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審決分類 審判 全部無効 一時不再理  A45D
管理番号 1344497
審判番号 無効2017-800158  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-12-25 
確定日 2018-09-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第5230864号発明「美肌ローラ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 本件特許の経緯
本件特許第5230864号(以下、単に「本件特許」という。)についての特許出願は、平成19年12月14日に出願した特願2007-324077号であって、平成25年3月29日に請求項1ないし7に係る発明についての特許が設定登録された。
本件請求項1ないし7に係る発明についての特許に対して、平成28年7月21日付けで無効審判請求人 ベノア・ジャパン株式会社より無効審判(無効2016-800085号、以下、「先の無効審判」という。)の請求がされ、平成29年4月18日付けで「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がされ、この審決は、平成29年5月29日に確定し、登録がされている。

第2 本件無効審判の経緯
本件無効審判の経緯は以下のとおりである。

平成29年12月25日 先の無効審判における請求人と同じ請求人
であるベノア・ジャパン株式会社による
本件無効審判請求
(無効2017-800158号)
平成30年 3月26日 被請求人株式会社MTGによる
審判事件答弁書
(以下単に「答弁書」という。)提出
平成30年 4月 4日付け 請求人に対する審尋
平成30年 4月24日 請求人による回答書(1)提出
平成30年 5月28日付け 請求人に対する審尋
平成30年 6月27日 請求人による回答書(2)提出
平成30年 6月27日 請求人による弁駁書提出

なお、本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まない。また、特許法の条文を使用する際に「特許法」という表記を省略することがある。

第3 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。(以下「本件特許発明1」などということがある。また、これらをまとめて単に「本件特許発明」ということがある。)
「【請求項1】
柄と、
前記柄の一端に導体によって形成された一対のローラと、
生成された電力が前記ローラに通電される太陽電池と、を備え、
前記ローラの回転軸が、前記柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ、
前記一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられた、
美肌ローラ。
【請求項2】
導体によって形成された一対のローラと、
前記一対のローラを支持する把持部と、
生成された電力が前記ローラに通電される太陽電池と、を備え、
前記ローラの回転軸が、前記把持部の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ、
前記一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられた、
美肌ローラ。
【請求項3】
前記ローラが金属によって形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の美肌ローラ。
【請求項4】
前記ローラが金属の酸化物によって形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の美肌ローラ。
【請求項5】
前記金属が、
プラチナ、チタン、ゲルマニウム、ステンレス
から1種類以上選ばれることを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の美肌ローラ。
【請求項6】
前記ローラが光触媒を含むことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の美肌ローラ。
【請求項7】
前記光触媒が酸化チタンであることを特徴とする、請求項6に記載の美肌ローラ。」

第4 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人の主張する請求の趣旨は、本件特許発明についての特許を無効とする、との審決を求めるものである。

2 証拠方法
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開2005-66304号公報の写し
(以下、写しである旨の表記は省略する。)
甲第2号証:特開平2-131779号公報
甲第3号証:特開平3-92175号公報
甲第4号証:特開平4-231957号公報
甲第5号証:特開2004-321814号公報
甲第6号証の1:韓国意匠登録第30-0399693号公報
甲第6号証の2:韓国意匠登録第30-0399693号公報の翻訳文
甲第7号証の1:台湾実用新案公報M258730号公報
甲第7号証の2:台湾実用新案公報M258730号公報の翻訳文
甲第8号証:登録実用新案第3109896号公報
甲第9号証の1:韓国デザイン審査基準
甲第9号証の2:韓国デザイン審査基準の翻訳文

3 請求の理由の要点
請求の理由は、請求人の主張の全趣旨を踏まえ、その要点は以下のとおりである。

(1)本件特許発明1ないし5は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明、及び甲第4号証ないし甲第7号証のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)本件特許発明6及び7は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明、甲第4号証ないし甲第7号証のいずれかに記載された発明、及び甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)先の無効審判の審決(以下、「先の審決」ということがある。)が、1つの相違点(相違点2)のみを判断しており、先の審決の「1つの相違点(相違点2)」に関する証拠と、本件無効審判における証拠とが共通していたとしても、先の審決における他の相違点(相違点1)に関する証拠と、本件無効審判における証拠とは異なるものであるから、本件無効審判請求は同一の証拠に基づく審判請求ではなく、特許法第167条に違反するものではない。(請求人弁駁書第2ページ、請求人回答書(2)第1ページ)

第5 被請求人の主張
1 要点
これに対し、被請求人は、概略以下の理由に基づき、本件審判は、特許法第167条の規定により審判請求することができないものであるとして、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。

