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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02K
審判 一部申し立て 2項進歩性  H02K
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H02K
管理番号 1344820
異議申立番号 異議2017-700874  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-14 
確定日 2018-08-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6095849号発明「高調波電流補償装置及び空気調和システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6095849号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6095849号の請求項1及び8に係る特許を維持する。 特許第6095849号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6095849号の請求項1?8に係る特許についての出願は、2014年3月31日を国際出願日とする出願であって、平成29年2月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年9月14日付けで特許異議申立人小寺吉衛により請求項1、2及び8に対して特許異議の申立てがされ、平成30年1月30日付けで取消理由が通知され、平成30年4月6日付けで意見書の提出及び訂正の請求があり、特許異議申立人小寺吉衛から平成30年7月6日付けで意見書が提出されたものである。

第2.訂正の適否
1.訂正の内容
平成30年4月6日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項1?6のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、前記系統電源から前記負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、前記負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、供給された前記補償電流を検出する補償電流検出手段と、前記負荷電流検出手段で検出された前記負荷電流に含まれる前記高調波成分と、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流と、に基づいて、前記補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、前記制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、を備えた高調波電流補償装置。」と記載されているのを、「系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、前記系統電源から前記負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、前記負荷は、供給される前記補償電流の値が予め定められた値を超えた場合、運転を停止し、前記負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、供給された前記補償電流を検出する補償電流検出手段と、前記負荷電流検出手段で検出された前記負荷電流に含まれる前記高調波成分と、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流と、に基づいて、前記補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、前記制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、を備え、前記リミッタは、前記制御量演算手段で演算した制御量を予め設定された設定値以下に抑制し、前記設定値は、前記設定値に抑制された制御量によって生成された制御信号に基づく補償電流の値が、前記負荷が運転を停止する値である過電流レベルを超えないように設定されている高調波電流補償装置。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「前記補償電流と、当該補償電流に対応する位相と、を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている前記補償電流に基づいて、前記補償電流が予め設定された設定値を超えるときの位相を予測する予測手段と、をさらに備え、前記リミッタは、前記予測手段で予測された位相を基準として予め設定された範囲内にある位相に対応する前記補償電流の制御量を抑制する請求項1又は2に記載の高調波電流補償装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、前記系統電源から前記負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、前記負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、供給された前記補償電流を検出する補償電流検出手段と、前記負荷電流検出手段で検出された前記負荷電流に含まれる前記高調波成分と、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流と、に基づいて、前記補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、前記制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、前記補償電流と、当該補償電流に対応する位相と、を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている前記補償電流に基づいて、前記補償電流が予め設定された設定値を超えるときの位相を予測する予測手段と、を備え、前記リミッタは、前記予測手段で予測された位相を基準として予め設定された範囲内にある位相に対応する前記補償電流の制御量を抑制する高調波電流補償装置。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、「前記負荷電流に含まれる前記高調波成分の振幅を抑制する抑制演算手段をさらに備え、前記補償電流を抑制させるか否かが判定される抑制判定値が、前記負荷の運転を停止させるか否かが判定される電流閾値未満に設定されてあって、前記系統電源は、三相交流電源であって、前記抑制演算手段は、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流のうち、少なくとも一相の前記補償電流が予め設定された抑制判定値に達している場合、前記負荷電流の前記高調波成分の指令値を抑制する請求項1又は2に記載の高調波電流補償装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、前記系統電源から前記負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、前記負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、供給された前記補償電流を検出する補償電流検出手段と、前記負荷電流検出手段で検出された前記負荷電流に含まれる前記高調波成分と、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流と、に基づいて、前記補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、前記制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、前記負荷電流に含まれる前記高調波成分の振幅を抑制する抑制演算手段と、を備え、前記補償電流を抑制させるか否かが判定される抑制判定値が、前記負荷の運転を停止させるか否かが判定される電流閾値未満に設定されてあって、前記系統電源は、三相交流電源であって、前記抑制演算手段は、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流のうち、少なくとも一相の前記補償電流が予め設定された抑制判定値に達している場合、前記負荷電流の前記高調波成分の指令値を抑制する高調波電流補償装置。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?7の何れか一項に記載の高調波電流補償装置」と記載されているのを、「請求項1、3?7の何れか一項に記載の高調波電流補償装置」に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の段落[0010]に「本発明に係る高調波電流補償装置は、系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、系統電源から負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、供給された補償電流を検出する補償電流検出手段と、負荷電流検出手段で検出された負荷電流に含まれる高調波成分と、補償電流検出手段で検出された補償電流と、に基づいて、補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、備えたものである。」と記載されているのを、「本発明に係る高調波電流補償装置は、系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、系統電源から負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、負荷は、供給される補償電流の値が予め定められた値を超えた場合、運転を停止し、負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、供給された補償電流を検出する補償電流検出手段と、負荷電流検出手段で検出された負荷電流に含まれる高調波成分と、補償電流検出手段で検出された補償電流と、に基づいて、補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、備え、前記リミッタは、制御量演算手段で演算した制御量を予め設定された設定値以下に抑制し、設定値は、設定値に抑制された制御量によって生成された制御信号に基づく補償電流の値が、負荷が運転を停止する値である過電流レベルを超えないように設定されている。」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
請求項1に「前記負荷は、供給される前記補償電流の値が予め定められた値を超えた場合、運転を停止し」という事項を付加することにより、訂正前の請求項1に記載された「負荷」を限定し、更に、請求項1に、訂正前の請求項2に記載された「前記リミッタは、前記制御量演算手段で演算した制御量を予め設定された設定値以下に抑制し、前記設定値は、前記設定値に抑制された制御量によって生成された制御信号に基づく補償電流の値が前記負荷の運転を停止する電流の値を超えないように設定されている」における「前記負荷の運転を停止する電流の値」との事項を「前記負荷が運転を停止する値である過電流レベル」に訂正した上で付加することにより、訂正前の請求項1に記載された「リミッタ」の構成を限定していることから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明の「仮に、補償電流Iaが過電流レベルを超えた場合、絶縁破壊等の電気回路の損傷を回避するため、高調波発生負荷13は運転を停止する。」(段落【0032】)との記載からみて、過電流レベルは補償電流Iaと比較されるため予め定められていることが明らかであることから、過電流レベルは予め定められた値であるといえるので、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、負荷は、補償電流の値が予め定められた値(過電流レベル)を超えた場合、運転を停止することが記載されているといえる。また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の「リミッタ49は、補償電流Iaが補償電流Iaの過電流レベルを超えないように制御量を抑制する。」(段落【0032】)及び「なお、リミッタ49は、制御量を予め設定された設定値、例えば、上記で説明したリミット値に抑制する。」(段落【0035】)との記載から、リミッタ49の設定値は、補償電流が過電流レベル(予め定められた値)を超えないように設定されていることが記載されている。したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことから、新規事項の追加にも該当しない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は請求項2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1又は請求項2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項8が請求項1?7の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとする訂正であることから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項6
訂正事項6は、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7)一群の請求項について
訂正前の請求項1?8は、請求項2?8のそれぞれが請求項1を引用している。訂正事項1?5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に規定する一群の請求項に対して請求されたものであり、訂正事項6は、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に規定する一群の請求項に対して請求されたものである。

3.小括
したがって、訂正請求による訂正事項1ないし6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.本件特許発明
特許第6095849号の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」?「本件特許発明8」という)は、前記訂正請求により訂正された訂正後の請求項1?8に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、前記系統電源から前記負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、
前記負荷は、供給される前記補償電流の値が予め定められた値を超えた場合、運転を停止し、
前記負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、
供給された前記補償電流を検出する補償電流検出手段と、
前記負荷電流検出手段で検出された前記負荷電流に含まれる前記高調波成分と、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流と、に基づいて、前記補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、
前記制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、
を備え、
前記リミッタは、
前記制御量演算手段で演算した制御量を予め設定された設定値以下に抑制し、
前記設定値は、
前記設定値に抑制された制御量によって生成された制御信号に基づく補償電流の値が、前記負荷が運転を停止する値である過電流レベルを超えないように設定されている
高調波電流補償装置。

【請求項2】
(削除)

【請求項3】
系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、前記系統電源から前記負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、
前記負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、
供給された前記補償電流を検出する補償電流検出手段と、
前記負荷電流検出手段で検出された前記負荷電流に含まれる前記高調波成分と、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流と、に基づいて、前記補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、
前記制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、
前記補償電流と、当該補償電流に対応する位相と、を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記補償電流に基づいて、前記補償電流が予め設定された設定値を超えるときの位相を予測する予測手段と、
を備え、
前記リミッタは、
前記予測手段で予測された位相を基準として予め設定された範囲内にある位相に対応する前記補償電流の制御量を抑制する
高調波電流補償装置。

【請求項4】
前記予測手段は、
前記系統電源の1周期分の前記補償電流の制御量に基づいて、前記補償電流の制御量が予め設定された設定値を超えるときの位相を予測する
請求項3に記載の高調波電流補償装置。

【請求項5】
系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、前記系統電源から前記負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、
前記負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、
供給された前記補償電流を検出する補償電流検出手段と、
前記負荷電流検出手段で検出された前記負荷電流に含まれる前記高調波成分と、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流と、に基づいて、前記補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、
前記制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、
前記負荷電流に含まれる前記高調波成分の振幅を抑制する抑制演算手段と、
を備え、
前記補償電流を抑制させるか否かが判定される抑制判定値が、前記負荷の運転を停止させるか否かが判定される電流閾値未満に設定されてあって、
前記系統電源は、
三相交流電源であって、
前記抑制演算手段は、
前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流のうち、少なくとも一相の前記補償電流が予め設定された抑制判定値に達している場合、前記負荷電流の前記高調波成分の指令値を抑制する
高調波電流補償装置。

【請求項6】
前記系統電源の電源周期と、
前記系統電源の電源周期に含まれる前記補償電流の制御量を演算する制御周期と、を有し、
前記抑制演算手段は、
前記制御周期ごとに、前記補償電流と、前記抑制判定値と、に基づいて、前記負荷電流の前記高調波成分の指令値を抑制する
請求項5に記載の高調波電流補償装置。

【請求項7】
前記抑制判定値を設定する抑制判定レベル設定手段をさらに備え、
前記抑制演算手段は、
前記抑制判定レベル設定手段で設定された前記抑制判定値に基づいて、前記負荷電流の前記高調波成分の指令値を抑制する
請求項5又は6に記載の高調波電流補償装置。

【請求項8】
請求項1、3?7の何れか一項に記載の高調波電流補償装置と、
前記系統電源と、
前記系統電源に接続され、前記系統電源から供給される電流で駆動する冷媒回路と、
を備えた空気調和システム。」

