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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G04C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G04C
審判 全部申し立て 1項1号公知  G04C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G04C
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  G04C
管理番号 1342017
異議申立番号 異議2018-700016  
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-09 
確定日 2018-06-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第6164240号発明「電子時計」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6164240号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6164240号の請求項1-7に係る特許についての出願は、平成24年3月2日(以下、「原出願日」という。)に出願された特願2012-47251号の一部について平成27年3月25日に新たに特許出願され、平成29年6月30日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人清水祐子及び渡辺明弘によりそれぞれ特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6164240号の請求項1-7に係る発明(以下、「本件発明1」-「本件発明7」という。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
二次電池と、
前記二次電池の電圧を検出する電池電圧検出手段と、
曜日を指示する指針と、
操作手段とを備え、
前記指針は、前記電池電圧検出手段で検出した前記二次電池の電圧に基づく電池残量を指示可能に構成され、
前記指針は、前記操作手段が操作された場合に、前記電池残量を指示する
ことを特徴とする電子時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電子時計において、
文字板を備え、
前記曜日と前記電池残量とに関する表示が、半円部分に沿って前記文字板に表示されている
ことを特徴とする電子時計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子時計において、
前記電池残量は、3段階で表示される
ことを特徴とする電子時計。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電子時計において、
前記電池残量は、4段階以上で表示される
ことを特徴とする電子時計。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子時計において、
前記指針とは回転軸の位置が異なる時針、分針、秒針と、
時刻情報を受信する受信装置とを備え、
前記秒針は、受信処理の結果を表示可能に構成されている
ことを特徴とする電子時計。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子時計において、
前記指針は、
前記電圧が第一電圧以上の場合に第一位置を指示し、
前記電圧が前記第一電圧未満第二電圧以上の場合に第二位置を指示し、
前記電圧が前記第二電圧未満の場合に第三位置を指示し、
前記第一位置、前記第二位置、前記第三位置は、前記第三位置、前記第二位置、前記第一位置の順で右回りに並んで配置され、
前記曜日の指示位置は、前記右回りに並んで配置される
ことを特徴とする電子時計。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子時計において、
前記電池電圧検出手段は、所定周期で前記電圧を検出し、
前記検出された電圧に基づいて前記電池残量を記憶する記憶部を有し、
前記指針は、前記操作手段が操作された場合に、前記記憶部に記憶された前記電池残量に基づいて、前記電池残量を指示する
ことを特徴とする電子時計。」

第3 異議申立の概要
1 異議申立人清水祐子は、証拠として、
甲第1号証(「第4」以下、「引用例1」という。)(CITIZEN社「ECO-DRIVE Model No.AT4* Cat.E650」(取扱説明書抜粋))
甲第2号証(「第4」以下、「引用例2」という。)(カナダ CITIZEN社「ECO-DRIVE」商品カタログ抜粋(公開年:平成23年(2011年)))
甲第3号証(「第4」以下、「引用例3」という。)(「Citizen Eco-drive Perpetual Chrono A・T Watch Review」、2012/01/02に公開、https://www.youtube.com/watch?v=ScjlaaL_Jmw)
甲第4号証(「第4」以下、「引用例4」という。)(「Citizen Eco-Drive Review (Perpetual Chrono AT52E)」、2012/02/06に公開、https://www.youtube.com/watch?v=lNlhPA_D70s)
甲第5号証(「第4」以下、「引用例5」という。)(特開2009-145289号公報)
甲第6号証(「第4」以下、「引用例6」という。)(特開2010-223798号公報)
甲第7号証(「第4」以下、「引用例7」という。)(特開平11-52035号公報)
を提出し、

ア 本件発明1-7は、甲第1号証又は甲第5号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。
イ 本件発明1、3、5及び7は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
ウ 本件発明2は、甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
エ 本件発明3は、甲第5号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
オ 本件発明7は、甲第5号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
から、請求項1-7に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。

2 異議申立人渡辺明弘は、証拠として、
甲第1号証(「第4」以下、「引用例8」という。)(「PERPETUAL CHRONO A-T MODEL:AT4008-51E」 http://www.citizenpremium.com/watches/watch-detail/?model=AT4008-51E)
甲第2号証(「第4」以下、「引用例9」という。)(「PERPETUAL CHRONO A-T MODEL:AT4008-51E」英文マニュアル http://c02.coacdn.com/calibersWPC/E650_full_instructions_EN_US.pdf)
甲第3号証(「第4」以下、「引用例10」という。)(「CITIZEN(シチズンimport)シチズン エコ・ドライブAT4008-51Eメンズ腕時計」 https://www.amazon.co.jp/CITIZEN-%E3%82%B7%E3%83%81%E3%82%BA%E3%83%B3import-AT4008-51E-%E3%82%A8%E3%82%B3%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96-%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%BA%E8%85%95%E6%99%82%E8%A8%88/dp/B005BSEOXK/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1515573356&sr=8-1&keywords=AT4008-51E)
甲第4号証(「第4」以下、「引用例11」という。)(米国意匠特許発明第640145号明細書)
甲第5号証(「第4」以下、「引用例12」という。)(特開平11-052082号公報)
甲第6号証(「第4」以下、「引用例13」という。)(特開2011-208948号公報)
甲第7号証(「第4」以下、「引用例14」という。)(特開2009-229106号公報)
甲第8号証(「第4」以下、「引用例15」という。)(特開2011-038867号公報)
甲第9号証(「第4」以下、「引用例16」という。)(特開2012-026774号公報)
を提出し、

ア 本件発明1、4、5、6は、甲第1号証-甲第4号証から明らかなように、日本国内又は外国において公然知られた発明、公然実施された発明、又は刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第1号乃至第3号の規定に違反して特許されたものである。
イ 本件発明1は、甲第5号証、甲第6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
ウ 本件発明2は、甲第5号証、甲第6号証及び甲第7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
エ 本件発明3は、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
オ 本件発明4は、甲第5号証、甲第6号証及び甲第9号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
カ 本件発明5は、甲第5号証、甲第6号証及び甲第7号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
キ 本件発明6は、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
ク 本件発明7は、甲第5号証、甲第6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
ケ 請求項2の記載は不明確であるから、本件発明2-7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない特許出願についてされたものである。
から、本件発明1-7に係る特許は取り消されるべきである旨主張している。

第4 引用例の記載等
1.引用例1について
引用例1(CITIZEN社「ECO-DRIVE Model No.AT4* Cat.E650)には、図面とともに、次の事項が記載されている(翻訳には、異議申立人清水祐子による訳文を用いた。)。

(1)表紙
「CITIZEN INSTRUCTION MANUAL Eco-Drive」(シチズン 取扱説明書 エコ・ドライブ)

(2)第8頁
左欄に、「Component identification」との表題に続いて、時計の指針として、「Function hand」(機能針)、「Hour hand」(時針)、「Minute hand」(分針)、「Second hand」(秒針)が描かれ、また、時計本体の右下部に「lower right button(A)」(右下ボタン(A))が描かれている。

(3)第9頁
「●Function hand」(機能針)の表題とともに、環状の目盛りの中央上部から時計回りに右下にかけて、中心を欠いた扇型の「Day of week」(曜日)の表示が描かれ、また、環状の目盛りの中央上部から反時計回りに左側にかけて、次第に細くなるように描かれた断続的な弧により、「Charge level」(充電レベル)の目盛りが描かれている。

(4)第12頁
「Checking the power reserve
check the power reserve level as follows:
1.Ensure that the crown is in position[0]
2.Press and release the lower right button(A).
The function hand and the 2:00 sub dial indicates the charge level(refer to table on page 13)
3.Press and release the lower right button(A) to exit power reserve checking.
The watch will resume normal operation.
・The watch will resume normal operation automatically after 10 seconds even without pressing and releasing.」(当審注:白抜きの0を[0]と表記した。)(次のようにパワー残量レベルを確認します。
1.リュウズの位置が「0」であることを確認します。
2.右下ボタン(A)を押して離します。
機能針と2時の位置にあるサブダイアルは、充電レベルを示します(13頁の表を参照)。
3.右下ボタン(A)を押して離すと、パワー残量チェックを終了します。
時計は通常の操作を再開します。
・時計は、押して離さなくても10秒後に自動的に通常の操作を再開します。)

(5)第13頁
Checking the power reserve(パワー残量レベルの確認)の表に、充電レベルとして、level3(レベル3),level2(レベル2),level1(レベル1),level0(レベル0)の区別と、それぞれのレベルに対応した「The function hand」(機能針)の位置が描かれている。

(6)第14頁
「Checking the radio signal reception
To check result of previous radio signal reception time update:
1.Ensure that the crown is in position[0].
2.Press and release the button(A).
The second hand moves and indicates the reception result.
・The relationships between the second hand positions and the reception results are shown on the next page.
3.Press and release the button(A) to exit.
The watch will resume normal operation.
・The watch will resume normal operation automatically after 10 seconds even without pressing the button.」(当審注:白抜きの0を[0]と表記した。)(最新の更新された無線信号受信と時刻の結果を確認します。
1.リュウズの位置が「0」であることを確認します。
2.ボタン(A)を押して離します。
秒針が動き、受信結果を示します。
・秒針位置と受信結果との関係は、次の頁に表示されます。
3.ボタン(A)を押して離すと終了します。
時計は通常の操作を再開します。
・時計は、そのボタンを押さなくても10秒後に自動的に通常の操作を再開します。)

(7)第15頁
「Second hand positions and reception results」(秒針位置と受信結果)との表題の下に、時計の右上部の「H」、「M」、「L」の記号と、それを指し示す「秒針」が描かれ、「*“H”,“M”,and “L” indicates radio signal strength.」(*“H”,“M”,“L”は、無線信号強度を示します。)と記載されている。

(8)第39頁
「rechargeable cell」(充電電池)との用語が記載されている。

(9)第47頁
「memory」(メモリ(記憶装置))と記載されている。

(10)第70頁
「Specifications」に、「Model」「E650」、「Type」「Analog solar-powered watch」(アナログソーラーウォッチ)と記載されている。

(11)第71頁
「・Power reserve indicaton」(パワー残量表示)と記載されている。

(12)裏表紙
「Model No.AT4*
Cal.E650
CTZ-A8151(3)」(当審注:丸数字の3を「(3)」と表記した。)
(モデルナンバーAT4*
キャリバーモデル E650
CTZ-A8151(3)」