2 主張の概要
被請求人の主張の概要は、以下のとおりである。

(1)本件無効審判において請求人が主張する無効理由は、本件特許発明1ないし7が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるという点で先の審決と同じ無効理由である。(答弁書第5ページ中段付近)

(2)証拠については、先の審決と本件無効審判とは、同一の「主引用例」(特開2005-66304号公報)に記載の発明に基づいて本件特許発明1等の容易想到性を主張するものであり、また先の審決は容易想到ではないと判断した「相違点2」(審決注:本件無効審判における相違点1-2が対応する。)について、本件無効審判では先の審決で使用された証拠と同一の証拠を用いている。
本件無効審判における相違点1-1に使用する証拠(甲第2号証、甲第3号証)は、先の審決では用いられていないが、そもそも先の審決では相違点1(審決注:本件審判における相違点1-1が対応する。)は、相違点2の容易想到性がないと判断したことを理由に判断されていない。
審判請求人は、先の審決において審決の判断に不服があれば、審決取消訴訟を提起して、同審決の判断の妥当性を争うことができたところ、審判請求人は先の審決に対しては審取訴訟を提起することなく、同審決は確定した。にもかかわらず、本件無効審判にて、先の審決が判断した相違点2に対して、同一の証拠に基づいて再び容易想到性を主張することは、確定した先の審決を蒸し返すこととなり、特許無効審判の一回的紛争解決を図るという特許法第167条の趣旨に反するものであることは明らかであり、本件無効審判は、先の審決と同一の事実及び同一の証拠に基づいて請求したものである。(答弁書第15ページ中段付近?第17ページ下段付近)

第6 一事不再理についての当審の判断

1 特許法第167条の趣旨及び解釈について
特許法第167条は、特許無効審判の審決が確定したときは、当事者及び参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない旨規定している。同条の趣旨は、排他的独占的権利である特許権(同法第68条)の有効性について複数の異なる判断が下されるという事態及び紛争の蒸し返しが生じないように特許無効審判の一回的紛争解決を図るために、当事者等に対して一事不再理効を及ぼすものと解される。
先の特許無効審判の当事者等は、同審判手続において無効理由の存否につき攻撃防御をし、また、特許無効審判の審決の取消訴訟が提起された場合には、同訴訟手続において当該審決の取消事由の存否につき攻撃防御をする機会を与えられていたのであるから、「同一の事実及び同一の証拠」について狭義に解するのは、紛争の蒸し返し防止の観点から相当ではない。
特に、平成23年法律第63号による特許法改正により、同法第167条の第三者効が廃止され、一事不再理効の及ぶ範囲が先の審判の手続に関与して主張立証を尽くすことができた当事者及び参加人に限定されたのであるから、第167条における「同一の事実及び同一の証拠」の意義については、特許無効審判の一回的紛争解決を図るという趣旨をより重視して解するのが相当である。(知的財産高等裁判所平成27年(行ケ)第10260号参照)

2 先の審決の理由の概要
先の無効審判における請求人の主張及び審決の理由の概要は、以下のとおりである。
(1)先の無効審判における請求人の証拠方法
先の無効審判において請求人が提出した証拠方法のうち、甲第1号証ないし甲第9号証は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2005-66304号公報
(以下、本件無効審判における証拠方法と区別するため、被請求人の表記に倣って「前甲1」などということがある。また、本件無効審判における証拠方法を、被請求人の表記に倣って「本甲1」などということがある。)
甲第2号証:特開2002-65867号公報
甲第3号証:特開昭60-2207号公報
甲第4号証:特開昭61-73649号公報
甲第5号証:特開平4-231957号公報
甲第6号証:特開2004-321814号公報
甲第7号証の1:韓国意匠登録第30-0399693号公報
甲第7号証の2:韓国意匠登録第30-0399693号公報の翻訳文
甲第8号証の1:台湾実用新案公報M258730号公報
甲第8号証の2:台湾実用新案公報M258730号公報の翻訳文
甲第9号証:登録実用新案第3109896号公報

(2)先の無効審判における請求人の請求の理由
先の無効審判における請求人の請求の理由は概略以下のとおりである(先の審決の第2「請求人の主張」欄参照)。

ア 無効理由1
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、前甲1に記載された発明、前甲2ないし前甲4に記載された周知技術、及び前甲5、前甲6、前甲7の1、又は前甲8の1に記載された発明のいずれかの発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

イ 無効理由2
本件特許の請求項6及び7に係る発明は、前甲1に記載された発明、前甲2ないし前甲4に記載された周知技術、前甲5、前甲6、前甲7の1、又は前甲8の1に記載された発明のいずれかの発明、及び前甲9に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(3)先の審決の理由の概要
(3-1)本件特許発明1
ア 主引用例との対比
先の審決は、本件特許発明1と主引用例たる前甲1に記載された発明と一致点及び相違点を以下のように認定した(先の審決の第4の2(2)(2-1)「対比」欄参照)。

