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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  E03C
審判 全部無効 2項進歩性  E03C
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  E03C
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E03C
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  E03C
管理番号 1345097
審判番号 無効2016-800131  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-11-28 
確定日 2018-09-20 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5975433号発明「排水栓装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5975433号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯

平成22年 5月18日 出願
平成28年 7月29日 設定登録(特許第5975433号)
平成28年11月28日 審判請求書
平成29年 2月 9日 審判事件答弁書、訂正請求書
平成29年 3月17日 審判事件弁駁書
平成29年 5月 8日 審理事項通知
平成29年 6月22日 両者・口頭審理陳述要領書
平成29年 7月 6日 口頭審理
平成29年 7月13日 被請求人・上申書
平成25年 7月26日 請求人・上申書

第2.訂正請求について
1.訂正請求の内容
被請求人が求めた訂正の内容は、訂正請求書に添付された全文訂正明細書のとおりであって、以下のとおりである。

ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「その円筒状陥没部内を上下動するカバーが、止水時には、水槽の底部面に概ね面一とされ、」と記載されているのを、
「その円筒状陥没部内を上下動するカバーが、前記排水口金具のフランジ部とほぼ同径であるとともに、前記円筒状陥没部に接触せず、止水時には、水槽の底部面に概ね面一とされ、」に訂正する。

イ.訂正事項2
明細書の段落【0007】に
「その円筒状陥没部内を上下動するカバーが、止水時には、水槽の底部面に概ね面一とされ、」と記載されているのを、
「その円筒状陥没部内を上下動するカバーが、前記排水口金具のフランジ部とほぼ同径であるとともに、前記円筒状陥没部に接触せず、止水時には、水槽の底部面に概ね面一とされ、」に訂正する。

2.訂正請求についての当審の判断
訂正請求について検討する。

ア.訂正事項1について
訂正事項1は、「円筒状陥没部内を上下動するカバー」であって「止水時には、水槽の底部面に概ね面一とされ」るものについて、「前記排水口金具のフランジ部とほぼ同径であるとともに、前記円筒状陥没部に接触せず、」との発明特定事項を付加して、カバーの構成をより具体的に特定し、限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、カバーが「前記排水口金具のフランジ部とほぼ同径である」と特定する点については、図1におけるカバー及び排水口金具のフランジ部の位置関係に関する記載から自明な事項であり、「前記円筒状陥没部に接触せず、」と特定する点については、明細書の段落【0008】における「・・・、カバーが排水口部の円筒状陥没部内にあって上下動可能で接触しないので、パッキンの押圧止水作用に妨げとならず、・・・」との記載及び図1におけるカバー及び円筒状陥没部の位置関係に関する記載から自明な事項であるから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

イ.訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項2で特定する点については、上記アで述べたものと同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ.請求人の主張について
(審判事件弁駁書における請求人の主張)
請求人は、審判事件弁駁書の13頁2?6行において、訂正事項の「カバーが排水口金具のフランジ部とほぼ同径」であると特定した点について、カバーとフランジ部とのどの部分の比較なのかについて、及び「ほぼ同径」の範囲について不明瞭であることから、訂正請求は認められるべきではない旨主張する。

(当審の判断)
しかしながら、訂正事項である「カバーが、前記排水口金具のフランジ部とほぼ同径」とは、カバーの最外周部とフランジ部の最外周部とがほぼ同径という意であり、換言すれば、カバーの外径とフランジ部の外径とがほぼ同一ということであり、このことは、本件特許におけるカバーが「排水口金具を露出しないように覆う」(請求項1)ものであり、カバーとフランジ部の外径がこのような関係であれば、発明の詳細な説明の段落【0008】に記載された、「排水口部内の汚れを覆い隠すことができ、見栄え良くできる。」という作用効果を十分に奏し得ることからも明らかである。
つぎに、「ほぼ同径」という点の明確性について、「ほぼ」という語は、範囲を不確定とさせる表現に当たる場合もあるが、「ほぼ同径」とは、本件特許の技術分野の平均的な技術水準を考慮すれば、カバーの外径とフランジ部の外径をなるべく同一とするといった意味合いで捉えられるはずであり、本件特許は、カバーで排水口金具を露出しないように覆う構成であるため、本件特許に係る発明の詳細な説明に接した当業者は、「ほぼ同径」とあるのは、“排水口金具を露出しないように覆うことが可能な範囲でカバーの外径を排水口金具のフランジ部の外径と極力同じにしたもの”という趣旨であると理解することができ、故に、「ほぼ同径」という語は、十分に明確である。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(口頭審理陳述要領書における請求人の主張)
また、請求人は、口頭審理陳述要領書の6頁9?26行において、第1に、訂正事項のうち「カバーが前記排水口金具のフランジ部とほぼ同径である」点については明細書中に何ら明記されていないこと、第2に、訂正事項のうち「カバーが円筒状陥没部に接触しない」点について、明細書中の段落【0008】における「パッキンは、カバーが排水口部の円筒状陥没部内にあって上下動可能で接触しないので、・・・」との記載からは、「カバー」が何と接触しないのか不明であるばかりか、「パッキン」が「接触しない」とも読め、明細書の記載が不明確であることを主張する。

(当審の判断)
しかしながら、訂正事項のうち「カバーが前記排水口金具のフランジ部とほぼ同径である」点については、上記アで述べたように、図1におけるカバー及び排水口金具のフランジ部の位置関係に関する記載から自明な事項である。また、訂正事項のうち「カバーが円筒状陥没部に接触しない」点について、段落【0008】には、「パッキンは、カバーが排水口部の円筒状陥没部内にあって上下動可能で接触しないので、パッキンの押圧止水の妨げとならず、カバーの作用と関係なく排水口金具のフランジ部と密閉止水することができる。」と記載されているところ、ここで、「パッキン」及び「カバー」という2つの主語が並んで表示されているため、文章がやや分かりにくいものとなっているが、この段落【0008】の記載は、「カバーが排水口部の円筒状陥没部内にあって上下動可能で接触しないので、パッキンの押圧止水の妨げとならず、パッキンは、カバーの作用と関係なく排水口金具のフランジ部と密閉止水することができる。」という意のものであり(位置を移動させたパッキンのみに下線を付した)、そして、本件特許の段落【0003】における「水槽の底部に漸次縮径する陥没部を形成して排水口部とし、・・・」という記載(すなわち、排水口部が陥没部で形成されているという記載)と、段落【0005】における「また、栓蓋下に隣接するパッキンによる閉状態の止水は、パッキンによる当接以前に栓蓋の縁が排水口部内面と当接して、パッキンによる密閉に不足を生じ、支障を起すことになり、都合悪い。」という記載とを踏まえれば、段落【0008】の記載から、カバーが接触しない対象は、円筒状陥没部であることは明らかであり、また、パッキンが接触しないと読むことはできないことも明らかであるから、明細書の記載は明確である。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(上申書における請求人の主張1)
さらに、請求人は、上申書の3頁下から7行?4頁6行において、「カバーがフランジ部とほぼ同径」という技術事項は、カバーが円筒状陥没部に接触しないという効果は勿論のこと、精巧性の面などで円筒状陥没部の形状が水槽ごとに異なる場合であってもカバーと円筒状陥没部との非接触をより確実に実現できるという作用効果すら確実に奏することができるものではなく、したがって、「精巧性の面などで円筒状陥没部の形状が水槽ごとに異なる場合であっても、カバーと円筒状陥没部との非接触をより確実に実現できるという作用効果」を確実に奏するためには、「カバーがフランジ部と同径であるか又はやや小径」である必要があるところ、「カバーがフランジ部よりやや大径」である場合を含む「カバーがフランジ部とほぼ同径」という技術事項を含む訂正事項1は、発揮しようとする作用効果に対して著しく不明瞭であると言え、訂正請求は認められるべきではない旨主張する。

(当審の判断)
しかしながら、「円筒状陥没部内を上下動するカバーが」「前記円筒状陥没部に接触せず」との構成を有する本件発明であれば、この構成を阻害することがないように、「カバーがフランジ部とほぼ同径」の「ほぼ同径」の範囲を適宜設定すべきことは当業者に明らかであり、「ほぼ同径」との記載が発揮しようとする作用効果に対して著しく不明瞭であるということはできない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(上申書における請求人の主張2)
さらにまた、請求人は、上申書の6頁9行?7頁下から6行において、甲1発明において設計上の公差や、ヘアーキャッチャー8が排水筒3に対し挿抜される点から、ヘアーキャッチャー8の外周と排水筒3の内面との間に隙間が形成され、この隙間によって作動軸10と栓体11とに水平方向にがたつきが発生し、このがたつきによって栓体11が円筒状陥没部に接触する蓋然性が考えられる旨の被請求人の上申書による説明によれば、「カバーが、・・・前記円筒状陥没部に接触せず、」との訂正事項が「カバーに水平方向のがたつきを生じた場合にも、カバーが円筒状陥没部に全く接触しない」との意味であることを被請求人が前提としていると考えられ、仮に、そうであるとすると、本件特許は、カバーのがたつきを完全に規制してカバーが円筒状陥没部に接触しないようにするための構成が必須の発明特定事項となるべきところ、この構成を何ら備えておらず、また、明細書の何処にも、カバーのがたつきを完全に規制してカバーが円筒状陥没部に接触しないようにするための構成に関して全く記載されておらず、訂正請求は認められるべきではない旨主張する。