2.取消理由の概要
当審において、訂正前の請求項1、2及び8に係る特許に対して平成30年1月30日付けの取消理由通知により特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

ア.請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
イ.請求項8に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び以下の引用文献2?4に記載されている技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、取り消されるべきものである。
ウ.請求項2に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

<引用文献等一覧>
1.篠原 勝次,ほか5名,”風力発電システムへのPWMインバータ付加による高調波電流・無効電流補償”,pp.1173-1181,[online],2005年3月1日公開,電気学会発行,JST掲載,<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejias/124/12/124_12_1173/_article/-char/ja/>(甲第1号証)
2.特許第5058314号公報(甲第2号証)
3.特許第5438037号公報(甲第3号証)
4.特許第5253523号公報(甲第4号証)

3.引用文献の記載
(1)引用文献1(甲第1号証)
取消理由で通知した、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。)。

ア.「そこで,交流電力調整器を用いた風力発電システムにおいてPWMインバータを並列に付加して系統投入時の高調波電流・無効電力補償および定常時の無効電力補償を行うことを提案し,シミュレーションおよび実験によってその有効性を示したので報告する^((2)(3))。」(1173頁右欄第5?10行)

イ.「<2・1> 主回路構成 図1に風力発電システムの実験回路構成を示す。主回路は電源,交流電力調整器,誘導発電機,静止レオナード,直流機および,PWMインバータからなる。」(1174頁左欄第6?9行)

ウ.「<2・2> PWMインバータ制御回路構成^((4)) 実験におけるPWMインバータ制御回路は全てアナログで構成している。補償切替SWは高調波電流補償時にはi_(q0)側に,高調波電流・無効電力補償時にはi^(*)_(q)側に接続する。本節では高調波電流補償時のi_(q0)側に接続している場合について説明する。補償電流指令i^(*)_(CU)(一相分のみ示す)を得るためには高調波を含む電流i_(LU)の基本波電流信号としての系統電流指令i^(*)_(GU)を作成する必要がある。負荷電流を(1)式を用いて有効分電流i_(p)および無効分電流i_(q)に変換する。・・・(中略)・・・高調波成分をカットするために,座標変換したi_(p),i_(q)をカットオフ周波数19.2Hz,2次のローパスフィルタ(LPF)に通す。得られたi_(p0),i_(q0)を(2)式を用いて再び三相座標に変換することにより系統電流指令i^(*)_(GU)を得る。・・・(中略)・・・このi^(*)_(GU)からi_(LU)を差し引くことにより補償電流指令i^(*)_(CU)が得られる。さらに,この指令値i^(*)_(CU)と実際値i_(CU)の差を比例制御し,その出力を三角波と比較することでPWMゲート信号が得られる。」(1174頁右欄第3行?1175頁左欄第5行)

エ.「図3において,t_(1)=25msから交流電力調整器によるソフトスタートが開始され,誘導機電圧v_(LUV)は緩やかに上昇し,t_(2)=390msでソフトスタートが完了している。これによって誘導機電流i_(LU)は最大値約7Aと突入電流が抑制されているが高調波電流を含む。PWMインバータから出力される補償電流i_(CU)は指令値i^(*)_(CU)に対して電源からフィルタに流れる交流電流(振幅約1A)を含むがほぼ追従しており,このi_(CU)がi_(LU)に加わることにより系統電流i_(GU)は突入電流が抑制されると共に高調波電流が補償されていることが分かる。」(1177頁左欄第4?13行)

オ.上記記載事項ア?ウ及び図1から、引用文献1に記載された発明は、系統投入時の高調波電流・無効電力補償を行うための装置を備えており、前記装置は、電源に接続された交流電力調整器に並列に接続されていることが理解できる。

カ.記載事項エ、オ及び図1から、系統投入時の高調波電流・無効電力補償を行うための装置は、補償電流i_(CU)が誘導機電流i_(LU)に加わることで、誘導機電流i_(LU)に含まれる高調波電流が補償されることが理解できる。

キ.記載事項ウ?オ及び図1から、系統投入時の高調波電流・無効電力補償を行うための装置は、誘導機電流i_(LU)を検出するload current detectorと、PWMインバータから出力される補償電流i_(CU)を検出するcompensate current detectorと、誘導機電流i_(LU)の基本波電流信号としての系統電流指令i^(*)_(GU)から 前記load current detectorで検出された誘導機電流i_(LU)を差し引くことにより得られた補償電流指令i^(*)_(CU)と、前記compensate current detectorで検出された実際値i^(*)_(CU)との差を比例制御するための演算を行うKiと、を備えていることが理解できる。

ク.図1から、系統投入時の高調波電流・無効電力補償を行うための装置は、Kiからの出力を抑制するリミッタ、を備えることが理解できる。

そうすると、これらの記載からみて、引用文献1には、本件特許の請求項1の記載に倣って整理すれば、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「電源に接続された交流電力調整器に並列に接続され、補償電流i_(CU)を加えることで、誘導機電流i_(LU)に含まれる高調波電流を補償する系統投入時の高調波電流・無効電力補償を行うための装置であって、
前記誘導機電流i_(LU)を検出するload current detectorと、
PWMインバータから出力される補償電流i_(CU)を検出するcompensate current detectorと、
誘導機電流i_(LU)の基本波電流信号としての系統電流指令i^(*)_(GU)から 前記load current detectorで検出された誘導機電流i_(LU)を差し引くことにより得られた補償電流指令i^(*)_(CU)と、前記compensate current detectorで検出された実際値i^(*)_(CU)との差を比例制御するための演算を行うKiと、
前記Kiの出力を抑制するリミッタと、
を備えた系統投入時の高調波電流・無効電力補償を行うための装置。」

(2)引用文献2(甲第2号証)
取消理由で通知した、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献2には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。)。

ア.「【0013】
実施の形態1.
(高調波抑制装置7の構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る高調波抑制装置7及び電力変換装置6の回路ブロック図である。
図1で示されるように、三相交流電源1から3本の出力線が延びており、交流電圧を直流電圧に整流する整流器2に接続されている。整流器2の出力側は、リアクター3を介して、整流器2が出力する直流電圧を平滑する平滑コンデンサー4が並列接続されている。その平滑コンデンサー4の両端には、負荷5が並列接続されている。上記の整流器2、リアクター3及び平滑コンデンサー4によって電力変換装置6が構成されている。
【0014】
この電力変換装置6は、三相交流電源1に対して高調波電流を流すため、その高調波電流を抑制するための高調波抑制装置7が、三相交流電源1と電力変換装置6とを接続する3本の出力線に接続されている。以下、高調波抑制装置7の構成について詳述する。前述の三相交流電源1から延びている3本の出力線のうちの第1の出力線(R相)は、リアクターであるACL11aを介して、スイッチング素子12rとスイッチング素子12xとの直列回路におけるその接続線に接続されている(この場合に接続点を以下、中点15aという)。また、上記の3本の出力線のうちの第2の出力線(S相)は、リアクターであるACL11bを介して、スイッチング素子12sとスイッチング素子12yとの直列回路におけるその接続線に接続されている(この場合に接続点を以下、中点15bという)。そして、上記の3本の出力線のうちの最後の出力線(T相)は、リアクターであるACL11cを介して、スイッチング素子12tとスイッチング素子12zとの直列回路におけるその接続線に接続されている(この場合に接続点を以下、中点15cという)。上記のスイッチング素子12rとスイッチング素子12xとの直列回路、スイッチング素子12sとスイッチング素子12yとの直列回路、及び、スイッチング素子12tとスイッチング素子12zとの直列回路(以下、単にアームという)は、互いに並列に接続されており、さらに、これらのアームにはコンデンサー13が並列接続されている。
なお、上記のACL11a?11cは、本発明の「リアクター」に相当する。」

イ.「【0017】
また、ACL11aと中点15aとの間には、その流れる電流を検出する電流検出器16aが設置され、また、ACL11cと中点15cとの間には、その流れる電流を検出する電流検出器16cが設置されている。この電流検出器16a及び16cは、制御装置20に接続されており、検出した電流の電流情報を制御装置20に送信する。
【0018】
以上のように、高調波抑制装置7は、ACL11a?11c、スイッチング素子12r?12t及び12x?12z、コンデンサー13、駆動回路14r?14t及び14x?14z、電流検出器16a及び16c、並びに、制御装置20によって構成されている。」

ウ.「【0021】
(高調波抑制装置7の高調波抑制動作中におけるブートストラップコンデンサー22への充電動作)
図3は、図1で示される回路の各部電流波形を示す図である。このうち、図3(a)は、図1で示されるような電力変換装置6に接続された負荷5に流れる負荷電流の波形を示す図であり、図3(b)は、図1で示される高調波抑制装置7から流れ、三相交流電源1に流れる系統電流の高調波を抑制するためのAF(Active Filter、アクティブフィルター)電流の波形を示す図であり、そして、図3(c)は、高調波抑制装置7から流れ出たAF電流によって高調波が抑制された後の三相交流電源1の系統電流の波形を示す図である。
図3(c)で示されるように、高調波抑制装置7によるAF電流によって高調波が抑制された系統電流は、歪みのない正弦波電流となる。この高調波抑制装置7によって、図3(b)で示されるAF電流を流す制御動作については公知技術である。」

エ.「【0047】
実施の形態3.
本実施の形態においては、実施の形態1又は実施の形態2に係る高調波抑制装置7及び電力変換装置6を備えた空気調和機について説明する。
【0048】
(空気調和機36の構成)
図5は、本発明の実施の形態3に係る空気調和機36の全体構成図であり、図6は、同空気調和機36の外観斜視図である。
図5で示されるように、図1で示される負荷5として、インバーター30、及び、そのインバーター30の高周波電流によって駆動する圧縮機31が接続されている。この圧縮機31から、冷媒配管によって、凝縮器32、膨張装置33及び蒸発器34の順に接続され、冷凍サイクル部35を構成している。
【0049】
本実施の形態に係る空気調和機36は、少なくとも、実施の形態1又は実施の形態2に係る電力変換装置6及び高調波抑制装置7、インバーター30、並びに冷凍サイクル部35によって構成されている。
【0050】
冷凍サイクル部35において、圧縮機31によって圧縮された高温高圧となったガス冷媒は、凝縮器32において熱交換が実施され放熱し凝縮する。凝縮された冷媒は、膨張装置33によって減圧及び膨張され、蒸発器34によって熱交換が実施され吸熱し気化する。気化したガス冷媒は、再び圧縮機31において圧縮される。」

