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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02G
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H02G
管理番号 1340115
異議申立番号 異議2017-700820  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-31 
確定日 2018-04-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6086853号発明「電線切り分け工事用柱間引留工具及びその着脱方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6086853号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6086853号の請求項1ないし3、及び5に係る特許を維持する。 特許第6086853号の請求項4に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6086853号の請求項1-5に係る特許についての出願は、平成25年9月27日に特許出願され、平成29年2月10日にその特許権の設定登録がされ、その特許に対して、平成29年8月31日に特許異議申立人 三枝 季子により特許異議の申立てがされた。そして、平成29年11月14日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年1月15日に特許権者により意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して、特許異議申立人三枝 季子から平成30年3月12日付けで意見書が提出されたものである。


第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成30年1月15日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項1-3のとおりである。なお、下線は訂正部分を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「該ネジ軸は操作軸により歯車機構を介して螺動自在とされてなることを特徴とする」と記載されているのを、「該ネジ軸は操作軸により歯車機構を介して螺動自在とされ、電線支持具は電線挿通用開口部を有する略欠円弧状の支持枠と、該支持枠の開口部を閉止せしめる抜止片とよりなり、上記支持枠はその下端部に伸縮棒用取付け孔が形成され、他方、抜止片は開口部の一端に倒起立自在に枢着され、該開口部の内方に倒伏可能に外方付勢されると共に、開口部を閉止せしめる位置でロックせしめるべく該抜止片の回動軸と平行に抜き差し自在なロックピンが付設されてなることを特徴とする」に訂正する(請求項1の記載を間接的又は直接的に引用する請求項2、3及び5も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれか1項に記載の電線切り分け工事用柱間引留工具の着脱方法であって」と記載されているのを、請求項4の削除に伴い、「請求項1?3のいずれか1項に記載の電線切り分け工事用柱間引留工具の着脱方法であって」に訂正する。


2.訂正要件についての判断
(1)一群の請求項要件
訂正前の請求項1-5は、請求項2-5が、訂正の対象である請求項1を引用する関係にあるから、これらの請求項は訂正前において一群の請求項に該当する。本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法120条の5第4項に規定する要件を満たす。


(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア.訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「電線支持具」が、「電線支持具は電線挿通用開口部を有する略欠円弧状の支持枠と、該支持枠の開口部を閉止せしめる抜止片とよりなり、上記支持枠はその下端部に伸縮棒用取付け孔が形成され、他方、抜止片は開口部の一端に倒起立自在に枢着され、該開口部の内方に倒伏可能に外方付勢されると共に、開口部を閉止せしめる位置でロックせしめるべく該抜止片の回動軸と平行に抜き差し自在なロックピンが付設され」ていると限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして、訂正事項1は、訂正前の請求項4に係る記載を訂正前の請求項1に係る記載に対して加え、「抜止片」が「該開口部の内方に倒伏可能に外方付勢される」こと、及び、「ロックピン」が「抜止片の回動軸と平行に抜き差し自在」に「付設され」ると訂正するものであって、訂正事項1の「抜止片」が「該開口部の内方に倒伏可能に外方付勢される」ことに関して、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲又は図面(以下、単に「本件特許明細書等」という。)の発明の詳細な説明の段落【0023】に、「・・・。そして、図9A・Bに図示するように、起立して開口部20を閉止する電線支持具18の抜止片21に電線26を当接して押圧せしめつつ内方に倒伏せしめ、支持枠19内に電線26を挿通状に支持せしめると共に、付勢バネ(図示略)の外方付勢により抜止片21を起立せしめて開口部20を閉止せしめ、ロックピン22によりロックせしめて支持する電線26の抜出を確実に防止せしめる。・・・」との記載がされており、図9(A)では、電線26を支持する際に抜止片21が開口部20の内方に倒伏している状態が示されており、また、訂正事項1の「ロックピン」が「抜止片の回動軸と平行に抜き差し自在」に「付設され」ることに関しては、本件特許明細書等の段落【0022】に「・・・、22は該抜止片21を開口部20の閉止位置でロックせしめるべく付設されたロックピンである。・・・」との記載がされており、図9(A)-図9(C)にはロックピン22が抜止片21の回動軸に平行に差し込まれている状態が示され、通常、何らかの手段を用いればピンは抜くことが可能と認められることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項1は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ.訂正事項2について
上記訂正事項2は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ.訂正事項3について
上記訂正事項3は、訂正前の請求項5が請求項1-4を引用する記載であったものを、請求項1-3を引用するものとして多数項引用形式請求項において引用請求項を減少させたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正を認める。


第3.特許異議の申立について
1.本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
操作軸を備えた把持自在な伸縮操作体の両側に各々一対の共回り不能とされた内外筒よりなる伸縮棒が接続され、該伸縮棒を構成する両側の外筒それぞれには同両側の外筒それぞれの自由端側に電線支持具が取付けられ、同両側の内筒それぞれには同両側の内筒それぞれの自由端側に電線用把持部材が取付けられると共に同両側の内筒それぞれの基端側内周面に所要のメネジ部が形成され、該両側のメネジ部には両側内筒を対称かつ同時に伸縮作動せしめるべく同軸状のネジ軸が各々螺合されると共に、該ネジ軸は操作軸により歯車機構を介して螺動自在とされ、電線支持具は電線挿通用開口部を有する略欠円弧状の支持枠と、該支持枠の開口部を閉止せしめる抜止片とよりなり、上記支持枠はその下端部に伸縮棒用取付け孔が形成され、他方、抜止片は開口部の一端に倒起立自在に枢着され、該開口部の内方に倒伏可能に外方付勢されると共に、開口部を閉止せしめる位置でロックせしめるべく該抜止片の回動軸と平行に抜き差し自在なロックピンが付設されてなることを特徴とする、電線切り分け工事用柱間引留工具。
【請求項2】
両側のメネジ部とネジ軸との螺合はその一方が右ネジ機構とされると共に、同他方が左ネジ機構とされてなることを特徴とする、請求項1記載の電線切り分け工事用柱間引留工具。
【請求項3】
伸縮操作体の一端部外周面にヤットコ又は絶縁操作棒を把持せしめる把持部が凹状形成されてなることを特徴とする、請求項1または2記載の電線切り分け工事用柱間引留工具。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
請求項1?3のいずれか1項に記載の電線切り分け工事用柱間引留工具の着脱方法であって、取付けるさいには、操作軸によりネジ軸を所定方向に螺動せしめつつ両側の伸縮棒を収縮せしめると共に、伸縮操作体をヤットコ又は絶縁操作棒により把持して電線にアプローチせしめ、両側の電線支持具を各々電線に支持せしめつつ操作軸によりネジ軸を所定方向に螺動せしめて両側の伸縮棒を伸長せしめたのち、両側の把持部材を各々電線に把持せしめ、しかるのち、操作軸によりネジ軸を螺動せしめつつ両側の伸縮棒を収縮せしめ、両側の把持部材間に位置する電線を弛めて引留めながら所要の電線切り分け工事を行い、逆に取外すさいには、操作軸によりネジ軸を所定方向に螺動せしめて両側の伸縮棒を伸長せしめ、両側の把持部材の把持を弛めて電線から解除せしめると共に、ヤットコ又は絶縁操作棒に伸縮操作体を把持せしめつつ電線支持具の支持を解除せしめて電線から取外すことを特徴とする、電線切り分け工事用柱間引留工具の着脱方法。」


