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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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異議2017701054 | 審決 | 特許 |
異議2016700780 | 審決 | 特許 |
異議2017700456 | 審決 | 特許 |
異議2017700366 | 審決 | 特許 |
異議2018700579 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08J 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08J 審判 全部申し立て 特39条先願 C08J |
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管理番号 | 1343008 |
異議申立番号 | 異議2017-700438 |
総通号数 | 225 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-09-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-05-01 |
確定日 | 2018-07-09 |
異議申立件数 | 4 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6020975号発明「ポリオレフィン樹脂フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6020975号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?14]について訂正することを認める。 特許第6020975号の請求項1ないし6、8、9、11ないし13に係る特許を維持する。 特許第6020975号の請求項7、10及び14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯等 特許第6020975号(設定登録時の請求項の数は14。以下、「本件特許」という。)は、平成23年5月31日に出願された特願2011-122064号の一部を新たな特許出願として平成27年10月27日に出願された特願2015-210633号に係るものであって、平成28年10月14日に設定登録された。 特許異議申立人 青山裕樹(以下、単に「異議申立人1」という。)は、平成29年5月1日、本件特許の請求項1ないし14に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをし、同じく特許異議申立人 土田裕介(以下、単に「異議申立人2」という。)は、同年同月1日、本件特許の請求項1ないし14に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをし、同じく特許異議申立人 一條淳(以下、単に「異議申立人3」という。)は、同年同月1日、本件特許の請求項1ないし14に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをし、同じく特許異議申立人 鈴木清司(以下、単に「異議申立人4」という。)は、同年同月2日、本件特許の請求項1ないし14に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。 当審において、平成29年8月7日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年10月10日付けで、訂正請求書及び意見書を提出したので、同年同月13日付けで異議申立人1ないし4に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人1は、同年11月14日付けで意見書を提出し、異議申立人2は、同年同月15日付けで意見書を提出し、異議申立人3及び4は、同年同月16日付けで意見書を提出した。当審において、平成30年1月19日付けで取消理由<決定の予告>を通知したところ、特許権者から、同年4月2日付けで、訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」という。)及び意見書が提出されたので、同年4月6日付けで異議申立人1ないし4に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人2から、同年5月8日付けで意見書が提出され、異議申立人3から、同年同月9日付けで意見書が提出され、異議申立人1及び4から、同年同月10日付けで意見書が提出されたものである。 なお、平成29年10月10日付けの訂正請求書は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし9のとおりである。なお、下線については訂正箇所に当審が付したものである。 訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、 「バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンと、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンのモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンと、を含んでなる樹脂組成物からなる樹脂フィルムであって、 前記バイオマス由来または化石燃料由来のα-オレフィンが、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであり」 と記載されているのを 「バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンと、を含んでなる樹脂組成物からなる樹脂フィルムであって、 前記バイオマス由来または化石燃料由来のα-オレフィンが、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであり」 に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし6、8、9、11ないし13についても同様の訂正を行う。 訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項6に、 「5?90質量%の前記バイオマス由来のポリオレフィンと、10?95質量%の前記化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでなる」 と記載されているのを 「前記バイオマス由来のポリエチレンを5?90質量%と、前記化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン及び前記化石燃料由来の低密度ポリエチレンを合計で10?95質量%と、を含んでなる」 に訂正する。 請求項6を直接又は間接的に引用する請求項8、9、11ないし13についても同様の訂正を行う。 訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項7を削除する。 訂正事項4 訂正前の特許請求の範囲の請求項8における 「請求項1?7のいずれか一項」 との記載を、 「請求項1?6のいずれか一項」 に訂正する。 訂正事項5 訂正前の特許請求の範囲の請求項10を削除する。 