オ.記載事項ア及び図1より、高調波抑制装置7は、三相交流電源1に接続された電力変換装置6に並列に接続されていることが理解できる。

カ.記載事項ウ及び図3より、高調波抑制装置7は、高調波抑制装置7から流れ出たAF電流によって、三相交流電源1に流れる系統電流の高調波を抑制することが理解できる。

キ.記載事項ア?ウ及び図1より、高調波抑制装置7から流れ出たAF電流を検出する電流検出器16a及び電流検出器16bを備えることが理解できる。

ク.記載事項エ及び図5より、空気調和機36が、高調波抑制装置7と、三相交流電源1と、三相交流電源1に接続されたインバーター30の高周波電流によって駆動する冷凍サイクル部35とを備えることが理解できる。

そうすると、これらの記載からみて、引用文献2には、本件特許の請求項1の記載に倣って整理すれば、次の発明が記載されているといえる。
「三相交流電源1に接続された電力変換装置6に並列に接続され、AF電流を流すことで、三相交流電源1に流れる系統電流の高調波を抑制する高調波抑制装置7であって、
高調波抑制装置7から流れ出たAF電流を検出する電流検出器16a及び電流検出器16bと、
を備えた高調波抑制装置7。」

また、引用文献2からは、以下の事項を把握することができる。
「高調波抑制装置7と、
三相交流電源1と、
三相交流電源1に接続されたインバーター30の高周波電流によって駆動する冷凍サイクル部35と、
を備えた空気調和機36。」

(3)引用文献3(甲第3号証)
引用文献3からは、以下の事項を把握することができる(特に、段落【0001】、段落【0009】、段落【0011】、段落【0025】、図1等参照。)。
「負荷が発生する電源高調波を抑制するためのアクティブフィルタ装置において、
交流電源としての系統電源1に電源高調波発生負荷である負荷2が接続され、アクティブフィルタ装置3は、系統電源1と負荷2との間で負荷2と並列に接続され、負荷2に入力される負荷電流Ifを電流検出器4にて検出し、負荷電流Ifに含まれる高調波成分を相殺する補償出力としての高調波補償電流Ia(以下、単に補償電流Iaと称す)を発生し、
アクティブフィルタ装置3は、検出された負荷電流Ifから高調波成分を抽出し該高調波成分を相殺する補償電流の指令値Ia*を演算する補償出力指令演算手段14と、補償電流指令値Ia*と補償電流検出器8にて検出された補償電流Iaとの誤差量ΔIaを演算する誤差量演算手段15と、誤差量ΔIaを入力して誤差量積分値ΔIaiを出力する誤差量積分手段16と、誤差量積分値ΔIaiと誤差量ΔIaとに基づいて制御量Icnを演算して制御信号生成手段12に出力する制御量演算手段20とを備え、
前記負荷2をインバータを搭載した空気調和機とすること。」

(3)引用文献4(甲第4号証)
引用文献4からは、以下の事項を把握することができる(特に、段落【0001】、段落【0014】、段落【0067】及び図1等参照。)。
「交流電源に流れる電流の高調波成分を抑制する高調波電流補償装置において、
高調波電流補償システムは、交流電源1、交流電源1に電力線を介して接続され、交流電源1から供給される交流電力を直流電力に変換した後、負荷5に直流電力を供給する電力変換装置6、および電力変換装置6と並列に交流電源1に接続され、電力変換装置6にて発生する高調波電流を補償するアクティブフィルタである高調波電流補償装置7を備え、
高調波電流補償装置は、空気調和機や冷凍機、ヒートポンプ式給湯機、ショーケースなど圧縮器搭載インバータ製品全般に適用可能であること。」

4.判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 特許法第29条第1項第3号について
取消理由通知において、訂正前の請求項1にのみ特許法第29条第1項第3号に関する拒絶理由が通知されており、本件特許発明1は、訂正前の請求項2に記載された事項に実質的に対応する「前記リミッタは、前記制御量演算手段で演算した制御量を予め設定された設定値以下に抑制し、前記設定値は、前記設定値に抑制された制御量によって生成された制御信号に基づく補償電流の値が、前記負荷が運転を停止する値である過電流レベルを超えないように設定されている」という事項を有していて、引用発明1は当該事項を有していないことから、本件特許発明1は引用文献1に記載された発明ではない。

イ 特許法第29条第2項について
(ア)請求項1について
本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1は「前記負荷は、供給される前記補償電流の値が予め定められた値を超えた場合、運転を停止し」及び「前記リミッタは、前記制御量演算手段で演算した制御量を予め設定された設定値以下に抑制し、前記設定値は、前記設定値に抑制された制御量によって生成された制御信号に基づく補償電流の値が、前記負荷が運転を停止する値である過電流レベルを超えないように設定されている」という事項を有しておらず、また、当該事項は、引用文献2?4のいずれにも記載されていないから、本件特許発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものでも
ない。

(イ)請求項8について
a.訂正後の請求項1に記載の高調波電流補償装置を備えた本件特許発明8について
本件特許発明8は、本件発明1を特定するための事項を全て含むものであり、本件発明1と同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものでもない。

b.訂正後の請求項3?4の何れか一項に記載の高調波電流補償装置を備えた本件特許発明8について
本件特許発明3と引用発明1とを対比すると、引用発明1は「前記補償電流と、当該補償電流に対応する位相と、を記憶する記憶手段」、「前記記憶手段に記憶されている前記補償電流に基づいて、前記補償電流が予め設定された設定値を超えるときの位相を予測する予測手段」及び「前記リミッタは、前記予測手段で予測された位相を基準として予め設定された範囲内にある位相に対応する前記補償電流の制御量を抑制する」という事項を有しておらず、また、当該事項は、引用文献2?4のいずれにも記載されていないから、本件特許発明3は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものでもない。そして、本件特許発明8は、本件特許発明3を特定するための事項を全て含むものであることから、本件特許発明3と同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものでもない。

c.訂正後の請求項5?7の何れか一項に記載の高調波電流補償装置を備えた本件特許発明8について
本件特許発明5と引用発明1とを対比すると、引用発明1は「前記負荷電流に含まれる前記高調波成分の振幅を抑制する抑制演算手段をさらに備え、前記補償電流を抑制させるか否かが判定される抑制判定値が、前記負荷の運転を停止させるか否かが判定される電流閾値未満に設定されてあって」及び「前記抑制演算手段は、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流のうち、少なくとも一相の前記補償電流が予め設定された抑制判定値に達している場合、前記負荷電流の前記高調波成分の指令値を抑制する」という事項を有しておらず、また、当該事項は、引用文献2?4のいずれにも記載されていないから、本件特許発明5は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものでもない。そして、本件特許発明8は、本件特許発明5を特定するための事項を全て含むものであることから、本件特許発明5と同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものでもない。

ウ 特許法第36条第6項第2号について
本件特許発明1の「前記設定値は、前記設定値に抑制された制御量によって生成された制御信号に基づく補償電流の値が、前記負荷が運転を停止する値である過電流レベルを超えないように設定されている」との事項に関し、本件特許発明1は「前記負荷は、供給される前記補償電流の値が予め定められた値を超えた場合、運転を停止し」との事項を特定することにより、「設定値」は、補償電流の値が負荷が運転を停止する値である過電流レベル(予め定められた値)を超えないように設定されることが明確となった。
したがって、本件特許発明1は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

エ 特許異議申立人の意見について
(ア)訂正後の請求項1が明確でないことについて
特許異議申立人は、平成30年7月6日付けの意見書において、「・・・補償電流の値が、前記負荷が運転を停止する値である過電流レベルを超えないように設定」では、補償電流の値を具体的にどのように設定すればよいか依然として不明であると主張し、その理由として、特に、負荷が運転を停止する補償電流の上限及び下限(絶対値上限を意味し、以降、閾値Cと表す)を決定することが本件発明の特徴であるところ、この「閾値C」をどのように求めるかは自明ではなく、明細書を参酌しても不明である点を指摘している。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明の「ここで、過電流レベルとは、例えば、図2に示すように、補償電流Iaの上限及び下限である。つまり、過電流レベルとは、補償電流Iaの振幅の絶対値の上限が設定される。仮に、補償電流Iaが過電流レベルを超えた場合、絶縁破壊等の電気回路の損傷を回避するため、高調波発生負荷13は運転を停止する。」(段落【0032】)との記載から、当業者であれば、絶縁破壊等の電気回路の損傷に関連する種々のパラメータを考慮し、過電流レベル(「閾値C」)を設定可能であると解されることから、かかる主張は理由がない。

