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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G02F
管理番号 1342252
審判番号 無効2015-800021  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-02-02 
確定日 2018-07-03 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5344105号発明「光配向用偏光光照射装置及び光配向用偏光光照射方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5344105号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第5344105号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件無効審判請求に係る特許第5344105号(以下、「本件特許」という。)は、ウシオ電機株式会社(以下、「被請求人」という。)によって、平成25年3月8日を出願日として出願され、その請求項1乃至5に係る発明について、平成25年8月23日に特許権の設定登録がなされたものであり、これに対し、平成27年2月2日に、本件無効審判の請求人である株式会社ブイ・テクノロジー(以下、単に「請求人」という。)により本件無効審判の請求がなされたものである。

第2 手続の経緯
本件審判の経緯は、次のとおりである(なお、特許庁への提出日は、請求人、及び、被請求人のそれぞれ記載の日付である。)。

平成27年 2月 2日 審判請求
平成27年 4月20日 訂正請求(以下、「第1回訂正請求」という。)
同日 審判事件答弁書(以下、「被請求人の答弁書」と
いう。)提出
平成27年 6月12日 審判事件弁駁書(以下、「弁駁書1」という。)
提出
平成27年 7月 7日 無効理由通知(以下、「無効理由通知1」という
。)
同日 職権審理結果通知
平成27年 8月 7日 審判事件意見書(以下、「請求人の意見書」とい
う。)提出
平成27年 8月10日 訂正請求(以下、「第2回訂正請求」という。)
同日 意見書(以下、「被請求人の意見書1」
という。)提出
平成27年 9月18日 弁駁書(以下、「弁駁書2」という。)
提出
平成27年10月26日 無効理由通知(以下、「無効理由通知2」という
。)
同日 職権審理結果通知
平成27年12月 2日 訂正請求(以下、「第3回訂正請求」という。)
同日 意見書(以下、「被請求人の意見書2」
という。)提出
平成28年 1月 8日 審判事件弁駁書(以下、「弁駁書3」という。)
提出
平成28年 3月 8日 口頭審理陳述要領書(請求人)提出
平成28年 3月 9日 口頭審理陳述要領書(被請求人)提出
平成28年 3月15日 上申書(請求人)提出
平成28年 3月23日 口頭審理
平成28年 5月26日 審決の予告
平成27年 7月28日 訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)
同日 上申書(以下、「被請求人の上申書」
という。)提出
平成28年 9月 7日 審判事件弁駁書(以下、「弁駁書4」という。)
提出

なお、特許法第134条の2第6項の規定により、上記第1回訂正請求ないし第3回訂正請求は、取り下げたものとみなす。

第3 本件訂正請求についての当審の判断
1 本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、特許第5344105号の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲について、平成28年7月28日付け訂正請求書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、それぞれ「訂正明細書」及び「訂正特許請求の範囲」という)のとおり訂正することを求めるものであって、その訂正事項は以下のとおりである(以下、「本件訂正」という。なお、下線は被請求人が付与したとおりである。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「基板が載置されるステージ」とあるのを、「光配向用膜材付きの基板が載置されるステージ」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させるものであり、」とあるのを、「ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、」とあるのを、「ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「スペースが確保されていることを特徴とする」とあるのを、「スペースが確保されており、前記第一第二ステージの各々は、基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含むことを特徴とする」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2に「前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に偏光光を照射するものであることを特徴とする請求項1記載の光配向用偏光光照射装置。」とあるのを、「設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており、前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に対し、偏光子からの偏光光を直接照射して、往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにすることを特徴とする光配向用偏光光照射装置。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3に「前記第一第二の各ステージには、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きにする基板アライナーが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の光配向用偏光光照射装置。」とあるのを、「設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されていることを特徴とする光配向用偏光光照射装置。」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に「前記ステージ移動機構は、前記第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており、このガイド部材は、前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用されるものであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の光配光用偏光光照射装置。」とあるのを、「設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており、前記ステージ移動機構は、前記第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており、このガイド部材は、前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用された、ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。」に訂正する。
(訂正請求書では、「・・・されるものであることを特徴とする・・・」であるが、訂正特許請求の範囲は、「・・・された、ことを特徴とする・・・」である。)

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1乃至4いずれかに記載の光配向用偏光光照射装置」とあるのを、「設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている光配向用偏光光照射装置」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項5に「前記第一の基板搭載位置において前記第一のステージ上に基板を搭載する第一の基板搭載ステップと、前記第二の基板搭載位置において前記第二のステージ上に基板を搭載する第二の基板搭載ステップと、」とあるのを、「前記第一の基板搭載位置において前記第一のステージ上に基板を搭載し、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第一の基板搭載調整ステップと、前記第二の基板搭載位置において前記第二のステージ上に基板を搭載し、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第二の基板搭載調整ステップと、」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項5に「基板が搭載された前記第一のステージを前記第一の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記一方の側に設定された第一の基板回収位置まで前記第一のステージを戻す第一の移動ステップと、基板が搭載された前記第二のステージを前記第二の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記他方の側に設定された第二の基板回収位置まで前記第二のステージを戻す第二の移動ステップと、」とあるのを、「基板が搭載された前記第一のステージを、前記第二の基板回収位置への前記第二のステージの復路移動に続くように前記第一の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記一方の側に設定された第一の基板回収位置まで前記第一のステージを戻す第一の移動ステップと、基板が搭載された前記第二のステージを、前記第一の基板回収位置への前記第一のステージの復路移動に続くように前記第二の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記他方の側に設定された第二の基板回収位置まで前記第二のステージを戻す第二の移動ステップと、」に訂正する。

(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0006】に
「上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に偏光光を照射するものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1又は2の構成において、前記第一第二の各ステージには、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きにする基板アライナーが設けられているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1、2又は3の構成において、前記ステージ移動機構は、前記第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており、このガイド部材は、前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用されるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、請求項1乃至4いずれかに記載の光配向用偏光光照射装置を使用して基板に光配向用の偏光光を照射する光配向用偏光光照射方法であって、
前記第一の基板搭載位置において前記第一のステージ上に基板を搭載する第一の基板搭載ステップと、
前記第二の基板搭載位置において前記第二のステージ上に基板を搭載する第二の基板搭載ステップと、
基板が搭載された前記第一のステージを前記第一の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記一方の側に設定された第一の基板回収位置まで前記第一のステージを戻す第一の移動ステップと、
基板が搭載された前記第二のステージを前記第二の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記他方の側に設定された第二の基板回収位置まで前記第二のステージを戻す第二の移動ステップと、
第一の基板回収位置において前記第一のステージから基板を回収する第一の基板回収ステップと、
第二の基板回収位置において前記第二のステージから基板を回収する第二の基板回収ステップと
を有しており、
第一の基板回収ステップ及び第一の基板搭載ステップが行われる時間帯は、第二の移動ステップが行われる時間帯と全部又は一部が重なっており、
第二の基板回収ステップ及び第二の基板搭載ステップが行われる時間帯は、第一の移動ステップが行われる時間帯と全部又は一部が重なっているという構成を有する。」
とあるのを
「上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されているという構成及び前記第一第二ステージの各々は、基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含むとの構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている光配向用偏光光照射装置において、前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に対し、偏光子からの偏光光を直接照射して、往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにするものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている光配向用偏光光照射装置において、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられていて、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、前記基板アライナーにより調整した後の該第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、前記基板アライナーにより調整した後の該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている光配向用偏光光照射装置において、前記ステージ移動機構は、前記第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており、このガイド部材は、前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用されるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている光配向用偏光光照射装置を使用して基板に光配向用の偏光光を照射する光配向用偏光光照射方法であって、
前記第一の基板搭載位置において前記第一のステージ上に基板を搭載し、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第一の基板搭載調整ステップと、
前記第二の基板搭載位置において前記第二のステージ上に基板を搭載し、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第二の基板搭載調整ステップと、
基板が搭載された前記第一のステージを、前記第二の基板回収位置への前記第二のステージの復路移動に続くように前記第一の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記一方の側に設定された第一の基板回収位置まで前記第一のステージを戻す第一の移動ステップと、基板が搭載された前記第二のステージを、前記第一の基板回収位置への前記第一のステージの復路移動に続くように前記第二の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記他方の側に設定された第二の基板回収位置まで前記第二のステージを戻す第二の移動ステップと、
第一の基板回収位置において前記第一のステージから基板を回収する第一の基板回収ステップと、
第二の基板回収位置において前記第二のステージから基板を回収する第二の基板回収ステップと
を有しており、
第一の基板回収ステップ及び第一の基板搭載ステップが行われる時間帯は、第二の移動ステップが行われる時間帯と全部又は一部が重なっており、
第二の基板回収ステップ及び第二の基板搭載ステップが行われる時間帯は、第一の移動ステップが行われる時間帯と全部又は一部が重なっているという構成を有する。」に訂正する。

2 訂正の適否
以下、訂正の適否を判断する。なお、訂正事項1ないし4は請求項1に係る訂正であり、訂正事項5は請求項2に係る訂正であり、訂正事項6は請求項3に係る訂正であり、訂正事項7は請求項4に係る訂正であり、訂正事項8ないし10は、請求項5に係る訂正であるところ、請求項1ないし5は、いずれも特許無効審判の請求がなされている請求項であるから、訂正事項1ないし10には、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第7項は適用されない。

(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、請求項1に「基板が載置されるステージ」とあるのを、「光配向用膜材付きの基板が載置されるステージ」(下線は被請求人が付したとおり。)と訂正して、ステージに載置される基板を、光配向用膜材付きの基板に限定するものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかであって、当該訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、及び、同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

イ また、ステージに載置される基板が光配向用膜材付きの基板であることは、本件特許明細書の段落【0002】に「光配向を行う場合、光配向膜用の膜(以下、膜材)に対して偏光光を照射することにより行われる。」、及び、段落【0009】に「図1は、本願発明の実施形態に係る光配向用偏光光照射装置の斜視概略図である。図1に示す偏光光照射装置は、膜材付き液晶基板のような基板Sをワークとして光配向処理する装置となっている。」(下線は、当審が付した。)と記載されるように、訂正事項1は、本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、請求項1に「ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させるものであり、」とあるのを、「ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、」(下線は被請求人が付したとおり。)に訂正して、ステージ移動機構が、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させる際に当該第一のステージが通過する領域、及び、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させる際に当該第二のステージが通過する領域を、「前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域」及び「前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域」とそれぞれ限定するものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかであって、当該訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、及び、同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

イ また、ステージ移動機構が、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させる際に当該第一のステージが「前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域」を通過する点、及び、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させる際に当該第二のステージが「前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域」及び「前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域」を通過する点は、本件特許明細書の段落【0041】に「偏光光が照射される一つの照射領域Rを二つのステージ21,22が交互に通過することで各ステージ21,22上の基板Sに対して偏光光が照射されるので、一方のステージ21,22上の基板Sへの偏光光の照射の最中に他方のステージ21,22において基板Sの回収動作と次の基板Sの搭載動作を行うことができる。」、及び、段落【0009】に「具体的には、図1の装置は、設定された照射領域Rに偏光光を照射する照射ユニット1と、基板Sが載置されるステージ21,22と、照射領域Rにステージ21,22を移動させることでステージ21,22上の液晶基板Sに偏光光が照射されるようにするステージ移動機構3とを備えている。」と記載されるとおり、訂正事項2は、本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3は、請求項1に「ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、」とあるのを、「ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、」(下線は被請求人が付したとおり。)に訂正して、第一ステージの移動と第二のステージの移動との関係について、第一のステージの復路移動に続くように、第二のステージの往路移動を行わせること及び第二のステージの復路移動に続くように、第一のステージの往路移動を行わせることを明らかにすることでそれぞれ限定するものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかであって、当該訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、及び、同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

イ また、ステージ移動機構が、「前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせる」点は、本件特許明細書の段落【0043】に、「但し、一方のステージ21,22が復路移動(前進到達位置から基板搭載回収位置に戻る移動)に続くようにして他のステージ21,22の往路移動(基板搭載位置から前進到達位置までの移動)を行うようにしても良く、この場合には、TL1+TL2+TL3≦TE1ということになる。このようにすると、さらにタクトタイムは短くできる。」と記載されるとおり、訂正事項3は、本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(4)訂正事項4について
ア 訂正事項4は、請求項1に「スペースが確保されていることを特徴とする」とあるのを、「スペースが確保されており、前記第一第二ステージの各々は、基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含むことを特徴とする」(下線は被請求人が付したとおり。)に訂正して、第一第二ステージを、基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含む第一第二ステージに限定するものであるから、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかであって、当該訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、及び、同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

イ また、第一第二ステージが、基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含むことは、本件特許明細書の段落【0050】に「また、一つの照射領域Rに対して二つのステージ21,22が交互に通過する必要があるが、照射ユニット1は上記のように二つである必要はなく、一つのみの照射ユニット1が一つの照射領域Rに偏光光を照射する構成でも良く、三つ以上の照射ユニット1が一つの照射領域Rに偏光光を照射する構成でも良い。尚、本願発明において、『ステージ』の用語は通常より広く解釈される必要がある。即ち、真空吸着のような吸着孔を有する複数のピンの上に基板Sを載置してこれら複数のピン上に基板を吸着し、複数のピンを一体に移動させることで基板Sが照射領域を通過するようにする場合がある。」と記載されるように、訂正事項4は、本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(5)訂正事項5について
ア 訂正事項5は、請求項2に、「設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており、」との記載を付加するとともに、「ものであることを特徴とする請求項1記載の光配光用偏光光照射装置。」であったものを「ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。」に訂正(以下「訂正事項5前半」という。)し、さらに、「前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に偏光光を照射する」であったものを「前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に対し、偏光子からの偏光光を直接照射して、往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにする」に訂正(以下、「訂正事項5後半」という。)するものである。

イ 訂正事項5前半は、請求項1を引用する記載であった請求項2を、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし独立形式請求項へ改めるための訂正、及び、「光配光用偏光光照射装置」であったものを「光配向用偏光光照射装置」と訂正する誤記の訂正であるから、それぞれ、特許法第134条の2第1項ただし書第4号及び特許法第134条の2第1項ただし書第2号に適合する。

ウ また、訂正事項5前半が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかであるから、当該訂正事項5前半は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

エ 次に、訂正事項5後半は、照射ユニットが、第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に偏光光を照射するに際して、偏光子からの偏光光を直接照射して、往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにすると訂正して、偏光光の照射を直接照射と限定し、かつ、偏光光の照射を往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにすると限定するものであるから、訂正事項5後半が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかであって、当該訂正事項5後半は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、及び、同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

オ そして、訂正事項5後半の「偏光子からの偏光光を直接照射して、往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるように」は、本件特許明細書の段落【0045】に「尚、上記実施形態では、各ステージ21,22は、各前進到達位置に達する際と各前進位置から基板搭載回収位置まで戻る際に偏光光が照射され、両方の露光量が積算露光量となる。」、及び、段落【0013】に「ランプハウス13は、光照射口を有しており、偏光素子14は、光源11と光照射口との間の位置に配置されている。」と記載されていること、及び、後記した、本件特許の図1及び2の記載に照らして、訂正事項5後半が、本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。


(6)訂正事項6について
ア 訂正事項6は、請求項3に、「設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、」「光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、」「を備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、」「ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、」との記載を付加するとともに、「ことを特徴とする請求項1又は2記載の光配向用偏光光照射装置。」であったものを「ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。」に訂正(以下、「訂正事項6前半」という。)し、さらに、「前記第一第二の各ステージには、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きにする基板アライナーが設けられている」であったものを、「アライメントマークを有し、」「前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、」「前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ」、「第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている」に訂正(以下、「訂正事項6後半」という。)するものである。

イ 訂正事項6前半は、請求項1を引用する記載であった請求項3を、請求項間の引用関係を解消し請求項1を引用しないものとし独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に適合する。

ウ また、訂正事項6前半が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかであるから、当該訂正事項6前半は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

エ 次に、訂正事項6後半は、「前記第一第二の各ステージには、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きにする基板アライナーが設けられている」を「前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、」と訂正した上で、「アライメントマークを有し、」「前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、」、「第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている」とそれぞれ限定するものであるから、訂正事項6後半は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかであって、当該訂正事項6後半は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、及び、同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

オ そして、訂正事項6後半の、「アライメントマークを有し、」「前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、」「前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ」は、本件特許明細書の段落【0028】ないし【0031】に、「可動ベース20Bは、固定ベース20A上においてXYθの方向に移動可能に設けられている。即ち、固定ベース20A上にはXYθ移動機構62が設けられており、XYθ移動機構62は可動ベース20BをXYθ方向に移動させて可動ベース20Bの位置や姿勢を微調節するものとなっている。尚、この際のXY方向とは水平な面内の直交方向であり、例えばX方向が長さ方向(移動方向)、Y方向が幅方向とされる。θは、XY方向に対して垂直な軸の回りの円周方向であり、この例では鉛直な軸の回りの円周方向である。・・・一方、ステージ21,22に載置される基板Sには、アライメントマークS1が施されている。基板アライナー6は、アライメントマークS1を撮像するアライメントセンサ61と、上記XYθ移動機構62と、アライメントセンサ61からの出力に従ってXYθ移動機構62を制御するアライメント用制御部63とから主に構成されている。・・・アライメント用制御部63は、各アライメントセンサ61からの出力データ(イメージデータ)を処理し、XYθ移動機構62を制御してアライメントを行う。具体的には、2個のアライメントセンサ61が検出したそれぞれのアライメントマークS1の位置情報と、あらかじめアライメント用制御部63に入力されている2個のアライメントマークS1の距離情報とに基づき、アライメント用制御部63は、アライメントセンサ61が撮像するアライメントマークS1の重心が基準位置に位置するようステージ22のXYθ方向の移動距離のデータを演算し、XYθ移動機構62を制御して可動ベース20BをXYθ方向に移動させる。これにより、アライメントが完了したことになる。」と記載され、「第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている」(下線は、当審が付した。)点は、本件特許明細書の段落【0025】及び【0026】に、「このような実施形態の装置において、各基板搭載回収位置は、各ステージ21,22の大きさ、照射領域Rの位置や大きさ等に応じて最適化されている。即ち、実施形態の装置では、第一の基板搭載回収位置に位置した第一のステージ21と照射領域Rの間のスペース(以下、第一のスペース)として、少なくとも第二のステージ22上の基板Sの長さ(ステージ21,22の移動方向の長さ)以上が確保されている。即ち、第一のスペースは、第二の前進到達位置に第二のステージ22’が到達した際にも第一のステージ21と干渉しないだけのスペースとなっている。好ましくは、第一のスペースの長さ(図2にL1で示す)は、第二のステージ22の長さ以上とされる。・・・また、第二の基板搭載回収位置に位置した第二のステージ22と照射領域Rの間のスペース(以下、第二のスペース)として、少なくとも第一のステージ21上の基板Sの長さ以上が確保されている。即ち、第二のスペースは、第一の前進到達位置に第一のステージ21’が到達した際にも第二のステージ22と干渉しないだけのスペースとなっている。好ましくは、第二のスペースの長さ(図2にL2で示す)は、第一のステージ21の長さ以上とされる。」、同段落【0032】に「基板Sは、幅方向がステージ移動機構3の幅方向に精度良く一致し、幅方向において所定位置に位置した状態で移動方向に直線移動して搬送されることになる。」、同段落【0036】に「所定のストロークとは、図6(2)に示すように、第一のステージ21が照射領域Rを通過して第一の前進到達位置に達するストロークである。第一の前進到達位置は、第一のステージ21の後端は照射領域Rの端に一致する位置か、それを少し越えた位置である。」及び同段落【0046】に、「また、実施形態の装置では、各ステージ21,22に搭載された基板Sのアライメントが行われた後、照射領域Rの通過動作が行われるので、照射される偏光光の偏光軸の向きが所望の向きに精度良く一致する。このため、光配向処理の品質がより高くなる。」(下線は、当審が付した。)と記載されていること、及び、後記した、本件特許の図6(2)及び(4)の記載に照らして、訂正事項6後半は、本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。


