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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C12N
審判 全部申し立て 2項進歩性  C12N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C12N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C12N
管理番号 1340137
異議申立番号 異議2016-701201  
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-28 
確定日 2018-04-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5940977号発明「標的改変によるホモ接合生物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5940977号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?14〕について訂正することを認める。 特許第5940977号の請求項1及び3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5940977号の請求項1?14に係る特許についての出願は、平成22年8月11日(パリ条約による優先権主張 平成21年8月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年5月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1及び3に係る特許について、同年12月28日に特許異議申立人 塩野義製薬株式会社により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年4月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月3日に意見書の提出及び訂正の請求があり、同年10月31日付けで特許法第120条の5第5項に規定された通知書を特許異議申立人に送付したところ特許異議申立人から意見書の提出がなかったものである。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「非ヒト哺乳動物または植物である生物」と記載されているのを「植物」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、「少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における改変のためのホモ接合である」と記載されているのを、「少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2において、「第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含む請求項1に記載の生物」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とし、第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含む、生物」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3において、「請求項1に記載の生物」と記載されているのを「請求項1に記載の植物」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4において、「植物がトウモロコシ、コメ、コムギ、ジャガイモ、ダイズ、トマト、タバコ、アブラナ科のメンバー、およびアラビドプシスからなる群より選択される請求項1に記載の生物」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とし、植物がトウモロコシ、コメ、コムギ、ジャガイモ、ダイズ、トマト、タバコ、アブラナ科のメンバー、およびアラビドプシスからなる群より選択される、生物」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6において、「ホモ接合生物が選択標的遺伝子座で外因性配列を欠いている請求項1、2および4のいずれか1項に記載のホモ接合生物の産生方法であって、・・・・・・、を含む方法」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「ホモ接合生物が選択標的遺伝子座で外因性配列を欠いているホモ接合生物の産生方法であって、前記ホモ接合生物は、少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とし、前記方法は、・・・・・・、を含む方法」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7において、「ゲノムの選択標的遺伝子座の1つまたは複数の外因性配列に関し生物がホモ接合であり、外因性配列が選択標的遺伝子座に光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーを含まない請求項1、3および4のいずれか1項に記載の生物を産生する方法であって、・・・・・・、を含む方法」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「ゲノムの選択標的遺伝子座の1つまたは複数の外因性配列に関し生物がホモ接合であり、外因性配列が選択標的遺伝子座に光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーを含まない生物を産生する方法であって、前記生物は、少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とし、前記方法は、・・・・・・、を含む方法」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項12において、「請求項1?4のいずれか1項に記載の生物」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とする、生物」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、新規事項追加の有無、独立特許要件及び一群の請求項の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正の目的の適否
訂正事項1は、「非ヒト哺乳動物または植物である生物」を「植物」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ.特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項1は、「非ヒト哺乳動物または植物である生物」を「植物」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.新規事項追加の有無
訂正事項1は、「非ヒト哺乳動物または植物である生物」を「植物」に限定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

エ.独立特許要件
訂正前の請求項1について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
請求項1を引用する訂正後の請求項5に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであることを要するので、以下検討する。
平成29年4月28日付けの取消理由通知において引用された甲第1号証(Mol.Vis.(2005)Vol.11,p.876-886)には、「第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における改変がホモ接合であるマウスであって、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子がPax6上皮プロモーター、GAL4/VP16をコードするDNA、及び、SV40ウイルス由来のイントロン及びポリアデニル化配列を含む、マウス」の発明が、甲第2号証(Hum.Mol.Genet.(2001)Vol.10,No.2,p.137-144)には、「第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における改変がホモ接合であるマウスであって、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が(CAG)150を含む、マウス」の発明が、甲第3号証(genesis(2004)Vol.40,p.7-14)には、「第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における改変がホモ接合であるマウスであって、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子がloxP部位を含む、マウス」の発明がそれぞれ記載されている。
訂正後の請求項5に係る発明と甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明とを対比すると、訂正後の請求項5に係る発明は、「種子」に係る発明であるのに対し、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明は、「マウス」に係る発明である点で相違するから、訂正後の請求項5に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得るものでもない。
よって、訂正後の請求項5に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、ということはできず、また、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。
また、訂正後の請求項5に係る発明について、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項に規定する要件を満たしていない記載不備等があるとは認められない。
したがって、訂正後の請求項5に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア.訂正の目的の適否
訂正事項2は、「遺伝子座における改変のためのホモ接合である」という不明瞭な記載を「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載に訂正して、請求項の記載を明確にすることを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ.特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項2は、請求項の記載を明確にすることを目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.新規事項追加の有無
特許明細書の段落【0003】の「本発明は、1つまたは複数の内在性遺伝子の標的改変に関しホモ接合である生物に関する。」との記載、段落【0004】の「ホモ接合標的遺伝子改変を有する生物(例えば、植物および動物)は、幅広い種類の農業、医薬品およびバイオテクノロジーへの適用に有用である。」との記載から明らかなように、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