2.引用例2について
引用例2は、カナダ CITIZEN社の「ECO-DRIVE」商品カタログ抜粋であって、次の事項が記載されている。
(1)第1頁(表紙)には、「2011 Supplement」「CITIZEN ECO-DRIVE」と記載されている。
(2)第4頁には、左上欄に「Perpetual Chrono A・T」と記載され、時計の写真とともに、「AT4007-54E」、「AT4010-50E」、「AT4000-02E」、「AT4008-51E」、及び「AT4004-52E」と記載されている。
(3)第5頁には、左上欄に「Perpetual Chrono A・T」と記載され、時計の写真とともに、「AT4003-04E」、及び「AT4025-01E」と記載されている。
(4)第29頁には、「BL8000-54L」について、「Model No.」の説明が記載されている。
(5)第30頁には、「MODELS-AT40** PERPETUAL CHRONOGRAPH A・T」「Mvmt Cal. No.E65*」について、時計本体の写真とともに、指針、目盛、及びボタンの名称が矢印で示されている。
(6)奥付には、「Citizen Watch Company of Canada」「(c)2011」(当審注:丸囲みの「c」を「(c)」と表記した。)と記載されている。

3.引用例3について
引用例3は、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったYouTube(登録商標)の動画であり、「2012/01/02に公開」と記載され、脚注部に「Citizen Eco-Drive Perpetual Chrono A・T Watch Review」というタイトルが付されている。

4.引用例4について
引用例4は、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったYouTube(登録商標)の動画であり、「2012/02/06に公開」と記載され、脚注部に「Citizen Eco-Drive Review(Perpetual Chrono AT 52E)」というタイトルが付されている。
動画より、「CITIZEN」及び「ECO-DRIVE」と記載された箱から時計などを取り出し(0分19秒-0分50秒)、時計の右下のボタンを押下すると(1分55秒)、秒針が動き出すと同時に、機能針が回動し(1分57秒)、機能針が曜日(SAT:土曜日)を指し示して通常時の時刻表示状態となり(1分58秒)、再度、右下のボタンを押下すると(2分00秒)、機能針が回動し(2分01秒)、秒針が12時位置に止まり、機能針が、次第に細くなるように描かれた断続的な弧を指して停止すること(2分03秒)が見て取れる。

5.引用例5(特開2009-145289号公報)について
(1)引用例5には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0001】
この発明は、標準電波を受信し、受信した標準電波に基づいて時刻を修正する電波修正時計に関し、特に、所定の時刻に定時受信をおこなうとともに、操作者の操作による強制受信および操作者の操作によらない自動受信をおこなう電波修正時計に関する。」

「【0033】
以下に添付図面を参照して、この発明による電波修正時計の実施の形態を詳細に説明する。
【0034】
(電波修正時計の構成)
図1は、この発明の実施の形態にかかる電波修正時計のハードウエア構成を示す説明図である。図1において、電波修正時計本体には、マイコンIC100と、RAM101と、ROM102と、モータ駆動回路103と、モータ104(104a、104b、104c)と、輪列105(105a、105b、105c)と、基準信号発生部106と、カウンタ部107と、アンテナ108と、同調回路109と、受信回路110と、スイッチ部111と、スイッチ制御回路112と、ソーラセル113と、二次電池114と、充電制御回路115と、を備える。
【0035】
マイコンIC100は、電波修正時計本体の全体を制御するほか、各種の構成部、回路を個別に演算制御する。RAM101は、時刻情報あるいはカレンダー情報を含む計時データなどの各種データを記憶している。また、ROM102は、各種の制御プログラムを記憶している。
【0036】
モータ駆動回路103は、独立した3つのモータ104(104a、104b、104c)を駆動し、輪列105(105a、105b、105c)を介して、それぞれの指針および日板を別個独立に駆動する。モータ104は3つに限らず、電波修正時計の機能などに応じて4つ以上であってもよい。また、逆にモータ104は2つであってもよい。すなわち、時刻表示用モータと、それとは別に駆動可能なモータを最低1つ有していればよい。
【0037】
3つのモータ104のうち、1つ目のモータ104aは、後述する図7に示す分針701、時針702および秒針703を駆動する。2つ目のモータ104bは、図7に示す曜表示および受信禁止モード表示を構成するモード針704(または後述する図8に示すモード針804)を駆動する。3つ目のモータ104cは、図7に示す日表示705を構成する図示を省略する日板を駆動する。どのモータがなにを駆動するかについては、これに限定するものではない。
【0038】
基準信号発生部106は、たとえば発振回路から構成され、計時処理の基準となる所定の周波数を有する信号を発生する。また、カウンタ部107は、基準信号発生部106から発生される所定の周波数を有する信号をマイコンIC100に対して出力する。
【0039】
同調回路109は、アンテナ108と同調をとり、たとえばコンデンサの容量を切り替えるなどによって、60kHz(米国)、77.5kHz(独国)、40kHz、60kHz(日本)などの周波数にアンテナ108を同調する。また、受信回路110は、アンテナ108によって受信された信号から標準電波を検出し、マイコンIC100に対して出力する。
【0040】
スイッチ部111は、操作者の操作指示を入力する。具体的には、図7に示すりゅうず711、操作ボタン712,713などによって構成される。スイッチ制御回路112は、スイッチ部111からの信号に基づいて、操作者からの操作指示に関する入力をマイコンIC100に送信する。」

「【0071】
図3に示したモード1は、たとえば潜水モードの一例である。すなわちモード1では、自動受信、オートリターン、禁止開始時刻、禁止終了時刻も無しであり、強制受信も禁止している。このように、モード1は、一旦、操作者が受信禁止モードを選択した場合に、再び操作者からの受信許可モードの解除指示がない限り、受信禁止モードを維持することで、潜水中の受信禁止を確実にする。これにより、潜水中に現在時刻が表示されないことを防止し、潜水中の安全を担保することができる。」

「【0096】
(電波修正時計の外観)
図7?図10は、この発明の実施の形態にかかる電波修正時計の外観の一例を示す説明図である。図7?図10において、電波修正時計は、本体700と、本体700をたとえば腕に装着するための図示を省略するバンド(一部のみ表示し、全体の表示は省略する。)とから構成される、腕時計型の電波修正時計(ダイバーウォッチ)である。また、本体700の外周には、りゅうず711および複数の操作ボタン712,713を備えている。
【0097】
本体700の表示部分には、通常時刻を示す通常指針(分針701、時針702、秒針703)と、モード針704(図8にあっては符号804、図9にあっては符号904、図10にあっては符号1004)と、日表示705、曜表示706、受信禁止モード(ダイブ)表示707と、前回受信成功表示708と、受信中表示709と、前回受信失敗表示710とを備える。」

「【0102】
モード針704、804は、曜表示706のいずれかを指し示している状態では、その曜日を示している。曜表示706は、図7では日表示705の内側に表示しており、図8では日表示705の同一円上に表示している。それにともなって、モード針704,804の長さが異なる。
【0103】
また、受信禁止モード(ダイブ)表示707は、45秒位置付近に配置している。受信禁止モードに移行した際には、モード針704,804は曜表示706の指し示しを止め、正転方向(逆転方向でもよい)に回動して、受信禁止モード(ダイブ)表示707を指し示す。これによって、受信禁止モードであることを通知する。ただしその間は曜日の表示をすることはできない。」

「【0108】
図9において、電波修正時計の本体700には、充電量表示(インジケーター)901が設けられている。充電量インジケーター901は、モード針904が示す位置によって、二次電池114の充電量(残量)を表示することができる。具体的には、充電量インジケーター901の「レベル0」901aの位置をモード針904が示している場合は、充電量が空状態であり、充電が必要な状態であることがわかる。
【0109】
同様に、充電量インジケーター901の「レベル1」901bの位置をモード針904が示している場合は、充電量が不足状態であることがわかる。また、充電量インジケーター901の「レベル2」901cの位置をモード針904が示している場合は、充電量が十分状態であることがわかる。充電量インジケーター901の「レベル3」901dの位置をモード針904が示している場合は、充電量がフル状態であることがわかる。モード針904は、通常状態においては充電がされると右回りに回動し、反対に電力が消費されると左回りに回動することで充電量を表示する。
【0110】
図9における電波修正時計にあっては、上記充電量表示をおこなうモード針904を用いて、受信禁止モードを表示する。具体的には、受信禁止モードに移行した場合には、モード針904は右回りまたは左回りに回動し、45秒の位置に設けられている受信禁止モード(ダイブ)表示707の位置を示す。これによって、受信禁止モードに移行したことがわかる。
【0111】
その間は、モード針904が受信禁止モード(ダイブ)表示707を指し示しているので、モード針904による充電量表示はできないが、たとえば充電不十分でも秒針703を1秒運針することで時刻表示は継続しておこなうことができるので、操作者に違和感を与えることはない。
【0112】
また、操作者の操作によって受信禁止モードへ移行する際、通常、操作者はモード針904が充電量表示901から受信禁止モード(ダイブ)表示707へ回動して移行するのを確認する。そのとき、操作者は充電量表示901によって充電量が十分であるかを必然的に確認することができる。それによって、充電不足状態で潜水して、潜水中に機能停止してしまうことを未然に防止できる。」

したがって、引用例5には、図8における電波修正時計として、次の発明(以下、「引用発明1-1」という。)が記載されていると認められる。

「受信した標準電波に基づいて時刻を修正する電波修正時計(【0001】)であって、
電波修正時計本体は、マイコンIC100と、スイッチ部111と、スイッチ制御回路112と、ソーラセル113と、二次電池114と、充電制御回路115と、を備え(【0034】)、
マイコンIC100は、電波修正時計本体の全体を制御し(【0035】)、
スイッチ部111は、りゅうず711、操作ボタン712,713などによって構成され、スイッチ制御回路112は、スイッチ部111からの信号に基づいて、操作者からの操作指示に関する入力をマイコンIC100に送信し(【0040】)、
一旦、操作者が受信禁止モードを選択した場合に、再び操作者からの受信許可モードの解除指示がない限り、受信禁止モードを維持し(【0071】)、
本体700の表示部分には、通常時刻を示す通常指針(分針701、時針702、秒針703)と、モード針704(符号804)と、日表示705、曜表示706、受信禁止モード(ダイブ)表示707と、を備え(【0097】)、
モード針704、804は、曜表示706のいずれかを指し示している状態では、その曜日を示し(【0102】)、
受信禁止モードに移行した際には、モード針704,804は曜表示706の指し示しを止め、正転方向(逆転方向でもよい)に回動して、受信禁止モード(ダイブ)表示707を指し示しこれによって、受信禁止モードであることを通知(【0103】)する、
電波修正時計(【0001】)。」

