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審決分類 |
審判 査定不服 特29条の2 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1341509 |
審判番号 | 不服2017-12492 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-23 |
確定日 | 2018-07-03 |
事件の表示 | 特願2013-157870「光学フィルムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月12日出願公開、特開2015- 28540、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年7月30日の出願であって、平成29年2月21日付けで拒絶理由が通知され、同年5月1日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、同年6月8日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年8月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は以下のとおりである。 理由1(新規性) 本願の請求項1、9?11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2(進歩性) 本願の請求項12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 理由3(拡大先願) 本願の請求項1?13に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた引用出願3の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。 <引用文献等一覧> 引用文献1:特開2007-284623号公報 引用文献2:特開2010-85579号公報 引用出願3:PCT/JP2014/60825号 (特願2013-86978号、国際公開第2014/171485号) 第3 本件発明 本願の請求項1?13に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 基材の少なくとも一方の面に、ハードコート層と、表面保護層とを順に有する光学フィルムの製造方法であって、該表面保護層が金属アルコキシド及びその加水分解物から選ばれる少なくとも1種と、イオン性光塩基発生剤とを含有する表面保護層形成用組成物の硬化物であり、該表面保護層形成用組成物を前記ハードコート層上に塗布して未硬化組成物層を形成する工程と、該未硬化組成物層に光を照射して塩基を発生させる工程と、該未硬化組成物層を加熱して前記金属アルコキシド及びその加水分解物から選ばれる少なくとも1種をゾル-ゲル反応により硬化させる工程とを含む、光学フィルムの製造方法。 【請求項2】 前記イオン性光塩基発生剤が酸性化合物と塩基性化合物との塩であり、該酸性化合物が下記一般式(1)で表される、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。 【化1】 (式中、R^(1)及びR^(2)は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1?8のアルキル基、炭素数1?8のアルコキシ基、又は炭素数6?8のアリール基を示す。R^(3)?R^(7)は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、又は有機基を示す。R^(1)?R^(7)のうちの2つが、互いに結合して環を形成していてもよい。) 【請求項3】 前記一般式(1)において、R^(3)?R^(7)のうちの1つが下記一般式(2)で表される基である、請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。 【化2】 (式中、R^(8)?R^(12)は、それぞれ独立に水素原子又は有機基を示す。R^(8)?R^(12)のうちの2つが、互いに結合して環を形成していてもよい。) 【請求項4】 前記酸性化合物が2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオン酸である、請求項2又は3に記載の光学フィルムの製造方法。 【請求項5】 前記塩基性化合物がアミン化合物である、請求項2?4のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。 【請求項6】 前記塩基性化合物がピロリジン、ピペリジン、シクロへキシルアミン、ジシクロへキシルアミン、イミダゾール、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、グアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、及び下記一般式(3)?(4)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項2?5のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。 【化3】 (式中、R^(13)は単結合、又は炭素数1?10のアルキレン基を示し、R^(14)は炭素数1?10のアルキレン基を示す。) 【請求項7】 前記イオン性光塩基発生剤が下記式(A-1)?(A-3)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項1?6のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。 【化4】 【請求項8】 前記表面保護層形成用組成物中のイオン性光塩基発生剤の含有量が、前記金属アルコキシド及びその加水分解物の合計量100質量部に対し、0.05?10質量部である、請求項1?7のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。 【請求項9】 金属アルコキシドにおける金属原子が、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、バナジウム、亜鉛、ストロンチウム、インジウム、スズ、タンタル、タングステン、タリウム、アンチモン、及びセリウムから選ばれる1種以上である、請求項1?8のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。 【請求項10】 前記ハードコート層と前記表面保護層とが互いに隣接する構成であり、かつ該ハードコート層の屈折率が該表面保護層の屈折率よりも0.10以上高いものである、請求項1?9のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。 【請求項11】 前記表面保護層が更に無機中実微粒子を含む、請求項1?10のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。 【請求項12】 前記ハードコート層が更に高屈折率微粒子を含む、請求項1?11のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。 【請求項13】 前記未硬化組成物層の加熱温度が80?100℃である、請求項1?12のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。」(以下、請求項1?13に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明13」という。) 第4 引用文献等の記載事項及び引用文献等に記載された発明 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前の平成19年11月1日に頒布された刊行物である引用文献1(特開2007-284623号)には、以下の記載事項がある(摘記した記載事項における下線は、合議体が付与した。)。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも含フッ素ビニルモノマー単位を有するポリマー鎖と少なくとも加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマー単位からなるポリマー鎖とを含んで構成されるブロックポリマー、加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマー、シリル基加水分解脱水縮合触媒、水、有機溶媒、とを少なくとも含むことを特徴とする薄膜用塗布組成物。 【請求項2】 さらに無機微粒子を含むことを特徴とする請求項1記載の薄膜用塗布組成物。 【請求項3】 請求項1又は2記載の薄膜用塗布組成物を用いて塗布成膜した後、半硬化を行い、開孔剤を含浸し、続いて全硬化を行った後に開孔剤を除去することを特徴とする薄膜の成膜方法。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は反射防止膜の表面保護層に用いられる塗布組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 ディスプレイ装置などの表示機器の視認性を高めるために用いられる反射防止膜は、従来は複数層を積層してなるものが主流であった。これは屈折率が1.4?1.6である低屈折率層(フッ素系材料、シリカ系材料、有機ポリマー等)と、屈折率1.6以上である高屈折率層(金属酸化物を含有する材料等)とを交互に2層以上積層することによって可視光領域での反射率を低下させるものである。しかしながらこのような複数層からなる反射防止膜は、その製造プロセスが煩雑であることはもちろんであり、さらに可視光領域内での反射率の均一性に乏しく、望まない色合いやギラツキが発生するという問題があった。 【0003】 可視光領域全体にわたり反射率を均一に低く抑えるには、下記のような単層からなる反射防止膜が適している。すなわち、ガラス(屈折率1.52程度)、ポリメチルメタクリレート(屈折率1.49程度)、ポリエチレンテレフタレート(屈折率1.54?1.67程度)、トリアセチルセルロース(屈折率1.49程度)等のような基板上に単層の低屈折率層を直接設けるか、あるいは基材上に有機系あるいは無機系のハードコート層(屈折率1.45?1.70程度)を積層した上で単層の低屈折率層を設けることによって、可視光領域内での反射率を均一に低下させるというものである。この場合、低屈折率層の屈折率の値は、用いる基材(ハードコート層が存在する場合はハードコート層)の屈折率の平方根に近ければ近いほど優れた反射防止膜となる。つまり低屈折率層の屈折率を1.40未満、より好ましくは1.30未満に設定することで、反射防止性能を向上させることができる。 【0004】 このような非常に低い屈折率を有する層として、シリカ微粒子からなり、内部に微小な空隙を有するかあるいは表面に微小な凹凸を有する低屈折率層が提案されている(例えば、特許文献3参照)。これらは屈折率1.40未満である層を簡便に形成可能という点では有用であるが、層内に空隙を有するために空隙内部に汚染物質が取り込まれやすく、防汚性に劣るという問題もあった。 【0005】 この問題を解決するために特許文献1では、ガス発泡剤を含んだ薄膜組成物を光学フィルム上に塗布し、紫外線や電子線で硬化させた後に加熱することにより、ガスを発生させて、独立気泡を薄膜中に導入している。しかし、光の散乱を生じないナノサイズの気泡は、気泡サイズを維持するためには高い内部圧が必要であり、そのため、気泡寿命が短く、凝集してマクロ気泡になりやすい。従って、光の散乱を増加しない微小サイズの気泡を、屈折率を明らかに低下させる量、高密度に導入することができないという問題があった。 【0006】 特許文献2では、含フッ素基を有するブロックとポリスチレンブロックからなるブロックコポリマーのミクロ相分離構造を利用して超臨界二酸化炭素を分散相に選択的に溶解させて膨潤させた後、マトリックスをガラス転移温度以下に冷却して固定化した後に二酸化炭素を除去することにより独立気泡をポリマー薄膜中に導入して屈折率を下げる技術が開示されているが、超高圧、回分式の方法であって、生産性が低いという問題がある。 