• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1343383
審判番号 不服2017-3210  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-03 
確定日 2018-08-16 
事件の表示 特願2013-541794「算術復号装置、画像復号装置、算術符号化装置および算術復号方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月10日国際公開、WO2013/065702〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)10月31日(優先権主張 平成23年11月4日、平成23年12月1日、平成24年1月19日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年10月13日 :手続補正書の提出
平成28年 9月 2日付け:拒絶理由通知書
平成28年11月 8日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年11月30日付け:拒絶査定
平成29年 3月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成29年3月3日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年3月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の補正前の請求項6の記載は、補正後の請求項4として、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
なお、補正後の請求項4の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成Aないし構成E2と称する。

「(A)対象画像を単位領域毎に周波数変換して得られる変換係数の符号化データを生成する算術符号化装置であって、
(B)前記変換係数を示す第1のシンタックス、及び、
前記変換係数を示す第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れか
を算術符号化するシンタックス符号化手段を備え、
(C1)前記第1のシンタックスは、コンテキストを用いた算術符号化により算術符号化され、
(C2)前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、コンテキストを用いないで算術符号化され、他のシンタックスの少なくとも何れかはコンテキストを用いて算術符号化され、
(D)前記シンタックス符号化手段は、
第1のシンタックスを符号化せずに、前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかを符号化する場合と、
該第1のシンタックス、及び、
前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れか
を符号化する場合と、
を少なくとも含み、
(E1)前記第1のシンタックスは、前記変換係数の絶対値が第1の所定の値より大きいか否かに関するシンタックスであり、
(E2)前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、前記変換係数の絶対値から、前記第1の所定の値以上の値である第2の所定の値を減算した値に関するシンタックスであり、
前記他のシンタックスの少なくとも何れかは、前記第1の所定の値より大きい第3の所定の値より大きいか否かを示すシンタックスである、
(A)ことを特徴とする算術符号化装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年11月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項6の記載は次のとおりである。

「対象画像を単位領域毎に周波数変換して得られる変換係数の符号化データを生成する算術符号化装置であって、
前記変換係数を示す第1のシンタックス、及び、
前記変換係数を示す第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れか
を算術符号化するシンタックス符号化手段を備え、
前記第1のシンタックスは、コンテキストを用いた算術符号化又はコンテキストを用いない算術符号化により算術符号化され、
前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、コンテキストを用いないで算術符号化され、
前記シンタックス符号化手段は、
第1のシンタックスを符号化せずに、前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかを符号化する場合と、
該第1のシンタックス、及び、
前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れか
を符号化する場合と、
を少なくとも含むことを特徴とする算術符号化装置。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項6に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1のシンタックス」及び「第2のシンタックス群」に関し、
(限定事項a)「第1のシンタックス」について、「前記第1のシンタックスは、コンテキストを用いた算術符号化又はコンテキストを用いない算術符号化により算術符号化され」を、選択肢の一方の「前記第1のシンタックスは、コンテキストを用いた算術符号化により算術符号化され」と限定し、
(限定事項b)「第2のシンタックス群」について、「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、コンテキストを用いないで算術符号化され」を、「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、コンテキストを用いないで算術符号化され、他のシンタックスの少なくとも何れかはコンテキストを用いて算術符号化され」と限定し、さらに、
(限定事項c)「第1のシンタックス」及び「第2のシンタックス群」について、上記構成E1、E2のとおり限定するものである。

そして、補正前の請求項6に記載された発明と補正後の請求項4に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるといえるから、補正後の請求項4に係る補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、補正後の請求項4に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)優先権主張について
ア 上記第1に記載したとおり、本件は、以下の3つの出願を基礎として優先権を主張している。

第1出願:特願2011-242840号(平成23年11月4日出願)
第2出願:特願2011-264156号(平成23年12月1日出願)
第3出願:特願2012-9447号(平成24年1月19日出願)

イ 本件補正発明の構成Dは、本件明細書の
「[0679] (本実施形態の第1の構成の量子化残差情報QD)
図64?図66は、本実施形態の第1の構成の量子化残差情報QDに含まれる各シンタックスが示されている。
[0680] 図64は、量子化残差情報QDに含まれるシンタックスを示すシンタックステーブルの前半部分を示す図である。本構成では、CABAC処理の簡略化を行うか否かを示すフラグcabac_lowcomp_flagの値によって符号化データの構成を切り替える。cabac_lowcomp_flag=0の場合、すなわち簡略化処理を行わない場合には、図65に示すresidual_coding_cabac2_normal()が用いられ、逆にcabac_lowcomp_flag=1の場合、すなわち簡略化処理を行う場合には、図66に示すresidual_coding_cabac2_comp()が用いられる。図65、図66は、量子化残差情報QDに含まれるシンタックスを示すシンタックステーブルの後半部分を示す図である。
[0681] 図64?図66に示すように、量子化残差情報QDは、シンタックスlast_significant_coeff_x、last_significant_coeff_y、significant_coeffgroup_flag、significant_coeff_flag、coeff_abs_level_greater1_flag、coeff_sign_flagを含んでいる。またsignificant_coeff_flag、coeff_abs_level_greater1_flag、coeff_sign_flagはバイパス符号化される。
[0682] 図64の前半部分、及び図65に示す簡略化処理を行わない場合のシンタックス構成は、図4、図5に示す従来技術のシンタックスと同様である。
[0683] 図66の簡略化処理を行う場合のシンタックスでは、変換係数の値を示すシンタックスsignificant_coeff_flagが非バイパスからバイパスに変更される。また、変換係数の絶対値を示すシンタックスが、significant_coeff_flag、coeff_abs_level_greater1_flag、coeff_abs_level_greater2_flag、coeff_abs_level_minus3の4つから、significant_coeff_flag、coeff_abs_level_minus1の2つに削減される。ある値の表現を複数のシンタックスで表現する場合、復号処理では、基本的には表現に必要なシンタックスの数だけのサイクル数が必要になる。従って、表現に必要なシンタックスを2つ削減すれば2サイクル以上スループットを向上させることができる。また、significant_coeff_flagとcoeff_abs_level_minus1は共にバイパスで符号化され、さらにスループットを向上させることができる。」、及び図64?66
に記載されている「CABAC処理の簡略化処理を行う場合」と、「CABAC処理の簡略化処理を行わない従来技術のシンタックスと同様の場合」に相当するものである。

そして、上記第3出願の明細書には、
「 【0806】
(本実施形態の第1の構成の量子化残差情報QD)
図64?図66は、本実施形態の第1の構成の量子化残差情報QDに含まれる各シンタックスが示されている。
【0807】
図64は、量子化残差情報QDに含まれるシンタックスを示すシンタックステーブルの前半部分を示す図である。本構成では、CABAC処理の簡略化を行うか否かを示すフラグcabac_lowcomp_flagの値によって符号化データの構成を切り替える。cabac_lowcomp_flag=0の場合、すなわち簡略化処理を行わない場合には、図65に示すresidual_coding_cabac2_normal()が用いられ、逆にcabac_lowcomp_flag=1の場合、すなわち簡略化処理を行う場合には、図66に示すresidual_coding_cabac2_comp()が用いられる。図65、図66は、量子化残差情報QDに含まれるシンタックスを示すシンタックステーブルの後半部分を示す図である。
【0808】
図64?図66に示すように、量子化残差情報QDは、シンタックスlast_significant_coeff_x、last_significant_coeff_y、significant_coeffgroup_flag、significant_coeff_flag、coeff_abs_level_greater1_flag、coeff_sign_flagを含んでいる。またsignificant_coeff_flag、coeff_abs_level_greater1_flag、coeff_sign_flagはバイパス符号化される。
【0809】
図64の前半部分、及び図65に示す簡略化処理を行わない場合のシンタックス構成は、図4、図5に示す従来技術のシンタックスと同様である。
【0810】
図66の簡略化処理を行う場合のシンタックスでは、変換係数の値を示すシンタックスsignificant_coeff_flagが非バイパスからバイパスに変更される。また、変換係数の絶対値を示すシンタックスが、significant_coeff_flag、coeff_abs_level_greater1_flag、coeff_abs_level_greater2_flag、coeff_abs_level_minus3の4つから、significant_coeff_flag、coeff_abs_level_minus1の2つに削減される。ある値の表現を複数のシンタックスで表現する場合、復号処理では、基本的には表現に必要なシンタックスの数だけのサイクル数が必要になる。従って、表現に必要なシンタックスを2つ削減すれば2サイクル以上スループットを向上させることができる。また、significant_coeff_flagとcoeff_abs_level_minus1は共にバイパスで符号化され、さらにスループットを向上させることができる。」
という本件明細書の段落[0679]?[0683]に対応する記載があり、その図64?66は、本件出願の図64?66と同様のものである。

すなわち、上記第3出願の明細書には、本件補正発明の構成Dに対応する、前述の「CABAC処理の簡略化処理を行う場合」と「CABAC処理の簡略化処理を行わない従来技術のシンタックスと同様の場合」について記載されている。

ウ 一方、上記第1出願及び第2出願の明細書、特許請求の範囲、又は図面には、前述の「CABAC処理の簡略化処理を行う場合」と「CABAC処理の簡略化処理を行わない従来技術のシンタックスと同様の場合」について何らの記載もない。

エ したがって、本件補正発明について、上記第1出願及び第2出願に基づく優先権の主張は認められず、上記第3出願の出願日である平成24年(2012年)1月19日を優先日とする。