エ.独立特許要件
訂正前の請求項1について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
請求項1を引用する訂正後の請求項5に係る発明についても、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(3)訂正事項3について
ア.訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、「遺伝子座における改変のためのホモ接合である」という不明瞭な記載を「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載に訂正して、請求項の記載を明確にすることを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ.特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項3は、請求項1を引用しないものとするための訂正であって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、また、上記(2)イ.で述べたとおり、「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載への訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.新規事項追加の有無
訂正事項3は、請求項1を引用しないものとするための訂正であって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、また、上記(2)ウ.で述べたとおり、「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載への訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

エ.独立特許要件
訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(4)訂正事項4について
ア.訂正の目的の適否
訂正事項4は、「請求項1に記載の生物」を「請求項1に記載の植物」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ.特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項4は、「請求項1に記載の生物」を「請求項1に記載の植物」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.新規事項追加の有無
訂正事項4は、「請求項1に記載の生物」を「請求項1に記載の植物」に限定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

エ.独立特許要件
訂正前の請求項3について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(5)訂正事項5について
ア.訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、「遺伝子座における改変のためのホモ接合である」という不明瞭な記載を「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載に訂正して、請求項の記載を明確にすることを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ.特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項5は、請求項1を引用しないものとするための訂正であって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、また、上記(2)イ.で述べたとおり、「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載への訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.新規事項追加の有無
訂正事項5は、請求項1を引用しないものとするための訂正であって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、また、上記(2)ウ.で述べたとおり、「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載への訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

エ.独立特許要件
訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
請求項4を引用する訂正後の請求項5に係る発明についても、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(6)訂正事項6について
ア.訂正の目的の適否
訂正事項6は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1、2及び4のいずれか1項を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1、2及び4を引用しないものとするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、「遺伝子座における改変のためのホモ接合である」という不明瞭な記載を「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載に訂正して、請求項の記載を明確にすることを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ.特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項6は、請求項1、2及び4を引用しないものとするための訂正であって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、また、上記(2)イ.で述べたとおり、「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載への訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.新規事項追加の有無
訂正事項6は、請求項1、2及び4を引用しないものとするための訂正であって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、また、上記(2)ウ.で述べたとおり、「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載への訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

エ.独立特許要件
訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
請求項6を引用する訂正後の請求項8?11に係る発明についても、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(7)訂正事項7について
ア.訂正の目的の適否
訂正事項7は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1、3及び4のいずれか1項を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1、3及び4を引用しないものとするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、「遺伝子座における改変のためのホモ接合である」という不明瞭な記載を「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載に訂正して、請求項の記載を明確にすることを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ.特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項7は、請求項1、3及び4を引用しないものとするための訂正であって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、また、上記(2)イ.で述べたとおり、「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載への訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.新規事項追加の有無
訂正事項7は、請求項1、3及び4を引用しないものとするための訂正であって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、また、上記(2)ウ.で述べたとおり、「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載への訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

エ.独立特許要件
訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
請求項7を引用する訂正後の請求項8?11に係る発明についても、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(8)訂正事項8について
ア.訂正の目的の適否
訂正事項8は、訂正前の請求項12が訂正前の請求項1?4のいずれか1項を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1?4を引用しないものとするための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、「遺伝子座における改変のためのホモ接合である」という不明瞭な記載を「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載に訂正して、請求項の記載を明確にすることを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ.特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項8は、請求項1?4を引用しないものとするための訂正であって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、また、上記(2)イ.で述べたとおり、「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載への訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.新規事項追加の有無
訂正事項8は、請求項1?4を引用しないものとするための訂正であって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではなく、また、上記(2)ウ.で述べたとおり、「遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載への訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

