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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1343869
異議申立番号 異議2017-700774  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-09 
確定日 2018-07-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6084805号発明「保護膜溶液組成物,薄膜トランジスター表示板及び薄膜トランジスター表示板の製造方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6084805号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?5〕,〔6?14〕,及び〔15?22〕について訂正することを認める。 特許第6084805号の請求項6,8?14,及び15?21に係る特許を維持する。 特許第6084805号の請求項1?5,7,及び22に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6084805号の請求項1ないし22に係る特許についての出願は,平成24年10月19日(パリ条約による優先権主張2011年10月19日,大韓民国)に特許出願され,平成29年2月3日にその特許権の設定登録がされ,その後,その特許について,平成29年8月9日に特許異議申立人 築山 芳明 により,平成29年8月14日に特許異議申立人 猪瀬 則之 により特許異議の申立てがされ,平成29年11月13日付けで取消理由が通知され,その指定期間内である平成30年2月14日に意見書の提出及び訂正の請求があり,平成30年3月26日に手続補正書が提出され,その後,平成30年5月2日に特許異議申立人 猪瀬 則之により意見書の提出があったものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は,以下のアないしシのとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1?5を削除する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6において,「を備える薄膜トランジスター表示板:」を,「を備え,前記半導体層は酸化物半導体層を含む薄膜トランジスター表示板:」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項8?14も同様に訂正する)。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6において,「組み合わせを含む他の有機シロキサン鎖」を「組み合わせを含む有機シロキサン鎖」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項8?14も同様に訂正する)。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項12において,「分子量が100乃至10000」を,「分子量が172乃至10000」に訂正する。

カ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項8において,「請求項7に記載の」を,「請求項6に記載の」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9?12も同様に訂正する)。

キ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項15において,「を含む薄膜トランジスター表示板の製造方法:」を,「を含み,前記半導体層は,酸化物半導体から形成される薄膜トランジスター表示板の製造方法:」に訂正する(請求項15の記載を引用する請求項16?21も同様に訂正する)。

ク 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項15において,「組み合わせを含む他の有機シロキサン鎖」を「組み合わせを含む有機シロキサン鎖」に訂正する(請求項15の記載を引用する請求項16?21も同様に訂正する)。

ケ 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項19において,「分子量が100乃至10000」を,「分子量が172乃至10000」に訂正する。

コ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項20において,「前記半導体層は,酸化物半導体から形成する」を「前記データ線は,チタン,タンタル及びモリブデンのうちの少なくとも一つを含む下部膜と,銅または銅合金を含む上部膜と,から形成されている」に訂正する(請求項20の記載を引用する請求項21も同様に訂正する)。

サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項21において,「請求項20に記載の」を,「請求項15に記載の」に訂正する。

シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項22を削除する。

(2)訂正の目的の適否,一群の請求項,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1,4,12の訂正は,請求項を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

イ 訂正事項2は,従属請求項7の内容を,独立請求項6に組み込むものである。したがって,訂正事項2は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

ウ 訂正事項3,5,7,8の訂正は,特許請求の範囲の減縮または明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

エ 訂正事項10,11の訂正は,引用項番号のみの形式的な修正であるから,特許請求の範囲の減縮または明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

オ 訂正事項6は,従属請求項20の内容を,独立請求項15に組み込むものである。したがって,訂正事項6は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

カ 訂正事項9は,請求項20について請求項22に記載されていた事項により減縮するものである。したがって,訂正事項9は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

キ そして,これら訂正は,一群の請求項〔1?5〕,〔6?14〕,及び〔15?22〕に対して請求されたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び,同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項〔1?5〕,〔6?14〕,及び〔15?22〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項6,8?14,及び15?21に係る発明(以下「本件発明6」,「本件発明8」ないし「本件発明14」,及び「本件発明15」ないし「本件発明21」という。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項6,8?14,及び15?21に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項6】
基板と,
前記基板の上に位置するゲート線,半導体層,ソース電極及びドレイン電極を有するデータ線と,
前記ゲート線,前記半導体層,前記データ線の上に位置し,下記の化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む保護膜と,
を備え,
前記半導体層は酸化物半導体層を含む薄膜トランジスター表示板:



(式中,Rがメチル基およびビニル基のうちの少なくとも一つの置換基を含む。x,yはそれぞれ1乃至200であり,各波線は水素原子,xシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合を示すか,あるいは,xシロキサン単位,yシロキサン単位またはこれらの組み合わせを含む有機シロキサン鎖のxシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合を示す)。
【請求項8】
前記ゲート線は,チタン,タンタル及びモリブデンのうちの少なくとも一つを含む下部膜と,銅または銅合金を含む上部膜と,から形成されている請求項6に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項9】
前記データ線は,チタン,タンタル及びモリブデンのうちの少なくとも一つを含む下部膜と,銅または銅合金を含む上部膜と,から形成されている請求項8に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項10】
前記保護膜の上に位置する画素電極をさらに備え,
前記保護膜は接触孔を有し,前記接触孔を介して前記画素電極と前記ドレイン電極とが接続される請求項9に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項11】
上記の化学式1中,Rがフェニル基である置換基をさらに含む請求項10に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項12】
前記有機シロキサン樹指は,分子量が172乃至10000である請求項11に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項13】
前記基板の上に位置するゲート絶縁膜をさらに備える請求項6に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項14】
前記ゲート絶縁膜は,酸化ケイ素,窒化ケイ素及び酸窒化ケイ素のうちの少なくとも一つを含む請求項13に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項15】
基板の上にゲート線,半導体層,ソース電極及びデータ線を有する薄膜トランジスターを形成するステップと,
前記基板の上に前記薄膜トランジスターを覆うように下記の化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む溶液をコーティングして予備保護膜を形成するステップと,
前記予備保護膜にマスクを用いて光を照射するステップと,前記予備保護膜を現像して接触孔を有する保護膜を形成するステップと,
を含み,
前記半導体層は,酸化物半導体から形成される薄膜トランジスター表示板の製造方法:



