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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1344416
審判番号 不服2017-1730  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-06 
確定日 2018-09-12 
事件の表示 特願2015- 7653「移動インターネットプロトコルを使用するUE間転送サポート」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月28日出願公開、特開2015-100126〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)4月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年4月16日 米国、2010年4月29日 米国)を国際出願日とする出願である特願2013-505164号の一部を、平成27年1月19日に新たな特許出願としたものであって、平成27年2月18日に特許法第36条の2第2項の規定による外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文が提出され、同日に手続補正がされ、平成27年3月11日に手続補正がされ、平成27年12月24日付けの拒絶理由通知に対して平成28年4月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成28年9月23日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成29年2月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 平成29年2月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年2月6日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容

本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
第1の無線送受信ユニット(WTRU)からフローを転送する方法において、
ノードと前記フローを確立するステップであって、第1のトラフィックセレクタを含む第1のバインディング更新を送ることによって前記フローが確立されるステップと、
ユニット間転送(IUT)準備要求を第2のWTRUへ送るステップと、
前記第2のWTRUが前記IUTを受け付けることを示しているIUT準備応答を、前記第2のWTRUから受信するステップと、
前記受信されたIUT準備応答に基づいて、HAへ第2のバインディング更新を送るステップであって、前記第2のバインディング更新は前記フローに属するパケットを前記第2のWTRUへルーティングする第2のトラフィックセレクタを含む、ステップと
を備えることを特徴とする方法。」(以下、「本願発明」という。)

そして、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「【請求項1】
第1の無線送受信ユニット(WTRU)からフローを転送する方法において、
前記第1のWTRUによって、ノードと前記フローを確立するステップであって、第1のトラフィックセレクタを含む第1のバインディング更新を送ることによって前記フローが確立され、前記フローは、複数のフローの中で前記フローを一意的に識別している関連付けられたフロー識別子を有している、ステップと、
前記第1のWTRUによって、ユニット間転送(IUT)準備要求を第2のWTRUへ送るステップであって、前記IUT準備要求は前記フローに関連付けられた情報を含んでいる、ステップと、
前記第1のWTRUによって、前記第2のWTRUがIUTを受け付けることを示しているIUT準備応答を、前記第2のWTRUから受信するステップと、
前記受信されたIUT準備応答に基づいて、HAへ第2のバインディング更新を送るステップであって、前記第2のバインディング更新は、前記フロー識別子と、前記フローに属するパケットを前記第2のWTRUへルーティングする第2のトラフィックセレクタとを含む、ステップと
を備えることを特徴とする方法。」(以下、「本件補正発明」という。)


2 補正の適否
上記補正は、本願発明を特定するために必要な事項である「・・・確立するステップ」、「・・・送るステップ」、「・・・受信するステップ」を実行する主体を「第1のWTRU」に限定し、「フロー」、「IUT準備要求」及び「第2のバインディング更新」について下線部のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正において、特許法第17条の2第3項(新規事項)、第4項(シフト補正)に違反するところはない。
そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1」に「本件補正発明」として記載したとおりのものと認める。

(2)引用発明及び周知事項
ア 引用例1の記載事項及び引用発明
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2008/087937号(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(以下、下線は当審にて付した。)

「[0001] 本発明はMobile IP技術を利用した端末間のセッションハンドオーバシステムに関する。 」

「[0010] MIP6では、MNがHome Linkにいる場合は、通常のIPv6通信と同様の動作を行う。

[0011] 次に、図21に示すように、MN18がForeign Linkへ移動した場合は、Foreign Link上のルータ19が定期的に、問い合わせメッセージ、ルータ広告(Router Advertisement、以下「RA」という)を送信しているため、MN18はこれを受信することで自身が移動したことを検知する。

[0012] 移動を検知すると、MN18は64ビット長のIDで一意に識別するアドレス体系、EUI-64などを利用して、MN18が実際に通信に使用しているアドレスである気付けアドレス(Care-of-Address、以下、「CoA」という)を生成し、HA20に対して登録要求(Binding Update、以下、「BU」という、なお、「Binding」は、HoAとCoAとの対応付けを表す)を行うことで、CoAの通知を行う。

[0013] HA20では、MN18のBUを受信すると、HAが保有するデータベース、バインディングキャッシュ(Binding Cache、以下、「BC」という)に、MN18に関するホームアドレス(Home Address、以下、「HoA」という)とCoAの対を登録する。

[0014] このようにすることで、MN18と通信を行っている対向ノード(Correspondent Node、以下、「CN」という)21からMN18に向けて送信されたパケットは、HA20が代理受信し、HA20はMN18に向けてパケットをカプセル化してから転送する。MN18では、カプセルをはずして、元々のパケットを取り出して受信する。同様に、MN18からCN21へ向かうパケットについても、この逆のルートを辿って到達する。」