(2)また、引用例5には、図9における電波修正時計として、次の発明(以下、「引用発明1-2」という。)が記載されていると認められる。
「受信した標準電波に基づいて時刻を修正する電波修正時計(【0001】)であって、
電波修正時計本体は、マイコンIC100と、スイッチ部111と、スイッチ制御回路112と、ソーラセル113と、二次電池114と、充電制御回路115と、を備え(【0034】)、
マイコンIC100は、電波修正時計本体の全体を制御し(【0035】)、
スイッチ部111は、りゅうず711、操作ボタン712,713などによって構成され、スイッチ制御回路112は、スイッチ部111からの信号に基づいて、操作者からの操作指示に関する入力をマイコンIC100に送信し(【0040】)、
一旦、操作者が受信禁止モードを選択した場合に、再び操作者からの受信許可モードの解除指示がない限り、受信禁止モードを維持し(【0071】)、
電波修正時計の本体700には、充電量表示(インジケーター)901が設けられ、充電量インジケーター901は、モード針904が示す位置によって、二次電池114の充電量(残量)を表示することができ(【0108】)、
上記充電量表示をおこなうモード針904を用いて、受信禁止モードを表示し、具体的には、受信禁止モードに移行した場合には、モード針904は回動し、受信禁止モード(ダイブ)表示707の位置を示し、これによって、受信禁止モードに移行したことがわかり(【0110】)、
操作者の操作によって受信禁止モードへ移行する際、通常、モード針904が充電量表示901から受信禁止モード(ダイブ)表示707へ回動して移行する(【0112】)、
電波修正時計(【0001】)。」

6.引用例6(特開2010-223798号公報)について
引用例6には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、一次電池又は二次電池を電源として動作する電子時計に関するものである。」

「【背景技術】
【0002】
従来から一次電池や、ソーラーセル等の発電手段を有し、外光により発電した電力を充電する二次電池を電源として動作する電子時計があった。」

「【0005】
以下に添付図面を参照して、従来の電子時計についての説明を行う。
図5は、従来の電子時計の一例である。
【0006】
102はデジタル表示による各種機能に対応したグラフィック情報やテキスト情報等の表示を行う液晶表示装置である。
【0007】
104aは秒針、104bは分針、104cは時針、104dは24時間針、104eは都市表示針であり、秒針104a?24時間針104dを用いてワールドタイム時刻情報の表示を行うと共に、都市表示針104eを用いて相当する都市表示を行う。」

「【0011】
また前記電池残量表示針103aにより、電池の充電状態をHおよびMおよびLの3段階で表示することで、使用者はいつでも本電子時計の充電状態を知ることが出来る。」


したがって、引用例6には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「二次電池を電源として動作する電子時計(【0002】)であって、電池残量表示針103aにより、電池の充電状態をHおよびMおよびLの3段階で表示する(【0011】)、電子時計(【0002】)。」

7.引用例7(特開平11-52035号公報)について
引用例7には、図面とともに次の技術事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エネルギーを入力・蓄積・出力可能なエネルギー蓄積装置における蓄積エネルギーの変動傾向を告知する蓄積エネルギーの変動傾向インジケータと、当該インジケータを用いた電子機器および電子時計とに関する。」

「【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
A:第1実施形態
まず、本発明をコンビネーション式腕時計に適用した第1実施形態について説明する。
A-1:構成
図1は第1実施形態によるコンビネーション式腕時計の電気的構成を示す図であり、1は入射光の照度に応じた値の電流を発生するセルを複数直列してなるソーラー電池、2は一端がソーラー電池1の一端に接続された2次電池(例えば、リチウムイオン2次電池)であり、ソーラー電池1の発電電流を蓄積する。3は2次電池2への過充電を防止するためにソーラー電池1と並列に接続されたリミッタ、4は一端が2次電池2の一端に接続されたコンデンサであり、2次電池2からの放電電流を蓄積する。」

「【0023】一方、使用者が所定のボタン操作を行うと、システム制御部5がRAM14から2次電池2の残容量を読み出し、この残容量に応じて液晶表示(パターン表示および文字表示)を更新するとともに、秒針24を当該残容量に応じて時計回りに方向に早送り駆動する。例えば、図3に示す状態において使用者が所定のボタン操作を行うと、図4に示すように、秒針24が3時位置に迅速に移動する。この結果、2次電池2の残容量が液晶表示および秒針24の位置表示によって告知される。」

「【0030】B:第2実施形態
次に、本発明をコンビネーション式腕時計に適用した第2実施形態について説明する。
B-1:構成
図5は第2実施形態によるコンビネーション式腕時計の電気的構成を示す図であり、この図において、図1と異なる点は、システム制御部5に代えてシステム制御部21を設けた点と、このシステム制御部21に制御されるモータ駆動回路22を設けた点である。このモータ駆動回路22は、秒針24を駆動するためのものであり、秒針24はモータ駆動回路8を含む駆動系とモータ駆動回路22を含む駆動系とのいずれか一方により駆動される。秒針24を実際に駆動する駆動系は、詳しくは後述するが、システム制御部21によって適宜選択される。」

「【0032】B-2:動作
図7はシステム制御部21による告知処理の流れを示すフローチャートであり、この図に示すように、システム制御部21は、充放電制御部6に対して所定時間(例えば、2秒)間隔で検出指示を与え、充放電制御部6から、2次電池2の残容量、入力電流値(あるいはソーラー電池1の発電電流値)、および出力電流値を取得する(ステップSA1)。これらの情報を取得すると、システム制御部21は、取得した情報および当該情報から得られる情報(収支など)をRAM14に一時格納するとともに、当該情報に含まれる残容量が所定の閾値未満であるか否かを判定する(ステップSA2)。」

「【0035】すなわち、本実施形態では、2次電池2の残容量を所定時間間隔で監視し、当該残容量が閾値未満の場合には表示指針(秒針24)のみを使用して告知するようにしたので、残容量が少ないときに消費電力の高い液晶パネル9を駆動して残容量の減少速度を加速させるような事態を避けることができる。」

したがって、引用例7には、「第1実施形態によるコンビネーション式腕時計」として、次の技術事項が記載されていると認められる。

「コンビネーション式腕時計であって、ソーラー電池1及び一端がソーラー電池1の一端に接続された2次電池2を備え(【0013】)、
使用者が所定のボタン操作を行うと、システム制御部5がRAM14から2次電池2の残容量を読み出し、この残容量に応じて液晶表示を更新するとともに、秒針24を当該残容量に応じて時計回りに方向に早送り駆動し、この結果、2次電池2の残容量が液晶表示および秒針24の位置表示によって告知される(【0023】)、
コンビネーション式腕時計(【0013】)。」

また、引用例7には、「コンビネーション式腕時計」の「第2実施形態」として、次の技術事項が記載されていると認められる。

「コンビネーション式腕時計であって、ソーラー電池1及び一端がソーラー電池1の一端に接続された2次電池2を備え(【0013】)、
システム制御部21に制御されるモータ駆動回路22を設け(【0030】)、
システム制御部21は、充放電制御部6に対して所定時間(例えば、2秒)間隔で検出指示を与え、充放電制御部6から、2次電池2の残容量を取得し、これらの情報を取得すると、システム制御部21は、取得した情報および当該情報から得られる情報(収支など)をRAM14に一時格納するとともに、当該情報に含まれる残容量が所定の閾値未満であるか否かを判定し(【0032】)、
当該残容量が閾値未満の場合には表示指針(秒針24)のみを使用して告知するようにした(【0035】)、
コンビネーション式腕時計(【0013】)。」

8.引用例8について
引用例8は、アナログ式腕時計「PERPETUAL CHRONO A-T MODEL:AT4008-51E」が掲載されたWebページである。

9.引用例9について
引用例9は、「Analog solar-powered watch」「Model E650」(第70ページ参照。)の英文マニュアルであって、次の点が記載されている(翻訳には、異議申立人渡辺明弘による訳文を用いた。)。
ア 英文マニュアルの8ページには、このアナログ式腕時計の本体が図示されており、各部の説明として、引出線とともに、「時針(Hour hand)」、「分針(Minute hand)」、「秒針(Second hand)」、「機能針(Function hand)」、「竜頭(Crown)」、「右下部ボタン(Lower right button)(A)」、「H,M,L:受信レベル/受信結果(H,M,L: Reception level/ reception result)」と記載されている。

イ 9ページの上部には、「機能針(Function hand)」(8ページ参照。)により指示される、副文字盤(Sub dial)(8ページにおけるアナログ式腕時計の2時側に配置されている。)について、「曜日(Day of week)」の目盛り、「充電レベル(Charge level)」の目盛り、及び、「クロノグラフ(分)(Chronograph(minute))」の目盛りが記載されている。

ウ 12ページには、二次電池の充電量を確認する手順として、次の手順が記載されている。
「1.Ensure that the crown is in position[0].
2.Press and release the lower right button(A).
The function hand and the 2:00 sub dial indicates the charge level(refer to table on page 13)
3.Press and release the lower right button(A) to exit power reserve checking.
The watch will resume normal operation.
・The watch will resume normal operation automatically after 10 seconds」(当審注:白黒が反転した「0」を「[0]」と表記した。)(1.竜頭が0の位置にあることを確認する。
2.右下のボタン(A)を押して離す。
機能針と2時側の副文字盤で充電レベルを表示します(p13の表を参照)。
3.右下のボタン(A)を押して離して、充電量の確認を終了します。
時計は通常の動作を再開します。
・時計は、10秒後に自動的に通常の動作を再開します。)

エ 13ページの表には、レベル0?3(level0?3)の4段階の充電レベル(Charge level)に応じた、充電インジケーター(機能針)の位置(Charge indicator(function hand)position)、推定残り時間(Estimated remaining time to stop)、備考(Remark)の各内容が記載され、表の脚注には、「注意:充電レベルインジケーターは「滑らかな」直線的な方法では動きません。(Note: the power reserve indicator does not move in a "smooth” linear fashion.)
それは、充電量に基づくレベルに「ジャンプ」します。(It will "jump" levels based on reserve power level.)」
と記載されている。

オ 14ページには、電波受信による時刻更新の結果を確認する手段として、次の手順が記載されている。
「1.Ensure that the crown is in position[0].
2.Press and release the button(A).
The second hand moves and indicates the reception result.
・The relationships between the second hand positions and the reception results are shown on the next page.
3.Press and release the button(A) to exit.
The watch will resume normal operation.
・The watch will resume normal operation automatically after 10 seconds even without pressing the button.」(当審注:白黒が反転した「0」を「[0]」と表記した。)(1.竜頭が0の位置にあることを確認します。
2.ボタン(A)を押して放します。
秒針は移動し、受信結果を示します。
・秒針の位置と受信結果の関係を次ページに示します。
3.ボタン(A)を押して離して終了します。
時計は通常の動作を再開します。
・ボタンを押さなくても10秒後に自動的に通常の動作を再開します。」

カ 15ページは、秒針の位置と受信結果を示す図が記載されており、秒針の位置が「NO」であれば、受信に失敗(NO:Reception failed)、秒針の位置が「H」であれば、無線受信と時間更新は、高い電波強度で成功(H:Radio reception and time updating was successful with high signal strength.)、秒針の位置が「M」であれは、無線受信と時間更新は、中程度の電波強度で成功(Radio reception time updating was successful with medium signal strength.)、秒針の位置が「L」であれは、無線受信と時間更新は、低い電波強度で成功(Radio reception time updating was successful with low signal strength.)であることが記載されている。

