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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  A01C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A01C
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A01C
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A01C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01C
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  A01C
管理番号 1344841
異議申立番号 異議2017-701205  
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-20 
確定日 2018-09-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6151759号発明「金属コーティング材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6151759号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。 特許第6151759号の請求項1?6、8?16に係る特許を維持する。 特許第6151759号の請求項7、17に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6151759号の請求項1?17に係る特許についての出願は、平成24年2月9日(優先権主張平成23年2月10日)に出願した特願2012-513402号の一部を平成27年11月2日に新たな特許出願としたものであって、平成29年6月2日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年12月20日に特許異議申立人豊田敦子(以下「申立人」という。)より、請求項1?17に対して特許異議の申立てがされ、平成30年2月22日付けで取消理由(発送日同年2月28日)が通知され、その指定期間内である同年5月1日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年7月9日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)?(15)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)

(1)訂正事項1
請求項1に、
「金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、
鉄を主成分とし、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、
前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、
前記板状微粒子が、形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子である金属コーティング材。」
と記載されているのを、
「金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、
金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、
前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、
前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され、形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子である金属コーティング材。」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項4?6、及び、8?16も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
請求項2に、
「金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、
鉄を主成分とし、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、
前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、
前記板状微粒子における長径および厚みの比が1.5?20である金属コーティング材。」
と記載されているのを、
「金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、
金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、
前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、
前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における長径および厚みの比が1.5?20である金属コーティング材。」
に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項4?6、及び、8?16も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
請求項3に、
「金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、
鉄を主成分とし、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、
前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、
前記板状微粒子における厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比が1.5?20である金属コーティング材。」
と記載されているのを、
「金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、
金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、
前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、
前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比が1.5?20である金属コーティング材。」
に訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項4?6、及び、8?16も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
請求項7を削除する。

(5)訂正事項5
請求項8に、
「金属鉄の含有量が70重量%以上である請求項7に記載の金属コーティング材。」
と記載されているのを、
「金属鉄の含有量が70重量%以上である請求項1?3の何れか一項に記載の金属コーティング材。」
に訂正する。

(6)訂正事項6
請求項9に、
「前記鉄が、金属鉄、還元鉄、アトマイズ鉄粉、電解鉄粉、及び産業廃棄物として産出される鉄粉からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含む請求項1?8の何れか一項に記載の金属コーティング材。」
と記載されているのを、
「前記鉄が、金属鉄、還元鉄、アトマイズ鉄粉、電解鉄粉、及び産業廃棄物として産出される鉄粉からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含む請求項1?6および8の何れか一項に記載の金属コーティング材。」
に訂正する。

(7)訂正事項7
請求項10に、
「前記板状微粒子における厚みが20μm以下である請求項1?9の何れか一項に記載の金属コーティング材。」
と記載されているのを、
「前記板状微粒子における厚みが20μm以下である請求項1?6、8および9の何れか一項に記載の金属コーティング材。」
に訂正する。

(8)訂正事項8
請求項11に、
「前記板状微粒子における長径および厚みの比が10以下である請求項1?10の何れか一項に記載の金属コーティング材。」
と記載されているのを、
「前記板状微粒子における長径および厚みの比が10以下である請求項1?6および8?10の何れか一項に記載の金属コーティング材。」
に訂正する。

(9)訂正事項9
請求項12に、
「前記金属コーティング材が、酸化促進剤を含有する請求項1?11の何れか一項に記載の金属コーティング材。」
と記載されているのを、
「前記金属コーティング材が、酸化促進剤を含有する請求項1?6および8?11の何れか一項に記載の金属コーティング材。」
に訂正する。

(10)訂正事項10
請求項14に、
「前記種子がイネ種子である請求項1?13の何れか一項に記載の金属コーティング材。」
と記載されているのを、
「前記種子がイネ種子である請求項1?6および8?13の何れか一項に記載の金属コーティング材。」
に訂正する。

(11)訂正事項11
請求項15に、
「請求項1?14の何れか一項に記載の金属コーティング材を製造する金属コーティング材の製造方法であって、
前記鉄はミルスケール及び鉄鉱石の少なくともいずれかを還元して得られた還元鉄である金属コーティング材の製造方法。」
と記載されているのを、
「請求項1?6および8?14の何れか一項に記載の金属コーティング材を製造する金属コーティング材の製造方法であって、
前記鉄はミルスケール及び鉄鉱石の少なくともいずれかを還元して得られた還元鉄である金属コーティング材の製造方法。」
に訂正する。

(12)訂正事項12
請求項16に、
「請求項1?14の何れか一項に記載の金属コーティング材を製造する金属コーティング材の製造方法であって、
前記粒状微粒子は還元鉄を粉砕機により破砕及び粉砕し、振動篩によって分級されたものである金属コーティング材の製造方法。」
と記載されているのを、
「請求項1?6および8?14の何れか一項に記載の金属コーティング材を製造する金属コーティング材の製造方法であって、
前記粒状微粒子は還元鉄を粉砕機により破砕及び粉砕し、振動篩によって分級されたものである金属コーティング材の製造方法。」
に訂正する。

(13)訂正事項13
請求項17を削除する。

(14)訂正事項14
明細書の段落番号【0014】の
「上記目的を達成するための本発明に係る金属コーティング材は、鉄を主成分とし、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子である点にある。」
という記載を、
「上記目的を達成するための本発明に係る金属コーティング材は、金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子である点にある。」
に訂正する。

(15)訂正事項15
明細書の段落番号【0021】の
「本発明に係る金属コーティング材の第二特徴構成は、金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、鉄を主成分とし、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子における長径および厚みの比が1.5?20である点にある。
本発明に係る金属コーティング材の第三特徴構成は、金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、鉄を主成分とし、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子における厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比が1.5?20である点にある。」
という記載を、
「本発明に係る金属コーティング材は、金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における長径および厚みの比が1.5?20である点にある。
本発明に係る金属コーティング材の特徴構成は、金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、鉄を主成分とし、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比が1.5?20である点にある。」
に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1?3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1?3は、金属コーティング材について「金属鉄の含有量が50重量%以上であ」ることと、「板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」ることを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1?3は金属コーティング材の態様について限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1?3に関して、訂正前の請求項7には「金属鉄の含有量が50重量%以上である」と記載され、訂正前の請求項17には「前記板状微粒子は前記粒状微粒子を原料として振動ミルで板状化することにより得られたものである」と記載されているから、訂正事項1?3は願書に添付した特許請求の範囲に記載されているものと認められる。

(2)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項7を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項5?12について
訂正事項5?12は、上記訂正事項4の訂正に伴って、引用する請求項を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5?12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(4)訂正事項13について
訂正事項13は、請求項17を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項14、15について
訂正事項14、15は、上記訂正事項1?3の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項14、15は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(6)一群の請求項について
訂正前の請求項1?17は、請求項4?17が、訂正の請求の対象である請求項1?3の記載を引用する関係にあるから、訂正前の請求項1?17は、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。

(7)明細書の訂正と関係する一群の請求項について
明細書についての訂正である訂正事項14、15は、一群の請求項である請求項1?17についての訂正である訂正事項1?13との整合性をとるための訂正である。したがって、訂正事項14、15は、一群の請求項である請求項1?17に関連する訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する126条第4項に適合するものである。

3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1?15は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?17〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の請求項1?6、8?16に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項1?6、8?16に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)

「【請求項1】
金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、
金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、
前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、
前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され、形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子である金属コーティング材。
【請求項2】
金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、
金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、
前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、
前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における長径および厚みの比が1.5?20である金属コーティング材。
【請求項3】
金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、
金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、
前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、
前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比が1.5?20である金属コーティング材。
【請求項4】
JIS試験用篩を用いて測定した前記金属粉体の粒度分布における75?150μmの粒子の割合が9.5重量%以上である請求項1?3の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項5】
前記粒状微粒子および前記板状微粒子の混合比率が8:2?2:8である請求項1?4の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項6】
前記粒状微粒子および前記板状微粒子の混合比率が8:2?7:3である請求項1?5の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項8】
金属鉄の含有量が70重量%以上である請求項1?3の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項9】
前記鉄が、金属鉄、還元鉄、アトマイズ鉄粉、電解鉄粉、及び産業廃棄物として産出される鉄粉からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含む請求項1?6および8の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項10】
前記板状微粒子における厚みが20μm以下である請求項1?6、8および9の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項11】
前記板状微粒子における長径および厚みの比が10以下である請求項1?6および8?10の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項12】
前記金属コーティング材が、酸化促進剤を含有する請求項1?6および8?11の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項13】
前記酸化促進剤が、焼石膏、硫化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムからなる群より選ばれた1以上の物質である請求項12に記載の金属コーティング材。
【請求項14】
前記種子がイネ種子である請求項1?6および8?13の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項15】
請求項1?6および8?14の何れか一項に記載の金属コーティング材を製造する金属コーティング材の製造方法であって、
前記鉄はミルスケール及び鉄鉱石の少なくともいずれかを還元して得られた還元鉄である金属コーティング材の製造方法。
【請求項16】
請求項1?6および8?14の何れか一項に記載の金属コーティング材を製造する金属コーティング材の製造方法であって、
前記粒状微粒子は還元鉄を粉砕機により破砕及び粉砕し、振動篩によって分級されたものである金属コーティング材の製造方法。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?17に係る特許に対して平成30年2月22日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1?3、5?16に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)本件特許の請求項1?17に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第2号証?甲第7号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)本件特許の請求項1?16に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に特許掲載公報の発行若しくは出願公開公報の発行がされた甲第1号証の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が本件特許の出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(4)本件請求項1?17に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
(5)本件請求項1?17に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

3 刊行物の記載
甲第1号証:特願2011-175768号の優先権主張の基礎となった特願2010-253691号(特開2012-115255号)
甲第2号証:特開2005-192458号公報
甲第3号証:「最新粉体物性図説(第三版)」、(有)エヌジーティー、2004年6月30日、表紙、目次、p.162、奥付
甲第4号証:Randall M.German、「POWDER MERALLURGY OF IRON AND STEEL」、JOHN WILEY & SONS,INC.、1998年、表紙、p.68-70
甲第5号証:庄司啓一郎 他2名、「粉末冶金概論」、共立出版株式会社、昭和59年3月20日、表紙、目次、p.8、9、奥付
甲第6号証:特開昭60-132684号公報
甲第7号証:渡辺義治、「金属粉の製造と応用例について」、資源処理技術、Vol.37,No.3、1990年、p.130-137
甲第8号証:特許6151759号公報(本件公報)

