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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 発明同一  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
管理番号 1340114
異議申立番号 異議2017-700766  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-07 
確定日 2018-04-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6075397号発明「離型フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6075397号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6075397号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6075397号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成22年7月16日を出願日とする特願2010-161488号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年2月5日に新たな特許出願としたものであって、平成29年1月20日にその特許権の設定登録がされ、同年2月8日に公報が発行され、その後、その請求項1ないし3に係る特許に対して、同年8月7日に特許異議申立人、森谷晴美(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年11月1日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年12月28日付けで意見書の提出及び訂正請求がされたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成29年12月28日付けでされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「離型層と、クッション層とを備え、前記離型層の厚さが、15μm以下、かつ、前記クッション層の厚みが前記離型層の厚みの5倍以上となる厚さであり、かつ」とあるのを「第1離型層(但し、ポリメチルペンテン樹脂を含有する第1離型層を除く)と、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体を含有するクッション層と、ポリプロピレンを含有する第2離型層と、を備え、前記第1離型層、前記クッション層および前記第2離型層は、この順に配設され、前記第1離型層の厚さが、15μm以下、かつ、前記クッション層の厚みが前記離型層の厚みの5倍以上となる厚さである」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記離型層中における前記ポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)」とあるのを「前記第1離型層中における前記ポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)」に訂正する。請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項及び独立特許要件

(1)訂正事項1について
訂正前の請求項1に係る発明では、層の材料及び第2離型層についての特定がないのに対し、訂正後の請求項1に係る発明では、第1離型層はポリメチルペンテン樹脂を含有する第1離型層を除くこと、クッション層はエチレン-メタクリル酸メチル共重合体を含有すること、第2離型層はポリプロピレンを含有すること、第1離型層、クッション層および第2離型層は、この順に配設されることを特定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
また、訂正前の請求項1に係る発明では、厚みが特定される離型層及びクッション層の厚みと対比される離型層が明らかでないのに対し、訂正後の請求項1に係る発明では、厚みが特定される離型層及びクッション層の厚みと対比される離型層が、第1離型層であることを明らかにすることで、明瞭でない記載の釈明をしようとするものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0044】の記載及び段落【0047】?【0055】の実施例1の記載に基づくものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、請求項2の記載を引用する請求項1の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0044】の記載及び段落【0047】?【0055】の実施例1の記載に基づくものであって、新規事項の追加に該当せず、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)一群の請求項について
訂正前の請求項2及び3は訂正前の請求項1を引用しているから、訂正前の請求項1ないし3は、訂正前において一群の請求項である。
そうすると、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。

(5)独立特許要件について
特許異議の申立ては、本件特許の全ての請求項について申立てられているので、訂正後の請求項1ないし3に係る発明については、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正の請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正の請求は適法なものであり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。

第3 本件特許に係る発明
上記第2 3のとおり、本件訂正の請求による訂正は認容されるので、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」という。)は、平成29年12月28日付けの訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくともポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)と、ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコール成分との共重合体(B)とを含有する第1離型層(但し、ポリメチルペンテン樹脂を含有する第1離型層を除く)と、
エチレン-メタクリル酸メチル共重合体を含有するクッション層と、
ポリプロピレンを含有する第2離型層と、を備え、
前記第1離型層、前記クッション層および前記第2離型層は、この順に配設され、
前記第1離型層の厚さが、15μm以下、かつ、前記クッション層の厚みが前記離型層の厚みの5倍以上となる厚さである、
回路露出フィルムへカバーレイフィルムを加熱プレスにより接着するために用いられる離型フィルム。
【請求項2】
前記第1離型層中における前記ポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)と、前記共重合体(B)との重量比率(A/B)がA/B=80/20?25/75である請求項1記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記共重合体(B)中のポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合比率(PBT/PTMG)がPBT/PTMG=80/20?90/10である請求項1または2に記載の離型フィルム。」

