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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G01F 審判 全部申し立て 2項進歩性 G01F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G01F |
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管理番号 | 1341965 |
異議申立番号 | 異議2017-700943 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-10-04 |
確定日 | 2018-05-21 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6106788号発明「熱式流量計」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6106788号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。 特許第6106788号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6106788号の請求項1-14に係る特許についての出願は、平成29年3月10日にその特許権が設定登録され、その後、平成29年10月4日に特許異議申立人金田政毅により特許異議の申立てがされ、平成29年12月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年2月20日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人金田政毅から平成30年4月9日付けで意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 ア 「流体の物理量を測定する熱式の物理量検出部を備える熱式物理量測定装置において」とあるのを、「流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において」に、 「前記物理量検出部と電気的に接続され、第1樹脂で包含される処理部」とあるのを、「前記流量検出部と電気的に接続され、第1樹脂で包含される処理部」に、 イ 「前記接続端子と前記外部接続端子との接続部は、前記第2樹脂により被覆されていることを特徴とする熱式物理量測定装置」とあるのを、「前記接続端子と前記外部接続端子との接続部は、互いに同じ方向に延びた状態で密着して、前記第2樹脂により被覆されており、当該接続部は溶接によって接続されていることを特徴とする熱式流量計」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「流体の物理量を測定する熱式の物理量検出部を備える熱式物理量測定装置において」とあるのを、「流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において」に、 「前記物理量検出部」とあるのを、「前記流量検出部」に、 「前記物理量検出部と電気的に接続され、第1樹脂で包含される処理部」とあるのを、「前記流量検出部と電気的に接続され、第1樹脂で包含される処理部」に、 「回路パッケージと」とあるのを、「回路パッケージを有し」 「外部接続端子を固定する第2樹脂により、前記接続端子の前記一端側において前記外部接続端子と前記接続端子とが接続された接続部が被覆されていることを特徴とする熱式物理量測定装置」とあるのを、「外部接続端子を固定する第2樹脂により、前記接続端子の前記一端側において前記外部接続端子と前記接続端子とが接続された接続部が被覆されており、当該接続部は、前記接続端子と前記外部接続端子が互いに同じ方向に延びた状態で密着しており、当該接続部は溶接によって接続されていることを特徴とする熱式流量計」に、訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「流体の物理量を測定する熱式の物理量検出部を備える熱式物理量測定装置において」とあるのを、「流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において」に、 「前記物理量検出部を備えるとともに、該前記物理量検出部に電気的に接続された接続端子が一端側において第1樹脂から露出するように前記接続端子を前記第1樹脂により一体的にモールド成形された回路パッケージ」とあるのを、「前記流量検出部を備えるとともに、該前記流量検出部に電気的に接続された接続端子が一端側において第1樹脂から露出するように前記接続端子を前記第1樹脂により一体的にモールド成形された回路パッケージ」に、 「前記熱式物理量測定装置の一部を形成する第2樹脂に固定されるとともに、一端側において前記第2樹脂から露出し、他端側において前記接続端子の前記第1樹脂から露出した部分に電気的に接続された外部接続端子」とあるのを、「前記流量計の一部を形成する第2樹脂に固定されるとともに、一端側において前記第2樹脂から露出し、他端側において前記接続端子の前記第1樹脂から露出した部分に電気的に接続された外部接続端子」に、 「前記回路パッケージの前記接続端子と前記外部接続端子とが電気的に接続された接続部が前記第2樹脂で被覆されていることを特徴とする熱式物理量測定装置」とあるのを、「前記回路パッケージの前記接続端子と前記外部接続端子とが電気的に接続された接続部が前記第2樹脂で被覆されており、当該接続部は、前記接続端子と前記外部接続端子が互いに同じ方向に延びた状態で密着しており、当該接続部は溶接によって接続されていることを特徴とする熱式流量計」に、訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「流体の物理量を測定する熱式の物理量検出部を備える熱式物理量測定装置において」とあるのを、「流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において」に、 「前記物理量検出部を備えるとともに、該物理量検出部に電気的に接続された接続端子が一端側において第1樹脂から露出するように前記接続端子を前記第1樹脂により一体的にモールド成形された回路パッケージ」とあるのを、「前記流量検出部を備えるとともに、該流量検出部に電気的に接続された接続端子が一端側において第1樹脂から露出するように前記接続端子を前記第1樹脂により一体的にモールド成形された回路パッケージ」に、 