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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1343787
審判番号 不服2017-7905  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-01 
確定日 2018-09-05 
事件の表示 特願2015- 83997「データ処理方法およびビデオ送信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月10日出願公開、特開2015-164336〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1 経緯
本件出願は、2002年(平成14年)4月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年4月24日、米国)を国際出願日とする出願である特願2002-584630号の一部を平成24年2月10日に新たな特許出願とした特願2012-27015号の一部を、更に平成27年4月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続きの経緯は、以下のとおりである。

平成27年 5月15日:手続補正(1)
平成28年 2月 2日:拒絶理由の通知
平成28年 5月26日:手続補正(2)
平成28年 6月22日:拒絶理由の通知(最後)
平成28年12月21日:手続補正(3)
平成29年 1月23日:補正の却下の決定(手続補正(3))
平成29年 1月23日:拒絶査定
平成29年 2月 1日:拒絶査定の謄本の送達
平成29年 6月 1日:拒絶査定不服審判の請求
平成29年 6月 1日:手続補正(4)

2 査定の概要
原査定の理由は、概略、次のとおりである。

[査定の理由]
この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献3:米国特許第6034746号明細書
引用文献7:Hurst N., et.al., "MPEG Splicing: A New Standard for Television - SMPTE 312M", SMPTE Journal, Vol.107, No.11, November 1998, pages 978-988, ISSN:0036-1682
引用文献8:特開平11-262002号公報
引用文献9:国際公開第00/16544号
引用文献10:馬場昌之(外1名),「B-8-55 MPEG-2 TSスプライシングに関する一検討」,電子情報通信学会1997年通信ソサイエティ大会講演論文集2,1997年8月13日,社団法人電子情報通信学会,第280頁

(なお、拒絶査定の理由は、引用文献7を主引例としている。)

第2 補正却下の決定
平成29年6月1日付けの手続補正について次のとおり決定する。

[補正却下の決定の結論]
平成29年6月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成29年6月1日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正である。

補正前の請求項1?2
「 【請求項1】
パケット化されたビデオ・データを処理する方法であって、
第1の表示解像度を有する第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオ・ストリームを受信するステップと、
前記第1の表示解像度よりも高い第2の表示解像度を有する第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリームを受信するステップと、
前記第1の表示解像度の番組および前記第2の表示解像度の番組の各々の識別情報を処理するステップと、
前記識別情報に応じて、前記第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオ・ストリームと前記第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリームとを特定するステップであって、該識別情報は、前記第1のビデオ番組を表す符号化されたデータおよび前記第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを特定するための第1のパケット識別子(PID)および第2の識別子(PID)をそれぞれ含み、該第1のPIDおよび第2のPIDは互いに異なる、前記特定するステップと、
前記第1のビデオ・ストリームから前記第2のビデオ・ストリームへ切り換えるステップであって、該切り換えは、前記第1のビデオ・ストリームに含まれる第1のスプライシング・ポイントと前記第2のビデオ・ストリームに含まれる第2のスプライシング・ポイントとに基づいて行われ、前記第1のビデオ・ストリームおよび前記第2のビデオ・ストリームはプレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)を含み、前記第2のビデオ・ストリームは前記第2のスプライシング・ポイントの直後に閉じられたGOPを含む、前記切り換えるステップと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記切り換えるステップにおいて、該切り換えの際に生じる前記第1のビデオ・ストリームと第2のビデオ・ストリームとの不連続部を低減するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。」

を、次のとおり補正後の請求項1に補正するものである(下線は補正箇所である。)。

「 【請求項1】
パケット化されたビデオ・データを処理する方法であって、
第1の表示解像度を有する第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオ・ストリームを受信するステップと、
前記第1の表示解像度よりも高い第2の表示解像度を有する第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリームを受信するステップと、
前記第1の表示解像度の番組および前記第2の表示解像度の番組の各々の識別情報を処理するステップと、
前記識別情報に応じて、前記第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオ・ストリームと前記第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリームとを特定するステップであって、該識別情報は、前記第1のビデオ番組を表す符号化されたデータおよび前記第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを特定するための第1のパケット識別子(PID)および第2の識別子(PID)をそれぞれ含み、該第1のPIDおよび第2のPIDは互いに異なり、該識別情報は記述子を有し、該記述子が前記第1または第2の表示解像度を表す情報を含む、前記特定するステップと、
前記第1のビデオ・ストリームから前記第2のビデオ・ストリームへ切り換えるステップであって、該切り換えは、前記第1のビデオ・ストリームに含まれる第1のスプライシング・ポイントと前記第2のビデオ・ストリームに含まれる第2のスプライシング・ポイントとに基づき、前記第1または第2の表示解像度を表す前記情報を含む前記記述子が使用されて行われ、前記第1のビデオ・ストリームおよび前記第2のビデオ・ストリームはプレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)を含み、前記第2のビデオ・ストリームは前記第2のスプライシング・ポイントの直後に閉じられたGOPを含む、前記切り換えるステップと、
を含む、前記方法。」

