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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G09B
審判 全部申し立て 特174条1項  G09B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G09B
管理番号 1342974
異議申立番号 異議2016-701081  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-24 
確定日 2018-06-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5921690号発明「ネットワーク上における添削指導サービス提供方法及びこれに用いられるウェブサーバ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5921690号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-10〕について訂正することを認める。 特許第5921690号の請求項1ないし10に係る特許を取り消す。  
理由 第1 手続の経緯

特許第5921690号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成24年12月28日(優先権主張 平成23年12月29日(以下、「優先日」という。)、韓国)に国際出願され、平成27年9月7日に手続補正がされ、平成28年4月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人グリッドマーク株式会社(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年1月23日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年4月25日に意見書の提出及び訂正の請求があり、訂正の請求に対して異議申立人から同年7月5日付けで意見書が提出され、同年10月2日付けで取消理由通知(決定の予告)がされたところ、その指定期間内に特許権者から応答はなかった。

第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記添削情報を作成中の前記教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報を含む添削情報を受信する」とあるのを、「教育者の作成したイメージ情報及び当該イメージ情報を作成中の前記教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報を含む添削情報を受信する」に訂正する。
また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2ないし5も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6に「前記添削情報を作成中の前記教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報を含む添削情報を受信する」とあるのを、「教育者の作成したイメージ情報及び当該イメージ情報を作成中の前記教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報を含む添削情報を受信する」に訂正する。
また、請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7ないし10も同様に訂正する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1及び2について
上記訂正事項1及び2に係る訂正は、訂正前の請求項1及び6の記載にはいずれも「前記添削情報」の「前記」が指す「添削情報」の文言の記載がなく、「前記添削情報」と「教育者の第2音声情報を含む添削情報」との関係が不明瞭であったものを、「添削情報」が「イメージ情報」と「第2音声情報」とを含むものとして改めたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、かかる訂正は、本件特許明細書の「一方、電子ペン110に具備された通信部119は、筆記が完了したとき、入力部109を通じて、使用者のデータ伝送命令に基づいて筆記軌跡情報及びオーディオファイルを本体画面部130に伝送する。」(段落【0041】)及び「一方、本発明を実施するにおいて、教育者が電子ペン110を用いて筆記をしながら、被教育者である学生に伝達したいことがある場合には、添削内容を筆記すると同時にこれを話すことができ、このような場合には添削情報には添削に関連する筆記軌跡情報のみならず、教育者のコメントを含むオーディオファイルが含まれる。」(段落【0062】)との記載等に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また、訂正事項1及び2は、いずれも訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項1は、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2ないし5についても同様に訂正するものであり、訂正事項2は、請求項6を直接的又は間接的に引用する請求項7ないし10についても同様に訂正するものであるが、かかる訂正についても、上記と同様に本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1ないし5は、請求項2ないし5がそれぞれ請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項2に係る訂正前の請求項6ないし10は、請求項7ないし10がそれぞれ請求項6の記載を直接的又は間接的に引用するものであるから、それぞれ一群の請求項である。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-10〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて

1.本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし10に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明10」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ウェブサーバが、被教育者端末機から被教育者の作成したイメージ情報及び前記イメージ情報を作成中の前記被教育者の第1音声情報を含む添削対象情報を受信する段階と、
前記ウェブサーバが、前記受信した添削対象情報を蓄積する段階と、
前記ウェブサーバが、前記添削対象情報を教育者端末機に送信する段階と、
前記ウェブサーバが、前記教育者端末機から教育者の作成したイメージ情報及び当該イメージ情報を作成中の前記教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報を含む添削情報を受信する段階と、
前記ウェブサーバが、前記受信された前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングする段階と、
を含むことを特徴とするネットワーク上における添削指導サービス提供方法。
【請求項2】
前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングして生成された学習情報を蓄積する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のネットワーク上における添削指導サービス提供方法。
【請求項3】
前記学習情報を前記被教育者端末機に送信する段階をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のネットワーク上における添削指導サービス提供方法。
【請求項4】
前記イメージ情報は、各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記メモ用紙上に前記被教育者が筆記をする場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、前記被教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第1電子ペンを用いて前記被教育者の筆記によって生成され、
前記第1電子ペンは、前記被教育者の筆記中の前記第1音声情報を収集する第1マイクと、前記第1マイクを通じて入力された前記第1音声情報を蓄積する第1メモリ部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のネットワーク上における添削指導サービス提供方法。
【請求項5】
前記添削情報は、各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記教育者端末機が前記ウェブサーバから受信した添削対象情報に含まれるイメージ情報を出力し、前記イメージ情報が出力されたメモ用紙に、前記メモ用紙上で前記教育者が筆記する場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、前記教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第2電子ペンを用いて前記教育者が添削することによって生成され、
前記第2電子ペンは、前記教育者の筆記中の前記第2音声情報を収集する第2マイクと、前記第2マイクを通じて入力された前記第2音声情報を蓄積する第2メモリ部と、を有することを特徴とする請求項4に記載のネットワーク上における添削指導サービス提供方法。
【請求項6】
被教育者端末機から被教育者が作成したイメージ情報及び前記イメージ情報を作成中の前記被教育者の第1音声情報を含む添削対象情報を受信する受信部と、
前記受信した添削対象情報を蓄積する蓄積部と、
前記添削対象情報を教育者端末機に送信する送信部と、
前記受信部が前記教育者端末機から教育者の作成したイメージ情報及び当該イメージ情報を作成中の前記教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報を含む添削情報を受信すると、前記受信された前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングするマッピング部と、
を含むことを特徴とするウェブサーバ。
【請求項7】
前記蓄積部には前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングして生成された学習情報が蓄積されることを特徴とする請求項6に記載のウェブサーバ。
【請求項8】
前記送信部は、前記学習情報を前記被教育者端末機に送信することを特徴とする請求項7に記載のウェブサーバ。
【請求項9】
前記イメージ情報は、
各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記メモ用紙上で被教育者が筆記する場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、被教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第1電子ペンを用いて前記被教育者が筆記することによって生成され、
前記第1電子ペンは、前記被教育者の筆記中の前記第1音声情報を収集する第1マイクと、前記第1マイクを通じて入力された前記第1音声情報を蓄積する第1メモリ部と、を有することを特徴とする請求項6に記載のウェブサーバ。
【請求項10】
前記添削情報は、各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記教育者端末機が前記ウェブサーバから受信した添削対象情報に含まれるイメージ情報を出力し、前記イメージ情報が出力されたメモ用紙に、前記メモ用紙上で教育者が筆記する場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、教育者の筆記による前記メモ用紙上での
相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第2電子ペンを用いて前記教育者が添削することによって生成され、
前記第2電子ペンは、前記教育者の筆記中の前記第2音声情報を収集する第2マイクと、前記第2マイクを通じて入力された前記第2音声情報を蓄積する第2メモリ部と、を有することを特徴とする請求項9に記載のウェブサーバ。」

2.取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし10に係る特許に対して平成29年1月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)特許法第17条の2第3項について
平成27年9月7日付けの手続補正は、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、、請求項1ないし10に係る特許は、特許法第17条の2第3項の規定に違反する特許出願に対してされたものである。

(2)特許法第36条第6項第1号について
請求項1ないし10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(3)特許法第36条第6項第2号について
請求項1ないし10の記載は不明確であるから、請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(4)特許法第29条第2項について
引用文献1(甲第5号証):特開2003-345232号公報
引用文献2(甲第6号証):特開平7-46352号公報
引用文献3(甲第7号証):国際公開2006/123837号
引用文献4(甲第8号証):国際公開2010/61584号

請求項1ないし3及び6ないし8に係る発明は、甲第5号証及び甲第6号証に記載された発明並びに周知技術に基いて、また、請求項4、5、9及び10に係る発明は、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された発明並びに周知技術に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3.判断
(1)特許法第17条の2第3項について
請求項1に記載の「ウェブサーバが、被教育者端末機から被教育者の作成したイメージ情報及び前記イメージ情報を作成中の前記被教育者の第1音声情報を含む添削対象情報を受信する段階」(下線部は当審で付した。以下同様。)という事項、請求項4の「前記第1電子ペンは、前記被教育者の筆記中の前記第1音声情報を収集する第1マイクと、前記第1マイクを通じて入力された前記第1音声情報を蓄積する第1メモリ部と、を有する」という事項、請求項6に記載の「被教育者端末機から被教育者が作成したイメージ情報及び前記イメージ情報を作成中の前記被教育者の第1音声情報を含む添削対象情報を受信する受信部」という事項、及び、請求項9の「前記第1電子ペンは、前記被教育者の筆記中の前記第1音声情報を収集する第1マイクと、前記第1マイクを通じて入力された前記第1音声情報を蓄積する第1メモリ部と、を有する」という事項について検討すると、当初明細書等には、これらの事項に関連して以下の記載がある。