2.取消理由の概要
訂正前の請求項1-5に係る特許に対して平成29年11月14日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

ア.請求項1-5に係る発明は、下記の刊行物1乃至刊行物3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1-5に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

刊行物1: 特開平4-207号公報 (甲第4号証)
刊行物2: 特開昭62-31312号公報 (甲第2号証)
刊行物3: 特開2011-239565号公報 (甲第5号証)


3.刊行物の記載事項
(1)刊行物1の記載事項
刊行物1には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。)

a.「〔産業上の利用分野〕
この発明は、配電線の間接活線工法により配電線工事を行う際に使用するケーブル張線装置、特にマニピュレーターによって工事を行う際のケーブル張線装置に間するものである。」(公報2頁左上欄1-5行)

b.「〔実施例〕
第1図に示すように実施例の装置は、伸縮装置30とその両端に連結された一対のケーブル把持器31、31とからなり、伸縮装置30の中央部分を基準として左右対称構造になっている。
伸縮装置30は、中央部に歯車箱32を有し、その歯車箱32の両端面にFRP(繊維強化プラスチック)製の保護管33が結合され、その保護管33に同じくFRP製の伸縮ロッド34が入れ子式に出入り自在に挿入される。伸縮ロッド34には、ナイロン製のキー35が取付けられ、そのキー35を保護管33のキー溝に嵌めることにより回り止めを図っている。歯車箱32の内部には、第2図に示すように、駆動ベベルギヤ36とこれにかみ合った一対の従動ベベルギヤ37が収納され、駆動ベベルギヤ36の駆動軸38は、歯車箱32に固定された把持部39を貫通する。その先端には、インパクトレンチ等の操作工具を係合させる角軸部40が設けられている。従動ベベルギヤ37には送りねじ41が接続され、送りねじ41は伸縮ロッド34の雌ねじ42と結合する。従って、駆動軸38を回転させると、両側の伸縮ロッド34が対称状態に進退する。
伸縮ロッド34の先端にキャップ43が嵌着される。キャップ43の内部には、第3図に示すように、ヘッド付きのスライド金具44が挿入され、その一端をキャップ43の孔45から外部に突出させ、その突出端と把持器31のL形連結金具46とをピン47を介して屈曲自在に連結する。上記の孔45のまわりにおいて凹所48が2個所に設けられ、連結金具46の先端に設けた突起49と相互に係脱自在に係合するようになっている。前記のスライド金具44はそのヘッド部分がキャップ43の内部で一定ストロークだけスライドするが、そのスライドストロークの範囲内で前記の凹所48と突起49とが係合し、又は係合が外れる。両者が係合するとピン47のまわりの回転が阻止されるので、把持器31は伸縮装置30に対し一定の姿勢、即ち、張線開始初期の位置に保持される。またその係合が外れると、把持器31はピン47のまわりで自由に回転できる状態で支持される。」(公報3頁右下欄3行-4頁右上欄4行)

c.「実施例の装置は、以上のごとき構成であり、次にその作用を説明する。
第3図のように、伸縮装置30と把持器31との連結部分に、凹所48と突起49の係合構造を備えた形式のものにおいては、両者を係合して伸縮装置30に対するケーブル把持器31の姿勢を初期位置に保持せしめる。また、第4図のように、係合手段として板バネ51を用いたものはそのままの状態で、それぞれ伸縮装置30の把持部39をマニュピレータのグリッパ-で把持し、ケーブル張線装置をケーブル74の高さまで持ち上げ、両方の把持器31、31の上側クランプ55と下側クランプ62との間の間隙にケーブル74を嵌める。上側クランプ55をケーブル74上に載せ、装置全体をケーブル74に懸架すると、カム76(第6図参照)がケーブル74に押されて上に動くため、これと一体のリンク78が持ち上げられる。リンク78が持ち上げられると、その下端のローラ79がロックアーム71を押し上げ、孔72から外す、これによりクランプレバ-61のロックが外れる。
ロックが外れると、クランプレバ-61はピン60のつる巻きバネ68のバネ力により第5図において左回りに回転し、下側クランプ62をケーブル74に押し当て、仮クランプを行う(第9図参照)。
次に、伸縮装置30の角軸部40(第1図参照)にインパクトレンチ等の工具を掛けて往復動させると、伸縮ロッド34が内方へ後退する。これにより第4図のように伸縮ロッド34と連結金具46の係合が外れ、或いは第4図の場合は直接連結金具46を介して、把持器31のスライド軸58を内方へ移動させる。スライド軸58が内方へ移動すると、これと一体のプッシャー67がクランプレバ-61の凹所66に係合し、クランプレバ-61を内方へ押し、下側クランプ62にクランプ力を与える。これと同時につめ81がピン86に係合する(第10図参照)、更に、駆動力を加えると、把持器31はケーブル74をクランプした状態で相互に内方へ引き寄せられ、両方のケーブル74に引張力を与える。
ケーブル74の引張力が大きくなるに従い把持器31はピン47を中心にして右回りに回転し一定の角度でバランスする。なお、把持器31相互間のケーブル74は弛緩する(第11図参照)。
所要の作業終了後、伸縮装置30を操作して伸縮ロッド34を外方へ伸長させると、スライド軸58が外方へ後退し、後退しながらつめ81を介してクランプレバ-61を引き戻し、クランプ55、62を開放せしめる(第12図参照)、スライド軸58が最大限まで後退し、ロックアーム71の切欠き73が孔72に係合するとクランプレバ-61がロックされる。しかる後に、ケーブル張線装置をケーブル74から外し、一連の張線作業を完了する。」(公報5頁右上欄9行-6頁左上欄3行)