2 補正の適合性
本件補正は、請求項1において、以下のとおりにする補正である。
(a)「識別情報」を更に「該識別情報は記述子を有し、該記述子が前記第1または第2の表示解像度を表す情報を含む」と限定する。
(b)「該切り換えは、前記第1のビデオ・ストリームに含まれる第1のスプライシング・ポイントと前記第2のビデオ・ストリームに含まれる第2のスプライシング・ポイントとに基づいて行われ」を「該切り換えは、前記第1のビデオ・ストリームに含まれる第1のスプライシング・ポイントと前記第2のビデオ・ストリームに含まれる第2のスプライシング・ポイントとに基づき、前記第1または第2の表示解像度を表す前記情報を含む前記記述子が使用されて行われ」とする。

上記(a)、(b)は、特許請求の範囲を減縮を目的とする補正と認められる。

そこで、特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否か以下検討する。

3 独立特許要件
補正後の請求項1に係る発明における「該切り換えは、前記第1のビデオ・ストリームに含まれる第1のスプライシング・ポイントと前記第2のビデオ・ストリームに含まれる第2のスプライシング・ポイントとに基づき、前記第1または第2の表示解像度を表す前記情報を含む前記記述子が使用されて行われ」は、「前記第1または第2の表示解像度を表す前記情報を含む前記記述子」がどのように「使用されて」、「切り換え」が行われるのか明確でない。
「前記第1または第2の表示解像度を表す前記情報を含む前記記述子が使用されて」は、「前記第1または第2の表示解像度を表す前記情報」が使用されて切り換えが行われるとも解されるが、「前記第1または第2の表示解像度を表す前記情報」が使用されて切り換えが行われることは、発明の詳細な説明に記載されておらず、上記のように解することはできない。
したがって、補正後の請求項1に係る発明は明確でない。

以上のとおり、補正後の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2項の規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができることができない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年6月1日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?2に係る発明は、平成28年5月26日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

(本願発明)
「(A)パケット化されたビデオ・データを処理する方法であって、
(B)第1の表示解像度を有する第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオ・ストリームを受信するステップと、
(C)前記第1の表示解像度よりも高い第2の表示解像度を有する第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリームを受信するステップと、
(D)前記第1の表示解像度の番組および前記第2の表示解像度の番組の各々の識別情報を処理するステップと、
(E)前記識別情報に応じて、前記第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオ・ストリームと前記第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリームとを特定するステップであって、該識別情報は、前記第1のビデオ番組を表す符号化されたデータおよび前記第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを特定するための第1のパケット識別子(PID)および第2の識別子(PID)をそれぞれ含み、該第1のPIDおよび第2のPIDは互いに異なる、前記特定するステップと、
(F)前記第1のビデオ・ストリームから前記第2のビデオ・ストリームへ切り換えるステップであって、該切り換えは、前記第1のビデオ・ストリームに含まれる第1のスプライシング・ポイントと前記第2のビデオ・ストリームに含まれる第2のスプライシング・ポイントとに基づいて行われ、前記第1のビデオ・ストリームおよび前記第2のビデオ・ストリームはプレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)を含み、前記第2のビデオ・ストリームは前記第2のスプライシング・ポイントの直後に閉じられたGOPを含む、前記切り換えるステップと、
(G)を含む、前記方法。」

((A)?(G)は当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」?「構成要件G」という。)

2 引用文献の記載及び引用文献に記載された発明
(1)引用文献7
ア 引用文献7の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7には、「MPEG Splicing: A New standard for Television-SMPTE 312M」(タイトル:MPEGスプライシング:テレビジョンの新しい標準-SMPTE 312M)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

