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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  C07D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C07D
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  C07D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C07D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C07D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C07D
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C07D
管理番号 1345830
異議申立番号 異議2017-701168  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-12 
確定日 2018-09-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6148982号発明「含窒素へテロ芳香族環化合物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6148982号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3、9、12?16〕、4?8、10、11について訂正することを認める。 特許第6148982号の請求項1、4ないし8、10ないし16に係る特許を維持する。 特許第6148982号の請求項2、3及び9に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6148982号の請求項1?16に係る特許についての出願は、2012年8月29日(パリ条約による優先権主張 2011年12月27日(US)アメリカ合衆国、2011年9月9日(JP)日本国、2011年12月27日(JP)日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年5月26日に特許権の設定登録がされ、平成29年6月14日にその特許公報が発行され、平成29年12月12日に、その請求項1?16に係る発明の特許に対し、メルク パテント ゲーエムベーハー(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 2月 2日 上申書(特許異議申立人)
同年 3月26日 取消理由通知書
同年 5月28日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 8月 6日 意見書(特許異議申立人)
なお、平成30年5月10日に特許権者との面接が実施された。

第2 訂正の適否についての判断
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である平成30年5月28日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1?16について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。

1 訂正の内容
(1)請求項1?16に係る一群の請求項に係る訂正について
ア 訂正事項1
訂正前の請求項1に
「 下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。但し、前記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物が下記式D8-17-1、D8-17-2及びD8-(5)で表される化合物、並びに下記化合物(Q)である場合を除く。
【化1】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3?20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3?20のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6?18のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、フッ素原子、置換もしくは無置換のフルオロアルキル基、又はシアノ基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、
L_(1)は、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換のピロール環基、置換もしくは無置換のピラゾール環基、置換もしくは無置換のイミダゾール環基、又は置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、
Ar_(2)は、置換基を有する環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の環形成原子数5又は6の単環ヘテロ芳香族環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化2】


(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、硫黄原子、=S(=O)、=S(=O)_(2)、=SiR^(2)R^(3)、=CR^(4)R^(5)、又は=NR^(6)であり、
R’、R’’及びR^(2)?R^(6)は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【化3】


【化4】


」と記載されているのを、
「 下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化1】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化2】

(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

エ 訂正事項4
訂正前の請求項4に
「Ar_(2)が、置換基を有する環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の環形成原子数5又は6の単環ヘテロ芳香族環基、又は下記式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基である請求項1?3のいずれかに記載の含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化5】

(式(1a)?(5a)中、X_(1)?X_(8)、R’’、及び*は、それぞれ前記式(1)?(5)と同じである。)」と記載されているのを、
「 下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化30】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化5】

(式(1a)?(5a)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]」に訂正する。

オ 訂正事項5
訂正前の請求項5に
「 Ar_(2)が、式(1)?(5)のいずれかである請求項1?3のいずれかに記載の含窒素へテロ芳香族環化合物。」と記載されているのを、
「 下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化31】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化32】

(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’、R’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。]」に訂正する。

カ 訂正事項6
訂正前の請求項6に
「 Ar_(2)が、式(1a)?(5a)のいずれかである請求項4に記載の含窒素へテロ芳香族環化合物。」と記載されているのを、
「 下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化33】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、下記式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化34】

(式(1a)?(5a)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]」に訂正する。

キ 訂正事項7
訂正前の請求項7に
「 Ar_(2)が、式(1)である請求項1?3のいずれかに記載の含窒素ヘテロ芳香族環化合物。」と記載されているのを、
「 下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化35】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、下記式(1)で表される含窒素多環基である。
【化36】


(式(1)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]」に訂正する。

ク 訂正事項8
訂正前の請求項8に
「 Ar_(2)が、式(1a)である請求項4に記載の含窒素ヘテロ芳香族環化合物。」と記載されているのを、
「 下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化37】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、下記式(1a)で表される含窒素多環基である。
【化38】


