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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G02F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G02F |
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管理番号 | 1344824 |
異議申立番号 | 異議2017-701130 |
総通号数 | 227 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-11-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-11-30 |
確定日 | 2018-08-30 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6136935号発明「液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6136935号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第6136935号の請求項1、3ないし10に係る特許を維持する。 特許第6136935号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6136935号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、2012年12月27日(優先権主張2011年12月28日、2012年7月31日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年5月12日にその特許権の設定登録がされ、同年5月31日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年11月30日に特許異議申立人鈴木美香により特許異議の申立てがされたものである。 以後の手続の経緯は、以下のとおりである。 平成30年 1月19日:取消理由通知(1月23日発送) 同年 3月23日:意見書(特許権者) 同年 4月 4日:取消理由通知(4月6日発送) 同年 6月 5日:訂正請求書・意見書 同年 6月14日:通知書(6月19日発送) 同年 7月19日:意見書(特許異議申立人) 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の趣旨 平成30年6月5日付けの訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。また、本件訂正請求書による訂正を、以下「本件訂正」という。)は、特許第6136935号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを求めるものである。 2 訂正請求の内容 (1)訂正事項1(下線は、当審で付した。以下、同じ。) 特許請求の範囲の請求項1に「前記偏光子保護フィルムの少なくとも1つが、3000?30000nmの面内リタデーションを有し、最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、且つ、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであるポリエステルフィルムである、液晶表示装置。」と記載されているのを、 「前記偏光子保護フィルムのうち、液晶セルに対して射出光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムは、3000?30000nmの面内リタデーションを有し、最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであるポリエステルフィルムであり、且つ、その配向主軸が偏光子の吸収軸と垂直になるように配置されている、 液晶表示装置。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2に記載の液晶表示装置。」と記載されているのを、 「請求項1に記載の液晶表示装置。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「少なくとも片側の偏光子保護フィルムが3000?30000nmの面内リタデーションを有し、最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、且つ、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであるポリエステルフィルムである、連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置用偏光板。」と記載されているのを、 「少なくとも片側の偏光子保護フィルムが3000?30000nmの面内リタデーションを有し、最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、且つ、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであり、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであるポリエステルフィルムであり、且つ、その配向主軸が偏光子の吸収軸と垂直になるように配置されている、 連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の液晶セルに対して射出光側に配される射出光側用偏光板であり、前記ポリエステルフィルムが前記偏光子の射出光側に配される、射出光側用偏光板。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「3000?30000nmの面内リタデーションを有し、最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、且つ、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであるポリエステルフィルムからなる、連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置用偏光子保護フィルム。」と記載されているのを、 「3000?30000nmの面内リタデーションを有し、最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであるポリエステルフィルムからなり、且つ、その配向主軸が偏光子の吸収軸と垂直になるように配置される、 連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の液晶セルに対して射出光側に配される偏光板の射出光側用偏光子保護フィルム。」に訂正する。 3 訂正の適否 一群の請求項、訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)一群の請求項 ア 訂正前の請求項3は、訂正前の請求項1又は2の記載を引用し、訂正事項1及び訂正事項2により記載が訂正される請求項1及び請求項2に連動して訂正されるものであるから、訂正前において「一群の請求項」に該当する。 イ 訂正前の請求項6ないし請求項10は、請求項5の記載を引用し、訂正事項5により記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものであるから、訂正前において「一群の請求項」に該当する。 ウ よって、本件訂正は、一群の請求項ごとになされたものであって、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 (2)訂正事項1 ア 上記訂正事項1は、「偏光子保護フィルム」が、液晶セルに対して射出光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムであって、その配向主軸が偏光子の吸収軸と垂直になるように配置されているものであると特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。 「【0075】 (4)虹斑観察 PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に本発明のポリエステルフィルムを偏光膜の吸収軸とフィルムの配向主軸が垂直になるように貼り付け、その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。