第4 平成29年9月11日付けの取消理由通知について
1 取消理由の概要
当審において平成29年11月1日付けで通知した取消理由の概要は、 以下のとおりである。

「1.本件特許の請求項1および3に係る発明は、原出願の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件特許の請求項1ないし3(当審注 「1および3」の誤記である。)に係る発明に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2.本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

3.本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、下記の点で不備であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

・・・
甲第1号証: 特願2009-152747号出願(特開2010-234794号公報)
甲第2号証: 特開2006-321112号公報
甲第3号証: 特開2007-098816号公報」

甲第1号証ないし甲第3号証は、平成29年8月7日に、申立人が提出した特許異議申立書に甲第1号証ないし甲第3号証として添付されたものである。
以下、上記取消理由を、順に「理由1」ないし「理由3」という。

2 当合議体の判断
(1)理由1について
ア 甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された発明
申立人が甲第1号証として提出した特開2010-234794号公報は、本件特許出願の原出願の出願より前の平成21年6月26日を出願日とする特願2009-152747号の公開公報であって、本件特許の出願後に公開されたものであり、その願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲(以下、「甲1明細書等」という。)には、段落【0056】?【0068】、特に段落【0068】の比較例5として、以下の発明が記載されている(以下、「甲1比較例発明」という。)。

「離型層材料として、第三成分としてポリテトラメチレングリコールを共重合させたPBTコポリマー(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5505S)80質量部と、PBTホモポリマー(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5026)20質量部と、ポリメチルペンテン(三井化学(株)製、商標登録:TPX MX002)10質量部とを用い、これらをブレンドミキサーでドライブレンドし、
中間層材料として、曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5510S融点219℃)70質量部と、プロピレン-エチレンランダム共重合体樹脂(プライムポリマー(株)製、プライムポリプロ F329RA、融点137℃、MFR25g/10min(230℃、2.16kg荷重時))30質量部を用い、
上述のようにドライブレンドした樹脂組成物を用い、ダルメージ型3層単軸押出機で混練溶融させた後、Tダイスから共押出し、各層の厚さの比が離型層:中間層:離型層=1:22:1であり、総厚が120μmの3層フィルム。」

また、甲1明細書等には、請求項1を引用する請求項3に係る発明も記載され、これを引用形式ではなく記載すると、以下の発明が記載されている(以下、「甲1発明」という。)。

「第三成分としてジオール化合物を共重合させたポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と、ポリメチルペンテン樹脂(B)とを主成分とし、樹脂(A):樹脂(B)の質量比が100:20?100:5である樹脂成分100質量部に対し、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(C)を30質量部以下で含む樹脂組成物からなる2層の離型層の間に、樹脂成分100質量部に対し、曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂(E)を75?50質量部、融点が110?140℃である合成樹脂(F)を20?50質量部含む樹脂組成物からなる中間層を有する多層構造であって、前記離型層と前記中間層の厚さの比が、離型層:中間層=1:10?1:3であり、総厚が20?160μmであることを特徴とする離型フィルム。」