(式(1a)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
R’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]」に訂正する。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

コ 訂正事項10
訂正前の請求項10に
「 Ar_(1)が、置換もしくは無置換のカルバゾール環基、又は置換もしくは無置換のアザカルバゾール環基である請求項1?9のいずれかに記載の含窒素ヘテロ芳香族環化合物。」と記載されているのを、
「 下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化39】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、置換もしくは無置換のカルバゾール環基、又は置換もしくは無置換のアザカルバゾール環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化40】

(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]」に訂正する。

サ 訂正事項11
訂正前の請求項11に
「 Ar_(1)が、9位でL_(1)と結合する置換もしくは無置換のカルバゾール環基である請求項1?10のいずれかに記載の含窒素へテロ芳香族環化合物。」と記載されているのを、
「 下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化41】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、9位でL_(1)と結合する置換もしくは無置換のカルバゾール環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化42】

(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]」に訂正する。

シ 訂正事項12
訂正前の請求項12に
「 請求項1?11のいずれかに記載の含窒素ヘテロ芳香族環化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。」と記載されているのを、
「 請求項1に記載の含窒素ヘテロ芳香族環化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。」に訂正する。

2 判断
(1)請求項1?16に係る一群の請求項について
ア 一群の請求項について
訂正事項1?12に係る訂正前の請求項1?16について、請求項1?16はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1?16は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は一群の請求項に対してなされたものである。

イ 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1における式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物において、以下の訂正からなるものである。
a 「R^(1)」が、「それぞれ水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3?20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1?20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3?20のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6?18のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のシリル基、フッ素原子、置換もしくは無置換のフルオロアルキル基、又はシアノ基であ」ったものを、「それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり」とする訂正(以下「訂正1a」という。)。

b 「Ar_(1)」が、「水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であ」ったものを、「水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり」とする訂正(以下「訂正1b」という。)。

c 「Ar_(1)」が、置換基を有する場合に特定されていなかった置換基を、「無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり」とする訂正(以下「訂正1c」という。)。

d 「L_(1)」が、「単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であっ」たものを、「単結合であって」とする訂正(以下「訂正1d」という。)。

e 「M」が、「置換もしくは無置換のピロール環基、置換もしくは無置換のピラゾール環基、置換もしくは無置換のイミダゾール環基、又は置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であっ」ったものを、「置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって」とする訂正(以下「訂正1e」という。)。

f 「M」が、置換基を有する場合に特定されていなかった置換基を、「無置換のフェニル基であり」とする訂正(以下「訂正1f」という。)。

g 「Ar_(2)」が、置換基を有する環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の環形成原子数5又は6の単環ヘテロ芳香族環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1)?(5)の記載は省略する。)であ」ったものを、「無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1)?(5)の記載は省略する。)である」とする訂正(以下「訂正1g」という。)。

h 「Z」が、「単結合、酸素原子、硫黄原子、=S(=O)、=S(=O)_(2)、=SiR^(2)R^(3)、=CR^(4)R^(5)、又は=NR^(6)であ」ったものを、「単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり」とする訂正(以下「訂正1h」という。)。

i 「式(1)?(5)」の符合である「R’、R’’及びR^(2)?R^(6)は、それぞれ前記R^(1)と同じ基であ」ったものを、「R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。」とする訂正(以下「訂正1i」という。)。

j 「式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物」が、「下記式D8-17-1、D8-17-2及びD8-(5)で表される化合物、並びに下記化合物(Q)である場合を除く(化合物の式は省略する。)」という記載を削除する訂正(以下「訂正1j」という。)。

