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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
管理番号 1344835
異議申立番号 異議2018-700009  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-05 
確定日 2018-09-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6156342号発明「積層塗膜及び塗装物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6156342号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第6156342号の請求項1、2、4、5、7?9に係る特許を維持する。 特許第6156342号の請求項3、6に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6156342号(以下「本件特許」という。)の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成26年12月2日の出願であって、平成29年6月16日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成30年1月5日に特許異議申立人中西恒裕(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、平成30年2月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年4月20日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して、平成30年6月6日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の請求
1.訂正の内容
平成30年4月20日付け訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第6156342号明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した明細書、特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。(下線部は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「光輝性層の上に黒色顔料が分散した透光性を有する着色層が積層され、上記光輝性層が黒色下地層の上に積層されてなる積層塗膜であって、上記光輝性層は、光輝材を含有する塗膜であり、上記着色層の黒色顔料は、一次粒子が凝集したストラクチャー、又は該ストラクチャーが機械的に絡み合った集合体として存在し、そのストラクチャー又は集合体は、50nm以上200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、上記黒色顔料の濃度が0.1質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする積層塗膜。」と記載されているのを、「光輝性層の上に黒色顔料としてカーボンブラックが分散した透光性を有する着色層が積層され、上記光輝性層が黒色下地層の上に積層されてなる積層塗膜であって、上記光輝性層は、光輝材としてアルミフレークを含有する塗膜であり、上記着色層のカーボンブラブラックは、一次粒子が凝集したストラクチャー、又は該ストラクチャーが機械的に絡み合った集合体として存在し、そのストラクチャー又は集合体は、50nm以上200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、上記カーボンブラックの濃度が0.1質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする積層塗膜。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、4、5、7?9についても同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「請求項1において、上記着色層の黒色顔料の濃度が0.2質量%以上0.4質量%以下であることを特徴とする積層塗膜。」と記載されているのを、「請求項1において、上記着色層のカーボンブラックの濃度が0.2質量%以上0.4質量%以下であることを特徴とする積層塗膜。」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4、5、7?9についても同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1乃至請求項3のいずれか一において、上記光輝性層は、黒色顔料を含有する塗膜であることを特徴とする積層塗膜。」と記載されているのを、「請求項1又は請求項2において、上記光輝性層は、黒色顔料を含有する塗膜であることを特徴とする積層塗膜。」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5、7?9についても同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「請求項6において、上記アルミフレークが蒸着アルミフレークであることを特徴とする積層塗膜。」と記載されているのを、「請求項1、2、4及び5のいずれか一において、上記アルミフレークが蒸着アルミフレークであることを特徴とする積層塗膜。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8、9についても同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1乃至請求項7のいずれか一において、上記着色層の上に透明クリヤ層が積層されていることを特徴とする積層塗膜。」と記載されているのを、「請求項1、2、4、5及び7のいずれか一において、上記着色層の上に透明クリヤ層が積層されていることを特徴とする積層塗膜。」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9についても同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1乃至請求項8のいずれか一に記載された積層塗膜を備えていることを特徴とする塗装物。」と記載されているのを、「請求項1、2、4、5、7及び8のいずれか一に記載された積層塗膜を備えていることを特徴とする塗装物。」に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0008】に「黒色顔料が分散した」と記載されているのを、「黒色顔料としてカーボンブラックが分散した」に訂正し、「光輝材を含有する」と記載されているのを、「光輝材としてアルミフレークを含有する」に訂正し、「着色層の黒色顔料」と記載されているのを、「着色層のカーボンブラック」に訂正し、「黒色顔料の濃度」と記載されているのを「カーボンブラックの濃度」に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0009】、【0010】、【0012】、【0015】、【0017】、【0019】及び【0020】にそれぞれ「黒色顔料」と記載されているのを、「カーボンブラック」に訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0021】を削除する。
(12)訂正事項12
明細書の段落【0024】に「光輝材の厚さが薄い場合、積層塗膜に入射する光が光輝材を透過して下地で反射される。」と記載されているのを、「アルミフレークの厚さが薄い場合、積層塗膜に入射する光がアルミフレークを透過して下地で反射される。」に訂正する。
(13)訂正事項13
明細書の段落【0027】に「黒色顔料が分散した」と記載されているのを、「黒色顔料としてカーボンブラックが分散した」に訂正し、「光輝材を含有する」と記載されているのを、「光輝材としてアルミフレークを含有する」に訂正し、「着色層の黒色顔料」と記載されているのを、「着色層のカーボンブラック」に訂正し、「黒色顔料の濃度」と記載されているのを「カーボンブラックの濃度」に訂正する。
(14)訂正事項14
明細書の段落【0041】及び【0043】にそれぞれ「実施例2」と記載されているのを、「参考例」に訂正する。
(15)訂正事項15
明細書の段落【0038】、【0043】及び【0046】にそれぞれ「実施例1」と記載されているのを、「実施例」に訂正する。
(16)訂正事項16
明細書の段落【0047】及び【0049】にそれぞれ「実施例1,2及び比較例」と記載されているのを、「実施例、参考例及び比較例」に訂正する。
(17)訂正事項17
明細書の段落【0048】及び【0051】にそれぞれ「実施例1,2」と記載されているのを、「実施例及び参考例」に訂正する。
(18)訂正事項18
明細書の段落【0051】に「実施例1は」と記載されているのを、「実施例は」に訂正する。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では、着色層について、黒色顔料が分散していることを特定している。
これに対して、訂正事項1により、訂正後の請求項1は、「黒色顔料としてカーボンブラックが分散した透光性を有する着色層」、「上記着色層のカーボンブラック」及び「上記カーボンブラックの濃度」との記載により、黒色顔料としてカーボンブラックを用いることを特定し、限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項2、4、5、7?9は、訂正後の請求項1に記載された「黒色顔料としてカーボンブラックが分散した」、「上記着色層のカーボンブラック」及び「上記カーボンブラックの濃度」との記載を引用することにより、訂正後の請求項2、4、5、7?9に係る発明における着色層に分散した黒色顔料をより具体的に特定し、更に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正前の請求項1に係る発明では、光輝性層について、光輝材を含有することを特定している。
これに対して、訂正事項1により、訂正後の請求項1は、「光輝性層は、光輝材としてアルミフレークを含有する」ことを特定し、限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項2、4、5、7?9は、訂正後の請求項1に記載された「光輝材としてアルミフレークを含有する」との記載を引用することにより、訂正後の請求項2、4、5、7?9に係る発明における光輝性層が含有する光輝材をより具体的に特定し、更に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項2、4、5、7?9の記載について訂正するものではなく、請求項2、4、5、7?9のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
着色層の黒色顔料について、請求項3には「請求項1又は請求項2において、上記着色層の黒色顔料がカーボンブラックであることを特徴とする積層塗膜。」との記載がなされ、該着色層の黒色顔料に係る説明として、段落【0021】には、「上記着色層の黒色顔料としてはカーボンブラックを好ましく採用することができる。」との記載がなされている。