得られた偏光板を、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学、NSPW500CS)とする液晶表示装置(液晶セルがと入射光側に2枚のTACフィルムを偏光子保護フィルムとする偏光板を有する)の射出光側にポリエステルフィルムが視認側になるとうに設置した。液晶表示装置の偏光板の正面、及び斜め方向から目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。」 上記記載からして、 訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ よって、訂正事項1は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項2 ア 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 請求項2を削除するだけであるから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ よって、訂正事項2は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項3 訂正事項3は、訂正事項2により削除された請求項2を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 訂正により削除された請求項2の記載を引用しないものとするだけであるから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ よって、訂正事項3は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項4 訂正事項4は、「偏光子保護フィルム」が、液晶セルに対して射出光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムであって、その配向主軸が偏光子の吸収軸と垂直になるように配置されているものであると特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。 「【0075】 (4)虹斑観察 PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に本発明のポリエステルフィルムを偏光膜の吸収軸とフィルムの配向主軸が垂直になるように貼り付け、その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。得られた偏光板を、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学、NSPW500CS)とする液晶表示装置(液晶セルがと入射光側に2枚のTACフィルムを偏光子保護フィルムとする偏光板を有する)の射出光側にポリエステルフィルムが視認側になるとうに設置した。液晶表示装置の偏光板の正面、及び斜め方向から目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。」 上記記載からして、 訂正事項4は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ よって、訂正事項4は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (6)訂正事項5 ア 訂正事項5は、「偏光子保護フィルム」が、液晶セルに対して射出光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムであって、その配向主軸が偏光子の吸収軸と垂直になるように配置されているものであると特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。 「【0075】 (4)虹斑観察 PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に本発明のポリエステルフィルムを偏光膜の吸収軸とフィルムの配向主軸が垂直になるように貼り付け、その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。得られた偏光板を、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学、NSPW500CS)とする液晶表示装置(液晶セルがと入射光側に2枚のTACフィルムを偏光子保護フィルムとする偏光板を有する)の射出光側にポリエステルフィルムが視認側になるとうに設置した。液晶表示装置の偏光板の正面、及び斜め方向から目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。」 上記記載からして、 訂正事項5は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ よって、訂正事項5は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (7)訂正の適否のまとめ 訂正事項1ないし訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第4号、同条第4項及び同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項[1-3]について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正は、上記「第2 訂正の適否についての判断」で検討したように認められるものであるから、本件訂正により訂正された請求項1ないし10に係る発明(以下、「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明10」という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、 前記バックライト光源が連続的な発光スペクトルを有する白色光源であり、 前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムが積層された偏光板であり、 前記偏光子保護フィルムのうち、液晶セルに対して射出光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムは、3000?30000nmの面内リタデーションを有し、最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであるポリエステルフィルムであり、且つ、その配向主軸が偏光子の吸収軸と垂直になるように配置されている、 液晶表示装置。 【請求項2】 削除 【請求項3】 前記ポリエステルフィルムの面内リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上1.2以下である請求項1に記載の液晶表示装置。 【請求項4】 偏光子の両側に偏光子保護フィルムが積層された偏光板であり、 少なくとも片側の偏光子保護フィルムが3000?30000nmの面内リタデーションを有し、最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、且つ、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであり、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであるポリエステルフィルムであり、且つ、その配向主軸が偏光子の吸収軸と垂直になるように配置されている、 連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の液晶セルに対して射出光側に配される射出光側用偏光板であり、前記ポリエステルフィルムが前記偏光子の射出光側に配される、射出光側用偏光板。 【請求項5】 3000?30000nmの面内リタデーションを有し、最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであるポリエステルフィルムからなり、且つ、その配向主軸が偏光子の吸収軸と垂直になるように配置される、 連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の液晶セルに対して射出光側に配される偏光板の射出光側用偏光子保護フィルム。 【請求項6】 前記ポリエステルフィルムの面内リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上である請求項5に記載の偏光子保護フィルム。 【請求項7】 前記ポリエステルフィルムが易接着層を有する、請求項5又は6に記載の偏光子保護フィルム。 