(ア)訂正の目的について
a 訂正1a、1b、1d、1e、1g及び1hは、訂正前の請求項1における式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物におけるそれぞれの符号の定義を削除又は限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるといえる。

b 訂正1c及び1fは、訂正前の請求項1における式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物における特定されていなかった置換基を具体的に特定するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。

c 訂正1iは、訂正前の請求項1における式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物において、式(1)?(5)中の符号「Z」の選択肢のうち、「=SiR^(2)R^(3)、=CR^(4)R^(5)、又は=NR^(6)」が削除されたことに伴い、定義が不要になった符号「R^(2)?R^(6)」を削除する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明であるといえる。

d 訂正1jは、訂正1a、1b、1d、1e、1g及び1hにより含窒素ヘテロ芳香族環化合物のうち「R^(1)」、「Ar_(1)」、「L_(1)」、「M」、「Ar_(2)」及び「Z」が減縮された結果、式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物から上記した化合物を除くことが不要になったため、除く化合物を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。

e まとめ
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。

(イ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正1a、1b、1d、1e、1g及び1hは、上記(ア)aで述べたとおり、いずれも特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。
また、訂正1c及び1fは、明確に特定されていなかった置換基を具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。
さらに、訂正1i及び1jは、他の訂正に伴い式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物を特定する必要がなくなった記載を削除する訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

(ウ)新規事項の追加について
a 訂正1a、1b、1d、1e、1g及び1hは、特許請求の範囲の記載を減縮する訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

b 訂正1cについて、願書に添付した明細書の段落【0031】には、「各基の「置換もしくは無置換の・・・」置換基としては、上記のアルキル基、・・・芳香族炭化水素環基・・・等が挙げられる。」と記載があり、同【0020】には、「以下、上述した式(A)の各基の例について説明する。」と記載した上で、「 炭素数1?20のアルキル基としては、直鎖状もしくは分岐状のアルキル基があり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、・・・sec-ブチル基、tert-ブチル基・・・」が記載され、同【0024】には、「一価の芳香族炭化水素環基の具体例としては、フェニル基、・・・ビフェニルイル基、ターフェニル基・・・等が挙げられ、好ましくはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基である。」と記載されているから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であるといえる。

c 訂正1fは、上記bで述べたように、願書に添付した明細書には、置換基としてフェニル基が記載されているから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であるといえる。

d 訂正1i及び1jは、訂正に伴い不要となった記載を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であるといえる。

e まとめ
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

ウ 訂正事項2、3及び9について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2、3及び9は、請求項2、3及び9を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

(イ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更、新規事項の追加について
訂正事項2、3及び9は、請求項2、3及び9を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲の拡張・変更に該当せず、また、新規事項の追加に当たらないことは明らかである。

エ 訂正事項4について
訂正事項4は、以下の訂正からなるものである。
a 請求項1?3の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正(以下「訂正4a」という。)。

b 引用していた訂正前の請求項1における式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物を、訂正事項1のうち、上記イで示した訂正1a?1f、1h?1jとする訂正(以下「訂正4b」という。)。

c 「Ar_(2)」が、「置換基を有する環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の環形成原子数5又は6の単環ヘテロ芳香族環基、又は下記式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1a)?(5a)の記載は省略する。)であ」ったものを、「無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1a)?(5a)の記載は省略する。)である」とする訂正(以下「訂正4c」という。)。

(ア)訂正の目的について
a 訂正4aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当することは明らかである。

b 訂正4bは、上記イ(ア)で述べたように特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当することは明らかである。

c 訂正4cは、「Ar_(2)」の選択肢を削除又は限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるといえる。

d まとめ
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当する。

(イ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正4aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。
また、訂正4bは、上記イ(イ)で述べたように実質上の特許請求の範囲の拡張・変更とはいえない。
さらに、訂正4cは、特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

(ウ)新規事項の追加について
a 訂正4aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

b 訂正4bは、上記イ(ウ)で述べたとおり願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

c 訂正4cは、願書に添付した明細書の段落【0018】には、「Ar_(2)が、置換基を有する環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基である場合、置換基としては環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基が好ましく、例えば・・・カルバゾリル基・・・が好ましい。」と記載されているから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であるといえる。

d まとめ
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

オ 訂正事項5について
訂正事項5は、以下の訂正からなるものである。
a 請求項1?3の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正(以下「訂正5a」という。)。

b 引用していた訂正前の請求項1における式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物を、訂正事項1のうち、上記イで示した訂正1a?1f、1h?1jとする訂正(以下「訂正5b」という。)。

c 「Ar_(2)」が、「式(1)?(5)のいずれかであ」ったものを、「下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1)?(5)の記載は省略する。)である」とする訂正(以下「訂正5c」という。)。

