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審決分類 審判 一部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  H01L
審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H01L
管理番号 1341990
異議申立番号 異議2017-700870  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-13 
確定日 2018-06-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6100564号発明「基板処理装置及び載置台」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6100564号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕、〔13-15〕について訂正することを認める。 特許第6100564号の請求項1ないし2、12ないし15に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6100564号の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、平成25年3月11日(優先権主張 平成25年1月24日)に特許出願され、平成29年3月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年9月13日に特許異議申立人柴田基(以下「特許異議申立人」という)により特許異議の申立てがされ、平成29年11月16日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年1月22日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成30年3月13日付けで意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成30年1月22日に行った訂正請求(以下「本件訂正請求」という)による訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正された部分を示す)
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の導電層に印加された高周波電力により前記所望のガスからプラズマを生成し、該プラズマにより前記載置された基板をプラズマ処理する」とあるのを「前記側面に形成された前記第1の導電層を通じて前記主面に形成された前記第1の導電層に印加された高周波電力により前記所望のガスからプラズマを生成し、該プラズマにより前記載置された基板をプラズマ処理する」に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項13に「前記第1のセラミックスの基材の基板が載置される側の主面及び側面に形成された第1の導電層」とあるのを「前記第1のセラミックスの基材の基板が載置される側の主面及び側面に形成された第1の導電層であって、前記側面に形成された前記第1の導電層を通じて前記主面に形成された前記第1の導電層に高周波電力が印加される前記第1の導電層」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
上記訂正事項1は、請求項1の「第1の導電層に印加された高周波電力」について、「前記側面に形成された前記第1の導電層を通じて前記主面に形成された前記第1の導電層に印加された」ことを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「高周波電力」の「印加」の具体的な手段を特定したことにより、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
さらに、上記訂正事項1に関連して、明細書の段落【0059】には「載置台100の基材100aの最外周の側面には、スパイラルチューブ300が設けられている。スパイラルチューブ300は、反力のある導電性物質で形成されている。スパイラルチューブ300は、導電層100bと支持台104とを電気的に接続するとともに基材100aへの横方向からの力を吸収する。」と記載され、基材100aの側面に形成された導電層100bに、スパイラルチューブ300から通電することが示されている。
また、明細書の段落【0057】には「載置台100には高周波電力が印加され、下部電極としても機能する。ここで、前述したように、本実施形態の載置台100の基材100aはSiCにより形成されている。載置台100にSiC等のセラミックスの基材を使用する場合、セラミックスは電気を通さない。そこで、本実施形態では、SiCの基材上にAlを溶射することで、導電層100bを形成し、導電層100bに高周波電力を印加する。具体的には、導電層100bは、SiCの基材100aのウェハWが載置される側の少なくとも主面及び側面に形成され、高周波電力が印加された際に下部電極となるように構成される。なお、導電層100bは、第1のセラミックスの基材の基板が載置される側の主面及び側面に形成された第1の導電層に相当する。」と記載され、第1の導電層である導電層100bに高周波電力が印加されることも示されている。
そうすると、上記記載から、「前記側面に形成された前記第1の導電層を通じて前記主面に形成された前記第1の導電層に印加された高周波電力」は把握することができるから、上記訂正事項1は、明細書に記載されている事項の範囲内のものであり、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項1により請求項1が訂正されたことにより、当該請求項1を引用する、本件特許異議申立てのされていない請求項3ないし11に係る発明について、特許出願の際に独立して特許を受けることができない理由も発生しない。

イ 訂正事項2について
上記訂正事項2は、請求項13の「主面及び側面に形成された第1の導電層」について、「前記側面に形成された前記第1の導電層を通じて前記主面に形成された前記第1の導電層に高周波電力が印加される」ことに限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「高周波電力」の「印加」の具体的な手段を限定したことにより、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
さらに、上記訂正事項2に関連して、明細書の段落【0059】には上記アで述べたとおり、基材100aの側面に形成された導電層100bに、スパイラルチューブ300から通電することが示されている。
また、明細書の段落【0057】には上記アで述べたとおり、第1の導電層である導電層100bに高周波電力が印加されることも示されている。
そうすると、上記記載から、「前記側面に形成された前記第1の導電層を通じて前記主面に形成された前記第1の導電層に高周波電力が印加される」ことは把握することができるから、上記訂正事項2は、明細書に記載されている事項の範囲内のものであり、新規事項の追加に該当しない。

