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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1345812
審判番号 不服2017-17350  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-22 
確定日 2018-11-27 
事件の表示 特願2014- 71640「端末装置及びテレメトリーシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 5日出願公開、特開2015-192720、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月31日(国内優先権主張 平成26年3月20日)の出願であって、平成29年6月16日付けで拒絶理由が通知され、同年7月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年9月11日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、同年11月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において平成30年9月7日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月15日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成30年10月15日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
電池の電力により動作し、生体情報を検出するとともに前記電池の残量状態を表示するための電池残量情報を検出し、生体情報表示装置へ、前記生体情報と前記残量情報である電池状態情報とを送信部から送信する端末装置において、
前記電池の有無を検出する手段でその取り出しを検出することと電源スイッチの操作によるオフとにより、電池の遮断状態を検出する遮断検出手段と、
前記遮断検出手段によって電池の遮断状態が検出された場合に、この検出に対応して、前記電源スイッチの操作によるオフに基づく遮断を示す電池状態情報と前記電池の取り出しとによる遮断を示す電池状態情報を前記送信部から送信する送信制御手段と
を具備し、前記送信制御手段により前記遮断を示す電池状態情報を前記送信部から送信した後に前記電源がオフする端末装置。」

なお、本願発明2-5の概要は以下のとおりである。

本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明3は、本願発明1の「端末装置」と、
「前記端末装置から送信される生体情報を受信し表示を行うと共に前記電池残量情報に基づき前記電池の残量を表示し、前記端末装置からこの端末装置において電源がオフされる前に送られた電池の遮断を示す電池状態情報を受信すると、この電池状態情報に基づき電池の遮断を示す表示を行う表示制御手段を具備する生体情報表示装置」とを備えるテレメトリーシステムの発明である。
本願発明4及び5は、それぞれ本願発明3を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平5-192304号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引1a)「【0003】この種の従来の受信機の概略構成を図4に示す。図4において、患者側の図示しない送信機から無線で送られてくる電波はアンテナ1で捕捉され、高周波回路2を介して復調回路3により復調され、処理回路4により波形やデータがCRTなどに表示される。また、高周波回路2および復調回路3からの信号により、電波切検出手段5が電界強度が弱くなったことや正しい復調信号が得られないことを検出したとき、音やCRT表示などにより警報6を発するようになっている。」

(引1b)「【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の医用テレメータは、検出された生体信号を無線で送信する送信機と、該送信機から送出された前記生体信号を受信する受信機と、該受信機が受信した前記生体信号を処理して表示する処理回路と、前記送信機が発する無線信号の電波切れを検出して警報を発する電波切検出手段とを有する医用テレメータにおいて、前記送信機には該送信機の、電源を切る操作が行われたことを検出する電源切検出手段と、前記電源切検出手段からの電源を切る操作のあと電源切れの状態を遅延させる遅延手段と、前記遅延手段により送信機が作動している時間内に送信機の電波の発射を停止することを予告する予告信号を発する予告信号発生手段とを設け、前記受信機には前記予告信号を検出する予告信号検出手段と、前記電波切検出手段からの電波切れの信号と前記予告信号検出手段にて検出された予告信号とから前記電源を切る操作を行ったことによる電波切れであることを判別して前記警報を切とする制御手段とを設けたことを特徴としている。」

(引1c)「【0011】
【実施例】以下、本発明の医用テレメータの一実施例を図面を参照して説明する。
【0012】図1及び図2に本発明の一実施例の構成を示す。図1は送信機の概略構成を示す機能ブロック図である。送信機11には例えば心電図用電極12から患者の心電図信号が入力される。この心電図信号は増幅器13により増幅され、スイッチ14の接点aを介して変調回路15に入り、送信電波に変調されてアンテナ16から発信される。また、送信機11には電池17からスイッチ18及びダイオード19を介して電力が供給される。ダイオード19の負荷側には電波の発射が停止することの遅延手段であるコンデンサ20が設けられており、スイッチ18を切った後にも一定の時間コンデンサ20から供給される電力で送信機11は動作できるようになっている。」

(引1d)「【0015】次に本実施例の作用を図1乃至図3を参照して説明する。看護婦がスイッチ18を切とすると電源切検出手段22がそれを検出して、スイッチ14は接点b側に切替えられる。同時に予告信号発生手段21から予め定められている信号または符号で予告信号が発生し、スイッチ14の接点b及び変調回路15を介して、この予告信号はアンテナ16から発信される。このときスイッチ18が切となっているにもかかわらずコンデンサ20に蓄積された電圧により送信機11は作動しており、図3に示すように予告信号が発せられてから時間tが経過したときに送信機11の動作は停止し、電波を発射しなくなる。」