【請求項8】 前記ポリエステルフィルムが少なくとも3層からなり、 最外層に平均粒径1.0?3.5μmの不活性粒子を含有し、 最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径以上である、請求項5?7のいずれかに記載の偏光子保護フィルム。 【請求項9】 前記ポリエステルフィルムの最外層中の不活性粒子含有量が0.005?0.05質量%であり、 前記ポリエステルフィルムのヘイズが3%以下である、請求項5?8のいずれかに記載の偏光子保護フィルム。 【請求項10】 前記ポリエステルフィルムの最外層以外の層に紫外線吸収剤が含有され、 380nmの光線透過率が20%以下である、請求項5?9のいずれかに記載の偏光子保護フィルム。 第4 取消理由通知(予告)の取消理由について 1 取消理由の概要 当審において、訂正前の請求項1ないし10に係る発明の特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 「【理由1】(進歩性欠如) 本件の請求項1ないし請求項10に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明10」という。)は、その最先の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の引用文献(甲第1ないし6号証)に記載された発明に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし本件発明10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 【理由2】(明確性要件違反) 本件発明1ないし本件発明10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 引用文献 甲第1号証:特開2011-59488号公報 甲第2号証:特開2011-140140号公報 甲第3号証:特開2011-107198号公報 甲第4号証:特開昭60-26304号公報 甲第5号証:王子計測機器株式会社、「LCDにおけるPETフィルムの虹ムラに関する実験結果」、http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/img/gijutu68.pdf、2015年2月発行 甲第6号証:特開2010-243630号公報 ※補足 色再現性等を向上させるために、「連続的な発光スペクトルを有するバックライト光源」を採用した液晶表示装置は、下記の文献等に記載されているように、よく知られていることである。 特開2008-52067号公報(【要約】及び図6) 特開2001-141922号公報(【0077】ないし【0079】 及び図3ないし図5) 特開平9-97017号公報(【要約】及び図7) 特開平9-33920号公報(【0031】及び図3) 特開平8-162070号公報(【要約】及び図5) 」 2 引用文献に記載された発明 (1)甲第1号証(特開2011-59488号公報) ア 甲第1号証には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、 前記偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備え、 前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が2.0未満であることを特徴とする偏光板。 【請求項2】 前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の位相差値が200?1200nmもしくは2000?7000nmの値である請求項1に記載の偏光板。 【請求項3】 …… 【請求項4】 前記偏光フィルムにおける前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面とは反対側の面に、第二の接着剤層を介して積層された保護フィルムまたは光学補償フィルムを備える請求項1?3のいずれかに記載の偏光板。 【請求項5】 前記保護フィルムまたは前記光学補償フィルムは、環状オレフィン系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、鎖状オレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、およびアクリル系樹脂フィルムから選ばれる透明樹脂フィルムから構成される請求項4に記載の偏光板。」 (イ)「【背景技術】 【0002】 近年、消費電力が低く、低電圧で動作し、軽量でかつ薄型の液晶表示装置が、携帯電話、携帯情報端末、コンピュータ用のモニター、およびテレビ等の情報用表示デバイスとして急速に普及している。さらに、液晶技術の発展に伴い、様々なモードの液晶表示装置が提案され、従来、応答速度、コントラスト、および視野角等の液晶表示装置の問題とされていた点が解消されつつある。 【0003】 … 【0008】 しかしながら、一方で、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板を液晶表示装置に搭載した場合、トリアセチルセルロースフィルムを保護フィルムとする一般的な偏光板に比べて、その高いレタデーション値に由来する斜め方向からの色ムラ(干渉ムラ、虹ムラとも言う)が目立ち、視認性に劣るという問題を有している。…この手法を用いても色ムラの低減は不十分であり、より効果的な手法の確立が望まれていた。 【先行技術文献】 …… 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 そこで、本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板であって、液晶表示装置に搭載した際の色ムラが少なく視認性に優れ、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することにある。また、本発明のもう一つの目的は、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することにある。 【0011】 …… 【発明の効果】 【0021】 本発明によれば、Nz係数が2.0未満の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとして用いることで、液晶表示装置の表示時における色ムラが少なく優れた視認性を示し、かつ薄型化を実現し、コストパフォーマンスや生産性にも優れる偏光板を提供することができる。また、本発明によれば、前記の偏光板を用いた視認性に優れる液晶表示装置を提供することができる。」 (ウ)「【0069】 また、ここで配向主軸とは、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上の任意の点における分子配向方向をいい、ここでは遅相軸のことを指す。配向主軸(遅相軸)の延伸方向に対する歪みとは、遅相軸と延伸方向との角度差をいう。 【0070】 前記遅相軸は、たとえば、位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製)または分子配向計MOA(王子計測機器株式会社製)などを用いて測定できる。 【0071】 延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおいて、上記縦延伸または横延伸における延伸倍率は、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率であるnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率であるny、厚み方向の屈折率であるnzを制御する上で最も重要な因子であり、一般的に延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの作製において、一軸延伸は、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が比較的小さい、二軸延伸は比較的大きいフィルムを作製することに適している。」 (エ)「【0074】 本発明の偏光板においては、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸の軸ズレ角度は目的や生産上の制約等に応じて任意に選択することができる。たとえば、本発明の偏光板を、偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)偏光板として適用する場合、延伸ポリエチレンテレフタレートの面内位相差に由来する正面方向からの干渉色の発現を防ぐため、偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度は小さい方が好ましい。