(式中,Rがメチル基およびビニル基のうちの少なくとも一つの置換基を含む。x,yはそれぞれ1乃至200であり,各波線は水素原子,xシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合を示すか,あるいは,Xシロキサン単位,yシロキサン単位またはこれらの組み合わせを含む有機シロキサン鎖のxシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合を示す)。
【請求項16】
上記の化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む溶液は,プロピレングリコールモノメチルエーテルまたはプロピレングリコールモノエチルアセテートの少なくとも1つを含む請求項15に記載の薄膜トプンジスター表示板の製造方法。
【請求項17】
上記の化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む溶液には,前記有機シロキサン樹脂が4wt%乃至25wt%含まれている請求項16に記載の薄膜トランジスター表示板の製造方法。
【請求項18】
上記の化学式1中,Rがフェニル基である置換基をさらに含む請求項17に記載の薄膜トランジスター表示板の製造方法
【請求項19】
前記有機シロキサン樹脂は,分子量が172乃至10000である請求項18に記載の薄膜トランジスター表示板の製造方法。
【請求項20】
前記データ線は,チタン,タンタル及びモリブデンのうちの少なくとも一つを含む下部膜と,銅または銅合金を含む上部膜と,から形成されている請求項15に記載の薄膜トランジスター表示板の製造方法。
【請求項21】
前記ゲート線は,チタン,タンタル及びモリブデンのうちの少なくとも一つを含む下部膜と,銅または銅合金を含む上部膜と,から形成されている請求項15に記載の薄膜トランジスター表示板の製造方法。」

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし22に係る特許に対して平成29年11月13日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。
ア 保護膜としての限定について
保護膜として何ら限定のない本件特許の請求項1?6,13?19に係る特許について,明細書にはその内容について記載されておらず,サポート要件を満たさない。よって,請求項1?6,13?19に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,これらの発明に係る特許は取り消すべきものである。

イ 「他の有機シロキサン鎖」について
本件特許の請求項1,6,15に記載された「他の有機シロキサン鎖」について,明細書中には何ら記載が無く,サポート要件を満たしていない。また,請求項1,6,15に従属する請求項にも同様の取消理由が存する。よって,請求項1-22に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,これらの発明に係る特許は取り消すべきものである。

ウ 本件特許の請求項5,12,19には,「分子量が100乃至10000」と記載されているが,化学式1について,x=1,y=1,Rがメチル基という分子量が最小の場合でも,本件有機シロキサン樹脂の分子量は172となり,前記記載の分子量の下限値と整合せず,不明瞭な記載である。よって,請求項5,12,19に係る特許は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,これらの発明に係る特許は取り消すべきものである。

エ 請求項1?5に係る発明は,甲第1号証に記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。

オ 請求項1?6,13?19に係る発明は,甲第1?4号証に記載された発明に基づき,容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,請求項1?6,13?19に係る特許は,取り消されるべきものである。

(3)甲号証の記載
甲第1号証(特開平9-183948号公報)には,以下の記載がある。(下線は当審で付与した。以下同じ。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はシリカ系被膜形成用塗布液に係り,さらに詳しくは,半導体素子や液晶表示素子等における絶縁膜,平坦化膜,保護膜の形成に好適に用いられる,シリカ系被膜形成用塗布液に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体装置の製造分野においては,通常,金属シリコン等の半導体基板上に,不純物拡散,エッチング,配線形成,絶縁膜形成など,多数の工程を繰り返して配線を積み上げていく。このためシリコン基板上に複雑な回路(パターン)が形成され,このパターン形状に基づき凹凸が発生する。
【0003】特に近年,LSI,超LSI等の電子部品における高密度化,高精度化がますます進み,凹凸の程度が次第に激しくなる傾向にある。そのため,ホトリソグラフィー法によるパターニングの際,これら凹凸による段差が露光時の焦点深度の限界を超えてしまうという状況が発生し,これを防ぐために,リソグラフィーやエッチングを行う過程におけるある段階で,例えば上述した絶縁膜等をあらかじめ十分に平坦化し,できるだけ凹凸部の段差を小さくする処理技術が重要となっている。
【0004】上記の平坦化の方法としては,リフトオフ法,エッチバック法など,種々の方法が提案されているが,これらの中でスピン・オン・グラス(SOG)法が一般に実用化されている。SOG法は,アルコールを主体とする有機溶媒中にアルコキシシランを溶解し,加水分解物を得,塗布液を調製し,この塗布液を段差を有する基板表面に塗布し,段差の凹部を埋め,かつ全面を覆うべく塗布した後,熱処理によりシリカ系被膜を形成させて全体を平坦化する方法である。
【0005】これまでSOG法においては,塗布液として(i) テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランの加水分解物,(ii)テトラメトキシシランとモノメチルトリメトキシシラン等のテトラアルコキシシランとモノアルキルトリアルコキシシランの共加水分解物,(iii) トリエトキシシランの加水分解物,(iv)トリエトキシシランとテトラエトキシシラン等のトリアルコキシシランとテトラアルコキシシランの共加水分解物等を有機溶媒に溶解したものが用いられている。上述した各塗布液からなるシリカ系被膜は,半導体素子製造の実ラインで使用され,平坦化性に優れ,クラック限界(クラックが発生しない最大膜厚)も高く,これらの特性については満足のいくものであるが,被膜形成の際に基板界面にわずかな剥れが生じることがあり,密着性の点で改良が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので,平坦化性,クラック限界の特性をを損なうことなく,基板界面での剥れが生じることのない密着性に優れたシリカ系被膜形成用塗布液を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果,被膜形成用塗布液において,アルコキシシラン化合物を酸触媒の存在下で加水分解させて得られる反応生成物にシリコーン系界面活性剤を添加して塗布液することにより上記課題が解決し得ることを見出し,本発明を完成するに至った。」

「【0033】(実施例3)テトラメトキシシラン246g(1.62モル)とモノメチルトリメトキシシラン220g(1.62モル)をエチレングリコールモノブチルエーテル635g(5.37モル)に溶解しかき混ぜた。次いで,純水194g(10.78モル)と硝酸24ppmを混合したものを,ゆっくりかき混ぜながら滴下した後,約5時間かき混ぜ,その後室温で5日間静置させて固形分濃度15重量%の溶液とした。
【0034】この溶液にシリコーン系界面活性剤であるSH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を100ppm添加し,シリカ系被膜形成用塗布液とした。
【0035】調製した塗布液を4インチシリコンウェーハ上にアルミニウムの1.0μmの段差パターンを有する基板に,スピンナーにより塗布し,次いでホットプレート上で乾燥させた後,空気中にて400℃で30分間焼成して被膜を得,SEM(走査型電子顕微鏡)写真の観察をしたところ,平坦化性は良好で,クラックの発生もなく,基板界面に剥れもなかった。」

「【0044】(比較例3)実施例3において,シリコーン系界面活性剤を省いた以外は,実施例3と同様にしてシリカ系被膜形成用塗布液とし,同様な評価を行ったところ,平坦化性は良好で,クラックの発生もなかったが,基板界面に剥れが生じた。」