光輝性層の光輝材について、請求項6には「請求項4又は請求項5において、上記光輝材がアルミフレークであることを特徴とする積層塗膜。」との記載がなされ、光輝性層の光輝材に係る説明として、段落【0022】には、「上記光輝性層としては、明度を高める観点から、白色系又はグレー系の層であることが好ましい。光輝材としては、アルミ箔を粉砕して得られるアルミフレークを採用すること、さらには、薄い基材にアルミニウムを蒸着したフィルムを粉砕することで得られる、表面の平滑度を高めた蒸着アルミフレークを採用することが、輝度を高めて金属質感を得る上で好ましい。」との記載がなされている。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正(「黒色顔料」を「カーボンブラック」とする訂正)に伴い、請求項1の記載と請求項2の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項2は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、請求項1の記載と請求項2の記載との整合を図るために「黒色顔料」を「カーボンブラック」とする訂正であるから、上記訂正事項1と同じく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、請求項1の記載と請求項2の記載の整合のために「黒色顔料」を「カーボンブラック」とする訂正であるから、上記訂正事項1と同じく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、請求項3を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、請求項3を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(4) 訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、上記訂正事項3に係る訂正(請求項3の削除)に伴い、訂正前の請求項4が引用する請求項3を削除し、請求項間の引用関係の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上述の如く、請求項4、5、7?9の引用請求項数を減少する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、上述の如く、請求項4、5、7?9各々の引用請求項数を減少する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、請求項6を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲
内の訂正であること
訂正事項5は、請求項6を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、上記訂正事項3に係る訂正(請求項3の削除)及び訂正事項5に係る訂正(請求項6の削除)に伴い、訂正前の請求項7が引用する請求項3、6を削除し、請求項間の引用関係の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、上述の如く、請求項7?9の引用請求項数を減少する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、上述の如く、請求項7?9の引用請求項数を減少する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、上記訂正事項3に係る訂正(請求項3の削除)及び訂正事項5に係る訂正(請求項6の削除)に伴い、訂正前の請求項8が引用する請求項3、6を削除し、請求項間の引用関係の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、上述の如く、請求項8、9各々の引用請求項数を減少する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、上述の如く、請求項8、9各々の引用請求項数を減少する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、上記訂正事項3に係る訂正(請求項3の削除)及び訂正事項5に係る訂正(請求項6の削除)に伴い、訂正前の請求項9が引用する請求項3、6を削除し、請求項間の引用関係の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、上述の如く、請求項9の引用請求項数を減少する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8は、上述の如く、請求項9の引用請求項数を減少する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項9は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項9は、請求項1、2、4、5、7?9に記載された「黒色顔料」及び「光輝材」に関し、着色層の黒色顔料及び光輝性層の光輝材として使用するものを具体的に限定する訂正であるから、上記訂正事項1と同じく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9は、上記訂正事項1と同じく、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(10)訂正事項10
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項10は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項10は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために「黒色顔料」を「カーボンブラック」とする訂正であるから、上記訂正事項1と同じく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項10は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために「黒色顔料」を「カーボンブラック」とする訂正であるから、上記訂正事項1と同じく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(11)訂正事項11
ア 訂正の目的について
訂正事項11は、上記訂正事項1、3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項11は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項11は、上記訂正事項1、3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項11は、段落【0021】を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(12)訂正事項12
ア 訂正の目的について
訂正事項12は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項12は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項12は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために「光輝材」を「アルミフレーク」とする訂正であるから、上記訂正事項1と同じく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項12は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために「光輝材」を「アルミフレ-ク」とする訂正であるから、上記訂正事項1と同じく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(13)訂正事項13
ア 訂正の目的について
訂正事項13は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項13は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項13は、請求項1、2、4、5、7?9に記載された「黒色顔料」及び「光輝材」に関し、その解釈に影響を与え得る訂正であるが、当該訂正事項13については、着色層の黒色顔料及び光輝性層の光輝材として使用するものを具体的に限定する訂正であるから、上記訂正事項1と同じく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項13は、上記訂正事項1と同じく、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成であるから、当該訂正事項13は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(14)訂正事項14
ア 訂正の目的について
訂正事項14は、明細書の段落【0041】及び【0043】にそれぞれ「実施例2」と記載されているのを、「参考例」に訂正することにより、訂正前の明細書の段落【0041】?【0043】に記載されている光輝性層が積層されている下地層がグレーである例を参考例として実施例から外すことで、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正である。よって、訂正事項14は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項14は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項14は、明細書の段落【0041】及び【0043】にそれぞれ「実施例2」と記載されているのを、「参考例」に訂正するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(15)訂正事項15
ア 訂正の目的について
訂正事項15は、上記訂正事項14に係る訂正に伴う訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項15は、明細書の段落【0038】、【0043】及び【0046】にそれぞれ「実施例1」と記載されているのを、「実施例」とする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲
内の訂正であること
訂正事項15は、明細書の段落【0038】、【0043】及び【0046】にそれぞれ「実施例1」と記載されているのを、「実施例」に訂正するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(16)訂正事項16
ア 訂正の目的について
訂正事項16は、上記訂正事項14、15に係る訂正に伴う訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項16は、明細書の段落【0047】及び【0049】にそれぞれ「実施例1,2及び比較例」と記載されているのを、「実施例、参考例及び比較例」とする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項16は、明細書の段落【0047】及び【0049】にそれぞれ「実施例1,2及び比較例」と記載されているのを、「実施例、参考例及び比較例」に訂正するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(17)訂正事項17
ア 訂正の目的について
訂正事項17は、上記訂正事項14、15に係る訂正に伴う訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項17は、明細書の段落【0048】及び【0051】にそれぞれ「実施例1,2」と記載されているのを、「実施例及び参考例」とする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項17は、明細書の段落【0048】及び【0051】にそれぞれ「実施例1,2」と記載されているのを、「実施例及び参考例」に訂正するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(18)訂正事項18
ア 訂正の目的について
訂正事項18は、上記訂正事項14、15に係る訂正に伴う訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項18は、明細書の段落【0051】に「実施例1は」と記載されているのを、「実施例は」とする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項18は、明細書の段落【0051】に「実施例1は」と記載されているのを、「実施例は」に訂正するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(19)一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1?9について、請求項2?9は、直接又は間接的に請求項1を引用しているものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(20)明細書又は図面の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項9?18は、一群の請求項1?9に関係する訂正である。したがって、訂正事項9?18は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。

