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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1341785
審判番号 不服2017-12020  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-10 
確定日 2018-06-28 
事件の表示 特願2016- 12413号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月17日出願公開、特開2017-140060号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月26日に出願されたものであって、同年11月30日付けで拒絶理由通知がなされ、平成29年1月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月16日付け(発送日:同年6月20日)で拒絶査定がなされ、これに対して同年8月10日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年8月10日提出の手続補正書による補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の結論]
平成29年8月10日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容について
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含む補正であり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、

補正前(平成29年1月23日提出の手続補正書による補正)の

「【請求項1】
遊技球が入賞可能に開放可能な入賞口と、
前記入賞口を開放させる開放遊技を実行可能な開放制御手段と、
所定の演出音を出力可能なスピーカーを含む所定の演出手段を用いて、所定の演出を実行可能な演出制御手段と、
を備え、
前記開放制御手段は、遊技球が前記入賞口に入賞容易な第1の開放遊技と、遊技球が前記入賞口に入賞容易な開放遊技であって前記入賞口の開放時間が前記第1の開放遊技とは異なる第2の開放遊技とを実行可能であり、
前記演出制御手段は、前記開放遊技が実行されているときに遊技球が前記入賞口に入賞することに応じて所定の入賞音を前記スピーカーから出力させることが可能であり、前記第2の開放遊技が実行されているときにおいては、遊技球が前記入賞口に入賞しても前記入賞音を前記スピーカーから出力させないことを特徴とする遊技機。」

から、

補正後(本件補正である平成29年8月10日提出の手続補正書による補正)の

「【請求項1】
遊技球が入賞可能に開放可能な入賞口と、
前記入賞口を開放させる開放遊技を実行可能な開放制御手段と、
所定の演出音を出力可能なスピーカーを含む所定の演出手段を用いて、所定の演出を実行可能な演出制御手段と、
を備え、
前記開放制御手段は、遊技球が前記入賞口に入賞容易な第1の開放遊技と、遊技球が前記入賞口に入賞容易な開放遊技であって前記入賞口の開放時間が前記第1の開放遊技とは異なる第2の開放遊技とを実行可能であり、
前記演出制御手段は、前記開放遊技が実行されているときに遊技球が前記入賞口に入賞することに応じて所定の入賞音を前記スピーカーから出力させることが可能であり、前記第2の開放遊技が実行されている状態において所定の演出が行われるとき、遊技球が前記入賞口に入賞しても前記入賞音を前記スピーカーから出力させないことを特徴とする遊技機。」

に補正がされた(当審にて、補正箇所を明示するための下線を付した。)。

2.補正の適否
上記補正は、発明を特定するために必要な事項である「演出制御手段」について、「遊技球が前記入賞口に入賞しても前記入賞音を前記スピーカーから出力させない」ときを、本件補正前の「前記第2の開放遊技が実行されているとき」から、本件補正後の「第2の開放遊技が実行されている状態において所定の演出が行われるとき」に限定する補正である。

また、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
(1)本件補正後の発明
本件補正後の本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成29年8月10日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、次のとおりのものである(AからHは、本件補正発明を分説するために当審で付した。)。

「【請求項1】

A 遊技球が入賞可能に開放可能な入賞口と、

B 前記入賞口を開放させる開放遊技を実行可能な開放制御手段と、

C 所定の演出音を出力可能なスピーカーを含む所定の演出手段を用いて、所定の演出を実行可能な演出制御手段と、
を備え、

D 前記開放制御手段は、遊技球が前記入賞口に入賞容易な第1の開放遊技と、

E 遊技球が前記入賞口に入賞容易な開放遊技であって前記入賞口の開放時間が前記第1の開放遊技とは異なる第2の開放遊技とを実行可能であり、

F 前記演出制御手段は、前記開放遊技が実行されているときに遊技球が前記入賞口に入賞することに応じて所定の入賞音を前記スピーカーから出力させることが可能であり、

G 前記第2の開放遊技が実行されている状態において所定の演出が行われるとき、遊技球が前記入賞口に入賞しても前記入賞音を前記スピーカーから出力させないことを特徴とする

H 遊技機。」

本件補正発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、すなわち特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

(2)先願明細書等及び先願発明
原査定の理由に用いられた、本願の特許出願の日前の他の出願であって、本願の出願後に出願公開がなされた特願2014-180205号(以下「先願」という。特開2016-52456号公報参照。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。)。

(記載事項)

ア 「【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施例を説明する。尚、本実施例におけるフローチャートの各ステップの説明において、例えば「ステップS1」と記載する箇所を「S1」と略記する場合がある。図1は、本実施例におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。パチンコ遊技機(遊技機)1は、大別して、遊技盤面を構成する遊技盤(ゲージ盤)2と、遊技盤2を支持固定する遊技機用枠(台枠)3とから構成されている。遊技盤2には、ガイドレールによって囲まれた、ほぼ円形状の遊技領域が形成されている。この遊技領域には、遊技媒体としての遊技球が、所定の打球発射装置から発射されて打ち込まれる。」

イ 「【0034】
普通入賞球装置6Aと普通可変入賞球装置6Bの下方には、特別可変入賞球装置7が設けられている。特別可変入賞球装置7は、図2に示す大入賞口扉用となるソレノイド82によって開閉駆動される大入賞口扉を備え、その大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する特定領域としての大入賞口を形成する。
【0035】
一例として、特別可変入賞球装置7では、大入賞口扉用のソレノイド82がオフ状態であるときに大入賞口扉が大入賞口を閉鎖状態として、遊技球が大入賞口に進入(例えば、通過)できなくなる。その一方で、特別可変入賞球装置7では、大入賞口扉用のソレノイド82がオン状態であるときに大入賞口扉が大入賞口を開放状態として、遊技球が大入賞口に進入しやすくなる。このように、特定領域としての大入賞口は、遊技球が進入しやすく遊技者にとって有利な開放状態と、遊技球が進入できず遊技者にとって不利な閉鎖状態とに変化する。尚、遊技球が大入賞口に進入できない閉鎖状態に代えて、或いは閉鎖状態の他に、遊技球が大入賞口に進入しにくい一部開放状態を設けてもよい。
【0036】
大入賞口に進入した遊技球は、例えば、図2に示すカウントスイッチ23によって検出される。カウントスイッチ23によって遊技球が検出されたことに基づき、所定個数(例えば14個)の遊技球が賞球として払い出される。こうして、特別可変入賞球装置7において開放状態となった大入賞口に遊技球が進入したときには、例えば第1始動入賞口や第2始動入賞口といった、他の入賞口に遊技球が進入したときよりも多くの賞球が払い出される。したがって、特別可変入賞球装置7において大入賞口が開放状態となれば、その大入賞口に遊技球が進入可能となり、遊技者にとって有利な第1状態となる。その一方で、特別可変入賞球装置7において大入賞口が閉鎖状態となれば、大入賞口に遊技球を進入させて賞球を得ることが不可能または困難になり、第1状態よりも遊技者にとって不利な第2状態となる。」

ウ 「【0044】
パチンコ遊技機1には、例えば、図2に示すような主基板11、演出制御基板12、音声制御基板13、ランプ制御基板14、払出制御基板37といった、各種の制御基板が搭載されている。また、パチンコ遊技機1には、主基板11と演出制御基板12との間で伝送される各種の制御信号を中継するための中継基板15なども搭載されている。その他にも、パチンコ遊技機1における遊技盤などの背面には、例えば情報端子基板、発射制御基板、インタフェース基板、タッチセンサ基板などといった、各種の基板が配置されている。また、パチンコ遊技機1には、各基板などに電力を供給する電源基板90(図3)なども搭載されている。」

エ 「【0046】
主基板11には、例えば遊技制御用マイクロコンピュータ100やスイッチ回路110、ソレノイド回路111などが搭載されている。スイッチ回路110は、遊技球検出用の各種スイッチからの検出信号(遊技媒体の通過や進入を検出したこと(スイッチがオンになったこと)を示す検出信号)を取り込んで遊技制御用マイクロコンピュータ100に伝送する。ソレノイド回路111は、遊技制御用マイクロコンピュータ100からのソレノイド駆動信号(例えば、ソレノイド81やソレノイド82をオン状態にする信号など)を、普通電動役物用のソレノイド81や大入賞口扉用のソレノイド82に伝送する。」