訂正事項6 訂正前の特許請求の範囲の請求項11における 「請求項1?7のいずれか一項」 との記載を、 「請求項1?6のいずれか一項」 に訂正する。 訂正事項7 訂正前の特許請求の範囲の請求項12における 「請求項1?7のいずれか一項」 との記載を、 「請求項1?6のいずれか一項」 に訂正する。 訂正事項8 訂正前の特許請求の範囲の請求項13における 「請求項1?7のいずれか一項」 との記載を、 「請求項1?6のいずれか一項」 に訂正する。 訂正事項9 訂正前の特許請求の範囲の請求項14を削除する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項 (1) 訂正事項1について ア この訂正は、訂正前の請求項1に記載の「バイオマス由来のポリオレフィン」の種類を、「バイオマス由来のポリエチレン」に具体的に限定し、「化石燃料由来のポリオレフィン」の種類を「化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレン」に具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。 イ そして、当該訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書の段落【0036】、【0038】、【0043】、【0052】、【0081】、【0082】の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (2) 訂正事項2について ア この訂正は、訂正事項1と同様に、訂正前の請求項6に記載の「バイオマス由来のポリオレフィン」の種類を、「バイオマス由来のポリエチレン」に具体的に限定し、「化石燃料由来のポリオレフィン」の種類を「化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレン」に具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。 イ そして、当該訂正事項2は、願書に最初に添付した明細書の段落【0036】、【0038】、【0043】、【0052】、【0081】、【0082】の記載から、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (3) 訂正事項3、5及び9について ア 訂正事項3、5及び9は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項7、10及び14を削除するというものであるから、当該訂正事項3、5及び9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項3、5及び9は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項3、5及び9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (4) 訂正事項4、6ないし8について ア 訂正事項4、6ないし8は、訂正事項3においての請求項7を削除したことに伴い、請求項8、11ないし13における従属番号の記載を、「請求項1?7のいずれか一項」から「請求項1?6のいずれか一項」へと訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。 そして、当該訂正事項4、5ないし8は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ よって、訂正事項4、6ないし8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (5) 一群の請求項について 訂正前の請求項2?14は、直接または間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって請求項1が訂正されることから、請求項2?14は訂正事項1に連動して訂正されるものである。従って、訂正事項1ないし9は、訂正前の請求項1ないし14という一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?14]について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明14」という。)は、平成30年4月2日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。 「【請求項1】 バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレンと、を含んでなる樹脂組成物からなる樹脂フィルムであって、 前記バイオマス由来または化石燃料由来のα-オレフィンが、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであり、 前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のエチレンを前記樹脂組成物全体に対して5質量%以上含んでなり、前記樹脂組成物が、0.91?0.96g/cm^(3)の密度を有する、樹脂フィルム。 【請求項2】 前記樹脂組成物が、0.91?0.918g/cm^(3)の密度を有する、請求項1に記載の樹脂フィルム。 【請求項3】 前記樹脂組成物が、1?30g/10分のメルトフローレートを有する、請求項1または2に記載の樹脂フィルム。 【請求項4】 前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のエチレンを、前記樹脂組成物全体に対して5?95質量%含んでなる、請求項1?3のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。 【請求項5】 前記バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンを含むモノマーが、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンをさらに含む、請求項1?4のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。 【請求項6】 前記バイオマス由来のポリエチレンを5?90質量%と、前記化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン及び前記化石燃料由来の低密度ポリエチレンを合計で10?95質量%と、を含んでなる、請求項1?5のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。 【請求項7】(削除) 【請求項8】 請求項1?6のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法であって、 前記樹脂組成物を押出成形することを特徴とする、製造方法。 【請求項9】 前記押出成形が、Tダイ法またはインフレーション法により行われる、請求項8に記載の製造方法。 【請求項10】(削除) 【請求項11】 請求項1?6のいずれか一項に記載の樹脂フィルムを備える、シート成形品。 【請求項12】 請求項1?6のいずれか一項に記載の樹脂フィルムを備える、ラベル材料。 【請求項13】 請求項1?6のいずれか一項に記載の樹脂フィルムを備える、蓋材。 【請求項14】(削除)」 第4 取消理由<決定の予告>の概要 平成30年1月19日付けで通知した取消理由<決定の予告>における取消理由は、概略、以下のとおりである。 