「前記回路パッケージの前記接続端子と前記外部接続端子とが電気的に接続された接続部が、前記コネクタ部とともに一体的に成形された前記第2樹脂で被覆されていることを特徴とする熱式物理量測定装置」とあるのを、「前記回路パッケージの前記接続端子と前記外部接続端子とが電気的に接続された接続部が、前記コネクタ部とともに一体的に成形された前記第2樹脂で被覆されており、当該接続部は、前記接続端子と前記外部接続端子が互いに同じ方向に延びた状態で密着しており、当該接続部は溶接によって接続されていることを特徴とする熱式流量計」に、訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、 「流体の物理量を測定する熱式の物理量検出部を備える熱式物理量測定装置において」とあるのを、「流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において」に、 「該熱式物理量測定装置は、前記物理量検出部を備えるとともに、該物理量検出部に電気的に接続された接続端子が一端側において第1樹脂から露出するように前記接続端子を前記第1樹脂により一体的にモールド成形された回路パッケージ」とあるのを、「該熱式流量計は、前記流量検出部を備えるとともに、該流量検出部に電気的に接続された接続端子が一端側において第1樹脂から露出するように前記接続端子を前記第1樹脂により一体的にモールド成形された回路パッケージ」に、 「前記回路パッケージの前記接続端子と前記外部接続端子とが電気的に接続された接続部が、前記第2樹脂からなる樹脂被覆部で被覆されており」とあるのを、「前記回路パッケージの前記接続端子と前記外部接続端子とが電気的に接続された接続部が、前記第2樹脂からなる樹脂被覆部で被覆されており、当該接続部は、前記接続端子と前記外部接続端子が互いに同じ方向に延びた状態で密着しており、当該接続部は溶接によって接続されており」に、 「前記コネクタ部と前記樹脂被覆部とは、一体的に成形されていることを特徴とする熱式物理量測定装置」とあるのを、「前記コネクタ部と前記樹脂被覆部とは、一体的に成形されていることを特徴とする熱式流量計」に、訂正する。 (6)訂正事項6-9、12-14 特許請求の範囲の請求項6-9、12-14に「熱式物理量測定装置」とあるのを、「熱式流量計」に訂正する。 (7)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に、 ア 「熱式物理量測定装置」とあるのを、「熱式流量計」に、 イ 「前記副通路の一部を形成するとともに、前記回路パッケージを固定するように、前記接続部を被覆した前記第2樹脂とともに一体的にモールド成形されたハウジング」とあるのを、「主通路から取り込まれた被計測気体を流すための副通路と、前記副通路の一部を形成するとともに、前記回路パッケージを固定するように、前記接続部を被覆した前記第2樹脂とともに一体的にモールド成形されたハウジング」に訂正する。 (8)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に、 「熱式物理量測定装置」とあるのを、「熱式流量計」に、 「前記副通路の一部を形成するとともに、前記回路パッケージを固定するように、前記コネクタ部とともに、第2樹脂で一体的にモールド成形されたハウジング」とあるのを、「主通路から取り込まれた被計測気体を流すための副通路と、前記副通路の一部を形成するとともに、前記回路パッケージを固定するように、前記コネクタ部とともに、第2樹脂で一体的にモールド成形されたハウジング」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1の「ア」に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明の段落【0001】には、「本発明は熱式流量計に関する。」と記載されていることから、訂正事項1の「ア」に係る訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、測定する「物理量」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項の「イ」に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明の段落【0076】には、「回路パッケージ400の接続端子412と外部端子306のハウジング302側に位置する外部端子内端361とがそれぞれスポット溶接あるいはレーザ溶接、または加締めなどにより電気的に接続され、端子接続部320が形成されている。」と記載され、図11より、接続端子412と外部端子306は、互いに同じ方向で密着していることが見て取れるので、訂正事項1の「イ」に係る訂正は、明細書及び図面に記載された事項の範囲内において、接続端子と外部接続端子との「接続部」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2-9について 訂正事項1と同様に、訂正事項2-9は、明細書及び図面に記載された事項の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項10について ア 訂正事項10の「ア」に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明の段落【0001】には、「本発明は熱式流量計に関する。」と記載されていることから、訂正事項10の「ア」に係る訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、測定する「物理量」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項10の「イ」に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明の段落【0037】には、「ハウジング302はフランジ312から計測部310が主通路124の中心方向に延びる構造を成しており、その先端側に副通路を成形するための副通路溝が設けられている。」「副通路の入口350を成形するための入口溝351と出口352を成形するための出口溝353が、ハウジング302の先端部に設けられているので、主通路124の内壁面から離れた部分の気体を、言い換えると主通路124の中央部分に近い部分を流れている気体を被計測気体30として入口350から取り込むことができる。」