(7)訂正事項7について
ア 訂正事項7は、請求項4に、「設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、」「光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、」「を備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、」「ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており、」との記載を付加するとともに、「ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の光配光用偏光光照射装置。」であったものを「ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。」に訂正(以下、「訂正事項7前半」という。)し、さらに、「アライメントマークを有し、」「前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、」「前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ」との記載を付加(以下、「訂正事項7後半」という。)するものである。

イ 訂正事項7前半は、請求項1を引用する記載であった請求項4を、請求項間の引用関係を解消し請求項1を引用しないものとし独立形式請求項へ改めるための訂正、及び、「光配光用偏光光照射装置」であったものを「光配向用偏光光照射装置」と訂正する誤記の訂正であるから、それぞれ、特許法第134条の2第1項ただし書第4号及び特許法第134条の2第1項ただし書第2号に適合する。

ウ また、訂正事項7前半が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかであるから、当該訂正事項7前半は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

エ 次に、訂正事項7後半は、訂正事項6後半と同じ訂正であるから、上記「(6)」「オ」で検討したとおりであって、訂正事項7後半は、本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(8)訂正事項8について
ア 訂正事項8は、請求項5に、「設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、」「光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、」「を備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、」「ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている」との記載を付加するとともに、「請求項1乃至4いずれかに記載の光配向用偏光光照射装置を使用して基板に光配向用の偏光光を照射する光配向用偏光光照射方法であって、」であったものを「光配向用偏光光照射装置を使用して基板に光配向用の偏光光を照射する光配向用偏光光照射方法であって、」に訂正(以下、「訂正事項8前半」という。)し、さらに、「アライメントマークを有し、」「前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、」「前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ」との記載を付加(以下、「訂正事項8後半」という。)するものである。

イ 訂正事項8前半は、請求項1を引用する記載であった請求項5を、請求項間の引用関係を解消し請求項1を引用しないものとし独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に適合する。

ウ また、訂正事項8前半が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかであるから、当該訂正事項8前半は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

エ 次に、訂正事項8後半は、訂正事項6後半と同じ訂正であるから、上記「(6)」「オ」で検討したとおりであって、訂正事項8後半は、本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(9)訂正事項9について
ア 訂正事項9は、請求項5の「前記第一の基板搭載位置において前記第一のステージ上に基板を搭載する第一の基板搭載ステップと、前記第二の基板搭載位置において前記第二のステージ上に基板を搭載する第二の基板搭載ステップ」との記載を、「前記第一の基板搭載位置において前記第一のステージ上に基板を搭載し、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第一の基板搭載調整ステップと、前記第二の基板搭載位置において前記第二のステージ上に基板を搭載し、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第二の基板搭載調整ステップと、」に訂正するものである。

イ 訂正事項9は、「第一の基板搭載ステップ」及び「第二の基板搭載ステップ」に関して、「前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第一の基板搭載調整ステップ」及び「前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第二の基板搭載調整ステップ」と限定するものであるから、訂正事項9が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかであって、当該訂正事項9は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、及び、同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ そして、訂正事項9の「前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第一の基板搭載調整ステップ」及び「前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第二の基板搭載調整ステップ」は、訂正事項6後半と同じ訂正であるから、上記「(6)」「オ」で検討したとおりであって、本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(10)訂正事項10について
ア 訂正事項10は、請求項5の「基板が搭載された前記第一のステージを前記第一の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記一方の側に設定された第一の基板回収位置まで前記第一のステージを戻す第一の移動ステップと、基板が搭載された前記第二のステージを前記第二の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記他方の側に設定された第二の基板回収位置まで前記第二のステージを戻す第二の移動ステップと、」との記載を、「基板が搭載された前記第一のステージを、前記第二の基板回収位置への前記第二のステージの復路移動に続くように前記第一の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記一方の側に設定された第一の基板回収位置まで前記第一のステージを戻す第一の移動ステップと、基板が搭載された前記第二のステージを、前記第一の基板回収位置への前記第一のステージの復路移動に続くように前記第二の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記他方の側に設定された第二の基板回収位置まで前記第二のステージを戻す第二の移動ステップと、」(下線は被請求人が付したとおり。)に訂正するものである。

イ 訂正事項10は、「第一の基板搭載ステップ」において「第一の基板搭載位置から移動させ」る点及び「第二の基板搭載ステップ」において「第二の基板搭載位置から移動させ」る点に関して、「前記第二の基板回収位置への前記第二のステージの復路移動に続くように」及び「前記第一の基板回収位置への前記第一のステージの復路移動に続くように」と限定するものであるから、訂正事項10が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかであって、当該訂正事項10は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、及び、同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。

ウ 次に、訂正事項10は、訂正事項3と同じ訂正であるから、上記「(3)」「イ」で検討したとおりであって、訂正事項10は、本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

(11)訂正事項11について
ア 訂正事項11は、上記訂正事項1から10に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため願書に添付した明細書の段落【0006】に、上記第3,1(11)に挙げた事項である、請求項1ないし5に記載の事項を付加し、上記訂正事項1から訂正事項10で追加された構成を特定し、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、当該訂正事項11は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に適合する。

イ 上記訂正事項11は、訂正事項1ないし10に基づいて訂正するものであって、上記(1)ないし(10)で検討したとおり、訂正事項1ないし10が、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び同条第6項に適合するものであるから、訂正事項9も同条項の規定に適合する

3 請求項ごと又は一群の請求項ごとによる訂正について
上記訂正事項1?10は、特許法第134条の2第2項及び同条第3項に適合する

4 本件訂正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、特許法第134条の2第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

よって、本件訂正請求による訂正を認め、以下では、訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明(以下それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明5」という)について、請求人の主張する無効理由及び当審で通知した無効理由について検討する。

第4 本件訂正発明1ないし5
本件訂正発明1ないし5は、本件訂正請求によって訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており、
前記第一第二ステージの各々は、基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含むことを特徴と光配向用偏光光照射装置。
【請求項2】
設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており、
前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に対し、偏光子からの偏光光を直接照射して、往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにすることを特徴とする光配向用偏光光照射装置。
【請求項3】
設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、
前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されていることを特徴とする光配向用偏光光照射装置。
【請求項4】
設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、
前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており、
前記ステージ移動機構は、前記第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており、このガイド部材は、前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用された、
ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。
【請求項5】
設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、
前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている光配向用偏光光照射装置を使用して基板に光配向用の偏光光を照射する光配向用偏光光照射方法であって、
前記第一の基板搭載位置において前記第一のステージ上に基板を搭載し、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第一の基板搭載調整ステップと、
前記第二の基板搭載位置において前記第二のステージ上に基板を搭載し、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第二の基板搭載調整ステップと、
基板が搭載された前記第一のステージを、前記第二の基板回収位置への前記第二のステージの復路移動に続くように前記第一の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記一方の側に設定された第一の基板回収位置まで前記第一のステージを戻す第一の移動ステップと、
基板が搭載された前記第二のステージを、前記第一の基板回収位置への前記第一のステージの復路移動に続くように前記第二の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記他方の側に設定された第二の基板回収位置まで前記第二のステージを戻す第二の移動ステップと、
第一の基板回収位置において前記第一のステージから基板を回収する第一の基板回収ステップと、
第二の基板回収位置において前記第二のステージから基板を回収する第二の基板回収ステップとを有しており、
第一の基板回収ステップ及び第一の基板搭載ステップが行われる時間帯は、第二の移動ステップが行われる時間帯と全部又は一部が重なっており、
第二の基板回収ステップ及び第二の基板搭載ステップが行われる時間帯は、第一の移動ステップが行われる時間帯と全部又は一部が重なっていることを特徴とする光配向用偏光光照射方法。」

第5 請求人が主張する無効理由及び当審で通知した無効理由の概要
1 請求人が主張する無効理由の概要
ここで、上記「第3 本件訂正請求について」で述べたとおり、本件訂正請求が認められたことから、無効審判請求の対象となる現在の発明は本件訂正請求で訂正された本件訂正発明1ないし本件訂正発明5であるが、無効審判請求時(平成27年2月2日の時点)において無効審判の対象とした発明は、特許権の設定登録がなされた平成25年8月23日の時点における請求項1ないし請求項5に係る発明(特許公報に掲載された請求項1ないし5」に係る発明)であり、ここでは、この請求項1ないし請求項5に係る発明を、それぞれ、「当初発明1」ないし「当初発明5」として概要を示す。
(なお、この点に関して、下記の「2 無効理由通知1で通知した無効理由の概要」及び「3 無効理由通知2で通知した無効理由の概要」においても、それぞれで、対象とする発明に対する呼称「第1回訂正発明1」ないし「第1回訂正発明5」、「第2回訂正発明1」ないし「第2回訂正発明5」、または、「第3回訂正発明1」ないし「第3回訂正発明5」を付ける。)
請求人は、「特許第5344105号の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」を請求の趣旨として、以下の証拠方法を提示して無効理由を主張している。

(1)証拠方法
請求人は、審判請求書に添付して以下の甲第1号証ないし甲第5号証を提示している。
甲第1号証 特開2009-265290号公報
甲第2号証 特開2009-295950号公報
甲第3号証 特開2010-72615号公報
甲第4号証 特開2010-54849号公報
甲第5号証 特許第5105567号公報
また、請求人は弁駁書1に添付して以下の参考資料を提出している。
参考資料1 特開2008-164729号公報
参考資料2 特開2011-164639号公報
参考資料3 特開2007-114647号公報
参考資料4 特開2010-134483号公報

(2)請求人が主張する無効理由の概要
当初発明1ないし5に係る各特許発明は、下記のとおり、甲号各証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
[当初発明1]
甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証に記載された公知事項を適用することで当業者が容易に想到することができたものである。
甲第1号証又は甲第5号証に記載された発明に、甲第2?4号証に記載された周知事項を適用することで当業者が容易に想到できたものである。
[当初発明2]
甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証に記載された公知事項を適用することで当業者が容易に想到することができたものである。
[当初発明3]
甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証及び甲第5号証に記載された公知事項を適用することで当業者が容易に想到することができたものである。
甲第5号証に記載された発明に、甲第2?4号証に記載された周知事項を適用することで当業者が容易に想到できたものである。
[当初発明4]
甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証に記載された公知事項を適用することで当業者が容易に想到することができたものである。
甲第5号証に記載された発明に、甲第2?4号証に記載された周知事項を適用することで当業者が容易に想到することができたものである。
[当初発明5]
甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証に記載された公知事項を適用することで当業者が容易に想到することができたものである。
甲第1号証又は甲第5号証に記載された発明に、甲第2?4号証に記載された周知事項を適用することで当業者が容易に想到できたものである。

2 無効理由通知1で通知した無効理由の概要
(1)刊行物
ア 参考資料3及び参考資料3発明
弁駁書1に添付して参考資料3として提出され、本件特許に係る出願の出願前に頒布された特開2007-114647号公報を以下、「参考資料3」とし、当該参考資料3に記載された発明を以下、「参考資料3発明」とする(後記第6、1(1)及び(2)参照。)。

イ 甲第2号証及び甲2発明
審判請求書に添付して甲第2号証として提出され、本件特許に係る出願の出願前に頒布された特開2009-295950号公報を以下、「甲第2号証」とし、当該甲第2号証に記載された発明を以下、「甲2発明」とする(後記第6、1(3)及び(4)参照。)。

ウ 甲第5号証及び甲5発明
審判請求書に添付して甲第5号証として提出され、本件特許に係る出願の出願前に頒布された特許第5105567号公報を以下、「甲第5号証」とし、当該甲第5号証に記載された発明を以下、「甲5発明」とする(後記第6、1(5)及び(6)参照。)。

(2)第1回訂正発明1?5について
ア 第1回訂正発明1について
第1回訂正発明1は、参考資料3発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

イ 第1回訂正発明2について
第1回訂正発明2は、参考資料3発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

ウ 第1回訂正発明3について
第1回訂正発明3は、参考資料3発明、甲2発明、甲第5号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

エ 第1回訂正発明4について
第1回訂正発明4は、参考資料3発明、甲2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

オ 第1回訂正発明5について
第1回訂正発明5は、参考資料3発明、甲2発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおり、第1回訂正発明1?5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

3 無効理由通知2で通知した無効理由の概要
(1)刊行物
ア 参考資料3及び参考資料3発明
上記2(1)アに同じく、後記第6、1(1)及び(2)参照。

イ 甲第2号証及び甲2発明
上記2(1)イに同じく、後記第6、1(3)及び(4)参照。

ウ 甲第5号証及び甲5発明
上記2(1)ウに同じく、後記第6、1(5)及び(6)参照。

(2)第2回訂正発明1?5について
ア 第2回訂正発明1について
第2回訂正発明1は、参考資料3発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

イ 第2回訂正発明2について
第2回訂正発明2は、参考資料3発明、甲2発明及び甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

ウ 第2回訂正発明3について
第2回訂正発明3は、参考資料3発明、甲2発明及び甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

エ 第2回訂正発明4について
第2回訂正発明4は、参考資料3発明、甲2発明、甲5発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

オ 第2回訂正発明5について
第2回訂正発明5は、第2回訂正発明1?4に記載の光配向用偏光光照射装置を使用した光配向用偏光光照射方法の発明であって、装置の具体的な駆動ステップを規定したものであるが、上記アないしエでの検討と同様に、基板の搭載及び調整に関するステップについては、参考資料3発明に甲5発明を適用することで、また、各ステージを移動、基板を回収させるステップについては、参考資料3発明に甲2発明を適用することでそれぞれ当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、第2回訂正発明5は、参考資料3発明、甲2発明、甲5発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおり、第2回訂正発明1?5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

第6 当審の判断
上記「第5 請求人が主張する無効理由及び当審で通知した無効理由の概要」に示した無効理由は、当該無効理由が主張又は通知された時点で、それぞれの時点での請求項に係る発明(すなわち、それぞれにおいて、当初発明1ないし5、前回訂正発明1ないし5)に対する無効理由であったが、上記「第3 本件訂正請求についての当審の判断」で述べたとおり、本件訂正請求が認められるものであるから、この後は、本件訂正請求により訂正された本件訂正発明1ないし5について、それぞれの無効理由を判断する。
なお、事案に鑑みて、無効理由通知2で通知した無効理由から判断する。

1 刊行物の記載事項及び各刊行物に記載の発明について
(1)参考資料3には、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶素子の配向膜や視野角補償フィルムの配向層などの配向膜の光配向を行なう偏光光照射装置に関する。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に本発明の第1の実施例の偏光光照射装置の構成を示す。
光照射部20A,20Bには、線状の光源である、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の棒状のランプ21と、ランプ21からの光を反射する断面が楕円形の樋状集光鏡22が内蔵されている。
光照射部20A,20Bは、ランプ21の長手方向が、ワーク50上に形成された光配向膜51の幅方向(搬送方向に対して直交方向)になるように配置されている。
棒状ランプ21は、その長手方向が樋状集光鏡22の長手方向と一致するように、また、断面のほぼ中心部が楕円形の樋状集光鏡22の第1焦点位置に一致するように配置され、ワーク50上に形成された光配向膜51は、樋状集光鏡22の第2焦点位置に配置されている。
ワーク50は例えば長尺の連続ワークであり、不図示の送り出しローラにロール状に巻かれており、送り出しローラから引き出されて搬送され、光照射部20A,20Bの下を通って不図示の巻き取りローラに巻き取られる。
光照射部20A,20Bの光出射側には、図13に示したワイヤーグリッド偏光素子ユニット10,10’が設けられている。前述したように、ワイヤーグリッド偏光素子ユニット10,10’には、偏光素子1の配列方向端部(境界部分)には、遮光板3が設けられている。
【0014】
なお、以下では、線状の光源として棒状ランプを例にして説明するが、近年は、紫外光を放射するLEDやLDも実用化されており、このようなLEDまたはLDを直線状に並べて配置し線状光源としても良い。なおその場合は、LEDまたはLDを並べる方向がランプの長手方向に相当する。
また、現在光配向膜の材料としては、波長260nm±20nmの光で配向されるもの、280nm?330nmの光で配向されるもの、365nmの光で配向されるものなどが知られており、光源の種類は必要せされる波長に応じて適宜選択する。
【0015】
光照射部20A,20Bのランプ21の長手方向の両側には、ブロック23が取り付けられ、このブロック23を介して支柱24が取り付けられている。光配向膜51が形成されたワーク50は、上記2本の支柱の24間を搬送される。
このような偏光光を出射する光照射部20A,20Bを、複数、ワーク50の搬送方向に沿って多段に設ける。図1は光照射部20A,20Bを2段に並べた場合を示し、以下2段の場合を例にして説明するが、3段以上設けても良い。
ここで、各段に配置された各光照射部20A,20Bは、各段の光照射部20A,20Bの偏光素子1の間の境界部(遮光板3の設けられている部分)が、他の段の光照射部の偏光素子1の境界部と、光配向膜51の搬送方向に対して互い重ならないように、搬送方向に直交する方向に位置をずらして配置されている。
すなわち、図2に示すように、2段に設けた光照射部20Aと20Bのワイヤーグリッド偏光素子ユニット10,10’の遮光板3が、ワークの搬送方向に対して重ならないように(一直線状に並ばないように)ずらして配置される。光照射部を3段以上設ける場合も同様に、遮光板3が、ワークの搬送方向に対して重ならないように(一直線状に並ばないように)ずらして配置される。
なお、図1では光照射部20A,20Bにそれぞれ5枚と6枚のワイヤーグリッド偏光素子を設けた場合を示しているが、図2では8枚のワイヤーグリッド偏光素子からなるワイヤーグリッド偏光素子ユニットを用いた場合を示している。
【0016】
次に図1に示した装置の動作について説明する。
ワーク50が搬送されると、光配向膜51は、まず、光照射部20Bからの偏光光が照射され、次に光照射部20Aからの偏光光が照射される。
光照射部20Bの偏光素子ユニット10’に並べられた複数のワイヤーグリッド偏光子1の境界には、遮光板3が設けられており、したがって、遮光板3の直下を搬送される光配向膜51の部分には、図2の(a)に示すように照度の低い偏光光が照射される。
光照射部20Aの偏光素子ユニット10に並べられた複数のワイヤーグリッド偏光子1の境界にも、遮光板3が設けられており、したがって、遮光板3の直下を搬送される光配向膜51の部分には、図2(b)に示すように照度の低い偏光光が照射される。
しかし、偏光素子ユニット10’と10の遮光板3の位置が、ワークの搬送方向に対して重ならないように(一直線状に並ばないように)ずらして配置されているので、光照射部20Bによる偏光光照射において低い照度で照射された部分は、次の光照射部20Aによる偏光光照射において高い照度で照射され、また、光照射部20Aによる偏光光照射において低い照度で照射される部分は、先に光照射部20Bによる偏光光照射において高い照度で照射されている。
したがって、光照射部20Aと20Bの両方の下を通過して偏光光が照射された光配向膜51は、図2(c)に示すように両者の照度分布が積算され、結果として均一なエネルギー分布で偏光光が照射されることになる。このことにより、光配向膜51において、照射される偏光光のエネルギーが不足する部分が生じるのを防ぐことができる。
【0017】
ワーク50は、ロールに巻かれた長尺帯状のワークであってもよいし、また、光配向膜51が形成された例えば液晶パネルの大きさに整形された矩形状のワークであってもよい。
ワーク50が矩形状の場合、ワーク50は図示しないワークステージ上に載置され、光照射部20A、20Bから偏光光を照射しながらワークステージを直線移動させて、光配向膜の光配向処理をする。
なお、ワーク50の光配向膜51に偏光光を照射し、光配向処理を行なう際、偏光光を照射しながらワーク50を連続的に移動させてもよいし、ワークを間歇的に移動させながら偏光光を照射してもよい。
ワーク50を間歇的に移動させる場合には、例えば、ワーク50を一定量移動させた後、ワーク50を停止させて偏光光を照射し、ついで偏光光の照射を停止してワークを一定量移動させた後、ワークを停止させて偏光光を照射する動作を繰り返す。
また、一方向だけでなくワーク50を往復移動させて、例えば光照射部20B→20A→20A→20Bのように偏光光を照射するようにしても良い。
さらに、ワークステージを移動させる代わりに、ワーク50上で光照射部20A,20Bを移動させてワーク50の光配向処理を行ってもよい。」

