはビームスプリッタ8の後ろにピンホール光学系11、ピンホール12およびコリメーション光学系13が配置されるものであり、
照明光源1からの照明光2は、ビームスプリッタ8、ビームスプリッタ19、λ/4板20,22、ズーム光学系21,23、適応ミラー15,17、ズーム光学系21,23、λ/4板20,22、ビームスプリッタ19、レンズ24、走査装置7、走査光学系4、円筒レンズ5、顕微鏡対物レンズ6を順に経由するものであり、
照明光2は、レンズ24により集光され、走査光学系4により再度集光された後、円筒レンズ4により平行光とされた後、顕微鏡対物レンズ6に入射して、試料3上に集光され、
顕微鏡光路の一方のアーム16の光軸に垂直に反射鏡面が向いている第1の適応ミラー15が設置され、顕微鏡光路のもう一方のアーム18の光軸に垂直に向けられている反射鏡面を有する別の適応ミラー17があり、
両アーム16および18が互いになす角の交点には、そのスプリッタ層が両アーム16,18内の光線方向に対して45°傾いた状態の偏光性ビームスプリッタ19が配置され、
ビームスプリッタ19と適応ミラー15との間には、1枚のλ/4板20ならびに1つのズーム光学系21が、そしてビームスプリッタ19と適応ミラー17との間には、1枚のλ/4板22および1つのズーム光学系23が存在し、
ズーム光学系21,23は、第1の適応ミラー15,別の適応ミラー17の口径を顕微鏡対物レンズ6の口径へ適合させるものであり、
適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるレンズ24も配備され、ひとみ平面25は、走査装置7の位置にあり、適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題は、構成の適合化と同時にズーム光学系21もしくは23に担わせることもでき、その場合レンズ24は不要であり、
試料3を走査する際、照明光2は、ビームスプリッタ8で偏向した後、その偏光状態に依存してビームスプリッタ19のスプリッタ層を通って適応ミラー15へ、またはスプリッタ層により偏向して、適応ミラー17へ達することも、あるいは両適応ミラー15,17に達することもあり、光は、それぞれ当たった適応ミラー15または17から、再びビームスプリッタ19へ戻り反射し、それにより、それぞれビームスプリッタ19の方向へ戻る照明光は、λ/4板20もしくは22を再度通過後、それぞれ入射光に垂直に偏光され、その結果、照明光はビームスプリッタ19のスプリッタ層を通じて再び顕微鏡光路内へ組み入れられ、試料3に向けられ、
試料3から放出される光は、ビームスプリッタ19もしくは適応ミラー15,17を通って逆の順序で光路を通過し、その後、検出光はその偏光状態に依存して、ビームスプリッタ19のスプリッタ層から適応ミラー15へ偏向するか、またはビームスプリッタ19のスプリッタ層を通って適応ミラー17に、または両適応ミラー15,17に到り、検出光は適応ミラー15,17でそれぞれ反射し、λ/4板20もしくは22を再度通過した後、向かってくる検出光に垂直に偏光し、これは、適応ミラー15を経由して検出装置10に到達する光が、適応ミラー17から来る光に垂直に偏光していることを意味し、
このことを前提として、検出装置10内には偏光性ビームスプリッタ26ならびに2つの光電子変換器27.1,27.2が配備され、それにより、適応ミラー15からの検出光は、光電子変換器27.1により、また適応ミラー17からの検出光は光電子変換器27.2により検出することが可能であり、
光電子変換器27.1の出力信号は、評価装置および調整装置を通じて、適応ミラー15と結合しており、また光電子変換器27.2の出力側も同様に、評価装置および調整装置を通じて、適応ミラー17と結合し、
このほか、ズーム装置21および23もまたそれぞれ対応の評価装置および調整装置と結合しており、
顕微鏡の配置の作業法は、反射顕微鏡法の操作法では、試料3から散乱または反射した光が像生成のために使用され、
試料3が複屈折しないか、あるいは偏光に顕著に依存する反射能を持たない場合、照明光の偏光は、強度の等しい光が適応ミラー15および17に当たるように配位され、
共焦点配置内の検出器において、収差のない結像の場合より弱い光強度が記録されるのは、焦点ぼけ、試料、または光学素子に起因する収差が原因であり、適応ミラー15および17の鏡面の幾何構造を変更して、その場合の受信信号への影響を測定すれば、測定結果を基に、ミラーの幾何構造を確認し調整することができ、それにより最適の受信信号が得られると共に光学システムの収差が補正される、
共焦点レーザ走査型顕微鏡。」

イ 甲2
甲2には、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、赤外光を利用して試料の内部を観察する顕微鏡に関する。」

(イ) 「【0058】
変形例
図6は、図1に示される対物レンズ122に代えて適用可能な別の対物レンズを示している。図6に示されるように、対物レンズ140は、回転可能な補正リング142を有している。補正リング142は、図示しない機械的機構を介して、内部の光学要素と連結されている。その機械的機構は、補正リング142の回転に応じて、その光学要素を光軸に沿って移動させる。補正リング142を必要な量だけ回転させることにより、試料180に含まれるシリコンによって引き起こされる収差を適宜補正することが可能である。これにより、収差の無いより好適な画像を得ることが可能となる。」

(ウ) 「【図6】





ウ 甲13
甲13には、次の事項が記載されている。
(ア) 「Fluorescence observations ranging from low-magnification viewing of whole organisms like Zebrafish to high-magnification imaging of gene expression at the cellular level are possible (Figure 4). With features such as a two objective nosepiece, 2x objective lens, and 2x magnification changing lens, the microscope can zoom from 4x to 250x (a zoom factor of 31 times) with high image quality, regardless of the specimen medium. Moreover, the 2x objective has a correction collar that adjusts for up to 5 mm of aqueous medium above the specimen. The instrument also has working distance (WD) that are much greater than compound microscopes (for instance, 65 mm WD for the 1x/0.25-NA objective) and its field of view ranges up to 55 mm, making it easy to observe, track, or work on large or fast-moving specimens. 」
(2頁下から4行?3頁4行)

(参考訳)
「蛍光観察は、ゼブラフィッシュのような生物全体の低倍率観察から、細胞レベルでの遺伝子発現の高倍率イメージングまで、可能である(図4)。2つの対物ノーズピース、2倍対物レンズ、2倍の拡大率変更レンズの構成により、顕微鏡は、試料媒体にかかわらず、4倍から250倍(ズーム倍率31倍)まで高画質でズームできる。さらに、2倍対物レンズは、補正環を備え、試料上の5mmまでの水性媒体を調整する。装置は、複合顕微鏡(例えば、1倍/0.25のNAの対物レンズに対して65mmのWD)に対してずっと大きな動作距離(WD)も備え、その観察視野の範囲は55mmに達し、大きな、高速に動く試料上の観察、追跡、作業を容易にする。」

エ 甲14
甲14には、次の事項が記載されている。
(ア) 「Correction collars
There are several types of correction rings that allow the performance of the microscope objective lens to be offset against certain parameters, such as cover glass thickness, immersion medium refractive index, temperature correction, or correction depth penetration into tissues (refractive index). By correcting for these parameters, optimum performance can be readily achieved.」
(6頁中欄下から7行?右欄3行)

(参考訳)
「補正カラー
いくつかのタイプの補正リングがあり、これは、カバーガラスの厚さ、浸漬媒質の屈折率、温度補正、又は、組織への補正浸透深さ(屈折率)などの特定のパラメータに対して顕微鏡対物レンズの性能をオフセットさせる。これらのパラメータを補正することにより、最適な性能を容易に達成することができる。」

オ 甲9
(ア) 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
・・・(略)・・・
【0002】
本発明は、概して、光トラップすなわち光ピンセットを制御する方法及び装置に関する。より詳細には、本発明は、可視光を用いて形成された光ピンセットに関する。この光ピンセットは、生体の生物学的材料などの種々の光感知材料を操作するために、調査又は操作される材料に対してかなりの損傷又は有害な影響を与えずに使用することができる。」

(イ) 「【0018】
光ピンセットのシステム10は、光トラッピング効果を実行するために必要な力を加えることができる光ビーム12(レーザ光又は他の輝度が極めて高い光源など)を使用することによって利用される。この光トラッピング効果は、粒子を操作するために必要とされる。従来の形状の光ピンセット10の目的は、収束光学素子(対物レンズ20など)の後部開口部24の中心に1つ以上の成形した光ビームを投影することである。図1に示すように、光ビーム12の幅は「W」であり、光軸22に対する入射角はφである。光ビーム12は対物レンズ20の後部開口部24に入射し、前部開口部26から出射して、結像体積(imaging volume)32の焦点面30内の焦点28にほぼ収束する。ここで、焦点28は光トラップ33に一致する。一般に、どのような収束形光学システムも、光ピンセットのシステム10に対するベースを形成することができる。
【0019】
光ビーム12がコリメートされたレーザ光であり、その軸が光軸22に一致する場合、この光ビーム12は対物レンズ20の後部開口部24に入射し、結像体積32内の焦点である対物レンズの焦点面30の中心点Cに送られる。光ビーム12の軸が光軸22に対して角度φだけ移動される場合、ビームの軸31及び光軸22は後部開口部24の中心点Bで一致する。この変位により、対物レンズ20の角倍率に依存する量だけ視野に沿って光トラップの移動が可能にされる。2つの変数、すなわち、角度変位φ及び光ビーム12の変化する収束度を用いて、結像体積32内の選択された位置に光トラップを形成することができる。複数の光ビーム12を異なる角度φ及び異なるコリメーションの程度で後部開口部24に加えることにより、複数の光トラップ33を様々な位置に配置することができる。」