ア.「【0030】
図4は本発明における被教育者端末機100-1及び教育者端末機100-2として使用される電子式ダイアリー100のうちの電子ペン110の構造を説明する機能ブロック図である。図4を参照すると、本発明による電子ペン110は赤外線走査部112、赤外線受光部114、及び光センサ部113、光学部116、イメージセンサ部111、圧力センサ部117、及び軌跡処理部115、メモリー部118、通信部119、入力部109を含む。
(中略)
【0040】
さらに、本発明を実施するにおいて、電子ペン110がマイクを具備することによって、使用者が筆記する場合にマイクを通じて入力された音声のオーディオファイルが筆記軌跡情報と共にメモリー部118に蓄積されるようにしてもよい。
【0041】
一方、電子ペン110に具備された通信部119は、筆記が完了したとき、入力部109を通じて、使用者のデータ伝送命令に基づいて筆記軌跡情報及びオーディオファイルを本体画面部130に伝送する。
【0042】
図5は本発明における被教育者端末機100-1及び教育者端末機100-2として使用される電子式ダイアリー100のうちの本体画面部の構造を示す図である。図5を参照すると、本発明における本体画面部130は受信部131、蓄積部132、中央処理部133、表示部134、出力部135及び送信部137を含む。
【0043】
まず、本体画面部130は電子ペン110に具備された通信部119からブルートゥース(登録商標)通信を通じて電子ペン110のメモリー部118に蓄積されている筆記軌跡情報及びオーディオファイルを受信し、受信された筆記軌跡情報及びオーディオファイルは蓄積部132に蓄積される。
【0044】
蓄積部132に蓄積された筆記軌跡情報は液晶画面である表示部134を通じて使用者に提供され、筆記軌跡情報が表示部134を通じて表示される場合、使用者の選択に基づいてオーディオファイルは外部スピーカである出力部135を通じて共に出力される。この場合、使用者は自分が筆記していた時に共に録音されていた周囲の音声を同時に聞くことになるので、当時の記憶をより鮮明に思い出すことができる。
【0045】
一方、中央処理部133はこのような本体画面部130における一連の動作を制御し、使用者は必要に応じて蓄積部132に蓄積されている筆記軌跡情報及びオーディオファイルを送信部137を通じてウェブサーバ200に送信する。
【0046】
例えば、図1における被教育者端末機100-1は、被教育者が作成した答案用紙などのイメージ情報を含む添削対象情報をウェブサーバ200に送信し、ウェブサーバ200は添削対象情報を受信し、これを蓄積した後、教育者端末機100-2に送信する。」

イ.「【0062】
一方、本発明を実施するにおいて、教育者が電子ペン110を用いて筆記をしながら、被教育者である学生に伝達したいことがある場合には、添削内容を筆記すると同時にこれを話すことができ、このような場合には添削情報には添削に関連する筆記軌跡情報のみならず、教育者のコメントを含むオーディオファイルが含まれる。」

本件特許明細書の段落【0040】には、「使用者が筆記する場合にマイクを通じて入力された音声のオーディオファイル」と記載されているから、本件特許明細書における「オーディオファイル」は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び6における「被教育者の第1音声情報」や「教育者の第2音声情報」と同様の「音声情報」であると認められる。しかしながら、段落【0030】ないし【0045】には、「電子式ダイアリー100」が「被教育者端末機100-1」としても「教育者端末機100-2」としても使用されること、及び、「電子式ダイアリー100」において、「電子ペン110がマイクを具備することによって、使用者が筆記する場合にマイクを通じて入力された音声のオーディオファイルが筆記軌跡情報と共にメモリー部118に蓄積され……使用者は必要に応じて蓄積部132に蓄積されている筆記軌跡情報及びオーディオファイルを送信部137を通じてウェブサーバ200に送信する」ことは記載されているものの、当該記載は「電子式ダイアリー100」の使用者一般がオーディオファイル全般を入力等することについての記載であって、オーディオファイル(音声情報)が添削対象情報であることや、被教育者の筆記中の音声情報を収集することは、記載も示唆もされていない。
また、段落【0046】の「例えば」との記載は、「被教育者端末機100-1」が同段落に記載された以外の態様でも用いられ得ることを示唆するものと認められるが、同段落に記載された以外のどのような態様で用いられるのかについては具体的な記載がなく、被教育者がオーディオファイル(音声情報)を添削対象情報として作成することや、被教育者の筆記中の音声情報を収集することは、、記載も示唆もされていない。
また、段落【0062】には、「添削情報には……教育者のコメントを含むオーディオファイルが含まれる」ことは記載されているものの、当該記載は教育者の添削情報についてのものであって、被教育者がオーディオファイル(音声情報)を添削対象情報として作成することや、被教育者の筆記中の音声情報を収集することは、記載も示唆もされていない。

また、当初明細書等の全体を見ても、請求項1、4、6及び9の上記事項は記載も示唆もされていない。

そうすると、請求項1、4、6及び9の上記事項は、当初明細書等に明示的に記載された事項とはいえず、また、当初明細書等から自明な事項ともいえない。

よって、平成27年9月7日付けの手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(2)特許法第36条第6項第1号について
上記(1)で検討したとおり、請求項1の「ウェブサーバが、被教育者端末機から被教育者の作成したイメージ情報及び前記イメージ情報を作成中の前記被教育者の第1音声情報を含む添削対象情報を受信する段階」という事項、及び、請求項6に記載の「被教育者端末機から被教育者が作成したイメージ情報及び前記イメージ情報を作成中の前記被教育者の第1音声情報を含む添削対象情報を受信する受信部」という事項は、当初明細書等に明示的に記載された事項とはいえず、また、当初明細書等から自明な事項ともいえない。

そうすると、上記事項を発明特定事項とする本件特許の請求項1及び6に係る発明、請求項1を引用する請求項2ないし5に係る発明、並びに、請求項6を引用する請求項7ないし10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

よって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし10の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3)特許法第29条第2項について
ア.甲各号証に記載された発明
(ア)引用文献1(甲第5号証)
取消理由で通知した本件特許の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2003-345232号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の通信添削システム1の一実施例を示す構成図である。通信添削システム1は、第1の問題用紙2と、第2の問題用紙3と、解答手段4と、添削手段5と、データ制御手段6と、添削結果表示手段7とを備え、ネットワーク8を介して相互に通信可能になっている。
【0023】図2は、第1の問題用紙2の紙面の一部の拡大図である。第1の問題用紙2と第2の問題用紙3は、基本的には同じ構造であるため、第1の問題用紙2についてのみ説明する。
【0024】第1の問題用紙2は、炭素入りインキを用いて、一般の用紙に0.3mm程度の間隔で微小点9を予め印刷したものである。この微小点9は、微妙に格子を崩した形で配置されており、当該微小点9を印刷した全ての用紙において、2mm角程度の特定領域の微小点9の配列パターンは一意になっている。したがって、微小点9の配列パターンを認識することにより、用紙上の位置が認識可能なものである。」

b.「【0027】デジタルペン11は、筆記部12、読み取り部13、プロセッサ14、メモリ15、無線通信手段16から構成されている。」

c.「【0030】プロセッサ14は、読み取り部13が映した微小点9の配列パターンを画像処理して、デジタルペン11の正確な現在位置をリアルタイムで計算する。更に、読み取り部13が撮影した各回の微小点9の配置パターン画像を比較し、デジタルペン11の向きや動きなどを、SVG(Scalable Vector Graphics)形式などのベクトルデータとして取得できる。予め特定の領域を設定しておくことにより、当該領域におけるデジタルペン11の軌跡から文字コードに変換することも可能である。
【0031】メモリ15は、通信指示領域10を介してデータ送信の指示があるまでの間、プロセッサ14の処理により取得したデータを一時的に保持するものである。」

d.「【0034】解答手段4は、上述のデジタルペン11と、第1の通信手段17とを備え、受講者が第1の問題用紙2に記入した解答を、データ制御手段6へ伝送するものである。
【0035】添削手段5は、上述のデジタルペン11と、解答印字手段18と、第2の通信手段19とを備え、添削者が第2の問題用紙3に記述した添削内容をデータ制御手段6へ伝送するものである。」

e.「【0038】データ制御手段6は、実際にはコンピュータシステムであり、ハードウェアの観点からみると、情報を記録するコンピュータ用の記録装置(磁気ディスク、光ディスクなど)、コンピュータに指示を与える入力装置(キーボード、マウスなど)、演算を行うCPU、結果を表示するCRTなどの表示装置、結果を印字するプリンタ、解答手段4および添削手段5とネットワーク8を介して通信可能な通信インタフェースなどから構成されている。
【0039】データ制御手段6は、データベース20を備え、機能、すなわちソフトウェアの観点からみると、認定手段21と、受信手段22と、解答通知手段23と、添削結果データ生成手段24と、添削結果通知手段25とを備えており、受講者と添削者の間のデータの伝送の制御を行うものである。」

f.「【0042】受信手段22は、ネットワーク8を介して、受講者から解答データ27を、添削者から添削データ28を受信し、データベース20に記録するものである。」

g.「【0046】添削結果表示手段7は、ネットワーク8を介して当該URLに接続することにより、画面上に添削結果データ29を解答と添削内容を区別可能な状態で同時に表示するものであり、実際には、WebブラウザおよびWebブラウザに組み込まれたプラグインと呼ばれるSVG形式やPDF形式などのデータを表示可能にする補助プログラムである。」