ウ 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし12は、請求項2ないし12が、訂正の請求の対象である請求項1を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
また、訂正前の請求項13ないし15は、請求項14及び15が、訂正の請求の対象である請求項13を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正事項1及び訂正事項2に係る訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-12〕、〔13-15〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1、2、12ないし15に係る発明(以下「本件発明1」などという)は、その特許請求の範囲の請求項1、2、12ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、基板を載置する載置台と、
高周波電力を印加する高周波電源と、
前記チャンバ内に所望のガスを供給するガス供給源と、備え、
前記載置台は、
冷媒を通す流路が形成された第1のセラミックスの基材と、
前記第1のセラミックスの基材の基板が載置される側の主面及び側面に形成された第1の導電層と、
前記第1の導電層上に積層され、載置された基板を静電吸着する静電チャックと、を有し、
前記流路の体積は、前記第1のセラミックスの基材の体積以上であり、
前記側面に形成された前記第1の導電層を通じて前記主面に形成された前記第1の導電層に印加された高周波電力により前記所望のガスからプラズマを生成し、該プラズマにより前記載置された基板をプラズマ処理する、
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記流路の体積は、前記第1のセラミックスの基材の体積の1倍?1.4倍である、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第1のセラミックスの基材は、
炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al_(2)O_(3))、窒化珪素(SiN)又は酸化ジルコニア(ZrO_(2))のいずれかにより形成される、
ことを特徴とする請求項1?11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
冷媒を通す流路が形成された第1のセラミックスの基材と、
前記第1のセラミックスの基材の基板が載置される側の主面及び側面に形成された第1の導電層であって、前記側面に形成された前記第1の導電層を通じて前記主面に形成された前記第1の導電層に高周波電力が印加される前記第1の導電層と、
前記第1の導電層上に積層され、載置された基板を静電吸着する静電チャックと、を有し、
前記流路の体積は、前記第1のセラミックスの基材の体積以上である、
ことを特徴とする載置台。
【請求項14】
前記流路の体積は、前記第1のセラミックスの基材の体積の1倍?1.4倍である、
ことを特徴とする請求項13に記載の載置台。
【請求項15】
前記第1の導電層は、高周波電力の周波数に応じて定められるスキンデプスよりも厚い、
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の載置台。」

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、12ないし15に係る特許に対して、平成29年11月16日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
「本件特許の請求項1、2、12ないし15に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1?3号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
甲第1号証:特開2002-16045号公報
甲第2号証:特表平11-506873号公報
甲第3号証:特開2012-186457号公報」

(3)甲号証の記載
ア 甲第1号証(特開2002-16045号公報)の記載事項
(ア) 「【発明の名称】 プラズマ処理装置」

(イ) 「【0005】ウエハ701は、高精度なパターン形状の制御を実現するために、その温度が制御される必要がある。そこで、絶縁体703bとDCプレート702とで静電チャックを構成し、DCプレート702に、DC電源711よりローパスフィルタ713を介して直流電圧を印加することによって、ウエハ701をDCプレート702上に吸着保持する。このとき、ローパスフィルタ713は、RF電極704との容量結合によってDCプレート702に伝わるRF電力が、DC電源711を損傷することを防ぐために設けられている。」

(ウ) 「【0006】RF電極704には、RF電源709からプラズマを励起するための高周波が印加される。このとき、絶縁体703aは、ウエハの温度を調整するためのヒートシンクとしての役割を果たす。ガス導入ポート706からウエハの材質に応じたエッチングガスをハウジング707内に導入され、ハウジング707内部は、図示しないポンプ等の真空排気手段により一定の圧力に保持される」