エ.独立特許要件
訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正事項8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
請求項12を引用する訂正後の請求項13?14に係る発明についても、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(9)一群の請求項の適否
訂正事項1?8に係る訂正前の請求項1?14について、請求項2?14はすべて直接的又は間接的に「請求項1」を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?14に対応する訂正後の請求項1?14は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、訂正事項1?8による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?14〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.本件訂正特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?14に係る発明(以下、「本件訂正特許発明1?14」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である植物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とする、植物。
【請求項2】
少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とし、第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含む、生物。
【請求項3】
第1と第2の対立遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしない1つまたは複数の外因性配列を含む請求項1に記載の植物。
【請求項4】
少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とし、植物がトウモロコシ、コメ、コムギ、ジャガイモ、ダイズ、トマト、タバコ、アブラナ科のメンバー、およびアラビドプシスからなる群より選択される、生物。
【請求項5】
請求項1または請求項4の植物により生成された種子。
【請求項6】
ホモ接合生物が選択標的遺伝子座で外因性配列を欠いているホモ接合生物の産生方法であって、前記ホモ接合生物は、少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とし、前記方法は、
(a)生物ゲノムの選択遺伝子座への外因性配列の標的組み込みを媒介するヌクレアーゼを使って外因性配列を細胞中へ導入するステップであって、その遺伝子座が少なくとも第1と第2の対立遺伝子を含むステップと;
(b)(i)標的遺伝子座の第1の対立遺伝子中の外因性配列および(ii)選択標的遺伝子座の第2の対立遺伝子中の非相同末端結合(NHEJ)改変を含む細胞を特定するステップと;
(c)ステップ(b)で特定された細胞を生殖成熟生物にまで成長させるステップと;
(d)生殖成熟生物を相互に交差させるステップと;さらに
(e)選択標的遺伝子座の第1および第2対立遺伝子でNHEJ改変を示す子孫を特定し、それにより選択標的遺伝子座で外因性配列を欠いたホモ接合生物を産生するステップ、を含む方法。
【請求項7】
ゲノムの選択標的遺伝子座の1つまたは複数の外因性配列に関し生物がホモ接合であり、外因性配列が選択標的遺伝子座に光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーを含まない生物を産生する方法であって、前記生物は、少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とし、前記方法は、
(a)光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーのゲノムの選択標的遺伝子座への標的組み込み媒介するヌクレアーゼを使って生物の細胞へ光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカー配列を導入するステップであって、選択標的遺伝子座が少なくとも第1と第2の対立遺伝子を含むステップと;
(b)1つまたは複数の外因性配列を細胞中に導入し、ヌクレアーゼがゲノムの選択標的遺伝子座への外因性配列の標的組み込みを媒介するステップと、
(c)(i)選択標的遺伝子座の第1の対立遺伝子中の光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカー、および(ii)1つまたは複数の第2の対立遺伝子中の外因性配列を含む細胞を特定するステップと;
(d)ステップ(c)で特定された細胞を生殖成熟生物にまで成長させるステップと;
(e)生殖成熟生物を相互に交差させるステップと;さらに
(f)第1と第2の対立遺伝子中に1つまたは複数の外因性配列を含むステップ(e)の交差の子孫を特定し、それにより外因性配列に関しホモ接合であり、選択標的遺伝子座で光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカー配列を欠いている生物を産生するステップ、を含む方法。
【請求項8】
ヌクレアーゼが、1つまたは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN);1つまたは複数のメガヌクレアーゼおよび1つまたは複数の転写活性化因子様(TAL)エフェクタードメインヌクレアーゼ、からなる群より選択される請求項6または7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカー配列および1つまたは複数の外因性配列が1つまたは複数のヌクレアーゼと同時にまたは逐次的に導入される請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
光生成タンパク質配列が選択可能または選別マーカーを含む請求項7?9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
1つまたは複数のヌクレアーゼがポリヌクレオチドとして導入される請求項6?10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とする生物を産生するキットであって、
(a)選択標的遺伝子座の標的部位に結合する1つまたは複数のヌクレアーゼ;および
(b)選択標的遺伝子座への標的組み込みのための1つまたは複数の外因性配列;を含み、
前記生物が以下の工程:
(i)ヌクレアーゼおよび外因性配列の細胞への導入;
(ii)選択標的遺伝子座の第1の対立遺伝子に挿入された1つまたは複数の外因性配列を含む細胞の特定;
(iii)選択標的遺伝子座の第2の対立遺伝子での改変を含む(ii)の細胞の特定;
(iv)(iii)の細胞の生殖成熟生物までの成長;
(v)(iv)の生物の交差;および
(vi)標的遺伝子改変に関してホモ接合である(v)の交差の子孫の特定:
により産生されることを特徴とする、キット。
【請求項13】
ヌクレアーゼがヌクレアーゼをコードしたポリヌクレオチドとして提供される請求項12に記載のキット。
【請求項14】
標的部位に相同な配列を含むドナー導入遺伝子をさらに含み、ドナー導入遺伝子が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まない請求項12または13に記載のキット。」

