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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08F 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08F |
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管理番号 | 1339166 |
異議申立番号 | 異議2017-700660 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-06-30 |
確定日 | 2018-03-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6059853号発明「ポリアクリルアミド樹脂、製紙添加剤および紙」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6059853号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 特許第6059853号の請求項1?4に係る発明についての特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6059853号(請求項の数4。以下,「本件特許」という。)は,平成28年10月14日(優先権主張:平成27年10月30日)を国際出願日とする特許出願(特願2016-564348号)に係るものであって,平成28年12月16日に設定登録されたものである。 その後,本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許に対して,特許異議申立人(以下,「申立人」という。)である星光PMC株式会社により特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は,以下のとおりである。 平成29年 6月30日 特許異議申立書 9月28日 取消理由通知書 11月20日 意見書,訂正請求書 12月11日 通知書(訂正請求があった旨の通知) 平成30年 1月10日 意見書(申立人) 第2 訂正の請求について 1 訂正の内容 平成29年11月20日付けの訂正請求書による訂正(以下,「本件訂正」という。)の請求は,本件特許の明細書及び特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?4について訂正することを求めるものであり,その内容は,以下のとおりである。下線は,訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種と,下記式(5)で示される第2ユニットとを有する」と記載されているのを,「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種と,下記式(5)で示される第2ユニットとを有するポリアクリルアミド樹脂であり,前記ポリアクリルアミド樹脂において,前記第1ユニットが,0.01?30モル%であり,前記第2ユニットが,0.1?30モル%であり,前記ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量が,450万以上750万以下である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?4も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 明細書の段落【0157】,【0166】,【0173】,【0181】及び【0182】において,「実施例1」,「実施例2」と記載されているのを,それぞれ,「参考例1」,「参考例2」に訂正する。また,【0185】の「各実施例」との記載を,「各実施例,各参考例」に訂正する。 2 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1に係る訂正は,訂正前の請求項1に対して,「前記ポリアクリルアミド樹脂において,前記第1ユニットが,0.01?30モル%であり,前記第2ユニットが,0.1?30モル%であり,」との記載及び「前記ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量が,450万以上750万以下である」との記載を追加するものである。 イ この訂正は,訂正前の請求項1における「第1ユニット」及び「第2ユニット」について,それらの存在割合を,それぞれ,「0.01?30モル%」及び「0.1?30モル%」に限定するとともに,同「ポリアクリルアミド樹脂」について,その「重量平均分子量」を「450万以上750万以下」に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 ウ 本件特許の願書に添付した明細書には,以下の記載がある。 「このようなポリアクリルアミド樹脂は,例えば,第1ユニットを形成するための第1重合性化合物と,第2ユニットを形成するための第2重合性化合物と含む重合成分の重合体として得ることができる。」(【0035】) 「第1重合性化合物の含有割合は,重合成分の総モルに対して,例えば,0.01モル%以上,好ましくは,0.1モル%以上であり,例えば,30モル%以下,好ましくは,15モル%以下である。」(【0042】) 「第2重合性化合物の含有割合は,重合成分の総モルに対して,例えば,0モル%以上,好ましくは,0.1モル%以上であり,例えば,30モル%以下,好ましくは,15モル%以下である。」(【0048】) 以上の記載によれば,同明細書には,第1ユニットを形成するための第1重合性化合物の含有割合が「0.01?30モル%」であり,第2ユニットを形成するための第2重合性化合物の含有割合が「0.1?30モル%」であることが記載されているといえるが,これらの含有割合が,それぞれ,第1ユニットの存在割合及び第2ユニットの存在割合に相当するものであることは,明らかであるから,同明細書には,「前記第1ユニットが,0.01?30モル%」であり,「前記第2ユニットが,0.1?30モル%」であることが記載されているということができる。 また,同明細書には,「また,ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量は,・・・とりわけ好ましくは,450万以上であり,・・・さらに好ましくは,750万以下・・・である。」(【0134】)との記載がある。 以上によれば,上記訂正は,本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る訂正は,上記の訂正事項1による訂正に合わせて,願書に添付した明細書の記載を整合させるものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。また,この訂正は,本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (3)一群の請求項について 訂正前の請求項1?4について,請求項2?4は,請求項1を引用するものであり,上記の訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項1?4に対応する訂正後の請求項1?4は,一群の請求項である。そして,本件訂正は,その一群の請求項ごとに請求がされたものである。 また,上記の訂正事項2に係る訂正は,願書に添付した明細書を訂正するものであるが,いずれも一群の請求項である訂正前の請求項1?4に対応する訂正後の請求項1?4に関係する訂正である。そして,本件訂正は,明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われている。 3 まとめ 上記2のとおり,各訂正事項に係る訂正は,特許法120条の5第2項ただし書き1号又は3号に掲げる事項を目的とするものに該当し,同条4項に適合するとともに,同条9項において準用する同法126条4項ないし6項に適合するものであるから,結論のとおり,本件訂正を認める。 第3 本件発明 前記第2で述べたとおり,本件訂正は認められるので,本件特許の請求項1?4に係る発明は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ項番に従い「本件発明1」等という。また,本件訂正後の明細書を「本件明細書」という。)。 【請求項1】 下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種と, 下記式(5)で示される第2ユニットとを有するポリアクリルアミド樹脂であり, 前記ポリアクリルアミド樹脂において,前記第1ユニットが,0.01?30モル%であり,前記第2ユニットが,0.1?30モル%であり, 前記ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量が,450万以上750万以下である ことを特徴とする,ポリアクリルアミド樹脂。 【化1】 【化2】 【化3】 【化4】 (上記式(1)?(4)中,R1は,水素原子,メチル基,エチル基またはベンジル基を示し,R2およびR3は,それぞれ独立して,水素原子,メチル基,エチル基またはベンジル基を示し,Xは,アニオンを示す。) 【化5】 (上記式(5)中,R4は,水素原子またはメチル基を示し,R5は,水素原子,アルカリ金属イオン,または,アンモニウムイオンを示す。) 【請求項2】 上記式(3)または上記式(4)で示され,かつ,XがCl^(-)を示す第1ユニットを有する,請求項1に記載のポリアクリルアミド樹脂。 【請求項3】 請求項1に記載のポリアクリルアミド樹脂を含有することを特徴とする,製紙添加剤。 【請求項4】 請求項1に記載のポリアクリルアミド樹脂を含有することを特徴とする,紙。 第4 特許異議の申立ての概要 1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由 本件発明1?4は,下記(1)?(7)のとおりの取消理由があるから,本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許は,特許法113条2号又は4号に該当し,取り消されるべきものである。証拠方法として,下記(8)の甲第1号証?甲第3号証(以下,単に「甲1」等という。)を提出する。 (1)取消理由1-1(新規性) 本件発明1?4は,甲1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものである。 (2)取消理由1-2(新規性) 本件発明1?4は,甲2に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものである。 (3)取消理由2-1(進歩性) 本件発明1?4は,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (4)取消理由2-2(進歩性) 本件発明1?4は,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (5)取消理由2-3(進歩性) 本件発明1?4は,甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (6)取消理由2-4(進歩性) 本件発明1?4は,甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (7)取消理由3(サポート要件) 本件発明1?4については,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではない。 (8)証拠方法 ・甲1 特開2002-317393号公報 ・甲2 特開2000-8293号公報 ・甲3 特開昭64-61596号公報 2 取消理由通知書に記載した取消理由 上記1の取消理由1-1(新規性),同取消理由2-1(進歩性),同取消理由3(サポート要件)(うち,各ユニットの存在割合に関するもの)と同旨。 第5 当審の判断 以下に述べるように,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 1 取消理由通知書に記載した取消理由 (1)取消理由1-1(新規性) ア 甲1に記載された発明 甲1の記載(【0044】(合成例2)等)によれば,甲1には,以下の発明が記載されていると認められる。 「65%ジアリルジメチルアンモニウムクロライド23.2g(5.0モル%),50%アクリルアミド水溶液162.9g(61.3モル%),5%メタアリルスルホン酸ナトリウム2.4g(0.04モル%),0.5%トリアクリルホルマール5.6g(0.006モル%)を重合させて,ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドをモノマーユニットとして含有するカチオン性アクリルアミド系樹脂を形成し,更に,50%アクリルアミド水溶液81.5g(30.7モル%),イタコン酸7.3g(3モル%),5%メタアリルスルホン酸ナトリウム1.2g(0.02モル%),0.5%トリアクリルホルマール2.8g(0.003モル%),40%グリオキシル酸1.7g(0.5モル%)を反応させて得られた,アクリルアミド系樹脂。」