と記載されていることから、訂正事項10の「イ」に係る訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、「副通路」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項11-14について 訂正事項10と同様に、訂正事項11-14は、明細書に記載された事項の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、これらの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項及び第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1-14に係る発明(以下「本件発明1」-「本件発明14」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1-14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において、 前記流量検出部と電気的に接続され、第1樹脂で包含される処理部と、前記処理部に電気的に接続され、一端側において前記第1樹脂から露出し、他端側において前記第1樹脂で覆われた接続端子と、を備える回路パッケージと、 一端側において第2樹脂から露出し、他端側において前記接続端子の前記一端側で接続される外部接続端子と、を有し、 前記接続端子と前記外部接続端子との接続部は、互いに同じ方向に延びた状態で密着して、前記第2樹脂により被覆されており、当該接続部は溶接によって接続されていることを特徴とする熱式流量計。 【請求項2】 流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において、 前記流量検出部と、前記流量検出部に電気的に接続され、第1樹脂で包含される処理部と、前記処理部に電気的に接続され、一端側において前記第1樹脂から露出し、他端側において前記第1樹脂で覆われた接続端子と、を備える回路パッケージを有し、 外部接続端子を固定する第2樹脂により、前記接続端子の前記一端側において前記外部接続端子と前記接続端子とが接続された接続部が被覆されており、当該接続部は、前記接続端子と前記外部接続端子が互いに同じ方向に延びた状態で密着しており、当該接続部は溶接によって接続されていることを特徴とする熱式流量計。 【請求項3】 流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において、 前記流量検出部を備えるとともに、該前記流量検出部に電気的に接続された接続端子が一端側において第1樹脂から露出するように前記接続端子を前記第1樹脂により一体的にモールド成形された回路パッケージと、 前記流量計の一部を形成する第2樹脂に固定されるとともに、一端側において前記第2樹脂から露出し、他端側において前記接続端子の前記第1樹脂から露出した部分に電気的に接続された外部接続端子と、を少なくとも備え、 前記回路パッケージの前記接続端子と前記外部接続端子とが電気的に接続された接続部が前記第2樹脂で被覆されおり、当該接続部は、前記接続端子と前記外部接続端子が互いに同じ方向に延びた状態で密着しており、当該接続部は溶接によって接続されていることを特徴とする熱式流量計。 【請求項4】 流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において、 前記流量検出部を備えるとともに、該流量検出部に電気的に接続された接続端子が一端側において第1樹脂から露出するように前記接続端子を前記第1樹脂により一体的にモールド成形された回路パッケージと、 第2樹脂からなるコネクタ部に固定されるとともに、一端側において外部の端子に接続可能なように前記コネクタ部から露出し、他端側において、前記接続端子の前記第1樹脂から露出した部分に電気的に接続された外部接続端子と、を少なくとも備え、 前記回路パッケージの前記接続端子と前記外部接続端子とが電気的に接続された接続部が、前記コネクタ部とともに一体的に成形された前記第2樹脂で被覆されており、当該接続部は、前記接続端子と前記外部接続端子が互いに同じ方向に延びた状態で密着しており、当該接続部は溶接によって接続されていることを特徴とする熱式流量計。 【請求項5】 流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において、 該熱式流量計は、前記流量検出部を備えるとともに、該流量検出部に電気的に接続された接続端子が一端側において第1樹脂から露出するように前記接続端子を前記第1樹脂により一体的にモールド成形された回路パッケージと、 第2樹脂からなるコネクタ部に固定されるとともに、一端側において外部の端子に接続可能なように前記コネクタ部から露出し、他端側において、前記接続端子の前記第1樹脂から露出した部分に電気的に接続された外部接続端子と、を少なくとも備え、 前記回路パッケージの前記接続端子と前記外部接続端子とが電気的に接続された接続部が、前記第2樹脂からなる樹脂被覆部で被覆されており、当該接続部は、前記接続端子と前記外部接続端子が互いに同じ方向に延びた状態で密着しており、当該接続部は溶接によって接続されており、 前記コネクタ部と前記樹脂被覆部とは、一体的に成形されていることを特徴とする熱式流量計。 【請求項6】 前記接続端子の前記第1樹脂から露出した部分全体が、前記接続部を被覆した前記第2樹脂で被覆されていることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の熱式流量計。 【請求項7】 前記第2樹脂で被覆された前記接続端子の表面のうち、少なくとも前記第1樹脂で被覆された前記接続端子の表面に隣接する部分には、粗化処理がされていることを特徴とする請求項6に記載の熱式流量計。 【請求項8】 前記回路パッケージを構成する第1樹脂に被覆された接続端子の表面のうち、少なくとも、前記第2樹脂が被覆された前記接続端子の表面に隣接する部分には、粗化処理がされていることを特徴とする請求項6または7に記載の熱式流量計。 【請求項9】 前記接続部を被覆した前記第2樹脂と前記回路パッケージの第1樹脂との境界部には、前記第1樹脂および前記第2樹脂により、溝部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の熱式流量計。 