h.「【0052】第1の問題用紙2に対して受講者が記入する際、読み取り部13は、デジタルペン11の軌跡に従い第1の印刷用紙2に予め印刷されている微小点9の配列パターンを、例えば1秒間に100回程度読み取る。
【0053】プロセッサ14は、読み取り手段13が撮影した各回の配列パターンを比較することにより、デジタルペン11が第1の印刷用紙2に記入した位置の始点と終点、線分の方向と長さなどを算出し、受講者ID、氏名、解答全てをベクトル化したSVG形式の解答データ27をメモリ15へ記録する。」

i.「【0062】解答通知手段23は、データベース20に記録された解答データ27のディレクトリやファイル名などの情報を、予め当該受講者の担当としてデータベース20に記録されている所定の添削者に、例えば電子メールを使用して通知する。
【0063】添削者は、解答通知手段23により通知された解答データ27の所在にアクセスし、解答印字手段18により、問題文および当該の解答データ27を第2の問題用紙3へ印字する。
【0064】添削者は、ID領域に受講者IDや添削者を識別する添削者ID、氏名などを記入した後、デジタルペン11を用いて添削を行う。
【0065】第2の問題用紙3に対して添削者が添削する際、読み取り部13は、デジタルペン11の軌跡に従い第2の印刷用紙3に予め印刷されている微小点9の配列パターンを、例えば1秒間に100回程度読み取る。
【0066】プロセッサ14は、読み取り手段13が撮影した各回の配列パターンを比較することにより、デジタルペン11が第2の印刷用紙3に記入した位置の始点と終点、線分の方向と長さなどを算出し、受講者IDおよび添削内容全てをベクトル化したSVG形式の添削データ28をメモリ15へ記録する。」

j.「【0074】受信手段22は、添削手段5から添削データ28を受信し、当該添削データ28をデータベース20へ記録する。この時、添削データ28に含まれている受講者IDを使用して、解答データ27と添削データ28を関係付けて記録する。
【0075】添削結果データ生成手段24は、データベース20から受講者ID毎に解答データ27および添削データ28を取り出し、両データの座標位置を一致させ、更に、添削データ28の線分の色を赤色などに設定することにより、解答に対する添削が行われた添削結果データ29を生成する。」

k.上記f.によれば、「通信添削システム1」の「ネットワーク8を介して、受講者から解答データ27を、添削者から添削データ28を受信し、データベース20に記録」し、上記j.によれば、「解答に対する添削が行われた添削結果データ29を生成する」のだから、引用文献1には「通信添削の方法」が記載されているといえる。

上記の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明が記載されているものと認められる。

「通信添削システムは、第1の問題用紙と、第2の問題用紙と、解答手段と、添削手段と、データ制御手段と、添削結果表示手段とを備え、ネットワークを介して相互に通信可能になっており、
解答手段は、デジタルペンと、第1の通信手段とを備え、受講者が第1の問題用紙に記入した解答を、データ制御手段へ伝送し、
添削手段は、デジタルペンと、解答印字手段と、第2の通信手段とを備え、添削者が第2の問題用紙に記述した添削内容をデータ制御手段へ伝送し、
データ制御手段は、データベースを備え、認定手段と、受信手段と、解答通知手段と、添削結果データ生成手段と、添削結果通知手段とを備えており、受講者と添削者の間のデータの伝送の制御を行うものであり、
受信手段は、ネットワークを介して、受講者から解答データを、添削者から添削データを受信し、データベースに記録し、
解答通知手段は、データベースに記録された解答データのディレクトリやファイル名などの情報を、予め当該受講者の担当としてデータベースに記録されている所定の添削者に、通知し、
添削者は、解答通知手段により通知された解答データの所在にアクセスし、解答印字手段により、問題文および当該の解答データを第2の問題用紙へ印字し、
添削結果データ生成手段は、データベースから受講者ID毎に解答データおよび添削データを取り出し、両データの座標位置を一致させ、更に、添削データの線分の色を赤色などに設定することにより、解答に対する添削が行われた添削結果データを生成し、
添削結果表示手段は、ネットワークを介してURLに接続することにより、画面上に添削結果データを解答と添削内容を区別可能な状態で同時に表示するものであり、
第1の問題用紙は、一般の用紙に0.3mm程度の間隔で微小点を予め印刷したもので、微小点の配列パターンを認識することにより、用紙上の位置が認識可能なものであり、
第1の問題用紙と第2の問題用紙は、基本的には同じ構造であり、
デジタルペンは、筆記部、読み取り部、プロセッサ、メモリ、無線通信手段から構成されており、
プロセッサは、読み取り部が映した微小点の配列パターンを画像処理して、デジタルペンの正確な現在位置をリアルタイムで計算し、読み取り部が撮影した各回の微小点の配置パターン画像を比較し、デジタルペンの向きや動きなどを、SVG(Scalable Vector Graphics)形式などのベクトルデータとして取得でき、
メモリは、プロセッサの処理により取得したデータを一時的に保持し、
第1の問題用紙に対して受講者が記入する際、読み取り部は、デジタルペンの軌跡に従い第1の印刷用紙に予め印刷されている微小点の配列パターンを、例えば1秒間に100回程度読み取り、
プロセッサは、読み取り手段が撮影した各回の配列パターンを比較することにより、デジタルペンが第1の印刷用紙に記入した位置の始点と終点、線分の方向と長さなどを算出し、受講者ID、氏名、解答全てをベクトル化したSVG形式の解答データをメモリへ記録し、
第2の問題用紙に対して添削者が添削する際、読み取り部は、デジタルペンの軌跡に従い第2の印刷用紙に予め印刷されている微小点の配列パターンを、例えば1秒間に100回程度読み取り、
プロセッサは、読み取り手段が撮影した各回の配列パターンを比較することにより、デジタルペンが第2の印刷用紙に記入した位置の始点と終点、線分の方向と長さなどを算出し、受講者IDおよび添削内容全てをベクトル化したSVG形式の添削データをメモリ15へ記録する
通信添削の方法。」(以下「引用発明1A」という。)

「通信添削システムは、第1の問題用紙と、第2の問題用紙と、解答手段と、添削手段と、データ制御手段と、添削結果表示手段とを備え、ネットワークを介して相互に通信可能になっており、
解答手段は、デジタルペンと、第1の通信手段とを備え、受講者が第1の問題用紙に記入した解答を、データ制御手段へ伝送し、
添削手段は、デジタルペンと、解答印字手段と、第2の通信手段とを備え、添削者が第2の問題用紙に記述した添削内容をデータ制御手段へ伝送し、
データ制御手段は、データベースを備え、認定手段と、受信手段と、解答通知手段と、添削結果データ生成手段と、添削結果通知手段とを備えており、受講者と添削者の間のデータの伝送の制御を行うものであり、
受信手段は、ネットワークを介して、受講者から解答データを、添削者から添削データを受信し、データベースに記録し、
解答通知手段は、データベースに記録された解答データのディレクトリやファイル名などの情報を、予め当該受講者の担当としてデータベースに記録されている所定の添削者に、通知し、
添削者は、解答通知手段により通知された解答データの所在にアクセスし、解答印字手段により、問題文および当該の解答データを第2の問題用紙へ印字し、
添削結果データ生成手段は、データベースから受講者ID毎に解答データおよび添削データを取り出し、両データの座標位置を一致させ、更に、添削データの線分の色を赤色などに設定することにより、解答に対する添削が行われた添削結果データを生成し、
添削結果表示手段は、ネットワークを介してURLに接続することにより、画面上に添削結果データを解答と添削内容を区別可能な状態で同時に表示するものであり、
第1の問題用紙は、一般の用紙に0.3mm程度の間隔で微小点を予め印刷したもので、微小点の配列パターンを認識することにより、用紙上の位置が認識可能なものであり、
第1の問題用紙と第2の問題用紙は、基本的には同じ構造であり、
デジタルペンは、筆記部、読み取り部、プロセッサ、メモリ、無線通信手段から構成されており、
プロセッサは、読み取り部が映した微小点の配列パターンを画像処理して、デジタルペンの正確な現在位置をリアルタイムで計算し、読み取り部が撮影した各回の微小点の配置パターン画像を比較し、デジタルペンの向きや動きなどを、SVG(Scalable Vector Graphics)形式などのベクトルデータとして取得でき、
メモリは、プロセッサの処理により取得したデータを一時的に保持し、
第1の問題用紙に対して受講者が記入する際、読み取り部は、デジタルペンの軌跡に従い第1の印刷用紙に予め印刷されている微小点の配列パターンを、例えば1秒間に100回程度読み取り、
プロセッサは、読み取り手段が撮影した各回の配列パターンを比較することにより、デジタルペンが第1の印刷用紙に記入した位置の始点と終点、線分の方向と長さなどを算出し、受講者ID、氏名、解答全てをベクトル化したSVG形式の解答データをメモリへ記録し、
第2の問題用紙に対して添削者が添削する際、読み取り部は、デジタルペンの軌跡に従い第2の印刷用紙に予め印刷されている微小点の配列パターンを、例えば1秒間に100回程度読み取り、
プロセッサは、読み取り手段が撮影した各回の配列パターンを比較することにより、デジタルペンが第2の印刷用紙に記入した位置の始点と終点、線分の方向と長さなどを算出し、受講者IDおよび添削内容全てをベクトル化したSVG形式の添削データをメモリ15へ記録する
データ制御手段。」(以下「引用発明1B」という。)