(1)取消理由通知において引用した甲第1号証には、図面とともに次の記載があり、申立人が主張するとおり、以下の発明(以下「甲1先願発明」という。)が記載されていると認められる。
ア 「【請求項1】
種子表面を被覆するのに用いる鉄粉と結合材を含む種子被覆剤であって、
前記鉄粉は、粒子径が63μm以下の鉄粉の全鉄粉質量に対する質量比率が0%以上75%以下、かつ、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の全鉄粉質量に対する質量比率が25%以上100%以下、かつ粒子径が150μmを越える鉄粉の全鉄粉質量に対する質量比率が0%以上50%以下であり、
前記結合材は、その平均粒径が1?150μmであることを特徴とする種子被覆剤。
・・・
【請求項4】
前記鉄粉は、粒子径が45μm以下の鉄粉の全鉄粉質量に対する質量比率が、0%以上30%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の種子被覆剤。
【請求項5】
前記鉄粉が還元法もしくはアトマイズ法で製造されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の種子被覆剤。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の種子被覆剤を種子に被覆してなることを特徴とする種子。
【請求項7】
種子が稲種子であることを特徴とする請求項6記載の種子。」

イ 「【0030】
<鉄粉>
粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の全鉄粉質量に対する質量比率を25%以上としたのは、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉は種子表面の毛によって保持される確率が高く、このような粒子径のものを25%以上含むことで、毛による保持が期待でき、播種工程のみならず輸送工程においても鉄粉の脱落が少ない被覆が実現できるからである。粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の質量比率は30%以上とすることが好ましく、50%以上とすることがより好ましい。
【0031】
また、粒子径が63μm以下の鉄粉の全鉄粉質量に対する質量比率を75%以下としたのは、微粒径の鉄粉の含有量が増えると、鉄粉が空気中の酸素と急激に反応し、発熱によって鉄粉を被覆した種子がダメージを受ける可能性や、大量取扱時には火災を引き起こしたりする懸念があり、さらに、微細な鉄粉の含有量が多いと、粉塵を生じやすく清浄な作業環境を維持しにくいからである。粒子径が63μm以下の鉄粉の質量比率は70%以下とすることが好ましい。
【0032】
なお、粒子径が63μm以下の鉄粉のより好ましい含有量の態様としては、粒子径が45μm以下の鉄粉の質量比率が0%以上30%以下である。
粒子径が45μm以下の鉄粉は、種子の表面にある毛の間をすり抜け、種子の表面に直接付着する付着力が強いことから、所定の量を含有することで、前述した二重被覆が実現される。
【0033】
粒子径が150μmを越える鉄粉の質量比率を50%以下としたのは、粒子径が150μmを越える鉄粉は毛による保持及び種子表面への直接の付着共に期待ができないので、この粒子径のものを少なくする趣旨である。
【0034】
なお、鉄粉の粒度分布は、JIS Z2510-2004に定められた方法を用いてふるい分けすることによって評価できる。
【0035】
本実施の形態における鉄粉の製造方法としては、ミルスケールを還元して製造する還元法や水アトマイズして製造するアトマイズ法などが例示される。
【0036】
<結合材>
結合材は、硫酸塩及び/又は塩化物から構成される。硫酸塩とは、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム及びこれらの水和物である。また、塩化物とは、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及びこれらの水和物である。
結合材の種子被覆剤の全体に含有される質量比率は、0.1?80質量%が好ましい。結合材の含有比率が0.1質量%以上であれば被膜の強度が低下することがなく、実用に適するからである。
また、結合材の含有比率が80質量%以下であれば、結合材が凝集することがなく作業性が低下しないばかりでなく、本来の目的である被覆種子の比重を高める効果が得られるからである。
なお、結合材の種子被覆剤の全体に含有される質量比率のより好ましい範囲としては、0.5?35質量%である。この範囲にすることで、被覆の強度を高くして、かつ結合材の凝集を防止するのにより好ましいからである。
結合材の平均粒径は、1?150μmとする。結合材の平均粒径が1μm未満では、被覆作業時に発生する凝集粒子が多くなり作業性が著しく低下するからである。一方、結合材の平均粒径が150μmを超えると、鉄粉の付着力が低下しコーティング被膜の強度が低下するからである。
【0037】
鉄粉で種子を被覆する方法に制限はない。
例えば「鉄コーティング炭水直播マニュアル2010(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター 編)」に示されているように、手作業での被覆(コーティング)をはじめ、従来から公知の混合機を用いる方法等いずれを使用してもよい。
混合機としては、例えば、攪拌翼型ミキサー(たとえばヘンシェルミキサー等)や容器回転型ミキサー(たとえばV型ミキサー,ダブルコーンミキサー、傾斜回転型パン型混合機、回転クワ型混合機等)が使用できる。
また、上記の鉄コーティング炭水直播マニュアル2010に示されているように、鉄粉コーティングに際して、結合材を使用する。
鉄粉による種子被覆の具体的な方法としては、鉄粉と結合材と種子を上記の混合機中に投入して、水スプレーしながら混合機を回転させるようにすればよい。
【実施例】
【0038】
<鉄粉粒径についての効果確認>
本発明に係る種子被覆剤を構成する鉄粉の効果を確認するために、本発明の発明例として種々の粒度分布の鉄粉である発明例1?9を用いて稲種子の被覆を行った。また、比較例として、本発明の粒度分布の範囲を外れる粒度分布の鉄粉である比較例1?4を用いて稲種子の被覆を行った。なお、結合材としては、平均粒径51μmの焼石膏を用いた。
鉄粉の被覆(コーティング)は、前述した「鉄コーティング炭水直播マニュアル2010」に記載された方法に準じて行った。具体的には以下の通りである。
【0039】
はじめに種籾と焼石膏と数種の鉄粉を準備した。次に、傾斜回転型パン型混合機を用いて、適量の水を噴霧しながら種子(種籾)10kgに対して鉄粉5kgと0.5kgの焼石膏をコーティングし、さらに0.25kgの焼石膏を仕上げにコーティングした。
鉄粉が被覆(コーティング)された種子の転がり摩擦や滑り摩擦に対するコーティング被膜の強度評価方法は確立されていない。
そこで、JPMA P 11-1992 「金属圧粉体のラトラ値測定方法」に記載された試験方法に準じて被膜強度を調査した。なお、本試験方法をラトラ試験と称することとする。」

ウ 甲1先願発明
「種子表面を被覆するのに用いる鉄粉と結合材を含む種子被覆剤であって、
前記結合材の種子被覆剤の全体に含有される質量比率は0.5?35質量%であり、
前記鉄粉は、還元鉄粉であり、粒度分布がJIS Z 2510-2004に定められた方法を用いてふるい分けすることによって評価されたものであり、粒子径が63μmを越え150μm以下の鉄粉の全鉄粉質量に対する質量比率が30%以上100%以下である、
種子被覆剤。」

(2)取消理由通知において引用した甲第2号証には、図面とともに次の記載があり、申立人が主張するとおり、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

ア 「【請求項1】
金属鉄粉の酸化反応を促進することにより、稲種子表面に鉄粉を付着、固化させることを特徴とする鉄粉被覆稲種子の製造法。
【請求項2】
稲種子に鉄粉並びにその質量比で0.5?2%の硫酸塩(但し、硫酸カルシウムは除く)及び/又は塩化物を加え、さらに水を添加して造粒し、水と酸素を供給して金属鉄粉の酸化反応を促進することにより、鉄粉を稲種子に付着、固化させた後、乾燥させることを特徴とする鉄粉被覆稲種子の製造法。
【請求項3】
硫酸塩及び/又は塩化物が、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及びこれらの水和物から選ばれた1種又は2種以上である請求項2に記載の鉄粉被覆稲種子の製造法。」

イ 「【0036】
実施例1
稲種子(品種名ヒノヒカリ)50gに対して2倍重量の還元鉄粉(商品名:DSP317、同和鉄粉(株)製)及び鉄粉重量に対して百分比1(1g)の硫酸カリウム(粉末状)を添加して混合し、皿型回転造粒機(商品名:パン型造粒機PZ-01、アズワン(株)製)で、脱イオン水をスプレーしながら造粒した。なお、鉄粉DSP317の粒度分布はJISふるい規格45μm以下、85%;45μm以上63μm以下、15%である。次に、造粒したコーティング種子を造粒機から取り出し、バット(縦31cm、横24cm、深さ3.5cm)内に薄く広げ、外気と遮断した蓋つきのプラスチック製の箱(46x31x26cm)に入れ、この箱に加湿空気を毎分6リットル送風しながら、酸化反応を25℃室温で12時間継続した後、40℃で乾燥させ、鉄粉コーティング稲種子を作製した。
次に、得られたコーティング稲種子について、前記したコーティングの崩壊程度の測定法(以下、コーティングの崩壊試験という)、すなわち1.3mの高さから厚さ3mmの鋼板に5回落下させ、機械的衝撃を与える方法で測定した。その結果、コーティングの崩壊率は42.6%であり、実用的な強度であることが分かった。結果を表1に示す。
【0037】
実施例2
硫酸カリウムの代わりに同量の塩化カリウム(粉末状)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして鉄粉コーティング稲種子を作製した。次に、実施例1と同様にコーティングの崩壊試験を行った。その結果、崩壊率は2.9%であり、この値は、どのような播種機を用いても崩壊し難い強さであることを示している。
実施例1の結果と比べると、硫酸塩より塩化物を添加した場合に、相対的にコーティング強度が向上することが分かる。結果を表1に示す。」

ウ 「【0044】
実施例9
DSP317の代わりに同量の鉄粉(商品名:270M-200、川崎製鉄(株)社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして造粒し、鉄粉コーティング稲種子を作製した。なお、鉄粉270M-200の粒度分布はJISふるい規格45μm以下、34.1%;45μm以上63μm以下、43.2%;63μm以上75μm以下、14.6%;75μm以上106μm以下、6.1%;106μm以上150μm以下、1.1%;150μm以上、0.9%である。
次に、コーティングの崩壊試験を行ったところ、崩壊率は2.2%であり、粒度分布の異なる鉄粉を使用しても、低い崩壊率を維持できることが分かった。結果を表1に示す。」