(イ)訂正後の請求項1が、発明の詳細な説明に記載したものでないこと、及び、訂正後の請求項1は、新たな技術的事項を含むものであることについて
特許異議申立人は、平成30年7月6日付けの意見書において、「予め定められた値を超えた場合、運転を停止し」「補償電流の値が、前記負荷が運転を停止する値である過電流レベルを超えないように設定」は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、また、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でされたものでない旨の主張をしている。
しかしながら、特許異議申立人が指摘した「補償電流の値が、前記負荷が運転を停止する値である過電流レベルを超えないように設定」との記載に関し、この記載のみでは、「設定」の主語が「補償電流の値」であるかのように解されるが、訂正後の請求項1には「前記設定値は、前記設定値に抑制された制御量によって生成された制御信号に基づく補償電流の値が、前記負荷が運転を停止する値である過電流レベルを超えないように設定されている」と記載されており、「設定」の主語は「設定値」である。そして、上記「第2.2.(1)訂正事項1」において記載したように、当初明細書の発明の詳細な説明には、負荷は、補償電流の値が予め定められた値(過電流レベル)を超えた場合、運転を停止すること、及び、リミッタ49の設定値は、補償電流が過電流レベル(予め定められた値)を超えないように設定されていることが記載されているといえるから、かかる主張は理由がない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1について、甲第2号証(引用文献2)の発明に甲第3号証(引用文献3)?甲第4号証(引用文献4)の周知技術を適用すること、又は、甲第1号証(引用文献1)の記載事項に甲第2号証の発明及び甲第3号証?甲第4号証の周知技術を適用することにより、訂正前の請求項1に想到することは当業者であれば容易になし得るものであると主張している。
また、特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項2について、高調波電流電流補償装置が過電流状態か否かの値を設定し、過電流状態となったときに負荷を停止することはよく行われる事項であり、甲第1号証の記載事項、甲第2号証の発明に甲第3号証?甲第4号証の周知技術を適用したもの、又は、甲第1号証の記載事項に甲第2号証の発明及び甲第3号証?甲第4号証の周知技術を適用したもの、のいずれかに上記事項を適用して、訂正前の請求項2に想到することは当業者であれば容易になし得るものであると主張している。
しかしながら、訂正後の請求項1に係る発明は、「前記負荷は、供給される前記補償電流の値が予め定められた値を超えた場合、運転を停止し」という事項、及び、訂正前の請求項2に実質的に対応する「前記リミッタは、前記制御量演算手段で演算した制御量を予め設定された設定値以下に抑制し、前記設定値は、前記設定値に抑制された制御量によって生成された制御信号に基づく補償電流の値が、前記負荷が運転を停止する値である過電流レベルを超えないように設定されている」という事項を有しており、これらの事項は、引用発明1及び引用文献2?4のいずれにも記載されていないことから、かかる主張は理由がない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び8に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1及び8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項2に対して特許異議申立人小寺吉衛がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高調波電流補償装置及び空気調和システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、高調波電流補償装置及び空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高調波電流補償装置は、系統電源に接続された高調波発生負荷と並列に接続されている。従来の高調波電流補償装置は、高調波発生負荷に入力される負荷電流を検出し、検出した負荷電流に含まれる高調波成分を抽出する。従来の高調波電流補償装置は、スイッチング素子のON状態及びOFF状態を制御することで、抽出した高調波成分を相殺する補償電流を発生する。
【0003】
ところで、従来の高調波電流補償装置は、補償電流の瞬時値が予め設定された一定値以上となった場合、電流過大(以下、過電流と称する)と判断し、停止状態となる機能を有している。
【0004】
例えば、従来の高調波電流補償装置のうち、補償電流の瞬時値が予め設定された一定値以上となった場合、基本波の無効電力の補償指令を抑制することで、高調波補償を損なうことなく高調波対策を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-113460号公報(段落[0011])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、系統電源で、相間電圧が不平衡であったり、電圧の歪みが大きかったりした場合、相間電圧の不平衡又は電圧歪み等に起因して、系統電源1周期のうち、高調波発生負荷に入力される負荷電流の瞬時値の変化が大きくなる位相がある。この場合、従来の高調波電流補償装置は、変化量の大きい負荷電流に応じるため、特に、負荷電流の瞬時値の変化が大きくなるそれぞれの位相を基準として予め設定された範囲で定まる期間で、補償電流を瞬時的に増加させる。よって、従来の高調波電流補償装置は、補償電流を瞬時的に過電流レベルに到達させることで、空気調和装置の運転を停止させる恐れがあった。
【0007】
また、従来の高調波電流補償装置は、補償電流を瞬時的に過電流レベルに到達させることで、空気調和装置の運転を停止させる場合、結果として、空気調和装置の発停の頻度が高くなる。よって、この場合、空気調和装置は、冷房又は暖房等の空気調和の動作の起動と停止とを繰り返す状態が生ずるため、全体として能力不足に陥る恐れがあった。
【0008】
換言すれば、従来の高調波電流補償装置は、系統電源の影響で負荷電流の瞬時値の変化が大きくなった場合、補償電流を瞬時的に過電流レベルに到達させるため、空気調和装置の運転を停止させるという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、系統電源の影響で負荷電流の瞬時値の変化が大きくなったとしても、補償電流を瞬時的に過電流レベルに到達させることなく、空気調和装置の運転を継続させることができる高調波電流補償装置及び空気調和システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る高調波電流補償装置は、系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、系統電源から負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、負荷は、供給される補償電流の値が予め定められた値を超えた場合、運転を停止し、負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、供給された補償電流を検出する補償電流検出手段と、負荷電流検出手段で検出された負荷電流に含まれる高調波成分と、補償電流検出手段で検出された補償電流と、に基づいて、補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、を備え、リミッタは、制御量演算手段で演算した制御量を予め設定された設定値以下に抑制し、設定値は、設定値に抑制された制御量によって生成された制御信号に基づく補償電流の値が、負荷が運転を停止する値である過電流レベルを超えないように設定されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、補償電流の上限を抑制することで、系統電源の影響で負荷電流の瞬時値の変化が大きくなったとしても、補償電流を瞬時的に過電流レベルに到達させることなく、空気調和装置の運転を継続させることができる。よって、本発明は、空気調和装置の能力を維持させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における高調波電流補償装置15を備えた空気調和システム1の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1における高調波補償制御を説明する動作波形の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1における高調波電流補償装置15の制御例を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2における高調波電流補償装置15を備えた空気調和システム1の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2における高調波補償制御を説明する動作波形の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2における高調波電流補償装置15の制御例を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態3における高調波電流補償装置15を備えた空気調和システム1の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3における高調波電流補償装置15の制御例を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態4における高調波電流補償装置15を備えた空気調和システム1の概略構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4における高調波電流補償装置15の制御例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明の実施の形態の動作を行うプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列に行われる処理であるが、必ずしも時系列に処理されなくても、並列的又は個別に実行される処理を含んでもよい。
【0014】
また、本実施の形態で説明される各機能をハードウェアで実現するか、ソフトウェアで実現するかは問わない。つまり、本実施の形態で説明される各ブロック図は、ハードウェアのブロック図と考えても、ソフトウェアの機能ブロック図と考えてもよい。例えば、各ブロック図は、回路デバイス等のハードウェアで実現されてもよく、図示しないプロセッサ等の演算装置上で実行されるソフトウェアで実現されてもよい。
【0015】
また、本実施の形態で説明されるブロック図の各ブロックは、その機能が実施されればよく、それらの各ブロックの上位集合、下位集合、又は部分集合で構成されてもよい。なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能及び構成については同一の符号を用いて述べることとする。また、本実施の形態3において、特に記述しない項目については実施の形態1、2と同様とし、同一の機能及び構成については同一の符号を用いて述べることとする。また、本実施の形態4において、特に記述しない項目については本実施の形態1?3と同様とし、同一の機能及び構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0016】
また、本実施の形態1?4のそれぞれは、単独で実施されてもよく、組み合わされて実施されてもよい。いずれの場合においても、後述する有利な効果を奏することとなる。また、本実施の形態1?4で説明する各種具体的な設定例は一例を示すだけであり、特にこれらに限定されない。
【0017】
また、本実施の形態1?4において、システムとは、複数の装置で構成される装置全体を表すものである。また、本実施の形態1?4において、ネットワークとは、少なくとも2つの装置が接続され、ある装置から他の装置へ情報の伝達ができるようにした仕組みをいう。ネットワークを介して通信する装置は、独立した装置同士であってもよく、1つの装置を構成している内部ブロック同士であってもよい。また、本実施の形態1?4において、通信とは、無線通信及び有線通信は勿論、無線通信と有線通信とが混在した通信であってもよい。例えば、ある区間では無線通信が行われ、他の空間では有線通信が行われるようなものであってもよい。また、ある装置から他の装置への通信が有線通信で行われ、他の装置からある装置への通信が無線通信で行われるようなものであってもよい。
【0018】
実施の形態1.
(実施の形態1の構成)
図1は、本発明の実施の形態1における高調波電流補償装置15を備えた空気調和システム1の概略構成を示す図である。空気調和システム1は、例えば、高調波電流補償装置15が、交流電源等の系統電源11から流れる電流の高調波成分を抑制することで、高調波電流補償装置15で負荷電流ILを補償する。
【0019】
図1に示すように、空気調和システム1は、系統電源11、高調波発生負荷13、高調波電流補償装置15、及び冷媒回路17等を備えている。系統電源11は、例えば、三相交流電源であり、電力を供給する。高調波発生負荷13は、系統電源11に接続されている。よって、系統電源11は、高調波発生負荷13に電流を供給する。
【0020】
