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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1345800
審判番号 不服2018-1943  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-13 
確定日 2018-11-27 
事件の表示 特願2016- 9482「重心動揺解析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月12日出願公開、特開2016-144635、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月21日(国内優先権主張 平成27年2月3日)の出願であって、平成29年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年7月5日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年11月27日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、平成30年2月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、また、本願請求項6-12に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
引用文献1:特開2014-171821号公報
引用文献2:特開2005-130874号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2011-177278号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開平10-295673号公報

第3 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成30年2月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
フォースプレートと、
前記フォースプレートにより検出された荷重データを用いてXY平面上の重心座標の時系列データを取得する重心座標取得手段と、
取得した重心座標の時系列データから重心動揺に関するパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出手段と、
算出したパワースペクトルと周波数との関係から周波数解析を行う周波数解析手段と、
記憶部と、
を備え、
前記記憶部には、健常者集合の重心座標の時系列データから得られた、各周波数についての健常者の重心動揺に関するパワースペクトルの平均値A及びパワースペクトルの標準偏差SDが格納されており、
前記周波数解析手段は、各周波数について、周波数毎の平均値Aと標準偏差SDを用いて、被験者の重心動揺におけるパワースペクトルxを健常者の重心動揺に関するパワースペクトルの周波数毎のバラツキの差異を考慮して正規化した値(x-A)/SDを指標値として算出して、周波数毎に正規化された複数の指標値の周波数軸上の分布パターンを得る、
重心動揺解析装置。
【請求項2】
前記周波数解析手段による周波数解析結果を、縦軸を標準偏差SDを単位とした指標値、横軸を周波数として表示する表示手段を備え、前記複数の指標値の周波数軸上の分布パターンが当該表示手段に表示される、請求項1に記載の重心動揺解析装置。
【請求項3】
ニューラルネットワークを用いた疾患判定手段を備え、
前記ニューラルネットワークの入力層は、周波数毎に算出され、周波数軸上の前記分布パターンを構成する前記複数の指標値に対応する複数のユニットを含み、前記ニューラルネットワークの出力層は、疾患に関する1つあるいは複数のユニットを含み、
前記疾患判定手段は、前記複数の指標値の周波数軸上の分布パターンに基づくニューラルネットワークを用いたパターン認識により疾患を判定する、
請求項1に記載の重心動揺解析装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)引用文献1に記載された事項
(引1a)「【0007】
本発明が採用した重心動揺解析装置は、
フォースプレートと、
前記フォースプレートにより検出された荷重データを用いてXY平面上の重心座標の時系列データを取得する重心座標取得手段と、
取得した重心座標に関するパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出手段と、
算出したパワースペクトルと周波数との関係から周波数解析を行う周波数解析手段と、
を備え、
前記周波数解析手段は、各周波数について、被験者の重心動揺におけるパワースペクトルと健常者の重心動揺におけるパワースペクトルとの比率を計算するものである。」

(引1b)「【0015】
重心動揺計測システムは、重心動揺計と、1つあるいは複数のコンピュータ(データを入力するための入力手段、処理されたデータを出力するための出力手段、主としてCPUから構成される演算手段/制御手段、所定のプログラム、入力データ、計測データ、算出データ等を記憶するROM、RAM等の記憶手段、これらを接続するバス、を備えている)と、計測データ、算出データ等の各種データを表示する表示部と、から構成することができる。表示部は前記コンピュータの構成要素であってもよい。」

(引1c)「【0023】
本実施形態に係る周波数解析手段は、各周波数について、被験者の重心動揺におけるパワースペクトルと健常者の重心動揺におけるパワースペクトルとの比率を計算する。すなわち、周波数解析手段は、各周波数について、被験者の重心動揺におけるパワースペクトル/健常者の重心動揺におけるパワースペクトルを計算してパワースペクトル比率を取得し、これを、縦軸:比率、横軸:周波数としてコンピュータの表示画面に表示する。」

(引1d)「【0028】
本実施形態では、重心点のX方向動揺、重心点のY方向動揺、重心点の動揺速度ベクトル長について周波数解析を行うが、それぞれ開眼と閉眼のデータがあるので、合計6種類のパワースペクトルの健常比が計算される。これら6種類の基準値(多数の健常者のデータの平均値)が予め取得され記憶部に格納されており、健常比の計算に用いられる。図5、図6は、X方向動揺(開眼)、図7、図8は、Y方向動揺(開眼)、図9、図10は、動揺速度ベクトル長(開眼)、図11、図12は、X方向動揺(閉眼)、図13、図14は、Y方向動揺(閉眼)、図15、図16は、動揺速度ベクトル長(閉眼)、についてのパワースペクトルの健常比である。各図に示すように、いずれの場合においても、周波数の分布パターンが得られ、現象の現れる方向によって、疾患の特定を容易に行い得ることが判る。」