エ 甲2発明
「稲種子表面に付着、固化させて鉄粉被覆稲種子(鉄粉コーティング稲種子)を製造する鉄粉コーティングであって、
鉄粉コーティング稲種子は、稲種子(品種名ヒノヒカリ)50gに対して2倍重量(100g)の還元鉄粉及び鉄粉重量に対して百分比1(1g)の硫酸カリウム(粉末状)を添加して混合し、造粒することにより作製され、鉄粉DSP317の粒度分布はJISふるい規格45μm以下、85%;45μm以上63μm以下、15%である鉄粉コーティング。」

(3)取消理由通知において引用した甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「還元鉄粉(Reduced Iron Powder)
ミルスケールまたは良質鉄鉱石を原料とし、これをコークスと混合して加熱還元して得られた海綿鉄を粉砕して粉末とする。」(162頁3行?6行)」

イ 162頁の【粉体特性】の表から、還元粉の粒度が30?150μmであることが看て取れる。

(4)取消理由通知において引用した甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
「(仮訳)3.3.3..酸化物の還元及び反応
鉄粉の典型的な形態は、酸化物の還元によって形成される。概念的なフローチャートが図3.18に示される。水素である還元剤又はコークスによる連続的なバッチ操作から変化させるいくつかの変形がある。粉末の製造は、それぞれの工程の間に粉砕工程を有する多数の還元工程含むことができる。新しい直接還元技術が、鉄鉱石を鉄粉に転化する流動床により可能になった。
最も生産性の高い操業の一つが、安価なミルスケール、鉄鋼生産からの廃棄物によるものである。それは、熱、及び鉄粉を還元するための水素の使用を減少させる。プロセスの略図が図3.19に示される。還元は、磁石により選別された高純度の鉄鉱石をもって始まる。これらの酸化物は、細粉に粉砕され、そして、純鉄を形成するために還元される(酸素は水素との反応によって除かれる)。酸化物の還元は、水素を用いて達成されるが、一酸化炭素も同様に働く。異なった一例として、望ましい還元をさせるために、コークスと石灰が鉄鉱石と混合される。別のプロセスとして、高炭素鋼スクラップが溶融され、ショットに形成され、ミルスケール(鉄酸化物)と混合され、粉砕される。炭素は空気中での加熱によって除去され、粉末は粉砕され、還元され、アニールされる。
FeOのような酸化物の還元は、水素中で、水蒸気を形成するための固体酸化物からの酸素の移動によって生じる。
FeO(S)十H_(2)(g) → Fe(S)十H_(2)O(g)
上記の反応において、固体は(S)によって示され、ガスは(g)によって示されている。反応を進めるために、スチーム[H_(2)O(g)]は、絶え間なく反応ゾーンから除去される。時間及び温度は、酸化物還元の第一の制御手段である。反応が完結する時間は高温では劇的に短いが、生成した粒子は、焼結して塊状になる。したがって、低温で数日の還元時間が、焼結を最小限にするために採用される。還元反応には、製鋼工場からの粉砕されたスラブ又は他のスクラップの鉄製品を使用できる。典型的に、還元は700-1000℃(1290-1830°F)の温度範囲で行われ、続いて粒子径をコントロールために機械的摩砕がなされる。低い還元温度は小さい粒子径のものを生産する。最終生成物が図3.20に示されるような海綿になり大きな体積変化が生じる。」(68頁7行?70頁末行)」

(5)取消理由通知において引用した甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
「高品位の磁鉄鉱を還元してつくられるヘガネス社の還元Fe粉は古くから著名で、現在も世界のFe粉生産量の5 0%以上を占めている。
製造法の要点は、磁選した鉄鉱石粉とコークスおよび石灰石の混合粉をSiC製の容器に入れ、台車に置き、トンネル炉内を移動させる。還元温度は1000?1200℃である。炉から出た容器を室温まで冷却したのち、内容物を取り出し、粗粉砕して残留コークスを分離し、つぎに微粉砕して磁選で純度を上げ、仕上げ還元したのち、軽く粉砕して分級し、用途に応じ各粒度のものを混合する。図2.2にこの還元Fe粉の断面を示す。形状は不規則で、多孔質である。
わが国で製造されている還元Fe粉としては、鋼材圧延時に生ずるミルスケールを還元したもの、高純度の硫化鉄鉱を脱硫、酸化焙焼した酸化Fe原料を還元したものなどがある。」(第8頁第15行?第25行)

(6)取消理由通知において引用した甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「第1図、第2図は従来の鉄粉の分級フローを示したものである。予め、ある見掛密度に整えられた粗還元鉄粉は、仕上還元炉において、アンモニア分解ガス雰囲気、800?1000℃にて脱炭、脱酸、脱窒される。同時に鉄粉は仕上還元炉1で、弱い焼結作用を受けて粒子同志が結合しケーキ状で連続的に排出される。このケーキ状の鉄粉は解砕機9で1mm以下程度に解砕された後、貯蔵切出し装置10を介して一定量ずつ鉄粉分級装置の空気分級配管2内に供給される。
分級装置はブロワ8、空気分級配管2、遠心式空気分級機3、サイクロン7等から成る空気分級装置と、一次篩4、二次篩5等から成る篩分級装置とから成っている。」(第1頁右下欄1行?14行)

イ 「遠心式空気分級装置で捕集された鉄粉は、一次篩4において、例えば+90メッシュ、90?100メッシュ、-100メッシュに分離され、続いて-100メッシュの鉄粉は二次篩5で篩分けられ、各粒度別にホッパ6A、6B、6C、6Dに収納される。
一方一次篩のオーバーサイズ鉄粉(+90メッシュ)はコンテナ12に貯蔵される。
・・・
コンテナ12に貯蔵された+90メッシュのオーバーサイズ鉄粉は擬似粒子が大部分を占め、再解砕を行えば製品となるもので、このままでは歩留低下となる。また後日再解砕を行うのは多くの人力を必要とするという問題があった。
そこで第2図に示すような解砕機11を設け、この解砕機11に一次篩からのオーバーサイズ鉄粉を供給してその解砕物を空気分級配管2に還流させることが行われていた。」(第2頁左上欄3行?右上欄2行)

ウ 「第3図は本発明の一実施例を示す系統図で、符号1?10は第1図、第2図と同様である。
本発明は、鉄粉製造における仕上還元後の鉄粉ケーキを分級する装置において、分級工程からのオーバーサイズ鉄粉の排出流路を、解砕機11を経て分級工程に還流させる系統と、系外に排出する系統とに分岐し、該分岐点に前記解砕機の負荷電流値に応じて切替自在な流路切替装置12を設けたことを特徴とする鉄粉の分級装置である。」(第2頁右上欄15行?左下欄3行)

(7)取消理由通知において引用した甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「2.金属粉の製法
金属粉の製法を大別すると第1表の様になり、得られる金属粉の粉末特性、用途、コスト等を勘案して使い分けられている。第1図に粒径別の各種分類を示す。」(130頁左欄12行?15行)

イ 「2.2 固体の機械的粉砕
スタンプミル、ボールミル等の粉砕機を用いて機械的に粉砕する方法で、得られる金属粉の形状は一般的には鱗片状、角状となる。」(131頁右欄7行?10行)

ウ 「2.2.1 振動ミル法
原料粉とボールを挿入したポットをスプリング上に取り付け、偏心シャフトの回転によりポットに、円振動を与えて粉砕する方法である。粉砕効率はボールミルに比べて高い。」(131頁右欄18行?22行)

エ 「還元鉄粉は磁鉄鉱やミルスケールを原料に、粉コークス、石灰を加え、耐火物容器中に充填し、加熱還元後、冷却、粉砕、磁選を行ない、その後、アンモニア分解ガス中で仕上げ還元して得られる。」(132頁右欄1行?4行)

4 取消理由通知に記載した取消理由(第29条第1項第3号第29条第2項第29条の2第36条第6項第1号、第2号、第36条第4項第1号)について
(1)第29条第1項第3号第29条第2項について
ア 本件発明1について(第29条第1項第3号第29条第2項)
(ア)本件発明1と甲2発明の対比
本件発明1と、甲2発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1は「粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され、形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子である」のに対し、甲2発明は、粒度分布の異なる鉄粉を含有するものの、そのような特定がなされていない点。

(イ)判断
相違点1について検討するに、甲第3号証?甲第7号証には「粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され、形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子である」ことに関する記載はなく、また、粒状微粒子と粒状微粒子を振動ミルにより板状化することにより得られた板状微粒子から金属コーティングを構成することが、当業者が適宜設定しうる事項であるということもできない。
申立人は、「還元鉄粉は、ミルスケールまたは鉄鉱石を原料とし、これをコークス等と混合して加熱還元して得られた海綿鉄(ケーキ状の鉄粉)を粉砕することにより製造され、粒度が30?150μm程度の粉末になるように分級されたものであることは周知(例えば、刊行物3?7参照)であり、そして、粉砕により、金属粉には一般的に鱗片状(板状)のものが含まれるようになることも技術常識であり、また、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証の走査電顕の写真からみて、還元鉄粉(還元海綿鉄粉)には、粒状微粒子(球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子)と共に、板状微粒子(形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子)が含有されていることが読み取れるから、甲2発明において、還元鉄粉として、甲第3号証?甲第5号証に記載されているような還元鉄粉を採用することは、当業者が適宜なし得るものといえる。」(申立書56頁2行?13行)、「「前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子は、粒状微粒子が振動ミル以外の手段により板状化された板状微粒子、粒状微粒子以外の原料が様々な手段(振動ミルを含む)により粉砕され板状化された板状微粒子を含むものであり、板状微粒子の構造、特性等を実質的に特定するものではありません。」(平成30年7月9日付け意見書(以下「申立人意見書」という。)12頁下から2行?13頁3行)と主張する。
しかしながら、上記で説示したとおり、甲第3号証?甲第7号証には、相違点1に係る構成は記載されておらず、また、各文献の記載から導き出せる事項でもない。また、「前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子は、文字通り、「前記粒状微粒子」から振動ミルを用いて造られたものと解することができるから、上記申立人の主張は採用できない。
したがって、本件発明1は、甲2発明ではなく、また、甲2発明において相違点1に係る本件発明1の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

イ 本件発明2について(第29条第1項第3号第29条第2項)
(ア)本件発明2と甲2発明の対比
本件発明2と、甲2発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点2>
本件発明2は「粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における長径および厚みの比が1.5?20である」のに対し、甲2発明は、粒度分布の異なる鉄粉を含有するものの、そのような特定がなされていない点。

