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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01K
管理番号 1342673
審判番号 不服2017-6470  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-08 
確定日 2018-07-25 
事件の表示 特願2015-549328「排熱回収装置の作動液の流入を止める装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日国際公開、WO2014/098843、平成28年 3月10日国内公表、特表2016-507687〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012(平成24)年12月19日を国際出願日とする出願であって、平成27年6月18日に国内書面が提出され、平成27年8月17日に明細書、請求の範囲、図面及び要約書の翻訳文が提出され、同日付けで特許協力条約第34条補正の翻訳文が提出され、平成28年7月27日付けで拒絶理由が通知され、平成28年10月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年12月22日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成29年5月8日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年5月8日の手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年5月8日の手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成29年5月8日の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1及び7に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成28年10月31日に提出された手続補正書による)下記の(1)の記載を下記の(2)の記載に補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び7
「【請求項1】
車両の内燃機関と連結した排熱回収装置の操作方法であって、前記装置は、ボイラ、膨張器、凝縮器、及び作動液を循環する回路に接続されるポンプを有しており、
機関及び排熱回収装置を有する車両の選択された構成部品の状態を監視するステップと、
作動液の流入を遮断するため、前記機関および前記排熱回収装置の少なくとも一方の異常状態を示すトリガ条件を検知するステップと、
前記異常状態を示す前記トリガ条件が検知されたときに、前記ポンプへの作動液の流入を止めるため、ポンプ吸入口の上流側の弁を閉じるステップとから成る、前記方法。」

「【請求項7】
内燃機関を有する車両用排熱回収装置であって、
排熱ボイラ、膨張器、凝縮器、及び前記作動液回路に配置される作動液ポンプと、
前記凝縮器と前記作動液ポンプとの間の前記作動液回路に配置される閉止弁と、
前記閉止弁に接続され、前記作動液回路に配置される構成部品における異常状態を示す信号を受信すると、前記作動液回路内への作動液流入を遮断するよう構成される制御装置とを備える、車両用排熱回収装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び7
「【請求項1】
車両の内燃機関と連結した排熱回収装置の操作方法であって、前記装置は、ボイラ、膨張器、凝縮器、及び作動液を循環する回路に接続されるポンプを有しており、
機関及び排熱回収装置を有する車両の選択された構成部品の状態を監視するステップと、
作動液の流入を遮断するため、前記機関および前記排熱回収装置の少なくとも一方の異常状態を示すトリガ条件を検知するステップと、
前記異常状態を示す前記トリガ条件が検知されたときに、前記ポンプへの作動液の流入を止めるため、ポンプ吸入口の上流側であって前記凝縮器と前記ポンプとの間の前記作動液を循環する回路に配置される弁を閉じるステップとから成る、前記方法。」

「【請求項7】
内燃機関を有する車両用排熱回収装置であって、
排熱ボイラ、膨張器、凝縮器、及び作動液回路に配置される作動液ポンプと、
作動液ポンプ吸入口の上流側であって前記凝縮器と前記作動液ポンプとの間の前記作動液回路に配置される閉止弁と、
前記閉止弁に接続され、前記作動液回路に配置される構成部品における異常状態を示す信号を受信すると、前記作動液回路内への作動液流入を遮断するよう構成される制御装置とを備える、車両用排熱回収装置。」(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

2 本件補正の目的
請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明における「ポンプ吸入口の上流側の弁」という発明特定事項を、本件補正後に「ポンプ吸入口の上流側であって前記凝縮器と前記ポンプとの間の前記作動液を循環する回路に配置される弁」と限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものである。
また、請求項7に係る発明についての本件補正は、本件補正前の請求項7に記載した発明における2行目の「前記作動液回路」の「前記」を誤記の訂正を目的として削除するとともに、本件補正前の請求項7に記載した発明における「前記凝縮器と前記作動液ポンプとの間の前記作動液回路に配置される閉止弁」を、「作動液ポンプ吸入口の上流側であって前記凝縮器と前記作動液ポンプとの間の前記作動液回路に配置される閉止弁」と限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1及び7についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び7に係る発明の発明特定事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1及び7に記載された発明と本件補正後の請求項1及び7に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び特許法第17条の2第5項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正される特許請求の範囲の請求項1及び7に係る発明(以下、「本願補正発明1」及び「本願補正発明7」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