「【0049】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば,平坦化性に優れ,クラック限界が高く,被膜とした際に基板界面での剥れが生じず,密着性に優れたシリカ系被膜形成用塗布液を提供することができ,半導体素子や液晶表示素子等における層間絶縁膜,平坦化膜,保護膜の形成や多層レジスト法用積層材として好適に用いられる。」

以上の記載によれば,甲第1号証には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「4インチシリコンウェーハと,
前記4インチシリコンウェーハの上に位置する,1.0μmの段差パターンを形成するアルミニウムと,
前記4インチシリコンウェーハ上に前記アルミニウムの1.0μmの段差パターンを有する基板に,スピンナーによりシリカ系被膜形成用塗布液を塗布し,次いでホットプレート上で乾燥させた後,空気中にて400℃で30分間焼成して得られた被膜と,
を備えた物品であって,
前記シリカ系被膜形成用塗布液は,テトラメトキシシラン246g(1.62モル)とモノメチルトリメトキシシラン220g(1.62モル)をエチレングリコールモノブチルエーテル635g(5.37モル)に溶解しかき混ぜ,次いで,純水194g(10.78モル)と硝酸24ppmを混合したものを,ゆっくりかき混ぜながら滴下した後,約5時間かき混ぜ,その後室温で5日間静置させて固形分濃度15重量%の溶液とし,この溶液にシリコーン系界面活性剤であるSH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を100ppm添加して調整したものである,
平坦化性が良好で,クラックの発生もなく,基板界面に剥れもなかった物品。」

甲第2号証(特開平7-22506号公報)には,以下の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,半導体装置及びその製造方法に関するものであり,特に,多層配線構造で,層間平坦化膜を有する半導体装置及びその製造方法に関すものである。」

「【0011】
【実施例】以下この発明の1実施例を図を参照して説明する。
実施例1.図1は,この発明の1実施例である半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。同図において,1は半導体からなる基板,2はCVD法により基板1上に形成されたシリコン酸化膜,3はシリコン酸化膜2上に形成された第1の配線層である。なお,ここでは,第1の配線層3に接続されるべきトランジスタなどの能動素子については,省略し図示していない。
【0012】以下,図を参照して製造方法を説明する。まず,シリコン酸化膜2が形成された基板1上にAlSi合金をスパッタリングにより堆積し,図1(a)に示すように,これをフォトリソグラフィによりパターニングして第1の配線層3を形成する。次に,重量平均分子量が約6万である,以下の化1で示されるポリメチルビニルシルセスキオキサンのアニソール溶液(20重量%の濃度に調整された)を,基板1上に回転塗布する。これにより,第1の配線層3上の膜厚が約0.5μmのポリメチルビニルシルセスキオキサン膜を形成し,80℃で30分間,続いて125℃で30分間の熱処理を行って溶剤を乾燥させ,図1(b)に示すように,樹脂膜5を形成した。
【0013】
【化1】
<省略>

なお,式中nは自然数である。
【0014】ポリメチルビニルシルセスキオキサン膜は平坦性が優れており,1回の塗布で下地の段差をほぼ平坦化できる。なお,化1に示す末端に水酸基を有し,側鎖に炭素2重結合1個を持つ1価の不飽和原子団であるビニル基と低級アルキルであるメチル基とを有するこのシリコーンラダーポリマーは,特開昭3-207719号公報に開示された方法に準じてつくられた。」

甲第3号証(特開2011-29212号公報)には,以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って,本発明の課題は,膜欠陥の数が十分に少なく,従って,信頼性が十分に高く,また,製造が簡便で効率的なアクティブマトリックス基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は,アクティブマトリックス基板において,基板上に形成した有機保護膜の膜欠陥を低減させるべく,鋭意研究を重ねてきたが,従来,試みられてきたように,基板を疎水化するのではなく,スイッチング素子を形成した基板の水との接触角を特定範囲に低下させることにより,驚くべきことに,上記膜欠陥が著しく低下することを見出し,この知見に基いて,本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明によれば,スイッチング素子が形成された,水との接触角が20°以下である表面部分を少なくとも一部に有する基板に,該スイッチング素子の有機保護膜を形成する工程(有機保護膜形成工程)を有する,アクティブマトリックス基板の製造方法が提供される。
また,本発明によれば,基板上にスイッチング素子を形成する工程(スイッチング素子形成工程)及び,これに引き続く少なくとも1回の,該スイッチング素子が形成された基板表面の少なくとも一部の水との接触角を20°以下に調整する工程(接触角調整工程)と該基板表面上への有機保護膜形成工程との組合せ工程を有する,アクティブマトリックス基板の製造方法が提供される。
【0012】
本発明のアクティブマトリックス基板の製造方法において,接触角調整工程が,オゾン処理,紫外線照射,シリル化処理,プラズマ処理,純水洗浄及び炭酸ガス洗浄から選ばれる少なくとも1つの処理ステップからなるものであることが好ましい。
本発明のアクティブマトリックス基板の製造方法は,スイッチング素子が薄膜トランジスタ(TFT)であるアクティブマトリックス基板に好適に適用できる。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のアクティブマトリックス基板の製造方法は,スイッチング素子が形成された,水との接触角が20°以下である表面部分を少なくとも一部に有する基板に,該スイッチング素子の有機保護膜を形成する工程(有機保護膜形成工程)を有する。
【0017】
本発明において用いる基板には,スイッチング素子が形成されている。
スイッチング素子は,特に限定されず,その代表的な例として,電界効果トランジスタである薄膜トランジスタ(TFT)を挙げることができる。
スイッチング素子である薄膜トランジスタは,半導体層やゲート絶縁膜,電極等から構成される。
薄膜トランジスタを形成する工程(スイッチング素子形成工程)は,基板上にゲート電極を形成するステップ,ゲート絶縁膜及び半導体層を形成するステップ,並びに,ソース電極及びドレイン電極を形成するステップを有する。
スイッチング素子の半導体層材料としては,有機材料を用いてもよいが,シリコン系材料であることが好ましく,アモルファスシリコンであることがより好ましい。
基板上にスイッチング素子を形成する方法は,特に限定されず,従来公知の方法を用いればよい。
なお,本発明において,基板とは,基板基材そのもの及び基板基材上に基板材料の膜を形成したものをいう。また,基板基材とは,基板の厚みの大部分を占める部分の材料であり,基板材料とは,基板基材の表面に薄い層状に形成される材料のことをいう。
基板基材としては,ガラス基板,石英基板,シリコン基板,金属基板,ステンレス基板,プラスチック基板等を用いることができる。これらの基板基材は,その表面に絶縁膜を形成したものであってもよい。
基板材料としては,窒化珪素,酸化珪素,窒化酸化珪素,窒化アルミニウム,酸窒化アルミニウム,酸化アルミニウム等を用いることができる。
【0018】
本発明において用いる基板は,水との接触角が20°以下である表面部分を少なくとも一部に有する。
このような基板は,基板基材上にスイッチング素子を形成した後,該スイッチング素子が形成された基板表面の少なくとも一部の水との接触角を20°以下に調整することによって得ることができる。
基板表面の水との接触角を20°以下に調整する方法としては,オゾン処理,紫外線照射,シリル化処理,プラズマ処理,純水洗浄及び炭酸ガス洗浄を挙げることができ,これらの処理方法を単独で又は組み合わせて採用する。
なお,接触角の調整は,20°を超える接触角を低下させることのみでなく,接触角を,20°以下の範囲であって好ましい範囲に,増大させることをも含む。」