【請求項10】 前記熱式流量計は、 主通路から取り込まれた被計測気体を流すための副通路と、 前記副通路の一部を形成するとともに、前記回路パッケージを固定するように、前記接続部を被覆した前記第2樹脂とともに一体的にモールド成形されたハウジングを備えていることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の熱式流量計。 【請求項11】 前記熱式流量計は、 主通路から取り込まれた被計測気体を流すための副通路と、 前記副通路の一部を形成するとともに、前記回路パッケージを固定するように、前記コネクタ部とともに、第2樹脂で一体的にモールド成形されたハウジングを備えていることを特徴とする請求項4または5に記載の熱式流量計。 【請求項12】 前記ハウジングは、前記回路パッケージの前記接続端子を含む部分を収納する回路室を形成するための回路室形成壁が形成されており、 前記接続部を被覆した第2樹脂は、前記回路室形成壁の一部を構成していることを特徴とする請求項10または11に記載の熱式流量計。 【請求項13】 前記接続端子は、銅合金からなる母材と、該母材の表面に被覆された銅またはニッケルからなる下地めっき層と、該下地めっき層の表面に被覆された錫からなる表層めっき層とからなることを特徴とする請求項1?12のいずれかに記載の熱式流量計。 【請求項14】 前記外部接続端子は、リン青銅合金からなる母材と、該母材の表面に被覆された銅からなる下地めっき層と、該下地めっき層の表面に被覆された錫からなる表層めっき層とからなることを特徴とする請求項1?13のいずれかに記載の熱式流量計。」 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1-14に係る特許に対して平成29年12月19日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 取消理由1 本件特許の下記の請求項1、2、6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 取消理由2 本件特許の下記の請求項1-8に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 取消理由3 本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 記 1 取消理由1(特許法第29条第1項第3号)、取消理由2(特許法第29条第2項)について (1)刊行物 刊行物1:特開2011-252796号公報(甲第1号証) 刊行物2:特開2012-64880号公報(甲第2号証) 刊行物3:特開2008-111758号公報(甲第3号証) 2 取消理由3(特許法第36条第6項第1号及び第2号)について (1)特許法第36条第6項第1号 発明の詳細な説明には、「流量」以外の「物理量」を測定することは記載されていない。 よって、本件発明1-14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)特許法第36条第6項第2号 請求項10の「前記副通路」との記載は、不明確である。 よって、本件発明10-14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 刊行物の記載事項・引用発明 (1)刊行物1 刊行物1には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a 「【0027】 そして、空気流量測定装置1は、吸気路2を流れる空気の一部を取り込むとともに、取り込んだ空気との間に伝熱現象を発生させることで空気流量としての質量流量を直接的に測定するものである。すなわち、空気流量測定装置1は、取り込んだ空気が通過する内部流路3を形成する筐体4と、内部流路3に配されるセンサチップ5とを備え、センサチップ5により、取り込んだ空気との間に伝熱現象を発生させ、空気流量に応じた電気信号を発生させる。 【0028】 また、空気流量測定装置1は、センサチップ5が発生する電気信号を処理する回路チップ6、回路チップ6で処理された電気信号を外部の電子制御装置(以下、ECUと呼ぶ。:図示せず。)に出力するための外部端子7等を備える。そして、ECUは、空気流量測定装置1から得られる電気信号に基づいてエンジンに吸入される空気の流量を把握するとともに、把握した空気流量に基づいて燃料噴射制御等の各種の制御処理を実行する。」 b 「【0031】 センサチップ5、回路チップ6および外部端子7等は、1つの構成部品としてのセンサアセンブリ14として組み立てられている(図3参照)。そして、センサアセンブリ14は、センサチップ5が内部流路3に露出するように筐体4に挿入されて固定される。また、センサアセンブリ14の組み立てにおいて、回路チップ6および外部端子7は、インサート成形によりセンサアセンブリ14に組み込まれ、センサチップ5は、インサート成形時に成形された保持部15に接着剤により固定されてセンサアセンブリ14に組み込まれる。 【0032】 なお、センサチップ5や回路チップ6は、半導体膜からなる各種の素子(図示せず。)を有しており、これらの素子への通電等により、空気との伝熱現象、ならびに電気信号の発生および処理を行う。また、センサチップ5の素子と回路チップ6の素子とはボンディングワイヤ16により導通している。そして、ボンディングワイヤ16は、ポッティング材17により覆われて保護され、インサート成形時に設けられる樹脂部分とともにセンサチップ5と回路チップ6とを電気的に導通させるボンディング部18を形成する。」 c 「【0037】 また、センサアセンブリ14の内、回路チップ6および外部端子7を含む部分は、筐体4の外部に配されて筐体外配置部31をなす。筐体外配置部31は、板状であって1つの面方向を指向しており、この面方向に平行な表面32および裏面33、ならびに表面32および裏面33の面方向への広がりを画する周縁34を有する。 【0038】 また、筐体外配置部31は、樹脂モールドにより形成されたモールド部39により(図5参照)、例えば、筐体4およびターミナルアセンブリ36と一体化されている。なお、ターミナルアセンブリ36は、ECUに電気信号を出力するための端子37、38を含むものであり、モールド部39によって外部端子7と端子37とが導通している。」 