(2)参考資料3に記載の発明
ア 上記(1)イによれば、「偏光光を出射する光照射部20A,20B」(段落【0015】)は、「ワーク50の光配向膜51に偏光光を照射」(段落【0017】)するものであるから、設定された照射領域へ偏光光を出射する構成を有することは、明らかである。
上記(1)イの、「ワーク50が矩形状の場合、ワーク50は図示しないワークステージ上に載置され、光照射部20A、20Bから偏光光を照射しながらワークステージを直線移動させて、光配向膜の光配向処理をする」(段落【0017】)との記載から、ワークが矩形状の場合、ワークが載置されるワークステージを直線移動させるステージ移動機構を備えることは、明らかである。
また、上記(1)アによれば、参考資料3には、「液晶素子の配向膜」「の光配向を行なう偏光光照射装置」の発明が記載されているから、液晶素子の製造に関する光照射装置の発明が記載されているといえる。

イ また、上記(1)イによれば、「光照射部20A,20B」は、「線状の光源であ」って、「光照射部20A,20Bは、ランプ21の長手方向が、ワーク50上に形成された光配向膜51の幅方向(搬送方向に対して直交方向)になるように配置され」(段落【0013】)、「ワーク50は」、「光配向膜51が形成された例えば液晶パネルの大きさに整形された矩形状のワークであってもよ」く、「ワーク50が矩形状の場合、ワーク50は図示しないワークステージ上に載置され、光照射部20A、20Bから偏光光を照射しながらワークステージを直線移動させて、光配向膜の光配向処理をする」ものであって、「ワーク50を往復移動させて、例えば光照射部20B→20A→20A→20Bのように偏光光を照射する」(段落【0017】)動作によりスキャン照射するものであるから、参考資料3には、液晶素子の製造に関するスキャン照射する偏光光照射装置の発明が記載されているといえる。

ウ そうすると、上記(1)の参考資料3の記載事項から、参考資料3には、以下の発明(以下、「参考資料3発明」という。)が記載されていると認められる。
「設定された照射領域へ偏光光を出射する光照射部20A,20Bが配置され、
光配向膜51が形成された矩形状のワーク50がワークステージ上に載置され、
前記ワークステージを直線移動させるステージ移動機構、を備え、
前記光照射部20A、20Bから偏光光を照射しながら前記ワークステージを直線移動させて、前記光照射部20Aと20Bの両方の下を通過させ、前記光配向膜51の光配向処理をするものであって、
前記ワーク50を往復移動させて、光照射部20B→20A→20A→20Bのように偏光光を照射するようにした、
前記光配向膜51の光配向を行なう、液晶素子の製造に関するスキャン照射する偏光光照射装置。」

(3)甲第2号証には、以下の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は、スキャン露光装置およびスキャン露光方法に関し、より詳細には、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の大型のフラットパネルディスプレイの基板上にマスクのマスクパターンを露光転写するのに好適なスキャン露光装置およびスキャン露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の薄形テレビ等に用いられる液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の大型のフラットパネルディスプレイは、基板上にマスクのパターンを分割逐次露光方式で近接露光転写することで製造されている。この種の分割逐次露光方法としては、例えば、パネルと同寸のマスクを用い、該マスクをマスクステージで保持すると共に基板をワークステージで保持して両者を近接して対向配置する。そして、ワークステージをマスクに対してステップ移動させる毎にマスク側から基板にパターン露光用の光を照射して、複数のマスクパターンを基板上に露光転写する(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の露光装置では、露光位置に対して左右両側にチャックに対してガラス基板のロード/アンロードを行うロード/アンロード位置が配置され、一方のチャック上のガラス基板で露光が行われている間に、他方のガラス基板でロード/アンロードを行ってスループットを向上させることが提案されている。
【0003】
また、他の露光方法として、マスクを細分化して、これらマスクを保持する複数のマスク保持部を千鳥状に配置し、基板を一方向に移動させながら露光を行うスキャン露光方式が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この露光方式では、基板に形成されるパターンに、ある程度繰り返される部位があることを前提として、これをつなぎ合わせることで大きなパターンを形成できることを利用したものである。この場合、マスクは、パネルに合わせて大きくする必要がなく、比較的安価なマスクを用いることができる。
【特許文献1】特開2005-140935号公報
【特許文献2】特開2007-165821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の露光装置では、スループットの向上は図られているものの、パネルの大型化に伴ってマスクが大型化し、製造コストが嵩むという問題がある。
【0005】
また、特許文献2に記載の露光装置は、全露光領域を隙間なくカバーできるように、基板の搬送方向と直交する方向に沿って千鳥状にマスク保持部、および照射部を配置しなければならず、従って多数のマスク保持部、および照射部が必要となる。近年のフラットパネルディスプレイの大型化に伴い、全露光領域を隙間なくカバーするためのマスク保持部、および照射部の数量はますます多くなり、露光装置の製造コスト上昇の一因となっていた。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、マスク保持部、および照射部の数量を削減してコストダウンを図ることができるとともに、スループットを向上することができるスキャン露光装置およびスキャン露光方法を提供することにある。」

イ 「【0008】
本発明のスキャン露光装置及びスキャン露光方法によれば、基板を露光領域に対して往復して搬送することで、必要となるマスク保持部および照射部の数量を削減することができ、スキャン露光装置の製造コストを大幅に低減することができる。また、2つの基板交換領域を2つの基板保持領域の露光領域と反対側にそれぞれ設けて、基板の露光動作と、基板の搬出・搬入動作とを行うタイミングを少なくともオーバーラップするようにしたので、スループットを向上することができる。
また、本発明のスキャン露光方法によれば、第1の転写パターン形成後に第2の転写パターンを形成する前の移動工程において、所定の方向と反対方向(即ち、露光時の搬送方向と反対方向)への搬送と、直交方向への移動は同時に行なわれるので、スループットを向上することができる。」

ウ 「【0011】
図2及び図3に示すように、露光機本体2は、基板Wを浮上させて支持すると共に、所定の方向であるX方向および該所定の方向と直交する方向であるY方向に搬送する基板搬送機構14と、Y方向に沿って並んでそれぞれ配置され、複数のマスクMをそれぞれ保持する複数(図1に示す実施形態において6個)のマスク保持部11と、マスク保持部11をそれぞれ駆動する複数のマスク駆動部12と、複数のマスク保持部11の上部にそれぞれ配置されて露光用光を照射する複数の照射部13と、を主に備える。
【0012】
基板搬送機構14は、浮上ユニット15a,15bと、基板WのY方向一側(図1において上辺)を保持してX方向に搬送可能、且つY方向に移動可能な第1及び第2の基板駆動ユニット16,17とを備える。浮上ユニット15a,15bは、複数のフレーム18,19上にそれぞれ設けられた複数の排気エアパッド20及び吸排気エアパッド21を備え、ポンプ(図示せず)やソレノイドバルブ(図示せず)を介して排気エアパッド20や吸排気エアパッド21からエアを排気或いは、吸排気する。これにより、基板Wは、浮上ユニット15a,15b上に空気流によって浮上した状態で保持され、基板Wを抵抗なく搬送可能とする。
【0013】
第1及び第2の基板駆動ユニット16,17は、図2に示すように、X方向搬送機構50,51と、これらX方向搬送機構50,51によってX方向に沿って往復搬送される移動基台52,53と、各移動基台52,53上に配設されるY方向搬送機構54,55と、これらY方向搬送機構54,55によってY方向に沿って往復搬送される吸着パッド56,57をそれぞれ備える。X方向搬送機構50,51は、移動基台52,53の裏面に設けられた図示しないリニアモータが、図示しないドライバによって、ガイドレール58に沿ってX方向に移動することで、移動基台52,53をX方向に沿って往復搬送する。また、Y方向搬送機構54,55は、吸着パッド56,57の裏面に設けられた図示しないリニアモータが、図示しないドライバによって、ガイドレール59,60に沿ってY方向に移動することで、吸着パッド56,57を移動基台52,53に対してY方向に沿って往復搬送する。なお、本実施形態では、ガイドレール58は、露光機本体2と、一対のプリアライメント台3,4の側方に亘ってX方向に延びるように形成されている。また、第1及び第2の基板駆動ユニット16,17は、後述の光学アライメントピンの代わりに、θ補正軸を具備しても良い。
【0014】
また、図3に示すように、第1の浮上ユニット15aが設けられる複数のフレーム18は、地面にレベルブロック22を介して設置されたメインベッド23上に他のレベルブロック24を介して配置されている。また、第2の浮上ユニット15bが設けられる他のフレーム19は、地面にレベルブロック25を介して設置されたサブベッド26a,26b上に他のレベルブロック27を介して配置されている。
従って、メインベッド23上には、後述する露光領域A、及び露光領域Aの上流側及び下流側にそれぞれ設けられる第1及び第2の基板保持領域B1,B2における基板Wを浮上搬送するための第1の浮上ユニット15aと、複数のマスク保持部11と、複数の照射部13と、が配置される。また、プリアライメント台3,4を構成する各サブベッド26a,26b上には、第1及び第2の基板保持領域B1,B2に対して露光領域Aと反対側にそれぞれ設けられる各第1及び第2の基板交換領域C1、C2における基板Wを浮上搬送するための各第2の浮上ユニット15bがそれぞれ配置される。
【0015】
マスク駆動部12は、フレーム(図示せず)に取り付けられ、マスク保持部11をX方向に沿って駆動するX方向駆動部31と、X方向駆動部31の先端に取り付けられ、マスク保持部11をY方向に沿って駆動するY方向駆動部32と、Y方向駆動部32の先端に取り付けられ、マスク保持部11をθ方向(X,Y方向からなる水平面の法線回り)に回転駆動するθ方向駆動部33と、θ方向駆動部33の先端に取り付けられ、マスク保持部11をZ方向(X,Y方向からなる水平面の鉛直方向)に駆動するZ方向駆動部34と、を有する。これにより、Z方向駆動部34の先端に取り付けられたマスク保持部11は、マスク駆動部12によってX,Y,Z,θ方向に駆動可能である。なお、X,Y,θ,Z方向駆動部31,32,33,34の配置の順序は、適宜変更可能である。
【0016】
また、図2に示すように、Y方向に沿って配置された複数のマスク保持部11には、各マスク保持部11のマスクMを同時に交換可能なマスクチェンジャ37が配設されている。マスクチェンジャ37により搬送される使用済み或いは未使用のマスクMは、マスクストッカ10との間でマスクローダー9により受け渡しが行われる。なお、マスクストッカ9とマスクチェンジャ37とで受け渡しが行われる間にマスクプリアライメント機構(図示せず)によってマスクMのプリアライメントが行われる。
【0017】
図3に示すように、各マスク保持部11の上部に配置される複数の照射部13は、YAGレーザーや、エキシマレーザーなどの光源41と、この光源41から照射された光を集光する凹面鏡42と、この凹面鏡42の焦点近傍に光路方向に移動可能な機構を有するオプチカルインテグレータ43と、光路の向きを変えるための平面ミラー45及び球面ミラー46と、この平面ミラー45とオプチカルインテグレータ43との間に配置されて照射光路を開閉制御する露光制御用シャッター44と、を備える。
【0018】
マスク保持部11に保持されるマスクMは、露光用光ELの照射によりマスクパターンを基板W上のフォトレジストに露光転写させるものであり、本実施形態のマスクMは、2種類のマスクパターン61、62を備える(図6参照)。2種類のマスクパターン61、62は、マスク駆動部12によってマスク保持部11を移動させることにより、いずれか一方のマスクパターン61、62が、照射部13からの露光用光ELの照射領域内に配置されることで切り替えられる。即ち、露光に際しては、2種類のマスクパターン61、62が切り替えられて、いずれか一方のマスクパターン61、62が有効となって基板Wに露光転写される。
【0019】
また、Y方向に並べて配置される複数のマスク保持部11では、後述する往路で使用される隣接するマスクパターン61の間隔Gが、復路で使用されるマスクパターン62のY方向の幅と、往復動作によって重ね合わせて露光される両側の幅とを考慮して設定されている。ただし、マスクパターン61の間隔Gやマスクパターン62のY方向の幅は、後述する基板WのY方向への移動量をできるだけ小さくするように設定されている。」

エ 「【0026】
次に、このように構成されたスキャン露光装置1の動作について、図5のフローチャート及び図6の動作説明図を用いて説明する。なお、図5のフローチャートにおいて、左のフローは、第1の基板交換領域C1から搬入・搬出される基板Wの一連の露光動作を示し、右のフローは、第2の基板交換領域C2から搬入・搬出される基板W´の一連の露光動作を示しており、二点鎖線で仕切られた左右の各工程は、同じ時間内で動作していることを示している。
【0027】
まず、第1の基板駆動ユニット16が第1の基板交換領域C1に移動した状態で(ステップS1a)、基板搬送ロボット5によって第1の基板交換領域C1に基板Wの搬入が行われる(ステップS2a)。そして、上述したように、搬入された基板Wのプリアライメントが行われた後(ステップS3a)、基板Wが第1の基板駆動ユニット16の吸着バッド56によって吸着・保持される(ステップS4a)。
【0028】
その後、第1の基板駆動ユニット16を駆動して、浮上ユニット15a,15bからの空気流によって浮上支持された状態で一定の速度でX方向に搬送され、基板Wは、図6(a)に示すように、第1の基板保持領域B1へ移動する(ステップS5a)。このとき、第2の基板駆動ユニット17は、第2の基板交換領域C2へ移動する(ステップS1b)。
【0029】
さらに、基板Wは、一定の速度でX方向に搬送され、マスクパターン61,62を形成した面を下にしてマスク保持部11に保持されるマスクMと近接対向する露光領域A内に進入する。ここで、2種類のマスクパターン61,62のうち、マスクパターン61が照射部13からの露光用光ELの照射領域内に配置されており、マスクパターン61が有効となっている。また、撮像手段35は、マスク保持部11に対して基板Wの搬送方向上流側である第1検知位置SP1に位置する。
【0030】
図6(b)に示すように、第1の基板駆動ユニット16によってX方向に搬送される基板Wが、第1検知位置SP1に達すると、撮像手段35が基板WとマスクMの相対位置を検知し、この位置データに基づいて制御部から出力される指令信号によってマスク駆動部12が作動してマスク保持部11を移動させることにより、基板Wへのマスクパターン61の露光転写に先立って、基板WとマスクMとの位置誤差が修正される。
【0031】
位置誤差が修正されて搬送される基板Wには、それぞれのマスクMを介して照射部13から露光用光ELが照射されてマスクパターン61が露光転写される。これにより、露光領域Aを通過して第2の基板保持領域B2に位置する基板Wには、Y方向に所定の間隔Gずつ離れた複数(図3に示す実施例では6本)の第1の転写パターン83が形成される(ステップS6a)。なお、隣接する第1の転写パターン83間の部分は未露光部である。
【0032】
次に、第1の転写パターン83形成後、露光領域Aを越えた基板Wを保持する第2の基板保持領域B2では、図6(c)に示すように、第1の基板駆動ユニット16のY方向搬送機構54によって、基板Wを保持する吸着パッド56をマスク保持部11に対してY方向に所定の距離Lだけ移動させる(ステップS7a)。具体的に、各マスクパターン61,62のY方向における中心位置が一致している本実施形態においては、所定の距離Lは、隣接するマスクMのマスクパターン61,62のY方向における中心間距離Dの略1/2である。
【0033】
また、同時に、図示しない駆動装置を作動させて、撮像手段35を第1検知位置SP1から第2検知位置SP2に移動させる。これにより、基板Wの往路搬送および復路搬送のいずれの搬送時にも、基板WがマスクMの下方に位置する前に、即ち、マスクパターンの露光転写に先立って、基板WとマスクMとの相対位置を検知して位置誤差を修正することができる。
【0034】
更に、マスクパターン62が照射部13からの露光用光の照射領域内に位置するように、マスク駆動部12によってマスク保持部11を移動させ、有効なマスクパターンをマスクパターン61からマスクパターン62に切り替える。
【0035】
そして、第1の基板駆動ユニット16は、X方向搬送機構50は基板Wの搬送方向をX方向と逆方向に切り替えて、第2の基板保持領域B2に保持されていた基板Wを、X方向と逆方向に搬送する。そして、基板Wが第2検知位置SP2に達すると、撮像手段35が基板WとマスクMの相対位置を検知し、マスク駆動部12がマスク保持部11を移動させて基板WとマスクMとの位置誤差を修正する。そして、照射部13からの露光用光ELを、それぞれのマスクMを介して照射して、第1の転写パターン83間の未露光部にマスクパターン62を露光転写して第2の転写パターン84を形成する(ステップS8a)。このとき、第2の転写パターン84の幅は、未露光部の幅より僅かに大きいので、第1の転写パターン83と第2の転写パターン84には、重ね合わせ部が形成されて、基板Wの全面にマスクパターン61,62が露光転写される。
【0036】
この一連のステップS6a?S8aの露光動作中に、第2の基板交換領域C2では、基板W´の搬入(ステップS2b)、基板W´のプリアライメント(ステップS3b)、第2の基板駆動ユニット17の吸着バッド57による吸着・保持が行われる(ステップS4b)。
【0037】
そして、図6(e)に示すように、第1の基板駆動ユニット16によって保持された露光済みの基板Wが、第1の基板保持領域B1から第1の基板交換領域C1へ移動する(ステップS1a)際に、同時に、第2の基板駆動ユニット17によって保持された未露光の基板W´が第2の基板保持領域B2へ露光動作時の速度より速い速度で移動される(ステップS5b)。同時に、マスクパターン61が照射部13からの露光用光の照射領域内に位置するように、マスク駆動部12によってマスク保持部11を移動させ、有効なマスクパターンをマスクパターン62からマスクパターン61に切り替える。
【0038】
なお、第1の交換領域C1から搬入・搬出される基板Wが、第1の転写パターン83を露光後に第2の転写パターン84を露光する一方、第2の交換領域C2から搬入・搬出される基板W´が、第2の転写パターン84を露光した後に第1の転写パターン83を露光する場合には、上記マスクパターンの切換え動作を行う必要がない。
【0039】
そして、第1の基板交換領域C1では、露光済み基板Wの搬出と、未露光基板Wの搬入(ステップS2a)、未露光基板Wのプリアライメント(ステップS3a)、未露光基板Wの吸着保持が行われる。一方、この間に、第2の駆動ユニット51によって保持された基板W´も上述した同様の露光動作によって、往路によるスキャン露光(ステップS6b)によって第1の転写パターン83が露光され、次に、第1の基板保持領域B1に保持された基板W´に対してY方向への基板Wの移動(ステップS7b)を行い、復路によるスキャン露光(ステップS8b)によって第2の転写パターン84が露光される。その後、上記と同様の動作が繰り返される。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のスキャン露光装置1は、基板搬送機構14の第1及び第2の基板駆動ユニット16,17は、複数のマスクMと基板WとがY方向に所定の距離L、即ち、隣接するマスクMのマスクパターン61,62のY方向における中心間距離Dの略1/2だけ移動するように構成されている。そして、基板Wの往路搬送時に、所定の間隔Gずつ離れた第1の転写パターン83を露光させ、基板搬送機構14により基板Wを所定の間隔Lだけ移動させた後、基板Wを復路搬送して、往路搬送時に露光した第1の転写パターン83間に形成された未露光部に第2の転写パターン84を隙間なく露光させることができる。
【0041】
これにより、必要となるマスク保持部11および照射部13の数量が削減され、スキャン露光装置1の製造費用が大幅に低減する。また、スキャン露光装置1に対する基板Wの搬入、搬出を、1台の搬送装置で行うことができ、搬送装置の設置費用を削減すると共に、設置スペースの省スペース化が可能となる。
【0042】
また、スキャン露光装置1は、露光領域Aと、第1及び第2の基板保持領域B1,B2と、第1及び第2の基板交換領域C1、C2と、を設けて、基板搬送機構14は、露光領域A、第1及び第2の基板保持領域B1,B2、及び第1の基板交換領域C1間で基板WをX方向に沿って往復移動可能な第1の基板駆動ユニット16と、露光領域A、第1及び第2の基板保持領域B1,B2、及び第2の基板交換領域C2間で基板WをX方向に沿って往復移動可能な第2の基板駆動ユニット17と、を備えるようにしている。これにより、基板Wの露光動作、すなわち、第1の転写パターン83の形成工程、Y方向への基板Wの移動工程、及び第2の転写パターン84の形成工程と、基板Wの搬出工程及び搬入工程とを行うタイミングを少なくともオーバーラップさせて行うことができ、スループットを向上することができる。
【0043】
また、第1及び第2の基板交換領域B1,B2では、基板のプリアライメントが行われるので、第1の転写パターン83の形成工程、Y方向への基板Wの移動工程、及び第2の転写パターン84の形成工程と、搬出工程、搬入工程、及びプリアライメント工程とを行うタイミングを略一致して行なうことができ、スループットをさらに向上することができる。」