(イ)引用文献2(甲第6号証)
取消理由で通知した本件特許の優先日前に頒布された刊行物である引用文献2(特開平7-46352号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「【請求項1】 手書き入力を受け付ける手書き入力部と、
連続した描画の一まとまりと次の描画開始までの時間間隔についての情報たる描画時間情報を検出する描画時間情報検出部と、
前記描画時間情報をその前後の一まとまりの描画と関連付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された描画と描画時間情報とを一単位の作業毎に一括して外部装置へ送信する送信部とを備えていることを特徴とする蓄積ライティング通信装置。」
(中略)
【請求項3】 請求項1若しくは請求項2の蓄積ライティング通信装置から送信されてきた情報を受信する受信部と、
受信した情報を記憶する記憶部と、
受信した情報から描画情報と描画時間情報とを分離する情報分離部と、
描画情報を視覚的に表示する表示部と、
一まとまりの連続した描画を前記表示部で表示させた後、描画時間情報の示す時間経過後に次の一まとまりの連続した描画を表示させるよう表示部を制御する表示制御部とを備えていることを特徴とする蓄積ライティング通信装置。
(中略)
【請求項7】 前記記憶部は音声情報の記憶が可能であり、
更に、音声の入力を受け付ける音声入力部と、
音声を記憶部へ記憶可能、併せて送信部にて送信可能とする音声処理部と、
前記音声処理部から入力された音声を描画、原画及びこれら両画の描画時間情報と区分けした上で記憶部に記憶可能とさせる音声用記憶制御部と、
前記送信部が前記記憶部に記憶されている音声情報を描画、原画及びこれら両画の描画時間情報と区分けした上で一単位の作業毎に一括して外部へ送信可能とする音声用送信制御部とを有していることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5若しくは請求項6記載の蓄積ライティング通信装置。」

b.「【0002】
【従来の技術】近年、描画情報と音声を組み合わせて送受信することにより、送受信(通信)者相互の距離を意識せずに意見,意志,情報の伝達を図ろうとする装置(通常、テレライティング装置と呼ばれる)が注目されてきている。さて、このテレライティング装置における情報の伝達を実現する手段として、リアルタイム通信型式のものが多く提案されてきていたが、近年では着信した音声および描画情報を記憶しておいて、必要に応じての再生を可能としたものも提案されている。例えば、特開昭63-088949号公報では、受信者不在時に着信した音声および画像情報を記憶する記憶手段を設けることにより、帰宅した受信者はこの記憶された情報を再生し、また必要な部分だけを複写可能等としたテレライティング装置が提案されている。また、当初から記憶されている画像情報たる原画上に入力者が手書きにより入力した画像情報たる描画が加筆された状態のみならず両画像をユーザが区分けして認識できるように、両画像を別々に再生して表示可能とする装置も提案されてきている。例えば、特開平03-244266公報では、記憶モード下で記憶部から読み出した原画を表示部に表示させ、これに対して手書き入力手段で加筆修正した場合には、原画及び原画に手書きで加筆修正した結果の画像たる訂正後画像を別々に表示可能とすることにより、加筆修正前後の過程が再生可能な描画通信端末装置が提案されている。」

c.「【0044】送受信部106は、通信回線113を介して外部装置(図示せず)との各種データの送受信を行う。またこのため、各種通信規約を内蔵したROM、回線制御装置、変復調装置等をも内蔵している。また、これらの作用により、多チャンネルのデータの送受信、多ページにわたる画像情報の送受信等も可能である。」

d.「【0072】(第4実施例)本実施例は、主に請求項12の発明に係る。本実施例においては、原画と一体的に記憶された音声情報の記憶、送受信、再生が可能である点が先の第3実施例と異なる。そして、これは、この音声情報用の記憶部、送受信制御部及びこれらの作用に際しての原画との調整等を設けることによりなされる。
【0073】なお、ここで一体的にとは、映画フィルムにおける画情報が記されたフィルムの両端に音声情報がレコードの溝のごとく記されているというような物理的に一体という意味ではなく、時間的に調整されて表示、再現、記憶、送受信が可能という意味である。さて、この場合、原画そのものがVTRに録画されたテレビジョン番組のような動画やテレビジョン番組の放送等のような動画情報より構成されている場合には、送受信に際して通信費がかかるというような実用上の問題を除き、これを実現するのに技術上何の問題もない。」

e.「【0076】他の例で言うならば、図7に示すように、原画とは音符と歌詞と発声されるべき歌詞等の文字や音符の位置にあわせて、発声されるべき音量や音の高さにあわせてその長さや太さの変化する矢印であり、この原画と一体的に記憶されている音声情報とは、この画像情報に時間的に整合して入力されている生徒の歌う歌や吟ずる漢詩や朗読する台詞や外国語の発音のごときものである。
【0077】これを受信した教師は、送信されてきた原画と音声に対してその注意事項を該当する歌詞の部分に記入し、口頭での注意や必要に応じての手本としての発声を入力する。すなわち、これらが描画、描画と一体に入力された音声情報となる。この上で、これを講評として送信者に返信することにより、生徒は歌や台詞や外国語会話を効率よく修得しえる。
【0078】(第5実施例)本実施例は、主に請求項13及び請求項14の発明に係る。本蓄積ライティング通信装置を利用しての語学等の教育においては、生徒が吹き込んだ発声や生徒が記入した解答等は採点、講評を受けるために教師側に送信する必要がある。しかしながら、かかる場合には、本来の問題文、教師の吹き込んだ手本等は教師側にも存在することが多い。というよりも、もともとは教師側から送信したものであることが多い。このため、生徒側がかかる内容まで教師に返送するのは送信費の無駄となる。
【0079】そこで、かかる場合には生徒側により入力された手書き入力、その入力時間情報、音声入力及びその入力時間情報のみ送信するものである。なお、本実施例は、請求項12までの発明の付加的なものであるため、その全体構成図をもとにしての説明は省略し、以下、本実施例固有の機器たる選択送信制御部と受信情報記憶制御部についてのみその原理、作用、構成を説明する。」
(なお、段落【0076】の「発声されるべき音量」等の記載から見て、段落【0076】の「手本としての発生を入力する。」は「手本としての発声を入力する。」の誤記であることが明らかであるから、修正して摘記した。)

f.上記a.によれば、「蓄積ライティング通信装置」は「前記記憶部に記憶された描画と描画時間情報とを一単位の作業毎に一括して外部装置へ送信する」ものであり、上記d.によれば、「原画と一体的に記憶された音声情報の記憶、送受信、再生が可能であ」り、上記e.によれば、「語学等の教育においては、生徒が吹き込んだ発声や生徒が記入した解答等は採点、講評を受けるために教師側に送信する」のだから、引用文献2には「蓄積ライティング通信装置による教育のための送受信の方法」が記載されているといえる。

上記の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明が記載されているものと認められる。

「手書き入力を受け付ける手書き入力部と、
描画時間情報をその前後の一まとまりの描画と関連付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された描画と描画時間情報とを一単位の作業毎に一括して外部装置へ送信する送信部と、
蓄積ライティング通信装置から送信されてきた情報を受信する受信部と、
受信した情報を記憶する記憶部と、
描画情報を視覚的に表示する表示部とを備え、
前記記憶部は音声情報の記憶が可能であり、
更に、音声の入力を受け付ける音声入力部と、
音声を記憶部へ記憶可能、併せて送信部にて送信可能とする音声処理部と、
前記音声処理部から入力された音声を描画、原画及びこれら両画の描画時間情報と区分けした上で記憶部に記憶可能とさせる音声用記憶制御部と、
前記送信部が前記記憶部に記憶されている音声情報を描画、原画及びこれら両画の描画時間情報と区分けした上で一単位の作業毎に一括して外部へ送信可能とする音声用送信制御部とを有する蓄積ライティング通信装置であって、
送受信部は、通信回線を介して外部装置との各種データの送受信を行い、
原画と一体的に記憶された音声情報の記憶、送受信、再生が可能であり、
一体的にとは、時間的に調整されて表示、再現、記憶、送受信が可能という意味であり、
原画とは音符と歌詞と発声されるべき歌詞等の文字や音符の位置にあわせて、発声されるべき音量や音の高さにあわせてその長さや太さの変化する矢印であり、この原画と一体的に記憶されている音声情報とは、この画像情報に時間的に整合して入力されている生徒の歌う歌や吟ずる漢詩や朗読する台詞や外国語の発音のごときものであり、
これを受信した教師は、送信されてきた原画と音声に対してその注意事項を該当する歌詞の部分に記入し、口頭での注意や必要に応じての手本としての発声を入力し、これらが描画、描画と一体に入力された音声情報となり、これを講評として送信者に返信することにより、生徒は歌や台詞や外国語会話を効率よく修得しえる
蓄積ライティング通信装置を用いた教育のための送受信の方法。」(以下「引用発明2A」という。)

