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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01B
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01B
管理番号 1343000
異議申立番号 異議2017-700937  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-02 
確定日 2018-07-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6109841号発明「撚り装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6109841号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7-13〕について訂正することを認める。 特許第6109841号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6109841号の請求項1-13に係る特許についての出願は、平成24年11月9日(パリ条約による優先権主張 平成23年11月11日 スイス)を国際出願日として特許出願され、平成29年3月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年10月2日に特許異議申立人 角田朝則により特許異議の申立てがされ、平成30年1月17日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年4月12日に意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。

2.訂正の適否について
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、特許請求の範囲の範囲を以下のとおり「ア 訂正前の特許請求の範囲」から「イ 訂正後の特許請求の範囲」に訂正するものである。

ア 訂正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
ワイヤ、ケーブル、線束、光ファイバなどのような電気的又は光学的な線(2)を撚るための撚り装置(1)、特にケーブル撚り装置であって、
ベース(5)と前記ベース(5)に対して回転されることができる撚りヘッド(3)とを備えており、前記撚り対象の線(2)をその第1の端で掴むように構成されており、
前記撚り装置(1)が、前記ベース(5)に対して回転されることができる第2の撚りヘッド(4)を備えており、これが前記第1の撚りヘッド(3)の反対側に配置され、前記第1の端とは反対側の第2の端で前記撚り対象の線(2)を掴むように構成され、
且つ、前記第1の撚りヘッド(3)が第2の撚りヘッド(4)とは反対の方向に回転することができ、
それぞれ一つの線移送グリッパ(6,7)が前記撚りヘッド(3,4)に割り当てられ、前記線(2)のそれぞれの端を、それぞれの撚りヘッド(3,4)の間で前記撚り装置(1)に連続的に引き込む、撚り装置。
【請求項2】
各撚りヘッド(3、4)が別個の回転ドライブ(8、9)によって回転されることができて、好ましくは、前記撚りヘッド(3、4)の前記回転ドライブ(8、9)がお互いに同期していることを特徴とする、請求項1に記載の撚り装置。
【請求項3】
前記撚りヘッド(3、4)がお互いに対する相互の間隔の変動のために変位可能であって、好ましくは、前記撚りヘッド(3、4)の少なくとも一つが、前記ベース(5)に対して変位可能なキャリッジ(15)の上に置かれていることを特徴とする、請求項1または2に記載の撚り装置。
【請求項4】
前記撚り装置(1)が前記線(2)を掴むための線引き込みグリッパ(10)を備えており、且つ、前記撚りヘッド(3、4)の間の領域で、前記線(2)を前記撚りヘッド(3、4)の間の領域に引くために前記線引き込みグリッパ(10)がそれに沿って変位可能なガイド(11)が動くことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の撚り装置。
【請求項5】
前記撚り装置(1)の前記ベース(5)が少なくとも2つの部分(5a、5b)を備えており、前記ベース(5)の第2の部分(5b)が前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対して、前記ガイド(11)に沿った前記線引き込みグリッパ(10)の変位の方向と実質的に平行な方向に変位可能であり、且つ、前記線引き込みグリッパ(10)を有する前記ガイド(11)が前記ベース(5)の第1の部分(5a)の上に置かれており、前記撚りヘッド(3)の一つが前記ベース(5)の第2の部分(5b)の上に置かれており、前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対する前記ベース(5)の第2の部分(5b)の位置決めのために、前記線引き込みグリッパ(10)は、好ましくはアクティブインターフェース(Y)を介して前記ベース(5)の第2の部分(5b)に結合されることができ、前記ガイド(11)に沿った変位の間に、結合された前記線引き込みグリッパ(10)が前記ベース(5)の第2の部分(5b)を前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対して駆動し且つそれを所望の位置に持ってくることを特徴とする、請求項4に記載の撚り装置。
【請求項6】
前記撚りヘッド(3、4)の各々が少なくとも2つのグリッパアーム(13,14)を有しており、それらが開位置から前記線(2)を掴む閉位置まで移動されることができることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載の撚り装置。
【請求項7】
ベース(5)と前記ベース(5)に対して回転されることができる撚りヘッド(3)とを備えており、前記線(2)をその第1の端で掴むように構成されている撚り装置(1)で、ワイヤ、ケーブル、線束、光ファイバなどのような電気的又は光学的な線(2)を撚る方法であって、
前記撚り装置(1)が、前記ベース(5)に対して回転されることができる第2の撚りヘッド(4)を備えており、これが前記第1の撚りヘッド(3)の反対側に配置され、前記第1の端とは反対側の第2の端で前記撚り対象の線(2)が第2の撚りヘッド(4)によって掴まれるように構成されており、
且つ、前記2つの撚りヘッド(3、4)が相互に反対方向に回転することができ、
撚り対象の前記線(2)は、前記撚りヘッド(3,4)の間で前記撚り装置(1)に連続的に引き込まれる、ことを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記線(2)のそれぞれの端が線移送グリッパ(6,7)によって前記それぞれの撚りヘッド(3,4)まで移送され、好ましくは、撚り対象の前記線(2)が、それらが同時に前記撚りヘッド(3,4)まで移送される前に前記線移送グリッパ(6,7)によって保持されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記撚りヘッド(3、4)のお互いからの間隔が前記撚りプロセスの間に、好ましくは前記撚りヘッド(3、4)の回転の関数として低減されることを特徴とする、請求項7または8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記撚りヘッド(3、4)がお互いに同期して駆動され、及び/又は、前記撚りヘッド(3、4)の回転速度が前記撚りプロセスの第1の期間の間に連続的に増加されることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記撚りヘッド(3、4)の回転速度が前記撚りプロセスの第2の期間の間に連続的に減少されることを特徴とする、請求項7から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記撚りプロセスの終わりに、前記撚りヘッド(3、4)の回転の方向が逆転されることを特徴とする、請求項7から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記撚り装置(1)が前記線(2)を掴むための線引き込みグリッパ(10)を備えており、且つ、前記撚りヘッド(3、4)の間の領域で、前記線(2)を前記撚りヘッド(3、4)の間の領域に引くために前記線引き込みグリッパ(10)がそれに沿って変位可能なガイド(11)が動き、且つ、前記撚り装置(1)の前記ベース(5)が少なくとも2つの部分(5a、5b)を備えており、前記ベース(5)の第2の部分(5b)が前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対して、前記ガイド(11)に沿った前記線引き込みグリッパ(10)の変位の方向と実質的に平行な方向に変位可能であり、且つ、前記線引き込みグリッパ(10)を有する前記ガイド(11)が前記ベース(5)の第1の部分(5a)の上に置かれており、前記撚りヘッド(3)の一つが前記ベース(5)の第2の部分(5b)の上に置かれており、前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対する前記ベース(5)の第2の部分(5b)の位置決めのために、前記線引き込みグリッパ(10)は、好ましくはアクティブインターフェース(Y)を介して前記ベース(5)の第2の部分(5b)に結合されることができ、前記ガイド(11)に沿った変位の間に結合された前記線引き込みグリッパ(10)が前記ベース(5)の第2の部分(5b)を前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対して駆動し且つそれを所望の位置に持ってくることを特徴とする、請求項7から12のいずれか一つに記載の方法。」

