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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29B
管理番号 1341947
異議申立番号 異議2016-700950  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-04 
確定日 2018-05-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5901540号発明「繊維複合材料からのシート状の半製品の製造法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5901540号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。 特許第5901540号の請求項1?7に係る特許を維持する。 特許第5901540号の請求項8?12に係る特許に対する特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5901540号の請求項1?12に係る特許についての出願は、2011年2月3日(パリ条約による優先権主張 2010年2月17日 ドイツ(DE))を国際出願日として特許出願され、平成28年3月18日に特許の設定登録がされ、同年4月13日に特許公報が発行され、同年10月4日に、その特許に対し、特許異議申立人田中勝英(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年12月14日 取消理由通知
平成29年 3月21日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 3月28日 通知書
同年 4月24日 意見書(特許異議申立人)
同年 5月19日 取消理由通知(決定の予告)
同年 8月23日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 9月 5日 通知書
同年10月16日 意見書(特許異議申立人)
同年12月 1日 取消理由通知(決定の予告)
平成30年 3月 5日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 3月 9日 通知書

なお、平成30年3月9日付け通知書に対して、特許異議申立人からの意見の提出はなかった。
また、平成29年3月21日付けの訂正請求書による訂正請求及び同年8月23日付けの訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。


第2 訂正の適否の判断
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である平成30年3月5日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?12について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。

1.本件訂正の内容
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に
「繊維と少なくとも1つの熱可塑性マトリックス材料とを含有する繊維複合材料から成るシート状の半製品の製造法であって、その際、繊維含有の廃材又は使用済み品から繊維を分離し、これらを熱可塑性繊維と混合し、かつカードプロセスにおいて面状にすることで、繊維ウェブを作り出し、該ウェブを、少なくとも1つの後続の工程において熱の作用下でシート材料へと圧縮する、前記製造法において、炭素繊維含有の廃材又は使用済み品から、不連続の炭素繊維、炭素繊維束又はそれらの混合物を分離し、これらを熱可塑性の異種繊維と混合し、カードプロセスにおいて面状にし、かつ方向付けすることで、繊維の(ウェブ長手方向に向いた)適切な配向を有する繊維ウェブを作り出し、該繊維ウェブを、少なくとも1つの後続の工程において熱の作用下でシート材料へと圧縮し、その際、カードプロセスにおいて炭素繊維の適切かつ高い長手配向を得るために、熱可塑性の異種繊維を、繊維ウェブ中で少なくとも1:2の範囲の繊維異方性が生じるような混合比で及び/又は繊維形状により添加することを特徴とする方法。」
とあるのを
「繊維と少なくとも1つの熱可塑性マトリックス材料とを含有する繊維複合材料から成るシート状の半製品の製造法であって、その際、繊維含有の廃材又は使用済み品から繊維を分離し、これらを熱可塑性繊維と混合し、かつカードプロセスにおいて面状にすることで、繊維ウェブを作り出し、該ウェブを、少なくとも1つの後続の工程において熱の作用下でシート材料へと圧縮する、前記製造法において、炭素繊維含有の廃材又は使用済み品から、不連続の炭素繊維、炭素繊維束又はそれらの混合物を分離し、これらを熱可塑性の異種繊維と混合し、カードプロセスにおいて面状にし、かつ方向付けすることで、繊維の(ウェブ長手方向に向いた)適切な配向を有する繊維ウェブを作り出し、該繊維ウェブを、少なくとも1つの後続の工程において熱の作用下でシート材料へと圧縮し、その際、カードプロセスにおいて炭素繊維の適切かつ高い長手配向を得るために、熱可塑性の異種繊維を、繊維ウェブ中で少なくとも1:2の範囲の繊維異方性が生じるような混合比で及び/又は繊維形状により添加し、かつ複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性に、ウェブ層を生むための繊維ウェブのライニングプロセス後に、付加的な不織布延伸によって影響を及ぼすことを特徴とする方法。」
と訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項7に
「1:1.5?1:10の範囲の複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性」
とあるのを、
「1:2?1:7の範囲の複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性」
と訂正する。

(3)訂正事項3
請求項8を削除する。

(4)訂正事項4
請求項9を削除する。

(5)訂正事項5
請求項10を削除する。

(6)訂正事項6
請求項11を削除する。

(7)訂正事項7
請求項12を削除する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1に記載されている「繊維と少なくとも1つの熱可塑性マトリックス材料とを含有する繊維複合材料から成るシート状の半製品の製造法」において、「複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性に、ウェブ層を生むための繊維ウェブのライニングプロセス後に、付加的な不織布延伸によって影響を及ぼす」との工程を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
斯かる工程は、訂正前の請求項8に記載されていた事項であるから、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項7が請求項1を引用して記載され、その請求項1においては、「少なくとも1:2の範囲の繊維異方性」と記載されており、訂正前の請求項7の「1:1.5?1:10の範囲の複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性」との記載と矛盾していたところ、本件訂正によって、「少なくとも1:2の範囲」に含まれる、「1:2?1:7の範囲」の「複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性」に訂正して、その矛盾を解消するとともに範囲を限定するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件の願書に添付した明細書(【0035】参照)には、「目的に合わせて複合体強度及び/若しくは複合体剛性の異方性が、殊に1:1.5?10、好ましくは1:2?1:7の範囲に調節されることができる程度の繊維配向を生ぜしめることができる。」と記載されているから、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3?7
訂正事項3?7は、請求項8?12を削除するものであるから、それぞれ、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
請求項の削除であるから、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)一群の請求項
訂正前の請求項2?12は請求項1を直接又は間接に引用するものであるから、請求項1?12は一群の請求項であり、訂正事項1?7に係る訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。

3. まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号または第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第4項、及び、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項〔1-12〕に係る本件訂正を認める。


第3 本件発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?12に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明12」といい、明細書を「本件特許明細書」という。)は、平成30年3月5日付けの訂正請求書に添付した特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
繊維と少なくとも1つの熱可塑性マトリックス材料とを含有する繊維複合材料から成るシート状の半製品の製造法であって、その際、繊維含有の廃材又は使用済み品から繊維を分離し、これらを熱可塑性繊維と混合し、かつカードプロセスにおいて面状にすることで、繊維ウェブを作り出し、該ウェブを、少なくとも1つの後続の工程において熱の作用下でシート材料へと圧縮する、前記製造法において、炭素繊維含有の廃材又は使用済み品から、不連続の炭素繊維、炭素繊維束又はそれらの混合物を分離し、これらを熱可塑性の異種繊維と混合し、カードプロセスにおいて面状にし、かつ方向付けすることで、繊維の(ウェブ長手方向に向いた)適切な配向を有する繊維ウェブを作り出し、該繊維ウェブを、少なくとも1つの後続の工程において熱の作用下でシート材料へと圧縮し、その際、カードプロセスにおいて炭素繊維の適切かつ高い長手配向を得るために、熱可塑性の異種繊維を、繊維ウェブ中で少なくとも1:2の範囲の繊維異方性が生じるような混合比で及び/又は繊維形状により添加し、かつ複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性に、ウェブ層を生むための繊維ウェブのライニングプロセス後に、付加的な不織布延伸によって影響を及ぼすことを特徴とする方法。
【請求項2】
添加した熱可塑性の異種繊維が、25mm?120mmの繊維長を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ランダムに結合した熱可塑性繊維と不連続のランダム炭素繊維、ランダム炭素繊維束又はそれらの混合物とからの実質的に均一な混合物を、カードプロセスによって方向付けし、繊維マットへと整え、熱可塑性繊維の少なくとも部分を熱によって接着性状態にし、圧密化し、かつシート材料へと圧縮し、その後に冷却することを特徴とする、請求項1又は2に記載のシート状の半製品の製造法。
【請求項4】
使用した炭素繊維、炭素繊維束又はそれらの混合物が、10mm?150mmの平均繊維長を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
紡織繊維系の炭素廃材の処理及び/又は炭素繊維複合部材の材料リサイクルに由来している少なくとも一部の炭素繊維、並びに細断された一次繊維(新しい物)の一部を使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
炭素繊維、炭素繊維束又はそれらの混合物と熱可塑性の結合繊維とから成る混合物を、繊維混合プロセスによってマット形成の間に作製することを特徴とする、請求項1、2、4又は5に記載の方法。
【請求項7】
最初に方向が不規則に存在している炭素繊維、炭素繊維束又はそれらの混合物の適切な配向度を、繊維複合材料(FKV)中で1:2?1:7の範囲の複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性が達成されるようにカード機により作り出すことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)」


第4 取消理由(予告)
平成29年12月1日付けの取消理由通知で当審が通知した取消理由(予告)の概要は以下のとおりである。

[取消理由1]本件訂正前の特許請求の範囲請求項9?12に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の甲第1、2、4号証に記載された発明及び本件優先日時点の技術常識に基いて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の特許請求の範囲請求項9?12に係る発明に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特表2001-521449号公報
甲第2号証:実用新案登録第3152748号公報
甲第4号証:特開平9-12730号公報