オ 「【0074】
さらに、本実施形態においては、基板搬送機構14は、浮上ユニット15a,15bと第1及び第2基板駆動ユニット16,17によって基板Wを浮上して保持しながら搬送する場合について述べたが、これに限らず、基板Wを上面に載置しながら保持及び搬送するものであってもよい。」

カ 図2、3、5及び6は、次のものである。


(4)甲第2号証に記載の発明
ア 上記(3)オによれば、甲第2号証に、「基板搬送機構14は、浮上ユニット15a,15bと第1及び第2基板駆動ユニット16,17によって基板Wを浮上して保持しながら搬送する場合について述べたが、これに限らず、基板Wを上面に載置しながら保持及び搬送するものであってもよい。」(段落【0074】)と記載されているから、当該「基板搬送機構14」は、「基板Wを上面に載置しながら保持及び搬送する」構成において、「基板Wを上面に載置」する部材、及び、同部材を移動する機構を備えることは明らかである。
したがって、甲第2号証における「第1基板駆動ユニット16」は、基板Wを上面に載置する第1の部材、及び、前記第1の部材を移動する第1の機構からなるものということができ、同様に、「第2基板駆動ユニット17」は、基板W´を上面に載置する第2の部材、及び、前記第2の部材を移動する第2の機構からなるものということができる。
また、上記(3)アによれば、甲第2号証には、「液晶ディスプレイ」「の基板上にマスクのマスクパターンを露光転写する」「スキャン露光装置に関する」(段落【0001】)ものであって、「パターン露光用の光を照射」(段落【0002】)する発明が記載されているから、液晶装置の製造に関して光を照射する装置であるスキャン露光装置の発明が記載されているといえる。

イ そうすると、上記(3)の甲第2号証の記載事項から、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「基板W,W´を、所定の方向であるX方向および該所定の方向と直交する方向であるY方向に搬送する基板搬送機構14と、Y方向に沿って並んでそれぞれ配置され、複数のマスクMをそれぞれ保持する複数のマスク保持部11と、マスク保持部11をそれぞれ駆動する複数のマスク駆動部12と、複数のマスク保持部11の上部にそれぞれ配置されて露光用光を照射する複数の照射部13と、を備え、
前記基板搬送機構14は、基板W,W´をそれぞれ上面に載置する第1、2の部材、及び、前記第1、2の部材をそれぞれ移動する第1、2の機構を備え、
前記基板Wが、第1の基板交換領域C1に搬入され、搬入された前記基板Wのプリアライメントが行われた後、前記第1の部材によって保持され、
前記基板Wを上面に載置した前記第1の部材を第1の機構によって、前記基板Wを一定の速度でX方向に搬送させて、第1の基板保持領域B1へ移動し、また、前記基板Wは、一定の速度でX方向に搬送されて、露光領域A内に進入し、それぞれのマスクMを介して照射部13から露光用光ELが照射されてマスクパターン61が露光転写され、露光領域Aを通過して第2の基板保持領域B2に位置する基板Wには、第1の転写パターン83が形成され、
前記第1の転写パターン83形成後、基板Wを上面に載置した前記第1の部材を、第1の機構によって、基板WをY方向に所定の距離Lだけ移動させ、第1の機構の、基板Wの搬送方向をX方向と逆方向に切り替えて、第2の基板保持領域B2に保持されていた基板Wを、X方向と逆方向に搬送し、
前記照射部13からの露光用光ELを、それぞれのマスクMを介して照射して、未露光部にマスクパターン62を露光転写して第2の転写パターン84を形成し、この一連の露光動作中に、第2の基板交換領域C2では、基板W´の搬入、基板W´のプリアライメント、基板W´の第2の部材による保持が行われ、
前記第1の部材によって保持された露光済みの基板Wが、第1の基板保持領域B1から第1の基板交換領域C1へ移動する際に、同時に、第2の部材によって保持された未露光の基板W´が第2の基板保持領域B2へ露光動作時の速度より速い速度で搬送され、
前記第1の基板交換領域C1では、露光済み基板Wの搬出と、未露光基板Wの搬入、未露光基板Wのプリアライメント、未露光基板Wの保持が行われ、一方、この間に、第2の部材によって保持された基板W´も上述した同様の露光動作によって、往路によるスキャン露光によって第1の転写パターン83が露光され、第1の基板保持領域B1に保持された基板W´に対してY方向への基板W´の移動を行い、復路によるスキャン露光によって第2の転写パターン84が露光されるものであって、
前記基板搬送機構14の第1及び第2の部材は、それぞれ複数のマスクMと基板W及びW´とがY方向に所定の距離L、即ち、隣接するマスクMのマスクパターン61,62のY方向における中心間距離Dの略1/2だけ移動するように構成され、
前記基板Wの往路搬送時に、所定の間隔Gずつ離れた第1の転写パターン83を露光させ、基板搬送機構14により基板Wを所定の間隔Lだけ移動させた後、基板Wを復路搬送して、往路搬送時に露光した第1の転写パターン83間に形成された未露光部に第2の転写パターン84を隙間なく露光させることにより、必要となるマスク保持部11および照射部13の数量が削減され、スキャン露光装置1の製造費用が大幅に低減し、
前記露光領域Aと、第1及び第2の基板保持領域B1,B2と、第1及び第2の基板交換領域C1、C2と、を設けて、基板搬送機構14は、露光領域A、第1及び第2の基板保持領域B1,B2、及び第1の基板交換領域C1間で基板WをX方向に沿って往復移動可能な第1の部材と、露光領域A、第1及び第2の基板保持領域B1,B2、及び第2の基板交換領域C2間で基板WをX方向に沿って往復移動可能な第2の部材と、を備えるようにしていることにより、前記基板Wの露光動作、すなわち、第1の転写パターン83の形成工程、Y方向への基板Wの移動工程、及び第2の転写パターン84の形成工程と、基板Wの搬出工程及び搬入工程とを行うタイミングを少なくともオーバーラップさせて行うことができ、スループットを向上することができ、
前記基板W、W´上に前記マスクMの前記マスクパターン61、62を露光転写する、液晶装置の製造に関してマスクパターンを露光転写するスキャン露光装置。」

(5)甲第5号証には、以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示板製造分野にて使用されるものであって、特に、液晶表示装置に用いられる基板上において、液晶分子が望ましい角度と方向に整列するよう配向膜に配向性を付与するための光配向照射装置に関するものである。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る光配向照射装置の構成を示す図である。本実施形態の光配向照射装置1は、偏光光照射手段2、走査手段を主な構成要素として有する。偏光光照射手段2は、基板9の表面に形成された配向膜に対して紫外線のビームを照射することで、配向膜に配向特性を付与する手段であって、本実施形態では、反射鏡21a、紫外線照射光源21bを有する紫外線照射手段21と、偏光手段3を備えて構成されている。なお、本実施形態では、照射光として紫外線を使用しているが、他の波長帯の照射光を使用することとしてもよい。その場合、使用する波長帯に応じた照射光源が用いられる。
【0030】
図2には、本発明の実施形態に係る光配向照射装置の側断面図が、図3には本発明の実施形態に係る光配向照射装置の上面図が示されている。走査手段は、ステージ4を所定の移動方向(図ではY軸方向)に移動させることで、偏光光照射手段2から照射されるビームを基板9上に走査させる手段である。本実施形態の走査手段は、ステージ4、可動台55、ボールネジ52、LMガイド51、回転部54を有して構成されている。可動台55は、回転部54を介してステージ4と機械的に結合されている。また、可動台55は、LMガイド51にて走査方向に移動可能とされている。このLMガイド51は、LMレール51a、51b上を、LMブロック51c、51dが摺動可能とされている。LMブロック51c、51dには可動台55が固定されている。本実施形態では、図3に示すように2本のLMガイド51a、51bによって可動台55を移動可能としている。
【0031】
可動台55には、ボールネジ52に対応したネジ穴が切られている。このネジ穴にボールネジ52を通し、ボールネジ52を回転させることで、ボールネジ52の回転を走査方向に対する可動台55の移動に変換している。また、可動台55には、上面に回転部54が設けられている。この回転部54は、図に示されるXY平面内における回転を実行可能としており、偏光光照射手段2にて照射される偏光光の偏光方向の調整、そして、走査手段による各走査位置での回転ずれ(「軸走り」と呼ばれる現象)の補正などに使用される。」

ウ 「【0036】
図5には、本発明の実施形態に係る偏光手段の構成が示されている。図5は、偏光手段3を下方、すなわち、図1?図3に示されるZ軸の正の方向から眺めた図となっている。本実施形態の偏光手段3は、隣接方向33に沿って隣接配置された複数の単位偏光子31a?31fを有して構成されている。単位偏光子31a?31fは、誘電多層膜を使用したブリュースター偏光子やワイヤーグリッド偏光子にて構成される。このような単位偏光子31a?31fは、石英などを成分として構成された光学素子(偏光子)であり、本実施形態では矩形状のものを使用している。図1に示すように、基板9に照射領域を形成する際、基板9にムラ無く偏光紫外線を照射するには、基板9の一辺から対向する他辺にわたる長さの偏光手段3が必要とされる。現在、50インチ以上の大型の液晶表示装置にて使用される基板9においては、十分な長さを有する偏光手段3が求められている。大判の偏光子の製造は困難であるとともに、現状、その価格は高価なものとなっている。本実施形態では、図5に示されるように小判の単位偏光子31a?31fを、隣接方向33に隣接させて使用することで、光配向照射装置のコストを抑えることが可能となる。」

エ 「【0040】
図4には、この偏光手段3による紫外線照射の状況が模式的に示されている。紫外線照射光源21から出射された平行、あるいは、部分的に平行な無偏光紫外線Aは、各単位偏光子31a?31fを透過することで、各単位偏光子31a?31f毎に設定されている偏光方向に偏光され、偏光紫外線Ba?Bfに変換される。各偏光紫外線Ba?Bfは、基板9上に入射して配向膜を配向させる。図4の照射領域には、各偏光紫外線Ba?Bfの偏光方向が矢印で模式的に示されている。偏光手段3を1つの偏光子で構成した場合、照射される偏光紫外線の偏光方向は、照射領域中において全て同方向となる。しかしながら、本実施形態のように複数の単位偏光子31a?31fで構成した場合、各単位偏光子31a?31fの偏光方向を一致させておかないと、基板9を液晶表示装置として使用した際、映像ムラとして観察される。
【0041】
このような液晶表示装置における映像ムラ発生を抑制するため、各単位偏光子31a?31fの偏光方向が所定の方向に向いているか、また、各単位偏光子31a?31f間の偏光方向の誤差が所定角度以内に収まっているかを確認する必要がある。そのため、本実施形態の光配向照射装置では、各単位偏光子31a?31fから出射された偏光紫外線の偏光方向を検知する偏光方向検知手段を設けることとしている。
【0042】
この偏光方向検知手段は、1乃至複数の偏光センサー6を使用して構成することが可能である。本実施形態では、ステージ4上に各単位偏光子31a?31fに対応した複数の偏光センサー6a?6fを用いることとしている。図2に示した光配向照射装置1の側断面図、図3に示した上面図には、この複数の偏光センサー6a?6fの配置の様子が示されている。図2に示されるように偏光センサー6は、検出面を上向きにしてステージ4の面から突出しないようステージ4内に埋め込まれている。これは、ステージ4に基板9を載置する際、偏光センサー6が突出することによる載置阻害を防止するためである。基板9を照射した際の偏光方向を検出できるよう、偏光センサー6の検出面は、基板9の配向膜付近に位置させることが好ましいが、その場合、偏光センサー6は、ステージ4の面から突出させることとなる。このような場合、偏光方向を検出する場合のみ、偏光センサー6を取り付ける、あるいは、駆動機構を用いて偏光センサー6をステージから突出させるなどすることとしてもよい。」

オ 「【0048】
走査方向に対して平行もしくは直交する方向に対する位置ずれであれば、特段問題はないが、単位偏光子31a?31fを回転させる位置ずれは、偏光方向にずれを生じさせるため好ましくない。特に、本実施形態のように複数の単位偏光子31a?31f間の偏光方向のずれは、液晶表示装置として利用した際の映像品質に関わることとなる。したがって、本実施形態の光配向照射装置では、偏光方向確認処理を実行することで、各単位偏光子31a?31fの偏光方向の確認を行うこととしている。また、本実施形態の偏光方向確認処理では、確認した偏光方向に基づいて、回転部54を回転させ偏光方向が適正となる補正処理も行うこととしている。
【0049】
図9は、本発明の実施形態に係る光配向照射装置の制御構成を示すブロック図であり、図10は、本発明の実施形態に係る偏光方向確認処理を示すフロー図である。本実施形態の光配向照射装置は、その制御手段として、図9に示されるように制御部81、ボールネジ駆動部82を有して構成されている。制御部81には、ユーザーに対する各種情報のやりとりを行うための表示部83、入力部84が接続されている。また、制御部81は、回転部54、紫外線照射光源21b、センサー制御部65と接続されており、これら各種構成を制御することを可能としている。
【0050】
偏光方向確認処理は、各単位偏光子31a?31fから出射される偏光紫外線Ba?Bfの偏光方向光を確認するための処理である。この偏光方向確認処理は、ステージ4に基板9を載置する前の状態で実行される。図10のフロー図に示されるように、偏光方向確認処理が開始されると、まず、各単位偏光子31a?31fから出射される偏光紫外線が対応する偏光センサー6a?6fを照射可能な位置にステージ4を移動する(S101)。本実施形態では、制御部81がボールネジ駆動部82によってボールネジ52を回転させることでステージ4の移動が行われる。次に制御部81は紫外線照射光源21bを点灯させ、各偏光センサー6a?6fに偏光紫外線を入射させる(S102)。」

カ 「【0062】
偏光センサー6の配置には他の形態を採用することも可能である。図14には、本発明の他の実施形態に係る光配向照射装置の上面図が示されている。この実施形態においては、ステージ4外に偏光センサー6a?6fを配置している。偏光センサー6a?6fは、センサー載置台66上に設置されている。このセンサー載置台66は、走査手段によるステージ4の移動を阻害しない位置に配置される。本実施形態では、偏光手段3、紫外線照射光源21を含む偏光光照射手段2をセンサー載置台66上に移動させる移動部を有している。偏光方向確認処理では、図15に示されるように、移動部によって、偏光光照射手段2をセンサー載置台66上に移動させることで、各単位偏光子31a?31fから出射される偏光紫外線Bを、偏光センサー6a?6fにて受光させる。
【0063】
本実施形態では、このように偏光センサー6a?6fをステージ4の外に設置したことで、ステージ4内に偏光センサー6a?6fを配置する必要が無い。偏光センサー6a?6fには信号を送受信するための配線が必要とされるが、前述の実施形態のようにステージ4内に偏光センサー6a?6fを設置した場合には、ステージ4の移動により配線が疲弊して断線などを引き起こす可能性がある。本実施形態では可動部の無いステージ4外に偏光センサー6a?6fを設置することで、断線などの障害の発生を抑えるとともに、その設置についても容易に行うことを可能としている。また、ステージ4に基板9を設置した状態であっても、偏光方向確認処理を実行することが可能となる。なお、走査手段が偏光光照射手段2を移動させることで、偏光紫外線の走査を行う場合には、センサー載置台66上への偏光光照射手段2の移動を、走査手段で行う(兼用する)ことが可能となる。」

キ 図1ないし5、10及び12は、次のものである。


ク 図14及び図15は、次のものである。


(6)甲第5号証に記載の発明
ア 上記(5)によれば、甲第5号証の上記(5)カ及びクは、上記(5)イ?オ及びキの実施形態を基本とした他の形態であって、上記(5)イ?オ及びキの実施形態においてステージに設けていた偏光センサー6a?6fを、ステージ外に配置することで、上記(5)イ?オ及びキの実施形態において「ステージ4に基板9を載置する前の状態で実行される」「偏光方向確認処理」(上記(5)オの段落【0050】)を、「ステージ4に基板9を設置した状態であっても、」「実行することが可能」(上記(5)カの段落【0063】)としたものであるから、当該変更部分以外は、上記(5)イ?オ及びキの実施例と同様の構成を有しているものと認められる。
また、上記(5)アによれば、甲第5号証には、「液晶表示板製造分野にて使用される」「液晶表示装置に用いられる基板上において」「配向膜に配向性を付与するための光配向照射装置」の発明が記載されているといえる。

イ そうすると、上記(5)の甲第5号証の記載事項から、甲第5号証には、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「液晶表示装置に用いられる基板上において、液晶分子が望ましい角度と方向に整列するよう配向膜に配向性を付与するための光配向照射装置であって、
前記光配向照射装置は、偏光光照射手段2、走査手段を主な構成要素として有し、
前記偏光光照射手段2は、基板9の表面に形成された配向膜に対して紫外線のビームを照射することで、配向膜に配向特性を付与する手段であり、反射鏡21a、紫外線照射光源21bを有する紫外線照射手段21と、偏光手段3を備えて構成され、
前記走査手段は、ステージ4を所定の移動方向に移動させることで、偏光光照射手段2から照射されるビームを基板9上に走査させる手段であり、ステージ4、可動台55、ボールネジ52、LMガイド51、回転部54を有して構成され、
前記可動台55は、回転部54を介してステージ4と機械的に結合され、LMガイド51にて走査方向に移動可能とされ、
前記LMガイド51は、LMレール51a、51b上を、LMブロック51c、51dが摺動可能とされ、
前記LMブロック51c、51dには可動台55が固定され、
2本のLMガイド51a、51bによって可動台55を移動可能とし、
前記可動台55は、上面に回転部54が設けられ、
前記回転部54は、回転を実行可能としており、偏光光照射手段2にて照射される偏光光の偏光方向の調整に使用され、
前記偏光手段3は、隣接方向33に沿って隣接配置された複数の単位偏光子31a?31fを有して構成され、
偏光方向確認処理を実行することで、各単位偏光子31a?31fの偏光方向の確認を行うと共に、確認した偏光方向に基づいて、回転部54を回転させ偏光方向が適正となる補正処理も行い、
偏光方向検知手段は、1乃至複数の偏光センサー6を使用して構成し、ステージ4外に偏光センサー6a?6fを配置し、ステージ4に基板9を設置した状態であっても、偏光方向確認処理を実行することを可能とした、
液晶表示板製造分野にて使用される液晶表示装置に用いられる基板上において配向膜に配向性を付与するための光配向照射装置。」

2 無効理由通知2についての判断
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と参考資料3発明とを対比する。
(ア)参考資料3発明の「光照射部20A,20B」、「光配向膜51が形成された矩形状のワーク」、「ワークステージ」、「ステージ移動機構」及び「配向膜の光配向を行なう偏光光照射装置」は、それぞれ、本件訂正発明1の「照射ユニット」、「光配向用膜材付きの基板」、「ステージ」、「ステージ移動機構」及び「光配向用偏光光照射装置」に相当する。

(イ)参考資料3発明の「設定された照射領域へ偏光光を出射する光照射部20A,20B」は、本件訂正発明1の「設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニット」に相当する。