3 独立特許要件
(1)引用文献
(1-1)引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2012/123230号(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、行数は各ページ左側に付された数字による。oウムラウトはoeと表記した。下線は当審で付した。

(ア)「Dieser Dampfkreisprozess ・・・ Energie abgegeben wird.」(第4ページ第20行ないし第6ページ第12行)
(当審仮訳:この蒸気循環には内燃エンジン(2)の廃熱利用のための導管サイクル(4)がある。導管サイクル(4)の中で作動流体が循環する。導管サイクル(4)の中には少なくとも熱交換器(8)、拡大器(10)、凝縮器(12)、給水タンク(14)、ポンプ(6、13)が配置されている。
内燃エンジン(2)は、特に空気を圧縮し、自分で点火し、又は、混合物を圧縮し、外来の点火による内燃エンジン(2)として形成されている。廃熱利用のためのこの装置と付随する方法は特に、自動車で使用するのに優れている。本発明による廃熱利用の方法は、勿論、その他の用途にも適合している。
内燃エンジン(2)は機械的エネルギーを造りだすために燃料を燃やす。ここで生じる排気ガスは、排気ガス触媒コンバーターを配置できる排気ガス装置を経て排出される。排気ガス装置の導管セクション(22)は、熱交換器(8)を通っている。排気ガスからの、又は、排気ガスの戻りからの熱エネルギーは、熱交換器(8)の中の導管セクション(22)を経て、導管サイクル(4)の中の作動流体に放出される、従って熱交換器(8)の中の作動流体が蒸発し、加熱されることができる。
導管サイクル(4)の熱交換器(8)は、導管(25)を経て拡大器(10)と接続している。拡大器(10)はタービンとして、又は、ピストン機械として形成することができる。導管(25)を経て、蒸発した作動流体は拡大器(10)へ流れ、拡大器を駆動する。拡大器(10)には駆動軸(11)があり、その駆動軸を経て拡大器(10)は一つの負荷と接続している。そのため、例えば機械的エネルギーが伝動機構へ移されることができる、又は、一つのポンプか同様のものの発電機の駆動に使われる。拡大器(10)を貫流した後、作動流体は導管(26)を経て凝縮器(12)へ送られる。拡大器(10)を経て膨張した作動流体は、凝縮器の中で液化される。凝縮器(12)は、一つの冷気回路と接続することができる。この冷気回路(20)では、例えば内燃エンジン(2)の冷気回路ということもあり得る。
凝縮器(12)の中で液化された作動流体は、更なる導管(27)を経て給水タンク(14)へ搬送される。導管(27)の中に、液化した作動流体を凝縮器(12)から給水タンク(14)へ搬送する凝縮ポンプ(13)を配置することもできる。給水タンク(14)は、導管サイクル(4)の中で液状の作動流体用の容器として役に立つ。
給水タンク(14)からの液状の作動流体は、導管(29)を経て一つの給水ポンプ(6)から導管(24)の中へ搬送される。導管(29)の中には、開けたり閉めたりすることができる一番目のバルブ(15)がある。
導管(24)の中には二番目のバルブ(28)があり、それは作動流体の圧力を制御するため圧力制御バルブの形状で、熱交換器(8)への取り入れ口で仕事をする。作動流体の蒸発温度は、事前に与えられた圧力の助けを借りて、熱交換器(8)の取り入れ口で制御する。
導管(24)は直接に熱交換器(8)の中へ至り、一方、作動流体は蒸発され、場合によっては加熱される。導管(25)を経て、蒸発した作動流体は再び拡大器(10)へ到達する。作動流体は再び導管サイクル(4)の中へ流れ込む。少なくとも一つのポンプ(6、13)と拡大器(10)を通って、作動流体が通過する方向は導管サイクル(4)を通して与えられる。それに伴って、熱交換器(8)を経ての排気ガスと内燃エンジン(2)の排気ガスの再循環を、いつでも熱エネルギーが引き出すことができる。それは機械的エネルギーか、又は、電気的エネルギーかで与えられる。)