第5 当審の判断
第2及び第3のとおり、本件訂正により、請求項9?12は削除され、第4の[取消理由1]の対象となる特許が存在しないこととなった。

なお、本件発明1?7に係る特許については、第4の[取消理由1]によって取り消すことができないことは、以下のとおりである。

1.甲号証及び参考文献の記載事項
(1)甲第1号証の記載事項
(1a)
「1.熱可塑性物質および添加物質を含む一方向性の不連続状の複合体の製造方法において:
(a)互いに充分に混合されかつ共に一般的に同一方向に延びる前記熱可塑性物質の繊維および前記添加物質の不連続状の繊維を含むプレフォームを形成する工程;及び
(b)前記熱可塑性繊維を溶融して前記添加物質の前記不連続状の繊維を囲む熱可塑性相を形成する工程、
からなることを特徴とする前記複合体の製造方法。
2.前記熱可塑性樹脂が不連続繊維である請求の範囲(1)の方法。
3.該プレフォーム形成工程は、前記熱可塑性物質の不連続繊維を前記添加物質の不連続状の繊維と混合して混合物を形成し、次いで該混合物をカーディングして混合物中の繊維を互いに同一方向に配向させる工程を含む請求の範囲(1)の方法。
4.該プレフォーム形成工程は、更に、前記繊維を長いスライバーに形成して前記同一方向に延びる繊維が該スライバの長手方向と一般的に平行に延びるようにする工程を含む請求の範囲(3)の方法。
5.該プレフォーム形成工程は、更に、複数の長さの該スライバーを互いに並列させて互いに一般的に平行に延びるようにする工程を含む請求の範囲(4)の方法。
6.該熱可塑性樹脂の溶融工程は、該プレフォームを加熱して、該熱可塑性繊維の熱可塑性物質を流動状態にする工程を含む請求の範囲(1)の方法。
7.該熱可塑性物質を流動状態に保ちながら、該プレフォームを圧密化する工程を更に含む請求の範囲(6)の方法。
8.該プレフォームの圧密化工程は、該熱可塑性物質を流動状態に保ちながら、該プレフォームを一対の対向する部材の間で締め付ける工程を含む請求の範囲(7)の方法。
9.該プレフォームの圧密化工程は、該プレフォームを圧縮成型する工程を含む請求の範囲(7)の方法。
10.前記添加物質は、ガラス、セラミックス、金属、炭素、非熱可塑性ポリマーおよび前記熱可塑性物質の前記繊維よりも高い熱変形温度を有する熱可塑性ポリマーの中から選ばれるものである請求の範囲(1)の方法。」(請求の範囲請求項1?10)

(1b)
「本発明の1つの面は、繊維の形で熱可塑性物質および添加物質を含む一方向性の不連続状の複合体を製造する方法を提供する。本発明のこの面による方法は、熱可塑性物質の不連続状の繊維および添加物質の不連続状の繊維を混合して混合物を形成する段階、次いでこの混合物中で繊維が共に実質的に同一方向に配向するように、この混合物をカーディングする段階を含む。カーディングされた、一般的に一方向性の繊維混合物は、プレフォームとして使用する。このプレフォー
ムは、溶融段階に向けるが、この段階では熱可塑性繊維は、溶融して添加物質の不連続状の繊維の周りで実質的に連続状の熱可塑性相を形成する。」(第7頁第13?20行)

(1c)
「図1を参照すると、そのような熱可塑性物質は公知の技術によって連続状の繊維10に形成される。次にこれらの繊維を集めて複数の結束された繊維から成るストランド20にされる。ストランドを形成している繊維の数は、使用される特定の熱可塑性物質によって左右される。例えば、その熱可塑性物質がポリプロピレンから成っている時は、ストランド中のその繊維はおよそ70-150本となろう。次いで、ストランド20は、ストランドの例えばそのストランドを熱変形温度より高い温度に加熱したのちストランドの長さに沿ってギアを回転させるような通常のけん縮方法、又は公知のスタフィンボックス技術、等から成るテクスチャープロセス30にかけられる。別の方法では、ストランドを熱変形温度より高い温度に加熱した後、ジェット気流をそのストランドに当ててストランドを変形させてテクスチャー加工をおこなうこともある。その後で、ストランドを冷却すると変形した形状がそのまま残る。
テクスチャー加工の後、連続状の束またはストランド20の繊維を、多数の不連続状の繊維束40に切断する。これらの不連続状の繊維束の長さは約0.5インチと2.5インチの間が好ましいが、約1.50インチと約2.0インチの間が更に好ましい。
この不連続状の繊維束40を強化用物質の不連続状の繊維と混合されて混合物が形成される。強化用物質は、熱可塑性物質よりも高弾性率を有する物質が好ましい。特に好ましい強化用物質は、ガラス、セラミックス、金属、炭素、非熱可塑性ポリマーおよび繊維束40を形成している熱可塑性物質よりも高い熱変形温度を有する熱可塑性ポリマーからから成る部類中から選ばれる繊維である。従来の技術によって形成されるこれらの強化用物質の連続状の繊維50は、集められてストランドまたは束60とされるが、それらの各々は多数の繊維を含んでいてよい。各ストランド中の繊維の数は、使用される特定の強化用物質によって大いに左右されるが、2本ないし数万本の繊維が含まれることがある。ガラス繊維が強化用物質の場合は、このストランドは一般的に約2,000本から約4,000本のガラス繊維を含む。次にこれらの強化用物質繊維の連続状のストランド60は多数の不連続状の繊維束70に切断される。これらの不連続状の繊維束の長さは約0.50インチと約2.5インチの間が好ましいが、約1.50インチと2.0インチの間が更に好ましい。混合とそれに続く加工段階を容易にするために、強化用物質束70は熱可塑性物質束40の長さと同じような長さを有するのが好ましい。」(第9頁下から第2行?第11頁第3行)