(3)先願の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由において、先願として引用された、本件出願の優先日前の優先権を主張する外国語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。

先願:PCT/US2012/068997(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年1月17日、米国、2012年1月20日、米国、2012年1月27日、米国、2012年3月2日、米国、2012年4月11日、米国、2012年12月10日、米国)、国際公開第2013/109357号(特表2015-507424号公報)

なお、原文の後に、特表2015-507424号公報の記載を参考に当審で作成した仮訳を示す。

「SUMMARY
[0006] In general, this disclosure describes techniques for coding video data. In particular, this disclosure describes techniques for coding information relating to transform coefficients in a video coding process.
[0007] This disclosure proposes various techniques for limiting the number of bins that are coded using an adaptive context model with context adaptive binary arithmetic coding (CABAC) to signal transform coefficients versus the number of bins that are bypass coded. In particular, this disclosure discloses techniques for limiting the number of bins that use CABAC for coding level information of transform coefficients in a video coding process.」
(概要
[0006]概して、本開示では、ビデオデータを符号化するための技法について説明する。詳細には、本開示では、ビデオ符号化プロセスにおいて変換係数に関する情報を符号化するための技法について説明する。
[0007]本開示は、バイパス符号化されるビンの数に対して変換係数をシグナリングするためにコンテキスト適応型バイナリ算術符号化(CABAC)により適応コンテキストモデルを使用して符号化されるビンの数を制限するための様々な技法を提案する。特に、本開示は、ビデオ符号化プロセスにおいて変換係数のレベル情報を符号化するためにCABACを使用するビンの数を制限するための技法を開示する。)

「DETAILED DESCRIPTION
[0026] In general, this disclosure describes techniques for coding video data. In particular, this disclosure describes techniques for coding transform coefficients in a video encoding and/or decoding process.
[0027] Level information (e.g., absolute value and sign) for transform coefficients is typically entropy coded in one of two ways. Some bins of the level information are coded with an adaptive context model (e.g., with context adaptive binary arithmetic coding (CABAC)). Other bins of the level information are coded through a bypass mode with fixed equal probability models (e.g., with an exponential Golomb coder or a Golomb-Rice coder). It has been observed that adaptive context-based bin coding, while promoting bandwidth efficiency, is one of the main bottlenecks of entropy coding.
[0028] In view of this drawback, this disclosure presents techniques for improving CABAC throughput. In particular, in some examples, this disclosure proposes techniques for improving CABAC throughput by reducing the number of adaptive context-coded bins, and increasing the number of bypass-coded bins.」
(詳細な説明
[0026]概して、本開示では、ビデオデータを符号化するための技法について説明する。詳細には、本開示では、ビデオ符号化及び/又は復号プロセス内で変換係数を符号化するための技法について説明する。
[0027]変換係数に関するレベル情報(たとえば、絶対値及び符号)は、一般に2つの方法のうちの1つでエントロピー符号化される。レベル情報のいくつかのビンは、適応コンテキストモデルにより(たとえば、コンテキスト適応型バイナリ算術符号化(CABAC)により)符号化される。レベル情報の他のビンは、固定同等確率モデルにより(たとえば、指数ゴロムコーダ又はゴロムライスコーダにより)バイパスモードで符号化される。適応コンテキストベースのビン符号化は、帯域効率を高める一方、エントロピー符号化の主なボトルネックの1つであることが観測されている。
[0028]この欠点を考慮して、本開示は、CABACスループットを改善するための技法を提示する。詳細には、いくつかの例では、本開示は、適応コンテキスト符号化ビンの数を減らし、バイパス符号化ビンの数を増やすことによって、CABACスループットを改善するための技法を提案する。)

「[0039] Video encoder 20 and video decoder 30 may operate according to a video compression standard, such as the High Efficiency Video Coding (HEVC) standard presently under development by the Joint Collaboration Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T Video Coding Experts Group (VCEG) and ISO/IEC Motion Picture Experts Group (MPEG). A recent latest Working Draft (WD) of HEVC is described in document JCTVC-I1003, Bross et al., “High efficiency video coding (HEVC) text specification draft 9”, Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11, and referred to as HEVC WD7
hereinafter, is available from http ://phenix.int-evry.fr/jct/doc_end_user/documents/9_Geneva/wg11/JCTVC-I1003-v6.zip.
[0040] Alternatively, video encoder 20 and video decoder 30 may operate according to other proprietary or industry standards, such as the ITU-T H.264 standard, alternatively referred to as MPEG 4, Part 10, Advanced Video Coding (AVC), or extensions of such standards. The techniques of this disclosure, however, are not limited to any particular coding standard. Other examples include MPEG-2 and ITU-T H.263.」
([0039]ビデオ符号化器20及びビデオ復号器30は、ITU-T Video Coding Experts Group(VCEG)とISO/IEC Motion Picture Experts Group(MPEG)とのJoint Collaboration Team on Video Coding(JCT-VC)によって現在開発中の高効率ビデオ符号化(HEVC)規格などのビデオ圧縮規格に従って動作し得る。HEVCの最新のワーキングドラフト(WD)は、文書JCTVC-I1003、Brossら、「高効率ビデオ符号化(HEVC)テキスト仕様ドラフト9」、ITU-T SG16 WP3とISO/IEC JTC1/SC29/WG11とのJoint Collaborative Team on Video Coding(JCT-VC)に記載されており、以下ではHEVC WD7と呼ばれ、http://phenix.int-evry.fr/jct/doc_end_user/documents/9_Geneva/wg11/JCTVC-I1003-v6.zipから入手可能である。
[0040]代替的に、ビデオ符号化器20及びビデオ復号器30は、MPEG-4,Part 10,Advanced Video Coding(AVC)と代替的に呼ばれるITU-T H.264規格など、他のプロプライエタリ規格又は業界規格、あるいはそのような規格の拡張に従って動作し得る。ただし、本開示の技法は、いかなる特定の符号化規格にも限定されない。他の例にはMPEG-2及びITU-T H.263がある。)

「[0074] In the emergent HEVC standard, coefficients may be grouped into a chunk. The significance map and level information (absolute value and sign) of the transform coefficients are coded for each chunk. In one example, a chunk consists of 16 consecutive coefficients along a scan order (e.g., a forward or inverse diagonal, horizontal, or vertical scan order) for a 4x4 TU and an 8x8 TU. For 16x16 and 32x32 TUs, a 4x4 subblock of transform coefficients within the larger TU are treated as a chunk. The following symbols are coded and signaled to represent the coefficients level information within a chunk. In one example, all the symbols are encoded in an inverse scan order.
[0075] significant_coeff_flag (abbr. sigMapFlag): This flag indicates the significance of each coefficient in a chunk. A coefficient with an absolute value of one or greater is considered to be significant. As one example, a sigMapFlag value of 0 indicates that the coefficient is not significant, while a value of 1 indicates that the coefficient is significant. This flag may generally be referred to as a significance flag.

coeff_abs_level_greater1_flag (abbr. gr1Flag): This flag indicates whether the absolute value of the coefficient is larger than one for any non-zero coefficients (i.e., coefficients with sigMapFlag as 1). As one example, a gr1Flag value of 0 indicates that the coefficient does not have an absolute value greater than one, while a value of 1 for the gr1Flag indicates that the coefficient does have an absolute value greater than one. This flag may generally be referred to as a greater-than-one flag.

coeff_abs_level_greater2_flag (abbr. gr2Flag): This flag indicates whether the absolute value of the coefficient is larger than two for any coefficients with an absolute value larger than one (i.e., coefficients with gr1Flag as 1). As one example, a gr2Flag value of 0 indicates that the coefficient does not have an absolute value greater than two, while a value of 1 for the gr2Flag indicates that the coefficient does have an absolute value greater than two. This flag may generally be referred to as a greater-than-two flag.

coeff_sign_flag (abbr. signFlag): This flag indicates the sign information for any nonzero coefficients (i.e., coefficients with sigMapFlag as 1). For example, a zero for this flag indicates a positive sign, while a 1 indicates a negative sign.

coeff_abs_level_remaining (abbr. levelRem): This syntax element indicates the absolute level values of the remaining coefficients. For this flag, the absolute value of the coefficient minus three is coded (abs(level)-3) for each coefficient with an absolute value larger than two (i.e. coefficients with gr2Flag as 1).
[0076] FIG. 4 shows an example of quantized coefficients in a 4x4 block 100. Block 100 may be a 4x4 TU or may be a 4x4 subblock (chunk) in an 8x8, 16x 16 or 32x32 TU. The encoded symbols for the coefficients shown in FIG. 4, scanned in an inverse scan order, are summarized in Table 1. In Table 1, scan_pos refers to the position of the coefficient along the inverse diagonal scan shown in FIG. 4. Scan_pos 15 is the first coefficient scanned and is located in the lower left corner of block 100. The quantized coefficient at scan_pos 15 has an absolute value of 0. Scan_pos 0 is the last coefficient scanned and is located in the upper right corner of block 100. The quantized coefficient at scan_pos 0 has an absolute value of 10. In the case of a 4x4 TU or the last 4x4 subblock in a larger TU, the first four sigMapFlags do not need to be coded, since the position of the last non-zero coefficient is known. That is, coding of the sigMapFlag may begin at the last non-zero coefficient (in this example, the coefficient at scan_pos 11).