(以下,「甲1発明」という。) イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明は,「ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドをモノマーユニットとして含有するカチオン性アクリルアミド系樹脂」である構造を有していることから,少なくとも,「ジアリルジメチルアンモニウムクロライド」から形成されるユニットと,「アクリルアミド」から形成されるユニットを有していることは,明らかである。 そして,甲1発明における「ジアリルジメチルアンモニウムクロライド」から形成されるユニットは,本件発明1における「下記式(3)?(4)で示される第1ユニット」(注:式は省略。以下同様。)において,「R2およびR3は,・・・メチル基,・・・を示し,Xはアニオンを示す。」場合に相当する。 また,甲1発明における「アクリルアミド系樹脂」は,本件発明1における「ポリアクリルアミド樹脂」に相当する。 そうすると,本件発明1と甲1発明とは,少なくとも, 「下記式(3)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種を有する,ポリアクリルアミド樹脂。」 の点で一致し,少なくとも,以下の点で相違する。 ・相違点1 本件発明1では,「下記式(5)で示される第2ユニット」を有するのに対して,甲1発明では,当該第2ユニットを有することは特定されていない点。 ・相違点2 本件発明1では,ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量が,「450万以上750万以下」であるのに対して,甲1発明では,重量平均分子量が特定されていない点。 (イ)相違点の検討 事案に鑑み,まず,相違点2について検討する。 甲1には,甲1発明に係るアクリルアミド系樹脂の重量平均分子量については,何ら記載されていない。また,甲1発明に係るアクリルアミド系樹脂であれば,必ず,重量平均分子量が「450万以上750万以下」となることが,技術常識であるともいえない。 以上によれば,相違点2は,実質的な相違点であるから,相違点1について検討するまでもなく,本件発明1は,甲1発明と同一ではない。 したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明とはいえない。 (ウ)申立人の主張について a 申立人は,甲1発明は一般的な実施方法のひとつを示しており,実施例でも特別な合成方法を用いるものではなく,本件発明1において実施例などを参酌しても特別な合成方法を採用するものではないから,一般的な合成方法によって得られるものであり,本件発明1と甲1発明とは,同一の重量平均分子量を有している蓋然性が極めて高いといえるので,実質的に違いはないと主張する。 しかしながら,申立人が主張するように,本件発明1と甲1発明とが,いずれも,特別な合成方法を用いるものではなく,一般的な合成方法によって得られるものであるとしても,そうであるからといって,本件発明1と甲1発明とが,必ず,同一の重量平均分子量を有しているとはいえない。 よって,申立人の主張は理由がない。 b 申立人は,本件明細書に記載された比較例2,4及び6や,参考文献1(特許第5618213号公報)の実施例3?9や,特開2014-196588号公報の実施例7などを考慮すれば,製紙添加材として用いられるポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量が「450万以上750万以下」という限定は,ごくありふれた一般的な範囲にすぎないと主張する。 しかしながら,申立人が主張するように,製紙添加材として用いられるポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量として,「450万以上750万以下」がごくありふれた一般的なものであるとしても,そうであるからといって,甲1発明に係るアクリルアミド系樹脂の重量平均分子量が,必ず,「450万以上750万以下」であるとはいえない。 よって,申立人の主張は理由がない。 ウ 本件発明2?4について 本件発明2?4は,本件発明1を引用するものであるが,上記イで述べたとおり,本件発明1が甲1に記載された発明であるとはいえない以上,本件発明2?4についても同様に,甲1に記載された発明であるとはいえない。 エ まとめ 以上のとおり,本件発明1?4は,いずれも,甲1に記載された発明であるとはいえない。 したがって,取消理由1-1によっては,本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 (2)取消理由2-1(進歩性) ア 本件発明1について (ア)本件発明1と甲1発明とは,少なくとも,上記(1)イ(ア)で認定したとおりの一致点で一致し,少なくとも,同相違点1及び2で相違する。 (イ)相違点1及び2の検討 本件発明1は,ポリアクリルアミド樹脂に関するものであるところ,本件明細書の記載(【0017】,【0035】,【0042】,【0048】,【0124】?【0126】,【0134】,【0135】,【0140】,参考例1,2,実施例3?11,比較例1?6)によれば,「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種と,下記式(5)で示される第2ユニットとを有する」とともに,第1ユニットの存在割合を「0.01?30モル%」とし,第2ユニットの存在割合を「0.1?30モル%」とし,重量平均分子量を「450万以上750万以下」とすることによって,紙の製造に用いた場合に,紙の内部結合強度の向上を図ることができ,かつ,濾水性の向上を図ることができるというものと解される。 一方,甲1には,このような事項については何ら記載されておらず,また,技術常識であるともいえない。 そうすると,甲1発明において,アクリルアミド系樹脂につき,「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種」に加え,「下記式(5)で示される第2ユニット」をも有するものとした上で,それら第1ユニット及び第2ユニットの存在割合を,それぞれ,「0.01?30モル%」及び「0.1?30モル%」とし,重量平均分子量を「450万以上750万以下」とすることが,当業者が容易に想到することができたとはいえない。そして,本件発明1は,上記第1ユニット及び第2ユニットの両方を有することにより,いずれか一方を有さない場合と比べて,紙の製造に用いた場合に,より紙の内部結合強度の向上を図ることができ,かつ,より濾水性の向上を図ることができるという,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである(表1?3,【0198】?【0203】)。 したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)申立人の主張について a 申立人は,本件発明1における重量平均分子量について,上限値である「750万以下」には,臨界的な数値限定の意義は認められないと主張するが,重量平均分子量の上限値についての臨界的な意義の有無にかかわらず,本件発明1が,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことは,上記(イ)のとおりである。 よって,申立人の主張は理由がない。 b 申立人は,甲1発明において,ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量を「450万以上750万以下」とすることは,新たに提出した参考資料1(特許第5618213号公報)に基づき,当業者が容易に想到することであると主張するが,上記(イ)のとおり,少なくとも,本件発明1は,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものであるから,本件発明1が,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって,申立人の主張は理由がない。 イ 本件発明2?4について 本件発明2?4は,本件発明1を引用するものであるが,上記アで述べたとおり,本件発明1が,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?4についても同様に,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ まとめ 以上のとおり,本件発明1?4は,いずれも,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,取消理由2-1によっては,本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 (3)取消理由3(サポート要件)(うち,各ユニットの存在割合に関するもの) ア 本件明細書の記載(【0006】)によれば,本件発明1の課題は,紙の強度,とりわけ,内部結合強度の向上を図ることができ,かつ,濾水性の向上を図ることができるポリアクリルアミド樹脂を提供することであると認められる。 このような課題に対して,本件明細書には,以下の記載がある。 「そして,このようにして得られるポリアクリルアミド樹脂は,上記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種と,上記式(5)で示される第2ユニットとを有しているため,紙の製造に用いた場合に,紙の強度,とりわけ,紙の内部結合強度の向上を図ることができ,かつ,濾水性の向上を図ることができる。」(【0140】) 「すなわち,(メタ)アクリルアミドに由来する構成単位は,上記した重合体において主要な構成単位であって,重合体中に均一に分布する。」(【0124】) 「そのため,上記の重合反応中または重合反応後に,重合成分である(メタ)アクリルアミド,または,その(メタ)アクリルアミドに由来する構成単位に対してグリオキシル酸および/またはその塩を反応させることにより,グリオキシル酸に由来するヒドロキシカルボン酸基が,得られるポリアクリルアミド樹脂中に均一に分布する。」(【0125】) 「これによって,多くのヒドロキシカルボン酸基が効率的にパルプに作用でき,紙の内部結合強度や濾水性が向上すると考えられる。」(【0126】) 以上の記載によれば,本件発明1の課題は,「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種と,下記式(5)で示される第2ユニットとを有する」ことによって,解決されるとされていることが理解できる。また,本件明細書には,第1ユニットを形成するための第1重合性化合物及び第2ユニットを形成するための第2重合性化合物について,具体的に説明されている(【0035】?【0049】,【0107】?【0122】)。 そして,本件明細書には,本件発明1?4(すなわち,上記第1ユニット及び第2ユニットを有することを特定するとともに,それらの存在割合及び重量平均分子量を特定したもの)を具体的に実施した実施例,参考例及び比較例が記載されており,これらの実施例,参考例及び比較例によれば,実施例において,紙の製造に用いた場合に,紙の内部結合強度の向上を図ることができ,かつ,濾水性の向上を図ることができることが示されているといえる(表1?3,【0198】?【0203】)。 そうすると,当業者であれば,上記の実施例以外の場合であっても,本件発明1の構成によれば,同実施例と同様に,紙の製造に用いた場合に,紙の内部結合強度の向上を図ることができ,かつ,濾水性の向上を図ることができることが理解できるといえる。 以上のとおり,本件明細書の記載を総合すれば,本件発明1は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって,当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。 したがって,本件発明1は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。また,本件発明2?4についても同様である。 イ 申立人は,本件発明1が,ポリアクリルアミド樹脂の組成を,(メタ)アクリルアミド,第1ユニット,第2ユニットのみに限定するものではないところ,必須成分である(メタ)アクリルアミドの含有割合を規定していないから,例えば,第1ユニットを30モル%,第2ユニットを30モル%,任意成分の第3級アミノ系モノマーを30モル%含有するような((メタ)アクリルアミドを10モル%しか含まない)場合においても,実施例と同様に,内部結合強度及び濾水性が向上し,本件発明1の課題を解決できることを当業者が認識できるとはいえないと主張する。また,本件発明2?4についても同様に主張する。 しかしながら,本件発明1は,「ポリアクリルアミド樹脂」に関するものである以上,主要な構成単位である(メタ)アクリルアミドに由来する構成単位(本件明細書【0124】)について,その存在割合を明示的に特定していないとしても,当業者が「ポリアクリルアミド樹脂」であると認識できる程度の割合で存在していることは,明らかというべきである。そして,そのような本件発明1については,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものであることは,上記アのとおりである。また,本件発明2?4についても同様である。 よって,申立人の主張は,その前提において失当であり,理由がない。 ウ まとめ 以上のとおり,本件発明1?4は,いずれも,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。 したがって,取消理由3(うち,各ユニットの存在割合に関するもの)によっては,本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 2 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由 (1)取消理由1-2(新規性) ア 甲2に記載された発明 甲2の記載(請求項1,4)によれば,甲2には,以下の発明が記載されていると認められる。 「ポリマー分子内に下記の一般式(A)及び一般式(B)で示される繰返し単位を有する,製紙用添加剤に用いられるポリアクリルアミド系樹脂であって, ポリアクリルアミド系樹脂が,少なくとも(1)2-アクリルアミドグリコリック酸類,(2)アクリルアミド類,および(3)カチオン性ビニルモノマーを反応させて得たものである,製紙用添加剤に用いられるポリアクリルアミド系樹脂。 【化1】 (ただし,R_(1),R_(3)はそれぞれHまたはCH_(3)を表わし,R_(2)はH,Na,KまたはNH_(4)を表わす。)」(以下,「甲2発明」という。) イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明に係るポリアクリルアミド系樹脂は,「少なくとも(1)2-アクリルアミドグリコリック酸類,(2)アクリルアミド類,および(3)カチオン性ビニルモノマーを反応させて得たもの」であることから,少なくとも,「(1)2-アクリルアミドグリコリック酸類」から形成されるユニット(一般式(A))と,「(2)アクリルアミド類」から形成されるユニット(一般式(B))と,「(3)カチオン性ビニルモノマー」から形成されるユニットを有していることは,明らかである。 そして,甲2発明における「(1)2-アクリルアミドグリコリック酸類」から形成されるユニット(一般式(A))は,本件発明1における「下記式(5)で示される第2ユニット」に相当する。 そうすると,本件発明1と甲2発明とは,少なくとも, 「下記式(5)で示される第2ユニットを有する,ポリアクリルアミド樹脂。」 の点で一致し,少なくとも,以下の点で相違する。 ・相違点3 本件発明1では,「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種」を有するのに対して,甲2発明では,「(3)カチオン性ビニルモノマー」から形成されるユニットを有する点。 ・相違点4 本件発明1では,ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量が,「450万以上750万以下」であるのに対して,甲2発明では,重量平均分子量が特定されていない点。 (イ)相違点3の検討 甲2には,甲2発明で使用できるカチオン性ビニルモノマーとして,各種のものが記載されており(【0015】,【0016】),それらの中には,申立人が主張するように,確かに,本件発明1における「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種」に相当するものも含まれている。 しかしながら,これらは,単なる例示として,多数のものが列挙されているにすぎない。甲2に上記のような記載があるからといって,甲2に,特定の組み合わせとして,「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種と,下記式(5)で示される第2ユニット」とを有するポリアクリルアミド系樹脂が記載されているということはできない。実際,甲2には,実施例として,このような特定の組み合わせのものは記載されていない。 以上によれば,相違点3は,実質的な相違点であるから,本件発明1は,甲2発明と同一ではない。 (ウ)相違点4の検討 甲2には,甲2発明に係るポリアクリルアミド系樹脂の重量平均分子量については,何ら記載されていない。また,甲2発明に係るポリアクリルアミド系樹脂であれば,必ず,重量平均分子量が「450万以上750万以下」となることが,技術常識であるともいえない。 以上によれば,相違点4は,実質的な相違点であるから,本件発明1は,甲2発明と同一ではない。 (エ)小括 以上のとおり,本件発明1は,甲2に記載された発明とはいえない。 ウ 本件発明2?4について 本件発明2?4は,本件発明1を引用するものであるが,上記イで述べたとおり,本件発明1が甲2に記載された発明であるとはいえない以上,本件発明2?4についても同様に,甲2に記載された発明であるとはいえない。 エ まとめ 以上のとおり,本件発明1?4は,いずれも,甲2に記載された発明であるとはいえないから,申立人が主張する取消理由1-2は理由がない。 したがって,取消理由1-2によっては,本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 (2)取消理由2-2(進歩性) ア 本件発明1について (ア)本件発明1と甲2発明とは,少なくとも,上記(1)イ(ア)で認定したとおりの一致点で一致し,少なくとも,同相違点3及び4で相違する。 (イ)相違点3及び4の検討 本件発明1は,上記1(2)ア(イ)で述べたとおりのものであるところ,甲2には,そのような事項については何ら記載されておらず,また,技術常識であるともいえない。 甲2には,上記(1)イ(イ)で述べたとおり,甲2発明で使用できるカチオン性ビニルモノマーとして,各種のものが記載されており,それらの中には,本件発明1における「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種」に相当するものも含まれているものの,このような単なる例示として多数列挙されているものの中から,あえて本件発明1における「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種」に相当するものを用いる動機付けがあるとはいえない。 そうすると,甲2発明において,ポリアクリルアミド系樹脂につき,「下記式(5)で示される第2ユニット」に加え,「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種」をも有するものとした上で,それら第1ユニット及び第2ユニットの存在割合を,それぞれ,「0.01?30モル%」及び「0.1?30モル%」とし,重量平均分子量を「450万以上750万以下」とすることが,当業者が容易に想到することができたとはいえない。そして,本件発明1は,上記第1ユニット及び第2ユニットの両方を有することにより,いずれか一方を有さない場合と比べて,紙の製造に用いた場合に,より紙の内部結合強度の向上を図ることができ,かつ,より濾水性の向上を図ることができるという,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである(表1?3,【0198】?【0203】)。 したがって,本件発明1は,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2?4について 本件発明2?4は,本件発明1を引用するものであるが,上記アで述べたとおり,本件発明1が,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?4についても同様に,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ まとめ 以上のとおり,本件発明1?4は,いずれも,甲2に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,申立人が主張する取消理由2-2は理由がない。 したがって,取消理由2-2によっては,本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 (3)取消理由2-3(進歩性) ア 本件発明1について (ア)本件発明1と甲2発明とは,少なくとも,上記(1)イ(ア)で認定したとおりの一致点で一致し,少なくとも,同相違点3及び4で相違する。 (イ)相違点3及び4の検討 甲3には,紙力増強剤として,(a)(メタ)アクリルアミド,(b)α,β-不飽和モノカルボン酸,α,β-不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩類からなる群から選ばれた1又は2以上の化合物,(c)一般式(1)で表されるジアリルアミン誘導体モノマーを共重合して得られる共重合体を有効成分とするものが記載されている(特許請求の範囲)。 (式中,R_(1),R_(2)は水素又はメチル基を,R_(3),R_(4)はそれぞれ単独に水素又は炭素数1?6のアルキル基を,X^(-)は有機酸若しくは無機酸の陰イオンを表す。) また,甲3には,(メタ)アクリルアミド系の両性共重合体において,ジアリルアミン誘導体モノマーを共重合体の必須成分としたものを用いることにより,より優れた紙力増強効果を発現することが記載されている(2頁右上欄4?8行)。 ここで,甲3における「(c)一般式(1)で表されるジアリルアミン誘導体モノマー」から形成されるユニットは,本件発明1における「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種」に相当するものであり,また,甲2発明における「カチオン性ビニルモノマー」から形成されるユニットに包含されるものである。 そうすると,甲2発明において,カチオン性ビニルモノマーとして,甲3に記載される(c)一般式(1)で表されるジアリルアミン誘導体モノマーを用いることが可能であることは,当業者が理解し得ることである。 しかしながら,本件発明1は,上記1(2)ア(イ)で述べたとおり,所定の第1ユニット及び第2ユニットの両方を有することにより,紙の製造に用いた場合に,紙の内部結合強度の向上を図ることができ,かつ,濾水性の向上を図ることができるという効果を奏するものであるところ,本件明細書に示される本件発明1の効果は,上記第1ユニットのみを有する場合の効果と上記第2ユニットのみを有する場合の効果から予測される効果(これら両方を有する場合の効果)を超えるものであり,当業者が予測することができない格別顕著なもの(相乗効果)といえる(表1?3,【0198】?【0203】)。 以上によれば,甲2発明において,ポリアクリルアミド系樹脂につき,「下記式(5)で示される第2ユニット」に加え,「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種」をも有するものとした上で,それら第1ユニット及び第2ユニットの存在割合を,それぞれ,「0.01?30モル%」及び「0.1?30モル%」とし,重量平均分子量を「450万以上750万以下」とすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。 したがって,本件発明1は,甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2?4について 本件発明2?4は,本件発明1を引用するものであるが,上記アで述べたとおり,本件発明1が,甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?4についても同様に,甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ まとめ 以上のとおり,本件発明1?4は,いずれも,甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,申立人が主張する取消理由2-3は理由がない。 したがって,取消理由2-3によっては,本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 (4)取消理由2-4(進歩性) ア 甲3に記載された発明 甲3の記載(特許請求の範囲)によれば,甲3には,以下の発明が記載されていると認められる。 「(a)(メタ)アクリルアミド 98?60%,(b)α,β-不飽和モノカルボン酸,α,β-不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩類からなる群から選ばれた1又は2以上の化合物 1?20%,(c)一般式(1)で表されるジアリルアミン誘導体モノマー1?20%を共重合して得られる,紙力増強剤の有効成分として用いられる共重合体。 (式中,R_(1),R_(2)は水素又はメチル基を,R_(3),R_(4)はそれぞれ単独に水素又は炭素数1?6のアルキル基を,X^(-)は有機酸若しくは無機酸の陰イオンを表す。)」(以下,甲3発明という。) イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲3発明とを対比する。 甲3発明における「共重合体」は,「(a)(メタ)アクリルアミド 98?60%」を含むものを共重合して得られるものであるから,本件発明1における「ポリアクリルアミド樹脂」に相当する。 甲3発明に係る共重合体は,「(a)(メタ)アクリルアミド」,「(b)α,β-不飽和モノカルボン酸,α,β-不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩類からなる群から選ばれた1又は2以上の化合物」,「(c)一般式(1)で表されるジアリルアミン誘導体モノマー」を共重合して得られるものであることから,少なくとも,「(a)(メタ)アクリルアミド」から形成されるユニットと,「(b)α,β-不飽和モノカルボン酸,α,β-不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩類からなる群から選ばれた1又は2以上の化合物」から形成されるユニットと,「(c)一般式(1)で表されるジアリルアミン誘導体モノマー」から形成されるユニットを有していることは,明らかである。 そして,甲3発明における「(c)一般式(1)で表されるジアリルアミン誘導体モノマー」から形成されるユニットは,本件発明1における「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種」に相当する。 そうすると,本件発明1と甲3発明とは,少なくとも, 「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種を有する,ポリアクリルアミド樹脂。」 の点で一致し,少なくとも,以下の点で相違する。 ・相違点5 本件発明1では,「下記式(5)で示される第2ユニット」を有するのに対して,甲3発明では,「(b)α,β-不飽和モノカルボン酸,α,β-不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩類からなる群から選ばれた1又は2以上の化合物」から形成されるユニットを有する点。 ・相違点6 本件発明1では,ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量が,「450万以上750万以下」であるのに対して,甲3発明では,重量平均分子量が特定されていない点。 (イ)相違点5及び6の検討 甲2には,製紙用添加剤として,ポリマー分子内に下記の一般式(A)及び一般式(B)で示される繰返し単位を有するポリアクリルアミド系樹脂を含有するものであって,そのポリアクリルアミド系樹脂が,少なくとも(1)2-アクリルアミドグリコリック酸類,(2)アクリルアミド類,および(3)カチオン性ビニルモノマーを反応させて得たものが記載されている(請求項1,4)。 【化1】 (ただし,R_(1),R_(3)はそれぞれHまたはCH_(3)を表わし,R_(2)はH,Na,KまたはNH_(4)を表わす。) また,甲2には,ポリマー分子内に一般式(A)及び一般式(B)で示される繰返し単位を有するポリアクリルアミド系樹脂を含有した製紙用添加剤を用いることにより,紙力向上効果に優れる製紙用添加剤が得られることが記載されている(【0007】)。 ここで,甲2における「(1)2-アクリルアミドグリコリック酸類」から形成されるユニット(一般式(A))は,本件発明1における「下記式(5)で示される第2ユニット」に相当するものであり,また,甲3発明における「(b)α,β-不飽和モノカルボン酸,α,β-不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩類からなる群から選ばれた1又は2以上の化合物」から形成されるユニットに包含されるものである。 そうすると,甲3発明において,(b)α,β-不飽和モノカルボン酸,α,β-不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩類からなる群から選ばれた1又は2以上の化合物として,甲2に記載される(1)2-アクリルアミドグリコリック酸類を用いることが可能であることは,当業者が理解し得ることである。 しかしながら,上記(3)ア(イ)で述べたとおり,本件発明1の効果は,当業者が予測することができない格別顕著なもの(相乗効果)といえるから,甲3発明において,共重合体につき,「下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種」に加え,「下記式(5)で示される第2ユニット」をも有するものとした上で,それら第1ユニット及び第2ユニットの存在割合を,それぞれ,「0.01?30モル%」及び「0.1?30モル%」とし,重量平均分子量を「450万以上750万以下」とすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。 したがって,本件発明1は,甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明2?4について 本件発明2?4は,本件発明1を引用するものであるが,上記イで述べたとおり,本件発明1が,甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?4についても同様に,甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ まとめ 以上のとおり,本件発明1?4は,いずれも,甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,申立人が主張する取消理由2-4は理由がない。 したがって,取消理由2-4によっては,本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 (5)取消理由3(サポート要件)(うち,第1ユニットの種類に関するもの) 申立人は,本件明細書において,第1ユニットを形成するための第1重合性化合物として例示されたジアリルアミン誘導体を,共重合成分として公知の重合方法により重合した場合,式(1),(2)(4級アンモニウム塩モノマーであれば,式(3),(4))両方の構造を有するポリマーが得られることは,当業者において通常知られているところ,本件発明1は,「式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種」としており,例えば,「第1ユニットとして式(1)のみを有するポリアクリルアミド樹脂」も,本件発明1の範囲に含まれることになるが,本件明細書においては,実施例に記載されているポリアクリルアミド樹脂が,式(1)?(4)で示される第1ユニットのうち,どの構造を有しているのかを解析あるいは特定した記載はなく,「第1ユニットとして式(1)?(4)で示された構造のうち一つのみを有するポリアクリルアミド樹脂」においても,本件発明1の効果が得られるものであることを示す記載はないから,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されている事項は,ジアリルアミン誘導体を共重合成分として用いたポリアクリルアミド樹脂について,本件発明1の効果を有することを示しているにすぎず,本件発明1の範囲まで,本件明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないと主張する。また,本件発明2?4についても同様に主張する。 しかしながら,本件発明1における式(1)で示される第1ユニットと,同式(2)で示される第1ユニットとは,その化学構造が同様のものであるから,その性質や作用も同様のものと解される。そうすると,申立人が主張するように,ジアリルアミン誘導体を共重合成分として用いたポリアクリルアミド樹脂が,式(1)で示される第1ユニットと式(2)で示される第1ユニットの両方の構造を有するものであったとしても,そのようなポリアクリルアミド樹脂について,本件明細書の発明の詳細な説明において,本件発明1の効果が得られることが示されているのであれば,上記第1ユニットのいずれか一方のみの構造を有するポリアクリルアミド樹脂であっても,同様に,本件発明1の効果が得られることは,当業者が理解できるといえる。このようなことは,式(3)で示される第1ユニットと式(4)で示される第1ユニットについても,同様である。また,本件発明2?4についても同様である。 よって,申立人の主張は理由がない。 したがって,取消理由3(うち,第1ユニットの種類に関するもの)によっては,本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 (6)申立人の主張について 申立人は,新たに提出した参考資料1(特許第5618213号公報)に基づく新規性欠如及び進歩性欠如の取消理由を主張する(平成30年1月10日付けの意見書5?6頁)とともに,本件発明1?4において,連鎖移動剤は必須成分であり,その含有割合について特定がないことを指摘して,サポート要件違反の取消理由を主張する(同意見書8頁)。 しかしながら,これらの主張は,新たな取消理由を主張するものであり,実質的に特許異議申立書の要旨を変更するものといえるから,採用しない。 第6 むすび 以上のとおり,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 また,他に本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ポリアクリルアミド樹脂、製紙添加剤および紙 【技術分野】 【0001】 本発明は、ポリアクリルアミド樹脂、製紙添加剤および紙に関し、詳しくは、ポリアクリルアミド樹脂、そのポリアクリルアミド樹脂を含有する製紙添加剤、および、ポリアクリルアミド樹脂を含有する紙に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、抄紙分野においては、例えば、原料であるパルプおよび/または填料の歩留り性、濾水性を向上させ、操業性、作業効率の向上を図るための歩留り向上剤、濾水向上剤や、例えば、紙製品の強度の向上を図るための製紙添加剤など、種々の製紙添加剤が知られている。 【0003】 このような製紙添加剤として、より具体的には、例えば、メチルジアリルアミンとカルボン酸(フマル酸)とを水に加え、加熱溶解させた後、重合開始剤を添加して重合させることにより得られる両性高分子化合物が提案されており、また、そのような両性高分子化合物を紙用添加剤として用いることが、提案されている(特許文献1(合成例4)参照。)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開平6-212597号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 一方、特許文献1に記載の紙用添加剤を含む紙では、用途によっては強度が十分ではない場合がある。また、抄紙分野においては、紙の生産効率の向上を図るため、さらなる濾水性の向上が要求されている。 【0006】 本発明の目的は、紙の強度、とりわけ、内部結合強度の向上を図ることができ、かつ、濾水性の向上を図ることができるポリアクリルアミド樹脂、そのポリアクリルアミド樹脂を含有する製紙添加剤、および、ポリアクリルアミド樹脂を含有する紙を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明[1]は、下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種と、下記式(5)で示される第2ユニットとを有する、ポリアクリルアミド樹脂を含んでいる。 【0008】 【化1】 【0009】 【化2】 【0010】 【化3】 【0011】 【化4】 【0012】 (上記式(1)?(4)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基を示し、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基を示し、Xは、アニオンを示す。) 【0013】 【化5】 【0014】 (上記式(5)中、R4は、水素原子またはメチル基を示し、R5は、水素原子、アルカリ金属イオン、または、アンモニウムイオンを示す。) また、本発明[2]は、上記式(3)または上記式(4)で示され、かつ、XがCl^(-)を示す第1ユニットを有する、上記[1]に記載のポリアクリルアミド樹脂を含んでいる。 【0015】 また、本発明[3]は、上記[1]または[2]に記載のポリアクリルアミド樹脂を含有する、製紙添加剤を含んでいる。 【0016】 また、本発明[4]は、上記[1]または[2]に記載のポリアクリルアミド樹脂を含有する、紙を含んでいる。 【発明の効果】 【0017】 本発明のポリアクリルアミド樹脂、および、そのポリアクリルアミド樹脂を含有する製紙添加剤によれば、紙の製造に用いた場合に、紙の強度、とりわけ、紙の内部結合強度の向上を図ることができ、かつ、濾水性の向上を図ることができる。 【0018】 本発明の紙は、本発明のポリアクリルアミド樹脂を含有するため、生産性よく得られ、かつ、強度に優れる。 【発明を実施するための形態】 【0019】 本発明のポリアクリルアミド樹脂は、下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種と、下記式(5)で示される第2ユニットとを有している。 【0020】 換言すれば、ポリアクリルアミド樹脂は、下記式(1)、下記式(2)、下記式(3)および下記式(4)からなる群から選択される少なくとも1種の第1ユニットと、下記式(5)で示される第2ユニットとを有している。なお、第1ユニットおよび第2ユニットは、ポリアクリルアミド樹脂を構成する2価の構成単位である。 【0021】 【化6】 【0022】 【化7】 【0023】 【化8】 【0024】 【化9】 【0025】 (上記式(1)?(4)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基を示し、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基を示し、Xは、アニオンを示す。) 【0026】 【化10】 【0027】 (上記式(5)中、R4は、水素原子またはメチル基を示し、R5は、水素原子、アルカリ金属イオン、または、アンモニウムイオンを示す。) 上記式(1)?(2)において、R1は、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基を示す。R1として、好ましくは、水素原子、メチル基が挙げられ、より好ましくは、メチル基が挙げられる。 【0028】 なお、ポリアクリルアミド樹脂が、上記式(1)?(2)で示される第1ユニットを複数有する場合、それらのR1は、互いに同一であってもよく、また、それぞれ異なっていてもよい。 【0029】 上記式(3)?(4)において、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基を示す。R2およびR3として、好ましくは、水素原子、メチル基が挙げられ、より好ましくは、メチル基が挙げられる。 【0030】 また、上記式(3)?(4)において、Xは、アニオンを示す。アニオンは、上記式(3)?(4)のアンモニウムカチオンに対するカウンターアニオンであって、例えば、塩素アニオン(Cl^(-))、臭素アニオン(Br^(-))、ヨウ素アニオン(I^(-))などのハロゲンアニオンや、例えば、メチル硫酸アニオン(CH_(3)O_(4)S^(-))などの有機アニオンなどが挙げられる。Xとして、紙の内部結合強度の向上、および、濾水性の向上を図る観点から、好ましくは、ハロゲンアニオンが挙げられ、より好ましくは、塩素アニオン(Cl^(-))が挙げられる。 【0031】 なお、ポリアクリルアミド樹脂が、上記式(3)?(4)で示される第1ユニットを複数有する場合、それらのR2、R3およびXは、互いに同一であってもよく、また、それぞれ異なっていてもよい。 【0032】 上記式(5)において、R4は、水素原子またはメチル基を示す。R4として、好ましくは、水素原子が挙げられる。 【0033】 また、上記式(5)において、R5は、水素原子、アルカリ金属イオン、または、アンモニウムイオン(NH_(4)^(+))を示す。アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン(Li^(+))、ナトリウムイオン(Na^(+))、カリウムイオン(K^(+))、ルビジウムイオン(Rb^(+))、セシウムイオン(Cs^(+))などが挙げられる。アルカリ金属イオンとして、好ましくは、ナトリウムイオン(Na^(+))、カリウムイオン(K^(+))が挙げられる。 【0034】 なお、ポリアクリルアミド樹脂が、上記式(5)で示される第2ユニットを複数有する場合、それらのR4およびR5は、互いに同一であってもよく、また、それぞれ異なっていてもよい。 【0035】 このようなポリアクリルアミド樹脂は、例えば、第1ユニットを形成するための第1重合性化合物と、第2ユニットを形成するための第2重合性化合物と含む重合成分の重合体として得ることができる。 【0036】 第1重合性化合物は、上記式(1)?(4)で示される第1ユニットを形成するためのモノマーであって、例えば、上記式(1)?(2)で示される第1ユニットを形成するためのジアリルアミン化合物、上記式(3)?(4)で示される第1ユニットを形成するためのジアリルアンモニウム化合物などが挙げられる。 【0037】 ジアリルアミン化合物は、第2級または第3級のアミノ基と、アミノ基の窒素原子に直接結合される2つのアリル基(-CH_(2)CH=CH_(2))とを有する化合物であって、例えば、ジアリルアミンなどの第2級ジアリルアミンモノマー(第2級アミノ基を有するモノマー)、例えば、N-メチルジアリルアミン、N-エチルジアリルアミン、N-ベンジルジアリルアミンなどの第3級ジアリルアミンモノマー(第3級アミノ基を有するモノマー)が挙げられる。これらジアリルアミン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。ジアリルアミン化合物として、好ましくは、第3級ジアリルアミンモノマーが挙げられる。 【0038】 ジアリルアンモニウム化合物は、アンモニウム基と、アンモニウム基の窒素原子に直接結合される2つのアリル基(-CH_(2)CH=CH_(2))とを有する化合物であって、例えば、第3級ジアリルアミンモノマーを4級化した4級化物(4級化塩)が挙げられる。第3級ジアリルアミンモノマーの4級化物としては、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムブロマイド、ジアリルジメチルアンモニウムヨーダイド、メチル硫酸ジアリルジメチルアンモニウム、ジアリルジエチルアンモニウムクロライド、ジアリルジエチルアンモニウムブロマイド、ジアリルジエチルアンモニウムヨーダイド、メチル硫酸ジアリルジエチルアンモニウム、ジアリルメチルエチルアンモニウムクロライド、ジアリルメチルエチルアンモニウムブロマイド、ジアリルメチルエチルアンモニウムヨーダイド、メチル硫酸ジアリルメチルエチルアンモニウム、ジアリルメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジアリルメチルベンジルアンモニウムブロマイド、ジアリルメチルベンジルアンモニウムヨーダイド、メチル硫酸ジアリルメチルベンジルアンモニウム、ジアリルエチルベンジルアンモニウムクロライド、ジアリルエチルベンジルアンモニウムブロマイド、ジアリルエチルベンジルアンモニウムヨーダイド、メチル硫酸ジアリルエチルベンジルアンモニウム、ジアリルジベンジルアンモニウムクロライド、ジアリルジベンジルアンモニウムブロマイド、ジアリルジベンジルアンモニウムヨーダイド、メチル硫酸ジアリルジベンジルアンモニウムなどが挙げられる。これらジアリルアンモニウム化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0039】 また、第1重合性化合物としては、例えば、上記したジアリルアミン化合物の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸塩や、例えば、上記したジアリルアミン化合物の酢酸塩などの有機酸塩などを用いることもできる。 【0040】 これら第1重合性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0041】 第1重合性化合物として、好ましくは、ジアリルアンモニウム化合物が挙げられ、より好ましくは、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。 【0042】 第1重合性化合物の含有割合は、重合成分の総モルに対して、例えば、0.01モル%以上、好ましくは、0.1モル%以上であり、例えば、30モル%以下、好ましくは、15モル%以下である。 【0043】 第2重合性化合物は、上記式(5)で示される第2ユニットを形成するためのモノマーであって、例えば、(メタ)アクリルアミドのグリオキシル酸変性体などが挙げられる。 【0044】 (メタ)アクリルアミドとしては、アクリルアミドおよびメタクリルアミドが挙げられる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルと定義される(以下同様)。 【0045】 (メタ)アクリルアミドのグリオキシル酸変性体として、具体的には、例えば、2-アクリルアミド-N-グリコール酸、2-メタクリルアミド-N-グリコール酸、および、それらの塩が挙げられる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。(メタ)アクリルアミドのグリオキシル酸変性体は、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0046】 これら第2重合性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0047】 第2重合性化合物として、好ましくは、(メタ)アクリルアミドのグリオキシル酸変性体が挙げられ、より好ましくは、2-アクリルアミド-N-グリコール酸が挙げられる。 【0048】 第2重合性化合物の含有割合は、重合成分の総モルに対して、例えば、0モル%以上、好ましくは、0.1モル%以上であり、例えば、30モル%以下、好ましくは、15モル%以下である。 【0049】 なお、第2重合性化合物の含有割合は、上記した通り、重合成分の総モルに対して0モル%であってもよい。すなわち、第2重合性化合物は、重合成分に含まれていなくてもよい。このような場合には、詳しくは後述するように、重合成分を重合させるとともに、または、重合成分を重合させた後、グリオキシル酸および/またはその塩により酸変性して、上記式(5)で示される第2ユニットを形成する。 【0050】 また、重合成分は、第1重合性化合物および第2重合性化合物のほか、任意成分として、その他の重合性モノマーを含有することができる。 【0051】 その他の重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、アニオン性重合性モノマー(第2重合性化合物を除く(以下同様)。)、ノニオン共重合性モノマー、第3級アミノ系モノマー(第3級ジアリルアミンモノマーを除く(以下同様)。)、第4級アンモニウム系モノマー(第3級ジアリルアミンモノマーの4級化物を除く(以下同様)。)、架橋性モノマー、(メタ)アリルスルホン酸塩などが挙げられる。 【0052】 (メタ)アクリルアミドは、グリオキシル酸により変性されていない(メタ)アクリルアミドであり、単独使用または2種類併用することができる。すなわち、その他の重合性モノマーとしては、アクリルアミドおよびメタクリルアミドのいずれか一方のみを用いてもよく、それらを併用してもよい。好ましくは、アクリルアミドが単独使用される。 【0053】 (メタ)アクリルアミドが含有される場合、その含有割合は、重合成分の総モルに対して、例えば、50モル%以上、好ましくは、60モル%以上であり、例えば、99モル%以下、好ましくは、97モル%以下である。 【0054】 アニオン性重合性モノマーとしては、例えば、α,β-不飽和カルボン酸、ビニル基を有するスルホン酸モノマーなどの有機酸モノマーが挙げられる。 【0055】 α,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα,β-不飽和モノカルボン酸系モノマー、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのα,β-不飽和ジカルボン酸系モノマーなどが挙げられる。 【0056】 ビニル基を有するスルホン酸モノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。 【0057】 また、アニオン性共重合性モノマーとして、上記の有機酸モノマーのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの塩も用いることができる。 【0058】 これらアニオン性重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0059】 アニオン性重合性モノマーとして、好ましくは、有機酸モノマー、より好ましくは、α,β-不飽和カルボン酸、さらに好ましくは、イタコン酸、アクリル酸、とりわけ好ましくは、イタコン酸が挙げられる。 【0060】 アニオン性重合性モノマーが含有される場合、その含有割合は、重合成分の総モルに対して、例えば、0モル%を超過し、好ましくは、0.5モル%以上であり、例えば、20モル%以下、好ましくは、10モル%以下である。 【0061】 ノニオン性重合性モノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、α一メチルスチレン、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、ビニルオキサゾリン、酢酸ビニル、アクリロイルモルホリン、アクリルニトリルなどが挙げられる。 【0062】 これらノニオン性重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0063】 ノニオン性重合性モノマーとして、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。 【0064】 アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、1-メチルトリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、イソステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート(ベヘニル(メタ)アクリレート)、テトラコシル(メタ)アクリレート、トリアコンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1?30の直鎖状、分岐状または環状アルキルの(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。 【0065】 ノニオン性共重合性モノマーが含有される場合、その含有割合は、重合成分の総モルに対して、例えば、0モル%を超過し、好ましくは、1モル%以上であり、例えば、20モル%以下、好ましくは、10モル%以下である。 【0066】 第3級アミノ系モノマー(第3級ジアリルアミンモノマーを除く。)