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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61M
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A61M
審判 全部申し立て ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  A61M
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61M
審判 全部申し立て 特123条1項5号  A61M
管理番号 1343907
異議申立番号 異議2018-700007  
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-05 
確定日 2018-08-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6159829号発明「胆管および膵管のうちの少なくともいずれか一方を通して使用される医療器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6159829号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。 特許第6159829号の請求項1-15に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6159829号の請求項1-15に係る特許についての出願は、2014年2月27日(パリ条約による優先権主張2013年2月28日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成29年6月16日に特許権の設定登録がされ(特許公報の発行日は平成29年6月16日)、その後、その特許について、平成30年1月5日に特許異議申立人内野房子により特許異議の申立てがされ、平成30年2月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年5月30日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人内野房子から平成30年7月4日付けで意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア、イのとおりである。
ア 請求項1-12に係る「体腔」を「体管腔」に訂正する。
イ 発明の詳細な説明の段落【0014】、【0023】、【0024】の「体腔」という記載を「体管腔」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(2-1)段落【0014】、【0023】及び【0024】における「体腔」との記載について
最初に、段落【0023】の記載について検討する。
本件特許に係る出願は、外国語でされた国際特許出願(以下「外国語特許出願」という。)であって、当該外国語特許出願の国際出願日における明細書(以下、「原明細書」という。)には、「The channels 218 may be configured to drain fluid out of a constriction portion of a target site (which may be the pancreatic duct 16 or the bile duct 18 shown in FIG.1. More particularly, the channels 218 may allow side branches off of the pancreatic duct 16 or the bile duct 18 to be drained. For example, channels 218 may define a space between the outer surface of the stent body 210 and the body lumen where fluid may pass. Thus, fluid coming from side branches along the pancreatic and/or bile duct may flow into the channels 218, along the stent body 210, and ultimately into the duodenum. This may include the fluid passing though openings in the stent body 210 or along the channels 218 directly into the duodenum.」(注:下線を付与した。以下同様。)との記載がある。
そして、訂正前の段落【0023】の記載は、原明細書の上記記載部分の翻訳文であると認められる。
したがって、段落【0023】における「体腔」は、上記記載の「body lumen」の翻訳である。

ところで、原明細書の記載は、膵管あるいは胆管に関する記載と認められるところ、異議申立人の提出した甲第1号証(医学大事典)には、「体腔」は「body cavity」に対応すること、また、同じく甲第2号証(プログレッシブ英和中辞典)には、「lumen」は通常「(管状器管内の)管腔」と訳されることが記載されている。
そうすると、これらを総合してみて、原明細書の「body lumen」との記載は「体管腔」と翻訳されるべきものと認められ、しかも、「体管腔」との記載は、明細書のその余の記載との関係からみて、何ら矛盾を生じるものでもない。
よって、段落【0023】の「体腔」は「体管腔」の誤訳と認められる。

段落【0014】及び【0024】における「体腔」も原明細書の「body lumen」に対応する訳文であるから、上記した理由と同様の理由により、当該「体腔」との記載は「体管腔」の誤訳と認められる。

(2-2)請求項1-12における「体腔」との記載について
上記(1)アの訂正は、上記請求項1-12における「体腔」との記載を、上記(1)イの訂正により訂正された明細書の記載と整合させるためのものと認められる。
よって、この訂正は明瞭でない記載の釈明と認められる。

(2-3)したがって、上記ア、イの訂正は、誤訳の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、特許請求の範囲及び明細書の内容を実質的に変更するものではなく、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
また、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第2号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(A)本件特許発明
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1-15に係る発明(以下、「本件特許発明1-15」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1-15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
胆管および膵管を通して使用される移植可能な医療器具であって、
患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管および胆管のうちの少なくともいずれか一方に隣接して配置されるように構成される第2の端を有する管状部材を備え、
前記管状部材は、一体的に織り込まれた1本以上のワイヤ・フィラメントから形成される本体を有し、
前記本体は外側表面を有し、および前記外側表面に形成される長手方向チャネルを備え、
前記長手方向チャネルは前記本体の外側表面と患者の体管腔との間に空間を画定することを特徴とする移植可能な医療器具。
【請求項2】
前記本体は、単一のワイヤ・フィラメントを含むことを特徴とする請求項1に記載の移植可能な医療器具。
【請求項3】
前記本体は、複数のワイヤ・フィラメントを含むことを特徴とする請求項1に記載の移植可能な医療器具。
【請求項4】
前記1本以上のワイヤ・フィラメントは編み込まれることを特徴とする請求項1乃至3
のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項5】
前記1本以上のワイヤ・フィラメントのうちの少なくともいくつかは、形状記憶材料を含むことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項6】
前記1本以上のワイヤ・フィラメントのうちの少なくともいくつかは、ニッケル・チタン合金を含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項7】
前記本体の前記外側表面は、複数の長手方向チャネルを含むことを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項8】
前記本体の前記外側表面は、同本体の前記外側表面の周囲を延びる径方向チャネルを含むことを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項9】
カバーが前記管状部材の周囲に設けられ、前記カバーは、その内部に1つ以上の開口部が形成されることを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項10】
前記カバーは、コーティング、フィルム、あるいはシースであることを特徴とする請求項9に記載の移植可能な医療器具。
【請求項11】
前記本体の前記外側表面は、同本体の前記外側表面の周囲を延びる周方向チャネルを含むことを特徴とする請求項9に記載の移植可能な医療器具。
【請求項12】
前記管状部材の前記第1の端は、フレア状であることを特徴とする請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項13】
膵管を通して使用される移植可能な医療器具であって、
流体を排出するために、患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管に隣接して配置されるように構成される第2の端を有し、1本以上のワイヤ・フィラメントから形成される編み込みステントを備え、
同編み込まれたステントは、外側表面に長手方向のチャネルが形成される外側表面を有し、該長手方向のチャネルは、前記膵管の枝から流体を排出するように構成されることを特徴とする移植可能な医療器具。
【請求項14】
前記編み込まれたステントの前記外側表面は、複数の長手方向チャネルを含むことを特徴とする請求項13に記載の移植可能な医療器具。
【請求項15】
前記編み込まれたステントの前記外側表面に形成されるとともに前記編み込まれたステントの前記外側表面の周囲を延びる周方向チャネルが設けられることを特徴とする請求項13または14に記載の移植可能な医療器具。」

(B)取消理由の概要
訂正前の請求項1-15に係る特許に対して平成30年2月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
特許法184条の4第1項の外国語特許出願に係る本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項が同条同項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲にない。
したがって、本特許は特許法第113条第5号の規定に該当する。

(C)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
上記のように、請求項1及び明細書の段落【0014】、【0023】、【0024】に記載の「体腔」は、特許異議申立人も主張しているとおり、「体管腔」に訂正されたから、かかる取消理由は解消された。

イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)甲第3?5号証の記載
(ア)甲第3号証(特開2011-156085号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「そこで、これを防止する従来技術として、ベアステントを樹脂フィルムで被覆したカバードステントが提案されている(例えば特許文献1等参照)。カバードステントでは、ベアステントを被覆する樹脂フィルムが、がん細胞の成長などによる体内管腔の狭窄を抑制することができる。また、ベアステントを、多数の空孔が形成された樹脂フィルムで被覆したカバードステントも提案されている(例えば特許文献2、3等参照)。」(段落【0003】)
(b)「図1は、本発明の一実施形態に係るカバードステント10の概略図である。図1に示すように、本実施形態に係るカバードステント10は、フレーム17により形成される筒状のベアステント16と、ベアステント16の外周を覆う被覆フィルム部50とを含む。」(段落【0017】)
(c)「ベアステント16は、金属製の線状部材であるフレーム17により形成されている。ここでベアステントは編込みで形成されたタイプでもパイプをレーザーカットで形成したレーザーカットタイプでも構わないが」(段落【0020】)
(d)「図4は、図1に示すカバードステント10の断面図である。ただし、図4は、図1に示す状態から、2分の1に径を縮小した状態を表している。図4に示すように、ベアステント16の表面はコーティング膜26で覆われており、また、コーティング膜26は、隣接するフレーム17の間を埋めるように広がっており、ベアステント16の外周面を被覆している。コーティング膜26によって覆われたベアステント16の外周は、第1のポリマーフィルム30と第2のポリマーフィルム14とを含む被覆フィルム部50によって覆われている。」(段落【0036】)
(e)「図1に示すように、カバードステント10の外周表面であるステント外周表面12は、被覆フィルム部50によって構成されている。図4に示すように、ベアステント16の外周を覆う被覆フィルム部50は、第1のポリマーフィルム30と第2のポリマーフィルム14を含む。第1のポリマーフィルム30は、ベアステント16と第2のポリマーフィルム14の間に配置されており、ベアステント16の外周を被覆する。」(段落【0040】)
(f)「図5は、図4の一部を拡大した拡大断面図である。第2のポリマーフィルム14は、ベアステント16の内径方向を向く内側表面18aを含む内周層18と、ベアステント16の外径方向を向く外側表面20aを含む外周層20を含む。外周層20には、複数の空孔22が形成されている。第2のポリマーフィルム14は、第2のポリマーフィルム14の厚さ方向に沿って内周層18と外周層20とが積層された2層構造を有している。第2のポリマーフィルム14は、管状の外形状を有するカバードステント10の外周表面であるステント外周表面12を構成しており、第2のポリマーフィルム14の厚さ方向は、カバードステント10の径方向と略一致する。」(段落【0046】)
(g)「カバードステント10は、例えば、胆管、食道、十二指腸、大腸など、消化器系体内管腔に留置するステントとして好適に用いることができるが、胆管に留置する胆管ステントとして特に好適に用いることができる。」(段落【0075】)
(h)図8より、カバーステント10を胆管に留置した場合、一端が十二指腸内に配置され、他端が胆管に配置される点がみてとれる。
上記(a)の記載及び技術常識から「体内管腔の狭窄を抑制する」カバードステントが管状であり、(a)?(h)の記載から、甲第3号証には次の発明が記載されていると認める。
「一端が十二指腸内に配置され、他端が胆管に配置され、金属製の線状部材を編み込んで形成されたベアステント16と被覆フイルム部50とからなる管状のカバードステント10」が記載されている(以下「甲3発明」という。)。

(イ)甲第4号証(特表2010-503483号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「図1A?図1Cを参照すると、カテーテル14の先端付近に保持されたバルーン12上に治療薬溶出ステント10が配置されており、該ステントは、バルーンおよびステントを保持する部分が閉塞18の領域に到達するまで、管腔16(図1A)を通って導かれる。次に、バルーン12を膨張させることにより、ステントは半径方向に拡張され、血管壁に対して押し付けられ、その結果、閉塞18が圧縮されて、閉塞18を取り囲む血管壁は半径方向の拡張を受ける(図1B)。次に、バルーンから圧力が解放され、管腔16内に固定された拡張したステント10’を残して、カテーテルが血管から抜去される(図1C)。
図2および図2Aを参照すると、拡張されていない治療薬溶出ステント10は、例えば金属製またはポリマー材製の、ステント本体19を有している。ステント本体19は、該ステント本体19に形成された凹部21内に複数の治療薬放出アセンブリ34を保持している。ステント本体19は、凹部21に加えて、ステント本体の長手長全体に延びる複数の長手方向に延在する溝32を形成する・・・。
・・・。
ここで再び図3A?図3Dを参照すると、拡張の間、ステント本体19は溝の底において最も薄いので、ステント10は溝32に沿って優先的に拡張し、ステントの外面に沿って対向する溝境界間の周方向の間隔Sが広がる。」段落【0022】?【0024】)
(b)「本願に記載したステントは、血管腔用または非血管腔用に構成することができる。例えば、それらのステントは、食道または前立腺で使用するために構成することができる。他の管腔としては、胆管管腔、肝管腔、膵管腔、尿道管腔および尿管管腔が挙げられる。」(【0052】)
(c)「他のステント本体の型も可能である。例えば、ステント本体は、コイルまたはワイヤーメッシュの形態にあってもよい。図7を参照すると、ワイヤーメッシュステント本体110は、ワイヤー112と、隣接するワイヤーを接続する連結部114とを備える。ワイヤーメッシュステント本体110は、放出アセンブリが挿入され得る大きさの複数の開口116を形成する。」(段落【0058】)
上記記載から、甲第4号証には次の発明が記載されていると認める。
「胆管管腔に留置され、金属製またはポリマー材製のステント本体19に長手長全体に延びる複数の溝32を形成した治療薬溶出ステント10」が記載されている(以下「甲4発明」という。)。

なお、異議申立人は甲4発明は「ステント本体19として、コイルまたはワイヤーメッシュで形成されたステント本体が開示されている。」(異議申立書46頁の構成C参照)、「ステント本体19は、その長手方向に延在する複数の溝32を有する」(同構成D参照)としているが、上記(c)(段落【0058】)の「他のステント本体の型も可能である。例えば、ステント本体は、コイルまたはワイヤーメッシュの形態にあってもよい。・・・ワイヤーメッシュステント本体110は、放出アセンブリが挿入され得る大きさの複数の開口116を形成する。」の記載は、ステント本体の別の実施例として、ワイヤーメッシュステント本体110の形態であってもよいとしたにすぎず、金属製またはポリマー材製のステント本体19とは、構造も、剛性も異なるワイヤーメッシュステント本体110に長手方向に延在する複数の溝32を設けることが記載されているとまではいうことはできない。