[0077] Among these symbols, the bins of sigMapFlag, gr1Flag and gr2Flag are encoded with adaptive context models. The signFlag and binarized bins of levelRem are encoded through bypass mode with fixed equal probability models (e.g., an exponential Golomb code). In the current HEVC design, three flag bins are encoded with adaptive context models for a coefficient with an amplitude larger than zero. It has been observed that context-based bin coding is one of the main bottlenecks of entropy coding.
[0078] In view of this drawback, this disclosure presents techniques for improving CABAC throughput. In particular, this disclosure proposes techniques for improving CABAC throughput by reducing the number of context-coded bins, and increasing the number of bypass-coded bins.
[0079] In the emerging HEVC standard, the coefficient level information is coded in an inverse scan order. This typically means that higher frequency transform coefficients (coefficients nearer the lower right corner of the block) are scanned first. In such a design, the initial coefficients in the inverse scan order tend to have small absolute values. If such coefficients are significant, they tend to have a higher possibility of having an absolute value of 1 or 2. For those coefficients, using the explicit symbols gr1Flag and gr2Flag can reduce the length of binarized bins to represent the coefficient level, and the gr1Flag and gr2Flag can be efficiently encoded by an arithmetic coding engine with an assigned context according to previously coded contents.
[0080] However, in the case of the remaining coefficients in the inverse scan order, using the symbols gr1Flag and gr2Flag may not improve the compression performance since the coefficients tend to have larger absolute level values. Using gr1Flag and gr2Flag can even degrade the coding efficiency.
[0081] One goal of this disclosure is to decrease the number of context-coded bins by adaptively switching the explicit gr1Flag and gr2Flag into levelRem syntax, which is coded using bypass mode with a fixed probability model. Bypass mode is handled by a bypass coding engine that operates differently than a CABAC engine. The bypass coding engine may use, for example, a Golomb or exponential Golomb code. The levelRem syntax is typically coded by binarizing the levelRem value (e.g., remaining level above 2) with a Golomb code and encoding the binarized value in bypass mode with an equal probability model. In summary, this disclosure proposes various example techniques for encoding the explicit sigMapFlag, gr1Flag and/or gr2Flag for only a subset of coefficients of a chunk or a TU.」
([0074]新生のHEVC規格では、係数はチャンクにグループ化され得る。変換係数の有意性マップ及びレベル情報(絶対値及び符号)は、チャンクごとに符号化される。一例では、チャンクは、4×4のTU及び8×8のTUについてのスキャン順序(たとえば、順方向又は逆方向の対角スキャン順序、水平スキャン順序、又は垂直スキャン順序)に沿った16個の連続する係数からなる。16×16のTU及び32×32のTUの場合、より大きいTU内の変換係数の4×4のサブブロックはチャンクとして扱われる。チャンク内の係数レベル情報を表すために、以下のシンボルが符号化されシグナリングされる。一例では、すべてのシンボルが逆方向スキャン順序で符号化される。
[0075]significant_coeff_flag(略称sigMapFlag):このフラグは、チャンク中の各係数の有意性を示す。1以上の絶対値を有する係数は有意であると考えられる。一例として、0のsigMapFlag値は、係数が有意ではないことを示し、一方、1の値は、係数が有意であることを示す。このフラグは概して、有意性フラグと呼ばれ得る。

coeff_abs_level_greater1_flag(略称gr1Flag):このフラグは、任意の非ゼロ係数(すなわち、sigMapFlagが1である係数)について、係数の絶対値が1よりも大きいかどうかを示す。一例として、0のgr1Flag値は、係数が1よりも大きい絶対値を有しないことを示し、一方、gr1Flagの1の値は、係数が1よりも大きい絶対値を有することを示す。このフラグは概して、1超フラグと呼ばれ得る。

coeff_abs_level_greater2_flag(略称gr2Flag):このフラグは、1よりも大きい絶対値を有する任意の係数(すなわち、gr1Flagが1である係数)について、係数の絶対値が2よりも大きいかどうかを示す。一例として、0のgr2Flag値は、係数が2よりも大きい絶対値を有しないことを示し、一方、gr2Flagの1の値は、係数が2よりも大きい絶対値を有することを示す。このフラグは概して、2超フラグと呼ばれ得る。

coeff_sign_flag(略称signFlag):このフラグは、任意の非ゼロ係数(すなわち、sigMapFlagが1である係数)に関する符号情報を示す。たとえば、このフラグの0は正の符号を示すが、1は負の符号を示す。

coeff_abs_level_remaining(略称levelRem):このシンタックス要素は、残存係数の絶対レベル値を示す。このフラグの場合、2よりも大きい絶対値を有する係数(すなわち、gr2Flagが1である係数)ごとに、係数の絶対値から3を差し引いた値(abs(level)-3)が符号化される。
[0076]図4は、4×4ブロック100における量子化係数の一例を示している。ブロック100は、4×4TUであっても、8×8、16×16又は32×32TUにおける4×4サブブロック(チャンク)であってもよい。逆方向スキャン順序でスキャンされる図4に示す係数の符号化シンボルが、表1に要約されている。表1では、scan_posは、図4に示す逆方向対角スキャンに沿った係数の位置を指す。scan_pos 15が、スキャンされる最初の係数であり、ブロック100の左下隅にある。scan_pos 15における量子化係数は、0の絶対値を有する。scan_pos 0は、スキャンされる最後の係数であり、ブロック100の右上隅にある。scan_pos 0における量子化係数は、10の絶対値を有する。4×4TU又はより大きいTUにおける最後の4×4サブブロックの場合、最後の非ゼロ係数の位置が知られているので、最初の4つのsigMapFlagは符号化される必要がない。すなわち、sigMapFlagの符号化は、最後の非ゼロ係数(この例では、scan_pos 11おける係数)で始まり得る。

表1.4×4TU又は4×4チャンクの係数についての符号化シンボル

[0077]これらのシンボルのうち、sigMapFlag、gr1Flag及びgr2Flagのビンは、適応コンテキストモデルで符号化される。signFlagと、levelRemの2値化されたビンは、固定同等確率モデル(たとえば、指数ゴロムコード)によりバイパスモードで符号化される。現在のHEVC設計では、ゼロよりも大きい振幅を有する係数について、3つのフラグビンが適応コンテキストモデルで符号化される。コンテキストベースのビン符号化は、エントロピー符号化の主なボトルネックの1つであることが観測されている。
[0078]この欠点を考慮して、本開示は、CABACスループットを改善するための技法を提示する。詳細には、本開示は、コンテキスト符号化ビンの数を減らし、バイパス符号化ビンの数を増やすことによって、CABACスループットを改善するための技法を提案する。
[0079]新生のHEVC規格では、係数レベル情報は逆方向スキャン順序で符号化される。これは一般に、より高い周波数の変換係数(ブロックの右下隅により近い係数)が最初にスキャンされることを意味する。そのような設計では、逆方向スキャン順序による初期係数は、小さい絶対値を有する傾向がある。そのような係数が有意である場合、それらは、1又は2の絶対値を有する確率がより高い傾向がある。それらの係数の場合、明示的なシンボルgr1Flag及びgr2Flagを使用することで、2値化されるビンの長さを短縮して係数レベルを表すことができ、gr1Flag及びgr2Flagは、以前に符号化されたコンテンツによる割り当てられたコンテキストで算術符号化エンジンによって効率的に符号化され得る。
[0080]しかしながら、逆方向スキャン順序における残りの係数の場合、係数がより大きい絶対レベル値を有する傾向があるので、シンボルgr1Flag及びgr2Flagを使用することは圧縮パフォーマンスを改善しないことがある。gr1Flag及びgr2Flagを使用することは、符号化効率を低下させることさえある。
[0081]本開示の1つの目標は、明示的なgr1Flag及びgr2Flagを、固定確率モデルによりバイパスモードを使用して符号化されるlevelRemシンタックスに適応的に切り替えることによって、コンテキスト符号化ビンの数を減らすことである。バイパスモードは、CABACエンジンとは異なって動作するバイパス符号化エンジンによって処理される。バイパス符号化エンジンは、たとえば、ゴロム又は指数ゴロムコードを使用し得る。levelRemシンタックスは、一般にゴロムコードによりlevelRem値(たとえば、2を超える残存レベル)を2値化し、2値化された値を同等確率モデルによりバイパスモードで符号化することによって符号化される。要約すれば、本開示は、チャンク又はTUの係数のサブセットのみについて、明示的なsigMapFlag、gr1Flag及び/又はgr2Flagを符号化するための様々な例示的な技法を提案する。)

「[0087] In another example, this disclosure proposes to limit the number of coefficients in a chunk that are explicitly encoded with the gr1Flag. In some proposals for HEVC, the number of coded gr1Flag syntax elements in a chunk can reach 16 in cases where all of the coefficients are significant. As one example, this disclosure proposes to encode the explicit gr1Flag only for the first Ml non-zero coefficients along an inverse scan order in a chunk. Ml may be selected to be any value from 0 to 16. In another example, Ml is selected to be any value less than 16, e.g., such that less than all of the coefficients in a set of 16 coefficients are coded with the gr1Flag syntax element. Ml equal to zero means that the symbol gr1Flag is not encoded at all.
[0088] In one example, this disclosure proposes to apply a fixed Ml value for all chunks. In one particular example Ml is set to 8. As such, the gr1Flag is only coded for the first eight coefficients where gr1Flag coding is performed (i.e., for the first eight coefficients having an absolute value greater than 0 (sigMapFlag of 1)). Using 8 as the value of Ml provides a trade-off between coding efficiency and the number of context-based bins. 2 or 4 may also be appropriate values of Ml for the coefficients in a chunk. Table 3 shows the symbols to be coded for the example chunk in FIG. 4 when Ml is equal to 4. Table 4 shows the symbols to be coded for the example chunk in FIG. 4 when Ml is equal to 8. Compared with the symbols in Table 1, five gr1Flag and four gr2Flag in the positions marked X are skipped when Ml equals to 4. Compared with the symbols in Table 1, one gr1Flag and one gr2Flag in the positions marked X are skipped when Ml equals to 8. For the positions marked with an X in Tables 3 and 4, the value of the levelRem bin is calculated with (abs(level)-l) instead of (abs(level)-3).