イ 訂正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
ワイヤ、ケーブル、線束、光ファイバなどのような電気的又は光学的な線(2)を撚るための撚り装置(1)、特にケーブル撚り装置であって、
ベース(5)と前記ベース(5)に対して回転されることができる撚りヘッド(3)とを備えており、前記撚り対象の線(2)をその第1の端で掴むように構成されており、
前記撚り装置(1)が、前記ベース(5)に対して回転されることができる第2の撚りヘッド(4)を備えており、これが前記第1の撚りヘッド(3)の反対側に配置され、前記第1の端とは反対側の第2の端で前記撚り対象の線(2)を掴むように構成され、
且つ、前記第1の撚りヘッド(3)が第2の撚りヘッド(4)とは反対の方向に回転することができ、
それぞれ一つの線移送グリッパ(6,7)が前記撚りヘッド(3,4)に割り当てられ、前記線移送グリッパ(6,7)が、前記線(2)のそれぞれの端を、それぞれの撚りヘッド(3,4)に移送し、
それぞれの撚りヘッド(3,4)の間に、すでに引き込まれた一本の線(2)が前記線移送グリッパ(6,7)に保持されている期間中に更なる線(2)を引き込むように、前記撚り対象の線(2)を連続的に引き込む線引き込みグリッパ(10)を備える、
撚り装置。
【請求項2】
各撚りヘッド(3、4)が別個の回転ドライブ(8、9)によって回転されることができて、好ましくは、前記撚りヘッド(3、4)の前記回転ドライブ(8、9)がお互いに同期していることを特徴とする、請求項1に記載の撚り装置。
【請求項3】
前記撚りヘッド(3、4)がお互いに対する相互の間隔の変動のために変位可能であって、好ましくは、前記撚りヘッド(3、4)の少なくとも一つが、前記ベース(5)に対して変位可能なキャリッジ(15)の上に置かれていることを特徴とする、請求項1または2に記載の撚り装置。
【請求項4】
前記撚り装置(1)が前記線(2)を掴むための線引き込みグリッパ(10)を備えており、且つ、ガイド(11)を備え、
前記撚りヘッド(3、4)の間の領域で、前記線(2)を前記撚りヘッド(3、4)の間の領域に引くために前記線引き込みグリッパ(10)がガイド(11)に沿って変位可能である、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の撚り装置。
【請求項5】
前記撚り装置(1)の前記ベース(5)が少なくとも2つの部分(5a、5b)を備えており、前記ベース(5)の第2の部分(5b)が前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対して、前記ガイド(11)に沿った前記線引き込みグリッパ(10)の変位の方向と実質的に平行な方向に変位可能であり、且つ、前記線引き込みグリッパ(10)を有する前記ガイド(11)が前記ベース(5)の第1の部分(5a)の上に置かれており、前記撚りヘッド(3)の一つが前記ベース(5)の第2の部分(5b)の上に置かれており、前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対する前記ベース(5)の第2の部分(5b)の位置決めのために、前記線引き込みグリッパ(10)は、好ましくはアクティブインターフェース(Y)を介して前記ベース(5)の第2の部分(5b)に結合されることができ、前記ガイド(11)に沿った変位の間に、結合された前記線引き込みグリッパ(10)が前記ベース(5)の第2の部分(5b)を前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対して駆動し且つそれを所望の位置に持ってくることを特徴とする、請求項4に記載の撚り装置。
【請求項6】
前記撚りヘッド(3、4)の各々が少なくとも2つのグリッパアーム(13,14)を有しており、それらが開位置から前記線(2)を掴む閉位置まで移動されることができることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載の撚り装置。
【請求項7】
ベース(5)と前記ベース(5)に対して回転されることができる撚りヘッド(3)とを備えており、線(2)をその第1の端で掴むように構成されている撚り装置(1)で、ワイヤ、ケーブル、線束、光ファイバなどのような電気的又は光学的な前記線(2)を撚る方法であって、
前記撚り装置(1)が、前記ベース(5)に対して回転されることができる第2の撚りヘッド(4)を備えており、これが前記第1の撚りヘッド(3)の反対側に配置され、前記第1の端とは反対側の第2の端で前記撚り対象の線(2)が第2の撚りヘッド(4)によって掴まれるように構成されており、
且つ、前記2つの撚りヘッド(3、4)が相互に反対方向に回転することができ、
撚り対象の前記線(2)は、前記撚りヘッド(3,4)の間に、すでに引き込まれた一本の線(2)が前記線移送グリッパ(6,7)に保持されている期間中に更なる線(2)を引き込むように、線引き込みグリッパ(10)により連続的に引き込まれる、ことを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記線(2)のそれぞれの端が線移送グリッパ(6,7)によって前記それぞれの撚りヘッド(3,4)まで移送され、好ましくは、撚り対象の前記線(2)が、それらが同時に前記撚りヘッド(3,4)まで移送される前に前記線移送グリッパ(6,7)によって保持されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記撚りヘッド(3、4)のお互いの間隔が前記撚りプロセスの間に、好ましくは前記撚りヘッド(3、4)の回転の関数として低減されることを特徴とする、請求項7または8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記撚りヘッド(3、4)がお互いに同期して駆動され、及び/又は、前記撚りヘッド(3、4)の回転速度が前記撚りプロセスの第1の期間の間に連続的に増加されることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記撚りヘッド(3、4)の回転速度が前記撚りプロセスの第2の期間の間に連続的に減少されることを特徴とする、請求項7から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記撚りプロセスの終わりに、前記撚りヘッド(3、4)の回転の方向が逆転されることを特徴とする、請求項7から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記撚り装置(1)が前記線(2)を掴むための線引き込みグリッパ(10)とガイド(11)とを備えており、且つ、前記撚りヘッド(3、4)の間の領域で、前記線(2)を前記撚りヘッド(3、4)の間の領域に引くために前記線引き込みグリッパ(10)が前記ガイド(11)に沿って変位可能であり、且つ、前記撚り装置(1)の前記ベース(5)が少なくとも2つの部分(5a、5b)を備えており、前記ベース(5)の第2の部分(5b)が前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対して、前記ガイド(11)に沿った前記線引き込みグリッパ(10)の変位の方向と実質的に平行な方向に変位可能であり、且つ、前記線引き込みグリッパ(10)を有する前記ガイド(11)が前記ベース(5)の第1の部分(5a)の上に置かれており、前記撚りヘッド(3)の一つが前記ベース(5)の第2の部分(5b)の上に置かれており、前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対する前記ベース(5)の第2の部分(5b)の位置決めのために、前記線引き込みグリッパ(10)は、好ましくはアクティブインターフェース(Y)を介して前記ベース(5)の第2の部分(5b)に結合されることができ、前記ガイド(11)に沿った変位の間に結合された前記線引き込みグリッパ(10)が前記ベース(5)の第2の部分(5b)を前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対して駆動し且つそれを所望の位置に持ってくることを特徴とする、請求項7から12のいずれか一つに記載の方法。」

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正は、明細書の【0014】に記載された事項に基づいて、請求項1-6については、「線引き込みグリッパ(10)」とその動作を付加して限定し、さらに記載を明瞭にするものであり、請求項7-13については、「線移送グリッパ(6,7)」及び「線引き込みグリッパ(10)」とそれらの動作を付加して限定し、さらに記載を明瞭にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7-13〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1-13に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」などという。)は、上記「2.(1)イ 訂正後の特許請求の範囲」に記載した事項により特定されるとおりのものである。

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1-13に係る特許に対して、特許異議申立理由に基づいて、平成30年1月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

ア 本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が不備のため、請求項1-13に係る特許は、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

イ 本件出願の請求項1-13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、又は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1-13に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:中国実用新案第201594421号明細書
甲第2号証:特開平10-340644号公報
甲第3号証:特開2005-149966号公報
甲第4号証:特開2007-242431号公報