(エ) 「【0023】より具体的には、保持電極は、ウエハ温度調整のための絶縁体からなるヒートシンクに支持されており、保持電極と対抗電極との間の距離a、ヒートシンクと処理容器との間の距離b、ヒートシンクの高さcなどが、寄生容量C(pF)が1210×f^(-0.9)以下となるように設定されている。」

(オ) 「【0032】<第1実施形態>図1は、本発明の第1実施形態に係る平行平板型のプラズマエッチング装置100の図である。プラズマエッチング装置100は、ウエハ101を保持する絶縁体103と、絶縁体103内部の表面近傍に位置するDCプレート102と、DCプレート102の近傍に延びるRF電極104と、RF電極104に対向する対向電極105を有する。DCプレート102、絶縁体103、およびRF電極104で、ウエハ保持電極を構成する。
【0033】プラズマエッチング装置100はまた、DCプレート102に、ウエア101を静電保持させるための直流電圧を印加するDC電源111と、RF電極104に高周波を印加するRF電源109とを有する。RF電極104に高周波が印加されると、ハウジング107内で、対向電極105とRF電極104との間にプラズマが生成される。」

(カ) 「【0039】従来の装置において、DCプレートに1500Vの直流を印加すると同時に、Arガスをガス導入ポート706から導入し、ハウジング707内部の圧力を10Paに保持した。さらに、RF電極704に1kWの高周波電力を印加して、ハウジング707内にプラズマを励起した。発生したプラズマの電子密度を、透過マイクロ波による位相干渉計で測定したところ、4×10^(11)/cm^(3)のプラズマ密度であった。」

(キ) 「【0045】ヒートシンク203は、たとえばセラミック製であり、内部に冷却水を通すための溝219が形成されている。また、冷却水溝219とは独立して、中空部分220が形成されている。ウエハ201に高精細のプラズマ処理を施すには、ウエハ温度を均一に制御する必要があるので、冷却水溝219はウエハに近い位置に設けられるのが好ましい。これにより、ヒートシンク203は、高周波印加による熱の影響を除去する役割を果たす。」

(ク) 「【0056】ヒートシンク203が石英で作られている場合は、その比誘電率は約6であり、冷却水溝219や中空部分220が形成されていないとすると、距離cはb×ε_(r)より約240mmとなる。ヒートシンク203全体の誘電率を下げるためには、(i)中空部分をなるべく多くとる、(ii)冷却水溝219に流す冷媒の誘電率をなるべく低いものを用いる、(iii)上記(i)と(ii)を組み合わせる、という3通りの方法がある。(i)については、中空部分の誘電率はほぼ1であるので、石英のヒートシンク中に中空部分が多いほど、ヒートシンク203全体としたときの誘電率を低減することができる。」

(ケ) 甲第1号証の段落[0006]の「RF電極704には、RF電源709からプラズマを励起するための高周波が印加される。」との記載から、甲第1号証のプラズマ処理装置は、「高周波電力を印加する高周波電源」を有している。

(コ) 甲第1号証の段落[0039]の「Arガスをガス導入ポート706から導入し、ハウジング707内部の圧力を10Paに保持した。」との記載から、ハウジング内にArガスを供給するガス供給源を備えているといえる。

(サ) 甲第1号証の段落[0045]の「ヒートシンク203は、たとえばセラミック製であり、内部に冷却水を通すための溝219が形成されている。」との記載から、セラミック製のヒートシンクには、冷却水という冷媒を通す溝、すなわち流路が形成されているといえる。

(シ) 甲第1号証の段落[0056]の記載から、ヒートシンクは、誘電率が低く、絶縁体であると認められる。

(ス) 甲第1号証の図7には、RF電極704が絶縁体703a(ヒートシンク)のウエハが載置される側の面に設けられているものが看取される。また、図1及び図4でも同様に、RF電極104、404が、下側の絶縁体のウエハが載置される側の面に設けられている。よって、甲第1号証には、RF電極がヒートシンクのウエハが載置される側の面に形成されたものが記載されている。
さらに、甲第1号証の図1、図4及び図7から、絶縁体(ヒートシンク)のウエハが載置される側の面に形成されたRF電極が、絶縁体の側面側に露出している構造も看取される。