イ 甲1比較例発明との対比判断
(ア)本件特許発明1について
a 対比
本件特許発明1と甲1比較例発明を比較する。
甲1比較例発明の「PBTホモポリマー(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5505S」、「ポリテトラメチレングリコールを共重合させたPBTコポリマー(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5505S」は、それぞれ、本件特許発明1の「ポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)」、「ポリブチレンテレフタレート成分をポリテトラメチレングリコール成分との共重合体(B)」に相当する。
また、甲1明細書等の段落【0032】、【0033】、【0047】の記載からみて、甲1比較例発明の「中間層」は、凹凸部の形状追従性を有するものであるから、本件特許発明1の「クッション層」に相当する。
そして、甲1明細書等の段落【0054】?【0068】から、甲1比較例発明の離型フィルムは2層の離型層と中間層を含む三層構造であって、離型層と中間層の厚みの比は離型層:中間層:離型層=1:22:1、総厚は120μmであり、各離型層は5μm、中間層は110μmと計算されるので、2つのうちの一方の離型層、他方の離型層が、それぞれ本件特許発明1の「第1離型層」、「第2離型層」に相当し、本件特許発明1の「前記第1離型層、前記クッション層および前記第2離型層は、この順に配設され」との要件を満たし、かつ、甲1比較例発明の一方の離型層が、本件特許発明1の「第1離型層の厚さが15μm以下、かつ、クッション層の厚みが前記第1離型層の厚みの5倍以上となる厚さであり」との要件を満たすものである。
さらに、甲1明細書等の段落【0001】?【0003】の技術背景からみて、甲1比較例発明の「離型フィルム」は、プリント配線基板等の製造において、熱プレス工程の際に、回路とカバーレイフィルムとの接着防止用のために用いる離型フィルムの比較例であるから、本件特許発明1の「回路露出フィルムへカバーレイフィルムを加熱プレスより接着するために用いられる離型フィルム」に相当する。

そうすると、本件特許発明1と甲1比較例発明は、
「少なくともポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)と、ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコール成分との共重合体(B)とを含有する第1離型層と、
クッション層と、
第2離型層と、を備え、
前記第1離型層、前記クッション層および前記第2離型層は、この順に配設され、
前記第1離型層の厚さが、15μm以下、かつ、前記クッション層の厚みが前記離型層の厚みの5倍以上となる厚さである、
回路露出フィルムへカバーレイフィルムを加熱プレスにより接着するために用いられる離型フィルム。」
の発明である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
第1離型層について、本件特許発明1は「但し、ポリメチルペンテン樹脂を含有する第1離型層を除く」と特定するのに対し、甲1比較例発明は「ポリメチルペンテン(三井化学(株)製、商標登録:TPX MX002」を含有する点。

[相違点2]
クッション層について、本件特許発明1は「エチレン-メタクリル酸メチル共重合体を含有する」と特定するのに対し、甲1比較例発明は「曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5510S融点219℃)と、プロピレン-エチレンランダム共重合体樹脂(プライムポリマー(株)製、プライムポリプロ F329RA、融点137℃、MFR25g/10min(230℃、2.16kg荷重時)」とからなる点。

[相違点3]
第2離型層について、本件特許発明1は「ポリプロピレンを含有する」と特定するのに対し、甲1比較例発明は「第三成分としてポリテトラメチレングリコールを共重合させたPBTコポリマー(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5505S)と、PBTホモポリマー(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商標登録:ノバデュラン5026)と、ポリメチルペンテン(三井化学(株)製、商標登録:TPX MX002)」とからなる点。

b 判断
甲1比較例発明は、本件特許発明1の第1離型層に相当する一方の離型層がポリメチルペンテン樹脂を含有するものであるから、相違点1は実質的な相違点である。
そうすると、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1比較例発明、すなわち、甲1明細書等に記載された発明と同一ではない。

