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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1340095
異議申立番号 異議2016-700002  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-05 
確定日 2018-03-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5752841号発明「発光装置およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5752841号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第5752841号の請求項1ないし8及び10に係る特許を維持する。 特許第5752841号の請求項9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5752841号の請求項1ないし10に係る特許についての出願(以下「本件出願」という。)は、平成19年3月15日に出願した特願2007-67362号の一部を平成21年9月14日に新たな特許出願とした特願2009-211855号の一部を、平成22年6月4日に新たな特許出願とした特願2010-129024号の一部を、平成23年8月25日に新たな特許出願とした特願2011-183773号の一部を、平成26年7月1日に新たな特許出願とした特願2014-136034号の一部を平成26年10月23日に新たな特許出願としたものであって、平成27年5月29日にその特許権の設定登録がされた。
その後、請求項1ないし10に対し、平成28年1月5日に、特許異議申立人 アクシス国際特許業務法人により特許異議の申立てがされ、当審において同年6月15日付けで取消理由が通知され、同年8月17日付けで意見書とともに訂正請求書が提出され、同年9月23日付けで当該訂正請求書について指令書が送付され、同年10月25日付けで当該訂正請求書が補正され、同年12月7日付けで特許異議申立人により意見書が提出され、平成29年3月8日付けで取消理由が通知され(以下、この取消理由及び取消理由通知をそれぞれ単に「2回目取消理由」及び「2回目取消理由通知」という。)、同年5月12日付けで意見書とともに訂正請求書が提出され、これに対し異議申立人からは意見書が提出されなかったものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
平成29年5月12日付けの訂正請求書による訂正は、「特許第5752841号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲とおり、訂正後の請求項1?10について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「 基板と、
前記基板の上面上に形成された発光部と、
前記発光部を囲む前記基板上面の周辺領域と、
前記基板の端から離して、前記周辺領域内の前記基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、
前記基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、
前記発光部は、前記基板上に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、
前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは、前記アノード用配線パターンおよび前記カソード用配線パターンにそれぞれ接続され、
前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記基板の上面において前記発光部を完全に囲み、
前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、
全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、
前記基板は、前記周辺領域に配置され、前記正電極外部接続ランドに隣接する正極の極性表示を含む、発光装置。」と記載されているのを、
「 絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面上に形成された発光部と、
前記発光部を囲む前記絶縁基板上面の周辺領域と、
前記絶縁基板の端から離して、前記周辺領域内の前記絶縁基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、
前記絶縁基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、
前記発光部は、前記絶縁基板上に直に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、
前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており、
前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記絶縁基板の上面において前記発光部を完全に囲み、
前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記絶縁基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、
全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、
前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記正電極外部接続ランドに隣接する正極の極性表示を含む、発光装置。」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、4?8、10も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、
「 前記基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む、請求項1に記載の発光装置。」と記載されているのを、
「 前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む、請求項1に記載の発光装置。」に訂正する(請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項4?8、10も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3において、
「 基板と、
前記基板の上面上に形成された発光部と、
前記発光部を囲む前記基板上面の周辺領域と、
前記基板の端から離して、前記周辺領域内の前記基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、
前記基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、
前記発光部は、前記基板上に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、
前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは、前記アノード用配線パターンおよび前記カソード用配線パターンにそれぞれ接続され、
前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記基板の上面において前記発光部を完全に囲み、
前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、
全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、
前記基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む、発光装置。」と記載されているのを、
「 絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面上に形成された発光部と、
前記発光部を囲む前記絶縁基板上面の周辺領域と、
前記絶縁基板の端から離して、前記周辺領域内の前記絶縁基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、
前記絶縁基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、
前記発光部は、前記絶縁基板上に直に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、
前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており、
前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記絶縁基板の上面において前記発光部を完全に囲み、
前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記絶縁基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、
全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、
前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む、発光装置。」に訂正する(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4?8、10も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4において、
「 前記基板を貫通する貫通孔が前記周辺領域に形成されている、請求項1?3のいずれか1項に記載の発光装置。」と記載されているのを、
「 前記絶縁基板を貫通する貫通孔が前記周辺領域に形成されている、請求項1?3のいずれか1項に記載の発光装置。」に訂正する(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5?8、10も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5において、
「 前記基板が1mmの厚みを有する、請求項1?4のいずれか1項に記載の発光装置。」と記載されているのを、
「 前記絶縁基板が1mmの厚みを有する、請求項1?4のいずれか1項に記載の発光装置。」に訂正する(請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6?8、10も同様に訂正する。)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8において、
「 前記基板は、円形状、または矩形状の上面形状を有することを特徴する、請求項1?7のいずれか1項に記載の発光装置。」と記載されているのを、
「 前記絶縁基板は、円形状、または矩形状の上面形状を有することを特徴する、請求項1?7のいずれか1項に記載の発光装置。」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。)。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に、「請求項1?9のいずれか1項に記載の発光装置」と記載されているのを、「請求項1?8のいずれか1項に記載の発光装置」に訂正する。

(9)訂正事項9
明細書の段落【0009】において、
「 本発明は、基板と、前記基板の上面上に形成された発光部と、前記発光部を囲む前記基板上面の周辺領域と、前記基板の端から離して、前記周辺領域内の前記基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、前記基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、前記発光部は、前記基板上に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは、前記アノード用配線パターンおよび前記カソード用配線パターンにそれぞれ接続され、前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記基板の上面において前記発光部を完全に囲み、前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、前記基板は、前記周辺領域に配置され、前記正電極外部接続ランドに隣接する正極の極性表示を含む、発光装置に関する。」と記載されているのを、
「 本発明は、絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板と、前記絶縁基板の上面上に形成された発光部と、前記発光部を囲む前記絶縁基板上面の周辺領域と、前記絶縁基板の端から離して、前記周辺領域内の前記絶縁基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、前記絶縁基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、前記発光部は、前記絶縁基板上に直に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており、前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記絶縁基板の上面において前記発光部を完全に囲み、前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記絶縁基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記正電極外部接続ランドに隣接する正極の極性表示を含む、発光装置。」に訂正する。

(10)訂正事項10
明細書の段落【0011】において、
「 また本発明は、基板と、前記基板の上面上に形成された発光部と、前記発光部を囲む前記基板上面の周辺領域と、前記基板の端から離して、前記周辺領域内の前記基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、前記基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、前記発光部は、前記基板上に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは、前記アノード用配線パターンおよび前記カソード用配線パターンにそれぞれ接続され、前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記基板の上面において前記発光部を完全に囲み、前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、前記基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む発光装置についても提供する。」と記載されているのを、
「 また本発明は、絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板と、前記絶縁基板の上面上に形成された発光部と、前記発光部を囲む前記絶縁基板上面の周辺領域と、前記絶縁基板の端から離して、前記周辺領域内の前記絶縁基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、前記絶縁基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、前記発光部は、前記絶縁基板上に直に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており、前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記絶縁基板の上面において前記発光部を完全に囲み、前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記絶縁基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む、発光装置。」に訂正する。

(11)訂正事項11
明細書の段落【0010】、【0012】、【0013】、【0016】にそれぞれ「基板」と記載されているのを、「絶縁基板」に訂正する。

(12)訂正事項12
明細書の段落【0017】を削除する。

(13)訂正事項13
明細書の段落【0033】において、
「 本発明の発光装置1における絶縁基板3は、少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されていればよく、特に制限されるものではないが、熱膨張が小さく、熱伝導性が高く、かつ光反射率が高いことから、白色のセラミック基板であることが好ましい。ここで、「白色」とは、物体が全ての波長の可視光線をほぼ100%反射するような物体の色を指す(ただし、100%の反射率をもった理想的な白色の物体は存在しない。)。白色のセラミック基板を絶縁基板3として用いることで、発光素子5からの出射光のうち、特に下面方向への光を白色のセラミック基板にて反射することができ、発光素子5からの出射光をロスなく有効に活用できるとともに、高い放熱性および耐熱性が要求される駆動電流として大電流を供給する用途にも好適に適用することができる。さらに、発光素子5の信頼性を向上できるとともに、封止体6が蛍光体を含有する場合(後述)には、発光素子5からの熱による蛍光体の劣化を抑えることもでき、蛍光体により波長変換されて出光する光の色度ズレが生じにくい。またさらに、上述のように光反射率の高いセラミック基板を用いることで、基板材料および/または配線パターンの形成材料に光反射率90%以上の銀を用いる必要がないため、銀マイグレーションの心配がなく、さらに銀が硫化してしまう問題もない。」と記載されているのを、
「 本発明の発光装置1における絶縁基板3は、絶縁性を有する材料で形成されていればよく、特に制限されるものではないが、熱膨張が小さく、熱伝導性が高く、かつ光反射率が高いことから、白色のセラミック基板であることが好ましい。ここで、「白色」とは、物体が全ての波長の可視光線をほぼ100%反射するような物体の色を指す(ただし、100%の反射率をもった理想的な白色の物体は存在しない。)。白色のセラミック基板を絶縁基板3として用いることで、発光素子5からの出射光のうち、特に下面方向への光を白色のセラミック基板にて反射することができ、発光素子5からの出射光をロスなく有効に活用できるとともに、高い放熱性および耐熱性が要求される駆動電流として大電流を供給する用途にも好適に適用することができる。さらに、発光素子5の信頼性を向上できるとともに、封止体6が蛍光体を含有する場合(後述)には、発光素子5からの熱による蛍光体の劣化を抑えることもでき、蛍光体により波長変換されて出光する光の色度ズレが生じにくい。またさらに、上述のように光反射率の高いセラミック基板を用いることで、基板材料および/または配線パターンの形成材料に光反射率90%以上の銀を用いる必要がないため、銀マイグレーションの心配がなく、さらに銀が硫化してしまう問題もない。」に訂正する。

2 各訂正事項についての訂正要件の適合性の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「基板」について、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁」とし、構成を付加して限定する訂正である。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「前記基板上に搭載された複数個の発光素子」について、「前記絶縁基板上に直に搭載された複数個の発光素子」と構成を追加して、「複数個の発光素子」を限定する訂正である。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは、前記アノード用配線パターンおよび前記カソード用配線パターンにそれぞれ接続され」について、「前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており」として、「前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランド」と「前記アノード用配線パターンおよび前記カソード用配線パターン」とのそれぞれの接続を限定する訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲中の請求項9、本件特許の願書に添付した明細書(以下、本件特許の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」という。また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を「本件特許明細書等」という。)の段落【0021】?【0023】、【0034】、【0035】、【0058】、【0062】、及び本件特許明細書等の図3に基づいて導き出される構成である。
また、訂正事項1は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1?10について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

オ 訂正事項1についてのまとめ
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
また、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項、並びに特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
よって、訂正事項1は、訂正要件を満たしている。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、訂正事項1から理解されるように、訂正後の請求項1の記載との整合性の観点から、「基板」について訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明をしようとするものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、本件特許明細書等の段落【0056】及び本件特許明細書等の図1、4?7に基づいて導き出される構成である。
また、訂正事項2は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1?10について特許異議の申立てがされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

オ 訂正事項2についてのまとめ
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
また、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項、並びに特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
よって、訂正事項2は、訂正要件を満たしている。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明の発明特定事項である「基板」について、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁」とし、構成を付加して限定する訂正である。
また、訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明の発明特定事項である「前記基板上に搭載された複数個の発光素子」について、「前記絶縁基板上に直に搭載された複数個の発光素子」と構成を追加して、「複数個の発光素子」を限定する訂正である。
また、訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明の発明特定事項である「前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは、前記アノード用配線パターンおよび前記カソード用配線パターンにそれぞれ接続され」について、「前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており」として、「前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランド」と「前記アノード用配線パターンおよび前記カソード用配線パターン」とのそれぞれの接続を限定する訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、本件特許明細書等の特許請求の範囲中の請求項9、本件特許明細書等の段落【0021】?【0023】、【0034】、【0035】、【0058】、【0062】、及び本件特許明細書等の図3に基づいて導き出される構成である。
また、訂正事項3は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1?10について特許異議の申立てがされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

オ 訂正事項3についてのまとめ
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
また、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項、並びに特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
よって、訂正事項3は、訂正要件を満たしている。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4は、訂正事項1、3から理解されるように、訂正後の請求項1、3の記載との整合性の観点から、「基板」について訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明をしようとするものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、本件特許明細書等の段落【0052】及び本件特許明細書等の図1、4に基づいて導き出される構成である。
また、訂正事項4は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1?10について特許異議の申立てがされているので、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

オ 訂正事項4についてのまとめ
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
また、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項、並びに特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
よって、訂正事項4は、訂正要件を満たしている。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項5は、訂正事項1、3から理解されるように、訂正後の請求項1、3の記載との整合性の観点から、「基板」について訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明をしようとするものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、本件特許明細書等の段落【0061】に基づいて導き出される構成である。
また、訂正事項5は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1?10について特許異議の申立てがされているので、訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

オ 訂正事項5についてのまとめ
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
また、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項、並びに特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
よって、訂正事項5は、訂正要件を満たしている。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項6は、訂正事項1、3から理解されるように、訂正後の請求項1、3の記載との整合性の観点から、「基板」について訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明をしようとするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、本件特許明細書等の段落【0227】、【0048】、【0052】及び本件特許明細書等の図5?7に基づいて導き出される構成である。
また、訂正事項6は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。
したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1?10について特許異議の申立てがされているので、訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

オ 訂正事項6についてのまとめ
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
また、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項、並びに特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
よって、訂正事項6は、訂正要件を満たしている。

(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項7は、訂正前の請求項9を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1?10について特許異議の申立てがされているので、訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

オ 訂正事項7についてのまとめ
よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
また、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項、並びに特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
よって、訂正事項7は、訂正要件を満たしている。