(3)甲号証の記載
ア 甲第1号証
甲第1号証(中国実用新案第201594421号明細書)には、図面とともに、次の技術事項が記載されている(なお、原文は中国語のため摘記は省略し、日本語訳のみを示す。)。

「【0001】本考案は、接続線を撚り合わせて裁断する裁断・撚り装置に関し、特に、自動裁断・撚り装置に関している。
背景技術
【0002】電線の撚りおよび裁断は、電線ケーブル業界において必要不可欠な技術である。現在、科学技術の発展につれ、電線の撚りおよび裁断技術に対する要求がますます高まっている。しかし、従来の電線の撚りおよび裁断技術は、依然として手作業で、簡単な補助治具を用いて、接続線を所定の長さで裁断し、そして、2本の接続線を撚り合わせる必要がある。このような撚りおよび裁断技術は次のデメリットがある:第一に、裁断・撚りを担当する職人は、長時間に訓練する必要があり、かつ若くて力強い人でなければならないため、従来の裁断・撚り技術は人力を費やし、コストが高い;第二に、まず電線材料を搬送してから治具上に取り付けるため、生産効率が低い;第三に、電線を裁断するとき、手作業で長さを測るため、間違いやすく、精度が低い。」

「【0043】図1を参照して、本考案に係る自動撚り・裁断装置1は、複数本の接続線の撚り合わせと裁断に用いられ、該自動撚り・裁断装置1は、取付け板10と、裁断機構3と、撚り機構と、引き込み機構と線取り機構6と、撚り・裁断制御機構(図示せず)とを備え、前記撚り機構は、始端回転部41と末端回転部42.とを備え、前記引き込み機構は、始端引き込み部51とスライド引き込み部52とを備えている。詳しくは、前記自動撚り・裁断装置1は、中央グリップ機構7をさらに備えている。
【0044】図1及び図2を参照して、前記取付け板10上に、始端取付け枠11と、末端取り付け枠12と、取り付けレール2とが配置され、前記取付けレール2は前記取付け板10上に固定され、前記始端取り付け枠11は、前記取付け板10上に固定され、かつ前記取り付けレール2の始端と対向している。前記末端取り付け枠12は、前記始端取り付け枠11、末端取り付け枠12及び取り付けレール2が同一の直線上に位置し、かつ始端取り付け枠11と末端取り付け枠12がつ、前記取り付けレール2の両端に位置するように、前記取り付けレール2の末端に位置調整可能に取り付けられている。図5を参照して、前記末端取付け枠12の底部は“コ”形となり、かつ前記取り付けレール2の末端に位置し、複数のピンによって前記取り付けレール2に固定されている。撚り・裁断の対象の接続線の長さを調節する必要がある場合、末端取付け枠12の底部のピンを緩め、前記末端取り付け枠12を前記取り付けレール2に沿って適宜な位置に移動させて、末端取り付け枠12の底部のピンを締め付ければよい。」

「【0046】図1、図2および図6を参照して、前記引き込み機構は、前記取り付けレール2の始端と始端回転部41との間に取り付けられた始端引き込み部51と、前記取り付け板10にスライド接続され、前記取り付けレール2の上方をスライドするスライド引き込み部52とを備える。詳しくは、前記始端引き込み部51は、昇降シリンダ511と、締付シリンダ512と、電線グリッパヘッド513とを備え、前記昇降シリンダ511は、前記取付け板10に固定された昇降本体514と、昇降アーム515とを備え、前記締付シリンダ512は、前記昇降アーム515に固定された締付本体516と、前記電線グリッパヘッド513が固定されている締付アーム517とを備える。前記スライド引き込み部52は前記始端引き込み部51と同様に、昇降シリンダ521と、締付シリンダ522と電線グリッパヘッド523とを備え、前記昇降シリンダ521は、昇降本体524と、昇降アーム525とを備え、前記締付シリンダ522は、締付本体526と、締付アーム527とを備える。前記昇降本体524は、前記取り付け板10にスライド接続され、前記締付本体526は、前記昇降アーム525に固定されている。前記電線グリッパヘッド523は、前記締付アーム527に固定され、かつそのヘッド部が下向きにうつむくように取り付けレール2の上方に設けられ、昇降本体524のスライドとともに前記取り付けレール2の上方を移動する。始端引き込み部51は、接続線の一端を線操出口341から始端回転部41まで引き込み、スライド引き込み部52は、接続線の他端を線操出口341から末端回転部42まで引き込む。始端引き込み部51の昇降シリンダ511が動作した後、昇降アーム515は昇降本体514に対して上昇し、昇降アーム515に固定された締付シリンダ512および電線グリッパヘッド513が上昇し、このとき電線グリッパヘッド513と線操出口341とが同一の水平位置にある。始端引き込み部51の昇降シリンダ511がリセットしたとき、昇降アーム515は昇降本体514に対して下降し、締付シリンダ512と電線グリッパヘッド513の下降を連動させ、このとき電線グリッパヘッド513と始端回転部41の電線グリッパ413とが同一の水平位置にある。同様に、スライド引き込み部52の昇降シリンダ521が動作するとき、電線グリッパヘッド513と線操出口341とが同一の水平位置にあり、スライド引き込み部52の昇降シリンダ521がリセットしたとき、電線グリッパヘッド523と末端回転部42の電線グリッパ423とが同一の水平位置にある。」

「【0048】図1、図2及び図5を参照して、前記撚り機構は、始端回転部41と末端回転部42とを備え、前記始端回転部41が前記始端取り付け枠11に、前記末端回転部42が末端取り付け枠12にそれぞれ取り付けられている。前記始端回転部41は、駆動部411と、回転アーム412と、電線グリッパ413と、シリンダ414とを備え、前記駆動部411は、前記回転アーム412の一端に接続し、かつ前記回転アーム412の回転を駆動する。前記電線グリッパ413は、前記回転アーム412の他端に取り付けられ、前記シリンダ414は前記電線グリッパ413に接続し、前記電線グリッパ413の開閉を制御する;前記端末回転部42は、前記始端回転部41と同様に、駆動部421と、回転アーム422と、電線グリッパ423とシリンダ424と備え、前記駆動部421は、前記回転アーム422の一端に接続して、前記回転アーム422の回転を駆動する。前記電線グリッパ423は前記回転アーム422の他端に取り付けられ、前記シリンダ424は、前記電線グリッパ423に接続し、前記電線グリッパ423の回転を制御する。引き込み機構によって、接続線の両端を、それぞれ始端回転部41と末端回転部42に引き込むと、始端回転部41と末端回転部42の電線グリッパ413および423は、それぞれ、接続線の両端をクランプする。次に、始端回転部41と末端回転部42の駆動部411及び421は逆方向に動作し、電線グリッパ413と電線グリッパ423にクランプされた複数本の接続線の両端が逆方向に回転するよう、それぞれ、回転アーム412と回転アーム422を逆方向に回転させるように駆動する。このように、複数本の接続線を撚り合わせて、撚り合わせ作業を完了する。
【0049】詳しくは、前記末端回転部42の駆動部421は、いずれも、モータ4211と、駆動輪4212と、従動輪4213とテンションプーリと、ベルト(図示せず)とを備えている。前記モータ4211は、前記駆動輪4212の回転軸に接続し、前記駆動輪4212の回転を制御する。前記ベルトは、前記駆動輪4212、前記従動輪4213及びテンションプーリに巻き付けられ、駆動輪4212の回転と共に、前記従動輪4213の回転を連動させる。前記従動輪4213は前記回転アーム412の回転を連動させ、前記回転アーム412は前記電線グリッパ423の回転を連動させる。テンションプーリはベルトの弛み防止するために用いられる。前記始端回転部41の駆動部411の構造は、前記末端回転部42の駆動部421と同一である。」