(当審の判断)
しかしながら、本件発明は、甲1発明のようにヘアーキャッチャーを有するものではなく、段落【0012】及び【図1】を参酌すると、カバー6下面のガイド筒62がレリースワイヤの作動部81によってガイドされて排水栓20の昇降が行われるものが示されていることからすれば、甲1発明のようにカバーに水平方向のがたつきが生じることを想定していないから、カバーのがたつきを完全に規制してカバーが円筒状陥没部に接触しないようにするための特別な構成を必要とするものではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

エ.むすび
以上の通り、訂正事項1及び2は、特許法第134条の2第1項の規定に適合し、同条第9項で準用する第126条第5、6項の規定にも適合するから、当該訂正を認める。

第3.本件発明
訂正後の本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
水槽の底部に、円筒状陥没部を形成し、該円筒状陥没部の底部に形成された内向きフランジ部が排水口金具と接続管とで挟持取付けられて排水口部を形成し、該排水口部には、排水口金具を露出しないように覆うカバーが該円筒状陥没部内に設けられ、その円筒状陥没部内を上下動するカバーが、前記排水口金具のフランジ部とほぼ同径であるとともに、前記円筒状陥没部に接触せず、止水時には、水槽の底部面に概ね面一とされ、該カバーの下面には、排水口金具とで密閉可能に止水するパッキンを挿通保持する軸部が設けられて排水栓を構成し、該排水栓の昇降でパッキンによる開閉がされることを特徴とする排水栓装置。」

第4.請求人の主張
1.主張の要点
請求人は、以下の理由により、本件特許は、特許法第123条第1項第2号、第4号に該当し、無効とするとの審決を求めている。
なお、請求人の主張する無効理由2は、口頭審理調書の記載を踏まえ、修正した。

無効理由1:本件特許は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が不備であり、特許法第36条第4項第1号、並びに同条第6項第1号及び第2号の規定に違反するものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

無効理由2:本件発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証及び甲第4?19号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2.証拠
請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。
ここで、甲第1?3号証は審判請求時に、甲第4?23号証は訂正請求後に、提出されたものである。

甲第1号証:特開平10-227053号公報
甲第2号証:実願平2-30261号(実開平3-122175号)のマイクロフィルム
甲第3号証:特開2008-308852号公報
甲第4号証:特開平9-108130号公報(周知例1)
甲第5号証:特開平10-179435号公報(周知例2)
甲第6号証:特開2000-220186号公報(周知例3)
甲第7号証:特開2000-333854号公報(周知例4)
甲第8号証:登録実用新案第3069860号公報(周知例5)
甲第9号証:特開平10-54066号公報(周知例6)
甲第10号証:特開2002-97694号公報(周知例7)
甲第11号証:特開2003-74102号公報(周知例8)
甲第12号証:実願昭61-101922号(実開昭63-9978号)のマイクロフィルム(周知例9)
甲第13号証:実願昭63-82629号(実開平2-6775号)のマイクロフィルム(周知例10)
甲第14号証:実願平1-93739号(実開平3-32663号)のマイクロフィルム(周知例11)
甲第15号証:実公平4-15818号公報(周知例12)
甲第16号証:実公平5-16302号公報(周知例13)
甲第17号証:特開平9-209429号公報(周知例14)
甲第18号証:特開平11-93236号公報(周知例15)
甲第19号証:特開2005-29994号公報(周知例16)
甲第20号証:実願昭55-34462号(実開昭56-134970号)のマイクロフィルム(周知例)
甲第21号証:実願昭63-106677号(実開平2-29962号)のマイクロフィルム(周知例)
甲第22号証:実願平4-85954号(実開平6-49570号)のCD-ROM(周知例)
甲第23号証:特開平9-151515号公報(周知例)

第5.被請求人の主張
1.主張の要点
これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。

2.証拠
被請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。

乙第1号証:特開平10-131255号公報(参考資料1)
乙第2号証:特開平10-68158号公報(参考資料2)
乙第3号証:特開2004-150038号公報(参考資料3)


第6.無効理由2(特許法第29条第2項)についての当審の判断
1.本件発明
本件発明は、上記第3.のとおりと認められる。

2.刊行物記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下のように記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、洗面化粧台の洗面ボウル等に設ける排水栓の構造に関するものである。」

イ.「【0007】
【発明の実施の形態】以下、図1や図2に示す実施の形態により説明する。洗面ボウル1の底部には貫通穴2を上下に貫通するように穿孔してあり、貫通穴2の上から貫通穴2に排水筒3を挿通してあり、排水筒3の上端の鍔部21を貫通穴2の段部22に載置してある。貫通穴2の下方で排水筒3の外周には止めナット4を螺合してあり、排水筒3を止めナット4にて貫通穴2に装着してある。排水筒3内は排水口5となっており、排水口5内には排水栓部材6を内装してある。この排水栓部材6は、図2(a)に示すように排水口5の上端開口を開閉し得る栓体11と、作動軸10とヘアーキャッチャー8とで主体が構成されている。垂直方向を向く作動軸10の上端には栓体11を螺合にて連結してある。作動軸10の上端は栓体11のセンターに連結してある。ヘアーキャッチャー8にはセンターの位置で上下に貫通するように筒軸7を設けてあり、この筒軸7に作動軸10を上下に摺動自在になるように挿通してある。作動軸10の下端部分には重り12を一体に装着してあり、作動軸10のセンターに対応する位置で重り12の下面には凹部20を設けてある。本例の場合、凹部20は円錐状であるが、円柱状やその他の形状であってもよい。排水栓部材6を排水口5内に内装した状態でヘアーキャッチャー8の外周が排水筒3の内面に接触させてあると共にヘアーキャッチャー8の外周の下部が排水筒3の内面の段部13に載置してある。
【0008】排水筒3の上部の側方にはオーバーフロー管23の一端を連結してあり、オーバーフロー管23の他端を洗面ボウル1のオーバーフロー口24に臨ませてある。排水筒3の下部の側方から排水管14を導出してあり、排水筒3の下端には蓋体15を螺合にて装着してある。レリーズワイヤー16の一端は蓋体15に装着してあり、レリーズワイヤー16の他端に設けた取り付け部17をカウンター等に装着し得るようにしてある。レリーズワイヤー16はアウターチューブ16aにインナーワイヤー16bを摺動自在に挿通して形成され、取り付け部17側でインナーワイヤー16bの端部に設けたつまみ18を操作することでインナーワイヤー16bを摺動操作できるようになっている。蓋体15から上記インナーワイヤー16bの端部を上方に突出させてあり、このインナーワイヤー16bが排水筒3のセンターに位置させてあり、インナーワイヤー16bの上端を図2(b)に示すように作動軸10の下端部分の重り12の凹部20のはめ込んである。」

ウ.発明の詳細な説明には、栓体11や排水筒3の上端の鍔部21や貫通穴2の形状についての記載はないが、通常、それらはいずれも円形状であるとの技術常識を踏まえれば、段落【0007】の記載を参照すると【図1】から、洗面ボウル1底部に、貫通穴2に向かって、円筒状陥没部を形成していることが見て取れる。

エ.段落【0007】の「排水筒33の上端の鍔部21を貫通穴2の段部22に載置し」「貫通穴2の下方で排水筒3の外周に止めナット4を螺合して」「排水筒3を止めナット4にて貫通穴に装着」するという記載を参照すると、【図1】から、排水筒33の上端の鍔部21を貫通穴の段部22に載置し、貫通穴2の下方で、オーバーフロー管23の一端を介して排水筒3の外周に止めナット4を螺合して排水筒3を止めナット4にて貫通穴に装着することが見て取れ、したがって、【図1】から、円筒状陥没部の底部に形成された貫通穴2の段部22が排水筒3の上端の鍔部21とオーバーフロー管23の一端とで挟持取り付けられ排水口部を形成しているのが見て取れる。

オ.段落【0007】の記載を参照すると、【図1】から、排水口部には、排水筒3の上端の鍔部を覆う栓体11が円筒状陥没部内に設けられていることが見て取れ、また、【図1】から、栓体11は排水筒3の上端の鍔部21を露出しないように覆っていることが見て取れる。

カ.段落【0007】の記載を参照すると、【図1】から、円筒状陥没部内を上下動する栓体11が、排水筒3の上端の鍔部21とほぼ同径であり、止水時には、洗面ボウル1の底部面に対して没した位置とされることが見て取れる。