(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項8は、訂正前の特許請求の範囲の請求項10に、「請求項1?9のいずれか1項に記載の発光装置」と記載されているのを、訂正後の請求項10において、「請求項1?8のいずれか1項に記載の発光装置」とする訂正である。
したがって、訂正事項8は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、ないし、訂正事項3において訂正前の請求項9が削除されたことに伴い、訂正後の請求項10において、請求項9を除いた引用形式に訂正する訂正である。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、ないし、同法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当するから、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の全ての請求項1?10について特許異議の申立てがされているので、訂正事項8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

オ 訂正事項8についてのまとめ
よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
また、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項、並びに特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
よって、訂正事項8は、訂正要件を満たしている。

(9)訂正事項9?12について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項9?12は、上記訂正事項1?8による訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明をしようとするものである。
よって、訂正事項9?12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当するから、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項9?12は、訂正事項1?8による訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9?12は、訂正事項1?8による訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書における特許請求の範囲と同様な記載との整合性を図るための訂正であるから、訂正事項9?12は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項9?12は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(10)訂正事項13について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項13は、本件特許明細書の段落【0028】に記載の「絶縁基板3は、少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されていればよく」を、「絶縁基板3は、絶縁性を有する材料で形成されていればよく」に訂正するものである。
したがって、訂正事項13は、訂正事項1?8による訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正である。
よって、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当するから、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。

イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項13は、上記アで検討したように、訂正事項1?8による訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正であり、請求項に記載された事項の解釈に影響を与え、その結果、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項13は、訂正事項1?8による訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書における特許請求の範囲と同様な記載との整合性を図るための訂正であるから、訂正事項13は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(11)一群の請求項について
訂正前の請求項1?10について、請求項2は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項4は請求項1?3を引用しているものであって、訂正事項1?3によって記載が訂正される請求項1?3に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項5は請求項1?4を引用しているものであって、訂正事項1?4によって記載が訂正される請求項1?4に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項6?8は請求項1?5を引用しているものであって、訂正事項1?5によって記載が訂正される請求項1?5に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項9は請求項1?8を引用しているものであって、訂正事項1?6によって記載が訂正される請求項1?5、8に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項10は請求項1?9を引用しているものであって、訂正事項1?7によって記載が訂正される請求項1?5、8、9に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
よって、訂正事項1?13に係る訂正の請求は、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

3 各訂正事項についての訂正要件の適合性の判断についてのまとめ
以上のとおり、訂正事項1?13は、いずれも、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしており、また、特許法第120条の5第4項、並びに、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、また、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正を認めるから、本件特許の請求項1ないし8及び10に係る発明(以下、順に「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明8」及び「本件訂正発明10」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし8及び10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線部は、訂正箇所を示す。)。

「【請求項1】
絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面上に形成された発光部と、
前記発光部を囲む前記絶縁基板上面の周辺領域と、
前記絶縁基板の端から離して、前記周辺領域内の前記絶縁基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、
前記絶縁基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、
前記発光部は、前記絶縁基板上に直に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、
前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており、
前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記絶縁基板の上面において前記発光部を完全に囲み、
前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記絶縁基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、
全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、
前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記正電極外部接続ランドに隣接する正極の極性表示を含む、発光装置。」
「【請求項2】
前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む、請求項1に記載の発光装置。」
「【請求項3】
絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面上に形成された発光部と、
前記発光部を囲む前記絶縁基板上面の周辺領域と、
前記絶縁基板の端から離して、前記周辺領域内の前記絶縁基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、
前記絶縁基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、
前記発光部は、前記絶縁基板上に直に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、
前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており、
前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記絶縁基板の上面において前記発光部を完全に囲み、
前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記絶縁基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、
全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、
前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む、発光装置。」
「【請求項4】
前記絶縁基板を貫通する貫通孔が前記周辺領域に形成されている、請求項1?3のいずれか1項に記載の発光装置。」
「【請求項5】
前記絶縁基板が1mmの厚みを有する、請求項1?4のいずれか1項に記載の発光装置。」
「【請求項6】
切り欠き状の穴が前記周辺領域に形成されている、請求項1?5のいずれか1項に記載の発光装置。」
「【請求項7】
前記封止体は、六角形状、円形状、または矩形状の上面形状を有することを特徴する、請求項1?6のいずれか1項に記載の発光装置。」
「【請求項8】
前記基板は、円形状、または矩形状の上面形状を有することを特徴する、請求項1?7のいずれか1項に記載の発光装置。」
「【請求項10】
前記封止体が蛍光体を含有することを特徴する、請求項1?8のいずれか1項に記載の発光装置。」

2 取消理由の概要
平成29年3月8日付けで特許権者に通知した取消理由(2回目取消理由)の概要は、次のとおりである。

「<理由1>本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当する。
<理由2>本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<理由3>本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
<理由4>本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



甲第1号証:特開2005-109434号公報
甲第2号証:特開2005-32999号公報
甲第3号証:特開2002-9349号公報
甲第4号証:特開2003-8083号公報
甲第5号証:特開2006-210949号公報
刊行物6:特開2008-227412号公報(下記の「最初の特許出願(特願2007-67362号)の公開特許公報)

1 本件特許の出願日について
本件特許に係る出願は、下記のとおり、第5世代の分割出願であるところ、分割出願がもとの特許出願の時にしたものとみなされるには、分割出願の要件を満たすことが必要である。そこで、下記(1)?(3)で各分割出願の分割要件について検討し、下記(4)で本件特許の出願日について検討する。

特許第5752841号の請求項1ないし10に係る特許についての出願(以下、「本件特許出願」という。)の設定登録までの経緯は次のとおりである。
平成19年 3月15日:最初の特許出願(特願2007-67362号)
平成21年 9月14日:分割出願(第1世代)(特願2009-211855号)
平成22年 6月 4日:分割出願(第2世代)(特願2010-129024号)
平成23年 8月25日:分割出願(第3世代)(特願2011-183773号)
平成26年 7月 1日:分割出願(第4世代)(特願2014-136034号)
平成26年10月23日:分割出願(第5世代)(特願2014-216446号、本件特許出願)
平成27年 5月29日:本件特許の設定登録

以下では、本件の原出願等について、「分割出願(第1世代)」ないし「分割出願(第4世代)」について、それぞれ順に「第1世代分割出願」ないし「第4世代分割出願」という。
また、最初の特許出願、及び第1世代分割出願ないし第4世代分割出願それぞれの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を、以下それぞれ「最初の特許出願明細書等」、及び「第1世代明細書等」ないし「第4世代明細書等」という。

(1)本件特許出願の分割要件について
ア 本件特許の請求項1に係る発明について
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明1」という。また、本件特許の請求項2?10に係る発明のそれぞれを、以下順に「本件特許発明2」?「本件特許発明10」という。)は、以下のとおりのものである(下線は、合議体が付与した。以下同じ)。
…(略)…

イ 第4世代明細書等について
第4世代明細書等には、以下のとおり記載されている。
…(略)…

ウ 第4世代分割出願が包含する発明について
上記イの段落【0020】、【0031】の記載によると、「基板」が、「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている」「絶縁基板」ではなく、例えば、従来技術として開示されたような金属基板であるならば、「充分な電気絶縁性が達成される」こととはならず、段落【0008】に記載の【発明が解決しようとする課題】を解決できず、また、段落【0017】に記載の【発明の効果】を奏するものとはならないことは明らかである。
したがって、第4世代分割出願は、「基板」が、「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている」「絶縁基板」を備える発明を包含するが、「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている」「絶縁基板」を備えない発明(例えば、従来技術として開示されたような、金属基板を備える発明)を包含しない。

エ 上記アによると、本件特許発明1は、「基板」について、「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている」「絶縁基板」に特定されておらず、金属基板を備える発明を含むものである。
したがって、本件特許発明1と第4世代分割出願が包含する発明とを対比すると、本件特許発明1は、第4世代分割出願が包含する発明であるとはいえない。

オ 以上のとおりであるから、本件特許出願が、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということはできない。

(2)第2世代分割出願の分割要件について
以下において、第2世代分割出願に係る特許第5442534号において、請求項1に係る発明を「第2世代発明1」、第1世代分割出願に係る特許第5118110号において、請求項1に係る発明を「第1世代発明1」という。

ア 第2世代発明1は、以下のとおりのものである(下線は合議体が付与した。以下同じ。)。
…(略)…

イ 第1世代明細書等について
第1世代明細書等には、以下のとおり記載されている。
第1世代明細書等では、第4世代明細書等の「絶縁基板3」、「絶縁基板」との記載を、下記(エ)の段落【0026】、【0027】、【0038】、(オ)の段落【0065】、【0067】において、「基板3」、「基板」としている。
また、第1世代明細書等の請求項1には、「基板上に、…」と、「絶縁基板」に特定されない発明が記載されている。
…(略)…

ウ 第1世代分割出願が包含する発明について
第1世代明細書等の段落【0027】、【0038】の記載によると、「基板」が、「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板」ではなく、例えば、従来技術として開示されたような金属基板であるならば、「充分な電気絶縁性が達成される」こととはならず、段落【0008】に記載の【発明が解決しようとする課題】を解決できず、また、段落【0024】に記載の【発明の効果】を奏するものとはならないことは明らかである。
したがって、本件第1世代分割出願が包含する発明は、「基板」が、「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板」であって、「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板」ではない発明は、第1世代分割出願が包含する発明ではない。

エ 上記アによると、第2世代発明1は、「基板」について、「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板」に特定されていない。
したがって、第2世代発明1と第1世代分割出願が包含する発明とを対比すると、第2世代発明1は、第1世代分割出願が包含する発明であるとはいえない。

オ よって、第2世代分割出願が、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということはできない。

(3)第1世代分割出願の分割要件について
ア 第1世代発明1は、以下のとおりのものである。
…(略)…

イ 最初の特許出願明細書等について
最初の特許出願明細書等には、以下の記載がある。
…(略)…

ウ 最初の特許出願が包含する発明について
上記イの段落【0024】、【0025】、【0036】、【0065】の記載によると、「基板」が、「絶縁性を有する材料で形成されている」「絶縁基板」ではなく、例えば、従来技術として開示されたような金属基板であるならば、「充分な電気絶縁性が達成される」こととはならず、段落【0007】に記載の【発明が解決しようとする課題】を解決できず、また、段落【0023】に記載の【発明の効果】を奏するものとはならないことは明らかである。
したがって、最初の特許出願は、「基板」が「絶縁性を有する材料で形成されている」「絶縁基板」である発明を包含するが、「絶縁性を有する材料で形成されている」「絶縁基板」ではない発明(例えば、基板が金属基板である発明)を包含しない。

エ 上記アによると、第1世代発明1は、「基板」について、「絶縁性を有する材料で形成されている」「絶縁基板」に特定されておらず、基板が金属基板である発明を含むものである。
したがって、第1世代発明1と最初の特許出願が包含する発明とを対比すると、第1世代発明1は、最初の特許出願が包含する発明であるとはいえない。

オ よって、第1世代分割出願が、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということはできない。

(4)本件特許の出願日について
ア 上記(1)のとおり、本件特許出願が、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということはできないから、本件特許出願を、第4世代分割出願の時にしたものとみなすことはできず、本件特許出願は、現実の出願日である平成26年10月23日に出願されたものというべきである。

イ 仮に、本件特許出願は、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということができるとする場合についても、上記(3)のとおり、第1世代分割出願が、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということはできないから、本件特許出願は、第1世代分割出願の現実の出願日である平成21年9月14日に出願されたものというべきである。

ウ なお、第1世代分割出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書を訂正した場合、特許法第128条の規定により、第1世代明細書等が変わるから、第2世代分割出願が、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということはできない恐れがあることに注意されたい。

エ 以上のとおり、本件特許の出願日は、平成26年10月23日である。
仮に、訂正請求により、本件特許出願が、分割出願の要件を満たすとしても、出願日は平成21年9月14日に遡及するにとどまり、本件特許の出願が、最初の特許出願の時に出願したものとみなすことはできない。

2 理由1、2(特許法第29条第1項第3号:新規性、特許法第29条第2項:進歩性)
上記刊行物6には、本件特許発明1?10の「基板」を「絶縁基板」とした発明が記載されている。
よって、本件特許発明1?10は、上記刊行物6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当する。
本件特許発明1?10は、仮に刊行物6に記載された発明ではないとしても、刊行物6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、本件特許発明1?10の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3 理由1、2(特許法第29条第1項第3号:新規性、特許法第29条第2項:進歩性)
(1)理由1、2(特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項)
ア 本件特許発明1について
…(略)…
そして、本件特許発明1は、特許異議申立書第17ページ第3行?第21ページ第20行に記載の理由により、上記甲1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当する。

イ 本件特許発明2について
…(略)…

(2)理由2(特許法第29条第2項)
ア 本件特許発明1について
…(略)…
そして、本件特許発明1は、特許異議申立書第27ページ第20行?第29ページ第13行に記載の理由により、上記甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明及び甲第2?5号証に例示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許発明1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

イ 本件特許発明2について
…(略)…

4 理由2(特許法第29条第2項:進歩性)
(1)本件特許発明1について
…(略)…

ア 甲第1号証に記載された発明として、甲第1号証の段落【0061】?【0067】に記載の、[樹脂層]として、「第二の形態における樹脂層」を採用した発光装置において、発光装置の樹脂層以外の具体的な構成について、段落【0125】?【0138】に記載の【実施例1】にかかる構成を採用したものを認定すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されている。
…(略)…
オ よって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明において、甲第2号証、甲第3号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(2)本件特許発明2、3について
…(略)…

5 理由3(特許法第36条第4項第1号:委任省令要件)
ア 本件特許出願の明細書の段落【0008】を参照すると、「発明が解決しようとする課題」は、「充分な電気的絶縁が達成でき、かつ、製造工程が容易で安価に製造することができる発光装置を提供すること」である。