(ウ) 「【0021】
いくつかの従来の特徴を含む図2の別のシステムでは、光ピンセットシステム10は、対物レンズ20の視野にわたって光トラップ33を移動することができる。望遠鏡34はレンズL1及びL2から構成され、図1の従来技術のシステムの中で中心点Bと光学的に結合する点Aを確立する。図2のシステムでは、点Aを通過する光ビーム12は点Bも通過するため、光ピンセットシステム10を実現するための基本的な要求事項に適合している。コリメーションの程度は、望遠鏡34の移行特性(transfer property)を最適にするように、レンズL1及びL2を図2に示すように配置することによって保持される。さらに、望遠鏡34の倍率は、対物レンズ20の後部開口部24の面において光ビーム12及びその幅wの角変位を最適にするように選択することができる。前述したように、一般に、いくつかの光ビーム12を用いていくつかの関連する光トラップを形成することができる。そのような複数のビーム12は、複数の独立した入射ビーム又は従来の反射及び/又は屈折光学素子によって操作された1つのビームから作り出すことができる。
【0022】
図3に示した全体的な光学操作システムの1つの好ましい実施形態では、任意の光トラップのアレイを形成することができる。回折光学素子40は、大体において、対物レンズ20の後部開口部24と共役の面42内に配置される。明確にするために、回折された出力ビーム44は1つしか示してないが、複数のそのようなビーム44を回折光学素子40によって作ることができることを理解されたい。回折光学素子40に入射する光ビーム12は、この回折光学素子40の特性に応じたパターンの出力ビーム44に分割される。それぞれの出力ビームは、点Aから放射する。このため、出力ビーム44も、前述した下流の光学素子の結果として点Bを通過する。」

(エ) 「【0027】
光ピンセットシステム10では、静的な又は時間依存性の回折光学素子40のいずれも使用することができる。動的なすなわち時間依存性の素子については、時間的に変化する光トラップのアレイ50を作り出すことができ、これらのアレイをそのような特徴を利用するシステムの一部とすることができる。さらに、これらの動的な光学素子40を使用して、粒子及びマトリックス媒体を互いに相対的に活発に移動させることができる。例えば、回折光学素子40を、コンピュータ生成のホログラフィックパターンにより転写された変化を受ける液晶のフェイズアレイとすることができる。
【0028】
図5に示された別の実施形態では、システムは光ピンセットのトラップ50を連続的に移動できるように構成することができる。ジンバルに搭載したミラー60は、その回転中心を点Aに置いて配置される。光ビーム12はその軸が点Aを通過するようにミラー60の表面に入射し、後部開口部24に投影される。ミラー60が傾斜することにより、ミラー60に対する光ビーム12の入射角が変化され、この特徴を使用して結果として光トラップ50を移動することができる。第2の望遠鏡62がレンズL3及びL4から形成されて、点Aと共役の点A’を作る。点A’に置かれた回折光学素子40が次に、回折されたビーム64のパターンを作り出す。それぞれの回折されたビームは点Aを通り、光ピンセットアレイのシステム10内にピンセットトラップ50の1つを形成する。」

(オ) 「【図1】



(カ) 「【図2】



(キ) 「【図3】



(ク) 「【図4】



(ケ) 「【図5】



カ 甲10
(ア) 「【特許請求の範囲】
1. 顕微鏡、例えば共焦点走査顕微鏡のビーム路における光学装置であって、光源(2)と対象物(3)との間の照明ビーム路(1)にも、検知器(5)と対象物(3)との間の検知ビーム路(4)にも、それぞれ1つのホール絞り-照明ホール絞り(6)ないし検知ホール絞り(7)-が配置されている形式の光学装置において、
少なくともホール絞り(6,7)の1つと対象物(3)との間に、光学的に有効なホール絞り直径を変化させるための可変光学系(8)が設けられている、ことを特徴とする光学装置。
2. ・・・(略)・・・
7. 可変光学系(8)はビームスプリッタ(9)と対象物(3)との間に配置されている、請求項6記載の装置。
8. ・・・(略)・・・
10. 可変光学系(8)は、有利には電動式のズーム光学系である、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
11. ・・・(略)・・・
12. ズーム光学系の場合、固定焦点面において倍率を変化させるための手段、または倍率が固定の場合において焦点面を変化させるための手段が設けられている、請求項10または11記載の装置。」

(イ) 「【発明の詳細な説明】
顕微鏡のビーム路における光学装置
本発明は、顕微鏡、例えば共焦点走査顕微鏡のビーム路における光学装置に関し、即ち光源と対物レンズとの間の照明ビーム路にも、検知器と対物レンズとの間の検知ビーム路にもそれそれ1つのホール絞り-照明ホール絞りないし検知ホール絞り-が配置されている光学装置に関する。」
(4頁1-6行)

(ウ) 「図は、共焦点走査顕微鏡のビーム路における光学装置を示す。ここでは光源2と対象物3との間の照明ビーム路1にも、検知器5と対象物3との間の検知ビーム路4にもそれそれ1つのホール絞り、すなわち照明ホール絞り6ないし検知ホール絞り7が配置されている。
本発明では、ホール絞り6,7と対象物3との間に、光学的に作用するホール絞り直径を変化させるための可変光学系8が設けられている。この可変光学系8はここで具体的に選択された構成に相応して、光源2に対しても検知器5に対しても有効に作用する、すなわち、ビームスプリッタ9と対象物3との間に配置されている。具体的には可変光学系8にはスキャナ10(ここでは簡単化のために走査および偏向ミラーとして示されている)と対物レンズ構造体11が後置されている。
可変光学系8は電動式ズーム光学系であり、これはビデオカメラに使用されている。ここでは固定の焦点面で倍率が可変であり、または倍率が固定の場合は焦点面が可変である。」(7頁下から7行-8頁7行)

(エ) 「【図1】




ケ 甲8
甲8には、次の事項が記載されている。
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
・・・(略)・・・
【請求項4】 光ビームを発生するための好ましくはレーザである光源(1)と、前記光ビームを偏向するための少なくとも1つのマイクロミラー(16)とを有する光学装置であって、適応レンズ(22)がミラーの欠陥またはミラー面の変形を補正するために設けられることを特徴とする光学装置。
【請求項5】 前記適応レンズ(22)が、位相面の欠陥を補正するための能動光学素子を有することを特徴とする請求項4に記載の光学装置。
【請求項6】 前記適応レンズ(22)が、好ましくは静電アクチュエータによって変形することができるミラーを有し、前記適応レンズ(22)が、照射光ビームおよび/または検出光ビームの個別の部分に意図的に位相遅れを生じることができる素子を有することを特徴とする請求項5に記載の光学装置。
【請求項7】 光学素子が、偏向面と共役で、かつビーム経路に存在するフーリエ面に配置されることを特徴とする請求項5に記載の光学装置。」

(イ) 「【0016】図3は、概略図的に、本発明による走査型顕微鏡の第2の典型的具体例を示している。ここで、再び、前述の図1および図2にすでに述べられ、そこで記載された構成要素に対応する構成要素は、同一の参照符号によって示される。図3に示される典型的具体例では、適応レンズ22が、ピエゾミラーの形態で設けられる。ピエゾミラーは、PCまたはコンピュータ20によって制御される。これに必要な制御信号は、現在の横領域分布を検出するための装置19を形成するハルトマン・シャック(Hartmann-Shack)センサを補助として確認される。収差を補正するために、PC20がそれぞれのゼルニケ(Zernike )の多項式を計算する。」

(ウ) 「【0044】特に、適応レンズは、照射光ビームおよび/または検出光ビームの個別の部分に意図的に位相遅れを生じることができる素子を備えているとよい。このような素子は、単純にLCD(液体結晶表示)走査素子であってもよい。
【0045】素子は、特に効果的に、偏向面と共役で、かつビーム経路に存在するフーリエ面に配置してよい。
【0046】素子は、光ビームの均一または最適横領域分布に関して、能動的に制御可能および/または調整可能であってよい。そのため、現在の横領域分布を検出するための装置が設けられるとよい。適切な制御信号を発生することができる処理論理回路は、装置と相互に作用できよう。」

(エ) 「【図3】



(3) 取消理由通知に記載した取消理由についての判断
ア 本件特許発明4について
(ア) 本件特許発明4と引用発明とを対比する。
a 波面変調素子
引用発明においては、「照明光源1から出る照明光2」は、「ビームスプリッタ8で偏向した後、その偏光状態に依存して」、「ビームスプリッタ19のスプリッタ層を通って」「適応ミラー15へ」、または「スプリッタ層により偏向して、」「適応ミラー17」へ達する、あるいは「両適応ミラー15,17」に達する。
また、引用発明においては、「第1の適応ミラー15」及び「別の適応ミラー17」は、「適応ミラー15および17の鏡面の幾何構造を変更して、」「ミラーの幾何構造を確認し調整することができ、それにより最適の受信信号が得られると共に光学システムの収差が補正される」ものである。
引用発明の「照明光源1」及び「照明光2」は、本件特許発明4の「光源」及び「照明光」に相当する。
引用発明の「第1の適応ミラー15」及び「別の適応ミラー17」は、「適応ミラー15および17の鏡面の幾何構造を変更して」、「光学システムの収差」を「補正」するというその動作・機能からみて、「照明光源1から出る照明光2」の波面を変調しているということができる(引用例1の段落【0038】の記載からも確認できる事項である。)。
そうすると、引用発明の「第1の適応ミラー15」及び「別の適応ミラー17」は、本件特許発明4の「波面変調素子」に相当し、引用発明は、「第1の適応ミラー15」及び「別の適応ミラー17」を具備する点において、本件特許発明4の「光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子」を具備するということができる。

b フーリエ変換光学系、逆フーリエ変換光学系及び対物光学系
(a) 引用発明は、「ビームスプリッタ19と適応ミラー15との間に」、「ズーム光学系21」が、「ビームスプリッタ19と適応ミラー17との間に」、「ズーム光学系23」が存在し、「ズーム光学系21,23は、第1の適応ミラー15,別の適応ミラー17の口径を顕微鏡対物レンズ6の口径へ適合させるものであり」、「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるレンズ24も配備され、ひとみ平面25は、走査装置7の位置にあり、適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題は、構成の適合化と同時にズーム光学系21もしくは23に担わせることもでき、その場合レンズ24は不要であ」るものである。

(b) 引用発明においては、「照明光2は、レンズ24により集光され、走査光学系4により再度集光された後、円筒レンズ5により平行光とされた後、顕微鏡対物レンズ6に入射して、試料3上に集光され」る。