3.まとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第4項並びに同条第9項の規定によって準用する第126条第4項?第6項に適合するので、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正を認める。

第3 本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1、2、4、5、7?9に係る発明(以下「本件発明1、2、4、5、7?9」という。)は、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4、5、7?9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
光輝性層の上に黒色顔料としてカーボンブラックが分散した透光性を有する着色層が積層され、
上記光輝性層が黒色下地層の上に積層されてなる積層塗膜であって、
上記光輝性層は、光輝材としてアルミフレークを含有する塗膜であり、
上記着色層のカーボンブラックは、一次粒子が凝集したストラクチャー、又は該ストラクチャーが機械的に絡み合った集合体として存在し、そのストラクチャー又は集合体は、50nm以上200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、
上記カーボンブラックの濃度が0.1質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする積層塗膜。
【請求項2】
請求項1において、
上記着色層のカーボンブラックの濃度が0.2質量%以上0.4質量%以下であることを特徴とする積層塗膜。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
上記光輝性層は、黒色顔料を含有する塗膜であることを特徴とする積層塗膜。
【請求項5】
請求項4において、
上記光輝性層の上記黒色顔料がカーボンブラックであることを特徴とする積層塗膜。
【請求項7】
請求項1、2、4及び5のいずれか一において、
上記アルミフレークが蒸着アルミフレークであることを特徴とする積層塗膜。
【請求項8】
請求項1、2、4、5及び7のいずれか一において、
上記着色層の上に透明クリヤ層が積層されていることを特徴とする積層塗膜。
【請求項9】
請求項1、2、4、5、7及び8のいずれか一に記載された積層塗膜を備えていることを特徴とする塗装物。」

第4 当審の判断
1.取消理由通知書に記載した取消理由の概要
平成30年2月19日付け取消理由通知書に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。なお、申立人の申立て理由は、全て通知した。
[理由1]本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[理由2]本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由3]平成29年4月27日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

以下、「甲第1号証」等を「甲1」等といい、「甲第1号証に記載された発明」等を「甲1発明」等といい、「甲第1号証に記載された事項」等を「甲1記載事項」等という。

<刊行物一覧>
甲1:特開2002-273332号公報
甲2:特許第4851393号公報
甲3の1:ロドニー L. テイラー外1名、「黒色度および底色に関するカーボンブラックの特性と分散効果」、色材、69〔6〕、1996、389-395頁
甲4:特許第3946837号公報
甲5:特許第4455731号公報

(1)[理由1]
本件発明1、2、4、5、7?9は、甲1発明、甲2記載事項、甲3の1記載事項、甲4記載事項及び甲5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)[理由2]
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例1及び実施例2において、用いられるカーボンブラックのピーク粒径は、共に180nmの場合のみであって、本件発明1?9に特定されている「着色層の黒色顔料」の「ストラクチャー又は集合体」のピーク粒径についての数値範囲である「50nm以上200nm以下の粒径範囲」すべてにわたって示されているとはいえない。よって、本件発明の課題を解決していることが、本件特許の発明の詳細な説明には、実施例等によって示されていないので、本件発明1、2、4、5、7?9は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
イ 請求項1の「着色層の黒色顔料は、一次粒子が凝集したストラクチャー、又は該ストラクチャーが機械的に絡み合った集合体として存在し、そのストラクチャー又は集合体は、50nm以上200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち」の記載は、粒径の測定方法が特定されていないので、不明確である。
よって、本件発明1、2、4、5、7?9は、明確でない。
ウ 請求項1の「黒色下地層の上に積層されてなる積層塗膜」の記載は、黒色下地層における黒色の定義がなされていないので、不明確である。
よって、本件発明1、2、4、5、7?9は、明確でない。

(3)[理由3]について
平成29年4月27日付け手続補正書での請求項1?5、8、9についての補正(以下「当該補正」という。)は、請求項1?5、8、9の発明特定事項に、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されていない、以下の新たな技術的事項を導入するもので、当該補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲においてしたものではない。
(新たな技術的事項)光輝層が光輝材としてアルミフレークを含有しない塗膜である場合に、上記光輝層が黒色下地層の上に積層されている点。