(イ)判断
相違点2について検討するに、甲第3号証?甲第7号証には「粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における長径および厚みの比が1.5?20である」ことに関する記載はなく、また、粒状微粒子と粒状微粒子を振動ミルにより板状化することにより得られた板状微粒子から金属コーティングを構成することが、当業者が適宜設定しうる事項であるということもできない。
申立人は、「還元鉄粉は、粒状微粒子として「球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子」〔例えば、甲第3号証の上記(3-3)の○3(原文は○の中に数字。以下同様。)、○4、甲第4号証の上記(4-2)の○9?○11参照〕を含有し、板状微粒子として「長径および厚みの比(アスペクト比)が1.5?20である」微粒子〔例えば、甲第3号証の上記(3-3)の○1、○2、甲第4号証の上記(4-2)の○1?○8参照〕を含有することが周知であるから、甲2発明において、還元鉄粉として、甲第3号証及び甲第4号証に記載されているような還元鉄粉を採用することは、当業者が適宜なし得るものといえる。」(申立書57頁1行?8行)、及び上記ア(イ)と同じく「「前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子は、粒状微粒子が振動ミル以外の手段により板状化された板状微粒子、粒状微粒子以外の原料が様々な手段(振動ミルを含む)により粉砕され板状化された板状微粒子を含むものであり、板状微粒子の構造、特性等を実質的に特定するものではありません。」(申立人意見書12頁下から2行?13頁3行)と主張する。
しかしながら、上記で説示したとおり、甲第3号証?甲第7号証には、相違点2に係る構成は記載されておらず、また、各文献の記載から導き出せる事項でもない。また、「前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子は、文字通り、「前記粒状微粒子」から振動ミルを用いて造られたものと解することができるから、上記申立人の主張は採用できない。
したがって、本件発明2は、甲2発明ではなく、また、甲2発明において相違点2に係る本件発明2の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

ウ 本件発明3について(第29条第1項第3号第29条第2項)
(ア)本件発明3と甲2発明の対比
本件発明3と、甲2発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点3>
本件発明3は「粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比が1.5?20である」のに対し、甲2発明は、粒度分布の異なる鉄粉を含有するものの、そのような特定がなされていない点。

(イ)判断
相違点3について検討するに、甲第3号証?甲第7号証には「粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比が1.5?20である」ことに関する記載はなく、また、粒状微粒子と粒状微粒子を振動ミルにより板状化することにより得られた板状微粒子から金属コーティングを構成することが、当業者が適宜設定しうる事項であるということもできない。
申立人は、「還元鉄粉は、粒状微粒子として「球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子」〔例えば、甲第3号証の上記(3-3)の○3、○4、甲第4号証の上記(4-2)の○9?○11参照〕を含有し、板状微粒子として「厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比(アスペクト比)が1.5?20である」微粒子〔例えば、甲第3号証の上記(3-3)の○1、○2、甲第4号証の上記(4-2)の○1?○8参照〕を含有することが周知であるから、甲2発明において、還元鉄粉として、甲第3号証及び甲第4号証に記載されているような還元鉄粉を採用することは、当業者が適宜なし得るものといえる。」(申立書57頁下から4行?58頁5行)、及び上記ア(イ)と同じく「「前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子は、粒状微粒子が振動ミル以外の手段により板状化された板状微粒子、粒状微粒子以外の原料が様々な手段(振動ミルを含む)により粉砕され板状化された板状微粒子を含むものであり、板状微粒子の構造、特性等を実質的に特定するものではありません。」(申立人意見書12頁下から2行?13頁3行)と主張する。
しかしながら、上記で説示したとおり、甲第3号証?甲第7号証には、相違点3に係る構成は記載されておらず、また、各文献の記載から導き出せる事項でもない。また、「前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子は、文字通り、「前記粒状微粒子」から振動ミルを用いて造られたものと解することができるから、上記申立人の主張は採用できない。
したがって、本件発明3は、甲2発明ではなく、また、甲2発明において相違点3に係る本件発明3の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

エ 本件発明4について(第29条第2項)
本件発明4は、本件発明1?3に従属し、本件発明1?3の何れかの発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1?3と同様の理由(上記ア?ウ参照)により、甲2発明において、相違点1?3の何れかに係る本件発明4の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

オ 本件発明5、6、8?16について(第29条第1項第3号第29条第2項)
本件発明5、6、8?16は、本件発明1?3に従属し、本件発明1?3の何れかの発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1?3と同様の理由(上記ア?ウ参照)により、甲2発明ではなく、また、甲2発明において、相違点1?3の何れかに係る本件発明5、6、8?16の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

カ まとめ
したがって、本件発明1?3、5、6、8?16は、甲2発明と同一ではなく、それらの特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
また、本件発明1?6、8?16は、甲2発明及び甲第3号証?甲第7号証に記載されたものから、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、それらの特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(2)第29条の2について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1先願発明の対比
本件発明1と、甲1先願発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点4>
本件発明1は「粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され、形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子である」のに対し、甲1先願発明は、そのような特定がなされていない点。

(イ)判断
相違点4について検討するに、甲第3号証?甲第7号証には「粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され、形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子である」ことに関する記載はなく、また、粒状微粒子と粒状微粒子を振動ミルにより板状化することにより得られた板状微粒子から金属コーティングを構成することが、設計上の微差であるということもできない。
申立人は、「還元鉄粉は、ミルスケールまたは鉄鉱石を原料とし、これをコークス等と混合して加熱還元して得られた海綿鉄(ケーキ状の鉄粉)を粉砕することにより製造され、粒度が30?150μm程度の粉末になるように分級されたものであることは周知であり、技術常識である〔例えば、甲第3号証の(3-1)、(3-2)、甲第4号証の(4-1)、甲第5号証の(5-1)、甲第6号証の(6-1)、(6-2)、甲第7号証の(7-4)参照〕。そして、粉砕により、金属粉には一般的に鱗片状(板状)のものが含まれるようになることも技術常識であり〔例えば、甲第7号証の(7-2)参照〕、また、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証の走査電顕の写真から、還元鉄粉(還元海綿鉄粉)には、粒状微粒子(球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子)と共に、板状微粒子(形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子)が含有されていることが読み取れる〔甲第3号証の(3-3)、(3-4)、甲第4号証の(4-2)、(4-3)、甲第5号証の(5-2)、(5-3)参照〕。したがって、本件特許発明1と先願発明とは、技術常識(甲第3号証?甲第7号証参照)からみて、実質的に相違するとはいえない。」(申立書45頁下から2行?46頁14行)、「「前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子は、粒状微粒子が振動ミル以外の手段により板状化された板状微粒子、粒状微粒子以外の原料が様々な手段(振動ミルを含む)により粉砕され板状化された板状微粒子を含むものであり、板状微粒子の構造、特性等を実質的に特定するものではありません。」(申立人意見書10頁20行?24行)と主張する。
しかしながら、上記で説示したとおり、甲第3号証?甲第7号証には、相違点4に係る構成は記載されてないから、技術常識であるとはいえない。また、「前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子は、文字通り、「前記粒状微粒子」から振動ミルを用いて造られたものと解することができるから、上記申立人の主張は採用できない。
したがって、本件発明1は、甲1先願発明と同一ではない。

イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と甲1先願発明の対比
本件発明2と、甲1先願発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点5>
本件発明2は「粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における長径および厚みの比が1.5?20である」のに対し、甲1先願発明は、そのような特定がなされていない点。

(イ)判断
相違点5について検討するに、甲第3号証?甲第7号証には「粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における長径および厚みの比が1.5?20である」ことに関する記載はなく、また、粒状微粒子と粒状微粒子を振動ミルにより板状化することにより得られた板状微粒子から金属コーティングを構成することが、設計上の微差であるということもできない。
申立人は、「還元鉄粉は、粒状微粒子として「球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子」〔例えば、甲第3号証の上記(3-3)の○3、○4、甲第4号証の上記(4-2)の○6?○8参照〕を含有し、板状微粒子として「長径および厚みの比(アスペクト比)が1.5?20である」微粒子〔例えば、甲第3号証の上記(3-3)の○1、○2、甲第4号証の上記(4-2)の○1?○5参照〕を含有することが周知であるから、本件特許発明2は、上記のように粒状粒子と板状粒子を特定した点で、先願発明と実質的に相違するとはいえない。」(申立書49頁14行?20行)、及び上記ア(イ)と同じく「「前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子は、粒状微粒子が振動ミル以外の手段により板状化された板状微粒子、粒状微粒子以外の原料が様々な手段(振動ミルを含む)により粉砕され板状化された板状微粒子を含むものであり、板状微粒子の構造、特性等を実質的に特定するものではありません。」(申立人意見書10頁20行?24行)と主張する。
しかしながら、上記で説示したとおり、甲第3号証?甲第7号証には、相違点5に係る構成は記載されておらず、また、「前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子は、文字通り、「前記粒状微粒子」から振動ミルを用いて造られたものと解することができるから、上記申立人の主張は採用できない。
したがって、本件発明2は、甲1先願発明と同一ではない。

ウ 本件発明3について
(ア)本件発明3と甲1先願発明の対比
本件発明3と、甲1先願発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点6>
本件発明3は「粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比が1.5?20である」のに対し、甲1先願発明は、そのような特定がなされていない点。

(イ)判断
相違点6について検討するに、甲第3号証?甲第7号証には「粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比が1.5?20である」ことに関する記載はなく、また、粒状微粒子と粒状微粒子を振動ミルにより板状化することにより得られた板状微粒子から金属コーティングを構成することが、設計上の微差であるということもできない。
申立人は、「還元鉄粉は、粒状微粒子として「球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子」〔例えば、甲第3号証の上記(3-3)の○3、○4、甲第4号証の上記(4-2)の○6?○8参照〕を含有し、板状微粒子として「厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比(アスペクト比)が1.5?20である」微粒子〔例えば、甲第3号証の上記(3-3)の○1、○2、甲第4号証の上記(4-2)の○1?○5参照〕を含有することが周知であるから、本件特許発明3は、上記のように粒状粒子と板状微粒子を特定した点で、先願発明と実質的に相違するとはいえない。」(申立書50頁8行?15行)、及び上記ア(イ)と同じく「「前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子は、粒状微粒子が振動ミル以外の手段により板状化された板状微粒子、粒状微粒子以外の原料が様々な手段(振動ミルを含む)により粉砕され板状化された板状微粒子を含むものであり、板状微粒子の構造、特性等を実質的に特定するものではありません。」(申立人意見書10頁20行?24行)と主張する。
しかしながら、上記で説示したとおり、甲第3号証?甲第7号証には、相違点6に係る構成は記載されておらず、また、「前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子は、文字通り、「前記粒状微粒子」から振動ミルを用いて造られたものと解することができるから、上記申立人の主張は採用できない。
したがって、本件発明3は、甲1先願発明と同一ではない。