「手書き入力を受け付ける手書き入力部と、
描画時間情報をその前後の一まとまりの描画と関連付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された描画と描画時間情報とを一単位の作業毎に一括して外部装置へ送信する送信部と、
蓄積ライティング通信装置から送信されてきた情報を受信する受信部と、
受信した情報を記憶する記憶部と、
受信した情報から描画情報と描画時間情報とを分離する情報分離部と、
描画情報を視覚的に表示する表示部とを備え、
前記記憶部は音声情報の記憶が可能であり、
更に、音声の入力を受け付ける音声入力部と、
音声を記憶部へ記憶可能、併せて送信部にて送信可能とする音声処理部と、
前記音声処理部から入力された音声を描画、原画及びこれら両画の描画時間情報と区分けした上で記憶部に記憶可能とさせる音声用記憶制御部と、
前記送信部が前記記憶部に記憶されている音声情報を描画、原画及びこれら両画の描画時間情報と区分けした上で一単位の作業毎に一括して外部へ送信可能とする音声用送信制御部とを有する蓄積ライティング通信装置であって、
送受信部は、通信回線を介して外部装置との各種データの送受信を行い、
原画と一体的に記憶された音声情報の記憶、送受信、再生が可能であり、
一体的にとは、時間的に調整されて表示、再現、記憶、送受信が可能という意味であり、
原画とは音符と歌詞と発声されるべき歌詞等の文字や音符の位置にあわせて、発声されるべき音量や音の高さにあわせてその長さや太さの変化する矢印であり、この原画と一体的に記憶されている音声情報とは、この画像情報に時間的に整合して入力されている生徒の歌う歌や吟ずる漢詩や朗読する台詞や外国語の発音のごときものであり、
これを受信した教師は、送信されてきた原画と音声に対してその注意事項を該当する歌詞の部分に記入し、口頭での注意や必要に応じての手本としての発声を入力し、これらが描画、描画と一体に入力された音声情報となり、これを講評として送信者に返信することにより、生徒は歌や台詞や外国語会話を効率よく修得しえる
蓄積ライティング通信装置。」(以下「引用発明2B」という。)

(ウ)引用文献3(甲第7号証)
取消理由で通知した本件特許の優先日前に頒布された刊行物である引用文献3(国際公開2006/123837号)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「スキャナ113には、図5に示すように、CMOS撮像素子(CMOSS)が配置されており、LED(IRLED)からの照射光をドットパターンの印刷面に照射し、その反射光が可視光フィルタ(図示せず)を介することによって赤外線領域のみの波長光として受光し、これがレンズを介してCMOS撮像素子によって撮影され、該撮影画像が中央処理装置(MPU)によって解析され、解析結果のコード情報(32bitのドットコード)または座標情報としてボイスレコーダ101に送信される。なお、このときドットパターンにはキードット2(図12および図14参照)が配置されてドットパターンを構成するブロックの向き(角度)も角度情報として受信可能となっている。」(第10ページ第10?19行)

b.「ボイスレコーダ101本体内は、図5に示すように、中央処理装置(MPU)を中心に構成されている。すなわち、中央処理装置(MPU)の制御によって、マイクから入力された音声情報は、アンプを介してA/Dコンバータ、圧縮回路によって処理され、デジタル音声情報として、コネクタを介してメモリカード106(記憶手段)に記録される。」(第11ページ第2?6行)

c.「図19は、スキャナを一体化したボイスレコーダ1901を示している。このボイスレコーダ1901の装置本体の先端(図で上端)には、センサユニット1903が内蔵されており、図示は省略するが、赤外線LED等の赤外線照射手段やドットパターンからの反射光を撮影するCCDやCMOSからなる撮像手段が設けられている。すなわち、図4および図5で説明したスキャナ113がボイスレコーダ1901の本体に一体的に内蔵された構造となっている。
本体の底部近傍の側面にはスピーカ1902が設けられており、マイク1908から入力した音声や、SDカード106A(図19では図示せず)や内蔵されたメモリにあらかじめ登録された音声、音楽等が出力されるようになつている。」(第26ページ第1?11行)

上記の記載事項を総合すると、引用文献3には、次の技術事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

「ボイスレコーダ本体内は、中央処理装置(MPU)を中心に構成され、
中央処理装置(MPU)の制御によって、マイクから入力された音声情報は、デジタル音声情報としてメモリカード(記憶手段)に記録され、
スキャナには、CMOS撮像素子(CMOSS)が配置されており、LED(IRLED)からの照射光をドットパターンの印刷面に照射し、その反射光が可視光フィルタを介することによって赤外線領域のみの波長光として受光し、これがレンズを介してCMOS撮像素子によって撮影され、
スキャナがボイスレコーダの本体に一体的に内蔵された構造となっている
スキャナを一体化したボイスレコーダ。」

(エ)引用文献4(甲第8号証)
取消理由で通知した本件特許の優先日前に頒布された刊行物である引用文献4(国際公開2010/61584号)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「[0121]<システム全体の構成の説明>
図1は、本発明にかかる手書き入出力システム1の使用状態の一例を示す外観図である。同図によれば、媒体2にスキャナ3を用いて書き込みをすると、書き込んだとおりの文書がディスプレイ6に表示される。これは、スキャナ3が、書き込んだ軌跡上のドットパターンを撮像して、コンピュータ4が解析する(必要に応じてサーバ5にアクセスする)ことにより、実現する。ただし、コンピュータ4がスキャナ3に内蔵されていてもよい」

b.「「0137] ドットパターンを用いた情報入出力方法は、ドットパターン101の生成と、そのドットパターン101の認識と、このドットパターン101から情報およびプログラムを出力する手段とからなる。すなわち、ドットパターン101をスキャナ3に内蔵する撮像部7により画像データとして取り込み、まず、基準格子点ドット104を抽出し、次に本来基準格子点ドット104がある位置にドットが打たれていないことによってキードット102を抽出し、次に情報ドット103を抽出することによりデジタル化して情報領域を抽出して情報の数値化を図り、その数値情報より、このドットパターン101から情報およびプログラムを出力させる。たとえば、このドットパターン101から音声等の情報やプログラムを、情報出力装置、パーソナルコンピュータ、PDAまたは携帯電話等に出力させる。」

c.「[0171] 同図(c)はペン型の形状をした撮像部7の他の実施形態を示す図である。かかる実施形態においては、ユーザによる音声入力を受け付けるマイク27と、音声再生ボタン28がさらに設けられている。マイク27は、後述する音声認識に用いる音声を収録するために用い、音声再生ボタン28は、後述する音声ガイドを再生するために用いる。」

d.「[0379]<音声収録部>
音声収録部20は、図66に示すように、中央処理装置(MPU)40を中心に構成されている。すなわち、中央処理装置(MPU)40の制御によって、マイク41から入力された音声情報は、アンプ42を介してA/Dコンバータ43、圧縮回路44によって処理され、デジタル音声情報として、記録される。」

上記の記載事項を総合すると、引用文献4には、次の技術事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

「媒体にスキャナを用いて書き込みをすると、書き込んだとおりの文書がディスプレイに表示され、
撮像部をスキャナに内蔵し、
ユーザによる音声入力を受け付けるマイクがさらに設けられ、
マイクから入力された音声情報は、アンプを介してA/Dコンバータ、圧縮回路によって処理され、デジタル音声情報として、記録される
スキャナ。」

イ.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1Aとを対比する。

後者の「被教育者」は前者の「受講者」に相当し、同様に、「添削者」は「教育者」に相当する。また、後者の「解答手段」は、その機能、作用等からみて、前者の「被教育者端末機」に相当し、同様に、「解答データ」は「添削対象情報」に、「添削手段」は「教育者端末機」に、「添削データ」は「添削情報」にそれぞれ相当する。

後者において「解答手段は、デジタルペンと、第1の通信手段とを備え、受講者が第1の問題用紙に記入した解答を、データ制御手段へ伝送」するところ、データ制御手段へ伝送される解答が「解答データ」であることは明らかであって、「解答データ」は「SVG形式」であるからイメージであるといえる。そうすると、後者の「受講者が第1の問題用紙に記入した解答」である、イメージである「解答データ」は、後者の「被教育者の作成したイメージ情報」に相当する。

後者の「データ制御手段」は、「データベース」及び「受信手段」を備え、「受信手段」は「ネットワークを介して、受講者から解答データを、添削者から添削データを受信し、データベースに記録」するから、後者の「データ制御手段」は前者の「ウェブサーバ」に相当する。

以上の点を踏まえると、後者の「データ制御手段」が「受講者から解答データを……受信」することと、前者の「ウェブサーバが、被教育者端末機から被教育者の作成したイメージ情報及び前記イメージ情報を作成中の前記被教育者の第1音声情報を含む添削対象情報を受信する」こととは、「ウェブサーバが、被教育者端末機から被教育者の作成したイメージ情報を含む添削対象情報を受信する」との概念で共通する。
また、後者の「データ制御手段」が「解答データを……データベースに記録」することは、前者の「前記ウェブサーバが、前記受信した添削対象情報を蓄積する」ことに相当する。