「取消理由1 本件発明1ないし14は、その原出願の出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1又は6に記載された発明及び刊行物2ないし5に記載された事項に基いて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるものである。 記 刊行物1: 特開昭53-31751号公報(異議申立人1が提出した特許異議申立書に添付された甲第1号証、異議申立人3が提出した特許異議申立書に添付された甲第1号証) 刊行物2: 杉山英路ら、「地球環境にやさしい『サトウキビ由来のポリエチレン』」、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、2009年8月15日、第37巻、第8号、通巻437号、第63?67頁(異議申立人1が提出した特許異議申立書に添付された甲第2号証、異議申立人2が提出した特許異議申立書に添付された甲第5号証、異議申立人3が提出した特許異議申立書に添付された甲第2号証、異議申立人4が提出した特許異議申立書に添付された甲第2号証) 刊行物3: 「特集 自動車・複写機で採用進むバイオポリエチレンも登場 バイオプラスチック市場拡大へ」、日経バイオテク 12-20 2010、日経BP社、2010年12月20日、第702巻、p3-8(異議申立人2が提出した特許異議申立書に添付された甲第7号証) 刊行物4: 特表2010-511634号公報(異議申立人2が提出した特許異議申立書に添付された甲第6号証、異議申立人3が提出した特許異議申立書に添付された甲第3号証) 刊行物5: 特表2011-506628号公報(当審において、発見した文献) 刊行物6: 特許第3003996号公報(当審において、発見した文献)」 第5 当審合議体の判断 当審合議体は、以下に述べるように、上記取消理由<決定の予告>の取消理由1には、理由がないと判断する。 1 刊行物1に記載された発明及び刊行物6に記載された発明 (1) 刊行物1に記載された発明 刊行物1には、刊行物1の特許請求の範囲の記載から、以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。 <刊行物1発明> 「チーグラー触媒を利用した重合法によって得られる密度0.920?0.945、メルトインデックス0.5以上のエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体類と、高圧重合法によって得られるエチレン重合体との混合樹脂において、密度0.920?0.941、メルトインデックス1.0以上、破断点伸び700%以下の範囲にある混合樹脂よりなる包装フィルム。」 (2) 刊行物6に記載された発明 刊行物6の特許請求の範囲には、 「基層とヒートシール層とからなる積層フィルムであって、該ヒートシール層はエチレン・α-オレフィン共重合体及びとエチレン重合体を含有する樹脂組成物から形成され、該樹脂組成物のMFRが5?25/10分、密度が0.87?0.932g/cm^(3)、Q値が2?10、ME(3g)が1.2?2.3、MTが1.0以上であり、MEとMTの関係が ME≧[0.2×MT+1]/g を満たし、該積層フィルムのヒートシール層同志をシール温度110℃;シール圧力2kg/cm^(2);シール時間1秒でヒートシールした時のシール強度が2.9?5.9kg/15mmであり、且つ3kg荷重ヒートシール温度が84?114℃である積層フィルム。」 という積層フィルムが記載されていて、刊行物6の実施例においては、当該積層フィルムは、基層フィルム上に押出ラミネートにより製造されている。 ここで、本件特許明細書には、本発明の樹脂フィルムは、「単層のフィルムとして用いてもよいし、複数枚をラミネートして積層フィルムとして用いてもよい。」(段落【0063】)と記載されていて、具体的な実施例は、全て厚み12μmのPETフィルム上に押出ラミネートした積層フィルムであって、実施例において評価されているのは、押出ラミネート時の「ネックイン」、「ドローダウン」、「モーター負荷」、「樹脂圧力」、「積層フィルムの剛性(ループスティフネス)」及び「シール開始温度」である。 上記本件特許明細書の記載を参酌すれば、刊行物6において上記積層フィルムが記載されている以上、(基層に押出ラミネートされる)ヒートシール層を構成するフィルムとして、刊行物6には、以下の樹脂フィルムの発明(以下、「刊行物6発明」という。)も記載されているということができる。 <刊行物6発明> 「直鎖状低密度ポリエチレンであるエチレン・α-オレフィン共重合体及び高圧法ポリエチレンであって密度が0.915?0.930g/cm^(3)であるエチレン重合体を含有する樹脂組成物から形成され、該樹脂組成物のMFRが5?25/10分、密度が0.87?0.932g/cm^(3)、Q値が2?10、ME(3g)が1.2?2.3、MTが1.0以上であり、MEとMTの関係が ME≧[0.2×MT+1]/g を満たすヒートシール層を構成する樹脂フィルム。」 2 刊行物2ないし5に記載された事項 (1) 刊行物2に記載された事項 ア 「CO_(2)(炭酸ガス)の増加による地球温暖化等の問題が明確になってきた。・・・ポリエチレン原料を従来の石油系原料から再生可能なサトウキビ(バイオマス系)に置き換えることは、植物の育成時のCO_(2)吸収と燃焼時の排出が同一(カーボンニュートラル)になり、地球上のCO_(2)を増やさないので地球環境にやさしく、また石油資源利用の節約にも貢献する。」(第63頁「1.はじめに」の項) イ 「サトウキビ由来ポリエチレンの製造フローを図1に示す。サトウキビ畑より刈り取ったサトウキビを圧延ローラーで糖液を取り出し、その糖液を加熱濃縮して結晶化する粗糖分(砂糖原料)と残糖液(廃糖蜜)を遠心分離器により分離する。この廃糖蜜を適切な濃度まで水で希釈して酵母菌により発酵させエタノ-ルを作る。次にバイオエタノールを300?400℃に加熱してアルミナ等の触媒により分子内脱水反応させると高い収率でエチレンが生成される。生成物にはエチレン以外に水分、有機酸、一酸化炭素等の不純物が含まれるので必要な純度までエチレンを精製して、次の工程のポリエチレン重合プラントへ導入する。ポリエチレン重合プラントで重合触媒によりエチレンを高分子化(重合)してポリエチレンを生産する。」(第63頁「2.サトウキビ由来ポリエチレンの製造工程」の項) ウ 「 」(第63頁「図1 製造フロー」) エ 「当社とBraskem社は共同でトリウンフォ工場内の研究開発センターで図2にある試験設備により同等性を評価した。 (1)エチレン 試験設備にバイオマス由来エタノールを導入し、出来上がったエチレンの成分分析を行った結果、従来の石油由来エチレンとの品質同等性を確認した。 (2)ポリエチレン 試験重合機に石油系エチレンとバイオマス系エチレンをそれぞれ投入し、同1条件でポリエチレン重合し、出来上がったポリマーの同等性を検討した。この結果を表1に示す。多少の数値上の差異はあるが、テスト重合機の条件設定に影響されていると考えられ、基本的にはいずれの用途グレードとも石油系、バイオマス系の品質は同等であることが確認できた。」(第63頁「3.サトウキビ由来ポリエチレンの同等性」の項) オ 「 」(第64頁「表1 石油系、バイオマス系の同等性評価」) カ 「今回開発されたサトウキビ由来ポリエチレンは植物由来の樹脂であるが、従来から生産されてきた石油由来ポリエチレンと外観、物性が同じであり、バイオマス度(カーボンの由来比)を数値化することが重要であると考え、^(14)C(放射性炭素年代測定)による分析手法により判別を行った。