2.理由2(特許法第36条第6項第1号及び第2号)について
事案に鑑み、理由2をまず検討する。
(1)理由2のアについて
本件発明の課題は、「積層塗膜によって鮮やかな且つ陰影感のあるグレーを発現すること、特に有彩色が混ざった感を与えない、透明感を有する金属質感の高いグレー(メタリックグレー)を発現すること」(本件特許明細書段落【0004】)である。
そして、本件特許明細書の段落【0012】?【0027】、図3及び図4によれば、以下の(ア)?(キ)が読み取れる。
(ア)粒径が200nm前後であるカーボンブラックを多く含有する塗膜は、レイリー散乱によって赤の光(波長610?750nm)が多く乱反射され、青の光(波長435?480nm)のレイリー散乱は生じないので、赤味を帯びやすくなる。(段落【0014】及び図3)
(イ)カーボンブラックの粒径が例えば150nmになると、レイリー散乱式から明らかなように、赤の光の散乱が大きく減じられ、カーボンブラック粒子による赤の光の散乱が大きく減じられるため、赤色の発現が強く抑制される。(段落【0015】及び図4)
(ウ)(レイリー散乱式)
ks=[2π^(5)/3]×n×[(m^(2)-1)/(m^(2)+2)]^(2)×[d^(6)/λ^(4)]
nは粒子数、mは反射係数である。(段落【0016】)
(エ)カーボンブラックが200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつということは、粒径dが200nm以下であるカーボンブラックの割合が多くなるということであり、粒径dが200nm以下であるカーボンブラック黒色顔料の割合が多くなる分、赤の光のレイリー散乱が抑制され、積層塗膜が赤味を帯びた状態になることが防止される。(段落【0017】)
(オ)カーボンブラックの粒径dが小さくなると、赤の光のレイリー散乱が抑えられるが、その一方で青の光のレイリー散乱を生じやすくなるため、塗膜は青味を若干帯びてくる可能性があるが、赤味や黄味とは違って、若干の青味はグレーの色調をくすませない。(段落【0019】)
(カ)好ましいのは、着色層のカーボンブラックは、180nm以下の粒径範囲に、さらには150nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつことである。これにより、赤や黄の発色がさらに抑えられ、透明感を有する金属質感の高いグレーの発現に有利になる。(段落【0020】)
(キ)本発明によれば、鮮やかな且つ陰影感のあるグレーを発現させること、特に有彩色が混ざった感を与えない、透明感を有する金属質感の高いグレー(メタリックグレー)を発現させることが容易になる。(段落【0024】)
上記の(ア)?(キ)によれば、数値範囲「50nm以上200nm以下」という、肉眼視することができない小さいサイズのカーボンブラックになると、1/λ^(4)(λは波長)に比例してレイリー散乱を生ずるから、青色に比べて波長λが大きい赤色の発現が強く抑制されることになる。つまり、レイリー散乱では、散乱光の強度は波長λの4乗に反比例し、この場合、赤の波長(610?750nm)は、青の波長(435?480nm)の約1.5倍であるから、散乱は1.5の4乗倍、すなわち、約5倍も弱いということになる。
なお、このカーボンブラックの粒径とレイリー散乱との関係により、色味が変化する点は、申立人の提出した甲3の1にも記載されれている(甲3の1、391頁の「4.カーボンブラックと可視光線の相互作用」)。
そうすると、本件発明において、着色層のカーボンブラックのストラクチャー又は集合体が50nm以上200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつということは、レイリー散乱を生ずる粒径が200nm以下であるカーボンブラックが比較的多く分散しているということである。そのため、青の光に比べて、赤の光のレイリー散乱が抑制され、積層塗膜が赤味を帯びた状態になることが防止されることになる。さらに、ピーク粒径が小さくなるほど、レイリー散乱を生ずるカーボンブラックの割合が増えるのであるから、それだけ、積層塗膜が赤味を帯びた状態になることが防止できることが理解できる。
したがって、本件特許明細書の実施例として記載されているカーボンブラックのピーク粒径は180nmの場合のみであるが、ピーク粒径が50nm?200nmであれば、赤色の発現が強く抑制されることにより、積層塗膜によって鮮やかな且つ陰影感のあるグレーを発現すること、特に有彩色が混ざった感を与えない、透明感を有する金属質感の高いグレー(メタリックグレー)を発現し、本件発明の課題を解決していることは明らかであるから、本件発明1、2、4、5、7?9は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえるので、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に違反するものではない。

(2)理由2のイについて
本件発明のカーボンブラックの粒径については、本件特許明細書の段落【0011】において「この粒径dは、電子顕微鏡観察による測定で得られる粒径(長径と短径の平均値)である。」と記載(粒径を定義)している。
同段落【0011】において「図1に一例を示すストラクチャーにおいて、2は一次粒子、Lはストラクチャーは長径、Mはその短径である。」と記載し、図1において、その長径L及び短径Mを特定している。カーボンブラックがストラクチャーが機械的に絡み合った集合体の場合であっても、集合体全体を一つのストラクチャーとみたてれば、同様に粒径を求められることは、当業者が理解できる。
そうすると、カーボンブラックの粒径に関して、本件発明1、2、4、5、7?9は、明確であるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に違反するものではない。

(3)理由2のウについて
本件訂正により、訂正前の明細書の段落【0041】?【0043】に記載されている光輝性層が積層されている下地層がグレーである「実施例2」を「参考例」に訂正され、実施例から外されたので、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合が図られ、請求項1に記載の「黒色下地層」の「黒色」はグレーを含まないことが明確になった。「黒色下地層」の「黒色」に関して、本件発明1、2、4、5、7?9は、明確になったので、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に違反するものではない。

(4)小括
よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできず、本件発明1、2、4、5、7?9に係る特許は、特許法第113条第4号に該当することを理由として、取り消すことはできない。

3.理由3(特許法第17条の2第3項 )について
次に、理由3を検討する。
(1)本件訂正により、訂正前の請求項1に「上記光輝性層は、輝材を含有する塗膜であり、」と記載されているのを、「上記光輝性層は、光輝材としてアルミフレークを含有する塗膜であり、」に訂正され、請求項6は削除しされた。これにより、理由3は解消した。
(2)小括
よって、本件発明1、2、4、5、8、9に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるとはいえず、本件発明1、2、4、5、8、9に係る特許は、特許法第113条第1号に該当に該当することを理由として、取り消すことはできない。

4.理由1(特許法第29条第2項)について
(1)甲各号証
ア 甲1
甲1には、以下の記載がある。
「【請求項1】下記(1)?(3)の塗膜を形成する工程を順次施す光輝性塗膜形成方法。
(1)基材に隠蔽膜厚が10μm以下の光輝性ベース塗膜を形成する工程、(2)カラークリヤーベース塗膜を形成する工程、(3)クリヤートップ塗膜を形成する工程;」
「【請求項6】請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の光輝性塗膜形成方法により塗装された塗装物。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高耐候性で着色性を有する輝度感が強く深み感のある光輝感を与える光輝性塗膜形成方法および塗装物に関する。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的は、高耐候性で着色性を有する輝度感が強く深み感のある光輝感を与える良好な光輝性塗膜形成方法および塗装物を提供することである。」
「【0011】光輝性ベース塗膜を基材上に形成する方法は特に限定されないが、スプレー法、ロールコーター法等が好ましい。上記光輝性ベース塗料を塗装した光輝性ベース塗膜の乾燥膜厚は、5?10μmが好ましく、この範囲の乾燥膜厚を維持することにより、塗膜外観が良好で輝度感が強い光輝感を与える光輝性塗膜を得ることができる。
【0012】上記光輝性ベース塗料は、ビヒクルおよび形成した塗膜の隠蔽膜厚が10μm以下となる光輝性顔料を含んでいる。上記光輝性顔料の含有量は、以下に示す光輝性顔料を所望の光輝感が得られるように選択し、白黒隠蔽紙に膜厚を変えて塗装し焼き付け、目視で白黒境界が区別できなくなる乾燥膜厚が、10μm以下となるように選択する。隠蔽膜厚が、10μmを超えると、下地に対する色発色の変動が発生するという不具合を生じる。より好ましくは5?8μmである。
【0013】上記光輝性ベース塗料に含まれる光輝性顔料としては、従来から塗料用として常用されているものを含有することができる。このようなものとして、例えば、アルミニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料、干渉マイカ顔料、着色マイカ顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク、金属めっきガラスフレーク、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、金属チタンフレーク、グラファイト、ステンレスフレーク、板状酸化鉄、ホログラム顔料およびコレステリック液晶ポリマーからなるフレーク状顔料等が挙げられる。」
「【0036】実施例1?11、比較例1?4
基材の調製
ダル鋼板(長さ300mm、幅100mmおよび厚さ0.8mm)を燐酸亜鉛処理剤(「サーフダインSD2000」、日本ペイント社製)を使用して化成処理した後、カチオン電着塗料(「パワートップU-50」、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が25μmとなるように電着塗装した。次いで、160℃で30分間焼き付けた後、中塗り塗料(「オルガS-90シーラーグレー」、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が40μmとなるようにエアースプレー塗装し、140℃で30分間焼き付けて中塗り塗膜を形成し、基材とした。
【0037】光輝性ベース塗料の調製
・・・塗料A:アルミニウムフレーク顔料(「アルペーストMH-8801」、旭化成工業社製)を、表1に示す量を配合した塗料
塗料B:水酸化セリウムをオキシ塩化ビスマス顔料100質量部に対して3質量部被覆したビスマス光輝性顔料(エンゲルハード社製、粒径8?10μmの結晶が99%を占める、結晶厚50nm)を、表1に示す量を配合した塗料」
「【0041】
【表1】