後者においては、「解答通知手段は、データベースに記録された解答データのディレクトリやファイル名などの情報を、予め当該受講者の担当としてデータベースに記録されている所定の添削者に、通知し、添削者は、解答通知手段により通知された解答データの所在にアクセスし、解答印字手段により、問題文および当該の解答データを第2の問題用紙へ印字し」ており、「解答印字手段」は「添削手段」の一部であるから、「データベースに記録された解答データ」が「添削手段」に送信されていることは明らかであって、後者のこの点は、前者の「前記ウェブサーバが、前記添削対象情報を教育者端末機に送信する」ことに相当する。

後者において「添削データ」は「SVG形式」であってイメージであることが明らかであるから、後者の「受信手段は、ネットワークを介して、……添削者から添削データを受信」することと、前者の「前記ウェブサーバが、前記教育者端末機から教育者の作成したイメージ情報及び当該イメージ情報を作成中の前記教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報を含む添削情報を受信する」こととは、「ウェブサーバが、教育者端末機から教育者の作成したイメージ情報を含む添削情報を受信する」との概念で共通する。

「マッピング」の通常の意味は「ある情報に対して、他の情報との一対一の対応関係を作ること」(株式会社岩波書店『広辞苑第六版』)であるから、後者の「添削結果データ生成手段は、データベースから受講者ID毎に解答データおよび添削データを取り出し、両データの座標位置を一致させ、更に、添削データの線分の色を赤色などに設定することにより、解答に対する添削が行われた添削結果データを生成」することは、前者の「前記ウェブサーバが、前記受信された前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングする」ことに相当する。

後者の「通信添削システム」は「ネットワークを介して相互に通信可能になって」いるから、後者の「通信添削の方法」は前者の「ネットワーク上における添削指導サービス提供方法」に相当する。

したがって、両者は、

「ウェブサーバが、被教育者端末機から被教育者の作成したイメージ情報を含む添削対象情報を受信する段階と、
前記ウェブサーバが、前記受信した添削対象情報を蓄積する段階と、
前記ウェブサーバが、前記添削対象情報を教育者端末機に送信する段階と、
前記ウェブサーバが、前記教育者端末機から教育者の作成したイメージ情報を含む添削情報を受信する段階と、
前記ウェブサーバが、前記受信された前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングする段階と、
を含むネットワーク上における添削指導サービス提供方法。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
前者は、被教育者端末機から被教育者の作成したイメージ情報及び「イメージ情報を作成中の被教育者の第1音声情報」を含む添削対象情報を受信するのに対して、後者は「イメージ情報を作成中の被教育者の第1音声情報」を受信しない点。
[相違点2]
前者は、教育者端末機から教育者の作成したイメージ情報及び「イメージ情報を作成中の教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報」を含む添削情報を受信するのに対して、後者は「イメージ情報を作成中の教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報」を受信しない点。

(イ)判断
上記相違点1及び2について併せて検討する。

引用発明2Aの「生徒」は本件発明1の「被教育者」に相当し、同様に、「教師」は「被教育者」に相当する。引用発明2Aにおいては、生徒と教師とがそれぞれ音声情報等を送信しているから、生徒及び教師がともに蓄積ライティング通信装置を使用していることは明らかであって、生徒側の「蓄積ライティング通信装置」は本件発明1の「被教育者端末機」に相当し、同様に、先生側の「蓄積ライティング通信装置」は本件発明1の「教育者端末機」に相当する。
引用発明2Aの「原画」は本件発明1の「イメージ情報」に相当する。引用発明2Aにおいては、「音声情報とは、……生徒の歌う歌や吟ずる漢詩や朗読する台詞や外国語の発音のごときものであ」るから、引用発明2Aと本件発明1とは「被教育者端末機からイメージ情報及び被教育者の第1音声情報を受信する」との概念で共通する。
引用発明2Aにおいては、「教師は、送信されてきた原画と音声に対してその注意事項を該当する歌詞の部分に記入し、口頭での注意や必要に応じての手本としての発声を入力し、これらが描画、描画と一体に入力された音声情報とな」るのだから、教師による「描画」及び「音声情報」は、それぞれ本件発明1の「教育者の作成したイメージ情報」及び「教育者の第2音声情報」に相当する。また、教師による「描画」と「音声情報」とは「送信されてきた原画と音声に対してその注意事項を該当する歌詞の部分に記入し、口頭での注意や必要に応じての手本としての発声を入力」するという一連の工程によって作成され、「描画、描画と一体に入力された音声情報」となるのだから、「音声情報」は「描画」を作成中のものであるといえる。そうすると、引用発明2Aと本件発明1とは「教育者端末機から教育者の作成したイメージ情報及びイメージ情報を作成中の教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報を受信する」との概念で共通する。
以上を総合すると、引用発明2Aは、「被教育者端末機からイメージ情報及び被教育者の第1音声情報を受信し、教育者端末機から教育者の作成したイメージ情報及びイメージ情報を作成中の教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報を受信する」との発明特定事項を有している。

「ネットワーク」の通常の語義は「コンピューター‐ネットワークの略。」であり、「コンピューター‐ネットワーク」の通常の語義は「複数のコンピューターを通信回線を介して接続し、データのやりとりを行えるようにしたもの。」である(株式会社岩波書店『広辞苑第六版』)ところ、引用発明2Aは、「送受信部、通信回線を介して外部装置との各種データの送受信を行」っているから、ネットワーク上で送受信を行っているといえる。また、引用発明2Aの「教師は、送信されてきた原画と音声に対してその注意事項を該当する歌詞の部分に記入し、口頭での注意や必要に応じての手本としての発声を入力し、これらが描画、描画と一体に入力された音声情報となり、これを講評として送信者に返信すること」は、添削指導サービスを提供することであるといえる。そうすると、引用発明1A及び2Aは、ともにネットワーク上における添削指導サービス提供方法に係る技術であって、その技術分野が共通している。
引用発明1Aは、「スピーディで効率的でありながら、従来と同様に、様々な形式の設問、解答、添削が可能であり、解答および添削を入力する負荷がない通信添削システムを提供すること」(段落【0009】)を課題とするところ、引用文献2の【従来の技術】の項に「近年、描画情報と音声を組み合わせて送受信することにより、送受信(通信)者相互の距離を意識せずに意見,意志,情報の伝達を図ろうとする装置(通常、テレライティング装置と呼ばれる)が注目されてきている。」(段落【0002】)と記載されているように、距離を意識せずに情報の伝達を図ること、つまり、送受信(通信)者相互の距離に関係なく情報の伝達をスピーディに効率よく行うことは周知の課題であって、引用発明2Aにおいても内在する自明の課題である。
そうすると、引用発明1Aにおいて、上記の課題を解決するために技術分野が共通する引用発明2Aを適用することは当業者が容易になし得たことである。

そして、引用発明1Aは「受信手段は、ネットワークを介して、受講者から解答データを、添削者から添削データを受信」するのだから、引用発明1Aに引用発明2Aを適用すれば、必然的に被教育者端末機から受信する「解答データ」を「イメージ情報」とすることになる。そして、「解答データ」である「イメージ情報」及び「被教育者の第1音声情報」は全体として「添削対象情報」ということができ、「添削対象情報」についての「教育者の作成したイメージ情報及びイメージ情報を作成中の教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報」は全体として「添削情報」ということができる。また、引用発明2Aにおいて「音声情報とは、この画像情報に時間的に整合して入力されている生徒の歌う歌や吟ずる漢詩や朗読する台詞や外国語の発音のごときもの」であって、画像情報である原画と音声情報とは時間的に整合して入力されているだから、引用発明1Aに引用発明2Aを適用すれば、「解答データ」である「イメージ情報」と「被教育者の第1音声情報」とは時間的に整合して入力され、被教育者の第1音声情報はイメージ情報を作成中のものとなる。

以上のとおりであるから、引用発明1Aに引用発明2Aを適用して、上記相違点1及び2に係る本件発明1の発明特定事項をすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本件発明1の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1A及び2Aから当業者が予測し得る範囲内のものである。

そうすると、本件発明1は、引用発明1A及び2Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ.本件発明2について
本件発明2と引用発明1Aとを対比する。

後者の「データベースから受講者ID毎に解答データおよび添削データを取り出し、両データの座標位置を一致させ、更に、添削データの線分の色を赤色などに設定することにより」生成された「解答に対する添削が行われた添削結果データ」は、前者の「前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングして生成された学習情報」に相当する。
後者においては、「添削結果表示手段は、ネットワークを介してURLに接続することにより、画面上に添削結果データを解答と添削内容を区別可能な状態で同時に表示する」のだから、「添削結果データ」が蓄積されていることは明らかである。

したがって、両者は、上記イ.(ア)の一致点に加えて、「前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングして生成された学習情報を蓄積する段階をさらに含む」点で一致し、上記イ.(ア)の相違点1及び2で相違する。