キ.発明の詳細な説明にはパッキンについての記載はないが、排水栓の昇降による密閉可能な止水手段としてパッキンが用いられることは後記甲第2号証及び甲第9?19号証に記載されているように周知・慣用手段であることを踏まえれば、【図1】の栓体11の下面に設けられた軸部に保持されているのがパッキンであることは明らかである。
したがって、上記周知・慣用手段を踏まえると、【図1】から、栓体11の下面には、排水筒3とで密閉可能に止水するパッキンを挿通保持する軸部が設けられて排水栓を構成し、排水栓の昇降でパッキンによる開閉がされることが見て取れる。

甲第1号証に記載された事項を、図面を参照し、技術常識を勘案しつつ、本件発明に照らして整理すると、甲第1号証には以下の事項(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「洗面ボウル1の底部に貫通穴2を上下に貫通するように穿孔し、
貫通穴2の上から貫通穴2に排水筒3を挿通し、
排水筒3の上端の鍔部21を貫通穴2の段部22に載置し、
貫通穴2の下方で排水筒3の外周に止めナット4を螺合し、
排水筒3を止めナット4にて貫通穴2に装着し、
排水筒3内は排水口5となっており、排水口5内には排水栓部材6を内装し、
排水栓部材6は、排水口5の上端開口を開閉し得る栓体11と、作動軸10とヘアーキャッチャー8とで主体が構成され、
排水筒3の上部の側方にはオーバーフロー管23の一端を連結し、
排水筒3の下部の側方から排水管14を導出し、
排水筒3の下端には蓋体15を螺合にて装着してある洗面化粧台の洗面ボウル等に設ける排水栓の構造であって、
洗面ボウル1の底部に、貫通穴2に向かって、円筒状陥没部を形成し、
円筒状陥没部の底部に形成された貫通穴2の段部22が排水筒3の上端の鍔部21とオーバーフロー管23の一端とで挟持取り付けられ排水口部を形成し、
排水口部には、排水筒3の上端の鍔部21を露出しないように覆う栓体11が円筒状陥没部内に設けられ、
円筒状陥没部内を上下動する栓体11が、排水筒3の上端の鍔部21とほぼ同径であり、止水時には、洗面ボウル1の底部面に対して没した位置とされ、
栓体11の下面には、排水筒3とで密閉可能に止水するパッキンを挿通保持する軸部が設けられて排水栓を構成し、
排水栓の昇降でパッキンによる開閉がされる洗面化粧台の洗面ボウル等に設ける排水栓の構造。」

(2)甲第2号証
明細書の第5頁第3?18行の記載を参照すると、図1から、栓蓋1の下面に設けた軸部に挿通保持されたパッキン1aを、栓蓋1を下降させて排水口2の鍔部6に当接させることで止水する構造を示したものが見て取れる。

(3)甲第3号証
甲第3号証には、以下のように記載されている(なお、下線は当審で付した。)。
ア.「【0001】
本発明は、洗面化粧台に設けられる洗面ボウルの排水孔のシール構造に関する。」

イ.「【0024】
・・・排水栓23の上面の中心部の高さは、図3に示すように、排水栓23が排水孔12を閉塞した位置にあるときに、ボウル1の底面から上方へ突出しないように該底面と略同じ高さになるように設定されている。これにより、排水栓23を閉塞位置にした状態で、ボウル1内に洗面器等の容器を置いて使用する場合に、容器を安定させることが可能になる。」

ウ.段落【0024】の記載を参照すると、【図3】から、円筒状陥没部内を上下動する排水栓23が止水時にはボウル1の底面部に概ね面一とされた構成が見て取れる。

(4)甲第4号証
甲第4号証には、以下のように記載されている。
「【0002】
・・・このような排水金具用の排水栓受けaは、本体部bが黄銅の鋳造品あるいは黄銅の鍛造品よりなり、その器具内に面する上面及び排水孔dの表面にクロムメッキなど硬度の高いメッキ層cが設けられたもの、本体部が合成樹脂の成形品のままのもの、合成樹脂の成形品の表面に上記図3に示すものと同様にメッキが施されたものなどが用いられている。」

(5)甲第5号証
甲第5号証には、以下のように記載されている。
「【0022】
前記排水口部材12は、図1に示す如く、合成樹脂素材又は金属素材等から成形され、その内周に、環状の小膨出部29及び内鍔部30を突設することにより、両者の内隅部に周方向へ延びる段部31を設けてある。」

(6)甲第6号証
甲第6号証には、以下のように記載されている。
「【0011】
本発明において、浴槽排水栓受け部材及び立上管の材質としては、従来から浴槽排水栓受け部材及び立上管の材質として使用されているものがそのまま使用できるものであって、特に限定されないが、例えば、硬質塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、FRP等の合成樹脂やステンレス鋼、銅等の金属等が使用できる。」

(7)甲第7号証
甲第7号証には以下のように記載されている。
「【0002】
・・・図3に示すゴム栓式のものは、洗面器1の排水口2に、パッキン3を介して排水トラップ(図示せず)へ連通する合成樹脂製又は金属製の排水器具本体4を取り付け、・・・」

(8)甲第8号証
甲第8号証には、以下のように記載されている。
「【0010】
・・・
前記排水口取付部材4、ナット部材5、栓部6は、共にステンレス製もしくは合成樹脂製としている。」

(9)甲第9号証
甲第9号証には、以下のように記載されている。
ア.「【0017】
図2の閉栓状態においては、周片部2cの外周に設けられたOリング2eによって案内筒の排水口1aに接触してシール状態を呈しているのであるが、・・・」

イ.「【0019】
・・・栓蓋2の外周に設けられたOリング2eは押し潰されることがなく、従って、Oリング2eが劣化してシール性能が損なわれることはない。」

(10)甲第10号証
甲第10号証には、以下のように記載されている。
「【0025】
・・・また、この実施の形態においては、前記支軸322aで扛上される栓蓋4は、図1等に示すように周面に環状パッキン141を周設した蓋部14に、メカボックス321に上方から遊嵌合する振れ止め部142を一体もしくは一体的に垂設した構成になっている。」

(11)甲第11号証
甲第11号証には、以下のように記載されている。
ア.「【0002】
・・・前記排水口部材2のその開口縁は、図5に示すようなホッパー状のテーパー面2’を有し、そのテーパー面2’に、排水栓1に保持されているパッキン3が水頭を受けて密接することによって閉栓時に止水する。」

イ.「【0003】
従来、この種の排水栓のパッキン3としては専らOリング(後述では符号3を付して説明する)が使用されている。このOリング3は、適度な剛性を有するため、浴槽の場合には排水口部材が浴槽等の微小な歪の影響を受けて接続されても高水頭を受け弾性変形して馴染み、止水性に問題は無いが、洗面器等では水頭が低いため、馴染み難く、止水性に劣る問題があった(図6参照)。」

(12)甲第12号証
甲第12号証には、以下のように記載されている。
(明細書第4頁第3行?第7行)
「第4図は、第1図及び第2図で示した原理図をもとに製作用の断面図として示したものである。漏水防止用のシール材28を追記した以外は構造・動作とも前項と同じである為、詳細説明は省略する。」

(13)甲第13号証
甲第13号証には、以下のように記載されている。
(明細書第6頁第11行?第13行)
「尚、弁部5の外周面にはOリングOが嵌合されているため、この閉止状態における水密性が良好化される。」

(14)甲第14号証
甲第14号証には、以下のように記載されている。
(明細書第7頁第18行?第19行)
「排水口(2)内には外周にパッキン(1a)を嵌着した栓蓋(1)が嵌装されている。」

(15)甲第15号証
甲第15号証には、以下のように記載されている。
(第5欄第12行?第13行)
「この排水栓14の外周にはシール性を高めるためのOリング14aが取り付けられている。」

(16)甲第16号証
甲第16号証には、以下のように記載されている。
(第6欄第5行?第9行)
「上記軸金具3aの下端部とその中央部及び上記弁金具3bの下面部に夫々固着した合成樹脂材料から成る自在係合部材8と排水流動規制部材9及びOリング14の嵌合部材15とから構成されており、」

(同欄第27行?第29行)
「第1図に示すように、その弁部7(Oリング14)が通路2aの開口部周縁部に密着して、該通路2aを閉塞する。」

(17)甲第17号証
甲第17号証には、以下のように記載されている。
「【0033】
パッキン18は、図5において部分拡大して示すように、その外周縁の上面に切欠18aを形成してキャップ19の底面との間に隙間ができるような断面形状としたものである。また、パッキン18の外周縁の下面には2条のシール座18b,18cを形成し、外側に位置しているシール座18bのほうが内側のシール座18cよりも下側への突き出し長さが大きい。このような、パッキン18の断面形状とすれば、パッキン18の外周縁の上面側は自由端となるので、弁座10aへの着座の際にはシール座18b,18c部分の撓み変形が大きくなり、この変形による反力にってシール圧を高く維持することができる。」