「【0053】ステップ1は、スライド引き込み部52によって、接続線を線操出口341から末端回転部42の電線グリッパ423に引き込むことである。具体的には、複数本の並列した接続線は線繰入口321から進入し、裁断機構3を貫通して、さらに線操出口341を通って送り出される。スライド引き込み部52における昇降シリンダ521が動作し、電線グリッパヘッド523と線操出口341とが同じ水平位置となるように、電線グリッパヘッド523の上昇を制御する。このとき、電線グリッパヘッド523は開状態となっている。次に、引き込み機構におけるサーボモータ536は、ベルトプーリ535の回動を駆動し、同期ベルトによって、スライダー531をスライドレール534に沿って始端取り付け枠11の方向へスライドさせるよう連動する。スライダー531がスライドレール534の始端(始端取り付け枠11と対向している)までスライドすると、リミットセンサ532が動作して、サーボモータ536の運転を停止させるように制御する。このとき、スライダー531はスライドレール534の始端に位置し、スライダー531上に固定されたスライド引き込み部52は線操出口341に位置している。線操出口341から延出した接続線の一端はちょうど開いている電線グリッパヘッド523の間に位置している。スライド引き込み部52における締付シリンダ522が動作して、電線グリッパヘッド523が接続線の該端をクランプするよう、電線グリッパヘッド523を閉じさせるように制御する。サーボモータ536が作動して、スライダー531をスライドレール534に沿って末端取り付け枠12の方向にスライドさせるように制御する。スライダー531がスライドレール534の末端(末端取り付け枠12に対向している)までスライドすると、リミットセンサ532が動作して、サーボモータ536の運転を停止させるように制御する。このとき、巣ライター531はスライドレール534の末端に位置し、スライダー531上に固定されたスライド引き込み部52は末端回転部42の電線グリッパ423の真上に位置している。末端回転部42におけるシリンダ424が動作して、前記電線グリッパ423が開くように制御し、スライド引き込み部52における昇降シリンダ521がリセットし、電線グリッパヘッド523と末端回転部42の電線グリッパ423が同じ水平位置となるように、締付シリンダ522と電線グリッパヘッド523の下降を制御する。電線グリッパヘッド523は電線グリッパ423にドッキングし、電線グリッパヘッド523にクランプされた接続線は、開いている電線グリッパ423の間に位置している。シリンダ424はリセットされ、電線グリッパ423を閉じるように駆動する。締付シリンダ522はリセットされ、電線グリッパヘッド523を開くように制御する。昇降シリンダ521が動作して、電線グリッパヘッド523の上昇を制御する。電線グリッパ423は該接続線の一端をクランプしている。
【0054】ステップ2は、裁断機構3によって接続線を裁断し、始端引き込み部51によって接続線の他端を始端回転部41の電線グリッパ413へ引き込むことである。具体的には、始端引き込み部51における昇降シリンダ511が動作して、電線グリッパヘッド513を線操出口341のある水平線まで上昇させるように制御する。線操出口341から電線グリッパ423までの間にクランプされた接続線は、開いている電線グリッパヘッド513の間に位置している。締付シリンダ512が動作して、電線グリッパヘッド513を閉じるように制御する。電線グリッパヘッド513は、接続線の線操出口341に近接する一端をクランプしている。始端回転部41における第1の伸縮シリンダ31及び第2の伸縮シリンダ33は、線繰入口321と線操出口341との間の接続線が切れるよう、それぞれ、第1のブロック32と第2のブロック34を逆方向に動作させるように制御する。始端回転部41におけるシリンダ414が動作し、電線グリッパ413を開くように制御する。昇降シリンダ511がリセットして、電線グリッパヘッド513を始端回転部41の電線グリッパ413にある水平面まで下降させるように制御する。電線グリッパヘッド513は電線グリッパ413にドッキングし、電線グリッパヘッド513にクランプされた接続線は、ヘッドがちょうど開いている電線グリッパ413の間に位置している。シリンダ414はリセットして、電線グリッパ413を閉じるように制御し、締付シリンダ512はリセットして、電線グリッパヘッド513を開くように制御する。該接続線のヘッドは電線グリッパ413にクランプされている。
【0055】ステップ3は、撚り機構4によって、複数本の接続線を撚り合わせることである。具体的には、このとき、複数本の接続線の両端は、始端回転部41と末端回転部42の電線グリッパ413及び423にクランプされている。始端回転部41と末端回転部42における駆動部411及び421は逆向きに動作し、それぞれ、回転アーム412と回転アーム422を逆方向に回転させるように駆動する。回転アーム412及び422に固定された電線グリッパ413及び423は、それに応じて逆方向に回転し、電線グリッパ413と電線グリッパ423にクランプされた複数本の接続線の両端は、それと共に逆方向に回転する。これにより、複数本の接続線を撚り合わせて、撚り合わせ作業を完了する。」

イ 甲第2号証
甲第2号証(特開平10-340644号公報)には、図面とともに、次の技術事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はツイスト電線製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に信号線等に採用されるツイスト電線は、一対の調尺電線の両端を把持して撚り合わせることにより製造されている。調尺電線を撚り合わせるためには、調尺電線の両端部をクランプし、複数回にわたって相対的に逆向きに捩じりを加える必要がある。そのため、従来からツイスト電線を製造するための電線捩じり装置が開発されてきた。」

「【0012】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳述する。図1は本発明の実施の一形態におけるツイスト電線製造装置10の概略構成を示す斜視図であり、図2は図1のツイスト電線製造装置10の平面図、図3は図1のツイスト電線製造装置10の正面図である。」

「【0025】次に、図2および図3を参照して、上記捩じりユニット30は、調尺電線ECのA端側をクランプするA端側ユニット40と、B端側をクランプするB端側ユニット50とを備えており、調尺電線ECは、両ユニット40、50に対応する端部が挟持された状態で捩じられることにより、ツイスト線に仕上げられる。先ず、癖取りユニット20から捩じりユニット30に調尺電線ECを受け渡すために、上述した癖取りユニット20には、A端側ユニット40に調尺電線ECのA端を受け渡す受け渡しハンドユニット25が設けられている一方、B端側ユニット50に調尺電線ECのB端を受け渡すために、クランプ22をスライドさせるスライドユニット60が設けられている。
【0026】図7は図1のツイスト電線製造装置において癖取りユニットに採用された受け渡しハンドユニット25の斜視図であり、図8は図1のツイスト電線製造装置において癖取りユニットに採用された受け渡しハンドユニット25の正面図である。これらの図を参照して、上記ベッド21の他端側(調尺電線ECのA端側)側部には、設置台25Aが併設され、この設置台25Aには、ベッド21の幅方向に往復移動する搬送ロボット26が取り付けられている。搬送ロボット26は、上記設置台25Aの幅方向(ベッド21と直交する方向)に延びるレール26Aと、レール26Aによって上記幅方向に往復移動可能に連結されているとともに、設置台25A上に設けられたケーブルベア26Bと連結されている移動体26Cと、移動体26Cを上記幅方向に駆動するために設置台25Aの下面に設けられたマグネット式ロッドレスシリンダ26Dとを含んでいる。さらに、上記移動体26Cは、二対の電線ハンド26Eを有するハンドユニット26Fを担持している。そして、移動体26Cがベッド21側のホームポジションにある場合(図8の実線で示す位置)には、ハンドユニット26Fを、ベッド21上で往動したスライドユニット23の上方に臨ませて、その調尺電線ECのA端近傍を上記二対の電線ハンド26Eで把持することができるとともに、上記ホームポジションから往動して捩じりユニット30側に変位した場合(図8の仮想線で示す位置)には、電線ハンド26Eが把持している各調尺電線ECのA端部を捩じりユニット30のA端側ユニット40に受け渡すことができるようになっている。」