2.取消理由の概要
訂正前の請求項1及び3に係る特許に対して平成29年4月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)請求項1及び3に係る特許は、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1及び3に係る特許は、取り消されるべきものである。
(2)請求項1及び3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

3.甲号証の記載
甲第1号証(Mol.Vis.(2005)Vol.11,p.876-886)には、「第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における改変がホモ接合であるマウスであって、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子がPax6上皮プロモーター、GAL4/VP16をコードするDNA、及び、SV40ウイルス由来のイントロン及びポリアデニル化配列を含む、マウス」の発明が記載されている。

甲第2号証(Hum.Mol.Genet.(2001)Vol.10,No.2,p.137-144)には、「第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における改変がホモ接合であるマウスであって、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が(CAG)150を含む、マウス」の発明が記載されている。

甲第3号証(genesis(2004)Vol.40,p.7-14)には、「第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における改変がホモ接合であるマウスであって、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子がloxP部位を含む、マウス」の発明が記載されている。

4.判断
(1)取消理由1(特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項)について
本件訂正特許発明1と甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明とを対比すると、本件訂正特許発明1は、「植物」に係る発明であるのに対し、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明は、「マウス」に係る発明である点で相違するから、本件訂正特許発明1は、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得るものでもない。また、請求項1を引用する本件訂正特許発明3についても同様である。
したがって、本件訂正特許発明1及び本件訂正特許発明3は、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、ということはできず、また、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、ということはできない。