(ア)一致点
「柄と、
前記柄の一端に導体によって形成された一対のローラと、
生成された電力が前記ローラに通電される電池と、を備えた
肌に適用するローラ。」

(イ)相違点
<相違点1>
ローラに通電される電力に関して、本件特許発明1では、「太陽電池」によって生成するのに対し、前甲1に記載された発明では、「乾電池400」によって生成する点。
<相違点2>
一対のローラと柄の関係に関して、本件特許発明1では、「ローラの回転軸が、柄の長軸方向の中心線とそれぞれ鋭角に設けられ、一対のローラの回転軸のなす角が鈍角に設けられ」ているのに対し、前甲1に記載された発明では、「ローラ100,100の回転軸である横軸部210が、把持部300の中心線とそれぞれ直角に設けられ、一対のローラ100,100の回転軸である横軸部210のなす角が180度である」点。
<相違点3>
肌に適用するローラが、本件特許発明1は「美肌ローラ」であるのに対し、前甲1に記載された発明は「マッサージ器」である点。

イ 相違点についての判断
先の審決は、前甲1に記載された発明において、前甲5、前甲6、前甲7の1、及び前甲8の1いずれの記載された事項を適用する動機付けがあるとはいえないし、適用することに阻害要因があると認められるとして、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を前甲1並びに前甲5、前甲6、前甲7の1、及び前甲8の1に記載された発明から想到することが容易になし得たとはいえないとした。
そして先の審決は、相違点2を容易想到とすることはできないので、相違点1及び相違点3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、請求人の提出した証拠に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないとした。

(3-2)本件特許発明2
先の審決は、本件特許発明2については、本件特許発明1についての相違点と同様の相違点1ないし相違点3において、前甲1に記載された発明と相違するとした。
そして先の審決は、相違点2については本件特許発明1における検討と同様、前甲1に記載された発明等から容易に想到し得えないとし、したがって、相違点1及び相違点3について検討するまでもなく、本件特許発明2は、請求人の提出した証拠に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないとした。

(3-3)本件特許発明3?5
先の審決は、本件特許発明3?5は、本件特許発明1又は本件特許発明2の構成をその構成の一部とするものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではないとした。

(3-4)本件特許発明6及び7(無効理由2)
先の審決は、本件特許発明6及び7は、本件特許発明1?5をその構成の一部とするものであるから、本件特許発明1等と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではないとした。

3 当審の判断
(1)本件特許発明1等について
ア 先の無効審判と本件無効審判における請求人(当事者)は、いずれもベノア・ジャパン株式会社であり、「当事者」の同一性は明らかである。
この点は、本件特許発明2ないし7についても同様である。

イ 次に、先の審決と本件無効審判とは、同一の主引用例たる前甲1及び本甲1(特開2005-66304号公報)に記載の発明に基づいて本件特許発明1等の容易想到性を主張するものである。

ウ そして、本件無効審判において請求人は、先の審決と同様、本件特許発明1と本甲1記載の発明とは、同様の相違点1ないし3において相違するとする(本件無効審判に関しては請求書第31ページ中段付近参照)ところ、そのうち、相違点2を容易想到とする証拠は、以下のとおり本件無効審判と先の審決とで全く同一である。

<先の審決における相違点2に関する証拠>
前甲5:特開平4-231957号公報
前甲6:特開2004-321814号公報
前甲7の1:韓国意匠登録第30-0399693号公報
前甲8の1:台湾実用新案公報M258730号公報

<本件無効審判における相違点2(請求書においては「相違点1-2」)に関する証拠>
本甲4:特開平4-231957号公報
本甲5:特開2004-321814号公報
本甲6の1:韓国意匠登録第30-0399693号公報
本甲7の1:台湾実用新案公報M258730号公報

エ 上記2(3)にて指摘したように、確定した先の審決は、相違点2を上記証拠(前甲5ないし前甲8の1)から容易想到とすることはできないので、相違点1及び相違点3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものではないとしたものである。そして、請求人は先の審決に対し審決取消訴訟で争うことができたにもかかわらず、訴えを提起することなく先の審決は確定している。

オ 本件無効審判は、確定した先の審決と同一の主引用例に基づいて本件特許発明1等の容易想到性を主張するものであり(上記イ)、主引用例以外の証拠についても、先の審決において唯一判断が示された相違点2については、上記ウにて示したとおり前甲5ないし前甲8の1と全く同一の本甲4ないし本甲7の1に基づいて、容易想到性を主張している。
そうすると、本件無効審判において実質的な容易想到性の判断をするとなれば、再び、相違点2について同一の事実及び同一の証拠に基づいて容易想到性の判断をすることとなり、同じ請求人による同一争点の蒸し返しと言わざるを得ない。