(イ)「Als Arbeitsmedium ・・・ Leitung gefoerdert wird.」(第6ページ第14行ないし第7ページ第27行)
(当審仮訳:作動流体として、水を投入することができる、又は、熱力学の要求に合致するその他の液体が使用できる。作動流体は導管サイクル(4)を貫流する際に、熱力学的な状態の変化を経験する。理想的なのはその変化がランキンサイクル・プロセス(Rankine-Cycle-Process)に相応することである。液状の段階にあるときの作動流体は、給水ポンプ(6)によって蒸発のための圧力レベルへ凝縮される。引き続いて、排気ガスの熱エネルギーは熱交換器(8)を経て作動流体へ放出される。その際、作動流体は等圧で蒸発され、引き続いて加熱される。その後、蒸気は拡大器(10)の中で断熱的に膨張する。その際、機械的エネルギーか、電気的エネルギーが得られる。蒸気の形状の作動流体はその後、凝縮器(12)の中で冷却され、給水ポンプ(6)を経て熱交換器(8)へ移動させられる。
どちらも低い温度で凍結することがある水か、又は、その他の液体の使用を基に、導管サイクル(4)は、又は、導管サイクル(4)の部分は、特に敏感なコンポーネントで凍結防止するように造られねばならない。作動流体が凍結すると作動流体の状態は変化して、作動流体自身が個化して膨れることがあり得る。そうなると導管サイクル(4)のコンポーネントはこの過程で壊れてしまう。内燃エンジンの廃熱利用のための蒸気循環プロセスを操作する本発明に基づく方法は、液状の作動流体を部分的に排出することによって導管サイクル(4)のコンポーネントを凍結防止にする可能性を提供している。ここで、作動流体の循環が終了後、引き続き稼働されたポンプ(6,13)から作動流体を排出するために、少なくとも(6)か(13)のポンプの一つを引き続き稼働する。
給水タンク(14)と熱交換器(8)の間に導管サイクル(4)の給水ポンプ(6)として配置されているポンプは、作動流体の循環が終了後、引き続き稼働されるので、液状の作動流体は給水ポンプ(6)と導管(29)から除去される。作動流体の循環が終了後でもまだ給水ポンプ(6)か導管(29)の中に在る液状の作動流体は、給水ポンプ(6)から導管(24)の中へ搬送される。給水ポンプ(6)の排出、又は部分的な排出によって液状の作動流体の前には未だ、液状の作動流体の少しばかりの量が給水ポンプ(6)の中に在る。導管サイクル(4)の凍結が生ずれば、給水ポンプ(6)の中にある液状の作動流体の残った量は批判するものではなく、凍結時に給水ポンプ(6)には何らのダメージも引き起こさない。
給水ポンプ(6)の引き続きの操作によって液状の作動流体が給水タンク(14)から吸い込まれるのを防ぐため、作動流体の循環が終了後、給水タンク(14)と給水ポンプ(6)の間に配置されている一番目のバルブ(15)を閉めることができる。一番目のバルブ(15)を閉めることによって、給水ポンプ(6)は、一番目のバルブ(15)と給水ポンプ(6)の間にある水だけを吸いとる。これは一番目のバルブ(15)と給水ポンプ(6)の間の導管(29)の中の液状の作動流体の僅かな量に関わるだけであり、それは給水ポンプ(6)を引き続き稼働することによって給水ポンプ(6)から導管(24)の中へ運ばれる。)

(ウ)「Durch ein ・・・ 6 gelangen.」(第8ページ第17行ないし第22行)
(当審仮訳:導管(29)の中にある一番目のバルブ(15)を閉めることによって、液状の作動流体が給水タンク(14)から給水ポンプ(6)への引き続きの搬送は阻止される。凝縮ポンプ(13)を通って給水タンク(14)の中へ搬送された液状の作動流体は、給水タンク(14)から導管(29)を通って給水ポンプ(6)へ到達することはできない。)