(セ) 甲第1号証の図7には、絶縁体703bで覆われたDCプレート702が「RF電極上」に積層されているものが看取される。そして、絶縁体703bとDCプレート702とで静電チャックが構成されている(段落[0005]参照)。また、図1及び図4でも同様に、絶縁体の一部で覆われたDCプレート102、402がRF電極104、404上に積層されており、この絶縁体の一部で覆われたDCプレートも静電チャックを構成している。よって、甲第1号証には、「RF電極上に積層された静電チャック」が記載されている。

イ 引用発明
上記摘記事項(ア)?(ク)及び認定事項(ケ)?(セ)より、甲第1号証には、以下の発明が記載されていると認められる。
「ハウジング707と、
前記ハウジング707内に設けられ、ウエハ101を載置するウエハ保持電極と、
高周波電力を印加するRF電源709と、
前記ハウジング707内にArガスを供給するガス供給源と、備え、
前記ウエハ保持電極は、
冷却水を通す溝219が形成されたヒートシンク203と、
前記ヒートシンク203のウエハ101が載置される側の面に形成され側面側に露出したRF電極104と、
前記RF電極104上に積層され、載置されたウエハ101を静電吸着する静電チャックと、を有し、
前記RF電極104に印加された高周波電力により前記Arガスからプラズマを生成し、該プラズマにより前記載置されたウエハ101をプラズマ処理する、
プラズマ処理装置」(以下「引用発明1」という)

また、甲第1号証には、以下の発明も記載されていると認められる。
「冷却水を通す溝219が形成されたヒートシンク203と、
前記ヒートシンク203のウエハ101が載置される側の面に形成され側面側に露出したRF電極104と、
前記RF電極104上に積層され、載置されたウエハ101を静電吸着する静電チャックと、を有する、
ウエハ保持電極」(以下「引用発明2」という)

(4)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第2項)について
(ア)本件発明1
本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ハウジング707」、「ウエハ101」、「ウエハ保持電極」、「RF電源709」、「Arガス」、「冷却水」、「溝219」、「ヒートシンク203」、「RF電極104」、「プラズマ処理装置」は、それぞれ本件発明1の「チャンバ」、「基板」、「載置台」、「高周波電源」、「所望のガス」、「冷媒」、「流路」、「第1のセラミックスの基材」、「第1の導電層」、「基板処理装置」に相当するものと認められる。
そうすると、本件発明1は、以下の点で引用発明1と相違する。
<相違点1>
本件発明1では、第1の導電層が、第1のセラミックスの基材の基板が載置される側の主面だけでなく「側面」にも形成されていて、「側面に形成された第1の導電層を通じて主面に形成された第1の導電層に」高周波電力を印加するように構成しているのに対して、引用発明1のRF電極104は、ヒートシンク203の側面側には単に露出しているだけで、側面側から高周波電力が印加されて主面側に導電する機能を有するものではない点。
<相違点2>
本件発明1では、「流路の体積は、第1のセラミックスの基材の体積以上」であるのに対して、引用発明1では、冷却水を通す溝219をヒートシンク203の体積以上とするか否かは不明である点。