【0007】 非特許文献1では、ポリイミド-ポリプロピレングリコールを用いて、ポリイミドの熱変形温度よりも低い250℃で、ポリプロピレングリコール部分を熱分解することにより、ナノサイズの独立気泡をポリマー膜に導入できることが開示されている。しかしながら、この方法では、高温で長時間(10時間)加熱する必要があり、耐熱性の低い光学フィルム上では実施することができないという問題があった。 【0008】 以上の通り、従来の技術では、光学フィルム上に生産性良く成膜でき、光学的な透明性と防汚性とに優れた低屈折率薄膜は得られていない。 【特許文献1】特許3549108号公報 【特許文献2】特開平5-72727号公報 【特許文献3】特許2913715号公報 【非特許文献1】Chem.Mater.,1997,9,p105 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は、光学フィルム上に生産性良く成膜でき、光学的な透明性と防汚性とに優れた低屈折率薄膜を提供するものである。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、少なくとも含フッ素ビニルモノマー単位を有するポリマー鎖と少なくとも加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマー単位からなるポリマー鎖とを含んで構成されるブロックポリマー、加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマー、シリル基加水分解脱水縮合触媒、水、有機溶媒、とを少なくとも含むことを特徴とする薄膜用塗布組成物が上記課題を解決し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。 【0011】 すなわち、本発明は、 (1)少なくとも含フッ素ビニルモノマー単位を有するポリマー鎖と少なくとも加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマー単位からなるポリマー鎖とを含んで構成されるブロックポリマー、加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマー、シリル基加水分解脱水縮合触媒、水、有機溶媒、とを少なくとも含むことを特徴とする薄膜用塗布組成物。 (2)さらに無機微粒子を含むことを特徴とする上記(1)記載の薄膜用塗布組成物。 (3)上記(1)又は(2)記載の薄膜用塗布組成物を用いて塗布成膜した後、半硬化を行い、開孔剤を含浸し、続いて全硬化を行った後に開孔剤を除去することを特徴とする薄膜の成膜方法。 (4)上記(3)記載の成膜方法により得られる反射防止膜。 である。 【発明の効果】 【0012】 本発明は、光学フィルム上に生産性良く成膜でき、光学的な透明性と防汚性とに優れた低屈折率薄膜を提供するものである。」 ウ 「【0046】 次に本発明の加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマーについて説明する。 【0047】 本発明の加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマーは、上記のブロックコポリマーと混合して組成物として用いられ、上記のブロックコポリマーが有する加水分解脱水縮合可能なシリル基と加水分解脱水縮合を行うことで含フッ素ビニルモノマー単位を有するポリマー鎖を含み、且つ多官能の高架橋性を有するポリマーを形成し、これが薄膜の機械的強度に優れるマトリックス層となる。 【0048】 本発明の加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマーは、上記ブロックコポリマーの箇所で記載した加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマーと同じモノマーを用いることができる。具体的に好適なものとして挙げられるのは、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、2-アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランである。またこれらの中でもより好ましいものは3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。これらを混合して用いることが好ましい。」 エ 「【0056】 本発明のシリル基加水分解脱水縮合触媒は、金属キレート化合物、酸性化合物(有機酸、無機酸)、アルカリ性化合物(有機塩基、無機塩基)を挙げることができる。 (中略) 【0059】 無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸などを挙げることができる。 (中略) 【0062】 また、光や熱によって酸や塩基を生成する化合物も用いることができる。光により酸を発生するものとしては、イオン性化合物と非イオン性化合物がある。イオン性化合物としては、重金属、ハロゲンイオンを含まないものがよく、トリオルガノスルホニウム塩系化合物が好ましい。具体的には、トリフェニルスルホニウムの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、や1-ジメチルチオナフタレンのメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、1-ジメチルチオ-4-ヒドロキシナフタレンの、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、1-ジメチルチオ-4,7-ジヒドロキシナフタレンの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、などが挙げられる。非イオン性の光酸発生剤としては、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、スルホンベンゾトリアゾール化合物等を用いることができる。 【0063】 光塩基発生剤としては、コバルトなど遷移金属錯体、オルトニトロベンジルカルバメート類、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルカルバメート類、アシルオキシイミノ類などを例示することができる。 【0064】 光照射により発生する塩基の種類としては有機、無機の塩基のいずれの場合も好ましく用いることができるが、好ましい光塩基発生剤の具体例として、遷移金属錯体としては、ブロモペンタアンモニアコバルト過塩素酸塩、ブロモペンタメチルアミンコバルト過塩素酸塩、ブロモペンタプロピルアミンコバルト過塩素酸塩、ヘキサアンモニアコバルト過塩素酸塩、ヘキサメチルアミンコバルト過塩素酸塩、ヘキサプロピルアミンコバルト過塩素酸塩などがあげられる。 【0065】 光酸発生剤または光塩基発生剤の添加量は、ブロックコポリマーに対して、0.001?20質量%が好ましく、0.01?10質量%がさらに好ましい。」 オ 「【0071】 本発明の薄膜用塗布組成物は、さらに無機微粒子を添加しておくことも好ましい。この無機微粒子は、薄膜の機械的強度を高くする効果を有する。無機微粒子の種類としては二酸化ケイ素(シリカ)微粒子、二酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、炭酸カルシウム微粒子、硫酸バリウム微粒子、タルク、カオリンおよび硫酸カルシウム微粒子などを例示することができる。また無機微粒子が導電性を有していれば、帯電防止機能を付与することも可能である。導電性を有する無機微粒子としては亜鉛、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ガリウム、アルミニウム、ジルコニウム、モリブデン、セリウム、タンタル、イットリウムから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物あるいは複合酸化物からなる無機酸化物微粒子(代表的なものとしてITO(スズ含有酸化インジウム)微粒子、ATO(スズ含有酸化アンチモン)微粒子などがある)や、銅、銀、ニッケル、低融点合金(ハンダなど)の金属微粒子、各種のカーボンブラック、金属繊維、炭素繊維など公知のものが用いられる。これら微粒子の中でも特にシリカ微粒子が好ましい。また、シリカ微粒子がつながって鎖状または枝分かれした鎖状になったもの、複数のこれらの形状のものが凝集してブドウの房状になった形状のものも好ましい。屈折率をより低いものにするためにシリカ微粒子の内部に独立気泡を有する中空シリカ微粒子を用いることも好ましい。」 カ 「【0074】 本発明の薄膜用塗布組成物は、塗布成膜する前に予め、加水分解脱水縮合可能なシリル基を加水分解や脱水縮合を進行させておくことが好ましい。上記ブロックコポリマーと加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマーとがシロキサン結合を形成して共有結合で繋がる。反応の条件としては、上記薄膜用塗布組成物を室温?100℃の範囲で10分間?1週間の期間攪拌することで達成できる。また、前記無機微粒子を添加する場合もブロックコポリマーや加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマーと無機微粒子とが共有結合を介して結合していることが好ましく、無機微粒子表面の官能基とシリル基とを反応させることによって共有結合を形成せしめる。この場合も反応の条件としては、室温?100℃の範囲で10分間?1週間の期間攪拌することで達成できる。 【0075】 なお、本発明の薄膜用塗布組成物は、後述の薄膜成膜方法における半硬化や全硬化において、加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマーを重合硬化させるが、好ましくは放射線重合開始剤による重合硬化を行うために、放射線重合開始剤が添加されていることが好ましい。放射線重合開始剤は、加水分解脱水縮合可能なシリル基の加水分解や脱水縮合を進行させた後に添加して薄膜用塗布組成物となすことが好ましい。」 キ 「【0079】 次に本発明の薄膜の成膜方法について説明する。 薄膜の成膜方法は、薄膜用塗布組成物を用いて塗布成膜した後、半硬化を行い、開孔剤を含浸し、続いて全硬化を行った後に開孔剤を除去することを特徴とする。 (中略) 【0081】 本発明の塗布成膜における塗布方法は、浸漬、スピンコーター、ナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアロールコーター、スライドコーター、カーテンコーター、スプレイコーター、ダイコーター等の公知の塗布法を用いて実施することができる。これらのうち、透明樹脂基板がフィルム状の場合、連続塗布が可能なナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアロールコーター、スライドコーター、カーテンコーター、スプレイコーター、ダイコーター等の方法が好ましく用いられる。 【0082】 本発明の塗布成膜における成膜方法は、塗布を行った後、塗布組成物に含まれる溶媒を乾燥するために室温?200℃の範囲で静置、送風、マイクロ波照射などを5秒?10分間行う。これらの温度、時間などは使用する基材や溶媒の種類に応じて適宜決定される。 (中略) 【0084】 本発明の薄膜成膜方法における半硬化は、薄膜用組成物が塗布された透明基材の塗布面に電磁波や電子線を照射することにより薄膜用塗布組成物中のビニル基を重合させる。この際、完全に硬化させずに部分硬化の段階で重合反応を停止させる。これにより、後述の開孔剤を含浸させる際に、マトリックス構造が安定化して、開孔剤を含浸させても薄膜形状が崩れず、且つ含フッ素基が凝集した微小分散相へより選択的に開孔剤を含浸することが可能となる。すなわち、紫外線照射や電子線照射等による硬化条件を基準に、硬化時間、硬化条件、または塗膜に与えるエネルギー積算量を変化させることにより硬化を一旦停止させる。一例として、紫外線照射による全硬化条件の照射線量の約約数?数10%である。このようにして、完全には硬化していない(すなわち半硬化)状態の薄膜が形成される。 