「【0028】これらの図に示すように、スライドユニット70は、クランプ22のベースプレート22Aを担持するプレートキャリア71と、プレートキャリアを、後述するB端側ユニット50の架台51に連結して、上記ベッド21の幅方向に往復移動させるマグネット式ロッドレスシリンダ72とを含んでいる。そして、上記架台51の上面にレール73を敷設し、このレール73に転がり接触するスライドベアリングユニット74(図5、図10参照)を上記ベースプレート22Aの下面に取り付けて、ベースプレート22Aを往復移動可能に構成している。これによりベースプレート22Aは、ベッド21側のホームポジションにある場合(図9の実線で示す位置)に、上述したように調尺電線製造装置1の排出ハンド7から調尺電線ECのB端側を受け取ってクランプすることができるとともに、上記ホームポジションから往動して捩じりユニット30側に変位した場合(後述する図16参照)、クランプした各調尺電線ECのB端部を捩じりユニット30のB端側ユニット50に受け渡すことができるようになっている。」

「【0030】可動ラック43は、複数の電線クランプ44を担持するものであり、上記ボールねじユニット41によってB端側ユニット50との対向間隔が調整されることにより、長さの異なる複数種類の調尺電線ECのA端を該電線クランプ44で把持することができるようになっている。図11は図1のツイスト電線製造装置に採用されている電線クランプ44の斜視図であり、図12は図1のツイスト電線製造装置に採用されている電線クランプ44の断面図である。」

「【0035】図13は図1のツイスト電線製造装置に採用されている可動ラック43の正面図であり、図14は図1のツイスト電線製造装置に採用されている可動ラック43の断面図であり、図15は図1のツイスト電線製造装置に採用されている可動ラック43の背面側の斜視図である。これらの図を参照し、上記電線クランプ44を担持する可動ラック43は、上下二段のフレーム構造を構成しており、その上段部43Aは上記ベッド21の幅方向に沿って、電線クランプ44を水平に離反させる往動経路PH1を構成している一方、下段部43Bは、往動した各電線クランプ44を復動させる復動経路PH2を区画している。各段部43A、43Bは、それぞれ平面視略コの字形のフレーム部43C、43Dを設けて天板部43E、43Fをそれぞれ固定し、両者を支柱43Gで連結することにより、両経路PH1とPH2とを無端状に連続可能な形状に形成されている。」

「【0041】図16および図17は図1のツイスト電線製造装置に採用されているB端側ユニットの斜視図であり、図18は図1のツイスト電線製造装置に採用されているB端側ユニットの背面図である。これらの図を参照して、B端側ユニット50は、上下二段のフレーム構造を構成した上記架台51を有しており、その上段部53Aは上記ベッド21の幅方向に沿うレール55Aによって往動経路PH1を構成している一方、下段部53Bはガイドレール55Bによって復動経路PH2を区画している。また、両経路PH1、PH2の両端側に配置された一対のリフト56を備えている。」

「【0059】調尺電線ECの両端部が捩じりユニット30の各ユニット40、50に受け渡されると、A端側ユニット40の電線クランプ44に設けたクランプユニット44Jが固定されたままの状態で、駆動ユニット60のモータM1、M2により、B端側ユニット50の電線クランプ54に設けたクランプユニット54Jが所定回数だけ回転される結果、両者の間で調尺電線ECが所定回数だけ捩じられる(ステップS4)。一定回数だけクランプユニット54Jが回転されると、モータM1、M2は一旦停止する一方、両ユニット40、50に設けた移動ユニット47、57が対応するクランプユニット44、54を一個分だけ往動方向PH1に沿って往動させる(ステップS5)。その後、モータM1、M2が再度回転し、両クランプユニット44J、54J間の調尺電線ECをさらに捩じる(ステップS6)。そして、この捩じり動作と移動動作を繰り返すことにより、調尺電線ECは、往動方向PH1の下流側に移動するに連れてツイスト線に形成されてゆく。」

ウ 甲第3号証
甲第3号証(特開2005-149966号公報)には、図面とともに、次の技術事項が記載されている。
「【0001】
電線対をツイストするツイスト電線製造装置に関するものである。」

「【0011】
各クランプ片の双方を回転させる構成によれば、電線対を両側からツイストすることができるため、ツイストに要する時間を約1/2に低減させることができる。」

「【0014】
各図を参照して、ツイスト電線製造装置1は、横長に形成された長尺の作業台2と、この作業台2に設けられ、作業台2の長手方向で対向配置された第一クランプ部20及び第二クランプ部30と、これら第一及び第二クランプ部20、30を駆動する駆動部(駆動機構)40とを備えている。なお、上記作業台2の長手方向を仮に左右方向とし、図1の手前側を仮に前方として、以下説明する。
【0015】
上記作業台2は、作業板3と、この作業台3を支持する4本の支柱4とを備えている。作業板3は、左右方向に延びるとともに、幅方向が前後に沿って配置された載置部3aと、この載置部3a上の後端部に立設された立設部3bとを備えた略L字型の板部材である。上記載置部3a上の前端部には、上方へ開口するとともに左右方向に延びる前後一対の樋状収容部5が設けられ、この樋状収容部5内には、ツイスト電線を構成する一対の電線が個別に収容されるようになっている。この樋状収容部5の後方位置において上記載置部3a上には、左右方向に沿って塞止片6が立設されている。この塞止片6は、上記立設部3bとの間で前下がりとなるように保護シート7を渡設して、この保持シート7上で後述する第一クランプ部20及び第二クランプ部30から落下されたツイスト電線を保持するようになっている。さらに、載置部3aの前方側面には、後述する操作ボックス8が突設されている。」