(ア)「Commercial insertion, promo insertion, studio routing, camera switching, tape editing?each of these basic operations involves switching video and audio. We want to continue to perform these operations even as we move from using uncompressed video to using MPEG-2 compressed video, but they are far from trivial. This paper describes the MPEG bitstream constraints required to facilitate switching-or "splicing"-MPEG bitstreams. It also describes the refinements to these constraints that have led to a new standard, SMPTE 312M, Television, Splice Points for MPEG-2 Transport Streams, which specifies bitstream constraints for both seamless and nonseamless splicing. It is ironic that, although splicing is likely the simplest method of switching between MPEG-2 bitstreams, it is probably the most difficult to understand. This paper intends to alleviate the mystery of splicing by explaining the underlying principles clearly so that this simple yet effective technique may be put into wide use throughout the emerging digital television industry.」(978頁 最初のカラム)
[訳:コマーシャル挿入、プロモの挿入、スタジオルーティング、カメラの切り替え、テープ編集-これらの基本操作の各々は、ビデオ及びオーディオのスイッチングを伴う。非圧縮ビデオの使用からMPEG-2圧縮ビデオの使用へ移行するとしても、これらの動作を継続することを求めるが、それらは些細なことではない。この論文は、MPEGビットストリームのスイッチング-または「スプライシング」-を容易にするために必要とされるMPEGビットストリームの制約が記載されている。この論文は、これら制約の改良も記載されている。この改良は、新しい標準、SMPTE312M、テレビ、MPEG-2トランスポートストリームのためのスプライスポイントを導く。この標準は、シームレスとノンシームレスの両方のスプライシングのためのビットストリーム制約を特定する。スプライシングは、おそらくMPEG-2ビットストリーム間のスイッチングの最も単純な方法であるが、理解することがおそらく最も困難ということは、皮肉である。この単純だが効果的な技術が、新興デジタルテレビジョン産業全体で広く使用に供され得るように、この論文は基本原理を明確に説明するによって、スプライシングのミステリーを軽減しようとする。]

(イ)「Switching from one television program to another is one of the most common operations we do. Whether we "go to commercial," reroute a signal, cut a news story together on tape, or "take camera 3," it is this simple switching operation we depend on.
Today, switching takes place in the vertical interval of the video signal, and the associated audio is also switched. Switching is an operation that is so common, we take it for granted.
Until now. Enter MPEG. We want to do the same sort of switching, or splicing as MPEG calls it, with compressed bitstreams. We need to define some kind of vertical interval for MPEG-2 transport streams that will provide opportunities to switch from one program to another. These switching opportunities are called splice points.」(978頁 左カラム)
[訳:1つのテレビ番組から他のテレビ番組へのスイッチングは、最も一般的な動作の1つである。「コマーシャルに行く」、信号を再経路指定する、テープ上に一緒にニュース記事を切断する、または「カメラ3にする」かどうかは、我々が依存するこの簡単なスイッチング動作である。
今日では、スイッチングは、ビデオ信号の垂直期間で行われ、関連する音声も切り替わる。スイッチングはとても一般的で、当たり前の操作である。
これまで。MPEGに入る。同じ種のスイッチング又はスプライシングを圧縮されたビットストリーム、我々はMPEGと呼ぶ、に行うのを望む。我々は、1つの番組から他の番組にスイッチする機会を供給する、MPEG-2トランスポートストリームのためのある種類の垂直期間を定義する必要がある。これらのスイッチングの機会は、スプライスポイントと呼ばれる。」

(ウ)「Either way, we must use a "closed GOP," that is, a self-contained GOP at the place we go in.」(979頁 中カラム46?48行
[訳:いずれにしても、我々は、移行する場所として「クローズドGOP」、自己完結型GOPを用いなければならない。]

(エ)「Synchronization
MPEG introduces a notion we sometimes call squishy time. Frames vary in the number of bits required to represent them. Typically, I frames take many frame times to send, and P and B frames take a fraction of a frame time to send, but even this is not the rule. As a result, picture_start_codes (the “vertical sync" of MPEG) do not occur at regular intervals. To switch between two streams, the Out Point at the end of one picture in the Old Stream must line up with the In Point of the new stream. (Fig. 6.)」(979頁 左カラム11?26行)
[訳:同期化
MPEGは、我々がつぶされた時間と呼ぶ概念を導入する。これらのフレームは、それらを表すために必要なビットの数が様々である。典型的に、Iフレームは、送るために多くのフレーム時間がかかり、PおよびBフレームは、送るためにわずかなフレーム時間がかかる。これでさえも原則ではない。結果として、picture_start_codes(MPEGの「垂直同期」)は、規則的な間隔で発生しない。2つのストリームの間で切り替えるために、旧ストリームの1つのピクチャの終了時のアウトポイントが新しいストリームのインポイントと並ばなければならない(図6)。]



Figure 6. Splice Point Synchronization. NTSC and PAL send each picture in a fixed period of time, so aligning frame boundaries in NTSC and PAL is not a stream-dependent operation. But this is not the case with MPEG. Aligning frame boundaries must be done each time a splice is performed.」
[訳:図6 スプライスポイント同期。NTSC及びPALは、一定時間の間に、各画像を送るので、NTSCとPALのフレーム境界を整列させることは、ストリーム依存動作ではない。しかしながら、これはMPEGの場合ではない。フレーム境界の整合は、スプライスが行われる毎に行われなければならない。]