c 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、甲1明細書等に記載された発明と同一ではない。

ウ 甲1発明との対比判断
(ア)本件特許発明1について
a 対比
本件特許発明1と甲1発明を比較する。
甲1発明の「ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(C)」は、本件特許発明1の「ポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)」に相当する。
甲1発明の「第三成分としてジオール化合物を共重合させたポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)」は、甲1明細書等の段落【0023】、【0024】及び段落【0056】?【0063】の実施例の記載からみて、ポリテトラメチレングリコールを共重合させたPBTポリマーが包含されるから、本件特許発明1の「ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコールとの共重合体(B)に相当する。
また、甲1明細書等の段落【0032】、【0033】、【0047】の記載からみて、甲1発明の「中間層」は、凹凸部の形状追従性を有するものであるから、本件特許発明1の「クッション層」に相当する。
さらに、甲1発明の「2層の離型層」はそれぞれ、本件特許発明1の「第1離型層」、「第2離型層」に相当する。
また、甲1発明の「2層の離型層の間に、樹脂成分100質量部に対し、曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂(E)を75?50質量部、融点が110?140℃である合成樹脂(F)を20?50質量部含む樹脂組成物からなる中間層を有する多層構造」であることは、本件特許発明1の「前記第1離型層、前記クッション層および前記第2離型層は、この順に配設され」ることに相当する。
そして、甲1発明の「離型層:中間層=1:10?1:3であり、総厚が20?160μm」との構成は、本件特許発明1の「第1離型層の厚さが15μm以下」、かつ、「クッション層の厚みが前記第1離型層の厚みの5倍以上となる厚さであり」と条件を包含しているので、「第1離型層の厚さが15μm以下、かつ、クッション層の厚みが前記第1離型層の厚みの5倍以上となる厚さであり」との構成に相当する。
さらに、甲1明細書等の段落【0001】?【0003】の技術背景からみて、甲1発明の「離型フィルム」は、プリント配線基板等の製造において、熱プレス工程の際に、回路とカバーレイフィルムとの接着防止用のために用いる離型フィルムであるから、本件特許発明1の「回路露出フィルムへカバーレイフィルムを加熱プレスより接着するために用いられる離型フィルム」に相当する。

そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、
「少なくともポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)と、ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコール成分との共重合体(B)とを含有する第1離型層と、
クッション層と、
第2離型層と、を備え、
前記第1離型層、前記クッション層および前記第2離型層は、この順に配設され、
前記第1離型層の厚さが、15μm以下、かつ、前記クッション層の厚みが前記離型層の厚みの5倍以上となる厚さである、
回路露出フィルムへカバーレイフィルムを加熱プレスにより接着するために用いられる離型フィルム。」
の発明である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点4]
第1離型層について、本件特許発明1は「但し、ポリメチルペンテン樹脂を含有する第1離型層を除く」と特定するのに対し、甲1発明は「ポリメチルペンテン樹脂(B)」を含有する点。

[相違点5]
クッション層について、本件特許発明1は「エチレン-メタクリル酸メチル共重合体を含有する」と特定するのに対し、甲1発明は「樹脂成分100質量部に対し、曲げ弾性率が600MPa以下のポリブチレンテレフタレート系樹脂(E)を75?50質量部、融点が110?140℃である合成樹脂(F)を20?50質量部含む樹脂組成物からなる」点。

[相違点6]
第2離型層について、本件特許発明1は「ポリプロピレンを含有する」と特定するのに対し、甲1発明は「第三成分としてジオール化合物を共重合させたポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と、ポリメチルペンテン樹脂(B)とを主成分とし、樹脂(A):樹脂(B)の質量比が100:20?100:5である樹脂成分100質量部に対し、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(C)を30質量部以下で含む樹脂組成物からなる」点。

b 判断
甲1発明は、本件特許発明1の第1離型層に相当する一方の離型層がポリメチルペンテン樹脂を含有するものであるから、相違点4は実質的な相違点である。
そうすると、相違点5及び6について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、すなわち、甲1明細書等に記載された発明と同一ではない。

エ 小括
以上イ及びウのとおり、本件特許発明1及び3は、甲1明細書等に記載された発明と同一ではない。

(2)理由2について
ア 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証(以下、「甲2」という。)には、請求項1から、
「少なくとも、示差走査熱量計を用いて測定した融点が200℃以上である結晶性芳香族ポリエステル樹脂からなる離型層と、示差走査熱量計を用いて測定した融点が70?130℃であるポリオレフィン系樹脂からなるクッション層とを有する離型フィルムであって、前記離型層の厚さが5?30μm、前記クッション層の厚さが30?150μmであり、かつ、前記離型層と前記クッション層との層厚の比が1:2?1:10である多層離型フィルム。」
の発明が記載されている(以下、「甲2発明」という。)。