[0089] When limiting the maximum number of gr1Flags to Ml, the coded symbols of the coefficient levels in a chunk can be summarized as follows:
sigMapFlag: indicates whether the absolute value of the coefficient is larger than zero.
gr1Flag: indicates whether the absolute value of the coefficient is larger than one for the first M1 non-zero coefficients (sigMapFlag of value 1).
gr2Flag indicates whether the absolute value of the coefficient is larger than two for coefficients with gr1Flag of value 1.
signFlag: indicates the sign of coefficients with sigMapFlag as 1.
levelRem : indicates the absolute level value for the remaining coefficients; the value (abs(level)-3) is used for coefficients where gr2Flag has a value of 1; the value (abs(level)-l) is used for the non-zero coefficients where explicit gr1Flag is not coded.
[0090] In accordance with the above-described techniques, video encoder 20 and/or video decoder 30 may be configured to code a significance map flag for transform coefficients in a chunk of transform coefficients, wherein the significance map flag indicates whether or not a particular transform coefficient has an absolute value greater than zero, code a greater-than-one flag for a first Ml transform coefficients in the chunk indicated as having an absolute value larger than zero by the significance map flag, wherein the greater-than-one flag indicates whether or not the particular transform coefficient has an absolute value greater than one, and code a greater-than-two flag for transform coefficients in the chunk indicated as having an absolute value larger than one by the greater-than-one flag, wherein the greater-than-two flag indicates whether or not the particular transform coefficients has an absolute value greater than two. Video encoder 20 and/or video decoder 30 may be further configured to code a level remaining value for transform coefficients in the chunk. The remaining coefficients value represents the absolute value of a corresponding coefficient minus three for transform coefficients in the chunk having a coded greater-than-two flag as 1, and the remaining coefficients value represents the absolute value of a corresponding coefficient minus one for transform coefficients in the chunk having a coded significance map flag, but a greater-than-one flag is not coded.」
([0087]別の例では、本開示は、gr1Flagで明示的に符号化されるチャンクにおける係数の数を制限することを提案する。HEVCのためのいくつかの提案では、係数のすべてが有意である場合、チャンクにおける符号化gr1Flagシンタックス要素の数は16に達し得る。一例として、本開示は、チャンクにおける逆方向スキャン順序に沿った最初のM1個の非ゼロ係数についてのみ、明示的なgr1Flagを符号化することを提案する。M1は、0から16までの任意の値になるように選択され得る。別の例では、M1は、たとえば、16個の係数からなるセットにおけるすべてよりも少ない係数がgr1Flagシンタックス要素で符号化されるように、16より小さい任意の値になるように選択される。0に等しいM1は、シンボルgr1Flagがまったく符号化されないことを意味する。
[0088]一例では、本開示は、すべてのチャンクに固定のM1値を適用することを提案する。1つの特定の例では、M1は8に設定される。したがって、gr1Flag符号化が実行される場合、gr1Flagは、最初の8つの係数について(すなわち、0よりも大きい絶対値(1のsigMapFlag)を有する最初の8つの係数について)のみ符号化される。M1の値として8を使用することが、符号化効率とコンテキストベースのビンの数との間のトレードオフをもたらす。チャンクにおける係数にとって、2又は4もM1の適切な値であり得る。表3は、M1が4に等しいときの図4の例示的なチャンクについての符号化されるべきシンボルを示している。表4は、M1が8に等しいときの図4の例示的なチャンクについての符号化されるべきシンボルを示している。表1のシンボルと比較して、M1が4に等しいときに、Xでマークされた位置の5つのgr1Flag及び4つのgr2Flagが省略されている。表1のシンボルと比較して、M1が8に等しいときに、Xでマークされた位置の1つのgr1Flag及び1つのgr2Flagが省略されている。表3及び表4のXでマークされた位置では、levelRemビンの値は、(abs(level)-3)の代わりに(abs(level)-1)で計算される。

表3.M1が4に等しいときのチャンクについての符号化シンボル

表4.M1が8に等しいときのチャンクについての符号化シンボル

[0089]gr1Flagの最大数をM1に制限するとき、チャンクにおける係数レベルの符号化シンボルは次のように要約され得る。
sigMapFlag:係数の絶対値が0よりも大きいかどうかを示す。
gr1Flag:最初のM1個の非ゼロ係数(値1のsigMapFlag)について、係数の絶対値が1よりも大きいかどうかを示す。
gr2Flag:値1のgr1Flagを有する係数について、係数の絶対値が2よりも大きいかどうかを示す。
signFlag:sigMapFlagが1である係数の符号を示す。
levelRem:残存の係数の絶対レベル値を示し、gr2Flagが1の値を有する係数については値(abs(level)-3)が使用され、明示的なgr1Flagが符号化されていない非ゼロ係数については値(abs(level)-1)が使用される。
[0090]上述の技法によれば、ビデオ符号化器20及び/又はビデオ復号器30は、変換係数のチャンクにおける変換係数について、有意性マップフラグを符号化することと、ここで有意性マップフラグは、特定の変換係数が0よりも大きい絶対値を有するかどうかを示し、有意性マップフラグによって0よりも大きい絶対値を有することが示されたチャンクにおける最初のM1個の変換係数について、1超フラグを符号化することと、ここで1超フラグは、特定の変換係数が1よりも大きい絶対値を有するかどうかを示し、そして、1超フラグによって1よりも大きい絶対値を有することが示されたチャンクにおける変換係数について、2超フラグを符号化することと、ここで2超フラグは、特定の変換係数が2よりも大きい絶対値を有するかどうかを示す、を行うように構成される。ビデオ符号化器20及び/又はビデオ復号器30は、チャンクにおける変換係数について、さらにレベル残存値を符号化するように構成され得る。残存係数値は、1の符号化2超フラグを有するチャンクにおける変換係数については、対応する係数の絶対値から3を差し引いた値を表す。また、残存係数値は、符号化有意性マップフラグを有するが1超フラグが符号化されていないチャンクにおける変換係数について、対応する係数の絶対値から1を差し引いた値を表す。)

イ 上記記載から、先願明細書等には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(ア)先願明細書等に記載された技術は、ビデオデータの符号化に関し、より詳細には、変換係数を符号化するための技法に関するものであり([0006]、[0026])、適応型コンテキスト符号化ビンの数を減らし、バイパス符号化ビンの数を増やすことによって、CABACスループットを改善するための技法を提案することを課題としたものである([0007]、[0027]、[0028]、[0078]、[0081])。

(イ)当該技法はビデオ符号化器により実現されるものであり、ビデオ符号化器は、高効率ビデオ符号化(HEVC)規格などのビデオ圧縮規格に従って動作し得る([0039]、[0040])。

(ウ)チャンク内の変換係数は、非ゼロ係数(sigMapFlagが1である係数)について係数の絶対値が1よりも大きいかどうかを示すフラグgr1Flag、1よりも大きい絶対値を有する係数(gr1Flagが1である係数)について係数の絶対値が2よりも大きいかどうかを示すフラグgr2Flag、及び残存係数の絶対レベル値を示し、2よりも大きい絶対値を有する係数(gr2Flagが1である係数)について係数の絶対値から3を差し引いた値(abs(level)-3)であるシンタックス要素levelRemを用いて表される([0074]、[0075])。

(エ)フラグgr1Flag、gr2Flagのビンは、適応コンテキストモデルで符号化され、シンタックス要素levelRemの2値化されたビンは、固定同等確率モデルによりバイパスモードで符号化される([0077])。

(オ)チャンクにおける逆方向スキャン順序で最初にスキャンされる高い周波数の変換係数は、小さい絶対値を有する傾向があるため、明示的なフラグgr1Flag及びgr2Flagを使用し、逆方向スキャン順序における残りの変換係数は、大きい絶対値を有する傾向があるので、明示的なフラグgr1Flag及びgr2Flagをシンタックス要素levelRemに切り替える([0079]-[0081])。

(カ)具体的には、チャンクにおける逆方向スキャン順序で最初のM1個の非ゼロ係数についてのみ、明示的なフラグgr1Flag、gr2Flag、及び値(abs(level)-3)のシンタックス要素levelRemが符号化され、逆方向スキャン順序におけるM1個より後の非ゼロの変換係数については、明示的なフラグgr1Flag及びgr2Flagは省略され、シンタックス要素levelRemが値(abs(level)-3)に代わりに係数の絶対値から1を差し引いた値(abs(level)-1)で符号化される([0087]-[0090])。

ウ 上記ア、イから、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、先願発明の各構成の符号は、説明のために付与したものであり、以下、構成aないし構成d2と称する。