d 図3 図3より、回路チップ6は、インサート成形時に設けられる樹脂部分で包含され、外部端子7は、回路チップ6側が樹脂部分で覆われ、反対側が樹脂部分から露出していることが見て取れる。 e 図5 図5より、端子38が、モールド部39から露出し、端子37と外部端子7との接続部が、互いにほぼ直交して、モールド部39により被覆されており、外部端子7の樹脂部分から露出している部分全体が、モールド部39により被覆されていることが見て取れる。 上記a?eより、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた刊行物1の記載箇所を示す。)。 「流れる空気との間に伝熱現象を発生させ、空気流量を測定するものであって、空気との間に伝熱現象を発生させ、空気流量に応じた電気信号を発生させるセンサチップ5を備える空気流量測定装置1において(【0027】)、 センサチップ5が発生する電気信号を処理する回路チップ6、回路チップ6で処理された電気信号を外部に出力するための外部端子7等を備え(【0028】)、 センサチップ5、回路チップ6および外部端子7等は、1つの構成部品としてのセンサアセンブリ14として組み立てられており、 回路チップ6および外部端子7は、インサート成形時に設けられる樹脂部分によりセンサアセンブリ14に組み込まれ(【0031】、【0032】)、 回路チップ6は、インサート成形時に設けられる樹脂部分で包含され、外部端子7は、回路チップ6側が樹脂部分で覆われ、反対側が樹脂部分から露出しており(図3)、 センサアセンブリ14の内、回路チップ6および外部端子7を含む部分は、筐体4の外部に配されて筐体外配置部31をなし(【0037】)、 筐体外配置部31は、樹脂モールドにより形成されたモールド部39により、筐体4およびターミナルアセンブリ36と一体化されており、 ターミナルアセンブリ36は、ECUに電気信号を出力するための端子37、38を含むものであり、モールド部39によって外部端子7と端子37とが導通しており(【0038】)、 端子38が、モールド部39から露出し、端子37と外部端子7との接続部が、互いにほぼ直交して、モールド部39により被覆されており、 外部端子7の樹脂部分から露出している部分全体が、モールド部39により被覆されている(図5)、 空気流量測定装置1。」 (2)刊行物2には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0025】 このリードフレーム3は、例えば銅合金材よりなる金属プレス加工品である。図1に示すリードフレーム3は、作図の便宜上、模式的に描かれているが、実際には図2に示すように板状のものである。リードフレーム3は、銅合金に限らず、その他、アルミニウム、アルミニウム合金、42アロイ(42mass%Ni-Fe合金)などの鉄系合金など適宜な金属導電材料を使用することが可能である。リードフレーム3の一部(被封止部)に封止樹脂5が密着するプレス加工の粗面(粗化処理部)7が形成される。」 (3)刊行物3には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0016】 信号電極4の表面は上述したように表面処理が施されている。この実施の形態1では、表面処理としてアルカリ洗浄剤や空焼きなどによる脱脂,表面の酸化膜除去,そしてショットブラストで表面に凹凸を付ける粗面化を行う。また、樹脂ライニング3の材質をフッ素樹脂とし、信号電極4の表面処理面4bにフッ素樹脂のコーティング4cを施し、この状態でライニング成形を行ったり、ライニング材と熱溶着したりして、樹脂ライニング3中に信号電極4を設けている。図2にこの場合の信号電極4、表面処理面4b、フッ素樹脂のコーティング4c、樹脂ライニング3の積層構造の概略を示す。」 4 判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア 取消理由1(特許法第29条第1項第3号)、取消理由2(特許法第29条第2項)について (ア)本件発明1 a 対比 本件発明1と引用発明を対比する。 (a)引用発明の「流れる空気」、「空気流量」、「センサチップ5」、「樹脂部分」、「回路チップ6」、「外部端子7」、「センサアセンブリ14」、「モールド部39」、「端子37、38を含む」「ターミナルアセンブリ36」は、それぞれ、本件発明1の「流体」、「流量」、「流量検出部」、「第1樹脂」、「処理部」、「接続端子」、「回路パッケージ」、「第2樹脂」、「外部接続端子」に相当する。 (b)引用発明の「空気との間に伝熱現象を発生させ、空気流量に応じた電気信号を発生させるセンサチップ5」は、本件発明1の「熱式の流量検出部」に相当する。 したがって、引用発明の「流れる空気との間に伝熱現象を発生させ、空気流量を測定する」「センサチップ5とを備える空気流量測定装置1」は、本件発明1の「流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計」に相当する。 (c)引用発明の「インサート成形時に設けられる樹脂部分で包含され」た、「センサチップ5が発生する電気信号を処理する回路チップ6」は、本件発明1の「前記流量検出部と電気的に接続され、第1樹脂で包含される処理部」に相当する。 また、引用発明の「回路チップ6側が樹脂部分で覆われ、反対側が樹脂部分から露出し」、「回路チップ6で処理された電気信号を外部に出力するための外部端子7」は、本件発明1の「前記処理部に電気的に接続され、一端側において前記第1樹脂から露出し、他端側において前記第1樹脂で覆われた接続端子」に相当する。 したがって、引用発明の「回路チップ6および外部端子7」が、「1つの構成部品として」「組み立てられ」た「センサアセンブリ14」は、本件発明1の「前記流量検出部と電気的に接続され、第1樹脂で包含される処理部と、前記処理部に電気的に接続され、一端側において前記第1樹脂から露出し、他端側において前記第1樹脂で覆われた接続端子と、を備える回路パッケージ」に相当する。 (d)引用発明の「モールド部39によって」「端子37」と導通している「外部端子7」の部分は、「樹脂部分から露出」している側であるから、本件発明1の「前記接続端子の前記一端側」に相当するので、 引用発明の「端子38が、モールド部39から露出し」、「モールド部39によって外部端子7と端子37とが導通して」いる「端子37、38を含む」「ターミナルアセンブリ36」は、本件発明1の「一端側において第2樹脂から露出し、他端側において前記接続端子の前記一端側で接続される外部接続端子」に相当する。 (e)引用発明の「ターミナルアセンブリ36」は、「端子37」を含むものであるから、引用発明の「端子37と外部端子7との接続部が、互いにほぼ直交して、モールド部39により被覆されており」と、本件発明1の「前記接続端子と前記外部接続端子との接続部は、互いに同じ方向に延びた状態で密着して、前記第2樹脂により被覆されており、当該接続部は溶接によって接続されている」とは、「前記接続端子と前記外部接続端子との接続部は、前記第2樹脂により被覆されて」いる点で共通する。 すると、本件発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において、 前記流量検出部と電気的に接続され、第1樹脂で包含される処理部と、前記処理部に電気的に接続され、一端側において前記第1樹脂から露出し、他端側において前記第1樹脂で覆われた接続端子と、を備える回路パッケージと、 一端側において第2樹脂から露出し、他端側において前記接続端子の前記一端側で接続される外部接続端子と、を有し、 前記接続端子と前記外部接続端子との接続部は、前記第2樹脂により被覆されていることを特徴とする熱式流量計。」 (相違点1) 接続端子と外部接続端子との接続部が、本件発明1は、「互いに同じ方向に延びた状態で密着して」いるのに対して、引用発明は、「互いにほぼ直交して」おり、そのような特定がない点。 (相違点2) 接続端子と外部接続端子との接続部が、本件発明1は、「溶接」によって接続されるのに対して、引用発明は、「外部端子7と端子37とが導通して」いるが、どのように接続されているのか特定がない点。 b 判断 (a)取消理由1(特許法第29条第1項第3号)について 上記「a 対比」で検討したように、上記相違点1及び上記相違点2に係る本件発明1の構成は、引用発明に記載されておらず実質的な相違点であるから、本件発明1は、引用発明であるとはいえない。 (b)取消理由2(特許法第29条第2項)について 上記相違点1について検討する。 引用発明は、端子37と外部端子7との接続部が、互いにほぼ直交しているものであるが、刊行物1には、端子37と外部端子7の接続の態様については、「モールド部39によって外部端子7と端子37とが導通している。」(段落【0038】)と記載されているのみであり、端子37と外部端子7の方向を変えることの示唆等は記載されていない。 そして、刊行物2及び刊行物3にも、接続端子と外部接続端子との接続部を、互いに同じ方向に延びた状態で密着させることは記載されていないことから、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易になし得たこととはいえない。 よって、本件発明1は、上記相違点2について検討するまでもなく、引用発明、刊行物1及び刊行物2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (イ)本件発明2-14 本件発明2-14も、上記相違点1に係る本件発明1の「前記接続端子と前記外部接続端子との接続部は、互いに同じ方向に延びた状態で密着して」と同一又は対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由によって、引用発明であるとはいえず、かつ、引用発明、刊行物1及び刊行物2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 イ 取消理由3(特許法第36条第6項第1号及び第2号)について (ア)特許法第36条第6項第1号 a 本件発明1-5 訂正事項1-5により、請求項1-5に「流体の物理量を測定する熱式の物理量検出部を備える熱式物理量測定装置において」とあるのを、「流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において」に訂正したことにより、本件発明1-5は、発明の詳細な説明に記載したものとなった。 b 本件発明6-14 請求項1-5を直接又は間接に引用する本件発明6-14は、本件発明1-5と同様に、発明の詳細な説明に記載したものとなった。 (イ)特許法第36条第6項第2号 a 本件発明10、11 訂正事項10、11により、請求項10、11に「前記副通路の一部を形成するとともに、前記回路パッケージを固定するように、前記接続部を被覆した前記第2樹脂とともに一体的にモールド成形されたハウジング」とあるのを、「主通路から取り込まれた被計測気体を流すための副通路と、前記副通路の一部を形成するとともに、前記回路パッケージを固定するように、前記接続部を被覆した前記第2樹脂とともに一体的にモールド成形されたハウジング」に訂正したことにより、本件発明10、11は、明確となった。 b 本件発明12-14 請求項10、11を直接又は間接に引用する本件発明12-14は、本件発明10、11と同様に、明確となった。 ウ 特許異議申立人の意見について (ア)特許異議申立人金田政毅の、平成30年4月9日付けの意見書における主張の概略は次の通りである。 a 刊行物1(甲第1号証)、甲第4号証:特開2011-106868号公報及び周知技術に基づく進歩性違反 (a)訂正事項1により訂正された、本件発明1の「前記接続端子と前記外部接続端子との接続部は、互いに同じ方向に延びた状態で密着」する点は、甲第4号証の段落【0006】-【0008】、【0026】、図3及び図5に開示されている。 そして、刊行物1及び甲第4号証は、共通した技術分野の文献であり、共通の作用・機能を開示し、更に、刊行物1及び甲第4号証は、出願人だけでなく、発明者も共通しており、出願時期も1年も離れておらず、互いに関連性が高い公知文献同士といえることから、甲第4号証の図3及び図5は、刊行物1の図5に開示された外部端子7と端子37の簡略的に示された接続構成を、具体的に開示したものと理解できる。 また、そのように理解しなかったとしても、刊行物1の端子37と外部端子7とが垂直に接続された構成に代替して、甲第4号証の接続端子と外部接続端子との接続部が、互いに同じ方向に延びた状態で密着することを適用することに何ら困難性はない。 (b)空気流量測定装置の技術分野において、溶接部が「溶接によって接続されている」点は、周知技術であり、接続端子と外部接続端子の接続部分に、周知技術である溶接を採用することは何ら困難ではない。(意見書第2頁29行-第4頁第27行) b 刊行物1及び周知技術に基づく進歩性違反 接続端子と外部接続端子との接続部が互いに同じ方向に延びた状態で密着し、溶接によって接続されていることは、以下の文献に記載されているように周知の構造である。 