(ウ)甲第5号証(特表2009-538690号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「抗肥満ステント12は、図1に示すように、十二指腸20内に配置される。図2に示すように、抗肥満ステント12は、外側表面35及び内側表面37を有する管状構造部32を有する。管状構造部32は、近位端40及び遠位端42を有し、十二指腸20内で、それと実質的に同軸関係を有する態様で嵌合されるサイズに設定される。」(段落【0017】)
(b)「ステント構造を有する管状構造部32をコンポジット構造中に導入してもよい。当該ステント構造は、細長部材(例えばワイヤ又はカットアウトを有する管状構造)を有してもよい。…ステント構造内のかかる管状構造部32の好ましい実施形態は、ステント構造の直径と実質的に同じ直径を有する管状構造部である。かかる好ましい実施形態では、管状構造部32が更に端部を有し、そこを流動物が流入し、当該ステント構造の対応する端と連結している。」(段落【0019】?【0020】)
(c)「管状構造部32のステント構造は、様々な実施形態をとることができる。例えば、当該ステント構造は自動的に拡張するものであってもよく、又はバルーンによって拡張できるものであってもよい。当該ステント構造は1つ以上のコイル状のステンレス鋼製のスプリング、感熱材料を含むらせんコイル状のスプリング、又はジグザグパターンのステンレス製ワイヤで形成された伸長ステンレス鋼ステントを有してもよい。」(段落【0026】)
(d)「図2及び3において例示される輸送構造部45は、管状構造部32の外側表面35に形成される細長い軸方向溝55を有する。軸方向溝55は、管状構造部32に対して軸方向を向き、円周溝47と連結する。軸方向溝55は、円周溝47中の消化液31を遠位端42に輸送するための導管として機能する。」(段落【0030】)
(e)「抗肥満ステント12は、外側表面35に連結される側管52を有する。側管52は1つの端部を有し、それと隣接する外側表面35及び1つ以上の穿孔53と隣接する。側管52は、ファーター乳頭30で嵌入されうる反対側の端部を有する。ファーター乳頭30は十二指腸20の一部であって、それに対して消化液31が分泌される。ファーター乳頭30から分泌される消化液31は、外側表面35の方向を向いている側管52を通じて伝達される。消化液31が外側表面35と接触すると、消化液は穿孔53を通じて側管52を出て、軸方向の溝55に流入する。更に、側管52のファーター乳頭30への挿入により、当該側管が安定に保持される。」(段落【0032】)
(f)図2から、側管52が挿入されるファーター乳頭30は膵管および胆管のうちの少なくとも一方に隣接していることがみてとれる。
上記記載から、甲第5号証には次の発明が記載されていると認める。
「十二指腸内に配置される環状構造部32と、膵管および胆管のうちの少なくとも一方に隣接して配置され、前記環状構造部32の外側表面35に連結される側管52と、前記外側表面35の軸方向溝55を有する抗肥満ステント12」が記載されている(以下「甲5発明」という。)。

なお、異議申立人は甲5発明は「抗肥満ステント12を構成する環状構造部32のステント構造は、1つ以上のコイル状のステンレス鋼製のスプリングや、ジグザグパターンのステンレス製ワイヤーで形成されている。」(異議申立書47頁の構成C参照)、「図3に示すに抗肥満ステント12の環状構造部32は、ファーター乳頭部30からの消化液31を遠位端に輸送するための軸方向溝55を備えている。」(同構成D参照)としているが、上記(c)(段落【0026】)の「他のステント本体の型も可能である。」の記載は、管状構造部32のステント構造として、1つ以上のコイル状のステンレス鋼製のスプリング、感熱材料を含むらせんコイル状のスプリング、又はジグザグパターンのステンレス製ワイヤで形成された伸長ステンレス鋼ステントを有してもよいとしたにすぎず、1つ以上のコイル状のステンレス鋼製のスプリング、感熱材料を含むらせんコイル状のスプリング、又はジグザグパターンのステンレス製ワイヤで形成されたステントの外表面に図3及び図4の環状構造部32の外表面に設けられるような軸方向溝55を設けることが記載されているとまではいうことはできない。

(2)判断
(ア)特許法第29条第1項3号について
(ア-1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「管状のカバードステント10」は本件特許発明1の「胆管および膵管を通して使用される」「管状部材を備え」た「移植可能な医療器具」に、同じく「一端が十二指腸内に配置され、他端が胆管に配置され」は「患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管および胆管のうちの少なくともいずれか一方に隣接して配置されるように構成される第2の端を有する」に、「金属製の線状部材を編み込んで形成されたベアステント16」は「一体的に織り込まれた1本以上のワイヤ・フィラメントから形成される本体」に相当する。
したがって、本件特許発明1は、甲3発明と、
「胆管および膵管を通して使用される移植可能な医療器具であって、患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管および胆管のうちの少なくともいずれか一方に隣接して配置されるように構成される第2の端を有する管状部材を備え、前記管状部材は、一体的に織り込まれた1本以上のワイヤ・フィラメントから形成される本体を有する」点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点:本件特許発明1の本体は外側表面を有し、および前記外側表面に形成される長手方向チャネルを備え、前記長手方向チャネルは前記本体の外側表面と患者の体管腔との間に空間を画定するのに対し、甲3発明の本体はそのような構成を有しない点。

上記相違点に関して、特許異議申立人は、甲3発明について、「カバードステント10の断面図(図4および5の横断面図)において、隣接するフレーム17とコーティング膜26とにより溝が形成される。図2のフレーム17の編み込み形状から、係る溝は、ベアステントの長手方向に形成されている。」(特許異議申立書42の構成D参照)、「カバードステント10を胆管内に留置した際に、被覆フイルム部50が胆管の壁面と接触する(図8)。この状態で、図4および図5に示されるフレーム17間の溝は、ベアステント16の外側表面と胆管との間に空間を画定している。」(特許異議申立書42頁の構成E参照)とし、「隣接するフレーム17とコーティング膜26とにより形成された溝は「長手方向チャネル」に」相当し、「また、カバードステント10を胆管内に留置した際に、被覆フイルム部50が胆管の壁面と接触する(図8)。この状態で、図4および図5に示されるフレーム17間の溝は、ベアステント16の外側表面と胆管との間に空間を画定する。」(特許異議申立書55頁末行?56頁5行)と主張している。
しかしながら、甲3発明のカバードステント10は、「カバードステントでは、ベアステントを被覆する樹脂フィルムが、がん細胞の成長などによる体内管腔の狭窄を抑制することができる。」(甲第3号証の段落【0003】)と記載されているように、通常、ベアステント16と被覆フイルム部50からカバードステント10が構成され、外側表面は図4および5における第2のポリマーフィルム14の外面となる。
そうすると、本件特許発明1の本体の「外側表面に形成される長手方向チャネル」は流体が流れるために形成成されると認められる(本件明細書段落【0023】参照)ところ、たとえ、「隣接するフレーム17とコーティング膜26とにより溝が形成される。」としても、それはカバードステント10の内部構造であるベアステント16に形成されているものであって、その溝は外側表面(フィルム50)の溝ではなく、流体が流れることはできず、本件特許発明1の本体の外側表面に形成される長手方向チャネルということはできない。
また、第2のポリマーフィルム14の外面に長手方向チャネルが形成されているとは認められない。
したがって、特許異議申立人の当該主張は理由がない。

そして、上記相違点は実質的な相違点であると認められる。
よって、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえない。

(ア-2)本件特許発明4-10及び12について
本件特許発明4-10及び12は、本件特許発明1を引用する発明であるので、本件特許発明1の構成を全て含み、同様な理由で甲3発明であるとはいえない。