「(a)高効率ビデオ符号化(HEVC)規格などのビデオ圧縮規格に従って動作し得る、変換係数を符号化するためのビデオ符号化器であって、適応コンテキスト符号化ビンの数を減らし、バイパス符号化ビンの数を増やすことによって、CABACスループットを改善するビデオ符号化器において、
(b)チャンク内の変換係数は、非ゼロ係数(sigMapFlagが1である係数)について係数の絶対値が1よりも大きいかどうかを示すフラグgr1Flag、1よりも大きい絶対値を有する係数(gr1Flagが1である係数)について係数の絶対値が2よりも大きいかどうかを示すフラグgr2Flag、及び残存係数の絶対レベル値を示し、2よりも大きい絶対値を有する係数(gr2Flagが1である係数)について係数の絶対値から3を差し引いた値(abs(level)-3)であるシンタックス要素levelRemを用いて表され、
(c)フラグgr1Flag、gr2Flagのビンは、適応コンテキストモデルで符号化され、シンタックス要素levelRemの2値化されたビンは、固定同等確率モデルによりバイパスモードで符号化され、
(d1)チャンクにおける逆方向スキャン順序で最初にスキャンされる高い周波数の変換係数は、小さい絶対値を有する傾向があるため、明示的なフラグgr1Flag及びgr2Flagを使用し、逆方向スキャン順序における残りの変換係数は、大きい絶対値を有する傾向があるので、明示的なフラグgr1Flag及びgr2Flagをシンタックス要素levelRemに切り替え、
(d2)具体的には、チャンクにおける逆方向スキャン順序で最初のM1個の非ゼロ係数についてのみ、明示的なフラグgr1Flag、gr2Flag、及び値(abs(level)-3)のシンタックス要素levelRemが符号化され、逆方向スキャン順序におけるM1個より後の非ゼロの変換係数については、明示的なフラグgr1Flag及びgr2Flagは省略され、シンタックス要素levelRemが値(abs(level)-3)に代わりに係数の絶対値から1を差し引いた値(abs(level)-1)で符号化される、
(a)ビデオ符号化器。」

エ.先願が優先権主張の基礎とする米国特許仮出願第61/587624(出願日 2012年1月17日)の明細書、請求の範囲又は図面(以下「優先基礎明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、原文の後に、当審で作成した仮訳を示す。

「SUMMARY
[0005] In general, this disclosure describes techniques for coding video data. In particular, this disclosure describes techniques for signaling transform coefficients.」
(要約
[0005]概して、本開示はビデオデータの符号化のための技法を説明する。特に、本開示は変換係数をシグナリングするための技法を説明する。)

「[0007] In another example of the disclosure, a method of encoding transform coefficients comprises coding a greater-than-one flag for a first Ml transform coefficients in a chunk that are non-zero, coding a greater-than-two flag for transform coefficients in the chunk having the greater-than-one flag and an absolute value of greater than 2, and coding a remaining coefficients value for transform coefficients in the chunk with an absolute value of greater than 3, wherein the remaining coefficients value represents the absolute value of a corresponding coefficient minus three for the first M1 transform coefficient in the chunk having the greater-than-one flag, and wherein the remaining coefficients value represents the absolute value of a corresponding coefficient minus one for transform coefficients in the chunk after the first Ml transform coefficient in the chunk having the greater-than-one flag.」
([0007]本開示の別の例では、変換係数を符号化する方法は、非ゼロであるチャンク内の最初のM1個の変換係数に対して1超フラグを符号化し、1超フラグと2より大きい絶対値を有するチャンク内の変換係数に対して2超フラグを符号化し、3より大きい絶対値を有するチャンク内の変換係数に対して残存係数値を符号化し、ここで、残存係数値は、1超フラグを有するチャンク内の最初のM1個の変換係数に対して、対応する係数の絶対値から3を差し引いた値を示し、1超フラグを有するチャンク内の最初のM1個の変換係数より後のチャンク内の変換係数に対して、対応する係数の絶対値から1を差し引いた値を示すことを含む。)

「DETAILED DESCRIPTION
[0016] In general, this disclosure describes techniques for coding video data. In particular, this disclosure describes techniques for coding transform coefficients in a video encoding and/or decoding process.
[0017] Digital video devices implement video compression techniques to encode and decode digital video information more efficiently. Video compression may apply spatial (intra-frame) prediction and/or temporal (inter-frame) prediction techniques to reduce or remove redundancy inherent in video sequences.
[0018] Video coding standards include ITU-T H.261, ISO/IEC MPEG-1 Visual, ITU-T H.262 or ISO/IEC MPEG-2 Visual, ITU-T H.263, ISO/IEC MPEG-4 Visual and ITU-T H.264 (also known as ISO/IEC MPEG-4 AVC), including its Scalable Video Coding (SVC) and Multiview Video Coding (MVC) extensions.
[0019] In addition there is a new video coding standard, namely High-Efficiency Video Coding (HEVC), being developed by the Joint Collaboration Team on Video Coding (JCT-VC) on ITU-T Video Coding Experts Group (VCEG) and ISO/IEC Motion Picture Experts Group (MPEG). The latest Working Draft (WD) of HEVC (referred to as HEVC WD5 hereinafter) is available from http://plienix.int-evry.fr/jct/doc_end_user/documents/7_Geneva/wg11/JCTVC-G1103-v3.zip.
[0020] For video coding according to the HEVC standard currently under development, a video frame may be partitioned into coding units. A coding unit (CU) generally refers to an image region that serves as a basic unit to which various coding tools are applied for video compression. A CU usually has a luminance component, denoted as Y, and two chroma components, denoted as U and V. Depending on the video sampling format, the size of the U and V components, in terms of number of samples, may be the same as or different from the size of the Y component. A CU is typically square, and may be considered to be similar to a so-called macroblock, e.g., under other video coding standards such as ITU-T H.264. Coding according to some of the presently proposed aspects of the developing HEVC standard will be described in this application for purposes of illustration. However, the techniques described in this disclosure may be useful for other video coding processes, such as those defined according to H.264 or other standard or proprietary video coding processes.
[0021] HEVC standardization efforts are based on a model of a video coding device referred to as the HEVC Test Model (HM). The HM presumes several capabilities of video coding devices over devices according to, e.g., ITU-T H.264/AVC. For example, whereas H.264 provides nine intra-prediction encoding modes, HM provides as many as thirty-four intra-prediction encoding modes.」
(詳細な説明
[0016]概して、本開示はビデオデータ符号化のための技法を記述する。特に、本開示は、ビデオ符号化及び/又は復号プロセスにおいて、変換係数を符号化するための技法を説明する。
[0017]デジタルビデオ機器は、デジタルビデオ情報をより効率的に符号化及び復号するためのビデオ圧縮技法を実装する。ビデオ圧縮は、ビデオシーケンスに固有の冗長性を低減又は除去するために、空間(フレーム内)予測及び/又は時間(フレーム間)予測技法を適用することができる。
[0018]ビデオ符号化規格は、ITU-T H.261、ISO/IEC MPEG-1 Visual、ITU-T H.262又はISO/IEC MPEG-2 Visual、ITU-T H.263、ISO/IEC MPEG-4 Visual及びITU-T H.264(ISO/IEC MPEG-4 AVCとしても知られる)を含み、そのスケーラブルビデオ符号化(SVC)及びマルチビュービデオ符号化(MVC)拡張を含む。
[0019]さらに、ITU-T Video Coding Experts Group(VCEG)及びISO/IEC Motion Picture Experts Group(MPEG)におけるJoint Collaboration Team on Video Coding (JCT-VC)によって開発されている高効率ビデオ符号化(HEVC)と呼ばれる新しいビデオ符号化規格がある。HEVCの最新のワーキングドラフト(WD)(以下、HEVC WD5と称する)は、http://plienix.int-evry.fr/jct/doc_end_user/documents/7_Geneva/wg11/JCTVC-G1103-v3.zipから入手可能である。
[0020]現在開発中のHEVC規格によるビデオ符号化のために、ビデオフレームを符号化ユニットに区分することができる。符号化ユニット(CU)は、一般的に、ビデオ圧縮のために様々な符号化ツールが適用される基本ユニットとなる画像領域を意味する。CUは、通常、Yと表される輝度成分と、U及びVとして示される2つのクロマ成分とを有する。ビデオサンプリングフォーマットに応じて、U成分及びV成分のサイズは、サンプルの数に関してY成分のサイズと同じであっても異なっていてもよい。CUは、典型的には正方形であり、ITU-T H.264のような他のビデオ符号化規格における、いわゆるマクロブロックに類似していると考えることができる。開発中のHEVC標準の現在提案されているいくつかの態様による符号化は、例示の目的のために本提案において説明される。しかしながら、本開示に記載される技法は、H.264又は他の規格又はプロプライエタリのビデオ符号化プロセスに従って定義されるような他のビデオ符号化プロセスに有用である。
[0021]HEVC標準化の取組は、HEVCテストモデル(HM)と呼ばれるビデオ符号化機器のモデルに基づく。HMは、例えばITU-T H.264/AVCによる機器上のビデオ符号化機器のいくつかの能力を仮定する。例えば、H.264は9のイントラ予測符号化モードを提供するのに対し、HMは34のイントラ予測符号化モードを提供する。)