「【0020】
図4を参照して、上記第一クランプ部20は、左側に配置されたスライダ11の設置面13a(図2参照)上に固定されたベース21と、このベース21上に固定されたツイストモータ22と、このツイストモータ22の駆動力を分配する分配ボックス23と、この分配ボックス23により分配された駆動力に応じて電線対をツイストする一対の第一クランプ片24とを備えている。ツイストモータ22は、左右方向に延びる軸J2と、この軸J2に対して同心に連結された駆動歯車22aとを備えている。分配ボックス23は、上記ツイストモータ22の駆動歯車22aに噛合する一対の従動歯車23aを備え、これら駆動歯車22a及び従動歯車23aをそれぞれ収容可能な箱状に形成されている。また、分配ボックス23は、左右方向に沿った一対の軸J3、J4を備え、これら軸J3、J4は、上記各従動歯車23aの回転駆動に応じて左右方向と平行する軸周りに回転駆動するようになっている。上記各軸J3、J4は、分配ボックス23を貫通して右側に伸びており、これら軸J3、J4の右端部には、それぞれ第一クランプ片24が固定されている。第一クランプ片24は、全体として二股状の金属部材であり、電線対を挟圧するための挟圧片24aと、この挟圧片24aに対向する取付片24bとを備えている。この取付片24bの外側部には、挟圧シリンダ25が取り付けられている。この挟圧シリンダ25のロッド(図示せず)は、挟圧片24aとの間で電線対を挟圧/解除するように取付片24bを貫通している。また、ロッドの自由端には、電線対を挟圧片24aとの間で挟圧する挟圧板24cが固定されている。なお、上記ベース21の分配ボックス23には、電線対を
クランプするために各挟圧シリンダ25のロッドを個別に伸長させる一対のクランプスイッチSW1と、後述するスタートスイッチSW2が設けられている。
【0021】
一方、上記第二クランプ部30は、右側に配置されたスライダ11の設置面13a(図2参照)上に固定されたベース31と、このベース31に対して左右方向で相対変位可能に連結された前後一対の摺動ベース32と、これら摺動ベース32上にそれぞれ固定されたツイストモータ33と、これらツイストモータ33に連結された第二クランプ片34と、上記ベース31に対して各摺動ベース32を右方向へ付勢する付勢シリンダ35とを備えている。ベース31は、長手方向が上記載置面13aに沿って配置されているとともに、幅方向が左右方向に沿って配置された略長方形の板状部材である。ベース31上の右端部には、固定フレーム31aが立設され、この固定フレーム31aに対して各付勢シリンダ35が取り付けられている。付勢シリンダ35は、上記固定フレーム31aの右側面に固定されたシリンダ本体35aと、このシリンダ本体35aから固定フレーム31aを貫通して左方向へ延びるロッド35bと、このロッド35bがシリンダ本体35aに対する所定の縮長位置で維持されているか否かを検出するロッド検出センサ(張力検出手段)35cとを備え、ツイスト作業中にロッド35bが予め設定された付勢力でシリンダ本体35aに対して縮長して、摺動ベース32をベース31に対して右側へ付勢するようになっている。なお、上記予め設定された付勢力は、電線対をツイストする場合に当該電線対に対して付与する張力に対応した力に設定されている。ロッド検出センサ35cは、ケーブルK1(入力部)の一端部と接続され、このケーブルK1を介して後述する制御部50に対して検出信号を送信するようになっている。摺動ベース32は、左右方向に延びる図略のLMガイド等を介してベース31と連結され、その右端部が上記ロッド35bの左端部に対して固定されている。ツイストモータ33は、上記摺動ベース32の左端部に立設されたフレーム32aに対して固定されたモータ本体33aと、このモータ33aからフレーム32aを貫通して左側へ延びる駆動軸J5とを備え、この駆動軸J5を左右方向と平行する軸周りに回転駆動するようになっている。第二クランプ片34は、全体として二股状の金属部材であり、上記駆動軸J5の左端部に固定されている。第二クランプ片34は、電線対を挟圧するための挟圧片34aと、この挟圧片34aに対向する取付片34bとを備えている。この取付片34bの外側部には、挟圧シリンダ36が取り付けられている。この挟圧シリンダ36のロッド(図示せず)は、挟圧片34aとの間で電線対を挟圧/解除するように取付片34bを貫通している。また、ロッドの自由端には、電線対を挟圧片34aとの間で挟圧する挟圧板34cが固定されている。なお、上記各摺動ベース32のフレーム32aには、電線対をクランプするために各挟圧シリンダ36のロッドを伸長させるクランプスイッチSW3がそれぞれ各第二クランプ片34に対応して設けられ、前方側に配置されたフレーム32aには、後述するスタートスイッチSW4が設けられている。
【0022】
以上のように構成された第一、第二クランプ部20、30は、各第一、第二クランプ片24、34がそれぞれ左右一組となるように作業台2上で相対向して配置されており、これら二組の第一、第二クランプ片24、34に対して上記各樋状収容部5から取り出した電線対をそれぞれ一対ずつクランプし、各ツイストモータ22、33を回転駆動することにより、第一クランプ片24と第二クランプ片34とが左右方向と平行する軸周りに互いに異なる方向へ回転して電線対を二組同時にツイストするようになっている。」

「【0038】
さらに、上記ツイスト電線製造装置1は、第一、第二クランプ片24、34の双方を回転させることとしているため、電線対Wを両側からツイストすることができ、ツイストに要する時間を約1/2に低減させることができる。」

エ 甲第4号証
甲第4号証(特開2007-242431号公報)には、図面とともに、次の技術事項が記載されている。
「【0001】
この発明は、例えば複数本の電線を撚り合わせして、所望するツイストピッチのツイスト電線を製造する作業に用いられるツイスト電線製造方法及びその装置に関する。」

「【0028】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は、複数本の電線を撚り合わせして、所望するツイストピッチのツイスト電線を製造する作業に用いられるツイスト電線製造方法及びその装置を示し、図1に於いて、このツイスト電線製造方法は、2本並列した電線A,Aの両端部を一対の電線保持部3,3により保持した後、一対の電線保持部3,3の相対回転により電線A,Aを撚り合わせしながら、電線A,AのツイストピッチPを撮影カメラ7により撮影して監視するとともに、撮影カメラ7により撮影した画像情報に基づいて、所定ピッチであるか否かを判定装置8により判定し、所定ピッチであると判定されるまで、電線A,Aを撚り合わせする撚り合
せ動作と、電線A,Aを撚り戻りさせる撚り戻り動作とを何回か繰り返して、所望するツイストピッチPのツイスト電線Bを製造するものである。」

「【0031】
上記一対の電線保持部3,3は、基台2上の右側に配置した回転用モータ4の回転軸端部と、基台2上の左側に配置した回転用モータ4の回転軸端部とに軸方向に相対向して設けられ、回転用モータ4,4の正逆回転により、電線保持部3,3により保持した電線A,Aが撚り合わされる正方向と、撚り戻しされる逆方向とに回転する。つまり、回転用モータ4,4を電線A,Aが撚り合わされる方向に正回転して、電線保持部3,3により保持した電線A,Aを撚り合わせる。また、回転用モータ4,4を逆回転して、電線A,Aに付与される巻回力を解くか緩めれば、電線A自体の復元力によりフリー状態に撚り戻りさせることができる。」

「【0033】
一方の回転用モータ4は、基台2上の右側上面に移動不可に固定し、他方の回転用モータ4は、基台2上の左側上面に配置した可動台6Aに固定しており、可動台6Aは、基台2上面に敷設したレール6Bに対して前後方向に水平移動自在に設けている。
【0034】
レール6B後端に連結した移動用モータ5は、可動台6A全体をレール6Bに沿って長さ方向に前後移動させ、固定側の回転用モータ4に設けた一方の電線保持部3と、可動側の回転用モータ4に設けた他方の電線保持部3とを、互いに近接又は離間される方向に相対移動させ、電線A,Aに対して適度な張力がそれぞれ均等に付与される適切な位置に配置する。つまり、可動台6Aを、電線保持部3,3が離間される方向に移動させ、電線保持部3,3により保持した電線A,Aに対して長さ方向に適度な張力を付与する。また、電線保持部3,3が近接される方向に移動させて、電線A,Aに付与される張力を解くか緩めれば、電線Aの復元力によりフリー状態に収束させることができる。」

(4)判断
ア 特許法第36条第4項第1号、第6項第1号、第6項第2号について
(ア)請求項1の「連続的に引き込む」、「・・・引き込む、撚り装置」、「撚りヘッド(3,4)の間で前記撚り装置(1)に」という文言について(特許異議申立書第15頁第5行-第17頁第14行、第18頁第3行-第8行)
本件訂正により、請求項1の記載は、「それぞれ一つの線移送グリッパ(6,7)が前記撚りヘッド(3,4)に割り当てられ、前記線移送グリッパ(6,7)が、前記線(2)のそれぞれの端を、それぞれの撚りヘッド(3,4)に移送し、
それぞれの撚りヘッド(3,4)の間に、すでに引き込まれた一本の線(2)が前記線移送グリッパ(6,7)に保持されている期間中に更なる線(2)を引き込むように、前記撚り対象の線(2)を連続的に引き込む線引き込みグリッパ(10)を備える、
撚り装置。」と訂正された。
この記載によれば、「連続的に引き込む」とは、「線引き込みグリッパ(10)」が「それぞれの撚りヘッド(3,4)の間に、すでに引き込まれた一本の線(2)が前記線移送グリッパ(6,7)に保持されている期間中に更なる線(2)を引き込むように、前記撚り対象の線(2)を連続的に引き込む」との意味であり、「・・・引き込む、撚り装置」とは、そのように「連続的に引き込む線引き込みグリッパ(10)を備える、撚り装置」であることが明確である。
また、「撚りヘッド(3,4)の間で前記撚り装置(1)に」が、「撚りヘッド(3,4)の間に・・・連続的に引き込む」と訂正され、明確な記載となった。
同じ文言について、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2-6についても同様に明確である。
また、訂正後の上記記載を含む請求項1-6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、発明の詳細な説明の記載は、発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