甲1の表1には、実施例1-3、6-8、11において、着色顔料としてカーボンブラックを含有し、カーボンブラックの濃度が0.5質量%又は1質量%であるカラークリヤーベース塗膜が記載されている。
甲1の表1には、実施例1-3、6、7、11において、塗料種としてアルミフレーク顔料を配合した塗料Aを含有し、その他の顔料としてカーポンプラックを含有する光輝陛ベース塗膜が記載されている。
上記記載事項から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「ダル鋼板に基材にグレーの中塗り塗膜を設けたものを基材とし、当該基材の中塗り塗膜に、隠蔽膜厚が10μm以下であって、塗料種としてアルミフレーク顔料を配合した塗料Aを含有し、その他の顔料としてカーポンプラックを含有する、光輝性ベース塗膜を形成し、その上に着色顔料としてカーボンブラックを含有しカーボンブラックの濃度が0.5質量%又は1質量%であるカラークリヤーベース塗膜を形成し、さらにクリヤートップ塗膜を形成した塗装膜。」

イ 甲2
甲2には、以下の記載がある。
「【請求項1】
L*a*b表色系におけるL*値が3以下である基材上に、鱗片状アルミニウム顔料を含むメタリックベース塗料、染料及び/又は着色顔料を含み硬化塗膜として20μmの膜厚となるように塗装して得られる塗膜の波長400nm?700nmの光線透過率が60%以上となる第1カラークリヤー塗料、染料を含み硬化塗膜として20μmの膜厚となるように塗装して得られる塗膜の波長400nm?700nmの光線透過率が40%以上となる第2カラークリヤー塗料を順次塗装する塗膜形成方法」
「【0021】
本発明においては特に、蒸着アルミニウムフレーク顔料を使うことが、複層塗膜における光輝感をより向上せしめる点から好ましい。蒸着アルミフレーク顔料とは、蒸着アルミニウム膜を細断して鱗片状とした顔料である。」
また、甲2には、鱗片状アルミニウム顔料又は蒸着アルミニウム顔料を含有しているメタリックベース塗料1及び2が基材に塗装されていることが記載されている(段落【0054】、【0059】の【表2】)。

イ 甲3の1
甲3の1には、以下の記載がある。
「カーボンブラックの基礎的伜陛は、粒子径の分布状態、細孔の大きさの分布状態、そして表面活性度合いの分布状態である。」(389頁右側5-8行目)
「『ストラクチャー』という用語は、一般的にカーボンブラックの凝集体に存在する粒子が鎖あるいは葡萄のように連なった部分を指す。」(390頁左側6-8行目)
「ファーネス製法によるカーボンブラックの平均粒子径は、概ね8nmから100nm程度までの範囲内にある。粒度分布は分散カーボンブラックの黒色度あるいは漆黒性の度合いに結びつく最も重要な特性であり、粒子径が細かいほど漆黒性が増す。」(389頁右側17行目-390頁左側4行目)
「カーボンブラックの粒子サイズは黒色度あるいは漆黒性に影響を与え、それは黒色度指数で表される(図-1)」 と記載され、図-1には、カーボンブラックの粒子サイズが70nmである塗料について記載され、カーボンブラックの粒子径と黒色度(BLAKNESS)とが明らかに相関関係があることが示されている(391頁右側下から11行目-下から2行目、図-1)。
「ハイカラーカーボンブラックを使用した三種類のアクリル塗料のスプレーパネル(試料Bと試料CがRaven 5000 Ultra IIを使用)を評価した。これらのパネルから薄片切断されたサンプルをTEMにより拡大撮影したのが図-6、図-7、図-8であり、それぞれのミクロ分散状態を見ることができる。」と記載されており、塗膜中にカーボンブラックが凝集体/集合体として存在していることがTEMにより観察されたことが示されている(図-6?8)
「ここで明らかなように、資料Aでは資料Bよりはるかに広い凝集体/集合体サイズの分布が認められ、資料Cに比べるとそれはさらに顕著である。この現象は、イメージアナライザーにより解析された集合体/凝集体(二次的投影面積)の分布漸次線(図-9)から明らかである。これら三種の資料における反射率と波長との相関関係は図-10に示されている。試料AとBの正傾斜が長波長での「反射率」の高さを表し(茶味)、一方、試料Cは負傾斜(青味)を表す。これらの曲線は、試料Cが最も漆黒性が高い塗料であり試料Aがその逆であるという相対的状況を示している。」と記載され、カーボンブラックの粒子径と600?700nmを含む長波長における反射率の関係が示されている(393頁右側3行目-395頁左側3行目)。

ウ 甲4
甲4には、以下の記載がある。
「【請求項1】
樹脂成分100重量部(固形分)あたり着色顔料を0.1?10重量部、干渉性顔料を1?20重量部およびカ-ボンブラックを0.1?4重量部含有するダ-クカラ-塗料を塗装し、ついで該塗面に、樹脂成分100重量部(固形分)あたりカ-ボンブラックを0.01?5重量部、着色顔料を0?5重量部を含有させてなるカラ-クリヤ塗料を塗装することを特徴とする塗膜形成法。」