甲第7号証:特開2011-75357号公報 甲第8号証:特開2012-52809号公報 甲第10号証:特開平9-304416号公報 甲第11号証:特開2005-268539号公報 甲第12号証:特開2010-242572号公報 したがって、刊行物1記載の発明に、接続部をより強固にするために、周知の構造を置換することに何ら困難性はない。(意見書第4頁第28行-第5頁30行) (イ)判断 a 刊行物1(甲第1号証)、甲第4号証:特開2011-106868号公報及び周知技術に基づく進歩性違反について 刊行物1の図5から、端子37と外部端子7との接続部が、互いにほぼ直交していることが見て取れるが、端子37と外部端子7の接続の態様については、「モールド部39によって外部端子7と端子37とが導通している。」(段落【0038】)と記載されているのみであり、端子37と外部端子7との接続部において、甲第4号証の図3及び図5に記載のように、端子37と外部端子7との接続部が、互いに同じ方向に延びた状態で密着することは記載されておらず、また、自明なことともいえない。 そして、甲第4号証の図3から、端子8と、ターミナルピン4の端子8と対向する部分との接続部は、互いに同じ方向に延びた状態であることは見て取れるが、そのような接続部の構造にする理由や作用などが何ら記載されていない。 よって、甲第4号証の図3に記載された接続部を、端子37と外部端子7との接続部が互いにほぼ直交している刊行物1記載の発明に、適用する動機は見当たらない。 したがって、異議申立人の主張は理由がない。 b 刊行物1及び周知技術に基づく進歩性違反について 甲第7号証には「圧力検出用入出力端子602とコネクタ端子209とを例えば溶接などで接続し」(段落【0047】)ていること、及び、図8には、圧力検出用入出力端子602とコネクタ端子209との接続部が、互いに同じ方向に延びた状態であることが記載されている。 甲第8号証には「入出力用端子部材20はケース部材21から突出するように設けられており、コネクタ端子18と同列に配置される圧力検出装置用コネクタターミナル24と溶接等で電気的に接続され」(段落【0020】)ていること、及び、図2には、入出力用端子部材20と圧力検出装置用コネクタターミナル24との接続部が、互いに同じ方向に延びた状態であることが記載されている。 甲第10号証には「リードフレームから外部に引き出された直線状のリード8に、L字形のターミナル7をスポット溶接してターミナルアッセンブリ9を構成し」(段落【0003】)ていること、及び、図4には、リード8とターミナル7との接続部が、互いに同じ方向に延びた状態であることが記載されている。 甲第11号証には「パイプ状ターミナル34の先端34aと外部接続用ターミナル35は、溶接によって機械的および電気的に接続されるものであり、この溶接時にパイプ状ターミナル34と外部接続用ターミナル35が強く押し付けられてパイプ状ターミナル34の先端34aを押しつぶされた際に、押しつぶされたパイプ状ターミナル34によって内部の導線36の絶縁被覆が破壊されて、コイル31の導線36とパイプ状ターミナル34の電気的な接続が成されるものである」(段落【0030】)こと、及び、図1には、パイプ状ターミナル34の先端34aと外部接続用ターミナル35との接続部が、互いに同じ方向に延びた状態であることが記載されている。 甲第12号証には「リード線44と駆動用ターミナル第2板部452を当接させ、溶接等によりリード線44と駆動用ターミナル第2板部452とを接続する」(段落【0043】)こと、及び、図3には、リード線44と駆動用ターミナル第2板部452との接続部が、互いに同じ方向に延びた状態であることが記載されている。 甲第7号証-甲第12号証に記載されているように、接続端子と外部接続端子との接続部を溶接によって接続することは周知技術であると認められる。 しかし、接続端子と外部接続端子との接続部を、互いに同じ方向に延びた状態にすることは、上記のとおり、甲第7号証-甲第12号証における図面に記載されている事項に過ぎないから、接続端子と外部接続端子との接続部を溶接によって接続させることと、両者を互いに同じ方向に延びた状態で接続することとを技術的に関連させて一つの技術的事項(周知の構造)として捉えることは困難である。 また、刊行物1記載の発明において、端子37と外部端子7との接続部は、互いにほぼ直交しているが、かかる接続部の構成を変更し、両者を互いに同じ方向に延びた状態で、溶接によって接続する構成を敢えて採用すべき動機付けも見当たらない。 したがって、異議申立人の主張は理由がない。 第4 むすび したがって、請求項1-14に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1-14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において、 前記流量検出部と電気的に接続され、第1樹脂で包含される処理部と、前記処理部に電気的に接続され、一端側において前記第1樹脂から露出し、他端側において前記第1樹脂で覆われた接続端子と、を備える回路パッケージと、 一端側において第2樹脂から露出し、他端側において前記接続端子の前記一端側で接続される外部接続端子と、を有し、 前記接続端子と前記外部接続端子との接続部は、互いに同じ方向に延びた状態で密着して、前記第2樹脂により被覆されており、当該接続部は溶接によって接続されていることを特徴とする熱式流量計。 【請求項2】 流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において、 前記流量検出部と、前記流量検出部に電気的に接続され、第1樹脂で包含される処理部と、前記処理部に電気的に接続され、一端側において前記第1樹脂から露出し、他端側において前記第1樹脂で覆われた接続端子と、を備える回路パッケージを有し、 外部接続端子を固定する第2樹脂により、前記接続端子の前記一端側において前記外部接続端子と前記接続端子とが接続された接続部が被覆されており、当該接続部は、前記接続端子と前記外部接続端子が互いに同じ方向に延びた状態で密着しており、当該接続部は溶接によって接続されていることを特徴とする熱式流量計。 