d.「〔発明の効果〕
・・・中略・・・
(3) 請求項(3)に対応する効果
伸縮装置の伸縮構造を長さ方向の中央部を中心として両側を対称形状に構成し、その中央部から駆動力を人力するようにしたので、両側で伸縮ストロークが等しくなり、伸縮のいかなる位置においてもバランスよく張線装置を把持できる。また、駆動力の入力部が定位置であり、移動することがないので操作が容易である。
(4)請求項(4)に対応する効果
伸縮装置の中央部に作業用把持部を設けたことにより、その把持部をマニュピレータ-の片腕で把持するだけで張線装置を容易にケーブルに懸架できる。」(公報6頁右上欄5行-左下欄10行)


上記記載事項(特に、下線部)によれば、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物発明1」という。)が開示されていると認められる。

「配電線の間接活線工法により配電線工事を行う際に使用し、伸縮装置30とその両端に連結された一対の把持器31、31とからなり、中央部分を基準として左右対称構造になっているケーブル張線装置において、
前記伸縮装置30は、中央部に歯車箱32を有し、その歯車箱32の両端面にFRP(繊維強化プラスチック)製の保護管33が結合され、その保護管33に同じくFRP製の伸縮ロッド34が入れ子式に出入り自在に挿入され、伸縮ロッド34には、ナイロン製のキー35が取付けられ、そのキー35を保護管33のキー溝に嵌めることにより回り止めを図っており、歯車箱32の内部には、駆動ベベルギヤ36とこれにかみ合った一対の従動ベベルギヤ37が収納され、駆動ベベルギヤ36の駆動軸38は、歯車箱32に固定された把持部39を貫通し、その先端には、インパクトレンチ等の操作工具を係合させる角軸部40が設けられおり、従動ベベルギヤ37には送りねじ41が接続され、送りねじ41は伸縮ロッド34の雌ねじ42と結合し、駆動軸38を回転させると、両側の伸縮ロッド34が対称状態に進退し、伸縮ロッド34の先端にキャップ43が嵌着され、キャップ43の内部には、ヘッド付きのスライド金具44が挿入され、その一端をキャップ43の孔45から外部に突出させ、その突出端と把持器31のL形連結金具46とがピン47を介して屈曲自在に連結されているものであって、
伸縮装置30の把持部39をマニュピレータのグリッパ-で把持し、ケーブル張線装置をケーブル74の高さまで持ち上げ、両方の把持器31、31の上側クランプ55と下側クランプ62との間の間隙にケーブル74を嵌め、上側クランプ55をケーブル74上に載せ、装置全体をケーブル74に懸架すると、仮クランプを行われ、
伸縮装置30の角軸部40にインパクトレンチ等の工具を掛けて往復動させると、伸縮ロッド34が内方へ後退すると、下側クランプ62にクランプ力を与えられ、更に、駆動力を加えると、把持器31はケーブル74をクランプした状態で相互に内方へ引き寄せられ、両方のケーブル74に引張力を与えられ、把持器31相互間のケーブル74は弛緩し、
所要の作業終了後、伸縮装置30を操作して伸縮ロッド34を外方へ伸長させると、クランプ55、62が開放し、しかる後に、ケーブル張線装置をケーブル74から外すことができ、
伸縮装置30の伸縮構造が長さ方向の中央部を中心として両側を対称形状に構成し、その中央部から駆動力を人力されるので、両側で伸縮ストロークが等しく、伸縮のいかなる位置においてもバランスよく張線装置を把持できる、ケーブル張線装置。」


(2)刊行物2の記載事項
刊行物2には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.「「実施例」
今、ここに本発明実施の一例を示す添付図面について詳説する。
1は棒型張線器で、2は該張線器lの本体であり、本体ケース3の一側にFRP製のカバー4を突設し、ビス5,5で固定したものである。
6は主軸で本体ケース3の該-側に穿設した軸孔7を貫通して本体ケース3からカバー4の先端部に亘って設備したもので、本体ケース3側の主軸6基部に本体ケース3の該-側との間にスラストベアリング8を介して傘歯車9を固定し、カバー4側の主軸6の外周に全長に亘って台形ねじ10を穿設したものである。11は該傘歯車9と噛合する傘歯車で、該本体ケース3の正面に主軸6と直交して貫設した駆動軸12の先端に固定したものである。13は該駆動軸12の基端部から軸方向に穿設した六角穴で、公知ラチェットハンドル14のハンドル軸15先端を六角棒15aに成形し、ラチェットハンドル14を該穴13に挿抜自在としたものである。16は前記本体2のカバー4内に挿抜自在なFRP製の主軸カバーで、軸方向の全長に亘って主軸6を挿通ずる貫通孔16aを穿設した筒状のものである。17は一端を閉塞した筒状の主軸受けで、その外径を本体2のカバー4内に嵌合して摺動し得るようにし、その内径に前記主軸カバー16を挿嵌し得るよう成形したもので、該閉塞端に主軸6の台形ねじ10と噛合する台形雌ねじ18を穿設し、該開放端に主軸カバー16の基端部を挿嵌し、主軸カバー16と主軸受け17とを止めねじ19,19で固定したものである。