エ 甲5
甲5には、以下の記載がある。
「【請求項5】
被塗装物表面に対して、
(1)着色成分および/または光輝材を含有している第1塗料を塗布して第1塗膜を形成する工程、
(2)前記第1塗膜を焼き付け硬化せずに、その上に、着色成分を含有している第2塗膜を形成する工程、
(3)さらに、前記第2塗膜を焼き付け硬化せずに、その上に、クリア塗料を塗布してクリア塗膜を形成する工程
を含む多層塗膜形成方法であって、前記第2塗料の着色成分の含有量が塗料中の樹脂固形分に対して0.01?1重量%であることを特徴とする高意匠性多層塗膜形成方法。」
「【0047】
・・・オルガP-2グレー(・・・グレー色)を、乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、10分間セッティングの後、140℃で20分間焼き付け硬化させ、被塗装物表面を中塗り塗膜にした。」
また、甲5の【0057】の【表1】には、製造例1の第1塗料の着色成分としてカーボンブラック顔料を含有していること及び第1塗料の光輝材としてアルミニウム顔料ペーストを含有していることが示されている。
また、実施例1-3では、被塗装物表面に高意匠性多層塗膜を備えている塗装物が示されている(【0047】?【0049】)。

(2)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも、次の相違点1において相違する。
(相違点1)本件発明1では、光輝性層が形成された黒色下地層は黒色であるのに対して、甲1発明の光輝性ベース塗膜が形成された基材の中塗り塗膜がグレーである点。