(c) 上記(a)と(b)より、引用発明の「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズームレンズ光学系21,23」は、「適応ミラー15および17の口径を顕微鏡対物レンズ6の口径へ適合させる」とともに、「適応ミラー15および17の平面を、走査装置7の位置にある顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させる」ものであり、かつ、「照明光2」を「集光」するものである。

(d) 引用発明においては、「照明光源1からの照明光2」は、「ビームスプリッタ8、ビームスプリッタ19、λ/4板20,22、ズーム光学系21,23、適応ミラー15,17、ズーム光学系21,23、λ/4板20,22、ビームスプリッタ19、レンズ24、走査装置7、走査光学系4、円筒レンズ5、顕微鏡対物レンズ6を順に経由するものであ」る。
そうすると、引用発明の「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズームレンズ光学系21,23」に入射する光は、「適応ミラー15,17」に反射された「照明光2」である。

(e) 上記(c)と(d)より、引用発明の「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズームレンズ光学系21,23」は、「適応ミラー15,17」に反射された「照明光2」を「集光」しているということができる。
そうすると、上記aより、引用発明は、「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズームレンズ光学系21,23」を具備する点において、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系」を具備するということができる。

(f) 上記(b)より、「レンズ24により集光され」た「照明光2」は、「走査光学系4」を経て、「円筒レンズ5により平行光とされ」る。
上記(e)及びaより、「レンズ24により集光され」た「照明光2」は、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系」から射出された「照明光」である。
そうすると、引用発明は、「円筒レンズ5」を具備する点において、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系から射出された照明光を平行光束にする第2光学系」を具備するということができる。

(g) 上記(b)より、引用発明においては、「照明光2」は、「円筒レンズ5により平行光とされた後、顕微鏡対物レンズ6に入射して、試料3上に集光され」る。
そうすると、引用発明の「顕微鏡対物レンズ6」は、「円筒レンズ5」から射出された「照明光2」を「試料3」に「集光させる」ものである。
引用発明の「顕微鏡対物レンズ6」は、その機能からみて、本件特許発明4の「対物光学系」に相当する。
引用発明の「試料3」は、本件特許発明4の「被写体」に相当する。
そうすると、上記(f)とaより、引用発明は、「顕微鏡対物レンズ6」を具備する点において、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系から射出された照明光を平行光束にする第2光学系」「から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系」を具備するということができる。

c 可変機構及び集光補正機構等
(a) 引用発明の「ズーム光学系21,23」は、「適応ミラー17の口径を顕微鏡対物レンズの口径へ適合させるもの」である。また、「ズーム装置21および23もまたそれぞれ対応の評価装置および調整装置と結合して」いる。
そうすると、引用発明の「ズーム光学系21,23」は、その倍率が調整されるように、焦点距離が変更されることは技術常識より明らかであるから、引用発明の「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズーム光学系21,23」は、焦点距離が変更可能な可変機構を備えているということができる。
上記b(e)より、引用発明は、「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズーム光学系21,23」が、焦点距離が変更可能な可変機構を備えている点において、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系」において、「焦点距離を変更可能な可変機構を備え」という構成を具備するということができる。

(b) 引用発明の「共焦点レーザ走査型顕微鏡」においては、「照明光源1から出る照明光2は試料3に向き、走査光学系4、円筒レンズ5および顕微鏡対物レンズ6によって、回折抑制スポットが生成され、画像取得のため、走査装置7により試料3全体にわたり横方向に動かされ」、「照明光2は、レンズ24により集光され、走査光学系4により再度集光された後、円筒レンズ5により平行光とされた後、顕微鏡対物レンズ6に入射して、試料3上に集光され」、「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるレンズ24も配備され、ひとみ平面25は、走査装置7の位置にあり」、「検出装置10内には偏光性ビームスプリッタ26ならびに2つの光電子変換器27.1,27.2が配備され、それにより、適応ミラー15からの検出光は、光電子変換器27.1により、また適応ミラー17からの検出光は光電子変換器27.2により検出することが可能であり」、「光電子変換器27.1の出力信号は、評価装置および調整装置を通じて、適応ミラー15と結合しており、また光電子変換器27.2の出力側も同様に、評価装置および調整装置を通じて、適応ミラー17と結合し」、「共焦点配置内の検出器において、収差のない結像の場合より弱い光強度が記録されるのは、焦点ぼけ、試料、または光学素子に起因する収差が原因であり、適応ミラー15および17の鏡面の幾何構造を変更して、その場合の受信信号への影響を測定すれば、測定結果を基に、ミラーの幾何構造を確認し調整することができ、それにより最適の受信信号が得られると共に光学システムの収差が補正される」ものである。
そうすると、引用発明の「共焦点レーザ走査型顕微鏡」は、「光電子変換器27.1」,「光電子変換器27.2」の「測定結果を基に」、「適応ミラー15および17の鏡面の幾何構造を変更して」、「焦点ぼけ、試料、または光学素子に起因する」「光学システムの収差」を補正するものであるから、引用発明においては、「照明光2」が「顕微鏡対物レンズに入射して、試料上に集光され」る位置を調節する機構を備えているということができる。
してみると、上記b(g)とaより、引用発明は、「顕微鏡対物レンズ」による「試料上に集光され」る位置を調節する機構を備えている点において、「前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え」という構成を具備するということができる。

(c) また、上記(b)より、該「焦点ぼけ、試料、または光学素子に起因する」「光学システムの収差」の補正は、「適応ミラー15および17の鏡面の幾何構造を変更して」行うものであるから、上記aより、引用発明は、「適応ミラー15および17」の「鏡面の幾何構造」を「変更して」、「照明光2」に波面を付与することにより、「光学システムの収差」の補正を行うものであるということができる。
そうすると、上記(b)とaより、引用発明は、「適応ミラー15および17」の「鏡面の幾何構造」を「変更して」、「照明光2」に波面を付与することにより、「光学システムの収差」の補正を行う点において、「前記波面変調素子」が、「前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構」として、「波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する」という構成を具備するということができる。

d 照明光学系
上記a?cを踏まえると、引用発明の「共焦点レーザ走査型顕微鏡」は、本件特許発明4の「照明光学装置」に相当する。

(イ) 一致点・相違点
a 一致点
前記(ア)の対比結果を踏まえると、本件特許発明4と引用発明とは、次の構成で一致する。
「光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系と、
該第1光学系から射出された照明光を平行光束にする第2光学系と、
該第2光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
前記第1光学系において、焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、
前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、
前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置。」

b 相違点
前記(ア)の対比結果を踏まえると、本件特許発明4と引用発明とは、次の点で相違する。
(相違点1-1)
本件特許発明4は、
「第1光学系」が、「フーリエ変換を施すフーリエ変換光学系」であるとともに、
「第2光学系」が、「該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施す逆フーリエ変換光学系」であるのに対して、
引用発明は、
「第1光学系」が、「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズーム光学系21,23」であり、「適応ミラー15および17の口径を顕微鏡対物レンズの口径へ適合させる」とともに、「適応ミラー15および17の平面を、走査装置7の位置にある顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させる」ものであり、かつ、「照明光2」を「集光」するものであるものの、「フーリエ変換を施すフーリエ変換光学系」であるのかどうか明らかでなく、
「第2光学系」が、「円筒レンズ5」であるものの、「該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施す逆フーリエ変換光学系」であるのかどうか明らかでない点。
(相違点1-2)
本件特許発明4は、
「可変機構」が、「前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ」焦点距離を変更可能であり、
「可変機構」が、「前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、」前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、
「前記波面変調素子」が、「前記集光補正機構として、前記第1光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記第1光学系の焦点位置を移動させるような」波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節するものであるのに対して、
引用発明は、
「可変機構」が、「前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ」焦点距離を変更可能であるかどうか明らかでなく、
「可変機構」が、「前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記第1光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、」前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備えているかどうか明らかでなく、
「適応ミラー15,17」(波面変調素子)が、「前記集光補正機構として、前記第1光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記第1光学系の焦点位置を移動させるような」波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節するものであるのかどうか明らかでない点。

(ウ) 相違点について
事案に鑑み、(相違点1-1)と(相違点1-2)をまとめて検討する。
a 引用発明は、「共焦点レーザ走査型顕微鏡」であって、「照明光源1から出る照明光2は試料3に向き、走査光学系4、円筒レンズ5および顕微鏡対物レンズ6によって、回折抑制スポットが生成され、画像取得のため、走査装置7により試料3全体にわたり横方向に動かされ」るものであるところ、照明光学系の構成としては、走査装置7により走査・偏向された照明光2が、顕微鏡対物レンズ6の入射ひとみを通過するように、かつ、顕微鏡配置のひとみ平面25の位置としている走査装置7の位置が、顕微鏡対物レンズ6の(後ろ側の)入射ひとみ平面の位置と共役関係となるように、走査光学系4及び円筒レンズ5が設定されていることは、共焦点レーザ走査型であるというその動作からみて、明らかなことである。

b そうすると、上記aより、引用発明の「共焦点レーザ走査型顕微鏡」においては、適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させる「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは
「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズーム光学系21,23」が配備され、顕微鏡配置のひとみ平面25を、走査装置7の位置とする(すなわち、共役関係とする)だけでなく、走査光学系4及び円筒レンズ5により、顕微鏡配置のひとみ平面25の位置である走査装置7の位置と顕微鏡対物レンズ6の(後ろ側の)入射ひとみ平面の位置とを共役関係として、適応ミラー15および17の平面、走査装置7の位置及び顕微鏡対物レンズ6の(後ろ側の)入射ひとみ平面の3者を共役関係とする光学的な配置を前提としていることが分かる。また、引用発明の「共焦点レーザ走査型顕微鏡」においては、照明光2は、レンズ24により集光、発散され、走査光学系4により再度集光・発散された後、円筒レンズ5により平行光とされた後、顕微鏡対物レンズ6に入射して、試料上に集光されるような光学的な配置を前提として有するものである。
そして、このような光学的な配置を前提としている引用発明において、「評価装置および調整装置を結合し」た「ズーム光学系21,23」により、「第1の適応ミラー15,別の適応ミラー17の口径を顕微鏡対物レンズの口径へ適合させる」ために、「ズーム光学系」の焦点距離が調整されても、「ズーム光学系」の前後の焦点(面)位置は変化せず、光学系顕微鏡対物レンズ6の焦点位置のズレは発生しない。
そうすると、引用発明においては、第1光学系の焦点距離の変更により、光学系顕微鏡対物レンズ6(対物光学系)の焦点位置のズレは発生しないから、焦点位置のズレを戻す方向に焦点位置を調節する手段を採用することには動機付けがない。
したがって、たとえ、焦点位置のズレを戻す方向に焦点位置を調節するような手段が、本件特許の優先日前に周知又は公知であったとしても、甲1に記載された発明において、上記の相違点に係る本件特許発明4の構成を採用することは、当業者が容易になし得たということはできない。

d してみると、本件特許発明4は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明4は、甲1に記載された発明及び甲6ないし10に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件特許発明5について
(ア) 本件特許発明5と、引用発明とを対比する。
a 波面変調素子
上記ア(ア)aにおける対比と同様な対比により、引用発明は、本件特許発明5の「光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子」を具備するということができる。

b フーリエ変換光学系、逆フーリエ変換光学系及び対物光学系
(a) 上記ア(ア)bにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系」を具備するということができる。