「発明の効果
[0038] 本発明によれば、Mobile IPの仕組みを利用し、かつ、Mobile IPの機能を一部拡張することで、ネットワークセグメントを跨ったハンドオーバと、異なる2つの端末間での切替えによる通信(セッションハンドオーバ、SH)を実現することができる。

[0039] すなわち、切替先端末(MN)又は切替元端末(MN)が切替元端末のホームエージェント(HA)に、切替元端末のホームアドレス(HoA)および切替先端末の現在のアドレス(CoA)についての情報を含んだバインディングアップデート(BU)を送信することで、切替元端末が実際には移動していないが、移動したように見せかけ、切替元端末から切替先端末へのSHを実現することができる。

[0040] また、同じ通信相手と複数のセッションを張っていた場合、特定のセッションのみハンドオーバを行うことができる。」

「[0062] [実施例1]
次に、図4、5に示されるシーケンス図に従って、本実施例におけるMN-a2からMN-b4へのSHの過程を説明する。
すなわち、MN-a2は、切替元端末、MN-b4は、切替先端末ということになる。
尚、MN-a2からMN-b4へのSHを行う前提として、以下のことを既知として説明を行う。

[0063] すなわち、MN-a2、MN-b4は、MN機能が実装されており、それぞれ互いのCoA(CoA-a、CoA-b)を知っているものとする。また、MN-a2、MN-b4はそれぞれ別々のネットワークで且つ、それぞれ自身のHome Linkとは別のForeign Linkにいるものとする。また、HA-a3は、MN-a2に関するHoA-a・CoA-aの対をBCに保有しているものとし、CN1は、単なるIPv6ノードとして機能するものとする。

[0064] (1)SH実施前
今、図4に示されるように、MN-a2がHA-a3を経由して、CN1からコンテンツを受信しているとする。すなわち、CN1はMN-a2のHoA-a宛にコンテンツを送信すると、HA-a3のMobile IP管理部16がBC管理部17を参照する。今、BC管理部17では、図6に示されるBindingを保持しているとすると、HoA-a宛のパケットはCoA-a宛に転送することがわかるので、Mobile IPのカプセリング(トンネリング)技術によってMN-a2のCoA-a宛に転送するために必要な情報をMobile IP管理部16に対して通知すると、Mobile IP管理部16が必要な設定を行った上で、転送を行う。MN-a2のMobile IP管理部9は、パケットを受信した後、カプセルをはずし、IPパケットの宛先ポート番号を参照して、自身のAPP7にコンテンツを渡している状態である。また、SH状態管理手段13は、他端末に対してSHを行っていないことを知っているものとする。

[0065] (2)SH要求
本実施例では、MN-b4がSHのきっかけを引き起こすとする。図5に示すように、MN-b4のSH管理部10のSH通信手段11は、MN-a2に対してSH要求パケットを送信する。このパケットには、MN-a2からMN-b4へのSHを依頼する旨が記されている情報が含まれている。上述のように、本実施例において、MN-b4は、MN-a2のCoA-aの情報を保有しているものとして説明している。

・・・略・・・

[0067] (4)SH許可
MN-b4のMACアドレスが登録されている場合は、SH通信手段11がSH許可をMN-b4に対して送信する。このパケットには、MN-a2からMN-b4へのSHを認める旨が記された情報が含まれている。また、このパケットの中には、HAへの位置情報登録(Home Registration)を行うための鍵を含めても良い。また、プリシェアードの場合(鍵を事前に共有している場合)には、その必要はない。本実施例のように、MN-b4がHA-a3に対してBUを行う場合には、このパケットには、少なくともHoA-aが含まれている。また、このパケットには、コンテンツを再生するために必要な情報、例えば、HA-a3のIPアドレス(HA-a_Addr)、CN1のIPアドレス(CN_Addr)、通信相手のポート番号、待ち受けポート番号、再生位置情報やlifetime(BC管理部のBCに登録されるBindingの有効時間)などが含まれていても良い。また、このパケットには、MN-a2が現在通信中のセッションに関する情報の全てあるいは一部が含まれており、この際、MN-a2のSH管理部10のSH通信手段11は、自身の記憶部8に対してセッションに関する情報の問い合わせを行っている。

[0068] (5)BU要求
次に、MN-a2からのSH許可パケットを受信したMN-b4のSH管理部10のSH通信手段11は、ハンドオーバしたいセッションを選択した後、自身のMobile IP管理部9に対して、BU要求を行う。このパケットには、HA-a3に対するBUの依頼が記された情報が含まれている。また、HoA-aとCoA-bに関する情報も伝える。更に、この要求にも、上記SH許可パケットに含まれていたのと同様の情報、つまり、Home Registationなどで使用する鍵情報や、コンテンツを再生するために必要な情報、例えば、HA-a3のIPアドレス、CN1のIPアドレス、通信相手のポート番号、待ち受けポート番号、再生位置情報やlifetime(BC管理部のBCに登録されるBindingの有効時間)などが含まれていても良い。