キ 70ページには、仕様(Specifications)が記載され、電池(Battery)について「二次電池(Rechargeable cell)」と記載されている。

10.引用例10について
引用例10は、「Amazon.com」のWebページであって、アナログ式腕時計「シチズン エコ・ドライブAT4008-51Eメンズ腕時計」が掲載され、次の事項が記載されている。
ア 「商品の詳細」「腕時計情報」として、「発売年 2011」と記載されている。

イ 「Amazon.comで最も参考になったカスタマーレビュー」の欄の、「投稿者 Candid Reviewer 2012年2月7日-(Amazon.com)」の投稿中に、「Here's a review of my early impressions after a few days of use and wear:」(翻訳:「以下は、数日間、使用し着用した後の私の初期の印象のレビューです:」と記載されている。

11.引用例11(米国意匠特許発明第640145号明細書)について
引用例11には、「WRIST WATCH」(腕時計)についての意匠特許発明であって、Fig.1(透視図)及び、Fig.2(正面図)から、文字板部分の外観として次の点が読み取れる。

ア 本体に取り付けられたベゼル部内側を文字板とし、文字板の中心を回転軸とする時針、分針及び秒針が配されて、本体の右側面中央にリュウズが配され、本体の右側面の上下にボタンが配され、

イ 文字板の左上部、右上部及び中央下部には、補助針を用いた小円形状の表示部が設けられ、文字板右上部の小円形状の表示部には、「0」(中央上部)、「15」(右部)及び「30」(中央下部)の各数字(左部にも数字が配置されていると認められるが、分針の影になっているため、判読できない。)を伴って、環状の目盛りが配置され、環状の目盛りの上部から時計回りで右下部にかけて、中心の欠けた扇型のプレートが設けられ、該プレート上には、上部から時計回りで右下部にかけて「SUN」、「MON」、「(分針の影に隠れているため、判読できない文字)」、「WED」、「THU」、「FRI」及び「SAT」との文字が記載されている。

ウ 上記小円形状の表示部には、さらに、上記環状の目盛りの中央上部から、反時計回りで左部にかけて、次第に細くなるように描かれた断続的な弧が描かれている。

12.引用例12(特開平11-052082号公報)について
(1)引用例12には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自らの作動電力の全部または一部を自己発電により賄う自己発電型の電子時計において、2次電源に関する情報を告知する電子時計に関する。」

「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
A:第1実施形態
まず、本発明をコンビネーション式腕時計に適用した第1実施形態について説明する。
A-1:構成
図1は第1実施形態によるコンビネーション式腕時計の電気的構成を示す図であり、1は入射光の照度に応じた値の電流を発生するセルを複数直列してなるソーラー電池、2は一端がソーラー電池1の一端に接続された2次電池(例えば、リチウムイオン2次電池)であり、ソーラー電池1の発電電流を蓄積する。3は2次電池2への過充電を防止するためにソーラー電池1と並列に接続されたリミッタ、4は一端が2次電池2の一端に接続されたコンデンサであり、2次電池2からの放電電流を蓄積する。
【0012】5はコンデンサ4と並列に接続されたシステム制御部、6はコンデンサ4の他端(電圧値VSS)、2次電池2の一端(電圧値VDD)、2次電池2の他端、およびソーラー電池1の他端に接続された充放電制御部であり、VDDとVSSとの電位差がシステム制御部5の定格電圧となるように2次電池2の充放電を制御するとともに、システム制御部5から与えられる検出指示を契機として2次電池2への入力電流(充電電流)と2次電池2からの出力電流(放電電流)と2次電池2の残容量を検出し、各検出値をシステム制御部5へ供給する。すなわち、充放電制御部6は、入力電流検出手段および出力電流検出手段の機能を有する。なお、実際には、充放電制御部6とソーラー電池1の他端との間には逆流防止用のダイオードが挿入される。」

「【0015】上述した構成において、充電時にはソーラー電池1の発電電流は2次電池2に蓄積され、放電時には2次電池に蓄積された電流がシステム制御部5側へ放出される。システム制御部5は、2次電池2側からの出力電流(放電電流)を用いて作動し、計時動作および表示指針の歩進動作を常に継続して行うとともに、充放電制御部6に対して所定時間(例えば、2秒)間隔で検出指示を与える。当該指示を受け取ると、充放電制御部6は、2次電池2の残容量、入力電流値(ソーラー電池1の発電電流値)、出力電流値を検出し、システム制御部5へ供給する。
【0016】システム制御部5は、上記残容量、入力電流値、および出力電流値をRAM14に一時格納するとともに、残容量および入力電流値を告知するよう液晶パネル9を制御する。また、同時にシステム制御部5は、入力電流値と出力電流値との差(収支)を求め、これを告知するよう液晶パネル9を制御する。また、システム制御部5は、入出力制御回路18から所定の信号が入力されると、RAM14から最新の残容量および出力電流値を読み出し、これらを告知するよう液晶パネル9および表示指針(モータ駆動回路8)を制御する。」

「【0021】一方、使用者が所定のボタン操作を行うと、システム制御部5がRAM14から2次電池2の残容量を読み出し、この残容量に応じて液晶表示(パターン表示および文字表示)を更新するとともに、秒針24を当該残容量に応じて時計回りに方向に早送り駆動する。例えば、図3に示す状態において使用者が所定のボタン操作を行うと、図4に示すように、秒針24が3時位置に迅速に移動する。この結果、2次電池2の残容量が液晶表示および秒針24の位置表示によって告知される。」

したがって、引用例12には、「第1実施形態によるコンビネーション式腕時計」について、次の技術的事項が記載されているものと認められる(以下、「引用例12に記載された技術的事項」という)。
「コンビネーション式腕時計であって、ソーラー電池1、一端がソーラー電池1の一端に接続された2次電池2(段落【0011】より。以下、同様。)、システム制御部、システム制御部5から与えられる検出指示を契機として2次電池2の残容量を検出し、各検出値をシステム制御部5へ供給する、充放電制御部(【0012】)を備え、
システム制御部5は、充放電制御部6に対して所定時間(例えば、2秒)間隔で検出指示を与え、当該指示を受け取ると、充放電制御部6は、2次電池2の残容量を検出し、システム制御部5へ供給し(【0015】)、
システム制御部5は、上記残容量をRAM14に一時格納するとともに、残容量を告知するよう液晶パネル9を制御し(【0016】)、
使用者が所定のボタン操作を行うと、システム制御部5がRAM14から2次電池2の残容量を読み出し、この残容量に応じて液晶表示を更新するとともに、秒針24を当該残容量に応じて時計回りに方向に早送り駆動し、この結果、2次電池2の残容量が秒針24の位置表示によって告知される(【0021】)、
コンビネーション式腕時計(【0011】)。」

(2)また、上記引用例12には、図面とともに、さらに、次の事項が記載されている。
「【0036】C:第3実施形態
次に、本発明をアナログ式腕時計に適用した第3実施形態について説明する。
C-1:構成
図9は第3実施形態によるアナログ式腕時計の電気的構成を示す図であり、この図において、図5と異なる点は、システム制御部21に代えてシステム制御部32を設けた点と、液晶パネル9を削除した点である。なお、本実施形態では、第2実施形態と同様に、2系統の駆動系が設けられている。
【0037】また、図10は、システム制御部32の内部構成例を示すブロック図であり、この図において、図6と大きく異なる点は、表示制御回路15およびLCDドライバ17を削除した点と、モータ駆動回路22が2次電池2に関する情報の告知のみに使用される専用針を駆動する点である。
【0038】さらに、図11は本実施形態における腕時計本体の外観を示す図であり、図3と共通する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。図11に示すように、筐体に支持された円盤状の文字盤(ソーラー電池1)上の10時位置から11時位置にかけて円弧を描く扇形の領域34には、扇の中心に回転軸を有する専用針が設けられている。また、扇形の領域34の11時位置側にはフル充電状態を示す記号「F」が、10時位置側には空状態であることを示す記号「E」が描かれており、表示指針、部材31、および専用針の可視面と、上記記号「F」,「E」の色は、背景色(黒色に近い濃青色)と対比して視認しやすい色となっている。
【0039】C-2:動作
次に、本腕時計の告知動作について説明する。システム制御部32は、充放電制御部6に対して所定時間(例えば、2秒)間隔で検出指示を与え、充放電制御部6から2次電池2の残容量を取得し、取得した残容量をRAM14に一時格納するとともに、専用針の位置(方向)が領域34上で当該残容量に応じた位置(方向)となるよう、モータ駆動回路22を制御する。システム制御部32は、上述した動作以外の告知動作を行うことはない。」

「【0048】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、告知制御手段が、検出手段により検出された2次電源に関する情報を告知手段を用いて常時告知させるので、使用者は特別な操作を行うことなく、蓄電手段の蓄積電荷量や入力電流値(発電手段の発電電流値)等の2次電源に関する情報を容易に確認することができる。したがって、2次電源に関する情報を使用者がより頻繁に確認することが期待され、使用者の不安感を和らげる効果を期待できる(請求項1,2,3)。」

よって、引用例12には、「第3実施形態によるアナログ式腕時計」として、次の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されているものと認められる。
)。
「アナログ式腕時計(段落【0036】より。以下、同様。)であって、
筐体に支持された円盤状の文字盤(ソーラー電池1)上の10時位置から11時位置にかけて円弧を描く扇形の領域34には、扇の中心に回転軸を有する専用針が設けられ、また、扇形の領域34の11時位置側にはフル充電状態を示す記号「F」が、10時位置側には空状態であることを示す記号「E」が描かれ(【0038】)、
システム制御部32は、充放電制御部6に対して所定時間(例えば、2秒)間隔で検出指示を与え、充放電制御部6から2次電池2の残容量を取得し、取得した残容量をRAM14に一時格納するとともに、専用針の位置(方向)が領域34上で当該残容量に応じた位置(方向)となるよう、モータ駆動回路22を制御し(【0039】)、
告知制御手段が、検出手段により検出された2次電源に関する情報を告知手段を用いて常時告知させるので、使用者は特別な操作を行うことなく、蓄電手段の蓄積電荷量等の2次電源に関する情報を容易に確認することができる(【0048】)、
アナログ式腕時計(【0036】)。」

13.引用例13(特開2011-208948号公報)について
引用例13には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、電波腕時計に関する。」

「【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、GPS衛星等の衛星からの電波を受信し、時刻を修正する電波腕時計において、使用者の指示に基づいて電波の受信を行う際、受信環境が良いタイミングで電波を受信することを目的とする。」