(イ)請求項4の「前記線(2)を前記撚りヘッド(3、4)の間の領域に引くために前記線引き込みグリッパ(10)がそれに沿って変位可能なガイド(11)が動くことを特徴とする」という文言について(特許異議申立書第17頁第15行-第18頁第5行)
本件訂正により、請求項4の記載は、「前記撚り装置(1)が前記線(2)を掴むための線引き込みグリッパ(10)を備えており、且つ、ガイド(11)を備え、
前記撚りヘッド(3、4)の間の領域で、前記線(2)を前記撚りヘッド(3、4)の間の領域に引くために前記線引き込みグリッパ(10)がガイド(11)に沿って変位可能である、ことを特徴とする」と訂正され、明確な記載となった。
同じ文言について、請求項4を引用する請求項5についても同様に明確である。
また、訂正後の上記記載を含む請求項4、5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(ウ)請求項7の「前記線(2)をその第1の端で掴むように構成されている」について(特許異議申立書第18頁第9行-第18頁第13行、第19頁第8行-第19頁第13行、第19頁第19行-第20頁第6行)
本件訂正により、請求項7の記載は「線(2)をその第1の端で掴むように構成されている撚り装置(1)で、ワイヤ、ケーブル、線束、光ファイバなどのような電気的又は光学的な前記線(2)を撚る方法」と訂正され、明確な記載となった。
同じ文言について、請求項7を直接的又は間接的に引用する請求項8-13についても同様に明確である。
また、訂正後の上記記載を含む請求項7-13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、発明の詳細な説明の記載は、発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

(エ)請求項7の「撚り対象の前記線(2)は、撚りヘッド(3,4)の間で前記撚り装置(1)に連続的に引き込まれる」について(特許異議申立書第18頁第14行-第19頁第13行、第19頁第19行-第20頁第6行)
本件訂正により、請求項7の記載は、「撚り対象の前記線(2)は、前記撚りヘッド(3,4)の間に、すでに引き込まれた一本の線(2)が前記線移送グリッパ(6,7)に保持されている期間中に更なる線(2)を引き込むように、線引き込みグリッパ(10)により連続的に引き込まれる」と訂正された。
この記載によれば、「連続的に引き込まれる」とは、「すでに引き込まれた一本の線(2)が前記線移送グリッパ(6,7)に保持されている期間中に更なる線(2)を引き込むように、線引き込みグリッパ(10)により連続的に引き込まれる」との意味であることが明確である。
また、「撚りヘッド(3,4)の間で前記撚り装置(1)に」が、「撚りヘッド(3,4)の間に・・・連続的に引き込まれる」と訂正され、明確な記載となった。
同じ文言について、請求項7を直接的又は間接的に引用する請求項8-13についても同様に明確である。
また、訂正後の上記記載を含む請求項7-13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、発明の詳細な説明の記載は、発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

(オ)請求項9の「前記撚りヘッド(3、4)のお互いからの間隔が・・・前記撚りヘッド(3、4)の回転の関数として低減される」について(特許異議申立書第19頁第14行-第19頁第18行)
本件訂正により、請求項9の記載は、「前記撚りヘッド(3、4)のお互いの間隔が前記撚りプロセスの間に、好ましくは前記撚りヘッド(3、4)の回転の関数として低減される」と訂正され、明確な記載となった。

(カ)請求項13の「前記線(2)を前記撚りヘッド(3、4)の間の領域に引くために前記線引き込みグリッパ(10)がそれに沿って変位可能なガイド(11)が動き、」について(特許異議申立書第20頁第7行-第20頁第12行)
本件訂正により、請求項13の記載は、「前記撚り装置(1)が前記線(2)を掴むための線引き込みグリッパ(10)とガイド(11)とを備えており、且つ、前記撚りヘッド(3、4)の間の領域で、前記線(2)を前記撚りヘッド(3、4)の間の領域に引くために前記線引き込みグリッパ(10)が前記ガイド(11)に沿って変位可能であり、」と訂正され、明確な記載となった。
また、訂正後の上記記載を含む請求項13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。