(イ)特許法第29条第2項について
(イ-1)本件特許発明1-12について
i)甲3発明を主引用発明とする場合
i-1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明は、上記(ア)に記載したように、本件特許発明1の本体の外側表面に形成される長手方向チャネルを備える構成を有していない。
また、甲第5号証にも、本件特許発明1のような「患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管および胆管のうちの少なくともいずれか一方に隣接して配置されるように構成される第2の端を有する管状部材を備え」る「胆管および膵管を通して使用される移植可能な医療器具」において、「外側表面に形成される長手方向チャネルを備える」ことは記載されていない。

特許異議申立人は「甲第3号証のカバードステントのベアステントの外表面に、胆管または膵管中の液体(消化液)を、狭窄部位を超えて十二指腸側に輸送するために、甲第5号証に記載された軸方向溝を設けた構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。」(特許異議申立書57頁19?22行)と主張している。
しかしながら、上記(ア)で検討したように、甲3発明のベアステント16はカバードステント10の被覆フィルム部50に被覆された内部構造であり、ベアステント16の外表面に軸方向溝を設けても、本願請求項1に記載された発明のように、胆管または膵管中の液体(消化液)を、十二指腸側に輸送する構成として用いることができるとはいえない。
また、甲5発明は抗肥満ステントに関するものであり、管状構造部32に設けられた軸方向溝55は担汁等が通過する構成ではあるが、「抗肥満ステントと小腸の吸収表面との間に位置する胆汁が、ステントの長手方向にわたり、吸収表面によって再吸収され、それにより更に、ステントの末端に存在する、キームス中の脂肪分を分解する胆汁の量が減少する。」(甲第5号証段落【0009】)ことを目的としたものであり、一般に、胆管および膵管を通して使用されるステントに設けられる構成とはいえない。
また、甲第3号証および甲第5号証には、胆管および膵管を通して使用されるステントに「長手方向チャネル」を形成する目的が記載されておらず、甲3発明に甲5発明の軸方向溝55を形成する動機付けがない。
よって、特許異議申立人の当該主張は理由がない。

そして、本件特許発明1は、「特に、チャネル218により、側面の枝は、膵管16や胆管18から排出されてもよい。例えば、チャネル218は、ステント本体210の外側表面と、流体が通過する体腔との間に空間を形成する。これにより、胆管および/または膵管に沿った側面の枝からの流体は、ステント本体210に沿って、チャネル218内に、かつ最終的に十二指腸内に流れる。」(本件明細書段落【0023】)という顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲3発明および甲5発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

i-2)本件特許発明2-12について
本件特許発明2-12は、本件特許発明1を引用する発明であるので、本件特許発明1の構成を全て含み、同様な理由で甲3発明および甲5発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ii)甲5発明を主引用発明とする場合
ii-1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明は、抗肥満ステントであって、本件特許発明1のような「患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管および胆管のうちの少なくともいずれか一方に隣接して配置されるように構成される第2の端を有する管状部材を備え」る「胆管および膵管を通して使用される移植可能な医療器具」ではない。
また、甲第3-4号証に、甲5発明のような抗肥満ステントを「胆管および膵管を通して使用」することについての記載はない。

特許異議申立人は「甲第3号証や甲第4号証には、ステント(カバードステント)を様々な消化器官の管腔に留置することが記載されており(甲第3号証の段落番号0015、甲第4号証の段落番号0052)、特定の器官用のステントを、その他の器官に適用しようとする動機付けがある。」(特許異議申立書59頁下から4行?末行)と主張している。
しかしながら、甲5発明に係る、十二指腸内に配置されるステントと、甲3発明及び甲4発明に係る胆管に配置されるステントとは、配置される場所、大きさ、目的のいずれにおいても大きく相違するから、甲5発明に甲3発明や甲4発明を適用する動機付けがあるといえない。