イ 引用文献7に記載された発明
タイトルによると、引用文献7には、「MPEGスプライシング」が記載されている。
上記ア(ア)によると、MPEGスプライシングは、MPEGビットストリームのスイッチングである。
上記ア(イ)によると、スイッチングの機会はスプライスポイントと呼ばれている。
上記ア(エ)及び図6によると、引用文献7には、MPEGストリームをスプライスポイントで切り換えることが記載されている。具体的には、旧MPEGストリームのアウトポイント(スプライスポイント)から新しいMPEGストリームのインポイント(スプライスポイント)に切り換えることが記載されている。
また、上記ア(ウ)、図6によると、切り換えは、切り換え後のストリームにおいて、スプライスポイント後にIフレームから始まるものであるから、切り換え後のストリーム、すなわち新しいストリームは、スプライスポイントの直後に閉じられたGOPであることが記載されている。この点は、後述する下記(4)、(5)の引用文献9、10にも記載されているように技術常識である。
さらに、上記ア(ア)によると、MPEG-2ストリームのためのスプライスポイントに関し記載されていることから、上記のMPEGストリームはMPEG-2ストリームといえる。

後述する下記(2)の引用文献8に示されているように、MPEG-2においては、PIDにより番組のストリームを識別すること、ストリームがPTSを含むことは技術常識である。
この技術常識を踏まえると、引用文献7には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
(a)MPEG-2ストリームをスプライスポイントで切り換える方法であって、
(b)旧MPEG-2ストリームのスプライスポイントから新しいMPEG-2ストリームのスプライスポイントに切り換え、
(c)新しいMPEG-2ストリームは、スプライスポイント直後に閉じられたGOPであり、
(d)MPEG-2ストリームは、PIDにより番組のストリームを識別し、PTSを含むものである、
(e)方法。

((a)?(e)は、引用発明の構成を区別するために付与した。以下各構成を「構成a」?「構成e」という。)

(2)引用文献8の記載事項
原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された引用文献8には、「データ解析装置及びデータ解析方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0004】
【従来の技術】近年、映像やそれに伴う音声の情報量を減らすものとして、種々の圧縮符号化方式が提案されている。その代表的なものとして、ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)等の機関によつて標準化されたMPEG2(Moving Picture Experts Group Phase 2)と呼ばれる圧縮符号化方式がある。このMPEG2方式は、映像や音声を伝送する目的で規格化されたものであり、映像及び音声についてそれぞれ規格化されている。
【0005】このようなMPEG2方式を用いて映像や音声を圧縮符号化し、それを地上波や衛星波を使用して放送するデイジタル放送システムが近年考え出されている。このようなデイジタル放送システムでは、符号化した映像データや音声データを伝送用に所定ブロツク毎にパケツト化し、その結果得られるパケツト列を送信するようになされている(以下、このパケツト列をトランスポートストリームと呼び、トランスポートストリームを形成する各パケツトをTS(Transport Stream)パケツトと呼ぶ)。
【0006】ここで映像データや音声データとTSパケツトの関係を図11を用いて説明する。但し、基本的な考え方は映像と音声で同じであるので、ここでは映像データについてのみ説明する。図11(A)及び(B)に示すように、MPEG2方式においては、数枚のピクチヤを1GOP(Group Of Picture)として定義し、GOP単位で映像データを圧縮符号化するようになされている。その際、GOPのピクチヤのうち少なくとも1つをIピクチヤとし、残るピクチヤをP又はBピクチヤとし、Iピクチヤに関してはフレーム内符号化により圧縮符号化し、Pピクチヤに関してはIピクチヤ又は他のPピクチヤからのフレーム間予測符号化により圧縮符号化し、Bピクチヤに関しては前後のピクチヤからの双方向フレーム間予測符号化により圧縮符号化するようになされている。
【0007】GOP単位で符号化された符号化映像データは素材要素であることから一般にはエレメンタリーストリーム(ES)と呼ばれる。この符号化映像データは、図11(B)及び(C)に示すように、所定量ずつ集められ、その先頭にヘツダを付加することによりPES(Packetized Elementary Stream)パケツト化される。さらにこのPESパケツトは、図11(C)及び(D)に示すように、184〔byte〕毎に分割され、その先頭に4〔byte〕のヘツダを付加することにより伝送用のTSパケツトに変換される。かくしてこのような手順で映像データから生成されたパケツトがTSパケツトである。
【0008】なお、PESパケツトのヘツダ構造としては、図12に示すように、PESパケツトの開始を示す24〔bit〕のパケツト開始コードと、PESパケツトの実データ部分に収容されるストリームデータの種別(例えば映像や音声等の種別)を示す8〔bit〕のストリームIDと、以降に続くデータの長さを示す16〔bit〕のパケツト長と、値「10」を示すコードデータと、各種フラグ情報が格納されるフラグ制御部と、コンデイシヨナル・コーデイング部のデータの長さを示す8〔bit〕のPESヘツダ長と、PTS(Presentation Time Stamp )と呼ばれる再生出力の時間情報やDTS(Decoding Time Stamp )と呼ばれる復号時の時刻管理情報、或いはデータ量調整のためのスタツフイングバイト等が格納される可変長のコンデシヨナル・コーデイング部とによつて構成される。
【0009】またTSパケツトのヘツダ構造としては、図13に示すように、TSパケツトの開始を示す8〔bit〕の同期バイトと、パケツト内におけるビツトエラーの有無を示す誤り表示部(エラー・インジケータ部)と、PESパケツトの先頭がこのTSパケツト内に存在するか否かを示すユニツト開始表示部と、このTSパケツトの重要度を示すトランスポート・パケツト・プライオリテイ部と、このTSパケツトのペイロード部に収容されているストリームデータの種別を示すパケツト識別情報PIDが格納されるPID部と、ペイロード部に収容されるストリームデータにスクランブルが施されているか否かを示すスクランブル制御部と、このTSパケツト内にアダプテーシヨン・フイールド部及びペイロード部が存在するか否かを示すアダプテーシヨン・フイールド制御部と、同じパケツト識別情報PIDを持つTSパケツトが途中で棄却されたか否かを示す巡回カウンタ情報が格納される巡回カウンタ部と、各種制御情報が格納されるアダプテーシヨン・フイールド部とによつて構成される。」