そして、相違点1及び2については上記イ.(イ)で検討したとおりであるので、本件発明2は引用発明1A及び2Aから当業者が容易に想到することができたものである。

エ.本件発明3について
本件発明3と引用発明1Aとを対比する。

後者の「解答手段」及び「添削結果表示手段」が前者の「被教育者端末機」に相当する。
後者においては、「添削結果表示手段は、ネットワークを介してURLに接続することにより、画面上に添削結果データを解答と添削内容を区別可能な状態で同時に表示する」のだから、「添削結果データ」が「添削結果表示手段」に送信されていることは明らかである。

したがって、両者は、上記イ.(ア)及びウ.の一致点に加えて、「前記学習情報を前記被教育者端末機に送信する段階をさらに含む」点で一致し、上記イ.(ア)の相違点1及び2で相違する。

そして、相違点1及び2については上記イ.(イ)で検討したとおりであるので、本件発明3は引用発明1A及び2Aから当業者が容易に想到することができたものである。

オ.本件発明4について
本件発明4と引用発明1Aとを対比する。

後者の「第1の問題用紙」は、「一般の用紙に0.3mm程度の間隔で微小点を予め印刷したもので、微小点の配列パターンを認識することにより、用紙上の位置が認識可能なもの」であるから、前者の「各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙」に相当する。
後者において、「デジタルペンは、筆記部、読み取り部、プロセッサ、メモリ、無線通信手段から構成されて」いるところ、後者の「デジタルペン」は前者の「第1電子ペン」に相当し、同様に「メモリ」は「第1メモリ部」に相当する。
以上の点を踏まえると、後者の「第1の問題用紙に対して受講者が記入する際、……プロセッサは、読み取り手段が撮影した各回の配列パターンを比較することにより、デジタルペンが第1の印刷用紙に記入した位置の始点と終点、線分の方向と長さなどを算出し、受講者ID、氏名、解答全てをベクトル化したSVG形式の解答データをメモリへ記録」することは、前者の「前記イメージ情報は、各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記メモ用紙上に前記被教育者が筆記をする場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、前記被教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第1電子ペンを用いて前記被教育者の筆記によって生成され」ることに相当する。

したがって、両者は、上記イ.(ア)の一致点に加えて、「前記イメージ情報は、各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記メモ用紙上に前記被教育者が筆記をする場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、前記被教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第1電子ペンを用いて前記被教育者の筆記によって生成され」る点で一致し、上記イ.(ア)の相違点1及び2に加えて、以下の点で相違する。

[相違点3]
前者の「第1電子ペン」が、「被教育者の筆記中の第1音声情報を収集する第1マイクと、第1マイクを通じて入力された第1音声情報を蓄積する第1メモリ部と、を有する」のに対して、後者はそのようなものでない点。

相違点1及び2については上記イ.(イ)で検討したとおりである。
相違点3について検討すると、マイクとマイクを通じて入力された音声情報を蓄積するメモリ部とを有する電子ペンは、本件特許の優先日前に周知の技術である(以下「周知技術」という。例えば、引用文献3記載事項及び引用文献4記載事項参照。)。引用発明2Aは「手書き入力を受け付ける手書き入力部」及び「音声の入力を受け付ける音声入力部」を有しているから、引用発明1Aに引用発明2Aを適用する際に、引用発明1Aにおいて手書き入力を受け付けるデジタルペンに上記周知技術を適用してマイクとマイクを通じて入力された音声情報を蓄積するメモリ部とを有するようにすることは当業者が容易になし得たことである。そして、イ.(イ)で検討したとおり、引用発明1Aに引用発明2Aを適用すれば、被教育者の第1音声情報はイメージ情報を作成中のものとなるから、マイクが収集する音声情報は被教育者の筆記中のものとなる。

そうすると、本件発明4は、引用発明1A及び2A並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ.本件発明5について
本件発明5と引用発明1Aとを対比する。

引用発明1Aにおいて「第1の問題用紙と第2の問題用紙は、基本的には同じ構造」であるから、「第2の問題用紙」は「第1の問題用紙」と同様に、「一般の用紙に0.3mm程度の間隔で微小点を予め印刷したもので、微小点の配列パターンを認識することにより、用紙上の位置が認識可能なもの」であるといえ、前者の「各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙」に相当する。
後者の「添削者は、解答通知手段により通知された解答データの所在にアクセスし、解答印字手段により、問題文および当該の解答データを第2の問題用紙へ印字」することは、前者の「前記教育者端末機が前記ウェブサーバから受信した添削対象情報に含まれるイメージ情報を出力し」に相当する。また、上記の通り、「第2の問題用紙」には「解答データ」が印刷されるのだから、後者の「第2の問題用紙」は前者の「イメージ情報が出力されたメモ用紙」に相当する。
後者において、「デジタルペンは、筆記部、読み取り部、プロセッサ、メモリ、無線通信手段から構成されて」いるところ、後者の「デジタルペン」は前者の「第2電子ペン」に相当し、同様に「メモリ」は「第2メモリ部」に相当する。
以上の点を踏まえると、後者の「第2の問題用紙に対して添削者が添削する際、……プロセッサは、読み取り手段が撮影した各回の配列パターンを比較することにより、デジタルペンが第2の印刷用紙に記入した位置の始点と終点、線分の方向と長さなどを算出し、受講者IDおよび添削内容全てをベクトル化したSVG形式の添削データをメモリ15へ記録することは、前者の「前記イメージ情報が出力されたメモ用紙に、前記メモ用紙上で前記教育者が筆記する場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、前記教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第2電子ペンを用いて前記教育者が添削することによって生成され」ることに相当する。

したがって、両者は、上記イ.(ア)及びオ.の一致点に加えて、「前記添削情報は、各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記教育者端末機が前記ウェブサーバから受信した添削対象情報に含まれるイメージ情報を出力し、前記イメージ情報が出力されたメモ用紙に、前記メモ用紙上で前記教育者が筆記する場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、前記教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第2電子ペンを用いて前記教育者が添削することによって生成され」る点で一致し、上記イ.(ア)及びオ.の相違点1ないし3に加えて、以下の点で相違する。

[相違点4]
前者の「第2電子ペン」が、「教育者の筆記中の第2音声情報を収集する第2マイクと、前記第2マイクを通じて入力された前記第2音声情報を蓄積する第2メモリ部と、を有する」のに対して、後者はそのようなものでない点。

相違点1、2及び3については上記イ.(イ)及びオ.で検討したとおりである。
相違点4について検討すると、イ.(イ)で検討したとおり、引用発明2Aの教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報はイメージ情報を作成中のものであるから、マイクが収集する音声情報は教育者の筆記中のものであるといえる。そして、マイクとマイクを通じて入力された音声情報を蓄積するメモリ部とを有する電子ペンは周知技術であって、引用発明2Aは「手書き入力を受け付ける手書き入力部」及び「音声の入力を受け付ける音声入力部」を有しているから、引用発明1Aに引用発明2Aを適用する際に、引用発明1Aにおいて手書き入力を受け付けるデジタルペンに上記周知技術を適用してマイクとマイクを通じて入力された音声情報を蓄積するメモリ部とを有するようにすることは当業者が容易になし得たことである。そして、

そうすると、本件発明4は、引用発明1A及び2A並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ.本件発明6について
本件発明6と引用発明1Bとを対比する。

引用発明1Bの「データ制御手段」と引用発明1Aの「通信添削の方法」とは実質的に同様の発明特定事項を有するものであって、上記イ.(ア)における検討を踏まえると、引用発明1Bの「解答手段」は本件発明6の「被教育者端末機」に相当し、同様に、「受講者」は「被教育者」に、「解答データ」は「添削対象情報」に、「受信手段」は「受信部」に、「データベース」は「蓄積部」に、「添削手段」は「教育者端末機」に、「添削者」は「教育者」に、「添削データ」は「添削情報」に、「添削結果データ生成手段」は「マッピング部」にそれぞれ相当する。

引用発明1Bの「データ制御手段」は、「ネットワークを介して、受講者から解答データを、添削者から添削データを受信し、データベースに記録」する「受信手段」を備え、「受講者と添削者の間のデータの伝送の制御を行うもの」であるから、本件発明6の「ウェブサーバ」に相当する。

引用発明1Bにおいては、「解答通知手段は、データベースに記録された解答データのディレクトリやファイル名などの情報を、予め当該受講者の担当としてデータベースに記録されている所定の添削者に、通知し、添削者は、解答通知手段により通知された解答データの所在にアクセスし、解答印字手段により、問題文および当該の解答データを第2の問題用紙へ印字し」ているから、「データベースに記録された解答データ」が「添削手段」の一部である「解答印字手段」に送信されていることは明らかであって、引用発明1Bはそのための手段を有するといえる。そして、引用発明1Bの当該手段は、本件発明6の「送信部」に相当する。