【0085】 なお、本発明の半硬化は、薄膜用組成物に熱重合開始剤を添加しておいて、乾燥や加熱条件を変化させることにより、完全に硬化する条件よりも硬化反応が抑えられる条件にすることで、実施することが好ましい。 (中略) 【0088】 本発明の薄膜成膜方法における開孔剤の含浸は、上記半硬化薄膜に開孔剤を接触させることによって含浸させる。半硬化薄膜の表面に開孔剤を塗布する方法(吹き付け器機等を使用し塗布する方法、ロールコーター等で塗布する方法)や半硬化薄膜を開孔剤に浸漬させる方法、開孔剤を加圧注入する方法を用いることができる。開孔剤の含浸を容易にするために加熱することや超音波を照射することなども好ましく用いることができる。また、開孔剤を含浸する際に、前記の放射線重合開始剤や熱重合開始剤を開孔剤に混合しておくことが好ましい。 (中略) 【0094】 本発明の薄膜成膜方法における全硬化は、放射線重合開始剤を添加した場合は、電磁波照射や電子線照射による硬化を行い、残留している放射線重合開始剤によって完全に硬化させることによって達成される。また、熱重合開始剤を添加した場合は、残留している熱重合開始剤によって開孔剤含浸後に加熱することによって完全に硬化できる。 【0095】 本発明の薄膜成膜方法における開孔剤の除去は、硬化後の薄膜成膜を有する部材(光学フィルム上に薄膜を成膜した部材等)を加熱空気と接触させて揮散させる方法、減圧条件下で揮散させる方法、さらに電子線照射等により開孔剤を分解揮散させる方法があり、好ましくは加熱空気と接触させて揮散させる方法、減圧条件下で揮散させる方法が用いられる。」 ク 「【0096】 本発明の基材上に薄膜が塗布成膜された部材は反射防止膜として有用であり、液晶やプラズマディスプレイなどの表示材料にのみならず、メガネレンズ、ゴーグル、コンタクトレンズなどの視力矯正用部材、車の窓やインパネメーター、ナビゲーションシステムなどの自動車部品、窓ガラスなどの住宅・建築部材、ビニルハウスの光透過性フィルムやシートなどの農芸製品、太陽電池、光電池などの電池部材、タッチパネル、光ファイバー、光ディスクなどの電子情報機器部品、照明グローブ、蛍光灯、鏡、時計などの家庭用品、ショーケース、額、半導体リソグラフィー、コピー機器などの業務用部材、パチンコ台ガラスやゲーム機など、表面保護、防汚性、視認性の向上が求められる様々な分野における部材として応用することが可能である。 【0097】 また、本発明の薄膜は独立気泡による空隙を有するため、層間絶縁膜や電気絶縁体、及び断熱材や緩衝材としても有用である。」 ケ 「【0104】 [実施例1] 合成例1のブロックコポリマー溶液3g(ブロックコポリマーとして0.3g)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1g、1N-硝酸溶液0.1g、プロピレングリコールモノメチルエーテル10gを混合し、室温で6時間攪拌した後、さらに1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.1gとプロピレングリコールモノメチルエーテル100gを添加して薄膜用塗布組成物を得た。 【0105】 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10g、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.5g、エタノール10g、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.0gを混合し、ハードコート層用塗布組成物を得た。 【0106】 片面に易接着処理がなされた厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名コスモシャインA4100、東洋紡績株式会社)上に、前記のハードコート層用塗布組成物をバーコーター(米国R.D.Specialties,Inc.製の#7ロッドを装着)を用いて塗布し、120℃にて10秒間乾燥し、続いて紫外線硬化装置(UVC-2519型、高圧水銀灯を装着、ウシオ電機株式会社)を用いて出力160W、コンベア速度2m/分、光源距離100mmにて紫外線照射することによってハードコート層を形成した。 【0107】 該ハードコート層上に、上記薄膜用塗布組成物をバーコーター(#6ロッドを装着)を用いて塗布し、50℃にて30秒間乾燥し、続いて紫外線硬化装置を用いて出力120W、コンベア速度8m/分で紫外線照射することによって半硬化の薄膜を形成した。 【0108】 続いて1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを塗布、含浸させた後、出力160W、コンベア速度2m/分で紫外線照射を行って全硬化させ、さらに50℃で真空乾燥10分を行うことで独立気泡を導入して、薄膜を得た。 【0109】 結果を表1に示す。得られた低屈折率層薄膜の屈折率は十分低い値であり、光学的な透明性と防汚性とに優れていた。また、光学フィルム上に生産性良く成膜でき、反射防止膜の生産性にも優れる。」 合議体注:表1は以下のとおりのものである。 (2)引用文献1に記載された発明 引用文献1の記載事項ケに基づけば、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。 「片面に易接着処理がなされたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ハードコート層用塗布組成物を塗布し、乾燥し、続いて紫外線照射することによってハードコート層を形成し、 該ハードコート層上に、ブロックコポリマー溶液、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1N-硝酸溶液、プロピレングリコールモノメチルエーテルを混合し、室温で6時間攪拌した後、さらに1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加して得た薄膜用塗布組成物を塗布し、50℃にて乾燥し、続いて紫外線照射することによって半硬化の薄膜を形成し、 続いて1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを塗布、含浸させた後、紫外線照射を行って全硬化させ、さらに50℃で真空乾燥を行うことで独立気泡を導入して、薄膜を得る、 光学フィルム上に低屈折率層薄膜を成膜する方法。」(以下、「引用発明」という。) 2 引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前の平成22年4月15日に頒布された刊行物である引用文献2(特開2010-85579号公報)には、以下の記載がある。 (1) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、フラットパネルディスプレイに用いられる反射防止光学物品、それに用いられるコーティング材料、およびそれを用いた反射防止フィルムに関する。 【背景技術】 【0002】 透明材料を介して物を見る場合、反射光が強くなってしまうため透明材料の表面で反射像を生じたり、反射した光のために、内容物や表示体が判然としない問題が生ずる。特に大型ディスプレイ分野では、従来から視認性を向上させる目的で、高屈折率材料と低屈折率材料を積層させて、反射防止膜を形成することが行われてきた。近年になってからはフィルムの高機能化が進み、軽量、安全、取り扱いやすさなどの長所を生かして、フィルムを基材とした上に薄膜を設けることにより反射防止性を有する光学物品が考案されており、このような光学部品にはさらなる低反射率化、表面高硬度化が求められている。 (中略) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は、透明性、耐擦傷性に優れた反射防止光学物品、並びに反射防止積層体であるシロキサン系樹脂組成物を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明は、透明なフィルム基材上の少なくとも一方の面に直接または他の層を介して、下記の高屈折率層と低屈折率層が積層されてなることを特徴とする反射防止光学物品である。 【0011】 高屈折率層は金属酸化物粒子存在下、アルコキシシラン化合物を、溶媒中、酸触媒により加水分解した後、該加水分解物を縮合反応させる方法により得られたシロキサン系樹脂組成物を主成分として含有する塗液を塗布した後硬化させたて得られる、厚さ2.5μm以上45μm以下の被膜であり、低屈折率層は無機微粒子とシロキサン化合物を含有するシロキサン系低屈折率樹脂組成物を主成分として含有する塗液を塗布した後硬化させて得られる被膜であって、高屈折率層の屈折率より0.20以上小さい屈折率の被膜である。 【発明の効果】 【0012】 本発明の光学物品は、低反射率で可視光透過率が高く、耐スクラッチ性、耐クラック性に優れた硬化膜積層体を形成することができる。特にテレビ等の視認性向上フィルターの構造部材として好適に用いることができる。」 (2) 「【0108】 実施例1 メチルトリメトキシシラン 38.2g(0.28mol)、フェニルトリメトキシシラン 23.81g(0.12mol)、数平均粒子径15nmの”オプトレイクTR-527”(商品名、触媒化成工業(株)製 組成:酸化チタン粒子20重量%、メタノール80重量%)250.18gを反応容器に入れ、この溶液に、水21.62gおよびリン酸0.31gを、撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。滴下後、フラスコに蒸留装置を取り付け、得られた溶液をバス温90℃で2.5時間加熱撹拌して加水分解により生成したメタノールを留去しつつ反応させた。その後、溶液をバス温130℃でさらに2時間加熱撹拌した後、室温まで冷却し、ポリマー溶液A1を得た。得られたポリマー溶液Aに、アルミニウム系硬化剤として、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)(商品名 ALCH-TR、川研ファインケミカル(株)社製)2.5gおよびプロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル85gを添加して、シロキサン系樹脂組成物溶液「H1」を得た。 【0109】 別に、メチルトリメトキシシラン 60g、 3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 41.2g、2-プロパノール300g、2-プロパノール分散型中空シリカゾル(屈折率1.30、固形分20.5質量%)188gを反応容器に入れ、この溶液に、1Nギ酸水溶液34.84gを撹拌しながら、反応温度が40℃を越えないように滴下した。そのまま約1時間撹拌を行い、その後、70℃に設定したオイルバスを用いて昇温し反応溶液の温度を70℃で2時間、撹拌した後、室温まで冷却し、ポリマー溶液B1得た。得られたポリマー溶液B1にメタノール356gを加えて、ついでアルミニウムトリスアセチルアセトネート5g、2-プロパノール1890g、メチルイソブチルケトン720g、フッ素シロキサン系表面改質剤10gを加えて、シロキサン系低屈折率樹脂組成物溶液「L1」を得た。 【0110】 得られた溶液「H1」「L1」を用いて硬化膜を作製し、膜厚、透過率、反射率、耐クラック性、耐スクラッチ性、屈折率について評価を行った。」 3 引用出願3 (1)原査定の拒絶の理由に引用された出願である引用出願3(PCT/JP2014/060825)は、本願出願後の2014年4月16日を出願日とする国際出願であり、以下の記載事項がある。そして、以下の記載事項は、本願出願後の2014年10月23日に国際公開第2014/171485号として出願公開された。 ア 「技術分野 [0001] 本発明はシロキサンオリゴマー及び無機微粒子を含む硬化性組成物に関し、屈折率の低い硬化膜や低屈折率層を形成できる硬化性組成物に関する。 背景技術 [0002] 従来、基材上に該基材よりも低い屈折率の被膜を施すことにより、反射率が低下することが知られており、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)等の各種ディスプレイ、光学部品レンズ、スクリーンなどにおいて低屈折率の被膜が反射防止膜として利用されている。 反射防止膜は、多層膜からなり、残存反射率が低いものが一般的に知られている。多層膜からなる場合、作製方法は真空蒸着法、ディップコート法などのような方法を用いるため、煩雑であり、低生産性、高コストと経済的に問題もある。 [0003] 一方で、単層または二層の塗膜層から成る構成も知られており、この構成では層形成工程が少なく且つ簡略であるためコストが低く量産が容易であるが、残存反射率が高いという欠点が挙げられる。 [0004] 上記のような問題を解決するために、各種低屈折率塗膜の開発が行われてきた。そのような中で、シリカゾルは比較的低屈折率の材料であり、広い波長光透過性も優れている。さらに、シリカ微粒子を膜形成材料に用いることによって、得られる反射防止膜は微粒子間に微小な隙間を有する構造をとり、反射防止膜全体の屈折率を低下させ、その結果として優れた反射防止効果を得られることが知られている。具体的には、光硬化性のバインダにシリカ微粒子を添加したもの(特許文献1)、アルコキシシランにシリカ微粒子を添加したもの(特許文献2)などが開示されている。 先行技術文献 特許文献 [0005] 特許文献1:特開2003-107206号公報 特許文献2:特開2007-025078号公報 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0006] 上述の通り、シリカ微粒子とバインダを用いて低屈折率膜を生産性よく得る方法は種々提案されているが、上述のようなシリカ微粒子を用いる場合は、微粒子間の微小な隙間を有する構造を利用して低屈折率化を実現しているために、使用するシリカの量を多量にしてしまうと、膜自体の強度が弱くなり、ひいては成膜性が悪化するという虞があった。 また、例えば上述の特許文献1の方法では、低屈折率層を有する反射防止膜が得られているものの、シリカ微粒子の使用量を抑えたときには、充分に低い屈折率を得ることは困難であった。 [0007] このように、バインダ成分として(メタ)アクリル変性されたフッ素化合物やケイ素化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物においてシリカ微粒子を使用した場合、膜の強度を保ち且つ充分に満足のいく低い屈折率を発現させることは非常に難しく、さらなる低屈折率化の改善が望まれていた。 すなわち本発明は、硬化膜の強度を低下させないようなシリカ微粒子の添加量においても充分に低い屈折率を示し、また加熱を嫌う樹脂基材への適用が可能な活性エネルギー線で硬化可能な低屈折材料の提供を課題とするものである。 課題を解決するための手段 [0008] 本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、硬化性成分としてラジカル重合性二重結合を有するアルコキシシラン部分加水分解縮合物を採用し、そしてシリカ微粒子に代表される無機微粒子と光重合開始剤を含む硬化性組成物が、成膜性に優れ、高い透明性と低屈折率を実現できる硬化膜を形成可能であることを見出した。 [0009] すなわち本発明は、第1観点として、 (a)式[1]で表されるアルコキシシランAと、式[2]で表されるアルコキシシランBとを少なくとも含むアルコキシシランを加水分解縮合させることにより得られるラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマー100質量部、 (b)無機微粒子10?1,000質量部、及び (c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤0.1?25質量部 を含む、硬化性組成物に関する。 [化1] (式中、R^(1)はラジカル重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、R^(3)は炭素原子数1乃至10のアルキル基(前記アルキル基はフッ素原子、少なくとも炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されたアミノ基、少なくともフェニル基で置換されたアミノ基、又はウレイド基で置換されていてもよい。)又はフェニル基を表し、R^(2)及びR^(4)はそれぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、aは1又は2を表し、bは0乃至2の整数を表す。) 第2観点として、前記(a)シロキサンオリゴマーが、式[1]で表されるアルコキシシランAと、式[2]で表されるアルコキシシランBとを加水分解縮合させることにより得られるラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーである、第1観点に記載の硬化性組成物に関する。 [化2] (式中、R^(1)はラジカル重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、R^(3)はフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表し、R^(2)及びR^(4)はそれぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、aは1又は2を表し、bは0乃至2の整数を表す。) 第3観点として、前記(b)無機微粒子がシリカ微粒子である、第1観点又は第2観点に記載の硬化性組成物に関する。 第4観点として、前記(b)無機微粒子が、 窒素吸着法(BET法)により測定された比表面積(m^(2))から、平均粒子径=(2720/比表面積)の式によって与えられる平均粒子径が1?25nmであり、 動的光散乱法(DLS法)による測定により得られる平均長さが30?500nmである、細長形状のシリカ微粒子である、第3観点に記載の硬化性組成物に関する。 第5観点として、前記式[1]中のR^(1)が、ビニル基又は(メタ)アクリル基を有する1価の有機基である、第1観点乃至第4観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。 第6観点として、前記アルコキシシランAが下記式[3]で表される化合物である、第5観点に記載の硬化性組成物に関する。 [化3] (式中、R^(2)は前記式[1]における定義と同じ意味を表し、R^(5)は水素原子又はメチル基を表し、L^(1)は炭素原子数1乃至10のアルキレン基を表す。) 第7観点として、前記アルコキシシランAが下記式[3]で表される化合物である、第5観点に記載の硬化性組成物に関する。 [化4] (式中、R^(2)は前記式[1]における定義と同じ意味を表し、R^(5)は水素原子又はメチル基を表し、L^(1)は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表す。) 第8観点として、前記(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤が、アルキルフェノン化合物である、第1観点乃至第7観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。 第9観点として、更に(d)パーフルオロポリエーテル化合物からなる表面改質剤0.01?50質量部を含む、第1観点乃至第8観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。 第10観点として、更に(e)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー1?300質量部を含む、第1観点乃至第9観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。 第11観点として、更に(g)塩基発生剤を、前記(a)シロキサンオリゴマーのアルコキシシリル基1molに対して0.001?20mol%の量含む、第1観点乃至第10観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。 第12観点として、前記(a)ラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーが、前記アルコキシシランA単位を10?99mol%含むシロキサンオリゴマーである、第1観点乃至第11観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。 第13観点として、第1観点乃至第12観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物より得られる硬化膜に関する。 第14観点として、低屈折率層を備える積層体であって、該低屈折率層が第1観点乃至第12観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物からなる層を形成する工程、該層に活性エネルギー線を照射し硬化する工程により形成されている、積層体に関する。 第15観点として、基材層の少なくとも一方側に低屈折率層を備える積層体であって、該低屈折率層が第1観点乃至第12観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物からなる層を基材層の少なくとも一方側に形成する工程、該層に活性エネルギー線を照射し硬化する工程により形成されている、積層体に関する。 発明の効果 [0010] 本発明の硬化性組成物は、シリカ微粒子に加えバインダ成分としてラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーを含むことにより、高い透明性と低い屈折率を有する硬化膜を形成できる。 また本発明の硬化性組成物において、上記バインダ成分であるシロキサンオリゴマーを構成するアルコキシシラン部分加水分解縮合物のアルコキシ基は、酸による加水分解によって、ガラス基板等の表面のヒドロキシ基に対して活性なシラノール基に変換される。このため、該組成物から得られる硬化膜において、基板表面と強固な化学的結合を形成可能となるため、ガラスへの密着性を付与しやすく、成膜性に優れたものとすることができる。 さらに本発明の硬化性組成物は、重合開始剤として活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤、特に特定の重合開始剤を選択することによって、窒素雰囲気下での電子線照射といった特定の硬化条件を必要とせず、通常の硬化条件、すなわち、窒素雰囲気下又は空気雰囲気下での紫外線照射においても硬化膜を形成できる。 [0011] そして本発明の硬化性組成物は、蒸着法等で用いられる大規模な装置を使わずに、スピンコート法やディップコート法等の簡単な方法により、しかも1回の塗布と焼成により機械的強度に優れ、基材との密着性に優れた硬化膜或いは低屈折率層を得ることができる。 特に本発明は、上記硬化性組成物により得られる硬化膜の屈折率が1.35以下と低く、しかも高い透明性を有することから、プラスチックやガラス製品の表面に反射防止機能を有する硬化膜を形成でき、特に、ディスプレイやレンズ等の透明な基材の表面における反射防止機能を有する硬化膜の形成に適している。 そして本発明は、例えばITO(酸化インジウムスズ)、銀ナノワイヤ、銀メッシュ等を用いた透明電極における骨見え防止(視認性改善)用低屈折率層の形成材料として、低反射膜や光導波路のクラッド等の光学材料として、半導体リソグラフィーにおけるペリクルやレジスト等の半導体材料として、さらには、保護膜材料、絶縁膜材料、撥水材料などの先端技術分野の用途に有効である。」 イ 「[0040][(g)塩基発生剤] さらに本発明の硬化性組成物は、さらに加水分解触媒として(g)塩基発生剤を含んでいてもよい。塩基発生剤としては、熱塩基発生剤及び光塩基発生剤の何れも使用することができる。 [0041] 熱塩基発生剤としては、例えば、1-メチル-1-(4-ビフェニリル)エチルカルバメート、2-シアノ-1,1-ジメチルエチルカルバメート等のカルバメート類;尿素、N,N-ジメチル-N’-メチル尿素等の尿素類;トリクロロ酢酸グアニジン、フェニルスルホニル酢酸グアニジン、フェニルプロピオール酸グアニジン等のグアニジン類;1,4-ジヒドロニコチンアミド等のジヒドロピリジン類;N-(イソプロポキシカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン、N-(ベンジルオキシカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン等のジメチルピペリジン類;フェニルスルホニル酢酸テトラメチルアンモニウム、フェニルプロピオール酸テトラメチルアンモニウム等の四級化アンモニウム塩;ジシアンジアミドなどが挙げられる。