「【0013】番組情報PMTは番組を構成する映像データ及び音声データがそれぞれ格納されているTSパケツトのパケツト識別情報PIDを番組毎に示す情報であり、例えば番組番号「X」の映像はパケツト識別情報PIDが「XV」、音声はパケツト識別情報PIDが「XA」といつた具合の情報である。なお、番組情報PMTは番組毎に生成されていることから1つのトランスポートストリームに多重化されている番組数分存在する。また番組情報PATは各番組毎に生成された番組情報PMTが格納されているTSパケツトのパケツト識別情報PIDを示す情報であり、例えば番組番号「0」に関する番組情報PMTが格納されているTSパケツトはパケツト識別情報PIDが「AA」であり、番組番号「1」に関する番組情報PMTが格納されているTSパケツトはパケツト識別情報PIDが「BB」であるといつた具合の情報である。なお、この番組情報PATが格納されるTSパケツトには予め定められている所定のパケツト識別情報PIDが付加されている。」

「【0026】ここでこのスプライシング装置1において行うスプライシング処理の原理を簡単に説明する。まずトランスポートストリームS10には番組A、C、Eの3つの番組の映像データが多重化され、トランスポートストリームS11には番組B、D、Fの3つの番組の映像データが多重化されているとし、その中の番組Aの映像データD_(A)に対して番組Bの映像データD_(B)をスプライシング処理するものとする。このようなトランスポートストリームS10、S11が入力されると、スプライシング装置1は、トランスポートストリームS10、S11内の各映像データをパケツト識別情報PIDを基にそれぞれ番組毎に整理する。なお、各番組のパケツト識別情報PIDは番組情報PATや番組情報PMTによつて認識する。」

(3)引用文献3
ア 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、「SYSTEM AND METHOD FOR INSERTING DATA INTO A DIGITAL AUDIO/VIDEO DATA STREAM」(発明の名称:デジタルオーディオ/ビデオストリームにデータを挿入するためのシステム及び方法)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