好ましくは、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度は、0度以上15度以下の範囲とすることが好ましい。かかる場合においても、Nz係数を2.0未満とすることが、色ムラの低減に効果的である。 【0075】 …… 【0076】 一方で、上記以外の場合には、偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸のズレ角度が大きいものも好ましく用いることができる。中でも、20度以上50度以下のズレ角度であるものがより好ましい。偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度を上記の範囲とすることで、より効果的に液晶表示装置の色ムラを低減することができる。」 (オ)「【0154】 鎖状オレフィンモノマーからなるオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン系樹脂が挙げられる。中でも、プロピレンの単独重合体からなるポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、プロピレンを主体とし、それと共重合可能なコモノマーを、通常、1?20重量%の割合で、好ましくは3?10重量%の割合で共重合させたポリプロピレン系樹脂も好ましい。」 (カ)「【0217】 <液晶表示装置> 以上のようにしてなる偏光板、すなわち、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/第一の接着剤層/偏光フィルム/第二の接着剤層/[保護フィルムまたは光学補償フィルム]/粘着剤層/剥離フィルムとの層構造を有する偏光板は、粘着剤層から剥離フィルムを剥離して、液晶セルの片面または両面に貼合し、液晶パネルとすることができる。この液晶パネルは、液晶表示装置に適用することができる。 【0218】 本発明の偏光板は、たとえば、液晶表示装置において、光出射側(視認側)に配置される偏光板として用いることができる。光出射側とは、液晶セルを基準に、液晶表示装置のバックライト側とは反対側を指す。光出射側の偏光板として本発明の偏光板が採用される場合、当該偏光板は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける偏光フィルムが積層されている面とは反対側の面に、防眩層、ハードコート層、反射防止層、および帯電防止層から選ばれる少なくとも1つの機能層を備えることが好ましい。また、液晶表示装置の光入射側(バックライト側)に配置される偏光板は、本発明の偏光板であってもよいし、従来公知の偏光板であってもよい。 【0219】 …… 【0222】 液晶表示装置を構成するバックライトも、一般の液晶表示装置に広く使用されているものでよい。たとえば、……蛍光管を使って白色光を発光する冷陰極蛍光ランプや、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などを採用することができる。」 (キ)「【0235】 【表1】 【0236】 表1に示されるように、偏光板における延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのNz係数が2.0未満である実施例1?5については、偏光板を搭載した液晶表示装置における色ムラが少なく、視認性に優れる効果が認められた。一方で、Nz係数が2.0以上である比較例1については、色ムラが強く、視認性に劣るものであった。」 イ 甲第1号証に記載された発明 (ア)上記ア(ア)及び(イ)の記載によれば、甲第1号証には、下記の偏光板を搭載した液晶表示装置が記載されているものと認められる。 「ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、 前記偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備え、 前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸と直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたときに、(nx-nz)/(nx-ny)で表されるNz係数が2.0未満であり、面内の位相差値が2000?7000nmの値であり、 前記偏光フィルムにおける前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面とは反対側の面に、第二の接着剤層を介して積層された、環状オレフィン系樹脂フィルム、鎖状オレフィン系樹脂フィルム及びアクリル系樹脂フィルムから選ばれる透明樹脂フィルムから構成される保護フィルムを備える、偏光板。」 (イ)上記ア(イ)の記載によれば、 上記(ア)の「偏光板」は、 液晶表示装置に搭載した際に、斜め方向からの色ムラ(干渉ムラ)が少なく視認性に優れた「液晶表示装置」を提供できることが理解できる。 (ウ)上記ア(ウ)の記載によれば、 上記(ア)の「遅相軸」とは、配向主軸のことである。 (エ)上記ア(エ)の記載によれば、 「偏光性の強いバックライト光源を備える液晶表示装置のバックライト光源側(入射側)偏光板として適用する場合」以外の、例えば、「偏光性のないバックライト光源を備える液晶表示装置」の「視認側の偏光板」に適用する場合は、 偏光フィルムの透過軸に対する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸(配向主軸)の軸ズレ角度は、20度以上50度以下が好ましいものと認められる。 (オ)上記ア(オ)の記載によれば、 上記(ア)の「鎖状オレフィン系樹脂フィルム」は、 具体的には、ポリプロピレンフィルムであってもよいものと認められる。 (カ)上記ア(カ)の記載からして、以下のことが理解できる。 a 上記(ア)の「偏光板」は、視認側の偏光板だけではなく、バックライト光源側の偏光板であってもよいこと。 b 上記(ア)の「保護フィルム」は、粘着剤層を介して液晶セルに貼り付けられること。 c 液晶表示装置は、白色光を発光するバックライト光源を備えていること。 (キ)上記ア(キ)の記載からして、 上記(ア)の「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、具体的には、実施例3の「面内の位相差値が3950nm(NZ係数1.8)のフィルム」であってもよいものと認められる。 (ク)上記(ア)ないし(キ)より、甲第1号証には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「白色光を発光するバックライト光源と、 視認側の偏光板、液晶セル及びバックライト光源側の偏光板を備えた液晶表示装置であって、 前記視認側の偏光板及びバックライト光源側の偏光板は、 ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、 前記偏光フィルムの片面に、第一の接着剤層を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、を備え、 前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、面内の位相差値が3950nm(NZ係数1.8)であり、 前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている面とは反対側の面に、第二の接着剤層を介して積層されたポリプロピレンフィルムの保護フィルムを備え、 前記保護フィルムは接着剤層を介して前記液晶セルに貼り付けられ、 前記視認側の偏光板における前記偏光フィルムの透過軸に対する前記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸の軸ズレ角度が20度以上50度以下である、液晶表示装置。」 (2)甲第2号証(特開2011-140140号公報) ア 甲第2号証には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 基材フィルムの少なくとも片面に塗布層を有する易接着性ポリエステルフィルムであって、 前記基材フィルムが、共押出法により3層以上の積層構成を有し、両最外層に不活性粒子を含有する、ヘイズが2.5%以下のポリエステルフィルムであり、 前記塗布層が、数平均分子量15000以上であって実質的にカルボン酸基を有さないポリエステル樹脂と、オキサゾリン基を有する樹脂とを主成分とする、光学用易接着性ポリエステルフィルム。 【請求項2】 前記最外層に含有する不活性粒子の平均粒径が2.1?2.5μmであり、 前記最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径以上であり、 前記最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.015μmであり、 十点平均粗さ(SRz)が0.5?1.5μmである、請求項1に記載の光学用易接着ポリエステルフィルム。