イ 一方、本件特許発明1は、上記1(1)アに記載のとおりのものであり、本件特許発明1が備える「基板」は、「絶縁基板(又は『少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板』」には特定されていない。
…(略)…
オ 以上のとおり、本件の明細書の発明の詳細な説明の記載から、「その解決手段」として、本件特許発明1、3及び本件特許発明1、3を引用する本件特許発明2、4?10によってどのように課題が解決されたかを理解することができない。
したがって、本件の明細書の発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令で定めるところにより、当業者が本件特許発明1?10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
よって、本件特許発明1?10に係る特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものである。

6 理由4(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)
ア 本件の明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】等を参照すると、本件の「発明の課題」は、「充分な電気的絶縁が達成でき、かつ、製造工程が容易で安価に製造することができる発光装置を提供すること」であるものと認められる。
…(略)…
イ 【課題を解決するための手段】として、段落【0009】には、上記のように記載されているものの、本件の上記「発明の課題」を解決すること、すなわち、当該課題の一つである「充分な電気的絶縁」を達成するためには、請求項1、3に記載の発明特定事項に加え、「基板」が、「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板」であること、及び「複数の発光素子」が、「前記基板に直に搭載された複数の発光素子」であることも必要であるものと認められる。
しかしながら、本件の請求項1、3には、「基板」が、「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板」であること、及び「複数の発光素子」が、「前記基板上に直に搭載された複数の発光素子」であることが記載されていない。

ウ 以上のとおり、本件の請求項1、3及び請求項1、3を引用する請求項2、4?10において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなっている。
したがって、本件特許発明1?10は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
よって、本件特許発明1?10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。」

3 甲号証の記載
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証の記載事項
2回目取消理由通知において引用した甲第1号証(特開2005-109434号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を利用した半導体装置およびその製造方法に関わり、特に発光効率が高く、高輝度に発光可能な信頼性の高い発光装置、およびその製造方法を提供することを目的とする。」

(イ)「【背景技術】
【0002】
同一面側に正負両電極が設けられている半導体素子チップの電極形成面を支持基板の導体配線に対向させ、導電性部材を介して接合し、半導体素子と支持基板とを電気的および機械的に接続する実装方法がある。このような実装方法を本明細書中では「フリップチップ実装」と呼ぶこととする。
【0003】
半導体素子は、通常、超音波を利用して支持基板の導体配線にフリップチップ実装される。…(略)…
【0004】
このように、半導体発光素子がフリップチップ実装された発光装置の一例として、特開2003-8083号公報に記載の発光装置が挙げられる。特許文献1に開示される半導体発光素子は、正負一対の電極を有する面の大部分を占める正電極上に多数のバンプが配列され、同一の支持基板(以下、「サブマウント」と呼ぶことがある。)の導体配線に複数の半導体発光素子がフリップチップ実装されている。これにより、発光輝度の高い発光装置とすることができる。
【0005】
また、従来のフリップチップ実装において、半導体素子を支持基板と接合した後、半導体素子と支持基板との間に生じた隙間を埋めるように、その隙間に樹脂(以下、「アンダフィル樹脂」と呼ぶ。)が注入される(例えば、特開2001-244299号公報参照。)。これにより、半導体装置の信頼性を向上させることができる。」

(ウ)「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、半導体素子を大型化したとき、あるいは上述のように同一の支持基板に多数の半導体素子を実装したとき、発光装置の外部へ効率よく放熱を行うことができず、発光装置の高輝度化に限界がある。」

(エ)「【発明の効果】
【0023】
上述したように、本発明は、同一の支持基板にフリップチップ実装された複数の半導体素子からの放熱を効率よく行うことができ、従来と比較して、発光装置の高輝度化を実現することができる。また、本発明は、硬化状態で柔らかく弾力性を有する部材を、発光素子と支持基板との間に有しており、放熱効果が向上するだけでなく、光取り出し効率が向上する。また、硬化状態で柔らかく弾力性を有する部材を樹脂層として、予め支持基板に成型した後、LEDチップの電極を支持基板の導体配線に接合することにより、従来のように接合した後に樹脂層を形成する場合と比較して作業性が向上する。」

(オ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
同一面側に正負一対の電極を有する半導体素子と、該電極が導電部材を介して対向される導体配線を有する支持基板と、を有する半導体装置において、本発明者は種々の検討の結果、支持基板の主面に垂直な方向から見て、導体配線が、半導体素子の電極の何れか一方の電極に接合する導電部材を有する第一の領域と、該第一の領域の少なくとも一部を包囲し他方の電極に接合する導電部材を有する第二の領域とを有することにより上記課題を解決するに至った。
…(略)…
【0032】
[半導体素子]
本発明における半導体素子は、発光素子、受光素子、およびそれらの半導体素子を過電圧による破壊から守る保護素子、あるいはそれらを組み合わせたものとすることができる。ここでは特に、発光素子として、LEDチップについて説明する。LEDチップを構成する半導体発光素子としては、ZnSeやGaNなど種々の半導体を使用したものを挙げることができるが、蛍光物質を使用する場合には、その蛍光物質を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
…(略)…
【0036】
p型半導体層には、発光素子に投入された電流をp型半導体層の全面に広げるための拡散電極が設けられる。さらに、拡散電極およびn型半導体層には、バンプや導電性ワイヤのような導電部材と接続するp側台座電極およびn側台座電極がそれぞれ設けられる。本形態における導体配線は、支持基板に対して、正負一対の配線パターンが絶縁分離されて互いに一方を包囲するように形成される。
…(略)…
【0046】
[支持基板]
本形態における支持基板とは、少なくとも発光素子の電極に対向する面に導体配線が施され、フリップチップ実装された発光素子を固定・支持するための部材である。さらに、支持基板をリード電極に導通させるときには、発光素子に対向する面からリード電極に対向する面にかけて導電部材により導体配線が施される。…(略)…
【0055】
[樹脂層]
(第一の形態における樹脂層)
…(略)…
【0061】
(第二の形態における樹脂層)
同一の支持基板に対して複数の発光素子がフリップチップ実装されるとき、発光素子と、その発光素子に隣接する別の発光素子との間に間隙が生じる。仮に、それらの発光素子を波長変換部材にて被覆しようとすると、波長変換部材は、隙間にも入り込み、隙間に存在する蛍光体の量が他の発光素子の周辺と比較して相対的に多くなる。したがって、発光装置は、全方位に渡って色度が均一な発光を観測することができなくなる。
【0062】
そこで、本形態においては、上記隙間を封止する透光性の樹脂層を形成した後、複数の発光素子の光出射面側を被覆するように波長変換部材を均一な厚みで形成する。これにより、発光素子からの光が照射される波長変換部材自体の厚み(実際には、含有される蛍光体の量)は、発光観測面側において、ほぼ等しくなる。したがって、本形態の発光装置は、発光観測方位によって色度が均一な光学特性に優れた発光装置とすることができる。以下、図面を参照しながら、第二の形態における樹脂層について詳細に説明する。
【0063】
図10および図11は、本形態にかかる発光装置の一実施例を示す模式的な断面図である。本形態において、フリップチップ実装された発光素子と発光素子との間に生じた間隙は、透光性の樹脂層104aにより封止される。さらに、それらの発光素子の光出射面(例えば、LEDチップの透光性基板面)および樹脂層の上面は、該発光素子からの光の少なくとも一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光体を含有する波長変換部材115により被覆されている。
【0064】
本形態における樹脂層104aは、樹脂が発光素子とその発光素子に隣接する別の発光素子との間隙に充填され、硬化されることにより形成されることが好ましい。例えば、樹脂の充填方法は、孔版印刷、スクリーン印刷、ポッティングあるいはメタルマスク印刷法などによることができる。あるいは、このような形成方法に限定されることなく、上記隙間に嵌合するように別工程で成型された透光性の部材を樹脂層104aの代わりに配置させてもよい。あるいは、上述したように、フリップチップ実装前に形成する樹脂層104(すなわち、第一の形態における樹脂層)を上記隙間が生じる箇所にも形成し、本形態における樹脂層104aとしても構わない。
…(略)…
【0066】
本形態における樹脂層104aは、図10に示されるように、上記発光素子の少なくとも側面を被覆することが好ましい。このように側面を被覆することにより、波長変換部材115が、その形成工程において発光素子の側面側に入り込むことを防ぐことができる。また、樹脂層104aの上面は、発光素子の上面(例えば、LEDチップの透光性基板面)とほぼ同一平面とすることが好ましい。
【0067】
さらに、透光性の樹脂層は、上記隙間を封止するだけでなく、さらに発光素子の光出射面となる主面側を均一な厚みで被覆しても構わない。図11は、本形態にかかる発光装置の一実施例を示す模式的な断面図である。図11に示されるように、例えば、発光素子と発光素子の隙間を樹脂層104aにて封止し、それらの発光素子の光出射面、例えばLEDチップの透光性基板面を被覆する樹脂層104bを形成した後、樹脂層104bに対して波長変換部材115を均一な厚みで積層させる。これにより、発光観測方位によって色度が均一な光学特性に優れた発光装置とすることができる。また、発光素子と蛍光体とを樹脂層を介して離間させることにより、発熱による蛍光体の劣化およびその発光輝度低下を抑制し、発光効率の高い発光装置とすることができる。
【0068】
[封止部材]
本発明において、封止部材は、半導体素子および樹脂層を封止し、半導体素子と樹脂層との隙間を埋め、さらに半導体素子などを外部環境からの外力、塵芥や水分などから保護するために設けることができる。封止部材は、形状を種々変化させることによって発光素子から放出される光の指向特性を種々選択することができる。即ち、封止部材の形状を凸レンズ形状、凹レンズ形状とすることによってレンズ効果をもたすことができる。そのため、所望に応じて、ドーム型、発光観測面側から見て楕円状、立方体、三角柱など種々の形状を選択することができる。
…(略)…」

(カ)「【実施例1】
【0125】
図1は、本実施例にかかる半導体装置について、図3のX-Xにおける模式的な断面図である。図2は、本実施例にかかる支持基板に導体配線を施した状態を示す模式的な上面図である。図3は、本実施例にかかる支持基板に発光素子をフリップチップボンディングした状態を示す模式的な上面図である。なお、図3は発光素子を発光観測面側から見た状態を示しており、p側台座電極106、n側台座電極107およびバンプ105が透光性基板から透けて見えている。さらに、図4は、実施例における発光装置の回路構成を模式的に示す。
【0126】
本実施例における発光装置100は、2つの半導体発光素子101が同一のサブマウント103にバンプ105により、フリップチップ実装されてなる。本実施例における発光素子は、活性層として単色性発光ピークが可視光である475nmのIn_(0.2)Ga_(0.8)N半導体を有する窒化物半導体素子を用いる。より詳細に説明すると、発光素子であるLEDチップは、洗浄させたサファイア基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化物半導体を成膜させることにより形成させることができる。ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgを切り替えることによってn型窒化物半導体やp型窒化物半導体となる層を形成させる。
…(略)…
【0129】
図1に示すように、本発明の一実施例に使用される支持基板103は、窒化アルミニウムのプレートにAuを材料とする導体配線108、109が施され、バンプ105を介してp側台座電極106およびn側台座電極107とそれぞれ対向する正負一対の電極が絶縁分離されている。ここで、本実施例における導体配線は、正負一対の電極が互いに一部を包囲するように櫛状に形成されている。このような形状とすることにより、フリップチップ実装された半導体発光素子からの放熱性を向上させることができる。さらに、LEDチップのp側台座電極106に対向する領域の面積は、n側台座電極107に対向する領域の面積より大きい。また、本実施例における発光素子は、図4の回路図に示されるように二つの発光ダイオードが並列接続とされたものである。このように並列接続とすることにより、直列接続とした場合と比較して、導体配線が簡略化され、放熱性を向上させることができる。
【0130】
また、本実施例において樹脂層104とされるシリコーン樹脂は、貫通孔が設けられ、貫通孔の底面に導体配線が露出されている。そして、本実施例にかかる発光装置はLEDチップの正負一対の両電極がフリップチップ実装により、Auバンプを介してAuを材料とする導体配線とフリップチップボンディングされてなる。以下、本実施例における発光装置の製造方法を説明する。
【0131】
(工程1)
窒化アルミニウムを材料とするウエハの所定の位置に、導体配線となるAu層をメッキにより形成する。本実施例における導体配線は、図2に示されるように、LEDチップの正電極が対向する正の導体配線、およびLEDチップの負電極が対向する負の導体配線が絶縁分離され、互いに一部を包囲するように形成されている。例えば、図2に示される支持基板は、上述したLEDチップが2つ隣接されてフリップチップ実装される支持基板である。支持基板に配される正(+)極側の導体配線は、外部電極(図示せず)の正極側に接続される領域から、上記複数のLEDチップのうち一方のLEDチップ(A)のp側台座電極に対向する位置を経由して他方のLEDチップ(B)のp側台座電極に対向する位置まで延伸している。同様に、支持基板に配される負(-)極側の導体配線は、LEDチップ(A)およびLEDチップ(B)の一方のn側台座電極に対向する領域から、外部電極(図示せず)の負極側に接続される領域、およびLEDチップ(B)の他方のn側台座電極に対向する領域を経由して、LEDチップ(A)の他方のn側台座電極に対向する領域まで延伸している。…(略)…
【0136】
(工程5)
最後に、所望の数のLEDチップが含まれるように、支持基板をカットし、パッケージに搭載して導電性ワイヤを介して外部電極と接続させ、発光装置とする。なお、カット後の支持基板の形状は、矩形の他、如何なる形状でも構わない。」