オ 「【0047】
演出制御基板12は、主基板11とは独立したサブ側の制御基板であり、中継基板15を介して主基板11から伝送された制御信号などを受信して、演出表示装置5、スピーカ8L,8R及び遊技効果ランプ9や装飾用LEDといった演出用の電気部品による演出動作を制御するための各種回路が搭載されている。すなわち、演出制御基板12は、演出表示装置5における表示動作や、スピーカ8L,8Rからの音声出力動作の全部または一部、遊技効果ランプ9や装飾用LEDなどにおける点灯/消灯動作の全部または一部といった、演出用の電気部品に所定の演出動作を実行させる機能を備えている。」

カ 「【0052】
主基板11に搭載された遊技制御用マイクロコンピュータ100は、例えば1チップのマイクロコンピュータであり、遊技制御用のプログラムや固定データ等を記憶するROM(Read Only Memory)101と、遊技制御用のワークエリアを提供するRAM(Random Access Memory)102と、遊技制御用のプログラムを実行して制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)103と、CPU103とは独立して乱数値を示す数値データの更新を行う乱数回路104と、I/O(Input/Output port)105とを備えて構成される。
【0053】
一例として、遊技制御用マイクロコンピュータ100では、CPU103がROM101から読み出したプログラムを実行することにより、パチンコ遊技機1における遊技の進行を制御するための処理(例えば、上記主基板11の機能を実現するための処理など。)が実行される。このときには、CPU103がROM101から固定データを読み出す固定データ読出動作や、CPU103がRAM102に各種の変動データを書き込んで一時記憶させる変動データ書込動作、CPU103がRAM102に一時記憶されている各種の変動データを読み出す変動データ読出動作、CPU103がI/O105を介して遊技制御用マイクロコンピュータ100の外部から各種信号の入力を受け付ける受信動作、CPU103がI/O105を介して遊技制御用マイクロコンピュータ100の外部へと各種信号を出力する送信動作なども行われる。」

キ 「【0061】
演出制御基板12には、プログラムに従って制御動作を行う演出制御用CPU120と、演出制御用のプログラムや固定データ等を記憶するROM121と、演出制御用CPU120のワークエリアを提供するRAM122と、演出表示装置5における表示動作を制御する処理などを実行する表示制御部123と、演出制御用CPU120とは独立して乱数値を示す数値データの更新を行う乱数回路124と、I/O125とが搭載されている。

【0071】
上記のような構成によって、演出制御用CPU120は、音声制御基板13を介してスピーカ8L,8Rを制御して前記で設定した音量の音声を出力させたり、ランプ制御基板14を介して遊技効果ランプ9や装飾用LEDなどにおける前記で設定した光量での点灯/消灯駆動を行わせたり、表示制御部123を介して演出表示装置5の表示領域に演出画像を表示させたりして、各種の演出を実行する。また、演出制御用CPU120は、演出の実行時などに、トリガセンサ35A、プッシュセンサ35B、傾倒方向センサユニット32からの信号に基づいた演出(つまり、スティックコントローラ30への操作、プッシュボタン31Bへの操作などに応答した演出)を行うことが可能になっている。」

ク 「【0084】
大当り遊技状態では、大入賞口が開放状態となって特別可変入賞球装置7が遊技者にとって有利な第1状態となる。そして、所定期間(例えば29秒間)或いは所定個数(例えば10個)の遊技球が大入賞口に進入して入賞球が発生するまでの期間にて、大入賞口を継続して開放状態とするラウンド遊技(単に「ラウンド」ともいう)が実行される。こうしたラウンド遊技の実行期間以外の期間では、大入賞口が閉鎖状態となり、入賞球が発生困難または発生不可能となる。大入賞口に遊技球が進入したときには、カウントスイッチ23により入賞球(大入賞口に進入した遊技球)が検出され、その検出ごとに所定個数(例えば14個)の遊技球が賞球として払い出される。大当り遊技状態におけるラウンド遊技は、所定の上限回数(例えば「15」)に達するまで繰返し実行される。尚、本実施例では、大入賞口が本発明における遊技媒体が進入可能な「所定領域」に対応している。」

ケ 「【0100】
主基板11では、所定の電源基板からの電力供給が開始されると、遊技制御用マイクロコンピュータ100が起動し、CPU103によって遊技制御メイン処理となる所定の処理が実行される。遊技制御メイン処理を開始すると、CPU103は、割込み禁止に設定した後、必要な初期設定を行う。この初期設定では、例えばRAM102がクリアされる。RAM102のクリアは、例えば、電源投入時に、パチンコ遊技機1に設けられた図示しないクリアスイッチなどの初期化用操作手段が操作されたことなどによって行われる。この操作は、例えば、遊技店の営業時間外に行われる。また、遊技制御用マイクロコンピュータ100に内蔵されたCTC(カウンタ/タイマ回路)のレジスタ設定を行う。これにより、以後、所定時間(例えば、2ミリ秒)ごとにCTCから割込み要求信号がCPU103へ送出され、CPU103は定期的にタイマ割込み処理を実行することができる。初期設定が終了すると、割込みを許可した後、ループ処理に入る。尚、遊技制御メイン処理では、パチンコ遊技機1の内部状態を前回の電力供給停止時(停電などによる電断時)における状態に復帰させるための処理を実行してから、ループ処理に入るようにしてもよい(例えば、クリアスイッチが押されずに電源が投入(オン)された時にRAM102に所定のデータが記憶されるなどしている状態のとき(例えば電断のときなど))。
【0101】
このような遊技制御メイン処理を実行したCPU103は、CTCからの割込み要求信号を受信して割込み要求を受け付けると、割込み禁止状態に設定して、所定の遊技制御用タイマ割込み処理を実行する。
【0102】
CPU103は、遊技制御用タイマ割込処理において、例えば、スイッチ処理を行い、メイン側エラー処理を行い、情報出力処理を行い、その後、遊技用乱数更新処理、特別図柄プロセス処理、普通図柄プロセス処理、コマンド制御処理といった、パチンコ遊技機1における遊技の進行などを制御するための処理が含まれている。尚、遊技制御用タイマ割込処理の終了時には、割込み許可状態に設定される。これによって、遊技制御用タイマ割込み処理は、タイマ割込みが発生するごと、つまり、割込み要求信号の供給間隔である所定時間(例えば、2ミリ秒)ごとに実行されることになる。

【0107】
特別図柄プロセス処理では、RAM102に設けられた特図プロセスフラグの値をパチンコ遊技機1における遊技の進行状況に応じて更新し、特図ゲームにおける特別図柄などの変動表示結果を「大当り」として大当り遊技状態に制御するか否かなどの決定や変動パターンの決定、当該決定結果に基づく第1特別図柄表示器4Aまたは第2特別図柄表示器4Bにおける表示動作の制御(特図ゲームの実行)、大当り遊技状態の特別可変入賞球装置7における大入賞口の開閉動作設定(ラウンド遊技や短期開放制御の実行)などを、所定の手順で行うために、各種の処理が選択されて実行される。特別図柄プロセス処理の詳細は後述するが、タイマ割込みの発生毎に特別図柄プロセス処理が実行されることによって、変動表示結果や変動パターンの決定、当該決定に基づく特図ゲームの実行、大当り遊技状態などが実現される。」

コ 「【0141】
タイマ割込が発生すると、CPU103は、図8に示すS20?S34のタイマ割込処理を実行する。タイマ割込処理において、まず、電源断信号が出力されたか否か(オン状態になったか否か)を検出する電源断検出処理を実行する(S20)。電源断信号は、例えば電源基板に搭載されている電源監視回路が、遊技機に供給される電源の電圧の低下を検出した場合に出力する。そして、電源断検出処理において、CPU103は、電源断信号が出力されたことを検出したら、必要なデータをバックアップRAM領域に保存するための電力供給停止時処理を実行する。次いで、スイッチ回路110を介して、ゲートスイッチ21、第1始動口スイッチ22A、第2始動口スイッチ22Bおよびカウントスイッチ23の検出信号を入力し、それらの状態判定を行い、カウントスイッチ23の検出信号の入力があった場合には、大入賞口入賞指定コマンドの送信設定を行う(スイッチ処理:S21)。