また、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)の塩である、U-CAT(登録商標)SA810、同SA831、同SA841、同SA851[以上、サンアプロ(株)製]等が挙げられる。 [0042] 光塩基発生剤としては、例えば、9-アントリルメチル=N,N-ジエチルカルバメート等のアルキルアミン系光塩基発生剤;9-アントリル=N,N-ジシクロヘキシルカルバメート、1-(9,10-アントラキノン-2-イル)エチル=N,N-ジシクロヘキシルカルバメート、ジシクロヘキシルアンモニウム=2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート、9-アントリル=N-シクロヘキシルカルバメート、1-(9,10-アントラキノン-2-イル)エチル=N-シクロヘキシルカルバメート、シクロヘキシルアンモニウム=2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート、(E)-N-シクロヘキシル-3-(2-ヒドロキシフェニル)アクリルアミド等のシクロアルキルアミン系光塩基発生剤;9-アントリルメチル=ピペリジン-1-カルボキシレート、(E)-1-ピペリジノ-3-(2-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オン、(2-ニトロフェニル)メチル=4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボキシレート、(2-ニトロフェニル)メチル=4-(メタクリロイルオキシ)ピペリジン-1-カルボキシレート等のピペリジン系光塩基発生剤;グアニジニウム=2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート、1,2-ジイソプロピル-3-(ビス(ジメチルアミノ)メチレン)グアニジニウム=2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5-テトラメチルビグアニジウム=n-ブチルトリフェニルボラート、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エニウム=2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオネート等のグアニジン系光塩基発生剤;1-(9,10-アントラキノン-2-イル)エチル=イミダゾール-1-カルボキシレート等のイミダゾール系光塩基発生剤などを使用可能である。これらは、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。 また、光塩基発生剤は市販品として入手可能であり、例えば、和光純薬工業(株)製の光塩基発生剤WPBGシリーズ等を好適に用いることができる。 [0043] 本発明の硬化性組成物において、上記(g)塩基発生剤を含む場合、前記(a)シロキサンオリゴマーのアルコキシシリル基1molに対して0.001?20mol%の量にて、好ましくは0.01?10mol%の量にて、特に好ましくは0.1?5mol%の量にて使用する。」 ウ 「[0047]<硬化膜> 本発明の上記硬化性組成物は、基材上にコーティングして光重合(硬化)させることにより、硬化膜や積層体などの成形品を成すことができる。こうして得られる硬化膜もまた、本発明の対象である。上記硬化膜は低屈折率膜として有用である。 前記基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合物)、AS(アクリロニトリル-スチレン共重合物)、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、二酸化ケイ素、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。 [0048] 本発明の硬化性組成物のコーティング方法は、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等を適宜選択し得、中でも短時間で塗布できることから揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、容易に均一な塗布を行うことができるという利点より、スピンコート法を用いることが望ましい。また、簡単に塗布することができ、かつ、大面積に塗装ムラがなく平滑な塗膜を形成することができるという利点より、ロールコート法、ダイコート法、スプレーコート法を用いることが望ましい。ここで用いる硬化性組成物は、前述のワニスの形態にあるものを好適に使用できる。なお事前に孔径が2μm程度のフィルタなどを用いて硬化性組成物を濾過した後、コーティングに供することが好ましい。 [0049] コーティング後、好ましくは続いてホットプレート又はオーブン等で予備乾燥した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して光硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線等が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV-LED等が使用できる。 その後、ポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより重合及び重縮合を完結させることができる。 なお、コーティングによる膜の厚さは、乾燥、硬化後において、通常1nm?50μm、好ましくは1nm?20μmである。 [0050]<低屈折率層を備える積層体> また本発明は、低屈折率層を備える積層体、すなわち、該低屈折率層が上記硬化性組成物からなる層を形成する工程、該層に紫外線等の活性エネルギー線を照射し硬化する工程により形成されている積層体もまた本発明の対象である。該積層体は、基材を有する形態、すなわち、基材層の少なくとも一方側に上述の低屈折率層を備える積層体であってもよい。 ここで使用する基材や塗膜方法、紫外線等のエネルギー線照射については、前述の<硬化膜>における基材、コーティング方法、紫外線照射の通りである。 好ましくは紫外線照射の後、更に焼成(ポストベーク)する工程を経ることが望ましい。焼成工程は通常50?300℃、5分間?72時間で適宜選択される。 また、前記積層体における基材は、ガラス、PETであることが好ましい。 なお、前記積層体において、低屈折率層の膜厚が1nm?50μmであることが好ましく、より好ましくは1nm?20μmである。」 エ 「実施例 [0051] 以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。 なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。 [0052](1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC) 装置:東ソー(株)製 HLC-8220GPC カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF-804L、GPC KF-805L カラム温度:40℃ 溶媒:テトラヒドロフラン 検出器:RI (2)スピンコーター 装置:ミカサ(株)製 MS-A100 (3)ホットプレート 装置:アズワン(株)製 MH-180CS、MH-3CS (4)UV照射装置 装置:アイグラフィックス(株)製 4kW×1灯窒素パージ紫外線照射コンベア装置 (5)膜厚測定、屈折率測定 装置:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)製 多入射角分光エリプソメーター VASE(登録商標) (6)全光透過率測定、ヘーズ測定 装置:日本電色工業(株)製 ヘーズメーター NDH5000 [0053] また、略記号は以下の意味を表す。 MOTMS:8-メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン[信越化学工業(株)製 信越シリコーン(登録商標)KBM-5803] MPTES:3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン[信越化学工業(株)製 信越シリコーン(登録商標)KBE-503] PAPTMS:3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン[信越化学工業(株)製 信越シリコーン(登録商標)KBM-573] TEOS:テトラエトキシシラン[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(同)製 TSL8124] DMS1M:モノメタクリル変性ジメチルシリコーン[JNC(株)製 サイラプレーン(登録商標)FM-0711] DMSUA:反応性ポリシロキサン[日本合成化学工業(株)製 紫光(登録商標)UT-4314] DPHA:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート[東亞合成(株)製 アロニックス(登録商標)M-403] OTEOS:テトラエトキシシラン加水分解縮合物(重量平均分子量Mw:1,700、分散度:1.4)[コルコート(株)製 エチルシリケート48] ST:プロピレングリコールモノメチルエーテル分散細長形状シリカゾル[日産化学工業(株)製 PGM-ST-UP、SiO2:15質量%、平均粒子径:12nm、平均粒子長さ:60nm] PFPE-1:両末端アクリル変性パーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 FLUOROLINK(登録商標)AD1700] PFPE-2:両末端アクリル変性パーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 FLUOROLINK(登録商標)5101X] W266:1,2-ジイソプロピル-3-(ビス(ジメチルアミノ)メチレン)グアニジニウム=2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート[和光純薬工業(株)製 WPBG-266] I2959:1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン[BASFジャパン(株)製 Irgacure(登録商標)2959] EtOH:エタノール IPA:イソプロパノール PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム [0054][合成例1]シロキサンオリゴマー(Si-OLG-1)の製造 300mLの反応フラスコに、TEOS 37.5g、MPTES 29.8g及びエタノール43.2gを仕込み、10分間撹拌した。この溶液へ、別途調製したシュウ酸[関東化学(株)製]0.32g、水18.9g及びエタノール43.2gの混合溶液を、30分間かけて滴下した。この溶液を10分間撹拌後、内液が還流するまで(およそ80℃)加熱し1時間撹拌した。反応混合物を30℃まで冷却し、Si-OLG-1のエタノール溶液を得た。 Si-OLG-1のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,200、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.1であった。 [0055][合成例2]シロキサンオリゴマー(Si-OLG-2)の製造 300mLの反応フラスコに、TEOS 6.23g、MOTMS 6.35g及びエタノール7.97gを仕込み、10分間撹拌した。この溶液へ、別途調製したシュウ酸[関東化学(株)製]0.05g、水3.15g及びエタノール7.97gの混合溶液を、30分間かけて滴下した。この溶液を10分間撹拌後、内液が還流するまで(およそ80℃)加熱し1時間撹拌した。反応混合物を30℃まで冷却し、Si-OLG-2のエタノール溶液を得た。 Si-OLG-2のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,400、分散度:Mw/Mnは1.1であった。 [0056][合成例3]シロキサンオリゴマー(Si-OLG-3)の製造 300mLの反応フラスコに、TEOS 12.5g、PAPTMS 20.4g、MPTES 17.4g及びエタノール31.6gを仕込み、10分間撹拌した。この溶液へ、別途調製したシュウ酸[関東化学(株)製]0.22g、水12.6g及びエタノール31.6gの混合溶液を、30分間かけて滴下した。この溶液を10分間撹拌後、内液が還流するまで(およそ80℃)加熱し1時間撹拌した。反応混合物を30℃まで冷却し、Si-OLG-3のエタノール溶液を得た。 Si-OLG-3のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,400、分散度:Mw/Mnは1.3であった。 [0057][合成例4]シロキサンオリゴマー(Si-OLG-4)の製造 100mLの反応フラスコに、PAPTMS 10.2g、MPTES 2.89g及びエタノール8.20gを仕込み、10分間撹拌した。この溶液へ、別途調製したシュウ酸[関東化学(株)製]0.05g、水3.30g及びエタノール8.26gの混合溶液を、30分間かけて滴下した。この溶液を10分間撹拌後、内液が還流するまで(およそ80℃)加熱し1時間撹拌した。反応混合物を30℃まで冷却し、Si-OLG-4のエタノール溶液を得た。 Si-OLG-4のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,000、分散度:Mw/Mnは1.1であった。 [0058][実施例1乃至実施例8、比較例1乃至比較例5]硬化膜の作製及び評価 [硬化膜の作製] 以下の各成分をPGME/水混合溶媒(質量比95/5)に溶解し、固形分(硬化性組成物中の溶媒成分以外の全成分)濃度3質量%(実施例4及び実施例8については5質量%)の硬化性組成物を調製した。 (1)バインダー:合成例1で製造したSi-OLG-1、合成例2で製造したSi-OLG-2、合成例3で製造したSi-OLG-3、合成例4で製造したSi-OLG-4、DMS1M、DMSUA、OTEOS、TEOS、MPTES及びDPHAから、表1に記載のものを表1に記載の量(固形分換算)。 (2)シリカ微粒子:STをSiO_(2)換算で表1に記載の量。 (3)光重合開始剤:I2959を表1に記載の量。 (4)表面改質剤:PFPE-1/PFPE-2の混合物(質量比8/2)を表1に記載の量。 (5)加水分解触媒:W266を表1に記載の量。 なお、表1中の各配合量は質量部を表す。 この硬化性組成物を室温(およそ25℃)で30分間撹拌した後、予めエタノールで超音波洗浄した50×50mmのガラス基板(1.1mm厚)上にスピンコート(slope5秒間、表1に記載の回転数×30秒間、slope5秒間)し塗膜を得た。この塗膜を120℃のホットプレートで1分間乾燥した。その後、この塗膜を大気下、露光量800mJ/cm^(2)のUV光を照射することで光硬化させ、硬化膜(低屈折率膜)を作製した。 [0059][硬化膜の評価] 得られた硬化膜の、膜厚、成膜性、波長550nmの屈折率、全光透過率及び透明性を評価した。なお、成膜性及び透明性については、以下の要領で実施した。結果を表2に併せて示す。 成膜性:膜表面を目視で確認し以下の基準に従い評価した。 透明性:ガラス基板も含めた低屈折率膜のヘーズを測定し以下の基準に従い評価した。 [成膜性評価基準] A:膜表面に異物がなく均一な膜が形成されている。 C:膜表面に異物やムラなどが見られる。 [透明性評価基準] A:haze値<0.5 B:0.5≦haze値<1.0 C:haze値≧1.0 [0060][表1] [0061] [表2] [0062] 表1に示すように、実施例1乃至実施例8の硬化性組成物より得られた硬化膜は成膜性と透明性に優れるとともに、1.35を下回る屈折率を実現し、低屈折率膜として有用であるとする結果を得た。また表面改質剤を配合することにより(実施例2及び実施例3)、より屈折率が低くなる傾向が得られた。また加水分解触媒を配合することによっても(実施例6)、より屈折率が低くなる結果が得られた。 一方、比較例1の硬化膜は、実施例1乃至実施例3と比べて屈折率が高く、成膜性や透明性にも劣るとする結果となった。 比較例2の硬化膜は成膜性や透明性は実施例のものと同程度であったが、屈折率が1.35を超え高いとする結果となった。 比較例3及び比較例4の硬化膜は屈折率は非常に低いものの、成膜性に劣るとする結果を得た。 そして比較例5の硬化膜は、屈折率が高く透明性も劣るとする結果となった。」 (2)引用出願3が優先権主張の基礎とする特願2013-86978号は、本願出願前の平成25年4月17日を出願日とする日本語特許出願であって、以下の記載事項がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明はシロキサンオリゴマー及び無機微粒子を含む硬化性組成物に関し、屈折率の低い硬化膜や低屈折率層を形成できる硬化性組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、基材上に該基材よりも低い屈折率の被膜を施すことにより、反射率が低下することが知られており、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)等の各種ディスプレイ、光学部品レンズ、スクリーンなどにおいて低屈折率の被膜が反射防止膜として利用されている。 反射防止膜は、多層膜からなり、残存反射率が低いものが一般的に知られている。多層膜からなる場合、作製方法は真空蒸着法、ディップコート法などのような方法を用いるため、煩雑であり、低生産性、高コストと経済的に問題もある。 【0003】 一方で、単層または二層の塗膜層から成る構成も知られており、この構成では層形成工程が少なく且つ簡略であるためコストが低く量産が容易であるが、残存反射率が高いという欠点が挙げられる。 【0004】 上記のような問題を解決するために、各種低屈折率塗膜の開発が行われてきた。そのような中で、シリカゾルは比較的低屈折率の材料であり、広い波長光透過性も優れている。さらに、シリカ微粒子を膜形成材料に用いることによって、得られる反射防止膜は微粒子間に微小な隙間を有する構造をとり、反射防止膜全体の屈折率を低下させ、その結果として優れた反射防止効果を得られることが知られている。具体的には、光硬化性のバインダにシリカ微粒子を添加したもの(特許文献1)、アルコキシシランにシリカ微粒子を添加したもの(特許文献2)などが開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】 特開2003-107206号公報 【特許文献2】 特開2007-025078号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 上述の通り、シリカ微粒子とバインダを用いて低屈折率膜を生産性よく得る方法は種々提案されているが、上述のようなシリカ微粒子を用いる場合は、微粒子間の微小な隙間を有する構造を利用して低屈折率化を実現しているために、使用するシリカの量を多量にしてしまうと、膜自体の強度が弱くなり、ひいては成膜性が悪化するという虞があった。 また、例えば上述の特許文献1の方法では、低屈折率層を有する反射防止膜が得られているものの、シリカ微粒子の使用量を抑えたときには、充分に低い屈折率を得ることは困難であった。 【0007】 このように、バインダ成分として(メタ)アクリル変性されたフッ素化合物やケイ素化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物を含む硬化性組成物においてシリカ微粒子を使用した場合、膜の強度を保ち且つ充分に満足のいく低い屈折率を発現させることは非常に難しく、さらなる低屈折率化の改善が望まれていた。 すなわち本発明は、硬化膜の強度を低下させないようなシリカ微粒子の添加量においても充分に低い屈折率を示し、また加熱を嫌う樹脂基材への適用が可能な活性エネルギー線で硬化可能な低屈折材料の提供を課題とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、硬化性成分としてラジカル重合性二重結合を有するアルコキシシラン部分加水分解縮合物を採用し、そしてシリカ微粒子に代表される無機微粒子と光重合開始剤を含む硬化性組成物が、成膜性に優れ、高い透明性と低屈折率を実現できる硬化膜を形成可能であることを見出した。 【0009】 すなわち本発明は、第1観点として、 (a)式[1]で表されるアルコキシシランAと、式[2]で表されるアルコキシシランBとを加水分解縮合させることにより得られるラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマー100質量部、 (b)無機微粒子10?1,000質量部、及び (c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤0.1?25質量部を含む、硬化性組成物に関する。 【化1】 (式中、R^(1)はラジカル重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、R^(3)はフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表し、R^(2)及びR^(4)はそれぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、aは1又は2を表し、bは0乃至2の整数を表す。) 第2観点として、前記(b)無機微粒子がシリカ微粒子である、第1観点に記載の硬化性組成物に関する。 第3観点として、前記(b)無機微粒子が、窒素吸着法(BET法)により測定された比表面積(m^(2))から、平均粒子径=(2720/比表面積)の式によって与えられる平均粒子径が1?25nmであり、動的光散乱法(DLS法)による測定により得られる平均長さが30?500nmである、細長形状のシリカ微粒子である、第2観点に記載の硬化性組成物に関する。 第4観点として、前記式[1]中のR1が、ビニル基又は(メタ)アクリル基を有する1価の有機基である、第1観点乃至第3観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。 第5観点として、前記アルコキシシランAが下記式[3]で表される化合物である、第4観点に記載の硬化性組成物に関する。 【化2】 (式中、R^(2)は前記式[1]における定義と同じ意味を表し、R^(5)は水素原子又はメチル基を表し、L^(1)は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表す。) 第6観点として、前記(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤が、アルキルフェノン化合物である、第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。 第7観点として、更に(d)パーフルオロポリエーテル化合物からなる表面改質剤0.01?50質量部を含む、第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。 第8観点として、前記(a)ラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーが、前記アルコキシシランA単位を10?99mol%含むシロキサンオリゴマーである、第1観点乃至第7観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。 第9観点として、第1観点乃至第8観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物より得られる硬化膜に関する。 第10観点として、低屈折率層を備える積層体であって、該低屈折率層が第1観点乃至第8観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物からなる層を形成する工程、該層に活性エネルギー線を照射し硬化する工程により形成されている、積層体に関する。 第11観点として、基材層の少なくとも一方側に低屈折率層を備える積層体であって、該低屈折率層が第1観点乃至第8観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物からなる層を基材層の少なくとも一方側に形成する工程、該層に活性エネルギー線を照射し硬化する工程により形成されている、積層体に関する。 