「【0010】
[実施形態1]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電波腕時計100を示す平面図である。同図には、電波腕時計100の外装である胴1、胴1内に配置された文字板2と時刻を示す指針である時針3、分針4及び秒針5が同軸上に配置されて示されている。文字板2は、衛星から到達する電波が透過し、文字板2の背後に配置されたパッチアンテナで受信されるよう、非磁性かつ非導電性の材料、例えば、合成樹脂で形成される。また、時針3、分針4及び秒針5とは別の軸上に、電波腕時計100の状態を表示する指針である状態表示針6が配置されており、文字板2上には、電波腕時計100の種々の状態を示す目盛である状態表示目盛7が記されている。また、胴1の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うための竜頭8、ボタン9が配置されている。胴1の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部10が伸びている。
【0011】
なお、同図に示した電波腕時計100のデザインは一例である。ここで示したもの以外にも、例えば、胴1を丸型でなく角型にしてもよいし、竜頭8やボタン9の有無、数、配置は任意である。また、本実施形態では、指針を時針3、分針4、秒針5及び状態表示針6の4本としているが、これに限定されず、秒針5を省略したり別軸で設けたり、あるいは秒針5を状態表示針6を兼ねるものとしてもよい。さらに、曜日、タイムゾーンやサマータイムの有無、電池の残量等、各種の表示を行う指針や、日付表示等を追加したりしてもよく、状態表示針6がこれらの表示を兼ねるものとしても良い。」

「【0033】
再び図1に戻ると、状態表示目盛7には、状態表示針6が指し示す種々の電波腕時計100の状態が記されており、本実施形態では、それらは、受信動作表示部22、受信環境表示部23及び、時刻精度表示部24に分けられる。
【0034】
受信動作表示部22は、電波腕時計100が現在受信に関するどのような動作中であるかを示す表示であり、「R」及び「W」の表示からなる。」

「【0035】
受信環境表示部23は、電波腕時計100がおかれている環境が衛星からの電波の受信にどれほど適しているかを示す環境情報に関する情報の表示である。」

「【0036】
時刻精度表示部24は、電波腕時計100の内部時刻の精度に関する情報を示す表示である。」

したがって、引用例13には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「電波腕時計(段落【0001】より。以下、同様。)であって、
時針3、分針4及び秒針5とは別の軸上に、電波腕時計100の状態を表示する指針である状態表示針6が配置されており、文字板2上には、電波腕時計100の種々の状態を示す目盛である状態表示目盛7が記され、また、胴1の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うための竜頭8、ボタン9が配置され(【0010】)、
曜日、タイムゾーンやサマータイムの有無、電池の残量等、各種の表示を行う指針や、日付表示等を追加したりしてもよく、状態表示針6がこれらの表示を兼ねるものとしても良く(【0011】)、
状態表示目盛7には、状態表示針6が指し示す種々の電波腕時計100の状態が記されており、それらは、受信動作表示部22、受信環境表示部23及び、時刻精度表示部24に分けられる(【0033】)、
電波腕時計(【0001】)。」

14.引用例14(特開2009-229106号公報)について
引用例14には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

「【0034】
図1は、本発明に係る時刻修正装置付き計時装置であるGPS時刻修正装置付き腕時計1(以下「GPS付き腕時計1」という)を示す概略図であり、図2はGPS付き腕時計1の正面図である。また、図3はGPS付き腕時計1の概略断面図であり、図4は、GPS付き腕時計1の主なハードウエア構成等を示す概略図である。
【0035】
図2に示すように、GPS付き腕時計1は、文字板2および指針3からなる時刻表示部を備える。指針3は、時針131、分針132、秒針133を備える。
文字板2には、一般的な時計と同様に、各指針3による時刻を指示するための目盛が形成されている。
また、文字板2には、後述するように、秒針133によって、受信状態レベルや受信結果を表示するための目盛も設定されている。本実施形態では、10秒の目盛位置に「Y」、20秒の目盛位置に「N」、40秒の目盛位置に「L」、50秒の目盛位置に「H」の各目盛が設定されている。なお、「Y」は「Yes」、「N」は「No」、「L」は「Low」、「H」は「High」の略である。
このため、本実施形態においては、衛星信号の受信状態を表示する受信状態表示装置は、秒針133および文字板2を備えて構成されている。
【0036】
また、時刻表示部には、2つの表示部として小時計4,5が設けられている。第1表示部である第1小時計4は、指針3の回転軸に対し、文字板2の10時方向に配置されている。第2表示部である第2小時計5は、指針3の回転軸に対し、文字板2の6時方向に配置されている。
さらに、GPS付き腕時計1には、外部操作部材として、Aボタン6、Bボタン7とリュウズ8とが設けられている。
【0037】
第1小時計4は、第1指針141と、この第1指針141が指示する目盛が形成された第1文字板142とを備える。
第2小時計5は、第2指針151と、この第2指針151が指示する目盛が形成された第2文字板152とを備える。
【0038】
第1文字板142は、第1領域143および第2領域144に二分割されている。すなわち、第1文字板142は、円形に形成され、その中心を通る上下方向の直線、つまり文字板2の0時および6時を結ぶ方向に沿った直線によって、文字板2の3時側(第1文字板142の右側)と、文字板2の9時側(第1文字板142の左側)とに分割されている。
【0039】
第1領域143は、第1文字板142の分割された右側(文字板2の3時側)に設けられ、曜日を示す目盛が形成されている。本実施形態では、図2に示すように、第1領域143の下側から反時計回りに、月曜日を示す「M」、火曜日を示す「T」、水曜日を示す「W」、木曜日を示す「T」、金曜日を示す「F」、土曜日を示す「S」、日曜日を示す「S」の各目盛が形成されている。なお、土曜日の「S」を青色、日曜日の「S」を赤色にすることで、曜日を容易に判断できるようにしてもよい。
このため、第1小時計4では、第1領域143によって時刻情報表示領域が構成されている。」

「【0043】
これらの各小時計4、5は、後述するように、表示制御手段54によって、時刻表示モードと、測位表示モードとの表示に切り替えられる。
そして、時刻表示モードに設定されている場合、第1小時計4の第1指針141は、第1領域143において、内部時刻情報の曜日を示す位置に移動する。」

「【0087】
[受信結果表示操作]
ST5で受信結果の表示操作があったことが検出された場合、受信状態表示制御手段53は、秒針133を用いて直前の受信結果を表示する(ST13)。なお、本実施形態では、Aボタン6を3秒以下で押した場合に受信結果の表示操作が行われたと判断している。
ここで、受信制御手段51は、測位モードおよび時刻修正モードにおける各受信処理を行った際に、モード毎に受信に成功したか失敗したかの結果データを記憶部20Aに記憶している。
【0088】
このため、受信状態表示制御手段53は、時刻表示モードが選択されている状態で受信結果表示モードに移行すると、記憶部20Aに記憶されている時刻修正モードの受信結果データを読み取る。そして、受信成功の場合には、秒針133を「Yes」の位置(10秒位置)に移動し、受信失敗の場合には秒針133を「No」の位置(20秒位置)に移動する。
【0089】
一方、受信状態表示制御手段53は、測位表示モードが選択されている状態で受信結果表示モードに移行すると、記憶部20Aに記憶されている測位モードの受信結果データを読み取り、受信成功の場合には秒針133を「Yes」の位置(10秒位置)に移動し、受信失敗の場合には秒針133を「No」の位置(20秒位置)に移動する。」

よって、引用例14には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「GPS時刻修正装置付き腕時計1(段落【0034】より。以下、同様。)であって、
GPS付き腕時計1は、文字板2および指針3からなる時刻表示部を備え、指針3は、時針131、分針132、秒針133を備え、文字板2には、秒針133によって、受信状態レベルや受信結果を表示するための目盛も設定され、このため、衛星信号の受信状態を表示する受信状態表示装置は、秒針133および文字板2を備えて構成され(【0035】)、
時刻表示部には、2つの表示部として小時計4,5が設けられ、(【0036】)、
第1小時計4は、第1指針141と、この第1指針141が指示する目盛が形成された第1文字板142とを備え(【0037】)、
第1文字板142は、第1領域143および第2領域144に二分割され(【0038】)、
第1領域143は、第1文字板142の分割された右側(文字板2の3時側)に設けられ、曜日を示す目盛が形成され、第1領域143の下側から反時計回りに、月曜日を示す「M」、火曜日を示す「T」、水曜日を示す「W」、木曜日を示す「T」、金曜日を示す「F」、土曜日を示す「S」、日曜日を示す「S」の各目盛が形成され(【0039】)、
これらの各小時計4、5は、時刻表示モードに設定されている場合、第1小時計4の第1指針141は、第1領域143において、内部時刻情報の曜日を示す位置に移動し(【0043】)、
受信結果の表示操作があったことが検出された場合、受信状態表示制御手段53は、受信成功の場合には、秒針133を「Yes」の位置(10秒位置)に移動し、受信失敗の場合には秒針133を「No」の位置(20秒位置)に移動する(【0087】、【0088】、【0089】)、
GPS時刻修正装置付き腕時計1(【0034】)。」

15.引用例15(特開2011-038867号公報)について
引用例15には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0028】
次に、この腕時計を使用する場合について説明する。
通常は、図3に示すように、時針、分針などの指針12が文字板8の上方を運針して、文字板8の上面外周に設けられた時字9を指示することにより、現在時刻の時分を知ることができる。このときには、文字板8の第1補助機能表示部15における秒針18が第1補助機能表示部15に設けられた秒目盛部16を指示することにより、現在時刻の秒時刻を知ることができる。また、このときには、第1表示部13に曜日などの情報が表示されると共に、第2表示部14に現在時刻が表示される。
【0029】
この状態で、押釦スイッチ6の操作によって電池の充電状態を表す機能が選択されると、図3および図6に示すように、針部材20が駆動されて第1の針21が表示領域24内の第1の目盛部25を指示する。このとき、充電をする必要がある場合には、図6(a)に示すように、第1の針21が第1の目盛部25のチャージ指示(C)を指示する。また、電池の残量が少ないときには、図6(b)に示すように、第1の針21が第1の目盛部25の電池残量低(L)を指示する。
【0030】
また、電池の残量が中程度のときには、図6(c)に示すように、第1の針21が第1の目盛部25の電池残量中(M)を指示する。また、電池の残量が多いときには、図6(d)に示すように、第1の針21が第1の目盛部25の電池残量高(H))を指示する。さらに、電池の消耗を抑制しているときには、図6(e)に示すように、パワーセイブモード(PS)を指示する。」

また、図6から、第1の目盛部25における電池残量の目盛が、「L」(電池残量低)、「M」(電池残量中)及び「H」(電池残量高)の順に、右回りに並んで配置されることが読み取れる。

よって、引用例15には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「腕時計(段落【0028】より。以下、同様。)であって、
押釦スイッチ6の操作によって電池の充電状態を表す機能が選択されると、針部材20が駆動されて第1の針21が表示領域24内の第1の目盛部25を指示するが、電池の残量が少ないときには、第1の針21が第1の目盛部25の電池残量低(L)を指示し、電池の残量が中程度のときには、第1の針21が第1の目盛部25の電池残量中(M)を指示し、また、電池の残量が多いときには、第1の針21が第1の目盛部25の電池残量高(H)を指示し(【0029】、【0030】)、第1の目盛部25における電池残量の目盛が、「L」(電池残量低)、「M」(電池残量中)及び「H」(電池残量高)の順に、右回りに並んで配置される(図6より)、
腕時計(【0028】)。」