(2)引用文献1に記載された発明
(引1b)の「重心動揺計測システム」は、(引1a)の「重心動揺解析装置」であることは明らかであるから、上記(引1a)?(引1d)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、(引1b)の「記憶手段」と(引1d)の「記憶部」は同じものであるから、以下「記憶部」とする。

「重心動揺計と、記憶部を備えているコンピュータと、前記コンピュータの構成要素である表示部とから構成される重心動揺解析装置であって、
重心動揺計は、
フォースプレートと、
前記フォースプレートにより検出された荷重データを用いてXY平面上の重心座標の時系列データを取得する重心座標取得手段と、
取得した重心座標に関するパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出手段と、
算出したパワースペクトルと周波数との関係から周波数解析を行う周波数解析手段と、
を備え、
前記周波数解析手段は、各周波数について、被験者の重心動揺におけるパワースペクトル/健常者の重心動揺におけるパワースペクトルを計算してパワースペクトル比率を取得し、これを、縦軸:比率、横軸:周波数としてコンピュータの表示画面に表示し、
多数の健常者のデータの平均値が予め取得され記憶部に格納されており、健常比の計算に用いられる
重心動揺解析装置。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、以下の事項が記載されている。

(引2a)「【0023】
ところで、図1に示すごとく、上記体調評価手段(1)が、上記重心動揺計測手段(2)から得られたバランス機能に関する重心動揺面積や総軌跡長や実効値面積や重心移動速度や重心動揺軌跡の周波数特性といった複数の指標のうちの二つ以上の指標を用いてバランス機能を評価するバランス機能評価手段(6)と、同重心動揺計測手段(2)の上で体を前傾後傾することによって足関節機能を評価する足関節機能評価手段(7)と、同重心動揺計測手段(2)を用いて全身反応時間を計測する全身反応時間計測手段(8)およびこの全身反応時間から得られた全身反応時間標準偏差を評価するバラツキ評価手段(9)とのうち、少なくとも2つが組み合わされたものであると、体調評価の精度がより一層向上し、各体調評価値に応じて適切な注意点をより一層適切に表示することができるものである。
【0024】
具体的には、体調評価手段(1)は、今回計測された計測値xをそれまでのデータベースから求めた個人の平均値mと標準偏差sdで次のように標準化して表示するものである。
【0025】
バランス機能評価値 z1=(x1-m1)/sd1
足関節評価値 z2=(x2-m2)/sd2
全身反応時間評価値 z3=(x3-m3)/sd3
全身反応時間標準偏差評価値 z4=(x4-m4)/sd4
また、次のようにして、各機能評価値から体調代表値を求めてもよいものである。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、以下の事項が記載されている。

(引3a)「【0068】
本実施例では主成分分析を用いて5つの歩行障害特徴量を主成分へと縮約し、歩行の変化を定量的に評価する指標として用いることとした。主成分分析は多数の変数が持つ情報を縮約し、少数の情報で全体像を把握するために用いられる手法として有効であり、臨床研究においても、多変数を統合的に評価するための手法として用いられている。
実施例1で用いた320サンプルに、新たに参加した7名の被験者の計測日毎のデータから10サンプルずつを新たに抽出し計470サンプルとし、さらに、実施例1での健常者10名から抽出した100サンプルを加えた計570サンプルに対して主成分分析を行い、主成分の抽出を試みた。なお、前処理として特徴量毎に平均0、標準偏差が1となるように標準化した。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「記憶部」は、本願発明1における「記憶部」に相当する。そして、引用発明の「記憶部を備えているコンピュータ」「から構成され」た「重心動揺解析装置」は、本願発明1の「記憶部」「を備え」た「重心動揺解析装置」に相当する。