図6は、Braskem社の試験プラントで試作したサトウキビ由来のHDPEを米国のベータアナリティック社においてASTM D6866^(2))測定法に基づいて炭素分析した結果であるが、100%バイオベースであることが確認された。」(第65頁「6.バイオマス度の判別法(^(14)Cによる分析手法)」の項) (2) 刊行物3に記載された事項 ア 「現段階では、バイオプラスチック製の部品のコストが、石油由来に比べて割高であることは否めないが」(4頁左欄) イ 「バイオプラスチックが登場した当初、特に注目された特徴は『生分解性』だった。しかし05年ごろを境に、CO_(2)排出抑制効果や石油資源代替のメリットにも注目が集まるようになり、『植物度』が一定以上高ければ、必ずしも生分解性でなくてもバイオプラスチックとしての価値が認められるようになった。」(4頁右欄) ウ 「 」(6頁「バイオプラスチックの主な認証マークと制度の概要」) エ 「新しい汎用のバイオプラスチックも登場する。レジ袋販売で大手の福助工業は2011年から、『バイオポリエチレン』製レジ袋を販売することを、エコプロダクツ2010で明らかにした。ブラジルBraskem社がサトウキビの廃糖蜜から生産したものを輸入して原料使用する。既にレジ袋を試作して、スーパーマーケットなどにサンプル配布している。バイオポリエチレンの化学構造は石油由来と基本的に同じ。実際に、試作品の品質は、石油由来のポリエチレンと変わらなかったと福助の担当者は述べている。レジ袋の販売価格は、バイオポリエチレン100%なら石油由来の5割増し、25%なら1割増し程度になりそう。」(第6頁左欄) (3) 刊行物4に記載された事項 「【0084】 本発明による方法によって生成したプロピレン、エチレン及びブチレンは、それらの公知の誘導体を得るために、好ましくはポリプロピレン及びそのコポリマー並びにポリエチレン及びそのコポリマーを生成するために使用することができ、再生可能な天然源からの原料及び残渣のみを使用する本発明の最も好ましい実施形態が適用される場合、その組成が、ASTM D6866-06標準による試験法で決定して、再生可能な天然源からの炭素を100%含むポリマーが得られる。他の補完的な一代替は、中でも、例えばナフサ、天然ガス、石炭、再生プラスチック及び熱電力発生設備からの燃焼ガスなどの合成ガス生成のための非天然(化石)由来の他の原料を使用することにあり、但しASTM D6866-06標準による試験法で決定して、最終生成物(オレフィン及びそれらの公知の誘導体、並びにポリエチレン及びそのコポリマー、ポリプロピレン及びそのコポリマー、並びにPVCなどのポリマー)が、再生可能な天然源からの炭素を少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%含む。」 (4) 刊行物5に記載された事項 「【0001】 本発明は、少なくとも1つの再生可能な天然原料からのエチレン-ブチレンコポリマーの製造のための統合された方法に関する。より具体的には、本発明はエチレン及びコモノマーとしての1-ブチレンのコポリマーの製造のための重合において使用されるエチレンモノマーがエタノールの脱水反応によって得られる方法に関し、このエタノールは糖類の発酵によって製造され、1-ブチレンは以下の反応の少なくとも1つによって得られる:(i)糖類の発酵段階において直接生成された1-ブタノールの脱水反応、(ii)エタノールから化学的経路を経て得られる1-ブタノールの脱水反応、このエタノールは糖類の発酵によって生成される、(iii)発酵から得られたエタノールの脱水によって生成されたエチレンの二量体化反応に続くここで形成された2-ブチレン異性体の異性化反応。」 3 本件発明1について (1) 刊行物1発明との対比・判断 ア 対比 本件発明1と刊行物1発明とを対比する。 刊行物1発明の「チーグラー触媒を利用した重合法によって得られる密度0.920?0.945、メルトインデックス0.5以上のエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体類」と、本件発明1の「バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレン」とは、「エチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるポリエチレン」の限りで相当する。 刊行物1発明の「高圧重合法によって得られるエチレン重合体」と、本件発明1の「化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレン」とは、「化石燃料由来のポリエチレン」の限りで相当する。 刊行物1発明の「混合樹脂」、「包装フィルム」は、それぞれ、本件発明1の「樹脂組成物」、「樹脂フィルム」に相当する。 刊行物1発明の「混合樹脂」が「密度0.920?0.941」であることは、本件発明1の「樹脂組成物」が「0.91?0.96g/cm^(3)の密度を有する」ことと重複一致している。 以上の点からみて、本件発明1と刊行物1発明とは、 「エチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるポリエチレンと、化石燃料由来のポリエチレンと、を含んでなる樹脂組成物からなる樹脂フィルムであって、 樹脂組成物が、0.91?0.96g/cm^(3)の密度を有する、樹脂フィルム。」 である点で一致し、 次の点で相違する。 <相違点1> 樹脂組成物の構成成分に関し、本件発明1においては、「バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレン」、「化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン」及び「化石燃料由来の低密度ポリエチレン」の3成分を含んでなる樹脂組成物から構成されており、「バイオマス由来のエチレンを5質量%以上含んでいる」と特定するのに対し、刊行物1発明では、「チーグラー触媒を利用した重合法によって得られる密度0.920?0.945、メルトインデックス0.5以上のエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体類と、高圧重合法によって得られるエチレン重合体」の2成分からなる樹脂組成物であって、バイオマス由来のエチレンを含んでいない点。 <相違点2> α-オレフィンに関して、本件発明1では、「ブチレン、ヘキセン、またはオクテンである」と特定するのに対して、刊行物1発明では、この点を特定しない点。 イ 判断 以下、上記相違点について検討する。 相違点1について 当業者は、ポリエチレンにつき、密度に応じて以下のように理解している。 密度範囲 JIS K6922 ASTM D1248 高密度ポリエチレン 0.942 ? 0.941 ? 中密度ポリエチレン 0.930 ? 0.941 0.926 ? 0.940 低密度ポリエチレン 0.910 ? 0.929 0.910 ? 0.925 (松浦一雄・三上尚孝編「ポリエチレン技術読本」工業調査会、2001年7月1日初版1刷発行、32頁) そうすると、刊行物1発明の樹脂組成物の2成分は、刊行物1の「一方、上述のチーグラー触媒を利用して得られたエチレン重合体またはエチレンとα-オレフイン類との共重合体類に添加,混合する高圧重合法エチレン重合体は、混合樹脂の物性が最終的に密度0.920?0.941、好ましくは0.920?0.938、メルトインデツクス0.5以上、好ましくは2.0?40.0(最も好ましくは3.0?30.0)、破断点伸び700%以下の範囲内に調節されればよく、通常の高圧重合法で得られたエチレン重合体をそのまゝ使用することができる。」