(キ)「【実施例5】
【0143】
図12は、本実施例における発光装置に利用される発光素子の上面図であり、図13は、サブマウントの上面図である。また、図14は、サブマウントに発光素子がフリップチップ実装された本実施例にかかる発光装置の上面図である。
…(略)…
【0147】
発光素子がフリップチップ実装される側から本実施例にかかるサブマウントを見ると、反射膜兼電極(Al)の導電性パターンが正負一対配され、その上に、上記電極(Ti/Au)が楕円状に複数形成されている。本実施例において、楕円状の電極の個数は、一つの発光素子について、正電極の接合用に12個、その12個を挟むように負電極の接合用に6個それぞれ形成される。また、正負の導電性パターンは、上述の実施例1と同様、サブマウントの主面に垂直な方向から見て、互いにその一部を包囲するように対向して延伸する部分を有し、櫛状あるいは鍵状に形成されている。すなわち、サブマウントに配される導電性パターンは、発光素子201と対向する領域において、発光素子の正電極が対向する導体配線204aが、発光素子の負電極が対向する導体配線204bの間となるように配されている。また、発光素子の正電極が対向する導電性パターンの面積は、発光素子の負電極が対向する導電性パターンの面積より広い。また、正負の導電パターンが絶縁分離され発光素子が対向する領域において、それら正負の導電パターンの外縁は、凹凸状あるいは波状になっている。」

(ク)図1?4、10、11は、以下のとおりのものである。


イ 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証に記載された発明として、甲第1号証の段落【0061】?【0067】に記載の、[樹脂層]として、「第二の形態における樹脂層」を採用した発光装置において、発光装置の樹脂層以外の具体的な構成について、段落【0125】?【0138】に記載の【実施例1】にかかる構成を採用したものを、段落【0024】、【0032】、【0036】も参照して、認定すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されている。

「発光装置100であって、
2つの半導体発光素子101が同一のサブマウント(支持基板)103にバンプ105により、フリップチップ実装されてなり、
支持基板103は、窒化アルミニウムのプレートに導体配線108、109が施され、バンプ105を介してp側台座電極106およびn側台座電極107とそれぞれ対向する正負一対の電極が絶縁分離されており、
導体配線は、LEDチップの正電極が対向する正の導体配線、およびLEDチップの負電極が対向する負の導体配線が絶縁分離され、互いに一部を包囲するように形成されており、
発光素子と発光素子の隙間を樹脂層104aにて封止し、それらの発光素子の光出射面、例えばLEDチップの透光性基板面を被覆する樹脂層104bを形成した後、樹脂層104bに対して波長変換部材115を均一な厚みで積層させるものであり、
当該発光装置100は、製造工程で、最後に、所望の数のLEDチップが含まれるように、支持基板をカットし、パッケージに搭載して導電性ワイヤを介して外部電極と接続させ、発光装置とされる、発光装置。」

(2)甲第3号証について
2回目取消理由通知において引用した甲第3号証(特開2002-9349号公報 )には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0003】
図12は、そのLED面発光装置を示す。この装置は、基板103に形成された多数の発光ドット101が配線基板102にマトリクス状に搭載されている。配線基板102の表面の所定位置にはLEDチップ108が配設され、このLEDチップ108の一方の電極と配線基板102上の配線パターン109との間がボンディングワイヤ110によって接続されている。更に、LEDチップ108の他方の電極は、スルーホール111を通して裏面にまで布線されている配線パターン112に接続されている。基板103には、LEDチップ108を取り囲むようにして円錐穴113が形成されている。この円錐穴113内には透明樹脂114が埋め込まれ、凹レンズになるようにしている。」

(イ)図12は、以下のとおりのものである。


4 判断
(1)本件特許の出願日について
(2回目取消理由通知に記載した「1 本件特許の出願日について」(2回目取消理由通知2?26頁)について)
ア 第1世代分割出願の分割要件について
平成29年6月28日に請求された訂正審判2017-390053号において訂正をすべき旨の審決が確定したことにより、第1世代発明1?8、10?13は、「基板」について、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」に特定されている。
そして、上記「2 取消理由の概要」の「1 本件特許の出願日について」「(3)第1世代分割出願の分割要件について」のウのとおり、最初の特許出願は、「基板」が「絶縁性を有する材料で形成されている」「絶縁基板」である発明を包含する。
したがって、第1世代発明1?8、10?13は、最初の特許出願が包含する発明である。
よって、第1世代分割出願は、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということができる。

イ 第2世代分割出願の分割要件について
平成29年6月28日に請求された訂正審判2017-390054号において訂正をすべき旨の審決が確定したことにより、第2世代発明1?7、10、11は、「基板」について、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」に特定されている。
そして、平成29年6月28日に請求された訂正審判2017-390053号において訂正をすべき旨の審決が確定したことにより、第1世代明細書等の記載によると、第1世代分割出願は、「基板」が、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」である発明を包含する。
したがって、第2世代発明1?7、10、11は、第1世代分割出願が包含する発明である。
よって、第2世代分割出願は、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということができる。

ウ 第3世代分割出願の分割要件について
平成29年6月28日に請求された訂正審判2017-390055号において訂正をすべき旨の審決が確定したことにより、第3世代発明1?8は、「基板」について、「絶縁性を有する材料で形成されている、熱伝導性の高い絶縁基板」に特定されている。
そして、平成29年6月28日に請求された訂正審判2017-390054号において訂正をすべき旨の審決が確定したことにより、第2世代明細書等の記載によると、第2世代分割出願は、「基板」が、「絶縁性を有する材料で形成されている、熱伝導性が高い絶縁基板」である発明を包含する。
したがって、第3世代発明1?8は、第2世代分割出願が包含する発明である。
よって、第3世代分割出願は、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということができる。

エ 第4世代分割出願の分割要件につて
平成29年6月28日に請求された訂正審判2017-390056号において訂正をすべき旨の審決が確定したことにより、第4世代発明1?11は、「基板」について、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」に特定されている。
そして、平成29年6月28日に請求された訂正審判2017-390055号において訂正をすべき旨の審決が確定したことにより、第3世代明細書等の記載によると、第3世代分割出願は、「基板」が、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」である発明を包含する。
したがって、第4世代発明1?11は、第3世代分割出願が包含する発明である。
よって、第4世代分割出願は、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということができる。

オ 本件特許出願の分割要件について
上記「1 本件発明」のとおり、本件訂正発明1?8、10は、「基板」について、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」に特定されている。
そして、平成29年6月28日に請求された訂正審判2017-390056号において訂正をすべき旨の審決が確定したことにより、第4世代明細書等の記載によると、第4世代分割出願は、「基板」が、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」である発明を包含する。
したがって、本件訂正発明1?8、10は、第4世代分割出願が包含する発明である。
よって、本件特許出願は、特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということができる。

カ 本件特許の出願日について
上記アないしオのとおり、第1世代分割出願ないし第4世代分割出願及び本件特許出願は、いずれも特許法第44条第1項に規定する新たな特許出願である(分割出願の要件を満たす)ということができるから、本件特許出願は、最初の特許出願の時にしたものとみなすことができ、最初の特許出願の出願日である平成19年3月15日に出願されたものというべきである。

(2)2回目取消理由通知に記載した「2 理由1、2(特許法第29条第1項第3号:新規性、特許法第29条第2項:進歩性)」(2回目取消理由通知26頁)について
上記「2 取消理由の概要」における刊行物6(特開2008-227412号公報)は、平成20年9月25日に公開された刊行物であるから、特許法第29条第1項第3号の「特許出願前に頒布された刊行物」に該当しない。
よって、本件訂正発明1?8、10は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するとはいえず、また、本件特許発明1?8、10の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(3)2回目取消理由通知に記載した「3 理由1、2(特許法第29条第1項第3号:新規性、特許法第29条第2項:進歩性)」(2回目取消理由通知26?30頁)について
ア 本件訂正発明1について
(ア)本件訂正発明1
本件訂正発明1は、上記1に記載のとおりのものである。

(イ)対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明における支持基板202、発光素子201及び樹脂層104aは、それぞれ本件訂正発明1の基板、発光部に相当する。

b 甲1発明の「窒化アルミニウムのプレート」は、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」であるといえる。
また、甲1発明は、「2つの半導体発光素子101が同一のサブマウント(支持基板)103にバンプ105により、フリップチップ実装されてなり」、「支持基板103は、窒化アルミニウムのプレートに、導体配線108、109が施され、バンプ105を介してp側台座電極106およびn側台座電極107とそれぞれ対向する正負一対の電極が絶縁分離されており、導体配線は、LEDチップの正電極が対向する正の導体配線、およびLEDチップの負電極が対向する負の導体配線が絶縁分離され、互いに一部を包囲するように形成されて」いるものであるところ、「導体配線108」及び「導体配線109」は、それぞれ本件訂正発明1の「アノード用配線パターン」及び「カソード用配線パターン」に相当する。
したがって、甲第1号証の図1?3、10、11等も参照すると、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の点で一致するといえる。
「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面上に形成された発光部と、
前記発光部を囲む前記絶縁基板上面の周辺領域と」
「前記絶縁基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンと」を備える点。

c また、甲1発明は、「当該発光装置100は、製造工程で、最後に、所望の数のLEDチップが含まれるように、支持基板をカットし、パッケージに搭載して導電性ワイヤを介して外部電極と接続させ、発光装置とされる」ものであり、甲第1号証の図1、3、4も参照すると、「正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランド」を備えるものであることは明らかである。
したがって、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の点で一致するといえる。
「前記絶縁基板の端から離して、前記周辺領域内の前記絶縁基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと」を備え、
「前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに」、「それぞれ接続されており」、
「前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記絶縁基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり」、
「前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあ」る点。

d さらに、甲1発明は、「発光素子と発光素子の隙間を樹脂層104aにて封止し、それらの発光素子の光出射面、例えばLEDチップの透光性基板面を被覆する樹脂層104bを形成した後、樹脂層104bに対して波長変換部材115を均一な厚みで積層させるものであり」、甲第1号証の図11も参照すると、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の点で一致するといえる。
「前記発光部は、前記絶縁基板上に」「搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え」、
「全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され」、
「前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記絶縁基板の上面において前記発光部を完全に囲」むものである点。

e したがって、本件訂正発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面上に形成された発光部と、
前記発光部を囲む前記絶縁基板上面の周辺領域と、
前記絶縁基板の端から離して、前記周辺領域内の前記絶縁基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、
前記絶縁基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、
前記発光部は、前記絶縁基板上に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、
前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、それぞれ接続されており、
前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記絶縁基板の上面において前記発光部を完全に囲み、
前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記絶縁基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、
全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にある、発光装置。」

<相違点1>
本件訂正発明1では、「前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランド」が、「かつ前記発光部を挟んで対向して」いるのに対し、甲1発明では、そのようなものではない点。
<相違点2>
本件訂正発明1では、「前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記正電極外部接続ランドに隣接する正極の極性表示を含む」のに対し、甲1発明では、図3では、符号108の付近に「+」が附されているものの、当該「+」が「極性表示」であるとは特定されていない点。
<相違点3>
本件訂正発明1では、発光素子について、「前記絶縁基板上に直に搭載された」ものであるのに対し、甲1発明では、「バンプ105により、フリップチップ実装されてなり」、そのようなものではない点。
<相違点4>
本件訂正発明1では、「前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されて」いるのに対し、甲1発明では、「前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターン(導体配線108)に、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターン(導体配線109)に」、「それぞれ接続され」いるといえるものの、「前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じて」接続されているものではない点。

(ウ)判断
a 先ず、相違点3について検討する。
(a)甲1発明は、「2つの半導体発光素子101が同一のサブマウント(支持基板)103にバンプ105により、フリップチップ実装されてな」るものである。
上記3(1)ア(イ)、(エ)に摘記の甲第1号証の段落【0002】?【0005】、【0023】を参照すると、甲第1号証に記載の技術的事項は、「フリップチップ実装」と呼ばれる「同一面側に正負両電極が設けられている半導体素子チップの電極形成面を支持基板の導体配線に対向させ、導電性部材を介して接合し、半導体素子と支持基板とを電気的および機械的に接続する実装方法」における課題を解決したものであることは明らかである。
また、上記3(1)ア(カに摘記の甲第1号証の段落【0129】に、「導体配線は、…。このような形状とすることにより、フリップチップ実装された半導体発光素子からの放熱性を向上させることができる。」と記載されているように、「導体配線」を、「LEDチップの正電極が対向する正の導体配線、およびLEDチップの負電極が対向する負の導体配線が絶縁分離され、互いに一部を包囲するように形成されて」いる形状とすることで、放熱性を向上させることができるものである。
そうすると、甲1発明の発光装置は、バンプ105を介して支持基板103上にフリップチップ実装することが前提であるから、甲1発明において、発光素子を、支持基板上に直に搭載されたものとすることには阻害要因がある。

(b)次に、2回目取消理由通知で引用した甲第2号証(特開2005-32999号公報 )、甲第3号証(特開2002-9349号公報 )、甲第4号証(特開2003-8083号公報)、及び甲第5号証(特開2006-210949号公報)を参照すると、甲第2号証、甲第4号証、及び甲第5号証には、基板上に直に搭載された発光素子は記載されておらず、甲第3号証には、従来のLED面発光装置として、段落【0003】、図12には、配線基板102の表面にLEDチップ108が配設され、LEDチップ108の一方の電極と配線基板102上の配線パターン109との間がボンディングワイヤ110によって接続されたものが記載されている(上記3(2)参照。)。
上記(a)で検討したように、甲1発明の発光装置は、バンプ105を介して支持基板103上にフリップチップ実装することが前提であり、かつ、甲1発明は、放熱性を向上させることができるものである。
したがって、甲1発明において、甲第3号証の記載を参照したとしても、発光素子を、支持基板上に直に搭載されたものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、甲1発明において、甲第2号証ないし甲第5号証に記載に記載の技術を組み合わせたとしても、本件訂正発明1の相違点3に係る構成を導くことはできない。