(引1e)「【図1】



(2)引用文献1に記載された発明
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「送信機11から無線で送られてくる電波はアンテナ1で捕捉され、処理回路4により波形やデータがCRTなどに表示される受信機に、検出された生体信号を無線で送信する送信機11において、
心電図用電極12から患者の心電図信号が入力され、
入力された心電図信号をアンテナ16から発信し、
電池17からスイッチ18及びダイオード19を介して電力が供給され、
スイッチ18を切とすると電源切検出手段22がそれを検出し、同時に予告信号発生手段21から予め定められている信号または符号で予告信号を発生し、
予告信号をアンテナ16から発信し、
スイッチ18が切となっているにもかかわらずコンデンサ20に蓄積された電圧により作動しており、
予告信号が発せられてから時間tが経過したときに送信機11の動作は停止する
送信機11。」

2 引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2008-194358号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引2a)「【0006】
本発明の請求項1にかかる健康診断ネットワークシステムは、血圧、体温などの生体情報を測定する電池駆動のバイタルセンサーと、バイタル情報を管理する患者端末と、医師が前記生体情報を閲覧して診断に供するための医師端末とから構成され、前記患者端末と、前記医師端末の双方の端末から転送された情報を蓄積するセンターサーバーを介して通信ネットワークで接続する健康診断ネットワークシステムであって、前記患者端末にはバイタルセンサー端子部を備え、電池が無くなりそうな場合に、前記バイタルセンサーとバイタルデータの通信を行う際、前記バイタルセンサーから電池残量情報を伝送手段を用いて前記患者端末へ送信し、前記患者端末の報知手段によって前記情報を報知する構成を有している。
【0007】
この構成により、バイタルセンサーの電池が無くなりそうになっても、その旨の情報を患者端末に報知することで、患者に電池を交換する機会を与えるので、例えば次回の使用時には慌てずにバイタルセンサーを使用することが出来る。」

3 引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平5-192300号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引3a)「【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明による携帯型医療装置は、電源として電池を使用する携帯型医療装置において、前記電池より供給される電圧の低下を検出する検出手段と、前記検出手段による電圧低下の検出により、前記電池からの電力の供給を遮断する制御手段とを備える。」

(引3b)「【0020】以上より、この完全放電防止回路95は、電池99を接続したときはまずオフの状態で初期化され、次にスイッチ490をオンすると、オン状態に移行し電池99より電力供給が開始される。そして電池の消耗が進み電池からの電圧がIC3(420)の電圧低下検出レベルを下回ると、TR1(430)がオフとなり電力の供給が遮断される。」

4 引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2012-011176号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引4a)「【0037】
また、表示装置50は、図6に示す動作と並行して、図7に示す動作も実行する。
【0038】
表示装置50は、アンテナ40を介して位置情報を受信したか判断する(ステップS11)。位置情報を受信した場合(ステップS11:YES)、表示装置50は、位置情報を受信してからの時間のカウントを開始する(ステップS12)。ここで、一定時間とは、任意に設定される時間である。
【0039】
位置情報を受信しなくなった場合(ステップS11:NO)、表示装置50は、アンテナ受信範囲内であり位置情報を受信しなくても生体情報は受信するか判断する(ステップS13)。表示装置50は、患者が位置情報発信機20の送信範囲内にいないと、位置情報を受信することはないが、患者がアンテナ40の受信範囲内にいれば、生体情報は受信できる。
【0040】
アンテナ受信範囲内であり生体情報を受信している場合(ステップS13:YES)、少なくとも患者はアンテナ40の受信範囲におり、医用送信機30は正常に作動していることが確認できる。「生体情報」を表示し(ステップS14)、ステップS11の処理に戻る。ステップS11からステップS14に続く処理は、アンテナ受信範囲内に患者がいることを示している。
【0041】
アンテナ受信していない場合(ステップS13:NO)、表示装置50は、医用送信機30の電源が切れたこと、たとえば、「電波切れ」または「電池切れによる電波切れ」と表示部56に表示する(ステップS15)。ステップS11からステップS15に続く処理は、例えばアンテナ受信範囲内に患者はいるが、送信機の電池消耗や故障などにより送信機の電波が発信を停止し受信できないことを示している。
【0042】
カウント開始後(ステップS12)、アンテナ受信範囲内であり生体情報を受信したか判断する(ステップS16)。生体情報を受信した場合(ステップS16:YES)、アンテナ受信範囲内にいることがわかり、カウント開始から一定時間経過したかを判断する(ステップS17)。一定時間経過していない場合(ステップS17:NO)、表示装置50は、「患者の位置」と「生体情報」を表示する(ステップS18)。そして、ステップS16の処理に戻る。ステップS11からステップS17に続く処理は、患者がゲートを通過したがアンテナ受信範囲内にいることになり、例えば、受信範囲外の場所からゲートを通過し、アンテナ受信範囲内に戻ってきたことを示している。
【0043】
一定時間経過した場合(ステップS17:YES)、表示装置50は、「生体情報」を表示する(ステップS14)。そして、ステップS11に戻る。ステップS11からステップS17を経由しステップS14に至った処理は、患者がゲートを通過したがアンテナ受信範囲内にいることになり、例えば、受信範囲外の場所からゲートを通過し、アンテナ受信範囲内に戻ってきて一定時間以上経過したことを示している。
【0044】
また、カウント開始後(ステップS12)、生体情報を受信できない場合(ステップS16:NO)、患者がアンテナ受信範囲外であることがわかり、表示装置50は、「電波切れ」と表示すると共に、「患者の位置」の表示を保持する(ステップ19)。そしてステップS16に戻る。ステップS11からステップS19に続く処理は、例えば、患者がゲートを通過して、アンテナ受信範囲外の場所に出て行ったことを示している。」