[0069] (6)HA-a3へのBU
BU要求を受け取ったMN-b4のMobile IP管理部9では、HA-a3に対してBUを行う(BUパケットを送信する)。
図6は、HA-a3におけるBU前のBCを示す図である。
図7は、MN-b4からHA-a3に送信されるBinding情報を示す図である。
図8は、MN-b4からHA-a3に送信されるセッション情報を示す図である。

[0070] 本実施例では、BUパケットの内容として、図7に示されるBinding情報、および図8に示されるセッション情報が含まれているものとする。Binding情報とは、HA-a3のBC管理部17に登録を要求するBindingの情報を記載したものであり、例えば、図7によると、HoA-aとCoA-b、通信相手のIPアドレス(CN_Addr)、通信相手のポート番号(9080番ポート)、lifetimeとして10min.(分)が記載されている。一方、セッション情報とは、HA-a3のBC管理部17においてBindingを更新する際に検索キーとして利用するための、セッションに関する情報である。図8では、セッション情報としてHoA-aとCoA-a、CN_Addr、9080番ポートという情報が含まれている。尚、BUパケットに含めるセッション情報には、MN-a2から受信したSH許可パケットに含まれるセッションに関する情報のうち、SHを行おうとしているセッションに関する情報の全てあるいは一部が含まれている。

・・・略・・・

[0072] (8)Bindingの更新
BUが認められた場合は、BC管理部17にこれを伝え、該当するBindingが更新される。尚、Bindingの更新方法については、非特許文献1で規定される通常のMIP機能を利用しても良いが、本実施例においては、図9記載のフローチャートに基づき、詳細に記述する。

[0073] 今、Bindingが更新される前段階において、HA-a3のBC管理部17に、図6に示されるBindingが登録されていたとする。図6を見ると、通信相手のIPアドレスはCN_Addr、接続先ポート番号として7080番と9080番の2つのセッションを有していて、lifetimeはそれぞれ2min.となっており、HoA-a宛のパケットがCoA-a宛に転送されることがわかる。

[0074] 今、HA-a3が図7記載のBinding情報と図8記載のセッション情報を含むBUパケットを受信したとする。

[0075] まず、S1にて、HA-a3のMobile IP管理部16が、MN-b4から受信したBUパケットからBinding情報およびセッション情報を抽出して、BC管理部17に出力を行う。

[0076] S2でHA-a3のBC管理部17では、このセッション情報に一致するものが登録されているかを検索する。登録されていない場合には、S7において、Binding情報をHA-a3のBCへ新規登録して処理を終了する。本実施例においては、図6を参照すると、該当するBindingがあることがわかるので、次にS3で、Binding情報に含まれるlifetimeの値を抽出する。0min.であれば、S4にて、そのままlifetimeの上書きを行うが、本実施例では0min.ではないので、S5にて該Bindingを、MN-b4から受信したBUパケット内のBinding情報内に記載のlifetimeの期間(10min.)だけ無効化し(例えば図10では、Availabilityの項目を「×、10min.」と表記することで無効化している)、さらにS6で、該Bindingのlifetime(2min.)とBUパケット内のBinding情報に記載されているlifetime(10min.)を加算した12min.を新たに該Bindingのlifetimeと設定した後、S7にてBUパケット内のBinding情報を、HA-a3のBCへ新規登録する。尚、新規に登録したBindingのlifetimeと、上記Bindingの無効化の過程において設定を行ったHoA-aとCoA-a、ポート番号9080番に対応したlifetimeとAvailabilityとは、互いに関連付けられているものとする。

[0077] HA-a3のBC管理部17において更新されたBinding状況を図10に示す。図10を見ると、2行目が無効化され(CN_Addrと9080番ポートを使用して通信しているCoA-a宛に転送されるBindingが無効化され)、さらに、2行目のlifetimeが2min.から12min.に変更されていて、図7記載のBinding情報が3行目に新規登録され、追加されていることがわかる。尚、本実施例において、図10のAvailabilityの項目の使い方として、Bindingを無効とするとき「×」というフラグを立てるとともに、無効時間も設定する場合について説明を行ったが、これに限るものではない。」

・・・略・・・

[0088] 以上の手順を経ることで、MN-b4はCN1からのコンテンツをHA-a3経由で取得することができるようになる(MN-a2からMN-b4へのSHが可能になる)。

[0089] このようにMN-a2は実際には移動していないが、移動したように見せかけることでMN-a2からMN-b4へのセッションハンドオーバを実現することが可能となる。