(c)更に、特許異議申立人は、平成28年12月7日付けで提出した意見書第2?3頁の「3(2)(2-2)相違点iiについて」において、「フリップチップボンディング実装するかワイヤボンディング実装するかは発光素子の電極位置により決せられる設計事項であり、フリップチップボンディング実装の発光素子にかえてワイヤボンディング実装の発光素子を採用することは当業者が適宜になし得る事項であるから、(特許権者が主張する)相違点iiは実質的な相違点を構成しないと思料する。すなわち、参考資料1の14頁には、半導体チップの接続方式として、「(a)ワイヤボンディング」と「(c)フリップチップ」が開示されているところ、当業者が甲第1号証に記載されたフリップチップボンディング実装にかえてワイヤボンディング実装をすることは適宜になし得る事項である。このことは、参考資料2…」と主張するとともに、「参考資料1(「よくわかるプリント配線板のできるまで」、日刊工業新聞社、2004年1月30日初版2刷発行、6?15頁)」と「参考資料2(特開2002-49326号公報)」を提示して、特許権者が主張する相違点iiが、「仮に実質的な相違点であるとされたとしても参考資料1および2に例示された周知ないし慣用の技術を特定するものに過ぎないから、相違点iiを考慮しても本件訂正発明1が進歩性を有することにならないと思料する。」と主張しているので、これに対し、以下において検討する。

参考資料1の14頁の「図1.7 ベアチップの接続方式」には、(a)ワイヤボンディング、(b)TAB、(c)フリップチップの図が示されており、15頁には、「ベアチップ実装法には3つの方法があります。・ワイヤボンディング接続 ・TAB接続 ・フリップチップ接続」と記載され、それぞれについての説明がある。
しかしながら、上記(a)で検討したように、甲1発明の発光装置は、バンプ105を介して支持基板103上にフリップチップ実装することが前提であるから、ワイヤボンディングチップ接続が周知ないし慣用の技術であるとしても、甲1発明において、フリップチップ接続に替えて、ワイヤボンディングチップ接続を採用し、発光素子を、支持基板上に直に搭載されたものとすることには阻害要因がある。
したがって、甲1発明において、参考資料1及び2の記載を参照したとしても、発光素子を、支持基板上に直に搭載されたものとすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、甲1発明において、甲第2号証ないし甲第5号証並びに参考資料1及び2に記載に記載の技術を組み合わせたとしても、本件訂正発明1の相違点3に係る構成を導くことはできない。

b 判断についてのまとめ
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明と同一であるとはいえない。
また、相違点1、相違点2及び相違点4について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第5号証並びに参考資料1及び2の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 本件訂正発明2?8、10について
(ア)本件訂正発明3について
本件訂正発明3は、上記1に記載のとおりのものである。

本件訂正発明3と甲1発明とを対比する。
本件訂正発明3は、本件訂正発明1における「前記基板は、前記周辺領域に配置され、前記正電極外部接続ランドに隣接する正極の極性表示を含む」を、「前記基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む」とし、他の発明特定事項は本件訂正発明1と同一である。
したがって、一致点は上記ア(イ)eの<一致点>のとおりであり、相違点は上記ア(イ)eの<相違点1>、<相違点3>、<相違点4>(ただし、「本件訂正発明1では」を「本件訂正発明3では」と読み替える。)及び以下の<相違点5>となる。
<相違点5>
本件訂正発明3では、「前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む」のに対し、甲1発明では、甲第1号証の図3では、符号109の付近に「-」が附されているものの、当該「-」が「極性表示」であるとは特定されていない点。

先ず、相違点3について検討すると、上記ア(ウ)aで検討したとおりであるから、相違点1、相違点4及び相違点5について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第5号証の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)本件訂正発明2、4?8、10について
本件訂正発明2、4?8、10は、本件訂正発明1又は3の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものである。
したがって、上記ア(ウ)で検討したのと同様な理由で、本件訂正発明4、7、8、10は、甲1発明と同一であるとはいえず、また、本件訂正発明2、4?8、10は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第5号証の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 2回目取消理由通知に記載した「3 理由1、2(特許法第29条第1項第3号:新規性、特許法第29条第2項:進歩性)」についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した「3 理由1、2(特許法第29条第1項第3号:新規性、特許法第29条第2項:進歩性)」によっては、本件訂正発明1?8、10に係る特許を取り消すことはできない。

(4)2回目取消理由通知に記載した「4 理由2(特許法第29条第2項:進歩性)」(2回目取消理由通知30?34頁)について
ア 本件訂正発明1について
本件訂正発明1は、上記1に記載のとおりのものである。
本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、上記(3)ア(イ)eのとおり、<一致点>及び<相違点1>ないし<相違点4>である。
相違点1?4について検討すると、上記(3)ア(ウ)aで、相違点3について、検討したのと同様な理由で、甲1発明において、甲第2号証ないし甲第5号証に記載に記載の技術を組み合わせたとしても、本件訂正発明1の相違点3に係る構成を導くことはできない。
したがって、相違点1、相違点2及び相違点4について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第5号証の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 本件訂正発明2?8、10について
上記(3)イで検討したのと同様な理由で、本件訂正発明2?8、10は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第5号証の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 2回目取消理由通知に記載した「4 理由2(特許法第29条第2項:進歩性)」についてのまとめ
以上のとおりであるから、2回目取消理由通知に記載した「4 理由2(特許法第29条第2項:進歩性)」によっては、本件訂正発明1?8、10に係る特許を取り消すことはできない。

(5)2回目取消理由通知に記載した「5 理由3(特許法第36条第4項第1号:委任省令要件)」(2回目取消理由通知34?36頁)について
本件特許出願の明細書の段落【0008】を参照すると、「発明が解決しようとする課題」は、「充分な電気的絶縁が達成でき、かつ、製造工程が容易で安価に製造することができる発光装置を提供すること」である。
一方、本件訂正発明1は、上記1に記載のとおりのものであり、本件訂正発明1が備える「基板」は、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」に特定されている。
したがって、本件訂正発明1において、当業者であれば、上記に記載の「発明が解決しようとする課題」は、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」との課題解決手段によって、解決されることを理解することができる。
また、本件訂正発明3は、上記1に記載のとおりのものであり、本件訂正発明3が備える「基板」は、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」に特定されているから、本件訂正発明1と同様に、当業者であれば、「発明が解決しようとする課題」は、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」との課題解決手段によって、解決されることを理解することができる。

したがって、本件の明細書の発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令で定めるところにより、当業者が本件訂正発明1?8、10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
よって、本件訂正発明1?8、10に係る特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものではない。

以上のとおりであるから、2回目取消理由通知に記載した「5 理由3(特許法第36条第4項第1号:委任省令要件)」によっては、本件訂正発明1?8、10に係る特許を取り消すことはできない。

(6)2回目取消理由通知に記載した「6 理由4(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)」(2回目取消理由通知36?38頁)について
本件の明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】等を参照すると、本件の「発明の課題」は、「充分な電気的絶縁が達成でき、かつ、製造工程が容易で安価に製造することができる発光装置を提供すること」であるものと認められる。
したがって、本件の上記課題の一つである「充分な電気的絶縁」を達成するためには、請求項1、3において、「基板」が、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」であること、及び「複数の発光素子」が、「前記絶縁基板上に直に搭載された複数の発光素子」であることも必要であるものと認められる。
そして、本件の請求項1、3には、「基板」が、「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」であること、及び「複数の発光素子」が、「前記絶縁基板上に直に搭載された複数の発光素子」であることが記載されている。

したがって、本件の請求項1、3及び請求項1、3を引用する請求項2、4?8、10において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されており、本件訂正発明1?8、10は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、本件訂正発明1?8、10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものではない。