イ 対比判断
(ア)本件特許発明1について
a 対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「離型層」、「クッション層」、「離型フィルム」は、それぞれ本件特許発明1の「第1離型層」、「クッション層」、「離型フィルム」に相当する。
また、甲2の段落【0009】の記載からみて、甲2の離型フィルムの用途は、本件特許発明1の「回路露出フィルムへカバーレイフィルムを加熱プレスにより接着するために用いられる」に相当する。
また、甲2発明の「離型層の厚さが5?30μm、前記クッション層の厚さが30?150μmであり、かつ、前記離型層と前記クッション層との層厚の比が1:2?1:10である」との構成は、甲2の段落【0039】?【0041】の記載および【表1】の実施例2に離型層が10μm、クッション層が100μmの厚みのものが記載されていることを踏まえれば、本件特許発明1の「前記第1離型層の厚さが、15μm以下、かつ、前記クッション層の厚みが前記第1離型層の厚みの5倍以上となる厚さであり、」との構成に相当する。

そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、
「第1離型層と、
クッション層と、を備え、
前記第1離型層の厚さが、15μm以下、かつ、前記クッション層の厚みが前記離型層の厚みの5倍以上となる厚さである、
回路露出フィルムへカバーレイフィルムを加熱プレスにより接着するために用いられる離型フィルム。」
の発明である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点7]
本件特許発明1では、第1離型層が「少なくともポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)と、ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコール成分との共重合体(B)とを含有する」ものであって、「但し、ポリメチルペンテン樹脂を含有する第1離型層を除く」と特定するのに対し、甲2発明は、離型層が「結晶性芳香族ポリエステルからなる」点。

[相違点8]
本件特許発明1では、クッション層が「エチレン-メタクリル酸メチル共重合体を含有する」ものであるのに対し、甲2発明では、「示差走査熱量計を用いて測定した融点が70?130℃であるポリオレフィン系樹脂からなる」点。

[相違点9]
本件特許発明1では、離型フィルムが「ポリプロピレンを含有する第2離型層を備え、前記第1離型層、前記クッション層および前記第2離型層は、この順に配設され」るものであるのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。

b 判断
相違点7について検討する。
甲2には、段落【0014】に、結晶性芳香族ポリエステル樹脂として使用できる樹脂として、ポリブチレンテレフタレート、テレフタル酸ブタンジオールポリテトラメチレングリコール共重合体等が挙げられ、2種類以上が併用されてもよい旨の記載がある。
また、甲第3号証(以下、「甲3」という。)には、回路基板に用いる離型フィルムとして、第1層に離型層、第2層にクッション層、第3層に離型層を備えたものが記載され、該第1層の離型層に、ポリブチレンテレフタレート樹脂を主で含み、該ポリブチレンテレフタレート樹脂がポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合体であるものが開示され(請求項3、段落【0022】、及び【0031】)、特定のポリブチレンテレフタレート系樹脂を含むと、離型性が向上することや、該樹脂としてポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合体が好ましく、これによりメッキ付き性にも優れる旨も指摘され(段落【0007】、【0010】?【0017】)、実施例3において、離型層として、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合体(ポリテトラメチレングリコールの共重合比率10%、品番5510S、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)25重量%と、ポリブチレンテレフタレート樹脂75重量%で配合したものが、回路基板製造において離型性等に優れることが記載されている(段落【0048】、【0051】、表1)。

ここで、本件特許発明1の課題は、段落【0005】より、従前の離型フィルム同様に良好な埋め込み性を得つつ、回路露出フィルムへのCLフィルム接着時において、離型性を向上させる(特に離型フィルムとCL接着剤との過度の密着による剥離不良を低減する)離型フィルムを提供することであって、本件特許発明1では、ポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)と、ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコール成分との共重合体(B)とを併用することで、前記課題を解決している。
しかしながら、甲2及び甲3はいずれも、離型フィルムとCL接着剤との過度の密着による剥離不良を低減するという課題の記載、示唆はないから、そのような対CL接着剤の離型性に着目し、ポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)と、ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコール成分との共重合体(B)とを併用する動機付けは何ら見いだせない。