(b) 上記ア(ア)bにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系から射出された照明光を平行光束にする第2光学系」を具備するということができる。

(c) 上記ア(ア)bにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系から射出された照明光を平行光束にする第2光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系」を具備するということができる。

c 可変機構及び集光補正機構等
(a) 上記ア(ア)cにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系」において、「焦点距離を変更可能な可変機構を備え」という構成を具備するということができる。

(b) 上記ア(ア)cにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え」という構成を具備するということができる。

(c) 上記ア(ア)cにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「前記波面変調素子」が、「前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構」として、「波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する」という構成を具備するということができる。

d 照明光学系
上記a?cを踏まえると、引用発明の「共焦点レーザ走査型顕微鏡」は、本件特許発明5の「照明光学装置」に相当する。

(イ) 一致点・相違点
a 一致点
前記(ア)の対比結果を踏まえると、本件特許発明5と引用発明とは、次の構成で一致する。
「光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系と、
該第1光学系から射出された照明光を平行光束にする第2光学系と、
該第2光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、
前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、
前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置。」

b 相違点
前記(ア)の対比結果を踏まえると、本件特許発明5と引用発明とは、次の点で相違する。
(相違点2-1)
本件特許発明5は、
「第1光学系」が、「フーリエ変換を施すフーリエ変換光学系」であるとともに、
「第2光学系」が、「該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施す逆フーリエ変換光学系」であるのに対して、
引用発明は、
「第1光学系」が、「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズーム光学系21,23」であり、「適応ミラー15および17の口径を顕微鏡対物レンズの口径へ適合させる」とともに、「適応ミラー15および17の平面を、走査装置7の位置にある顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させる」ものであり、かつ、「照明光2」を「集光」するものであるものの、「フーリエ変換を施すフーリエ変換光学系」であるのかどうか明らかでなく、
「第2光学系」が、「円筒レンズ5」であるものの、「該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施す逆フーリエ変換光学系」であるのかどうか明らかでない点。
(相違点2-2)
本件特許発明5は、
「可変機構」が、「前記第2光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ」焦点距離を変更可能であり、
「可変機構」が、「前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記第2光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、」前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、
「前記波面変調素子」が、「前記集光補正機構として、前記第2光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記第1光学系の焦点位置を移動させるような」波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節するものであるのに対して、
引用発明は、
「可変機構」が、前記第1光学系において、焦点距離を変更可能であるものであり、「前記第2光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ」焦点距離を変更可能であるものではなく、
「可変機構」が、「前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記第2光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、」前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備えているかどうか明らかでなく、
「適応ミラー15,17」(波面変調素子)が、「前記集光補正機構として、前記第2光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記第1光学系の焦点位置を移動させるような」波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節するものであるのかどうか明らかでない点。

(ウ) 相違点について
事案に鑑み、(相違点2-1)と(相違点2-2)をまとめて検討する。
a 上記ア(ウ)において既に検討した理由と同様な理由により、引用発明において、仮に、第1光学系に替え、第2光学系において焦点距離を変更可能な可変機構を備えた構成とすることが設計事項であるとしても、第2光学系の焦点距離の変更により、光学系顕微鏡対物レンズ6(対物光学系)の焦点位置のズレは発生しないのであるから、引用発明において、波面変調素子が、可変機構が備える集光補正機構として、「第2光学系の焦点距離の変更により発生する対物光学系の焦点位置のズレ」を戻す方向に第1光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与することによって対物光学系による集光位置を調整する構成とすることには、動機付けがない。

b してみると、本件特許発明5は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件特許発明1について
(ア) 本件特許発明1と、引用発明とを対比する。
a 波面変調素子
上記ア(ア)aにおける対比と同様な対比により、引用発明は、本件特許発明1の「光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子」を具備するということができる。

b フーリエ変換光学系、逆フーリエ変換光学系及び対物光学系
(a) 上記ア(ア)bにおける対比と同様な対比により、引用発明の「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズームレンズ光学系21,23」は、「適応ミラー15,17」により反射された「照明光2」を「集光」しているということができる。
そうすると、引用発明は、「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズームレンズ光学系21,23」を具備する点において、「波面変調素子により反射された照明光を集光する第1光学系」を具備するということができる。
また、引用発明と、本件特許発明1とは、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系」を具備する点で共通する。

(b) 上記ア(ア)bにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系から射出された照明光を平行光束にする第2光学系」を具備するということができる。

(c) 上記ア(ア)bにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系から射出された照明光を平行光束にする第2光学系」「から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系」を具備するということができる。

c 可変機構及び集光補正機構等
(a) 上記ア(ア)cにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系」において、「焦点距離を変更可能な可変機構を備え」という構成を具備するということができる。
また、引用発明と、本件特許発明1は、「焦点距離を変更可能な可変機構を備え」という構成を具備する点で共通する。

(b) 上記ア(ア)cにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え」という構成を具備するということができる。

(c) 上記ア(ア)cにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「前記波面変調素子」が、「前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構」として、「波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する」という構成を具備するということができる。

d 照明光学装置
上記a?cを踏まえると、引用発明の「共焦点レーザ走査型顕微鏡」は、本件特許発明1の「照明光学装置」に相当する。

(イ) 一致点・相違点
a 一致点
前記(ア)の対比結果を踏まえると、本件特許発明1と引用発明とは、次の構成で一致する。
「光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系と、
該第1光学系から射出された照明光を平行光束にする第2光学系と、
該第2光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、
前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備えた照明光学装置。」

b 相違点
前記(ア)の対比結果を踏まえると、本件特許発明1と引用発明とは、次の点で相違する。
(相違点3-1)
本件特許発明1は、
「第1光学系」が、該波面変調素子「を透過した」照明光を集光し「フーリエ変換を施すフーリエ変換」であるとともに、
「第2光学系」が、「該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施す逆フーリエ変換光学系」であるのに対して、
引用発明は、
「第1光学系」が、該波面変調素子「により反射された」照明光を集光する、「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズーム光学系21,23」であり、「適応ミラー15および17の口径を顕微鏡対物レンズの口径へ適合させる」とともに、「適応ミラー15および17の平面を、走査装置7の位置にある顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させる」ものであり、かつ、「照明光2」を「集光」するものであるものの、該波面変調素子「を透過した」照明光を集光し「フーリエ変換を施すフーリエ変換光学系でなく、
「第2光学系」が、「円筒レンズ5」であるものの、「該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施す逆フーリエ変換光学系」であるのかどうか明らかでない点。
(相違点3-2)
本件特許発明1は、
「可変機構」が、「前記第1光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ」焦点距離を変更可能なものであり、
「可変機構」が、「前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記第1光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、」前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備えたものであり、
「前記集光補正機構」が、「前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる」ものであるのに対して、
引用発明は、
「可変機構」が、「前記第1光学系において、」焦点距離を変更可能なものであり、「前記第1光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ」焦点距離を変更可能なものであるかどうか明らかでなく、
「可変機構」が、「前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、」前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備えたものであるのかどうか明らかでなく、
「前記集光補正機構」が、「適応ミラー15,17」(波面変調素子)が「波面を付与することによって」前記対物光学系による集光位置を調節するものであって、「前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる」ものでない点。

(ウ) 相違点
a (相違点3-1)について検討する。
引用発明は、引用例1の【従来の技術】及び【発明が解決しようとする課題】の記載(3.(3)ア(イ)の段落【0002】?【0005】参照。)及び現状の技術を示す図6によれば、引用例1における「発明」は、適応光学系を利用した顕微鏡において、照明光路および/または検出光路内でビームスプリッタを使用する必要がある時に光学的損失が発生したり、該光学的損失がないように結合するために、ミラーからなる適応素子に対して斜め入射させた場合に収差が発生したりするため、このような光学的損失や斜め入射による収差のない結合を保証することを【発明が解決しようとする課題】とするものであり、反射型の適応光学系を利用した顕微鏡の照明光路において、反射型の適応素子に対して垂直に照明光を入射・反射させるとともに、偏光性ビームスプリッタとλ/4板を用いる構成とすることにより、ビームスプリッタを使用しながらも光学的損損失がなく、かつ斜め入射による収差がない結合を得ることをその技術的な特徴とするものである。
そうしてみると、引用発明において、反射型の波面変調素子である適応ミラー15,17に換えて、透過型の波面変調素子の構成を採用して、「第1光学系」が、該波面変調素子を「透過した」照明光を集光する構成とすることは、引用発明の特徴である、反射型の波面変調素子を使用しない構成とし、また、反射型の波面変調素子に対して垂直に照明光を入射・反射させるととともに、偏光性ビームスプリッタとλ/4板を用いて、光学的損失及び収差がない結合が得られるようにした光路構成を大きく変えることになり、さらに、引用発明におけるビームスプリッタを使用しながらも光学的損損失がなく、かつ斜め入射による収差がない結合を得るという作用・効果を奏さないものとするものであるから、阻害要因があるということができる。
してみると、引用発明において、上記(相違点3-1)に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

b そうすると、上記(相違点3-2)について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとも、甲1に記載された発明、及び、顕微鏡において、補正リングを備えた対物レンズを用いて収差等の補正を行うという周知技術(甲2、甲13及び甲14等参照。)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