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、光学欠点が少なく高い透明性を有し、密着性と耐湿熱性に優れた光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。詳しくは、ディスプレイなどに主として用いられる、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、光拡散シート、プリズム状レンズシート、近赤外線遮断フィルム、透明導電性フィルム、防眩フィルムなどの光学機能性フィルムの基材として好適な光学用易接着性ポリエステルフィルムに関する。」 (ウ)「【0036】 本発明のフィルムの最外層表面の十点平均粗さ(SRz)は0.5μm以上であることが好ましい。本発明のフィルムはこのような特定の突起形状を有するため後加工での加工適性(滑り性)に優れる。さらに、本発明のフィルムの三次元中心面平均粗さ(SRa)は0.008?0.015μmであることが好ましい。また、十点平均粗さ(SRz)が0.5?1.5μmであることが好ましく、0.6?1.0μmであることがより好ましい。三次元中心面平均粗さ(SRa)もしくは十点平均粗さ(SRz)が上記範囲内であると、微小キズを有効に抑制しながら、透明性を維持できる為に好ましい。」 (エ)「【0060】 塗布層に他の機能性を付与するために、光学機能層との密着性を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤等が挙げられる。」 (オ)「【0097】 実施例1 (1)塗布液の調整 下記の塗剤を混合し、塗布液を作成した。ポリエステル樹脂は数平均分子量20000である。 水 49.41質量% イソプロパノール 30.00質量% ポリエステル水分散体(B-1) 12.64質量% オキサゾリン基を有する水溶性樹脂(C) 6.32質量% 粒子 1.58質量% (平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%) 界面活性剤 0.05質量% (シリコン系、固形分濃度100質量%) 【0098】 (2)光学用易接着性ポリエステルフィルムの製造 基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(B)樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に、また、PET(A)とPET(B)をシリカ粒子の含有量を0.020質量%となるよう混合調整し、常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は8:82:8となるように各押し出し機の吐出量を調整した。 【0099】 この未延伸フィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.4倍延伸して一軸配向PETフィルムを得た。 【0100】 次いで、前記塗布液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)25μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で一軸配向PETフィルムの片面に乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。 【0101】 この塗布層を形成した一軸延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.2倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度245℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、厚み188μmのポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。」 イ 上記アの記載からして、甲第2号証には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「ディスプレイなどの光学機能性フィルムとして用いられる光学用易接着性ポリエステルフィルムであって、 基材フィルムの少なくとも片面に塗布層を有し、 前記基材フィルムが、 共押出法により3層以上の積層構成を有し、両最外層に不活性粒子を含有する、ヘイズが2.5%以下のポリエステルフィルムであり、 前記最外層に含有する不活性粒子の平均粒径が2.1?2.5μm、 前記最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径以上、 前記最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.015μm、 十点平均粗さ(SRz)が0.5?1.5μmである、 光学欠点が少なく高い透明性を有し、密着性と耐湿熱性に優れた光学用易接着性ポリエステルフィルム。」 (3)甲第3号証(特開2011-107198号公報) ア 甲第3号証には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置において、 バックライト光源として白色発光ダイオードを用いるとともに、 前記偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用いることを特徴とする液晶表示装置の視認性改善方法。」 (イ)「【0002】 近年、液晶表示装置(LCD)の用途が拡大しており、屋外で用いられる各種の表示物にもLCDが利用されている。例えば、車、船、飛行機などの計器盤、車載カーナビゲーション、デジタルカメラ、携帯電話やパソコンなどのモバイル機器、あるいはビル、スーパーなどで用いられるデジタルサイネージなどに利用が広がっている。 【0003】 LCDは液晶セルを2枚の偏光板で挟みこんだ液晶パネルに、外光や、フロントライト、バックライトなどの光源により発生せられた光を透過/遮蔽することによって表示を行なう。バックライト光源としては冷陰極管や熱陰極管などの蛍光管を用いることが一般的である。冷陰極管や熱陰極管などの蛍光灯の分光分布は複数のピークを有する発光スペクトルを示し、これら不連続な発光スペクトルがあわさって白色系の光源が得られる。一方、省エネルギー化の点から消費電力の小さい発光ダイオードを利用することが検討されている。特に、白色発光ダイオード(白色LED)は、蛍光管に比べ連続的で幅広い発光スペクトルを有しており発光効率に優れる。 【0004】 ところで、日差しの強い屋外等の環境では、その眩しさを解消するために、偏光特性を有するサングラスを掛けた状態でLCDを視認する場合がある。この場合、観察者はLCDから射出した直線偏光を有する光を、偏光板を通して視認することとなるため、LCDに内装される偏光板の吸収軸と、サングラスなどの偏光板の吸収軸とがなす角度によっては画面が見えなくなってしまう。」 (ウ)「【0021】 直交する2つの偏光板の間に複屈折性を有する高分子フィルムを配した場合、偏光板から出射した直線偏光が高分子フィルムを通過する際に乱れが生じ、光が透過する。透過した光は高分子フィルムの複屈折と厚さの積であるリタデーションに特有の干渉色を示す。本発明では、連続的な発光スペクトルを有する白色LEDを光源とする。このため、高分子フィルムによっても達成可能な特定のリタデーション範囲に制御することにより、干渉色を示す透過光のスペクトルの包絡線形状が光源の発光スペクトルに近似させることが可能となる。本発明はこれにより視認性の向上を図るに至ったものである。(図3参照) 【0022】 上記効果を奏するために、本発明に用いられる高分子フィルムは、3000?30000nmのリタデーションを有していなければならない。リタデーションが3000nm未満では、サングラスなどの偏光板を通して画面を観察した時、強い干渉色を呈するため、包絡線形状が光源の発光スペクトルと相違し、良好な視認性を確保することができない。好ましいリタデーションの下限値は4500nm、より好ましい下限値は6000nm、更に好ましい下限値は8000nm、より更に好ましい下限値は10000nmである。」 (エ)「【0026】 本発明に用いられる高分子フィルムは、液晶セルの視認側に配した偏光板の視認側に、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して使用される。高分子フィルムを偏光板の視認側に配する方法は、偏光板の最外層に直接に高分子フィルムを積層しても構わないし、他の透明部材を介して配しても構わない。また、液晶表示装置の視認側最表面に高分子フィルムを設置、貼り合わせてもよい。