(ア)「The present invention is a method, system, and computer readable medium for inserting additional data, such as commercials, into a digital audio/video data stream. Many digital compression specifications, such as the MPEG-1 Systems Multiplex (SM) and the MPEG-2 Program Stream (PS), do not contain explicit splice points. Thus, it is difficult, if not impossible, to insert additional data, such as commercials into these types of audio/video data streams. The present invention allows data to be inserted into an audio/video data stream, while allowing the inserted data to possess attributes, or operating characteristics, different from those found in the original data stream. Attributes include such items as bit rate, play rate, resolution, aspect ratio, etc. After the inserted data is played, the original data stream continues to play.
The described embodiment explains how the present invention may be used to add commercials into an MPEG-2 Program Stream. However, the present invention is applicable to any type of digital data stream, including, but not limited to MPEG-1 Systems Multiplex, and other types of data streams, both with and without defined splice points. In a data stream which already contains defined splice points, the present invention allows additional data to be inserted at points other than the pre-existing splice points. Any type of additional data, including, but not limited to commercial data, may be inserted.」(3コラム64行?4コラム22行)
[訳:本発明は、デジタルオーディオ/ビデオデータストリームにコマーシャルのような付加的なデータを挿入するための方法、システム、およびコンピュータ可読媒体である。MPEG-1システム多重化(SM)およびMPEG-2プログラムストリーム(PS)のような多くのデジタル圧縮の仕様は、明示的なスプライスポイントを含んでいない。このように、不可能ではないとしても、コマーシャルのような追加のデータを、これらのタイプのオーディオ/ビデオデータストリームに挿入することは、困難である。本発明は、データがオーディオ/ビデオデータストリームに挿入されることを可能にし、さらには、挿入されたデータが、元のデータストリームに見られるものとは異なる属性、又は動作特性を有することを可能にしている。属性は、ビットレート、再生レート、解像度、アスペクト比等のような項目を含んでいる。挿入されたデータが再生された後、元のデータストリームが再生され続ける。
記載された実施形態は、本発明をMPEG-2プログラムストリーム内にコマーシャルを加えるために使用され得るかを説明する。しかし、本発明は、MPEG-1システム多重化に限定されず、他のタイプのデータストリームを含む任意のタイプのディジタルデータストリーム、規定されたスプライスポイント有りおよび無しの両方、に適用可能である。既に定義されたスプライスポイントを有するデータストリーム内で、本発明は、既存のスプライスポイント以外のポイントに挿入されるべき追加データが可能になる。コマーシャルデータに限定されないデータを含む、任意のタイプの追加のデータを挿入することができる。]

(イ)「Referring now to FIG. 9, a flow chart depicting the steps of the present invention will now be described. As shown in FIG. 9, the movie is started and played (step 140) until the first commercial insert spot is reached. The commercial insert spot is recognized through use of the commercial insert file. At this point, typically a GOP boundary, a commercial may be played (step 142). After the commercial is played, the appropriate reinitialization data from the data file is played (step 144). After the reinitialization data is played, the movie continues (step 146). The sequence of steps shown in FIG. 9 continues until the movie ends.」(5コラム48?58行)
[訳:ここで図9を参照すると、本発明のステップを示すフローチャートが記載されている。図9に示すように、第1挿入コマーシャルスポットに達するまで、映画が開始され再生される(ステップ140)。挿入コマーシャルスポットは、挿入コマーシャルファイルの使用を介して認識される。この時点で、一般にGOP境界、コマーシャルが再生されてもよい(ステップ142)。コマーシャルが再生された後、データファイルから適切な再初期化データが再生される(ステップ144)。再初期化データが再生された後、映画が続き(ステップ146)、図9に示すステップのシーケンスは、映画が終了するまで継続する。]

イ 引用文献3に記載された技術
上記アによると、MPEG-2ストリームに規定されたスプライスポイントで、ストリームとの属性(解像度)が異なるコマーシャルを挿入する技術が記載されている。

(4)引用文献9の記載事項
原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された引用文献9には、「COMPRESSED DIGITAL-DATA SEAMLESS VIDEO SWITHING SYSTEM」(発明の名称:圧縮ディジタルデータのシームレスビデオの切り換えシステム)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「With respect to creation of the video splice point 336, the video encoder inserts splice points at every Group of Pictures (GOP), as shown in Figure 6. A GOP consists of generally one I frame and a series of P and B frames, based on parameters set within the MPEG scheme. Preferably, the GOP is encoded as a "closed" GOP structure, which means that the GOP concludes on a P frame. Therefore, no motion vectors to the next GOP are present. If motion vectors cross from one GOP to the next GOP, artifacts are created and visible when the screen is switched. Thus, a closed GOP structure is necessary for compliance with MPEG syntax and to ensure the absence of visible artifacts after execution of the splice.」(23頁24?32行)
[訳:ビデオスプライスポイント336の作成に関し、ビデオエンコーダは図6に示すようにGOP毎にスプライスポイントを挿入する。1つのGOPは一般的に、MPEGスキーム内で設定されたパラメータに基づいて1つのIフレームと一連のP及びBフレームからなる。好ましくは、GOPは“クローズド”GOP構造として符号化され、それはGOPがPフレームで終了することを意味する。従って、次のGOPへの動きベクトルは無い。動きベクトルがGOPから次のGOPへまたがるならば、画面を切り換えた時にその影響が生じ、見える。よって、MPEGシンタックスとの適合のため、及びスプライスの実行後に目に見える影響を生じさせないことを確実にするためにクローズドGOP構造が必要である。]