「【0030】
有機保護膜を形成する材料としては,アクリル樹脂,ポリシロキサン樹脂,脂環式オレフィン重合体及びカルドポリマーから選ばれるポリマーを使用する。
これらの中で,脂環式オレフィン重合体は,吸湿性が極めて小さく,誘電率の周波数依存性が小さいので好適に用いることができる。本発明において,有機保護膜の厚さは,通常,0.1?100μm,好ましくは0.5?50μm,より好ましくは0.5?30μmである。」

「【0045】
有機保護膜を形成するために用いるポリシロキサン樹脂は,アルコキシ基等を有するシラン化合物を1種又は2種以上組み合わせたものを混合,反応させることによって得られる樹脂である。このようなポリシロキサン樹脂は,この技術分野で通常用いられるものであれば,特に限定されないが,例えば,特開2006-178436号公報に開示されているものを挙げることができる。」

「【0058】
パターン化工程においては,スイッチング素子を有する基板に形成された有機保護膜に活性放射線を照射して有機保護膜中に潜像パターンを形成し,次いで現像液を接触させることにより潜像パターンを顕在化させて,有機保護膜をパターン化する。」

「【0063】
以上の工程により,有機保護膜にコンタクトホールとなるホールパターンが形成される。以後,例えば,公知の方法に従って,有機保護膜の上に,例えば,スパッタリング法によりITO(Indium Tin Oxide)からなる画素電極を形成してパターニングし,有機保護膜のコンタクトホールを介してTFTのドレイン電極と画素電極とを接続する。このとき,画素電極を構成するITOにより電極パターンを同時に形成する。その後,配向膜を形成してラビング処理等の配向処理を施すことによりアクティブマトリックス基板を得ることができる。
【0064】
図1は,本発明のアクティブマトリックス基板の一例を示す図である。
図1に示すアクティブマトリックス基板においては,基板基材上に形成されたTFTのアモルファスシリコン表面の水との接触角が,シリル化により調整され,その上に有機保護膜を有する。図1は,本発明のアクティブマトリックス基板の一態様の,1画素単位の模式的平面図(1a)及びTFT部を含む部分断面図(1b)を示す。本態様においては,基板基材1の表面に,ゲート信号線2とソース信号線3が直交して配置され,その交点にTFT4が配置されている。TFT4は,ゲート電極5,ソース電極6及びドレイン電極7を有する。基板基材1上に形成されたゲート絶縁膜の上には,有機高分子からなる有機保護膜9が設けられ,有機保護膜9のコンタクトホール10を介して,ドレイン電極7と画素電極11とが接続されている。
なお,本態様ではTFTが1画素単位当たり1つであるが,所望により2つ以上形成されていてもよい。」

「【0079】
〔実施例3〕
ガラス基板基材〔コーニング社製,商品名「コーニング1737」〕上に,スパッタリング装置を用いて,クロムを200nmの膜厚に形成し,フォトリソグラフィによりパターニングを行ない,ゲート電極,ゲート信号線及びゲート端子部を形成した。次いで,CVD装置により,ゲート電極及びゲート配線を覆って,ゲート絶縁膜となる窒化珪素膜を450nmの厚さ,半導体層となるアモルファスシリコン層(a-Si層)を250nmの厚さ,オーミックコンタクト層となるn^(+)Si層を50nmの厚さで連続成形し,n^(+)Si層とa-Si層をアイランド状にパターニングした。更に,ゲート絶縁膜及びn^(+)Si層上にスパッタリング装置で,クロムを200nmの膜厚に形成し,フォトリソグラフィにより,ソース電極,ソース信号線,ドレイン電極及びデータ端子部を形成し,ソース電極とドレイン電極との間の不要なn^(+)Si層を除去してバックチャネルを形成し,ガラス基板基材上にTFTが形成されたアレイ基板を得た。この基板の最表面は,窒化珪素膜である。
【0080】
得られたアレイ基板について,UV-O_(3)処理を2分間行なった後に,純水洗浄を超音波工程と組み合わせて10分間行なった。
【0081】
次いで,得られたアレイ基板に上記の感放射線性樹脂組成物1Dをスピンコートした後,ホットプレートを用いて90℃で2分間プリベークして,膜厚2.5μmの樹脂膜を形成した。次いで,0.4%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて,25℃で60秒間現像処理を行ったのち,超純水で30秒間リンスした。その後,基板全面に超高圧水銀ランプを用いてg線,h線及びi線の合計照度を約100mW/cm^(2)となるように調整した光を照射露光量が約1,000mJ/cm^(2)となるように照射した。
得られたアレイ基板について,生じた膜の欠陥数を,光学顕微鏡を用いて調べた結果,膜欠陥数が,600cm^(2)当たりの換算で,0個であった。
この後にオーブンを用いて,230℃で60分間加熱するポストベーク(架橋処理)を行なった。
有機保護膜が形成されたアレイ基板を真空槽に移し,スパッタガスとしてアルゴンと酸素との混合ガス(体積比100:4)を用い,圧力0.3Pa,DC出力400Wとし,マスクを通してDCスパッタリングすることにより,ドレイン電極に接するように,膜厚200nmのIn-Sn-O系の非晶質透明導電層(画素電極)を形成して,アクティブマトリックス基板を得た。こうして得られたアクティブマトリクス基板はトランジスタ特性の信頼性が十分に高いものであった。」