(ウ)参考資料3発明の「光配向膜51が形成された矩形状のワークがワークステージ上に載置され」る「ワークステージ」は、本件訂正発明1の「光配向用膜材付きの基板が載置されるステージ」に相当する。

(エ)参考資料3発明は、「ワークステージを直線移動させるステージ移動機構、を備え、前記光照射部20A、20Bから偏光光を照射しながら前記ワークステージを直線移動させて、前記光照射部20Aと20Bの両方の下を通過させ、前記光配向膜の光配向処理をする」ものであり、光照射部20A、20Bの両方の下を通過させるより前に、ワークをワークステージ上に載置することは明らかである。
そうすると、参考資料3発明の「ワークステージを直線移動させるステージ移動機構、を備え、前記光照射部20A、20Bから偏光光を照射しながら前記ワークステージを直線移動させて、前記光照射部20Aと20Bの両方の下を通過させ、前記光配向膜の光配向処理をする」構成と、本件訂正発明1の「照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、」「ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであ」る構成は、「照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、」「ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された基板搭載位置からステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものである」構成の点で一致する。

(オ)参考資料3発明の「ワークステージを直線移動させるステージ移動機構、を備え、」「ワーク50を往復移動させて、光照射部20B→20A→20A→20Bのように偏光光を照射する」構成と、本件訂正発明1の「ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであ」る構成は、「ステージ移動機構は、ステージ上の基板が照射領域を通過した後にステージを戻す」構成で共通する。

(カ)してみると、両者は、
「設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された基板搭載位置からステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、ステージ上の基板が照射領域を通過した後にステージを戻すものである、
光配向用偏光光照射装置。」
で一致し、次の各点で相違する。

a 本件訂正発明1は、「ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されて」いるのに対して、
参考資料3発明は、ステージの個数が二つではなく一つであって、ステージ移動機構は、その一のステージ上の基板が照射領域を通過した後にその一のステージを戻すことができるものの、ステージの個数が二つであることに伴う構成、すなわち、
第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻す構成、及び、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている構成、
を有していない点(以下、「相違点1」という。)。

b 本件訂正発明1の「第一第二ステージの各々」は、「基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含む」のに対して、参考資料3発明の「ワークステージ」は、「光配向膜51が形成された矩形状のワーク50」を「ワークステージ上に載置」するための詳細な構成が特定されていない点(以下、「相違点2」という。)。

イ 判断
(ア)相違点1について検討する。
a 液晶素子を製造する装置の技術分野においてスループット向上は当然の課題であるから、当業者であれば、矩形状のワークをワークステージ上に載置して照射領域に移動させる液晶素子の製造に関するスキャン照射する装置である参考資料3発明においても、スループットを向上させることが動機付けられるといえる。

b 他方、甲第2号証には、マスク保持部及び照射部の数量を削減してコストダウンを図ることができるとともに、スループットを向上することを目的とした液晶装置を製造するスキャン露光装置が開示されているところ、甲2発明は、液晶装置を製造するためのものであって、矩形状のワークをワークステージ上に載置して照射領域に対して往復移動させるスキャン露光装置である点で、液晶素子の製造に関するスキャン照射する装置である参考資料3発明と共通するものであることが明らかである。
そうすると、上記aで述べたところの、参考資料3発明において、スループットを向上させることが動機付けられた当業者であれば、参考資料3発明と液晶素子(装置)を製造する、往復移動可能なスキャン照射(露光)装置として共通するとともに、スループットの向上にも関係する甲2発明を組み合わせることが動機付けられるというべきである。

c しかしながら、甲2発明は、マスク保持部及び照射部の数量を削減してコストダウンを図ることをも課題としており(上記(3)ア)、その結果、その課題を解決するための構成(例えば、「第1の転写パターン83形成後、基板Wを上面に載置した前記第1の部材を、第1の機構によって、基板WをY方向に所定の距離Lだけ移動させ」る構成)を備えているとの事情がある。そこで、上記aでいう当業者からみて、甲2発明がどのように把握されるのか、また、上記事情が甲2発明を組み合わせる際の阻害要因となるか否かについて、以下に検討する。
(a)甲2発明の技術的意義は次のとおりである。
i 特許文献1(特開2005-140935号公報)に記載の露光装置は、パネルと同寸のマスクを用い、露光位置に対して左右両側のチャックに対してガラス基板のロード/アンロード位置が配置され、一方のチャック上のガラス基板で露光が行われている間に、他方のガラス基板でロード/アンロードを行ってスループットを向上させるものであるが、パネルの大型化に伴ってマスクが大型化し、製造コストが嵩むという課題があった(上記(3)ア 段落【0002】?【0004】)。
他方、特許文献2(特開2007-165821号公報)に記載の露光装置は、マスクを細分化して、これらマスクを保持するマスク保持部を千鳥状に配置し、基板を一方向に移動させながら露光を行うスキャン露光装置であり、マスクをパネルに合わせて大きくする必要がないものである。しかしながら、パネルの大型化に伴い、全露光領域を隙間なくカバーするためのマスク保持部および照射部の数量がますます多くなり、露光装置の製造コスト上昇の一因となるとの課題があった(上記(3)ア 段落【0003】、【0005】)。

ii そこで、甲2発明は、上記各課題に鑑みてなされたものであり、マスク保持部、および照射部の数量を削減してコストダウンを図ることができるとともに、スループットを向上することができるスキャン露光装置を提供することを目的としたものである(上記(3)ア 段落【0006】)。

iii ここで、甲2発明の動作について検討するに、甲2発明における、「所定の距離L、即ち、隣接するマスクMのマスクパターン61,62のY方向における中心間距離Dの略1/2だけ移動」、「基板Wの往路搬送」ないし「基板Wを復路搬送」をそれぞれ「動作A」、「動作B」ないし「動作C」とすると、下記のとおりである。
「前記基板搬送機構14の第1及び第2の部材は、複数のマスクMと基板WとがY方向に所定の距離L、即ち、隣接するマスクMのマスクパターン61,62のY方向における中心間距離Dの略1/2だけ移動(動作A)するように構成され、
前記基板Wの往路搬送(動作B)時に、所定の間隔Gずつ離れた第1の転写パターン83を露光させ、基板搬送機構14により基板Wを所定の間隔Lだけ移動(動作A)させた後、基板Wを復路搬送(動作C)して、往路搬送時に露光した第1の転写パターン83間に形成された未露光部に第2の転写パターン84を隙間なく露光させることにより、必要となるマスク保持部11および照射部13の数量が削減され、スキャン露光装置1の製造費用が大幅に低減し、
前記露光領域Aと、第1及び第2の基板保持領域B1,B2と、第1及び第2の基板交換領域C1、C2と、を設けて、基板搬送機構14は、露光領域A、第1及び第2の基板保持領域B1,B2、及び第1の基板交換領域C1間で基板WをX方向に沿って往復移動(動作B、C)可能な第1の部材と、露光領域A、第1及び第2の基板保持領域B1,B2、及び第2の基板交換領域C2間で基板WをX方向に沿って往復移動(動作B、C)可能な第2の部材と、を備えるようにしていることにより、前記基板Wの露光動作、すなわち、第1の転写パターン83の形成工程(動作B)、Y方向への基板Wの移動工程(動作A)、及び第2の転写パターン84の形成工程(動作C)と、基板Wの搬出工程及び搬入工程とを行うタイミングを少なくともオーバーラップさせて行うことができ、スループットを向上する」

(b)上記(a)によれば、甲2発明における基板の移動(動作A)、(動作B)及び(動作C)につき、次のことが理解できる。
甲2発明においては、往路搬送時露光(動作B)、Y方向移動(動作A)、復路搬送時露光(動作C)がなされているところ、これは、マスク保持部11および照射部13の数量が減少されたにもかかわらず、隙間のない露光を可能とするためのものである。
他方、甲2発明におけるスループットの向上のための、「基板搬送機構14は、露光領域A、第1及び第2の基板保持領域B1,B2、及び第1の基板交換領域C1間で基板WをX方向に沿って往復移動可能((動作B)及び(動作C))な第1の部材と、露光領域A、第1及び第2の基板保持領域B1,B2、及び第2の基板交換領域C2間で基板WをX方向に沿って往復移動可能((動作B)及び(動作C))な第2の部材と、を備える」構成は、上記(3)エの段落【0042】の記載に基づいて認定されているが、当該記載には、Y方向への基板Wの移動工程(動作A)のための機構は明記されていない。
このことは、甲2発明においてスループットを向上できるメカニズムが、基板Wの露光動作と、基板W´の(スキャン露光装置への)搬出工程及び搬入工程とを行うタイミングを少なくともオーバーラップさせることにあり、基板Wの露光動作に要する時間のうち、Y方向への基板Wの移動工程(動作A)の時間が、(動作B)及び(動作C)の形成工程の時間よりもごく短いと解される(上記(3)ウ 段落【0019】末文)ことからすれば首肯できるものである。そして、この意味での(動作B)及び(動作C)は、マスク保持部11および照射部13の数量が減少されたにもかかわらず隙間のない露光を可能とするためのみならず、照射領域の一方の側と他方の側の2つのステージを設けることを可能とするとともに、基板Wの露光動作と基板W´の搬出工程及び搬入工程とを行うタイミングを少なくともオーバーラップさせるための時間を確保するためのもの(上記(3)エ 段落【0036】、【0039】)であることが明らかである。
そうすると、甲2発明における基板の移動には、(動作A)、(動作B)及び(動作C)が存在するけれども、(動作A)は、もっぱら隙間のない露光を可能とするとの技術的意義を奏する一方、(動作B)及び(動作C)は、(動作A)との組み合わせにより隙間のない露光を可能とするとの技術的意義に加えて、(動作B)と(動作C)の組み合わせによりスループット向上のためとの技術的意義を奏することが理解できる。

(c)参考資料3発明には、マスク保持部および照射部の数量が減少されたにもかかわらず隙間のない露光を行うとの課題はない一方、スループット向上との課題は存在する。
他方、甲2発明の、マスク保持部および照射部の数量が減少されたにもかかわらず隙間のない露光を可能とすることと、スループット向上とは、技術的には別の観点であることが明らかである。
そうすると、参考資料3発明において、スループット向上との課題を解決しようとする、上記aでいう当業者からみれば、甲2発明のうち、もっぱら、(動作B)及び(動作C)の組み合わせに着目してスループットを向上させる技術を把握することができるというべきであるし、マスク保持部および照射部の数量が減少されたにもかかわらず隙間のない露光を可能とすることと、スループット向上とは、技術的には別観点である以上、(動作A)の存在が、参考資料3発明との組み合わせの際の阻害要因となることはない。

d そこで、甲2発明を(動作B)及び(動作C)の組み合わせについてより具体的にみると、
「基板W」については、「第1の基板交換領域C1」から「第1の基板保持領域B1」を経て「露光領域Aを通過して」「第2の基板保持領域B2」に移動させる(動作B)の後、「基板Wの搬送方向をX方向と逆方向に切り替えて」、「第2の基板保持領域B2」から「露光領域Aを通過して」「第1の基板保持領域B1」を経て「第1の基板交換領域C1」に移動させる(動作C)を行い、
また、「基板W´」については、「第2の基板交換領域C2」から「第2の基板保持領域B2」を経て「露光領域Aを通過して」「第1の基板保持領域B1」に移動させる(動作B)の後、「基板W´」「の搬送方向を」「逆方向に切り替えて」、「第1の基板保持領域B1」から「露光領域Aを通過して」「第2の基板保持領域B2」を経て「第2の基板交換領域C2」に移動させる(動作C)を行う、
構成を含むものであることは明らかである。
さらに、甲2発明の「第2の基板保持領域B2」は、「露光領域A」と「第2の基板交換領域C2」との間の領域であって、「露光領域A」を通過した「基板W」を保持する領域であり、「第1の基板保持領域B1」は、「露光領域A」と「第1の基板交換領域C1」との間の領域であって、「露光領域A」を通過した「基板W´」を保持する領域であるから、「第2の基板保持領域B2」及び「第1の基板保持領域B1」は、それぞれ「基板W」、「基板W´」が「露光領域A」を通過する分以上のスペースを有することは明らかである。

e なお、甲2発明において、基板Wを「第1の基板交換領域C1」から動作B及びCを経て「第1の基板交換領域C1」に戻し、基板W´を「第2の基板保持領域B2」から(動作B)及び(動作C)を経て「第2の基板保持領域B2」に戻す目的は、「これにより、基板Wの露光動作・・・と、基板Wの搬出工程及び搬入工程とを行うタイミングを少なくともオーバーラップさせて行うことができ、スループットを向上することができる。」(上記1(3)エ 段落【0042】)ことにあるところ、本件訂正発明1において、「ステージ移動機構」が、「第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻す」目的は、「一方のステージ21,22上の基板Sへの偏光光の照射の最中に他方のステージ21,22において基板Sの回収動作と次の基板Sの搭載動作を行うことができる。このため、タクトタイムを大幅に削減することができ、より生産性の高い光配向プロセスが実現される。」(本件特許明細書の段落【0041】)、つまり、タイミングを少なくともオーバーラップさせて行うことができ、スループットを向上することにあるといえるから、両者は基板を「戻す」目的の点でも一致している。
また、甲2発明が、「基板Wの露光動作・・・と、基板Wの搬出工程及び搬入工程とを行うタイミングを少なくともオーバーラップさせて行うことができ、スループットを向上する」(上記1(3)エ 段落【0042】)ために、基板Wを「第1の基板交換領域C1」から動作B及びCを経て「第1の基板交換領域C1」に戻し、基板W´を「第2の基板保持領域B2」から(動作B)及び(動作C)を経て「第2の基板保持領域B2」に戻すものであるから、
(a)基板Wを、少なくとも第1の基板交換領域C1から第1の基板保持領域B1を経て露光領域Aを通過して第2の基板保持領域B2に移動させた後、基板Wの搬送方向をX方向と逆方向に切り替えて、第2の基板保持領域B2から露光領域Aを通過して第1の基板保持領域B1を経て第1の基板交換領域C1に移動させ(動作イ)、
(b)続けて、基板W´を、少なくとも第2の基板交換領域C2から第2の基板保持領域B2を経て露光領域Aを通過して第1の基板保持領域B1に移動させた後、基板W´の搬送方向を逆方向に切り替えて、第1の基板保持領域B1から露光領域Aを通過して第2の基板保持領域B2を経て第2の基板交換領域C2に移動させ(動作ロ)、
(c)さらに続けて、交換された別の基板Wを、少なくとも第1の基板交換領域C1から第1の基板保持領域B1を経て露光領域Aを通過して第2の基板保持領域B2に移動させるという動作(以下上記(a)の動作イ)を続けて行うものであるといえる。

f したがって、甲2発明は、(動作B)及び(動作C)の組み合わせの観点から整理すると、下記の構成(以下、「甲2′発明」という。)を備える発明ということができる。
「基板Wを上面に載置する第1、2の部材、及び、前記第1、2の部材を移動する第1、2の機構を備える基板搬送機構14を有し、
前記基板Wを、少なくとも第1の基板交換領域C1から第1の基板保持領域B1を経て露光領域Aを通過して第2の基板保持領域B2に移動させた後、基板Wの搬送方向をX方向と逆方向に切り替えて、第2の基板保持領域B2から露光領域Aを通過して第1の基板保持領域B1を経て第1の基板交換領域C1に移動させ(動作イ)、
さらに、基板W´を、少なくとも第2の基板交換領域C2から第2の基板保持領域B2を経て露光領域Aを通過して第1の基板保持領域B1に移動させた後、基板W´の搬送方向を逆方向に切り替えて、第1の基板保持領域B1から露光領域Aを通過して第2の基板保持領域B2を経て第2の基板交換領域C2に移動させ(動作ロ)、
前記基板搬送機構14が、第1の部材によって保持された露光済みの基板Wを、第1の基板保持領域B1から第1の基板交換領域C1へ移動し(戻し)、第2の部材によって保持された基板W´を、同様の露光動作によって、搬出工程及び搬入工程とを行い(戻し)、
上記動作イに続けて動作ロを行い、動作ロに続けて、交換された別の基板にて動作イを行うという動作を行うものであって、
前記第2の基板保持領域B2は、露光領域Aと第2の基板交換領域C2との間の領域であって、露光領域Aを通過した基板Wを保持する領域であり、前記第1の基板保持領域B1は、露光領域Aと第1の基板交換領域C1との間の領域であって、露光領域Aを通過した基板W´を保持する領域であって、前記第2の基板保持領域B2及び前記第1の基板保持領域B1は、それぞれ基板W及び基板W´が露光領域Aを通過する分以上のスペースを有する液晶装置の製造に関してマスクパターンを露光転写するスキャン露光装置。」
そして、甲2′発明は、本件訂正発明1の「ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており」との構成に相当する構成を備えるものであると認められる。

g そうすると、参考資料3発明において、スループット向上という製造装置における普遍的な技術課題を解決するために、甲2′発明の「基板Wを保持及び搬送する第1、第2のステージ及び第1、第2のステージ移動機構」、及び、基板の露光動作と基板の搬出工程及び搬入工程をオーバーラップさせる構成を適用して、上記相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、上記cのとおり、甲2′発明に(動作A)があることが、参考資料3発明と甲第2号証に記載された発明とを組み合わせることの阻害要因となることはない。

(イ)相違点2について検討する。
a 参考資料3発明の「ワークステージ」の詳細な構成は不明であるところ、参考資料3発明を発明として実施するには適宜の具体的構成を採用すべきであって、参考資料3発明の「矩形状のワーク50がワークステージ上に載置され」る構成にも適宜の具体的構成を採用すべきであるといえる。

b そして、「矩形状のワーク50」を「ワークステージ上に載置」する構成として、「基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピン」を含むステージは、基板搬送技術において周知技術である。
(例えば、特開2005-114882号公報、特開2009-194335号公報、特開2007-322806号公報、特開2012-119591号公報、参照)
してみると、参考資料3発明を発明として実施するには「矩形状のワーク50」を「ワークステージ上に載置」する構成に関して、適宜の具体的構成を採用すべきであるところ、参考資料3発明に当該周知技術を採用して、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

c なお、相違点2に係る本件訂正発明1の「前記第一第二ステージの各々は、基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含む」との構成は、本件訂正明細書には、段落【0050】に「尚、本願発明において、『ステージ』の用語は通常より広く解釈される必要がある。即ち、真空吸着のような吸着孔を有する複数のピンの上に基板Sを載置してこれら複数のピン上に基板を吸着し、複数のピンを一体に移動させることで基板Sが照射領域を通過するようにする場合がある。従って、『ステージ』は、基板を保持しながら基板を移動させることができる部材であれば足り、必ずしも台状の部材に限られない」と記載されるにとどまる。
そうすると、本件訂正発明1における「前記第一第二ステージの各々は、基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含む」との構成は、本件訂正発明1の「光配向用偏光光照射装置」のその余の構成と、不可分な直接的な技術的関連性がある構成とされるものでもなく、別異の適宜付加される構成にすぎない。

ウ 本件訂正発明1において奏される効果について
(ア)本件特許明細書には、以下の記載がある。
a 「【発明の効果】
【0007】
以下に説明する通り、本願の請求項1又は5記載の発明によれば、照射領域を二つのステージが交互に通過することで各ステージ上の基板に対して偏光光が照射されるようにすることができ、タクトタイムの削減によって生産性の高い光配向プロセスを実現することができる。この際、第一の基板搭載位置と照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過できる分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置と照射領域との間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過できる分以上のスペースが確保されているので、ステージ同士が干渉することなく均一性の高い光配向処理が行える。」

b 「【0050】尚、本願発明において、『ステージ』の用語は通常より広く解釈される必要がある。即ち、真空吸着のような吸着孔を有する複数のピンの上に基板Sを載置してこれら複数のピン上に基板を吸着し、複数のピンを一体に移動させることで基板Sが照射領域を通過するようにする場合がある。従って、『ステージ』は、基板を保持しながら基板を移動させることができる部材であれば足り、必ずしも台状の部材に限られない。」

(イ)上記(ア)aによれば、本件訂正発明1においては、照射領域を二つのステージが交互に通過することで各ステージ上の基板に対して偏光光が照射されるようにすることができ、タクトタイムの削減によって生産性の高い光配向プロセスを実現することができるとの効果を奏するものと認められる。