(18)甲第18号証
甲第18号証には、以下のように記載されている。
「【0012】
・・・図2に示すように、栓蓋4は栓蓋本体4aと、栓蓋本体4aの裏面に螺子4bによって固定されて止水用パッキン6を固定するパッキン押え4cとから構成されている。」

(19)甲第19号証
甲第19号証には、以下のように記載されている。
「【0019】
・・・
弁体(3)は、・・・弁部(17)下面にリング状に設けられる弾性材であって、弁体(3)と排水栓(1)とを水密的に当接させる水密パッキン(4)と、・・・からなり、更に水密パッキン(4)に、排水栓(1)と当接する当接部分の弾性変形を容易とする、肉薄によって形成された可撓部分(9)を形成し、また水密パッキン(4)の当接部分の上方であって弁体(3)との間に、当接部分が上方へと撓むことを可能とする逃げ空間(10)を設けてなる。」

(20)甲第20号証
甲第20号証には、以下のように記載されている。
(明細書第2頁第17行?第3頁第2行)
「図示のように、浴槽の底板1には孔2が形成され、この孔2に挿入した筒状の排水金具3の下端にはエルボ等の屈曲管4がネジ合わされ、上記屈曲管4の締付けにより、排水金具3の上端外周に形成したフランジ5が浴槽の底板1の上面に係合して排水金具3ならびに屈曲管4が固定される。」

(21)甲第21号証
甲第21号証には、以下のように記載されている。
ア.(明細書第6頁第4?11行)
「符号13は前記排水口2に挿通された筒部であり、該筒部13の上端にはフランジ14が一体的に設けられている。該筒部13の下端外周には雄ねじが刻設されており、該雄ねじに配管接続部材15が螺合して締め込まれることにより配管接続部材15のフランジ16と前記フランジ14とで排水口2の縁部を挟持するようにして排水栓3が浴槽1の底面に固定される。」

イ.(同頁第14?17行)
「前記配管接続部材15は前記筒部13が差し込まれる開口19(なお該開口19の内周面には前記筒部13に螺合する雌ねじが刻設されている。)の他、」

(22)甲第22号証
甲第22号証には、以下のように記載されている。
「【0011】
排水口Bは図示の如く段部B1を有するように形成されたもので、内部に排水金具Gが装填される。排水金具Gは段部B1にシール材B2を介して係止せる鍔部G1と、排水口B下面側に突出する筒部G2外周に螺子部G3を刻設してなり、その筒部G2に排水管継手Aが連結される。
【0012】
本実施例の排水管継手Aは、排水金具Gに接続する一次側接続口1をそなえた垂直管部2と、排水管Hを接続する二次側接続口3を備えた水平管部4とを一体に連設したエルボー管状の継手本体5において、その垂直管部2周壁にレリースワイヤ挿通孔6を三箇所開設してなる。
【0013】
一次側接続口1の外周にはクッション材7を介して器体底壁Cに当接する鍔部8を設け、同接続口1の内周には排水金具Gの螺子部G3に螺合する雌螺子部9を刻設する。」

(23)甲第23号証
甲第23号証には、以下のように記載されている。
「【0011】
・・・図1に示すように、排水栓金具2との接続部1は、器体Aのフラットな上面に開口する垂直な円筒形をなし、内周面のめねじ7に、同じく円筒形をなして水槽Bの排水孔8に嵌め込まれる排水栓金具2の下部を螺合し、同金具2のフランジ部9と器体Aの上面にそれぞれ添わせた環状パッキン10を排水孔8の口縁に圧接させて水槽Bの裏面下部に緊締される。」

(24)乙第1号証
【図2】には、排水栓5の上部に位置する円板状部位が、止水状態において排水孔2のテーパ面2bに接触するか、又は極めて近接している状態が示されているのが見て取れる。

(25)乙第2号証
乙第2号証には、以下のように記載されている。
「【0012】
さらに、ボウル3の排水口4の開口部18を内方に向かい傾斜する略逆円錐台形状となしたものである。これにより、ボウル3に水を溜めた状態で、排水口4の開口部18にケレップ6の止水栓7を嵌合させて止水した場合に、下方に向かうにつれて開口部18が小さくなっており、止水栓7の周縁と開口部18の内面とが接触しやすいため、排水口4の開口部18と止水栓7との間に隙間を生じにくい状態で止水できる。」

(26)乙第3号証
乙第3号証には、以下のように記載されている。
「【0024】
・・・この排水栓14は止水状態では排水口面15aより下方で且つ排水金具12のつば部18より上方の第1の位置P1(図3)まで下降して排水栓14の外端部が円筒部16のテーパ面61に当接するものであり、・・・」

3.本件発明との対比
本件発明と、甲1発明とを対比する。

ア.甲1発明の「洗面ボウル1」は、本件発明の「水槽」に相当する。
したがって、甲1発明の「洗面ボウル1の底部に、貫通穴2に向かって、円筒状陥没部を形成」することは、本件発明の「水槽の底部に、円筒状陥没部を形成」することに相当する。

イ.甲1発明の「貫通穴2の段部22」は、本件発明の「内向きフランジ部」に相当する。
また、甲1発明の「排水筒3」と、本件発明の「排水口金具」とは、「排水口器具」である点で共通する。
さらに、甲1発明の「オーバーフロー管23」と本件発明の「接続管」とは、「配管」である点で共通する。
したがって、甲1発明の「円筒状陥没部の底部に形成された貫通穴2の段部22が排水筒3の上端の鍔部21とオーバーフロー管23の一端とで挟持取り付けられ排水口を形成」することと、本件発明の「該円筒状陥没部の底部に形成された内向きフランジ部が排水口金具と接続管とで挟持取付けられて排水口部を形成」することとは、「該円筒状陥没部の底部に形成された内向きフランジ部が排水口器具と配管とで挟持取付けられて排水口部を形成」する点で共通する。

ウ.甲1発明の「栓体11」は、本件発明の「カバー」に相当する。
したがって、甲1発明の「排水口部には、排水筒3の上端の鍔部を露出しないように覆う栓体11が円筒状陥没部内に設けられ」ることと、本件発明の「該排水口部には、排水口金具を露出しないように覆うカバーが該円筒状陥没部内に設けられ」ることとは、「該排水口部には、排水口器具を露出しないように覆うカバーが該円筒状陥没部内に設けられ」る点で共通する。

エ.甲1発明の「栓体11」は、本件発明の「カバー」に相当する。
したがって、甲1発明の「円筒状陥没部内を上下動する栓体11が、排水筒3の上端の鍔部21とほぼ同径であ」ることと、本件発明の「その円筒状陥没部内を上下動するカバーが、前記排水口金具のフランジ部とほぼ同径である」ことは、「その円筒状陥没部内を上下動するカバーが、前記排水口器具のフランジ部とほぼ同径である」点で共通する。

オ.甲1発明の「栓体11の下面には、排水筒3とで密閉可能に止水するパッキンを挿通保持する軸部が設けられて排水栓を構成し、該排水栓の昇降でパッキンによる開閉がされる」「排水栓の構造」と、本件発明の「該カバーの下面には、排水口金具とで密閉可能に止水するパッキンを挿通保持する軸部が設けられて排水栓を構成し、該排水栓の昇降でパッキンによる開閉がされる」「排水栓装置」とは、「該カバーの下面には、排水口器具とで密閉可能に止水するパッキンを挿通保持する軸部が設けられて排水栓を構成し、該排水栓の昇降でパッキンによる開閉がされる」「排水栓装置」の点で共通する。

したがって、両者は、以下の点で一致する。

「水槽の底部に、円筒状陥没部を形成し、該円筒状陥没部の底部に形成された内向きフランジ部が排水口器具と配管とで挟持取付けられて排水口部を形成し、該排水口部には、排水口器具を露出しないように覆うカバーが該円筒状陥没部内に設けられ、その円筒状陥没部内を上下動するカバーが、前記排水口器具のフランジ部とほぼ同径であり、該カバーの下面には、排水口器具とで密閉可能に止水するパッキンを挿通保持する軸部が設けられて排水栓を構成し、該排水栓の昇降でパッキンによる開閉がされる排水栓装置。」

そして、以下の点で相違する。

(相違点1)
「排水口部を形成」する「排水口」器具が、本件発明では「排水口金具」であるのに対し、甲1発明では排水筒3であって金具か否か不明な点。

(相違点2)
「円筒状陥没部の底部に形成された内向きフランジ部が排水口」器具「とで挟持取付けられて排水口部を形成」する配管は、本件発明では「接続管」であるのに対し、甲1発明ではオーバーフロー管23である点。