16.引用例16(特開2012-026774号公報)について
引用例16には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子機器100の平面図であり、図2は電子機器100の一部断面図である。図1から明らかなように、電子機器100は、使用者の手首に装着される腕時計(電子時計)であり、文字板11及び指針12を備え、時刻を計時して表面に表示する。文字板11の大部分は、光及び1.5GHz帯のマイクロ波が透過し易い非金属の材料(例えば、プラスチック又はガラス)で形成されている。指針12は、文字板11の表面側に設けられ、回転軸13を中心に回転移動する秒針121、分針122及び時針123を含み、歯車を介してステップモーターで駆動される。」

「【0029】
文字板11には、二次電池24の残量と充電容量とを表示するインジケーター31が設けられている。二次電池24の残量は二次電池24に蓄積された電力の容量であり、充電容量は、基準時点から現在までの期間(充電期間)において二次電池24に充電された容量である。本実施形態では、インジケーター31として、文字板と指針とで構成されたアナログ式のインジケーターを採用しているが、液晶表示装置で構成されたデジタル式のインジケーターを採用してもよい。なお、文字板11におけるインジケーター31の設置位置は、GPSアンテナ23による衛星信号の受信やソーラーセル22による光発電を妨げないように定められている。
【0030】
図3は、インジケーター31の表示内容を説明するめための図である。この図に示すように、インジケーター31の右半分は二次電池24の残量を表示する残量インジケーター311として機能し、インジケーター31の左半分は充電容量の推定値を1回容量に対比して表示する充電容量インジケーター(表示部)312として機能する。
【0031】
残量インジケーター311は、二次電池24の端子電圧(電池電圧VCC)に対応する4つの段階うち一つの段階を指し示す。これらの段階のうち、0段階は3.6V未満、1段階は3.6V以上3.7V未満、2段階は3.7V以上3.9V未満、3段階は3.9V以上の電池電圧VCCに対応しており、0段階の指示は、二次電池24の残量が足りずに衛星信号の受信が不可能であることを意味し、1段階、2段階及び3段階の指示は、二次電池24の残量が足りていて衛星信号の受信が可能であることを意味する。なお、二次電池24の残量の余裕は、1段階<2段階<3段階である。

よって、引用例16には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「文字板11及び指針12を備えた腕時計(電子時計)(段落【0016】より。以下、同様。)であって、
文字板11には、二次電池24の残量と充電容量とを表示するインジケーター31が設けられ、インジケーター31として、文字板と指針とで構成されたアナログ式のインジケーターを採用し(【0029】)、
インジケーター31の右半分は二次電池24の残量を表示する残量インジケーター311として機能し(【0030】)、
残量インジケーター311は、二次電池24の端子電圧(電池電圧VCC)に対応する4つの段階うち一つの段階を指し示す(【0031】)、
腕時計(【0005】)。」

第5 特許法第29条第1項、第2項について
1.本件発明1-7の新規性進歩性について(引用例1)
(1)引用例1が頒布された日について
(ア)引用例1には、表紙に「CITIZEN INSTRUCTION MANUAL Eco-Drive」(シチズン 取扱説明書 エコ・ドライブ)と記載され、裏表紙に「Model No.AT4* Cal.E650 CTZ-A8151(3) (モデルナンバーAT4* キャリバーモデルE650 CTZ-A8151(3)」との記載はあるが、頒布日はもとより、版数や印刷日、印刷場所の記載すらなく、引用例1が、いつ、どこで、どのように頒布されたのかを特定するのに十分な記載はない。

(イ)一般に、取扱説明書は、商品と同梱されて購買者に譲渡されるものであるが、商品の仕様・機能等は販売開始以降も適宜変更され、取扱説明書も、当該仕様・機能等の変更や販売状況に応じて適時に改訂、印刷され、頒布されるものである。
よって、ある取扱説明書が、どのような商品を対象とした取扱説明書であるかが判明したからといって、その取扱説明書が、該商品の販売開始後のいかなる時に商品に同梱されて購買者に譲渡されたものであるかは、確定し得ないことである。
この点を踏まえて引用例1が頒布された日について検討すると、引用例2の第1頁(表紙)に「2011 Supplement」「CITIZEN ECO-DRIVE」と記載され、「Perpetual Chrono A・T」の各種の商品写真、及び「MODELS-AT40** PERPETUAL CHRONOGRAPH A・T」「Mvmt Cal. No.E65*」の指針、目盛、及びボタンの名称についての記載があり、これらの商品写真の外観や指針、目盛、及びボタンの名称からみて、引用例1の取扱説明書が対象とする商品が、引用例2の第1頁(表紙)及び奥付に記載のとおり「2011」に販売が開始されていたとしても、これらのことは、引用例1の取扱説明書が、「2011」に頒布されたことを裏付けるものではない。

(ウ)同様に、引用例3の動画(2012年1月2日に公開)で、「Citizen Eco-Drive Perpetual Chrono A・T Watch」についての「Review」が紹介され、引用例4の動画(2012年2月6日に公開)で、「CITIZEN」及び「ECO-DRIVE」と記載された箱から取り出された時計についての操作の紹介がなされているからといって、引用例1の取扱説明書が、これらの動画の公開前に頒布されたことが裏付けられることにはならない。

(2)まとめ
ア したがって、引用例2、引用例3及び引用例4は、引用例1の取扱説明書が、原出願前に頒布されたことを裏付けるものではないから、引用例1を根拠として、本件発明1は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であるとすることはできず、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえない。

イ また、本件発明2-7は、本件発明1を減縮した発明であるから、本件発明2-7は、同様の理由により、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえない。

ウ さらに、引用例1の取扱説明書が、原出願前に頒布されたことが裏付けられない以上、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。

エ また、本件発明3、5及び7は、本件発明1を減縮した発明であるから、本件発明3、5及び7は、同様の理由により、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。

(3)異議申立人清水祐子の主張について
ア 異議申立人清水祐子は、
(ア)引用例1には、発行年月日についての明示の記載はないが、引用例2の商品カタログには、引用例1のAnalog solar-powered watchに該当する電子時計が「PERPETUAL CHRONOGRAPH A・T」と銘打って掲載されているから、引用例1のAnalog solar-powered watchは遅くとも2011年には販売されていたことを意味する。したがって、引用例1の取扱説明書は、Analog solar-powered watchの販売と同時に頒布されることから、遅くとも2011年には発行されている。

(イ)また、2012年1月2日を公開日とする記載が脚注部にある引用例3の動画に、「Citizen Eco-Drive Perpetual Chrono A・T Watch Review」というタイトルが付されており、さらに、2012年2月6日を公開日とする記載が脚注部にある引用例4の動画に、「Citizen Eco-Drive Review(Perpetual Chrono AT 52E)」というタイトルが付されており、これらの動画で撮影された電子時計は、引用例2の商品カタログで「PERPETUAL CHRONOGRAPH A・T」と銘打って掲載されている電子時計と外観が一致し、引用例2の商品カタログで「PERPETUAL CHRONOGRAPH A・T」と銘打って掲載されている電子時計は、引用例1のAnalog solar-powered watchに該当することから、引用例3の動画、及び引用例4の動画には、引用例1のAnalog solar-powered watchに該当する電子時計が撮影されている。

(ウ)このことから、引用例1のAnalog solar-powered watchは遅くとも2012年1月2日、または2012年2月6日には販売されていたことを意味する。

(エ)したがって、引用例1の取扱説明書は、Analog solar-powered watchに付属されるものとしてAnalog solar-powered watchの販売と同時に頒布されることから、遅くとも2012年1月2日、または2012年2月6日には発行されている、と主張している。

イ しかし、引用例2に「PERPETUAL CHRONOGRAPH A・T」の時計が掲載され、引用例3、引用例4に、「Perpetual Chrono A・T」についての紹介動画が掲載されているからといって、引用例1の取扱説明書が、これら引用例2-引用例4に係る「PERPETUAL CHRONOGRAPH A・T」の電子時計と同時に頒布されていると確定できないことは、上記「(1)」で述べたとおりである。

ウ なお、異議申立人清水祐子は、引用例4における動画において、次第に細くなるように描かれた断続的な弧が、「充電量」を示すものであると主張しているが、その具体的根拠は何ら示されておらず、また、次第に細くなるように描かれた断続的な弧が、何を示すものであるのか、引用例4における動画から確定することはできない。

2.本件発明1、4、5及び6の新規性について(引用例8-11)
(1)引用例9が電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった日について
ア 引用例9は、インターネットにて公衆に利用可能になったpdfファイル(http://c02.coacdn.com/calibersWPC/E650_full_instructions_EN_US.pdf)を、異議申立人渡辺明弘が平成30年1月4日に出力した印刷物である。
引用例9には、当該pdfファイルがインターネットにて公衆に利用可能になった日が特定されていないから、当該pdfファイルに係る「Analog solar-powered watch」「Model」「E650」の英文マニュアルが、原出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったことは確定できない。

イ また、引用例8及び引用例10は、共に、異議申立人渡辺明弘が平成30年1月4日に出力した印刷物であって、引用例8には「PERPETUAL CHRONO A-T MODEL:AT4008-51E」との記載があり、引用例10には、「シチズン エコ・ドライブAT4008-51Eメンズ腕時計」について、「発売年 2011」と記載され、また、「2012年2月7日」付けの「カスタマーレビュー」の投稿内容が記載されている。
しかし、引用例8及び引用例10には、腕時計についての技術的内容は記載されていないから、引用例8及び引用例10に本件発明1と同一の発明が記載されているとすることはできず、また、引用例10から、本件発明1が原出願前に公然と知られ、また、公然と実施されていたことを確定することもできない。
さらに、引用例10の上記記載から、引用例9のpdfファイルが、原出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったことを確定できるものでもない。

ウ 引用例11は、米国意匠特許明細書であって、「WRIST WATCH」(腕時計)についての技術的内容は何ら記載されていないから、本件発明1と同一の発明が記載されているとすることはできない。

(2)まとめ
ア 以上のとおり、引用例9は、原出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったとはいえず、また、引用例8、10-11は、腕時計についての技術的内容を開示するものではないから、本件発明1が、原出願前に公然知られた発明であるとすることはできず、本件発明1は、特許法第29条第1項第1号に該当するとはいえない。
同様に、本件発明1が、原出願前に公然実施された発明であるとすることはできず、本件発明1は、特許法第29条第1項第2号に該当するとはいえない。
さらに、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当するともいえない。