高分子フィルムを直接、または他の透明部材を介して配する際は、粘着層を設けた高分子フィルムを用いることも好ましい態様である。 【0027】 高分子フィルムを配する際は、偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるようにすることが望ましい。これによりサングラスなどの偏光板がどのような角度であっても高い透過光を得ることができる。なお、上記角度は厳密に45度である必要はなく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて適宜調節しても良い。前記角度の好ましい範囲は30?60度、より好ましくは40?50度である。」 (オ)「【0037】 <リタデーション> フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△N=|Nx#Ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△N×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性、異方性を示す尺度である。…なお、前記配向軸のうち、より大きい屈折率を示す軸を遅相軸として定義する。」 (カ)「【0052】 上記の方法で得られた配向PETフィルムの特性を表1に示した。また、これらのフィルムを、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学、NSPW500CS)とする液晶表示装置(液晶セルが2枚の偏光板に挟まれた構成を有する)、及び冷陰極管をバックライト光源とする液晶表示装置(液晶セルが2枚の偏光板に挟まれた構成を有する)の上に置き、それぞれサングラスを通して画面を見た時の様子を表2に示した。 【0053】 上記の結果より、作成したフィルムは、白色LEDをバックライト光源として用いた場合には視認性改善効果が得られるものの、冷陰極管をバックライト光源として用いた場合には視認性の改善効果が得られないことが解った。 【0054】 …… 【0055】【表2】 【0056】 本発明の液晶表示装置の視認性改善方法は、屋外で用いられる液晶表示装置、例えば車、船、飛行機などの計器盤、車載カーナビゲーション、デジタルカメラ、携帯電話やパソコンなどのモバイル機器、あるいはビル、スーパーなどで用いられるデジタルサイネージなどに好適に利用可能である。」 イ 甲第3号証に記載された技術事項 (ア)上記ア(ア)ないし(ウ)の記載によれば、甲第3号証には、 「液晶表示装置において、 バックライト光源として連続的な発光スペクトルを有する白色LEDを用いるとともに、 前記偏光板の視認側に、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用いることにより、液晶表示装置の視認性改善方法。」が記載されているものと認められる。 (イ)上記ア(エ)の記載によれば、 上記(ア)の「凡そ45度」は、厳密に45度である必要はなく、「30?60度」であってもよいものと認められる。 (ウ)上記ア(オ)の記載によれば、 上記(ア)の「高分子フィルムの遅相軸」は、「高分子フィルムの配向主軸」であることが理解できる。 (エ)上記ア(カ)の記載によれば、以下のことが理解できる。 a バックライト光源として冷陰極管を用いた場合には、「3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルム」を用いても、視認性の改善効果が得られないこと。 b 「偏光板の吸収軸」とは、「偏光子の吸収軸」であること。 c 「3000?30000nmのリタデーション」は、複数のフィルムを重ねた際の「全体のリタデーション(相加)」であってもよいこと。 (オ)上記(ア)ないし(エ)を総合すると、甲第3号証には、次の技術事項(以下「技術事項A」という。)が記載されているものと認められる。 「液晶表示装置において、 バックライト光源として連続的な発光スペクトルを有する白色LEDを用いるとともに、 偏光子の吸収軸と3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムの配向主軸とのなす角が30?60度となるように配して用いることにより、視認性を改善できること。」 (4)特開平8-162070号公報(以下「引用文献」という。) ア 引用文献には、以下の記載がある。 (ア)「【0008】このような尖鋭形の発光スペクトル特性、つまりラインスペクトルを有する3波長発光形蛍光ランプは、人間の色覚反応が、450nm、540nmおよび610nm付近の3つの波長をピークとする比較的狭い波長域に強い反応を示すという特性にもとづき開発されたものであり、したがって一般照明用ランプに適用した場合には、発光効率および演色性の点で極めて有効である。しかし、このような3波長発光形蛍光ランプを、上記カラー液晶表示装置のバックライト光源として用いた場合は、表示画面に色むらが生じ、画質を低下させるという問題がある。 【0009】表示画面に色むらが生じる原因は、特開平5-165028号公報に記載されている通りの理由によるものと考えられる。すなわち、バックライト光源の蛍光ランプから出た光は、液晶表示ユニットを構成する偏光板や各ガラス層、液晶層およびカラーフィルタ層さらに保護カバ-等を透過する過程でそれぞれ屈折される。このような屈折は各波長により差が生じる。色領域の狭い波長、つまりラインスペクトルの場合は、上記液晶表示ユニットを透過するときの複数回の屈折により、各波長が分光され、これらの分光が干渉し合って干渉縞を生じ、この結果、表示画面に縞模様の色むらが発生すると考えられている。」 (イ)「【0036】このような構成の冷陰極蛍光ランプ25は、ランプを点灯したときの分光エネルギー分布特性が、図5に示すようになる。すなわち、上記蛍光体は、610nmに発光ピーク波長をもつ赤色発光の半値幅が90nm、525nmにピーク波長をもつ緑色発光の半値幅が40nm、および452nmにピーク波長をもつ青色発光の半値幅が50nmとなっており、図6に示す従来の蛍光体に比べて半値幅が格段に広くなっている。 【0037】 …… 【0038】そして、上記冷陰極蛍光ランプ25は、蛍光体によって変換された可視光線が、610nmにピーク波長をもつ赤色発光の半値幅が90nm、525nmにピーク波長をもつ緑色発光の半値幅が40nm、および452nmにピーク波長をもつ青色発光の半値幅が50nmとなっており、図6に示す従来に比べて広くなっていることから、液晶表示画面上において色むらの発生を解消することができる。 【0039】すなわち、色領域が広いスペクトルであれば、液晶表示ユニット1を透過するときに複数回の屈折を繰り返しても、各波長が重なり合って分光される割合が少なくなり、干渉による縞模様の発生をなくすことができる。この結果、表示画面の色むらが防止され、画質が向上する。 【0040】また、液晶表示ユニット1の厚みにばらつきが生じても、上記のように色領域が広いことから、干渉縞の発生が防止され、表示画面の色むらが防止される。特に、画面サイズが6インチ以上の場合は、液晶表示ユニット1の厚みが部分的にばらつきを生じ易くなって干渉縞が発生し易くなる。しかし、、本発明の蛍光ランプ25を、画面サイズが6インチ以上のカラー液晶表示装置の光源として使用すれば、若干の厚みのばらつきがあっても色むらを防止することができる。」 (ウ)「【0050】 【発明の効果】以上説明した通り請求項1の発明によれば、赤、緑および青色系の各蛍光体は、発光ピーク波長の半値幅がそれぞれ30nm以上であるから、従来の半値幅に比べて広くなり、これらの光が複数回の屈折を経ても境界が重複するから分光される割合が少なくなり、干渉縞の発生を確実に防止することができる。よって表示画面に色むらを生じるのを防止することができる。そして、半値幅は100nm以下であるから、カラー液晶表示装置のカラーフィルタと組み合わせて使用する場合に、フィルタによる干渉領域をはみ出すことがなく、透過効率がよくなり、光量を高く保つことができ、画面が明るくなる。」 (エ)図5は、以下のものである(実施例の蛍光ランプの分光エネルギー分布の特性図)。 (オ)図6は、以下のものである(従来の分光エネルギー分布の特性図)。 イ 上記記載からして、引用文献には、次の技術事項(以下「技術事項B」という。)が記載されているものと認められる。 「一般照明用ランプに用いられる、尖鋭形の発光スペクトル特性、つまりラインスペクトルを有する3波長発光形蛍光ランプをカラー液晶表示装置のバックライト光源として用いた場合は、液晶表示ユニットを透過するときの複数回の屈折により、各波長が分光され、これらの分光が干渉し合って干渉縞を生じ、この結果、表示画面に縞模様の色むらが発生すると考えられることから、 蛍光体を工夫した、 610nmにピーク波長をもつ赤色発光の半値幅が90nm、 525nmにピーク波長をもつ緑色発光の半値幅が40nm、 452nmにピーク波長をもつ青色発光の半値幅が50nmの、色領域が広い発光スペクトル特性を有する蛍光ランプを用いることにより、 各波長が複数回の屈折を経ても境界が重複するから分光される割合が少なくなり、干渉縞の発生を確実に防止し、表示画面に縞模様の色むらを生じるのを防止することができること。」 