は、第3級アミノ基を有する重合性モノマー(非4級化物)であって、例えば、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体などが挙げられる。第3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、例えば、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、第3級アミノ基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド(例えば、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなど)、(メタ)アクリルアミド-3-メチルブチルジメチルアミンなど)などが挙げられる。 【0067】 これら第3級アミノ系モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0068】 第3級アミノ系モノマーが含有される場合、その含有割合は、重合成分の総モルに対して、例えば、0モル%を超過し、好ましくは、0.1モル%以上であり、例えば、30モル%以下、好ましくは、15モル%以下である。 【0069】 第4級アンモニウム系モノマー(第3級ジアリルアミンモノマーの4級化物を除く。)は、第4級アンモニウム基を有し、かつ、エチレン性二重結合を有するカチオン性の共重合性モノマーであって、例えば、上記第3級アミノ系モノマーの4級化物などが挙げられる。 【0070】 第3級アミノ系モノマーの4級化物としては、例えば、上記第3級アミノ系モノマーの第3級アミノ基を、メチルクロリド(塩化メチル)、メチルブロミド、ベンジルクロリド(塩化ベンジル)、ベンジルブロミド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリンなどで4級化した4級化物(4級化塩)などが挙げられる。 【0071】 これら第4級アンモニウム系モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0072】 第4級アンモニウム系モノマーが含有される場合、その含有割合は、重合成分の総モルに対して、例えば、0モル%を超過し、好ましくは、0.1モル%以上であり、例えば、30モル%以下、好ましくは、15モル%以下である。 【0073】 架橋性モノマーとしては、例えば、アミド基を含有する架橋性モノマー(例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、アリル(メタ)アクリルアミド、N一置換アクリルアミド系モノマー(例えば、N,N’一ジメチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド)、トリアクリルホルマール)、イミド基を含有する架橋性モノマー(例えば、ジアクリロイルイミドなど)、窒素不含有二官能性架橋剤(例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなど)、窒素不含有多官能性架橋剤(例えば、トリアクリル酸ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンアクリレート、テトラアリルオキシエタンなど)が挙げられる。 【0074】 これら架橋性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0075】 架橋性モノマーが含有される場合、その含有割合は、重合成分の総モルに対して、例えば、0モル%を超過し、好ましくは、0.01モル%以上であり、例えば、10モル%以下、好ましくは、5モル%以下である。 【0076】 (メタ)アリルスルホン酸塩は、連鎖移動剤としても作用する共重合性モノマーであって、(メタ)アリルとは、アリルおよび/またはメタリルと定義される。 【0077】 (メタ)アリルスルホン酸塩として、具体的には、例えば、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸カリウム、メタリルスルホン酸カリウムなどが挙げられる。 【0078】 これら(メタ)アリルスルホン酸塩は、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0079】 (メタ)アリルスルホン酸塩が含有される場合、その含有割合は、重合成分の総モルに対して、例えば、0モル%を超過し、好ましくは、0.2モル%以上であり、例えば、5モル%以下、好ましくは、3モル%以下である。 【0080】 これらその他の重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0081】 その他の重合性モノマーとして、好ましくは、(メタ)アクリルアミド、アニオン性重合性モノマー、(メタ)アリルスルホン酸塩が挙げられる。 【0082】 より具体的には、重合成分は、好ましくは、第1重合性化合物、第2重合性化合物、(メタ)アクリルアミド、アニオン性重合性モノマーおよび(メタ)アリルスルホン酸塩を含有するか、または、第1重合性化合物、第2重合性化合物、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アリルスルホン酸塩を含有する。より好ましくは、重合成分は、第1重合性化合物、第2重合性化合物、(メタ)アクリルアミド、アニオン性重合性モノマーおよび(メタ)アリルスルホン酸塩からなるか、または、第1重合性化合物、第2重合性化合物、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アリルスルホン酸塩からなる。 【0083】 紙の内部結合強度の向上を図る観点から、好ましくは、重合成分は、(メタ)アクリルアミド、アニオン性重合性モノマーおよび(メタ)アリルスルホン酸塩を含有する。すなわち、好ましくは、重合成分は、第1重合性化合物、第2重合性化合物、(メタ)アクリルアミド、アニオン性重合性モノマーおよび(メタ)アリルスルホン酸塩からなる。 【0084】 また、濾水性の向上を図る観点から、好ましくは、アニオン性重合性モノマーを含有せず、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アリルスルホン酸塩を含有する。すなわち、好ましくは、重合成分は、第1重合性化合物、第2重合性化合物、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アリルスルホン酸塩からなる。 【0085】 そして、これら重合成分を共重合させるには、例えば、所定の反応容器に、重合成分、重合開始剤および溶剤を仕込み、反応させる。なお、この方法では、重合成分は、一括投入してもよいが、複数回に分けて分割投入してもよい。また、重合開始剤の一部または全部を反応容器中に滴下しながら、反応を進行させることもできる。 【0086】 重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤が挙げられ、具体的には、パーオキサイド系化合物、スルフィド類、スルフィン類、スルフィン酸類などが挙げられ、さらに好ましくは、パーオキサイド系化合物が挙げられる。なお、パーオキサイド系化合物は、還元剤と併用し、レドックス系重合開始剤として使用してもよい。 【0087】 パーオキサイド系化合物としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物などが挙げられ、好ましくは、無機過酸化物が挙げられる。 【0088】 有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、カプリエルパーオキサイド、2,4-ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシビパレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ヘキシルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキシジカーボネート、s-ブチルパーオキシジカーボネート、n-ブチルパーオキシジカーボネート、2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサエノート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-エチルヘキサノエート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシ-イソノナエート、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどが挙げられる。 【0089】 無機過酸化物としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムなどの臭素酸塩、過ホウ素酸ナトリウム、過ホウ素酸カリウム、過ホウ素酸アンモニウムなどの過ホウ素酸塩、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸アンモニウムなどの過炭酸塩、過リン酸ナトリウム、過リン酸カリウム、過リン酸アンモニウムなどの過リン酸塩などが挙げられ、好ましくは、過硫酸塩が挙げられ、より好ましくは、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムが挙げられ、さらに好ましくは、過硫酸アンモニウムが挙げられる。 【0090】 これら重合開始剤は、単独使用または、2種類以上併用することができる。 【0091】 また、重合開始剤としては、アゾ系化合物を用いることもできる。 【0092】 アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)およびその塩などが挙げられる。 【0093】 重合開始剤として、好ましくは、無機過酸化物が挙げられ、より好ましくは、過硫酸塩が挙げられ、さらに好ましくは、過硫酸アンモニウムが挙げられる。 【0094】 重合開始剤として過硫酸塩を用いることによって、すなわち、重合成分を過硫酸塩の存在下において共重合させることによって、ポリアクリルアミド樹脂の粘度を低く維持することができ、取扱い性に優れた製紙薬品を提供することができる。 【0095】 重合開始剤の配合割合は、重合成分の総量100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。 【0096】 溶剤としては、例えば、水、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどの1価アルコール系溶剤、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステルエーテル系溶剤のような、水と混和可能な溶剤が挙げられ、好ましくは、水が挙げられる。なお、溶剤として水道水が用いられる場合には、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸など)を適宜の割合で配合し、金属を除去することもできる。 【0097】 これら溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0098】 なお、溶剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。 【0099】 また、この方法では、上記の重合成分、重合開始剤および溶剤とともに、さらに、連鎖移動剤((メタ)アリルスルホン酸塩を除く)を適宜配合することができる。 【0100】 連鎖移動剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、例えば、メルカプト類(例えば、メルカプトエタノール、チオ尿素、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、チオ乳酸、アミノエタンチオール、チオグリセロール、チオリンゴ酸など)などが挙げられる。 【0101】 これら連鎖移動剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0102】 これらの連鎖移動剤の配合割合は、重合成分の総モル数に対して、例えば、0.05モル%以上、好ましくは、0.1モル%以上であり、例えば、10モル%以下、好ましくは、5モル%以下である。 【0103】 ポリアクリルアミド樹脂の製造における重合条件は、重合成分、重合開始剤、溶剤などの種類によって異なるが、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、100℃以下、好ましくは、95℃以下である。 【0104】 また、重合時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。なお、重合反応は、公知の重合停止剤(例えば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど)の添加によって、停止される。 【0105】 重合時における反応溶液のpHは、例えば、1以上、好ましくは、2以上であり、また、例えば、6以下、好ましくは、5以下である。なお、pHは、塩酸、硫酸、リン酸などの公知の酸を添加することにより調整することができる。 