イ 上記ア及び図面の記載から分かること
(エ)上記ア(ア)及び図面の記載から、引用文献1には、自動車の内燃エンジン(2)の廃熱を利用する廃熱利用装置の制御方法が記載されていることが分かる。

(オ)上記ア(ア)、(イ)及び図面の記載から、引用文献1に記載された自動車の内燃エンジン(2)の廃熱を利用する廃熱利用装置の制御方法において、廃熱利用装置は、熱交換器(8)、拡大器(10)、凝縮器(12)及び導管サイクル(4)に配置される給水ポンプ(6)を有していることが分かる。

(カ)上記ア(ア)、(イ)及び図面の記載から、引用文献1に記載された自動車の内燃エンジン(2)の廃熱を利用する廃熱利用装置の制御方法において、給水ポンプ(6)吸入口の上流側であって凝縮器(12)と給水ポンプ(6)との間の導管サイクル(4)に配置されるバルブ(15)とを備えることが分かる。

(キ)上記ア(イ)、(ウ)及び図面の記載から、引用文献1に記載された車両用の廃熱利用装置の制御方法において、作動流体の循環が終了後、給水タンク(14)と給水ポンプ(6)の間に配置されているバルブ(15)を閉めることによって、給水ポンプ(6)への作動流体の流入が阻止されることが分かる。

ウ 引用発明A及びB
上記ア、イ及び図面の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明A」及び「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明A>
「自動車の内燃エンジン(2)の廃熱を利用する廃熱利用装置の制御方法であって、廃熱利用装置は、熱交換器(8)、拡大器(10)、凝縮器(12)及び導管サイクル(4)に配置される給水ポンプ(6)を有しており、
給水ポンプ(6)への作動流体の流入を止めるため、給水ポンプ(6)の上流側であって前記凝縮器(12)と前記給水ポンプ(6)との間の前記導管サイクル(4)に配置されるバルブ(15)を閉じるステップを有する、自動車の内燃エンジン(2)の廃熱を利用する廃熱利用装置の制御方法。」

<引用発明B>
「内燃エンジン(2)を有する自動車用廃熱利用装置であって、
熱交換器(8)、拡大器(10)、凝縮器(12)及び導管サイクル(4)に配置される給水ポンプ(6)と、
給水ポンプ(6)の上流側であって前記凝縮器(12)と前記給水ポンプ(6)との間の前記導管サイクル(4)に配置されるバルブ(15)と、
前記バルブ(15)に接続され、所定時に前記導管サイクル(4)への作動流体の流入を止めるよう構成される制御装置とを備える、自動車用廃熱利用装置。」

(1-2)引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-88511号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はスクリュータービンを作動媒体の膨張機関として用いたバイナリー発電装置に関する。」(段落【0001】)

(イ)「【0017】バイナリー発電装置は、作動媒体の蒸発器(12)、スクリュータービン(14)、油セパレータ(16)、凝縮器(18)および作動媒体ポンプ(20)を直列に接続して閉じた作動媒体ループを構成し、スクリュータービン(14)の出力軸を発電機(22)と連結してある。
【0018】蒸発器(12)では、液相の作動媒体が熱源流体から熱を受け取って蒸発し、発生した作動媒体の蒸気はスクリュータービン(14)に供給される。スクリュータービン(14)に供給された高温・高圧の作動媒体蒸気はスクリュータービン(14)の作用室内を進むにつれて膨張しスクリュータービン(14)を駆動する。これにより、スクリュータービン(14)と連結された発電機(22)が駆動されて発電を行う。
【0019】スクリュータービン(14)の作用室には、スクリュータービン(14)の潤滑ならびに作用室のシール等のために潤滑油が供給される。すなわち、油加熱器(24)で作動媒体蒸気と同程度まで加熱された潤滑油がスクリュータービン(14)の吸入口付近から噴射される。油加熱器(24)の熱源は、図示するように蒸発器(12)と同じ熱源を共用することもできるが、別の熱源を利用してもよい。
【0020】スクリュータービン(14)からの排気は油セパレータ(16)に入る。この油セパレータ(16)で作動媒体蒸気と潤滑油とが分離され、作動媒体蒸気は凝縮器(18)へ送られ、作動媒体蒸気から分離された潤滑油は油ポンプ(26)で再び油加熱器(24)に戻される。図中点線は油の循環系統を示している。
【0021】凝縮器(18)では冷却水(クーラント)により作動媒体蒸気が冷却されて凝縮し、凝縮液は作動媒体ポンプ(20)で再び蒸発器(12)に戻される。作動媒体はこのようにして作動媒体ループ内を循環して熱サイクル(ランキンサイクル)を構成する。
【0022】作動媒体ループの蒸発器(12)からスクリュータービン(14)に至る途中の部分に緊急遮断弁(V1)を設置する。緊急遮断弁(V1)は一種の止弁で、何らかの原因で圧力が設定値を越えたとき作動媒体ループを閉止する働きをするものである。」(段落【0017】ないし【0022】)