そして、本件特許発明1は、「患者の体内の胆樹の膵管および/または胆管から流体を排出する」(本件明細書段落【0014】)という顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲5発明、甲3発明および甲4発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ii-2)本件特許発明2-12について
本件特許発明2-12は、本件特許発明1を引用する発明であるので、本件特許発明1の構成を全て含み、同様な理由で甲5発明、甲3発明および甲4発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ-2)本件特許発明13-15について
1)本件特許発明13について
本件特許発明13と甲5発明とを対比すると、甲5発明は、抗肥満ステントであって、本件特許発明13のような「患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管に隣接して配置されるように構成される第2の端を有」する「膵管を通して使用される移植可能な医療器具」ではない。
また、甲第3-4号証に、甲5発明のような抗肥満ステントを「胆管および膵管を通して使用」することについての記載はない。
そして、本件特許発明13は、「患者の体内の胆樹の膵管および/または胆管から流体を排出する」(本件明細書段落【0014】)という顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明13は、甲5発明および甲第3-4号証から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2)本件特許発明14-15について
本件特許発明14-15は、本件特許発明13を引用する発明であるので、本件特許発明13の構成を全て含み、同様な理由で甲5発明、甲3発明及び甲4発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1-15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1-15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
胆管および膵管のうちの少なくともいずれか一方を通して使用される医療器具
【技術分野】
【0001】
本開示は医療器具、および医療器具を製造する方法に関する。特に、本開示は、膵管および/または胆管を通して体液を排出するための医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な体内の医療器具が例えば血管内の使用などの医療用途において開発されている。これらの装置のうちのいくつかはガイドワイヤ、カテーテルなどを含む。これらの装置は様々な異なる製造方法のうちの任意の1つによって製造され、様々な方法のうちの任意の1つによって使用される。周知の医療器具および方法の各々は所定の効果および短所を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
医療器具を製造し使用するための代替方法の他、代替医療器具を提供することに対する継続的なニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、医療器具のための設計、材料、製造方法、および使用代案を提供する。例による医療器具は、胆管および/または膵管を通して使用される移植可能な医療器具を含む。移植可能な医療器具は、患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管および/または胆管に隣接して配置されるように構成される第2の端を有する管状部材を含む。管状部材は、一体的に織り込まれた1本以上のワイヤ・フィラメントを含む本体を有する。管状部材はその内部に形成される長手方向チャネルを備えた外側表面をさらに有する。
【0005】
膵管を通して使用される、別例による移植可能な医療器具は、流体を排出するために患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端部および膵管に隣接して配置されるように構成される第2の端部を有する編み込まれたステントを含む。編み込まれたステントは、内部に形成される長手方向のチャネルを備える外側表面を有する。長手方向のチャネルは膵管の枝から流体を排出するように構成される。
【0006】
胆管および/または膵管を通して流体を排出する例による方法は、移植可能な医療器具を提供する工程を含む。移植可能な医療器具は、構成された第1の端および第2の端を有する編み込まれたステントを含む。編み込まれたステントは、内部に形成される長手方向のチャネルを備える外側表面を有する。方法は、第1の端が十二指腸内に配置され、第2の端が胆管および/または膵管の領域内で延びるように患者の体内に編み込まれたステントを配置する工程と、胆管および/または膵管の領域から流体を排出する工程とを含む。
【0007】
いくつかの実施形態の上記の課題を解決するための手段は、本開示に示す実施形態の各々あるいはすべての実施を開示するように意図されるものではない。図面および後述する詳細な説明は、これらの実施形態をより特定して例示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】胆樹および/または膵樹を示す概略図。
【図2】患者の体の胆管および/または膵管を通して流体を排出するように構成される例によるステントを示す斜視図。
【図3】別例によるステントの一部を示す斜視図。
【図4】別例によるステントの一部を示す斜視図。
【図5】別例によるステントの一部を示す斜視図。
【図6】別例によるステントの一部を示す側面図。
【図7】別例によるステントの一部を示す側面図。
【図8】別例によるステントを示す斜視図。
【図9】別例によるステントの一部を示す斜視図。
【図10】別例によるステントの一部を示す斜視図。
【図11】別例によるステントの一部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、添付の図面に関する後述する詳細な説明を考慮してより完全に理解される。
本開示は様々な変形および別例の形態に柔軟であるが、その具体例は図面に例示され、詳細に後述される。しかしながら、本発明を所定の実施形態に限定することを意図したものではないものといえる。逆に、本開示の趣旨および範囲内にあるすべての変更、均等物、および別例をカバーするものと意図される。
以下に定義された用語に関して、異なる定義が特許請求の範囲や本明細書の別の部分で示されない限り、これらの定義が適用されるものとする。
【0010】
すべての数値は、明示的に示されているかを問わず、用語「約」によって修飾されるものと仮定する。用語「約」は、通常記載の値に相当すると当業者が考える(すなわち、同じ機能あるいは結果を有する)数値範囲を示す。多くの実例において、用語「約」は、最も近い有効数字に端数を切り捨てられる数を含む。
【0011】
終点による数値範囲の記載は、その範囲内のすべての数値を含む(例えば、1乃至5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数「a」、「an」、および「the」は、内容が他の方法で明白に示されない限り、複数の指示物を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、用語「あるいは」は、特に明確な記載がない限り、通常その意味において「および/または」を含んで使用される。
【0012】
明細書における「一実施形態」、「所定の実施形態」、「別例」などへの参照は、開示される実施形態が、1つ以上の特定の要素、構造体、および/または特性を含むことを示すものといえる。しかしながら、そのような記載は、実施形態のすべてが特定の要素、構造体、および/または特性を含むことを意味するものではない。付加的に、特定の要素、構造体、および/または特性が一実施形態に関して開示される場合、そのような要素、構造体、および/または特性は、明示的に記載されるかにかかわらず、明白に反対の記載が無ければ、別例と組み合わせても使用される。
【0013】
以下の詳細な説明は、異なる図面の同様の要素が同じ参照符号を付与される図面を参照して読まれるべきである。図面は、縮尺が必ずしも正確なものではなく、例示的な実施形態を示すものであり、特許請求の範囲に記載の発明の範囲を制限するように意図されるものではない。
【0014】
本開示の実施形態は、患者の体管腔にアクセスするための、より具体的には、患者の体内の胆樹の膵管および/または胆管から流体を排出するための医療器具および処置に関する。
【0015】
内視鏡的逆行性胆管膵管撮影(ERCP)は、例えば、胆石、炎症性の狭窄、漏れ(例えば外傷、外科手術などによる)、および癌を含む胆管の症状を診断し処置するために主として使用される。内視鏡を通して、医師は、胃および十二指腸の内部を見てダイス(dies)を胆樹および膵臓の管内に注入し、これによりX線上でこれらを視認する。これらの処置においては、胆管へのアクセスを得てこれを保持することが必要とされ、実施のために、技術的に挑戦的であり、熟達するために広範囲な実地訓練が要求され、1つ以上の高価なツールが要求される。胆管の閉塞状態は、原発性硬化性胆管炎疾患、管内の結石、瘢痕化などの肝臓障害を含む胆道系の障害の多くで生じる。これは、病気を処置するために胆道系から閉塞した流体を排出する必要を要求する。多くの場合において、医師は、腹部の皮膚を介して肝臓内に微細針を配置し、これを胆管内に進める。ドレナージュ・チューブが続いて胆管に配置され、これにより、胆道系から閉塞した流体が排出される。
【0016】