【発明の効果】 【0010】 本発明の硬化性組成物は、シリカ微粒子に加えバインダ成分としてラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーを含むことにより、高い透明性と低い屈折率を有する硬化膜を形成できる。 また本発明の硬化性組成物において、上記バインダ成分であるシロキサンオリゴマーを構成するアルコキシシラン部分加水分解縮合物のアルコキシ基は、酸による加水分解によって、ガラス基板等の表面のヒドロキシ基に対して活性なシラノール基に変換される。このため、該組成物から得られる硬化膜において、基板表面と強固な化学的結合を形成可能となるため、ガラスへの密着性を付与しやすく、成膜性に優れたものとすることができる。 さらに本発明の硬化性組成物は、重合開始剤として活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤、特に特定の重合開始剤を選択することによって、窒素雰囲気下での電子線照射といった特定の硬化条件を必要とせず、通常の硬化条件、すなわち、窒素雰囲気下又は空気雰囲気下での紫外線照射においても硬化膜を形成できる。 【0011】 そして本発明の硬化性組成物は、蒸着法等で用いられる大規模な装置を使わずに、スピンコート法やディップコート法等の簡単な方法により、しかも1回の塗布と焼成により機械的強度に優れ、基材との密着性に優れた硬化膜或いは低屈折率層を得ることができる。 特に本発明は、上記硬化性組成物により得られる硬化膜の屈折率が1.35以下と低く、しかも高い透明性を有することから、プラスチックやガラス製品の表面に反射防止機能を有する硬化膜を形成でき、特に、ディスプレイやレンズ等の透明な基材の表面における反射防止機能を有する硬化膜の形成に適している。 そして本発明は、例えばITO(酸化インジウムスズ)、銀ナノワイヤ、銀メッシュ等を用いた透明電極における骨見え防止用低屈折率層の形成材料として、低反射膜や光導波路のクラッド等の光学材料として、半導体リソグラフィーにおけるペリクルやレジスト等の半導体材料として、さらには、保護膜材料、絶縁膜材料、撥水材料などの先端技術分野の用途に有効である。」 イ 「 【0043】 本発明の硬化性組成物のコーティング方法は、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等を適宜選択し得、中でも短時間で塗布できることから揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、容易に均一な塗布を行うことができるという利点より、スピンコート法を用いることが望ましい。また、簡単に塗布することができ、かつ、大面積に塗装ムラがなく平滑な塗膜を形成することができるという利点より、ロールコート法、ダイコート法、スプレーコート法を用いることが望ましい。ここで用いる硬化性組成物は、前述のワニスの形態にあるものを好適に使用できる。なお事前に孔径が2μm程度のフィルタなどを用いて硬化性組成物を濾過した後、コーティングに供することが好ましい。 【0044】 コーティング後、好ましくは続いてホットプレート又はオーブン等で予備乾燥した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して光硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線等が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が使用できる。 その後、ポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより重合及び重縮合を完結させることができる。 なお、コーティングによる膜の厚さは、乾燥、硬化後において、通常1nm?50μm、好ましくは1nm?20μmである。 【0045】 <低屈折率層を備える積層体> また本発明は、低屈折率層を備える積層体、すなわち、該低屈折率層が上記硬化性組成物からなる層を形成する工程、該層に紫外線等の活性エネルギー線を照射し硬化する工程により形成されている積層体もまた本発明の対象である。該積層体は、基材を有する形態、すなわち、基材層の少なくとも一方側に上述の低屈折率層を備える積層体であってもよい。 ここで使用する基材や塗膜方法、紫外線等のエネルギー線照射については、前述の<硬化膜>における基材、コーティング方法、紫外線照射の通りである。 好ましくは紫外線照射の後、更に焼成(ポストベーク)する工程を経ることが望ましい。焼成工程は通常50?300℃、5分間?72時間で適宜選択される。 また、前記積層体における基材は、ガラス、PETであることが好ましい。 なお、前記積層体において、低屈折率層の膜厚が1nm?50μmであることが好ましく、より好ましくは1nm?20μmである。」 ウ 「【実施例】 【0046】 以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。 なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。 【0047】 (1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC) 装置:東ソー(株)製 HLC-8220GPC カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF-804L、GPC KF-805L カラム温度:40℃ 溶媒:テトラヒドロフラン 検出器:RI (2)スピンコーター 装置:ミカサ(株)製 MS-A100 (3)ホットプレート 装置:アズワン(株)製 MH-180CS、MH-3CS (4)UV照射装置 装置:アイグラフィックス(株)製 4kW×1灯窒素パージ紫外線照射コンベア装置 (5)膜厚測定、屈折率測定 装置:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)製 多入射角分光エリプソメーター VASE(登録商標) (6)全光透過率測定、ヘーズ測定 装置:日本電色工業(株)製 ヘーズメーター NDH5000 【0048】 また、略記号は以下の意味を表す。 MPTES:3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン[信越化学工業(株) 信越シリコーン(登録商標)KBE-503] TEOS:テトラエトキシシラン[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(同)製 TSL8124] DMS1M:モノメタクリル変性ジメチルシリコーン[JNC(株)製 サイラプレーン(登録商標)FM-0711] DMSUA:反応性ポリシロキサン[日本合成化学工業(株)製 紫光(登録商標)UT-4314]DPHA:ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート[東亞合成(株)製 アロニックス(登録商標)M-403] OTEOS:テトラエトキシシラン加水分解縮合物(重量平均分子量Mw:1,700、分散度:1.4)[コルコート(株)製 エチルシリケート48] ST:プロピレングリコールモノメチルエーテル分散細長形状シリカゾル[日産化学工業(株)製 PGM-ST-UP、SiO2:15質量%、平均粒子径:12nm、平均粒子長さ:60nm] PFPE-1:両末端アクリル変性パーフルオロポリエーテル[ソルベイソレクシス(株)製 FLUOROLINK(登録商標)AD1700] PFPE-2:両末端アクリル変性パーフルオロポリエーテル[ソルベイソレクシス(株)製 FLUOROLINK(登録商標)5101X] I2959:1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン[BASFジャパン(株)製 Irgacure(登録商標)2959] EtOH:エタノール IPA:イソプロパノール PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル 【0049】 [合成例1]シロキサンオリゴマー(Si-OLG)の製造 300mLの反応フラスコに、TEOS 37.5g、MPTES 29.8g及びエタノール43.2gを仕込み、10分間撹拌した。この溶液へ、別途調製したシュウ酸[関東化学(株)製]0.32g、水18.9g及びエタノール43.2gの混合溶液を、30分間かけて滴下した。この溶液を10分間撹拌後、内液が還流するまで(およそ80℃)加熱し1時間撹拌した。反応混合物を30℃まで冷却し、Si-OLGのエタノール溶液を得た。 Si-OLGのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,200、分散度:Mw/Mnは1.1であった。 【0050】 [実施例1乃至実施例3、比較例1乃至比較例5]硬化膜の作製及び評価 [硬化膜の作製] 以下の各成分をPGME/水混合溶媒(質量比95/5)に溶解し、固形分(硬化性組成物中の溶媒成分以外の全成分)濃度3質量%の硬化性組成物を調製した。 (1)バインダー:合成例1で製造したSi-OLG、DMS1M、DMSUA、OTEOS、TEOS、MPTES及びDPHAから、表1に記載のものを表1に記載の量(固形分換算)。 (2)シリカ微粒子:STをSiO_(2)換算で表1に記載の量。 (3)表面改質剤:PFPE-1/PFPE-2の混合物(質量比8/2)を表1に記載の量。 (4)光重合開始剤:I2959を表1に記載の量。 なお、表1中の各配合量は質量部を表す。 この硬化性組成物を室温(およそ25℃)で30分間撹拌した後、予めエタノールで超音波洗浄した50×50mmのガラス基板(1.1mm厚)上にスピンコート(slope5秒間、表1に記載の回転数×30秒間、slope5秒間)し塗膜を得た。この塗膜を120℃のホットプレートで1分間乾燥した。その後、この塗膜を大気下、露光量800mJ/cm^(2)のUV光を照射することで光硬化させ、硬化膜(低屈折率膜)を作製した。 【0051】 [硬化膜の評価] 得られた硬化膜の、膜厚、成膜性、波長550nmの屈折率、全光透過率及び透明性を評価した。なお、成膜性及び透明性については、以下の要領で実施した。結果を表2に併せて示す。 成膜性:膜表面を目視で確認し以下の基準に従い評価した。 透明性:ガラス基板も含めた低屈折率膜のヘーズを測定し以下の基準に従い評価した。 [成膜性評価基準] A:膜表面に異物がなく均一な膜が形成されている。 C:膜表面に異物やムラなどが見られる。 [透明性評価基準] A:haze値<0.5 B:0.5≦haze値<1.0 C:haze値≧1.0 【0052】 【表1】 【0053】 【表2】 【0054】 表1に示すように、実施例1乃至実施例3の硬化性組成物より得られた硬化膜は成膜性と透明性に優れるとともに、1.35を下回る屈折率を実現し、低屈折率膜として有用であるとする結果を得た。また表面改質剤を配合することにより(実施例2及び実施例3)、より屈折率が低くなる傾向が得られた。 一方、比較例1の硬化膜は、実施例1乃至実施例3と比べて屈折率が高く、成膜性や透明性にも劣るとする結果となった。 比較例2の硬化膜は成膜性や透明性は実施例のものと同程度であったが、屈折率が1.35を超え高いとする結果となった。 比較例3及び比較例4の硬化膜は屈折率は非常に低いものの、成膜性に劣るとする結果を得た。 そして比較例5の硬化膜は、屈折率が高く透明性も劣るとする結果となった。」 第5 原査定の拒絶の理由についての判断 1 理由1(新規性)及び理由2(進歩性) (1)本件発明1 ア 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、その上にハードコート層用塗布組成物を塗布し、ハードコート層を形成するものであるから、「基材」として機能するものであるといえる。したがって、引用発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件発明1の「基材」に相当する。 (イ)引用発明の「ハードコート層」は、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に形成されるものである。