以上から,甲第3号証に,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
・技術的事項1:
アクティブマトリクス基板の製造において,
ガラス基板基材と,前記ガラス基板基材上に位置する,ゲート電極,ゲート信号線,半導体層となるアモルファスシリコン層(a-Si層),ソース電極,ソース信号線,ドレイン電極及びデータ端子部とを備えたアレイ基板に対して,
水との接触角が20°以下である表面部分を少なくとも一部に有する基板となるように,UV-O_(3)処理を2分間行なった後に,純水洗浄を超音波工程と組み合わせて10分間行ない,
次いで,得られたアレイ基板に感放射線性樹脂組成物1Dをスピンコートした後,ホットプレートを用いて90℃で2分間プリベークして,膜厚2.5μmの樹脂膜を形成し,次いで,0.4%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて,25℃で60秒間現像処理を行ったのち,超純水で30秒間リンスし,その後,基板全面に超高圧水銀ランプを用いてg線,h線及びi線の合計照度を約100mW/cm^(2)となるように調整した光を照射露光量が約1,000mJ/cm^(2)となるように照射することで,
得られたアレイ基板について,生じた膜の欠陥数を,光学顕微鏡を用いて調べた結果,膜欠陥数が,600cm^(2)当たりの換算で,0個にできること。

・技術的事項2:
膜欠陥の数が十分に少なく,従って,信頼性が十分に高く,また,製造が簡便で効率的なアクティブマトリックス基板及びその製造方法を提供するために基板表面の水との接触角を20°以下に調整する方法としては,オゾン処理,紫外線照射,シリル化処理,プラズマ処理,純水洗浄及び炭酸ガス洗浄を挙げることができ,これらの処理方法を単独で又は組み合わせて採用することができること。

・技術的事項3:
スイッチング素子の半導体層材料としては,有機材料を用いてもよいが,シリコン系材料であることが好ましく,アモルファスシリコンであることがより好ましいこと。

甲第4号証(特開2004-165613号公報)には,以下の記載がある。
「【0033】
特に適切な有機ポリシリカBステージ樹脂は,式(I)および/または(II)の1つまたはそれ以上のオルガノシランと式SiY_(4)(式中Yは前記のような任意の加水分解可能な基である)を有する1つまたはそれ以上の四官能基シランとの共加水分解物および部分縮合物である。適切な加水分解可能な基には,ハロ,(C_(1)-C_(6))アルコキシ,アシルオキシ等が含まれるが,これらに限定されるわけではない。好ましい加水分解可能な基は,クロロおよび(C_(1)-C_(2))アルコキシである。式SiY_(4)の適切な四官能基シランには,テトラメトキシシラン,テトラエトキシシラン,テトラクロロシラン等が含まれるが,これらに限定されるわけではない。共加水分解物および部分共縮合物を調製するのに特に適したシラン混合物には,次のものが含まれる。すなわち,メチルトリエトキシシランおよびテトラエトキシシラン,メチルトリメトキシシランおよびテトラメトキシシラン,フェニルトリエトキシシランおよびテトラエトキシシラン,メチルトリエトキシシランおよびフェニルトリエトキシシランおよびテトラエトキシシラン,エチルトリエトキシシランおよびテトラメトキシシラン,およびエチルトリエトキシシランおよびテトラエトキシシランである。このようなオルガノシラン対四官能基シランの比は一般的に,99:1から1:99,好ましくは95:5から5:95,より好ましくは90:10から10:90,さらにより好ましくは80:20から20:80である。
【0034】
特定の実施形態において,このBステージ有機ポリシリカ樹脂は,式(I)の1つまたはそれ以上のオルガノシランと式SiY_(4)の四官能基シランとの共加水分解物および部分共縮合物の1つまたはそれ以上から選ばれる。もう1つの実施形態において,このBステージ有機ポリシリカ樹脂は,式(II)の1つまたはそれ以上のオルガノシランと式SiY_(4)の四官能基シランとの共加水分解物および部分共縮合物の1つまたはそれ以上から選ばれる。さらにもう1つの実施形態において,このBステージ有機ポリシリカ樹脂は,式(I)の1つまたはそれ以上のオルガノシラン,式(II)の1つまたはそれ以上のオルガノシラン,および式SiY_(4)の四官能基シランの共加水分解物および部分共縮合物の1つまたはそれ以上から選ばれる。このBステージ有機ポリシリカ樹脂は,式(I)または(II)の1つまたはそれ以上のシランと,式(I)または(II)の1つまたはそれ以上のシランの加水分解物および部分縮合物の1つまたはそれ以上との非加水分解および非縮合シランの1つまたはそれ以上を含む。さらにもう1つの実施形態において,このBステージ有機ポリシリカ樹脂は,式(II)のシラン,および式(I)の1つまたはそれ以上のオルガノシランの加水分解物および部分縮合物の1つまたはそれ以上,および好ましくは式(I)の1つまたはそれ以上のオルガノシランと,式SiY_(4)(式中Yは前記と同じである)の四官能基シランとの共加水分解物および部分共縮合物の1つまたはそれ以上を含む。好ましくはこのようなBステージ有機ポリシリカ樹脂は,式(II)の1つまたはそれ以上のシランと,式(RSiO_(1.5))(SiO_(2))(式中Rは前記と同じである)を有する共加水分解物および部分共縮合物の1つまたはそれ以上との混合物を含む。
【0035】
式(I)のオルガノシランが,四官能基シランと共加水分解または共縮合される時,式(I)のオルガノシランは,式RSiY_(3)を有するのが好ましく,好ましくはメチルトリメトキシシラン,メチルトリエトキシシラン,エチルトリメトキシシラン,エチルトリエトキシシラン,フェニルトリメトキシシラン,フェニルトリエトキシシラン,およびこれらの混合物から選ばれる。同様に,この四官能基シランが,テトラメトキシシランとテトラエトキシシランとから選ばれることも好ましい。
【0036】
もう1つの実施形態において,特に有用なキャップ層組成物は,下記式を有する1つまたはそれ以上のBステージ有機ポリシリカ樹脂を含む:



式中,各R_(1)およびR_(2)は独立して,ヒドロキシル,水素,(C_(1)-C_(6))アルキル,(C_(2)-C_(6))アルケニル,および(C_(1)-C_(6))アルキリジンから選ばれ,x=0.3から0.7,およびy+z=0.3から0.7であり,この場合xおよびy+zはこれらの成分のモルフラクションである。x+y+zが1に等しくない時,その場合には1つまたはそれ以上のその他のモノマー単位がこの樹脂中に含まれていると理解される。このような他のモノマー単位は,前記式のモノマー単位と共縮合しうる任意のものであってもよく,好ましくは前記シランの1つまたはそれ以上である。1つの実施形態において,x+y+z=1である。別の実施形態において,R_(1)およびR_(2)は独立して,ヒドロキシル,水素,メチル,エチル,ビニル,メチリジン(-CH_(2)-)およびエチリジン(-CH_(2)CH_(2)-)から選ばれる。この式の特に有用な組成物は,R_(1)がメチルであり,R_(2)がヒドロキシルであり,x=0.5から0.6であり,y+z=0.5から0.4である場合である。このような組成物は,メチルトリエトキシシランとテトラエトキシシランとの共加水分解または共縮合によって調製される。一般に前記式を有する樹脂は,4000から100,000の分子量を有する。」