エ 本件発明4?6、8?16について
本件発明4?6、8?16は、本件発明1?3に従属し、本件発明1?3の何れかの発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1?3と同様の理由(上記ア?ウ参照)により、甲1先願発明と同一ではない。

オ まとめ
したがって、本件発明1?6、8?16は、甲1先願発明と同一ではなく、その特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

(3)第36条第6項第2号について
請求項1?3に係る「粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子」、「前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり」の記載において、「球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状」、「粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり」の記載は、記載の意味するところは明確であり、「球形」や「板状」により粒子の形状は文字通り理解することができるから、不明確であるということはできない。また、請求項2、3に係る「長径」、「厚み」についても、用語の意味は明確であり、文章として理解可能であるから不明確といえるものではない。
申立人は、「本件訂正発明1?3において、「前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」た板状微粒子であることが追加されましたが、この追加された特定事項によっては、特許異議申立ての理由である、本件特許発明1?3における「前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子」、「前記板状微粒子が、形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子」(前記板状微粒子における長径および厚みの比が1.5?20である微粒子、又は、前記板状微粒子における厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比が1.5?20である微粒子)という特定では、両者を明確に区別することができないという理由は、依然として、解消されていません」(申立人意見書4頁13行?22行)と主張する。
しかしながら、上記で説示したとおり、「球形」や「板状」という用語により粒状微粒子、板状微粒子の形状は区別されているし、加えて、板状微粒子は、粒状微粒子が振動ミルにより板状化されたものであることからも、両者は区別できるといえる。したがって、不明確とまではいえない。
また、申立人は、「今般の訂正請求により、請求項1?3が、それぞれ「金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、・・・である金属コーティング材。」と訂正されましたが、金属粉体、「金属鉄の含有量が50重量%以上」、「粒状微粒子および板状微粒子」の関係が明確ではありません。・・・これに対して、本件明細書の段落【0038】には、「金属コーティング材10は、金属粉体11として少なくとも粒状微粒子11Aおよび板状微粒子11Bを含有する。」と記載されています。したがって、「金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有」は、「金属鉄の含有量が50重量%以上であり、金属粉体として少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有」を意味するといえます」(申立人意見書1頁下から9行?2頁11行)と主張するが、請求項1?3は金属粉体からなる金属コーティング材に関するものであり、「粒状微粒子」、「板状微粒子」が金属粉体とは異なるものであるとの記載はなく、金属粉体と粒子に係る文脈から、「金属粉体」としての「粒状微粒子および板状微粒子」を有すると解することが相当である。また、同様に「金属鉄の含有量が50重量%以上」についても「金属粉体」のことを意味していると解される。そして、このような解釈は明細書の記載(段落【0036】?【0038】)とも矛盾なく対応していることからも妥当な解釈であることは明らかであり、「金属粉体」、「金属鉄の含有量が50重量%以上」、「粒状微粒子および板状微粒子」の関係について、請求項1?3に明示的な記載がないとしても、文脈上理解できるものであって、そのことにより請求項の記載が不明確とまではいえない。
したがって、請求項1?6、8?16の記載に不備はなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

(4)第36条第6項第1号について
本件明細書の段落【0044】には、「粒状微粒子」、「板状微粒子」の実施例、及び本件訂正において請求項1?3に追加された「板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され」る点について記載されており、上記のそれぞれの構成については、発明の詳細な説明に記載されているといえる。
申立人は、「本件特許発明5及び6における「粒状微粒子」と「板状微粒子」の混合比率は、発明の詳細な説明の記載によりサポートされていない。また、本件特許発明1?3には、「粒状微粒子」と「板状微粒子」の混合比率が特定されていないが、板状微粒子が、極微量しか存在しない場合、「板状微粒子の扁平な面には他の微粒子が接触し易くなるため、例えば当該板状微粒子の横方向および上下方向に他の微粒子が連なり易くなって、板状微粒子が他の微粒子とのブリッジの役目を果たすようになり、種子の全体を覆って当該種子を確実にコーティングし易くなる。」(段落【0016】)という作用効果を奏することが明らかでないから、「種子に対して付着強度が優れた金属コーティング材を提供する」(段落【0013】)という本件特許発明の課題を解決し得るとはいえない。以上のとおりであるから、本件特許発明1?3、請求項1?3を引用する本件特許発明4?16、本件特許発明5及び6、請求項5及び6を引用する本件特許発明7?16は、発明の詳細な説明の記載によりサポートされていない」(申立書31頁下から12行?32頁2行)と主張する。
しかしながら、上記で説示したように、「粒状微粒子」、「板状微粒子」について、その実施例等は発明の詳細な説明に記載されており、それぞれの混合比率についても実施例に示されているから、発明の詳細な説明の記載によりサポートされていないとまではいえない。また、申立人が主張している「本件特許発明1?3には、「粒状微粒子」と「板状微粒子」の混合比率が特定されていない」点については、混合比率が特定されていないとしても、技術常識に基づいて一定程度混合することは当然想定されることであるから、混合比率の特定がないことのみをもって、発明の詳細な説明の記載によりサポートされていないとまでいえるものではない。
したがって、請求項1?6、8?16の記載に不備はなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

(5)第36条第4項第1号について
本件発明において、「粒状微粒子」、「板状微粒子」の形状については「球形」や「板状」という用語により、どのような特徴を有するものか理解でき、さらに明細書には、段落【0053】【0054】等において粉砕機、ボールミルを用いて製造することが記載されているから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が容易にその実施をすることができる程度の記載であるということができる。
申立人は、「発明の詳細な説明には、上記のように、「所定の条件で粉砕」と記載されているだけで、どのような条件で粉砕すれば、「板状微粒子」を含まない「粒状微粒子」が得られるのか示されていない。したがって、当業者は、「板状微粒子」を含まない「粒状微粒子」を得るために、過度の試行錯誤を繰り返さなければならない。よって、本件特許明細書の発明の説明は、当業者がその発明を容易に実施することができるように、明確かつ詳細に記載されているとはいえない。」(申立書32頁下から12行?6行)と主張する。
しかしながら、上記で説示したように、実施方法については、発明の詳細な説明に一定程度の説明がなされていることから、当業者にとって実施できないほどであるとまではいえない。
したがって、本件の発明の詳細な説明の記載に不備はなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。