(5)引用文献10の記載事項
原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された引用文献10には、「MPEG-2 TSスプライシングに関する一検討」(タイトル)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「3.実現方法
TSの各ポイントでの復号開始遅延は様々な値を取り得るため,同じ値となる終了点と開始点を探すことは困難である.そこでスプライシングに用いる全てのTSにおいて,スプライシングが可能な全てのポイントで復号開始遅延を一定の値となるように制御すれば,任意のポイントでシームレススプライシングが可能となる.
そのためにビデオエンコーダでスプライシング可能なポイントを生成する.
ビデオの開始点になり得るのは,伝送順でIフレームの先頭だけである.そこでエンコーダがIフレームの挿入周期(不定でも可)で復号開始遅延を常に一定とする符号化制御(CBRの場合はこの周期で固定レートを実現)を行う.
さらに(1)の条件により,その単位はクローズドGOPとすることが必要である.
(A) ビデオエンコーダ動作
クローズドGOPを生成し,その単位で符号化制御を行い,符号化遅延時間を一定にする.
この単位でスプライシングが可能となる.
(B) スプライシング装置動作
各メディア共通のスプライシング可能ポイントを検出するか.そうなるように不要な(ビデオ以外の)TSパケットを廃棄(固定レート場合ヌルTSに置換)し,スプライシングを行う.」(280頁左カラム27行?右カラム9行)

3 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 構成要件Aと構成aとを対比する。
構成aは、「MPEG-2ストリームをスプライスポイントで切り換える方法」であり、「MPEG-2ストリーム」は、「パケット化されたビデオ・データ」といえ、「MPEG-2ストリームをスプライスポイントで切り換える」ことは、「パケット化されたビデオ・データを処理する」といえる。
したがって、構成要件Aと構成aは、「パケット化されたビデオ・データを処理する方法」として一致する。

イ 構成要件B、Cと構成b、dとを対比する。
構成bは、「旧MPEG-2ストリームのスプライスポイントから新しいMPEG-2ストリームのスプライスポイントに切り換え」るから、「旧MPEG-2ストリーム」と「新しいMPEG-2ストリーム」とが必要であり、引用発明は、「旧MPEG-2ストリーム」と「新しいMPEG-2ストリーム」を受信するステップがあるといえる。
構成dによると、「MPEG-2ストリームは、PIDにより番組のストリームを識別」するから、引用発明の「MPEG-2ストリーム」は、ビデオ番組を表す符号化されたデータを含むといえる。
構成bの「旧MPEG-2ストリーム」、「新しいMPEG-2ストリーム」は、それぞれ、第1、第2のビデオストリームといえ、ビデオ番組は対応する解像度を有しているといえるから、「第1の解像度を有する第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオストリーム」、「第2の表示解像度を有する第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリーム」といえる。
以上まとめると、本願発明と引用発明とは、「第1の表示解像度を有する第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオ・ストリームを受信するステップ」と、「第2の表示解像度を有する第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリームを受信するステップ」を含む点で共通する。
しかしながら、「第2の表示解像度」が、本願発明においては、「前記第1の表示解像度よりも高い」ものであるのに対し、引用発明においては、「前記第1の表示解像度よりも高い」ものであると特定されていない点で相違する。

ウ 構成要件Dと構成dとを対比する。
構成dは、「MPEG-2ストリームは、PIDにより番組のストリームを識別」するから、構成dの「PID」は、構成要件Dの「識別情報」に相当し、引用発明は、「前記第1の表示解像度の番組および前記第2の表示解像度の番組の各々の識別情報を処理するステップ」を含むといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記第1の表示解像度の番組および前記第2の表示解像度の番組の各々の識別情報を処理するステップ」を含む点で一致する。

エ 構成要件Eと構成dとを対比する。
上記ウのとおり、構成dの「PID」は、本願発明の「識別情報」に相当する。
構成dの「PID」は、番組のストリームを識別するのに用いられるから、引用発明は、「識別情報は、前記第1のビデオ番組を表す符号化されたデータおよび前記第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを特定するための第1のパケット識別子(PID)および第2の識別子(PID)をそれぞれ含み」といえる。また、上記イのとおり、構成bには、「旧MPEG-2ストリーム」と「新しいMPEG-2ストリーム」があり、それぞれ、「第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオ・ストリーム」、「第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリーム」といえること、また、両者は異なる番組のストリームであるから、両者を識別するのに用いられる第1のPIDと第2のPIDとは異なるものといえる。
構成dは、PIDにより番組のストリームを識別しているから、引用発明は、「識別情報に応じて、前記第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオ・ストリームと前記第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリームとを特定するステップ」を含むといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記識別情報に応じて、前記第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオ・ストリームと前記第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリームとを特定するステップであって、該識別情報は、前記第1のビデオ番組を表す符号化されたデータおよび前記第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを特定するための第1のパケット識別子(PID)および第2の識別子(PID)をそれぞれ含み、該第1のPIDおよび第2のPIDは互いに異なる、前記特定するステップ」を含む点で一致する。