以上のとおりであるから、2回目取消理由通知に記載した「6 理由4(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)」によっては、本件訂正発明1?8、10に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、2回目取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし8及び10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし8及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項9は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項9に対して、特許異議申立人アクシス国際特許業務法人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
発光装置およびその製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置の光源としてLEDが多く用いられるようになってきている。LEDを使った照明装置の白色光を得る方法として、赤色LED、青色LEDおよび緑色LEDの三種類のLEDを用いる方法、青色LEDから発した励起光を変換して黄色光を発する蛍光体を用いる方法などがある。照明用光源としては、十分な輝度の白色光が要求されているために、LEDチップを複数個用いた照明装置が商品化されている。
【0003】
このような照明装置の一例として、たとえば特開2003-152225号公報(特許文献1)には、図14に模式的に示すような発光装置101が開示されている。図14に示す発光装置101は、アルミニウムで形成された金属板102上に凹状の素子格納部103が設けられるとともに、素子格納部間には、絶縁性のガラスエポキシ基板であって、その上に銅箔で形成された配線部105が設けられたプリント回路基板104が形成されてなる。そして、図14に示す例では、素子格納部103に載置(配置)された発光素子106と、前記プリント回路基板104上の配線部105とが、ボンディングワイヤ107を介して電気的に接続されてなる。さらに、この素子格納部103を、発光素子106およびボンディングワイヤ107ごと覆うようにして、樹脂封止体108にて封止されて構成される。特許文献1には、このような構成を備えることによって、放熱性を向上でき、かつ、発光ダイオードチップからの光を効率良く外部へ取り出すことができる発光装置を提供できると記載されている。
【0004】
しかしながら、図14に示すような発光装置101では、アルミニウムで形成された金属板102の直近に、銅箔で形成された配線部105が設けられたプリント回路基板104が配置されている(図中、金属板102と配線部105との間の間隔として、水平方向に関する直線距離dを示している)。このため、金属板102と配線部105との間に充分な電気的絶縁が達成されていないことが想定される。また、図14に示すような発光装置101では、ガラスエポキシ基板で形成されたプリント回路基板104を有するため、製造工程が複雑となり、安価な発光装置を提供できないという問題もある。
【0005】
また、たとえば特開2006-287020号公報(特許文献2)には、図15に模式的に示すようなLED部品201が開示されている。図15に示すLED部品201は、配線基板202に形成された貫通孔内に、LEDチップ204が搭載された金属またはセラミックで形成された放熱板203が接合されてなる。そして、図15に示す例では、LEDチップ204と、配線基板202に形成された配線パターン205とがボンディングワイヤWにより電気的に接続され、このLEDチップ204およびボンディングワイヤWが透明樹脂で形成された樹脂封止体206により埋設されてなる。特許文献2には、このような構成を備えることによって、LEDチップの発熱を効率的に放熱させることができ、生産性に優れた表面実装型のLED部品およびその製造方法を提供できると記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2には、LEDチップ204およびボンディングワイヤWを埋設するための透明樹脂を塗布する方法について詳細には記載されていない。また、特許文献2に開示された図15に示すLED部品201では、配線パターン205は配線基板202の側面と裏面の一部に形成されているため製造が困難であり、安価に製造することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-152225号公報
【特許文献2】特開2006-287020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、充分な電気的絶縁が達成でき、かつ、製造工程が容易で安価に製造することができる発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板と、前記絶縁基板の上面上に形成された発光部と、前記発光部を囲む前記絶縁基板上面の周辺領域と、前記絶縁基板の端から離して、前記周辺領域内の前記絶縁基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、前記絶縁基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、前記発光部は、前記絶縁基板上に直に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており、前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記絶縁基板の上面において前記発光部を完全に囲み、前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記絶縁基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記正電極外部接続ランドに隣接する正極の極性表示を含む、発光装置に関する。
【0010】
本発明の発光装置において、前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含むことが好ましい。
【0011】
また本発明は、絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板と、前記絶縁基板の上面上に形成された発光部と、前記発光部を囲む前記絶縁基板上面の周辺領域と、前記絶縁基板の端から離して、前記周辺領域内の前記絶縁基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、前記絶縁基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、前記発光部は、前記絶縁基板上に直に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており、前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記絶縁基板の上面において前記発光部を完全に囲み、前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記絶縁基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む発光装置についても提供する。
【0012】
本発明の発光装置は、前記絶縁基板を貫通する貫通孔が前記周辺領域に形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の発光装置における前記絶縁基板は1mmの厚みを有することが好ましい。
【0014】
本発明の発光装置は、切り欠き状の穴が前記周辺領域に形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明の発光装置において、前記封止体は、六角形状、円形状、または矩形状の上面形状を有することが好ましい。
【0016】
また本発明の発光装置において、前記絶縁基板は、円形状、または矩形状の上面形状を有することが好ましい。
【0017】(削除)
【0018】
本発明の発光装置は、前記封止体が蛍光体を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、充分な電気的絶縁が達成でき、かつ、製造工程が容易で安価に製造することができる発光装置およびその製造方法を提供することができる。また本発明の発光装置は、従来と比較して演色性が向上され、また色ズレが発生しにくいものであり、液晶ディスプレイ、照明用光源に好適に適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好ましい第1の例の発光装置1を模式的に示す上面図である。
【図2】図1に示す例の発光装置1における発光部2を模式的に示す断面図である。
【図3】図1に示す例の発光装置1の絶縁基板3を模式的に示す上面図である。
【図4】本発明の好ましい第2の例の発光装置21を模式的に示す上面図である。
【図5】本発明の好ましい第3の例の発光装置31を模式的に示す上面図である。
【図6】本発明の好ましい第4の例の発光装置41を模式的に示す上面図である。
【図7】本発明の好ましい第5の例の発光装置51を模式的に示す上面図である。
【図8】図1に示した例の発光装置1を蛍光灯型LEDランプ61に適用した場合を示す斜視図である。
【図9】図6に示した例の発光装置41を蛍光灯型LEDランプ71に適用した場合を示す斜視図である。
【図10】図6に示した例の発光装置41を電球型LEDランプ81に適用した場合を示す断面図である。
【図11】本発明の発光装置の製造方法の好ましい一例を段階的に示す図である。
【図12】本発明の発光装置の製造方法に用いられる、好ましい一例のシリコーンゴムシート91を模式的に示す図である。
【図13】CIEの色度座標を示すグラフである。
【図14】従来の典型的な発光装置101を模式的に示す断面図である。
【図15】従来の典型的なLED部品201を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の好ましい第1の例の発光装置1の上面図であり、図2は、図1に示す例の発光装置1における発光部2を模式的に示す断面図である。また図3は、図1に示す例の発光装置1の絶縁基板3を模式的に示す上面図である。本発明の発光装置1は、絶縁基板3上に、直線状の配線パターン4が平行に配置されて複数形成され、その配線パターン4間に複数個の発光素子5が配線パターン4に電気的に接続された状態で搭載され、封止体6で封止された発光部2を備えることを特徴とする。本発明の発光装置1では、特に、絶縁基板3に発光素子5を直に搭載することで隣接する発光素子間、および発光素子/電極間の絶縁耐圧を高くすることができる。
【0022】
本発明の発光装置1によれば、絶縁基板3上に複数形成された直線状の配線パターン4間に、配線パターン4に電気的に接続された状態で複数個の発光素子5を搭載してなることで、従来の金属基板上に絶縁層を形成する場合とは異なり、充分な電気絶縁性が達成される。すなわち、上述したように、従来の図14に示した例のような構成では、発光素子が搭載されている金属板102の直近に配線部105が設けられたプリント回路基板104が配置されているため、充分な電気的絶縁を達成することが困難であった。このような構成において絶縁物で隔離することなく充分な電気的絶縁を達成するためには、金属板102と配線部105との間の水平方向に関する直線距離dを充分な長さだけ確保する必要がある。これに対し、本発明の発光装置1では、絶縁基板3上に配線パターン4を直接形成し、またこの絶縁基板3上に発光素子5を直に搭載し、配線パターン4とはボンディングワイヤWを用いて電気的に接続した状態とするため、上述した直線距離を考慮することなく発光装置を設計することができ、製造も容易となる。また本発明の発光装置1では、金属板上に絶縁層を形成する構成でないため、製造に際して金属板上に絶縁層を形成する工程が不要であり、この点からも製造は容易である。
【0023】
また、発光強度の強い発光素子を1つ備える発光装置を発光させた場合には、輝点状の発光となり、人の目には眩しく感じられるため用途が限定されてしまう。本発明の発光装置1では、複数個の発光素子5を備えるため、輝点状の発光が生じることなく均一な発光を実現することができ、広範な用途に適用することができる。本発明の発光装置1においてはまた、平行に複数形成された直線状の配線パターン4に沿って、複数個の発光素子5の搭載位置を自在に設定することができ、発光装置1の輝度調整、色度調整が容易にできる。またこの発光装置1では、発光素子の発熱が集中しないように、発光素子5の搭載位置を設定して放熱対策を講じることも容易にできる。さらに本発明の発光装置1では、発光素子の搭載個数も調整することができるため、所望の仕様に応じて全光束、消費電力を調整することができる。
【0024】
本発明の発光装置1において、発光素子5は、直線状の各配線パターンを挟んで、配線パターンに沿って直線状に複数個搭載されてなることが好ましい。本発明の発光装置における配線パターンの数は、特に制限されるものではないが、アノード用配線パターン、カソード用配線パターンがそれぞれ1本以上必要であるため、少なくとも2本以上の配線パターンが必要であり、2?4本の範囲内が好ましい。発光装置から電流350mAの時に全光束300lmを得るためには、発光素子が36個必要となる。その場合、たとえば配線パターン4は、4つの配線パターン4a,4b,4c,4dを有するように形成され、配線パターン4a,4b間に12個、配線パターン4b,4c間に12個、配線パターン4c,4d間に12個の発光素子5がそれぞれ搭載される(図1?図3に示す例)。
【0025】
なお、図1?図3には、発光装置1が正方形状の上面形状を有するように実現された例を示しているが、この場合には、図3に示すように、直線状の配線パターン4は、発光装置1の上面形状である正方形状の対角線の1つに平行になるように形成されてなることが好ましい。このように配線パターン4が形成されてなることで、配線パターン4の長さおよび間隔を十分に確保することができ、また後述する発光装置の固定用穴、外部配線用穴などを形成できる領域も確保できるというような利点がある。なお、上述した発光装置の上面形状とは、絶縁基板3の基板面に平行な断面における形状を意味する。
【0026】
また本発明の発光装置1において、配線パターン4を挟んで搭載された各発光素子5は、側面同士が対向しないようにずらして配置されていることが好ましい。このように発光素子5が配置されていることで、輝度が均一となり、輝度ムラを低減できるという利点がある。
【0027】
また本発明の発光装置1においては、発光素子5は上面形状が長方形状の発光素子を用いることが好ましい。ここで、発光素子5の上面形状は、絶縁基板3上に搭載された状態での当該絶縁基板3の基板面に平行な上面における形状を指す。このような上面形状が長方形状の発光素子5として、具体的には、当該上面形状における短辺が200?300μmの範囲内であり、長辺が400?1000μmの範囲内である発光素子が例示される。本発明の発光装置1では、このような上面形状が長方形状の発光素子5を用いる場合には、当該発光素子5の上面形状の短辺に沿った方向が配線パターン4の長手方向と平行となるように搭載されていることが好ましい。通常、上面形状が長方形状の発光素子5においては、その上面の短辺側に電極パッドが形成されているため、上述のように発光素子5を搭載することで、ボンディングワイヤWを用いた発光素子5の電極パッドと配線パターン4との間の電気的接続を容易に行うことができ、ボンディングワイヤWの切断、ボンディングワイヤWの剥れなどの不良を防止することができる。また、このようにすることで、配線パターン4の長手方向に沿って所望の間隔、所望の数だけ発光素子5を搭載することにより所望の光が得られるよう容易に調整することができるという利点がある。
【0028】
上述のように本発明に用いる発光素子5は、長方形状の上面形状を有する発光素子を用いることが好ましいが、上述したような発光素子の上面の短辺側に通常電極パッドが形成されていることにより、ボンディングワイヤWを用いた配線パターン4との間の電気的接続が容易であり、ボンディングワイヤWの切断、剥れなどの不良の防止の効果が特に顕著であることから、長尺状の上面形状を有する発光素子を用いることがより好ましい。ここで、「長尺状」とは、上面形状における短辺の長さに対し長辺の長さが顕著に長い形状を指し、たとえば、長辺が480μmであり、短辺が240μmであるような上面形状を有する発光素子が例示される。長尺状の上面形状を有する発光素子を用いる場合には、電極パッドが短辺の端(短辺側)に設けられ、電極パッドが対向するように設けられた発光素子を用いることが好ましい。
【0029】
なお、本発明の発光装置1において、平行に配置された複数の直線状の配線パターン4と、複数個の発光素子5との間をどのように電気的に接続するかは特に制限されるものではなく、直線状の配線パターン4を挟んで搭載された発光素子5同士は、直列に電気的に接続されていてもよいし、並列に電気的に接続されていてもよい。直線状の配線パターン4を挟んで搭載された発光素子5同士が直列に電気的に接続され、直線状の配線パターンに沿って直線状に搭載された発光素子5同士が並列に電気的に接続されていてもよい。なお、発光素子と電極との距離は近い方が配線の抵抗による電圧降下が最も小さくなるので好ましい。さらに、配線パターンに沿って直線状に配列されて複数個搭載されている発光素子は全て電極と電気的に接続するのではなく、一部の発光素子は予備の発光素子として搭載しただけの状態にしておくことが好ましい。このようにすることで、発光素子を封止体で封止する前の検査工程(後述)で故障して発光しない発光素子があることが分かった場合に、予備の発光素子を電極と電気的に接続して所定の明るさとすることができる。
【0030】
本発明の発光装置はまた、配線パターンが、発光素子との間の電気的接続の位置決め用のパターン、または、発光素子の搭載位置の目安用のパターンをさらに有することが、好ましい。図3には、平行に形成された4つの直線状の配線パターン4に繋がって、パターン7が点在して形成された例を示している。このパターン7を、配線パターン4と発光素子5との間の電気的接続の位置決め、または、発光素子5の搭載位置の目安として用いることで、発光素子の搭載および配線パターンとの間の電気的接続が容易となり、さらに自動化装置を用いる場合の認識パターンとして用いることもできるという利点がある。
【0031】
本発明の発光装置1では、発光素子5と配線パターン4との間の直線距離が0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。ここで、この直線距離は、絶縁基板3の基板面に沿った方向における発光素子5と配線パターン4との間の直線距離を意味する。上記直線距離が0.1mm以上であることで、電気的絶縁性が確実に達成される。なお、ワイヤボンディングの際のタレ、ボンディングワイヤの切断防止の観点からは、発光素子5と配線パターン4との間の水平方向に沿った直線距離は、1.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましい。