【0144】
さらに、CPU103は、特別図柄プロセス処理を行う(S26)。特別図柄プロセス処理では、第1特別図柄表示器4A、第2特別図柄表示器4Bおよび大入賞口を所定の順序で制御するための特別図柄プロセスフラグに従って該当する処理を実行する。CPU103は、特別図柄プロセスフラグの値を、遊技状態に応じて更新する。」

サ 「【0157】
次に、特別図柄プロセス処理について説明する。図9は、特別図柄プロセス処理の一例を示すフローチャートである。この特別図柄プロセス処理において、CPU103は、まず、始動入賞判定処理を実行する(S101)。
【0158】
S101にて始動入賞判定処理を実行した後、CPU103は、RAM102の所定領域(遊技制御フラグ設定部など)に設けられた特図プロセスフラグの値に応じて、S110?S117の処理のいずれかを選択して実行する。
【0159】
図9のS110の特別図柄通常処理は、特図プロセスフラグの値が“0”のときに実行される。この特別図柄通常処理では、第1特図保留記憶部や第2特図保留記憶部といった、RAM102の所定領域に記憶されている保留データの有無などに基づいて、第1特別図柄表示器4Aや第2特別図柄表示器4Bによる特図ゲームを開始するか否かの判定が行われる。また、特別図柄通常処理では、特図表示結果決定用の乱数値MR1を示す数値データに基づき、特別図柄や演出図柄の変動表示結果を「大当り」とするか否かを、その変動表示結果が導出表示される以前に決定(事前決定)する。このとき、変動表示結果が「大当り」に決定された場合には、大当り種別を「非確変」、「確変」といった複数種別のいずれかに決定する。大当り種別の決定結果を示すデータがRAM102の所定領域(例えば遊技制御バッファ設定部)に設けられた大当り種別バッファに格納されることにより、大当り種別が記憶される。さらに、特別図柄通常処理では、特図ゲームにおける特別図柄の変動表示結果に対応して、第1特別図柄表示器4Aや第2特別図柄表示器4Bによる特図ゲームにおける確定特別図柄(大当り図柄、ハズレ図柄)が設定される。特別図柄通常処理では、特別図柄や演出図柄の変動表示結果を事前決定したときに、特図プロセスフラグの値が“1”に更新される。

【0176】
図9のS111の変動パターン設定処理は、特図プロセスフラグの値が“1”のときに実行される。この変動パターン設定処理には、変動表示結果を「大当り」とするか否かの事前決定結果などに基づいて、変動パターンを複数種類のいずれかに決定する処理などが含まれている。変動パターンは、演出図柄の変動表示の内容(変動表示態様)を指定するものであるので、この決定によって、演出図柄の変動表示の内容が決定される。特別図柄や演出図柄の変動表示時間は、変動パターンに対応して予め設定されている。したがって、変動パターン設定処理にて変動パターンを決定することにより、特別図柄の変動表示を開始してから変動表示結果となる確定特別図柄を導出するまでの変動表示時間(特図変動時間)が決定される。さらに、変動パターン設定処理は、第1特別図柄表示器4Aまたは第2特別図柄表示器4Bにおいて特別図柄の変動を開始させるための設定を行う処理を含んでもよい。変動パターン設定処理が実行されたときには、特図プロセスフラグの値が特別図柄変動処理に対応した値である“2”に更新される。
【0177】
図9のS112の特別図柄変動処理は、特図プロセスフラグの値が“2”のときに実行される。この特別図柄変動処理には、遊技制御プロセスタイマのタイマ値を1減算する処理などが含まれている。そして、遊技制御プロセスタイマのタイマ値(1減算したあとのタイマ値)が0でないときには、特図変動時間が経過していないので、特図ゲームの変動表示を実行するための制御(例えば、第1特図や第2特図の表示を更新(所定時間特別図柄の表示を維持させるための更新を適宜含む。以下同じ。)させる駆動信号を送信する制御)などを行って第1特別図柄表示器4Aまたは第2特別図柄表示器4Bにおいて特別図柄を変動させるための処理を行い、特別図柄変動処理を終了する。一方で、遊技制御プロセスタイマのタイマ値が0になり、特別図柄の変動を開始してからの経過時間が特図変動時間に達したときには、第1特別図柄表示器4Aまたは第2特別図柄表示器4Bにて特別図柄の変動を停止させ、特別図柄の変動表示結果となる確定特別図柄(S110で設定された確定特別図柄)を停止表示(導出表示)させ(確定特別図柄は、所定時間表示し続けるように制御するとよい。)、また、停止表示されるときに図柄確定指定コマンドの送信設定も行い、特図プロセスフラグの値が特別図柄停止処理に対応した値である“3”に更新される。タイマ割込みの発生毎にS112が繰り返し実行されることによって、特別図柄の変動表示や確定特別図柄の導出表示などが実現される。
【0178】
図9のS113の特別図柄停止処理は、特図プロセスフラグの値が“3”のときに実行される。図13は、特別図柄停止処理として、S113にて実行される処理の一例を示すフローチャートである。

【0186】
図9のS114の大当り開放前処理は、特図プロセスフラグの値が“4”のときに実行される。この大当り開放前処理では、例えば、遊技制御プロセスタイマのタイマ値を1減算する。減算後のタイマ値が「0」でない場合には、ファンファーレ待ち時間がまだ経過していないことになるので、大当り開放前処理は終了する。減算後のタイマ値が「0」である場合には、ファンファーレ待ち時間が経過し、ラウンド遊技の開始タイミングになったことになる。この場合には、大当り遊技状態においてラウンド遊技の実行を開始して大入賞口を開放状態とする処理(例えば、ソレノイド駆動信号を大入賞口扉用のソレノイド82に伝送する処理)、大入賞口を開放状態とする期間の上限(ここでは29秒)に対応するタイマ値を遊技制御プロセスタイマに設定する処理などが実行される。大入賞口を開放状態とする処理などが実行されたときには、特図プロセスフラグの値が大当り開放中処理に対応した値である“5”に更新される。タイマ割込みの発生毎にS114が繰り返し行われることによって、ラウンド遊技の開始タイミングまでの待機(ファンファーレの終了までの待機)及び大入賞口の開放などが実現される。
【0187】
図9のS115の大当り開放中処理は、特図プロセスフラグの値が“5”のときに実行される。この大当り開放中処理には、遊技制御プロセスタイマのタイマ値を1減算する処理や、1減算したあとのタイマ値や、1回のラウンド遊技においてカウントスイッチ23によって検出された遊技球の個数(スイッチ処理でカウントスイッチ23がオン状態と判定される毎に1カウントするカウンタ(RAM102に設けられる。)などによってカウントされればよい。)などに基づいて、大入賞口を開放状態から閉鎖状態(または一部開放状態であってもよい。)に戻すタイミングとなったか否かを判定する処理などが含まれる。
【0188】
1減算したあとのタイマ値が0になった、または、検出された遊技球の個数(前記カウンタのカウント値)が所定個数(例えば10個)に達したと判定したときには、大入賞口を閉鎖するタイミングになったので、大入賞口を閉鎖状態に戻す処理(例えば、ソレノイド駆動信号を大入賞口扉用のソレノイド82に伝送することを停止してソレノイド82をオフとする処理)や、大入賞口の閉鎖期間(ラウンド遊技のインターバル期間であり、予め設定されている期間)に対応するタイマ値を遊技制御プロセスタイマに設定する処理や、ラウンド数カウンタのカウント値を1減じる処理などが実行される。1減算したあとのタイマ値が0になってもなく、検出された遊技球の個数も所定個数に達していない場合には、大入賞口の開放状態に維持する処理(例えば、ソレノイド駆動信号の供給を継続する処理)などを行って、大当り開放中処理を終了する。大入賞口を閉鎖状態に戻したときには、特図プロセスフラグの値が大当り開放後処理に対応した値である“6”に更新される。タイマ割込みの発生毎にS115が繰り返し行われることによって、大入賞口を開放状態から閉鎖状態に戻すタイミングまで大入賞口の開放状態が維持されることになる。
【0189】
図9のS116の大当り開放後処理は、特図プロセスフラグの値が“6”のときに実行される。この大当り開放後処理では、ラウンド数カウンタのカウント値が「0」になったか否かを判定する処理や、「0」になっていない場合に遊技制御プロセスタイマのタイマ値を1減じる処理などが行われる。