(ウ)また、上記イ(イ)cで指摘したとおり、本件訂正発明1における、「前記第一第二ステージの各々は、基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含む」との構成は、本件訂正発明1の「光配向用偏光光照射装置」のその余の構成要素と不可分な直接的な技術的関連性がある構成とされるものではなく、別異の適宜付加される構成であり、格別の効果を有するとは認められない。

(エ)他方、参考資料3発明の「ワーク50を往復移動させて、光照射部20B→20A→20A→20Bのように偏光光を照射する」との構成を具体化するために、甲2′発明を適用することが、当業者が容易になし得るものであることは、上記イ(ア)で検討したとおりであって、参考資料3発明に甲2′発明を適用したものが、スループット向上という普遍的な技術課題を解決することができることから、かかる効果を奏する点において本件訂正発明1と格別の相違があるものとは認められない。
したがって、本件訂正発明1が奏する効果は、参考資料3発明及び甲2′発明から当業者が予想し得るものであって、格別のものとはいえない。

エ 被請求人の主張
(ア)被請求人の答弁書、被請求人の意見書1、被請求人の意見書2、口頭審理陳述要領書(被請求人)、口頭審理及び被請求人の上申書においてなされた、被請求人の主張は、概略以下のとおりである。
a 参考資料3に記載された発明は、「偏光光照射装置」であるのに対して、甲第2号証に記載された発明は、「マスクパターンを露光転写するスキャン露光装置」であって、技術分野が異なり、組みあわせることができない(以下、「被請求人の主張1」という。)。
(被請求人の意見書1 2頁9行?7頁22行、被請求人の意見書2 2頁9行?3頁2行、口頭審理陳述要領書(被請求人) 2頁9行?最下行、5頁2?7行等)

b 甲第2号証に記載された発明は、ステージをY方向に移動させる構成が必須であって、2つのステージをオーバーラップさせるから、往復移動させる点のみを抽出できない(以下、「被請求人の主張2」という。)。
(被請求人の意見書2 3頁3行?5頁25行、口頭審理陳述要領書(被請求人) 2頁9行?最下行等)

c 甲第2号証に記載された発明は、断続的な移動を前提とするものであるが、参考資料3発明は、連続的な移動を前提とするものであって、これらの点を無視して組みあわせることはできない(以下、「被請求人の主張3」という。)。
(被請求人の意見書2 3頁3行?5頁25行、口頭審理陳述要領書(被請求人) 5頁8?13行等)

d 甲第2号証が、二つのステージを備える露光装置を開示するとしても、一方のステージの復路移動に続くように他方のステージの往路移動を行わせる構成については、開示も示唆もしていない(以下、「被請求人の主張4」という。)。
(被請求人の上申書 4頁18?20行等)

(イ)被請求人の主張について
a 被請求人の主張1については、上記イ(ア)bで検討したとおりである。

b 被請求人の主張2については、上記イ(ア)で検討したとおりである。

c 被請求人の主張3については、露光時に、断続的な移動を前提とするものであるのか、あるいは、連続的な移動を前提とするものであるのかは、どのようなパターンを形成するかによって、適宜選択できるものであり、参考資料3発明では、参考資料3の段落【0017】に「ワーク50が矩形状の場合、ワーク50は図示しないワークステージ上に載置され、光照射部20A、20Bから偏光光を照射しながらワークステージを直線移動させて、光配向膜の光配向処理をする。なお、ワーク50の光配向膜51に偏光光を照射し、光配向処理を行なう際、偏光光を照射しながらワーク50を連続的に移動させてもよいし、ワークを間歇的に移動させながら偏光光を照射してもよい。」(上記1(1)イ)と記載されるように、どちらの移動も選択が可能であることを前提としている。
そして、露光時にどちらの移動を選択するかは、2つのステージを往復移動することとは、独立した技術事項であることは明らかである。
(なお、本件訂正発明1において、偏光光照射時に、ステージを連続的な移動を前提とするものであるのか、断続的な移動を前提とするものであるのかの限定はない。)

d 被請求人の主張4については、上記イ(ア)eで検討したとおりである。

(ウ)したがって、上記(ア)の被請求人の主張は、採用することはできない。

オ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、参考資料3発明、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件訂正発明2について
ア 対比
本件訂正発明2と参考資料3発明とを対比する。
(ア)上記第3,1(4)及び同2(4)での検討に照らして、本件訂正発明2は、本件訂正発明1の「前記第一第二ステージの各々は、基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含む」との構成にかえて、「前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に対し、偏光子からの偏光光を直接照射して、往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにする」との構成を付加したものであるといえる。

(イ)そうすると、本件訂正発明2と参考資料3発明とを対比するに、上記(1)アでの検討を踏まえると、本件訂正発明2と参考資料3発明は、上記(1)ア(カ)aの相違点1、及び、下記点で相違し、その余の点で一致すると認められる。

(ウ)本件訂正発明2の「照射ユニット」は、「第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に対し、偏光子からの偏光光を直接照射して、往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにする」ものであるのに対して、参考資料3発明の光照射部20A,20Bは、このようなものと特定されない点(以下、「相違点3」という。)。

イ 判断
(ア)相違点1については、上記(1)イ(ア)で検討したとおりである。

(イ)相違点3について検討する。
a 参考資料3発明に関して、参考資料3の段落【0016】(上記1(1)イ)には次の記載がある。
「光照射部20Bによる偏光光照射において低い照度で照射された部分は、次の光照射部20Aによる偏光光照射において高い照度で照射され、また、光照射部20Aによる偏光光照射において低い照度で照射される部分は、先に光照射部20Bによる偏光光照射において高い照度で照射されている。したがって、光照射部20Aと20Bの両方の下を通過して偏光光が照射された光配向膜51は、図2(c)に示すように両者の照度分布が積算され、結果として均一なエネルギー分布で偏光光が照射されることになる。このことにより、光配向膜51において、照射される偏光光のエネルギーが不足する部分が生じるのを防ぐことができる。」

b また、参考資料3発明の「ワーク50を往復移動させて、光照射部20B→20A→20A→20Bのように偏光光を照射するようにした」構成によれば、参考資料3発明では、往路において光照射部20B及び20Aで照射され、復路において光照射部20A及び20Bで照射されるものとなることは明らかである。

c そうすると、上記bのとおり、参考資料3発明が、往路において光照射部20B及び20Aで照射され、復路において光照射部20A及び20Bで照射されるものであって、上記aのとおり、「光照射部20B」において「照射された部分は、次の光照射部20A」において「照射され」、「光照射部20Aと20Bの両方の下を通過して偏光光が照射された光配向膜51は、」「両者の照度分布が積算され」ることになるものであるから、参考資料3発明の「ワーク50を往復移動させて、光照射部20B→20A→20A→20Bのように偏光光を照射するようにした」構成によれば、往路における20B、20Aで照射された偏光光の量と、復路における20A、20Bで照射された偏光光の量とが積算されることは明らかである。
したがって、相違点3は実質的な相違点ではない。

ウ 本件訂正発明2において奏される効果について
(ア)本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【発明の効果】
【0007】・・・
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、第一第二の各ステージ上の基板が、往路と復路の双方で光照射されるので、エネルギーの無駄無く効率良く光配向処理ができ、移動速度を速くすることでより生産性を高めることができる。」

(イ)しかしながら、上記イ(イ)での検討に照らして、上記本件訂正発明2が奏する効果は格別のものとはいえない。

エ 被請求人の主張
(ア)被請求人は、被請求人の意見書2で、概略次のように主張する。
さらに、甲第2号証に記載された発明の「基板W」は、本件特許発明2の「光配向用膜材付きの基板」と対応しないことは前述の通りですが、当該「基板W」は、同様に、参考資料3発明の「光配向用膜材付きの基板」とも対応するものでもありません。このように、甲第2号証に記載された発明では、仮にステージを設ける構成を採用した場合でも、当該ステージにより搬送される基板が参考資料3のステージとは全く異なるものでありますから、このような場合において、ステージの移動方法のみを、移動させる対象物の全く異なるステージに適用することが想到容易であるとは到底考えられません。したがって、甲第2号証に記載された発明の基板Wを移動させるステージの動作を、偏光光を光配向用膜材付きの基板に直接照射する参考資料3発明に適用することは、本件特許出願当時の当業者にとって容易に想到できることではありません。
(上記意見書11頁12?21行)

(イ)この主張については、上記イ(イ)で検討したとおりであって、上記(ア)の被請求人の主張は、採用することはできない。

オ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明2は、参考資料3発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件訂正発明3について
ア 対比
本件訂正発明3と参考資料3発明とを対比する。
(ア)上記第3,1(5)及び同2(5)での検討に照らして、本件訂正発明3は、本件訂正発明2から、「前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に対し、偏光子からの偏光光を直接照射して、往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにする」及び「かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、」との発明特定事項を除き、「アライメントマークを有し、」「前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、」「前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、」との発明特定事項を付加した上で、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、「第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該」第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、「第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該」第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されているとの構成を付加したもの(前記の「」内の記載を付加したもの)であるといえる。

(イ)そうすると、本件訂正発明3と参考資料3発明とを対比するに、上記(1)アでの検討を踏まえると、本件訂正発明3と参考資料3発明は、上記(1)ア(カ)aの相違点1から、「かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、」との発明特定事項を除いた、相違点1´、及び、下記点で相違し、その余の点で一致すると認められる。

(ウ)本件訂正発明3の「第一第二の各ステージ」は「アライメントマークを有し、」「前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、」「前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、」、さらに、「第一第二の各ステージ」には、「搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに調整する基板アライナーが設けられ」、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、「第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の」該第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、「第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の」該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されているのに対して、参考資料3発明のワークステージ、ステージ移動機構及び光照射部20A,20Bは、このようなものと特定されない点(以下、「相違点4」という。)。

イ 判断
(ア)相違点1´は、相違点1から発明特定事項を除いたものであるから、上記(1)イ(ア)で検討したとおりである。

(イ)相違点4について検討する。
a 参考資料3発明は、光配向膜51に偏光光を出射する、液晶素子の製造に関する光照射装置である偏光光照射装置であるところ、参考資料3発明が、光配向膜51の光配向を行なう、液晶素子の製造に関する光照射装置である以上、光配向膜51と光照射部20A,20Bの偏光方向との精度が考慮されるべきものであることは技術常識である。
そして、参考資料3発明を発明として実施するに際して、「光配向膜51の光配向を行なう、液晶素子の製造に関する光照射装置である偏光光照射装置」である参考資料3発明と同じ技術分野である、「液晶表示板製造分野にて使用される液晶表示装置に用いられる基板上において配向膜に配向性を付与するための光配向照射装置」であって「光方向を変化させるような回転ずれは、製造する液晶表示装置の画像品質において問題となる。具体的には、一部の石英基板からの照射光の偏光方向に回転ずれが生じた場合、その部分では表示する画像がムラとして現れることとなる」との課題を解決する発明である甲5発明が公知のものである。

b そうすると、参考資料3発明が当然に有する課題である光配向膜51と光照射部20A,20Bの偏光方向との精度の課題を解決するために甲5発明の「ステージ4に基板9を設置した状態で」「偏光方向確認処理を実行」した構成を採用することを妨げる格別の理由は見当たらないところ、当該構成は、「偏光方向に基づいて、」「基板9を設置した」「ステージ」及び「可動台55」に結合した「回転部54を回転させ偏光方向が適正となる補正処理」を行う構成であって、その機械的駆動部である「ステージ4」、「可動台55」及び「回転部54」等を備えた走査手段は、本件特許発明3の「搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナー」に相当する。

c ここで、甲5発明は、照射される偏光光の偏光軸とステージに設置された基板の向きとの関係情報を、照射される偏光光の偏光方向を検知する「偏光センサー」によって得ているが、基板にアライメントマークを設けて、アライメントマークの位置情報によって、設定された方向と基板の向きとの関係情報を得ることは、配向処理を行う際の基板方向の調整において周知技術である(必要ならば、特開2000-221461号公報、特開2002-82334号公報、特開2005-249938号公報、特開2006-113180号公報参照)。

d よって、参考資料3発明の「ワークステージ」として、甲5発明の機械的駆動部である「ステージ4」、「可動台55」及び「回転部54」を備えた走査手段を適用し、あわせて、基板にアライメントマークを設けて、アライメントマークの位置情報によって、設定された方向と基板の向きとの関係情報を得るという、配向処理を行う際の基板方向調整における周知技術を付加することは、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 本件訂正発明3において奏される効果について
(ア)本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【発明の効果】
【0007】・・・
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、基板アライナーを備えているので、偏光光の偏光軸に対して基板が所定の向きに向いた状態で精度良く偏光光が照射される。このため、光配向処理の精度や品質を高く維持できる。」

(イ)しかしながら、上記イ(イ)での検討に照らして、上記本件訂正発明3が奏する効果は格別のものとはいえない。

エ 被請求人の主張
(ア)被請求人は、被請求人の意見書2で、概略次のように主張する。
甲第2号証の装置は、マスク保持部11を移動させることにより、基板WとマスクMの位置誤差が修正される物であり、基板が回転移動することを想定したものではないので、図6、図8及び図10に示されるように、照射領域と、基板の搭載位置との間の距離は、正方形形状の基板の一辺とほぼ一致します。したがって、仮に一方の基板を45度回転させた場合には、一方の基板の先端が、他方の基板と干渉することなく、一方の基板の後端が照射領域を通過することはできません。技術的にも、露光転写に先だって、都度、基板とマスクの位置誤差の修正を行う甲第2号証に記載された発明は、回路パターンの露光装置であるため、配向用の膜材に光配向を与える場合と異なり、基板の前辺を搬送方向と垂直以外の方向に調整する技術的理由は存在せず、むしろ、基板とマスクの位置誤差の修正にかかる時間をできるだけ短くするために、照射領域と基板搭載位置を基板の一辺とほぼ一致するように設計するものです。よって、甲第2号証は、基板がいずれの向きに調整された場合であっても、一方の基板と他方の基板とが接触しないスペースについて特定した上記の構成を一切開示も示唆もしていません。また、参考資料3及び甲第5号証は、二つのステージを有する構成について開示していないから、当然二つのステージの干渉についての記載はなく・・・。
(上記意見書15頁1?17行)

(イ)また、被請求人は、被請求人の上申書で、概略次のように主張する。
本件訂正特許発明3では、アライメントセンサによって、ステージに載置された基板のアライメントマークを検出し、検出したアライメントマークの位置情報に基づいて、基板の向きを調整している一方で、甲5発明では、偏光センサーを用いて、紫外線照射光源からの光の偏光方向を検出し、かかる偏光方向と関連する偏光子の回転ずれに基づいて基板を調整する点で異なります。
したがって、甲第5号証は、少なくとも本件訂正特許発明3の「アライメントマークを有し、…基板」、「前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサ」及び「前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ」との構成を開示しておりません。
(被請求人の上申書11頁3?8行)

(ウ)しかしながら、参考資料3発明に甲第2号証に記載された発明の構成を適用しつつ、参考資料3発明が当然に有する課題を解決するために、甲5発明の構成を合わせて適用した際に、甲5発明が「回転部54を回転させ偏光方向が適正となる補正処理も行」うものであることを考慮して、「回転部54を回転させ偏光方向が適正となる補正処理も行」った際に支障が生じないようにし、あわせて、配向処理を行う際の基板方向調整における周知技術を付加することは、発明を実施するに際して、当業者が当然に考慮すべき事項である。
また、その際にどの程度考慮すべきかは、適宜定めるべき事項であって、本件訂正発明3も具体的な角度を定めていないことに照らして、45°に係る主張は請求項の記載に基づくものではない。
したがって、上記(ア)及び(イ)の被請求人の主張は、採用することはできない。

オ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明3は、参考資料3発明、甲第2号証に記載された発明、甲5発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件訂正発明4について
ア 対比
本件訂正発明4と参考資料3発明とを対比する。
(ア)上記第3,1(6)及び同2(6)での検討に照らして、本件訂正発明4は、本件訂正発明3から、「第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該」及び「第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該」との発明特定事項を除き、「かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、」及び「前記ステージ移動機構は、前記第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており、このガイド部材は、前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用された、」との発明特定事項を付加したものであるといえる。

(イ)そうすると、本件訂正発明4と参考資料3発明とを対比するに、上記(3)アでの検討を踏まえると、本件訂正発明4と参考資料3発明は、上記(1)ア(カ)aの相違点1、及び、下記の点で相違し、その余の点で一致すると認められる。

(ウ)本件訂正発明4の「ステージ移動機構」は、「第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており、このガイド部材は、前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用され」るのに対して、参考資料3発明のステージ移動機構は、このようなものと特定されない点(以下、「相違点5」という。)。

イ 判断
(ア)相違点1については、上記(1)イ(ア)で検討したとおりである。

(イ)相違点5について検討する。
参考資料3発明における「ワークステージを直線移動させるステージ移動機構」がガイド部材を備えるか不明であり、甲第2号証に記載された発明の「基板搬送機構14は、基板Wを保持及び搬送する」構成においてガイド部材を備えるか不明である。
しかしながら、ステージ移動機構が、ステージの移動方向に沿ってガイド部材を備える技術は、周知技術である(甲第5号証 「LMレール51a,51b」、特開2008-191302号公報 特に段落【0017】、図1,6-9 参照)から、参考資料3発明に、当該周知技術を適用して、本件訂正発明4に係る上記相違点5の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。

したがって、本件訂正発明4は、参考資料3発明、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

ウ 本件訂正発明4において奏される効果について
(ア)本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【発明の効果】
【0007】・・・
また、請求項4記載の発明によれば、上記効果に加え、ガイド部材が第一第二のステージの移動に兼用されるので、ステージ移動機構の構成がシンプルになり、また装置のコストも安価にできる。」

(イ)しかしながら、上記イ(イ)での検討に照らして、上記本件訂正発明4が奏する効果は格別のものとはいえない。

エ 被請求人の主張
(ア)被請求人は、被請求人の意見書2で、概略次のように主張する。
甲第2号証に記載された発明は、露光領域を通過した基板が、Y方向に移動した後に、後退するのであって、前進到達位置におてステージが後退に転じるとの構成を備えるものではありません。なお、甲第2号証の図8及び図10に示される実施形態は、本件特許発明4とは、基板の移動経路が全く異なるから、本件特許発明4とは一切関わりがありません。例えば、図8(b)において、第2の基板は、後退して照射領域にを通過しているのであって、前進して照射領域を通過していません。同様に、図10(C)においても第2の基板は、後退して照射領域を通過しているのであって、前進して照射領域を通過していません。したがって、甲第2号証に記載された発明は、前進して第1及び第2の基板が、照射領域を通過した後に前進到達位置において後退に転じる、との構成を開示しておりません。
(上記意見書17頁最下行?18頁10行)

(イ)しかしながら、往復移動とY方向移動を分けて抽出することについては、(1)イ(ア)で検討したとおりであって、上記(ア)の被請求人の主張は、採用することはできない。