(2頁右下欄8行?3頁左上欄2行)の記載から、低密度又は中密度ポリエチレン又は低密度又は中密度のエチレンとα-オレフィン類との共重合体と、高圧重合法によって得られる低密度ポリエチレン又は中密度ポリエチレンということができるから、本件発明1の3成分の樹脂組成物とは2成分のみでも異なるものである。 ここで、刊行物1には、「本発明で製膜用に使用する混合樹脂の一成分たる密度0.920?0.945、メルトインデツクス0.5以上のエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフイン類との共重合体類は、チーグラー触媒を利用して、中,低圧で重合または共重合を行うか、または核エチレン主体重合体類を何種類か適性にブレンドして、上述の通りの物性を有するようにするかして得られるが」(2頁左下欄10行?右下欄2行)との記載があるものの、この示唆のとおり、刊行物1発明の「チーグラー触媒を利用した重合法によって得られる密度0.920?0.945、メルトインデックス0.5以上のエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体類」を2つの同様なエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体としたとしても、本件発明1の3成分からなる樹脂組成物とはならない。 そうすると、刊行物1発明の「チーグラー触媒を利用した重合法によって得られる密度0.920?0.945、メルトインデックス0.5以上のエチレン重合体またはエチレンを主体としたエチレンとα-オレフィン類との共重合体類と、高圧重合法によって得られるエチレン重合体」という2成分の樹脂組成物を「エチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるポリエチレン」、「化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン」及び「化石燃料由来の低密度ポリエチレン」という3成分とすることは、その構成自体が刊行物1ないし5のいずれの証拠にもなく、動機もないから、たとえ、これらの一成分について、地球温暖化、石油資源枯渇等への問題に対処すると共に、コストにも配慮して、バイオマス由来のエチレンモノマーを利用したバイオマス由来のポリエチレンとすることが適宜なし得たことであっても、相違点1は、当業者が容易に想到し得たものではない。 ウ まとめ よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物1発明及び刊行物2ないし5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえない。 (2) 刊行物6発明との対比・判断 本件発明1と刊行物6発明とを対比する。 刊行物6発明の「直鎖状低密度ポリエチレンであるエチレン・α-オレフィン共重合体」と、本件発明1の「バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるポリエチレン」とは、「エチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるポリエチレン」の限りで相当する。 刊行物6発明の「高圧法で製造された密度0.915?0.930g/cm^(3)のエチレン重合体」と、本件発明1の「化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと化石燃料由来の低密度ポリエチレン」とは、「化石燃料由来の低密度ポリエチレン」の限りで相当する。 さらに、刊行物6発明の「樹脂フィルム」が「密度0.87?0.931」であることは、本件発明1の「樹脂組成物」が「0.91?0.96g/cm^(3)の密度を有する」ことと重複一致している。 以上の点からみて、本件発明1と刊行物6発明とは、 「エチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンと、を含んでなる樹脂組成物からなる樹脂フィルムであって、 樹脂組成物が、0.91?0.96g/cm^(3)の密度を有する、樹脂フィルム。」 である点で一致し、 次の点で相違する。 <相違点3> 樹脂組成物の構成成分に関し、本件発明1においては、「バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレン」、「化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン」及び「化石燃料由来の低密度ポリエチレン」の3成分を含んでなる樹脂組成物から構成されており、「バイオマス由来のエチレンを5質量%以上含んでいる」と特定するのに対し、刊行物6発明では、「直鎖状低密度ポリエチレンであるエチレン・α-オレフィン共重合体」及び「高圧法低密度ポリエチレン」の2成分からなる樹脂組成物であって、バイオマス由来のエチレンを含んでいない点。 <相違点4> α-オレフィンに関して、本件発明1では、「ブチレン、ヘキセン、またはオクテンである」と特定するのに対して、刊行物6発明では、この点を特定しない点。 以下、上記相違点について検討する。 相違点3について 刊行物6には、「直鎖状低密度ポリエチレンであるエチレン・α-オレフィン共重合体」及び「高圧法低密度ポリエチレン」に関して、以下の記載がある。 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】このようなブレンドによる改良技術によって加工性を満足させることができる材料は、逆に低温ヒートシール性、ヒートシール強度、ホットタック性などが不足となりがちで、これらの性能と加工性のバランスの良好な材料の開発が望まれていた。一方、近年、特開昭58-19309号公報等に記載されている新しい触媒を使用することによって、従来のLLDPEよりも分子量分布、組成分布の狭い特殊な材料が得られるようになったことから、本発明者らは、この特殊なLLDPEを押出ラミネート用材料として適用するために検討を行なったところ、上記の低温ヒートシール性、ヒートシール強度及びホットタック性の性能については従来のLLDPEよりも格段に良好なものとなるが、LLDPEの欠点である加工性の不良が従来のものより大幅に悪化してしまって、より一層バランスの悪い材料となってしまうことが判明した。本発明の目的は、この様な優れた性能を保ちながら加工性を改良する、上記従来の材料では達成されていない低温ヒートシール性、ヒートシール強度及びホットタック性などの性能に優れ、かつ、加工性の改良された積層フィルムを提供することである。」 「【0006】 【発明の実施の形態】 [1] ヒートシール層の構成 本発明の積層フィルムを構成する1つの層はヒートシール層である。該ヒートシール層はエチレン・α-オレフィン共重合体及びエチレン重合体を含有する樹脂組成物から形成されるものである。 1)エチレン・α-オレフィン共重合体(成分A) (a) 性状 本発明の樹脂組成物を構成する成分Aのエチレン・α-オレフィン共重合体は、以下の?の物性、好ましくはさらに?の物性を示すものであることが重要である。 【0007】 ・・・ 【0008】 密度 本発明にて用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体は、JIS K7112による密度が0.935g/cm^(3)以下、好ましくは0.87?0.92g/cm^(3)、特に好ましくは0.88?0.913g/cm^(3)、最も好ましくは0.89?0.91g/cm^(3)の物性を示すものである。該密度が上記範囲より大であると、低温ヒートシール性が不良となる。