高調波発生負荷13は、例えば、電力変換装置であって、整流器、直流リアクタ、及び平滑コンデンサ等(いずれも図示せず)を備え、交流を直流に変換し、変換した直流をPWM信号で交流に変換して冷媒回路17に供給する。電力変換装置は、例えば、交流を直流に変換する際、高調波を発生する。冷媒回路17は、例えば、圧縮機、熱源側熱交換器、膨張装置、四方弁、及び負荷側熱交換器等(いずれも図示せず)が冷媒配管を介して接続されて構成され、圧縮機が冷媒を圧縮して吐出することで、冷媒配管内を冷媒が循環し、冷凍サイクルが形成される。
【0021】
高調波電流補償装置15は、系統電源11と、高調波発生負荷13との間で、高調波発生負荷13に並列に接続されている。高調波電流補償装置15は、高調波発生負荷13から発生する高調波を抑制する。例えば、高調波電流補償装置15は、系統電源11と、高調波発生負荷13との間に設けられている負荷電流検出器31で、高調波発生負荷13に入力される負荷電流ILを検出させ、検出させた負荷電流ILに基づいて、系統電源11と、高調波発生負荷13との間に設けられている受電点21に補償電流Iaを供給し、負荷電流ILを補償する。ここで、負荷電流検出器31は、例えば、CT(Current Transformer)等のような電流センサで構成されればよいが、特にこれに限定されない。例えば、負荷電流検出器31は、シャント抵抗で構成されてもよい。なお、高調波電流補償装置15の処理の前提として、図示は省略するが、負荷電流検出器31は、各相ごとに設けられていると想定する。つまり、以降の処理の説明では、代表する1つの相、例えば、R相の場合について説明するが、S相及びT相についても同様な処理が実行されると想定する。
【0022】
なお、高調波の発生要因は、高調波発生負荷13に限定されない。例えば、雷サージ等が系統電源11等に侵入した場合、雷サージの高調波成分が負荷電流ILに重畳される。高調波電流補償装置15は、雷サージが等が系統電源11等に侵入した場合であっても、下記で説明する動作で負荷電流ILを補償する。
【0023】
次に、高調波電流補償装置15の詳細について図1及び図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態1における高調波補償制御を説明する動作波形の一例を示す図である。なお、本明細書内において、電流波形の位相のずれは一例であり、理想的にはずれがないものである。
【0024】
図1に示すように、高調波電流補償装置15は、例えば、補償電流検出器33、位相検出手段41、補償出力指令演算手段43、誤差量演算手段45、制御量演算手段47、リミッタ49、制御信号生成手段51、主回路53等を備えている。
【0025】
補償電流検出器33は、主回路53の出力側に設けられ、主回路53が出力する補償出力である補償電流Iaを検出し、検出結果を誤差量演算手段45に供給する。補償電流検出器33は、例えば、CT(Current Transformer)等のような電流センサで構成されればよいが、特にこれに限定されない。なお、高調波電流補償装置15の処理の前提として、図示は省略するが、補償電流検出器33は、各相ごとに設けられていると想定する。
【0026】
例えば、補償電流検出器33は、シャント抵抗で構成されてもよい。位相検出手段41は、系統電源11の電源電圧の位相を検出する。位相検出手段41は、例えば、ゼロクロス検出回路を備え、ゼロクロス検出回路は、系統電源11の電源電圧のゼロ点を検出し、系統電源11の電源電圧のゼロ点から電源電圧の位相θを演算で求める。例えば、図2に示すように、電源電圧のゼロ点に対応する位相の1つをθ_(0)と想定し、その後、制御周期ごとにθ_(1)、θ_(2)、・・・、θ_(N-1)と想定すると、電源1周期内でN個の制御点が設けられていることとなる。
【0027】
つまり、位相検出手段41は、制御周期ごとに位相θ_(0)?θ_(N-1)のそれぞれの値を求めることで、制御点に対応する位相θを求め、求めた位相θを補償出力指令演算手段43に供給する。なお、制御周期は、キャリア周期と同周期と想定するが、キャリア周期と異なる周期であってもよい。ここで、キャリア周期は、主回路53に設けられているスイッチング素子のON状態とOFF状態とを制御する周期と想定する。つまり、ここでいうキャリアとは、キャリア信号のことであり、PWM信号を生成するときに用いられる基準搬送波である。キャリア信号は、例えば、三角波で構成されるが、特にこれに限定されず、傾きが正又は負の鋸波状波であってもよい。
【0028】
補償出力指令演算手段43は、例えば、制御周期ごとに、負荷電流検出器31から供給された負荷電流ILに含まれる高調波成分を求め、求めた高調波成分に対応する信号を補償出力指令として誤差量演算手段45に供給する。補償出力指令演算手段43は、例えば、バンドパスフィルタで構成され、予め設定された周波数範囲の高調波成分を抽出するが、特にこれに限定されない。
【0029】
例えば、補償出力指令演算手段43は、ハイパスフィルタで構成され、予め設定された周波数以上の高調波成分を抽出してもよい。また、例えば、補償出力指令演算手段43は、負荷電流検出器31から供給された負荷電流ILをフーリエ変換し、予め設定された周波数成分を抽出し、抽出した周波数成分を含む信号を逆フーリエ変換してもよい。
【0030】
つまり、補償出力指令演算手段43は、負荷電流検出器31から供給された負荷電流ILから基本波成分を取り除き、負荷電流検出器31から供給された負荷電流ILに含まれる高調波成分を抽出する機能を有するものであれば、その実装形態は特に限定されない。
【0031】
誤差量演算手段45は、補償出力指令演算手段43から供給された補償出力指令と、補償電流検出器33から供給された補償電流Iaとに基づいて、補償出力指令と、補償電流Iaとの誤差量を求め、求めた誤差量を制御量演算手段47に供給する。制御量演算手段47は、誤差量演算手段45から供給された誤差量に基づいて、制御量を求め、求めた制御量をリミッタ49に供給する。
【0032】
リミッタ49は、制御量演算手段47から供給された制御量を抑制し、抑制結果を制御信号生成手段51に供給する。リミッタ49は、補償電流Iaが補償電流Iaの過電流レベルを超えないように制御量を抑制する。ここで、過電流レベルとは、例えば、図2に示すように、補償電流Iaの上限及び下限である。つまり、過電流レベルとは、補償電流Iaの振幅の絶対値の上限が設定される。仮に、補償電流Iaが過電流レベルを超えた場合、絶縁破壊等の電気回路の損傷を回避するため、高調波発生負荷13は運転を停止する。補償電流Iaは交流のため、リミッタ49は、補償電流Iaの正負両側に抑制をかける。ただし、リミッタ49は、補償電流検出器33の検出結果である補償電流Iaが正の場合、正側にのみ抑制をかける。リミッタ49は、補償電流検出器33の検出結果である補償電流Iaが負の場合、負側にのみ抑制をかける。
【0033】
例えば、補償出力指令と比べて補償電流Iaが大きい場合を想定する。このような想定の場合、上記で説明したように、補償電流Iaが正の場合に正側にのみ抑制をかけるようにすれば、補償電流Iaを抑制する制御そのものに抑制をかけることにはならないため、補償電流Iaを抑制できずに過電流となる事態は回避される。
【0034】
リミッタ49は、例えば、誤差量演算手段45から制御量が供給された場合、上記で説明したような動作を行い、補償電流Iaが補償電流Iaの過電流レベルを超えないようにした制御量を制御信号生成手段51に供給する。制御信号生成手段51は、リミッタ49から供給された制御量に基づいて制御信号を生成する。なお、制御量演算手段47から出力された制御量が、リミッタ49を介して、制御信号生成手段51に供給されることで、結果として、スイッチング素子のON状態に相当する期間を短く変更したり、スイッチング素子のOFF状態に相当する期間を長く変更したりする動作が行われることとなる。
【0035】
なお、リミッタ49は、制御量を予め設定された設定値、例えば、上記で説明したリミット値に抑制する。ここで、予め設定された設定値とは、過負荷運転条件で相間電圧が不平衡となったり、電圧歪みが生じたりした場合であっても、補償電流Iaが過電流レベルに達しない電流値となるように試験的に決めた値であってもよい。そして、予め設定された設定値は、仮に、相間電圧の不平衡状態又は電圧歪みが予め想定した想定内の場合であっても、負荷電流ILの高調波成分を抑制する能力に影響が出ない程度の補償電流Iaの電流値が決められている。つまり、補償電流Iaの制御量が予め設定された設定値以下であれば、補償電流Iaの制御量に基づいて生成される補償電流Iaは、過電流レベル以下でありつつも、負荷電流ILの高調波成分を抑制する振幅値は満たされている。
【0036】
制御信号生成手段51は、具体的には、リミッタ49から供給された制御量と、キャリア周期とに基づいて、制御信号を生成し、生成した制御信号を主回路53に供給する。制御信号生成手段51は、例えば、リミッタ49から供給された制御量に基づいてデューティ比を算出し、算出したデューティ比と、キャリア周期とに基づいて、制御信号、例えば、PWM信号を生成する。
【0037】
主回路53は、一般的な回路構成であって、例えば、ゲート駆動回路と、スイッチング素子及び転流ダイオードを1組とした6つのアームで構成されたブリッジ回路と、ブリッジ回路の6つのアームのうち、3つの上アームと3つの下アームとの間のそれぞれの中点に接続された3つのリアクトルと、ブリッジ回路の直流部に設けられたエネルギー蓄積用のコンデンサと、を備えている(何れも図示せず)。
【0038】
主回路53は、制御信号生成手段51から供給された制御信号に基づいて、補償電流Iaを生成し、生成した補償電流Iaを受電点21に供給する。この結果、負荷電流ILの高調波成分は抑制されるため、系統電源11に高調波成分を含む電流が流入しないように補償される。このときの補償後の系統電流は、例えば、図2に示されるような電流波形となる。つまり、図2に示すような過電流レベルを超えない補償電流Iaが受電点21に供給されることで、負荷電流ILに含まれている高調波成分に起因した歪み成分が抑制され、結果として、歪み成分の抑制された系統電流が高調波発生負荷13に供給される。
【0039】
よって、高調波電流補償装置15は、前回供給された補償電流Iaの制御量と、予め設定された設定値とを比較することで次回の補償電流Iaの制御量を抑制するため、過去の補償電流Iaに基づいて、未来の補償電流Iaを制御する動作構成である。つまり、高調波電流補償装置15は、制御周期が1周期分だけ負荷電流ILの補償動作が遅延するが、キャリア周波数を高速な値に設定し、高速なスイッチング素子を用いて高速にスイッチング素子のON状態とOFF状態とを制御すれば、実使用上問題ない程度まで負荷電流ILの高調波成分の抑制をすることができる。
【0040】
また、制御周期の1周期分の遅れ成分があったとしても、高調波発生負荷13等に急激な変化がなく、負荷電流ILに周期性があれば、次の負荷電流ILを予測することができる。したがって、このように負荷電流ILを予測することができる場合では、高調波電流補償装置15は、制御系のフィードフォワード制御を実施すれば、制御周期の1周期分の遅れ成分があったとしても、さらに補償動作の改善を実施することができる。
【0041】
具体例について説明する。補償出力指令演算手段43は、補償出力指令として、例えば、5Aという情報を含む信号を誤差量演算手段45に供給する。補償電流検出器33は、補償電流Iaとして、例えば、4Aという情報を含む信号を誤差量演算手段45に供給する。この場合、誤差量演算手段45は、誤差量として1Aを演算し、1Aという情報を含む信号を制御量演算手段47に供給する。制御量演算手段47は、この誤差1Aをなくすため、つまり、補償電流Iaを1A増やすため、1Aに応じた制御量を演算する。制御量演算手段47は、例えば、P制御、I制御、及びPI制御等の演算を実施する。
【0042】
ここで、誤差量について具体例を説明する。負荷電流ILが急峻な変化をした場合、誤差量が大きくなる。例えば、補償出力指令が5Aから15Aに急に変化した場合、つまり、補償電流Iaが補償出力指令5Aに近づくように制御され、実際に補償電流Iaが5Aになった直後に急な変化をした場合を想定する。この想定の場合、補償出力指令演算手段43は、補償出力指令として、15Aという情報を含む信号を誤差量演算手段45に供給する。補償電流検出器33は、補償電流Iaとして、5Aを含む信号を誤差量演算手段45に供給する。この場合、誤差量演算手段45は、誤差量として10Aを演算し、10Aという情報を含む信号を制御量演算手段47に供給する。制御量演算手段47は、この誤差10Aをなくすため、つまり、補償電流Iaを10A増やすため、10Aに応じた制御量を演算する。
【0043】
上記で説明したように、誤差量が大きければ大きくなるにつれ、主回路53からの出力は大きくなり、主回路53からの出力が大きくなり過ぎると、補償電流Iaが過電流レベルに到達する。つまり、補償電流Iaが急峻な変化をした場合、誤差量が大きくなるため、大きな誤差量を0にするために、主回路53からの出力が過大となる。例えば、上記で説明したように、補償出力指令を15Aとし、補償電流検出器33の検出結果である検出値を5Aとした場合、主回路53は、誤差10A分の出力を出そうとする。そこで、高調波電流補償装置15は、制御量に抑制をかけ、一定以上の誤差には応じない動作をする。
【0044】
換言すれば、誤差量が大きいと、制御量も大きくなり、これが一定値以上になると、そのときの補償電流検出器33の検出結果である補償電流Iaが過大となる。そこで、上記で説明したように、リミッタ49には、補償電流Iaが過大とならないレベルにリミット値が設定される。この結果、リミッタ49は、制御量がリミット値を超える場合、制御量をリミット値に抑制する。次に、具体的な動作例について図3を用いて説明する。
【0045】
(実施の形態1の動作)