イ さらに、本件発明4、5及び6は、本件発明1を減縮した発明であるから、同様の理由により、本件発明4、5及び6は、特許法第29条第1項第1号ないし第3号に該当するともいえない。

(3)異議申立人渡辺明弘の主張について
異議申立人渡辺明弘は、引用例10に掲載された、「シチズン エコ・ドライブAT4008-51Eメンズ腕時計」のカスタマーレビューの記載より、引用例9の英文マニュアルが、原出願日よりも前に利用可能であり、公知となっていると主張している。
しかし、引用例10に「2012年2月7日」付けのカスタマーレビューが記載されているからといって、引用例9の英文マニュアルがいつ利用可能となり、公知となったかは確定できないことは、上記「(1)」で述べたとおりである。
なお、異議申立人渡辺明弘は、引用例11には「充電量」を示す記載があると主張するが、引用例11は、米国意匠特許明細書であって、「充電量」なる用語はもとより、技術的な内容は何ら記載されていない。

3.本件発明1の新規性進歩性について(引用例5、引用例12-引用例13)
(1)引用例5(「引用発明1-1」)を主引用例とした場合
ア 対比
本件発明1と引用発明1-1とを対比する。
(ア)引用発明1-1における「二次電池114」が、本件発明1における「二次電池」に相当する。

(イ)引用発明1-1では「モード針704、804」は、「曜表示706のいずれかを指し示している状態では、その曜日を示し」ているから、本件発明1における「曜日を指示する指針」に相当する。

(ウ)引用発明1-1では「スイッチ部111は、りゅうず711、操作ボタン712,713などによって構成され、スイッチ制御回路112は、スイッチ部111からの信号に基づいて、操作者からの操作指示に関する入力をマイコンIC100に送信し」ているから、引用発明1における「りゅうず711、操作ボタン712,713などによって構成され」た「スイッチ部111」が、本件発明1における「操作手段」に相当する。

(エ)引用発明1-1における「電波修正時計」は、「マイコンIC100」により「電波修正時計本体の全体を制御」しているから、本件発明1における「電子時計」に相当する。

よって、本件発明1と引用発明1-1との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「二次電池と、
曜日を指示する指針と、
操作手段とを備える
ことを特徴とする電子時計。」

(相違点1)
本件発明1では、「前記二次電池の電圧を検出する電池電圧検出手段」を備え、「前記指針は、前記電池電圧検出手段で検出した前記二次電池の電圧に基づく電池残量を指示可能に構成され、前記指針は、前記操作手段が操作された場合に、前記電池残量を指示する」のに対し、引用発明1-1では、「操作者が受信禁止モードを選択し」、「受信禁止モードに移行した際には、モード針704,804は曜表示706の指し示しを止め、正転方向(逆転方向でもよい)に回動して、受信禁止モード(ダイブ)表示707を指し示しこれによって、受信禁止モードであることを通知する」ものであって、二次電池114の充電量(残量)を表示するものではない点。

イ 判断
そこで、上記相違点1について検討すると、上記相違点1は、実質的な相違点であるから、引用発明1-1は、本件発明1であるとはいえない。

(2)引用例5(「引用発明1-2」)を主引用例とした場合
ア 対比
次に、本件発明1と引用発明1-2とを対比する。
(ア)引用発明1-2における「二次電池114」が、本件発明1における「二次電池」に相当する。

(イ)引用発明1-2では「スイッチ部111は、りゅうず711、操作ボタン712,713などによって構成され、スイッチ制御回路112は、スイッチ部111からの信号に基づいて、操作者からの操作指示に関する入力をマイコンIC100に送信し」ているから、引用発明1-2における「りゅうず711、操作ボタン712,713などによって構成され」た「スイッチ部111」が、本件発明1における「操作手段」に相当する。

(ウ)引用発明1-2における「充電量インジケーター901」は、「二次電池114の充電量(残量)を表示することができ」るのであるから、引用発明1-2が「二次電池114の充電量(残量)」を検出する手段を有し、「充電量インジケーター901」は該「二次電池114の充電量(残量)」を検出する手段で検出した「充電量(残量)」を表示していることは明らかである。
よって、引用発明1-2において「電波修正時計の本体700には、充電量表示(インジケーター)901が設けられ、充電量インジケーター901は、モード針904が示す位置によって、二次電池114の充電量(残量)を表示することができ」ることが、本件発明1における「前記指針は、前記電池電圧検出手段で検出した前記二次電池の電圧に基づく電池残量を指示可能に構成され」ることに相当するといえる。

(エ)引用発明1-2において「一旦、操作者が受信禁止モードを選択した場合に、再び操作者からの受信許可モードの解除指示」があった場合には、「モード針904」が、「受信禁止モード(ダイブ)表示707の位置」から「充電量表示901」の位置へ「回動して移行する」ことは明らかである。
よって、引用発明1-2において「操作者からの受信許可モードの解除指示」があった場合に、「モード針904」が、「充電量表示901」の位置へ「回動して移行」し、「二次電池114の充電量(残量)を表示する」ことが、本件発明1における「前記指針は、前記操作手段が操作された場合に、前記電池残量を指示する」ことに相当するといえる。

(オ)引用発明1-2における「電波修正時計」は、「マイコンIC100」により「電波修正時計本体の全体を制御」しているから、本件発明1における「電子時計」に相当する。

よって、本件発明1と引用発明1-2との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「二次電池と、
前記二次電池の電圧を検出する電池電圧検出手段と、
操作手段とを備え、
前記指針は、前記電池電圧検出手段で検出した前記二次電池の電圧に基づく電池残量を指示可能に構成され、
前記指針は、前記操作手段が操作された場合に、前記電池残量を指示する
ことを特徴とする電子時計。」

(相違点2)
本件発明1では、前記操作手段が操作された場合に前記電池残量を指示する指針が、「曜日を指示する」指針であるのに対し、引用発明1-2では「受信禁止モードを表示」する「モード針904」である点。

イ 判断
上記相違点2について検討すると、上記相違点2は、実質的な相違点であるから、引用発明1-2は、本件発明1であるとはいえない。

(3)異議申立人清水祐子は、引用例5に記載された発明は、本件発明1である旨主張しているが、本件発明1と、引用例5に記載された発明とは、上記「(1)」、「(2)」で述べたとおり、実質的な相違点を有するから、引用例5に記載された発明は、本件発明1であるとはいえない。

(4)引用例12を主引用例とした場合
ア 対比
本件発明1と引用発明5とを対比する。
(ア)引用発明5における「2次電池2」が、本件発明1における「二次電池」に相当する。

(イ)引用発明5における「システム制御部32」は、「充放電制御部6に対して所定時間(例えば、2秒)間隔で検出指示を与え」、「充放電制御部6から2次電池2の残容量を取得し」ているから、本件発明1における「前記二次電池の電圧を検出する電池電圧検出手段」に相当する。

(ウ)引用発明5における「筐体に支持された円盤状の文字盤(ソーラー電池1)上の10時位置から11時位置にかけて円弧を描く扇形の領域34」に「扇形の領域34の11時位置側にはフル充電状態を示す記号「F」が、10時位置側には空状態であることを示す記号「E」が描かれ」ている。
よって、引用発明5における、「システム制御部32」が、「充放電制御部6に対して所定時間(例えば、2秒)間隔で検出指示を与え、充放電制御部6から2次電池2の残容量を取得し」、「専用針の位置(方向)が領域34上で当該残容量に応じた位置(方向)となるよう、モータ駆動回路22を制御し」ていることと、本件発明1における「曜日を指示する指針」を備え、「前記指針は、前記電池電圧検出手段で検出した前記二次電池の電圧に基づく電池残量を指示可能に構成され」ることとは、「指針」を備え、「前記指針は、前記電池電圧検出手段で検出した前記二次電池の電圧に基づく電池残量を指示可能に構成され」ている点で共通する。

(エ)引用発明5における「アナログ式腕時計」は、引用例12の段落【0001】に「本発明は、自らの作動電力の全部または一部を自己発電により賄う自己発電型の電子時計において、2次電源に関する情報を告知する電子時計に関する。」と記載されていることから、本件発明1における「電子時計」に相当する。

よって、本件発明1と引用発明5における一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「二次電池と、
前記二次電池の電圧を検出する電池電圧検出手段と、
指針と、
操作手段とを備え、
前記指針は、前記電池電圧検出手段で検出した前記二次電池の電圧に基づく電池残量を指示可能に構成される
ことを特徴とする電子時計。」

(相違点3)
本件発明1では、「操作手段とを備え」、「曜日を指示する指針」が、「前記操作手段が操作された場合に、前記電池残量を指示する」のに対し、引用発明5における「専用針」は、「曜日を指示する指針」ではなく、「使用者」が「特別な操作を行うことなく」、「2次電源」の「残容量」を示すものである点。

イ 判断
上記相違点3について検討すると、
(ア)「引用例12に記載された技術的事項」には、「第1実施形態によるコンビネーション式腕時計」について、次の事項が示されている。
「使用者が所定のボタン操作を行うと、システム制御部5がRAM14から2次電池2の残容量を読み出し、この残容量に応じて液晶表示を更新するとともに、秒針24を当該残容量に応じて時計回りに方向に早送り駆動し、この結果、2次電池2の残容量が秒針24の位置表示によって告知される」(下線は、強調のため、当審で付与した。)
しかし、引用発明5は、「告知制御手段が、検出手段により検出された2次電源に関する情報を告知手段を用いて常時告知させるので、使用者は特別な操作を行うことなく、蓄電手段の蓄積電荷量等の2次電源に関する情報を容易に確認することができる」ことを特徴とした発明であるから、引用発明5において、「使用者が所定のボタン操作を行う」ことを要件とする「引用例12に記載された技術的事項」を適用することは、当業者といえども動機付けられないことである。

(イ)引用例13には、「曜日、タイムゾーンやサマータイムの有無、電池の残量等、各種の表示を行う指針や、日付表示等を追加したりしてもよく、状態表示針6がこれらの表示を兼ねるものとしても良」いことが示されている。
しかし、引用例13における上記記載は、
a 曜日、電池の残量等の表示を行う指針を追加する。
b 状態表示針6が、曜日、電池の残量等の表示を兼ねるものとしても良い。
ことを示すにとどまり、状態表示針6とは別に、曜日及び電池の残量の表示を兼ねた指針を追加し、該指針による電池の残量の表示を、使用者によるボタンの操作によって行うことまで示すものではない。

(ウ)よって、上記相違点3に係る本件発明1の構成は、引用例12に記載された技術的事項及び引用例13に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たことではない。