したがって、引用発明の「ハードコート層」は、本件発明1の「ハードコート層」に相当する。 (ウ)引用文献1の記載事項イにおける「本発明は反射防止膜の表面保護層に用いられる塗布組成物に関する。」との記載や、記載事項クにおける「本発明の基材上に薄膜が塗布成膜された部材は反射防止膜として有用であり、・・・表面保護、防汚性、視認性の向上が求められる様々な分野における部材として応用することが可能である。」との記載に基づけば、引用発明の「薄膜用塗布組成物」は、硬化させることによって表面保護層を形成するものといえる。したがって、引用発明のハードコート層上に薄膜用塗布組成物を全硬化させて得られる「低屈折率層薄膜」は、本件発明1の「表面保護層」に相当する。 (エ)引用発明の「光学フィルム上に低屈折率層薄膜を成膜」して得られたものは、上記(ア)?(ウ)に基づけば、基材の一方の面に、ハードコート層と表面保護層とを順に有するものといえる。したがって、引用発明の「光学フィルム上に低屈折率層薄膜を成膜する方法」は、本件発明1の「基材の少なくとも一方の面に、ハードコート層と、表面保護層とを順に有する光学フィルムの製造方法」に相当する。 (オ)引用発明の「薄膜用塗布組成物」における「3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン」は、本件発明1の「表面保護層形成用組成物」における「金属アルコキシド」に相当する。 また、引用文献1の記載事項エに基づけば、「硝酸」及び「光塩基発生剤」は、いずれも「シリル基加水分解脱水縮合触媒」として作用するものである。そうすると、引用発明の「薄膜用塗布組成物」における「硝酸」と、本件発明1の「表面保護層形成用組成物」における「イオン性光塩基発生剤」とは、「表面保護層形成用組成物」における「シリル基加水分解脱水縮合触媒」である点で共通する。 したがって、引用発明の「ブロックコポリマー溶液、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1N-硝酸溶液、プロピレングリコールモノメチルエーテルを混合し、室温で6時間攪拌した後、さらに1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加して得た薄膜用塗布組成物」と本件発明1の「金属アルコキシド及びその加水分解物から選ばれる少なくとも1種と、イオン性光塩基発生剤とを含有する表面保護層形成用組成物」とは、「金属アルコキシド及びその加水分解物から選ばれる少なくとも1種と、シリル基加水分解脱水縮合触媒とを含有する表面保護層形成用組成物」である点で共通する。 (カ)引用発明の「該ハードコート層上に、ブロックコポリマー溶液、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1N-硝酸溶液、プロピレングリコールモノメチルエーテルを混合し、室温で6時間攪拌した後、さらに1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加して得た薄膜用塗布組成物を塗布」する工程は、本件発明1の「該表面保護層形成用組成物を前記ハードコート層上に塗布して未硬化組成物層を形成する工程」に相当する。 (キ)引用発明の、薄膜用塗布組成物を塗布し、50℃にて乾燥したものに対して「紫外線照射することによって半硬化の薄膜を形成」する工程と本件発明1の「該未硬化組成物層に光を照射して塩基を発生させる工程」とは、「該未硬化組成物層に光を照射する工程」である点で共通する。 (ク)引用発明の、薄膜用塗布組成物を塗布したものに対して「50℃にて乾燥」する工程と本件発明1の「該未硬化組成物層を加熱して前記金属アルコキシド及びその加水分解物から選ばれる少なくとも1種をゾル-ゲル反応により硬化させる工程」とは、「該未硬化組成物層を加熱する工程」である点で共通する。 (ケ)以上より、本件発明1と引用発明とは、 「基材の少なくとも一方の面に、ハードコート層と、表面保護層とを順に有する光学フィルムの製造方法であって、該表面保護層が金属アルコキシド及びその加水分解物から選ばれる少なくとも1種と、シリル基加水分解脱水縮合触媒とを含有する表面保護層形成用組成物の硬化物であり、該表面保護層形成用組成物を前記ハードコート層上に塗布して未硬化組成物層を形成する工程と、該未硬化組成物層に光を照射する工程と、該未硬化組成物層を加熱する工程とを含む、光学フィルムの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点]本件発明1は、表面保護層形成用組成物が、シリル基加水分解脱水縮合触媒としてイオン性光塩基発生剤を含有し、未硬化組成物層に光を照射する工程において塩基を発生させており、未硬化組成物層を加熱する工程において金属アルコキシド及びその加水分解物から選ばれる少なくとも1種をゾル-ゲル反応により硬化させるのに対し、引用発明は、薄膜用塗布組成物が、シリル基加水分解脱水縮合触媒として硝酸溶液を混合して得たものであり、塗布し、50℃にて乾燥した薄膜用塗布組成物に紫外線照射することによって半硬化の薄膜を形成させる点。 イ 判断 (ア)引用発明の薄膜用塗布組成物は、金属アルコキシドを含有するものである。しかしながら、引用文献1の記載事項カにおける「本発明の薄膜用塗布組成物は、塗布成膜する前に予め、加水分解脱水縮合可能なシリル基を加水分解や脱水縮合を進行させておくことが好ましい。上記ブロックコポリマーと加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマーとがシロキサン結合を形成して共有結合で繋がる。反応の条件としては、上記薄膜用塗布組成物を室温?100℃の範囲で10分間?1週間の期間攪拌することで達成できる。」という記載に基づけば、引用発明の薄膜用塗布組成物は、シリル基加水分解脱水縮合触媒である「硝酸」の存在下で「室温で6時間攪拌」して得られたものであるから、ハードコート層上に塗布される前に、加水分解や脱水縮合が進行してしまっており、その後塗布されているものと考えるのが相当である。また、引用文献1の記載事項キにおける「本発明の塗布成膜における成膜方法は、塗布を行った後、塗布組成物に含まれる溶媒を乾燥するために室温?200℃の範囲で静置、送風、マイクロ波照射などを5秒?10分間行う。」との記載も参酌すれば、引用発明の「50℃にて乾燥」する工程は、薄膜用塗布組成物に含まれる溶媒を乾燥しているに過ぎないものといえる。そうすると、たとえ、未反応の「3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン」が薄膜用塗布組成物中に残存していたとしても、未硬化組成物層を50℃にて乾燥した際に、「3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン」によって、ゾル状態からゲル状態への状態変化をもたらす程度の硬化反応が生じるとする根拠を見いだすことはできない。 したがって、上記[相違点]は実質的な相違点であるから、本件発明1が引用発明と同一の発明であるということはできない。 (イ)次に、原査定では、本件発明1に対して進歩性違反の拒絶理由は通知されていないが、念のため進歩性違反であるかも含めて、検討する。 引用文献1の記載事項エには「本発明のシリル基加水分解脱水縮合触媒は、金属キレート化合物、酸性化合物(有機酸、無機酸)、アルカリ性化合物(有機塩基、無機塩基)を挙げることができる。」、「また、光や熱によって酸や塩基を生成する化合物も用いることができる。」、「好ましい光塩基発生剤の具体例として、遷移金属錯体としては、ブロモペンタアンモニアコバルト過塩素酸塩、ブロモペンタメチルアミンコバルト過塩素酸塩、ブロモペンタプロピルアミンコバルト過塩素酸塩、ヘキサアンモニアコバルト過塩素酸塩、ヘキサメチルアミンコバルト過塩素酸塩、ヘキサプロピルアミンコバルト過塩素酸塩などがあげられる。」との記載があり、引用文献1には、シリル基加水分解脱水縮合触媒として、無機酸である硝酸の代わりに、ブロモペンタアンモニアコバルト過塩素酸塩等のイオン性光塩基発生剤を用いることが示唆されているといえる。しかし、引用文献1には、記載事項カに「本発明の薄膜用塗布組成物は、塗布成膜する前に予め、加水分解脱水縮合可能なシリル基を加水分解や脱水縮合を進行させておくことが好ましい。」と記載されており、光塩基発生剤を採用することに伴い導入されることとなる「光を照射して塩基を発生させる工程」は、「未硬化組成物層」ではなく、「塗布成膜する前」の「薄膜用塗布組成物」に対してなされるものとなるから、本件発明1の[相違点]に係る構成とは異なるものとなる。 また、引用文献1の記載事項カにおける「本発明の薄膜用塗布組成物は、後述の薄膜成膜方法における半硬化や全硬化において、加水分解脱水縮合可能なシリル基を有するビニルモノマーを重合硬化させるが、好ましくは放射線重合開始剤による重合硬化を行うために、放射線重合開始剤が添加されていることが好ましい。」、記載事項キにおける「本発明の薄膜成膜方法における半硬化は、薄膜用組成物が塗布された透明基材の塗布面に電磁波や電子線を照射することにより薄膜用塗布組成物中のビニル基を重合させる。」との記載に基づけば、引用発明の「紫外線照射することによって半硬化の薄膜を形成」する工程が、ビニル基による重合硬化を行うものであって、塩基を発生させるものではないことも明らかである。 そして、引用発明は、半硬化の薄膜を形成し、開孔剤である1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを塗布、含浸させた後、全硬化させることにより、生産性良く独立気泡を導入しようとするものであるから、半硬化及び全硬化の代わりにゾル-ゲル反応による硬化工程を採用する動機付けが存在するということはできない。 ウ むすび 以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明と同一の発明であるということはできない。また、本件発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものということはできない。 (2)本件発明2?13 本件発明2?13は、いずれも、本件発明1の、表面保護層形成用組成物が、シリル基加水分解脱水縮合触媒としてイオン性光塩基発生剤を含有し、未硬化組成物層に光を照射する工程において塩基を発生させており、未硬化組成物層を加熱する工程において金属アルコキシド及びその加水分解物から選ばれる少なくとも1種をゾル-ゲル反応により硬化させるという構成を有している。したがって、本件発明2?13も、本件発明1と同じ理由により、引用発明と同一の発明であるということはできない。また、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものということはできない。 2 理由3(拡大先願) 前記第4の3(2)の記載事項に基づけば、本願出願前の出願である特願2013-86978号には、国際公開第2014/171485号の段落[0040]?[0043]における「塩基発生剤」に関する記載はなく、国際公開第2014/171485号の段落[0060]における実施例6に関する記載もない。 そうすると、本願出願前の出願である特願2013-86978号に、原査定の理由3(拡大先願)において言及された「反射防止膜であって、金属アルコキシドである『TEOS』と『光塩基発生剤』として和光純薬工業製WPBGシリーズ(W266)を含む硬化組成物を用いガラス基板上に塗膜を得た後、加熱して重合及び縮重合を完結させる」ことを含む発明が記載されていたということができない。 よって、本件発明1?13が、引用出願3に記載された発明と同一の発明であるということはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-06-18 |
出願番号 | 特願2013-157870(P2013-157870) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02B)
P 1 8・ 16- WY (G02B) P 1 8・ 113- WY (G02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 福村 拓 |
特許庁審判長 |
中田 誠 |
特許庁審判官 |
川村 大輔 宮澤 浩 |
発明の名称 | 光学フィルムの製造方法 |
代理人 | 大谷 保 |