(2)取消理由2(特許法第36条第6項第2号)について
本件訂正特許発明1における「少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である」という記載は、明確である。また、請求項1を引用する本件訂正特許発明3についても同様である。
したがって、本件訂正特許発明1及び本件訂正特許発明3について、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立の理由によっては、本件請求項1及び3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である植物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とする、植物。
【請求項2】
少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とし、第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含む、生物。
【請求項3】
第1と第2の対立遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしない1つまたは複数の外因性配列を含む請求項1に記載の植物。
【請求項4】
少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とし、植物がトウモロコシ、コメ、コムギ、ジャガイモ、ダイズ、トマト、タバコ、アブラナ科のメンバー、およびアラビドプシスからなる群より選択される、生物。
【請求項5】
請求項1または請求項4の植物により生成された種子。
【請求項6】
ホモ接合生物が選択標的遺伝子座で外因性配列を欠いているホモ接合生物の産生方法であって、前記ホモ接合生物は、少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とし、前記方法は、
(a)生物ゲノムの選択遺伝子座への外因性配列の標的組み込みを媒介するヌクレアーゼを使って外因性配列を細胞中へ導入するステップであって、その遺伝子座が少なくとも第1と第2の対立遺伝子を含むステップと;
(b)(i)標的遺伝子座の第1の対立遺伝子中の外因性配列および(ii)選択標的遺伝子座の第2の対立遺伝子中の非相同末端結合(NHEJ)改変を含む細胞を特定するステップと;
(c)ステップ(b)で特定された細胞を生殖成熟生物にまで成長させるステップと;
(d)生殖成熟生物を相互に交差させるステップと;さらに
(e)選択標的遺伝子座の第1および第2対立遺伝子でNHEJ改変を示す子孫を特定し、それにより選択標的遺伝子座で外因性配列を欠いたホモ接合生物を産生するステップ、を含む方法。
【請求項7】
ゲノムの選択標的遺伝子座の1つまたは複数の外因性配列に関し生物がホモ接合であり、外因性配列が選択標的遺伝子座に光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーを含まない生物を産生する方法であって、前記生物は、少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とし、前記方法は、
(a)光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーのゲノムの選択標的遺伝子座への標的組み込み媒介するヌクレアーゼを使って生物の細胞へ光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカー配列を導入するステップであって、選択標的遺伝子座が少なくとも第1と第2の対立遺伝子を含むステップと;
(b)1つまたは複数の外因性配列を細胞中に導入し、ヌクレアーゼがゲノムの選択標的遺伝子座への外因性配列の標的組み込みを媒介するステップと、
(c)(i)選択標的遺伝子座の第1の対立遺伝子中の光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカー、および(ii)1つまたは複数の第2の対立遺伝子中の外因性配列を含む細胞を特定するステップと;
(d)ステップ(c)で特定された細胞を生殖成熟生物にまで成長させるステップと;
(e)生殖成熟生物を相互に交差させるステップと;さらに
(f)第1と第2の対立遺伝子中に1つまたは複数の外因性配列を含むステップ(e)の交差の子孫を特定し、それにより外因性配列に関しホモ接合であり、選択標的遺伝子座で光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカー配列を欠いている生物を産生するステップ、を含む方法。
【請求項8】
ヌクレアーゼが、1つまたは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN);1つまたは複数のメガヌクレアーゼおよび1つまたは複数の転写活性化因子様(TAL)エフェクタードメインヌクレアーゼ、からなる群より選択される請求項6または7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカー配列および1つまたは複数の外因性配列が1つまたは複数のヌクレアーゼと同時にまたは逐次的に導入される請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
光生成タンパク質配列が選択可能または選別マーカーを含む請求項7?9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
1つまたは複数のヌクレアーゼがポリヌクレオチドとして導入される請求項6?10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における標的遺伝子改変に関してホモ接合である、非ヒト哺乳動物または植物である生物であって、該遺伝子座における改変は野生型と比較され、
(i)野生型と比較した場合、遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まず、前記生物が、第1および第2の対立遺伝子を含む遺伝子座以外のいずれかの遺伝子座において導入遺伝子をさらに含み、そしてさらに、前記導入遺伝子が、光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まないか;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードしないことを特徴とする生物を産生するキットであって、
(a)選択標的遺伝子座の標的部位に結合する1つまたは複数のヌクレアーゼ;および
(b)選択標的遺伝子座への標的組み込みのための1つまたは複数の外因性配列;を含み、
前記生物が以下の工程:
(i)ヌクレアーゼおよび外因性配列の細胞への導入;
(ii)選択標的遺伝子座の第1の対立遺伝子に挿入された1つまたは複数の外因性配列を含む細胞の特定;
(iii)選択標的遺伝子座の第2の対立遺伝子での改変を含む(ii)の細胞の特定;
(iv)(iii)の細胞の生殖成熟生物までの成長;
(v)(iv)の生物の交差;および
(vi)標的遺伝子改変に関してホモ接合である(v)の交差の子孫の特定:
により産生されることを特徴とする、キット。
【請求項13】
ヌクレアーゼがヌクレアーゼをコードしたポリヌクレオチドとして提供される請求項12に記載のキット。
【請求項14】
標的部位に相同な配列を含むドナー導入遺伝子をさらに含み、ドナー導入遺伝子が光生成タンパク質またはポジティブ選択マーカーをコードする配列を含まない請求項12または13に記載のキット。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-03-22 
出願番号 特願2012-524696(P2012-524696)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C12N)
P 1 651・ 121- YAA (C12N)
P 1 651・ 537- YAA (C12N)
P 1 651・ 113- YAA (C12N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 上條 肇  
特許庁審判長 田村 明照
特許庁審判官 高堀 栄二
山本 匡子
登録日 2016-05-27 
登録番号 特許第5940977号(P5940977)
権利者 サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
発明の名称 標的改変によるホモ接合生物  
代理人 池田 達則  
代理人 石田 敬  
代理人 中島 勝  
代理人 古賀 哲次  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 池田 達則  
代理人 杉田 健一  
代理人 福本 積  
代理人 青木 篤  
代理人 中島 勝  
代理人 山内 秀晃  
代理人 福本 積  
代理人 青木 篤  
代理人 古賀 哲次  
代理人 石田 敬  
代理人 渡辺 陽一  

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