イ 上記ア及び図面の記載から分かること
(ウ)上記ア(ア)、(イ)及び図面の記載から、引用文献2には、熱源流体の熱を利用してスクリュータービンを作動媒体の膨張機関として用いたバイナリー発電装置の制御方法が記載されていることが分かる。

(エ)上記ア(イ)(特に段落【0017】)及び図面の記載から、引用文献2に記載されたバイナリー発電装置は、作動媒体の蒸発器(12)、スクリュータービン(14)、油セパレータ(16)、凝縮器(18)および作動媒体ポンプ(20)を直列に接続して閉じた作動媒体ループを構成し、スクリュータービン(14)の出力軸を発電機(22)と連結してあることが分かる。
すなわち、引用文献2に記載されたバイナリー発電装置は、蒸発器(12)、スクリュータービン(14)、凝縮器(18)、及び作動媒体ループに配置される作動媒体ポンプ(20)を備えることが分かる。

(オ)上記ア(イ)(特に段落【0022】)及び図面の記載から、引用文献2に記載されたバイナリー発電装置は、作動媒体ループに配置され、何らかの原因で圧力が設定値を越えたとき作動媒体ループを閉止する緊急遮断弁(V1)を備えることが分かる。
すなわち、引用文献2に記載されたバイナリー発電装置の制御方法は、バイナリー発電装置の構成部品の圧力を監視し、作動媒体の循環を止めるために作動媒体の圧力が設定値を越えたことを検知し、作動媒体の圧力が設定値を越えたことを検知したときに作動媒体の循環を止めるために作動媒体ループに配置される緊急遮断弁(V1)を閉止するものであることが分かる。
また、引用文献2に記載されたバイナリー発電装置において、緊急遮断弁(V1)が制御装置により制御されることは明らかであるから、引用文献2に記載されたバイナリー発電装置は、緊急遮断弁(V1)に接続され、作動媒体ループに配置される構成部品における圧力が設定値を越えたことを検出して、作動媒体ループ内の作動媒体の循環を止めるよう構成される制御装置を備えるものである。

ウ 引用文献2記載の技術A及びB
上記ア、イ及び図面の記載から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用文献2記載の技術A」及び「引用文献2記載の技術B」という。)が記載されているといえる。

<引用文献2記載の技術A>
「熱源流体の熱を利用するバイナリー発電装置の制御方法であって、前記バイナリー発電装置は、蒸発器(12)、スクリュータービン(14)、凝縮器(18)、及び作動媒体ループに配置される作動媒体ポンプ(20)を有しており、
前記バイナリー発電装置の構成部品の圧力を監視し、
作動媒体の循環を止めるために前記圧力が設定値を越えたことを検知し、
作動媒体の圧力が設定値を越えたことを検知したときに作動媒体の循環を止めるために作動媒体ループに配置される緊急遮断弁(V1)を閉止する、バイナリー発電装置の制御方法。」