「[0032] In the emergent HEVC standard, coefficients may be grouped into a chunk. The significance map and level information (absolute value and sign) are coded for each chunk. In one example, a chunk consists of 16 consecutive coefficients in an inverse scan order (e.g., diagonal, horizontal, or vertical) for a 4x4 TU and an 8x8 TU. For 16x16 and 32x32 TUs, the coefficients within a 4x4 sub-block are treated as a chunk. The following symbols are coded and signaled to represent the coefficients level information within a chunk. In one example, all the symbols are encoded in an inverse scan order.
[0033] significant_coeff_flag (abbr. sigMapFlag): this flag indicates the significance of each coefficient in a chunk. A coefficient with a value of one or greater is consider to be significant.
coeff_abs_level_greater1_flag (abbr. gr1Flag): this flag indicates whether the absolute value of the coefficient is larger than one for the non-zero coefficients (i.e. coefficients with sigMapFlag as 1).
coeff_abs_level_greater2_flag (abbr. gr2Flag): this flag indicates whether the absolute value of the coefficient is larger than two for the coefficients with an absolute value larger than one (i.e. coefficients with gr1Flag as 1).
coeff_sign_flag (abbr. signFlag): this flag indicates the sign information for the non-zero coefficients. For example, a zero for this flag indicates a positive sign, while a 1 indicates a negative sign.
coeff_abs_level_remain (abbr. levelRem): this flag indicates absolute level values of the remaining coefficients. For this flag, the absolute value of the coefficient - 3 is coded (abs(level)-3) for each coefficient with the amplitude larger than two (i.e. coefficients with gr2Flag as 1).
[0034] FIG. 2 shows an example of quantized coefficients in a 4x4 TU (may also be 4x4 sub-block (chunk) in a 16x16 or 32x32 TU). The encoded symbols for these coefficients in an inverse scan order are summarized in Tab.l. In the case of a 4x4 TU or the last 4x4 sub-block in a larger TU, the first four sigMapFlags are not necessary since the position of last non-zero coefficient is known. That is, coding of the sigMapFlag may begin at the last non-zero coefficient (in this example, coefficient 11).


[0035] Among these symbols, the bins of sigMapFlag, gr1Flag and gr2Flag are encoded with adaptive context models. The signFlag and binarized bins of levelRem are encoded through by-pass mode with fixed equal probability models. In the current HEVC design, three flag bins are encoded with adaptive context models for a coefficients with amplitude large than one. It has been observe that context-based bin coding is one of the main bottlenecks of CABAC throughput.
[0036] In view of this drawback, this disclosure presents techniques for improving CABAC throughput. In particular, this disclosure proposes techniques for improving CABAC throughput by reducing the number of context-coded bins.
[0037] In the emerging HEVC standard, the coefficient level information is coded in an inverse scan order. This typically means that the high frequency components of transformed coefficients (coefficients in the lower right comer of the block) are scanned first. In such a design, the initial coefficients in the inverse scan order tend to have small absolute values. If such coefficients are significant, they tend to have a higher possibility of having an absolute value of 1 or 2. For those coefficients, using the explicit symbols gr1Flag and gr2Flag can reduce the length of binarized bins used for the levelRem flag, and the grFlag and gr2Flag can be efficiently encoded with a well-adapted context model. However, in the case of later coefficient in the inverse scan order, using the symbols gr1Flag and gr2Flag may not improve the compression performance since the coefficients tend have larger absolute level values. Using gr1Flag and gr2Flag can even degrade the coding efficiency when the context model is not quickly adapted to local statistics.
[0038] One goal of this disclosure is to decrease number of context-coded bins by adaptively switching the explicit gr1Flag and gr2Flag into levelRem coding. The levelRem flag is typically coded by binarizing the levelRem value with a Golomb code and encoding the binarized value in bypass mode with an equal probability model. In summary, this disclosure proposes to encode explicit gr1Flag and gr2Flag for a subset of coefficients of a chunk or a TU.」
([0032] 新生のHEVC規格において、係数はチャンクにグループ化することができる。有意性マップ及びレベル情報(絶対値及び符号)は、各チャンクに対して符号化される。一例では、チャンクは、4×4のTU及び8×8のTUについて、逆方向スキャン順序(例えば、対角、水平又は垂直)における16の連続する係数からなる。16×16及び32×32のTUについては、4×4のサブブロック内の係数がチャンクとして扱われる。以下のシンボルは、チャンク内の係数レベル情報を表すために符号化されシグナリングされる。一例では、すべてのシンボルは逆方向スキャン順序で符号化される。
[0033]significant_coeff_flag(略称sigMapFlag):このフラグは、チャンク内の各係数の有意性を示す。1以上の値を有する係数は、有意であると考えられる。
coeff_abs_level_greater1_flag(略称gr1Flag):このフラグは、非ゼロ係数(すなわち、sigMapFlagが1の係数)について、係数の絶対値が1より大きいかどうかを示す。
coeff_abs_level_greater2_flag(略称gr2Flag):このフラグは、1より大きい絶対値を有する係数(すなわち、gr1Flagが1の係数)について、係数の絶対値が2より大きいかどうかを示す。
coeff_sign_flag(略称signFlag):このフラグは非ゼロ係数の符号情報を示す。例えば、このフラグの0は正の符号を示し、1は負の符号を示す。
coeff_abs_level_remain(略称levelRem):このフラグは、残存係数の絶対レベル値を示す。このフラグの場合、2より大きい振幅を有する各係数(すなわち、gr2Flagが1の係数)について、係数の絶対値マイナス3が(abs(level)-3)に符号化される。
[0034]図2は、4×4のTU(16×16又は32×32のTUにおける4×4のサブブロック(チャンク)でもよい)における量子化係数の例を示す。逆方向スキャン順序におけるこれらの係数の符号化シンボルは、表1に要約される。4×4のTU又はより大きいTUにおける最後の4×4のサブブロックの場合、最後の非ゼロ係数の位置が既知であるため、最初の4つのsigMapFlagは不要である。すなわち、sigMapFlagの符号化は、最後の非ゼロ係数(この例では係数11)で開始することができる。

表1.4×4のTU又はチャンクの係数の符号化シンボル

[0035]これらのシンボルのうち、sigMapFlag、gr1Flag及びgr2Flagのビンは適応コンテキストモデルで符号化される。signFlag、及びlevelRemの2値化されたビンは、固定同等確率モデルによりバイパスモードで符号化される。現在のHEVC設計では、3つのフラグビンは、1より大きい振幅を有する係数について適応コンテキストモデルを用いて符号化される。コンテキストベースのビン符号化は、CABACスループットの主なボトルネックの一つであることが観測されている。
[0036]この欠点を考慮して、本開示は、CABACスループットを改善するための技法を提示する。詳細には、本開示は、コンテキスト符号化ビンの数を低減することによってCABACスループットを改善するための技法を提案する。
[0037]新生のHEVC規格では、係数レベル情報は逆方向スキャン順序で符号化される。これは一般に、変換係数の高周波成分(ブロックの右下隅の係数)が最初にスキャンされることを意味する。そのような設計では、逆方向スキャン順序による初期係数は、小さい絶対値を有する傾向がある。そのような係数が有意である場合、それらは、1又は2の絶対値を有する確率がより高い傾向がある。それらの係数の場合、明示的なシンボルgr1Flag及びgr2Flagを使用することにより、levelRemフラグに使用される2値化ビンの長さを低減することができ、gr1Flag及びgr2Flagは、良好な適応コンテキストモデルにより効率的に符号化することができる。しかしながら、逆方向スキャン順序の後の係数の場合、係数がより大きな絶対レベル値を有する傾向があるので、シンボルgr1Flag及びgr2Flagを使用することは、圧縮パフォーマンスを改善しないことがある。gr1Flag及びgr2Flagを使用することは、コンテキストモデルがローカル統計に迅速に適応されない場合に、符号化効率を低下させることさえある。
[0038]本開示の1つの目標は、明示的なgr1Flag及びgr2Flagを、levelRemの符号化に適応的に切り替えることによって、コンテキスト符号化ビンの数を減らすことである。levelRemフラグは、一般にゴロムコードによりlevelRem値を2値化し、2値化された値を同等確率モデルによりバイパスモードで符号化することによって符号化される。要約すれば、本開示は、チャンク又はTUの係数のサブセットについて明示的なgr1Flag及びgr2Flagを符号化することを提案する。)

「[0042] In another example, this disclosure proposes to limit the number of explicitly encoded gr1Flags for the coefficients in a chunk. In existing method, the number of coded gr1Flag in a chunk can reach to 16 in case where of all of the coefficients are significant.
[0043] As one example, this disclosure proposes to encode the explicit gr1Flag only for the first M1 non-zero coefficients in an inverse scan order in a chunk. M1 can be set to any value from 0 to 16. M1 equal to zero means that the symbol gr1Flag is not encoded at all.
[0044] In one example, this disclosure proposes to apply a fixed M1 value for all chunks. As a trade-off between coding efficiency and the number of context-based bins, 4 can be set as a typical value of M1. 2 or 8 may also be appropriate values of N for the coefficients in a chunk. Tab.3 shows the symbols to be coded for the example chunk in FIG. 2 when M1 is equal to 4. Comparing with the symbols in Tab.1, five gr1Flag and four gr2Flag in the positions marked as pink are skipped. Correspondingly, the levelRem of those coefficients is calculated with (abs(level)-l) instead of (abs(level)-3) as in Tab.1.