5 引用文献5について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2001-188497号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引5a)「【0051】図10は、本発明の表示装置の第1の実施の形態における電池消耗及び電池交換にかかわる動作の別の例を示すフローチャートである。なお、図5と同じ処理については同じ符号を付して説明を省略する。図10に示した動作例では、電池25の電圧が電池切れ検知電圧VDA以上であり、表示動作が可能である場合の通常動作として、表示方式の切り替えの動作が追加された例を示している。
【0052】S53において表示部11に電池あり状態の表示を行った後、通常動作状態に移行する。このとき、S61において、電池25の電圧が電池消耗検知電圧VL以上か否かを判定する。電池25の電圧が電池消耗検知電圧VL以上であれば、S62において、通常時の表示方式を採用し、通常動作状態における動作を行う。S63において電池25の電圧が電池消耗検知電圧VL以上か否かを判定する。これにより、電池25の残量が少なくなってきたことを検出する。電池25の電圧が電池消耗検知電圧VLを下回るまで、通常動作状態により動作を続けることができる。なお、S63の判断は、例えば中央演算処理部16にタイマを設けて、一定時間が経過するたびに電池消耗の判断を行ったり、あるいは電圧低下信号PMIDの変化により中央演算処理部16内のCPUに割り込みがかかるようにするなど、種々の方法で実現することができる。」

(引5b)「【0055】この電池消耗状態において、S55における電池25の電圧が電池切れ検知電圧VDA以上か否かの判断を行い、以下、図5で説明したような動作を行ってゆくことになる。このようにして、表示部11が消費電力の異なる複数の表示方式を有している場合には、電池25の消耗状態に応じて表示方式を切り替え、電池の寿命を延ばすことができる。また、このような表示方式の切り替えの際に、電池が消耗してきていることを表示するので、使用者はそろそろ電池の交換時期が到来することを知ることができる。
【0056】次に、本発明の表示装置の第2の実施の形態について説明する。上述の第1の実施の形態では、電池が次第に消耗し、消耗し尽くしてから電池を交換することを前提としている。しかし、表示装置1が実際に使用される場合には、電池が消耗する前に取り外されたり、電池がはずれてしまうといったことも起こり得る。この第2の実施の形態では、このような事態にも対応し、電池が挿入されていないことを使用者に知らせるようにするものである。なお、全体のブロック図は図1と同様であるので、ここでは図示及び説明を省略する。また、表示装置の外観も図2に示すものと同様である。
【0057】図12は、本発明の表示装置の第2の実施の形態における電源部17の一例を示すブロック図である。図中、図3と同様の部分には同じ符号を付して説明を省略する。36は第3電圧監視部、37はコンデンサ部である。
【0058】第3電圧監視部36は、電池31の電圧を測定し、電圧がある一定値の電池抜け検知電圧VDBよりも低くなった場合、電圧低下信号PLOWBを“L”レベルから“H”レベルにする。この電圧低下信号PLOWBによって、電池31が抜かれたか否かを判定することができる。電池31が抜かれた(あるいは抜けた)場合には、電圧は一気に0となるため、閾値とする電池抜け検知電圧VDBは0に近い電圧でよい。もちろん、この第3電圧監視部36においても、電圧以外の監視方法を用いてもよい。
【0059】コンデンサ部37は、電池電圧が十分である時に、電池25から充電を行っておき、電池が抜かれた時に、第3電圧監視部36の指示により、放電を行う。コンデンサ部37は、電池が抜かれた時に、表示部11の一部もしくは全部を更新するのに必要な時間だけ電力供給が可能なだけの容量を少なくとも有しているものとする。」