図3は、本発明の実施の形態1における高調波電流補償装置15の制御例を説明するフローチャートである。なお、高調波電流補償装置15は、制御としては補償電流Iaが過電流レベルを超えるか否かを判定しない。ここでは、制御量がある一定値を超えると補償電流Iaが過電流レベルに達することを試験的に確認しておいてあると想定する。そして、高調波電流補償装置15は、制御においては制御量がそのある一定値を超えるか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、制御量がそのある一定値を超える場合、制御量をそのある一定値に抑制する。なお、そのある一定値をリミット値と想定した場合について以降で説明する。
【0046】
(ステップS11)
高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出したか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出した場合、ステップS12に進む。一方、高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出しない場合、ステップS13に進む。
【0047】
(ステップS12)
高調波電流補償装置15は、補償電流Iaに初期値を設定する。
【0048】
(ステップS13)
高調波電流補償装置15は、位相θを検出する。
【0049】
(ステップS14)
高調波電流補償装置15は、制御周期が到来したか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、制御周期が到来した場合、ステップS15に進む。一方、高調波電流補償装置15は、制御周期が到来しない場合、ステップS13に戻る。
【0050】
(ステップS15)
高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分を抽出する。
【0051】
(ステップS16)
高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分と、補償電流Iaとに基づいて、誤差量を求める。
【0052】
(ステップS17)
高調波電流補償装置15は、誤差量に基づいて制御量を求める。
【0053】
(ステップS18)
高調波電流補償装置15は、制御量がリミット値を超える場合、ステップS19に進む。一方、高調波電流補償装置15は、制御量がリミット値を超えない場合、ステップS20に進む。
【0054】
(ステップS19)
高調波電流補償装置15は、制御量をリミット値に抑制する。
【0055】
(ステップS20)
高調波電流補償装置15は、制御量に基づいて制御信号を生成する。
【0056】
(ステップS21)
高調波電流補償装置15は、制御信号に基づいてスイッチング素子を制御する。
【0057】
(ステップS22)
高調波電流補償装置15は、スイッチング素子の動作に応じて受電点21に補償電流Iaを供給する。
【0058】
(ステップS23)
高調波電流補償装置15は、終了指令が到来したか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、終了指令が到来した場合、処理を終了する。一方、高調波電流補償装置15は、終了指令が到来しない場合、ステップS11に戻る。
【0059】
(実施の形態1の効果)
以上の説明から、高調波電流補償装置15は、リミッタ49で制御量が一定値以上にはならないようにしている。よって、高調波電流補償装置15は、補償出力指令演算手段43から出力される補償出力指令と、補償電流Iaとの誤差量が大きいときであっても、つまり、系統電源11等の影響で負荷電流ILの変化が大きくなることに伴って補償出力指令の変化量が大きくなるときであっても、負荷電流ILの変化に伴って補償電流Iaが大きくなることがない。したがって、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaを過電流レベルに到達させることなく、高調波発生負荷13の運転を継続することができる。
【0060】
つまり、高調波電流補償装置15は、制御量が一定値を超えた場合、補償電流Iaの制御量を抑制し、抑制した制御量に基づいて補償電流Iaを生成する。よって、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの上限を抑制することで、系統電源11の影響で負荷電流ILの瞬時値の変化が大きくなったとしても、補償電流Iaを瞬時的に過電流レベルに到達させることなく、高調波発生負荷13の運転を継続させることができる。したがって、例えば、高調波発生負荷13が電力変換装置であり、電力変換装置が冷媒回路17に電力を供給すると想定した場合、冷媒回路17を含む空気調和装置の運転を継続させることができる。
【0061】
なお、上記の説明では、高調波発生負荷13に入力される負荷電流ILに含まれる高調波成分を補償するために補償電流Iaを用いる一例について説明したが、特にこれに限定されない。例えば、高調波発生負荷13に入力される電圧に含まれる高調波成分を補償するために補償電圧を用いてもよい。
【0062】
以上、本実施の形態1において、系統電源11に接続された高調波発生負荷13に並列に接続され、補償電流Iaを供給することで、系統電源11から高調波発生負荷13に入力される負荷電流ILに含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置15であって、負荷電流ILを検出する負荷電流検出器31と、供給された補償電流Iaを検出する補償電流検出器33と、負荷電流検出器31で検出された負荷電流ILに含まれる高調波成分と、補償電流検出器33で検出された補償電流Iaと、に基づいて、補償電流Iaの制御量を演算する制御量演算手段47と、補償電流Iaの上限を抑制するリミッタ49と、を備えた高調波電流補償装置15が構成される。
【0063】
したがって、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの上限を抑制することで、系統電源11の影響で負荷電流ILの瞬時値の変化が大きくなったとしても、補償電流Iaを瞬時的に過電流レベルに到達させることなく、空気調和装置の運転を継続させることができる。よって、高調波電流補償装置15は、空気調和装置の能力を維持させることができる。
【0064】
また、本実施の形態1において、補償電流Iaの上限が、高調波発生負荷13の運転を停止させるか否かが判定される過電流レベル以下に設定されてあって、リミッタ49は、補償電流Iaの上限が、過電流レベルを超える場合、補償電流Iaの制御量の上限を抑制するようにしてもよい。
【0065】
上記の構成から、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの制御量の上限を抑制するため、抑制された制御量に基づいて生成された制御信号で主回路53に含まれるスイッチング素子のON状態とOFF状態とを制御したとしても、主回路53が出力する補償電流Iaが過電流レベルを超える事態は生じない。よって、高調波電流補償装置15は、空気調和装置の運転を止める要因となる振幅値の大きい補償電流Iaを生成しないため、空気調和装置の運転を継続させることができる。したがって、高調波電流補償装置15は、特に顕著に、空気調和装置の能力を維持させることができる。
【0066】
実施の形態2.
(実施例の形態1との相違点)
実施の形態2に係る高調波電流補償装置15は、リミッタ49を動作させる期間を限定する。以下、実施の形態2に係る高調波電流補償装置15について説明する。
【0067】
(実施の形態2の構成)
図4は、本発明の実施の形態2における高調波電流補償装置15を備えた空気調和システム1の概略構成を示す図である。図5は、本発明の実施の形態2における高調波補償制御を説明する動作波形の一例を示す図である。
【0068】
図4に示すように、実施の形態2に係る高調波電流補償装置15は、実施の形態1に係る高調波電流補償装置15と比べ、記憶手段61と、予測手段63とをさらに備えている。記憶手段61は、例えば、制御周期ごとに検出した位相θ、制御周期ごとに求めた誤差量、及び制御周期ごとに求めた制御量等を記憶する。予測手段63は、過去の各種データに基づいて、未来の制御量を予測し、リミッタ49を動作させる期間を特定する。
【0069】
具体的には、予測手段63は、系統電源11の1周期のうち、補償出力指令の変化量が大きいと想定される期間、すなわち、位相を予め決定しておき、決定した期間のみリミッタ49で制御量に抑制をかける。ここで、補償出力指令の変化量が大きいと想定される期間とは、具体的には、補償電流Iaの周期性に着目したものであり、系統電源11の電源電圧の1周期の間で、過去の制御量が予め設定された設定値と比べて大きかったタイミング、すなわち、基準位相を基準として、予め設定された範囲内にある位相に対応する期間である。例えば、位相60°を基準位相として、予め設定された範囲を基準位相の前後に5°ずつとしたと想定すると、対応する期間は、位相55°?65°となる。この場合、高調波電流補償装置15は、位相55°?65°の期間で、補償電流Iaの制御量に抑制をかける。
【0070】
つまり、予測手段63は、系統電源11の1周期分の補償電流Iaの制御量のうち、補償電流Iaの制御量が予め設定された設定値を超えるときの位相を基準位相として、基準位相の前後に余裕を見た期間も含めた期間を、補償出力指令の変化量が大きいと想定される期間と予測する。
【0071】
なお、タイミング、すなわち、位相の判定は、補償出力指令演算手段43が負荷電流ILの変動量に基づいて予測してもよい。また、位相の判定は、系統電源11の電源電圧波形の変動量に基づいて予測してもよい。また、位相の判定は、試験的に決めた一定期間であってもよい。制御周期ごとに、過去に検知した値に基づいて、動的に変動するものとしてもよい。例えば、高調波発生負荷13が直流リアクトルを内蔵する三相ブリッジ整流回路の場合、負荷電流ILは、直流の脈流電流を三相に順次切り分けたようなそれぞれ120°区間だけ流れる、いわゆる相瘤状態の歪みを伴った矩形波状の電流となる。よって、この場合、電源電圧の線間電圧に対応する位相は、図5に示すように、0°、60°、180°、及び240°で急峻な変化をするため、高調波電流補償装置15は、急峻な変化をする位相に応じてリミッタ49を動作させればよい。
【0072】
(実施の形態2の動作)
図6は、本発明の実施の形態2における高調波電流補償装置15の制御例を説明するフローチャートである。
【0073】
(ステップS41)
高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出したか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出した場合、ステップS42に進む。一方、高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出しない場合、ステップS44に進む。
【0074】
(ステップS42)
高調波電流補償装置15は、系統電源11が1周期経過したか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、系統電源11が1周期経過した場合、ステップS54に進む。一方、高調波電流補償装置15は、系統電源11が1周期経過しない場合、ステップS43に進む。
【0075】
(ステップS43)
高調波電流補償装置15は、補償電流Iaに初期値を設定する。
【0076】
(ステップS44)
高調波電流補償装置15は、位相θを検出する。
【0077】
(ステップS45)
高調波電流補償装置15は、制御周期が到来したか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、制御周期が到来した場合、ステップS46に進む。一方、高調波電流補償装置15は、制御周期が到来しない場合、ステップS44に戻る。
【0078】
(ステップS46)
高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分を抽出する。
【0079】
(ステップS47)
高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分と、補償電流Iaとに基づいて、誤差量を求める。
【0080】
(ステップS48)
高調波電流補償装置15は、誤差量に基づいて制御量を求める。
【0081】
(ステップS49)
高調波電流補償装置15は、制御量が設定値を超えるか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、制御量が設定値を超える場合、ステップS50に進む。一方、高調波電流補償装置15は、制御量が設定値を超えない場合、ステップS51に進む。なお、ここでいう設定値は、実施の形態1で説明した制御量のリミット値であってもよく、基準位相を基準として予め設定された範囲内に含まれる位相に対応する制御量ごとに異なるリミット値であってよい。
【0082】
(ステップS50)
高調波電流補償装置15は、設定値を超えた制御量に対応する基準位相と、基準位相を基準として予め設定された範囲内に含まれる位相とのそれぞれに対応する抑制フラグを設定する。
【0083】
例えば、高調波電流補償装置15は、位相55°?65°の期間で、補償電流Iaの制御量に抑制をかけ、制御周期が位相1°であると想定する。このような想定の場合、補償電流Iaの位相55°、56°、57°、58°、59°、60°、61°、62°、63°、64°、及び65°のそれぞれに対応するデータに抑制フラグを1に設定する。このようなデータは、例えば、補償電流Iaに関して、位相θと、振幅値と、抑制フラグとを含んでいてもよい。
【0084】
(ステップS51)
高調波電流補償装置15は、制御量を抑制する。
【0085】
(ステップS52)