【0106】 そして、このような反応によって、第1重合性化合物が上記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種を形成し、また、第2重合性化合物が上記式(5)で示される第2ユニットを形成する。これにより、ポリアクリルアミド樹脂の溶液が得られる。 【0107】 また、例えば、第2重合性化合物を用いることなく、ポリアクリルアミド樹脂を得ることもできる。 【0108】 より具体的には、(メタ)アクリルアミド(グリオキシル酸により変性されていない(メタ)アクリルアミド)が重合成分に含有される場合には、第2重合性化合物((メタ)アクリルアミドのグリオキシル酸変性体)が重合成分に含有されていなくともよい。 【0109】 このような場合には、例えば、(メタ)アクリルアミド(グリオキシル酸により変性されていない(メタ)アクリルアミド)を含む重合成分を、上記と同様に重合させるとともに、その重合成分にグリオキシル酸および/またはその塩を添加し、反応させる。 【0110】 このような場合、紙の内部結合強度の向上を図る観点から、好ましくは、重合成分は、(メタ)アクリルアミド、アニオン性重合性モノマーおよび(メタ)アリルスルホン酸塩を含有する。すなわち、好ましくは、重合成分は、第1重合性化合物、(メタ)アクリルアミド、アニオン性重合性モノマーおよび(メタ)アリルスルホン酸塩からなる。 【0111】 また、濾水性の向上を図る観点から、好ましくは、アニオン性重合性モノマーを含有せず、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アリルスルホン酸塩を含有する。すなわち、好ましくは、重合成分は、第1重合性化合物、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アリルスルホン酸塩からなる。 【0112】 グリオキシル酸としては、公知のグリオキシル酸を用いることができる。また、グリオキシル酸の塩としては、例えば、グリオキシル酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。 【0113】 グリオキシル酸および/またはその塩の添加割合は、第2重合性化合物が重合成分に含まれる場合の第2重合性化合物の含有割合と同程度である。 【0114】 具体的には、グリオキシル酸および/またはその塩の添加割合は、重合成分の総モルに対して、例えば、0モル%を超過し、好ましくは、0.1モル%以上であり、例えば、30モル%以下、好ましくは、15モル%以下である。 【0115】 これにより、重合成分中の(メタ)アクリルアミドを、グリオキシル酸により変性することができ、ポリアクリルアミド樹脂に、上記式(5)で示される第2ユニットを形成することができる。 【0116】 また、例えば、(メタ)アクリルアミド(グリオキシル酸により変性されていない(メタ)アクリルアミド)を含む重合成分を、グリオキシル酸および/またはその塩を添加することなく重合させ、その後、得られる重合体にグリオキシル酸および/またはその塩を添加し、反応させることもできる。 【0117】 このような場合、グリオキシル酸および/またはその塩の添加割合は、重合成分の総モルに対して、例えば、0モル%を超過し、好ましくは、0.1モル%以上であり、例えば、30モル%以下、好ましくは、15モル%以下である。 【0118】 また、反応温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、100℃以下、好ましくは、95℃以下である。 【0119】 また、反応時間は、例えば、0.2時間以上、好ましくは、0.5時間以上であり、例えば、5時間以下、好ましくは、2時間以下である。 【0120】 これにより、重合体中の(メタ)アクリルアミドに由来するユニットを、グリオキシル酸により変性することができ、ポリアクリルアミド樹脂に、上記式(5)で示される第2ユニットを形成することができる。 【0121】 すなわち、重合成分が第2重合性化合物を含有していない場合にも、上記式(1)?(4)で示される第1ユニットと、上記式(5)で示される第2ユニット(第2重合性化合物に由来する構成単位)とを含有するポリアクリルアミド樹脂を得ることができる。 【0122】 このように、第2重合性化合物を用いることなくポリアクリルアミド樹脂を得ることにより、紙の内部結合強度、濾水性の向上を図ることができる。 【0123】 これらの作用の向上について、詳細な機構は不明であるものの、以下のことが推察される。 【0124】 すなわち、(メタ)アクリルアミドに由来する構成単位は、上記した重合体において主要な構成単位であって、重合体中に均一に分布する。 【0125】 そのため、上記の重合反応中または重合反応後に、重合成分である(メタ)アクリルアミド、または、その(メタ)アクリルアミドに由来する構成単位に対してグリオキシル酸および/またはその塩を反応させることにより、グリオキシル酸に由来するヒドロキシカルボン酸基が、得られるポリアクリルアミド樹脂中に均一に分布する。 【0126】 これによって、多くのヒドロキシカルボン酸基が効率的にパルプに作用でき、紙の内部結合強度や濾水性が向上すると考えられる。 【0127】 上記の方法のうち、好ましくは、(メタ)アクリルアミド(グリオキシル酸により変性されていない(メタ)アクリルアミド)を含む重合成分を重合させるとともに、その重合成分にグリオキシル酸および/またはその塩を添加し、反応させる(すなわち、重合反応中に、グリオキシル酸および/またはその塩によって、重合成分である(メタ)アクリルアミドを変性する)。 【0128】 また、上記の重合では、好ましくは、重合成分を分割投入する。より具体的には、まず、重合成分の一部(例えば、重合成分の総量に対して、10?30mol%)を反応容器に投入し、ここに重合開始剤を添加して重合させる。その後、重合成分の残部(例えば、重合成分の総量に対して、70?90mol%)を投入し、重合させる。 【0129】 このような場合、重合成分に含有される各モノマーは、重合成分の一部および残部のいずれに含有されていてもよい。 【0130】 好ましくは、第1重合性化合物は、最初に反応容器に投入される重合成分(重合成分の一部)に含有され、より好ましくは、第1重合性化合物の総量に対して、50?100質量%の第1重合性化合物が、最初に反応容器に投入される重合成分(重合成分の一部)に含有される。なお、第2重合性化合物は、最初に反応容器に投入される重合成分(重合成分の一部)に含有されていてもよく、また、重合成分の残部に含有されていてもよい。 【0131】 また、第2重合性化合物((メタ)アクリルアミドのグリオキシル酸変性体)が重合成分として含有されていない場合、好ましくは、重合成分の残部とともに、グリオキシル酸および/またはその塩が添加される。 【0132】 また、この方法では、上記の重合により得られる溶液に上記の溶剤を添加し、ポリアクリルアミド樹脂の溶液の濃度を調製することもできる。 【0133】 ポリアクリルアミド樹脂の溶液において、その濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下である。 【0134】 また、ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量は、例えば、100万以上、好ましくは、150万以上、より好ましくは、200万以上、さらに好ましくは、350万以上、とりわけ好ましくは、450万以上であり、例えば、1500万以下、好ましくは、1000万以下、より好ましくは、800万以下、さらに好ましくは、750万以下、とりわけ好ましくは、600万以下である。 【0135】 ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量が上記範囲であれば、そのポリアクリルアミド樹脂を紙の製造に用いた場合に、紙の強度、とりわけ、紙の内部結合強度の向上を図ることができ、かつ、濾水性の向上を図ることができる。 【0136】 なお、ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量は、例えば、重合成分の種類、配合量などによって、適宜調整することができる。 【0137】 また、重量平均分子量の測定方法は、後述する実施例に準拠する。 【0138】 また、ポリアクリルアミド樹脂の粘度(不揮発分(固形分)20質量%(25℃))は、例えば、100mP・s以上、好ましくは、1000mP・s以上、より好ましくは、3000mP・s以上であり、また、例えば、50000mP・s以下、好ましくは、20000mP・s以下、より好ましくは、10000mP・s以下である。 【0139】 なお、粘度の測定方法は、後述する実施例に準拠する。 【0140】 そして、このようにして得られるポリアクリルアミド樹脂は、上記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種と、上記式(5)で示される第2ユニットとを有しているため、紙の製造に用いた場合に、紙の強度、とりわけ、紙の内部結合強度の向上を図ることができ、かつ、濾水性の向上を図ることができる。 【0141】 好ましくは、ポリアクリルアミド樹脂は、第1重合性化合物に由来する構成単位(上記式(1)?(4)で示される第1ユニット)と、第2重合性化合物に由来する構成単位(上記式(5)で示される第2ユニット)と、(メタ)アクリルアミドに由来する構成単位と、アニオン性重合性モノマーに由来する構成単位と、(メタ)アリルスルホン酸塩に由来する構成単位とからなるか、または、第1重合性化合物に由来する構成単位(上記式(1)?(4)で示される第1ユニット)と、第2重合性化合物に由来する構成単位(上記式(5)で示される第2ユニット)と、(メタ)アクリルアミドに由来する構成単位と、(メタ)アリルスルホン酸塩に由来する構成単位とからなる。 【0142】 好ましくは、ポリアクリルアミド樹脂は、第1重合性化合物に由来する構成単位(上記式(1)?(4)で示される第1ユニット)と、第2重合性化合物に由来する構成単位(上記式(5)で示される第2ユニット)と、(メタ)アクリルアミドに由来する構成単位と、アニオン性重合性モノマーに由来する構成単位と、(メタ)アリルスルホン酸塩に由来する構成単位とからなる。このようなポリアクリルアミド樹脂によれば、より一層、紙の内部結合強度の向上を図ることができる。 【0143】 また、好ましくは、ポリアクリルアミド樹脂は、第1重合性化合物に由来する構成単位(上記式(1)?(4)で示される第1ユニット)と、第2重合性化合物に由来する構成単位(上記式(5)で示される第2ユニット)と、(メタ)アクリルアミドに由来する構成単位と、(メタ)アリルスルホン酸塩に由来する構成単位とからなる。このようなポリアクリルアミド樹脂によれば、より一層、濾水性の向上を図ることができる。 【0144】 そのため、上記のポリアクリルアミド樹脂は、各種産業分野において用いられる紙の製紙添加剤として好適に用いられる。 【0145】 また、本発明は、上記のポリアクリルアミド樹脂を含有する製紙添加剤を含んでいる。具体的には、本発明の製紙添加剤は、上記のポリアクリルアミド樹脂を含有している。 【0146】 製紙添加剤を得るには、例えば、水中に、上記のポリアクリルアミド樹脂を配合し、公知の分散方法によりポリアクリルアミド樹脂を分散させる。 【0147】 ポリアクリルアミド樹脂を水中に分散させる方法としては、例えば、水とポリアクリルアミド樹脂を混合して、分散装置を用いた機械分散などの公知の分散方法により分散させる。 【0148】 機械分散に用いる分散装置としては、例えば、公知のミキサー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。なお、分散条件は、特に制限されず、装置の種類に応じて適宜設定される。 【0149】 また、例えば、水中でポリアクリルアミド樹脂を合成することにより、ポリアクリルアミド樹脂を水に分散させることもできる。 【0150】 すなわち、上記の方法でポリアクリルアミド樹脂を水中で合成し、得られたポリアクリルアミド樹脂の水溶液を、そのまま製紙添加剤とすることもできる。 【0151】 製紙添加剤におけるポリアクリルアミド樹脂の濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下である。 【0152】 このような製紙添加剤は、上記のポリアクリルアミド樹脂が用いられているため、紙の製造に用いた場合に、紙の強度、とりわけ、紙の内部結合強度の向上を図ることができ、かつ、濾水性の向上を図ることができる。 【0153】 より具体的には、上記製紙添加剤をパルプスラリーに添加し、湿式抄造することにより紙が製造される。湿式抄造の方法は特に制限されることなく公知の方法を採用でき、硫酸アルミニウムを定着剤とする酸性紙、炭酸カルシウムを填料とする中性紙を問わず、各種抄紙に広く適用できる。また、湿式抄造で得られる紙は、新聞用紙、インクジェット用紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙、上質紙、板紙、塗工紙、家庭紙、その他の紙類などが挙げられる。 【0154】 製紙添加剤(ポリアクリルアミド樹脂)とパルプスラリーの配合割合は特に制限されないが、パルプスラリー100質量部に対して、ポリアクリルアミド樹脂が、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上であり、例えば、5.0質量部以下、好ましくは、2.0質量部以下である。 【0155】 そして、このようにして得られる紙は、本発明のポリアクリルアミド樹脂を含有するため、生産性よく得られ、かつ、強度に優れる。 