ERCP処置時に、複数の工程が通常行われ、患者は通常鎮静剤を飲ませられ麻酔をかけられる。例えば、内視鏡は、口を通って食道を下って胃内に挿入され、十二指腸内への幽門を介してファーター膨大部(総胆管および膵管の開口部)における、あるいはその近傍の位置に至る。膨大部の形状、並びに総胆管および膵管が十二指腸の壁部に至る角度により、内視鏡の遠位端は、通常膨大部をちょうど過ぎた位置に配置される。膨大部を超えて内視鏡を位置決めすることにより、これらの処置中に使用される内視鏡は、通常側視内視鏡である。要素を側視することにより、内視鏡の端部からではなく先端の側面に沿って撮像される。これにより、医師は、たとえ内視鏡の遠位端が開口部を越えていても、ファーター膨大部が位置される部位において、十二指腸の医療の壁部の像を得ることができる。
【0017】
図1は、胆道系または胆樹を概略的に示す。ファーター膨大部は十二指腸12の図示の部分に位置される。本開示の目的において、ファーター膨大部14はファーター乳頭部と同じ組織構造のものであるといえる。ファーター膨大部14は、膵管16および胆管18が十二指腸12に移る位置に、通常開口部を形成する。肝管20は、肝臓22に続き、胆管18に移る。同様に、胆嚢26に続く胆嚢管24は、さらに胆管18に移る。通常、内視鏡検査や胆管の処置は、胆樹に沿って適切な位置に医療器具を進め、続いて適切な介在を行うことを含む。
【0018】
胆樹に沿った目的部位へのアクセスは、十二指腸12を介して内視鏡をファーター膨大部14に隣接する位置に進め、内視鏡を介して、ファーター膨大部14を介して、例えばステントである医療器具を意図した目的部位に進めることを通常含む。意図した目的部位は、例えば総胆管18および膵管16である。
【0019】
本開示は、患者の体の胆樹に沿った様々な目的部位へのアクセスの改善、および胆樹内の目的部位に沿った流体の排出のための器具および方法を提供する。例えば、これらのシステムおよび方法により、ステントのような医療器具は、胆樹および/または膵樹を通して容易に特定の目的部位にアクセスし、目的部位から流体を容易に排出することができる。さらに、システムおよび方法により、医師は、ファーター膨大部14、総胆管18、および/または膵管16に再度カニューレを挿入することなく目的部位にアクセスすることができる。付加的に、胆樹および/または膵樹(例えば膵管)のいくつかの部分は、比較的高度に分岐する。いくつかのドレナージュ・ステントは、1本以上の枝をカバー乃至妨害する傾向にある。少なくともここに開示される器具および方法のうちのいくつかは、主管および主管からの1本以上の枝管の両者を通して排出することを補助するように構成される構造的な要素を含む。
【0020】
図2は、患者の体の胆樹および/または膵樹を通して配置されるように構成される移植可能な医療器具200の一部を例示する。図2に示すように、移植可能な医療器具200はステント200を含むか、ステント200の形態を取る。ステント200は形態が異なってもよい。通常、ステント200はドレナージュ・ステントとして構成される。いくつかの実施形態においては、ステント200は、編み込まれた、またはメッシュ状のチューブであり、胆樹および/または膵樹のルーメン内に挿入されるように構成される。通常、ステント200の第1の端206はフレア状であり、患者の体の十二指腸内に位置されるように構成される。さらに、ステント200の第2の端202は、患者の体の膵管または胆管内、あるいはこれらに隣接して位置されるように構成される。中央のルーメンが、膵管または胆管から流体を排出するために利用されるステント200内に形成される。
【0021】
ステント200は、1本以上のワイヤ・フィラメント214から形成されるステント本体210を有する。ワイヤ・フィラメント214は、それらが互いに織り交ぜられるように巻かれる。いくつかの実施形態において、単一のワイヤ・フィラメント214はステント本体210を形成することに使用される。これに代えて、複数のワイヤ・フィラメント214がステント本体210を形成することに使用されてもよい。1本以上のワイヤ・フィラメント214は、所定のパターンに編み込まれ、織り交ぜられ、あるいは織り込まれる。少なくともいくつかの実施形態において、ステント本体210および/またはワイヤ・フィラメント214は、超弾性材料、および/または形状記憶材料を含む。例えば、ステント本体210および/またはワイヤ・フィラメント214は、ニッケル・チタン合金を含む。
【0022】
ステント200は、ステント本体210の外側表面に沿って形成される複数の長手方向のチャネル218を形成する。長手方向のチャネル218の各々は、第1の端206と第2の端202との間で、ステント本体210の長手方向部分に沿って実質的に延びる。しかしながら、所定の実施形態において、チャネル218は、ステント200の長手方向部分に沿って部分的にのみ延びてもよい。図示のように、4本のチャネル218は、ステント200のステント本体210に沿って設けられる。ここに開示されるように、他の数のチャネルが利用されてもよい。チャネル218の形状は、図2の左上部に示すステント200の第2の端202の断面図に示される。チャネル218の各々はステント200に沿って長手方向に延びるC字状構造体に類似する。これは例にすぎない。矩形、三角形、あるいは不規則な形状のような、チャネル218の他の適切な形状も考えられる。さらに、チャネル218はそれぞれ、ステント200のステント本体210から、所定深さまで径方向内側に延びる。
【0023】
チャネル218は、図1に示す膵管16あるいは胆管18である、目的部位の狭窄部分から流体を排出するように構成される。特に、チャネル218により、側面の枝は、膵管16や胆管18から排出されてもよい。例えば、チャネル218は、ステント本体210の外側表面と、流体が通過する体管腔との間に空間を形成する。これにより、胆管および/または膵管に沿った側面の枝からの流体は、ステント本体210に沿って、チャネル218内に、かつ最終的に十二指腸内に流れる。これは、ステント本体210の開口部を通過するか、チャネル218に沿って十二指腸内に直接移動する流体を含む。
【0024】
胆樹および/または膵樹内の目的部位へのアクセスは、目的部位にステント200を位置決めするために内視鏡を使用することを組み込む。例えば、内視鏡は体管腔内で目的部位に隣接する位置まで進められる。所定の実施形態において、目的部位は、胆樹の総胆管18または膵管16(図1に示す)である。具体的には、内視鏡はファーター膨大部14に隣接する位置に十二指腸12を通して進められる。そのように位置されると、ステント200は、内視鏡を通して所望の目的部位に移動される。収縮した領域の位置に応じて、ステント200の第2の端202が患者の体の胆管18および/または膵管16内の収縮した領域に沿って配置されるように、ステント200は内視鏡を通して進められる。
【0025】
図3は、ここに開示される他のステントに形態および機能が類似する別例のステント300の一部を示す。この図は、ここに開示されるステントのために考えられた別の変化を示す。例えば、ワイヤ・フィラメントの編み組またはメッシュから形成されるのではなく、ステント300は、金属および/またはポリマ・チューブのような管状部材310から形成される。管状部材310は、押し出し成形、モールド成型、鋳造、あるいは任意の適切な方法で形成される。少なくともいくつかの実施形態において、図示のように、管状部材310の中央のルーメンは、管状部材310の外側プロフィールに相当する形状を有する。複数の開口部322が管状部材310に形成される。少なくともいくつかの実施形態において、開口部322は管状部材310を切断するレーザによって形成される。これは例に過ぎない。他の方法が開口部322を形成するために使用される。いくつかの実施形態において、管状部材は開口部322がなくてもよい。ステント300は複数のチャネル318をさらに含む。チャネル318は、例えば、チャネル218と同様に、膵管(および/または他の管)から側面の枝の排水を支援するために使用される。
【0026】
多数の他の変更がここに開示されるステントのために考えられる。上に示唆されるように、チャネルの数は変更可能である。例えば、図4は、1本以上のワイヤ・フィラメント414から形成されるとともに端部402を有するステント400を示す。この例において、ステント400は内部に形成される3本のチャネル418を有する。同様に、図5は、1本以上のワイヤ・フィラメント514から形成されるステント本体510を含むステント500を示す。この例において、ステント500は2本のチャネル518を有する。集合的に、これらの図は、1本のチャネル、2本のチャネル、3本のチャネル、4本のチャネル、5本のチャネル、6本のチャネル、7本のチャネル、8本のチャネルなどを含む、実質的に任意の適切な数のチャネルが、ここに開示される様々なステントのために利用されることを示す。
【0027】
図6は、ここに開示される他のステントに形態および機能が類似する別例のステント600の一部を示す。ステント600は、1本以上のワイヤ・フィラメント614から形成されるステント本体610を含む。この図は、ここに開示されるステントのために考えられた別の変化を示す。例えば、ここに開示される長手方向のチャネルに付加的に、ステント600のようないくつかのステントは、1本以上の径方向および/または周方向のチャネル630を含む。周方向のチャネル630は、流体がステント本体610の周囲を周方向に移動できるようにする別の流体の通路を提供する。例えば、いくつかの分岐ダクトは、完全には長手方向のチャネル618と並べられず、従って、周方向のチャネル630がない状態で効率的に排出されない。周方向のチャネル630が存在する場合、より多くの側面の枝が排出用の流体の通路にアクセス可能である。この際、側面の枝からの流体は、ステント本体610の周囲(周方向のチャネル630のうちの1つを介して)を、1本以上の長手方向のチャネル618内に移動する。これにより、周方向のチャネル630は、側面の枝(例えば膵管からの側面の枝)から流体を排出するためにステント600の性能を増強することをさらに促進する。
【0028】