第3 当審の判断 1 【理由1】(進歩性欠如)について (1)本件訂正発明1について ア 対比 本件訂正発明1と引用発明1とを対比すると、以下の点で一致する。 <一致点> 「バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、 前記バックライト光源が発光スペクトルを有する白色光源であり、 前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムが積層された偏光板であり、 前記偏光子保護フィルムのうち、液晶セルに対して射出光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムは、3000?30000nmの面内リタデーションを有するポリエステルフィルムであり、且つ、その配向主軸が偏光子の吸収軸と所定角度になるように配置されている、 液晶表示装置。」 一方、両者は、少なくとも、以下の点で相違する。 <相違点1> 発光スペクトルに関して、 本件訂正発明1は、「連続的な発光スペクトル」であるのに対して、 引用発明1は、連続的であるか否か不明である点。 <相違点2> ポリエステルフィルムに関して、 本件訂正発明1は、「最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、且つ、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmである」のに対して、 引用発明1は、そのような値であるか否か不明である点。 <相違点3> 所定角度に関して、 本件訂正発明1は、「垂直」であるのに対して、 引用発明1は、垂直ではない点。 イ 判断 (ア)まず、上記<相違点3>について検討する。 a 引用発明1において、「『面内の位相差値が3950nm』の『延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸』」と「偏光フィルムの透過軸」とを「20度以上50度以下」の角度をなすように配置する技術的意義は、甲第1号証の「……偏光フィルムと延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの軸ズレ角度を上記の範囲とすることで、より効果的に液晶表示装置の色ムラを低減することができる。」(【0076】)との記載からして、「偏光フィルムからの直線偏光」を、そのまま直線偏光として出射するのではなく、楕円偏光又は円偏光の状態で出射させることで、より効果的に色ムラを低減することにあるものと解される。 b そうすると、引用発明1において、「『面内の位相差値が3950nm』の『延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸』」と「偏光フィルムの透過軸」を平行(つまり、吸収軸と垂直)となるように配置する動機が生じるとはいえない。 c また、甲第2号証ないし甲第6号証の記載を見ても、引用発明1において、「『面内の位相差値が3950nm』の『延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸』」と「偏光フィルムの透過軸」を平行(つまり、吸収軸と垂直)となるように配置する動機が生じるとはいえない。 d さらに、特許異議申立人が平成30年7月19日に提出した意見書において引用する甲第7号証ないし甲第11号証の記載をみても、引用発明1において、「『面内の位相差値が3950nm』の『延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸』」と「偏光フィルムの透過軸」を平行(つまり、吸収軸と垂直)となるように配置する動機が生じるとはいえない。 (イ)してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、当業者が甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)まとめ 本件訂正発明1は、当業者が甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件訂正発明3について 本件訂正発明3は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるから、本件訂正発明1と同様に、当業者が甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件訂正発明4について ア 対比 引用発明1の「視認側の偏光板」は、本件訂正発明4の「射出光側偏光板」に相当する。 両者は、少なくとも、以下の点で相違する。 <相違点4> 発光スペクトルに関して、 本件訂正発明4は、「連続的な発光スペクトル」であるのに対して、 引用発明1の「視認側の偏光板」は、連続的であるか否か不明である点。 <相違点5> ポリエステルフィルムに関して、 本件訂正発明4は、「最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、且つ、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmである」のに対して、 引用発明1の「視認側の偏光板」は、そのような値であるか否か不明である点。 <相違点6> 所定角度に関して、 本件訂正発明4は、「垂直」であるのに対して、 引用発明1の「視認側の偏光板」は、垂直ではない点。 イ 判断 (ア)まず、上記<相違点6>について検討する。 上記<相違点3>で検討したように、引用発明1の「視認側の偏光板」において、「『面内の位相差値が3950nm』の『延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸』」と「偏光フィルムの透過軸」を平行(つまり、吸収軸と垂直)となるように配置する動機が生じるとはいえない。 (イ)してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、当業者が甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)まとめ 本件訂正発明4は、当業者が甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4本件訂正発明5について ア 対比 引用発明1の「『視認側の偏光板における』『延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム』」は、本件訂正発明5の「射出光側に配される偏光板の偏光子保護フィルム」に相当する。 両者は、少なくとも、以下の点で相違する。 <相違点7> 発光スペクトルに関して、 本件訂正発明5は、「連続的な発光スペクトル」であるのに対して、 引用発明1の「『視認側の偏光板における』『延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム』」は、連続的であるか否か不明である点。 <相違点8> ポリエステルフィルムに関して、 本件訂正発明5は、「最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、且つ、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmである」のに対して、 引用発明1の「『視認側の偏光板における』『延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム』」は、そのような値であるか否か不明である点。 <相違点9> 所定角度に関して、 本件訂正発明5は、「垂直」であるのに対して、 引用発明1の「『視認側の偏光板における』『延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム』」は、垂直ではない点。 イ 判断 (ア)まず、上記<相違点9>について検討する。 上記<相違点3>で検討したように、引用発明1の「視認側の偏光板」において、「『面内の位相差値が3950nm』の『延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸』」と「偏光フィルムの透過軸」を平行(つまり、吸収軸と垂直)となるように配置する動機が生じるとはいえない。 (イ)してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、当業者が甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)まとめ 本件訂正発明5は、当業者が甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件訂正発明6ないし本件訂正発明10について 本件訂正発明6ないし本件訂正発明10は、本件訂正発明5の発明特定事項をすべて備えるものであるから、本件訂正発明5と同様に、当業者が甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)平成30年7月29日提出の意見書(特許異議申立人) 特許異議申立人は、意見書において、以下のように主張することから、この点について検討する。 ア 「さらに、甲3の出願において特許法第30条第1項の適用対象となった高分子学会予稿集(甲第7号証及び甲第8号証)の記載からも、偏光板の吸収軸と高分子フィルムの遅相軸との成す角度に関わらず、……抑制し得ることが理解できる(特に、甲8の「緒言」の7?11行目を参照されたい。)。 以上のことから、甲3には、『偏光板の吸収軸と高分子フィルムの遅相軸との成す角度にかかわらず、連続的な発光スペクトルを有する白色LEDと、3000?30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムとを組合わせることにより、リタデーションに特有の干渉色を抑制し得ること』が記載されているといえる。」(第4頁下段ないし第5頁上段) しかしながら、特許異議申立人が指摘する甲第8号証の「緒言」の第7ないし11行目には「2枚の偏光板がいかなる角度で置かれていても」との文言はあるものの、該「2枚の偏光板」とは、「液晶デバイスの偏光板」と「サングラスなどの偏光板」のことであり、「液晶デバイスの偏光板」と「複屈折を持つポリマーフィルム」のなす角度がいかなる角度であってもよいということではない。 イ 「リタデーションの高い高分子フィルムの配向主軸を、偏光子の吸収軸に対して垂直に配置することは、下記(ア)?(エ)に記載されているように周知の事項であるから、上述の……当業者は、当該角度を垂直とする動機があるといえる。」(第5頁中段) しかしながら、引用発明1において、「『面内の位相差値が3950nm』の『延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向主軸』」と「偏光フィルムの透過軸」とを「20度以上50度以下」の角度をなすように配置する技術的意義は、甲第1号証の【0076】の記載からして、「偏光フィルムからの直線偏光」を、そのまま直線偏光として出射するのではなく、楕円偏光又は円偏光の状態で出射させることで、より効果的に色ムラを低減することにあるものと解されることから、両者を平行(つまり、吸収軸と垂直)となるように設計変更する動機がない。 (エ)まとめ よって、特許異議申立人の上記主張は、上記「(1)ないし(5)」の判断を左右するものではない。 (7)【理由1】(進歩性欠如)についてのまとめ 本件訂正発明1、本件訂正発明3ないし本件訂正発明10は、当業者が甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件訂正発明1、本件訂正発明3ないし本件訂正発明10に係る特許は、【理由1】によっては取り消すことはできない。 2 【理由2】(明確性要件違反)について (1)特許異議申立人の主張は、おおよそ、以下のものである。 「訂正前の本件発明1、4、5における、リタデーションが如何なる波長のリタデーションを意味するのか不明である。」 (2)判断 特許権者が提出した乙第1号証ないし乙第3号証によれば、リタデーションは、ナトリウムD線(589.3nm)の波長で測定することが技術常識であると認められることから、本件訂正発明1、本件訂正発明3ないし本件訂正発明10が不明確であるとはいえない。 (3)【理由2】(明確性要件違反)についてのまとめ 本件訂正発明1、本件訂正発明3ないし本件訂正発明10に係る特許は、【理由2】によっては取り消すことはできない。 第4 むすび 本件訂正発明1、本件訂正発明3ないし本件訂正発明10に係る特許は、取消理由通知書に記載された理由、つまり、特許異議申立書に記載された理由によっては取り消すことはできない。 また、請求項2に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2に対して、特許異議申立人鈴木美香がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、 前記バックライト光源が連続的な発光スペクトルを有する白色光源であり、前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムが積層された偏光板であり、前記偏光子保護フィルムのうち、液晶セルに対して射出光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムは、3000?30000nmの面内リタデーションを有し、最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであるポリエステルフィルムであり、且つ、その配向主軸が偏光子の吸収軸と垂直になるように配置されている、 液晶表示装置。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 前記ポリエステルフィルムの面内リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上1.2以下である請求項1に記載の液晶表示装置。 【請求項4】 偏光子の両側に偏光子保護フィルムが積層された偏光板であり、 少なくとも片側の偏光子保護フィルムが3000?30000nmの面内リタデーションを有し、最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであるポリエステルフィルムであり、且つ、その配向主軸が偏光子の吸収軸と垂直になるように配置されている、 連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の液晶セルに対して射出光側に配される射出光側用偏光板であり、前記ポリエステルフィルムが前記偏光子の射出光側に配される、射出光側用偏光板。 【請求項5】 3000?30000nmの面内リタデーションを有し、最外層表面の中心面平均粗さ(SRa)が0.008?0.02μmであり、十点平均粗さ(SRz)が0.3?1.5μmであるポリエステルフィルムからなり、且つ、その配向主軸が偏光子の吸収軸と垂直となるように配置される、 連続的な発光スペクトルを有する白色光源をバックライト光源とする液晶表示装置の液晶セルに対して射出光側に配される偏光板の射出光側用偏光子保護フィルム。 【請求項6】 前記ポリエステルフィルムの面内リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が0.2以上である請求項5に記載の偏光子保護フィルム。 【請求項7】 前記ポリエステルフィルムが易接着層を有する、請求項5又は6に記載の偏光子保護フィルム。 【請求項8】 前記ポリエステルフィルムが少なくとも3層からなり、 最外層に平均粒径1.0?3.5μmの不活性粒子を含有し、 最外層の厚みは不活性粒子の平均粒径以上である、請求項5?7のいずれかに記載の偏光子保護フィルム。 【請求項9】 前記ポリエステルフィルムの最外層中の不活性粒子含有量が0.005?0.05質量%であり、 前記ポリエステルフィルムのヘイズが3%以下である、請求項5?8のいずれかに記載の偏光子保護フィルム。 【請求項10】 前記ポリエステルフィルムの最外層以外の層に紫外線吸収剤が含有され、 380nmの光線透過率が20%以下である、請求項5?9のいずれかに記載の偏光子保護フィルム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-08-13 |
出願番号 | 特願2013-551788(P2013-551788) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(G02F)
P 1 651・ 121- YAA (G02F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 廣田 かおり |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 星野 浩一 |
登録日 | 2017-05-12 |
登録番号 | 特許第6136935号(P6136935) |
権利者 | 東洋紡株式会社 |
発明の名称 | 液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルム |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |