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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60K |
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管理番号 | 1340551 |
審判番号 | 不服2017-10157 |
総通号数 | 223 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-07-07 |
確定日 | 2018-06-05 |
事件の表示 | 特願2013-125215号「バッテリの車両搭載構造」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 5日出願公開、特開2015- 615号、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年6月14日に出願されたものであって、平成29年1月19日付けで拒絶理由が通知され、同年3月24日に意見書が提出され、同年4月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月7日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?5に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 車体の後部フロアを上下方向に貫通するようバッテリケースが配置され、 前記バッテリケースは、バッテリ本体を収容する上部空間と、前記バッテリ本体の機能を補助するバッテリ周辺機器を収容する下部空間と、を有し、 前記下部空間に対応する前記バッテリケースの車両後方側に排気消音器が配置されていることを特徴とするバッテリの車両搭載構造。 【請求項2】 前記バッテリケースの少なくとも車幅方向側部に補強部材が取り付けられ、この補強部材は、車体の前後方向に向けて延設されるサイドメンバに固定され、このサイドメンバと前記バッテリ本体とは、上下方向の少なくとも一部が同じ位置となるよう配置されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリの車両搭載構造。 【請求項3】 前記バッテリケースは、前記上部空間を有する上部ケースと前記下部空間を有する下部ケースとを有し、前記補強部材は前記下部ケースに取り付けられ、該下部ケースに取り付けられた前記補強部材が、前記サイドメンバに固定されていることを特徴とする請求項2に記載のバッテリの車両搭載構造。 【請求項4】 前記バッテリケースは、前記後部フロアに形成した開口部に対し下方から挿入され、この挿入された状態で前記補強部材が、前記サイドメンバに固定されていることを特徴とする請求項3に記載のバッテリの車両搭載構造。 【請求項5】 前記バッテリケースの前記下部空間を形成する部位の前記排気消音器に対向する面は、下端部が上端部よりも車両前方となるよう傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のバッテリの車両搭載構造。」 第3 原査定の理由の概要 本願発明1?5は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特開2013-75535号公報 引用文献2.特開2004-148852号公報 引用文献3.特開2003-291664号公報 第4 当審の判断 1 引用文献の記載事項並びに引用文献に記載された発明及び技術的事項 (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付加した。以下同様。 ア 「【請求項1】 ハイブリット車または電気自動車の車体後部の床面を形成するリアフロアパネルと、車体後部に搭載されるバッテリーとを備えた車体後部構造において、 前記リアフロアパネルの側端に沿って配置され車両前後方向に延びた一対のサイドメンバと、 前記一対のサイドメンバ間に差し渡されたクロスメンバと、 前記バッテリーの全周を囲んで該バッテリーを支持する枠状のフレーム部材とを備え、 前記フレーム部材は、車外側が前記一対のサイドメンバに固定され、車両前方側が前記クロスメンバに固定され、該クロスメンバよりも前方に位置する前記リアフロアパネルを含む領域よりも剛性が高いことを特徴とする車体後部構造。」 イ 「【0016】 車両110は、車体後部に搭載されたバッテリー114を備えたハイブリッド車である。車体後部構造100は、図1に示すように、バッテリー114と、バックパネル116と、クラッシュボックス118とを備えている。クラッシュボックス118は、バックパネル116の後方に設けられ、後突時に変形して衝撃を吸収する部材である。 【0017】 図2は、図1の車体後部構造100を斜め下方から見た分解斜視図である。