【実施例】 【0156】 次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。 【0157】 参考例1 重合成分の一部として、表1に記載される重合成分の仕込み総量の15mol%を用意し、濃度が10質量%になるように水道水で希釈した。 【0158】 次いで、得られた溶液を500mLのセパラブルフラスコに仕込んだ。 【0159】 次いで、その溶液に硫酸を添加し、pHを2.5程度に調整した。 【0160】 その後、溶液中に窒素を吹き込み続けながら、90℃で、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム(APS)を滴下して重合を開始させ、次いで、重合成分の残部(85mol%)を滴下した。 【0161】 そして、上記重合成分の残部の滴下が終了した後、適度な粘性(5000?10000mPa・s程度)となるまで、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム(APS)を追加し、90℃前後で反応を継続させた。 【0162】 その後、重合停止剤としての亜硫酸ナトリウム(Na_(2)SO_(3))と希釈水とを添加し、冷却することにより、ポリアクリルアミド樹脂の水溶液を得た。 【0163】 水溶液の固形分濃度は20.1質量%であった。 【0164】 また、以下の方法で、水溶液の25℃における粘度、ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)を測定した。その結果を表1に示す。 【0165】 <25℃における粘度の測定> B型粘度計(ローターNo.3、12rpm)(TVB-10型粘度計 東機産業社製)を使用して、25℃における粘度を、JIS K 7117-1(1999年)に準拠して測定した。 【0166】 <ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量(Mw)の測定> サンプルをpH7のリン酸緩衝液に溶解させ、試料濃度を1.0g/Lとして、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、得られたクロマトグラム(チャート)から、サンプルの重量平均分子量(Mw)を算出した。測定装置及び測定条件を以下に示す。 装置:品番TDA-302(Viscotek社製) カラム:品番TSKgel GMPW_(XL)(東ソー社製) 移動相:リン酸緩衝液 カラム流量:0.8mL/min 試料濃度:1.0g/L 注入量:500μL 参考例2、実施例3?8および比較例1?6 表1?2に示す配合処方とした以外は、参考例1と同様にして、ポリアクリルアミド樹脂の水溶液を得た。また、参考例1と同様にして、水溶液の25℃における粘度、ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)を測定した。その結果を表1?2に示す。 【0167】 実施例9?10 重合成分の一部として、表1に記載される重合成分の仕込み総量の15mol%を用意し、濃度が10質量%になるように水道水で希釈した。 【0168】 次いで、得られた溶液を500mLのセパラブルフラスコに仕込んだ。 【0169】 次いで、その溶液に硫酸を添加し、pHを2.5程度に調整した。 【0170】 その後、溶液中に窒素を吹き込み続けながら、90℃で、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム(APS)を滴下して重合を開始させ、次いで、重合成分の残部(85mol%)と、重合成分に対して3.6mol%となるグリオキシル酸の混合溶液とを滴下した。 【0171】 そして、上記重合成分の残部の滴下が終了した後、適度な粘性(5000?10000mPa・s程度)となるまで、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム(APS)を追加し、90℃前後で反応を継続させた。 【0172】 その後、重合停止剤としての亜硫酸ナトリウム(Na_(2)SO_(3))と希釈水とを添加し、冷却することにより、ポリアクリルアミド樹脂の水溶液を得た。 【0173】 水溶液の固形分濃度は20.5質量%であった。また、参考例1と同様にして、水溶液の25℃における粘度、ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)を測定した。その結果を表1に示す。 【0174】 実施例11 重合成分の一部として、表1に記載される重合成分の仕込み総量の15mol%を用意し、濃度が10質量%になるように水道水で希釈した。 【0175】 次いで、得られた溶液を500mLのセパラブルフラスコに仕込んだ。 【0176】 次いで、その溶液に硫酸を添加し、pHを2.5程度に調整した。 【0177】 その後、溶液中に窒素を吹き込み続けながら、90℃で、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム(APS)を滴下して重合を開始させ、次いで、重合成分の残部(85mol%)を滴下した。 【0178】 そして、上記重合成分の残部の滴下が終了した後、適度な粘性(5000?10000mPa・s程度)となるまで、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム(APS)を追加し、90℃前後で反応を継続させた。 【0179】 その後、重合停止剤としての亜硫酸ナトリウム(Na_(2)SO_(3))と希釈水とを添加し、次いで重合成分に対し1.8mol%となるグリオキシル酸を添加し、90℃で1時間反応を継続させた。 【0180】 その後、冷却することにより、ポリアクリルアミド樹脂の水溶液を得た。 【0181】 水溶液の固形分濃度は20.9質量%であった。また、参考例1と同様にして、水溶液の25℃における粘度、ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)を測定した。その結果を表1に示す。 【0182】 【表1】 【0183】 【表2】 【0184】 なお、表中の略号の詳細を下記する。 【0185】 AM:アクリルアミド DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート DADMAC:ジアリルジメチルアンモニウムクロライド AmGlyA:アクリルアミド-N-グリコール酸 <評価> (1)インターナルボンド 各実施例、各参考例および各比較例において得られたポリアクリルアミド樹脂の水溶液を用いて、以下の方法で紙を製造した。 【0186】 すなわち、まず、絶乾状態で6.25gになるように、パルプ原料(晒しクラフトパルプ(BKP)(広葉樹パルプ(LBKP)/針葉樹パルプ(NBKP)=50/50、カナディアン・スタンダード・フリーネス(CSF:濾水性)=380mL)を1Lのステンレス管に加え、パルプスラリー濃度が3.0質量%になるように水道水にて希釈した。 【0187】 次いで、得られたパルプスラリーを400rpmにて撹拌し、撹拌開始から1分後に1.2質量%に希釈したポリアクリルアミド樹脂水溶液を添加した。なお、水溶液の添加量は、その固形分が、絶乾パルプ質量に対して1.5質量%なるように調整した。 【0188】 2分後にパルプスラリー濃度が1.0質量%となるように水道水(pH6.5、全硬度135ppm)にて希釈し、3分後に撹拌を停止し、抄紙して湿紙(100g/m^(2))を得た。 【0189】 その後、室温にてプレスした後、ドラムドライヤーにより110℃で3分乾燥させた。これにより、手抄き紙(100g/m^(2))を得た。 【0190】 得られた紙を用いて、以下の方法により、紙力(インターナルボンド[mJ])を評価した。 【0191】 すなわち、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法2000年版に記載の規格No.18-2「紙及び板紙-内部結合強さ試験方法-第2部:インターナルボンドテスタ法」に従い、紙のインターナルボンド(IB)を測定した。 【0192】 その結果を、表1に示す。 【0193】 (2)濾水性 紙の製造工程における濾水性を、下記の手順で評価した。 【0194】 すなわち、上記ポリアクリルアミド樹脂の水溶液を添加したパルプスラリーを、pH7に調整した水道水にてパルプスラリー濃度が0.3%になるように希釈し、その1000mLを用いて、JIS P 8121-2(2012年)に準じてCSF(ml)を測定した。 【0195】 その結果を、表1に示す。 【0196】 <考察> 重量平均分子量が450万のポリアクリルアミド樹脂を製造した比較例2、比較例4、比較例6および実施例6における、各重合成分中の第1重合性化合物および第2重合性化合物の有無と、その評価結果とを、表3に示す。 【0197】 【表3】 【0198】 表3から明らかなように、重合成分が第1重合性化合物および第2重合性化合物の両方を含まない比較例2に対して、重合成分に第1重合性化合物を加えた比較例4では、インターナルボンドの値が5上昇し、濾水性の値が10減少した。 【0199】 一方、重合成分が第1重合性化合物および第2重合性化合物の両方を含まない比較例2に対して、重合成分に第2重合性化合物を加えた比較例6では、インターナルボンドの値が9上昇し、濾水性の値が5上昇した。 【0200】 これらに対して、重合成分が第1重合性化合物を含有し、第2重合性化合物を含有しない比較例4に対して、重合成分に第2重合性化合物を加えた実施例6では、インターナルボンドの値が33上昇し、濾水性の値が40上昇した。 【0201】 また、重合成分が第2重合性化合物を含有し、第1重合性化合物を含有しない比較例6に対して、重合成分に第1重合性化合物を加えた実施例6では、インターナルボンドの値が29上昇し、濾水性の値が25上昇した。 【0202】 このように、比較例4および実施例6の差(インターナルボンド+33、濾水性+40)や、比較例6および実施例6の差(インターナルボンド+29、濾水性+25)は、比較例2および比較例4の差(インターナルボンド+5、濾水性-10)と、比較例2および比較例6の差(インターナルボンド+9、濾水性+5)との合計値よりも大きい。 【0203】 すなわち、上記の結果より、第1重合性化合物および第2重合性化合物には、相乗効果が認められた。 【0204】 なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。 【産業上の利用可能性】 【0205】 本発明のポリアクリルアミド樹脂、製紙添加剤および紙は、新聞用紙、インクジェット用紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙、上質紙、板紙、塗工紙、家庭紙などにおいて、好適に用いられる。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記式(1)?(4)で示される第1ユニットの少なくとも1種と、 下記式(5)で示される第2ユニットとを有するポリアクリルアミド樹脂であり、 前記ポリアクリルアミド樹脂において、前記第1ユニットが、0.01?30モル%であり、前記第2ユニットが、0.1?30モル%であり、 前記ポリアクリルアミド樹脂の重量平均分子量が、450万以上750万以下である ことを特徴とする、ポリアクリルアミド樹脂。 【化1】 【化2】 【化3】 【化4】 (上記式(1)?(4)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基を示し、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基を示し、Xは、アニオンを示す。) 【化5】 (上記式(5)中、R4は、水素原子またはメチル基を示し、R5は、水素原子、アルカリ金属イオン、または、アンモニウムイオンを示す。) 【請求項2】 上記式(3)または上記式(4)で示され、かつ、XがCl^(-)を示す第1ユニットを有する、請求項1に記載のポリアクリルアミド樹脂。 【請求項3】 請求項1に記載のポリアクリルアミド樹脂を含有することを特徴とする、製紙添加剤。 【請求項4】 請求項1に記載のポリアクリルアミド樹脂を含有することを特徴とする、紙。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-02-22 |
出願番号 | 特願2016-564348(P2016-564348) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C08F)
P 1 651・ 121- YAA (C08F) P 1 651・ 113- YAA (C08F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岡谷 祐哉 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
井上 猛 橋本 栄和 |
登録日 | 2016-12-16 |
登録番号 | 特許第6059853号(P6059853) |
権利者 | ハリマ化成株式会社 |
発明の名称 | ポリアクリルアミド樹脂、製紙添加剤および紙 |
代理人 | 岡本 寛之 |
代理人 | 蔦 康宏 |
代理人 | 宇田 新一 |
代理人 | 宇田 新一 |
代理人 | 岡本 寛之 |