また、密度があまりに小さすぎると、フィルム表面にベタつきが生じ実用性に供し得なくなり、下限は通常0.86g/cm^(3)程度である。 ・・・ 【0013】(b) エチレン・α-オレフィン共重合体の製造 このような線状低密度ポリエチレンの製造法は、特開昭58-19309号、同59-95292号、同60-35005号、同60-35006号、同60-35007号、同60-35008号、同60-35009号、同61-130314号、特開平3-163088号の各公報、ヨーロッパ特許出願公開第420436号明細書、米国特許第5055438号明細書及び国際公開公報WO91/04257号明細書などに記載されている方法、すなわち、メタロセン触媒、特にメタロセン・アルモキサン触媒、または、例えば、国際公開公報WO92/01723号等に開示されているようなメタロセン化合物と以下に述べるメタロセン化合物と反応して安定なアニオンとなる化合物からなる触媒を使用して、主成分のエチレンと従成分のα-オレフィンとを共重合させる方法である。」 「【0019】(2)エチレン重合体(成分B)) (a) 性状 本発明の樹脂組成物を構成する成分Bのエチレン重合体、好ましくは、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)である。該エチレン重合体は、以下のおよびの物性を示すものを用い、好ましくはさらにおよびの物性を示すものが好ましい。 ・・・ 【0020】 密度 本発明にて用いられるエチレン重合体は、JIS K7112による密度が0.915?0.930g/cm^(3)、好ましくは0.916?0.925g/cm^(3)、特に好ましくは0.918?0.922g/cm^(3)の物性を示すものである。該密度が上記範囲より大であると、低温ヒートシール性が不良となる。また、密度が上記範囲より小さすぎると、フィルム表面にベタつきが多くなる。」 「【0027】[III]樹脂組成物の製造 (1) 配合 本発明の樹脂組成物は、通常の樹脂組成物の製造方法と同様の方法で成分Aのエチレン・α-オレフィン共重合体と成分Bのエチレン重合体とを配合することによって製造することができる。具体的には、成分Aと成分Bとを押出機、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー等を用いて溶融、混練し、樹脂組成物が得られる。該樹脂組成物は通常に行なわれている方法、例えば、押出機によりペレット状とするのが普通である。 【0028】(2) その他の添加剤 本発明の樹脂組成物には、一般に樹脂組成物用として用いられている補助添加成分、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤等を配合しても良い。」 「【0041】[II] 実験例 実施例1 エチレン・α-オレフィン共重合体(成分A)の製造 触媒の調製は、特開昭61-130314号公報に記載された方法で実施した。すなわち、錯体エチレン-ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド2.0ミリモルに、東洋ストファー社製メチルアルモキサンを上記錯体に対し1,000モル倍加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製し、以下の方法で重合を行なった。内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器にエチレンと1-ヘキセンとの混合物を1-ヘキセンの組成が80重量%となるように供給し、反応器内の圧力を1,600kg/cm^(2)に保ち、160℃で反応を行なった。反応終了後、MFRが18g/10分、密度が0.898g/cm^(3)、Q値が1.9、TREF溶出曲線のピークが1つであり、そのピーク温度が50℃、該ピーク温度のH/Wが1.5のエチレン・α-オレフィン共重合体(1-ヘキセン含量22重量%)を得た。 ・・・ 」 これらの記載からみて、刊行物6発明の樹脂組成物においては、これらの樹脂「直鎖状低密度ポリエチレンであるエチレン・α-オレフィン共重合体」、「高圧法ポリエチレンであって密度が0.915?0.930g/cm^(3)であるエチレン重合体」の2成分について、それぞれ、一種類づつを利用することのみ記載されていて、具体的な実施例及び比較例においても、この2成分の1種類づつからなる樹脂組成物が記載されているのみである。 そうすると、刊行物6には、「直鎖状低密度ポリエチレンであるエチレン・α-オレフィン共重合体」及び「高圧法低密度ポリエチレン」に加えて、他のポリエチレンを樹脂組成物を加えることは記載も示唆もされていない。 そして、刊行物1ないし5のいずれの証拠をみても、「エチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるポリエチレン」、「直鎖状低密度ポリエチレン」及び「低密度ポリエチレン」の3成分を含んでなる樹脂組成物は提示されていない。 してみれば、刊行物6発明の「直鎖状低密度ポリエチレンであるエチレン・α-オレフィン共重合体」及び「高圧法低密度ポリエチレン」という2成分の樹脂組成物について、「エチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるポリエチレン」、「直鎖状低密度ポリエチレン」及び「低密度ポリエチレン」という3成分の樹脂組成物とすることは、その構成自体がどの証拠にもなく、動機もないから、たとえ、これらの一成分について、地球温暖化、石油資源枯渇等への問題に対処すると共に、コストにも配慮して、バイオマス由来のエチレンモノマーを利用したバイオマス由来のポリエチレンとすることが適宜なし得たことであっても、相違点3は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物6発明及び刊行物2ないし5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえない。 4 本件発明2ないし6、8、9、11ないし13について 本件発明2ないし6、8、9、11ないし13は、本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であるから、刊行物1発明との対比においては、少なくとも上記3(1)で検討した相違点1及び2の点で、刊行物1発明と相違し、当該相違点1が想到容易といえないから、本件発明2ないし6、8、9、11ないし13は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、刊行物6発明との対比においては、少なくとも上記3(2)で検討した相違点3及び4の点で、刊行物6発明と相違し、上記3(2)での検討のとおり当該相違点3が想到容易といえないから、本件発明2ないし6、8、9、11ないし13は、刊行物6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 取消理由<決定の予告>に採用しなかった当審からの取消理由 当審において通知した平成29年8月7日付け取消理由には、上記第4に記載の取消理由である理由1に加えて、以下の取消理由があった。 「取消理由2 本件発明3ないし10は、特許第6020976号の特許請求の範囲に記載の請求項7、9ないし11に係る発明と同一であり、本件発明10は、特許第6020976号の特許請求の範囲に記載の請求項11に係る発明、特許第5862055号の特許請求の範囲の請求項11に係る発明及び特許第6024812号の特許請求の範囲の請求項11に記載の発明と同一であり、本件発明11ないし13は、特許第6024812号の請求項12ないし14に係る発明と同一であり、本件発明14は、特願2016-166061号の特許請求の範囲の請求項7に係る発明と同一であって、これらの同一の発明は全て特許となっていて協議をすることができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。」 