<引用文献2記載の技術B>
「バイナリー発電装置であって、
蒸発器(12)、スクリュータービン(14)、凝縮器(18)、及び作動媒体ループに配置される作動媒体ポンプ(20)と、
作動媒体ポンプ(20)の上流側の前記作動媒体ループに配置される緊急遮断弁(V1)と、
前記緊急遮断弁(V1)に接続され、前記作動媒体ループに配置される構成部品における圧力が設定値を越えたことを検出して、前記作動媒体ループ内の作動媒体の循環を止めるよう構成される制御装置とを備える、バイナリー発電装置。」

(2)対比・判断
ア 本願補正発明1について
本願補正発明1と引用発明Aとを対比すると、引用発明Aにおける「自動車の内燃エンジン(2)の廃熱を利用する廃熱利用装置」は、その技術的意義からみて、本願補正発明1における「車両の内燃機関と連結した廃熱回収装置」に相当し、以下同様に、「制御方法」は「操作方法」に、「熱交換器(8)」は「ボイラ」に、「拡大器(10)」は「膨張機」に、「凝縮器(12)」は「凝縮器」に、「導管サイクル(4)」は「作動液を循環する回路」に、「配置される」は「接続される」に、「給水ポンプ(6)」は「ポンプ」及び「ポンプ吸入口」に、「作動流体」は「作動液」に、「止める」は「遮断する」又は「止める」に、「バルブ(15)」は「弁」に、それぞれ相当する。
また、引用発明Aにおける「給水ポンプ(6)への作動流体の流入を止めるため、給水ポンプ(6)の上流側であって前記凝縮器(12)と前記給水ポンプ(6)との間の前記導管サイクル(4)に配置されるバルブ(15)を閉じるステップを有する」ことは、本願補正発明1における「機関及び排熱回収装置を有する車両の選択された構成部品の状態を監視するステップと、作動液の流入を遮断するため、前記機関および前記排熱回収装置の少なくとも一方の異常状態を示すトリガ条件を検知するステップと、前記異常状態を示す前記トリガ条件が検知されたときに、前記ポンプへの作動液の流入を止めるため、ポンプ吸入口の上流側であって前記凝縮器と前記ポンプとの間の前記作動液を循環する回路に配置される弁を閉じるステップとから成る」ことと、「ポンプへの作動液の流入を止めるため、ポンプ吸入口の上流側であって前記凝縮器と前記ポンプとの間の前記作動液を循環する回路に配置される弁を閉じるステップを有する」という点で共通する。

そうすると、本願補正発明1と引用発明Aとは、
「車両の内燃機関と連結した廃熱回収装置の操作方法であって、前記装置は、ボイラ、膨張機、凝縮器及び作動液を循環する回路に接続されるポンプを有しており、
ポンプへの作動液の流入を止めるため、ポンプ吸入口の上流側であって前記凝縮器と前記ポンプとの間の前記作動液を循環する回路に配置される弁を閉じるステップを有する方法。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点A>
「ポンプへの作動液の流入を止めるため、ポンプ吸入口の上流側であって前記凝縮器と前記ポンプとの間の前記作動液を循環する回路に配置される弁を閉じるステップを有する」ことに関して、
本願補正発明1においては、「機関及び排熱回収装置を有する車両の選択された構成部品の状態を監視するステップ」と、「作動液の流入を遮断するため、前記機関および前記排熱回収装置の少なくとも一方の異常状態を示すトリガ条件を検知するステップ」と、「前記異常状態を示す前記トリガ条件が検知されたときに」、前記ポンプへの作動液の流入を止めるため、ポンプ吸入口の上流側であって、前記凝縮器と前記ポンプとの間の前記作動液を循環する回路に配置される弁を閉じるステップとを有するのに対し、
引用発明Aにおいては、給水ポンプ(6)への作動流体の流入を止めるため、給水ポンプ(6)の上流側であって前記凝縮器(12)と前記給水ポンプ(6)との間の前記導管サイクル(4)に配置されるバルブ(15)を閉じるステップを有するものの、構成部品の状態を監視し、機関及び排熱回収装置の少なくとも一方の異常状態を示すトリガ条件を検知し、前記異常状態を示す前記トリガ条件が検知されたときに弁(引用発明Aにおけるバルブ(15))を閉じる制御を行うかどうか明らかでない点(以下、「相違点A」という。)。