【0192】
タイマ割込みの発生ごとにS114で大入賞口が開放されてからS115,S116が繰り返し実行されることによって、各ラウンド遊技が実現される。尚、本実施例では、ラウンド数カウンタに初期値として「15」が設定されるので、15回のラウンド遊技が実行される。

【0195】
図9のS117の大当り終了処理は、特図プロセスフラグの値が“7”のときに実行される。図14は、大当り終了処理として、S117にて実行される処理の一例を示すフローチャートである。」

シ 「【0241】
本実施例では、ラウンド遊技中に大入賞口に遊技球が入賞(進入)することに応じて、スピーカ8L,8Rから演出音(入賞音)が出力され、遊技者に大入賞口に遊技球が入賞したことを報知するようにしている。尚、1回のラウンド遊技において、予め決められた所定個数(例えば10個)以内の遊技球の入賞(通常入賞)を報知する演出音を通常入賞音と称する。また、1回のラウンド遊技において、予め決められた所定個数(例えば10個)より多い遊技球の入賞(オーバー入賞)を報知する演出音をオーバー入賞音と称する。更に、通常入賞音及びオーバー入賞音を入賞音と称する場合がある。尚、本実施例における入賞音は、スピーカ8L,8Rから短期間(例えば0.5秒)出力される効果音(報知)となっている。」

ス 「【0275】
尚、大当り図柄とは異なる所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示されるようにしても良く、これら所定表示結果としての所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示される場合には、大当り遊技状態とは異なる特殊遊技状態としての小当り遊技状態に制御すれば良い。また、小当りが発生したときの遊技状態を、小当りの発生前の遊技状態と同じ状態にして、遊技状態が小当りの発生によって変わらないようにしても良い。

【0277】
尚、小当り図柄(例えば「2」の数字)を停止表示する場合にあっては、これら小当り図柄が確定特別図柄として導出された後に、特殊遊技状態としての小当り遊技状態に制御すれば良い。具体的に小当り遊技状態では、例えば、上記した、実質的には出玉(賞球)が得られない短期開放大当り状態と同様に特別可変入賞球装置7において大入賞口を遊技者にとって有利な第1状態(開放状態)に変化させる可変入賞動作を実行すれば良い。尚、この小当りにより大入賞口が開放されて遊技球が入賞しても前述の入賞音が出力されないように制御しても良い。また、小当り時に大入賞口にオーバー入賞があったときに、大当り時に大入賞口にオーバー入賞があったときと同様に、オーバー入賞音を出力するようにしても良い。」

セ 【図1】から、「パチンコ遊技機1に特別可変入賞球装置7が設けられている」こと、及び「パチンコ遊技機1の遊技機用枠3の左右上部位置にスピーカ8L、8Rが設けられている」ことが把握される。

(認定事項)
さらに、上記記載事項アからセから、以下の事項が認定できる。

上記アの【0020】には「図1は、本実施例におけるパチンコ遊技機の正面図であり…」と記載され、上記イの【0034】には「…特別可変入賞球装置7が設けられている。特別可変入賞球装置7は…大入賞口扉用となるソレノイド82によって開閉駆動される大入賞口扉を備え、その大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する特定領域としての大入賞口を形成する。」と記載され、上記イの【0035】には「…大入賞口扉用のソレノイド82がオン状態であるときに大入賞口扉が大入賞口を開放状態として、遊技球が大入賞口に進入しやすくなる。このように、特定領域としての大入賞口は、遊技球が進入しやすく遊技者にとって有利な開放状態…に変化する。」と記載され、上記イの【0036】には、「…特別可変入賞球装置7において開放状態となった大入賞口に遊技球が進入したときには、例えば第1始動入賞口や第2始動入賞口といった、他の入賞口に遊技球が進入したときよりも多くの賞球が払い出される。」と記載され、上記セには、「パチンコ遊技機1に特別可変入賞球装置7が設けられている」ことが記載されていることから、先願明細書等には、

ソ パチンコ遊技機1に、大入賞口扉用となるソレノイド82によって開閉駆動される大入賞口扉を備える特別可変入賞球装置7が設けられ、その大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する特定領域としての大入賞口が形成され、
大入賞口扉用のソレノイド82がオン状態であるときに大入賞口扉が大入賞口を開放状態として、遊技球が大入賞口に進入しやすく、遊技者にとって有利な開放状態に変化し、開放状態となった大入賞口に遊技球が進入したときには、例えば第1始動入賞口や第2始動入賞口といった、他の入賞口に遊技球が進入したときよりも多くの賞球が払い出される

ことが記載されているといえる。

上記ウの【0044】には、「パチンコ遊技機1には、…主基板11…といった、各種の制御基板が搭載されている。」と記載され、エの【0046】には、「主基板11には、例えば遊技制御用マイクロコンピュータ100…が搭載されている。」及び「…遊技制御用マイクロコンピュータ100からのソレノイド駆動信号(例えば、…ソレノイド82をオン状態にする信号など)を…大入賞口扉用のソレノイド82に伝送する。」と記載され、上記カの【0052】には、「主基板11に搭載された遊技制御用マイクロコンピュータ100は…遊技制御用のプログラムや固定データ等を記憶するROM(Read Only Memory)101と…遊技制御用のプログラムを実行して制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)103と…I/O(Input/Output port)105とを備えて構成される。」と記載され、上記カの【0053】には、「…遊技制御用マイクロコンピュータ100では、CPU103がROM101から読み出したプログラムを実行することにより、パチンコ遊技機1における遊技の進行を制御するための処理…が実行される。」及び「…CPU103がI/O105を介して遊技制御用マイクロコンピュータ100の外部へと各種信号を出力する送信動作なども行われる。」と記載されていることから、先願明細書等には、

タ パチンコ遊技機1には、遊技制御用のプログラムや固定データ等を記憶するROM(Read Only Memory)101と、遊技制御用のプログラムを実行して制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)103と、I/O(Input/Output port)105とを備えて構成される遊技制御用マイクロコンピュータ100が搭載されている主基板11が搭載され、
遊技制御用マイクロコンピュータ100では、CPU103がROM101から読み出したプログラムを実行することにより、パチンコ遊技機1における遊技の進行を制御するための処理が実行され、CPU103がI/O105を介して遊技制御用マイクロコンピュータ100の外部へと各種信号を出力する送信動作なども行われ、遊技制御用マイクロコンピュータ100からのソレノイド駆動信号(例えば、ソレノイド82をオン状態にする信号など)が、大入賞口扉用のソレノイド82に伝送される

ことが記載されているといえる。

上記ウの【0044】には、「パチンコ遊技機1には…演出制御基板12…といった、各種の制御基板が搭載されている。」と記載され、上記オの【0047】には、「演出制御基板12は…演出表示装置5、スピーカ8L,8R及び遊技効果ランプ9や装飾用LEDといった演出用の電気部品による演出動作を制御するための各種回路が搭載されている。」と記載され、上記キの【0061】には、「演出制御基板12には、プログラムに従って制御動作を行う演出制御用CPU120…が搭載されている。」と記載され、上記キの【0071】には、「…演出制御用CPU120は、音声制御基板13を介してスピーカ8L,8Rを制御して前記で設定した音量の音声を出力させたり、ランプ制御基板14を介して遊技効果ランプ9や装飾用LEDなどにおける前記で設定した光量での点灯/消灯駆動を行わせたり、表示制御部123を介して演出表示装置5の表示領域に演出画像を表示させたりして、各種の演出を実行する。」と記載されていることから、先願明細書等には、

チ パチンコ遊技機1には、プログラムに従って制御動作を行う演出制御用CPU120が搭載されている演出制御基板12が搭載され、
演出制御用CPU120は、音声制御基板13を介してスピーカ8L,8Rを制御して設定した音量の音声を出力させたり、ランプ制御基板14を介して遊技効果ランプ9や装飾用LEDなどにおける設定した光量での点灯/消灯駆動を行わせたり、表示制御部123を介して演出表示装置5の表示領域に演出画像を表示させたりして、各種の演出を実行する