[0090] また、同じ通信相手と複数のセッションを張っていた場合、特定のセッションのみハンドオーバを行うことが可能となる。

[0091] 尚、本実施例においては、切替先端末(MN-b4)側から切替元端末(MN-a2)側へSH要求を行う場合について説明を行ったが、切替元端末(MN-a2)側から切替先端末(MN-b4)側へSH要求を行うことも可能である。この場合、図5において、MN-aとMN-bとを入れ替えたシーケンス図に従って良い。しかし、基本的な動作は、上記説明と全く同じであるが、変更点としては2つある。

[0092] 1点目は、SH要求パケットに、MN-a2のMACアドレスを入れる必要があることと、事前にMN-b4にMACアドレスを登録しておく必要があることである。これは、MN-b4でSH要求パケットを受信した後、MACアドレス認証を行う際に必要だからである。

[0093] 2点目は、SH許可パケットの中身として、HoA-aではなく、CoA-bを入れる必要があることである。これは、MN-a2側からHA-a3にBUパケットを送信するために、BU要求ならびにBUパケットに含める情報として、HoA-aとCoA-bの情報を入れる必要があるためであり、CoA-bについては、MN-a2のアドレスではないため、知らない場合を考慮し、取得することとしている。」

「図5」


「図6」


「図7」


「図8」


(イ)上記記載によれば、用語と略称との対応関係は次のとおりである。
HAはホームエージェントの略称(上記[0039])、HoAはホームアドレスの略称(上記[0039])、SHは異なる2つの端末間での切替えによる通信(セッションハンドオーバ)の略称(上記[0038])、BUはバインディング更新(アップデート)の略称(上記[0039])、MNは端末の略称(上記[0039])、CoAは気付けアドレスの略称(上記[0012])、CNは対向ノードの略称(上記[0014])。

上記[0091]には、実施例1について、切替元端末(MN-a)側から切替先端末(MN-b)側へSH要求を行うことも可能であって、図5においてMN-aとMN-bとを入れ替えたシーケンス図に従ってもよい旨の記載があるから、上記[図5]においてMN-aとMN-bとを入れ替えることで、切替元端末(MN-a)側から切替先端末(MN-b)側へSH要求を行い、切替先端末(MN-b)側から切替元端末(MN-a)側へSH許可を行い、切替元端末(MN-a)側からHA-aにBUを行うものについて、以下検討を進める。

上記[0001]によれば、引用例1はモバイルIP技術を利用した端末間のSHに関し、上記[0062]?[0093]にある実施例1には、MN-aからMN-bへのSHの過程が記載されている。そして、上記[0090]によれば、当該SHでは、同じ通信相手と複数のセッションを張っていた場合、特定のセッションのみハンドオーバを行うことが可能であるから、「モバイルIP技術を利用した、MN-aからMN-bへ、複数のセッションの中から特定のセッションをハンドオーバする方法」が記載されているといえる。

上記[0064]によれば、SH実施前において、MN-aはHA-aを経由してCNからコンテンツを受信している。
また、上記[0073]によれば、Bindingが更新される前段階では、HA-aには、図6に示されるBindingが登録されており、HoA-a宛のパケットがCoA-a宛に転送される。ここで、CoA-aは、MN-aの気付けアドレス(上記[0063])であるから、転送された当該パケットはMN-aが受信する。
そして、Bindingの登録について、上記[0012]?[0014]によれば、MNはHAに対してBUを行い、これによって、HAはMNのBUを受信するとMNに関するHoAとCoAの対を登録することが記載されており、BindingはHoAとCoAとの対応付けを表すとあるから、登録されるHoAとCoAの対とはBindingの情報のことである。また、上記[0069]によれば、BUを行うとは、BUパケットを送信することであり、上記[図6]によれば、更新される前段階で登録されているBindingは、HoA、CoA、通信相手のIPアドレス、ポート番号等から成ることが見て取れる。
そうすると、「Bindingが更新される前段階において、MN-aによって、HA-aに対してBUパケットを送信することでBUを行うことであって、これによってHAにHoA、CoA、通信相手のIPアドレス、ポート番号を含むBindingが登録され、CNからのHoA-a宛のパケットがCoA-a宛に転送され」るものといえる。

上記[0065]及び[図5]には、SH要求において、「MN-bによって、SH要求パケットをMN-aへ送信する」こと、及び、「SH要求パケットはSHを依頼する旨が記されている情報を含んでいる」ことが記載されている。
そして、上記[0091]を踏まえると、当該記載から「MN-aによって、SH要求パケットをMN-bへ送信する」こと、及び、「SH要求パケットはSHを依頼する旨が記されている情報を含んでいる」ことが把握できる。