・・・中略・・・・

25,25はジュラコン製の電線支持具で、夫々本体2のカバ-4外周に摺動、回転自在に取付けリング26を挿嵌し、先端に二又状電線受部27をボルト28で回転及び固定自在に装備した支柱29を該取付けリング26周面に貫設したねじ孔30に締付け固定するもので、電線を保持するに当っては、先端の二又状電線受部27を適宜に回転し、電線を該受部27内に挿入し、該受部27の二又開放部の一方の側面27aに設備したロックピン31先端を同他方の側面27bにねじ込み、該受部27の開放部を該ロックピン31で閉塞して保持するものである。」(公報2頁右上欄10行-3頁左上欄6行)

b.「本発明は以上のような構成で、これを使用するに当っては、棒型張線器lの伸長時の長さよりやや長い間隔で適宜幅に亘り配電線45の被覆を剥離し、公知チャック39,39を夫々のばね付きフック40,40が相対峙するよう取付け、棒型張線器1の両端の回転部34,36に取付けた環ロープ41,4lを該ばね付きフック40,40のばねに抗してフックを開放して懸け、棒型張線器1を前記チャック39,39間に懸吊し、本体ケース3の正面の駆動軸I2の六角穴13にラチェットハンドル14のハンドル軸15先端の六角棒16aを挿嵌し、ラチェットハンドル14を右回転させると駆動軸12に固定した傘歯車11を介して傘歯車9に回転を伝え、傘歯車9を固定した主軸6は右方向に回転し、主軸受け17により主軸カバー16を本体2のカバー4内の基端方向に移動させ、前記棒型張線器1を縮小して前記チャック39,39を引っ張り、該チャック39,39間の配電線45aを弛ませ、本体2のカバー4に電線支持具25,25の取付けリング26,26を摺動及び回転させ、二又状電線受部27,27のロックピン31,31を他方の側面27b,27bより抜出して開放し、該電線45aを二又開放部に挿入し、ロックピン31,31の先端を該側面27b,27bにねじ込んで閉塞して該電線45aを保持し、支柱29,29を回転することにより、取付けリング26,26のねじ孔30,30にねじ込み、カバー4に固定し、配電線45の張力を保持したまま電線支持具25,25間の中央部で配電線45aを切断し、夫々の切断端にエンドキャップ46を挿嵌し、該切断端の離隔を確保するため、一方の電線支持具25の支柱29を緩めて取付けリング26を第6図に示すように180°回転し、再支柱29を取付けリング26に締付けて該電線支持具25を固定する。」(公報3頁右上欄4行-左下欄20行)

・上記a.には、棒型張線器は、本体2の本体ケース3に固定されたFRP製のカバー4と、前記本体ケース3のカバー4内に挿抜自在なFRP製の主軸カバー16からなることが記載されており、ここで、主軸カバー16とカバー4は互いに挿抜自在に伸縮するものであり、主軸カバー16とカバー4で伸縮棒を構成するものと認められ、さらに、上記b.には、本体ケース3にラチェットハンドル14を取り付け、ラチェットハンドル14を右回転させると、主軸カバー16が本体2のカバー4内の基端方向に移動することが記載されており、ここで、本体ケース3はラチェットハンドル14が取り付けられ操作が行われるものであり操作体と認められる
してみると、刊行物2には、カバー4が、操作体である本体ケースに対して取り付けられ、該カバー4に対して主軸カバー16が挿抜自在に伸縮することが記載されているといえる。
・そして、上記b.には、電線支持具25、25は、本体2のカバー4に取り付けられることが記載されいる。

以上総合すると、刊行物2には、以下の技術事項(以下、「刊行物2に記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「電線切り分け工事用の引留工具において、切断する電線を支持するための電線支持具を、伸縮棒を構成する筒のうち操作体に対してスライドしない側の筒に取り付けること。」

(3)刊行物3の記載事項
刊行物3には、図面と共に以下の事項が記載されている。

a.「【0002】
このような配線作業に用いる活線切り分け工具およびそれに用いるホット支持具は、下記の特許文献1などで知られている。この活線切り分け工具は、架線の2点を掴持する2つの掴線器と、これらの掴線器間に接続されて遠隔に収縮操作されることにより、各掴線器が掴持している掴持点を互いに引き付けて架線を弛ませるホットスティックと言われる棒状張線器とを備え、緩んだ掴持点間で架線を切り分けても、架線の緊張状態を保つことができる。そこで、一方の切り離し端側を停電させた工事区間とし、他方の切り離し端側を活線状態に復帰させて非工事区間とする配線作業を行うことになる。
【0003】
この配線作業時の電気的安全を図るために、図1に示す本発明の実施の形態に係る棒状張線器1およびそれに装着した2つのホット支持具2、3を参照して説明すると、ホット支持具2、3は棒状張線器1の途中2箇所に装着される。一方のホット支持具2は棒状張線器1の上下にホット支持部21、22を持ち、他方のホット支持具3は棒状張線器1の上だけにホット支持部31を持っている。
【0004】
当初、棒状張線器1の上にある両側のホット支持部21、31に切り分け対象の架線4の途中2箇所を支持させる。この途中支持のために各ホット支持部21、22、31は、一側に開口部を持ったほぼC型の環状形をなし、開口部を閉じている閉止具を開くことで架線の途中を受入れられ、受入れ後に閉止具を閉じることで架線を保持できる。架線の2点を上側両ホット支持部21、31で支持した後、架線4を配線作業域の両側で掴持している両掴線器5、6間を棒状張線器1の収縮操作によって引き寄せ、架線1を仮想線のように弛ませる。
【0005】
この状態で、上側両ホット支持部21、31により支持した2点間にて架線4の切り分けを行うが、各ホット支持部21、31は架線4を支持したままであるため両切り分け端が跳ねてまわりの架線と接触するのを防止する。次いで、一方のホット支持具2側で、上下のホット支持部21、31の開口部にある閉止具を開いて、上側ホット支持部21に支持されていた一方の切り分け端4a側を下側ホット支持部22に移して閉止具を閉じ、他方の切り分け端4bから離れた位置に支持する。これにより、切り分け端4a、4bどうしが接触し合うのを防止する。」

b.「【0032】
さらに、一方のホット支持部21は、装着部23の上に位置して開口部12が上端にあり、一方の開口端12aを閉止具取り付け部16として、軸25回りに開閉する閉止具10と、この閉止具10を軸25回りに開き方向に付勢するばね26と、閉止具10とその閉じ位置で弾性的に係合して閉じ位置に係止する弾性係止具27とを装備し、他方の開口端12bに、閉止具10の自由端10aを閉じ位置に受止める閉止具受部17を設け、他方のホット支持部22は、装着部23の下に位置して開口部12が側部にあり、下方開口端12cを閉止具取り付け部16として、軸25回りに開閉する閉止具10と、この閉止具10を軸25回りに開き方向に付勢するばね26と、閉止具10とその閉じ位置で弾性的に係合して閉じ位置に係止する弾性係止具27とを装備し、上方の開口端12dに、閉止具10の自由端10aを閉じ位置に受止める閉止具受部17を設けたものとしている。」