(1d)
「予め決められた量の不連続状の熱可塑性繊維束40および不連続状の強化用物質繊維束70は、次に従来型の予備カーディング装置80に装入され、その装置の中での束40、70が少なくとも部分的に解けるので、各繊維がそこで離ればなれになって三次元的に互いに密に混合して均一な混合物90が形成される。予備カーディング装置80の1つの形式では、粗い針のベッドが反対方向に移動するように配置された一対の対面型ベルトコンベアの各々から突き出ている。束40および70が前記装置80に装入されると、この針が束を分けて束中の各繊維を少なくとも部分的に引き剥すので強化用物質の繊維が熱可塑性物質の繊維と絡まれて密に混合し合う。予備カーディング装置80を出る混合物90中の繊維は方向性の強い配向を示さないが、それは熱可塑性物質繊維および強化用物質繊維が共にランダムに配列するからである。強化用物質は、この混合物の約10重量%と約70重量%の間で含まれるのが好ましいが、約20重量%と約60重量%の間で含まれるのが更に好ましい。
予備カーディング装置80から出た混合物90はカーディング機100へ装入され、その機械内でこの混合物は機械的に各繊維がばらばらにされたのち、凝集したウェブ120に形成される。カーディング機100は、シリンダから突き出ている多数の細いワイヤーを有するワイヤークロスで覆われた回転シリンダ102を含む。同じようなワイヤークロスが回転シリンダ104および106を覆っている。シリンダ102は、同じ方向ではあるがシリンダ104および106よりも速い速度で回転している。この混合物90が、シリンダ102とシリンダ104の間に形成されるニップ103、およびシリンダ102とシリンダ106の間に形成されるニップ105の間を通る時は1つのシリンダ上にあるワイヤーと、隣接しているシリンダ上にあるワイヤーとの間の相対的な動きによって繊維が引っ張られて梳解される。この引っ張りと梳解工程の結果、各繊維は縦方向、即ちシリンダの回転軸と直角方向に共に同一方向に実質的に配列されるようになる。それらの繊維が引き離されると、繊維は互いに絡み合って、厚さが繊維の直径数倍の、連続状の薄いベール状のもの即ちウェブ120が形成される。このウェブ120の幅はカーディング機100の寸法によるが一般的に約1.0メートル程度である。熱可塑性繊維のテクスチャーによってこのウェブは結合が保たれている。この種のカーディングウェブは、カーディング物質及びその相対的含量および繊維長さによって左右されるが、一般的に混合物の真の密度の約0.2%と約0.7%の間のかさ密度を有する。ポリプロピレンストランド約70重量%およびガラス繊維ストランド約30重量%から成るウェブの場合は、この組成物の完全に密な複合体では約1.4gm/cm^(3)であるのに対して、約0.003gm/cm^(3)と約0.01gm/cm^(3)の間のウェブ密度が得られる。」(第11頁第4行?第12頁第11行)

(1e)
「堆積物180中の熱可塑性物質を軟化させて流動可能な状態になるまで堆積物180を充分加熱した後、その堆積物180は圧密化されて固形の単一体を形成する。一般的な圧密化プロセスでは、堆積物180は圧縮荷重をかけられるとその荷重下で熱可塑性物質の繊維は一緒に流動および共に溶融して強化用物質の不連続状の繊維を取り囲む実質的に連続状の熱可塑性相を有する複合体物品を形成する。荷重は一般的に繊維方向と直角方向に堆積物180にかけられるので、堆積物中の繊維の一方向性の配向は、実質的にそのまま残り、その後、熱可塑性物質が流動しない状態まで冷却されるのに充分な時間保持される。」(第13頁第22行?第14頁第2行)

(1f)
「前記したようなプロセスに実質的に従うことによって、一方向性の不連続状の複合体が形成される。複合体は、共に同一方向に配向された強化用物質である多数の不連続状の繊維を囲む熱可塑性物質の連続状の相を含むのが望ましい。
前記プロセスによって形成される複合体は異方性の物理的性質を有する。従って、これらの複合体は、繊維方向と直角方向の荷重(複合体の平面で)に関するよりも繊維方向の荷重に関する方が一般的に大きい強度および弾性率を有する。これらの性質の度合いは、複合体を作る時の素材である特定の熱可塑性物質および強化用物質によって左右される。約30重量%のガラス繊維と約70重量%のポリプロピレンの比率で、ポリプロピレンの連続状の相によって囲まれる不連続状のガラス繊維ストランドから成る好ましい複合体は、一般的に、繊維方向と直角方向の室温引っ張り強度の約2-5倍の繊維方向の室温引っ張り強度を示す。繊維方向と直角方向よりも繊維方向の方が少なくとも1.5-3倍大きい室温曲げ強度値は、好ましい複合体で一般的に得ることができる。更に、好ましい複合体の曲げ弾性率は、室温で測ると直角方向よりも繊維方向の方が一般的に少なくとも1.5-4倍大きい。」(第14頁第18行?第15頁第5行)

(1g)
「表1は、実施例1のいろいろな実験で形成された複合体の物理的性質を、繊維方向および繊維方向と直角方向の両方で示している。複合体に含まれる不連続状のガラス繊維の長さに関係なく、各複合体は直角方向よりも繊維方向の方が著しく優れた強度及び靭性を示すことが、理解できる。

」(第20頁下から第4行?最終行、表1)