上記[0067]、[0068]及び[図5]によれば、SH許可において、MN-aのSH通信手段がSH許可をMN-bに対して送信し、このパケットには、MN-aからMN-bへのSHを認める旨が記された情報が含まれている。そして、MN-aからのSH許可パケットをMN-bが受信する。
そうすると、SH許可において、「MN-bによって、MN-aがSHを認める旨が記された情報を含むSH許可パケットを、MN-aから受信」することが記載されているといえる。
そして、上記[0091]を踏まえると、当該記載から、「MN-aによって、MN-bがSHを認める旨が記された情報を含むSH許可パケットを、MN-bから受信」することが把握できる。

上記[0068]?[0070]及び[図5]によれば、SH許可パケットを受信したMN-bのSH管理部は自身のMobile IP管理部に対してBU更新を行い、BU更新を受け取ったMN-bのMobile IP管理部はHA-aに対してBUパケットを送信する。
そして、BUパケットの内容として、HA-aに登録を要求するBindingの情報を記載したBinding情報及びHA-aにおいてBindingを更新する際に検索キーとして利用するためのセッション情報が含まれており、上記[図7]によれば、Binding情報は、「HoA、CoA、通信相手のIPアドレス、ポート番号等」から成り、上記[図8]によれば、セッション情報は、「HoA、CoA、通信相手のIPアドレス及びポート番号」から成ることが見て取れる。また、上記[図7]によれば、Binding情報のCoA欄に「CoA-b」が含まれていることが見て取れるので、HoA-aへのパケットがCoA-bに転送される設定がされていることが把握できる。ここで、CoA-bはMN-bの気付けアドレス(上記[0063])であるから、転送された当該パケットはMN-bに転送される。
そうすると、HA-aへのBUにおいて、「SH許可パケットを受信すると、MN-bはHA-aへBUパケットを送信する」こと、このBUにより、BUパケットに含まれるセッション情報を検索キーとして、登録されたBindingが、BUパケットに含まれるBinding情報で更新され、HoA-aへのパケットが、当該Binding情報に含まれるCoA-bをその気付けアドレスとするMN-bに転送されることが把握できる。
そして、上記[0091]を踏まえて、MN-aとMN-bとを入れ換えた場合には、「SH許可パケットを受信すると、MN-aはHA-aへBUパケットを送信する」こと、「BUパケットの内容として、HA-aに登録を要求するBindingの情報を記載したBinding情報及びHA-aにおいてBindingを更新する際に検索キーとして利用するためのセッション情報が含まれており」、「セッション情報はHoA、CoA、通信相手のIPアドレス及びポート番号から成り、Binding情報はHoA、CoA、通信相手のIPアドレス、ポート番号を含」むこと、「このBUにより、BUパケットに含まれるセッション情報を検索キーとして、登録されたBindingが、BUパケットに含まれるBinding情報で更新され、HoA-aへのパケットが、当該Binding情報に含まれるCoA-bをその気付けアドレスとするMN-bに転送される」ことが把握できる。

(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「モバイルIP技術を利用した、MN-aからMN-bへ、複数のセッションの中から特定のセッションをハンドオーバする方法において、
Bindingが更新される前段階において、MN-aによって、HA-aに対してBUパケットを送信することでBUを行うことであって、これによってHAにHoA、CoA、通信相手のIPアドレス、ポート番号を含むBindingが登録され、CNからのHoA-a宛のパケットがCoA-a宛に転送され、
MN-aによって、SH要求パケットをMN-bへ送信することであって、SH要求パケットはSHを依頼する旨が記されている情報を含み、
MN-aによって、MN-bがSHを認める旨が記された情報を含むSH許可パケットを、MN-bから受信することと、
SH許可パケットを受信すると、MN-aはHA-aへBUパケットを送信することであって、BUパケットの内容として、HA-aに登録を要求するBindingの情報を記載したBinding情報及びHA-aにおいてBindingを更新する際に検索キーとして利用するためのセッション情報が含まれており、セッション情報はHoA、CoA、通信相手のIPアドレス及びポート番号から成り、Binding情報はHoA、CoA、通信相手のIPアドレス、ポート番号を含み、このBUにより、BUパケットに含まれるセッション情報を検索キーとして、登録されたBindingが、BUパケットに含まれるBinding情報で更新され、HoA-aへのパケットが、当該Binding情報に含まれるCoA-bをその気付けアドレスとするMN-bに転送される、方法。」


イ 引用例2の記載事項及び周知事項
(ア)原査定の拒絶理由で引用された、SOLIMAN他,"FLOW BINDINGS IN MOBILE IPV6 AND NEMO BASIC SUPPORT; DRAFT-IETF-MEXT-FLOW-BINDING-06.TXT",IETF STANDARD-WORKING-DRAFT,掲載日2010年 3月 1日,URL:https://tools.ietf.org/html/draft-ietf-mext-flow-binding-06(以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。