c.「【0036】
弾性係止具27は、開口端12a、12cの凹部16aの背部からねじ込んで固定した本体27aに、これを外部から凹部16a内に貫通し、外端側への抜け止めと図示しないばねによる凹部16a側への突出習性を付与されたロックピン27bとを有し、閉止具10が実線で示す閉じ位置とされたとき、その基部外周に設けられた係合凹部10bにロックピン27bが弾性係合することで、閉止具10を閉じ位置に係止する。従って、開口端12b、12dの閉止具受部17側に係止具が不要となる。つまり、閉止具取り付け部16にメンテナンス候補部14となる閉止具10およびそれに必要な付帯装備物品を集約配置でき、閉止具受部17側がメンテナンス候補部14になるのを回避できる。ロックピン27bの後端には操作リング27cが設けられており、この操作リング27cによりロックピン27bをばねに抗して外方へ引くことで、閉止具10に対する係止を解き、閉止具10がばね26の付勢によって自動的に開かせられる。閉止具10の閉じるには閉止具10自体をばね26に抗して閉じ側に回動させればよく、閉じ位置になると弾性係止具27によって自動的に弾性係止される。」

・図2(a)によれば、閉止具10の回動軸と弾性係止具27のロックピンの抜き差し方向は直交しているものと認められる。

以上総合すると、刊行物3には、以下の技術事項(以下、「刊行物3に記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「棒状張線器1に装着されるホット支持具2の架線を支持するホット支持部21を、上端のほぼC型の環状形をなした開口部12と、該開口部12の一方の開口端12aに装着される、軸25回りに開閉する閉止具10と、この閉止具10を軸25回りに開き方向に付勢するばね26と、閉止具10とその閉じ位置で弾性的に係合して閉じ位置に係止する弾性係止具27と、他方の開口端12bに設けられる、閉止具10の自由端10aを閉じ位置に受止める閉止具受部17で構成し、閉止具10の回動軸と弾性係止具27のロックピンの抜き差し方向を直交させること。」


4.対比・判断
ア.取消理由通知に記載した取消理由について

(ア)本件発明1について
本件発明1と刊行物発明1とを対比すると以下のとおりである。

a.刊行物発明1の「駆動軸38」は、本件発明1の「操作軸」に相当し、刊行物発明1の「歯車箱32」には、「駆動ベベルギヤ36とこれにかみ合った一対の従動ベベルギヤ37が収納され、駆動ベベルギヤ36の駆動軸38は、歯車箱32に固定された把持部39を貫通」するものであり、「歯車箱32」に「把持部39」が固定されたものに、「駆動ベベルギヤ36の駆動軸38」が収納されているものと認められるから、刊行物発明1の「歯車箱32」に「把持部39」が固定されたものが、本件発明1の「操作軸を備えた把持自在な伸縮操作体」に相当する。
b.刊行物発明1の「歯車箱32の両端面」に「結合され」た「保護管33」には、「伸縮ロッド34」が「入れ子式に出入り自在に挿入され」、また、「保護管33」と「伸縮ロッド34」は「キー35」により「回り止めを図って」いることから、刊行物発明1の「保護管33」及び「伸縮ロッド34」が、本件発明1の「外筒」及び「内筒」に相当し、刊行物発明1の「保護管33」と「伸縮ロッド34」を合わせたものが、本件発明1の「伸縮操作体の両側に」「接続され」た「各々一対の共回り不能とされた内外筒よりなる伸縮棒」に相当する。
c.刊行物発明1の「把持器31、31」は、「伸縮ロッド34の先端に」連結されるものであるから、刊行物発明1の「把持器31、31」は、本件発明1の「伸縮棒を構成する」「両側の内筒それぞれには同両側の内筒それぞれの自由端側に」「取付けられる」「電線用把持部材」に相当する。
d.刊行物発明1の「伸縮ロッド34」には「雌ねじ42」が設けられており、刊行物発明1の「雌ねじ42」は、本件発明1の「メネジ部」に相当し、さらに、刊行物発明1の「雌ねじ42」は、「送りねじ41」と結合し、「送りねじ41」に接続される「従動ベベルギヤ37」に、「駆動軸38」の「駆動ベベルギヤ36」がかみ合っているので、「駆動軸38を回転させると」、「送りねじ41」が回転し「両側の伸縮ロッド34が対称状態に進退」するものであるから、刊行物発明1の「送りねじ41」は、本件発明1の「両側のメネジ部に」「両側内筒を対称かつ同時に伸縮作動せしめるべく」「各々螺合され」る「同軸状のネジ軸」に相当し、また、刊行物発明1の「駆動ベベルギヤ36」及び「従動ベベルギヤ37」は、本件発明1の「歯車機構」に相当し、さらに、刊行物発明1の「送りねじ41」は、本件発明1の「操作軸により歯車機構を介して螺動自在とされてなる」「ネジ軸」に相当する。
e.張線装置が、電線の切り分け用に用いられるための工具であることは技術常識であり(例えば、刊行物3の段落【0002】の記載参照。)、また、刊行物発明1の「ケーブル張線装置」は、「マニュピレータのグリッパ-で把持し、ケーブル張線装置をケーブル74の高さまで持ち上げ」て用いるものであり、柱間のケーブルに用いられることは明らかであるから、刊行物発明1の「ケーブル張線装置」は、本件発明1の「電線切り分け工事用柱間引留工具」に相当する。

そうすると、両者は、

<一致点>
「操作軸を備えた把持自在な伸縮操作体の両側に各々一対の共回り不能とされた内外筒よりなる伸縮棒が接続され、伸縮棒を構成する両側の内筒それぞれには同両側の内筒それぞれの自由端側に電線用把持部材が取付けられると共に同両側の内筒それぞれの基端側内周面に所要のメネジ部が形成され、該両側のメネジ部には両側内筒を対称かつ同時に伸縮作動せしめるべく同軸状のネジ軸が各々螺合されると共に、該ネジ軸は操作軸により歯車機構を介して螺動自在とされてなることを特徴とする、電線切り分け工事用柱間引留工具。」