ことが記載されているといえる。

上記ケの【0100】には、「…CPU103によって遊技制御メイン処理となる所定の処理が実行される。」及び「遊技制御用マイクロコンピュータ100に内蔵されたCTC(カウンタ/タイマ回路)のレジスタ設定を行う。これにより、以後、所定時間(例えば、2ミリ秒)ごとにCTCから割込み要求信号がCPU103へ送出され、CPU103は定期的にタイマ割込み処理を実行することができる。」と記載され、上記ケの【0101】には、「遊技制御メイン処理を実行したCPU103は、CTCからの割込み要求信号を受信して割込み要求を受け付けると…所定の遊技制御用タイマ割込み処理を実行する。」と記載され、上記ケの【0102】には、「CPU103は、遊技制御用タイマ割込処理において…特別図柄プロセス処理…といった、パチンコ遊技機1における遊技の進行などを制御するための処理が含まれている。」と記載され、上記ケの【0107】には、「特別図柄プロセス処理では…大当り遊技状態の特別可変入賞球装置7における大入賞口の開閉動作設定(ラウンド遊技や短期開放制御の実行)などを、所定の手順で行うために、各種の処理が選択されて実行される。…タイマ割込みの発生毎に特別図柄プロセス処理が実行されることによって…大当り遊技状態などが実現される。」と記載され、上記コの【0141】には、「タイマ割込が発生すると、CPU103は…S20?S34のタイマ割込処理を実行する。」と記載され、上記コの【0144】には、「…CPU103は、特別図柄プロセス処理を行う(S26)。特別図柄プロセス処理では、第1特別図柄表示器4A、第2特別図柄表示器4Bおよび大入賞口を所定の順序で制御するための特別図柄プロセスフラグに従って該当する処理を実行する。」と記載され、上記サの【0157】には、「この特別図柄プロセス処理において、CPU103は、まず、始動入賞判定処理を実行する(S101)。」と記載され、上記サの【0158】には、「S101にて始動入賞判定処理を実行した後、CPU103は…特図プロセスフラグの値に応じて、S110?S117の処理のいずれかを選択して実行する。」と記載され、上記サの【0159】には、「S110の特別図柄通常処理」と記載され、上記サの【0176】には、「S111の変動パターン設定処理」と記載され、上記サの【0177】には、「S112の特別図柄変動処理」と記載され、上記サの【0178】には、「S113の特別図柄停止処理」と記載され、上記サの【0186】には、「…S114の大当り開放前処理」、「…ラウンド遊技の開始タイミングになったことになる。この場合には、大当り遊技状態においてラウンド遊技の実行を開始して大入賞口を開放状態とする処理(例えば、ソレノイド駆動信号を大入賞口扉用のソレノイド82に伝送する処理)、大入賞口を開放状態とする期間の上限(ここでは29秒)に対応するタイマ値を遊技制御プロセスタイマに設定する処理などが実行される。」及び「タイマ割込みの発生毎にS114が繰り返し行われることによって…大入賞口の開放などが実現される。」と記載され、上記サの【0187】には、「…S115の大当り開放中処理」及び「この大当り開放中処理には、遊技制御プロセスタイマのタイマ値を1減算する処理や、1減算したあとのタイマ値や、1回のラウンド遊技においてカウントスイッチ23によって検出された遊技球の個数(スイッチ処理でカウントスイッチ23がオン状態と判定される毎に1カウントするカウンタ(RAM102に設けられる。)などによってカウントされればよい。)などに基づいて、大入賞口を開放状態から閉鎖状態(または一部開放状態であってもよい。)に戻すタイミングとなったか否かを判定する処理などが含まれる。」と記載され、上記サの【0188】には、「1減算したあとのタイマ値が0になった、または、検出された遊技球の個数(前記カウンタのカウント値)が所定個数(例えば10個)に達したと判定したときには、大入賞口を閉鎖するタイミングになったので、大入賞口を閉鎖状態に戻す処理(例えば、ソレノイド駆動信号を大入賞口扉用のソレノイド82に伝送することを停止してソレノイド82をオフとする処理)…などが実行される。1減算したあとのタイマ値が0になってもなく、検出された遊技球の個数も所定個数に達していない場合には、大入賞口の開放状態に維持する処理(例えば、ソレノイド駆動信号の供給を継続する処理)などを行って…タイマ割込みの発生毎にS115が繰り返し行われることによって、大入賞口を開放状態から閉鎖状態に戻すタイミングまで大入賞口の開放状態が維持される…」と記載され、上記サの【0189】には、「S116の大当り開放後処理」と記載され、上記サの【0192】には、「タイマ割込みの発生ごとにS114で大入賞口が開放されてからS115,S116が繰り返し実行されることによって、各ラウンド遊技が実現される。」と記載され、上記サの【0195】には、「S117の大当り終了処理」と記載されていることから、先願明細書等には、

ツ 遊技制御用マイクロコンピュータ100では、遊技制御メイン処理を実行したCPU103は、遊技制御用マイクロコンピュータ100に内蔵されたCTC(カウンタ/タイマ回路)からの割込み要求信号を受信して割込み要求を受け付けると、S20?S34のタイマ割込処理を実行し、
特別図柄プロセス処理(S26)では、大当り遊技状態の特別可変入賞球装置7における大入賞口の開閉動作設定(ラウンド遊技や短期開放制御の実行)などを、所定の手順で行うために、まず、始動入賞判定処理(S101)を実行した後、第1特別図柄表示器4A、第2特別図柄表示器4Bおよび大入賞口を所定の順序で制御するための特別図柄プロセスフラグに従って、S110の特別図柄通常処理、S111の変動パターン設定処理、S112の特別図柄変動処理、S113の特別図柄停止処理、S114の大当り開放前処理、S115の大当り開放中処理、S116の大当たり開放後処理、及びS117の大当り終了処理の該当する処理が選択されて実行され、タイマ割込みの発生毎に特別図柄プロセス処理が実行されることによって、大当り遊技状態が実現され、
S114の大当り開放前処理では、ラウンド遊技の開始タイミングになった場合には、大当り遊技状態においてラウンド遊技の実行を開始して大入賞口を開放状態とする処理(例えば、ソレノイド駆動信号を大入賞口扉用のソレノイド82に伝送する処理)、大入賞口を開放状態とする期間の上限(ここでは29秒)に対応するタイマ値を遊技制御プロセスタイマに設定する処理などが実行され、
S115の大当り開放中処理には、遊技制御プロセスタイマのタイマ値を1減算する処理や、1減算したあとのタイマ値や、1回のラウンド遊技においてカウントスイッチ23によって検出された遊技球の個数などに基づいて、大入賞口を開放状態から閉鎖状態に戻すタイミングとなったか否かを判定する処理などが含まれ、1減算したあとのタイマ値が0になった、または、検出された遊技球の個数(前記カウンタのカウント値)が所定個数(例えば10個)に達したと判定したときには、大入賞口を閉鎖するタイミングになったので、大入賞口を閉鎖状態に戻す処理(例えば、ソレノイド駆動信号を大入賞口扉用のソレノイド82に伝送することを停止してソレノイド82をオフとする処理)などが実行され、1減算したあとのタイマ値が0になってもなく、検出された遊技球の個数も所定個数に達していない場合には、大入賞口の開放状態に維持する処理(例えば、ソレノイド駆動信号の供給を継続する処理)などを行い、タイマ割込みの発生毎にS115が繰り返し行われることによって、大入賞口を開放状態から閉鎖状態に戻すタイミングまで大入賞口の開放状態が維持され、
タイマ割込みの発生ごとにS114で大入賞口が開放されてからS115,S116の大当たり開放後処理が繰り返し実行されることによって、各ラウンド遊技が実現される

上記スの【0275】には、「大当り図柄とは異なる所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示されるようにしても良く、これら所定表示結果としての所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示される場合には、大当り遊技状態とは異なる特殊遊技状態としての小当り遊技状態に制御すれば良い」と記載され、上記スの【0277】には、「具体的に小当り遊技状態では、例えば、上記した、実質的には出玉(賞球)が得られない短期開放大当り状態と同様に特別可変入賞球装置7において大入賞口を遊技者にとって有利な第1状態(開放状態)に変化させる可変入賞動作を実行すれば良い。尚、この小当りにより大入賞口が開放されて遊技球が入賞しても前述の入賞音が出力されないように制御しても良い」と記載されていることから、先願明細書等には、