オ 構成要件Fと構成b、c、dとを対比する。
構成b及びcの「スプライスポイント」は、構成要件Fの「スプライシング・ポイント」に相当する。
構成bは、「旧MPEG-2ストリームのスプライスポイントから新しいMPEG-2ストリームのスプライスポイントに切り換え」るものであり、「前記第1のビデオ・ストリームから前記第2のビデオ・ストリームへ切り換えるステップ」といえることから、構成dの「切り換え」は、「前記第1のビデオ・ストリームに含まれる第1のスプライシング・ポイントと前記第2のビデオ・ストリームに含まれる第2のスプライシング・ポイントとに基づいて行われ」るといえる。
構成dの「MPEG-2ストリーム」は、「PTSを含むものである」から、「前記第1のビデオ・ストリームおよび前記第2のビデオ・ストリームはプレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)を含」むものである。
構成cは、「新しいMPEG-2ストリームは、スプライスポイント直後に閉じられたGOPであ」るから、「第2のビデオ・ストリーム」に相当する引用発明の「新しいMPEG-2ストリーム」は、「前記第2のスプライシング・ポイントの直後に閉じられたGOPを含む」といえる。
以上まとめると、本願発明と引用発明とは、「前記第1のビデオ・ストリームから前記第2のビデオ・ストリームへ切り換えるステップであって、該切り換えは、前記第1のビデオ・ストリームに含まれる第1のスプライシング・ポイントと前記第2のビデオ・ストリームに含まれる第2のスプライシング・ポイントとに基づいて行われ、前記第1のビデオ・ストリームおよび前記第2のビデオ・ストリームはプレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)を含み、前記第2のビデオ・ストリームは前記第2のスプライシング・ポイントの直後に閉じられたGOPを含む、前記切り換えるステップ」を含む点で一致する。

カ 構成要件Gと構成dとを対比すると、「方法」として一致する。

(2)一致点、相違点
上記(1)によると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
パケット化されたビデオ・データを処理する方法であって、
第1の表示解像度を有する第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオ・ストリームを受信するステップと、
第2の表示解像度を有する第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリームを受信するステップと、
前記第1の表示解像度の番組および前記第2の表示解像度の番組の各々の識別情報を処理するステップと、
前記識別情報に応じて、前記第1のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第1のビデオ・ストリームと前記第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを含む第2のビデオ・ストリームとを特定するステップであって、該識別情報は、前記第1のビデオ番組を表す符号化されたデータおよび前記第2のビデオ番組を表す符号化されたデータを特定するための第1のパケット識別子(PID)および第2の識別子(PID)をそれぞれ含み、該第1のPIDおよび第2のPIDは互いに異なる、前記特定するステップと、
前記第1のビデオ・ストリームから前記第2のビデオ・ストリームへ切り換えるステップであって、該切り換えは、前記第1のビデオ・ストリームに含まれる第1のスプライシング・ポイントと前記第2のビデオ・ストリームに含まれる第2のスプライシング・ポイントとに基づいて行われ、前記第1のビデオ・ストリームおよび前記第2のビデオ・ストリームはプレゼンテーション・タイム・スタンプ(PTS)を含み、前記第2のビデオ・ストリームは前記第2のスプライシング・ポイントの直後に閉じられたGOPを含む、前記切り換えるステップと、
を含む、前記方法。

(相違点)
「第2の表示解像度」が、本願発明においては、「前記第1の表示解像度よりも高い」ものであるのに対し、引用発明においては、「前記第1の表示解像度よりも高い」ものと特定されていない点

4 相違点の判断
上記2(3)イのとおり、引用文献3には、「MPEG-2ストリームに規定されたスプライスポイントで、ストリームとの属性(解像度)が異なるコマーシャルを挿入する技術」が記載されている。
引用発明も引用文献3に記載された技術も共にストリームを切り換える技術であるから、引用発明に引用文献3に記載された技術を適用することは当業者が容易に着想することであって、引用発明に引用文献3の技術を適用して第1のビデオ番組と第2のビデオ番組の解像度を異ならせるようにし、引用発明において、「第2の表示解像度」が、「前記第1の表示解像度よりも高い」ものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

したがって、本願発明は、引用文献7に記載された発明及び引用文献3に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献7に記載された発明及び引用文献3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-27 
結審通知日 2018-04-03 
審決日 2018-04-16 
出願番号 特願2015-83997(P2015-83997)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 537- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 小池 正彦
渡辺 努
発明の名称 データ処理方法およびビデオ送信方法  
代理人 吹田 礼子  
代理人 倉持 誠  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

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