(2)甲第2号証の記載事項
(2a)
「(3)カーボン繊維群は、カーボンシートの端材を解離したものであることが好ましい。カーボンシートの端材は産業廃棄物として処理しなければならなかったため、上記(1)(2)の構成は、特に必要大にカットされたカーボンシートの端材を有効利用して不織布化したものであることが好ましい。」(【0012】)

(2b)
「本考案のカーボン不織布は、5?10cm長のカーボン繊維群を主成分とする炭化率60%以上の高炭化率布である。成形性あるいは安定したカード機通過による生産性のため、全重量比40%以下の割合で熱可塑性繊維2を混合させ、プレス成型によって熱溶融させたものとしてもよい。実施例のカーボン不織布は、少なくともカーボン繊維1と、このカーボン繊維1よりも融点が低い熱可塑性繊維2とが混合した不織布からなり、熱可塑性繊維2はカーボン繊維1内へランダムに混合された状態のまま、溶融固化してなる。」(【0019】)

(2c)
「(カーボン繊維について)
カーボン繊維群は、カーボンシートの端材を解離したものである。特にカーボン繊維群はPAN系のカーボン樹脂のみからなる。」(【0026】)


(2d)
「(製造方法例)
本考案のカーボン不織布は、例えばカード機によってウェブを得る乾式法によって製造され、少なくとも下記第1工程、第2工程及び第3工程を経ることで得られる。
第1工程:カーボン繊維布の製造時に得られる繊維長5?10cmの端材を反毛処理して綿状繊維を得る反毛処理工程
第2工程:前記第1工程で得られた綿状繊維をカード機によって不織成形して単層のウェブを得るウェブ成形工程
第3工程:前記第2工程で得られた単層のウェブを積層し、熱プレスによって多層の薄板からなる不織布を得る積層工程」(【0034】)

(3)甲第4号証の記載事項
(3a)
「【請求項1】 熱硬化性樹脂からなるマトリックス中に強化材として炭素繊維が分布している異形状繊維強化プラスチックにおいて、前記炭素繊維の一部又は全部が、炭素繊維強化プラスチックの熱分解により回収されたリサイクル炭素繊維であることを特徴とする異形状繊維強化プラスチック。」(特許請求の範囲請求項1)

(3b)
「故に、本発明に係る異形状CFRPは、熱硬化性樹脂からなるマトリックス中に強化材として炭素繊維(リサイクル炭素繊維、又は、リサイクル炭素繊維及び新品の炭素繊維)が基材(炭素繊維)切れのない状態で分布している。そのため、強化材として新品の炭素繊維のみを用いた場合の異形状CFRPと同様の各種特性(引張り強度、弾性率等)を有し得る。従って、異形状CFRPの各種特性(引張り強度、弾性率等)の低下を招くことなく、従来の異形状CFRPで使用される新品の炭素繊維の一部又は全部に代えてリサイクル炭素繊維を使用することができる。即ち、リサイクル炭素繊維を有効利用することができることになる。」(【0011】)

2.甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、「繊維の形で熱可塑性物質および添加物質を含む一方向性の不連続状の複合体を製造する方法を提供する」ことを目的として(摘記1b参照)、
「熱可塑性物質および添加物質を含む一方向性の不連続状の複合体の製造方法において:
(a)互いに充分に混合されかつ共に一般的に同一方向に延びる前記熱可塑性物質の繊維および前記添加物質の不連続状の繊維を含むプレフォームを形成する工程;及び
(b)前記熱可塑性繊維を溶融して前記添加物質の前記不連続状の繊維を囲む熱可塑性相を形成する工程、
からなることを特徴とする前記複合体の製造方法。」において、
「前記熱可塑性樹脂が不連続繊維である」こと、
「前記添加物質は、ガラス、セラミックス、金属、炭素、非熱可塑性ポリマーおよび前記熱可塑性物質の前記繊維よりも高い熱変形温度を有する熱可塑性ポリマーの中から選ばれるもの」であること、
「該プレフォーム形成工程は、前記熱可塑性物質の不連続繊維を前記添加物質の不連続状の繊維と混合して混合物を形成し、次いで該混合物をカーディングして混合物中の繊維を互いに同一方向に配向させる工程を含む」こと、
「該熱可塑性樹脂の溶融工程は、該プレフォームを加熱して、該熱可塑性繊維の熱可塑性物質を流動状態にする」こと、「該熱可塑性物質を流動状態に保ちながら、該プレフォームを圧密化する」ことが記載されている(摘記1a参照)。
そして、このような複合体の製造方法の具体的な態様も甲第1号証に記載されている(摘記1c?1e参照)。
そうすると、甲第1号証には、
「熱可塑性物質および添加物質を含む一方向性の不連続状の複合体の製造方法において:
(a)互いに充分に混合されかつ共に一般的に同一方向に延びる前記熱可塑性物質の繊維および前記添加物質の不連続状の繊維を含むプレフォームを形成する工程;及び
(b)前記熱可塑性繊維を溶融して前記添加物質の前記不連続状の繊維を囲む熱可塑性相を形成する工程、
からなることを特徴とする前記複合体の製造方法において、
前記熱可塑性樹脂が不連続繊維であり、
前記添加物質は、ガラス、セラミックス、金属、炭素、非熱可塑性ポリマーおよび前記熱可塑性物質の前記繊維よりも高い熱変形温度を有する熱可塑性ポリマーの中から選ばれ、
該プレフォーム形成工程は、前記熱可塑性物質の不連続繊維を前記添加物質の不連続状の繊維と混合して混合物を形成し、次いで該混合物をカーディングして混合物中の繊維を互いに同一方向に配向させる工程を含み、
該熱可塑性樹脂の溶融工程は、該プレフォームを加熱して、該熱可塑性繊維の熱可塑性物質を流動状態にするとともに、該熱可塑性物質を流動状態に保ちながら、該プレフォームを圧密化する前記複合体の製造方法」の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。