相違点1を検討する。
甲1発明は、光輝性ベース塗膜自体が、隠蔽膜厚が10μm以下となるようなものを採用することで、光輝性ベース塗膜より下側の層の色を隠すことで、光輝性ベース塗膜とカラークリヤペース塗膜の二層で塗装の表面上に現れる色を実現するものである。
よって、甲1発明において、光輝性ベース塗膜の下側の層の色を黒色とすることの動機付けがない。又、甲2?5においても、光輝性層が形成された層の色を黒色することは記載されていないし、示唆する記載もない。
本件発明1は、光輝性層が形成された黒色下地層の色を黒くすることで、下地層と光輝性層と着色層の三層で金属質感の高いグレーを発現させるとの格別な作用効果を奏する。
以上のとおりであるから、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1発明、甲2記載事項、甲3の1記載事項、甲4記載事項及び甲5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明2、3、5、7?9について
本件発明2、3、5、7?9は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明、甲2記載事項、甲3の1記載事項、甲4記載事項及び甲5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4) 小括
以上のとおり、本件発明1、2、3、5、7?9は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、本件発明1、2、3、5、7?9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1、2、4、5、7?9に係る特許を取り消すことはできない。
また、本件特許の請求項3、6は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項3、6に対して申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。よって、本件特許の請求項3、6に係る特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
また、他に本件発明1、2、4、5、7?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
積層塗膜及び塗装物
【技術分野】
【0001】
本発明は積層塗膜及び塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車の車体や自動車の部品等の基材表面には複数の塗膜が重ねられて基材の保護及び外観の向上が図られている。例えば、特許文献1には、自動車の車体の中塗り塗膜の上に積層塗膜を形成することが記載されている。この公報には、一定の塗膜外観(発色性)を再現性良く得るために、中塗り塗膜の上にメタリックベース塗膜、マイカベース塗膜及びカラークリヤー塗膜を順次重ねることが開示されている。また、この公報には、深み感があり意匠性に優れた塗膜を得るために、メタリックベース塗膜、マイカベース塗膜及びカラークリヤー塗膜をマンセル表色系の色相環の色配置において同系色または少なくとも隣り合った色相となるようにし、これらの塗膜に基づく15°L*値を特定の範囲に収めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-126095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、積層塗膜によって鮮やかな且つ陰影感のあるグレーを発現すること、特に有彩色が混ざった感を与えない、透明感を有する金属質感の高いグレー(メタリックグレー)を発現することを課題とする。
【0005】
すなわち、従来の顔料と光輝材を含有するメタリックベースの上に透明クリヤを設けるメタリック塗装では、個々の光輝材が光ることによって粒子感が出てしまい、金属を磨き上げたような金属質感を得ることが難しい。また、グレーを出すための黒色顔料として一般に使用されているカーボンブラックは光を完全には吸収せず、その吸光性は青?紫の波長域に比べて赤?黄波長域が相対的に低い。そのため、カーボンブラックを黒色顔料として用いた塗膜は僅かに赤味ないしは黄味を帯びている。また、顔料による光の乱反射の影響で透明感が低下し、さらには、塗膜を斜めに見たとき、つまり、シェードにおいて、白ボケを起こすため、シャープな金属質感が出ない、つまり、陰影感(光が当たった際のハイライト(明)とシェード(暗)のコントラスト)が弱くなる。
【0006】
このような赤味ないし黄味を帯びること、透明感の低下、白ボケに対して、従前は有効な対策が見出されておらず、透明感を有する生き生きとした金属質感の高いグレーを発現することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を黒色顔料の粒径の制御によって解決することができることを見出した。
【0008】
ここに開示する積層塗膜は、光輝性層の上に黒色顔料としてカーボンブラックが分散した透光性を有する着色層が積層され、
上記光輝性層が黒色下地層の上に積層されてなる積層塗膜であって、
上記光輝性層は、光輝材としてアルミフレークを含有する塗膜であり、
上記着色層のカーボンブラックは、一次粒子が凝集したストラクチャー、又は該ストラクチャーが機械的に絡み合った集合体として存在し、そのストラクチャー又は集合体は、50nm以上200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、
上記カーボンブラックの濃度が0.1質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする。
【0009】
この積層塗膜によれば、着色層のカーボンブラックによる着色効果と、この着色層を透過した光の光輝性層による反射とによってグレーが発現する。当該グレーの濃淡は着色層のカーボンブラックの濃度によって変わるが、6?50の明度(L*値)を得る観点から、カーボンブラックの濃度は0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましく、さらには、0.2質量%以上0.4質量%以下が好ましい。ここに、L*(45°)値は、JIS Z 8722に規定する分光測光器(例えば、エックスライト株式会社製MA98多角度分光測色計)により、照明角度;45度、受光角度;正反射角より45度(垂直受光)で測定した値である。「L*(45°)」の「45°」は受光角度を表す(以下、同じ。)。
【0010】
そうして、上記積層塗膜は、着色層のカーボンブラックが200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつことにより、乱反射が抑えられ、有彩色が混ざった感を与えない、透明感を有する金属質感の高いグレーを発現する。
【0011】
本発明において、顔料粒径dは、塗膜中に分散している分散質としての粒径である。例えば、カーボンブラックは、その一次粒子が凝集したストラクチャーとして存在し、さらには、ストラクチャーが機械的に絡み合った集合体として存在するが、顔料粒径dはストラクチャー又はその集合体の粒径を意味する。そして、この粒径dは、電子顕微鏡観察による測定で得られる粒径(長径と短径の平均値)である。図1に一例を示すストラクチャー1において、2は一次粒子、Lはストラクチャーは長径、Mはその短径である。
【0012】
以下、カーボンブラック微細化の効果について説明する。
【0013】
黒色顔料としてのカーボンブラックは、青に比べて赤の吸光性が低いことが知られている。図2に一例を示すように、従前のカーボンブラックを採用した塗膜の可視光線透過率をみると、赤の波長域(λ=610?750nm)の透過率が高くなっている。また、カーボンブラックは、その粒径dが小さくなるほど吸光性が高くなる一方、粒径dが光の波長λよりもかなり小さくなると、すなわち、(π・d/λ)<1になると、レイリー散乱を生じ易くなることが知られている。
【0014】
例えば、カーボンブラックの粒径dが200nm前後であれば、青に比べて赤の比較が吸収されにくいことに加えて、図3に模式的に示すように、個々の顔料粒子1によるレイリー散乱によって赤(波長λ=610?750nm)の光が多く乱反射される。一方、青の光は波長(λ=435?480nm)が短いため、粒径dが200nm前後のときは青の光のレイリー散乱は生じない。そのため、粒径dが200nm前後のカーボンブラックを多く含有する塗膜は赤味を帯やすくなる。
【0015】
これに対して、カーボンブラックの粒径dが例えば150nmになると、次に示すレイリー散乱式から明らかなように、散乱係数ksがd6/λ4に比例するため、赤の光の散乱が大きく減じられる。すなわち、粒径dが小さくなると、カーボンブラックの吸光性が高くなることに加えて、図4に模式的に示すように、顔料粒子1による赤の光の散乱が大きく減じられるため、赤色の発現が強く抑制される。
【0016】
(レイリー散乱式)
ks=[2π5/3]×n×[(m2-1)/(m2+2)]2×[d6/λ4]
nは粒子数、mは反射係数である。
【0017】
ここに、カーボンブラックが200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつということは、粒径dが200nm以下であるカーボンブラックの割合が多くなるということである。従って、粒径dが200nm以下であるカーボンブラックの割合が多くなる分、赤の光のレイリー散乱が抑制され、積層塗膜が赤味を帯びた状態になることが防止される。
【0018】
加えて、本発明によれば、上述の如くレイリー散乱が抑えられることによって、透明感が高くなり、白ボケもなくなる。
【0019】
カーボンブラックの粒径dが小さくなると、上述の如く、赤の光のレイリー散乱が抑えられるが、その一方で青の光のレイリー散乱を生じやすくなるため、塗膜は青味を若干帯びてくる可能性がある。しかし、赤味や黄味とは違って、若干の青味はグレーの色調をくすませない。
【0020】
好ましいのは、上記着色層のカーボンブラックは、180nm以下の粒径範囲に、さらには150nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつことである。これにより、赤や黄の発色がさらに抑えられ、透明感を有する金属質感の高いグレーの発現に有利になる。
【0021】(削除)
【0022】
上記光輝性層としては、明度を高める観点から、白色系又はグレー系の層であることが好ましい。光輝材としては、アルミ箔を粉砕して得られるアルミフレークを採用すること、さらには、薄い基材にアルミニウムを蒸着したフィルムを粉砕することで得られる、表面の平滑度を高めた蒸着アルミフレークを採用することが、輝度を高めて金属質感を得る上で好ましい。
【0024】