高調波電流補償装置15は、制御量に基づいて制御信号を生成する。
【0086】
(ステップS53)
高調波電流補償装置15は、制御信号に基づいてスイッチング素子を制御する。
【0087】
(ステップS54)
高調波電流補償装置15は、スイッチング素子の動作に応じて受電点21に補償電流Iaを供給する。
【0088】
(ステップS55)
高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出したか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出した場合、ステップS56に進む。一方、高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出しない場合、ステップS57に進む。
【0089】
(ステップS56)
高調波電流補償装置15は、補償電流Iaに初期値を設定する。例えば、高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出すると、次の制御周期では、新たな電源電圧の周期に移行するため、新たな電源電圧1周期分に対応する補償電流Iaの過去データは存在しないという想定で、補償電流Iaに初期値を設定する。
【0090】
(ステップS57)
高調波電流補償装置15は、位相θを検出する。
【0091】
(ステップS58)
高調波電流補償装置15は、制御周期が到来したか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、制御周期が到来した場合、ステップS59に進む。一方、高調波電流補償装置15は、制御周期が到来しない場合、ステップS57に戻る。
【0092】
(ステップS59)
高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分を抽出する。
【0093】
(ステップS60)
高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分と、補償電流Iaとに基づいて、誤差量を求める。
【0094】
(ステップS61)
高調波電流補償装置15は、誤差量に基づいて制御量を求める。
【0095】
(ステップS62)
高調波電流補償装置15は、制御量に対応する抑制フラグが設定されているか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、制御量に対応する抑制フラグが設定されている場合、ステップS63に進む。一方、高調波電流補償装置15は、制御量に対応する抑制フラグが設定されていない場合、ステップS64に進む。
【0096】
(ステップS63)
高調波電流補償装置15は、制御量を抑制する。つまり、高調波電流補償装置15は、制御量に対応する抑制フラグが設定されている期間では、制御量を抑制する動作を行う。
【0097】
(ステップS64)
高調波電流補償装置15は、制御量に基づいて制御信号を生成する。
【0098】
(ステップS65)
高調波電流補償装置15は、制御信号に基づいてスイッチング素子を制御する。
【0099】
(ステップS66)
高調波電流補償装置15は、スイッチング素子の動作に応じて受電点21に補償電流Iaを供給する。
【0100】
(ステップS67)
高調波電流補償装置15は、終了指令が到来したか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、終了指令が到来した場合、処理を終了する。一方、高調波電流補償装置15は、終了指令が到来しない場合、ステップS55に戻る。
【0101】
(実施の形態2の効果)
以上の説明から、本実施の形態2に係る高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの制御量を抑制する期間、すなわち、補償電流Iaの制御量を抑制する位相を限定する。よって、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの制御量を抑制しない位相の場合、補償電流Iaで負荷電流ILの高調波成分を相殺し、補償電流Iaの制御量を抑制する位相の場合、補償電流Iaで負荷電流ILを抑制する。よって、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの制御量を抑制する期間以外では、補償電流Iaの制御量の抑制動作を行わないため、従来と同等の負荷電流ILの補償量を得ると共に、補償電流Iaの制御量を抑制する期間では、ある程度は負荷電流ILの高調波成分を抑制することができる。したがって、高調波電流補償装置15は、ある程度は負荷電流ILの高調波成分を抑制しつつ、補償電流Iaが過電流レベルを超えることに起因する高調波発生負荷13の運転の停止を回避することができる。
【0102】
以上、本実施の形態2において、補償電流Iaと、当該補償電流Iaに対応する位相と、を記憶する記憶手段61と、記憶手段61に記憶されている補償電流Iaに基づいて、補償電流Iaが予め設定された設定値を超えるときの位相を予測する予測手段63と、をさらに備え、リミッタ49は、予測手段63で予測された位相を基準として予め設定された範囲内にある位相に対応する補償電流Iaの制御量を抑制するようにしてもよい。
【0103】
上記の構成から、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの制御量を抑制する期間、すなわち、補償電流Iaの制御量を抑制する位相を限定する。よって、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの制御量を抑制しない位相の場合、補償電流Iaで負荷電流ILの高調波成分を相殺し、補償電流Iaの制御量を抑制する位相の場合、補償電流Iaで負荷電流ILを抑制する。よって、高調波電流補償装置15は、ある程度は負荷電流ILの高調波成分を抑制しつつ、補償電流Iaが過電流レベルを超えることに起因する高調波発生負荷13の運転の停止を回避することができる。
【0104】
また、本実施の形態2において、予測手段63は、系統電源11の1周期分の補償電流Iaの制御量に基づいて、補償電流Iaの制御量が予め設定された設定値を超えるときの位相を予測するようにしてもよい。
【0105】
上記の構成から、高調波電流補償装置15は、過去の補償電流Iaの制御量に基づいて、補償電流Iaの制御量が予め設定された設定値を超えるときの位相を予測するため、過去の運転状態に基づいて未来の運転状態を改善することができる。
【0106】
したがって、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの上限を抑制することで、系統電源11の影響で負荷電流ILの瞬時値の変化が大きくなったとしても、特に顕著に、補償電流Iaを瞬時的に過電流レベルに到達させることなく、空気調和装置の運転を継続させることができる。よって、高調波電流補償装置15は、空気調和装置の能力を維持させることができる。
【0107】
実施の形態3.
(実施の形態1、2との相違点)
実施の形態3に係る高調波電流補償装置15は、補償出力指令演算手段43の補償出力指令を抑制する。
【0108】
(実施の形態3の構成)
図7は、本発明の実施の形態3における高調波電流補償装置15を備えた空気調和システム1の概略構成を示す図である。図7に示すように、高調波電流補償装置15は、実施の形態1と比べ、補償出力指令抑制判定手段65と、補償出力指令抑制演算手段67とをさらに備えている。
【0109】
補償出力指令抑制判定手段65は、補償電流Iaと、予め設定された抑制判定値とを比較し、補償出力指令を抑制するか否かを判定する。抑制判定値は、例えば、電流値であって、過電流レベルと比べて小さい値が設定されている。具体的には、補償出力指令抑制判定手段65は、三相の補償電流Iaのうち、一相でも予め設定された抑制判定値に達したら、補償電流Iaが過大になり得ると判定し、補償出力指令抑制演算手段67に補償出力指令を抑制させる。補償出力指令抑制演算手段67は、負荷電流ILの高調波成分の指令値を抑制する。
【0110】
なお、抑制判定値は、補償電流Iaの周期性に着目して設定されてもよい。例えば、電源電圧の1周期の間で、前回又は過去の補償電流Iaが予め設定された設定値と比べて大きかったタイミング、すなわち、位相を基準位相として、基準位相の前後で予め余裕をみた期間に基づいて設定されてもよい。また、抑制判定値は、試験的に決めたものであってもよい。また、制御周期ごとに、過去に検知した値に基づいて動的に変動するものであってもよい。
【0111】
(実施の形態3の動作)
図8は、本発明の実施の形態3における高調波電流補償装置15の制御例を説明するフローチャートである。
【0112】
(ステップS81)
高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出したか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出した場合、ステップS82に進む。一方、高調波電流補償装置15は、電源電圧のゼロ点を検出しない場合、ステップS83に進む。
【0113】
(ステップS82)
高調波電流補償装置15は、補償電流Iaに初期値を設定する。
【0114】
(ステップS83)
高調波電流補償装置15は、位相θを検出する。
【0115】
(ステップS84)
高調波電流補償装置15は、制御周期が到来したか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、制御周期が到来した場合、ステップS85に進む。一方、高調波電流補償装置15は、制御周期が到来しない場合、ステップS83に戻る。
【0116】
(ステップS85)
高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分を抽出する。
【0117】
(ステップS86)
高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分の指令値の抑制判定を行うか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分の指令値の抑制判定を行う場合、ステップS96に進む。一方、高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分の指令値の抑制判定を行わない場合、ステップS87に進む。
【0118】
(ステップS87)
高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分と、補償電流Iaとに基づいて、誤差量を求める。
【0119】
(ステップS88)
高調波電流補償装置15は、誤差量に基づいて制御量を求める。
【0120】
(ステップS89)
高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分の抑制判定を行ったか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分の抑制判定を行った場合、ステップS92に進む。一方、高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分の抑制判定を行っていない場合、ステップS90に進む。
【0121】
(ステップS90)
高調波電流補償装置15は、制御量が設定値を超えるか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、制御量が設定値を超える場合、ステップS91に進む。一方、高調波電流補償装置15は、制御量が設定値を超えない場合、ステップS92に進む。
【0122】
(ステップS91)
高調波電流補償装置15は、制御量を抑制する。
【0123】
(ステップS92)
高調波電流補償装置15は、制御量に基づいて制御信号を生成する。
【0124】
(ステップS93)
高調波電流補償装置15は、制御信号に基づいてスイッチング素子を制御する。
【0125】
(ステップS94)
高調波電流補償装置15は、スイッチング素子の動作に応じて受電点21に補償電流Iaを供給する。
【0126】
(ステップS95)
高調波電流補償装置15は、終了指令が到来したか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、終了指令が到来した場合、処理を終了する。一方、高調波電流補償装置15は、終了指令が到来しない場合、ステップS81に戻る。
【0127】
(ステップS96)
高調波電流補償装置15は、三相の補償電流Iaのうち、一相でも抑制判定値に達しているか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、三相の補償電流Iaのうち、一相でも抑制判定値に達している場合、ステップS97に進む。一方、高調波電流補償装置15は、三相の補償電流Iaのうち、何れの相も抑制判定値に達していない場合、ステップS89に進む。
【0128】
(ステップS97)
高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分の指令値を抑制する。
【0129】
(実施の形態3の効果)
以上の説明から、本実施の形態3に係る高調波電流補償装置15は、高調波電流補償装置15は、過電流レベルと比べて小さい抑制判定値に基づいて、補償電流Iaを抑制させるか否かを判定し、負荷電流ILの高調波成分の指令値を抑制するため、補償電流Iaが過電流レベルに達する前に、負荷電流ILの高調波成分の指令値を抑制する。よって、高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分を抑制しつつ、補償電流Iaを過電流レベルに到達させることなく、高調波発生負荷13の運転を継続させることができる。