の点で一致し、少なくとも次の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1は、「該伸縮棒を構成する両側の外筒それぞれには同両側の外筒それぞれの自由端側に電線支持具が取付けられ」、該電線支持具は、「電線挿通用開口部を有する略欠円弧状の支持枠と、該支持枠の開口部を閉止せしめる抜止片とよりなり、上記支持枠はその下端部に伸縮棒用取付け孔が形成され、他方、抜止片は開口部の一端に倒起立自在に枢着され、該開口部の内方に倒伏可能に外方付勢されると共に、開口部を閉止せしめる位置でロックせしめるべく該抜止片の回動軸と平行に抜き差し自在なロックピンが付設され」るものであるのに対して、刊行物発明1は、そのような電線支持具は取り付けられていない点。

相違点1について検討する。
刊行物2には、電線切り分け工事用の引留工具において、切断する電線を支持するための電線支持具を、伸縮棒を構成する筒のうち操作体に対してスライドしない側の筒に取り付けることが記載されている。
また、刊行物3には、ホット支持具2(本件発明1の「電線支持具」に相当。)をC型の環状形をなした開口部12(本件発明1の「略欠円弧状の支持枠と支持枠の開口部」に相当。)と、閉止具10(本件発明1の「開口部を閉止せしめる抜止片」に相当。)で構成することが記載されている。
しかしながら、刊行物2の電線支持具は、「開口部の内方に倒伏可能に外方付勢される」「抜止片」、及び、「抜止片」を「開口部を閉止せしめる位置でロックせしめるべく該抜止片の回動軸と平行に抜き差し自在なロックピン」を有するものではなく、また、刊行物3に記載の「ホット支持具」(本件発明1の「電線支持具」に相当。)の「閉止具10」(本件発明1の「抜止片」に相当。)は、外側に付勢されているが「閉止具10の自由端10aを閉じ位置に受止める閉止具受部17」で受け止められるものであって、「開口部の内方に倒伏可能」ではなく、さらに、ロックのための「弾性係止具27」(本件特許発明1の「ロックピン」に相当。)は設けられているが、「抜止片の回動軸と平行に抜き差し自在な」ものではない。
また、電線支持具として、「電線挿通用開口部を有する略欠円弧状の支持枠と、該支持枠の開口部を閉止せしめる抜止片とよりなり、上記支持枠はその下端部に伸縮棒用取付け孔が形成され、他方、抜止片は開口部の一端に倒起立自在に枢着され、該開口部の内方に倒伏可能に外方付勢されると共に、開口部を閉止せしめる位置でロックせしめるべく該抜止片の回動軸と平行に抜き差し自在なロックピンが付設され」ることが周知技術であったとも認められない。
よって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に採用し得たものではない。

したがって、本件発明1は、当業者が刊行物1-3に基づいて容易に発明をすることができたものではない。


特許異議申立人は、平成30年3月12日付け意見書において、電線挿入時に抜止片は電線支持具の内側へ倒れ、ロック解除すると抜止片は電線支持具の外側へ倒れる構造は、特許5268536号(以下、「刊行物4」という。)と同じであり、設計的事項に過ぎなく(2頁14-18行)、さらに、訂正請求して追加された発明の構成要件は、特許5268536号及び特開平8-331723号(以下、「刊行物5」という。)に呈示されており、周知・慣用技術に過ぎない(3頁8-11行)旨主張している。
確かに、刊行物4の段落【0014】-【0018】には、
「【0014】
本実施形態における電線支持具は、図1に示すように、電線Wを挿脱する開口3が上方に配置された第1の電線支持具1と、図2に示すように、開口3が一側方に配置された第2の電線支持具2の2種類のものがある。まず、第1の電線支持具1を、図1、図3、図4を参照して説明する。第1の電線支持具1は、上部に開口3を有する略U字状の保持枠4を備えており、その保持枠4の下端部には、後述の活線切分工具31の伸縮棒32など、電線支持具1を取付ける支持棒に対する取付部5が設けられている。図示例の取付部5は、下端に形成された円弧凹部6に伸縮棒32に外嵌する取付リング7の一部を嵌合させて取付ねじ8にて締結固定されている。取付リング7には、一対の固定ねじ9が放射状に貫通して螺合され、伸縮棒32などの支持棒に締め付け固定するように構成されている。9aは、回転操作用に固定ねじ9に設けられた係合環である。
【0015】
保持枠4の開口3は抜止金具10にて開放可能に閉じられる。抜止金具10は、開口3の一側に位置する保持枠4の一端部4aに設けられた支軸ボルト11にてその一端が回動自在に支持され、かつねじりばね12にて開口3の外方に向けて回動付勢されている。ねじりばね12は、支軸ボルト11の回りに巻回されるとともその一端が支軸ボルト11から適当に離れた位置に配置されたばね掛けピン13に掛けられ、他端が抜止金具10の一端から突出されたストッパ片10aに掛けられている。抜止金具10の外方への回動限はストッパ片10aがばね掛けピン13に係合することで規制される。
【0016】
開口3の他側に位置する保持枠4の他端部4bには、抜止金具10が開口3を閉じた姿勢から外方へ回動するのを解除可能に阻止する係止手段14が配設されている。本実施形態の係止手段14は、開口3を閉じた状態の抜止金具10の他端に係合する係合位置と開口の内側に回動して係合を解除する係合解除位置との間で回動可能に支軸ボルト16にて支持された係止片15にて構成され、かつ係止片15が上記係合位置から外方に回動するのを阻止するストッパピン17と係止片15を係合位置に向けて回動付勢するねじりばね18とが設けられている。ねじりばね18は、支軸ボルト16の回りに巻回されるとともその一端が支軸ボルト16から適当に離れた位置に配置されたばね掛けピン19に掛けられ、他端が係止片15から斜め上方に延出された延長腕20の上縁に掛けられている。延長腕20の先端部には、係止片15を係合解除位置に向けて回動操作する係合解除操作軸21が固定されている。
【0017】
以上の構成の第1の電線支持具1の使用に際しては、その取付部5を伸縮棒32などの支持棒に取り付けるとともに、図3(a)に示すように、抜止金具10が開口3の外方に回動した姿勢から、抜止金具10を矢印の如く開口3を閉じた位置を経てさらに保持枠4内に入り込んだ位置まで押し込むことにより、抜止金具10の先端部にて係止片15がその係合位置から保持枠4内に入り込んだ係合解除位置まで回動され、抜止金具10の先端が係止片15の先端を通過すると、係止片15が係合位置に復帰し、その後抜止金具10の押し込みを解除することで、図3(b)に示すように、抜止金具10の先端部が係合位置の係止片15に係合し、保持枠4の開口3が抜止金具10にて閉じられた状態にセットされる。
【0018】
この電線支持具1によって電線Wを支持する場合には、図4(a)に示すように、電線Wを開口3の上方から保持枠4内に向けて抜止金具10を保持枠4内に回動させつつ押し入れることにより、図4(b)に示すように、電線Wが抜止金具10の先端を乗り越えた時点で、抜止金具10が保持枠4の開口3を閉じた位置まで回動して係止片15に係合し、開口3が抜止金具10にて閉じられて電線Wが保持枠4内で支持された状態となる。次に、電線支持具1による電線Wの支持状態を解除する際には、図4(c)に示すように、係合解除操作軸20を矢印の如く回動操作して係止片15を保持枠4の内側に向けて回動させることで、係止片15の先端部によって抜止金具10が保持枠4の内側に回動されるとともにその回動によって抜止金具10の先端が係止片15の先端を乗り越えた時点で、図4(d)に示すように、抜止金具10が保持枠4の開口3の外方に回動して開口3が開かれ、電線Wを自在に抜き出すことができる状態となって電線Wの支持が解除される。」
と記載されており、刊行物4には、電線挿入時に抜止片は電線支持具の内側へ倒れ、ロック解除すると抜止片は電線支持具の外側へ倒れる構造は記載されているといえる。
しかしながら、刊行物3において、閉止具10は外側へ回動すれば架線の出し入れは可能であって、閉止具10を内側に倒す必要はないことから、刊行物3において、刊行物4の閉止具10を内側に倒すことを適用する動機が存在しない。
また、行物物発明1において切断する電線を支持するために、該刊行物2に記載の「電線支持具」を設ける際に、「電線支持具」の具体的な構成として刊行物3のものに代え、刊行物4の電線挿入時に抜止片は電線支持具の内側へ倒れ、ロック解除すると抜止片は電線支持具の外側へ倒れる構造のものを採用することは、当業者が容易に想到し得たことと認められるが、刊行物4の電線支持具を採用しても、刊行物4のロック機構は「係止片15」であって、「開口部を閉止せしめる位置でロックせしめるべく該抜止片の回動軸と平行に抜き差し自在なロックピン」ではなく、そのようなロックピンが周知技術とも認められない。