5 請求項7、17に対する特許異議の申立てについて
上記第2のとおり、請求項7、17を削除する本件訂正が認められたので、請求項7、17に対する本件特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
したがって、請求項7、17に対する本件特許異議の申立ては、不適法な特許異議の申立てであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、平成30年2月22日付け取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1?6、8?16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?6、8?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項7、17に対する本件特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
金属コーティング材
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄を主成分とし、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有する金属粉体をイネ種子に付着させて当該イネ種子をコーティングする金属コーティング材に関する。
【背景技術】
【0002】
米の直播栽培は、育苗および田植え作業を省くことができるため、大幅な労力の軽減、利用資材の縮小を実現でき、米栽培の低コスト化を達成できることが期待されている。
【0003】
当該直播栽培では、イネ種子を鉄コーティングすることが公知である。鉄コーティング種子は、その比重が大きくなるため点播で播種した状態が雨水や入水によって乱れにくくなり、また、鉄コーティングの硬い殻が形成されるために鳥害に強い特性を持つ。また、土壌表面に播種するため、種子の出芽が良好となる。当該鉄コーティング種子は長期間保存できるため、イネ種子を鉄コーティングする作業は農閑期などに実施しておき、播種までの期間は鉄コーティングした状態で保存できる。
【0004】
鉄コーティング種子は、以下の条件を満たす必要がある。即ち、播かれた種子は水に接触するので、鉄コーティングが水に触れる環境で崩壊してはならない。イネ種子は播種機などの機械を用いて播種されるため、機械的衝撃によって崩壊しない程度の強度特性が必要である。播種された後は、積算温度および鉄コーティングより浸入した水分の影響によって催芽状態になったイネ種子が鉄コーティングを割り、その後、土中の水の働きによって当該鉄コーティングが剥がれる必要がある。さらに、コーティング処理中はイネ種子に傷害を与えないようにするため、コーティングが温和な条件かつ短時間で簡便に行うことが望ましく、コーティング資材のpHが中性に近いことも必要である。
【0005】
鉄コーティング種子は、通常、鉄粉と焼石膏を混ぜ、水を噴霧しながら種子のコーティングを行なう。
例えば特許文献1には、イネ種子に、鉄粉と、鉄粉に対する質量比で0.5?2%の硫酸塩・塩化物または0.5?35%の硫酸カルシウム・その水和物と、水と、を添加して造粒し、水と酸素を供給して金属鉄粉の酸化反応によって生成した錆により鉄粉をイネ種子に付着・固化させた後、乾燥させる鉄粉被覆イネ種子の製造法が記載してある。
【0006】
当該鉄粉としては、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉、ショットブラスト工程などから産業廃棄物として産出される鉄粉などが開示され、特に粒度の小さい鉄粉がイネ種子に付着しやすいことが記載してある。この方法では、鉄粉の酸化反応を促進させるために酸化促進剤として硫酸塩・塩化物を使用している。
【0007】
鉄粉の酸化反応は、水と酸素があれば進行する。特許文献1に記載の方法では、表面の湿ったイネ種子に鉄粉および硫酸塩・塩化物を混合し、さらに水を噴霧して効率よく鉄粉を酸化反応させている。乾燥などにより水が無くなると、酸化反応は完了する。
【0008】
鉄粉の酸化反応を利用して作製されたコーティング層は、イネ種子表面に錆びた鉄粉が粘着し、この粘着作用によってコーティング強度が向上するため、大きな破片になってイネ種子から剥離し難くなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4441645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、イネ種子は、高湿度条件下で50?60℃程度の温度に10分程度曝されると熱障害を受け、直播栽培において発芽の安定性に欠ける虞がある。
【0011】
鉄粉でコーティングしたイネ種子は酸化反応に伴い発熱するので、当該イネ種子に対する熱障害を避ける必要がある。鉄コーティング種子に水分が残っていると酸化反応に伴う発熱を継続し続ける。仮に、コーティング作業中に鉄粉の酸化反応が完全に完了していない場合に、例えば袋詰めやバケツなどの容器に入れて鉄コーティング種子を塊状にして放置すると、酸化反応に伴って発生した熱が蓄積し、イネ種子に熱障害を与える虞がある。
【0012】
そのため、特許文献1に記載の方法では、鉄粉でコーティングした種子の熱障害を避けるため、造粒機から取り出した後は、各鉄コーティング種子が効率よく放熱できるように、例えば塊状とせずに底の広い箱の中に薄く広げるなどして放熱させる必要があった。このように特許文献1の方法では、イネ種子の熱障害を回避するための煩雑な作業を要するため、手間がかかっていた。
【0013】
従って、本発明の目的は、種子をコーティングする際の酸化に伴う発熱をできるだけ抑制でき、放熱時の作業性に優れ、かつ種子に対して付着強度が優れた金属コーティング材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る金属コーティング材は、金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子である点にある。
【0015】
「鉄を主成分とする」とは、金属コーティング材に金属鉄が50%以上含まれることをいう。金属コーティング材が鉄を主成分とすることで、当該金属コーティング材を種子に付着させたときに、種子に含まれる水分あるいは外部から供された水分などによって当該鉄の酸化反応が進行する。酸化反応によって錆が生成し、この錆により鉄粉をイネ種子に付着・固化させて、当該種子を金属コーティング材によってコーティングすることができる。
【0016】
板状微粒子はその薄片状あるいは扁平状の形状を呈するため、当該板状微粒子の扁平面側は種子の表面に添って付着し易くなる。また、板状微粒子の扁平な面には他の微粒子が接触し易くなるため、例えば当該板状微粒子の横方向および上下方向に他の微粒子が連なり易くなって、板状微粒子が他の微粒子とのブリッジの役目を果たすようになり、種子の全体を覆って当該種子を確実にコーティングし易くなる。
【0017】
このように、金属コーティング材が粒状微粒子および板状微粒子を含有することで、特に、種子の表面にエッジ部分や凹凸部分が存在する場合、板状微粒子がブリッジ状に他の微粒子を繋げることで、コーティングし難いエッジ部分や凹凸部分であっても種子を確実にコーティングすることができる。
【0019】
本発明の金属コーティング材の酸化反応時の昇温の程度が抑制されることにより、種子をコーティングした後にコーティング種子を放熱させる際の作業(放熱作業)が容易になる。例えば酸化時の昇温が速い従来の鉄粉であれば、放熱作業時には、できるだけ迅速に、コーティング種子の堆積厚さが厚くならないように気をつけながら放熱させる必要がある。しかし、本発明の金属コーティング材でコーティングしたコーティング種子であれば昇温の程度を抑制できるため、ある程度の堆積厚さがあったとしても種子の熱障害に達する温度まで昇温し難い。よって、放熱作業時にコーティング種子の堆積厚さが厚くならないようにコーティング種子を広げる必要がなくなるため、放熱時の作業性に優れる。また、放熱作業に必要なスペースも縮小することができる。
【0020】
従って本発明のように、粒状微粒子および板状微粒子を有するようにすれば、急激な昇温を抑制できるため安全性に優れ、さらに、金属粉体を板状微粒子のみで構成した場合に比べてコストパフォーマンスに優れた金属コーティング材となる。
【0021】
また、後述の実施例4で示したように、本発明の金属コーティング材のコーティング強度は、従来の鉄粉と同等であると認められる。従って、本発明の金属コーティング材であれば、従来の鉄粉と同様に種子に対して付着強度が優れたものとなる。
本発明に係る金属コーティング材は、金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における長径および厚みの比が1.5?20である点にある。
本発明に係る金属コーティング材の特徴構成は、金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、鉄を主成分とし、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比が1.5?20である点にある。
板状微粒子の厚さが30μm以下であり、アスペクト比が1.5以上であれば、板状の形状を呈する微粒子として明確に識別できる。アスペクト比が大きくなるほど板状(扁平)の程度は大きくなる。アスペクト比は20程度までのものであれば、耐衝撃性の優れた扱い易い板状微粒子となる。
本発明に係る金属コーティング材の第四特徴構成は、JIS試験用篩を用いて測定した前記金属粉体の粒度分布における75?150μmの粒子の割合が9.5重量%以上である点にある。
【0022】
本発明に係る金属コーティング材の第五特徴構成は、前記粒状微粒子および前記板状微粒子の混合比率を8:2?2:8とした点にある。
【0023】
後述の実施例2で示したように、粒状微粒子および板状微粒子の混合比率を8:2?2:8とすれば、従来の鉄粉に比べて昇温の程度が抑制されるものと認められる。よって、例えば別異に製造した粒状微粒子および板状微粒子の比率を8:2?2:8になるように混合すれば、容易に本発明の金属コーティング材を作製することができる。
【0024】
本発明に係る金属コーティング材の第六特徴構成は、前記粒状微粒子および前記板状微粒子の混合比率を8:2?7:3とした点にある。
【0025】
後述の実施例4で示したように、本発明の金属コーティング材のコーティング強度は、粒状微粒子および板状微粒子の混合比率を8:2?7:3とした場合に、従来の鉄粉と同等であると認められる。従って、本構成の金属コーティング材であれば、種子に対して付着強度が特に優れたものとなる。
【0026】
本発明に係る金属コーティング材の第七特徴構成は、金属鉄の含有量を50重量%以上とした点にある。
【0027】
種子を金属コーティング材で覆う際には、鉄の酸化によって生成した錆によって鉄粉を種子に付着させている。
本構成のように金属コーティング材が金属鉄を50重量%以上含有することで、水の存在下で金属鉄の酸化反応を確実に進行させて、金属コーティング材を種子の全体に付着させるのに十分な錆を生成することができる。
本発明に係る金属コーティング材の第八特徴構成は、金属鉄の含有量が70重量%以上である点にある。
【0030】
本発明に係る金属コーティング材の第九特徴構成は、前記鉄が、金属鉄、還元鉄、アトマイズ鉄粉、電解鉄粉、及び産業廃棄物として産出される鉄粉からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含む点にある。
本発明に係る金属コーティング材の第十特徴構成は、前記板状微粒子における厚みが20μm以下である点にある。
本発明に係る金属コーティング材の第十一特徴構成は、前記板状微粒子における長径および厚みの比が10以下である点にある。
本発明に係る金属コーティング材の第十二特徴構成は、前記金属コーティング材が、酸化促進剤を含有する点にある。
本発明に係る金属コーティング材の第十三特徴構成は、前記酸化促進剤が、焼石膏、硫化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムからなる群より選ばれた1以上の物質である点にある。
本発明に係る金属コーティング材の第十四特徴構成は、前記種子をイネ種子とした点にある。
【0031】
本発明の金属コーティング材によってコーティングされたイネ種子は、直播栽培に用いることができる。当該直播栽培は育苗および田植え作業を省ける栽培方法であるため、当該金属コーティング材をイネ種子にコーティングすることで、労力の低減、利用資材の縮小、低コスト化を実現できる。
また、本発明に係る金属コーティング材の製造方法の特徴構成は、前記鉄はミルスケール及び鉄鉱石の少なくともいずれかを還元して得られた還元鉄である点にある。
また、本発明に係る別の金属コーティング材の製造方法の特徴構成は、前記粒状微粒子は還元鉄を粉砕機により破砕及び粉砕し、振動篩によって分級されたものである点にある。
また、本発明に係るさらに別の金属コーティング材の製造方法の特徴構成は、前記板状微粒子は前記粒状微粒子を原料として振動ミルで板状化することにより得られたものである点にある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の金属コーティング材によってコーティングしたコーティング種子の概略図および金属コーティング材の顕微鏡写真図である。
【図2】板状微粒子のアスペクト比の分布を示すグラフである。
【図3】本発明の金属コーティング材の酸化反応時の温度を測定した結果を示したグラフである。
【図4】本発明の金属コーティング材の酸化反応時の温度を測定した結果を示したグラフである。
【図5】本発明の金属コーティング材でコーティングしたコーティング種子の酸化反応時の温度を測定した結果を示したグラフである。
【図6】苗箱において本発明の金属コーティング材でコーティングしたコーティング種子の酸化反応時の温度を測定した結果を示したグラフである。
【図7】崩壊試験の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示したように、本発明の金属コーティング材10は、鉄を主成分とし、少なくとも粒状微粒子11Aおよび板状微粒子11Bを含有する金属粉体11を種子20に付着させて当該種子20をコーティングするものである。特に本発明の金属コーティング材10は、JIS試験用篩を用いて測定した金属粉体11の粒度分布における63?150μmの粒子の割合が23重量%以上となっている。
【0034】
当該種子20は、例えばイネ種子、麦種子などの植物種子を使用する。イネ種子の品種は、ジャポニカ種・インディカ種などが使用できる。種子20に金属コーティングを施したコーティング種子Xは、その比重が大きくなって水中に沈むため播種後には水によって流れ難くなり、また、金属コーティングの硬い殻が形成されるため鳥害に強い特性を持つ。このような特性を所望の種子に付与したい場合、本発明の金属コーティング材は、あらゆる種子に適用することが可能である。以下、本実施形態ではイネ種子を使用した場合について説明する。
【0035】
金属コーティング材10によってコーティングされた種子20は、直播栽培に用いることができる。金属コーティング材10を種子20にコーティングする時期は、農閑期など、直播などの播種を行なう前であれば特に制限されるものではない。
【0036】
金属コーティング材10は、鉄を主成分として含有する態様とする。本明細書における「鉄を主成分とする」とは、金属コーティング材10に金属鉄を50%以上、好ましくは70重量%以上含まれることをいう。このように当該金属コーティング材10が鉄を主成分として含有することで、水の存在下で鉄の酸化反応を確実に進行させることができる。
【0037】
鉄は、鉄粉の態様がよい。当該鉄粉は、粉体状を呈した鉄(Fe)を含有するものであればよく、例えば、金属鉄(純鉄粉)、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉、電解鉄粉、産業廃棄物として産出される鉄粉などが使用できる。また、金属コーティング材10が鉄を主成分として含有する態様であれば、合金や他の金属粒子・酸化金属粒子を含有してもよい。例えば、アトマイズ鉄粉を合金鋼粉とした場合、完全合金粉や部分合金粉を使用することも可能である。金属コーティング材10は、金属以外に、例えば、酸素、炭素、硫黄、二酸化珪素などを含有してもよい。
【0038】
金属コーティング材10は、金属粉体11として少なくとも粒状微粒子11Aおよび板状微粒子11Bを含有する。金属コーティング材10は、粒状・板状以外の形状を有するその他の微粒子12として、例えば棒状微粒子などを含んでもよい。
【0039】
「粒状微粒子11A」とは、概ねの外観が球状及びそれに類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子のことをいう。
【0040】
一方、「板状微粒子11B」とは、概ねの形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子のことをいう。当該板状微粒子11Bの扁平面側は種子の表面に添って付着し易くなる。また、板状微粒子11Bの扁平面には他の微粒子が接触し易くなる。そのため、例えば当該板状微粒子11Bの横方向および上下方向に他の微粒子が連なり、板状微粒子11Bが他の微粒子とのブリッジの役目を果たすようになる。
【0041】
このように、金属コーティング材10が粒状微粒子11Aおよび板状微粒子11Bを含有することで、特に、種子20の表面に存在するエッジ部分や凹凸部分に対して、板状微粒子11Bがブリッジ状に他の微粒子を繋げることができる。
【0042】
本明細書では、微粒子の板状(扁平)の程度を表す指標として、粒子径(長径)および粒子厚みの比より算出されたアスペクト比(粒子径/粒子厚み)を使用する。本発明の金属コーティング材10で使用される板状微粒子11Bは、例えばその厚みが30μm以下、好ましくは20μm以下であり、さらにその長径および厚みより算出したアスペクト比が1.5以上となるようにすればよい。板状微粒子11Bの厚さが30μm以下、好ましくは20μm以下であり、アスペクト比が1.5以上であれば、板状の形状を呈する微粒子として明確に識別できる。アスペクト比が20程度までのもの、好ましくは10までのものであれば、耐衝撃性の優れた板状微粒子11Bとなる。
【0043】
アスペクト比は、例えば、製造した板状微粒子11Bの試料の形状写真を走査型電子顕微鏡により撮影し、目視で厚さ水準(厚い・中間・薄い)の異なる粒子を無作為に抽出し、撮影した写真から、粒子径(長径)および粒子厚みを測定して算出する。
【0044】
金属粉体11は、原料として、鋼材の製造過程において鋼材の表面に形成される酸化鉄の層であるミルスケールや、鉄鉱石などから製造できる。このような原料をコークスで還元して得られた還元鉄(焼結して塊となったもの)を衝撃式・摩砕式・剪断式などの各種粉砕機により破砕・粉砕し、振動篩によって分級して粒状微粒子11Aが得られる。
この粒状微粒子11Aを原料として、例えば振動ミルで板状化する。当該振動ミルには粒状微粒子11Aと共にメディアを投入し、振動を与える。メディアは、例えばスチールボールなどの耐摩耗性に優れた金属メディアを使用するのがよいが、これらに限るものではない。当該メディアおよびミル容器の壁面などによって粒状微粒子11Aに衝撃力が付与されることで粒状微粒子11Aを板状化することができる。
板状化の条件は、例えば占有率40?95%、振幅3?10mm、振動数10?30Hz、滞留時間75?150分、とすればよい。振動ミルでの処理を行ったのち、振動篩・気流分散などの手法によって分級して板状微粒子11Bが得られる。
【0045】
このようにして板状微粒子11Bは粒状微粒子11Aから製造する。本発明の金属コーティング材10に含まれる板状微粒子11Bの割合が少ないほど、金属コーティング材10の製造コストを抑制できる。
【0046】
本発明の金属コーティング材10で使用される金属粉体11は、63?150μmの粒子の割合が23重量%以上となるような粒度分布となっている。当該粒度分布は、JIS試験用篩(JIS Z8801-1)を用いて測定したものである。また、当該金属粉体11は、75?150μmの粒子の割合が9.5重量%以上となっている。
【0047】
粒状微粒子11Aおよび板状微粒子11Bの混合比率を8:2?2:8、好ましくは粒状微粒子11Aおよび板状微粒子11Bの混合比率を8:2?7:3とすれば、種子20にコーティングしたときの昇温の程度が抑制され、かつ種子に対して付着強度が優れたものとなる。
【0048】
本発明の金属コーティング材10は、例えば以下のようにして種子にコーティングする。
種子はコーティング前に予め水に浸漬する前処理を行なうとよい。この種子に、当該種子の重量に対して0.5倍程度の金属コーティング材10、および、金属コーティング材10の5?10%程度の焼石膏(酸化促進剤:硫酸カルシウムCaSO4)を混合する。
金属コーティング材10および焼石膏の比率は、これに限られるものではなく適宜変更するとよい。また、酸化促進剤として使用する焼石膏に替えて、硫酸カリウム・硫酸マグネシウム・塩化カリウム・塩化カルシウム・塩化マグネシウムなどを使用してもよい。
【0049】
造粒機にてこれらを攪拌しながら混合し、適宜、水を噴霧して酸化反応を進行させる。必要に応じて仕上げの焼石膏を金属コーティング材10の5%程度添加してもよい。
金属コーティング材10が鉄を含有することで、当該金属コーティング材10を種子20に接触させたときに水が噴霧などによって供給されると当該鉄の酸化反応が進行する。酸化反応によって生成した錆により鉄粉を種子20に付着・固化させてコーティング層13を形成し、当該種子20を金属コーティング材10によってコーティングすることができる。
【0050】
造粒したコーティング種子Xを取り出し、当該コーティング種子の放熱に支障をきたさないように、例えば室温で酸化反応を進行させる。本発明の金属コーティング材10でコーティングしたコーティング種子Xは、昇温の程度が抑制されるため、ある程度の堆積厚さがあったとしても種子20の熱障害に達する温度まで昇温し難い。そのため、放熱作業時のコーティング種子Xの堆積厚さが厚くならないようにコーティング種子Xを広げる必要がなくなる。
【0051】
コーティング種子Xの堆積厚さは、コーティング種子Xの量、季節、外気温によって適宜選択できる。本発明の金属コーティング材10は、酸化反応時の昇温の程度を抑制できるため、ある程度の堆積厚さ(例えば約2cm)があってもかまわない。
コーティング種子Xの水分が無くなれば酸化反応は完了し、本発明の金属コーティング材10によってコーティングを施したコーティング種子Xを製造することができる。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明の金属コーティング材10の実施例について説明する。
【0053】
〔実施例1〕
本発明の金属コーティング材10を作製した。
まず、鉄鉱石を原料として粒状微粒子11Aを作製した。ミルスケール或いは鉄鉱石を還元して得られた還元鉄塊の適量を、衝撃式・剪断式粉砕機であるハンマーミルに投入し、所定の条件で粉砕した。振動篩(篩網目開き109μm)を使用して分級することにより粒状微粒子11Aを得た。
【0054】
この粒状微粒子11Aを、スチールボール(1/2インチ)と共に連続振動ボールミル(CH-35:中央化工機株式会社製)に投入し、占有率70%、振幅6mm、振動数20Hz、滞留時間120分の条件で板状化処理を行った。振動篩(篩網目開き109μm)を使用して分級して板状微粒子11Bを得た。
【0055】
このようにして得られた粒状微粒子11Aおよび板状微粒子11Bの混合割合(粒状微粒子:板状微粒子)を種々変更して複数種類の金属コーティング材10を作製し、表1にそれぞれの粒度分布を示した(本発明例1(90:10)、本発明例2(85:15)、本発明例3(80:20)、本発明例4(75:25)、本発明例5(70:30)、本発明例6(65:35)、本発明例7(60:40)、本発明例8(50:50)、本発明例9(40:60)、本発明例10(20:80))。本発明例3(80:20)については、5種類の試料を作成した(本発明例3-1?3-5)。
表1には、粒状微粒子11Aのみ(比較例1)、板状微粒子11Bのみ(比較例2)、および、比較例3(現行標準鉄粉DSP317、DOWA IPクリエイション株式会社製)の粒度分布も示した。尚、表1に示す粒度分布では、粒度の大きすぎる粒子は除外してある。図1に、本発明例3(図1(b))および本発明例8(図1(c))の電子顕微鏡写真図を示した。
【0056】
【表1】