イ 引用発明の「多数の健常者のデータの平均値」は、「健常比」の計算に用いられるものであって、この「健常比」は、「各周波数について、被験者の重心動揺におけるパワースペクトル/健常者の重心動揺におけるパワースペクトルを計算して」得られる「パワースペクトル比率」であるから、「多数の健常者のデータの平均値」は、「各周波数について健常者の重心動揺におけるパワースペクトルを計算して」得られたものであることは明らかである。そして、「重心動揺におけるパワースペクトル」は、「重心座標の時系列データ」から得られたものであるから、引用発明の「多数の健常者のデータの平均値」は、本願発明1の「健常者集合の重心座標の時系列データから得られた、各周波数についての健常者の重心動揺に関するパワースペクトルの平均値A」に相当する。
また、引用発明の「記憶手段」には、「多数の健常者のデータの平均値が予め取得され」「格納され」ていることから、本願発明1の「記憶部」と「健常者集合の重心座標の時系列データから得られた、各周波数についての健常者の重心動揺に関するパワースペクトルの平均値Aが格納されて」いる点で共通する。

ウ 上記イで指摘したとおり、引用発明の「多数の健常者のデータの平均値」は、「被験者の重心動揺におけるパワースペクトルと健常者の重心動揺におけるパワースペクトルとの比率」の計算に用いられるから、本願発明1の「周波数毎の平均値Aと標準偏差SDを用いて、被験者の重心動揺におけるパワースペクトルxを健常者の重心動揺に関するパワースペクトルの周波数毎のバラツキの差異を考慮して正規化した値(x-A)/SD」とは、「各周波数について、周波数毎の平均値A」を用いて算出された「指標値」である点で共通する。

エ 引用発明の「周波数解析手段」は、「各周波数について、被験者の重心動揺におけるパワースペクトル/健常者の重心動揺におけるパワースペクトルを計算してパワースペクトル比率を取得し、これを、縦軸:比率、横軸:周波数としてコンピュータの表示画面に表示し」ている。そして、引用発明の「コンピュータの表示画面に表示」された「縦軸:比率、横軸:周波数」として表されたものは、「各周波数について」の、「被験者の重心動揺におけるパワースペクトルと健常者の重心動揺におけるパワースペクトルとの比率」の周波数軸上の分布パターンである。すると、引用発明の「周波数解析手段」と、本願発明1の「周波数解析手段」とは、「各周波数について、周波数毎の平均値A」を用いて「指標値」を算出して、「周波数毎に」「複数の指標値の周波数軸上の分布パターンを得る」点で共通する。

オ そして、本願発明1も引用発明も「フォースプレートと、前記フォースプレートにより検出された荷重データを用いてXY平面上の重心座標の時系列データを取得する重心座標取得手段と、取得した重心座標の時系列データから重心動揺に関するパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出手段と、算出したパワースペクトルと周波数との関係から周波数解析を行う周波数解析手段と、を備え」るものである。

カ 上記ア?オより、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「フォースプレートと、
前記フォースプレートにより検出された荷重データを用いてXY平面上の重心座標の時系列データを取得する重心座標取得手段と、
取得した重心座標の時系列データから重心動揺に関するパワースペクトルを算出するパワースペクトル算出手段と、
算出したパワースペクトルと周波数との関係から周波数解析を行う周波数解析手段と、
記憶部と、
を備え、
前記記憶部には、健常者集合の重心座標の時系列データから得られた、各周波数についての健常者の重心動揺に関するパワースペクトルの平均値Aが格納されており、
前記周波数解析手段は、各周波数について、周波数毎の平均値Aを用いて、指標値を算出して、周波数毎に複数の指標値の周波数軸上の分布パターンを得る、
重心動揺解析装置。」

(相違点)
(相違点1)記憶部に、本願発明1はパワースペクトルの標準偏差SDが格納されているのに対し、引用発明はそのような特定がない点。

(相違点2)指標値及び周波数毎に得られる周波数軸上の分布パターンが、本願発明1は「各周波数について、周波数毎の平均値Aと標準偏差SDを用いて、被験者の重心動揺におけるパワースペクトルxを健常者の重心動揺に関するパワースペクトルの周波数毎のバラツキの差異を考慮して正規化した値(x-A)/SD」であるのに対し、引用発明は「多数の健常者のデータの平均値」を用いて計算された、「被験者の重心動揺におけるパワースペクトルと健常者の重心動揺におけるパワースペクトルとの比率」である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み上記相違点2について検討する。
引用文献2の上記摘記(引2a)には、「今回計測された計測値xをそれまでのデータベースから求めた個人の平均値mと標準偏差sdで次のように標準化して表示する・・・
・・・
バランス機能評価値 z1=(x1-m1)/sd1
足関節評価値 z2=(x2-m2)/sd2
全身反応時間評価値 z3=(x3-m3)/sd3
全身反応時間標準偏差評価値 z4=(x4-m4)/sd4」
と記載され、また、引用文献3の上記摘記(引3a)には、「前処理として特徴量毎に平均0、標準偏差が1となるように標準化した」と記載されていることから、計測値x、平均値m、標準偏差sdとした場合「(x-m)/sd」により標準化することは周知であり、また、計測値xにバラツキがある場合に標準化(正規化)することも常套手段であるといえる。そうすると、計測値xにバラツキがある場合に、計測値x、平均値m、標準偏差sdとした場合「(x-m)/sd」により標準化(正規化)するという技術的事項は、本願優先日前において周知技術であったといえる。