テ 大当り図柄とは異なる所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示されるようにして、これら所定表示結果としての所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示される場合には、大当り遊技状態とは異なる特殊遊技状態としての小当り遊技状態に制御し、具体的に小当り遊技状態では、実質的には出玉(賞球)が得られない短期開放大当り状態と同様に特別可変入賞球装置7において大入賞口を遊技者にとって有利な第1状態(開放状態)に変化させる可変入賞動作を実行し、
この小当りにより大入賞口が開放されて遊技球が入賞しても前述の入賞音が出力されないように制御する

ことが記載されているといえる。

上記の記載事項アからセ、及び上記認定事項ソからテから、先願明細書等には、

「a 大入賞口扉用となるソレノイド82によって開閉駆動される大入賞口扉を備える特別可変入賞球装置7が設けられ、その大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する特定領域としての大入賞口が形成され、
大入賞口扉用のソレノイド82がオン状態であるときに大入賞口扉が大入賞口を開放状態として、遊技球が大入賞口に進入しやすく、遊技者にとって有利な開放状態に変化し、開放状態となった大入賞口に遊技球が進入したときには、例えば第1始動入賞口や第2始動入賞口といった、他の入賞口に遊技球が進入したときよりも多くの賞球が払い出され、 (上記認定事項ソ)

b 遊技制御用のプログラムや固定データ等を記憶するROM(Read Only Memory)101と、遊技制御用のプログラムを実行して制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)103と、I/O(Input/Output port)105とを備えて構成される遊技制御用マイクロコンピュータ100が搭載されている主基板11が搭載され、
遊技制御用マイクロコンピュータ100では、CPU103がROM101から読み出したプログラムを実行することにより、パチンコ遊技機1における遊技の進行を制御するための処理が実行され、CPU103がI/O105を介して遊技制御用マイクロコンピュータ100の外部へと各種信号を出力する送信動作なども行われ、遊技制御用マイクロコンピュータ100からのソレノイド駆動信号(例えば、ソレノイド82をオン状態にする信号など)が、大入賞口扉用のソレノイド82に伝送され、 (上記認定事項タ)
遊技制御用マイクロコンピュータ100では、遊技制御メイン処理を実行したCPU103は、遊技制御用マイクロコンピュータ100に内蔵されたCTC(カウンタ/タイマ回路)からの割込み要求信号を受信して割込み要求を受け付けると、S20?S34のタイマ割込処理を実行し、
特別図柄プロセス処理(S26)では、大当り遊技状態の特別可変入賞球装置7における大入賞口の開閉動作設定(ラウンド遊技や短期開放制御の実行)などを、所定の手順で行うために、まず、始動入賞判定処理(S101)を実行した後、第1特別図柄表示器4A、第2特別図柄表示器4Bおよび大入賞口を所定の順序で制御するための特別図柄プロセスフラグに従って、S110の特別図柄通常処理、S111の変動パターン設定処理、S112の特別図柄変動処理、S113の特別図柄停止処理、S114の大当り開放前処理、S115の大当り開放中処理、S116の大当たり開放後処理、及びS117の大当り終了処理の該当する処理が選択されて実行され、タイマ割込みの発生毎に特別図柄プロセス処理が実行されることによって、大当り遊技状態が実現され、
S114の大当り開放前処理では、ラウンド遊技の開始タイミングになった場合には、大当り遊技状態においてラウンド遊技の実行を開始して大入賞口を開放状態とする処理(例えば、ソレノイド駆動信号を大入賞口扉用のソレノイド82に伝送する処理)、大入賞口を開放状態とする期間の上限(ここでは29秒)に対応するタイマ値を遊技制御プロセスタイマに設定する処理などが実行され、
S115の大当り開放中処理には、遊技制御プロセスタイマのタイマ値を1減算する処理や、1減算したあとのタイマ値や、1回のラウンド遊技においてカウントスイッチ23によって検出された遊技球の個数などに基づいて、大入賞口を開放状態から閉鎖状態に戻すタイミングとなったか否かを判定する処理などが含まれ、1減算したあとのタイマ値が0になった、または、検出された遊技球の個数(前記カウンタのカウント値)が所定個数(例えば10個)に達したと判定したときには、大入賞口を閉鎖するタイミングになったので、大入賞口を閉鎖状態に戻す処理(例えば、ソレノイド駆動信号を大入賞口扉用のソレノイド82に伝送することを停止してソレノイド82をオフとする処理)などが実行され、1減算したあとのタイマ値が0になってもなく、検出された遊技球の個数も所定個数に達していない場合には、大入賞口の開放状態に維持する処理(例えば、ソレノイド駆動信号の供給を継続する処理)などを行い、タイマ割込みの発生毎にS115が繰り返し行われることによって、大入賞口を開放状態から閉鎖状態に戻すタイミングまで大入賞口の開放状態が維持され、
タイマ割込みの発生ごとにS114で大入賞口が開放されてからS115,S116の大当たり開放後処理が繰り返し実行されることによって、各ラウンド遊技が実現され、 (上記認定事項ツ)

c プログラムに従って制御動作を行う演出制御用CPU120が搭載されている演出制御基板12が搭載され、
演出制御用CPU120は、音声制御基板13を介してスピーカ8L,8Rを制御して設定した音量の音声を出力させたり、ランプ制御基板14を介して遊技効果ランプ9や装飾用LEDなどにおける設定した光量での点灯/消灯駆動を行わせたり、表示制御部123を介して演出表示装置5の表示領域に演出画像を表示させたりして、各種の演出を実行し、 (上記記載事項セ及び認定事項チ)

d 大当り遊技状態では、大入賞口が開放状態となって特別可変入賞球装置7が遊技者にとって有利な第1状態となり、所定期間(例えば29秒間)或いは所定個数(例えば10個)の遊技球が大入賞口に進入して入賞球が発生するまでの期間にて、大入賞口を継続して開放状態とするラウンド遊技が実行され、 (上記記載事項ク)

e 大当り図柄とは異なる所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示されるようにして、これら所定表示結果としての所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示される場合には、大当り遊技状態とは異なる特殊遊技状態としての小当り遊技状態に制御し、具体的に小当り遊技状態では、実質的には出玉(賞球)が得られない短期開放大当り状態と同様に特別可変入賞球装置7において大入賞口を遊技者にとって有利な第1状態(開放状態)に変化させる可変入賞動作を実行し、 (上記認定事項テ)

f ラウンド遊技中に大入賞口に遊技球が入賞(進入)することに応じて、スピーカ8L,8Rから演出音(入賞音)が出力され、 (上記記載事項シ及びセ)

g この小当りにより大入賞口が開放されて遊技球が入賞しても前述の入賞音が出力されないように制御する (上記認定事項テ)

h パチンコ遊技機1。」 (上記記載事項ア、ウ及びセ)

という発明(以下、先願発明という。)が記載されていると認められる(aからhは、本件補正発明のAからHに対応させて当審で付与した。)。

(3)本件補正発明と先願発明との対比
本件補正発明と先願発明とを対比する(なお、本件補正発明の構成AからHに対応して、当審で見出し(A)から(H)を付与した。)。

(A)先願発明における構成aの「大入賞口が形成され」ていることは、大入賞口が大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する特定領域として形成され、大入賞口扉が大入賞口を開放状態としたときに、遊技球が大入賞口に進入しやすく、開放状態となった大入賞口に遊技球が進入したときには、賞球が払い出されるのであるから、本件補正発明の「遊技球が入賞可能に開放可能な入賞口」を「備え」ることに相当する。

してみると、先願発明における構成aは、本件補正発明の構成Aに相当する。

(B)先願発明における構成bの「技制御用のプログラムを実行して制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)103」は、S114の大当り開放前処理で、ラウンド遊技の開始タイミングになった場合に、I/O105を介してソレノイド駆動信号を大入賞口扉用のソレノイド82に伝送する処理をして、大入賞口を開放状態とする処理を実行し、S114で大入賞口が開放されてからS115,S116の大当たり開放後処理を繰り返し実行することによって、各ラウンド遊技を実現しているので、先願発明の構成bにおける「…遊技制御用のプログラムを実行して制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)103…を備えて構成される遊技制御用マイクロコンピュータ100が搭載されている主基板11が搭載され」ていることは、本件補正発明の「前記入賞口を開放させる開放遊技を実行可能な開放制御手段」を「備え」ることに相当する。