エ 本件特許発明2について
(ア) 本件特許発明2と、引用発明とを対比する。
a 波面変調素子
上記ア(ア)aにおける対比と同様な対比により、引用発明は、本件特許発明2の「光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子」を具備するということができる。

b フーリエ変換光学系、逆フーリエ変換光学系及び対物光学系
(a) 上記ア(ア)bにおける対比と同様な対比により、引用発明の「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズームレンズ光学系21,23」は、「適応ミラー15,17」により反射された「照明光2」を「集光」しているということができる。
そうすると、引用発明は、「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズームレンズ光学系21,23」を具備する点において、「波面変調素子により反射された照明光を集光する第1光学系」を具備するということができる。
また、引用発明と、本件特許発明2とは、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系」を具備する点で共通する。

(b) 上記ア(ア)aにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系から射出された照明光を平行光束にする第2光学系」を具備するということができる。

(c) 上記ア(ア)aにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系から射出された照明光を平行光束にする第2光学系」「から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系」を具備するということができる。

c 可変機構及び集光補正機構等
(a) 上記ア(ア)cにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系」において、「焦点距離を変更可能な可変機構を備え」という構成を具備するということができる。
また、引用発明と、本件特許発明2は、「焦点距離を変更可能な可変機構を備え」という構成を具備する点で共通する。

(b) 上記ア(ア)cにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え」という構成を具備するということができる。

(c) 上記ア(ア)cにおける対比と同様な対比により、引用発明は、「前記波面変調素子」が、「前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構」として、「波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する」という構成を具備するということができる。

d 照明光学装置
上記a?cを踏まえると、引用発明の「共焦点レーザ走査型顕微鏡」は、本件特許発明2の「照明光学装置」に相当する。

(イ) 一致点・相違点
a 一致点
前記(ア)の対比結果を踏まえると、本件特許発明2と引用発明とは、次の構成で一致する。
「光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子から射出された照明光を集光する第1光学系と、
該第1光学系から射出された照明光を平行光束にする第2光学系と、
該第2光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、
前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備えた照明光学装置。」

b 相違点
前記(ア)の対比結果を踏まえると、本件特許発明2と引用発明とは、次の点で相違する。
(相違点4-1)
本件特許発明2は、
「第1光学系」が、該波面変調素子「を透過した」照明光を集光し「フーリエ変換を施すフーリエ変換」であるとともに、
「第2光学系」が、「該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施す逆フーリエ変換光学系」であるのに対して、
引用発明は、
「第1光学系」が、該波面変調素子「により反射された」照明光を集光する、「ズーム光学系21,23」及び「レンズ24」、あるいは「適応ミラー15および17の平面を顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させるという課題」を担う「ズーム光学系21,23」であり、「適応ミラー15および17の口径を顕微鏡対物レンズの口径へ適合させる」とともに、「適応ミラー15および17の平面を、走査装置7の位置にある顕微鏡配置のひとみ平面25内へ結像させる」ものであり、かつ、「照明光2」を「集光」するものであるものの、該波面変調素子「を透過した」照明光を集光し「フーリエ変換を施すフーリエ変換光学系」でなく、
「第2光学系」が、「円筒レンズ5」であるものの、「該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施す逆フーリエ変換光学系」であるのかどうか明らかでない点。
(相違点4-2)
本件特許発明2は、
「可変機構」が、「前記第2光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ」焦点距離を変更可能なものであり、
「可変機構」が、「前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記第2光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、」前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備えたものであり、
「前記集光補正機構」が、「前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる」ものであるのに対して、
引用発明は、
「可変機構」が、前記第1光学系において、焦点距離を変更可能であるものであり、「前記第2光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ」焦点距離を変更可能なものではなく、
「可変機構」が、「前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記第2光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、」前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備えたものであるのかどうか明らかでなく、
「前記集光補正機構」が、「適応ミラー15,17」(波面変調素子)」が「波面を付与することによって」前記対物光学系による集光位置を調節するものであって、「前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる」ものでない点。

(ウ) 相違点
a (相違点4-1)について検討する。
本件特許発明1についての上記ウ(ウ)aにおける理由と同様な理由により、引用発明において、反射型の波面変調素子である適応ミラー15,17に換えて、透過型の波面変調素子の構成を採用して、「第1光学系」が、該波面変調素子を「透過した」照明光を集光する構成とすることには、阻害要因があるということができる。
してみると、引用発明において、上記(相違点4-1)に係る本件特許発明2の構成とすることは、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

b そうすると、上記(相違点4-2)について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、甲9に記載された発明、甲10に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 本件特許発明7について
本件特許発明7の照明光学装置は、本件特許発明1、2、4あるいは5のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を含むものである。
してみると、本件特許発明1の理由(上記ウ(ウ))、本件特許発明2の理由(上記エ(ウ))、本件特許発明4の理由(上記ア(ウ))、本件特許発明5の理由(上記イ(ウ))のいずれかと同様な理由により、本件特許発明7は、甲1に記載された発明であるとはいえない。あるいは、本件特許発明7は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ 本件特許発明8について
本件特許発明8の照明光学装置は、本件特許発明1、2、4あるいは5のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を含むものである。
してみると、本件特許発明1の理由(上記ウ(ウ))、本件特許発明2の理由(上記エ(ウ))、本件特許発明4の理由(上記ア(ウ))、本件特許発明5の理由(上記イ(ウ))のいずれかと同様な理由により、本件特許発明8は、甲1に記載された発明及び光学顕微鏡の分野において周知技術(甲3、甲4参照。)であるレボルバーや甲3に記載された鏡筒回転装置に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

キ 本件特許発明9について
本件特許発明9の照明光学装置は、本件特許発明1、2、4あるいは5のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を含むものである。
してみると、本件特許発明1の理由(上記ウ(ウ))、本件特許発明2の理由(上記エ(ウ))、本件特許発明4の理由(上記ア(ウ))、本件特許発明5の理由(上記イ(ウ))のいずれかと同様な理由により、本件特許発明9は、甲1に記載された発明及び、甲5に記載された液体レンズに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ク 本件特許発明10について
本件特許発明9の照明光学装置は、本件特許発明1、2、4あるいは5のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を含むものである。
してみると、本件特許発明1の理由(上記ウ(ウ))、本件特許発明2の理由(上記エ(ウ))、本件特許発明4の理由(上記ア(ウ))、本件特許発明5の理由(上記イ(ウ))のいずれかと同様な理由により、本件特許発明10は、甲1に記載された発明であるとはいえない。あるいは、本件特許発明10は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ケ 本件特許発明11について
本件特許発明11の照明光学装置は、本件特許発明1、2、4あるいは5のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を含むものである。
してみると、本件特許発明1の理由(上記ウ(ウ))、本件特許発明2の理由(上記エ(ウ))、本件特許発明4の理由(上記ア(ウ))、本件特許発明5の理由(上記イ(ウ))のいずれかと同様な理由により、本件特許発明11は、甲1に記載された発明であるとはいえない。あるいは、本件特許発明11は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

コ 特許異議申立人の主張について
(ア) 特許異議申立人は、平成29年11月17日提出の意見書において、参考資料1?3を添付するとともに、訂正後の本件特許発明1,2について、波面変調器には反射型と透過型のものがあることは周知(例えば、参考資料1(特開平11-101942号公報)等)であり、甲1に記載された発明において、反射型の適応素子を透過型の適応素子と入れ替えることは、当業者が容易になし得たことである旨主張している(同意見書2頁下から7行?5頁13行(特に、5頁6?9行))。
しかしながら、上記ウ(ウ)で述べたとおり、引用発明において、反射型の波面変調素子に換えて、透過型の波面変調素子を用いることには、阻害要因があることから、訂正後の本件特許発明1,2についての上記の異議申立人の主張を採用することはできない。

(イ) また、特許異議申立人は、同意見書において、訂正後の本件特許発明4について、甲1の段落【0038】、【0056】の記載に基づき、「当業者は、適応凹面鏡又は適応ミラー(波面変調素子に相当)の移動によらずとも、適応凹面鏡又は適応ミラーの作用表面の調整による波面の付与によっても、集光位置の補正を行うことができることを当然に理解できます。・・・さらに、これらの記載及び甲1の全体の記載に基づけば、『焦点位置のズレを戻す方向に・・・移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する』ことも、当業者は当然に理解することができます。」、「従って、訂正後の本件特許発明4は、依然として甲1に記載された発明であるか又は記載されたに等しい発明であり、新規性及び進歩性を有するものではありません。」旨主張する(同意見書7頁14行?8頁2行)とともに、参考資料2(Amanda J. Wright 他3名,”Dynamic closed-loop system for focus tracking using a spatial light modulator and a deformable membrane mirror", OPTICS EXPRESS, 9 January 2006, Vol.14, No.1, p.222-228(223頁下から5行目から3行目))及び参考資料3(特開平11-224853号(請求項1、3、4、5、段落【0004】?【0007】、【0012】、図3))の記載に基づき、「従って、波面変調素子によって、『前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の集光位置を移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する』ことは、当業者によれば自明であり、及び/又は参考資料2、3の記載に基づけば明らかです。」、「従って、甲1記載の発明において、訂正後の本件特許発明4のように『前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の集光位置を移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する』ことは、当業者によれば、甲1記載の発明に基づいて自明であるか、又は、甲1記載の発明に周知技術(参考資料2及び3参照)を組み合わせて容易に想起し得たものです。」、「よって、訂正後の特許発明4は、依然として、甲1に記載された発明であるか又は記載されたに等しい発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものです。また、訂正後の特許発明4は、依然として、甲1及び周知技術(例えば、甲6乃至甲10、参考資料2、参考資料3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものです。」旨主張している(8頁3行?10頁20行)。
また、特許異議申立人は、同意見書において、訂正後の本件特許発明5について、「訂正後の特許発明4と訂正後の特許発明5とは、・・・実質的な差異は、可変機構がフーリエ変換光学系に備えられているか(特許発明4)か、逆フーリエ変換光学系に備えられているか(特許発明5)、という点のみです。」、「そうしますと、異議申立書でも既に述べました通り、甲1において、ズーム光学系21、23は、適応ミラー15、17の口径を対物レンズの口径に適応させるために設けられていることが記載されており、この機能及び目的を果たすためには、ズーム光学系は、適応ミラーと対物レンズとの間であれば、どこにでも設けられうる可能性があることは、この分野の当業者であれば容易に理解できるので、可変機構を逆フーリエ変換光学系に備えることは、当業者が適宜選択しうる設計事項にすぎません。」、「よって、訂正後の特許発明は、訂正後の特許発明4と同様に、依然として、甲1に記載された発明であるか又は記載されたに等しい発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものです。また、訂正後の特許発明5は、依然として甲1に基づいて、又は、甲1及び周知技術(例えば、参考資料2、3棟)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものです。」旨主張している(同意見書11頁9行?12頁5行)。
しかしながら、訂正後の本件特許発明4について、上記ア(ウ)で述べたとおり、引用発明においては、第1光学系の焦点距離の変更により、光学系顕微鏡対物レンズ6(対物光学系)の焦点位置のズレは発生しないから、焦点位置のズレを戻す方向に焦点位置を調節する手段を採用することには動機付けがない。訂正後の本件特許発明5についても同様である。
よって、訂正後の本件特許発明4,5についての上記の異議申立人の主張を採用することはできない。

4. むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許1、2、4、5、7?11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1、2、4、5、7?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項3及び6に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3及び6に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
照明光学装置
【技術分野】
【0001】
本発明は照明光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡による蛍光観察において、標本上の複数箇所に同時に光を照射し、その標本の反応を観察する照明光学装置が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
この照明光学装置は、複数箇所に同時に光を照射するために、ホログラムを利用している。すなわち、予め設定された標本上の複数の注目位置にスポットが形成されるような照明パターンを元にホログラムの位相パターンを作成し、その位相パターンを付与した波面変調素子によって光の波面を変調することにより、標本上にホログラム像を投影するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2006-72279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の照明光学装置では、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチおよび光学系の制限によって、標本上に生成されるホログラム像により光を一度に照射できる範囲とスポットの大きさが制限されてしまうという不都合がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、標本上に照射する光の範囲およびスポットサイズを変更することができる照明光学装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子を透過した照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記フーリエ変換光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる照明光学装置を提供する。
また、本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子を透過した照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記逆フーリエ変換光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる照明光学装置を提供する。
また、本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記フーリエ変換光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置を提供する。
また、本発明は、光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記逆フーリエ変換光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置を提供する。
【0006】
本発明によれば、光源からの照明光の波面が波面変調素子によって変調されることにより、所望のパターンで被写体に照明光が照射されるような波面が付与される。その後、フーリエ変換光学系によって集光されてフーリエ変換が施され、逆フーリエ変換光学系により逆フーリエ変換されることにより略平行光に変換された後に対物光学系によって、所望のパターンで被写体に集光される。
【0007】
この場合において、本発明によれば、可変機構を作動させてフーリエ変換光学系、逆フーリエ変換光学系または対物光学系の焦点距離を変更するので、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチが一定でも被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを変更することができる。そして、この場合に、対物光学系による照明光の焦点位置が変化しないので、同一位置に配される被写体において所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0008】
上記発明においては、前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系または前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備えていることで、波面変調素子で与えた波面の照明光を対物光学系の瞳位置に入射させ、照明光のケラレを防止しつつ、所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させることで、対物光学系の瞳位置と波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、フーリエ変換光学系または逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更した結果、発生する対物光学系の焦点位置のズレを、集光補正機構によって対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させて簡易に補正することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記対物光学系による集光位置を調節することで、対物光学系の瞳位置と波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、フーリエ変換光学系または逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更した結果、発生する対物光学系の焦点位置のズレ分だけフーリエ変換光学系の焦点位置を戻す方向に移動させるような波面を波面変調素子によって照明光の光束に追加して付与することにより、光学的に共役な位置関係を崩すことなく、最もコンパクトに装置を構成することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記波面変調素子に対して光学的に共役な位置に配置され、前記光源から射出された照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段を備えていてもよい。
このようにすることで、光源からの照明光を光束偏向手段により任意の方向に偏向して、所望のパターンで被写体の所望の位置に照射することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系のうち前記可変機構を備える少なくとも一方が、焦点距離の異なる複数組のレンズ群を備え、前記可変機構が、前記レンズ群を切り替えてもよい。
このようにすることで、可変機構によって、焦点距離の異なる複数組のレンズ群を切り替えることにより、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチが一定でも被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを容易に変更することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系のうち前記可変機構を備える少なくとも一方が、焦点距離を変更可能な液体レンズを含み、前記可変機構が、焦点距離を変化させるように前記液体レンズを駆動してもよい。
このようにすることで、可変機構が液体レンズを駆動して、対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更し、被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを容易に変更することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系のうち前記可変機構を備える少なくとも一方が、ズーム光学系により構成されていてもよい。
このようにすることで、フーリエ変換光学系または逆フーリエ変換光学系を構成するズーム光学系により、対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更し、被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを容易に変更することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記ズーム光学系が、相互の間隔を調節可能な正のレンズ群および負のレンズ群を備えていてもよい。
このようにすることで、ズーム光学系を構成する正のレンズ群と負のレンズ群の間隔を広げたときに、前側焦点位置を後側焦点位置をレンズ端面に近接させることができ、装置をコンパクトに構成することができる。
【0016】
また、本発明の参考例としての発明は、上記構成において、前記焦点位置に配置された視野絞りを有していてもよい。
このようにすることで、視野絞りにより、周辺光を制限し、迷光の発生を防止することができる。
【0017】
また、本発明の参考例においては、光源から発せられた照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段と、該光束偏向手段に対して光学的に共役な位置に配置され、照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系とを備え、前記フーリエ変換光学系が、その前記逆フーリエ変換光学系側の焦点位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構を備える照明光学装置を提供する。
【0018】
本参考例によれば、光源からの照明光が光束偏向手段により任意の方向に偏向され、波面変調素子によって波面が変調されることにより、所望のパターンで被写体に照明光が照射されるような波面が付与される。その後、フーリエ変換光学系によって集光されてフーリエ変換が施され、逆フーリエ変換光学系により逆フーリエ変換されることにより略平行光に変換された後に対物光学系によって、所望のパターンで被写体に集光される。
【0019】
この場合において、本参考例によれば、可変機構を作動させてフーリエ変換光学系の焦点距離を変更するので、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチが一定でも被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを変更することができる。そして、この場合に、フーリエ変換光学系の逆フーリエ変換光学系側の焦点位置が変化しないので、波面変調素子と対物光学系の瞳位置との光学的に共役な位置関係を維持して、波面変調素子で与えた波面の照明光を対物光学系の瞳位置に入射させ、被写体において所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0020】
また、本発明の参考例は、光源から発せられた照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段と、該光束偏向手段に対して光学的に共役な位置に配置され、照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系とを備え、前記逆フーリエ変換光学系が、その前記フーリエ変換光学系側の焦点位置を略一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構を備える照明光学装置を提供する。
【0021】
本参考例によれば、光源からの照明光が光束偏向手段により任意の方向に偏向され、波面変調素子によって波面が変調されることにより、所望のパターンで被写体に照明光が照射されるような波面が付与される。その後、フーリエ変換光学系によって集光されてフーリエ変換が施され、逆フーリエ変換光学系により逆フーリエ変換されることにより略平行光に変換された後に対物光学系によって、所望のパターンで被写体に集光される。
【0022】
この場合において、本参考例によれば、可変機構を作動させて逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更するので、波面変調を行う波面変調素子を構成しているデバイスのピクセルピッチが一定でも被写体に一度に照明光を照射することができる範囲およびスポットの大きさを変更することができる。そして、この場合に、逆フーリエ変換光学系のフーリエ変換光学系側の焦点位置が変化しないので、波面変調素子と対物光学系の瞳位置との光学的に共役な位置関係を維持して、波面変調素子で与えた波面の照明光を対物光学系の瞳位置に入射させ、被写体において所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0023】
また、本参考例は、光源から発せられた照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段と、該光束偏向手段に対して光学的に共役な位置に配置され、照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変化させるとともに、前記波面変調素子により前記フーリエ変換光学系によるレーザ光の焦点位置が前記逆フーリエ変換光学系の前記フーリエ変換光学系側の焦点位置に略一致するような波面を付与する可変機構とを備える照明光学装置を提供する。
【0024】
本参考例によれば、可変機構を作動させて逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更し、波面変調素子によりフーリエ変換光学系の焦点位置を逆フーリエ変換光学系のフーリエ変換光学系側の焦点位置に略一致させるような位相パターンを付与するので、フーリエ変換光学系の焦点位置における像の大きさを変化させて、被写体に一度に照明光を照射することができる範囲の大きさを変更することができる。
【0025】
また、逆フーリエ変換光学系から射出されるレーザ光の光束径を変化させて、標本に照射されるスポットの大きさを変更することができる。
そして、この場合に、波面変調素子と対物光学系の瞳位置との光学的に共役な位置関係を維持して、波面変調素子で与えた波面の照明光を対物光学系の瞳位置に入射させ、被写体において所望のパターンで照明光を照射することができる。
【0026】
また、上記参考例においては、前記光束偏向手段と前記波面変調素子との間に配置されたリレー光学系を備え、前記フーリエ変換光学系が、前記リレー光学系の一部を含んでいてもよい。
このようにすることで、リレー光学系によって、光束径を増大させずに像をリレーすることができ、また、フーリエ変換光学系とリレー光学系とを部分的に共有することにより、構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、標本上に照射する光の範囲およびスポットサイズを変更することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本発明の第1の実施形態に係る照明光学装置を示す全体構成図である。
【図2】 図1の照明光学装置の動作を説明する拡大図であり、(a)フーリエ変換光学系の焦点距離を長くした場合、(b)フーリエ変換光学系の焦点距離を短くした場合をそれぞれ示す図である。
【図3】 図1の照明光学装置の変形例であって、反射型の波面変調素子を使用した例を示す全体構成図である。
【図4】 図1の照明光学装置の変形例であって、複数の切替レンズを切り替えるターレットを示す(a)縦断面図および(b)正面図である。
【図5】 図1の照明光学装置の変形例であって、リレー光学系のレンズとフーリエ変換光学系のレンズを部分的に共有させた例を示す全体構成図である。
【図6】 図5の逆フーリエ変換光学系として採用した液体レンズの動作を説明する図であり、(a)焦点距離が長い場合、(b)焦点位置を変化させずに焦点距離を短くした場合、(c)焦点位置を変化させて焦点距離を短くした場合をそれぞれ示す図である。
【図7】 本発明の第2の実施形態に係る照明光学装置を示す全体構成図である。
【図8】 図7の照明光学装置におけるフーリエ変換光学系の動作を説明する(a)正のレンズ群と負のレンズ群との間隔が広がった状態、(b)間隔が狭まった状態をそれぞれ示す図である。
【図9】 図7の照明光学装置の第1の変形例を示す全体構成図である。
【図10】 図7の照明光学装置の第2の変形例を示す全体構成図である。
【図11】 図7の照明光学装置の第3の変形例におけるフーリエ変換光学系および逆フーリエ変換光学系を示す部分的な構成図である。
【図12】 図7の照明光学装置の第4の変形例におけるフーリエ変換光学系および逆フーリエ変換光学系を示す部分的な構成図である。
【図13】 図7の照明光学装置の第5の変形例におけるフーリエ変換光学系および逆フーリエ変換光学系を示す部分的な構成図である。
【図14】 図7の照明光学装置の第6の変形例におけるフーリエ変換光学系および逆フーリエ変換光学系を示す部分的な構成図である。
【図15】 図7の照明光学装置の第7の変形例におけるフーリエ変換光学系の動作を説明する(a)正のレンズ群と負のレンズ群との間隔が広がった状態、(b)間隔が狭まった状態をそれぞれ示す図である。
【図16】 図7の照明光学装置の第8の変形例におけるフーリエ変換光学系の動作を説明する(a)正のレンズ群と負のレンズ群との間隔が広がった状態、(b)間隔が狭まった状態をそれぞれ示す図である。
【図17】 図7の照明光学装置の第9の変形例におけるフーリエ変換光学系の動作を説明する(a)正のレンズ群と負のレンズ群との間隔が広がった状態、(b)間隔が狭まった状態をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1の実施形態に係る照明光学装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る照明光学装置1は、図1に示されるように、光束偏向手段2と、リレー光学系3と、波面変調素子4と、フーリエ変換光学系5と、視野絞り6と、逆フーリエ変換光学系7と、対物光学系8とを備えている。また、図1には、ダイクロイックミラー9および撮像素子10が設けられ、標本(被写体)Aから戻る蛍光を撮影することができるようになっている。
【0030】
光束偏向手段2は、対向して配置された2枚のガルバノミラー(図示略)を備えている。2枚のガルバノミラーは相互にねじれの位置関係に配置された軸線回りに揺動可能に設けられ、レーザ光源11から入射されて来た略平行光束からなるレーザ光の光束の偏光方向を2次元的に変化させることができるようになっている。
【0031】
リレー光学系3は、2以上の集光レンズ3a,3bからなり、平行光束からなるレーザ光を入射させて、その光束径を増大させて平行光束として射出させるようになっている。これにより、光束偏向手段2と波面変調素子4とを光学的に共役な位置関係としている。
【0032】
波面変調素子4は、例えば、液晶素子からなり、レーザ光の光束を透過させる際に、その波面に所望の変調を施すことができるようになっている。レーザ光の波面に付与する変調は、例えば、予め標本Aの画像を取得し、取得された画像においてレーザ光を照射すべき複数の注目部位を特定することにより照射パターンを生成し、その照射パターンを基に作成したホログラムの位相パターンを液晶素子で発生させることにより行われる。これにより、波面変調素子4を透過するレーザ光の波面は、液晶素子に発生させたホログラムの位相パターンに従って変調させられるようになっている。