「Abstract

This document introduces extensions to Mobile IPv6 that allow nodes to bind one or more flows to a care-of address. These extensions allow multihomed nodes to instruct home agents and other Mobile IPv6 entities to direct inbound flows to specific addresses.」(page 1)
(当審訳)
「要約

この文書は、ノードが気付けアドレスに1又は複数のフローをバインドすることを可能とするモバイルIPv6の拡張を導入するものである。これらの拡張は、マルチホームのノードがホームエージェントを指示することを可能とし、そして、他のモバイルIPv6のエンティティが流入するフローを特定のアドレスに導くことを可能とする。」(第1頁)

「3. Terminology

Terms used in this document are defined in [RFC3753] and [RFC4885]. The following terms are also used in this document:

Flow: A flow is a sequence of packets for which the MN desires special handling either by the HA, the CN or the MAP.

Traffic Selector: One or more parameters that can be matched against fields in the packet's headers for the purpose of classifying a packet. Examples of such parameters include the source and destination IP addresses, transport protocol number, the source and destination port numbers and other fields in IP and higher layer headers.

Flow binding: It consists of a traffic selector, and an action. IP packets from one or more flows that match the traffic selector associated with the flow binding, are processed according to the action associated with the same flow binding.

Flow Identifier: A flow identifier uniquely identifies a flow binding associated with a mobile node. It is generated by a mobile node and is cached in the table of flow binding entries maintained by the MN, HA, CN or MAP.」(Page 7)
(当審訳)
「3.用語

この文書で用いられる用語は、[RFC3753]及び[RFC4885]に定義される。同様に、この文書において、次の用語も用いられる。

フロー:フローとは、MNがHA、CN又はMAPのいずれかによって特別な処理を望む一連のパケットである。

トラフィックセレクタ:パケットを分類するためにパケットのヘッダ内のフィールドに対してマッチングされる1つまたは複数のパラメータである。そのようなパラメータの例は、ソース及び宛先IPアドレス、トランスポートプロトコル番号、ソース及び宛先ポート番号、並びに、IP及びそれより高いレイヤのヘッダ内の他のフィールドなどを含む。

フローバインディング:フローバインディングはトラフィックセレクタ及びアクションから成る。フローバインディングに関連付けられたトラフィックセレクタに一致する1つ又は複数のフローからのIPパケットが、同じフローバインディングに関連付けられたアクションに従って処理される。

フロー識別子:フロー識別子はMNに関連するフローバインディングを一意的に識別する。それはMNによって生成され、MN、HA、CN又はMAPによって維持されるフローバインディングエントリのテーブル内に含まれる。」(第7頁)

(イ)上記記載によれば、引用例2は、ノードがフローを気付けアドレスにバインド可能とするモバイルIPv6に関するもの(第1頁)である。

そして、フロー識別子は、フローバインディングを一意的に識別するものであって、フローバインディングはトラフィックセレクタを含み、当該トラフィックセレクタに一致するパケットを選択するもの(第7頁)である。
そうすると、フロー識別子は、フローバインディングを識別することによって、フローバインディングに関連付けられたトラフィックセレクタに一致するパケットからなるフローを一意的に識別する、フローに関連付けられた識別子といえる。

加えて、引用例2はモバイルIPv6の規格についての提案であって当業者に周知のものであるから、引用例2には次の周知事項が記載されているといえる。

「フローバインディングを識別することによってフローを一意的に識別可能な、フローに関連付けられた、モバイルIPv6に関するフロー識別子。」(以下、「周知事項」という。)


(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「セッション」は通信におけるセッションであって、本願明細書【0061】の記載等にもあるように、「通信セッション」を「フロー」と言い換えることができることは技術常識であるから、引用発明の「セッション」は本件補正発明の「フロー」に相当する。
また、引用発明の「MN-a」、「MN-b」、「HA-a」、「CN」、「BU」は、それぞれ本件補正発明の「第1のWTRU」、「第2のWTRU」、「HA」、「ノード」及び「バインディング更新」に相当する。

(イ)引用発明の「モバイルIP技術を利用した、MN-aからMN-bへ、複数のセッションの中から特定のセッションをハンドオーバする方法」は、MN-aからMN-bに、複数のセッションの中から特定のセッションを転送するものといえる。そして、本件補正発明は、フロー識別子と一致する特定のフローを転送するものであるから、本件補正発明と引用発明とは、「第1の無線送受信ユニット(WTRU)からフローを転送する方法」である点で共通する。