6 引用文献6について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開平11-313804号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引6a)「【0022】変調部15は、加算回路14の出力信号に応じて搬送波信号を変調する回路であり、送信部16は変調部15の出力信号を無線信号にしてアンテナ17から送信する回路である。電源部18は電池であり、上記各部に必要な電力を供給するものである。更に送信機6は、電池切れ検出部12aと、トーン発振部13aとを備えている。電池切れ検出部12aは、電源部18の電池切れを検出するとその旨を示す信号をトーン発振部13aに出力するものであり、この信号によりトーン発振部13aは周波数540Hzの信号を出力するものである。加算回路14は、この信号も加算するようになっている。」

(引6b)「【0027】また、受信機4は、送信機6から送信された信号を受信部22が受信しているか否かを検出する電波切れ検出部22aと、この電波切れ検出部22aが電波切れを検出したときに警報を発するアラーム100aを備えている。更に受信機4は、復調部23の出力信号のうち540Hzの信号を抽出するBPF26aと、BPF26aの出力信号を整流検波する整流検波器27aと、整流検波器27aの出力信号が設定した閾値を超えたかを判断する比較器28aと、比較器28aがその信号が閾値を超えたと判断した場合に出力する信号により警報を発するアラーム100bを備えている。更に受信機4は、電源部18の電池切れを検出する電池切れ検出部31aと、電池切れ検出部31aが電池切れを検出したときに警報を発するアラーム100cを備えている。更に受信機4は、比較器28がスイッチ29に出力する切替え信号により警報を発するアラーム100dを備えている。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「送信機11」及び「アンテナ16」は、それぞれ、本願発明1の「端末装置」及び「送信部」に相当し、引用発明の「心電図用電極12から患者の心電図信号」は、「生体信号」であり、本願発明1の「生体情報」に相当する。

イ 引用発明の「送信機11」は、「心電図用電極12から患者の心電図信号が入力され」ることから、「送信機11」は「生体信号」を検出するものといえる。また、引用発明の「送信機11」は、「電池17からスイッチ18及びダイオード19を介して電力が供給される」から、「電池17」の電力で動作していることは明らかである。
すると、引用発明の「送信機11から無線で送られてくる電波はアンテナ1で捕捉され、処理回路4により波形やデータがCRTなどに表示される受信機に、検出された生体信号を無線で送信する送信機11において、心電図用電極12から患者の心電図信号が入力され、入力された心電図信号をアンテナ16から発信し、電池17からスイッチ18及びダイオード19を介して電力が供給され」る「送信機11」は、本願発明1の「電池の電力により動作し、生体情報を検出するとともに」、「生体情報表示装置へ、前記生体情報」「を送信部から送信する端末装置」に相当する。

ウ 引用発明の「電源切検出手段22」は、「スイッチ18を切とする」ことを検出しているから、本願発明1の「遮断検出手段」と、「電源スイッチの操作によるオフにより、電池の遮断状態を検出する」点で共通する。

エ 引用発明は、「スイッチ18を切とすると電源切検出手段22がそれを検出し、同時に予告信号発生手段21から予め定められている信号または符号で予告信号を発生し」ているから、この「予告信号」は、本願発明1の「電池状態情報」に相当し、これらは、「前記遮断検出手段によって電池の遮断状態が検出された場合に、この検出に対応して、前記電源スイッチの操作によるオフに基づく遮断を示す電池状態情報」を示す情報である点で共通する。そして、引用発明の「予告信号」は、「アンテナ16から送信」されていることから、引用発明の「送信機11」は、「予告信号」を「アンテナ16から送信」するための送信制御手段を具備していることは明らかである。
すると、引用発明の「送信機11」と、本願発明1の「端末装置」とは、「前記遮断検出手段によって電池の遮断状態が検出された場合に、この検出に対応して、前記電源スイッチの操作によるオフに基づく遮断を示す電池状態情報を前記送信部から送信する送信制御手段」を具備している点で共通する。

オ 引用発明の「送信機11」は、「スイッチ18が切となっているにもかかわらずコンデンサ20に蓄積された電圧により作動しており、予告信号が発せられてから時間tが経過したときに送信機11の動作は停止」し、「予告信号が発せられてから時間tが経過したとき」は、「予告信号」が送信された後であるから、引用発明の「送信機11」と、本願発明1の「端末装置」とは、「前記送信制御手段により前記遮断を示す電池状態情報を前記送信部から送信した後に前記電源がオフする」点で共通する。