上記相違点Aについて判断する。
排熱回収装置の技術分野において、車両の内燃機関と連結した排熱回収装置の構成部品に異常状態が生じることは、本願の出願前における周知課題(以下、「周知課題」という。例えば、特開2012-193690号公報の段落【0025】、【0037】等及び図面の記載、及び特開2006-170185号公報の段落【0004】ないし【0006】、【0091】ないし【0093】、【0123】ないし【0126】、【0146】等及び図面の記載を参照。)である。
そして、排熱回収装置の技術分野において、「選択された構成部品の状態を監視するステップと、作動液の流れを遮断するため、機関及び排熱回収装置の少なくとも一方の異常状態を示すトリガ条件を検知するステップと、前記異常状態を示す前記トリガ条件が検知されたときに、作動液を循環する回路に設けた弁を閉じるステップを有する技術」は、引用文献2に記載されており(上記「引用文献2記載の技術A」を参照。)、また、本願の出願前における周知技術(以下、「周知技術A」という。例えば、上記「引用文献2記載の技術A」の他、上記特開2012-193690号公報の段落【0030】、【0037】及び図面の記載、及び上記特開2006-170185号公報の特許請求の範囲の請求項1、段落【0123】ないし【0126】、【0141】ないし【0147】及び図面の記載を参照。)である。
そして、引用発明Aと引用文献2記載の技術A及び周知技術Aとは、いずれも、排熱回収装置の技術分野において、作動液を循環する回路に設けた弁を制御する技術に関するものである。
してみれば、周知課題を解決するために、引用発明Aにおいて、バルブ(15)を閉じる制御に関して、引用文献2記載の技術A又は周知技術Aを適用することにより、上記相違点Aに係る本願補正発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到することができたことである。

そして、本願補正発明1は、全体として検討しても、引用発明A、及び引用文献2記載の技術A又は周知技術Aから予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。
したがって、本願補正発明1は、引用発明A、及び引用文献2記載の技術A又は周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、本願補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

イ 本願補正発明7について
本願補正発明7と引用発明Bとを対比すると、引用発明Bにおける「内燃エンジン(2)」は、その技術的意義からみて、本願補正発明7における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「自動車用廃熱利用装置」は「車両用排熱回収装置」に、「熱交換器(8)」は「排熱ボイラ」に、「拡大器(10)」は「膨張機」に、「凝縮器(12)」は「凝縮器」に、「導管サイクル(4)」は「作動液回路」に、「給水ポンプ(6)」は「作動液ポンプ」及び「作動液ポンプ吸入口」に、「作動流体」は「作動液」に、「止める」は「遮断する」に、「バルブ(15)」は「閉止弁」に、それぞれ相当する。
また、引用発明Bにおける「所定時に前記導管サイクル(4)への作動流体の流入を止める」ことは、本願補正発明7における「前記作動液回路に配置される構成部品における異常状態を示す信号を受信すると、前記作動液回路内への作動液流入を遮断する」ことと、「所定時に前記作動液回路内への作動液流入を遮断する」という点で共通する。

そうすると、本願補正発明7と引用発明Bとは、
「内燃機関を有する車両用排熱回収装置であって、
排熱ボイラ、膨張機、凝縮器及び作動液回路に配置される作動液ポンプと、
作動液ポンプの上流側であって前記凝縮器と前記作動液ポンプとの間の前記作動液回路に配置される閉止弁と、
前記閉止弁に接続され、所定時に前記作動液回路内への作動液流入を遮断するよう構成される制御装置とを備える、車両用排熱回収装置。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点B>
「所定時に前記作動液回路内への作動液流入を遮断する」ことに関して、
本願補正発明7においては、「前記作動液回路に配置される構成部品における異常状態を示す信号を受信すると、前記作動液回路内への作動液流入を遮断する」のに対し、
引用発明Bにおいては、所定時に前記導管サイクル(4)内への作動流体の流入を止めるものではあるが、「前記作動液回路に配置される構成部品における異常状態を示す信号を受信すると、前記作動液回路内への作動液流入を遮断する」かどうか明らかでない点(以下、「相違点B」という。)。