(相違点3)
「円筒状陥没部内を上下動するカバー」が、本件発明では「円筒状陥没部に接触」しないのに対し、甲1発明ではそのようなものか否か不明な点。

(相違点4)
「円筒状陥没部内を上下動するカバー」が「止水時には」、本件発明では「水槽の底部面に、概ね面一とされ」るのに対し、甲1発明ではそのようなものではなく、洗面ボウル1の底部面に対して没した位置とされる点。

4.相違点の判断
(相違点1について)
排水口部を形成する排水口器具を排水口金具とすることは、例えば、上記2.(4)?(8)に示した甲第4?8号証に記載されているように周知・慣用手段であり、甲1発明の排水筒3の具体的態様として排水口金具を選択することは当業者が容易になし得たものである。

(相違点2について)
(口頭審理陳述要領書における請求人の主張)
請求人は、口頭審理陳述要領書の4頁下から3行?6頁3行において、甲第1号証の段落【0007】における「貫通孔2の下方で排水筒3の外周には止めナット4を螺合してあり、排水筒3を止めナット4にて貫通穴2に装着してある。」との記載及び【図1】の記載を詳細に参照すると、甲1発明では、排水筒3の外周に螺合した止めナット4を回転させて上方に移動させ、止めナット4と排水筒3の上端部との間に内向きフランジ部とオーバーフロー管23とを挟持させることで、排水筒3を円筒状陥没部に装着するようにしていることは明白であり、つまり、甲1発明において、オーバーフロー管23は、内向きフランジ部の下方に配置されてはいるものの、それ自体は排水筒3の上端部との間に内向きフランジ部を挟持するための構成を備えておらず、したがって、甲1発明をオーバーフロー口24の無い浴槽等に適用する場合には、オーバーフロー管23は当然に省略されるものであり、オーバーフロー管23を省略した場合には止めナット4の上面が内向きフランジ部の下面に当接して排水筒3の上端部との間に内向きフランジ部を挟持して排水筒3を円筒状陥没部内に取り付けることになり、これらのことから、甲1発明において、排水筒3の上端部との間に内向きフランジ部を挟持するための構成を備え、「「円筒状陥没部の底部に形成された内向きフランジ部が排水口」器具「とで挟持取付けられて排水口部を形成」する」機能を有し、円筒状陥没部に対する排水口器具の装着に直接寄与する部材は、止めナット4であり、そして、本件発明の接続管は、甲1発明の止めナット4と排水管14とを一体にしたものと考えることができ、相違点2は実質的な相違点ではない旨主張する。

(当審の判断)
しかしながら、甲1発明において、円筒状陥没部の底部に形成された貫通穴2の段部22は排水筒3の上端の鍔部21とオーバーフロー管23の一端とで挟持取り付けられいるのであり、止めナット4は排水筒3を貫通穴に装着するものであるがそれ自体は貫通穴2の段部22を挟持してはいない。また、甲1発明の「止めナット4」及び「排水管14」は物理的に分離(離間)しており、両者を一体と考えることはできない。したがって、相違点2は実質的な相違点ではないとはいえない。

(上申書における請求人の主張)
また、請求人は、上申書の4頁下から5行?6頁7行において、上端部に雌ねじ部を形成した所謂エルボー形状の屈曲管については、甲第20号証、甲第21号証、甲第22号証及び甲第23号証に記載されている通り、本件発明の特許出願前に本件発明が属する技術分野において周知の技術であり、上記相違点2は本件発明と甲1発明との実質的な相違点ではない旨主張し、また、仮に、本件発明と甲1発明とが相違点2において相違しているとしても、上記のとおり、周知技術である上端部に雌ねじ部を形成した所謂エルボー形状の屈曲管を甲1発明に適用することは、当業者において、容易に想到することができた程度のものである旨主張する。

(当審の判断)
しかしながら、排水栓装置において上端部に雌ねじ部を形成した所謂エルボー形状の屈曲管を用いることが周知技術であったとしても、甲1発明は、排水口部に排水管14及びオーバーフロー管23を接続するものであるから、接続管のみを接続する上記周知技術を適用することはできない。
そして、甲1発明は、洗面ボウル等に設ける排水栓であり、オーバーフロー口24の無い浴槽等に適用することが想定されていないから、オーバーフロー管23を省略する動機付けは見出せない。また、仮に、オーバーフロー管23を省略することが容易であったとしても、甲1発明の
「貫通穴2の上から貫通穴2に排水筒3を挿通し、
排水筒3の上端の鍔部21を貫通穴2の段部22に載置し、
貫通穴2の下方で排水筒3の外周に止めナット4を螺合し、
排水筒3を止めナット4にて貫通穴2に装着し、
排水筒3内は排水口5となっており、排水口5内には排水栓部材6を内装し、
排水筒3の上部の側方にはオーバーフロー管23の一端を連結し、
排水筒3の下部の側方から排水管14を導出し、
排水筒3の下端には蓋体15を螺合にて装着してある」
という構成は、甲第1号証の段落【0008】及び【図1】を参照すれば、排水筒3は止めナット4の螺合位置にとどまらず、排水管14を超え、その下方の蓋体15に到るまで延長されており、甲1発明において、オーバーフロー管23を省略し、さらに、止めナット4と排水管14を一体化するために、構造の異なる上記周知技術を適用することまで、容易であるとはいえない。
したがって、甲1発明において、オーバーフロー管23を省略し、さらに、円筒状陥没部の底部に形成された貫通穴2の段部22が排水筒3の上端の鍔部21と排水管14とで挟持取り付けられるように構成して相違点2に係る本件発明の構成に想到することは困難である。

よって、相違点2を実質的な相違点ではないということはできず、また、甲1発明に周知技術を適用して相違点2に係る本件発明の構成に容易に想到することもできない。

(相違点3について)
甲1発明において、円筒状陥没部内を上下動する栓体11が円筒状陥没部に接触しない正常な状態では、パッキンが排水筒3の内周面に圧接して確実に止水することができるが、円筒状陥没部内を上下動する栓体11のパッキンを除く部分が円筒状陥没部に接触すると、パッキンが排水筒3の内周面に圧接できなくなり、この場合に確実に止水することができなくなることは明らかであり、このことは、例えば、甲第11号証の【図1】?【図6】及び甲第12号証の第4図に記載されているように、パッキンを有する栓体であればパッキン以外の栓体部分が排水口部に接触しないように設計することが周知技術であることからも、当業者における周知事項といえる。
したがって、円筒状陥没部内を上下動する栓体が円筒状陥没部に接触しないようにするという相違点3にかかる本件発明の構成は、当業者における周知事項を勘案すれば、甲1発明に基づいて容易に想到することができたものである。

(被請求人の主張)
なお、被請求人は、栓が円筒状陥没部に当接するように構成された先行文献として乙第1?3号証(参考資料1?3)を提示した上で、円筒状陥没部に対し栓体11が接触しないようにすることが当業者において周知事項であることに根拠がない旨主張する。

(当審の判断)
しかしながら、乙第1号証には、【図2】から排水栓5の上部に位置する円板状部位が、止水状態において排水孔2のテーパ面2bに接触するか、又は極めて近接している状態が示されているのが見て取れるものの、止水状態においてそれらが接触しているか否かは明らかでない。
また、乙第2号証の段落【0012】には「止水栓7の周縁と開口部18の内面とが接触しやすいため、排水口4の開口部18と止水栓7との間に隙間を生じにくい状態で止水できる。」と記載されているが、段落【0027】には「また、止水栓7の厚み方向中程にOリング16を配置しており、Oリング16が弾性変形して開口部18の内面と接触するため、排水口4の開口部18と止水栓7との間に隙間がさらに生じにくい状態で止水できる。」と記載されており、開口部18の内面と接触する止水栓7の周縁がOリング16であることは明らかであり、止水時に止水栓7のOリング16以外の部分が開口部18の内面と接触するか否かは明らかでない。
さらに、乙第3号証の段落【0024】には「この排水栓14は止水状態では排水口面15aより下方で且つ排水金具12のつば部18より上方の第1の位置P1(図3)まで下降して排水栓14の外端部が円筒部16のテーパ面61に当接するものであり、」と記載されているが、排水栓14の外端部にOリング等のパッキンが設けられているか否か明らかでない。
このように、被請求人が提示する乙第1?3号証のいずれにも、Oリング等のパッキンを備えた栓において、栓のパッキン以外の部分が円筒状陥没部に当接するように構成された点は開示されていない。
したがって、被請求人の主張に根拠はない。

(相違点4について)
(審判請求書における請求人の主張)
請求人は、審判請求書の14頁1?11行において、甲第3号証の段落【0024】には、排水栓23の上面の中心部の高さを、止水時に、ボウル1の底面と略同じ高さになるように設定することで、ボウル1内に洗面器等の容器を置いて使用する場合に、容器を安定させることが可能になる点が記載されており、この効果は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明を浴槽に適用した場合に、入浴者の躓きを防止できることと等価であり、また、甲第1号証及び甲第2号証には、甲第3号証に記載された上記構成を適用することを阻害するような特段の記載はなく、したがって、甲1発明に、甲第3号証に記載された上記構成を適用することで本件発明の構成を得ることは、当業者において、容易に想到することができた程度のものである旨、主張する。