【0057】
表1より、本発明例1?10の粒度分布は、
45μm未満:36.8?46.7重量%、
45?63μm未満:30.0?33.1重量%、
63?75μm未満:12.7?18.5重量%、
75?106μm未満:9.2?12.7重量%、
106?150μm未満:0.2?0.7重量%、であり、150μm以上の粒子は含有されていなかった。
【0058】
本発明例1?10および比較例1?3について、粒度分布63?150μmおよび75?150μmの粒子の割合を表2に示した。
【0059】
【表2】

【0060】
表2より、本発明の金属コーティング材10に含まれる金属粉体11の粒度分布における63?150μm未満の粒子の割合は23.3?31.7(約23?32)重量%であり、150μm以上の粒子は含有されていないことを鑑みると、これは63μm以上の粒子の割合となる。また、金属粉体11の粒度分布における75?150μm未満の粒子の割合(75μm以上の粒子の割合)は9.5?13.2重量%であった。
【0061】
本発明の金属コーティング材10において、板状微粒子11Bのアスペクト比(粒子径/粒子厚み)を求め、表3に示した。算出したアスペクト比の分布を図2に示した。
【0062】
【表3】

【0063】
選択した31粒子の粒子径は15?115μm、粒子厚みは2?20μmであり、算出されたアスペクト比は1.5?38.3の範囲であった。
【0064】
表4に、本発明例のうち三種類の金属コーティング材10の組成(重量%)を示した。
【0065】
【表4】

【0066】
〔実施例2〕
本発明の金属コーティング材10が、酸化反応によってどの程度まで発熱するかを調べた。
本発明例3-1(80:20)、本発明例7(60:40)、本発明例9(40:60)、本発明例10(20:80)の各試料20gに、3%の食塩水2mLを加え、30秒の攪拌後に30mLの紙コップに移し、熱電対によって試料の温度を測定した(室温、23分まで記載)。比較例1?3についても同様の条件で温度を測定した。結果を図3に示した。
【0067】
この結果、本発明の金属コーティング材10(本発明例)の温度は、測定開始後10分程度で29?32℃程度に達し、それ以降はこの温度付近を維持するものと認められた。一方、比較例3(DSP317)では、測定開始後10分以降も昇温を続け、23分以降も昇温するものと認められた。
【0068】
同様の条件で、3時間にわたって温度測定を行なった。使用した試料は、本発明例3-1、本発明例8、比較例1?3、比較例4(冶金用還元鉄粉DNC、DOWA IPクリエイション株式会社製)、比較例5(冶金用アトマイズ鉄粉アトメル270M系、株式会社神戸製鋼所製)、比較例6(冶金用還元鉄粉、JFEスチール株式会社)であった。結果を図4に示した。
尚、比較例4?6については、表5に粒度分布を示した。
【0069】
【表5】