[0045] When limiting the maximum number of gr1Flags to M1, the coded symbols of the coefficient levels in a chunk can be summarized as follows;
sigMapFlag: same as the existing method.
gr1Flag: indicates whether the coefficient absolute value is larger than one for the first M1 non-zero coefficients.
gr2Flag indicates whether the coefficient absolute value is larger than two for the coefficients with gr1flag signaled as 1.
signFlag: same as existing method.
levelRem: indicates the absolute level value for the remaining coefficients; the value (abs(level)-3) is signaled for the coefficients where gr2flag is signaled as 1; the value (abs(level)-l) is signaled for the non-zero coefficients where explicit gr1flag is not signaled.」
([0042]別の例では、本開示は、チャンクの係数に対する明示的な符号化されたgr1Flagの数を制限することを提案する。既存の方法では、全ての係数が有意である場合、チャンク内の符号化されたgr1Flagの数は16に達するであろう。
[0043]一例として、本開示は、チャンク内の逆方向スキャン順序における最初のM1個の非ゼロ係数についてのみ、明示的なgr1Flagを符号化することを提案する。M1は、0から16までの任意の値に設定することができる。0に等しいM1は、シンボルgr1Flagが符号化されていないことを意味する。
[0044]一例では、本開示は、すべてのチャンクに対して固定のM1値を適用することを提案する。符号化効率とコンテキストベースのビンの数との間のトレードオフにより、4がM1の一般的な値として設定することができる。2又は8も、チャンク内の係数のNの適切な値である。表3は、M1が4に等しいときの図2中の例示的なチャンクについての符号化シンボルを示す。表1のシンボルと比較すると、ピンク色としてマークされた位置における5つのgr1flag及び4つのgr2flagが省略される。これに対応して、それらの係数のlevelRemは、表1のように(abs(level)-3)の代わりに(abs(level)-1)が算出される。

表3.M1が4に等しいときのチャンクについての符号化シンボル

[0045]gr1Flagの最大数をM1に制限する場合、チャンク内の係数レベルの符号化シンボルは次のように要約され得る。
sigMapFlag:既存の方法と同じ。
gr1Flag:最初のM1個の非ゼロ係数に対して、係数の絶対値が1より大きいかどうかを示す。
gr2Flag:gr1flagが1としてシグナリングされた係数に対して、係数の絶対値が2より大きいかどうかを示す。
signFlag:既存の方法と同じ。
levelRem:残存係数の絶対レベル値を示し、値(abs(level)-3)は、gr2flagが1としてシグナリングされた係数に対してシグナリングされ、値(abs(level)-1)は、明示的なgr1flagがシグナリングされない非ゼロ係数に対してシグナリングされる。)

(ア)先願発明の構成aの「高効率ビデオ符号化(HEVC)規格などのビデオ圧縮規格に従って動作し得る、変換係数を符号化するためのビデオ符号化器であって、適応コンテキスト符号化ビンの数を減らし、バイパス符号化ビンの数を増やすことによって、CABACスループットを改善するビデオ符号化器」については、上記イ(ア)に示した先願明細書等の[0006]、[0026]、及び[0007]、[0027]、[0028]、[0078]、[0081]に対応する優先基礎明細書等の[0005]、[0016]、及び[0035]、[0036]、[0038]に記載され、上記イ(イ)に示した先願明細書等の[0039]、[0040]に対応する優先基礎明細書等の[0017]-[0021]に記載されている。

(イ)先願発明の構成bの「チャンク内の変換係数は、非ゼロ係数(sigMapFlagが1である係数)について係数の絶対値が1よりも大きいかどうかを示すフラグgr1Flag、1よりも大きい絶対値を有する係数(gr1Flagが1である係数)について係数の絶対値が2よりも大きいかどうかを示すフラグgr2Flag、及び残存係数の絶対レベル値を示し、2よりも大きい絶対値を有する係数(gr2Flagが1である係数)について係数の絶対値から3を差し引いた値(abs(level)-3)であるシンタックス要素levelRemを用いて表され」ることは、上記イ(ウ)に示した先願明細書等の[0074]、[0075]に対応する優先基礎明細書等の[0032]、[0033]に記載されている。

(ウ)先願発明の構成cの「フラグgr1Flag、gr2Flagのビンは、適応コンテキストモデルで符号化され、シンタックス要素levelRemの2値化されたビンは、固定同等確率モデルによりバイパスモードで符号化され」ることは、上記イ(エ)に示した先願明細書等の[0077]に対応する優先基礎明細書等の[0035]に記載されている。

(エ)先願発明の構成d1の「チャンクにおける逆方向スキャン順序で最初にスキャンされる高い周波数の変換係数は、小さい絶対値を有する傾向があるため、明示的なフラグgr1Flag及びgr2Flagを使用し、逆方向スキャン順序における残りの変換係数は、大きい絶対値を有する傾向があるので、明示的なフラグgr1Flag及びgr2Flagをシンタックス要素levelRemに切り替え」ることは、上記イ(オ)に示した先願明細書等の[0079]-[0081]に対応する優先基礎明細書等の[0037]、[0038]に記載されている。

(オ)先願発明の構成d2の「具体的には、チャンクにおける逆方向スキャン順序で最初のM1個の非ゼロ係数についてのみ、明示的なフラグgr1Flag、gr2Flag、及び値(abs(level)-3)のシンタックス要素levelRemが符号化され、逆方向スキャン順序におけるM1個より後の非ゼロの変換係数については、明示的なフラグgr1Flag及びgr2Flagは省略され、シンタックス要素levelRemが値(abs(level)-3)に代わりに係数の絶対値から1を差し引いた値(abs(level)-1)で符号化される」ことは、上記イ(カ)に示した先願明細書等の[0087]-[0090]に対応する優先基礎明細書等の[0042]-[0045]、[0007]に記載されている。

(キ)以上のように、先願発明は上記米国特許仮出願にも記載されているものである。
したがって、先願の出願日は、本件出願の優先日(平成24(2012)年1月19日)前となる、パリ条約による優先権を主張する2012年1月17日と認める。

(4)先願発明との対比・判断
ア 本件補正発明と先願発明とを対比する。

(ア)本件補正発明の「算術符号化装置」(構成A)について
先願発明は、「高効率ビデオ符号化(HEVC)規格などのビデオ圧縮規格に従って動作し得る、変換係数を符号化するためのビデオ符号化器であって、適応コンテキスト符号化ビンの数を減らし、バイパス符号化ビンの数を増やすことによって、CABACスループットを改善するビデオ符号化器」(構成a)に係る発明である。
当該「ビデオ符号化器」は、「高効率ビデオ符号化(HEVC)規格などのビデオ圧縮規格に従って動作」するものであるから、『符号化対象の画像を単位領域毎に周波数変換して変換係数を得るものである』ことは明らかである。
また、当該「ビデオ符号化器」は、「変換係数を符号化するためのビデオ符号化器」であり、高効率ビデオ符号化(HEVC)規格などのビデオ圧縮規格では、変換係数の符号化は算術符号化により行われるものであるから、当該「ビデオ符号化器」は、『算術符号化により変換係数の符号化データを生成するビデオ符号化器』であるといえる。
すなわち、先願発明の構成aの「ビデオ符号化器」は、『対象画像を単位領域毎に周波数変換して得られる変換係数の符号化データを生成する算術符号化装置』ということができ、本件補正発明の構成Aの「算術符号化装置」と一致するものである。

(イ)本件補正発明の「前記変換係数を示す第1のシンタックス」(構成C1、E1)について
本件補正発明の構成Bの「前記変換係数を示す第1のシンタックス」は、「コンテキストを用いた算術符号化により算術符号化され」(構成C1)るものであり、「前記変換係数の絶対値が第1の所定の値より大きいか否かに関するシンタックス」(構成E1)である。

一方、先願発明の「フラグgr1Flag」、「フラグgr2Flag」及び「シンタックス要素levelRem」は、変換係数を表し、その後符号化される記号であり(構成b、c)、高効率ビデオ符号化(HEVC)規格などのビデオ圧縮規格において、『シンタックス』と称するものである。

そして、このうちの「フラグgr1Flag」は、その「ビンは、適応コンテキストモデルで符号化され」(構成c)るものであるから、『コンテキストを用いた算術符号化により算術符号化され』るものといえる。また、先願発明の「チャンク内の変換係数」が、「非ゼロ係数(sigMapFlagが1である係数)について係数の絶対値が1よりも大きいかどうかを示す」(構成b)ものであるから、「1」を『第1の所定の値』とすれば、「フラグgr1Flag」は、『前記変換係数の絶対値が第1の所定の値より大きいか否かに関するシンタックス』であるといえる。
すなわち、先願発明の変換係数を表す「フラグgr1Flag」は、本件補正発明の「前記変換係数を示す第1のシンタックス」に相当するものといえ、本件補正発明の構成C1の「前記第1のシンタックスは、コンテキストを用いた算術符号化により算術符号化され」るものであること、構成E1の「前記第1のシンタックスは、前記変換係数の絶対値が第1の所定の値より大きいか否かに関するシンタックス」であることと一致するものである。

(ウ)本件補正発明の「前記変換係数を示す第2のシンタックス群」(構成C2、E2)について
本件補正発明の「第2のシンタックス群」は、少なくとも2つ以上のシンタックスからなるシンタックス群であるといえ、「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、コンテキストを用いないで算術符号化され、他のシンタックスの少なくとも何れかはコンテキストを用いて算術符号化され」(構成C2)るものであり、さらに、「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、前記変換係数の絶対値から、前記第1の所定の値以上の値である第2の所定の値を減算した値に関するシンタックスであり、前記他のシンタックスの少なくとも何れかは、前記第1の所定の値より大きい第3の所定の値より大きいか否かを示すシンタックス」(構成E2)である。
この前記第2のシンタックス群に含まれる「シンタックスの少なくとも何れか」と「他のシンタックスの少なくとも何れか」について、以下にそれぞれ検討する。

a.前記第2のシンタックス群に含まれる「シンタックスの少なくとも何れか」について
先願発明の「シンタックス要素levelRem」は、その「2値化されたビンは、固定同等確率モデルによりバイパスモードで符号化され」(構成c)るものであり、「固定同等確率モデル」はコンテキストを用いない方式であるから、「シンタックス要素levelRem」は、『コンテキストを用いないで算術符号化され』るものといえる。