(4)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア)特許法第36条第6項第1号について
(i)保護膜としての限定について
当審では,保護膜として何ら限定のない本件特許の請求項1?6,13?19に係る特許について,明細書にはその内容について記載されておらず,サポート要件を満たさないとの取消理由を通知しているが,平成30年2月14日付けの訂正において,保護膜が,薄膜トランジスター表示板における,基板の上に位置するゲート線,酸化物半導体層を含む半導体層,ソース電極及びドレイン電極を有するデータ線との上に位置する保護膜である旨の特定がされた結果,この取消理由は解消した。

(ii)「他の有機シロキサン鎖」について
当審では,本件特許の請求項1,6,15に記載された「他の有機シロキサン鎖」について,明細書中には何ら記載が無く,サポート要件を満たしていないとの取消理由を通知しているが,平成30年2月14日付けの訂正において,「有機シロキサン鎖」と訂正されるとともに,同日付けの意見書において,「有機シロキサン鎖」が,単に,xシロキサン単位,yシロキサン単位またはこれらの組合せを「含む」有機シロキサンであって,ここでの「含む」(comprise)が,本願発明の目的・作用に照らし,合理的に解釈されるべきもの,例えば,実質的上,xシロキサン単位及びyシロキサン単位からなるものと解釈され,さらに,この部分は,この前に記載された「xシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合」との事項をより明確にするものであり,すなわち,xシロキサン単位またはyシロキサン単位は,このようなシロキサン単位を含む有機シロキサン鎖に含まれるものであっても良い,ということを明らかにするものであり,これらの点について,本願特許明細書の【0038】の記載などから明らかであると釈明された結果,この取消理由は解消した。

(イ)特許法第36条第6項第2号について
当審では,本件特許の請求項5,12,19には,「分子量が100乃至10000」と記載されているが,化学式1について,x=1,y=1,Rがメチル基という分子量が最小の場合でも,本件有機シロキサン樹脂の分子量は172となり,前記記載の分子量の下限値と整合せず,不明瞭な記載であるとの取消理由を通知しているが,平成30年2月14日付けの訂正において,「分子量が172乃至10000」と訂正された結果,この取消理由は解消した。

(ウ)特許法第29条第1項第3号について
当審では,請求項1?5に係る発明は,甲第1号証に記載された発明であるとの取消理由を通知しているが,平成30年2月14日付けの訂正において,請求項1?5が削除された結果,この取消理由は解消した。

(エ)特許法第29条第2項について
当審では,請求項1?6,13?19に係る発明は,甲第1?4号証に記載された発明に基づき,容易に発明をすることができたものであるとの取消理由を通知しているが,平成30年2月14日付けの訂正において,請求項1?5が削除されるとともに,請求項6,13?19に,取消理由を通知していない請求項7あるいは請求項20に記載された発明特定事項が付加された結果,この取消理由は解消した。

(オ)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人 猪瀬 則之は,訂正事項2における,「含む」という表現が,主成分として含む場合や,副成分として含む場合をも包含する表現であるから,特許請求の範囲の拡張および新規事項の追加に該当すると主張する。
しかしながら,「主成分」,「副成分」という用語は,「組成物」・「混合物」において用いられる用語であって,「(半導体)層」と「(酸化物半導体)層」との関係において,「主成分」,「副成分」という概念は用いられない。
他方,訂正後の請求項6の「酸化物半導体層」が,訂正前の請求項7で特定されるように「酸化物半導体から形成されている」ことは,技術常識に照らして明らかである。
したがって,かかる主張は理由がない。

さらに,特許異議申立人 猪瀬 則之は,訂正事項3および7は,特許請求の範囲を拡張するものであって,例えば,平成30年5月2日に提出した意見書第2ページに記載した,公知の環状ポリシロキサンを含むものとなったと主張する。
しかしながら,訂正事項3および7は,訂正された「有機シロキサン鎖」が,単に,xシロキサン単位,yシロキサン単位またはこれらの組合せを「含む」有機シロキサンであって,ここでの「含む」(comprise)が,本願発明の目的・作用に照らし,合理的に解釈されるべきもの,例えば,実質的上,xシロキサン単位及びyシロキサン単位からなるものと解釈され,さらに,この部分は,この前に記載された「xシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合」との事項をより明確にするものであり,すなわち,xシロキサン単位またはyシロキサン単位は,このようなシロキサン単位を含む有機シロキサン鎖に含まれるものであっても良い,ということを明らかにするものであり,これらの点について,本願特許明細書の【0038】の記載などから明らかであると理解されるから,訂正事項3および7が,特許請求の範囲を拡張するものとは認められない。
さらに,本件特許明細書の【0038】の「有機シロキサン樹脂のx単位またはy単位の酸素原子が他のxシロキサン単位または他のyシロキサン単位に結合されている場合,上記の化学式1中,有機シロキサン樹脂のx単位またはy単位の酸素原子は他のxシロキサン単位または他のyシロキサン単位のシリコン(Si)原子に結合される。」との説明に照らして,平成30年5月2日に提出した意見書第2ページに記載した,環状ポリシロキサンは,「有機シロキサン樹脂のx単位またはy単位の酸素原子は他のxシロキサン単位または他のyシロキサン単位のシリコン(Si)原子に結合される」ものではないことから,訂正事項3および7によって,意見書第2ページに記載した,公知の環状ポリシロキサンを含むものとなったとも認められない。
したがって,かかる主張は理由がない。

さらに,特許異議申立人 猪瀬 則之は,訂正事項5および8について「172」という数値に根拠がなく,臨界性を有するものではないから,新規事項の追加に該当すると主張する。
しかしながら,明細書または図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものということができるから,本件特許明細書に記載された化学式に基づく訂正であって,新たな技術上の意義が追加されないことが明らかである訂正事項5および8は,新規事項の追加に該当しない。
したがって,かかる主張は理由がない。

イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(ア)特許異議申立人 猪瀬 則之 は,訂正前の特許請求の範囲に関し,特許異議申立書において,請求項1?22に記載の発明は,甲第1?3号証から当業者が容易に想到し得たものであり,したがって,本件特許は,特許法第29条第2項の要件を満たさないと主張している。