いくつかのステントは長手方向のチャネルのみを含み、いくつかのステントは周方向のチャネルのみを含む。しかしながら、その組み合わせが利用されてもよい。例えば、図7は、1本以上のワイヤ・フィラメント714から形成され、外側表面710を有するステント700を示す。ステント700は、1本以上の長手方向のチャネル718および1本以上の周方向のチャネル730を含む。チャネル718、730は、ここに開示される他のチャネルと同様に流体の排出を支援する。
【0029】
図8は、ここに開示される他のステントに形態および機能が類似する別例のステント800の一部を示す。ステント800は、ここに開示される他のステントと同様の1本以上のワイヤ・フィラメントから形成されるステント本体810を含み、両端部802、806を含む。ステント800は1本以上のチャネル818をさらに含む。
【0030】
ステント800は、ステント本体810を覆うように配置されるカバーまたはコーティング834を含む。コーティング834は、ステント800に適用される。これに代えて、コーティングは、ステント本体810を覆うように配置されるとともにステント本体810に取り付けられるポリマ・スリーブ、フィルム、シース、あるいはチューブの形態にある。コーティング834は内部に形成される複数の開口部838(例えばコーティング834の適用後に)を有する。少なくともいくつかの実施形態において、開口部838は、チャネル818に略並べられる。これにより、流体は、開口部838を通ってチャネル818に流れることができる。
【0031】
図9は、ここに開示される他のステントに形態および機能が類似する別例のステント900の一部を示す。ステント900はステント本体910を含む。コーティング934はステント本体910上に設けられる。コーティング934は内部に形成される開口部938を有する。開口部938はステント本体914に形成されるチャネル918に沿って設けられる。この例において、3本のチャネル918がステント本体910に形成される。さらに、図10は、ここに開示される他のステントに形態および機能が類似する別例のステント1000の一部を示す。ステント1000はステント本体1010を含む。コーティング1034はステント本体1010上に設けられる。コーティング1034は内部に形成される開口部1038を有する。開口部1038はステント本体1010に形成されるチャネル1018に沿って設けられる。この例において、4本のチャネル1018がステント本体1010に形成される。集合的に、これらの図面は、コーティングを含むステントの内部に形成される長手方向のチャネルの数がさらに異なることを示すことを支援する。したがって、任意の適切な数のチャネルがここに開示されるステント800、900、1000および他のステントに利用される。
【0032】
図11は、ここに開示される他のステントに形態および機能が類似する別例のステント1100の一部を示す。ステント1100はステント本体1110を含む。コーティング1134はステント本体1110上に設けられる。コーティング1134は、内部に形成される開口部1138を有する。開口部1138はステント本体1110に形成されるチャネル1118に沿って設けられる。この例において、4本のチャネル1118がステント本体1110に形成される。チャネル1118に付加的に、ステント本体1110は1本以上の周方向のチャネル1130を含む。集合的に、チャネル1118、1130は、ここに開示される他のステントやチャネルと同様に、膵管および/または胆管を通して流体の排出を支援する。
【0033】
ここに開示されるステントの様々な要素に使用することができる材料は、医療器具に通常関連付けられたものを含む。例示のみの目的のために、ステント200に関して後述する。しかしながら、これは、ここに開示される器具および方法に制限することを意図したものではない。下記は、ここに開示される他の同様のステント、および/またはステントの要素、あるいは装置に適用されてもよい。
【0034】
ステント200は、金属、合金、ポリマ(それらのうちのいくつかの例を以下に示す)、金属ポリマ複合材料、セラミックス、これらの組み合わせなど、あるいは他の適切な材料から形成される。適切なポリマのいくつかの例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフロオルエチレン(ETFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えばデュポン社から販売されているDELRTN(登録商標))、ポリエーテル・ブロック・エステル、ポリウレタン(例えばポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテル・エステル(例えばDSMエンジニアリング・プラスチックス社から販売されるARNITEL(登録商標))、エーテルあるいはエステルベースの共重合体(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレン・エーテル)フタル酸塩および/またはデュポンから販売されるHYTREL(登録商標)のような他のポリエステルエラストマ)、ポリアミド(例えばバイエル社から販売されているDURETHAN(登録商標)やElf Atochem社から販売されているCRISTAMID(登録商標))、エラストマ系のポリアミド、ブロック・ポリアミド/エーテル、ポリエーテル・ブロック・アミド(PEBA、例えば商標PEBAX(登録商標)で販売されている)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、Marlex(登録商標)高密度ポリエチレン、Marlex(登録商標)低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン(例えばREXELL(登録商標))、ポリエステル、ポリブチレン・テレフタレート(PBT)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリトリメチレン・テレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレン・サルファイド(PPS)、ポリフェニレン・オキシド(PPO)、ポリパラフェニレン・テレフタルアミド(例えばKEVLAR(登録商標))、ポリスルフホン、ナイロン、ナイロン12(EMS American Grilon社から販売されているGRILAMID(登録商標)など)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレン・ビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン‐b‐イソブチレン‐b‐スチレン)(例えばSIBSおよび/またはSIBS 50A)、ポリカーボネート、イオノマ、生体適合性を備えたポリマ、他の適切な材料、あるいは混合物、組み合わせ、これらの共重合体、ポリマ/金属合成物などを含む。
【0035】
適切な金属および合金のいくつかの例は、304V、304L、および316LVステンレス鋼などのステンレス鋼;軟鋼;線形弾性および/または超弾性ニチノールなどのニッケル・チタン合金;ニッケル・クロミウム・モリブデン合金(例えばINCONEL(登録商標)625のようなUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)、C-22(登録商標)などのUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)、C276(登録商標)などのUNS:N10276、他のHASTELLOY(登録商標)合金など)のような他のニッケル合金、ニッケル銅合金(例えばMONEL(登録商標)400、NICKELVAC(登録商標)400、NICORROS(登録商標)400などのUNS:N04400)、ニッケル・コバルト・クロミウム・モリブデン合金(例えば、MP35N(登録商標)などのUNS:R30035)、ニッケル・モリブデン合金(例えば、HASTELLOY(登録商標)ALLOY B2(登録商標)などのUNS:N10665)、他のニッケル・クロム合金、他のニッケル・モリブデン合金、他のニッケル・コバルト合金、他のニッケル鉄合金、他のニッケル銅合金、他のニッケル・タングステンあるいはタングステン合金など;コバルト・クロム合金;コバルト・クロミウム・モリブデン合金(例えばELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)などのUNS:R30003);白金を豊富に含むステンレス鋼;チタン;これらの組み合わせなど;あるいは他の適切な材料を含む。
【0036】
ここに示唆されるように、市場にて入手可能なニッケル・チタンやはニチノール合金の系は、「線形弾性」あるいは「非超弾性」と示されるカテゴリであり、これは化学において従来の形状記憶および超弾性の変形と同様であるが、明瞭かつ有用な機械的特性を示すものである。線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、超弾性ニチノールが示すようなその応力/負荷曲線における実質的な「超弾性平坦部(plateau)」や「フラグ領域」を線形弾性および/または非超弾性ニチノールが示さないという点において、超弾性ニチノールと識別される。これに代えて、線形弾性および/または非超弾性ニチノールにおいて、復元可能な負荷が増加すると、塑性変形が開始されるまで、超弾性ニチノールで見られる超弾性の平坦部および/またはフラグ領域が略線形の関係において、あるいは必ずしも完全である必要はないが完全な線形の関係において、あるいは少なくともより線形な関係において、応力が継続して増加する。したがって、本開示のために、線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、「実質的に」線形弾性および/または非超弾性ニチノールとも示される。
【0037】