【0130】
以上、本実施の形態3において、負荷電流ILに含まれる高調波成分の振幅を抑制する補償出力指令抑制演算手段67をさらに備え、補償電流Iaを抑制させるか否かが判定される抑制判定値が、高調波発生負荷13の運転を停止させるか否かが判定される過電流レベル未満に設定されてあって、系統電源11は、三相交流電源であって、補償出力指令抑制演算手段67は、補償電流検出器33で検出された補償電流Iaのうち、少なくとも一相の補償電流Iaが予め設定された抑制判定値に達している場合、負荷電流ILの高調波成分の指令値を抑制するようにしてもよい。
【0131】
上記の構成から、高調波電流補償装置15は、過電流レベルと比べて小さい抑制判定値に基づいて、補償電流Iaを抑制させるか否かを判定し、負荷電流ILの高調波成分の指令値を抑制するため、補償電流Iaが過電流レベルに達する前に、負荷電流ILの高調波成分の指令値を抑制する。よって、高調波電流補償装置15は、負荷電流ILの高調波成分を抑制しつつ、補償電流Iaを過電流レベルに達することなく、高調波発生負荷13の運転を継続させることができる。
【0132】
また、本実施の形態3において、系統電源11の電源周期と、系統電源11の電源周期に含まれる補償電流Iaの制御量を演算する制御周期と、を有し、補償出力指令抑制演算手段67は、制御周期ごとに、補償電流Iaと、抑制判定値と、に基づいて、負荷電流ILの高調波成分の指令値を抑制するようにしてもよい。
【0133】
上記の構成から、高調波電流補償装置15は、1つの電源周期の間に、負荷電流ILの高調波成分の指令値を繰り返し抑制することができる。
【0134】
したがって、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの上限を抑制することで、系統電源11の影響で負荷電流ILの瞬時値の変化が大きくなったとしても、特に顕著に、補償電流Iaを瞬時的に過電流レベルに到達させることなく、空気調和装置の運転を継続させることができる。よって、高調波電流補償装置15は、空気調和装置の能力を維持させることができる。
【0135】
実施の形態4.
(実施の形態1?3との相違点)
実施の形態4に係る高調波電流補償装置15は、抑制判定値を任意に設定自在に構成されている。
【0136】
(実施の形態4の構成)
図9は、本発明の実施の形態4における高調波電流補償装置15を備えた空気調和システム1の概略構成を示す図である。図9に示すように、高調波電流補償装置15は、実施の形態3の構成に比べ、補償出力指令抑制判定レベル設定手段69をさらに備えている。
【0137】
補償出力指令抑制判定レベル設定手段69は、抑制判定値を任意に設定自在に決定する。このような抑制判定値は、系統電源11の相間電圧が不平衡であったり、電圧歪みの大きさに応じて設定されるものであり、系統電源11の相間電圧が不平衡であるにつれ、又は、電圧歪みが大きくなるにつれ、補償電流Iaの制御量は大きくなるため、補償電流Iaが過電流レベルに至る可能性が高くなる。
【0138】
そこで、高調波電流補償装置15は、予め抑制判定値を下げておき、補償出力指令演算手段43の出力である補償出力指令を多めに抑制することで、結果として、補償電流Iaのピーク値をさらに低く抑える動作を行う。また、補償電流Iaは、系統電源11の影響の大きさに応じて変動するため、抑制判定値の設定は、製品据付後になされてもよい。また、抑制判定値の設定初期値は、理想的な系統電源11の電源電圧を想定した最低の抑制判定値であってもよい。また、抑制判定値は、過去の経験からの平均的な系統電源11の電源電圧の状況が考慮された値であってもよい。つまり、抑制判定値は、1つの値に固定されるものではなく、設置条件等に応じて適宜変更自在であってもよい。
【0139】
(実施の形態4の動作)
図10は、本発明の実施の形態4における高調波電流補償装置15の制御例を説明するフローチャートである。なお、ステップS112?ステップS128の処理は、実施の形態3の動作と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0140】
(ステップS111)
高調波電流補償装置15は、抑制判定値が設定されたか否かを判定する。高調波電流補償装置15は、抑制判定値が設定された場合、ステップS112に進む。一方、高調波電流補償装置15は、抑制判定値が設定されない場合、ステップS111に戻る。
【0141】
(実施の形態4の効果)
以上の説明から、本実施の形態4に係る高調波電流補償装置15は、任意に抑制判定値を設定することができるので、系統電源11の相間電圧不平衡又は系統電源11の電圧歪み等の影響に応じて抑制判定値を設定することができる。よって、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaを過度に抑制することを回避することができる。また、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの抑制トリガとなる抑制判定値を任意に設定することができるので、補償電流Iaの抑制不足を解消することができる。
【0142】
以上、本実施の形態4において、抑制判定値を設定する補償出力指令抑制判定レベル設定手段69をさらに備え、補償出力指令抑制演算手段67は、補償出力指令抑制判定レベル設定手段69で設定された抑制判定値に基づいて、負荷電流ILの高調波成分の指令値を抑制するようにしてもよい。
【0143】
上記の構成から、高調波電流補償装置15は、任意に抑制判定値を設定することができるので、系統電源11の相間電圧不平衡又は系統電源11の電圧歪み等の影響に応じて抑制判定値を設定することができる。よって、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaを過度に抑制することを回避することができる。また、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの抑制トリガとなる抑制判定値を任意に設定することができるので、補償電流Iaの抑制不足を解消することができる。
【0144】
したがって、高調波電流補償装置15は、補償電流Iaの上限を抑制することで、系統電源11の影響で負荷電流ILの瞬時値の変化が大きくなったとしても、特に顕著に、補償電流Iaを瞬時的に過電流レベルに到達させることなく、空気調和装置の運転を継続させることができる。よって、高調波電流補償装置15は、空気調和装置の能力を維持させることができる。
【0145】
なお、実施の形態1?4に共通することとして、電力変換装置として、リアクトル付きの整流回路を備えていると想定する。このような想定で、電力変換装置の出力が急激に変動することが比較的小さく、繰り返して同等の負荷電流ILが電力変換装置に流れ、電力変換装置が空気調和装置に電力を供給するような場合、高調波電流補償装置15は特に有効である。
【符号の説明】
【0146】
1 空気調和システム、11 系統電源、13 高調波発生負荷、15 高調波電流補償装置、17 冷媒回路、21 受電点、31 負荷電流検出器、33 補償電流検出器、41 位相検出手段、43 補償出力指令演算手段、45 誤差量演算手段、47 制御量演算手段、49 リミッタ、51 制御信号生成手段、53 主回路、61 記憶手段、63 予測手段、65 補償出力指令抑制判定手段、67 補償出力指令抑制演算手段、69 補償出力指令抑制判定レベル設定手段。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、前記系統電源から前記負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、
前記負荷は、供給される前記補償電流の値が予め定められた値を超えた場合、運転を停止し、
前記負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、
供給された前記補償電流を検出する補償電流検出手段と、
前記負荷電流検出手段で検出された前記負荷電流に含まれる前記高調波成分と、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流と、に基づいて、前記補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、
前記制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、
を備え、
前記リミッタは、
前記制御量演算手段で演算した制御量を予め設定された設定値以下に抑制し、
前記設定値は、
前記設定値に抑制された制御量によって生成された制御信号に基づく補償電流の値が、前記負荷が運転を停止する値である渦電流レベルを超えないように設定されている
高調波電流補償装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、前記系統電源から前記負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、
前記負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、
供給された前記補償電流を検出する補償電流検出手段と、
前記負荷電流検出手段で検出された前記負荷電流に含まれる前記高調波成分と、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流と、に基づいて、前記補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、
前記制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、
前記補償電流と、当該補償電流に対応する位相と、を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記補償電流に基づいて、前記補償電流が予め設定された設定値を超えるときの位相を予測する予測手段と、
を備え、
前記リミッタは、
前記予測手段で予測された位相を基準として予め設定された範囲内にある位相に対応する前記補償電流の制御量を抑制する
高調波電流補償装置。
【請求項4】
前記予測手段は、
前記系統電源の1周期分の前記補償電流の制御量に基づいて、前記補償電流の制御量が予め設定された設定値を超えるときの位相を予測する
請求項3に記載の高調波電流補償装置。
【請求項5】
系統電源に接続された負荷に並列に接続され、補償電流を供給することで、前記系統電源から前記負荷に入力される負荷電流に含まれる高調波成分を抑制する高調波電流補償装置であって、
前記負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、
供給された前記補償電流を検出する補償電流検出手段と、
前記負荷電流検出手段で検出された前記負荷電流に含まれる前記高調波成分と、前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流と、に基づいて、前記補償電流の制御量を演算する制御量演算手段と、
前記制御量演算手段で演算した制御量を抑制するリミッタと、
前記負荷電流に含まれる前記高調波成分の振幅を抑制する抑制演算手段と、
を備え、
前記補償電流を抑制させるか否かが判定される抑制判定値が、前記負荷の運転を停止させるか否かが判定される電流閾値未満に設定されてあって、
前記系統電源は、
三相交流電源であって、
前記抑制演算手段は、
前記補償電流検出手段で検出された前記補償電流のうち、少なくとも一相の前記補償電流が予め設定された抑制判定値に達している場合、前記負荷電流の前記高調波成分の指令値を抑制する
高調波電流補償装置。
【請求項6】
前記系統電源の電源周期と、
前記系統電源の電源周期に含まれる前記補償電流の制御量を演算する制御周期と、を有し、
前記抑制演算手段は、
前記制御周期ごとに、前記補償電流と、前記抑制判定値と、に基づいて、前記負荷電流の前記高調波成分の指令値を抑制する
請求項5に記載の高調波電流補償装置。
【請求項7】
前記抑制判定値を設定する抑制判定レベル設定手段をさらに備え、
前記抑制演算手段は、
前記抑制判定レベル設定手段で設定された前記抑制判定値に基づいて、前記負荷電流の前記高調波成分の指令値を抑制する
請求項5又は6に記載の高調波電流補償装置。
【請求項8】
請求項1、3?7の何れか一項に記載の高調波電流補償装置と、
前記系統電源と、
前記系統電源に接続され、前記系統電源から供給される電流で駆動する冷媒回路と、を備えた空気調和システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-22 
出願番号 特願2016-511225(P2016-511225)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (H02K)
P 1 652・ 537- YAA (H02K)
P 1 652・ 113- YAA (H02K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 服部 俊樹  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 山村 和人
堀川 一郎
登録日 2017-02-24 
登録番号 特許第6095849号(P6095849)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 高調波電流補償装置及び空気調和システム  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  
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