また、先願発明の「シンタックス要素levelRem」は、「チャンク内の変換係数」が、「残存係数の絶対レベル値を示し、2よりも大きい絶対値を有する係数(gr2Flagが1である係数)について係数の絶対値から3を差し引いた値(abs(level)-3)」(構成b)であり、さらに、「具体的には、チャンクにおける逆方向スキャン順序で最初のM1個の非ゼロ係数についてのみ、明示的なフラグgr1Flag、gr2Flag、及び値(abs(level)-3)のシンタックス要素levelRemが符号化され、逆方向スキャン順序におけるM1個より後の非ゼロの変換係数については、明示的なフラグgr1Flag及びgr2Flagは省略され、シンタックス要素levelRemが値(abs(level)-3)に代わりに係数の絶対値から1を差し引いた値(abs(level)-1)で符号化される」(構成d2)ものである。
ここで、「残存係数の絶対レベル値」とは、変換係数を他のシンタックス(例えば「フラグgr1Flag」や「フラグgr2Flag」)を用いて表す際に、それらのシンタックスで表すことができない残存する変換係数(例えば絶対値が3以上の変換係数)のレベル値であり(以下、「前者」という。)、他方、他のシンタックス(例えば「フラグgr1Flag」や「フラグgr2Flag」)が用いられずに省略された際には、フラグで表されていない残存する変換係数(この場合は全ての絶対値が1以上の変換係数)のレベル値である(以下、「後者」という。)。
そして、これらの「残存係数の絶対レベル値」を表す「シンタックス要素levelRem」は、前者の場合には、変換係数の絶対値から3を差し引いた値(abs(level)-3)であり、後者の場合には、変換係数の絶対値から1を差し引いた値(abs(level)-1)である。

上記(イ)に示したように、「第1のシンタックス」に相当する「フラグgr1Flag」において「第1の所定の値」は「1」であるから、「シンタックス要素levelRem」は、変換係数の絶対値から、「第1の所定の値」に相当する「1」以上の値である「3」又は「1」を差し引いた値である。
よって、「シンタックス要素levelRem」は、差し引く値である「3」又は「1」を、前記第1の所定の値以上の値である『第2の所定の値』とすれば『前記変換係数の絶対値から、前記第1の所定の値以上の値である第2の所定の値を減算した値に関するシンタックス』であるといえる。

以上のことから、先願発明の「シンタックス要素levelRem」は、本件補正発明の「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れか」に相当するものといえ、本件補正発明の構成C2の「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、コンテキストを用いないで算術符号化され」るものであること、構成E2の「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、前記変換係数の絶対値から、前記第1の所定の値以上の値である第2の所定の値を減算した値に関するシンタックス」であることと一致するものである。

b.前記第2のシンタックス群に含まれる「他のシンタックスの少なくとも何れか」について
先願発明の「フラグgr2Flag」は、その「ビンは、適応コンテキストモデルで符号化され」(構成c)るものであるから、『コンテキストを用いて算術符号化され』るものといえる。また、「チャンク内の変換係数」が、「1よりも大きい絶対値を有する係数(gr1Flagが1である係数)について係数の絶対値が2よりも大きいかどうかを示す」(構成b)ものであるから、「1」とした『第1の所定の値』よりも大きい「2」を『第3の所定の値』とすれば、『前記第1の所定の値より大きい第3の所定の値より大きいか否かを示すシンタックスである』であるといえる。
すなわち、先願発明の「フラグgr2Flag」は、本件補正発明の、前記第2のシンタックス群に含まれる「前記他のシンタックスの少なくとも何れか」に相当するものといえ、本件補正発明の構成C2の、前記第2のシンタックス群に含まれる「他のシンタックスの少なくとも何れかはコンテキストを用いて算術符号化され」るものであること、構成E2の、前記第2のシンタックス群に含まれる「前記他のシンタックスの少なくとも何れかは、前記第1の所定の値より大きい第3の所定の値より大きいか否かを示すシンタックス」であることと一致するものである。

上記a、bの検討をまとめると、先願発明の変換係数を符号化した「シンタックス要素levelRem」及び「フラグgr2Flag」は、本件補正発明の「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れか」及び前記第2のシンタックス群に含まれる「他のシンタックスの少なくとも何れか」に相当するものであり、上述したように、本件補正発明の構成C2の「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、コンテキストを用いないで算術符号化され、他のシンタックスの少なくとも何れかはコンテキストを用いて算術符号化され」るものであること、構成E2の「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、前記変換係数の絶対値から、前記第1の所定の値以上の値である第2の所定の値を減算した値に関するシンタックスであり、前記他のシンタックスの少なくとも何れかは、前記第1の所定の値より大きい第3の所定の値より大きいか否かを示すシンタックス」であることと一致するものである。

(エ)本件補正発明の「シンタックス符号化手段」(構成B、D)について
先願発明は、「フラグgr1Flag」を適応コンテキストモデルで符号化し、「シンタックス要素levelRem」を、固定同等確率モデルで符号化する(構成c)ものであり、適応コンテキストモデル、及び固定同等確率モデルによる符号化は、算術符号化の一手法である。
そして、「フラグgr1Flag」は、本件補正発明の「前記変換係数を示す第1のシンタックス」に相当し(上記(イ))、「シンタックス要素levelRem」は、本件補正発明の「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れか」に相当する(上記(ウ)a)ものであるから、先願発明は、「前記変換係数を示す第1のシンタックス」、及び「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れか」を算術符号化するものであり、それらのシンタックスを符号化するシンタックス符号化手段を備えているものといえる。
よって、先願発明は、本件補正発明の構成Bの「前記変換係数を示す第1のシンタックス、及び、前記変換係数を示す第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかを算術符号化するシンタックス符号化手段」を備えている点で、本件補正発明の構成Bと一致するものである。

また、先願発明において、チャンク内の逆方向スキャン順序におけるM1個より後の非ゼロの変換係数については、「フラグgr1Flag」は省略され、「シンタックス要素levelRem」が係数の絶対値から1を差し引いた値(abs(level)-1)で符号化され(前記(ウ)a.の「後者」に相当。)、他方、チャンクにおける逆方向スキャン順序で最初のM1個の非ゼロ係数については、「フラグgr1Flag」、及び値(abs(level)-3)の「シンタックス要素levelRem」が符号化(構成d1)される(前記(ウ)a.の「前者」に相当。)。
すなわち後者の場合には、「フラグgr1Flag」(本件補正発明の「前記変換係数を示す第1のシンタックス」に相当)を符号化せずに、「シンタックス要素levelRem」(本件補正発明の「前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れか」に相当)を符号化し、前者の場合は、「フラグgr1Flag」、及び「シンタックス要素levelRem」を符号化するものである。
よって、先願発明は、本件補正発明の構成Dの「前記シンタックス符号化手段は、第1のシンタックスを符号化せずに、前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかを符号化する場合と、該第1のシンタックス、及び、前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかを符号化する場合と、を少なくとも含」むものである点で、本件補正発明の構成Dと一致するものである。

イ 以上をまとめると、本件補正発明と先願発明は、次に示す全ての構成において一致し、相違する点はない。

[一致点]
対象画像を単位領域毎に周波数変換して得られる変換係数の符号化データを生成する算術符号化装置であって、
前記変換係数を示す第1のシンタックス、及び、
前記変換係数を示す第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れか
を算術符号化するシンタックス符号化手段を備え、
前記第1のシンタックスは、コンテキストを用いた算術符号化により算術符号化され、
前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、コンテキストを用いないで算術符号化され、他のシンタックスの少なくとも何れかはコンテキストを用いて算術符号化され、
前記シンタックス符号化手段は、
第1のシンタックスを符号化せずに、前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかを符号化する場合と、
該第1のシンタックス、及び、
前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかを符号化する場合と、
を少なくとも含み、
前記第1のシンタックスは、前記変換係数の絶対値が第1の所定の値より大きいか否かに関するシンタックスであり、前記第2のシンタックス群に含まれるシンタックスの少なくとも何れかは、前記変換係数の絶対値から、前記第1の所定の値以上の値である第2の所定の値を減算した値に関するシンタックスであり、
前記他のシンタックスの少なくとも何れかは、前記第1の所定の値より大きい第3の所定の値より大きいか否かを示すシンタックスである、
ことを特徴とする算術符号化装置。

ウ したがって、本件補正発明は、本件出願の優先日前の優先権を主張する外国語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた先願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年3月3日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年11月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項6に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち理由1は、この出願の請求項1ないし7に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた下記の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)、というものである。

先願:PCT/US2012/068997(国際公開第2013/109357号(特表2015-507424号公報))

3 先願
原査定の拒絶の理由で引用された先願及びその記載事項は、前記第2[理由]2(3)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、前記第2[理由]2で検討した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(4)に記載したとおり、先願発明と同一のものであるから、本願発明も、先願明細書等に記載された発明と同一のものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-06-12 
結審通知日 2018-06-19 
審決日 2018-07-02 
出願番号 特願2013-541794(P2013-541794)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 大五郎  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 渡辺 努
清水 正一
発明の名称 算術復号装置、画像復号装置、算術符号化装置および算術復号方法  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