(当審の判断)
しかしながら、甲第3号証の段落【0024】の記載について、排水栓23の上面の中心部の高さを、止水時に、ボウル1の底面と略同じ高さになるように設定するのは、排水栓が容器の邪魔とならないようにするためであると理解でき、一方、甲1発明において、栓体は、洗面ボウルの底部面に対して没した位置とされ、してみれば、甲1発明において、洗面ボウル内に洗面器等の容器を置いて使用する場合、栓体が容器の邪魔になることはなく、容器は安定するはずであり、すなわち、甲1発明において、容器を安定させるという課題が生じることはなく、ひいては栓体の上面の中心部の高さを洗面ボウルの底部面と略同じ高さに設定するといった必要性はなく、以上の点から、甲1発明に対し、甲第3号証に記載の構成を適用する動機付けは存在せず、たとえ当業者であっても、甲1発明及び甲第3号証に記載された発明に基づき、相違点4に係る本件特許発明に想到することは容易ではない。
なお、甲1発明および甲第3号証に記載された発明はともに洗面化粧台の洗面ボウル等に設ける排水栓の構造に関するものであり、浴槽に適用する動機付けはなく、それらを組み合わせた効果が、入浴者の躓きを防止できるという本件発明が奏する効果と等価ということはできない。

(口頭審理陳述要領書における請求人の主張)
また、請求人は、口頭審理陳述要領書の12頁6?18行において、排水栓23がボウル1の底面から下方へ陥没する甲1発明においても、コップ等の容器の一部又は液体洗剤の計量カップ等の容器の全部が排水部内に落ち込んで傾きを生じ、容器が不安定になって容器内の貯留物が零れるという課題があり、この課題は甲第3号証に記載された発明の課題と共通し、この課題は、甲第3号証に記載された構成が前提とするボウル1だけでなく、甲1発明が前提とする洗面ボウルにおいても同様に生じうる問題であり、甲第3号証の段落【0024】の記載は、これらの問題を解決するために、排水栓23の上面の中心部の高さをボウル1の底面と略同じ高さになるように設定することを示唆しており、したがって、甲1発明と甲第3号証に記載され発明とは、技術分野及び課題において共通しており、甲第3号証の段落【0024】の記載は、甲1発明に甲第3号証に記載された構成を適用することの動機付けとなると言える旨主張する。

(当審の判断)
しかしながら、甲第3号証における発明の詳細な説明の段落【0024】には、洗面器等の容器では、排水栓23(本件発明の「カバー」に相当する)がボウル1の底面から突出すると、排水栓23に洗面器が乗り上げて洗面器を安定して置くことができないといった課題が生じる点が示唆されているのであり、甲1発明のように、栓体11が洗面ボウル1の底部面よりも没しているのであれば、栓体11に洗面器が乗り上げることはなく、洗面器を安定して置くことができるため、洗面器を安定して置くことができないといった課題は生じない。
また、甲第1号証及び甲第3号証のいずれにおいても、円筒状陥没部内を上下動する栓体が洗面ボウルの底部面に対して没した位置とされる排水栓の構造において、コップ等の容器の一部又は液体洗剤の計量カップ等の容器の全部が排水部内に落ち込んで傾きを生じ、容器が不安定になって容器内の貯留物が零れるという課題は何ら記載されておらず、また、自明な課題であるとも認められない。
以上のように、甲1発明及び甲第3号証に記載された発明において課題が共通しているということはできず、甲1発明に対し甲第3号証に記載された発明を適用する動機付けを見出せない。

(上申書における請求人の主張)
さらに、請求人は、上申書9頁12?24行において、甲第3号証の段落【0024】の記載は、「排水栓23を閉塞位置にした状態で、ボウル1内に洗面器等の容器を置いて使用する場合に、容器を安定させることが可能になる。」ことの一例として「この排水栓23の上面の中心部の高さは、図3に示すように、排水栓23が排水孔12を閉塞した位置にあるときに、ボウル1の底面から上方へ突出しないように該底面と略同じ高さになるように設定されている。」ことを明示したものと考えられ、「洗面器等の容器」との記載は、「洗面器」以外の「容器」を考慮したものであることを示しており、コップや計量カップ等の小径の容器を含むことは明らかで、そうすると、当業者であれば、甲第3号証の段落【0024】の記載から、甲1発明のように栓体11がボウル1の底面から下方に没していると、ボウル1内に置かれたコップや計量カップ等の小径の容器が傾いて不安定になるという課題を容易に想到できる旨主張する。

(当審の判断)
しかしながら、甲第3号証の段落【0024】は、「排水栓23を閉塞位置にした状態で、ボウル1内に洗面器等の容器を置いて使用する場合に、容器を安定させることが可能になる」ように「この排水栓23の上面の中心部の高さは、図3に示すように、排水栓23が排水孔12を閉塞した位置にあるときに、ボウル1の底面から上方へ突出しないように該底面と略同じ高さになるように設定されている」のであり、この記載から、排水栓が排水孔を閉塞した位置にあるときに、ボウルの底面から下方に没しているという甲第3号証に何ら記載も示唆もされていない場合について、具体的に例示されていないボウル1内に置かれたコップや計量カップ等の小径の容器が傾いて不安定になるという課題を容易に想到できるということは困難であり、したがって、甲第3号証に記載の構成を甲1発明に適用する動機付けは見出せない。

5.小括
よって、本件発明は、甲1発明、甲3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたと認めることはできない。

第7.無効理由1(第36条)についての当審の判断
1.カバー6と円筒状陥没部10との関係が不明瞭である点
(審判請求書における請求人の主張)
請求人は、審判請求書の6頁8行?7頁13行において、以下のように主張する。
本件特許の発明の詳細な説明の記載からは、円筒状陥没部10が、水槽の底部1から下方に向けて先窄まり状の傾斜面及び部分円弧状のR面を含むものなのか、又は文字通り上下方向において内径が略一定の円筒形状であるのかが明確でなく、本件発明の「円筒状陥没部」が、「先窄まり状の曲面」でなる部分を含まないもの、即ち水槽の底部から下方に向けて先窄まり状の傾斜面及び部分円弧状のR面を含むものではなく、文字通り上下方向において内径が略一定の円筒形状を呈するものであれば、図1の記載では、その左半分に示された止水時にカバー6の周縁部がR面に対向した位置にあり、その右半分に記載された開放時にカバー6の上面は水槽の底部1よりも上方に位置し、軸部61の下端もR面に達している。したがって、図1に記載された構成では、カバー6は、円筒状陥没部10内に設けられておらず、円筒状陥没部10内を上下動するものでもなく、発明の詳細な説明の記載は、カバー6と円筒状陥没部10との関係について、図1の記載と整合しておらず、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号の規定に違反する。

また、請求人は、審判請求書の6頁14?18行において、本件特許の図1に記載された構成は、カバー6と円筒状陥没部10との関係について、本件発明の「該排水口部には、排水口金具を露出しないように覆うカバーが円筒状陥没部内に設けられ、その円筒状陥没部内を上下動するカバーが、止水時には、水槽の底面部に概ね面一とされ」との記載とも整合しておらず、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではなく、かつ特許を受けようとする発明が明確ではなく、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反する旨主張する。

(当審の判断)
しかしながら、被請求人が口頭審理陳述要領書の9頁18?23行において主張するように、本件発明の「円筒状陥没部」が、円筒形状部のみならず、先窄まり状の傾斜面及び部分円弧状のR面を含むことは、本件特許の発明の詳細な説明における「排水口部2には、排水口金具3を露出しないように覆うカバー6が円筒状陥没部10内に設けられ、その円筒状陥没部10内を上下動するカバー6が、・・・](【0011】段落)という記載、及び、図1の記載に基づき導くことができる。

したがって、本件発明の「円筒状陥没部」が、円筒形状部のみならず、先窄まり状の傾斜面及び部分円弧状のR面を含むものであることは明らかであり、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、カバー6と円筒状陥没部10との関係について、図1の記載と整合しており、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであり、また、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、かつ特許を受けようとする発明は明確であるので、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たす。