【0032】
本発明の発光装置1はまた、図2に示すように、配線パターン4の厚みは、発光素子の厚みよりも小さいことが好ましい。これによって、発光素子5から発光する光を、配線パターンによって外部に放出される光が遮蔽することが低減され、外部に効率よく光を放出できる発光装置1が実現できる。具体的には、配線パターン4の上記領域の厚みと発光素子5の厚みとの差は、0.005mm以上であることが好ましく、0.07mm以上であることがより好ましい。
【0033】
本発明の発光装置1における絶縁基板3は、絶縁性を有する材料で形成されていればよく、特に制限されるものではないが、熱膨張が小さく、熱伝導性が高く、かつ光反射率が高いことから、白色のセラミック基板であることが好ましい。ここで、「白色」とは、物体が全ての波長の可視光線をほぼ100%反射するような物体の色を指す(ただし、100%の反射率をもった理想的な白色の物体は存在しない。)。白色のセラミック基板を絶縁基板3として用いることで、発光素子5からの出射光のうち、特に下面方向への光を白色のセラミック基板にて反射することができ、発光素子5からの出射光をロスなく有効に活用できるとともに、高い放熱性および耐熱性が要求される駆動電流として大電流を供給する用途にも好適に適用することができる。さらに、発光素子5の信頼性を向上できるとともに、封止体6が蛍光体を含有する場合(後述)には、発光素子5からの熱による蛍光体の劣化を抑えることもでき、蛍光体により波長変換されて出光する光の色度ズレが生じにくい。またさらに、上述のように光反射率の高いセラミック基板を用いることで、基板材料および/または配線パターンの形成材料に光反射率90%以上の銀を用いる必要がないため、銀マイグレーションの心配がなく、さらに銀が硫化してしまう問題もない。
【0034】
白色のセラミック基板を用いる場合には、光反射率が90%以上と高いことから、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、フォルステライト、ステアタイト、低温焼結セラミックから選ばれるいずれか、または、これらの複合材料で形成されたセラミック基板が好ましい。上述した中でも、安価で、反射率が高く、加工しやすく、工業材料として広く使われている酸化アルミニウム(アルミナ)で形成された白色のセラミック基板が特に好ましい。
【0035】
本発明の発光装置1に用いられる発光素子5としては、当分野において通常用いられる発光素子を特に制限なく用いることができる。このような発光素子としては、たとえば、サファイヤ基板、ZnO(酸化亜鉛)基板、GaN基板、Si基板、SiC基板、スピネルなどの基板上に、窒化ガリウム系化合物半導体、ZnO(酸化亜鉛)系化合物半導体などの材料を成長させた青色系LED(発光ダイオード)チップ、InGaAlP系化合物半導体LEDチップ、AlGaAs系化合物半導体LEDチップなどの半導体発光素子を挙げることができる。中でも、絶縁性基板に片面2電極構造を容易に作製でき、結晶性のよい窒化物半導体を量産性よく形成できることから、サファイヤ基板上に窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた青色系LEDを発光素子として用いることが、好ましい。このような青色系LEDを発光素子として用いる場合には、当該半導体発光素子からの光で励起されて黄色系の光を発する蛍光体を封止体中に分散させることで、白色を得るように発光装置を実現することが好ましい(後述)。
【0036】
なお、本発明の発光装置に用いられる発光素子は、発光色は青色発光に限定されるものではなく、たとえば紫外線発光、緑色発光などの発光色の発光素子を用いても勿論よい。また、青色系LEDを発光素子として用い、この青色系LEDから発せられる光を蛍光体によって変換して白色を得る構成に換えて、蛍光体を用いずにたとえば赤、緑、青の三色のLEDチップをそれぞれ発光素子として用いて、白色などの照明に必要な色が得られるように発光装置を実現するようにしても勿論よい。
【0037】
本発明の発光装置1に用いられる発光素子5は、その形状については特に制限されるものではないが、上述したように、上面形状が長方形状であることが好ましく、長尺状であることがより好ましい。なお、本発明の発光装置1においては、一方の面にP側電極およびN側電極が形成された発光素子5を用いる必要がある。このような発光素子5を、P側電極およびN側電極が形成された面を上面として絶縁基板3上の配線パターン4の間に搭載し、配線パターン4との間を電気的に接続する。
【0038】
発光素子5と配線パターン4との電気的接続は、図2に示すように、P側電極およびN側電極をそれぞれ配線パターン4にボンディングワイヤWをボンディングすることで実現される。ボンディングワイヤWとしては、当分野において従来から広く用いられている適宜の金属細線を特に制限されることなく用いることができる。このような金属細線としては、たとえば金線、アルミニウム線、銅線、白金線などが挙げられるが、中でも腐食が少なく、耐湿性、耐環境性、密着性、電気伝導性、熱伝導性、伸び率が良好であり、ボールが出来やすいことから、金線をボンディングワイヤWとして用いることが好ましい。
【0039】
本発明の発光装置1は、上述したように配線パターン4の間に、配線パターン4に電気的に接続された状態で搭載された複数個の発光素子5を、電気的接続を行っているボンディングワイヤWごと、封止体6にて封止してなる。封止体6による封止は、直線状の配線パターン4に沿って両側に搭載された発光素子5を含むように直線状の封止体を複数形成するようにしてもよいし、絶縁基板上の直線状の配線パターンおよび発光素子の全てを1つの封止体で封止するようにしてもよい。発光装置の輝度ムラを低減でき、封止体の厚みのバラツキを低減できる観点からは、図1?図3に示す例のように、絶縁基板上の直線状の配線パターンおよび発光素子の全てを1つの封止体で封止することが好ましい。
【0040】
本発明の発光装置1における封止体6を形成するための材料(封止材料)としては、透光性を有する材料であれば特に制限されるものではなく、当分野において従来から広く知られた適宜の材料を用いて形成することができる。このような封止材料としては、たとえば、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂などの耐候性に優れた透光性樹脂材料、耐光性に優れたシリカゾル、硝子などの透光性無機材料が好適に用いられる。
【0041】
本発明における封止体6は、所望の光が得られるように調整可能であり、また、白色、昼白色、電球色などが容易に得られることから、蛍光体を含有してなることが好ましい。蛍光体としては、たとえば、Ce:YAG(セリウム賦活イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体、Eu:BOSE(ユーロピウム賦活バリウム・ストロンチウム・オルソシリケート)蛍光体、Eu:SOSE(ユーロピウム賦活ストロンチウム・バリウム・オルソシリケート)蛍光体、ユーロピウム賦活αサイアロン蛍光体などを好適に用いることができるが、これらに制限されるものではない。
【0042】
なお、本発明における封止体6には、蛍光体と共に拡散剤を含有させるようにしてもよい。拡散剤としては、特に制限されるものではないが、たとえば、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化珪素などが好適に用いられる。
【0043】
本発明における封止体6は、発光装置1の所望される光の色度に応じて、2層で実現することができる。この場合、図2に示すように第1の蛍光体を含有する第1の封止体層8と、第1の封止体層8上に積層された第2の蛍光体を含有する第2の封止体層9とを備えるように実現されることが好ましい。このように封止体6を第1の封止体層8と第2の封止体層9とで構成することで、色度を容易に調整でき、色度ズレのない発光装置を、良好な歩留りで安価に提供することができるという利点がある。好適な具体例としては、樹脂材料としてメチルシリコーンを用い、これに第1の蛍光体としてEu:BOSEを分散させ、硬化させることにより第1の封止体層8を形成し、この第1の封止体層8を覆うようにして、樹脂材料として有機変性シリコーンを用い、これに第2の蛍光体としてEu:SOSEを分散させ、硬化させることにより第2の封止体層9を形成する場合が例示される。色度ズレの調色の観点からは、第2の封止体層9は、第1の封止体層8の上面の少なくとも一部を覆うようにして第1の封止体層8上に積層されていることが好ましく、図2に示すように第1の封止体層8の上面の全面を第2の封止体層9で覆うようにして実現されることが特に好ましい。なお、1層(第1の蛍光体層)のみで所望の色度の光を発する発光装置が得られる場合には、封止体6は単層で実現されても勿論よい。ここで、第1の蛍光体を含有する第1の封止体層8と、第2の蛍光体を含有する第2の封止体層9の境界は、明確に分離していても、明確に分離していなくともよい。
【0044】
本発明における封止体6は、その形状については特に制限されるものではないが、六角形状、円形状、長方形状または正方形状の上面形状を有することが好ましい。図1?図3には、第1の封止体層8を正方形状の上面形状を有するように形成し、この第1の封止体層8の上面の全面を覆うようにして正方形状の上面形状を有するように第2の封止体層9を形成してなる例を示している。なお、上述した封止体6、第1の封止体層8および第2の封止体層9の上面形状とは、絶縁基板3の基板面に平行な断面における形状を指す。
【0045】
ここで、図4は、本発明の好ましい第2の例の発光装置21の上面図である。図4に示す例の発光装置21は、封止体22の上面形状が円形状であることを除いては図1に示した例の発光装置1と同様の構成を有するものであり、同様の構成を有する部分については同一の参照符を付して説明を省略する。図4に示すように封止体22が円形状の上面形状を有するように実現されることで、対称形状であるため光指向性がよいという利点がある。このため、上述した六角形状、円形状、長方形状または正方形状の中でも、図4に示すように円形状の上面形状を有するように封止体22を実現することが特に好ましい。
【0046】
また封止体6は、上方に凸となる半球状に形成するようにしてもよい。この場合には、封止体6にレンズとしての機能を持たせることも可能になる。
【0047】
本発明の発光装置1は、その全体の形状についても特に制限されるものではないが、六角形状、円形状、長方形状または正方形状の上面形状を有するように実現されることが好ましい。発光装置が長方形状または正方形状の上面形状を有する場合には、発光素子を密着させて配置することができるため、発光装置を蛍光灯型LEDランプに適用する場合に特に好ましい。また、発光装置を電球型LEDランプ(後述)に適用する場合には、発光装置が円形状の上面形状を有するように実現されることが好ましい。図1および図4には、上述のように発光装置1が正方形状の上面形状を有するように実現された例を示している。
【0048】
また図5は、本発明の好ましい第3の例の発光装置31の上面図である。図5に示す例の発光装置31は、封止体33の上面形状が六角形状であり、発光装置31の上面形状が円形状であることを除いては図1に示した例の発光装置1と同様の構成を有するものであり、同様の構成を有する部分については同一の参照符を付して説明を省略する。図5に示す例の発光装置31のように封止体33を六角形状の上面形状を有するように実現することでも、対称形状であるため、光の指向性がよいという利点がある。また、図5に示す例のように円形状の上面形状を有する(円形状の上面形状を有する絶縁基板32を用いる)された発光装置31は、電球型LEDランプに特に好適に適用できる。
【0049】
図6は、本発明の好ましい第4の例の発光装置41の上面図である。図6に示す例の発光装置41は、封止体42(第1の封止体層43)の上面形状が円形状であり、第2の封止体層44が第1の封止体層43の上面の一部のみを覆うように形成されていることを除いては図5に示した例の発光装置31と同様の構成を有するものであり、同様の構成を有する部分については同一の参照符を付して説明を省略する。図6に示す例の発光装置41のように封止体42を円形状の上面形状を有するように実現することで、対称形状であるため、光の指向性がよいという利点がある。また図6に示す例では、円形状の上面形状を有するように形成された第1の封止体層43と、この第1の封止体層43を部分的に覆うようにして形成された第2の封止体層44とで封止体42が形成されている。このように第1の封止体層43を部分的に覆うようにして第2の封止体層44を形成することで、第1の封止体層の一部のみの調整で発光装置として所望の色度特性を有する(たとえば、後述する色度座標を示す図13の(b)の範囲内に入る)発光装置を得ることができるという利点がある。なお、このような場合、第2の封止体層44にて覆う第1の封止体層43の部分は、所望の色度特性に応じて選択する(たとえば、後述する色度座標を示す図13の(b)の範囲内に入っていない部分など)。また図6に示す例の発光装置41は、円形状の上面形状を有するため、図5に示した例の発光装置31と同様に電球型LEDランプに特に好適に適用できる。
【0050】
図7は、本発明の好ましい第5の例の発光装置51の上面図である。図7に示す例の発光装置51は、封止体52(第1の封止体層53)の上面形状が正方形状であり、第2の封止体層44が第1の封止体層53の上面の一部のみを覆うように形成されていることを除いては図5に示した例の発光装置31と同様の構成を有するものであり、同様の構成を有する部分については同一の参照符を付して説明を省略する。図7に示す例の発光装置51のように封止体52(第1の封止体層53)を正方形状の上面形状を有するように実現することで、後述する固定用穴、外部配線用穴などを形成できる領域を確保できるという利点がある。また図7に示す例では、正方形状の上面形状を有するように形成された第1の封止体層53と、この第1の封止体層53を部分的に覆うようにして形成された第2の封止体層44とで封止体42が形成されており、これによって図6に示した例と同様の効果が奏される。また図7に示す例の発光装置51は、円形状の上面形状を有するため、図5、図6に示した例の発光装置31,41と同様に電球型LEDランプに特に好適に適用できる。上記第1の封止体層43、第1の封止体層53は第1の蛍光体を含有し、第2の封止体層44は第2の蛍光体を含有する。
【0051】
本発明の発光装置は、製造方法が容易で、色ズレが発生しにくい発光装置が提供でき、このことから、液晶ディスプレイのバックライト光源または照明用光源に特に好適に用いられる。本発明の発光装置を用いることで、白色を含め電球色など任意の色調の上記光源を実現できる。
【0052】
本発明の発光装置は、通常、上述した用途に供するために、相手部材に取り付け、固定するための固定用穴を有する。図1および図4に示した正方形状の上面形状を有する発光装置1,21では、正方形状の上面形状を有する絶縁基板3の対向する角部に、絶縁基板3を貫通するように設けられた固定用穴11が対角線上に配置されて1つずつ形成された場合を示している。また、図5?図7に示した円形状の上面形状を有する発光装置31,41,51では、切り欠き状の固定用穴34が、円形状の上面形状を有する絶縁基板32の中心を通る直線上に配置されて1つずつ形成された例を示している。
【0053】
また本発明の発光装置は、上述した用途に供するために、固定用冶具を用いて相手部材に取り付けられ、固定される。この固定用冶具としては、たとえば図1および図4に示す固定用冶具19のように、内壁にネジ山が形成された固定用穴11に挿入され、螺合するネジなどが挙げられる。また固定用冶具は、接着シートなどであってもよい。
【0054】
本発明の発光装置においては、絶縁基板と同じ材料で形成された固定用冶具を用いて固定されてなることが好ましい。絶縁基板と同じ材料で形成された固定用冶具を用いることで、絶縁基板と固定用冶具との熱膨張率を同じにすることができ、熱による反りなどで絶縁基板に割れ、ヒビは発生することを低減でき、発光装置の歩留りを向上することができる。具体的には、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、フォルステライト、ステアタイト、低温焼結セラミックから選ばれるいずれか、または、これらの複合材料で形成された固定用冶具を、絶縁基板の形成材料に合わせて好適に用いることができる。
【0055】
ここで、図8?図10には、本発明の発光装置を照明用光源として適用した例をそれぞれ示している。図8は、図1に示した例の発光装置1を蛍光灯型LEDランプ61に適用した場合を示す斜視図であり、図9は、図6に示した例の発光装置41を蛍光灯型LEDランプ71に適用した場合(第1の蛍光体層43を部分的に覆う第2の蛍光体層44については省略している)を示す斜視図であり、図10は、図6に示した例の発光装置41を電球型LEDランプ81に適用した場合を示す断面図である。図8?図10に示すように、発光装置1,41は、それぞれ固定用穴11,34で、固定用冶具19を用いて取り付けられ、固定される。
【0056】
なお、本発明の発光装置は、図1、図4?図7にそれぞれ示されているように、絶縁基板3,32上に、正電極外部接続ランド12および負電極外部接続ランド13が直接設けられ、この正電極外部接続ランド12および負電極外部接続ランド13と電源(図示せず)との間をそれぞれ電気的に接続するための外部接続配線14が設けられてなることが好ましい。
【0057】
また本発明の発光装置は、図1、図4?図7にそれぞれ示されているように、絶縁基板3,32に、外部接続配線14を通すための外部配線用穴15が形成されてなることが好ましい。図1および図4に示す例では、正方形状の上面形状を有する絶縁基板3に、上述した固定用穴11が設けられている対角線上とは異なるもう1つの対角線上に配置されるように正電極外部接続ランド12および負電極外部接続ランド13が設けられており、さらに絶縁基板3の対向する2つの辺の中央付近に切り欠き状の外部配線用穴15が形成されている。また、図5?図7に示す例では、円形状の上面形状を有する絶縁基板32上に、上述したように固定用穴34が形成された中心を通る直線上に概ね垂直な中心を通る直線上に、切り欠き状の外部配線用穴15が形成され、この固定用穴34と外部配線用穴15との間に、対向して正電極外部接続ランド12および負電極外部接続ランド13が設けられている。なお、図4?図7に示す例のように円形状の上面形状を有する絶縁基板32に固定用穴34および外部配線用穴15を切り欠き状に形成した場合には、相手部材に取り付けられた状態で、発光装置が周方向に回るのを防止する、回り止めの役割も果たす。
【0058】
また、本発明の発光装置は、図3に示すように、絶縁基板3上に、配線パターン4の一端と正電極外部接続ランド12および負電極外部接続ランド13との間を電気的に接続するための外部引き出し配線パターン16,17がさらに形成されていることが好ましい。このような外部引き出し配線パターン16,17により、電源(図示せず)と配線パターン4との間を、正電極外部接続ランド12および外部引き出し配線パターン16、負電極外部接続ランド13および外部引き出し配線パターン17をそれぞれ介して、電気的に接続することができる。