(イ)甲号証の記載
上記(3)で摘記したとおりである。

(ウ)判断
(i)本件発明6について
本件発明6は,以下のとおりである。
「【請求項6】
基板と,
前記基板の上に位置するゲート線,半導体層,ソース電極及びドレイン電極を有するデータ線と,
前記ゲート線,前記半導体層,前記データ線の上に位置し,下記の化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む保護膜と,
を備え,
前記半導体層は酸化物半導体層を含む薄膜トランジスター表示板:



(式中,Rがメチル基およびビニル基のうちの少なくとも一つの置換基を含む。x,yはそれぞれ1乃至200であり,各波線は水素原子,xシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合を示すか,あるいは,xシロキサン単位,yシロキサン単位またはこれらの組み合わせを含む有機シロキサン鎖のxシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合を示す)。」

本件発明6と引用発明1とを対比する。
・引用発明1において,「テトラメトキシシラン246g(1.62モル)とモノメチルトリメトキシシラン220g(1.62モル)をエチレングリコールモノブチルエーテル635g(5.37モル)に溶解しかき混ぜ,次いで,純水194g(10.78モル)と硝酸24ppmを混合したものを,ゆっくりかき混ぜながら滴下した後,約5時間かき混ぜ,その後室温で5日間静置させて」得た「固形分」は,本件発明6の「化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂」に相当する。
そして,引用発明1の「シリカ系被膜形成用塗布液」は,前記「固形分」を濃度15重量%含む「溶液」に「シリコーン系界面活性剤であるSH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)」を100ppm添加して調整したものである。
してみれば,引用発明1の「シリカ系被膜形成用塗布液」を塗布することで得られた「被膜」と,本件発明6の「保護膜」とは,「化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む」「膜」である点において一致する。

・引用発明1の「4インチシリコンウェーハ」は,本件発明6の「基板」に相当する。
また,引用発明1の「1.0μmの段差パターンを形成するアルミニウム」及び「物品」と,本件発明6の「ゲート線,半導体層,ソース電極及びドレイン電極を有するデータ線」及び「薄膜トランジスター表示板」とは,それぞれ「部材」及び「物品」である点で一致する。

以上から,本件発明6と,引用発明1とは,以下の点で一致し,相違する。
<一致点>
基板と,
前記基板の上に位置する部材と,
前記部材の上に位置し,下記の化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む膜と,
を備える物品:



(式中,Rがメチル基およびビニル基のうちの少なくとも一つの置換基を含む。x,yはそれぞれ1乃至200であり,各波線は水素原子,xシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合を示すか,あるいは,xシロキサン単位,yシロキサン単位またはこれらの組み合わせを含む有機シロキサン鎖のxシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合を示す)。

<相違点>
・相違点1:「化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む」「膜」が,本件発明6では,「薄膜トランジスター表示板」における基板の上に位置する「ゲート線,半導体層,ソース電極及びドレイン電極を有するデータ線」の上に位置する「保護膜」であって,前記「半導体層」が,「酸化物半導体層を含む」ものであるのに対して,引用発明1には,そのような構成が特定されていない点。

相違点1について検討する。
甲第3号証には,アクティブマトリクス基板の製造において,ガラス基板基材と,前記ガラス基板基材上に位置する,ゲート電極,ゲート信号線,半導体層となるアモルファスシリコン層(a-Si層),ソース電極,ソース信号線,ドレイン電極及びデータ端子部とを備えたアレイ基板に対して,樹脂組成物をスピンコートして樹脂膜を形成することが記載されている。
異議申立人 猪瀬 則之 は,特許異議申立書において,本件特許6に対応する訂正前の請求項7に記載された発明について,以下のように主張する。
「(4-2-9)本件特許発明7?9が進歩性を欠くことについて
本件発明7は,本件発明6の構成に加えて半導体層が酸化物半導体から形成されていることを規定(構成要件K)するものである。構成要件Kを採用するか否かは,当業者が通常の創作能力の発揮として行う単なる設計事項に過ぎないという他なく,本件特許6は甲3発明および甲1発明に対し進歩性を欠く以上,本件発明7についても進歩性が認められる余地はない。」
しかしながら,甲第3号証の〔実施例3〕には,半導体層が,「アモルファスシリコン層(a-Si層)」であるものが記載されており,また,甲第3号証の【0017】には,「スイッチング素子の半導体層材料としては,有機材料を用いてもよいが,シリコン系材料であることが好ましく,アモルファスシリコンであることがより好ましい。」ことが示され,さらに,甲1?3号証のいずれにも,「酸化物半導体層を含む」半導体層の上に位置するように保護膜を形成することは記載されていない。
しかも,甲第3号証に記載された発明は,膜欠陥の数が十分に少なく,従って,信頼性が十分に高く,また,製造が簡便で効率的なアクティブマトリックス基板及びその製造方法を提供するために基板表面の水との接触角を20°以下に調整する方法としては,オゾン処理,紫外線照射,シリル化処理,プラズマ処理,純水洗浄及び炭酸ガス洗浄を挙げることができ,これらの処理方法を単独で又は組み合わせて採用することができるものであるところ,「酸化物半導体層を含む」「半導体層」に対する,これらの処理方法の適用は,当該「酸化物半導体層」の特性に影響を及ぼすものといえるから,甲第3号証に記載された発明において,「アモルファスシリコン層(a-Si層)」を,「酸化物半導体層を含む」「半導体層」とすることは,単なる設計事項であるとはいえない。
してみれば,甲第1?3号証からは,引用発明1において,「化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む」「膜」を,「薄膜トランジスター表示板」における基板の上に位置する「ゲート線,半導体層,ソース電極及びドレイン電極を有するデータ線」の上に位置する「保護膜」であって,前記「半導体層」が,「酸化物半導体層を含む」ものとすることが容易であったとはいえない。
そして,当該事項により,本件発明6は,「銅などの低抵抗配線を用いながらも,配線の上部に別途のキャッピング膜を形成する必要がなく,半導体層として酸化物半導体を用いた場合にも優れた薄膜トランジスター特性を有することができる。」(【0033】),「【0083】従来の化学気相蒸着方法(Chemical‐Vapor‐Depositionition;CVD)を用いて保護膜180を形成する場合には,技術的な限界により,厚膜を形成することが困難であった。このため,膜を平坦化させるために別途の平坦化膜を形成することを余儀なくされていた。しかしながら,本実施形態のように保護膜180をコーティング方法を用いて溶液工程により形成すれば,一回の工程により厚肉で且つ平坦な保護膜180を形成することができる。このため,膜の平坦化のための別途の平坦化膜を形成する必要がない。【0084】また,溶液工程により保護膜180を形成するので,既存のCVD方法によって酸化ケイ素を形成する過程で発生する酸素ガスが銅などを酸化させることを防ぐことができる。したがって,主配線層となるデータ線171,ソース電極173及びドレイン電極175の上部膜171q,173q,175qと保護膜180との間に別途のキャッピング膜を形成する必要がなくて工程が単純になる。【0085】さらに,本発明の実施形態によれば,従来とは異なる保護膜物質を用いることにより,窒化ケイ素(SiN_(x))から保護膜を形成するときに発生する水素(H_(2))が薄膜トランジスター特性に影響を及ぼすことを防ぐことができる。」,及び「ゲート電圧Vgsによるドレイン電流値Idsの変化により薄膜トランジスタの特性が現れることを確認することができる。」(【0088】)という顕著な効果を奏するものである。
したがって,本件発明6は,引用発明1と,甲第1?3号証から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ii)本件発明15について
本件発明15も,本件発明6と同様に,引用発明1において,「化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む」「膜」を,「薄膜トランジスター表示板」における基板の上に形成した「ゲート線,半導体層,ソース電極及びドレイン電極を有するデータ線」の上に形成する「予備保護膜」であって,前記「半導体層」が,「酸化物半導体から形成される」ものとすることが容易であったとはいえない。
したがって,本件発明15は,甲第1?3号証から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(iii)本件発明8?14,16?21について
本件発明8?14,16?21は,請求項6又は15を直接的に又は間接的に引用する発明であるから,上記(i),(ii)と同様の理由により,甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