2.カバー6とパッキン7との関係が不明瞭である点
(審判請求書における請求人の主張)
請求人は、審判請求書の7頁下から3行?9頁8行において、以下のように主張する。
発明の詳細な説明の段落【0008】及び【0013】に記載されているように、カバーとその軸部に挿通保持されたパッキンとが、相互に作用されることなく、独自に充分且つ正確な効果を果し得るためには、パッキンがカバーの軸部に対して上下移動自在にされている必要がある、つまり、カバーが排水口部の円筒状陥没部内にあって上下動可能でパッキンの押圧止水作用に妨げとならず、パッキンがカバーの作用と関係なく排水口金具のフランジ部との密閉止水をすることができ、パッキンの密閉止水の作用に関係なくカバーの位置設定ができ、パッキンを排水口金具のフランジ部に搭載するだけでの軽い接触でも排水を止水することができるようにするために、カバーとパッキンとが個別に上下方向に移動できなければならないところ、図1に記載された構成では、パッキン7がカバー6の底面に設けられた軸部61に上下動できない状態で挿通保持されており、パッキン7はカバー6と一体的に上下移動するため、カバー6の上下方向の位置は、パッキン7と排水口金具3との接触状態に応じて変化することになり、パッキン7だけを排水口金具3に搭載することはできない。したがって、図1に記載された構成では、カバー6とパッキン7とは相互に作用しあっており、発明の詳細な説明の記載は、カバー6とパッキン7との関係について、図1の記載と整合しておらず、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、また、本件発明の「該カバーの下面には、排水口金具とで密閉可能に止水するパッキンを挿通保持する軸部が設けられて排水栓を構成し」との記載からは、発明の詳細な説明の段落【0008】及び【0009】に記載された作用効果を到底得られるものではなく、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明の記載したものではなく、かつ特許を受けようとする発明が明確ではなく、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反する。

(当審の判断)
しかしながら、本件特許における発明の詳細な説明の記載などを参酌すれば、カバー及びパッキンは一体で移動するものであることは明らかであり、そして、図1には、カバー及びパッキンは一体で移動しつつ、パッキン7のみが排水口金具3に接触している態様が明示されているから、請求人が主張するようにパッキンがカバーの軸部に対して上下移動自在にされていると解する余地はない。
そして、段落【0008】の「パッキンは、カバーが排水口部の円筒状陥没部内にあって上下動可能で接触しないので、パッキンの押圧止水の妨げとならず、カバーの作用と関係なく排水口金具のフランジ部と密閉止水することができる。」との記載は、「パッキン」及び「カバー」という2つの主語が並んで表示されているため、文章がやや分かりにくいものとなっているが、この記載は、「カバーが排水口部の円筒状陥没部内にあって上下動可能で接触しないので、パッキンの押圧止水の妨げとならず、パッキンは、カバーの作用と関係なく排水口金具のフランジ部と密閉止水することができる。」という意のものであって(位置を移動させたパッキンのみに下線を付した)、後続の「例えば、パッキンは、カバーが排水口部の円筒状陥没部内にあって上下動可能で接触しないので、パッキンの押圧止水作用に妨げとならず、カバーの作用と関係なく排水口金具のフランジ部との密閉止水をすることができる。また、カバーは、パッキンの密閉止水の作用に関係なく位置設定ができ、水槽の底部面との概ね面一が簡単且つ容易に位置決めできる。」との記載を併せて読めば、カバーが円筒状陥没部に接触しないため、カバーがパッキンによる押圧止水作用の妨げとならず、これにより、排水口金具が露出しないようにするというカバーの作用と関係なく、パッキンによる密閉止水をすることができる旨、及び、カバーの位置をパッキンの作用に関係なく設定することができるため、カバー及び水槽の底部面を容易に概ね面一とすることができる旨が記載されているものと当業者は理解することができ、請求人が主張するように、【0008】及び【0013】の記載からパッキンがカバーの軸部に対して上下移動自在にされている必要があると解さなければならない根拠はない。
したがって、本件特許における発明の詳細な説明の段落【0008】及び【0013】の記載は、図1の記載と何ら矛盾しておらず、両者は整合している。

また、本件発明の「該カバーの下面には、排水口金具とで密閉可能に止水するパッキンを挿通保持する軸部が設けられて排水栓を構成し」との記載から、上述したように、段落【0008】の発明の効果の記載を矛盾無く理解でき、そして、そのように理解すれば、段落【0009】の発明の効果の記載も矛盾無く理解でき、請求人が主張するように、パッキンがカバーの軸部に対して上下移動自在にされている必要はない。

よって、本件特許における特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明の記載したものであり、かつ特許を受けようとする発明は明確であるから、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たす。

3.特許請求の範囲の「カバーが」「水槽の底部面に概ね面一」が不明瞭である点
(審判請求書における請求人の主張)
請求人は、審判請求書の9頁10?22行において、以下のように主張する。
本件特許の特許請求の範囲の請求項1における「カバーが」「水槽の底部面に概ね面一」のうちの「概ね」とは一般に誤差範囲を含む場合に用いられる文言であるところ、本件特許の発明の詳細な説明では、段落【0013】に「カバーにつまづくことを防止するため、カバーの頂面60が水槽の底部1面に概ね面一になるように・・・」とのみ記載されているだけで、どの程度の凹凸がある場合に躓くのかが判然とせず、「概ね面一」がどの程度の誤差範囲を含むのか明確でなく、この点に関して、本件特許の図1には、水槽の底部1の延長線であると思われる二点鎖線に、部分球面形状のカバー6の上面の頂部が一致している状態が記載されてはいるが、その他の図面はなく、発明の詳細な説明にも記載がない。したがって、上記「概ね」については、発明の詳細な説明及び図面を参酌しても明瞭でなく、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではなく、特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。

(当審の判断)
しかしながら、「概ね」という語は、時として、範囲を不確定とさせる表現に当たる場合があるが、ここに言う「概ね面一」とは、本件特許の技術分野の平均的な技術水準を考慮すれば、カバーを水槽の底部面となるべく面一な状態にする、或いは、ほぼ面一な状態とするといった意味合いを有するものと捉えることができ、また、「概ね面一」とあるのは、段落【0013】の記載を参酌すれば、カバーへのつまづき防止を図ること等を意図した構成であることから、本件特許に係る発明の詳細な説明に接した当業者は、「概ね面一」とは、“止水時に、カバーを水槽の底部面に対し積極的に出没させた位置に設けようとするものではない”という趣旨であると理解することができるから、特許請求の範囲の「カバーが」「水槽の底部面に概ね面一」という記載は明確である。

(審判事件弁駁書における請求人の主張)
また、請求人は審判事件弁駁書の7頁11行?8頁7行において、水槽の底部面は水捌けを考慮して一般に下方に向けて傾斜する勾配が設けられており、「面一」の語が「二つの面の間に段差が無く、フラットな状態のこと」であるとすると、カバーの上面が水槽の底部面に面一であるためにはカバーの上面は水槽の底部面と同じく下方に向けて傾斜する勾配を設けることで下に凸となる形状でなければならないにもかかわらず、本件特許の図1に示されたカバーの上面は、上に凸となる形状を呈しており、下方に向けて傾斜する勾配が設けられた水槽の底面部と面一になり得ず、現に、本件特許の図1に示された水槽の底面部には、下方に向けて先窄まり状の傾斜面とカバーの上面とによって水槽の底部面との間に段差が形成されており、この段差が躓きを生じないものであるか否かは明確でなく、さらに、本件特許の段落【0013】には、「カバーの頂面60が水槽の底部1面と概ね面一とになるように円筒状陥没部10の縁とカバー6の縁との位置を略一致させることがよい。」との記載は、カバーの頂面60が水槽の底部1面と面一であれば、カバーが水槽の底部面から突出しないことは理解できるが、先窄まり状の傾斜面とカバーの上面とによって段差が形成されることを前提としたものであり、円筒状陥没部10の下方に向けて先窄まり状の傾斜面の高さとカバーの高さについて何ら言及されていない以上、この段差が躓きを生じないものであるか否かは明確でなく、また、「円筒状陥没部10の縁とカバー6の縁との位置を略一致させ」たとしても、必ずしもカバーの頂面60が水槽の底部1面と面一にはならず、カバーの高さが先窄まり状の傾斜面の高さよりも高い場合には両者の縁の位置を一致させてもカバーが水槽の底部面から突出し、カバーによって躓きを生じる可能性を否定できない旨主張する。

(当審の判断)
しかしながら、段落【0013】には、「カバーにつまづくことを防止するため、カバーの頂面60が水槽の底部1面と概ね面一となるよう・・・」と記載されており、また、図1には、水槽の底部面とカバー60の頂点とがほぼ同じ高さになる状態が示されており、してみれば、本件発明における「面一」とは、「二つの面の間に段差がなく、フラットな状態のこと」という意味ではなく、止水時において、水槽の底部面とカバーの頂部とがつまづくことを防止できる程度にほぼ同じ高さになることを意味するものと解釈することができ、本件発明の「カバーが水槽の底部面に概ね面一」という技術事項は明確である。