【0070】
表5より、比較例4?6の粒度分布は、
45μm未満:18.8?31.9重量%、
45?63μm未満:13.5?16.7重量%、
63?75μm未満:10.1?15.8重量%、
75?106μm未満:19.2?34.1重量%、
106?150μm未満:11.7?22.7重量%、
150μm以上:0.8?11.5重量%であった。
【0071】
また、比較例4?6の粒度分布において、63μm以上の粒子の割合、および、75μm以上の粒子の割合を表6に示す。
【0072】
【表6】

【0073】
表6より、比較例4?6の粒度分布において、63μm以上の粒子の割合は53.6?67.7重量%、75μm以上の粒子の割合は42.4?57.6重量%であった。即ち、比較例4?6の試料は、本発明例1?10における63μm以上の粒子の割合(23.3?31.7重量%)、および、75μm以上の粒子の割合(約9.5?13.2重量%)とは異なるものであった。
【0074】
温度測定の結果、比較例3,4,5,6は100分までに50℃以上に達していた。一方、本発明例3-1、本発明例8、比較例1,2については40℃に達することは無かった。
【0075】
この結果より、比較例3,4,5,6の鉄粉を種子にコーティングした場合、酸化反応時の発熱によって当該イネ種子に対して熱障害を引き起こす虞がある温度まで昇温する。そのため、比較例3,4,5,6の鉄粉でイネ種子をコーティングした場合、イネ種子の熱障害を回避するため放熱時にはコーティング種子を厚く堆積させないように気をつける必要がある。
一方、本発明例3-1、本発明例8の金属コーティング材10を種子にコーティングした場合は、酸化反応時の発熱によっては種子に対して熱障害を引き起こす虞は殆どないと考えられた。
【0076】
〔実施例3〕
本発明の金属コーティング材10を、以下の手法によってイネ種子(コシヒカリ:ジャポニカ種)にコーティングした。
水に浸漬したイネ種子;2kg、本発明例3-1(80:20)の金属コーティング材10;1kg、焼石膏;0.1kgをコーティングマシン(KC-151:株式会社啓文社製作所)に投入し、適量の水を噴霧しながらこれらを混合した。室温で13分の混合を行なった後、仕上げの焼石膏0.05kgを添加し、適量の水を噴霧しながらこれらを2分混合した。水はトータルで0.4kg使用した。
造粒したコーティング種子Xをコーティングマシンより取り出し、厚さ2cm程度となるように広げて室温にて酸化反応を進行させた。コーティング種子Xが室温になるまで放置し、その後、所定の容器に作製したコーティング種子Xを保存した。
【0077】
比較例3(DSP317)についても同様の手法でイネ種子にコーティングを施した(従来コーティング種子)。
【0078】
本発明例3-1(80:20)でコーティングしたコーティング種子X、および、比較例3(DSP317)でコーティングした従来コーティング種子について、酸化反応に伴う発熱の温度を測定した(図5,6)。測定は、コーティングマシンより取り出したときから開始した。
【0079】
図5には、本発明コーティング種子Xおよび従来コーティング種子について、コーティング種子をプラスティック製容器(高さ13×6.75×13cm:1140mL)に50mmの厚さで堆積させて温度測定を行なった結果を示した(室温)。図6には、本発明コーティング種子Xについて、苗箱(高さ28×58×3cm:4827mL)に30mmの厚さで堆積させて温度測定を行なった結果を示した(外気温6?7℃)。
【0080】
図5より、従来コーティング種子において、6時間程度(約350分)に温度のピーク(約92℃)が認められた。一方、本発明コーティング種子Xでは、6時間経過までに従来コーティング種子で認められたような高温のピークは認められず、約37℃程度までの昇温に抑制できた。従来コーティング種子では37℃まで昇温するのに要する時間は約4時間であった。即ち、本発明コーティング種子Xにおいて所定温度に到達するまでに要した時間は、従来コーティング種子の1.5倍であった。
【0081】
図6より、苗箱にて放熱させた場合、本発明コーティング種子Xおよび従来コーティング種子において、約400分までに昇温の程度に差異が認められた(本発明コーティング種子X:約14℃、従来コーティング種子:17.8℃)。
【0082】
図5,6の結果より、本発明の金属コーティング材10をコーティングしたコーティング種子Xは、従来の鉄粉によってコーティングされたコーティング種子より、昇温の程度が抑制されるものと認められた。
【0083】
尚、従来コーティング種子では、図5に認められた高い温度のピークは認められなかったが、図6のグラフより温度が上昇する傾向が読み取れるため、400分以降に温度のピークが出現すると予想された。本発明コーティング種子Xについても、従来コーティング種子より昇温の程度は抑制された状態で徐々に昇温するものと考えられるが、従来コーティング種子で認められたような高温まで昇温することはないため、イネ種子に熱障害を引き起こす虞はない。
このように、温度のピークが出る時間は、種子の堆積厚さや外気温によって異なるため、コーティング後に放熱させる時間は処理する種子の量や季節に応じて適宜決定するとよい。
【0084】
〔実施例4〕
実施例3で作製したコーティング種子Xにおいて、本発明の金属コーティング材10(本発明例1?6)のコーティング強度を評価した(崩壊試験)。
重量を測定したコーティング種子Xを、試験用篩(直径200mm、篩網目開き1mm)の上に載置した。この状態ではコーティング種子Xは、試験用篩のメッシュを通過できない。
コーティング種子Xを載置した試験用篩を粒度分布測定装置である公知のロータップシェーカーにて10分間振動させた。振動後のコーティング種子Xの重量を測定し、振動前後のコーティング種子Xの重量を比較し、イネ種子の表面における金属コーティング材10の残留率(%)を算出した(表7、図7)。比較例1,3でコーティングした従来コーティング種子についても同様に崩壊試験を行ない、その結果を示した。
【0085】
【表7】

【0086】
この結果、本発明例3?5(粒状微粒子および板状微粒子の混合比率を8:2?7:3)の金属コーティング材10の残留率は98.8%以上であり、比較例3(DSP317)と略同等の残留率を示した。特に、本発明例4では比較例3(DSP317)と同じ残留率となっており、本発明の金属コーティング材10の本発明例のなかでは最も強度に優れていた。このように本発明の金属コーティング材10は、種子20に対してコーティングした場合であっても実用的な強度を有していることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の金属コーティング材は、種子をコーティングする用途に利用できる。
【符号の説明】
【0088】
10 金属コーティング材
11 金属粉体
11A 粒状微粒子
11B 板状微粒子
12 その他の微粒子
20 種子
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、
金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、
前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、
前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化され、形状が不定型な薄片であり、扁平な形状を呈する微粒子である金属コーティング材。
【請求項2】
金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、
前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、
前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における長径および厚みの比が1.5?20である金属コーティング材。
【請求項3】
金属粉体を種子に付着させて当該種子をコーティングする金属コーティング材であって、
金属鉄の含有量が50重量%以上であり、少なくとも粒状微粒子および板状微粒子を含有し、
前記粒状微粒子が、球形及び球形に類似した不定形の粒状の形状を呈する微粒子であり、
前記板状微粒子が、前記粒状微粒子が振動ミルにより板状化された微粒子であり、前記板状微粒子における厚みが30μm以下であり、さらにその長径および厚みの比が1.5?20である金属コーティング材。
【請求項4】
JIS試験用篩を用いて測定した前記金属粉体の粒度分布における75?150μmの粒子の割合が9.5重量%以上である請求項1?3の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項5】
前記粒状微粒子および前記板状微粒子の混合比率が8:2?2:8である請求項1?4の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項6】
前記粒状微粒子および前記板状微粒子の混合比率が8:2?7:3である請求項1?5の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
金属鉄の含有量が70重量%以上である請求項1?3の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項9】
前記鉄が、金属鉄、還元鉄、アトマイズ鉄粉、電解鉄粉、及び産業廃棄物として産出される鉄粉からなる群より選ばれた少なくとも1つの物質を含む請求項1?6および8の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項10】
前記板状微粒子における厚みが20μm以下である請求項1?6、8および9の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項11】
前記板状微粒子における長径および厚みの比が10以下である請求項1?6および8?10の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項12】
前記金属コーティング材が、酸化促進剤を含有する請求項1?6および8?11の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項13】
前記酸化促進剤が、焼石膏、硫化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムからなる群より選ばれた1以上の物質である請求項12に記載の金属コーティング材。
【請求項14】
前記種子がイネ種子である請求項1?6および8?13の何れか一項に記載の金属コーティング材。
【請求項15】
請求項1?6および8?14の何れか一項に記載の金属コーティング材を製造する金属コーティング
材の製造方法であって、
前記鉄はミルスケール及び鉄鉱石の少なくともいずれかを還元して得られた還元鉄である金属コーティング材の製造方法。
【請求項16】
請求項1?6および8?14の何れか一項に記載の金属コーティング材を製造する金属コーティング
材の製造方法であって、
前記粒状微粒子は還元鉄を粉砕機により破砕及び粉砕し、振動篩によって分級されたものである金属コーティング材の製造方法。
【請求項17】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-08-24 
出願番号 特願2015-216002(P2015-216002)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A01C)
P 1 651・ 853- YAA (A01C)
P 1 651・ 851- YAA (A01C)
P 1 651・ 536- YAA (A01C)
P 1 651・ 113- YAA (A01C)
P 1 651・ 857- YAA (A01C)
P 1 651・ 16- YAA (A01C)
P 1 651・ 537- YAA (A01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大熊 靖夫中澤 真吾  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 井上 博之
住田 秀弘
登録日 2017-06-02 
登録番号 特許第6151759号(P6151759)
権利者 DOWAエレクトロニクス株式会社 DOWA IPクリエイション株式会社 株式会社クボタ
発明の名称 金属コーティング材  
代理人 特許業務法人R&C  
代理人 特許業務法人R&C  
代理人 特許業務法人R&C  
代理人 特許業務法人R&C  
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