車体後部構造100は、上記各部材に加えて、図2に示すように、リアフロアパネル120と、一対のサイドメンバ122、124と、クロスメンバ126と、フレーム部材128とを備える。リアフロアパネル120は、車体後部の床面を形成していて、リアフロアパネル120を貫通する開口部120aを有する。」 ウ 「【0020】 図3は、図2のフレーム部材128の斜視図である。図中では、フレーム部材128を斜め上方から見た状態を示している。フレーム部材128は、少なくともリアフロアパネル120やクロスメンバ126よりも剛性が高い構造体であり、図3に示すように、ほぼ六角形の枠形状を有している。」 エ 「【0027】 フレーム部材128は、上記したように、車外側が一対のサイドメンバ122、124に固定され、また、車両前方側がクロスメンバ126に固定されることで、図4に示すように車体後部に組み付けられる。フレーム部材128が車体後部に組み付けられると、バッテリー114は、図5に示すように、リアフロアパネル120の開口部120aを通って、リアフロアパネル120の上下に跨った状態で車体後部に搭載される。」 オ 「【0031】 ここで、フレーム部材128の剛性は、上記したように、クロスメンバ126およびリアフロアパネル120の剛性より高い。このため、フレーム部材128よりも前方に配置されたクロスメンバ126、およびクロスメンバ126よりも前方に位置するリアフロアパネル120を含む領域は、フレーム部材128よりも相対的に剛性が低い領域(低剛性領域)となる。なお、低剛性領域のうちクロスメンバ126よりも前方に位置するリアフロアパネル120を含む領域が特に剛性が低い。 【0032】 車体後部構造100では、図6(b)に白抜き矢印で示す後突に伴う衝撃を受けると、例えば図示のように、クロスメンバ126およびリアフロアパネル120を含む低剛性領域が変形し、後突に伴う衝撃が十分に吸収される。なお、図中では、後突に伴ってクロスメンバ126およびリアフロアパネル120だけでなく、サイドメンバ122、124も変形する状態を示したが、これに限られない。一例として、衝撃の程度によってはサイドメンバ122、124の変形が殆ど生じない場合もあり得る。」 (2)引用文献1に記載された発明 上記(1)の各記載事項及び【図1】?【図6】の記載から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「ハイブリット車の車体後部の床面を形成するリアフロアパネル120と、車体後部に搭載されるバッテリー114とを備えた車体後部構造100において、 前記リアフロアパネル120の側端に沿って配置され車両前後方向に延びた一対のサイドメンバ122、124と、 前記一対のサイドメンバ122、124間に差し渡されたクロスメンバ126と、 前記バッテリー114の全周を囲んで該バッテリー114を支持する枠状のフレーム部材128とを備え、 前記バッテリー114は、バッテリー114は、リアフロアパネル120の開口部120aを通って、リアフロアパネル120の上下に跨った状態で車体後部に搭載され、 前記フレーム部材128は、車外側が前記一対のサイドメンバ122、124に固定され、車両前方側が前記クロスメンバ126に固定され、該クロスメンバ126よりも前方に位置する前記リアフロアパネル120を含む領域よりも剛性が高い車体後部構造100。」 (3)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面と共に以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 車両のシートよりも後方の後部フロアに車両駆動用電気機器を搭載する車両の電気機器固定構造において、前記後部フロアは、車両幅方向で中央部分に形成された凹部とこの凹部の両側に形成されてサイドパネルに連結される両端部とから構成され、前記凹部に電気機器搭載用固定部材を設け、この電気機器搭載用固定部材は、前記凹部に固定される第1のブラケットとこの第1のブラケットの上部に固定され且つ前記後部フロアの両端部を連結する第2のブラケットとから構成され、前記第1のブラケットに少なくともインバータを搭載し、前記第2のブラケットにはバッテリを搭載したことを特徴とする車両の電気機器固定構造。」 イ 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】 ところが、従来、車両駆動用電気機器を後部フロアに固定する構造においては、重量物であるバッテリ等の車両駆動用電気機器を後部フロア上に直接的に搭載することから、車体強度が十分ではなく、車両駆動用電気機器の搭載が不安定になるという不都合があった。」 ウ 「【0008】 【実施例】 以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。