イ 特許法第29条第1項第3号、第2項について
(ア)本件発明1について
甲第1号証には、「自動裁断・撚り装置」に関する発明が、甲第2号証には、「ツイスト電線製造装置」に関する発明が、甲第3号証には、「ツイスト電線製造装置」に関する発明が、甲第4号証には、「ツイスト電線製造方法及びその装置」に関する発明が記載されているが、甲第1?4号証のいずれにも、本件発明1の発明特定事項である、「それぞれ一つの線移送グリッパ(6,7)が前記撚りヘッド(3,4)に割り当てられ、前記線移送グリッパ(6,7)が、前記線(2)のそれぞれの端を、それぞれの撚りヘッド(3,4)に移送し、
それぞれの撚りヘッド(3,4)の間に、すでに引き込まれた一本の線(2)が前記線移送グリッパ(6,7)に保持されている期間中に更なる線(2)を引き込むように、前記撚り対象の線(2)を連続的に引き込む線引き込みグリッパ(10)を備える」ことについては記載乃至示唆はされていない。
また、上記本件発明1の発明特定事項が撚り装置の技術分野において周知の技術であるともいえない。
したがって、本件発明1は、甲第1?4号証に記載された発明であるということはできないし、また、甲第1?4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(イ)本件発明2-6について
本件発明2-6の請求項の記載は、本件発明1の請求項の記載を引用して記載したものであるから、本件発明2-6は、本件発明1の上記発明特定事項と同じ特定事項を有するものである。
したがって、上記(ア)と同じ理由により、本件発明2-6は、甲第1?4号証に記載された発明であるということはできないし、また、甲第1?4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(ウ)本件発明7について
甲第1号証には、「自動裁断・撚り装置」に関する発明が、甲第2号証には、「ツイスト電線製造装置」に関する発明が、甲第3号証には、「ツイスト電線製造装置」に関する発明が、甲第4号証には、「ツイスト電線製造方法及びその装置」に関する発明が記載されているが、甲第1?4号証のいずれにも、本件発明7の発明特定事項である、「撚り対象の前記線(2)は、前記撚りヘッド(3,4)の間に、すでに引き込まれた一本の線(2)が前記線移送グリッパ(6,7)に保持されている期間中に更なる線(2)を引き込むように、線引き込みグリッパ(10)により連続的に引き込まれる、」ことについては記載乃至示唆はされていない。
また、上記本件発明7の発明特定事項が撚り装置の技術分野において周知の技術であるともいえない。
したがって、本件発明7は、甲第1?4号証に記載された発明であるということはできないし、また、甲第1?4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(エ)本件発明8-13について
本件発明8-13の請求項の記載は、本件発明7の請求項の記載を引用して記載したものであるから、本件発明8-13は、本件発明7の上記発明特定事項と同じ特定事項を有するものである。
したがって、上記(ウ)と同じ理由により、本件発明8-13は、甲第1?4号証に記載された発明であるということはできないし、また、甲第1?4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由乃至特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1-13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1-13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ、ケーブル、線束、光ファイバなどのような電気的又は光学的な線(2)を撚るための撚り装置(1)、特にケーブル撚り装置であって、
ベース(5)と前記ベース(5)に対して回転されることができる撚りヘッド(3)とを備えており、前記撚り対象の線(2)をその第1の端で掴むように構成されており、
前記撚り装置(1)が、前記ベース(5)に対して回転されることができる第2の撚りヘッド(4)を備えており、これが前記第1の撚りヘッド(3)の反対側に配置され、前記第1の端とは反対側の第2の端で前記撚り対象の線(2)を掴むように構成され、
且つ、前記第1の撚りヘッド(3)が第2の撚りヘッド(4)とは反対の方向に回転することができ、
それぞれ一つの線移送グリッパ(6,7)が前記撚りヘッド(3,4)に割り当てられ、前記線移送グリッパ(6,7)が、前記線(2)のそれぞれの端を、それぞれの撚りヘッド(3,4)に移送し、
それぞれの撚りヘッド(3,4)の間に、すでに引き込まれた一本の線(2)が前記線移送グリッパ(6,7)に保持されている期間中に更なる線(2)を引き込むように、前記撚り対象の前記線(2)を連続的に引き込む線引き込みグリッパ(10)を備える、
撚り装置。
【請求項2】
各撚りヘッド(3、4)が別個の回転ドライブ(8、9)によって回転されることができて、好ましくは、前記撚りヘッド(3、4)の前記回転ドライブ(8、9)がお互いに同期していることを特徴とする、請求項1に記載の撚り装置。
【請求項3】
前記撚りヘッド(3、4)がお互いに対する相互の間隔の変動のために変位可能であって、好ましくは、前記撚りヘッド(3、4)の少なくとも一つが、前記ベース(5)に対して変位可能なキャリッジ(15)の上に置かれていることを特徴とする、請求項1または2に記載の撚り装置。
【請求項4】
前記撚り装置(1)が前記線(2)を掴むための線引き込みグリッパ(10)を備えており、且つ、ガイド(11)を備え、
前記撚りヘッド(3、4)の間の領域で、前記線(2)を前記撚りヘッド(3、4)の間の領域に引くために前記線引き込みグリッパ(10)がガイド(11)に沿って変位可能である、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の撚り装置。
【請求項5】
前記撚り装置(1)の前記ベース(5)が少なくとも2つの部分(5a、5b)を備えており、前記ベース(5)の第2の部分(5b)が前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対して、前記ガイド(11)に沿った前記線引き込みグリッパ(10)の変位の方向と実質的に平行な方向に変位可能であり、且つ、前記線引き込みグリッパ(10)を有する前記ガイド(11)が前記ベース(5)の第1の部分(5a)の上に置かれており、前記撚りヘッド(3)の一つが前記ベース(5)の第2の部分(5b)の上に置かれており、前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対する前記ベース(5)の第2の部分(5b)の位置決めのために、前記線引き込みグリッパ(10)は、好ましくはアクティブインターフェース(Y)を介して前記ベース(5)の第2の部分(5b)に結合されることができ、前記ガイド(11)に沿った変位の間に、結合された前記線引き込みグリッパ(10)が前記ベース(5)の第2の部分(5b)を前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対して駆動し且つそれを所望の位置に持ってくることを特徴とする、請求項4に記載の撚り装置。
【請求項6】
前記撚りヘッド(3、4)の各々が少なくとも2つのグリッパアーム(13,14)を有しており、それらが開位置から前記線(2)を掴む閉位置まで移動されることができることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載の撚り装置。
【請求項7】
ベース(5)と前記ベース(5)に対して回転されることができる撚りヘッド(3)とを備えており、線(2)をその第1の端で掴むように構成されている撚り装置(1)で、ワイヤ、ケーブル、線束、光ファイバなどのような電気的又は光学的な前記線(2)を撚る方法であって、
前記撚り装置(1)が、前記ベース(5)に対して回転されることができる第2の撚りヘッド(4)を備えており、これが前記第1の撚りヘッド(3)の反対側に配置され、前記第1の端とは反対側の第2の端で前記撚り対象の線(2)が第2の撚りヘッド(4)によって掴まれるように構成されており、
且つ、前記2つの撚りヘッド(3、4)が相互に反対方向に回転することができ、
撚り対象の前記線(2)は、前記撚りヘッド(3,4)の間に、すでに引き込まれた一本の線(2)が前記線移送グリッパ(6,7)に保持されている期間中に更なる線(2)を引き込むように、線引き込みグリッパ(10)により連続的に引き込まれる、ことを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記線(2)のそれぞれの端が線移送グリッパ(6,7)によって前記それぞれの撚りヘッド(3,4)まで移送され、好ましくは、撚り対象の前記線(2)が、それらが同時に前記撚りヘッド(3,4)まで移送される前に前記線移送グリッパ(6,7)によって保持されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記撚りヘッド(3、4)のお互いの間隔が前記撚りプロセスの間に、好ましくは前記撚りヘッド(3、4)の回転の関数として低減されることを特徴とする、請求項7または8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記撚りヘッド(3、4)がお互いに同期して駆動され、及び/又は、前記撚りヘッド(3、4)の回転速度が前記撚りプロセスの第1の期間の間に連続的に増加されることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記撚りヘッド(3、4)の回転速度が前記撚りプロセスの第2の期間の間に連続的に減少されることを特徴とする、請求項7から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記撚りプロセスの終わりに、前記撚りヘッド(3、4)の回転の方向が逆転されることを特徴とする、請求項7から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記撚り装置(1)が前記線(2)を掴むための線引き込みグリッパ(10)とガイド(11)とを備えており、且つ、前記撚りヘッド(3、4)の間の領域で、前記線(2)を前記撚りヘッド(3、4)の間の領域に引くために前記線引き込みグリッパ(10)が前記ガイド(11)に沿って変位可能であり、且つ、前記撚り装置(1)の前記ベース(5)が少なくとも2つの部分(5a、5b)を備えており、前記ベース(5)の第2の部分(5b)が前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対して、前記ガイド(11)に沿った前記線引き込みグリッパ(10)の変位の方向と実質的に平行な方向に変位可能であり、且つ、前記線引き込みグリッパ(10)を有する前記ガイド(11)が前記ベース(5)の第1の部分(5a)の上に置かれており、前記撚りヘッド(3)の一つが前記ベース(5)の第2の部分(5b)の上に置かれており、前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対する前記ベース(5)の第2の部分(5b)の位置決めのために、前記線引き込みグリッパ(10)は、好ましくはアクティブインターフェース(Y)を介して前記ベース(5)の第2の部分(5b)に結合されることができ、前記ガイド(11)に沿った変位の間に結合された前記線引き込みグリッパ(10)が前記ベース(5)の第2の部分(5b)を前記ベース(5)の第1の部分(5a)に対して駆動し且つそれを所望の位置に持ってくることを特徴とする、請求項7から12のいずれか一つに記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-06-26 
出願番号 特願2014-540628(P2014-540628)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H01B)
P 1 651・ 536- YAA (H01B)
P 1 651・ 537- YAA (H01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 安久 司郎
特許庁審判官 千葉 輝久
松田 岳士
登録日 2017-03-17 
登録番号 特許第6109841号(P6109841)
権利者 シュロニガー ホールディング アーゲー
発明の名称 撚り装置  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  

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