また,甲第1号証には,同様に,「甲1発明Aの方法で製造された熱可塑性物質および添加物質を含む一方向性の不連続状の複合体」の発明(以下「甲1発明B」という。)も記載されているといえる。

3.対比・判断
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲1発明Aとを対比する。
甲1発明Aの「熱可塑性物質および添加物質を含む」「不連続状の複合体」は、「添加物質の前記不連続状の繊維を囲む熱可塑性相を形成する」ものであるから、本件発明1の「繊維と少なくとも1つの熱可塑性マトリックス材料とを含有する繊維複合材料」に相当し、最終的にシートとされている(摘記1e参照)ので、本件発明1の「シート状の半製品」にも相当する。
甲1発明Aの「前記熱可塑性物質の不連続繊維を前記添加物質の不連続状の繊維と混合して混合物を形成」することは、本件発明1の「これら(繊維)を熱可塑性繊維と混合」することに相当する。
甲1発明Aの「カーディング」は、本件発明1の「カードプロセス」に相当し、カーディングによって繊維の混合物が「薄いベール状」、すなわち「面状」の「繊維ウェブ」となることは明らかである(摘記1d参照)。そして、甲1発明の「カーディング」は、「混合物中の繊維を互いに同一方向に配向させる工程」であって、カーディング機の回転シリンダと直角方向(ウェブの長手方向)に配向する(摘記1d参照)から、本件発明1の繊維を「方向付けすることで、繊維の(ウェブ長手方向に向いた)適切な配向を有する繊維ウェブを作り出」すことに相当する。
甲1発明Aの「熱可塑性樹脂の溶融工程は、該プレフォームを加熱して、該熱可塑性繊維の熱可塑性物質を流動状態にするとともに、該熱可塑性物質を流動状態に保ちながら、該プレフォームを圧密化する」ことは、本件発明1の「繊維ウェブを、少なくとも1つの後続の工程において熱の作用下でシート材料へと圧縮」することに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明Aとは、
「繊維と少なくとも1つの熱可塑性マトリックス材料とを含有する繊維複合材料から成るシート状の半製品の製造法であって、その際、繊維を熱可塑性繊維と混合し、かつカードプロセスにおいて面状にすることで、繊維ウェブを作り出し、該ウェブを、少なくとも1つの後続の工程において熱の作用下でシート材料へと圧縮する、前記製造法において、繊維を熱可塑性の異種繊維と混合し、カードプロセスにおいて面状にし、かつ方向付けすることで、繊維の(ウェブ長手方向に向いた)適切な配向を有する繊維ウェブを作り出し、該繊維ウェブを、少なくとも1つの後続の工程において熱の作用下でシート材料へと圧縮することを特徴とする方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点(i) 本件発明1では、「炭素繊維含有の廃材又は使用済み品から、不連続の炭素繊維、炭素繊維束又はそれらの混合物を分離し、これらを熱可塑性の異種繊維と混合し」ているのに対して、甲1発明Aでは、「ガラス、セラミックス、金属、炭素、非熱可塑性ポリマーおよび前記熱可塑性物質の前記繊維よりも高い熱変形温度を有する熱可塑性ポリマーの中から選ばれ」た「添加物質の不連続状の繊維」を「熱可塑性物質の不連続繊維と混合」している点。
・相違点(ii) 本件発明1は、「カードプロセスにおいて炭素繊維の適切かつ高い長手配向を得るために、熱可塑性の異種繊維を、繊維ウェブ中で少なくとも1:2の範囲の繊維異方性が生じるような混合比で及び/又は繊維形状により添加する」のに対して、甲1発明Aでは、「カーディング」によって「混合物中の繊維を互いに同一方向に配向させる」点。
・相違点(iii) 本件発明1では、「複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性に、ウェブ層を生むための繊維ウェブのライニングプロセス後に、付加的な不織布延伸によって影響を及ぼす」ことを特定しているのに対して、甲1発明Aでは、その点が明らかでない点。