図1?6は、この発明の第1実施例を示すものである。図4?6において、2は車両、4は車両ボディ、6は後側バンパ、8Fは前側車輪、8Bは後側車輪、10Lは左側シート、10Rは右側シート、12Lは左側バックミラー、12Rは右側バックミラー、14は後部フロア、2Cは車両中心線である。この後部フロア14上には、車両駆動用電気機器としてのバッテリ装置16が取り付けられる。 【0009】 後部フロア14は、図1、4に示す如く、シート10の後方に配設され、フロア前部18と、このフロア前部18の後方に連設したフロア後部20とからなる。このフロア後部20は、車両幅方向Yで中央部分に形成された凹部22と、この凹部22の両側の左側、右側段差22L、22Rで高さHだけ立ち上がって形成され且つサイドパネル(図示せず)に連結される両端部である左端部24L、右端部24Rとから構成されている。つまり、図6に示す如く、凹部22の底部位は、左端部24L、右端部24Rから高さHだけ低い箇所に配設されている。 【0010】 凹部22には、電気機器搭載用固定部材26が固定して設けられる。この電気機器搭載用固定用部材26は、第1のブラケット28と、この第1のブラケット28の上に連結される第2のブラケット30とから構成される。」 エ 「【0012】 この第1のブラケット28には、図1、4、5に示す如く、前側でジャンクションボックス38が固定手段であるボックス取付ボルト40で固定して搭載されるとともに、後側でインバータ42がインバータ取付ボルト44で固定して搭載され、更に、他の電気機器として例えば第1?3関連機器46-1?46-3が第1?3関連機器取付ボルト48-1?48-3で夫々所定箇所に固定して取り付けられる。 【0013】 第2のブラケット30は、図1に示す如く、第1のブラケット28の上部に第2取付ボルト50で固定され、且つ、後部フロア14の凹部22の両端部である左端部24L、右端部24Rを連結し、後部フロア14上に直接搭載できない部品を固定させるものである。この第2のブラケット30においては、図3に示す如く、車両前後方向Xに指向した第2左側、第2右側ステー52L、52Rと、車両幅方向Yに指向した第2前側、第2後側ステー54F、54Bと、湾曲形状の左側、右側延長ステー56L、56Rと、車両幅方向Yに指向した連結ステー58とが夫々関連して連結している。これにより、第2のブラケット30は、左右の端部位が左右のホイールハウス(図示せず)に連結され、車両幅方向Yの車体強度部品(クロスメンバ)としての機能を有するものである。 【0014】 第2のブラケット30上には、バッテリ集合体60が固定して設けられる。このバッテリ集合体60は、左側、右側バッテリ集合体60L、60Rが車両幅方向Yに一列に並んで構成されている。 【0015】 左側バッテリ集合体60Lにおいては、左側バッテリトレイ62L上に複数のバッテリ64が所定に配設され(例えば、一列が4個で2列に並設)、・・・なお、右側バッテリ集合体60Rは、左側バッテリ集合体60Lと同様に構成されているので、ここでは、その説明を省略する。」 (4)引用文献2に記載された技術的事項 上記(3)エの段落【0015】の記載から「バッテリ集合体60」は「複数のバッテリ64」からなるものであることは明らかである。 以上のことと、上記(3)の各記載事項及び【図1】?【図6】の記載から、引用文献2には次の技術的事項(以下「引用文献2技術」という。)が記載されているものと認める。 「車両2のシート10よりも後方の後部フロア14に車両駆動用電気機器としてのバッテリ装置16を搭載する車両の電気機器固定構造において、前記後部フロア14は、車両幅方向で中央部分に形成された凹部22とこの凹部22の両側に形成されてサイドパネルに連結される両端部である左端部24L、右端部24Rとから構成され、前記凹部22に電気機器搭載用固定部材26を設け、この電気機器搭載用固定部材26は、前記凹部22に固定される第1のブラケット28とこの第1のブラケット28の上部に固定され且つ前記後部フロア14の両端部である左端部24L、右端部24Rを連結する第2のブラケット30とから構成され、前記第1のブラケット28にインバータ42と他の電気機器である第1?3関連機器46-1?46-3を搭載し、前記第2のブラケット28には複数のバッテリ64からなるバッテリ集合体60を搭載した車両の電気機器固定構造。」 (5)引用文献3の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面と共に以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 燃料タンクの後方に排気管のサイレンサを車幅方向に沿って配置し、前記燃料タンクと前記サイレンサとの間に、前方に位置するほど下方に位置するように傾斜する傾斜面を有し前記サイレンサの前方移動時に該サイレンサを前記傾斜面で下方に案内する案内部が配置されていることを特徴とする車体後部構造。 ・・・ 【請求項3】 前記案内部は、前記傾斜面を有する車幅方向に沿うフレーム部材であることを特徴とする請求項1または2記載の車体後部構造。」 イ 「【0013】そして、水素タンク11とサイレンサ17との間には、水素タンク11の周囲に配置されるサブフレーム20の後部の車幅方向に沿うフレーム部材(案内部)20aが配置されている。このフレーム部材20aは、十分な強度を有するもので、車幅方向および高さ方向の両方向において水素タンク11およびサイレンサ17と重なり合い、車体前後方向において水素タンク11およびサイレンサ17とずれる位置に設けられている。 【0014】このフレーム部材20aには、その車体後側すなわちサイレンサ17側の下部側に、前方に位置するほど下方に位置するように傾斜する傾斜面21が形成されている。この傾斜面21は、サイレンサ17の前方に位置するほど下方に位置するように傾斜する上面22と高さ方向において重なり合っている。 【0015】以上に述べた本実施形態の車体後部構造によれば、後方からの車両の追突時にこの車両に押されてサイレンサ17が前方に移動すると、このサイレンサ17は、水素タンク11とサイレンサ17との間に配置されたフレーム部材20aの前方に位置するほど下方に位置するように傾斜する後部の傾斜面21で案内されて下方に強制的に移動させられる。よって、サイレンサ17が前方にある水素タンク11に接触することを防止できる。このように、サイレンサ17の移動をフレーム部材20aの傾斜面21で案内することでサイレンサ17が前方にある水素タンク11に接触することを防止するため、排気管16の形状とは無関係となり、その結果、水素タンク11から車体12の後端部まで距離が短い場合であっても、後方からの車両の追突時にサイレンサ17が水素タンク11に接触するのを確実に防止することができる。」 ウ 「【0018】なお、以上においては、燃料タンクとして燃料電池車における水素タンク11を例にとり説明したが、勿論、ガソリン自動車におけるガソリンタンクや、天然ガス自動車におけるガスタンクであっても良い。」 (6)引用文献3に記載された技術的事項 上記(5)の各記載事項及び【図1】?【図3】の記載から、引用文献3には次の技術的事項(以下「引用文献3技術」という。)が記載されているものと認める。 「燃料タンクの後方に排気管のサイレンサ17を車幅方向に沿って配置し、前記燃料タンクと前記サイレンサ17との間に、前方に位置するほど下方に位置するように傾斜する傾斜面21を有し前記サイレンサ17の前方移動時に該サイレンサ17を前記傾斜面21で下方に案内する案内部であるフレーム部材20aが配置されている車体後部構造。」 2 対比・判断 (1)本願発明1と引用発明との対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「車体後部の床面を形成するリアフロアパネル120」は、本願発明1の「車体の後部フロア」に相当する。 イ 引用発明の「バッテリー114」は、引用文献1の【図2】、【図4】、【図5】に示される全体の形状や、フレーム部材128に対する取付形態、ハイブリッド車の駆動用バッテリーの分野における技術常識を考慮すると、内部に「バッテリー本体」を収容する空間を有する「バッテリーケース」といえるものを有することは明らかといえる。 そして、それらは、本願発明1の「バッテリ本体」、「バッテリケース」に相当するといえる。 ウ 上記ア、イを踏まえると、引用発明の「ハイブリット車の車体後部の床面を形成するリアフロアパネル120と、車体後部に搭載されるバッテリー114とを備えた車体後部構造100において」、「前記バッテリー114は、バッテリー114は、リアフロアパネル120の開口部120aを通って、リアフロアパネル120の上下に跨った状態で車体後部に搭載され」るという事項は、本願発明1の「車体の後部フロアを上下方向に貫通するようバッテリケースが配置され」という事項に相当するといえる。 エ 引用発明の「車体後部構造100」に対する「バッテリー114」の搭載に係る事項は、「バッテリー114のハイブリッド車への搭載構造」といえるものであり、当該構造は、本願発明1の「バッテリの車両搭載構造」に相当するといえる。 オ してみると、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりと認める。 〔一致点〕 「車体の後部フロアを上下方向に貫通するようバッテリケースが配置されたバッテリの車両搭載構造。」 〔相違点〕 本願発明1が「前記バッテリケースは、バッテリ本体を収容する上部空間と、前記バッテリ本体の機能を補助するバッテリ周辺機器を収容する下部空間と、を有し、前記下部空間に対応する前記バッテリケースの車両後方側に排気消音器が配置されている」のに対し、引用発明は、バッテリケースにバッテリー本体は収容されているが、バッテリー本体の機能を補助するバッテリー周辺機器まで収容されているか明らかでなく、さらに、バッテリー本体を収容する上部空間、バッテリー周辺機器を収容する下部空間という配置関係として、排気消音器を前記下部空間に対応するバッテリーケースの車両後方側に配置するという事項も有していない点。 (2)相違点の判断 上記相違点について検討する。 ア まず、本願発明1は、上記相違点に係る事項により、「車両が後方から受ける荷重は、車両後方側に配置されている排気消音器から、その前方のバッテリ周辺機器を収容する下部空間に対応する位置のバッテリケースに入力される。これにより、バッテリ本体を収容する上部空間に対応する位置のバッテリケースへの荷重入力は抑制され、上部空間に収容されるバッテリ本体が大きな力を受けるのを抑制することができる」(本願明細書段落【0007】)という作用効果を得ているものである。 イ ここで、引用文献2技術からは、「バッテリ64」(バッテリー本体)を相対的に上部に配置し、「インバータ42と他の電気機器である第1?3関連機器46-1?46-3」(バッテリ周辺機器)を相対的に下部に配置することまでは把握できるが、それらは「第2のブラケット30」、「第1のブラケット28」に搭載されるものであって、「バッテリーケース」内に収容されるものではないので、引用文献2技術にバッテリーケース内における上部空間、下部空間という概念はない。その上、引用文献2技術は「重量物であるバッテリ等の車両駆動用電気機器を後部フロア上に直接的に搭載することから、車体強度が十分ではなく、車両駆動用電気機器の搭載が不安定になるという不都合があった」(上記1(3)イ)ことを解決しようとする課題としているものであって、引用文献2には車両2に対して後方から荷重を受ける時の記載はなく、さらに、排気消音器と「インバータ42と他の電気機器である第1?3関連機器46-1?46-3」との位置関係の記載もない(なお、引用文献2にはハイブリッド車の言及すらないし、仮にハイブリッド車を包含していたとしても、【図4】ではインバータ42が通常排気消音器が設けられる箇所より上下方向に高い位置に記載されている。)。 ウ また、引用文献3技術からは、「燃料タンク」の後方に「サイレンサ17」(排気消音器)を配置することまでは把握できるが、「燃料タンク」は「バッテリーケース」ではなく、その上部空間、下部空間で、内部に収容される対象物を変えるというものではない。 したがって、後方から荷重入力を受けた場合、その荷重が収容物を収容する下部空間に対応する位置に入力されて、上部空間に収容される別の対象物への荷重入力を抑制するために、下部空間に対応する燃料タンクの車両後方側に「サイレンサ17」を配置するという概念自体を有さないものである。 そして、引用文献3技術は、後方からの車両の追突時には、「後方からの車両の追突時にこの車両に押されてサイレンサ17が前方に移動すると、このサイレンサ17は、水素タンク11とサイレンサ17との間に配置されたフレーム部材20aの前方に位置するほど下方に位置するように傾斜する後部の傾斜面21で案内されて下方に強制的に移動させられる。よって、サイレンサ17が前方にある水素タンク11に接触することを防止できる。」(上記1(5)イの段落【0015】)という作用効果を奏するものであって、「後方からの車両の追突時」に対応することを目的としたものであっても、「燃料タンク」自体に「サイレンサ17」を接触させないようにしているものであるから、上記アの作用効果とは全く異なるものである。 エ そうすると、引用発明はハイブリッド車であるから、技術常識を考慮すれば車両の後方側に「排気消音器」を有しているといえたとしても、引用発明に引用文献2、3技術を適用する動機付けがあるとはいえず、仮に適用したとしても、上記相違点に係る本願発明1の事項を有するものには至らないし、作用効果の予測性があったともいえない。 (3)まとめ したがって、本願発明1は、当業者が引用発明及び引用文献2、3技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 また、本願発明2?5は、本願発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明及び引用文献2、3技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明1?5は、引用発明及び引用文献2、3技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-05-21 |
出願番号 | 特願2013-125215(P2013-125215) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加藤 信秀 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
一ノ瀬 覚 中田 善邦 |
発明の名称 | バッテリの車両搭載構造 |
代理人 | 三好 秀和 |