ウ まとめ
よって、本件発明1は、引用発明5、引用例12に記載された技術的事項及び引用例13に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)異議申立人渡辺明弘の主張について
異議申立人渡辺明弘は、引用例13には、電子時計(100)における状態表示針(6)を、曜日の表示と電池の残量の表示の双方に用いる点が記載されているから、引用例12に記載された専用針として、曜日を指示する指針を用い、その専用針を本件特許発明1における構成要件Cとなすことは、当業者にとって容易に想到し得るものであると主張している。
しかし、引用例13に記載された技術的事項は、上記「(4)」「イ」「(イ)」に記載したとおりであって、引用例13には、「電子時計(100)における状態表示針(6)を、曜日の表示と電池の残量の表示の双方に用いる点」は記載されていないから、異議申立人渡辺明弘の主張は理由がない。
また、引用例12に記載された発明(引用発明5)における「専用針」は、「使用者」が「特別な操作を行うことなく」、「2次電源」の「残容量」を示すものである点に特徴を有するのであるから、引用発明5における「専用針」を「曜日」を表示する指針としたうえで、さらに「使用者」が「特別な操作を行う」ことにより、該「曜日」を表示する「専用針」が「2次電源」の「残容量」を示すものとすることは、上記「(4)」「イ」「(ア)」で述べたとおり、当業者に動機付けられないことである。

4.本件発明2の新規性進歩性について
(1)引用例5(引用発明1-1、引用発明1-2)を主引用例とした場合
(新規性について)
本件発明2は、本件発明1を減縮した発明であるから、上記「3.」「(1)」、「(2)」で述べたのと同様の理由により、引用例5(引用発明1-1、引用発明1-2)に記載された発明ではない。

(進歩性について)
ア 本件発明2は、本件発明1を減縮した発明であるから、引用例5に記載された引用発明1-1とは、上記「3」「(1)」「ア」に記載したとおり、少なくとも、次の相違点1を有する。

(相違点1)
本件発明2では、「前記二次電池の電圧を検出する電池電圧検出手段」を備え、「前記指針は、前記電池電圧検出手段で検出した前記二次電池の電圧に基づく電池残量を指示可能に構成され、前記指針は、前記操作手段が操作された場合に、前記電池残量を指示する」のに対し、引用発明1-1では、「操作者が受信禁止モードを選択し」、「受信禁止モードに移行した際には、モード針704,804は曜表示706の指し示しを止め、正転方向(逆転方向でもよい)に回動して、受信禁止モード(ダイブ)表示707を指し示しこれによって、受信禁止モードであることを通知する」ものであって、二次電池114の充電量(残量)を表示するものではない点。

そこで、上記相違点1について検討すると、引用発明1-2には、「電波修正時計の本体700には、充電量表示(インジケーター)901が設けられ、充電量インジケーター901は、モード針904が示す位置によって、二次電池114の充電量(残量)を表示することができ、上記充電量表示をおこなうモード針904を用いて、受信禁止モードを表示し、具体的には、受信禁止モードに移行した場合には、モード針904は回動し、受信禁止モード(ダイブ)表示707の位置を示し、これによって、受信禁止モードに移行したことがわかり、操作者の操作によって受信禁止モードへ移行する際、通常、操作者はモード針904が充電量表示901から受信禁止モード(ダイブ)表示707へ回動して移行する」ことが示されている。
つまり、引用発明1-2には、「受信禁止モードを表示」する「モード針904」が、「充電量表示901から受信禁止モード(ダイブ)表示707へ回動して移行する」ことが記載されている。
したがって、引用発明1-1と引用発明1-2とは、「受信禁止モードを表示」する「モード針904」を、「曜日を示す」「指針」として(兼用して)用いるか、「充電量表示901」の指針として(兼用して)用いるか、二者択一の関係にある発明であるから、「モード針904」が、操作者の操作により、「曜日」と「充電量」を表示するようにすることは、「モード針904」が「受信禁止モードを表示」するという引用発明1-1及び引用発明1-2の前提にそぐわないことである。

よって、引用発明1-1に引用発明1-2を適用し、上記相違点1に係る本件発明2の構成とすることは、当業者といえども、容易になし得たことではない。

イ また、本件発明2と、引用発明1-2とを対比すると、両者は、上記「3」「(2)」「ア」で記載したとおり、少なくとも、次の相違点2を有する。

(相違点2)
本件発明2では、前記操作手段が操作された場合に前記電池残量を指示する指針が、「曜日を指示する」指針であるのに対し、引用発明1-2では「受信禁止モードを表示」する「モード針904」である点。

上記相違点2について検討すると、引用発明1-1には、「受信禁止モードを表示」する「モード針904」が、「曜日を示す」ものとすることが示されている。
しかし、引用発明1-2と引用発明1-1は、「受信禁止モードを表示」する「モード針904」を、「充電量表示901」の指針として(兼用して)用いるか、「曜日を示す」「指針」として(兼用して)用いるか、二者択一の関係にある発明であるから、「モード針904」が、操作者の操作により、「充電量」と「曜日」を表示するようにすることは、「モード針904」が「受信禁止モードを表示」するという引用発明1-2及び引用発明1-1の前提にそぐわないことである。
よって、引用発明1-2に引用発明1-1を適用し、上記相違点2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者といえども、容易になし得たことではない。

ウ したがって、本件発明2は、引用例5に記載された発明(引用発明1-1、引用発明1-2)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)引用例12(引用発明5)を主引用例とした場合
引用例14には、本件発明1の上記相違点3に係る構成は、記載も示唆もされていない。
そして、本件発明2は、本件発明1をさらに減縮したものであるから、上記「4」「(4)」で述べたのと同様の理由により、引用発明5、引用例12に記載された事項、及び引用例13-14に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5.本件発明3について
(1)引用例5(引用発明1-1、引用発明1-2)を主引用例とした場合
(新規性について)
本件発明3は、本件発明1を減縮した発明であるから、上記「3.」「(1)」、「(2)」で述べたのと同様の理由により、引用例5(引用発明1-1、引用発明1-2)に記載された発明ではない。

(進歩性について)
本件発明3は、本件発明1を減縮した発明であるから、引用発明1-1とは、少なくとも、上記相違点1を有し、引用発明1-2とは上記相違点2を有するものである。
そして、上記相違点1が、引用例5(引用発明1-2)に基づいて当業者が容易になし得たものでないことは、上記「4」「(1)」「ア」で述べたとおりである。
同様に、上記相違点2が、引用例5(引用発明1-1)に基づいて当業者が容易になし得たものでないことも、上記「4」「(1)」「イ」で述べたとおりである。
また、引用例6には上記相違点1又は相違点2に係る本件発明3の構成は、記載も示唆もされていない。
よって、本件発明3は、引用例5に記載された発明(引用発明1-1、引用発明1-2)及び引用例6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)引用例12(引用発明5)を主引用例とした場合
本件発明3は、本件発明1を減縮した発明であるから、上記相違点3に係る本件発明1の構成を有するものである。
そして、上記相違点3に係る本件発明1の構成は、引用例13、引用例15に記載も示唆もされていない。
よって、本件発明3は、引用発明5、引用例12に記載された事項、引用例13、引用例15に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.本件発明4-6について
(1)引用例5(引用発明1-1、引用発明1-2)を主引用例とした場合
本件発明4-6は、本件発明1を減縮した発明であるから、上記「3.」「(1)」、「(2)」で述べたのと同様の理由により、引用例5(引用発明1-1、引用発明1-2)に記載された発明ではない。

(2)引用例12(引用発明5)を主引用例とした場合
本件発明4-6は、いずれも本件発明1を減縮した発明であるから、上記相違点3に係る本件発明1の構成を有するものである。
そして、上記相違点3に係る本件発明1の構成は、引用例13-引用例16に記載も示唆もされていない。

よって、本件発明4は、引用発明5、引用例12に記載された事項、及び引用例13、引用例16に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明5は、引用発明5、引用例12に記載された事項、及び引用例13、引用例14に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに、本件発明6は、引用発明5、引用例12に記載された事項、及び引用例13、引用例15に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

7.本件発明7について
(1)引用例5(引用発明1-1、引用発明1-2)を主引用例とした場合
(新規性について)
本件発明7は、本件発明1を減縮した発明であるから、上記「3.」「(1)」、「(2)」で述べたのと同様の理由により、引用例5(引用発明1-1、引用発明1-2)に記載された発明ではない。

(進歩性について)
本件発明7は、本件発明1を減縮した発明であるから、引用発明1-1とは、少なくとも、上記相違点1を有し、引用発明1-2とは相違点2を有するものである。
そして、上記相違点1が、引用例5(引用発明1-2)に基づいて当業者が容易になし得たものでないことは、上記「4」「(1)」「ア」で述べたとおりである。
同様に、上記相違点2が、引用例5(引用発明1-1)に基づいて当業者が容易になし得たものでないことも、上記「4」「(1)」「イ」で述べたとおりである。

また、引用例7には上記相違点1又は相違点2に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。

よって、本件発明7は、引用例5に記載された発明(引用発明1-1、引用発明1-2)及び引用例7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)引用例12(引用発明5)を主引用例とした場合
本件発明7は、本件発明1を減縮した発明であるから、上記相違点3に係る本件発明1の構成を有するものである。
そして、上記相違点3に係る本件発明1の構成は、引用例13に記載も示唆もされていない。

よって、本件発明7は、引用発明5、引用例12に記載された技術的事項、及び引用例13に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 特許法第36条第6項第2号について
1 本件発明2について
(1)異議申立人渡辺明弘は、「請求項2には、「前記曜日と前記電池残量とに関する表示が、半円部分に沿って前記文字板に表示されている。」と記載されているが、「半円部分」についての定義または説明が本件特許発明の請求項に記載されておらず、本件特許発明の明細書においても記載はなく、「文字板」と「半円部分」との関係性が明確でないから、「半円部分に沿って」との記載から前記曜日と電池残量との表示形態に如何なるものが含まれるのか否かが判断できない。
よって、本件発明2は不明確であるから、本件発明2-7は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない特許出願についてされたものである。」と主張している。

(2)しかし、「半円部分」との用語は、幾何学的に定義され、説明されなければ理解できないような不明瞭な用語ではなく、また、請求項2に「文字板」と「半円部分」との関係が具体的に特定されていないからといって本件発明2が不明確となるわけではない。

(3)よって、本件発明2は明確であって、請求項2の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしており、異議申立人渡辺明弘の主張は理由がない。
同様に、本件発明3-7(本件発明2を減縮した発明)は明確であって、請求項3-7の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしており、異議申立人渡辺明弘の主張は理由がない。

第7 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1-7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-7に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-06-15 
出願番号 特願2015-63190(P2015-63190)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (G04C)
P 1 651・ 112- Y (G04C)
P 1 651・ 121- Y (G04C)
P 1 651・ 113- Y (G04C)
P 1 651・ 111- Y (G04C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 櫻井 仁  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 ▲うし▼田 真悟
清水 稔
登録日 2017-06-30 
登録番号 特許第6164240号(P6164240)
権利者 セイコーエプソン株式会社
発明の名称 電子時計  
代理人 廣田 浩一  

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