(ウ)引用発明では、「Bindingが更新される前段階において、MN-aによって、HA-aに対してBUパケットを送信することでBUを行うこと」により、「HAにHoA、CoA、通信相手のIPアドレス、ポート番号を含むBindingが登録され、CNからのHoA-a宛のパケットがCoA-a宛に転送され」る。ここで、CoAはMNの気付けアドレス(上記[0063])であるから、CoA-a宛のパケットはMN-aに転送される。
そうすると、登録されたBindingに含まれるHoA、CoA、通信相手のIPアドレス、ポート番号の各々は、通信トラフィック上のパケットを分類してルーティングを行うためのパラメータといえ、HA-aは、Bindingに含まれるパラメータを参照してこれに一致するパケットをMN-aに転送するといえる。
ここで、本件補正発明の「ノードとフローを確立するステップ」においてバインディング更新に含まれるとする「トラフィックセレクタ」がどのような内容のものかは明確ではないが、本願明細書には、「トラフィックセレクタは、パケットを分類するためにパケットのヘッダ内のフィールドに対してマッチングされる1つ又は複数のパラメータである。そのようなパラメータの例は、ソースおよび/または宛先IPアドレス、・・・ソースおよび宛先ポート番号・・・などを含む」(【0064】)との記載があることも勘案すると、引用発明においてHoA-a宛のパケットをCoA-a宛に転送する際に参照される「HoA、CoA、通信相手のIPアドレス、ポート番号」等のパラメータの1つ又は複数は、本件補正発明にいう「第1のトラフィックセレクタ」に相当するといえる。
そして、引用発明が「モバイルIP技術」を利用していることも踏まえれば、引用発明では、「Bindingが更新される前段階において、MN-aによって、HA-aに対して」、第1のトラフィックセレクタを含む「BUパケットを送信すること」によってBUが行われたといえ、本件補正発明において「第1のバインディング更新」がHAに対して送られることも自明であるから、引用発明の「BUパケット」は、本件補正発明の「第1のバインディング更新」に相当し、本件補正発明と引用発明とは、「前記第1のWTRUによって、第1のトラフィックセレクタを含む第1のバインディング更新を送る」点で共通する。

(エ)引用発明は、「MN-aによって」、「SHを依頼する旨が記されている情報を含」む「SH要求パケットをMN-bへ送信」し、「MN-bがSHを認める旨が記された情報を含むSH許可パケットを、MN-bから受信する」ものであるところ、引用発明の「SH」はセッションをMN間で切替えることによって通信するものであるから、本件補正発明の「ユニット間転送(IUT)」に相当する。そして、本件補正発明では、「IUT準備要求」に対して「前記第2のWTRUがIUTを受け付けることを示しているIUT準備応答」が返信されることからみて、本件補正発明にいう「IUT準備要求」が「前記第2のWTRUがIUTを受け付けること」を要求するものであることは明らかであるから、引用発明の「SH要求パケット」は、本件補正発明の「IUT準備要求」に対応するといえる。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「前記第1のWTRUによって、ユニット間転送(IUT)準備要求を第2のWTRUへ送るステップ」を備える点で共通する。
また、引用発明の「SH許可パケット」は、本件補正発明の「IUT準備応答」に相当し、引用発明の「MN-aによって、MN-bがSHを認める旨が記された情報を含むSH許可パケットを、MN-bから受信する」ことは、本件補正発明の「前記第1のWTRUによって、前記第2のWTRUがIUTを受け付けることを示しているIUT準備応答を、前記第2のWTRUから受信するステップ」に相当する。

(オ)引用発明では、「SH許可パケットを受信すると」「MN-aはHA-aへBUパケットを送信」し、「このBUにより、BUパケットに含まれるセッション情報を検索キーとして、登録されたBindingが、BUパケットに含まれるBinding情報で更新され、HoA-aへのパケットが、当該Binding情報に含まれるCoA-bをその気付けアドレスとするMN-bに転送される」。
そして、引用発明において、HoA-a宛のパケットをCoA-b宛に転送する際に参照される、Binding情報に含まれる「HoA、CoA、通信相手のIPアドレス、ポート番号」等のパラメータの1つ又は複数は、上記(ウ)で判断したのと同様に、本件補正発明の「前記フローに属するパケットを前記第2のWTRUへルーティングする第2のトラフィックセレクタ」に相当する。
また、引用発明の、SH許可パケットを受信するとHA-aへ送信される「BUパケット」は、本件補正発明にいう「第2のバインディング更新」に対応し、本件補正発明と引用発明とは、「前記受信されたIUT準備応答に基づいて、HAへ第2のバインディング更新を送るステップであって、前記第2のバインディング更新は、前記フローに属するパケットを前記第2のWTRUへルーティングする第2のトラフィックセレクタを含む、ステップ」を備える点で共通する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「第1の無線送受信ユニット(WTRU)からフローを転送する方法において、
前記第1のWTRUによって、第1のトラフィックセレクタを含む第1のバインディング更新を送るステップと、
前記第1のWTRUによって、ユニット間転送(IUT)準備要求を第2のWTRUへ送るステップと、
前記第1のWTRUによって、前記第2のWTRUがIUTを受け付けることを示しているIUT準備応答を、前記第2のWTRUから受信するステップと、
前記受信されたIUT準備応答に基づいて、HAへ第2のバインディング更新を送るステップであって、前記第2のバインディング更新は、前記フローに属するパケットを前記第2のWTRUへルーティングする第2のトラフィックセレクタを含む、ステップと、
を備えることを特徴とする方法。」