しかし、取消理由の対象となる請求項が訂正により削除されたので、当該取消理由は、理由がない。 第7 特許異議申立書に記載の特許異議申立理由 1 異議申立人1の主張 異議申立人1(青山裕樹)は、特許異議申立書において、本件特許の請求項1ないし14に対して、甲第1号証を主たる引用文献とし、甲第2及び第3号証を組み合わせることによる特許法第29条第2項に基づく特許異議申立理由(以下、「申立理由1-1」という。)を主張する。 <異議申立人1の特許異議申立書に添付された証拠方法> 甲第1号証 : 特開昭53-31751号公報(以下、「甲申1-1」という。) 甲第2号証 : 杉山英路ら、「地球環境にやさしい『サトウキビ由来のポリエチレン』」、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、2009年8月15日、第37巻、第8号、通巻437号、第63?67頁(以下、「甲申1-2」という。) 甲第3号証 : 牧野太宣、「サトウキビから作られたプラスチック包装材料『Bipro-PE』」、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、2011年2月15日、第39巻、第2号、通巻455号、第83?85頁(以下、「甲申1-3」という。) 2 異議申立人2の主張 異議申立人2(土田裕介)は、特許異議申立書において、本件特許の請求項1ないし14に対して、甲第1号証を主たる引用文献とし、甲第2ないし7号証を組み合わせることによる特許法第29条第2項に基づく特許異議申立理由(以下、「申立理由2-1」という。)を主張する。また、平成29年11月15日付け意見書に添付して下記の甲第8号証を提出し、平成30年5月8日付け意見書に添付して、下記の甲第9号証を提出した。 <異議申立人2の特許異議申立書に添付された証拠方法> 甲第1号証 : 牧野太宣、「サトウキビから作られたプラスチック包装材料『Bipro-PE』」、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、2011年2月15日、第39巻、第2号、通巻455号、第83?85頁(以下、「甲申2-1」という。) 甲第2号証 : 特開平9-278953号公報(以下、「甲申2-2」という。) 甲第3号証 : 藤本省三ら、「L-LDPEのフィルム加工について」、東洋曹達研究報告、東洋曹達工業株式会社、1983年7月1日、第27巻、第2号、p87-98(以下、「甲申2-3」という。) 甲第4号証 : 「ノバテックLD」、プラスチックフィルム・レジン材料総覧2008、株式会社加工技術研究会、2008年1月31日、p330-p331(以下、「甲申2-4」という。) 甲第5号証 : 杉山英路ら、「地球環境にやさしい『サトウキビ由来のポリエチレン』」、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、2009年8月15日、第37巻、第8号、通巻437号、第63?67頁(以下、「甲申2-5」という。) 甲第6号証 : 特表2010-511634号公報(以下、「甲申2-6」という。) 甲第7号証 : 「特集 自動車・複写機で採用進む バイオポリエチレンも登場 バイオプラスチック市場拡大へ」、日経バイオテク 12-20 2010、日経BP社、2010年12月20日、第702号、p3-8(以下、「甲申2-7」という。) <異議申立人2の平成29年11月15日付け意見書に添付された文献> 甲第8号証 : 特開2006-321986号公報(以下、「甲申2-8」という。) <異議申立人2の平成30年5月8日付け意見書に添付された文献> 甲第9号証 : 舊橋章、「製品開発に役立つ プラスチック材料入門」、日刊工業新聞社、2005年9月30日、初版1刷、第26?36頁(以下、「甲申2-9」という。) 3 異議申立人3の主張 異議申立人3(一條淳)は、特許異議申立書において、本件特許の請求項1ないし14に対して、甲第1号証を主たる引用文献とし、甲第2ないし3号証を組み合わせることによる特許法第29条第2項に基づく特許異議申立理由(以下、「申立理由3-1」という。)を主張する。また、平成30年5月10日付け意見書に添付して、下記の参考文献を提出した。 <異議申立人3の特許異議申立書に添付された証拠方法> 甲第1号証 : 特開昭53-31751号公報(以下、「甲申3-1」という。) 甲第2号証 : 杉山英路ら、「地球環境にやさしい『サトウキビ由来のポリエチレン』」、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、2009年8月15日、第37巻、第8号、通巻437号、第63?67頁(以下、「甲申3-2」という。) 甲第3号証 : 特表2010-511634号公報(以下、「甲申3-3」という。) <異議申立人3の平成30年5月9日付け意見書に添付された参考文献> 参考文献1 : 特開2001-247133号公報 参考文献2 : 特開2002-219782号公報 4 異議申立人4の主張 異議申立人4(鈴木清司)は、特許異議申立書において、本件特許の請求項1ないし7、10-14に対して、「バイオマス由来の」、「化石燃料由来の」との記載は、「製造方法によって生産物を特定しようとする記載」であるから、請求項に係る物の特徴が理解できないから不明確であって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるとの特許異議申立理由(以下、「申立理由4-1」という。)及び本件特許の請求項1ないし14に対して、甲第1号証を主たる引用文献とし、甲第2ないし5号証を組み合わせることによる特許法第29条第2項に基づく特許異議申立理由(以下、「申立理由4-2」という。)を主張する。 <異議申立人4の特許異議申立書に添付された証拠方法> 甲第1号証 : 実用プラスチック事典編集委員会、「実用プラスチック事典」、株式会社産業調査会 事典出版センター、1994年1月5日、第2刷、p3?22(以下、「甲申4-1」という。) 甲第2号証 : 杉山英路ら、「地球環境にやさしい『サトウキビ由来のポリエチレン』」、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、2009年8月15日、第37巻、第8号、通巻437号、第63?67頁(以下、「甲申4-2」という。) 甲第3号証 : 杉山英路、「新しいバイオマスプラスチックの可能性?『サトウキビ由来ポリエチレン』の製品化から?」、Polyfile、株式会社大成社、2009年12月10日、第46巻、第12号、通巻550号、第28?30頁(以下、「甲申4-3」という。) 甲第4号証 : 牧野太宣、「サトウキビから作られたプラスチック包装材料『Bipro-PE』」、コンバーテック、株式会社加工技術研究会、2011年2月15日、第39巻、第2号、通巻455号、第83?85頁(以下、「甲申4-4」という。) 甲第5号証 : 実用プラスチック成形加工事典編集委員会、「実用プラスチック成形加工事典」、株式会社産業調査会 事典出版センター、1997年6月30日、初版第3刷、p199?202(以下、「甲申4-5」という。) 