カ もっとも、先の審決において判断されていない相違点1に関する周知技術の存在を裏付ける証拠は、上記前甲2(特開2002-65867号公報)、前甲3(特開昭60-2207号公報)、及び前甲4(特開昭61-73649号公報)であるところ、本件無効審判において請求人は、同様の相違点1(相違点1-1)に関し、同様の技術事項を裏付ける証拠を、本甲2(特開平2-131779号公報)及び本甲3(特開平3-92175号公報)に差し替えている。

キ しかしながら、上記「1 特許法第167条の趣旨及び解釈について」にて示したように、特許法第167条における「同一の事実及び同一の証拠」の意義について、特許無効審判の一回的紛争解決を図るという趣旨をより重視して解するのが相当であることを踏まえれば、確定した先の審決において、共通の相違点2について、先の審決と本件無効審判請求における共通証拠たる前甲5ないし前甲8の1から容易想到とすることはできないとされ、本件無効審判請求においても、該相違点2について、先の審決と同一の事実及び同一の証拠に基づく主張がなされている以上、これとは別の相違点1について新たに判断が示され、争点化することは、その理由がなく、通常考えられない。
よって、先の審決において判断されていない相違点1に関する証拠が異なるものであるとしても、実質的に見れば、先の審決と本件無効審判の請求とが「同一の事実及び同一の証拠」に基づいてなされたと解するのが、上記1の特許法第167条の趣旨にかなうものというべきである。

ク 以上を総合すると、本件無効審判は確定した先の審決と主引用例が同一であり、主引用例以外の先の審決で判断していない相違点に関する周知技術及びそれと同様の技術事項を裏付ける証拠の一部を差し替えたに過ぎないこと、請求人は先の審決に対し訴えを提起することができたにもかかわらず先の審決を確定させたものであること、及び上記特許法第167条の趣旨を踏まえ、本件無効審判における本件特許発明1に対する請求は、同一請求人が、先の審決と同一の事実及び同一の証拠に基づいて請求したものというのが相当である。

ケ また、仮に相違点1に関する証拠差し換えの点について検討したとしても、請求人は先の請求において、「生体に電流を流す際に、太陽電池を用いること」なる技術事項が周知技術であると主張し、前甲2?4はそれを裏付けるために提示されたものであり、本件無効審判請求においても同様の技術事項を示す証拠として本甲2?3を差し替えて提示しているのであるから、周知技術との明示的な主張の有無に関わらず、信義則(禁反言の原則)に照らせば、該本甲2?3もまた周知技術を裏付ける証拠といえる。一方、周知技術については証拠に基づく認定を要しない(最判昭54(行ツ)134号)。よって、相違点1に関し、周知技術の裏付けとなる証拠を差し替えた点は、認定や提示を要しない周知技術を裏付ける証拠についてのことであるから、本件無効審判請求が同一の事実及び同一の証拠に基づいて請求されたとの判断に影響を与えない。

(2)本件特許発明2について
先の審決は、本件特許発明2について、本件特許発明1と同様の相違点2を挙げ、本件特許発明1における検討と同様、前甲1等に記載された発明から容易に想到し得えないとしたものである(上記2(3)(3-2))。そして、本件無効審判においても、相違点2を容易想到とする証拠は、本件無効審判と先の審決とで全く同一である。したがって、本件特許発明1における検討と同様、本件特許発明2に対する請求も、先の審決と同一の事実及び同一の証拠に基づいて請求したものというのが相当である。

(3)本件特許発明3?7について
本件特許発明3?7の容易想到性について、本件無効審判においても、本件特許発明1及び2が容易想到であることを前提としている点で、先の審決と同様である。
したがって、本件特許発明1及び2における検討と同様、本件特許発明3?7に対する請求も、先の審決と同一の事実及び同一の証拠に基づいて請求したものというのが相当である。

第7 まとめ
したがって、本件審判請求は、特許法第167条の規定に違反してされた不適法な審判請求であるから、特許法第135条の規定により却下すべきものである。
よって結論の通り審決する。
審判費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条を適用して、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-19 
結審通知日 2018-07-23 
審決日 2018-08-08 
出願番号 特願2007-324077(P2007-324077)
審決分類 P 1 113・ 07- X (A45D)
最終処分 審決却下  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 瀬戸 康平
長屋 陽二郎
登録日 2013-03-29 
登録番号 特許第5230864号(P5230864)
発明の名称 美肌ローラ  
代理人 小林 徳夫  
代理人 冨宅 恵  
代理人 ▲高▼山 嘉成  

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