イ 相違点の検討
(ア)相違点(i)について
甲第1号証には、「添加物質の不連続状の繊維」として、ガラス繊維を使用した実施例しか記載されていないが(摘記1g参照)、炭素繊維そのものは本件優先日当時において強化繊維として周知のもの(摘記6a参照)であったことは明らかであり、甲1発明Aにおいて、「添加物質の不連続状の繊維」は、「ガラス、セラミックス、金属、炭素、非熱可塑性ポリマーおよび前記熱可塑性物質の前記繊維よりも高い熱変形温度を有する熱可塑性ポリマーの中から選ばれ」るものであるから、ガラス繊維と同様に「炭素」繊維を選択することは、本件優先日当時の当業者にとって容易になし得たものといえる。
また、甲第2号証にも、実際に、カーボン繊維群を主成分とし、熱可塑性繊維を混合させ、カード機によってウェブを得て、プレス成型によって熱溶融させた不織布シートの製造方法が記載されており(摘記2b、2d参照)、その際に、カーボン繊維として、カーボンシートの端材を解離したものを使用すること(摘記2a、2c参照)、カーボンシートの端材が産業廃棄物として処理しなければならなかったことが記載されている(摘記2a参照)から、解離で得られたカーボン繊維は、原料のカーボンシートの端材と分離されて得られたものと解される。
そして、甲第4号証にも、熱硬化性樹脂ではあるが、樹脂マトリックス中に強化材として炭素繊維が分布している繊維強化プラスチックにおいて、炭素繊維として、リサイクルされたものを使用することが記載されており(摘記3a、3b参照)、炭素繊維と樹脂を含む複合材料において、廃棄物となる炭素繊維をリサイクルして有効利用しようという課題が本件優先日当時の技術常識として当業者に認識されていたものといえる。
してみると、甲1発明Aにおいて、このような課題を解決するために、本件発明1の「炭素繊維含有の廃材」に相当する「カーボンシートの端材」から解離して得られた炭素繊維を熱可塑性繊維と混合して使用することは当業者が容易になし得たことと認められる。
したがって、甲1発明Aにおいて、相違点(i)を構成することは当業者が容易になし得たことと認められる。

(イ)相違点(ii)について
甲第1号証には、甲1発明Aが「繊維の形で熱可塑性物質および添加物質を含む一方向性の不連続状の複合体を製造する方法を提供する」(摘記1b参照)ことを目的としたものであること、そして、甲1発明Aの方法によって形成される複合体は異方性の物理的性質を有すること、すなわち、繊維方向と直角方向の荷重(複合体の平面で)に関するよりも繊維方向の荷重に関する方が一般的に大きい強度および弾性率を有すること、これらの性質の度合いは、複合体を作る時の素材である特定の熱可塑性物質および強化用物質(添加物質)によって左右されることが記載され、約30重量%のガラス繊維と約70重量%のポリプロピレンの比率で、繊維方向と直角方向の室温引っ張り強度の約2-5倍の繊維方向の室温引っ張り強度を示すことが記載されている(摘記1f参照)。さらに、ガラス繊維の長さを変えて、得られた複合体の繊維方向と直角方向の引張り強度を調べた具体例も記載されている(摘記1g参照)。
甲第1号証のこれらの記載から、甲1発明Aの方法によって、繊維方向と直角方向の荷重に関するよりも繊維方向の荷重に関する方が一般的に大きい強度および弾性率を有するようになる、すなわち本件発明1の「繊維異方性」が生じること、その程度は、素材である熱可塑性物質および強化用物質によって左右され、両者の配合割合や強化用物質の繊維長さによって、繊維異方性の程度を示す「繊維方向と直角方向の室温引っ張り強度」と「繊維方向の室温引っ張り強度」の比が変化することが理解できる。
そうすると、甲1発明Aにおいて、上記(ア)で述べたとおり、ガラス繊維に代えて、カーボンシートの端材から解離して得られた炭素繊維を使用した場合には、炭素繊維はガラス繊維とともに繊維強化樹脂の強化繊維として使用され、その引っ張り強度、弾性率などの特性が類似するものである(摘記6a参照)こと、また、繊維強化複合材料の異方性は、ガラス繊維でも炭素繊維でも繊維の並び方に強く影響されること(摘記6b、6c参照)、甲第1号証に約30重量%のガラス繊維と約70重量%のポリプロピレンの比率で、繊維方向と直角方向の室温引っ張り強度の約2-5倍の繊維方向の室温引っ張り強度が実際に得られたことが記載されていること(摘記1f参照)からすれば、ガラス繊維を使用した場合と全く同じにはならないとしても、その配合量や繊維の長さなどを適宜変更することによって、繊維方向と直角方向の室温引っ張り強度の2倍以上の繊維方向の室温引っ張り強度を示す繊維複合材料を見出すことは、当業者であれば、高い期待をもって試みることといえ、そのような試みを実際に行うことで、繊維方向と直角方向の室温引っ張り強度の2倍以上の繊維方向の室温引っ張り強度を示す繊維複合材料を容易に得ることができたものと認めることができる。
したがって、甲1発明Aにおいて、相違点(ii)を構成することも当業者が容易になし得たことと認められる。