また、刊行物5には、
「【0012】図1において、1は、活線状態の配電線2をその張力を保持したまま工事区間の両側部で切断するための活線切分工具である。この活線切分工具1は、棒型張線器3と電線支持部4配a?4cから成り、この活線切分工具1を用いて配電線2を切断する際には、工事区間の両側部においてそれぞれ配電線2に一対のチャック5a、5bを適当な間隔をあけて固定し、棒型張線器3にてチャック5a、5bを引張してチャック5a、5b間の配電線2を弛ませ、その配電線2を配電線支持部4a、4cにて支持した状態で配電線2を切断し、その切断端部を配電線支持部4b、4cにて隔離させて保持するように構成されている。
【0015】本体ケース9とキャップ20にはチャック5a、5bと連結するためのフック21が取付けられ、図1に示すように、環ロープ22を介してチャック5a、5bと連結されている。フック21は、その開口部を閉じる方向にばねにて回動付勢された離脱防止舌片23と、この離脱防止舌片23を開く方向に回動操作するための操作レバー24を備え、その操作レバー24の先端に遠隔操作具40を係合させて回動操作するための係合環25が形成されている。
【0016】各配電線支持部4a?4cは、図3、図4に示すように、一側に開口部26aを有する略C字状の保持環26と、その開口部26aを開閉可能に閉じる閉止片27と、閉止片27を遠隔操作具30にて操作するための係合環28とを備えており、一対の配電線支持部4a、4bの保持環26は筒状部10に外嵌固定されたボス部29にその直径方向に一体的に形成され、他の配電線支持部4cの保持環26はボス部29に対して適当間隔をあけて筒状部10に外嵌固定されたボス部30に一体的に形成され、配電線支持部4aと4cが適当間隔あけて互いに対向するように配設されている。」
と記載されており、刊行物5には、棒型張線器3と配電線支持部4a?4cと、配電線2に適当な間隔をあけて固定された一対のチャック5a、5bと連結するためのフック21とが取付けられた活線切分工具において、フック21に、その開口部を閉じる方向にばねにて回動付勢された離脱防止舌片23が設けらることが記載されているといえる。
そして、刊行物4は、電線支持具の抜止金具10に関して開口部を係止する係止片を内方に倒伏可能に外方付勢しており、刊行物5は、配電線支持部とは別に設けられるフック21に関して開口部を係止する係止片を内方に倒伏可能に外方付勢していることから、一般的な開口部を係止する係止片を内方に倒伏可能に外方付勢することが、周知慣用手段であったと認められる。
しかしながら、訂正請求して追加された発明の構成要件は、電線支持具の抜止片に関して、内方に倒伏可能に外方付勢することであって、一般的な開口部を係止する係止片ではないから、上記刊行物4、5の周知慣用手段がら、このことが周知慣用手段とは認められず、さらに、電線支持具に、抜止片を開口部を閉止せしめる位置でロックせしめるべく該抜止片の回動軸と平行に抜き差し自在なロックピンが付設されことも、周知慣用手段とは認められないことから、訂正請求して追加された発明の構成要件が周知慣用技術とはいえない。

(イ)本件発明2-5について
本件発明1を引用する本件発明2、3、5は、本件発明1をさらに減縮したものであるから、本件発明1と同様に、当業者が刊行物1-3号証に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、訂正前の請求項4は削除された。

イ.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

特許異議申立人は、訂正前の請求項1-5に係る特許について、甲第1号証-甲第5号証を提出し、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである旨主張している。