してみると、先願発明における構成bは、本件補正発明の構成Bに相当する。

(C)先願発明における構成cの「プログラムに従って制御動作を行う演出制御用CPU120」は、音声制御基板13を介してスピーカ8L,8Rを制御して設定した音量の音声を出力させたり、ランプ制御基板14を介して遊技効果ランプ9や装飾用LEDなどにおける設定した光量での点灯/消灯駆動を行わせたり、表示制御部123を介して演出表示装置5の表示領域に演出画像を表示させたりして、各種の演出を実行するのであるから、先願発明における構成cの「プログラムに従って制御動作を行う演出制御用CPU120が搭載されている演出制御基板12が搭載され」ていることは、本件補正発明の「所定の演出音を出力可能なスピーカーを含む所定の演出手段を用いて、所定の演出を実行可能な演出制御手段」を、「備え」ることに相当する。

してみると、先願発明における構成cは、本件補正発明の構成Cに相当する。

(D)先願発明における構成dの「ラウンド遊技」は、所定期間(例えば29秒間)或いは所定個数(例えば10個)の遊技球が大入賞口に進入して入賞球が発生するまでの期間にて、大入賞口を継続して開放状態とするので、本件補正発明の「遊技球が前記入賞口に入賞容易な第1の開放遊技」に相当する。
そして、「ラウンド遊技」は、上記(B)のとおり、先願発明における構成bの「技制御用のプログラムを実行して制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)103」が実現しているので、「ラウンド遊技(単に「ラウンド」ともいう)が実行され」ることは、本件補正発明の「前記開放制御手段は」、「遊技球が前記入賞口に入賞容易な第1の開放遊技」を「実行可能であ」ることに相当する。

してみると、先願発明における構成dは、本件補正発明の構成Dに相当する。

(E)先願発明の構成eにおける「小当り遊技状態」は、「実質的には出玉(賞球)が得られない短期開放大当り状態と同様」であり、「実質的に出玉(賞球)が得られない」ことを勘案すれば、「小当り遊技状態」の開放時間が、所定期間(例えば29秒間)或いは所定個数(例えば10個)の遊技球が大入賞口に進入して入賞球が発生するまでの期間にて、大入賞口を継続して開放状態であるラウンド遊技とは異なる(短い)ことは明らかである。

また、先願発明の「小当り遊技状態」は、大入賞口を遊技者にとって有利な第1状態(開放状態)に変化させる可変入賞動作を実行するものであるのだから、先願発明の「小当り遊技状態」が、「実質的に出玉が得られない」ものであっても、少なくとも大入賞口の閉鎖状態と比してみれば、遊技球が大入賞口に入賞しやすいことも明らかである。

ちなみに、先願明細書等の上記(1)シの【0241】には、予め決められた所定個数より多い遊技球の入賞をオーバー入賞と称することが記載され、先願明細書等の上記(1)スの【0277】には、「小当り時に大入賞口にオーバー入賞があったとき」と記載されていることから、小当り時に、大入賞口に予め決められた所定個数より多い遊技球の入賞があり得ることが想定されているところ、「小当り遊技状態」は、予め決められた所定個数より多い遊技球の入賞があり得る程度には入賞しやすいといえる。

したがって、先願発明の構成eにおける「小当り遊技状態」は、本件補正発明の「遊技球が前記入賞口に入賞容易な開放遊技であって前記入賞口の開放時間が前記第1の開放遊技とは異なる第2の開放遊技」に相当する。

ここで、先願発明では、「遊技制御用のプログラムを実行して制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)103」が、I/O105を介して遊技制御用マイクロコンピュータ100の外部へと各種信号を出力する送信動作を行い、遊技制御用マイクロコンピュータ100からのソレノイド駆動信号(例えば、ソレノイド82をオン状態にする信号など)が、大入賞口扉用のソレノイド82に伝送される。また、先願発明では、「遊技制御用のプログラムを実行して制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)103」は、特別図柄プロセス処理(S26)において、大当り遊技状態の特別可変入賞球装置7における大入賞口の開閉動作設定(ラウンド遊技や短期開放制御の実行)を行い、特別図柄プロセス処理中のS114の大当り開放前処理では、大入賞口を開放状態とする処理(例えば、ソレノイド駆動信号を大入賞口扉用のソレノイド82に伝送する処理)を実行し、S115の大当り開放中処理では、大入賞口を閉鎖状態に戻す処理(例えば、ソレノイド駆動信号を大入賞口扉用のソレノイド82に伝送することを停止してソレノイド82をオフとする処理)、大入賞口の開放状態に維持する処理(例えば、ソレノイド駆動信号の供給を継続する処理)を行っている。

そして、先願発明では、大当り図柄とは異なる所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示される場合に、「小当り遊技状態」に制御され、「小当り遊技状態」では、実質的には出玉(賞球)が得られない短期開放大当り状態と同様に特別可変入賞球装置7において大入賞口を遊技者にとって有利な第1状態(開放状態)に変化させる可変入賞動作を実行する。

してみると、特別図柄プロセス処理を行い、大入賞口扉用のソレノイド82にソレノイド駆動信号を伝送する「遊技制御用のプログラムを実行して制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)103」「を備えて構成される遊技制御用マイクロコンピュータ100が搭載されている主基板11」が、上記の可変入賞動作を行って「小当り遊技状態に制御す」ることは、先願明細書等に記載されているに等しい事項である。

よって、先願発明の構成eにおいて「小当り遊技状態に制御し、具体的に小当り遊技状態では、実質的には出玉(賞球)が得られない短期開放大当り状態と同様に特別可変入賞球装置7において大入賞口を遊技者にとって有利な第1状態(開放状態)に変化させる可変入賞動作を実行」することは、本件補正発明の「前記開放制御手段は」、「遊技球が前記入賞口に入賞容易な開放遊技であって前記入賞口の開放時間が前記第1の開放遊技とは異なる第2の開放遊技」を「実行可能であ」ることに相当する。

したがって、先願発明における構成eは、本件補正発明の構成Eに相当する。

(F)先願発明の構成fにおける「ラウンド遊技中に大入賞口に遊技球が入賞(進入)することに応じて、スピーカ8L,8Rから演出音(入賞音)が出力され」ることは、本件補正発明の「前記開放遊技が実行させているときに遊技球が前記入賞口に入賞することに応じて所定の入賞音を前記スピーカーから出力させることが可能であ」ることに相当する。

してみると、先願発明における構成fは、本件補正発明の構成Fに相当する。

(G)先願発明の構成gにおける「小当り」は上記(E)のとおり、本件補正発明の「第2の開放遊技」に相当し、先願発明の構成gにおける「前述の入賞音」は、先願発明の構成fによれば、スピーカ8L,8Rから出力されるものである。

したがって、先願発明の構成gの「小当りにより大入賞口が開放されて遊技球が入賞しても前述の入賞音が出力されないように制御する」ことは、本件補正発明の構成Gの「前記第2の開放遊技が実行されている状態において所定の演出が行われるとき、遊技球が前記入賞口に入賞しても前記入賞音を前記スピーカーから出力させない」ことと、「第2の開放遊技が実行されている状態において」、「遊技球が前記入賞口に入賞しても前記入賞音を前記スピーカーから出力させない」ことがある点で共通している。

(H)先願発明の構成hにおける「パチンコ遊技機1」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。

してみると、先願発明における構成hは、本件補正発明の構成Hに相当する。

以上のことから、本件補正発明と先願発明とは、

「A 遊技球が入賞可能に開放可能な入賞口と、

B 前記入賞口を開放させる開放遊技を実行可能な開放制御手段と、

C 所定の演出音を出力可能なスピーカーを含む所定の演出手段を用いて、所定の演出を実行可能な演出制御手段と、
を備え、

D 前記開放制御手段は、遊技球が前記入賞口に入賞容易な第1の開放遊技と、

E 遊技球が前記入賞口に入賞容易な開放遊技であって前記入賞口の開放時間が前記第1の開放遊技とは異なる第2の開放遊技とを実行可能であり、

F 前記演出制御手段は、前記開放遊技が実行されているときに遊技球が前記入賞口に入賞することに応じて所定の入賞音を前記スピーカーから出力させることが可能であり、

G’ 前記第2の開放遊技が実行されている状態において、遊技球が前記入賞口に入賞しても前記入賞音を前記スピーカーから出力させないことがある

H 遊技機。」

という点で一致し、両者は次の点で一応相違する。

[相違点]
本件補正発明の構成Gに関し、第2の開放遊技が実行されている状態において、遊技球が入賞口に入賞しても入賞音を出力させないのは、本件補正発明では、「所定の演出が行われるとき」であるに対し、先願発明では、そのように特定されていない点。