所定の場合において、線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、線形弾性および/または非超弾性ニチノールが約2乃至5%までの負荷を受けるが、実質的に弾性を保持し(例えば、塑性変形前の)、超弾性ニチノールが塑性変形前に約8%までの負荷を受ける点で超弾性ニチノールからさらに識別可能である。これらの材料の両者は、ステンレス鋼(その塑性に基づいてさらに識別可能である)のような他の線形弾性材と識別することができ、これらは塑性変形前に約0.2乃至0.44パーセントの負荷のみを受ける。
【0038】
いくつかの実施形態において、線形弾性および/または非超弾性ニッケル・チタン合金は、大きな温度領域にわたって示差走査熱量測定(DSC)および動的な金属熱分析(DMTA)分析によって検知可能ないかなるマルテンサイト/オーステナイト相変化も示さない合金である。例えば、いくつかの実施形態において、線形弾性および/または非超弾性ニッケル・チタン合金における摂氏約-60度(℃)乃至約120℃の範囲のDSCおよびDMTA分析によって検知可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化は存在しない。したがって、そのような材料の機械的な曲げ特性は、温度のこの広範囲にわたって温度の影響に対して通常不活発である。いくつかの実施形態において、周囲温度または室温の線形弾性および/または非超弾性のニッケル・チタン合金の機械的な曲げ特性は、例えばそれらが超弾性平坦部および/またはフラグ領域を示さないという点において、体温における機械的特性と略同じである。すなわち、広い温度領域を横断して、線形弾性および/または非超弾性ニッケル・チタン合金は、その線形弾性および/または非超弾性の特徴および/または特性を保持する。
【0039】
いくつかの実施形態において、線形弾性および/または非超弾性ニッケル・チタン合金は、約50乃至約60重量パーセントの範囲のニッケルであり、残部が実質的にチタンである。いくつかの実施形態において、組成は、約54乃至約57重量パーセントの範囲のニッケである。適切なニッケル・チタン合金の一例は、神奈川(日本)の古河テクノマテリアル社から販売されているFHP-NT合金である。ニッケル・チタン合金のいくつかの例は米国特許第5238004号明細書および第6508803号明細書に開示され、これらの明細書はその全体がここに開示されたものとする。他の適切な材料は、ULTANIUM(登録商標)(Neo-Metrics社から販売されている)およびGUM METAL(登録商標)(トヨタ社から販売されている)を含む。他のいくつかの実施形態において、超弾性合金、例えば超弾性ニチノールが所望の特性を得るために使用される。
【0040】
少なくともいくつかの実施形態において、ステント200の部分あるいはすべては、放射線不透過性の材料でドープされるか、形成されるか、あるいはこれを含む。放射線不透過性の材料は、医学的処置の間に蛍光透視スクリーンや、別の映像技術上に比較的明るい像を生成することができる材料であるものといえる。この比較的明るい像は、ステント200のユーザがその位置を決定することを支援する。放射線不透過性の材料のいくつかの例は、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性充填剤を装填した高分子材料などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0041】
いくつかの実施形態において、所定の程度の磁気共鳴画像診断法(MRI)適合性が、ステント200に付与される。例えば、ステント200は、実質的に像を歪めたり実質的にアーティファクト(つまり像中のギャップ)を形成しない材料から形成される。所定の強磁性体は、例えば、MRI像にアーティファクトを形成するため、適切ではない。ステント200は、MRI機械が撮像可能な材料からさらに形成される。これらの特性を示すいくつかの材料は、例えば、タングステン、コバルト・クロミウム・モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)などのUNS:R30003)、ニッケル・コバルト・クロミウム・モリブデン合金(例えば、MP35N(登録商標)などのUNS:R30035)、ニチノールなど、および他のものを含む。
【0042】
本開示は単に多くの点において例示に過ぎないものといえる。変更が、特に本開示の範囲を逸脱することなく形状、寸法、および工程の構成に関して詳細になされてもよい。これは、適切である程度まで、他の実施形態において使用される一例の実施形態の任意の要素の使用を含む。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に示される文言で定義される。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胆管および膵管を通して使用される移植可能な医療器具であって、
患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管および胆管のうちの少なくともいずれか一方に隣接して配置されるように構成される第2の端を有する管状部材を備え、
前記管状部材は、一体的に織り込まれた1本以上のワイヤ・フィラメントから形成される本体を有し、
前記本体は外側表面を有し、および前記外側表面に形成される長手方向チャネルを備え、
前記長手方向チャネルは前記本体の外側表面と患者の体管腔との間に空間を画定することを特徴とする移植可能な医療器具。
【請求項2】
前記本体は、単一のワイヤ・フィラメントを含むことを特徴とする請求項1に記載の移植可能な医療器具。
【請求項3】
前記本体は、複数のワイヤ・フィラメントを含むことを特徴とする請求項1に記載の移植可能な医療器具。
【請求項4】
前記1本以上のワイヤ・フィラメントは編み込まれることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項5】
前記1本以上のワイヤ・フィラメントのうちの少なくともいくつかは、形状記憶材料を含むことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項6】
前記1本以上のワイヤ・フィラメントのうちの少なくともいくつかは、ニッケル・チタン合金を含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項7】
前記本体の前記外側表面は、複数の長手方向チャネルを含むことを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項8】
前記本体の前記外側表面は、同本体の前記外側表面の周囲を延びる径方向チャネルを含むことを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項9】
カバーが前記管状部材の周囲に設けられ、前記カバーは、その内部に1つ以上の開口部が形成されることを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項10】
前記カバーは、コーティング、フィルム、あるいはシースであることを特徴とする請求項9に記載の移植可能な医療器具。
【請求項11】
前記本体の前記外側表面は、同本体の前記外側表面の周囲を延びる周方向チャネルを含むことを特徴とする請求項9に記載の移植可能な医療器具。
【請求項12】
前記管状部材の前記第1の端は、フレア状であることを特徴とする請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載の移植可能な医療器具。
【請求項13】
膵管を通して使用される移植可能な医療器具であって、
流体を排出するために、患者の十二指腸内に配置されるように構成される第1の端並びに膵管に隣接して配置されるように構成される第2の端を有し、1本以上のワイヤ・フィラメントから形成される編み込みステントを備え、
同編み込まれたステントは、外側表面に長手方向のチャネルが形成される外側表面を有し、該長手方向のチャネルは、前記膵管の枝から流体を排出するように構成されることを特徴とする移植可能な医療器具。
【請求項14】
前記編み込まれたステントの前記外側表面は、複数の長手方向チャネルを含むことを特徴とする請求項13に記載の移植可能な医療器具。
【請求項15】
前記編み込まれたステントの前記外側表面に形成されるとともに前記編み込まれたステントの前記外側表面の周囲を延びる周方向チャネルが設けられることを特徴とする請求項13または14に記載の移植可能な医療器具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-07 
出願番号 特願2015-560329(P2015-560329)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (A61M)
P 1 651・ 113- YAA (A61M)
P 1 651・ 121- YAA (A61M)
P 1 651・ 852- YAA (A61M)
P 1 651・ 54- YAA (A61M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 久島 弘太郎鈴木 洋昭  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 関谷 一夫
熊倉 強
登録日 2017-06-16 
登録番号 特許第6159829号(P6159829)
権利者 ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
発明の名称 胆管および膵管のうちの少なくともいずれか一方を通して使用される医療器具  
代理人 恩田 誠  
代理人 本田 淳  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
代理人 本田 淳  
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