カ 以上ア?オより、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「電池の電力により動作し、生体情報を検出するとともに、生体情報表示装置へ、前記生体情報を送信部から送信する端末装置において、
電源スイッチの操作によるオフにより、電池の遮断状態を検出する遮断検出手段と、
前記遮断検出手段によって電池の遮断状態が検出された場合に、この検出に対応して、前記電源スイッチの操作によるオフに基づく遮断を示す電池状態情報を前記送信部から送信する送信制御手段と
を具備し、前記送信制御手段により前記遮断を示す電池状態情報を前記送信部から送信した後に前記電源がオフする端末装置。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は「前記電池の残量状態を表示するための電池残量情報を検出し」ているのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点2)遮断検出手段で検出される電池の遮断状態及び送信制御手段で前記送信部から送信される電池状態情報として、本願発明1は、電池の遮断状態が、「前記電池の有無を検出する手段で」検出された「前記電池」の「取り出し」による遮断状態をも含み、電池状態情報が、「前記電池の取り出し」「による遮断を示す電池状態情報」をも含むのに対し、引用発明は「前記電池の有無を検出する手段」を具備しておらず、したがって、前記電池の取り出しによる遮断及びそれを示す電池状態情報を含まない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
相違点2に係る本願発明1の「前記電池の有無を検出する手段でその取り出しを検出すること」という構成に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、
「【0022】
端末装置301?30nには、電池検出手段52が設けられている。電池検出手段52は、例えば電池ボックス内に電池の検出スイッチやセンサを設けた構成により実現できる。電池26が電池ボックスから抜かれた状態(以下、電池抜状態という)を検出し、制御部20へ通知する。送信制御手段である制御部20は、電池抜状態情報を送信部24から送信する。」
と記載されていることから、本願発明の「前記電池の有無を検出する手段でその取り出しを検出する」という構成は、「電池ボックス内に電池の検出スイッチやセンサ」などの「前記電池の有無を検出する手段で」「電池26が電池ボックスから抜かれた状態(以下、電池抜状態という)を検出」するという構成であると解されるものである。
引用文献5には、「第3電圧監視部36は、電池31の電圧を測定し、電圧がある一定値の電池抜け検知電圧VDBよりも低くなった場合、電圧低下信号PLOWBを“L”レベルから“H”レベルにする。この電圧低下信号PLOWBによって、電池31が抜かれたか否かを判定することができる」旨記載されているが、これは電圧を測定する手段で電池の取り出しを検出するものであり、「電池の有無を検出する手段」を具備しているものではないから、引用文献5には、「前記電池の有無を検出する手段でその取り出しを検出する」という構成が記載されているとは認められず、また、この構成は、上記引用文献2?4及び6にも記載されていない。
また、一般に回路において電池の取り出しを検出する際には、その回路の電流又は電圧を測定して検出を行うのが周知であり、センサ等によって電池そのものがあるかないかを検出することによって行うことが周知ともいえない。
例え、引用文献5の電圧を測定する手段で電池の取り出しを検出するものが、「電池の有無を検出する手段」であると解釈しても、また、センサ等によって電池そのものがあるかないかを検出することによって行うことが公知であるとしても、引用文献1は、送信機11からの電波の停止を検出して警報するものにおいて、看護婦がスイッチを切った時には、警報しないような構成としたものであって、電池の有無は考慮されていないから、引用発明に引用文献5に記載された技術的事項等を組み合わせる動機付けがない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-5について
本願発明2-5も、本願発明1の「前記電池の有無を検出する手段でその取り出しを検出する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-5について上記引用文献1-6に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成30年10月15日付け手続補正により補正された請求項1、3は、それぞれ「前記電池の有無を検出する手段でその取り出しを検出する」という事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-5は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項1、3の、「電源スイッチの操作によるオフと前記電池の検出を行ってその取り出しを検出することにより、電池の遮断状態を検出する遮断検出手段」が記載されているが、「前記電池の検出を行ってその取り出しを検出すること」とは、「前記電池」の何を検出するものであるか不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月15日付けの手続補正において、「前記電池の有無を検出する手段でその取り出しを検出することと電源スイッチの操作によるオフとにより、」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-5は、当業者が引用発明及び引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定及び当審の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-12 
出願番号 特願2014-71640(P2014-71640)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 姫島 あや乃関根 裕  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 信田 昌男
福島 浩司
発明の名称 端末装置及びテレメトリーシステム  
代理人 本田 崇  
代理人 松浦 孝  

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