オ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明4は、参考資料3発明、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件訂正発明5について
上記第3,1(7)及び(8)並びに同2(7)及び(8)での検討に照らして、本件訂正発明5は、請求項1ないし4を引用する形式のものであって、物の発明である請求項1を方法の発明として記載したものであった請求項5を、独立形式の請求項とする訂正をした上で、物の発明である本件訂正発明3の構成の一部を方法の発明の構成として付加したものであって、実質的には、物の発明である本件訂正発明3を方法の発明として記載したものであるといえる。
したがって、上記(3)での検討に照らして、本件訂正発明3が、参考資料3発明、甲第2号証に記載された発明、甲5発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本件訂正発明3と同様の理由により、本件訂正発明5は、参考資料3発明、甲第2号証に記載された発明、甲5発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 結論
以上のとおり、本件訂正発明1、2及び4は、参考資料3発明、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件訂正発明3及び5は、参考資料3発明、甲第2号証に記載された発明、甲5発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、上記各発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、請求人が主張する無効理由(上記第5,1)及び無効理由通知1で通知した無効理由(上記第5,2)について検討するまでもなく、無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
光配向用偏光光照射装置及び光配向用偏光光照射方法
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、光配向を行う際に行われる偏光光の照射技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルを始めとする液晶表示素子の配向膜や、視野角補償フィルムの配向層を得る際、光照射により配向を行なう光配向と呼ばれる技術が採用されるようになってきた。以下、光照射により配向を生じさせた膜や層を総称して光配向膜と呼ぶ。尚、「配向」ないし「配向処理」とは、対象物の何らかの性質について方向性を与えることである。
光配向を行う場合、光配向膜用の膜(以下、膜材)に対して偏光光を照射することにより行われる。膜材は、例えばポリイミドのような樹脂製であり、所望の方向(配向させるべき方向)に偏光させた偏光光が膜材に照射される。所定の波長の偏光光の照射により、膜材の分子構造(例えば側鎖)が偏光光の向きに揃った状態となり、光配向膜が得られる。
【0003】
光配向膜は、それが使用される液晶パネルの大型化と共に大型化している。そのため、要求される偏光光の照射領域の幅は、1500mmからそれ以上と幅広化してきている。このような幅の広い照射領域を備える偏光光照射装置として、例えば特許文献1に開示された装置がある。この装置は、照射領域の幅に相当する長さの棒状の光源と、この光源からの光を偏光するワイヤーグリッド偏光素子とを備え、光源の長手方向に対して直交する方向に搬送される膜材に対して偏光光を照射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4815995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような光配向用の偏光光照射装置において、偏光光照射の対象物(ワーク)は、膜材が連続して連なった長尺なもの(以下、長尺ワーク)である場合と、膜材が液晶基板上に既に設けられていて、膜材付きの液晶基板がワークである場合とがある。
特許文献1では、長尺ワークがロール状に巻かれていて、ロールから長尺ワークを引き出して偏光光を照射する装置が開示されている。ロールツーロールの搬送の際に偏光光が照射された長尺ワークは、所定の位置で切断された後、液晶基板に貼り付けられる。一方、膜材付きの液晶基板に対して偏光光を照射する偏光光照射装置については、効率良く(短いタクトタイムで)プロセスが可能な装置構成を開示した先行文献は見あたらない。
本願発明は、このような状況に鑑みて為されたものであり、膜付き液晶基板のような膜材付きの板状部材に対して光配向プロセスを行うことが可能な装置であって、高い生産性を実現できる装置及び方法を提供することを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された
第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されているという構成及び前記第一第二ステージの各々は、基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含むとの構成を有する。また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている光配向用偏光光照射装置において、前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に偏光光を直接照射して、往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにするものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、前記ステージに載置された前記基板上の前記アラインメントマークを検出するアラインメントセンサとを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている光配向用偏光光照射装置において、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられていて、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、前記基板アライナーにより調整した後の第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、前記基板アライナーにより調整した後の第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、前記ステージに載置された前記基板上の前記アラインメントマークを検出するアラインメントセンサとを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている光配向用偏光光照射装置において、前記ステージ移動機構は、前記第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており、このガイド部材は、前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用されるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、前記ステージに載置された前記基板上の前記アラインメントマークを検出するアラインメントセンサとを備えており、ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている光配向用偏光光照射装置を使用して基板に光配向用の偏光光を照射する光配向用偏光
光照射方法であって、
前記第一の基板搭載位置において前記第一のステージ上に基板を搭載し、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第一の基板搭載調整ステップと、
前記第二の基板搭載位置において前記第二のステージ上に基板を搭載し、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第二の基板搭載調整ステップと、
基板が搭載された前記第一のステージを、前記第二の基板回収位置への前記第二のステージの復路移動に続くように前記第一の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記一方の側に設定された第一の基板回収位置まで前記第一のステージを戻す第一の移動ステップと、
基板が搭載された前記第二のステージを、前記第一の基板回収位置への前記第一のステージの復路移動に続くように前記第二の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記他方の側に設定された第二の基板回収位置まで前記第二のステージを戻す第二の移動ステップと、
第一の基板回収位置において前記第一のステージから基板を回収する第一の基板回収ステップと、
第二の基板回収位置において前記第二のステージから基板を回収する第二の基板回収ステップと
を有しており、
第一の基板回収ステップ及び第一の基板搭載ステップが行われる時間帯は、第二の移動ステップが行われる時間帯と全部又は一部が重なっており、
第二の基板回収ステップ及び第二の基板搭載ステップが行われる時間帯は、第一の移動ステップが行われる時間帯と全部又は一部が重なっているという構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
以下に説明する通り、本願の請求項1又は5記載の発明によれば、照射領域を二つのステージが交互に通過することで各ステージ上の基板に対して偏光光が照射されるようにすることができ、タクトタイムの削減によって生産性の高い光配向プロセスを実現することができる。この際、第一の基板搭載位置と照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過できる分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置と照射領域との間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過できる分以上のスペースが確保されているので、ステージ同士が干渉することなく均一性の高い光配向処理が行える。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、第一第二の各ステージ上の基板が、往路と復路の双方で光照射されるので、エネルギーの無駄無く効率良く光配向処理ができ、移動速度を速くすることでより生産性を高めることができる。
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、基板アライナーを備えているので、偏光光の偏光軸に対して基板が所定の向きに向いた状態で精度良く偏光光が照射される。このため、光配向処理の精度や品質を高く維持できる。
また、請求項4記載の発明によれば、上記効果に加え、ガイド部材が第一第二のステージの移動に兼用されるので、ステージ移動機構の構成がシンプルになり、また装置のコストも安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願発明の実施形態に係る光配向用偏光光照射装置の斜視概略図である。
【図2】図1に示す偏光光照射装置の正面概略図である。
【図3】図1に示すステージ移動機構3の平面概略図である。
【図4】ステージ21,22における基板Sの搭載や回収のための機構を示した斜視概略図である。
【図5】実施形態の装置が備える基板アライナー6の概略について示した斜視図である。
【図6】制御ユニット4に実装されたシーケンスプログラムを説明するための図であり、装置の動作を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の実施形態に係る光配向用偏光光照射装置の斜視概略図である。図1に示す偏光光照射装置は、膜材付き液晶基板のような基板Sをワークとして光配向処理する装置となっている。
具体的には、図1の装置は、設定された照射領域Rに偏光光を照射する照射ユニット1と、基板Sが載置されるステージ21,22と、照射領域Rにステージ21,22を移動させることでステージ21,22上の液晶基板Sに偏光光が照射されるようにするステージ移動機構3とを備えている。
【0010】
図1に示すように、この実施形態では、二つの照射ユニット1が併設されている。併設の方向は、ステージ21,22の移動方向である。各照射ユニット1は同様の構成のものであり、ほぼ矩形のパターンR1で偏光光を照射するものとなっている。従って、この実施形態では、二つのほぼ矩形の照射パターンR1から成る(二つの照射パターンR1を包絡した)ほぼ矩形の領域が照射領域Rとして設定されている。尚、二つの照射パターンR1は、一部が重なっていても良いし、重ならなくても良い。また、図1に示すように、照射領域Rは水平な面内の領域である。
【0011】
ステージ移動機構3は、上記照射領域Rを通過するようにしてステージ21,22を移動させる機構である。この実施形態では、ステージ21,22は水平な姿勢で配置され、移動方向は水平方向である。以下、説明の都合上、ステージ移動機構3による移動方向を長さ方向と呼び、移動方向に垂直な水平方向を幅方向と呼ぶ。
【0012】
図2は、図1に示す偏光光照射装置の正面概略図である。図2に示すように、照射ユニット1は、光源11と、光源11の背後に設けられたミラー12と、光源11やミラー12を内部に収容したランプハウス13と、偏光素子14等から構成されている。
光源11には、棒状のランプが使用されている。本実施形態では、紫外域の光によって光配向を行うので、高圧水銀ランプや水銀に他の金属を加えたメタルハライドランプ等が使用される。紫外域の必要な波長の光を放射するLEDを複数並べて長い照射パターンを得るようにしても良い。ミラー12は、効率良く偏光光照射を行うためのもので、断面が楕円又は放物線の一部を成す形状の樋状ミラーが使用される。長尺な左右一対のミラーをスリットを形成しながら配置して、ほぼ樋状のミラーを形成する。
【0013】
偏光素子14は、光源11から放射される光を光配向に必要な偏光光にするためのものである。偏光素子14としては、透明基板上に縞状の誘電体(または導電性や半導体)材料より成る微細な格子を設けたワイヤーグリッド偏光素子を使用することができる。ランプハウス13は、光照射口を有しており、偏光素子14は、光源11と光照射口との間の位置に配置されている。尚、一つの偏光素子14は矩形の小さいものである場合が多く、通常、偏光素子14を複数幅方向(光源11の長さ方向)に並べて照射領域Rに偏光光を照射する構成が採用される。また、偏光素子14は、ランプハウス13とは別のユニット(偏光素子ユニット)としてランプハウス13に対して装着される構造が採用されることもある。この他、波長選択等、照射する偏光光の特性を調整するためのフィルタが配置されることもある。
【0014】
一方、図1に示すように、この実施形態の装置は、二つのステージ21,22を備えている。以下、二つのステージ21,22を第一のステージ21、第二のステージ22とする。これらステージ21,22を移動させるステージ移動機構3について、図1、図2及び図3を使用してさらに詳しく説明する。図3は、図1に示すステージ移動機構3の平面概略図である。また、図2には、図1に示すステージ移動機構3がその制御系とともに示されている。
【0015】
図1?図3に示すように、ステージ移動機構3は、照射領域Rを貫いて延びるガイド部材31と、ガイド部材31に沿って第一第二のステージ21,22を移動させる駆動源321,322とを含んでいる。図1及び図3に示すように、照射領域Rを挟んでガイド部材31は二つ設けられている。ガイド部材31は、具体的にはリニアガイドであり、互いに平行に延びている。二つのステージ21,22は、二つのガイド部材31に沿って移動がガイドされる。即ち、二つのガイド部材31は、第一のステージ21のガイドと第二のステージ22のガイドに兼用されるものとなっている。
【0016】
第一のステージ21の下面には、一対のガイドブロック211が固定されている。ガイドブロック211の固定位置は、両側のガイド部材31の位置に対応している。ガイドブロック211内にはベアリングが設けられており、両側のガイド部材31がガイドブロック211を貫通した状態で第一のステージ21が配置されることで、第一のステージ21はガイド部材31によってガイドされるようになっている。第二のステージ22も同様の構造であり、下面に固定された一対のガイドブロック221にガイド部材31が貫通しており、これにより移動がガイドされる。
【0017】
各ステージ21,22の移動は、駆動源321,322がボールねじ331,332を回すことで行われる。即ち、図1及び図3に示すように、ステージ移動機構3は、第一のステージ21を移動させる第一のボールねじ331と、第二のステージ22を移動させる第二のボールねじ332とを備えている。
第一のボールねじ331の一端は第一の駆動源321に連結され、他端は軸受け333で支えられている。同様に、第二のボールねじ332の一端は第二の駆動源322に連結され、他端は軸受け334で支えられている。第一第二のボールねじ331,332は、一対のガイド部材31が延びる方向に対して精度良く平行に延びるように配置されている。
【0018】
第一のステージ21の下面のほぼ中央には、第一のボールねじ331に螺合された(ねじが噛み合っている)被駆動ブロック212が固定されている。第一の駆動源321は、ACサーボモータのようなモータであり、第一の駆動源321が第一のボールねじ331を回転させると、一対のガイド部材31にガイドされながら第一のステージ21が直線移動する。同様に、第二のステージ22の下面のほぼ中央には、第二のボールねじ332に螺合された被駆動ブロック222が固定され、第二の駆動源322が第二のボールねじ332を回転させると、一対のガイド部材31にガイドされながら第二のステージ22が直線移動する。
【0019】
また、実施形態の偏光光照射装置は、装置全体を制御する制御ユニット4を備えている。制御ユニット4には、ステージ移動機構3などの各部の動作を制御するシーケンスプログラムを記憶した記憶部41や、シーケンスプログラムを実行する演算処理部42等を有している。制御ユニット4からの制御信号は、二つの駆動源321,322を含む装置の各部に送られるようになっている。
【0020】
一方、実施形態の偏光光照射装置は、ステージ21,22上への基板Sの搭載やステージ21,22からの基板Sの回収のための機構も備えている。この点について、図4を使用して説明する。図4は、ステージ21,22における基板Sの搭載や回収のための機構を示した斜視概略図である。
偏光光照射のためには基板Sをステージ21,22上に載置する必要があり、また偏光光照射が終了した基板Sについてはステージ21,22から回収する必要がある。これらの動作は、手作業で行われる場合もあるが、量産ラインでは、通常ロボットで行われる。この際、ロボットのハンドがステージ21,22に干渉しないようにする必要がある。このための構成として、実施形態のステージ21,22は、昇降ピン5を内蔵している。
【0021】
即ち、図4に示すように、ステージ21,22には、ピン用孔50が設けられている。ピン用孔50は、上下に延びる孔であり、ステージ21,22表面に達している。ピン用孔50はステージ21,22の中央に対して均等な位置に3?4個程度設けられており、各ピン用孔50内に昇降ピン5が配置されている。各昇降ピン5は、不図示の昇降機構により同期して昇降可能となっている。ステージ21,22上に基板Sを載置する際には、各昇降ピン5を上限位置に上昇させる。この状態で、基板Sを保持したロボットが、ステージ21,22の上方に基板Sを移動させ、そのまま下降させて基板Sを各ピン上に載せる。その後、ロボットのハンドを退避させた後、各昇降ピン5を一体に下降させて基板Sをステージ21,22上に載置する。
【0022】
偏光光照射後に基板Sを回収する際は、これとは逆の動作であり、各昇降ピン5を一体に上昇させて基板Sを持ち上げ、持ち上げられた基板Sの下側にロボットのハンドを進入させて基板Sを回収するようにする。尚、ロボットの稼働範囲まで基板Sを搬送する機構としては、AGV(Auto Guided Vehicle)のようなロット搬送機構、又はエアコンベアのような枚葉搬送機構が使用される。
【0023】
実施形態の装置は、ステージ移動機構3により第一第二のステージ21,22を移動させ、交互に照射領域Rを通過させることで各ステージ21,22上の基板Sに交互に偏光光を照射する。この際、基板S上の各点における偏光光の積算露光量が不均一にならないように工夫している。以下、この点について図3を参照して説明する。
実施形態の装置において、第一のステージ21への基板Sの搭載と第一のステージ21からの基板Sの回収は同じ位置で行われる。以下、この位置を第一の基板搭載回収位置という。また、第二のステージ22への基板Sの搭載と第二のステージ22からの基板Sの回収も同じ位置で行われる。以下、この位置を第二の基板搭載回収位置という。第一の基板搭載回収位置は、照射領域Rの一方の側(例えば図3に示すように左側)に設定され、第二の基板搭載回収位置は、照射領域Rの他方の側に(例えば図3に示すように右側)に設定される。
【0024】
ステージ移動機構3は、第一の基板搭載位置で基板Sが搭載された第一のステージ21を照射領域Rまで移動させて通過させ、その後、引き戻す。そして、第一の基板搭載位置で基板Sが第一のステージ21から回収される。また、ステージ移動機構3は、第二の基板搭載回収位置で基板Sが搭載された第二のステージ22を照射領域Rまで移動させて通過させ、その後、引き戻す。そして、第二の基板搭載回収で第二のステージ22から基板Sが回収される。尚、説明の都合上、第一のステージ21が前進して後退に転じる際の位置を第一の前進到達位置と呼び、第二のステージ22が前進して後退に転じる際の位置を第二の前進到達位置と呼ぶ。また、図2及び図3において、第一の前進到達位置に位置した第一のステージを符号21’で示し、第二の前進到達位置に位置した第二のステージを符号22’で示す。
【0025】
このような実施形態の装置において、各基板搭載回収位置は、各ステージ21,22の大きさ、照射領域Rの位置や大きさ等に応じて最適化されている。即ち、実施形態の装置では、第一の基板搭載回収位置に位置した第一のステージ21と照射領域Rの間のスペース(以下、第一のスペース)として、少なくとも第二のステージ22上の基板Sの長さ(ステージ21,22の移動方向の長さ)以上が確保されている。即ち、第一のスペースは、第二の前進到達位置に第二のステージ22’が到達した際にも第一のステージ21と干渉しないだけのスペースとなっている。好ましくは、第一のスペースの長さ(図2にL1で示す)は、第二のステージ22の長さ以上とされる。
【0026】
また、第二の基板搭載回収位置に位置した第二のステージ22と照射領域Rの間のスペース(以下、第二のスペース)として、少なくとも第一のステージ21上の基板Sの長さ以上が確保されている。即ち、第二のスペースは、第一の前進到達位置に第一のステージ21’が到達した際にも第二のステージ22と干渉しないだけのスペースとなっている。好ましくは、第二のスペースの長さ(図2にL2で示す)は、第一のステージ21の長さ以上とされる。
この実施形態では、第一のステージ21と第二のステージ22は同じサイズWであり、従ってL1=L2>Wである。より具体的な一例を示すと、例えば基板Sが1500×1800mm程度のサイズとすると、各ステージ21,22の長さWは1550×1850mm程度とされ、L1=L2は2600mm程度とされる。このようなスペースが確保されるよう、ステージ移動機構3におけるボールねじ331,332等の長さが選定され、各ステージ21,22の移動ストロークが設定されている。
【0027】
また、実施形態の装置は、光配向のための偏光光照射が正しく行われるように基板Sの位置や向きを調節する基板アライナー6を備えている。基板アライナー6について、図5を使用して説明する。図5は、実施形態の装置が備える基板アライナー6の概略について示した斜視図である。図5には、一例として第一のステージ21に設けられた基板アライナー6が示されているが、第二のステージ22についても同様である。
図5に示すように、第一のステージ21は、固定ベース20Aと、固定ベース20A上の可動ベース20B等から構成されている。前述した被駆動ブロック212やガイドブロック211は、固定ベース20Aの下面に固定された部材となっている。
【0028】