上記相違点Bについて判断する。
排熱回収装置の技術分野において、車両の内燃機関と連結した排熱回収装置の構成部品に異常状態が生じることは、上記のように、本願の出願前における周知課題である。
そして、排熱回収装置の技術分野において、「閉止弁に接続され、作動液回路に配置される構成部品における異常状態を示す信号を受信すると、作動液回路内への作動液流入を遮断するよう構成される制御装置を備える」技術は、引用文献2に記載されており(上記「引用文献2記載の技術B」を参照。)、また、本願の出願前における周知技術(以下、「周知技術B」という。例えば、上記「引用文献2記載の技術B」の他、上記特開2012-193690号公報の段落【0030】、【0037】及び図面の記載、及び上記特開2006-170185号公報の特許請求の範囲の請求項1、段落【0123】ないし【0126】、【0141】ないし【0147】及び図面の記載を参照。)である。
そして、引用発明Bと引用文献2記載の技術B及び周知技術Bとは、いずれも、排熱回収装置の技術分野において、作動液を循環する回路に設けた弁を制御する技術に関するものである。
してみれば、周知課題を解決するために、引用発明Bにおいて、バルブ(15)に接続される制御装置に関して、引用文献2記載の技術B又は周知技術Bを適用することにより、上記相違点Bに係る本願補正発明7の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到することができたことである。

そして、本願補正発明7は、全体として検討しても、引用発明B、及び引用文献2記載の技術B又は周知技術Bから予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。
したがって、本願補正発明7は、引用発明B、及び引用文献2記載の技術B又は周知技術Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、本願補正発明7は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ウ まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明1及び7について
1 本願発明1及び7
上記第2のとおり、本件補正は却下されたため、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成27年8月17日提出の明細書及び図面の翻訳文、並びに平成28年10月31日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1及び7に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明7」という。)は、上記第2[理由]1(1)の【請求項1】及び【請求項7】のとおりのものである。

2 引用文献1、引用発明A及びB、並びに引用文献2、引用文献2記載の技術A及びB
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2012/123230号)、引用発明A及びBは、前記第2[理由]3(1)(1-1)に記載したとおりである。
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平9-88511号公報)、引用文献2記載の技術A及びBは、前記第2[理由]3(1)(1-2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
前記第2[理由]2で検討したとおり、本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び7に係る発明、すなわち本願発明1及び7の発明特定事項をさらに限定するものであるから、本願発明1及び7は、実質的に本願補正発明1及び7における発明特定事項の一部を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明1の発明特定事項を全て含む本願補正発明1が、前記第2[理由]3に記載したとおり、引用発明A、及び引用文献2記載の技術A又は周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用発明A、及び引用文献2記載の技術A又は周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
同様に、本願発明7の発明特定事項を全て含む本願補正発明7が、前記第2[理由]3に記載したとおり、引用発明B、及び引用文献2記載の技術B又は周知技術Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明7も、同様の理由により、引用発明B、及び引用文献2記載の技術B又は周知技術Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 まとめ
以上のとおり、本願発明1は、引用発明A、及び引用文献2記載の技術A又は周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願発明7は、引用発明B、及び引用文献2記載の技術B又は周知技術Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明1は、引用発明A、及び引用文献2記載の技術A又は周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明7は、引用発明B、及び引用文献2記載の技術B又は周知技術Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1及び7は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-26 
結審通知日 2018-02-27 
審決日 2018-03-12 
出願番号 特願2015-549328(P2015-549328)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01K)
P 1 8・ 575- Z (F01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西中村 健一  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 金澤 俊郎
佐々木 芳枝
発明の名称 排熱回収装置の作動液の流入を止める装置及び方法  
代理人 重信 和男  
代理人 秋庭 英樹  
代理人 林 道広  
代理人 清水 英雄  
代理人 石川 好文  
代理人 溝渕 良一  
代理人 堅田 多恵子  
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