[相違点1]
第1のバインディング更新を送るステップが、本件補正発明では、第1のバインディング更新を送ることによって「前記フローが確立され」る、「ノードと前記フローを確立するステップ」であるのに対し、引用発明では、これについて特定がない点。

[相違点2]
本件補正発明では、「前記フローは、複数のフローの中で前記フローを一意的に識別している関連付けられたフロー識別子を有して」おり、第2のバインディング更新に当該「フロー識別子」が含まれるのに対し、引用発明ではこれらについて特定がない点。

[相違点3]
本件補正発明では、IUT準備要求が「フローに関連付けられた情報」を含んでいるのに対し、引用発明ではこれについて特定がない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明の「Bindingが更新される前段階において、MN-aによって、HA-aに対してBUパケットを送信することでBUを行うことであって、これによってHAにHoA、CoA、通信相手のIPアドレス、ポート番号を含むBindingが登録され、CNからのHoA-a宛のパケットがCoA-a宛に転送され、」との事項において、上記Bindingの登録がされることにより、CN(本件補正発明の「ノード」に相当。)とCoA-a(本件補正発明の「第1のWTRU」に相当。)との間でHoA-a(本件補正発明の「HA」に相当。)を介したフローが確立されることは明らかであるから、MN-aによりCNとのフローを確立するための前記事項における「MN-aによって、HA-aに対してBUパケットを送信することでBUを行う」処理を、ノードに相当するCNとフローを確立するステップとして、また当該処理によりフローが確立されるステップとして実施することは当業者が適宜なし得る事項といえる。

イ 相違点2について
引用発明の「セッション情報」は、更新対象となるセッションに対応するBindingをBUパケットに含まれるBinding情報で更新するために、当該更新対象となるセッションの検索キーとして用いるものであるから、複数のセッションの中で更新対象となるセッションを一意的に識別(本件補正発明にいう「複数のフローの中で前記フローを一意的に識別」に相当。)するものといえる。そして、引用発明では、SH許可を受けて送信されるBUパケットに上記「セッション情報」を含めることで、転送するフローを一意的に識別している。
そして、引用発明において、更新対象となるセッションを一意的に識別する「セッション情報」として、上記周知事項である「フローバインディングを識別することによってフローを一意的に識別可能な、フローに関連付けられた、モバイルIPv6に関するフロー識別子」(上記「(2)イ(イ)」参照)を採用し、SH許可を受けて送信されるBUパケット(本件補正発明の「第2のバインディング更新」に対応。)に当該フロー識別子を含めることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 相違点3について
引用発明は、「複数のセッションの中から特定のセッションをハンドオーバする方法」であって、BUパケットを送信する前に、SH先のMN-bに「SH依頼する旨が記載されている情報」を含む「SH要求パケット」を送信し、当該SHを認めるか否かの判断を促すものである。
そうすると、SH先のMN-bが特定のセッションのSHを認めるか否かの判断を行う際にSHに係るセッションを特定できるように、SH要求パケットに、当該SHに係るセッションに関連付けられた情報を含めることは当業者が容易に想到し得ることである。

エ 作用効果について
そして、上記相違点1?3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。

(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。

3 まとめ
よって、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年2月6日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、上記「第2」の「1」にある「本願発明」のとおりのものと認める。

2 引用発明等
引用発明及び周知事項は,上記「第2」の「2(2)」で認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「・・・確立するステップ」、「・・・送るステップ」、「・・・受信するステップ」を実行する主体の限定を省き、「フロー」、「IUT準備要求」及び「第2のバインディング更新」についてフロー識別子及びフローに関連付けられた情報に関する限定を省いたものであって、他の構成は同じである。
そうすると、上記「第2」の「2(3)」?「2(5)」での検討のとおり、本願発明に上記発明特定事項を付加した本件補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明できたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-04-13 
結審通知日 2018-04-17 
審決日 2018-05-01 
出願番号 特願2015-7653(P2015-7653)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 浩兵  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 松永 稔
古市 徹
発明の名称 移動インターネットプロトコルを使用するUE間転送サポート  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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