アルミフレークの厚さが薄い場合、積層塗膜に入射する光がアルミフレークを透過して下地で反射される。その場合、その下地の色が外観の塗色に影響を及ぼすことになる。そこで、下地層を黒色として所期のメタリックグレーが得られるようにするものである。これにより、緻密感、深み感、金属質感が高くなるとともに、シェードでの漆黒度が高くなり、例えば、被塗物の表面に角度変化がある箇所や湾曲部において色調のメリハリが強くなり、生き生きした外観を得る上で有利になる。
【0025】
好ましいのは、上記着色層の上に透明クリヤ層が積層されていることである。これにより、耐酸性や耐擦り傷性を得ることができる。
【0026】
被塗物に上記積層塗膜を備えた塗装物としては、例えば、自動車のボディがあり、また、自動二輪車、その他の乗物のボディであってもよく、或いはその他の金属製品であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、光輝性層の上に黒色顔料としてカーボンブラックが分散した着色層が積層され、その光輝性層が黒色下地層の上に積層されてなる積層塗膜であって、上記光輝性層は、光輝材としてアルミフレークを含有する塗膜であり、上記着色層のカーボンブラックは50nm以上200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、上記カーボンブラックの濃度が0.1質量%以上0.5質量%以下であるから、鮮やかな且つ陰影感のあるグレーを発現させること、特に有彩色が混ざった感を与えない、透明感を有する金属質感の高いグレー(メタリックグレー)を発現させることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ストラクチャーを示す図。
【図2】顔料として従前のカーボンブラックを採用した塗膜の可視光線透過率図。
【図3】塗膜中の顔料粒子が大きいときのレイリー散乱を模式的に示す断面図。
【図4】塗膜中の顔料粒子が小さくなるとレイリー散乱を生じにくくなることを模式的に示す断面図。
【図5】自動車の車体表面に設けられた積層塗膜の一例を模式的に示す断面図。
【図6】市販カーボンブラックと微粉カーボンブラックの粒度分布を模式的に示すグラフ図。
【図7】実施例に係る微粉カーボンブラックの粒度分布を示すグラフ図。
【図8】実施例及び比較例に係る積層塗膜の分光反射率を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
図5に示すように自動車の車体(鋼板)11の表面に設けられた積層塗膜12は、黒色下地層14、光輝性層15、透光性を有する着色層(黒色)16及び透明クリヤ層17を順に積層してなる。車体11の表面にはカチオン電着塗装によって電着塗膜(下塗り)13が形成され、電着塗膜13の上に上記積層塗膜12が設けられている。この積層塗膜12において、黒色下地層14は中塗りに相当し、光輝性層15、着色層16及び透明クリヤ層17は上塗りに相当する。
【0031】
黒色下地層14には、第1黒色顔料21が分散している。光輝性層15には、光輝材としてのアルミフレーク22及び第2黒色顔料23が分散している。着色層16には、第2黒色顔料23が分散している。
【0032】
第1黒色顔料21としては、市販のカーボンブラック、黒鉛、四三酸化鉄等を採用することができる。第2黒色顔料23としては微粉カーボンブラックを採用することが好ましい。
【0033】
図6に示すように、市販のカーボンブラックは、通常300nm以上500nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつ。これに対して、光輝性層15及び着色層16の第2黒色顔料23としての微粉カーボンブラックは200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつ。微粉カーボンブラックの粒径は小さいほど好ましいが、小さくなりすぎると、凝集し易くなる(分散性が悪化する)ため、そのピーク粒径の下限は例えば50nmであることが好ましい。
【0034】
微粉カーボンブラックは、市販のカーボンブラックを、ガラスビース等の粉砕メディアを用いて湿式粉砕することによって得ることができる。この湿式粉砕により、ストラクチャーが機械的に粉砕されてその粒径が小さくなる。
【0035】
着色層16の顔料(カーボンブラック)濃度はグレーを発色させるために0.1質量%以上0.5質量%以下とする。黒色下地層14は黒色下地を形成するものであるから、その顔料濃度は例えば1質量%以上20質量%以下にすることができる。
【0036】
光輝性層15のアルミフレーク22は、当該光輝性層表面と略平行になるように配向されている。アルミフレーク22及び第2黒色顔料23を含有する塗料を黒色下地層14の上に塗布した後、焼付けによる溶剤の蒸発によって塗膜が体積収縮して薄くなることを利用して、アルミフレーク22を物理的に平らに並べる。
【0037】
黒色下地層14の樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂を採用することができ、光輝性層15及び着色層16の樹脂成分としては、例えば、アクリル系樹脂を採用することができ、クリヤ層17の樹脂成分としては、例えば酸エポキシ硬化型アクリル樹脂を採用することができる。
【0038】
<実施例及び比較例>
-実施例-
実施例の積層塗膜の構成を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
黒色下地層、光輝性層、着色層及び透明クリヤ層の各塗料を鋼材にウェットオンウェットで塗装した後に、焼付け(140℃で20分間加熱)を行なった。図7は使用した微粉カーボンブラックの粒度分布を示す。同図から、当該微粉カーボンブラックは、シャープな粒度分布をもち、そのピーク粒径は180nmであることがわかる。光輝性層のアルミフレークは、平面視での粒径が10?30μm、厚さが0.1μm以上?2μm以下である。
【0041】
-参考例-
参考例の積層塗膜の構成を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
参考例は下地層をグレーにしたものであり、他の構成は実施例と同じである。
【0044】
-比較例-
比較例の積層塗膜の構成を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
比較例は着色層及び光輝性層の顔料に市販カーボンブラック(ピーク粒径は400nm)を採用し、下地層をグレーにしたものであり、他の構成は実施例と同じである。
【0047】
-積層塗膜の評価-
実施例、参考例及び比較例の積層塗膜の分光反射率を村上色彩技術研究所製の変角分光光度計GCMS-4を用いて測定した。測定波長範囲は400?700nmである。測定結果を図8に示す。
【0048】
実施例及び参考例では、波長400?700nmの全域においてフラット(略一定)になった分光反射率特性を示しており、赤色ないし黄色の発色がないことがわかる。比較例では、波長600nmから700nmにわたって分光反射率が高くなっており、赤色ないし黄色の発色があることかわかる。
【0049】
実施例、参考例及び比較例の積層塗膜のハイライト部の明度(Y値(3°)(⇒本塗装の特徴は、ハイライト3°辺りで、大きな差が出ることである。しかし、ハイライトをL*で示すと上限の100を超えるため、Y値で示した。)とシェード部の明度(L*(110°)値)を測定した。結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
実施例及び参考例は、ハイライトとシェードのコントラストが大きく、陰影感が強い(メリハリの利いた)発色特性が得られていることがわかる。特に下地層を黒色にした実施例はハイライトとシェードの明度差が大きくなっている。
【符号の説明】
【0052】
1 ストラクチャー
2 一次粒子
11 車体(鋼板)
12 積層塗膜
13 電着塗膜
14 黒色下地層
15 光輝性層
16 着色層(黒色)
17 透明クリヤ層
21 第1黒色顔料
22 光輝材(アルミフレーク)
23 第2黒色顔料(微粉カーボンブラック)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性層の上に黒色顔料としてカーボンブラックが分散した透光性を有する着色層が積層され、
上記光輝性層が黒色下地層の上に積層されてなる積層塗膜であって、
上記光輝性層は、光輝材としてアルミフレークを含有する塗膜であり、
上記着色層のカーボンブラックは、一次粒子が凝集したストラクチャー、又は該ストラクチャーが機械的に絡み合った集合体として存在し、そのストラクチャー又は集合体は、50nm以上200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、
上記カーボンブラックの濃度が0.1質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする積層塗膜。
【請求項2】
請求項1において、
上記着色層のカーボンブラックの濃度が0.2質量%以上0.4質量%以下であることを特徴とする積層塗膜。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
上記光輝性層は、黒色顔料を含有する塗膜であることを特徴とする積層塗膜。
【請求項5】
請求項4において、
上記光輝性層の上記黒色顔料がカーボンブラックであることを特徴とする積層塗膜。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
請求項1、2、4及び5のいずれか一において、
上記アルミフレークが蒸着アルミフレークであることを特徴とする積層塗膜。
【請求項8】
請求項1、2、4、5及び7のいずれか一において、
上記着色層の上に透明クリヤ層が積層されていることを特徴とする積層塗膜。
【請求項9】
請求項1、2、4、5、7及び8のいずれか一に記載された積層塗膜を備えていることを特徴とする塗装物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-29 
出願番号 特願2014-244338(P2014-244338)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B)
P 1 651・ 536- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 久保 克彦
蓮井 雅之
登録日 2017-06-16 
登録番号 特許第6156342号(P6156342)
権利者 マツダ株式会社
発明の名称 積層塗膜及び塗装物  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  

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