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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない H01M
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正しない H01M
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない H01M
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正しない H01M
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない H01M
管理番号 1339911
審判番号 訂正2017-390117  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2017-11-07 
確定日 2018-05-01 
事件の表示 特許第6168163号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6168163号(以下、「本件特許」という。)は、2015年8月5日(優先権主張2014年9月9日、2014年9月12日 日本国)を国際出願日とする出願(特願2015-557270号)の請求項1?6に係る発明(以下、これらをまとめて「本件発明」という。)について、平成29年7月7日に特許権の設定登録がなされた。
本件訂正審判は、その後、平成29年11月7日に請求された訂正審判であり、平成30年1月4日に当審より訂正拒絶理由が通知され、同年2月2日に意見書が提出されたものである。

2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6168163号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める、との審決を求めるものである。

3 訂正事項
本件審判の請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の訂正事項は、次のとおりである。
(訂正事項)
願書に添付した特許請求の範囲の請求項1について、「エンジン始動用である」とあるのを、「車載用である」と訂正する。

4 当審の判断
(1)訂正の目的について
ア 特許請求の範囲の減縮を目的とするものか否かについて
本件訂正後の請求項1の「車載用である、鉛蓄電池」には、「エンジン始動用」のものも「エンジン始動用」でないものも含まれる。
例えば、ハイブリッド車は、エンジン起動を行うメインバッテリー以外に、鉛蓄電池からなり、ハイブリッドシステムの起動等に用いる補機用バッテリーを備えており(「ハイブリッド車補機用バッテリー Tuflong HV」のカタログ、新神戸電機株式会社、「2.ハイブリッド車におけるバッテリーの役割」、2012年12月、及び、「カーバッテリー総合カタログ」、古河電池株式会社、第11頁の「補機用バッテリーとは?」、2017年11月、参照。)、この補機用バッテリーは、「車載用」であるが「エンジン始動用」ではない。
したがって、本件訂正前の「エンジン始動用」を「車載用」と訂正することは、本件訂正前には含まれていなかった、「車載用」であるが「エンジン始動用」ではない、上記のような補機用バッテリーを新たに含むこととなるから、上記訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書き第1号にいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
イ 誤記の訂正を目的とするものか否かについて
(ア)特許法第126条第1項第2号は、明細書の「誤記の訂正」を許しているので、一見特許請求の範囲の特定の記載が明細書全体の記載からみて誤記であることが明らかなときは、これを本来書かれる筈であつた記載に訂正することが許されているように考えられる。しかし、同条第六項は、この誤記の訂正は「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない。」と規定しており、これは明細書の誤記を訂正することによつて特許発明の技術的範囲、したがつて特許権の効力の及ぶ範囲に拡張または変更が生じてはならない趣旨であることが明らかである。そして、特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲に基づいて定めなければならないものであるから(特許法第70条)、同条第六項にいう「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するもの」であるか否かの判断は、特許請求の範囲の記載を基準としてなされなければならない。したがつて、特許請求の範囲の記載に関する限り、誤記の訂正は、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと当業者その他一般第三者が理解する場合に限つて許されることになる。そして、発明の詳細な説明の項の記載は、この点の判断の資料となる限度においてのみしんしやくされると解さなければならない。(昭和44年(行ケ)10号)
(イ)これを本件についてみれば、本件訂正前の「エンジン始動用である、鉛蓄電池」と本件訂正後の「車載用である、鉛蓄電池」とは、上記アで検討したように、「車載用」であるが「エンジン始動用」ではない、補機用バッテリーを新たに含むこととなると解されるところ、発明の詳細な説明には、「車載用」であるが「エンジン始動用」ではないバッテリーを含むことにはなり得ないと解すべき記載はないから、上記訂正事項は、特許請求の範囲の記載に関する限り、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと当業者その他一般第三者が理解する場合に該当するとはいえない。
(ウ)仮に、意見書、補正書等の出願書類を参酌すれば、本件訂正前の「エンジン始動用である、鉛蓄電池」が誤った記載であると考えられるとしても、上記(ア)のとおり、発明の詳細な説明の記載は、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと当業者その他一般第三者が理解する場合に該当するか否かの判断の資料となる以外にしんしゃくされることはないから、かかる誤った記載を訂正することは許されない。
(エ)したがって、上記訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書き第2号にいう誤記の訂正を目的とするものとはいえない。
ウ 明りょうでない記載の釈明を目的とするものか否かについて
本件訂正前の請求項1の「エンジン始動用」は、それ自体明りょうな記載であるし、請求項6において、「エンジン始動用」が重複して特定されているとしても、請求項1を引用する請求項6は、「エンジン始動用」である「鉛蓄電池」を意味するものとして、明りょうな記載であるし、何ら矛盾が生じるものではない。
したがって、上記訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書き第3号にいう明りょうでない記載の釈明を目的とするものともいえない。
エ 引用関係の解消を目的とするものか否かについて
上記訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書き第4号にいう引用関係の解消を目的とするものとはいえないのは明らかである。
オ 訂正の目的についての結論
よって、上記訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書き各号に掲げたいずれの事項を目的とするものでもない。

(2)新規事項追加の有無について
本件発明の「鉛蓄電池」が、「車載用」であることは、願書に添付した明細書【0012】に「車載時」における課題が記載されており、本件発明は、これを解決するものであるから、上記訂正事項は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるといえる。
よって、上記訂正事項は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否について
ア 特許法第36条第2項及び第6項並びに同法第70条によれば、特許請求の範囲は、対世的な絶対権たる特許権の効力範囲を明確にするものであるからこそ、同法第70条のとおり、特許発明の技術的範囲を確定するための基準とされるのであって、同法第126条第6項にいう「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するもの」であるか否かの判断は、もとより、特許請求の範囲の記載を基準としてなされるべきものである(昭和41年(行ツ)第1号)。
イ これを本件についてみれば、上記(1)アで述べたように、ハイブリッド車に用いられている補機用バッテリーは、「車載用」であるといえるが「エンジン始動用」ではないことから、特許請求の範囲の記載上、本件訂正前の本件発明に含まれなかった補機用バッテリーが、本件訂正後は新たに本件発明に含まれることとなるので、上記訂正事項は、同法第126条第6項にいう「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない」との要件に適合しないものである。
ウ 仮に、意見書、補正書等の出願書類を参酌すれば、特許権者の本来の意志に反して、補正が行われてしまったと考えられるとしても、上記アのとおり、「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するもの」であるか否かの判断は、特許請求の範囲の記載を基準としてなされるべきものであるから、上記イのとおりである。
エ よって、上記訂正事項は、特許法第126条第6項の規定に適合しないものである。

(4)独立特許要件について
本件訂正後の請求項1?6に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせないものである。
よって、上記訂正事項は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

(5)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2?6は、請求項1を引用するものであるから、それぞれ本件訂正前の請求項1?6に対応する本件訂正後の請求項1?6は一群の請求項である。

5 むすび
以上のとおり、本件審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないし、同条第6項の規定に適合しないものでもあるから、適法な訂正とは認められない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-26 
結審通知日 2018-02-28 
審決日 2018-03-22 
出願番号 特願2015-557270(P2015-557270)
審決分類 P 1 41・ 853- Z (H01M)
P 1 41・ 855- Z (H01M)
P 1 41・ 854- Z (H01M)
P 1 41・ 852- Z (H01M)
P 1 41・ 851- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植前 充司市川 篤  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 土屋 知久
宮本 純
登録日 2017-07-07 
登録番号 特許第6168163号(P6168163)
発明の名称 鉛蓄電池  
代理人 河崎 眞一  

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