<小括>
以上のとおりであるから,異議申立理由のうち,取消理由通知において採用しなかった主張は理由がない。

4.むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項6,8?14,及び15?21に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項6,8?14,及び15?21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項1?5に係る特許は,訂正により,削除されたため,本件特許の請求項1?5に対して,特許異議申立人 築山 芳明 がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しない。
請求項1?5,7,及び22に係る特許は,訂正により,削除されたため,本件特許の請求項1?5,7,及び22に対して,特許異議申立人 猪瀬 則之 がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(補正)
基板と、
前記基板の上に位置するゲート線、半導体層、ソース電極及びドレイン電極を有するデータ線と、
前記ゲート線、前記半導体層、前記データ線の上に位置し、下記の化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む保護膜と、
を備え、
前記半導体層は酸化物半導体層を含む薄膜トランジスター表示板:

・・・化学式1
(式中、Rがメチル基およびビニル基のうちの少なくとも一つの置換基を含む。x、yはそれぞれ1乃至200であり、各波線は水素原子、xシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合を示すか、あるいは、xシロキサン単位、yシロキサン単位またはこれらの組み合わせを含む有機シロキサン鎖のxシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合を示す)。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(補正)
前記ゲート線は、チタン、タンタル及びモリブデンのうちの少なくとも一つを含む下部膜と、銅または銅合金を含む上部膜と、から形成されている請求項6に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項9】
前記データ線は、チタン、タンタル及びモリブデンのうちの少なくとも一つを含む下部膜と、銅または銅合金を含む上部膜と、から形成されている請求項8に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項10】
前記保護膜の上に位置する画素電極をさらに備え、
前記保護膜は接触孔を有し、前記接触孔を介して前記画素電極と前記ドレイン電極とが接続される請求項9に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項11】
上記の化学式1中、Rがフェニル基である置換基をさらに含む請求項10に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項12】(補正)
前記有機シロキサン樹脂は、分子量が172乃至10000である請求項11に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項13】
前記基板の上に位置するゲート絶縁膜をさらに備える請求項6に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項14】
前記ゲート絶縁膜は、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び酸窒化ケイ素のうちの少なくとも一つを含む請求項13に記載の薄膜トランジスター表示板。
【請求項15】(補正)
基板の上にゲート線、半導体層、ソース電極及びデータ線を有する薄膜トランジスターを形成するステップと、
前記基板の上に前記薄膜トランジスターを覆うように下記の化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む溶液をコーティングして予備保護膜を形成するステップと、
前記予備保護膜にマスクを用いて光を照射するステップと、前記予備保護膜を現像して接触孔を有する保護膜を形成するステップと、
を含み、
前記半導体層は、酸化物半導体から形成される薄膜トランジスター表示板の製造方法:

・・・化学式1
(式中、Rがメチル基およびビニル基のうちの少なくとも一つの置換基を含む。x、yはそれぞれ1乃至200であり、各波線は水素原子、xシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合を示すか、あるいは、xシロキサン単位、yシロキサン単位またはこれらの組み合わせを含む有機シロキサン鎖のxシロキサン単位またはyシロキサン単位との結合を示す)。
【請求項16】
上記の化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む溶液は、プロピレングリコールモノメチルエーテルまたはプロピレングリコールモノエチルアセテートの少なくとも1つを含む請求項15に記載の薄膜トランジスター表示板の製造方法。
【請求項17】
上記の化学式1で表わされる有機シロキサン樹脂を含む溶液には、前記有機シロキサン樹脂が4wt%乃至25wt%含まれている請求項16に記載の薄膜トランジスター表示板の製造方法。
【請求項18】
上記の化学式1中、Rがフェニル基である置換基をさらに含む請求項17に記載の薄膜トランジスター表示板の製造方法
【請求項19】(補正)
前記有機シロキサン樹脂は、分子量が172乃至10000である請求項18に記載の薄膜トランジスター表示板の製造方法。
【請求項20】(補正)
前記データ線は、チタン、タンタル及びモリブデンのうちの少なくとも一つを含む下部膜と、銅または銅合金を含む上部膜と、から形成されている請求項15に記載の薄膜トランジスター表示板の製造方法。
【請求項21】(補正)
前記ゲート線は、チタン、タンタル及びモリブデンのうちの少なくとも一つを含む下部膜と、銅または銅合金を含む上部膜と、から形成されている請求項15に記載の薄膜トランジスター表示板の製造方法。
【請求項22】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-07-18 
出願番号 特願2012-231351(P2012-231351)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (H01L)
P 1 651・ 121- YAA (H01L)
P 1 651・ 537- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河合 俊英  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 小田 浩
加藤 浩一
登録日 2017-02-03 
登録番号 特許第6084805号(P6084805)
権利者 三星ディスプレイ株式會社
発明の名称 保護膜溶液組成物、薄膜トランジスター表示板及び薄膜トランジスター表示板の製造方法  
代理人 尋木 浩司  
代理人 山下 託嗣  
代理人 山下 託嗣  

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