したがって、両者は、

「被教育者端末機から被教育者が作成したイメージ情報を含む添削対象情報を受信する受信部と、
前記受信した添削対象情報を蓄積する蓄積部と、
前記添削対象情報を教育者端末機に送信する送信部と、
前記受信部が前記教育者端末機から教育者の作成したイメージ情報を含む添削情報を受信すると、前記受信された前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングするマッピング部と、
を含むウェブサーバ。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点5]
本件発明6は、被教育者端末機から被教育者の作成したイメージ情報及び「イメージ情報を作成中の被教育者の第1音声情報」を含む添削対象情報を受信するのに対して、引用発明1Bは「イメージ情報を作成中の被教育者の第1音声情報」を受信しない点。
[相違点6]
本件発明6は、教育者端末機から教育者の作成したイメージ情報及び「イメージ情報を作成中の教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報」を含む添削情報を受信するのに対して、引用発明1Bは「イメージ情報を作成中の教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報」を受信しない点。

相違点5及び6は、上記イ.(ア)における相違点1及び2と同様である。また、引用発明2Bの「蓄積ライティング通信装置」と引用発明2Aの「蓄積ライティング通信装置を用いた教育のための送受信の方法」とは実質的に同様の発明特定事項を有するものである。

相違点1及び2については上記イ.(イ)で検討したとおりであって、引用発明1Aに引用発明2Aを適用して、上記相違点1及び2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことであるから、相違点5及び6についても同様に、引用発明1Bに引用発明2Bを適用して、相違点5及び6に係る本件発明6の発明特定事項をすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本件発明6の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1B及び2Bから当業者が予測し得る範囲内のものである。

そうすると、本件発明6は、引用発明1B及び2Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク.本件発明7について
本件発明7と引用発明1Bとを対比する。

上記ウ.及びキ.における検討を踏まえると、両者は、上記キ.の一致点に加えて、「前記蓄積部には前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングして生成された学習情報が蓄積される」点で一致し、上記キ.の相違点5及び6で相違する。

そして、相違点5及び6については上記キ.で検討したとおりであるので、本件発明7は引用発明1B及び2Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ケ.本件発明8について
本件発明8と引用発明1Bとを対比する。

上記ウ.、キ.及びク.における検討を踏まえると、両者は、上記キ.及びク.の一致点に加えて、「前記送信部は、前記学習情報を前記被教育者端末機に送信する」点で一致し、上記キ.の相違点5及び6で相違する。

そして、相違点5及び6については上記キ.で検討したとおりであるので、本件発明8は引用発明1B及び2Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

コ.本件発明9について
本件発明9と引用発明1Bとを対比する。

上記ウ.、オ.及びキ.における検討を踏まえると、両者は、上記キ.の一致点に加えて、「前記イメージ情報は、各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記メモ用紙上で被教育者が筆記する場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、被教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第1電子ペンを用いて前記被教育者が筆記することによって生成され」る点で一致し、上記キ.の相違点1及び2に加えて以下の点で相違する。

[相違点7]
後者の「第1電子ペン」が、「被教育者の筆記中の第1音声情報を収集する第1マイクと、前記第1マイクを通じて入力された前記第1音声情報を蓄積する第1メモリ部と、を有する」のに対して、後者はそのようなものでない点。

相違点7は上記オ.における相違点3と同様である。そして、相違点3については上記オ.で検討したとおりであるので、本件発明9は引用発明1B及び2B並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

サ.本件発明10について
本件発明10と引用発明1Bとを対比する。

上記ウ.、オ.、キ.及びコ.における検討を踏まえると、両者は、上記キ.及びコ.の一致点に加えて、「前記添削情報は、各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記教育者端末機が前記ウェブサーバから受信した添削対象情報に含まれるイメージ情報を出力し、前記イメージ情報が出力されたメモ用紙に、前記メモ用紙上で教育者が筆記する場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第2電子ペンを用いて前記教育者が添削することによって生成され」る点で一致し、上記キ.及びコ.の相違点5ないし7に加えて以下の点で相違する。

[相違点8]
後者の「第2電子ペン」が、「教育者の筆記中の第2音声情報を収集する第2マイクと、前記第2マイクを通じて入力された前記第2音声情報を蓄積する第2メモリ部と、を有する」のに対して、後者はそのようなものでない点。

相違点8は上記カ.における相違点4と同様である。そして、相違点4については上記カ.で検討したとおりであるので、本件発明10は引用発明1B及び2B並びに上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ.まとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3は引用発明1A及び2Aに基づいて、本件発明4及び5は引用発明1A及び2A並びに上記周知技術に基づいて、本件発明6ないし8は引用発明1B及び2Bに基づいて、また、本件発明9及び10は引用発明1B及び2B並びに上記周知技術に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本件発明1ないし10に係る特許は、特許法第17条の2第3項の規定に要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされてものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第1号、第2号及び第4号に該当し、取り消されるべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブサーバが、被教育者端末機から被教育者の作成したイメージ情報及び前記イメージ情報を作成中の前記被教育者の第1音声情報を含む添削対象情報を受信する段階と、
前記ウェブサーバが、前記受信した添削対象情報を蓄積する段階と、
前記ウェブサーバが、前記添削対象情報を教育者端末機に送信する段階と、
前記ウェブサーバが、前記教育者端末機から教育者の作成したイメージ情報及び当該イメージ情報を作成中の前記教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報を含む添削情報を受信する段階と、
前記ウェブサーバが、前記受信された前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングする段階と、
を含むことを特徴とするネットワーク上における添削指導サービス提供方法。
【請求項2】
前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングして生成された学習情報を蓄積する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のネットワーク上における添削指導サービス提供方法。
【請求項3】
前記学習情報を前記被教育者端末機に送信する段階をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のネットワーク上における添削指導サービス提供方法。
【請求項4】
前記イメージ情報は、各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記メモ用紙上に前記被教育者が筆記をする場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、前記被教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第1電子ペンを用いて前記被教育者の筆記によって生成され、
前記第1電子ペンは、前記被教育者の筆記中の前記第1音声情報を収集する第1マイクと、前記第1マイクを通じて入力された前記第1音声情報を蓄積する第1メモリ部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のネットワーク上における添削指導サービス提供方法。
【請求項5】
前記添削情報は、各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記教育者端末機が前記ウェブサーバから受信した添削対象情報に含まれるイメージ情報を出力し、前記イメージ情報が出力されたメモ用紙に、前記メモ用紙上で前記教育者が筆記する場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、前記教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第2電子ペンを用いて前記教育者が添削することによって生成され、
前記第2電子ペンは、前記教育者の筆記中の前記第2音声情報を収集する第2マイクと、前記第2マイクを通じて入力された前記第2音声情報を蓄積する第2メモリ部と、を有することを特徴とする請求項4に記載のネットワーク上における添削指導サービス提供方法。
【請求項6】
被教育者端末機から被教育者が作成したイメージ情報及び前記イメージ情報を作成中の前記被教育者の第1音声情報を含む添削対象情報を受信する受信部と、
前記受信した添削対象情報を蓄積する蓄積部と、
前記添削対象情報を教育者端末機に送信する送信部と、
前記受信部が前記教育者端末機から教育者の作成したイメージ情報及び当該イメージ情報を作成中の前記教育者端末機を使用する教育者の第2音声情報を含む添削情報を受信すると、前記受信された前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングするマッピング部と、
を含むことを特徴とするウェブサーバ。
【請求項7】
前記蓄積部には前記添削情報と前記添削対象情報とをマッピングして生成された学習情報が蓄積されることを特徴とする請求項6に記載のウェブサーバ。
【請求項8】
前記送信部は、前記学習情報を前記被教育者端末機に送信することを特徴とする請求項7に記載のウェブサーバ。
【請求項9】
前記イメージ情報は、
各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記メモ用紙上で被教育者が筆記する場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、被教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第1電子ペンを用いて前記被教育者が筆記することによって生成され、
前記第1電子ペンは、前記被教育者の筆記中の前記第1音声情報を収集する第1マイクと、前記第1マイクを通じて入力された前記第1音声情報を蓄積する第1メモリ部と、を有することを特徴とする請求項6に記載のウェブサーバ。
【請求項10】
前記添削情報は、各位置ごとに当該位置情報を示すコードが表示されているメモ用紙に、前記教育者端末機が前記ウェブサーバから受信した添削対象情報に含まれるイメージ情報を出力し、前記イメージ情報が出力されたメモ用紙に、前記メモ用紙上で教育者が筆記する場合に筆記スタート点の位置情報を読み取り、教育者の筆記による前記メモ用紙上での相対座標変化量を測定して、前記スタート点の位置情報及び前記相対座標変化量に基づいて筆記軌跡情報を抽出して蓄積する第2電子ペンを用いて前記教育者が添削することによって生成され、
前記第2電子ペンは、前記教育者の筆記中の前記第2音声情報を収集する第2マイクと、前記第2マイクを通じて入力された前記第2音声情報を蓄積する第2メモリ部と、を有することを特徴とする請求項9に記載のウェブサーバ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-01-26 
出願番号 特願2014-527104(P2014-527104)
審決分類 P 1 651・ 55- ZAA (G09B)
P 1 651・ 537- ZAA (G09B)
P 1 651・ 121- ZAA (G09B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 大熊 靖夫松下 公一  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
登録日 2016-04-22 
登録番号 特許第5921690号(P5921690)
権利者 ネオラボ コンバージェンス インク
発明の名称 ネットワーク上における添削指導サービス提供方法及びこれに用いられるウェブサーバ  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  

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