上記相違点1について検討する。
「第1のセラミックスの基材の基板が載置される側の主面及び側面に形成された第1の導電層」により、「前記側面に形成された前記第1の導電層を通じて前記主面に形成された前記第1の導電層に印加された高周波電力により前記所望のガスからプラズマを生成」するように構成した点は、甲第1号証だけでなく、甲第2、3号証にも記載されていない。甲第1号証や甲第3号証に記載されたプラズマ処理装置においては、本件発明1の第1のセラミックスの基材に相当する部分の内部側から、本件発明1の第1の導電層に相当する部材へ印加する構造しか示されていないし、甲第2号証では冷却部材しか示されていない。
そして上記の相違点1に係る本件発明1の構成は、従来周知の事項であったという根拠もないし、単なる設計的事項の範疇であるとも認められない。そして、本件発明1は、当該構成を有することで、高周波電力を供給する導通線のための貫通孔をセラミックの基材に設ける必要がなくなり、容易に高周波電力を供給でき、貫通孔部分により温度特異点が生じるのを防ぐことができ、貫通孔部分に要していた部分を流路の形成に回すことができる(特許権者が提出した平成30年1月22日付け意見書の4ページ下から4行-5ページ4行を参照)という、顕著な効果を奏するものである。
よって、上記相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1及び甲第2、3号証に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2及び12
本件発明2及び12は、本件発明1を引用しているから、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに構成を限定しているものである。したがって、本件発明2及び12は、本件発明1と同様の理由で、引用発明1及び甲第2、3号証に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)本件発明13
本件発明13と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「冷却水」、「溝219」、「ヒートシンク203」、「ウエハ101」、「RF電極104」、「プラズマ処理装置」は、それぞれ本件発明13の「冷媒」、「流路」、「第1のセラミックスの基材」、「基板」、「第1の導電層」、「基板処理装置」に相当するものと認められる。
そうすると、本件発明13は、以下の点で引用発明2と相違する。
<相違点3>
本件発明13では、第1の導電層が、第1のセラミックスの基材の基板が載置される側の主面だけでなく「側面」にも形成されていて、「側面に形成された第1の導電層を通じて主面に形成された第1の導電層に」高周波電力を印加するように構成しているのに対して、引用発明2のRF電極104は、ヒートシンク203の側面側には単に露出しているだけで、側面側から高周波電力が印加されて主面側に導電する機能を有するものではない点。
<相違点4>
本件発明13では、「流路の体積は、第1のセラミックスの基材の体積以上」であるのに対して、引用発明2では、冷却水を通す溝219をヒートシンク203の体積以上とするか否かは不明である点。

上記相違点3は、上記相違点1と同じであるから、上記(ア)で検討したのと同様の理由で、上記相違点4を検討するまでもなく、本件発明13は、引用発明2及び甲第2、3号証に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)本件発明14及び15
本件発明14及び15は、本件発明13を引用しているから、本件発明13の特定事項を全て含み、さらに構成を限定しているものである。したがって、本件発明14及び15は、本件発明13と同様の理由で、引用発明2及び甲第2、3号証に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(オ)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、平成30年3月13日付け意見書において、訂正事項により追加された「側面に形成された第1の導電層を通じて主面に形成された第1の導電層に」高周波電力を印加するという特徴が、参考資料1、2に記載されたとおり周知の技術であると主張している。
しかし、参考資料1(特開平2-81460号公報)に記載されているのは「ICチップ」であって、配線導体10の上にICチップ8の下面電極6を重ねて実装したものについて、側面電極2から上面電極3に導電する構造を示して、配線インピーダンスを小さくして安定した高周波特性が得られる効果があるものが示されているものの、プラズマによる基板処理装置の載置台の導電構造とは技術分野が異なるものである。
また、参考資料2(特開2005-79539号公報)に記載されているプラズマ処理装置については、バイアス電源107からの電極7への通電は、甲第1、3号証と同様、電極ブロック1内部を貫通する構造のものしか示されておらず、側面に形成された電極を通じて主面に形成された電極に高周波電力を印加する構成については不明である。図2を見ても、上面から側面まで延びている電極7のどこから通電するかは示されておらず、図1と照らし合わせても、電極7の側面から高周波電力を印加する根拠は認められない。
さらに、甲第1号証のRF電極は側面にも露出しているから、この位置においても高周波電力が印加されることは明白であると主張しているが、単に電極が露出していたからといって、その位置から通電するか否かは不明であるし、その位置で高周波電力を印加する具体的な動機がないままでは明白とはいえない。
よって、上記の特徴が周知の技術であるという特許異議申立人の主張は採用できない。

イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立書で申し立てられた理由は、取消理由通知において全て採用しており、採用しなかった理由はない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1、2、12ないし15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2、12ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、基板を載置する載置台と、
高周波電力を印加する高周波電源と、
前記チャンバ内に所望のガスを供給するガス供給源と、備え、
前記載置台は、
冷媒を通す流路が形成された第1のセラミックスの基材と、
前記第1のセラミックスの基材の基板が載置される側の主面及び側面に形成された第1の導電層と、
前記第1の導電層上に積層され、載置された基板を静電吸着する静電チャックと、を有し、
前記流路の体積は、前記第1のセラミックスの基材の体積以上であり、
前記側面に形成された前記第1の導電層を通じて前記主面に形成された前記第1の導電層に印加された高周波電力により前記所望のガスからプラズマを生成し、該プラズマにより前記載置された基板をプラズマ処理する、
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記流路の体積は、前記第1のセラミックスの基材の体積の1倍?1.4倍である、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1のセラミックスの基材の周縁部に形成された段部は、周方向に複数の溝部を有する請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
少なくとも前記主面及び前記複数の溝部に形成されている前記第1の導電層の厚さは、前記高周波電力の周波数に応じて定められるスキンデプス以上である、
ことを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1の導電層は、20μm?300μmの範囲内において所定の厚さに形成される、
ことを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記チャンバ内の前記載置台に対向する位置に設けられた上部電極を更に備え、
前記上部電極は、
第2のセラミックスの基材と、
前記第2のセラミックスの基材の前記載置台に対向する面と反対側の主面及び側面に形成された第2の導電層と、を有し、
前記第1の導電層又は前記第2の導電層に前記高周波電力を印加する、
ことを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の導電層及び前記第2の導電層の抵抗は、いずれも5×10^(-5)Ω以下である、
ことを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第1のセラミックスの基材の主面にて周方向に第1の段差部が形成され、
前記第1のセラミックスの基材は、前記第1の段差部で係合するクランプを介して固定される、
ことを特徴とする請求項1?7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1のセラミックスの基材の主面にて周方向に第2の段差部が形成され、
前記第2の段差部で係合するフォーカスリングと前記第1のセラミックスの基材との積層方向から見た平面視で、該フォーカスリングとオーバラップしている該第1のセラミックスの基材の部分に前記流路の少なくとも一部が形成される、
ことを特徴とする請求項1?8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第1のセラミックスの基材の主面のうち前記第2の段差部により画成された基板の載置面の直径は、基板の直径より小さく、
前記第1のセラミックスの基材には、基板を支持するピンが通る貫通孔が前記第2の段差部を貫通する位置に形成される、
ことを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記静電チャックは、前記第1の導電層上に溶射膜又は接着層を介して積層される、
ことを特徴とする請求項1?10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第1のセラミックスの基材は、
炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al_(2)O_(3))、窒化珪素(SiN)又は酸化ジルコニア(ZrO_(2))のいずれかにより形成される、
ことを特徴とする請求項1?11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
冷媒を通す流路が形成された第1のセラミックスの基材と、
前記第1のセラミックスの基材の基板が載置される側の主面及び側面に形成された第1の導電層であって、前記側面に形成された前記第1の導電層を通じて前記主面に形成された前記第1の導電層に高周波電力が印加される前記第1の導電層と、
前記第1の導電層上に積層され、載置された基板を静電吸着する静電チャックと、を有し、
前記流路の体積は、前記第1のセラミックスの基材の体積以上である、
ことを特徴とする載置台。
【請求項14】
前記流路の体積は、前記第1のセラミックスの基材の体積の1倍?1.4倍である、
ことを特徴とする請求項13に記載の載置台。
【請求項15】
前記第1の導電層は、前記高周波電力の周波数に応じて定められるスキンデプスよりも厚い、
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の載置台。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-06-01 
出願番号 特願2013-48172(P2013-48172)
審決分類 P 1 652・ 851- YAA (H01L)
P 1 652・ 121- YAA (H01L)
P 1 652・ 841- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 和樹  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 篠原 将之
栗田 雅弘
登録日 2017-03-03 
登録番号 特許第6100564号(P6100564)
権利者 東京エレクトロン株式会社
発明の名称 基板処理装置及び載置台  
代理人 伊東 忠重  
復代理人 小原 寿美子  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠彦  
復代理人 小原 寿美子  
復代理人 加藤 隆夫  
代理人 伊東 忠重  
復代理人 加藤 隆夫  
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