【請求項3】 流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において、 前記流量検出部を備えるとともに、該前記流量検出部に電気的に接続された接続端子が一端側において第1樹脂から露出するように前記接続端子を前記第1樹脂により一体的にモールド成形された回路パッケージと、 前記流量計の一部を形成する第2樹脂に固定されるとともに、一端側において前記第2樹脂から露出し、他端側において前記接続端子の前記第1樹脂から露出した部分に電気的に接続された外部接続端子と、を少なくとも備え、 前記回路パッケージの前記接続端子と前記外部接続端子とが電気的に接続された接続部が前記第2樹脂で被覆されており、当該接続部は、前記接続端子と前記外部接続端子が互いに同じ方向に延びた状態で密着しており、当該接続部は溶接によって接続されていることを特徴とする熱式流量計。 【請求項4】 流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において、 前記流量検出部を備えるとともに、該流量検出部に電気的に接続された接続端子が一端側において第1樹脂から露出するように前記接続端子を前記第1樹脂により一体的にモールド成形された回路パッケージと、 第2樹脂からなるコネクタ部に固定されるとともに、一端側において外部の端子に接続可能なように前記コネクタ部から露出し、他端側において、前記接続端子の前記第1樹脂から露出した部分に電気的に接続された外部接続端子と、を少なくとも備え、 前記回路パッケージの前記接続端子と前記外部接続端子とが電気的に接続された接続部が、前記コネクタ部とともに一体的に成形された前記第2樹脂で被覆されており、当該接続部は、前記接続端子と前記外部接続端子が互いに同じ方向に延びた状態で密着しており、当該接続部は溶接によって接続されていることを特徴とする熱式流量計。 【請求項5】 流体の流量を測定する熱式の流量検出部を備える熱式流量計において、 該熱式流量計は、前記流量検出部を備えるとともに、該流量検出部に電気的に接続された接続端子が一端側において第1樹脂から露出するように前記接続端子を前記第1樹脂により一体的にモールド成形された回路パッケージと、 第2樹脂からなるコネクタ部に固定されるとともに、一端側において外部の端子に接続可能なように前記コネクタ部から露出し、他端側において、前記接続端子の前記第1樹脂から露出した部分に電気的に接続された外部接続端子と、を少なくとも備え、 前記回路パッケージの前記接続端子と前記外部接続端子とが電気的に接続された接続部が、前記第2樹脂からなる樹脂被覆部で被覆されており、当該接続部は、前記接続端子と前記外部接続端子が互いに同じ方向に延びた状態で密着しており、当該接続部は溶接によって接続されており、 前記コネクタ部と前記樹脂被覆部とは、一体的に成形されていることを特徴とする熱式流量計。 【請求項6】 前記接続端子の前記第1樹脂から露出した部分全体が、前記接続部を被覆した前記第2樹脂で被覆されていることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の熱式流量計。 【請求項7】 前記第2樹脂で被覆された前記接続端子の表面のうち、少なくとも前記第1樹脂で被覆された前記接続端子の表面に隣接する部分には、粗化処理がされていることを特徴とする請求項6に記載の熱式流量計。 【請求項8】 前記回路パッケージを構成する第1樹脂に被覆された接続端子の表面のうち、少なくとも、前記第2樹脂が被覆された前記接続端子の表面に隣接する部分には、粗化処理がされていることを特徴とする請求項6または7に記載の熱式流量計。 【請求項9】 前記接続部を被覆した前記第2樹脂と前記回路パッケージの第1樹脂との境界部には、前記第1樹脂および前記第2樹脂により、溝部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の熱式流量計。 【請求項10】 前記熱式流量計は、 主通路から取り込まれた被計測気体を流すための副通路と、 前記副通路の一部を形成するとともに、前記回路パッケージを固定するように、前記接続部を被覆した前記第2樹脂とともに一体的にモールド成形されたハウジングを備えていることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の熱式流量計。 【請求項11】 前記熱式流量計は、 主通路から取り込まれた被計測気体を流すための副通路と、 前記副通路の一部を形成するとともに、前記回路パッケージを固定するように、前記コネクタ部とともに、第2樹脂で一体的にモールド成形されたハウジングを備えていることを特徴とする請求項4または5に記載の熱式流量計。 【請求項12】 前記ハウジングは、前記回路パッケージの前記接続端子を含む部分を収納する回路室を形成するための回路室形成壁が形成されており、 前記接続部を被覆した第2樹脂は、前記回路室形成壁の一部を構成していることを特徴とする請求項10または11に記載の熱式流量計。 【請求項13】 前記接続端子は、銅合金からなる母材と、該母材の表面に被覆された銅またはニッケルからなる下地めっき層と、該下地めっき層の表面に被覆された錫からなる表層めっき層とからなることを特徴とする請求項1?12のいずれかに記載の熱式流量計。 【請求項14】 前記外部接続端子は、リン青銅合金からなる母材と、該母材の表面に被覆された銅からなる下地めっき層と、該下地めっき層の表面に被覆された錫からなる表層めっき層とからなることを特徴とする請求項1?13のいずれかに記載の熱式流量計。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-05-07 |
出願番号 | 特願2016-92937(P2016-92937) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(G01F)
P 1 651・ 537- YAA (G01F) P 1 651・ 121- YAA (G01F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 森 雅之 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
須原 宏光 中塚 直樹 |
登録日 | 2017-03-10 |
登録番号 | 特許第6106788号(P6106788) |
権利者 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 |
発明の名称 | 熱式流量計 |
代理人 | 戸田 裕二 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 戸田 裕二 |