6 進歩性に係る申立理由(申立理由1-1、2-1、3-1、4-2)について 異議申立人1ないし4の主張する進歩性に係る取消理由である申立理由1-1、2-1、3-1、4-2のいずれの主たる証拠にも、本件発明1の「バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンとを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレン」、「化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン」及び「化石燃料由来の低密度ポリエチレン」の3成分を含んでなる樹脂組成物は記載されておらず、バイオマス由来に係わらない3成分の樹脂組成物すら記載されていないから、本件発明1とこれら申立理由の主たる証拠に記載の引用発明とは、少なくとも本件発明1が「エチレンとα-オレフィンとを含むモノマーが重合してなるポリエチレン」、「化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン」及び「化石燃料由来の低密度ポリエチレン」の3成分を含んでなる樹脂組成物であるのに対して、引用発明はそうでない点で相違し、この点は、上記第5 3(1)及び(2)の検討のとおり、想到容易でないから、いずれの進歩性に係る申立理由についても、理由がない。 7 明確性(申立理由4-1)について 本件特許の請求項1ないし6、11ないし13に記載されている「バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンとを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレン」、「化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン」、「化石燃料由来の低密度ポリエチレン」との記載は、当業者においては、どのようなポリエチレンであるかは明確に理解できる。 したがって、申立理由4-1には、理由がない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、当審において通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし6、8、9、11ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし6、8、9、11及び13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項7、10及び14は訂正により削除されたから、本件特許の請求項7、10及び14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリエチレンと、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンと、を含んでなる樹脂組成物からなる樹脂フィルムであって、 前記α-オレフィンが、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであり、 前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のエチレンを前記樹脂組成物全体に対して5質量%以上含んでなり、前記樹脂組成物が、0.91?0.96g/cm^(3)の密度を有する、樹脂フィルム。 【請求項2】 前記樹脂組成物が、0.91?0.918g/cm^(3)の密度を有する、請求項1に記載の樹脂フィルム。 【請求項3】 前記樹脂組成物が、1?30g/10分のメルトフローレートを有する、請求項1または2に記載の樹脂フィルム。 【請求項4】 前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のエチレンを、前記樹脂組成物全体に対して5?95質量%含んでなる、請求項1?3のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。 【請求項5】 前記バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンを含むモノマーが、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンをさらに含む、請求項1?4のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。 【請求項6】 前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のポリエチレンを5?90質量%と、前記化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンおよび前記化石燃料由来の低密度ポリエチレンを合計で10?95質量%と、を含んでなる、請求項1?5のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。 【請求項7】(削除) 【請求項8】 請求項1?6のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法であって、 前記樹脂組成物を押出成形することを特徴とする、製造方法。 【請求項9】 前記押出成形が、Tダイ法またはインフレーション法により行われる、請求項8に記載の製造方法。 【請求項10】(削除) 【請求項11】 請求項1?6のいずれか一項に記載の樹脂フィルムを備える、シート成形品。 【請求項12】 請求項1?6のいずれか一項に記載の樹脂フィルムを備える、ラベル材料。 【請求項13】 請求項1?6のいずれか一項に記載の樹脂フィルムを備える、蓋材。 【請求項14】(削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-06-28 |
出願番号 | 特願2015-210633(P2015-210633) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C08J)
P 1 651・ 4- YAA (C08J) P 1 651・ 121- YAA (C08J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 原田 隆興 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 岡崎 美穂 |
登録日 | 2016-10-14 |
登録番号 | 特許第6020975号(P6020975) |
権利者 | 大日本印刷株式会社 |
発明の名称 | ポリオレフィン樹脂フィルム |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 川崎 康 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 浅野 真理 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 柏 延之 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 柏 延之 |
代理人 | 吉住 和之 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 宮嶋 学 |
代理人 | 川崎 康 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 浅野 真理 |
代理人 | 高田 泰彦 |
代理人 | 高田 泰彦 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 宮嶋 学 |