甲第1号証:実願昭51-173767号(実開昭53-90178号)のマイクロフィルム
甲第2号証:特開昭62-31312号公報
甲第3号証:特開平11-4511号公報
甲第4号証:特開平4-207号公報
甲第5号証:特開2011-239565号公報


(ア)本件発明1

a.許異議申立書における主張

特許異議申立人の主張の概略は次の通りである。
甲第1号証には、以下の点を除き一致する発明が記載されている。

(相違点2)
本件発明1は、「該伸縮棒を構成する両側の外筒それぞれには同両側の外筒それぞれの自由端側に電線支持具が取付けられ」ているのに対して、甲第1号証に記載の発明では、そのような電線支持具は取り付けられていない点
(相違点3)
本件発明1は、「同両側の内筒それぞれには同両側の内筒それぞれの自由端側に電線用把持部材が取付けられ」ているのに対して、甲第1号証に記載の発明では、フックは設けられているが、そのような電線用把持部材が取付けられていない点。

しかしながら、甲第2号証及び甲第3号証には「電線支持具」が記載されており周知技術であって、また、外筒の自由端側に電線支持具を取り付けることは設計的事項である。。
さらに、甲第3号証には「電線用把持部材」が記載されており周知技術である。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載の発明と、甲第2号証の及び甲第3号証の記載事項、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。(特許異議申立書第11頁第24行-27行)

b.判断
甲第1号証に記載される発明は「ターンバックル」に関するものであって、一般に「ターンバックル」は、甲第1号証の明細書3頁8行-4頁14行に「以上述べたように、本案ターンバックルによれば弛んだ状態にあるワイヤーでも極めて簡単且つ安全な操作で締付けが行えるだけでなく、その両端が全く回転しないから、フックを適宜な形状のものに取換えることにより、一台で本来の引張り工具としては勿論押開き及び固定工具としての機能も十分果し得る他、従来のこの種工具にみられたようなラチェット機構がないので微妙な締付量の調節が可能であり、しかも小型にも拘らず強力な作動力を発揮する等、種々の優れた実用的利点を有するものである。」と記載されるように、弛んだワイヤーを締め付けたりあるいは、フックを適宜な形状のものに取換えることにより、押開き及び固定工具として用いるものであって、電線切り分け工事用柱間引留工具として用いるものではないことから、フックを何らかの把持手段に代えること可能かもしれないが、「ターンバックル」に「電線支持具」を設ける動機付けが存在せず、本件発明1は、甲第1号証に記載の発明と、甲第2号証の及び甲第3号証の記載事項、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

したがって、特許異議申立人の主張は理由がない。

(イ)本件発明2-4
本件発明1を引用する本件発明2、3、5は、本件発明1をさらに減縮したものであるから、本件発明1と同様に、当業者が甲第1号証-5号証に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の主張は理由がない。
また、訂正前の請求項4は削除された。

第4.むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立ての理由によっては、本件発明1乃至3及び5に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件請求項1ないし3及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

そして、請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項4に対して、特許異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作軸を備えた把持自在な伸縮操作体の両側に各々一対の共回り不能とされた内外筒よりなる伸縮棒が接続され、該伸縮棒を構成する両側の外筒それぞれには同両側の外筒それぞれの自由端側に電線支持具が取付けられ、同両側の内筒それぞれには同両側の内筒それぞれの自由端側に電線用把持部材が取付けられると共に同両側の内筒それぞれの基端側内周面に所要のメネジ部が形成され、該両側のメネジ部には両側内筒を対称かつ同時に伸縮作動せしめるべく同軸状のネジ軸が各々螺合されると共に、該ネジ軸は操作軸により歯車機構を介して螺動自在とされ、電線支持具は電線挿通用開口部を有する略欠円弧状の支持枠と、該支持枠の開口部を閉止せしめる抜止片とよりなり、上記支持枠はその下端部に伸縮棒用取付け孔が形成され、他方、抜止片は開口部の一端に倒起立自在に枢着され、該開口部の内方に倒伏可能に外方付勢されると共に、開口部を閉止せしめる位置でロックせしめるべく該抜止片の回動軸と平行に抜き差し自在なロックピンが付設されてなることを特徴とする、電線切り分け工事用柱間引留工具。
【請求項2】
両側のメネジ部とネジ軸との螺合はその一方が右ネジ機構とされると共に、同他方が左ネジ機構とされてなることを特徴とする、請求項1記載の電線切り分け工事用柱間引留工具。
【請求項3】
伸縮操作体の一端部外周面にヤットコ又は絶縁操作棒を把持せしめる把持部が凹状形成されてなることを特徴とする、請求項1または2記載の電線切り分け工事用柱間引留工具。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
請求項1?3のいずれか1項に記載の電線切り分け工事用柱間引留工具の着脱方法であって、取付けるさいには、操作軸によりネジ軸を所定方向に螺動せしめつつ両側の伸縮棒を収縮せしめると共に、伸縮操作体をヤットコ又は絶縁操作棒により把持して電線にアプローチせしめ、両側の電線支持具を各々電線に支持せしめつつ操作軸によりネジ軸を所定方向に螺動せしめて両側の伸縮棒を伸長せしめたのち、両側の把持部材を各々電線に把持せしめ、しかるのち、操作軸によりネジ軸を螺動せしめつつ両側の伸縮棒を収縮せしめ、両側の把持部材間に位置する電線を弛めて引留めながら所要の電線切り分け工事を行い、逆に取外すさいには、操作軸によりネジ軸を所定方向に螺動せしめて両側の伸縮棒を伸長せしめ、両側の把持部材の把持を弛めて電線から解除せしめると共に、ヤットコ又は絶縁操作棒に伸縮操作体を把持せしめつつ電線支持具の支持を解除せしめて電線から取外すことを特徴とする、電線切り分け工事用柱間引留工具の着脱方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-28 
出願番号 特願2013-200859(P2013-200859)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H02G)
P 1 651・ 851- YAA (H02G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤原 敬子松尾 俊介  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 千葉 輝久
山澤 宏
登録日 2017-02-10 
登録番号 特許第6086853号(P6086853)
権利者 大東電材株式会社 株式会社関電工
発明の名称 電線切り分け工事用柱間引留工具及びその着脱方法  
代理人 アセンド特許業務法人  
代理人 アセンド特許業務法人  
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