そして、本件特許発明1に関し、ポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)と、ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコール成分との共重合体(B)とを併用した実施例1?4と、ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコール成分との共重合体(B)のみを用いた比較例2とでは、対回路露出フィルムの離型性は同等であるものの、対CL接着剤の離型性について、実施例1?4のもので向上していることから、ポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)と、ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコール成分との共重合体(B)とを併用することによりCL接着剤との過度の密着による剥離不良の低減の点で、顕著な効果を奏していると認められる。
そうすると、相違点7については、甲3の上記記載を参酌しても、当業者が想到し得たものということはできない。

以上より、相違点8及び9について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明、すなわち、甲2に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 小括
よって、本件特許発明1ないし3は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)理由3について
ア 理由3の概要
当審において通知した、理由3の概要は以下のとおりである。

「本件特許発明1には、『離型層と、クッション層とを備え、前記離型層の厚さが、15μm以下、かつ、前記クッション層の厚みが前記離型層の厚みの5倍以上となる厚さであり、』と記載されている。
そして、本件特許明細書の図1および図2等からみて、本件特許発明1には、離型層が1つだけでなく、2つ設けられる場合も包含されるものと認められる。
ここで、(A)および(B)成分を含有する離型層が複数層存在する場合に、上記規定における『離型層の厚さ』とは、一層の離型層の厚さとの意味なのか、それとも複数層を合計したものを意味するのかが、請求項1における記載では明確ではない。
請求項1を引用する本件特許発明2および3についても同様の理由が該当する。」

イ 判断
上記理由3について検討すると、訂正事項1によって、特許請求の範囲の請求項1において、「前記離型層の厚さ」を「前記第1離型層の厚さ」とすることにより、離型層の厚さが特定の離型層の厚さであることが明らかとな

った。

ウ 小括
よって、本件特許の請求項1ないし3に係る各特許発明は、明確である。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
申立人は、特許異議の申立ての理由として、概略、以下のとおり主張している。

・理由A(特許法第29条第1項第3号:新規性)
本件特許の請求項1に係る特許発明は、甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

2 当審の判断
上記第4 2(2)で述べたとおり、本件特許発明1と、甲2発明、すなわち、甲2に記載された発明とは、相違点7ないし9で実質的に相違する。
よって、本件特許の請求項1に係る特許発明は、甲2に記載された発明ではない。

第6 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立ての理由並びに証拠によっては、請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)と、ポリブチレンテレフタレート成分とポリテトラメチレングリコール成分との共重合体(B)とを含有する第1離型層(但し、ポリメチルペンテン樹脂を含有する第1離型層を除く)と、
エチレン-メタクリル酸メチル共重合体を含有するクッション層と、
ポリプロピレンを含有する第2離型層と、を備え、
前記第1離型層、前記クッション層および前記第2離型層は、この順に配設され、
前記第1離型層の厚さが、15μm以下、かつ、前記クッション層の厚みが前記第1離型層の厚みの5倍以上となる厚さである、
回路露出フィルムへカバーレイフィルムを加熱プレスにより接着するために用いられる離型フィルム。
【請求項2】
前記第1離型層中における前記ポリブチレンテレフタレート単独重合体(A)と、前記共重合体(B)との重量比率(A/B)がA/B=80/20?25/75である請求項1記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記共重合体(B)中のポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合比率(PBT/PTMG)がPBT/PTMG=80/20?90/10である請求項1または2に記載の離型フィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-22 
出願番号 特願2015-21239(P2015-21239)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
P 1 651・ 161- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長谷川 大輔  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 上坊寺 宏枝
小柳 健悟
登録日 2017-01-20 
登録番号 特許第6075397号(P6075397)
権利者 住友ベークライト株式会社
発明の名称 離型フィルム  
代理人 特許業務法人クレイア特許事務所  
代理人 特許業務法人 クレイア特許事務所  
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