(4)相違点に対する判断
先願発明は、プログラムに従って制御動作を行う演出制御用CPU120が搭載されている演出制御基板12が搭載され、演出制御用CPU120は、音声制御基板13を介してスピーカ8L,8Rを制御して設定した音量の音声を出力させたり、ランプ制御基板14を介して遊技効果ランプ9や装飾用LEDなどにおける設定した光量での点灯/消灯駆動を行わせたり、表示制御部123を介して演出表示装置5の表示領域に演出画像を表示させたりして、各種の演出を実行するものであるが、先願明細書等には、小当り遊技状態において「所定の演出」が行われることについて記載がない。

しかしながら、遊技機に関する技術分野では、小当り遊技状態において何らかの演出を行うことは、本願出願時において、ごく当たり前に実施される周知慣用の技術である(例えば、特開2008-104631号公報の【0021】には、「この小当り遊技の実行中には装飾図柄表示器32に小当り遊技を映像的に演出する小当り遊技表示が行われ、両スピーカ14から小当り遊技を音的に演出する効果音が出力され、複数の電飾LED17が小当り遊技表示の演出内容に応じて発光する。」ことが記載されている。また、本願の出願日前に頒布された特開2016-10696号公報の【0054】には「小当り図柄となる「2」の数字を示す特別図柄が特図ゲームにおける確定特別図柄として導出された後には、特殊遊技状態としての小当り遊技状態に制御される。」という記載があり、【0277】には「…この小当り中演出処理において、演出制御用CPU120は、例えば小当り遊技状態における演出内容に対応した演出制御パターン等を設定し、その設定内容に基づく演出画像を画像表示装置5の表示画面に表示させることや、音声制御基板13に対する指令(効果音信号)の出力によりスピーカ8L、8Rから音声や効果音を出力させること、ランプ制御基板14に対する指令(電飾信号)の出力により遊技効果ランプ9や装飾用LEDを点灯/消灯/点滅させることといった、小当り遊技状態における各種の演出制御を実行する。」という記載がある。)。

そして、先願発明は、小当りにより大入賞口が開放されて遊技球が入賞しても入賞音が出力されないように制御するものであるところ、これにより小当り遊技状態において遊技者が入賞音に煩わされないことは当業者に自明であって、先願発明の小当り遊技状態において当業者が上記の周知慣用の技術を付加すること、すなわち、相違点の構成を付加することは、課題解決の具体化手段における微差にすぎない。

以上より、本件補正発明と先願発明とは実質的に同一である。

(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成29年8月10日提出の審判請求書の「(d)本願発明と先願発明の対比」において、以下のように主張している。

「 ここで、本願明細書には、小当たりに当選した場合に限らず、大当たりに当選した場合にも小当たり演出が行われることが記載されている…。そして小当たり及び大当たりのいずれであっても小当たり演出が行われているときには、入賞音をスピーカーから出力させないようにしている…。
本願発明は、本願明細書に記載されている上記態様を包含するものであり、大当たりであっても、その大当たりの遊技中のショート開放ラウンドにおいて小当たり演出が行われるのであれば、その小当たり演出が行われるときに入賞音をスピーカーから出力しないようにすることで、遊技者に、小当たりに当選したのか、或いは、大当たりに当選したのかを気付かせないようにして興趣性を高めているのである。
これに対し、先願発明は、小当たり時には大入賞口に遊技球が入賞しても入賞音を一律に出力しないものであるため、本願発明とは著しく相違している。」

上記主張について、上記(1)に記載したとおり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には、「遊技球が前記入賞口に入賞容易な第1の開放遊技」及び「遊技球が前記入賞口に入賞容易な開放遊技であって前記入賞口の開放時間が前記第1の開放遊技とは異なる第2の開放遊技」と記載されるのみであり、「小当たり」、「大当たり」及び「大当たりの遊技中のショート開放ラウンド」は記載されていない。また、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には、「所定の演出」と記載されるのみであり、「小当たり演出」及び「ショート開放ラウンド」における「小当たり演出」は記載されていない。

そして、上記(3)における本件補正発明と先願発明との一致点のとおり、先願発明における構成dの「ラウンド遊技」は、本件補正発明の「遊技球が前記入賞口に入賞容易な第1の開放遊技」に相当し、先願発明の構成eにおける「小当り遊技状態」は、「遊技球が前記入賞口に入賞容易な開放遊技であって前記入賞口の開放時間が前記第1の開放遊技とは異なる第2の開放遊技」に相当している。

また、上記(4)で検討したとおり、小当り遊技状態において何らかの演出を行うことは、ごく当たり前に実施される周知慣用の技術にすぎない。

したがって、審判請求人の主張は請求項の記載に基づくものではなく、採用できない。

(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、先願発明と同一の発明であり、しかも、本件補正発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとはいえず、また、本願出願日において、本願の出願人が先願の出願人と同一であるともいえないので、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
本件補正は上記第2のとおり、却下されたので、本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成29年1月23日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである(記号は分説のために当審にて付したものである。)。

「【請求項1】

A 遊技球が入賞可能に開放可能な入賞口と、

B 前記入賞口を開放させる開放遊技を実行可能な開放制御手段と、

C 所定の演出音を出力可能なスピーカーを含む所定の演出手段を用いて、所定の演出を実行可能な演出制御手段と、
を備え、

D 前記開放制御手段は、遊技球が前記入賞口に入賞容易な第1の開放遊技と、

E 遊技球が前記入賞口に入賞容易な開放遊技であって前記入賞口の開放時間が前記第1の開放遊技とは異なる第2の開放遊技とを実行可能であり、

F 前記演出制御手段は、前記開放遊技が実行されているときに遊技球が前記入賞口に入賞することに応じて所定の入賞音を前記スピーカーから出力させることが可能であり、

G1 前記第2の開放遊技が実行されているときにおいては、遊技球が前記入賞口に入賞しても前記入賞音を前記スピーカーから出力させないことを特徴とする

H 遊技機。」

第4 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願の日前の特許出願であって、本願の出願後に出願公開がなされた先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(先願明細書等)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、本願の出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない、というものである。

第5 先願発明
先願明細書等に記載されている発明の認定は、前記第2の[理由]3.に記載したとおりである。

第6 対比・判断
(1)本願発明と先願発明との対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]3.で検討した本件補正発明において、「遊技球が前記入賞口に入賞しても前記入賞音を前記スピーカーから出力させない」ときに係る「所定の演出が行われるとき」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明を特定するために必要な事項をすべて含み、さらに特定するために必要な事項を付加した本件補正発明が、上記第2の3.に記載したとおり先願発明と同一なのだから、本願発明も同様の理由により先願発明と同一である。

(2)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成29年1月23日提出の「(2)拡大先願について」において、以下のように主張している。

「 これに対し、先願4(特願2014-180205号(特開2016-52456号))に記載された発明は、開放された入賞口にオーバー入賞した場合に、オーバー入賞音を出力するものであり、互いに開放時間が異なる第1の開放遊技及び第2の開放遊技のいずれで入賞したかに応じて入賞音を出力させないようにしたり…するものではない。」

この主張について、先願明細書等には、「また、小当り時に大入賞口にオーバー入賞があったときに、大当り時に大入賞口にオーバー入賞があったときと同様に、オーバー入賞音を出力するようにしても良い。」と記載されており(上記第2の3.(2)スの【0277】を参照。)、ここで、「また」及び「しても良い」と記載されていることから、「小当り時に」、「オーバー入賞音を出力する」ことは、先願発明の「入賞音が出力されないように制御する」することとは独立した任意選択的な事項であるといえるから、先願発明では、小当り時に大入賞口にオーバー入賞があっても、必ずしもオーバー入賞音を出力しなくても良いと解される。

したがって、審判請求人の主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一ではなく、また、本願の出願時に、本願の出願人が先願の出願人と同一でもないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-20 
結審通知日 2018-04-24 
審決日 2018-05-11 
出願番号 特願2016-12413(P2016-12413)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞壁 隆一  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 藤田 年彦
倉持 俊輔
発明の名称 遊技機  
代理人 高垣 泰志  

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