【0033】
フーリエ変換光学系5は、波面変調素子4により波面が変調されたレーザ光を集光してその焦点面において、レーザ光の光束にフーリエ変換を施すようになっている。
本実施形態において、フーリエ変換光学系5は、複数のレンズ5a,5bとを組み合わせて構成され、その少なくとも1つを光軸方向に移動可能にして、焦点距離を連続的に変化させる可変機構5cが構成されている。
【0034】
さらに、フーリエ変換光学系5は、可変機構5cの作動によるレンズ5a,5bの移動によって焦点距離を変化させた際に、図2に示されるように、その逆フーリエ変換光学系7側の焦点位置(前側焦点位置)を変化させることなく焦点距離を変化させるように構成されている。すなわち、フーリエ変換光学系5は、この可変機構5cによりズーム光学系として構成されている。
【0035】
視野絞り6は、レーザ光の光束の周辺光を遮断して、迷光の発生を防止するようになっている。
ダイクロイックミラー9は、レーザ光を透過して蛍光を反射する波長特性を有している。
【0036】
逆フーリエ変換光学系7は、フーリエ変換光学系5により集光されたレーザ光に逆フーリエ変換を施して略平行光束にするようになっている。
対物光学系8は、略平行光束とされたレーザ光を標本Aに照射する一方、標本Aにおいて発生した蛍光を集光するようになっている。
【0037】
フーリエ変換光学系5の前側焦点位置と、逆フーリエ変換光学系7のフーリエ変換光学系5側の焦点位置(後側焦点位置)とは常に一致しているので、これらの光学系5,7によってリレー光学系が構成され、対物光学系8の瞳位置は、波面変調素子4と光学的に共役な位置関係に配されている。
撮像素子10は、対物光学系8により集光され、ダイクロイックミラー9において反射された蛍光を撮影するようになっている。
【0038】
このように構成された本実施形態に係る照明光学装置1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る照明光学装置1を用いて、レーザ光を標本Aに照射するには、予め設定された照射パターンに基づいて、光束偏向手段2による光束の偏向方向を調節し、波面変調素子4に所望の位相パターンを発生させ、かつ、フーリエ変換光学系5の可変機構5cの作動によりフーリエ変換光学系5の焦点距離を変化させる。
【0039】
光束偏向手段2により光束の偏向方向を調節することによって、標本A上におけるレーザ光の照射位置を調節することができる。
波面変調素子4に位相パターンを発生させることにより、対物光学系8の焦点面に、設定された照射パターンでレーザ光を照射することができる。
【0040】
また、本実施形態においては、図2(a)および図2(b)に示されるように、フーリエ変換光学系5の可変機構5cを作動させることにより、フーリエ変換光学系5の焦点距離を変化させるので、フーリエ変換光学系5の前側焦点位置に構成される像の大きさを変化させることができる。さらに、可変機構5cによって、フーリエ変換光学系5の前側焦点位置と逆フーリエ変換光学系7の後側焦点位置とを一致させた状態に維持するので、逆フーリエ変換光学系7から射出されるレーザ光の光束径を変化させることができる。
【0041】
すなわち、本実施形態に係る照明光学装置1によれば、対物光学系8の焦点面における像の大きさを変化させて、一度に照射可能なレーザ光の照射範囲を変化させることができるとともに、対物光学系8に入射させるレーザ光の光束径を変化させて、標本Aに集光される最小スポットサイズを変化させることができるという利点がある。
【0042】
なお、本実施形態においては、光束偏向手段2によって、光束の偏向方向を設定した後に波面変調素子4において波面を変調することとしたが、これに代えて、光束偏向手段2と波面変調素子4とを入れ替えてもよい。
【0043】
また、波面変調素子4として、レーザ光を透過させる液晶型の波面変調素子4を例示して説明したが、これに代えて、図3に示されるように、反射型の波面変調素子4’を採用してもよい。この場合には、波面変調素子4’へのレーザ光の入射角度を波面変調素子4’の法線方向に近づけるために、図3に示されるような折り返しミラー12を設けることが好ましい。図中符号13は結像レンズである。
【0044】
また、本実施形態においては、可変機構5cとして、フーリエ変換光学系5を構成するレンズ5a,5bの少なくとも1つを光軸方向に移動させるものを例示したが、これに代えて、図4に示されるように、焦点距離が異なり、かつ、同一の前側焦点位置にレーザ光を集光させることが可能な複数の切替レンズ14a?14dをターレット15に取り付けて、必要に応じてターレット15を、その回転軸15a回りに回転させることにより切り替えることにしてもよい。
さらに、液体レンズ(図6参照。)16を採用して焦点距離を変化させ、かつ液体レンズ16を光軸方向に移動させてその前側焦点位置を一定位置に維持するようにしてもよい。
【0045】
さらに、本実施形態においては、可変機構5cとして、フーリエ変換光学系5の前側焦点位置を維持しつつ焦点距離を変化させるものを例示したが、これに代えて、図3に示されるように、逆フーリエ変換光学系7の1以上のレンズ7a,7bを光軸方向に移動させて、後側焦点位置を維持しつつ焦点距離を変化させる可変機構7cを採用してもよい。
また、その場合に、ズーム光学系に代えて、切替レンズまたは液体レンズのいずれを採用してもよい。
【0046】
逆フーリエ変換光学系7の焦点距離を変化させる場合には、図3に示されるように、ダイクロイックミラー9を逆フーリエ変換光学系7と対物光学系8との間に配置するとともに、ダイクロイックミラー9と撮像素子10との間に結像レンズ13を設けることが好ましい。このようにすることで、逆フーリエ変換光学系7の焦点距離を変化させても、撮影の倍率を変化させることなく撮影を行うことができるという利点がある。
【0047】
また、逆フーリエ変換光学系7の後側焦点位置を維持しつつ焦点距離を変化させる場合には、図5に示されるように、リレー光学系3を構成する一部のレンズ3bと、フーリエ変換光学系5を構成するレンズとを共用させてもよい。このようにすることで、レンズ数を減らして構成を簡易にすることができる。図5に示す例では、逆フーリエ変換光学系7として焦点距離を変更可能な液体レンズ16を使用している。
【0048】
また、図5に示す例では、逆フーリエ変換光学系7の焦点距離を変更可能としているので、図6に示されるように、焦点距離を変更すると、逆フーリエ変換光学系7の焦点位置が移動する。そこで、その移動分だけフーリエ変換光学系5の焦点位置を移動させるような波面を波面変調素子4’によってレーザ光束に追加して付与することにしている。このように、逆フーリエ変換光学系7と波面変調素子4’とにより可変機構17を構成することで、可動部を少なくして装置を簡素化することができるという利点がある。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態に係る照明光学装置20について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る照明光学装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
本実施形態に係る照明光学装置20は、図7に示されるように、光束偏向手段2を有しないとともに、フーリエ変換光学系21として、正のレンズ群21aと負のレンズ群21bとを、波面変調素子4’側から順に、光軸方向に配列したものを採用している。また本実施形態に係る照明光学装置20は、可変機構21cとして、正のレンズ群21aと負のレンズ群21bの光軸方向の間隔および位置を調節可能にしたものを採用している。
図中、符号22は、観察光学系を示し、観察用光源23、スキャナ24、瞳投影レンズ25、結像レンズ26、ダイクロイックミラー27、集光レンズ28および光検出器29を備えている。
【0051】
このように構成された本実施形態に係る照明光学装置20によれば、図8(a)に示される状態から、図8(b)に示されるように、フーリエ変換光学系21を構成する正のレンズ群21aと負のレンズ群21bとを近接させると、末端のレンズ面から焦点位置までの距離が伸びる。すなわち、波面変調素子4’の像の倍率を大きくするために、図8(a)に示されるように、正のレンズ群21aと負のレンズ群21bとの間隔を広げると、末端のレンズ面から焦点位置までの距離が縮むので、フーリエ変換光学系21の占める寸法が相殺されて、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0052】
図8に示される例では、負のレンズ群21bの末端のレンズ面側に結ばれる焦点位置Bを移動させないように負のレンズ群21bおよび正のレンズ群21aを光軸方向に移動させているので、対物光学系8の前方における照明光の焦点位置は略一定の位置に維持される。
このように、本実施形態に係る照明光学装置20によれば、可変機構21cによって、フーリエ変換光学系21の前側焦点位置と逆フーリエ変換光学系7の後側焦点位置とを一致させた状態に維持するので、逆フーリエ変換光学系7から射出されるレーザ光の光束径を変化させることができる。
【0053】
すなわち、本実施形態に係る照明光学装置20によれば、装置のコンパクト化を図りつつ、対物光学系8の焦点面における像の大きさを変化させて、一度に照射可能なレーザ光の照射範囲を変化させることができるとともに、対物光学系8に入射させるレーザ光の光束径を変化させて、標本Aに集光される最小スポットサイズを変化させることができるという利点がある。
【0054】
なお、本実施形態においては、照明光学装置20が光束偏向手段を有しない場合について説明したが、第1の実施形態のように、波面変調素子4よりも光源11側に配置されていてもよいし、図9に示されるように、光束偏向手段2を、リレー光学系30とともに逆フーリエ変換光学系7よりも標本A側に配置することにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、逆フーリエ変換光学系7として、固定されたレンズを採用したが、これに代えて、図10に示されるように、フーリエ変換光学系21に代えて逆フーリエ変換光学系31を可変機構31cを有するズーム光学系によって構成してもよいし、図11?図14に示されるように、フーリエ変換光学系21および逆フーリエ変換光学系31の両方ともズーム光学系によって構成してもよい。このようにすることで、逆フーリエ変換光学系31においても、対物光学系8の焦点面における像の大きさを変化させる効果を持たせることができる。
【0056】
また、本構成を採用することにより、フーリエ変換光学系21の逆フーリエ変換光学系31側の焦点位置Bを略一定に維持することで、その焦点位置Bと波面変調素子4’との光学的に共役な位置関係が崩れることによる焦点位置におけるテレセントリック性のズレを逆フーリエ変換光学系31によって補償することができる。
また、フーリエ変換光学系21および逆フーリエ変換光学系31を構成している正のレンズ群21a,31aと負のレンズ群21b,31bとの位置関係は図11?図14に示されるように、任意に選択することができる。
【0057】
また、本実施形態においては、フーリエ変換光学系21の逆フーリエ変換光学系7側の焦点位置を略一定に維持することとしたが、これに代えて、図15に示されるように、フーリエ変換光学系21を構成する正のレンズ群21aおよび負のレンズ群21bの移動に伴い、焦点位置Bを移動させて、焦点位置Bと波面変調素子4’との光学的に共役な位置関係を維持することにしてもよい。
そして、この場合には、対物光学系8の標本A側に形成される焦点位置が光軸方向に移動することとなるので、対物光学系8に、該対物光学系8を構成する1以上のレンズ(図示略)を光軸方向に移動させる補正環32を設け、該補正環32を調節することによって、対物レンズ8の標本A側の焦点位置を略一定に維持することにしてもよい。
【0058】
また、この場合に、逆フーリエ変換光学系7としては、図15に示されるように固定のレンズを採用してもよいし、図16に示されるように、ズーム光学系31を採用してもよい。
また、図17に示すように、フーリエ変換光学系21の逆フーリエ変換光学系31側の焦点位置Bを略一定に維持し、それによってズレてしまう光学的に共役な位置関係を、波面変調素子4’によって補償することにしてもよい。
【0059】
すなわち、フーリエ変換光学系21の後側焦点位置を波面変調素子4’上に維持したままで、フーリエ変換光学系21を構成する正のレンズ群21aと負のレンズ群21bとを移動させることにより、焦点距離の変化によって、逆フーリエ変換光学系7側の焦点位置が移動する。そこで、その移動分だけフーリエ変換光学系21の焦点位置Bを戻す方向に移動させるような波面を波面変調素子4’によってレーザ光束に追加して付与することにより、光学的に共役な位置関係を崩すことなく、最もコンパクトに装置を構成することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,20 照明光学装置
2 光束偏向手段
4,4’ 波面変調素子
5,21 フーリエ変換光学系
5c、7c,21c,31c 可変機構
6 視野絞り
7,31 逆フーリエ変換光学系
8 対物光学系
11 レーザ光源(光源)
14a?14d 切替レンズ(レンズ群)
15 ターレット(可変機構)
16 液体レンズ
17 可変機構
21a,31a 正のレンズ群
21b,31b 負のレンズ群
32 補正環(可変機構)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子を透過した照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、
該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、
該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
前記フーリエ変換光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、
前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、
前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる照明光学装置。
【請求項2】
光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子を透過した照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、
該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、
該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
前記逆フーリエ変換光学系および前記対物光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、
前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、
前記集光補正機構が、前記対物光学系を構成するいずれかのレンズを光軸方向に移動させる照明光学装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、
該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、
該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
前記フーリエ変換光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、
前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、
前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置。
【請求項5】
光源から発せられた照明光の波面を変調可能な波面変調素子と、
該波面変調素子から射出された照明光を集光しフーリエ変換を施すフーリエ変換光学系と、
該フーリエ変換光学系から射出された照明光に逆フーリエ変換を施して平行光束にする逆フーリエ変換光学系と、
該逆フーリエ変換光学系から射出された照明光を被写体に集光させる対物光学系と、
前記逆フーリエ変換光学系において、前記対物光学系による前記照明光の集光位置を一定位置に維持しつつ焦点距離を変更可能な可変機構とを備え、
前記可変機構が、前記対物光学系の瞳位置と、前記波面変調素子との光学的な共役関係を維持しつつ、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離を変更可能であるとともに、前記対物光学系による集光位置を調節する集光補正機構を備え、
前記波面変調素子が、前記集光補正機構として、前記逆フーリエ変換光学系の焦点距離の変更により発生する前記対物光学系の焦点位置のズレを戻す方向に前記フーリエ変換光学系の焦点位置を移動させるような波面を付与することによって前記対物光学系による集光位置を調節する照明光学装置。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記波面変調素子に対して光学的に共役な位置に配置され、前記光源から射出された照明光の偏向方向を変化させる光束偏向手段を備える請求項1、請求項2,請求項4および請求項5のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項8】
前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系のうち前記可変機構を備える少なくとも一方が、焦点距離の異なる複数組のレンズ群を備え、
前記可変機構が、前記レンズ群を切り替える請求項1、請求項2,請求項4、請求項5および請求項7のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項9】
前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系のうち前記可変機構を備える少なくとも一方が、焦点距離を変更可能な液体レンズを含み、
前記可変機構が、焦点距離を変化させるように前記液体レンズを駆動する請求項1、請求項2,請求項4、請求項5および請求項7のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項10】
前記フーリエ変換光学系および前記逆フーリエ変換光学系のうち前記可変機構を備える少なくとも一方が、ズーム光学系により構成されている請求項1、請求項2,請求項4、請求項5および請求項7のいずれかに記載の照明光学装置。
【請求項11】
前記ズーム光学系が、相互の間隔を調節可能な正のレンズ群および負のレンズ群を備える請求項10に記載の照明光学装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-02-05 
出願番号 特願2011-250689(P2011-250689)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G02B)
P 1 651・ 113- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 殿岡 雅仁  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 河原 正
清水 康司
登録日 2016-07-01 
登録番号 特許第5959180号(P5959180)
権利者 オリンパス株式会社
発明の名称 照明光学装置  
代理人 上田 邦生  
代理人 大貫 進介  
代理人 上田 邦生  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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