可動ベース20Bは、固定ベース20A上においてXYθの方向に移動可能に設けられている。即ち、固定ベース20A上にはXYθ移動機構62が設けられており、XYθ移動機構62は可動ベース20BをXYθ方向に移動させて可動ベース20Bの位置や姿勢を微調節するものとなっている。尚、この際のXY方向とは水平な面内の直交方向であり、例えばX方向が長さ方向(移動方向)、Y方向が幅方向とされる。θは、XY方向に対して垂直な軸の回りの円周方向であり、この例では鉛直な軸の回りの円周方向である。このようなXYθ移動機構62は、各社から種々のタイプのものが市販されており、適宜のものを選択して組み込むことができるので、詳細な説明及び図示は省略する。
なお、XYθ移動機構62については、XY方向のうちのいずれか一方向についてステージ移動機構3の移動と兼用し、Xθ移動機構またはYθ移動機構としてもよい。
【0029】
一方、ステージ21,22に載置される基板Sには、アライメントマークS1が施されている。基板アライナー6は、アライメントマークS1を撮像するアライメントセンサ61と、上記XYθ移動機構62と、アライメントセンサ61からの出力に従ってXYθ移動機構62を制御するアライメント用制御部63とから主に構成されている。
アライメントマークS1は、通常、基板S上の所定位置に2カ所設けられている。アライメントセンサ61は、アライメントマークS1の位置及びアライメントすべき基準位置や基準方向に従って所定の位置でアライメントマークS1の撮像をするよう二つ設けられている。
【0030】
一例を示すと、図5に示すように、アライメントマークS1は、方形の基板Sの幅方向に沿った二つの角部に設けられる。アライメントセンサ61は、第一のステージ21に対して基板Sの搭載動作を行う位置(以下、搭載位置)の上方に配置されている。二つのアライメントセンサ61の位置は、基板S上のアライメントマークS1の離間距離に一致し、二つのアライメントセンサ61を結ぶ線は、ステージ移動機構3における幅方向に一致している。
上述したように第一のステージ21に基板Sが搭載されると、各アライメントマークS1を各アライメントセンサ61が撮像する状態となる。各アライメントセンサ61の撮像エリア内には基準位置が設定されており、この基準位置には、アライメントマークS1の中心が位置すべき位置である。
【0031】
アライメント用制御部63は、各アライメントセンサ61からの出力データ(イメージデータ)を処理し、XYθ移動機構62を制御してアライメントを行う。具体的には、2個のアライメントセンサ61が検出したそれぞれのアライメントマークS1の位置情報と、あらかじめアライメント用制御部63に入力されている2個のアライメントマークS1の距離情報とに基づき、アライメント用制御部63は、アライメントセンサ61が撮像するアライメントマークS1の重心が基準位置に位置するようステージ22のXYθ方向の移動距離のデータを演算し、XYθ移動機構62を制御して可動ベース20BをXYθ方向に移動させる。これにより、アライメントが完了したことになる。
【0032】
アライメントが完了すると、二つのアライメントマークS1を結んだ線(搭載された基板Sの幅方向)がステージ移動機構3の幅方向に精度良く位置した状態となる。幅方向における基板Sの位置も、所定の位置となる。所定位置とは、例えば、二つのガイド部材31のちょうど真ん中の位置である。
XYθ移動機構62は、可動ベース20B上に基板Sが載置されている間、可動ベース20Bの位置及び姿勢を固定するようになっている。従って、基板Sは、幅方向がステージ移動機構3の幅方向に精度良く一致し、幅方向において所定位置に位置した状態で移動方向に直線移動して搬送されることになる。
【0033】
尚、アライメントセンサ61がアライメントマークS1を撮像する可動ベース20B上の位置に基板Sをラフに位置決めして配置する必要があるが、この配置は、ロボットで基板Sの搭載を行う場合、ロボットへのティーチングで足りる。マニュアル操作で行う場合、可動ベース20B上に受け板のような部材を設け、そこに基板Sを当てて配置することでラフな位置決めとすることもある。
【0034】
また、実施形態の装置は、二つのステージ21,22の位置や状態を確認するための幾つかのセンサを備えている。この点について、図2を使用して説明する。
まず、各ステージ21,22内には、基板Sの載置を検出するセンサ(以下、基板センサ)71が設けられている。また、ステージ移動機構3には、第一のステージ21が第一の基板搭載回収位置に位置したのを検出するセンサ(以下、第一のロード位置センサ)72と、第一のステージ21が前進到達位置に位置したのを検出するセンサ(以下、第一の到達位置センサ)73と、第二のステージ22が第二の基板搭載回収位置に位置したのを検出するセンサ(以下、第二のロード位置センサ)74と、第二のステージ22が前進到達位置に位置したのを検出するセンサ(以下、第二の到達位置センサ)75とが配置されている。これらセンサ71?75の出力は、制御ユニット4に送られる。各センサ71?75は、近接センサ、リミットスイッチのような機械式センサ、又はフォトセンサ等から適宜選択して用いることができる。
【0035】
次に、制御ユニット4に実装されたシーケンスプログラムについて図6を参照しながら説明する。図6は、制御ユニット4に実装されたシーケンスプログラムを説明するための図であり、装置の動作を概略的に示した図ともなっている。以下の説明は、光配向用偏光光照射方法の実施形態の説明でもある。
装置の稼働開始の初期状態では、図6(1)に示すように、第一のステージ21は第一の基板搭載回収位置にあり、第二のステージ22は第二の基板搭載回収位置にある。この状態で、図6中不図示のロボットが基板Sをまず第一のステージ21に載置する。第一のステージ21内の基板センサ71が基板Sの載置を検出してこの信号が制御ユニット4に送られると、シーケンスプログラムは、第一のステージ21上の基板S用の基板アライナー6を動作させる。この結果、可動ベース20BがXYθ方向に移動して基板Sの位置及び姿勢が所定のものとなる。
【0036】
次に、シーケンスプログラムは、ステージ移動機構3に制御信号を送り、第一のステージ21が所定のストローク前進するよう第一の駆動源321を駆動させる。所定のストロークとは、図6(2)に示すように、第一のステージ21が照射領域Rを通過して第一の前進到達位置に達するストロークである。第一の前進到達位置は、第一のステージ21の後端は照射領域Rの端に一致する位置か、それを少し越えた位置である。
【0037】
第一のステージ21が第一の前進到達位置に達したのが第一の到達位置センサ73で確認されると、シーケンスプログラムは、第一のステージ21を反転させ、同じストロークだけ後退させるよう第一の駆動源321に制御信号を送る。これにより、図6(3)に示すように、第一のステージ21は第一の基板搭載回収位置に戻る。この間、第二の基板搭載回収位置では、第二のステージ22への基板Sの搭載動作が行われる。即ち、ロボットはシーケンスプログラムからの制御信号により所定のタイムラグをおいて基板Sを第二のステージ22に載置する。第二のステージ22では、同様に基板Sの載置を基板センサ71が確認した後、シーケンスプログラムが第二のステージ22上の基板S用の基板アライナー6を動作させ、アライメントを行わせる。図6(3)に示すように第一のステージ21が第一の基板搭載回収位置に戻った際には、第二のステージ22でのアライメントは終了している。
【0038】
この状態で、シーケンスプログラムは、第二の駆動源322に制御信号を送り、第二のステージ22が所定のストローク前進するよう第二の駆動源322を駆動させる。所定のストロークとは、図6(4)に示すように、第二のステージ22が照射領域Rを通過して第二の前進到達位置に達するストロークである。第二の前進到達位置は、第二のステージ22の後端は照射領域Rの端に一致する位置か、それを少し越えた位置である。
【0039】
第二のステージ22が第二の前進到達位置に達したのを第二の到達位置センサ75で確認されると、シーケンスプログラムは、第二のステージ22を反転させ、同じストロークだけ後退させるよう第二の駆動源322に制御信号を送る。これにより、図6(5)に示すように、第二のステージ22は第二の基板搭載回収位置に戻る。この間、第一の基板搭載回収位置では、第一のステージ21が第一の基板搭載位置に位置したのを第一のロード位置センサ72が確認した後、第一のステージ21からの基板Sの回収と次の基板Sの第一のステージ21への搭載が行われる。即ち、ロボットが第一のステージ21から基板Sを取り去り、次の基板Sを第一のステージ21に搭載する。
【0040】
そして、図6(5)に示すように第二のステージ22が第二の基板搭載位置に戻った際には、次の基板Sの第一のステージ21への搭載動作が終了し、且つその基板Sについてのアライメントが終了した状態となっている。シーケンスプログラムは、図6(5)に示す状態において、再び第一の駆動源321に制御信号を送り、第一のステージ21を第一の前進到達位置まで前進させ、さらに第一の基板搭載回収位置まで戻すよう第一の駆動源321を駆動する。この間、第二の基板搭載位置では、第二のステージ22が第二の基板搭載回収位置に戻ったのを第二のロード位置センサ74で確認した後、第二のステージ22への基板Sの回収と次の基板Sの第二のステージ22への搭載、第二のステージ22のアライメントが行われる。以後の動作は同様であり、装置がこのような動作を繰り返して二つのステージ21,22上で交互に光配向が行われるようシーケンスプログラムがプログラミングされている。尚、基板SはAGVやコンベアのような搬送機構によりロボットまで搬送され、光配向が行われた後、搬送機構により次のプロセスのための装置の位置まで搬送される。
【0041】
上記のような構成及び動作に係る実施形態の光配向用偏光光照射装置又は方法によれば、偏光光が照射される一つの照射領域Rを二つのステージ21,22が交互に通過することで各ステージ21,22上の基板Sに対して偏光光が照射されるので、一方のステージ21,22上の基板Sへの偏光光の照射の最中に他方のステージ21,22において基板Sの回収動作と次の基板Sの搭載動作を行うことができる。このため、タクトタイムを大幅に削減することができ、より生産性の高い光配向プロセスが実現される。
【0042】
この際、第一の基板搭載回収位置と照射領域Rの間には、第二のステージ22上の基板Sの長さ分以上のスペースL1が確保され、また第二の基板搭載回収位置と照射領域Rとの間には、第一のステージ21上の基板Sの長さ分以上のスペースL2が確保されているので、ステージ21,22同士が干渉することなく各基板Sが照射領域Rを通過することができる。
仮に、各基板搭載回収位置と照射領域Rとの間のスペースが各基板Sの長さ未満であると、ステージ21,22同士を干渉させずに基板Sが照射領域Rを通過させることができなくなる。この場合は、基板S上の長さ方向(移動方向)後ろ側の領域については偏光光の露光量が他の領域に比べて減ることになり、光配向処理が不均一となる。
【0043】
タクトタイムについて多少厳密な議論をすると、一方のステージ21,22からの基板Sの回収に要する時間をT_(L1)、一方のステージ21,22への基板Sの搭載に要する時間をT_(L2)、搭載された基板Sのアライメントに要する時間をT_(L3)とし、他方のステージ21,22の基板搭載回収位置から前進到達位置までの移動に要する時間をT_(E1)、他方の前進到達位置から基板搭載回収位置に戻るまでの時間をT_(E2)とした場合、T_(L1)+T_(L2)+T_(L3)≦T_(E1)+T_(E2)ということになる。
但し、一方のステージ21,22が復路移動(前進到達位置から基板搭載回収位置に戻る移動)に続くようにして他のステージ21,22の往路移動(基板搭載位置から前進到達位置までの移動)を行うようにしても良く、この場合には、T_(L1)+T_(L2)+T_(L3)≦T_(E1)ということになる。このようにすると、さらにタクトタイムは短くできる。
【0044】
上記の例は、一方のステージ21,22についての基板Sの回収及び搭載が行われる時間帯の全部が、他方のステージ21,22の移動が行われている時間帯に重なっていたが、一部が重なっていても良い。この場合、一方、ステージ21,22において基板Sの搭載が完了していても他のステージ21,22の移動が完了していないため、待機する時間が発生することがある。待機時間があるとその分だけタクトタイムが長くなるが、それでもステージが1つのみしかない場合に比べるとタクトタイムは短くでき、生産性は向上する。
【0045】
尚、上記実施形態では、各ステージ21,22は、各前進到達位置に達する際と各前進位置から基板搭載回収位置まで戻る際に偏光光が照射され、両方の露光量が積算露光量となる。但し、これは必須要件ではなく、例えば戻る際にはシャッタで光を遮蔽するか又は光源11を消灯し、偏光光が照射されない状態としても良い。とはいえ、シャッタで遮蔽してしまうと無駄に光源11を点灯させることになるし、光源11を点灯させたり消灯させたりすると、点灯状態が安定するまでの不安定な時間帯が長くなる。また、往路又は復路の一方のみの偏光光照射とすると、必要な積算露光量を確保するためにステージ21,22の移動速度を遅くせざるを得なくなる問題がある。往路と復路とで偏光光を照射すると、このような問題はなく、移動速度を速くして生産性をより高めることができる。
【0046】
また、実施形態の装置では、各ステージ21,22に搭載された基板Sのアライメントが行われた後、照射領域Rの通過動作が行われるので、照射される偏光光の偏光軸の向きが所望の向きに精度良く一致する。このため、光配向処理の品質がより高くなる。
照射領域Rに照射される偏光光の偏光軸の向きは、偏光素子14の姿勢により規定される。前述したワイヤーグリッド偏光素子の場合、ワイヤーグリッド(縞状の格子)が延びる方向に垂直な方向に電界成分を持つ偏光光が多く照射されることになり、この方向に膜材は配向される。実施形態の装置では、例えば図1に示すステージ移動機構3の幅方向(照射ユニット1内の光源11の長さ方向)に偏光軸が向くよう偏光素子14が配置される。この場合、ステージ21,22上の基板Sの幅方向もステージ移動機構3の幅方向に精度良く一致していれば、基板S上の膜材も幅方向に精度良く光配向されることになる。各基板アライナー6は、このように光配向の方向を所望の方向に精度良く一致させる意義を有する。
【0047】
尚、光配向の方向精度は、主としてθ方向のアライメントであるが、幅方向のアライメントは、照射領域Rから基板Sが一部はみ出して搬送されることがないようにする意義を有する。照射領域Rは、その領域内では偏光光の照度が十分均一な領域として設定されるので、その領域をはみ出すと、はみ出した部分で偏光光の照度が低下して露光量が不足する。従って、その部分では光配向が不十分となる。本実施形態では、幅方向のアライメントも行われるので、このような問題はない。
【0048】
また、実施形態の装置では、一対のガイド部材31が第一第二のステージ21,22の移動に兼用されるので、ステージ移動機構3の構成がシンプルになり、また装置のコストも安価にできる。但し、第一第二の各ステージ21,22について、それぞれ別のガイド部材でガイドする構成としても良い。
また、ステージ移動機構3は、ボールねじを用いるものではなく、エア浮上して磁力で移動するようなリニアモータステージを使用してもよい。なお、リニアモータステージを使用する場合はガイド機構を不要とすることも可能である。
【0049】
上記実施形態において、第一のステージ21についての基板Sの搭載位置と回収位置は照射領域Rの一方の側に設定され、第二のステージ22についての基板Sの搭載位置と回収位置は照射領域Rの他方の側に設定されている必要があるが、一方の側において搭載位置と回収位置とは同じ位置である必要はない。他方の側についても同様である。例えば一方の側において、基板搭載位置からみて照射領域Rに近い位置に基板回収位置が設定されていても良い。この場合、光配向された基板Sが基板回収位置でステージ21,22から取り去られた後、当該ステージ21,22がさらに後退して基板搭載位置に達し、そこで次の基板Sが搭載されることになる。この場合、基板回収位置については、前述したスペースL1,L2分が確保されていなくても問題がない場合もある。
【0050】
また、一つの照射領域Rに対して二つのステージ21,22が交互に通過する必要があるが、照射ユニット1は上記のように二つである必要はなく、一つのみの照射ユニット1が一つの照射領域Rに偏光光を照射する構成でも良く、三つ以上の照射ユニット1が一つの照射領域Rに偏光光を照射する構成でも良い。
尚、本願発明において、「ステージ」の用語は通常より広く解釈される必要がある。即ち、真空吸着のような吸着孔を有する複数のピンの上に基板Sを載置してこれら複数のピン上に基板を吸着し、複数のピンを一体に移動させることで基板Sが照射領域を通過するようにする場合がある。従って、「ステージ」は、基板を保持しながら基板を移動させることができる部材であれば足り、必ずしも台状の部材に限られない。
【0051】
ロボットについては、一つのロボットが第一第二のステージ21,22との間で基板Sの搭載及び回収を行う場合もあるし、第一第二のステージ21,22にそれぞれロボットが設けられてそれぞれ基板Sの搭載及び回収を行う場合もある。
また、基板Sとして膜材が貼り付けられた液晶基板が想定されたが、液晶ディスプレイ以外の表示装置用の基板を対象物として光配向用偏光光照射をする場合もあるし、視野角補正の目的で偏光光を照射する場合もある。
【符号の説明】
【0052】
1 照射ユニット
11 光源
14 偏光素子
21 ステージ
22 ステージ
20A 固定ベース
20B 可動ベース
3 ステージ移動機構
31 ガイド部材
321 ボールねじ
322 ボールねじ
331 駆動源
332 駆動源
4 制御ユニット
5 昇降ピン
6 基板アライナー
S 基板
R 照射領域
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており、
前記第一第二ステージの各々は、基板を吸着するための吸着孔を有する、一体的に移動可能な複数のピンを含むことを特徴と光配向用偏光光照射装置。
【請求項2】
設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構とを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通渦させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており、
前記照射ユニットは、前記第一第二の各ステージが往路移動する際と復路移動する際の双方において各ステージ上の基板に対し、偏光子からの偏光光を直接照射して、往路における照射による露光量と復路における照射による露光量とが積算されるようにすることを特徴とする光配向用偏光光照射装置。
【請求項3】
設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、
前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージに搭載された基板の向きを前記基板アライナーにより調整した後の該第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されていることを特徴とする光配向用偏光光照射装置。
【請求項4】
設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、
前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されており、
前記ステージ移動機構は、前記第一第二のステージの移動方向に沿ってガイド部材を備えており、このガイド部材は、前記第一のステージの移動のガイドと前記第二のステージの移動のガイドとに兼用された、
ことを特徴とする光配向用偏光光照射装置。
【請求項5】
設定された照射領域に偏光光を照射する照射ユニットと、
アライメントマークを有し、光配向用膜材付きの基板が載置されるステージと、
照射領域にステージを移動させることでステージ上の基板に偏光光が照射されるようにするステージ移動機構と、
前記ステージに載置された前記基板上の前記アライメントマークを検出するアライメントセンサとを備えており、
ステージとして第一第二の二つのステージが設けられており、前記第一第二の各ステージには、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを、照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する基板アライナーが設けられ、
ステージ移動機構は、照射領域の一方の側に設定された第一の基板搭載位置から第一のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであるとともに、照射領域の他方の側に設定された第二の基板搭載位置から第二のステージを照射領域に移動させ、前記照射ユニットにより偏光光が照射されている該照射領域を通過させるものであり、
ステージ移動機構は、第一のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第一のステージを第一の側に戻すとともに、第二のステージ上の基板が照射領域を通過した後に第二のステージを第二の側に戻すものであり、かつ、前記第一のステージの前記第一の側への復路移動に続くように前記第二のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせ、前記第二のステージの前記第二の側への復路移動に続くように前記第一のステージの前記照射ユニット方向への往路移動を行わせるものであり、
第一の基板搭載位置に位置した第一のステージと照射領域の間には、第二のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保され、第二の基板搭載位置に位置した第二のステージと照射領域の間には、第一のステージ上の基板が照射領域を通過する分以上のスペースが確保されている光配向用偏光光照射装置を使用して基板に光配向用の偏光光を照射する光配向用偏光光照射方法であって、
前記第一の基板搭載位置において前記第一のステージ上に基板を搭載し、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第一の基板搭載調整ステップと、
前記第二の基板搭載位置において前記第二のステージ上に基板を搭載し、前記アライメントセンサにより検出された前記アライメントマークの位置情報に基づいて、搭載された基板の向きを照射される偏光光の偏光軸に対して所定の向きに円周方向に調整する第二の基板搭載調整ステップと、
基板が搭載された前記第一のステージを、前記第二の基板回収位置への前記第二のステージの復路移動に続くように前記第一の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記一方の側に設定された第一の基板回収位置まで前記第一のステージを戻す第一の移動ステップと、
基板が搭載された前記第二のステージを、前記第一の基板回収位置への前記第一のステージの復路移動に続くように前記第二の基板搭載位置から移動させ、前記照射領域を基板が通過した後、前記他方の側に設定された第二の基板回収位置まで前記第二のステージを戻す第二の移動ステップと、
第一の基板回収位置において前記第一のステージから基板を回収する第一の基板回収ステップと、
第二の基板回収位置において前記第二のステージから基板を回収する第二の基板回収ステップと
を有しており、
第一の基板回収ステップ及び第一の基板搭載ステップが行われる時間帯は、第二の移動ステップが行われる時間帯と全部又は一部が重なっており、
第二の基板回収ステップ及び第二の基板搭載ステップが行われる時間帯は、第一の移動ステップが行われる時間帯と全部又は一部が重なっていることを特徴とする光配向用偏光光照射方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-09-30 
結審通知日 2016-10-04 
審決日 2016-10-17 
出願番号 特願2013-47350(P2013-47350)
審決分類 P 1 113・ 121- ZAA (G02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 俊光  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 松川 直樹
土屋 知久
登録日 2013-08-23 
登録番号 特許第5344105号(P5344105)
発明の名称 光配向用偏光光照射装置及び光配向用偏光光照射方法  
代理人 松野 仁彦  
代理人 相良 由里子  
代理人 大塚 文昭  
代理人 岸 慶憲  
代理人 特許業務法人 英知国際特許事務所  
代理人 谷口 信行  
代理人 相良 由里子  
代理人 谷口 信行  
代理人 松尾 和子  
代理人 松野 仁彦  
代理人 大塚 文昭  
代理人 赤尾 直人  
代理人 松尾 和子  
代理人 岸 慶憲  

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