したがって、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす。

第8.むすび
以上、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明に係る特許を無効とすることはできない。
また、他に本件発明に係る特許を無効とすべき理由を発見しない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
排水栓装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面化粧台、浴槽、流し台などにおける水槽の底部に形成された排水口部を覆うカバーが設けられた排水栓装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の洗面化粧台、浴槽、流し台などにおける水槽の底部に形成された排水口部は、該排水口部に排水口金具を貫通して取付け、該排水口金具のフランジ部が水槽の底部表面に露出されているものであった。
ところが、水槽の底部表面に露出された排水口金具には、この排水口金具のフランジ部との境目に残水及び水垢などが溜り、これらにより汚れが目立ち、見苦しくなり、常時、清掃する必要を生じ、不都合であった。
【0003】
そこで、洗面化粧台、浴槽、流し台などにおける水槽の底部に漸次縮径する陥没部を形成して排水口部とし、該排水口部には、陥没部の内面と面一のテーパ内面を備えた排水口金具が配設され、排水口部の開閉をする排水栓が、止水の閉状態において、排水口部内に位置され、且つ排水口金具より上方に位置されるようにし、残水及び水垢の溜り易い排水口金具の取付境目が隠れるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開平10-131255
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
止水の閉状態は、排水栓が精度を出し難い排水口部内の排水口金具より上方位置でされ、残水及び水垢が溜り、汚れ易い排水口金具の取付境目を排水栓で隠し、見え難くしているが、止水の点で、排水口部内が精巧でない故に止水の密閉をし難く、水槽に精巧な排水口部を排水口金具と共に形成することが困難なことであった。まして、陶器などの水槽になると、一層、精巧な排水口部の成形は困難で、精度が出し難く、精巧性の乏しい排水口部での止水は密閉性に支障をきたす。また、栓蓋下に隣接するパッキンによる閉状態の止水は、パッキンによる当接以前に栓蓋の縁が排水口部内面と当接して、パッキンによる密閉に不足を生じ、支障を起すことになり、都合悪い。
更に、漸次縮径する排水口部での排水栓による止水の閉状態は、楔形の排水口部への排水栓の嵌め込みとなり、嵌め込み状態からの排水栓の引き抜き開状態への操作は重くなり、芳しくない。
【0006】
そこで、本発明は、水槽の底部に円筒状陥没部を形成し、該円筒状陥没部の底部に形成された内向きフランジ部が排水口金具と接続管とで挟持取付けられ、該排水口金具が露出されないように覆うカバーを円筒状陥没部内に上下動可能に設け、且つパッキンによる確実な止水を果すため、精巧に加工される排水口金具にパッキンを当接させることである。そして、このような排水栓装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の排水栓装置は、水槽の底部に、円筒状陥没部を形成し、該円筒状陥没部の底部には内向きフランジ部を形成し、該内向きフランジ部が排水口金具と接続管とで挟持取付けられて排水口部を形成し、該排水口部には、排水口金具を露出しないように覆うカバーが該円筒状陥没部内に設けられ、その円筒状陥没部内を上下動するカバーが、前記排水口金具のフランジ部とほぼ同径であるとともに、前記円筒状陥没部に接触せず、止水時には、水槽の底部面に概ね面一とされ、該カバーの下面には、排水口金具とで密閉可能に止水するパッキンを挿通保持する軸部が設けられて排水栓を構成し、該排水栓の昇降でパッキンによる開閉がされるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排水栓装置は、排水口金具が露出しないように排水口部を覆うカバーと、そのカバーの軸部に挿通保持される排水を止水するパッキンとで構成される排水栓でなり、これら相互が作用されることなく、独自に充分且つ正確な効果を果し得ることができる。例えば、パッキンは、カバーが排水口部の円筒状陥没部内にあって上下動可能で接触しないので、パッキンの押圧止水作用に妨げとならず、カバーの作用と関係なく排水口金具のフランジ部との密閉止水をすることができる。また、カバーは、パッキンの密閉止水の作用に関係なく位置設定ができ、水槽の底部面との概ね面一が簡単且つ容易に位置決めできる。
よって、排水栓は、そのパッキンを排水口金具のフランジ部に搭載するだけでの軽い接触でも排水を止水することができ、更に、カバーが水槽の底部面と概ね面一にされ、排水口部を覆うことになって排水口部内の汚れを覆い隠すことができ、見栄え良くできる。
【0009】
本発明の排水栓装置は、レリースワイヤの作動部がカバー下面に設けられるだけの施工で、カバー下面の軸部に挿通保持されたパッキンによる排水口金具のフランジ部への接触が容易にでき、該接触による密閉で止水ができる。よって、このような排水栓装置の施工は、簡単且つ容易にできることになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 水槽の底部に円筒状陥没部を形成し、該円筒状陥没部の内向きフランジ部を接続管とで挟持取付けた排水口金具が露出しないよう排水口部を覆うカバーと、該カバーの下方に設けられた軸部に挿通保持するパッキンとでなる排水栓を昇降可能とする排水栓装置の断面図であって、該排水栓の昇降による開閉状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の排水栓装置は、図1に示す如く、洗面化粧台、浴槽、流し台などの水槽の底部1に円筒状陥没部10を形成し、該円筒状陥没部の底部には内向きフランジ部11が形成され、該内向きフランジ部が排水口金具3と接続管5とでパッキン材4を介して挟持取付けられて排水口部2を構成している。
排水口部2には、排水口金具3を露出しないように覆うカバー6が円筒状陥没部10内に設けられ、その円筒状陥没部10内を上下動するカバー6が、止水時には、水槽の底部1に概ね面一とされ、該カバーの下面には、排水口金具3とで密閉可能にするパッキン7を挿通保持する軸部61が設けられて排水栓20を構成している。
【0012】
排水口金具3には、レリースワイヤ8の作動部81が支持部材9をもって支持され、該作動部が支軸82を介してカバー6の下面に付設され、カバー6の下面に設けられた軸部61に挿通保持されたパッキン7がレリースワイヤ8による遠隔操作で作動され、開閉させる。
なお、カバー6下面には、ガイド筒62を設け、該ガイド筒がレリースワイヤの作動部81によってガイドされて排水栓20の昇降を行われる。
【0013】
排水口金具3は、円筒状陥没部10の底部に形成された内向きフランジ部11を接続管5とで挟持取付けて水槽の底部1に露出しないようにし、排水口金具3が該円筒状陥没部10の底部に取付けられた排水口部2には、円筒状陥没部10内に排水栓20のカバー6が上下動可能に設けられることによって、排水口部2が覆われ、排水口金具3の取付境目などに生じる残水や水垢による汚れなどが隠されて都合良い。
また、カバー6は、止水のために設けられたパッキン7の密閉性の作用と関係なく、円筒状陥没部10内を上下動可能に設けられているので、位置設定を簡単且つ容易にでき、カバーにつまづくことを防止するため、カバーの頂面60が水槽の底部1面と概ね面一になるよう円筒状陥没部10の縁とカバー6の縁との位置を略一致させることがよい。
【0014】
カバー6の下面に設けられた軸部61に挿通保持されたパッキン7は、成形加工上、精巧にし難い円筒状陥没部10との接触でなく、精巧な加工がし易い排水口金具3との接触であるため止水の密閉性を正確且つ確実に得ることができ、好都合になる。また、密閉性がよいので、排水栓20を排水口金具3に載置するだけでの止水ができ、更に、線接触による密閉がされるパッキン7を使用すれば、その効果は向上する。
【符号の説明】
【0015】
1 水槽の底部
10 円筒状陥没部
11 内向きフランジ部
2 排水口部
20 排水栓
3 排水口金具
4 パッキン材
5 接続管
6 カバー
60 頂面
61 軸部
62 ガイド筒
7 パッキン
8 レリースワイヤ
81 作動部
82 支軸
9 支持部材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽の底部に、円筒状陥没部を形成し、該円筒状陥没部の底部に形成された内向きフランジ部が排水口金具と接続管とで挟持取付けられて排水口部を形成し、該排水口部には、排水口金具を露出しないように覆うカバーが該円筒状陥没部内に設けられ、その円筒状陥没部内を上下動するカバーが、前記排水口金具のフランジ部とほぼ同径であるとともに、前記円筒状陥没部に接触せず、止水時には、水槽の底部面に概ね面一とされ、該カバーの下面には、排水口金具とで密閉可能に止水するパッキンを挿通保持する軸部が設けられて排水栓を構成し、該排水栓の昇降でパッキンによる開閉がされることを特徴とする排水栓装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-09-04 
結審通知日 2017-09-06 
審決日 2017-09-20 
出願番号 特願2010-127272(P2010-127272)
審決分類 P 1 113・ 832- YAA (E03C)
P 1 113・ 537- YAA (E03C)
P 1 113・ 841- YAA (E03C)
P 1 113・ 121- YAA (E03C)
P 1 113・ 536- YAA (E03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤脇 昌也  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 萩田 裕介
藤田 年彦
登録日 2016-07-29 
登録番号 特許第5975433号(P5975433)
発明の名称 排水栓装置  
代理人 松本 好史  
代理人 竹田 千穂  
代理人 小澤 壯夫  
代理人 川口 光男  
代理人 大嶋 泰貴  
代理人 大嶋 泰貴  
代理人 川口 光男  

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