(ウ)相違点(iii)について
本件発明1で特定されている「複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性に、ウェブ層を生むための繊維ウェブのライニングプロセス後に、付加的な不織布延伸によって影響を及ぼす」における「複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性に、」「付加的な不織布延伸によって影響を及ぼす」とは、本件特許明細書の記載(【0035】参照)によれば、カード機におけるライニングされたカードウェブの後に行われる不織布延伸の工程により、それ以前の工程で得られていた繊維ウェブの「複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性」の値を変化させて、目的に合わせた「複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性」の値に調整することを意味するものと理解できる。
一方、甲1発明Aには、「複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性に、」「付加的な不織布延伸によって影響を及ぼす」ことは記載も示唆もされていない。また、甲1発明Aが記載されている甲第1号証や甲第2号証、甲第4号証に、「複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性に、」「付加的な不織布延伸によって影響を及ぼす」動機付けとなる記載があるとすることができないし、「複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性に、ウェブ層を生むための繊維ウェブのライニングプロセス後に、付加的な不織布延伸によって影響を及ぼす」ことが技術常識として知られているものとも認めることができない。
従って、甲1発明Aにおいて、「複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性に、ウェブ層を生むための繊維ウェブのライニングプロセス後に、付加的な不織布延伸によって影響を及ぼす」ことは当業者が容易になし得たことであるとすることはできない。

ウ 請求項1についてのまとめ
相違点(iii)の点において、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、4号証に記載された発明並びに本件優先日時点の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

(2)本件発明2?7
本件発明2?7に係る請求項2?7は、請求項1を直接又は間接に引用するものであり、本件発明2?7は、本件発明1をさらに限定するものである。
上記の3.(1)ウのように、本件発明1は甲第1号証に記載された発明及び甲第2、4号証に記載された発明並びに本件優先日時点の技術常識に基いて容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の発明特定事項をすべて含む本件発明2?7も同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、4号証に記載された発明並びに本件優先日時点の技術常識に基いて容易に発明をすることができたものではない。


第6 むすび
平成29年12月1日付け取消理由通知(予告)の取消理由1によっては、本件発明1?7に係る特許を取り消すことができない。また、他に本件発明1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項8?12は訂正により削除されたため、本件特許の請求項8?12に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維と少なくとも1つの熱可塑性マトリックス材料とを含有する繊維複合材料から成るシート状の半製品の製造法であって、その際、繊維含有の廃材又は使用済み品から繊維を分離し、これらを熱可塑性繊維と混合し、かつカードプロセスにおいて面状にすることで、繊維ウェブを作り出し、該ウェブを、少なくとも1つの後続の工程において熱の作用下でシート材料へと圧縮する、前記製造法において、炭素繊維含有の廃材又は使用済み品から、不連続の炭素繊維、炭素繊維束又はそれらの混合物を分離し、これらを熱可塑性の異種繊維と混合し、カードプロセスにおいて面状にし、かつ方向付けすることで、繊維の(ウェブ長手方向に向いた)適切な配向を有する繊維ウェブを作り出し、該繊維ウェブを、少なくとも1つの後続の工程において熱の作用下でシート材料へと圧縮し、その際、カードプロセスにおいて炭素繊維の適切かつ高い長手配向を得るために、熱可塑性の異種繊維を、繊維ウェブ中で少なくとも1:2の範囲の繊維異方性が生じるような混合比で及び/又は繊維形状により添加し、かつ複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性に、ウェブ層を生むための繊維ウェブのライニングプロセス後に、付加的な不織布延伸によって影響を及ぼすことを特徴とする方法。
【請求項2】
添加した熱可塑性の異種繊維が、25mm?120mmの繊維長を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ランダムに結合した熱可塑性繊維と不連続のランダム炭素繊維、ランダム炭素繊維束又はそれらの混合物とからの実質的に均一な混合物を、カードプロセスによって方向付けし、繊維マットへと整え、熱可塑性繊維の少なくとも部分を熱によって接着性状態にし、圧密化し、かつシート材料へと圧縮し、その後に冷却することを特徴とする、請求項1又は2に記載のシート状の半製品の製造法。
【請求項4】
使用した炭素繊維、炭素繊維束又はそれらの混合物が、10mm?150mmの平均繊維長を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
紡織繊維系の炭素廃材の処理及び/又は炭素繊維複合部材の材料リサイクルに由来している少なくとも一部の炭素繊維、並びに細断された一次繊維(新しい物)の一部を使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
炭素繊維、炭素繊維束又はそれらの混合物と熱可塑性の結合繊維とから成る混合物を、繊維混合プロセスによってマット形成の間に作製することを特徴とする、請求項1、2、4又は5に記載の方法。
【請求項7】
最初に方向が不規則に存在している炭素繊維、炭素繊維束又はそれらの混合物の適切な配向度を、繊維複合材料(FKV)中で1:2?1:7の範囲の複合材料強度及び/又は複合材料剛性の異方性が達成されるようにカード機により作り出すことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-05-11 
出願番号 特願2012-553209(P2012-553209)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B29B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮崎 大輔原田 隆興  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 守安 智
佐藤 健史
登録日 2016-03-18 
登録番号 特許第5901540号(P5901540)
権利者 エスジーエル オートモーティブ カーボン ファイバーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
発明の名称 繊維複合材料からのシート状の半製品の製造法  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 バーナード 正子  
代理人 バーナード 正子  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
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