【0059】
さらに本発明の発光装置は、絶縁基板上に、検査用のパターンがさらに形成されてなるのが好ましい。図3には、配線パターン4aと配線パターン4bとの間、配線パターン4cと配線パターン4dとの間にそれぞれスポット状の検査用のパターン18が形成された例を示している。このような検査用のパターン18が絶縁基板3上に形成されていることで、配線パターン4aと配線パターン4bとの間、配線パターン4bと配線パターン4cとの間および配線パターン4cと配線パターン4dとの間の導通の検査を検査用のパターン18を介して容易に行うことができるようになる。また、この検査用のパターン18は、ダイボンド、ワイヤボンディングを自動化装置で行う際の認識パターンとしても用いることができる。なお、検査用のパターンは、図3に示したようなスポット状に限定されるものではなく、配線パターン4bと配線パターン4cとそれぞれ電気的に繋がっておりプローブを当てられる大きさのパターンにて実現されてもよい。
【0060】
本発明はまた、発光装置の製造方法についても提供する。上述してきた本発明の発光装置は、その製造方法については特に制限されるものではないが、本発明の発光装置の製造方法を適用することで好適に製造することができる。本発明の発光装置の製造方法は、絶縁基板上に複数の配線パターンを形成する工程と、配線パターン間に複数個の発光素子を搭載する工程と、発光素子と配線パターンとを電気的に接続する工程と、貫通孔を有するシリコーンゴムシートを絶縁基板上に載置する工程と、シリコーンゴムシートの貫通孔内に、発光素子を封止する封止体を形成する工程とを基本的に含む。ここで、図11は、本発明の発光装置の製造方法の好ましい一例として、図1に示した発光装置1を製造する場合を段階的に示す図である。以下、図11を参照して、本発明の発光装置の製造方法について具体的に説明する。
【0061】
まず、図11(a)に示すように、絶縁基板3上に、配線パターン4を形成する。上述したように図11は図1に示した発光装置1を製造する場合であるので、配線パターン4として、4つの直線状の配線パターン4a,4b,4c,4dを平行に配置して絶縁基板3上に形成する。好適な具体例として、厚み1mmの酸化アルミニウムで形成された白色の絶縁基板3上に、厚み0.07mmの金膜をスパッタリング法を用いて形成した後、フォトエッチング法にて配線パターン4a,4b,4c,4d(幅1mm、間隔2mm)を形成する場合が挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、上述したように発光素子との間の電気的接続の位置決め用または発光素子の搭載位置の目安用のパターン7として直線から外側に膨らんだパターン、外部引き出し配線パターン16,17、検査用のパターンを形成する場合には、所望のパターンとなるように設計してフォトエッチングを行えばよい。
【0062】
次に、図11(b)に示すように、配線パターン4間に発光素子5を搭載する。ここで、発光素子5の搭載は、たとえばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂などの熱硬化性樹脂を用いて発光素子5を絶縁基板3に直に接着することで行うことができる。そうすることにより、沿面放電電圧で決まる絶縁耐圧をできる限り高くすることができる。すなわち、電極方向に配列された発光素子と発光素子との間の絶縁耐圧は発光素子間の距離と絶縁基板の誘電率で決まり、発光素子と電極との間の絶縁耐圧も同様に発光素子と電極との最短距離と絶縁基板の誘電率で決まる。好適な具体例としては、絶縁基板3上に平行に形成された直線状の配線パターン4a,4b,4c,4dのそれぞれの間に、発光素子5として短辺幅0.24mm、長辺0.48mm、厚み0.14mmのLEDチップをエポキシ樹脂を用いて接着し、固定する場合が挙げられるが、これに限定されるものではない。その後、図11(b)に示すように、所望の電気的接続の状態に応じて、配線パターン4と発光素子5とをワイヤボンディングWを用いて電気的に接続する。
【0063】
なお、本発明の発光装置の製造方法では、上述のように発光素子と配線パターンとを電気的に接続した後に、発光素子の特性を検査する工程と、検査の結果、特性不良があった場合に、予備の発光素子を配線パターンと接続する工程とをさらに含むことが好ましい。この検査は、たとえば発光素子に電流を流し、その光出力特性を測定することで行なうことができる。また、外観検査としてボンディングワイヤWの断線、ボンディング不良も併せて行なうようにしてもよい。
【0064】
次に、図11(c)に示すように、貫通孔92を有するシリコーンゴムシート91を絶縁基板3上に載置する。ここで、図12は、本発明の発光装置の製造方法において用いられる、好ましい一例のシリコーンゴムシート91を模式的に示す図である。本発明の製造方法に用いるシリコーンゴムシートは、封止体を形成するための空間となる貫通孔を有するものを用いるが、この貫通孔の形状については特に制限されるものではなく、形成しようとする封止体の上面形状に応じた形状のものを用いることができる。上述したように、封止体は、六角形状、円形状、長方形状または正方形状の上面形状を有することが好ましいため、シリコーンゴムシート91の貫通孔は、六角形状、円形状、長方形状または正方形状の上面形状を有することが好ましい。図12には、一例として、長方形状の上面形状を有する貫通孔92を有するシリコーンゴムシート91を示している。なお、上述したような貫通孔92を有するシリコーンゴムシート91は、絶縁基板上の直線状の配線パターンおよび発光素子の全てを1つの封止体で封止する場合に特に好適に用いることができるが、直線状の配線パターン4に沿って両側に搭載された発光素子5を含むように直線状の封止体を複数形成する場合には、対応する複数個の所望の形状の貫通孔を有するシリコーンゴムシートを用いるようにすればよい。
【0065】
シリコーンゴムシート91は、容易に入手可能であり、ゴム製であるため弾性を有し、配線パターンなどの段差があっても隙間なく密着させて設けることができ、好ましい。また、シリコーンゴムシート91には、絶縁基板3に設けた状態では後述する封止体形成用の樹脂の漏れを防ぐことができ、また、封止体形成後に容易に除去できることから、一面に両面接着シートを接着しておき、この接着シートで絶縁基板3に接着させるようにすることが好ましい。
【0066】
本発明の発光装置の製造方法に用いるシリコーンゴムシートは、その厚みが、形成する第1の封止体層の厚みの2倍以上であることが好ましい。シリコーンゴムシートが、第1の封止体層の厚みの2倍以上の厚みを有することで、色度ズレを修正するために2度塗りができ、封止材料の漏れを防止できるという利点がある。
【0067】
次に、図11(d)に示すように、シリコーンゴムシート91の貫通孔92内に、発光素子5を封止する封止体6を形成する。ここで、封止体6には、上述のように蛍光体を含有させることが、好ましい。また、封止体6は単層、二層のいずれの形態で形成するようにしてもよい(図11は、図1に示した発光装置1を製造する場合であるため、第1の蛍光体を含有する第1の封止体層8と、第2の蛍光体を含有する第2の封止体層9とを有するように封止体6を形成する場合を示している。
【0068】
本発明の発光装置の製造方法におけるこの封止体で発光素子を封止する工程は、シリコーンゴムシートの貫通孔内に第1の蛍光体を含有する封止材料を注入する工程と、第1の蛍光体を含有する樹脂を硬化させて第1の封止体層を形成する工程と、第1の封止体層形成後の発光装置の色度特性を測定する工程とを含むことが、好ましい。
【0069】
この場合、まず、シリコーンゴムシート91の貫通孔92内に第1の蛍光体を含有する封止材料を注入する。ここで、封止材料としては、上述したようにたとえば、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂などの耐候性に優れた透光性樹脂材料、耐光性に優れたシリカゾル、硝子などの透光性無機材料が好適に用いられる。また、第1の蛍光体としては、上述したようにたとえば、Ce:YAG蛍光体、Eu:BOSEあるいはEu:SOSE蛍光体、ユーロピウム賦活αサイアロン蛍光体などを好適に用いることができる。また、封止材料には上述した拡散剤が添加されていてもよい。
【0070】
次に、シリコーンゴムシート91の貫通孔92内に注入された第1の蛍光体を含有する封止材料を硬化させる。封止材料を硬化させる方法としては、用いる封止材料に応じて従来公知の適宜の方法を特に制限されることなく用いることができる。たとえば封止材料として透光性樹脂材料であるシリコーン樹脂を用いる場合には、シリコーン樹脂を熱硬化させることで、封止材料を硬化させることができる。なお、封止材料としてモールド用の樹脂を用い、金型を用いて封止材料を硬化させるようにしてもよい。封止材料の硬化により形成される封止体(第1の封止体層)の形状は特にされるものではなく、たとえば上方に凸となる半球状の形状に封止体を形成することで、封止体にレンズとしての機能を持たせるようにしてもよい。
【0071】
次に、上述のようにして第1の封止体層を形成した後の発光装置の色度特性を測定する。ここで、図13はCIEの色度座標を示すグラフである。発光装置の色度特性は、JIS28722の条件C,DIN5033teil7、ISOk772411に準拠のd・8(拡散照明・8°受光方式)光学系を採用した測定装置を用いて測定することができる。たとえば、CIEの色度表でx、y=(0.325、0.335)となる光を発するように、第1の蛍光体と封止材料であるシリコーン樹脂とを5:100の重量比で混合したものをシリコーンゴムシート91の貫通孔92内に注入し、150℃の温度で30分間熱硬化させて第1の封止体層を形成した場合、形成された第1の封止体層の色度範囲は、図13中の(a)の領域内となる。このような第1の封止体層を有する発光装置について色度特性を測定する場合には、色度範囲は図13中の(b)の領域から外れてしまう。このような場合には、発光装置の色度範囲が図13中の(b)の領域内となるように、第1の封止体層上に第2の封止体層を形成する。
【0072】
第2の封止体層を形成する場合、本発明の発光装置の製造方法は、上述した第1の封止体層形成後の発光装置の色度特性を測定する工程の後に、第1の封止体層上に、第2の蛍光体を含有する封止材料を注入する工程と、第2の蛍光体を含有する封止材料を硬化させて第2の封止体層を形成する工程と、第2の封止体層形成後の発光装置の色度特性を測定する工程と、シリコーンゴムシートを除去する工程とをさらに含むことが好ましい。すなわち、上述した第1の封止体層を形成する各工程と同様にして、まず、第1の封止体層上に第2の蛍光体を含有する封止材料を注入し、硬化させて、第2の封止体層を形成する。第2の封止体層を形成するための第2の蛍光体および封止材料は、上述した第1の封止体層を形成するための第1の蛍光体および封止材料のうち、所望される色度特性に応じて適宜選択し、場合によっては拡散剤をさらに添加して用いることができる。上述した例の場合には、CIEの色度表でx、y=(0.345、0.35)となる光が得られるように、たとえば第2の蛍光体と封止材料であるシリコーン樹脂とを2:100の重量比で混合して第1の封止体層上に注入し、150℃で1時間熱硬化させて第2の封止体層を形成する。そうすることで、第2の封止体層を形成した後、発光装置の色度特性を同様に測定した場合には、図13中の(b)の領域内の色度範囲の発光装置を得ることができる。
【0073】
このように、本発明の発光装置の製造方法では、必要に応じて第2の封止体層をさらに形成するようにすることで、色度ズレのない発光装置を、歩留りよく安価に製造することができるようになる。なお、上述したように、第2の封止体層は第1の封止体層の上面の少なくとも一部を覆うように形成すればよく、第1の封止体層の上面の全面を覆うように形成されてもよいし(たとえば、図1、図4、図5に示した例)、第1の封止体層の上面を部分的に覆うように形成されてもよい(たとえば、図6、図7に示した例)。
【0074】
また、たとえばCIEの色度表でx、y=(0.325、0.335)となる光を発するように、第1の蛍光体と封止材料であるシリコーン樹脂とを5:80の重量比で混合したものをシリコーンゴムシート91の貫通孔92内に注入し、120℃の温度で30分間熱硬化させて第1の封止体層を形成した場合など、当該第1の封止体層形成後の発光装置の色度特性を測定した際に、色度範囲が図13中の(b)の領域内となるような場合には、上述したような第2の封止体層をさらに形成する必要はなく、第1の封止体層をそのまま封止体として備える発光装置を製造すればよい。
【0075】
本発明の発光装置の製造方法では、上述したように第1の封止体層単独、または、第1の封止体層および第2の封止体層を形成した後に、シリコーンゴムシート91を取り除き、上述した本発明の発光装置が提供される。上述したように、シリコーンゴムシート91は一面に両面接着シートを接着しておき、この接着シートで絶縁基板3に接着させるようにしておくことで、容易に除去することができる。なお、シリコーンゴムシートは何度も使用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1,21,31,41,51 発光装置、2 発光部、3,32 絶縁基板、4 位置決め用配線パターン、5 発光素子、6,22,33,42,52 封止体、7 パターン、8,43,53 第1の封止体層、9,44 第2の封止体層、11,34 固定用穴、12 正電極外部接続ランド、13 負電極外部接続ランド、14 外部接続配線、15 外部配線用穴、16,17 外部引き出し配線パターン、18 検査用パターン、19 固定冶具、61,71 蛍光灯型LEDランプ、81 電球型LEDランプ、91 シリコーンゴムシート、92 貫通孔。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面上に形成された発光部と、
前記発光部を囲む前記絶縁基板上面の周辺領域と、
前記絶縁基板の端から離して、前記周辺領域内の前記絶縁基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、
前記絶縁基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、
前記発光部は、前記絶縁基板上に直に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、
前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており、
前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記絶縁基板の上面において前記発光部を完全に囲み、
前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記絶縁基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、
全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、
前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記正電極外部接続ランドに隣接する正極の極性表示を含む、発光装置。
【請求項2】
前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板と、
前記絶縁基板の上面上に形成された発光部と、
前記発光部を囲む前記絶縁基板上面の周辺領域と、
前記絶縁基板の端から離して、前記周辺領域内の前記絶縁基板の上面に設けられた正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドと、
前記絶縁基板の上面に配置された、カソード用配線パターンとアノード用配線パターンを含む配線パターンとを備え、
前記発光部は、前記絶縁基板上に直に搭載された複数個の発光素子、ならびに、前記発光素子を封止する封止体を備え、
前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており、
前記周辺領域は前記封止体により覆われておらず、前記絶縁基板の上面において前記発光部を完全に囲み、
前記発光部、ならびに、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは前記絶縁基板の上面に配置され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは上面のみにあり、
全ての前記発光素子が1つの封止体で封止され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドが、前記発光部と重複しないように前記発光部の外側の前記周辺領域にあり、かつ前記発光部を挟んで対向しており、
前記絶縁基板は、前記周辺領域に配置され、前記負電極外部接続ランドに隣接する負極の極性表示を含む、発光装置。
【請求項4】
前記絶縁基板を貫通する貫通孔が前記周辺領域に形成されている、請求項1?3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記絶縁基板が1mmの厚みを有する、請求項1?4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
切り欠き状の穴が前記周辺領域に形成されている、請求項1?5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記封止体は、六角形状、円形状、または矩形状の上面形状を有することを特徴する、請求項1?6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記絶縁基板は、円形状、または矩形状の上面形状を有することを特徴する、請求項1?7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
前記封止体が蛍光体を含有することを特徴する、請求項1?8のいずれか1項に記載の発光装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-15 
出願番号 特願2014-216446(P2014-216446)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H01L)
P 1 651・ 113- YAA (H01L)
P 1 651・ 537- YAA (H01L)
P 1 651・ 536- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 北島 拓馬  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 星野 浩一
恩田 春香
登録日 2015-05-29 
登録番号 特許第5752841号(P5752841)
権利者 シャープ株式会社
発明の名称 発光装置およびその製造方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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