一方、本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある、

(本a)「【0004】
本出願人は、被験者のデータの健常比を用いた周波数解析手法を提案している(特許文献1)。この健常比を用いる手法では、重心動揺の周波数解析において健常者と患者との分布上の差異を明確にすることができた。この健常比を用いる手法では、異常パワーをみなす値を、例えば、健常者から取得した値の2倍を超えた場合としており、これは全周波数帯域において一律であった。すなわち、3Hzであっても、8Hzであっても2倍を超えると異常と判定していた。
【0005】
しかしながら、健常者の実際の周波数分布のバラツキを調べたところ、周波数毎に分布のバラツキが異なることが判った。これは、従来手法では、異常検出の感度が周波数によって変わってしまっていたことを意味する。図12において、変動係数は標準偏差SD/平均を表し、バラツキが平均値に占める割合を示している。図12に示すように、8Hz近傍では70%であるのに対して、5Hzでは140%にもなり、よって、8Hz近傍ではバラツキが小さいので正常範囲は狭くし、5Hzではバラツキが大きいので正常範囲を広くする必要があるが、従来手法において、異常を検出するための値を、周波数ごとのバラツキを考慮して決めることは煩雑である。」

(本b)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、重心動揺の周波数解析において健常者と患者との分布上の差異、および疾患特有の分布パターンを明確にするものであって、特許文献1に開示された手法の不具合を解決することができる重心動揺解析装置を提供することを目的とする。」
ここで、「特許文献1」とは、上記「引用文献1」のことである。

上記記載より、本発明は、健常者の実際の周波数分布のバラツキを調べたところ、周波数毎に分布のバラツキが異なることから、異常を検出するための値を、周波数ごとのバラツキを考慮して決める必要があるといった不具合を解決しなければならないという課題を解決するために、「指標値」を「各周波数について、周波数毎の平均値Aと標準偏差SDを用いて、被験者の重心動揺におけるパワースペクトルxを健常者の重心動揺に関するパワースペクトルの周波数毎のバラツキの差異を考慮して正規化した値(x-A)/SD」としたものである。
しかるに、引用文献1には、「健常者の重心動揺におけるパワースペクトル」が周波数毎に分布のバラツキが異なることは記載されておらず、また、このことは当業者において自明の事項であるともいえない。
そうすると、計測値xにバラツキがある場合に、計測値x、平均値m、標準偏差sdとした場合「(x-m)/sd」により標準化(正規化)することが周知技術であったとしても、引用発明において「健常者の重心動揺におけるパワースペクトル」が周波数毎に分布のバラツキが異なることは認識されていないから、引用発明において、本願発明1のように上記正規化することが想起されず、引用発明に上記周知技術を適用する動機付けがあるとはいえない。また、周波数毎のバラツキ以外の理由で、引用発明に上記正規化を適用する動機もない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3も、本願発明1の「指標値」を「各周波数について、周波数毎の平均値Aと標準偏差SDを用いて、被験者の重心動揺におけるパワースペクトルxを健常者の重心動揺に関するパワースペクトルの周波数毎のバラツキの差異を考慮して正規化した値(x-A)/SD」とするという同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1-3は「指標値」を「各周波数について、周波数毎の平均値Aと標準偏差SDを用いて、被験者の重心動揺におけるパワースペクトルxを健常者の重心動揺に関するパワースペクトルの周波数毎のバラツキの差異を考慮して正規化した値(x-A)/SD」とするという事項を有するものであり、上記第5で検討したとおり、当業者であっても、引用発明及び上記周知技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-06 
出願番号 特願2016-9482(P2016-9482)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松本 隆彦  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 福島 浩司
信田 昌男
発明の名称 重心動揺解析装置  
代理人 稲葉 滋  

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