(ア)訂正の目的について
a 訂正5aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当することは明らかである。

b 訂正5bは、上記イ(ア)で述べたように特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当することは明らかである。

c 訂正5cは、訂正前の請求項5が引用していた訂正前の請求項1に、「Ar_(2)」の選択肢として式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基の化学構造式が記載されていたため、訂正前の請求項5では、式(1)?(5)の化学構造式を記載していなかったものを、訂正後の請求項5では、請求項1?3を引用しないものとする訂正(訂正5a)がされたため、同じ式(1)?(5)の化学構造式を記載するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。

d まとめ
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当する。

(イ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正5aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。
また、訂正5bは、上記イ(イ)で述べたように実質上の特許請求の範囲の拡張・変更とはいえない。
さらに、訂正5cは、訂正前に引用していた請求項1に記載されていた化学構造式と同じ化学構造式を記載する訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

(ウ)新規事項の追加について
a 訂正5aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

b 訂正5bは、上記イ(ウ)で述べたとおり願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

c 訂正5cは、訂正前に引用していた請求項1に記載されていた化学構造式と同じ化学構造式を記載する訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

d まとめ
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

カ 訂正事項6について
訂正事項6は、以下の訂正からなるものである。
a 請求項4の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正(以下「訂正6a」という。)。

b 引用していた訂正前の請求項4が引用していた訂正前の請求項1における式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物を、訂正事項1のうち、上記イで示した訂正1a?1f、1h?1jとする訂正(以下「訂正6b」という。)。

c 「Ar_(2)」が、「式(1a)?(5a)のいずれかであ」ったものを、「下記式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1a)?(5a)の記載は省略する。)である」とする訂正(以下「訂正6c」という。)。

(ア)訂正の目的について
a 訂正6aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当することは明らかである。

b 訂正6bは、上記イ(ア)で述べたように特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当することは明らかである。

c 訂正6cは、訂正前の請求項6が引用していた訂正前の請求項4に、「Ar_(2)」の選択肢として式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基の化学構造式が記載されていたため、訂正前の請求項6では、式(1a)?(5a)の化学構造式を記載していなかったものを、訂正後の請求項6では、請求項4を引用しないものとする訂正(訂正6a)がされたため、同じ式(1a)?(5a)の化学構造式を記載するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。

d まとめ
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当する。

(イ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正6aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。
また、訂正6bは、上記イ(イ)で述べたように実質上の特許請求の範囲の拡張・変更とはいえない。
さらに、訂正6cは、訂正前に引用していた請求項4に記載されていた化学構造式と同じ化学構造式を記載する訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

(ウ)新規事項の追加について
a 訂正6aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

b 訂正6bは、上記イ(ウ)で述べたとおり願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

c 訂正6cは、訂正前に引用していた請求項4に記載されていた化学構造式と同じ化学構造式を記載する訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

d まとめ
したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

キ 訂正事項7について
訂正事項7は、以下の訂正からなるものである。
a 請求項1?3の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正(以下「訂正7a」という。)。

b 引用していた訂正前の請求項1における式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物を、訂正事項1のうち、上記イで示した訂正1a?1f、1h?1jとする訂正(以下「訂正7b」という。)。

c 「Ar_(2)」が、「式(1)であ」ったものを、「下記式(1)で表される含窒素多環基(式(1)の記載は省略する。)である」とする訂正(以下「訂正7c」という。)。

(ア)訂正の目的について
a 訂正7aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当することは明らかである。

b 訂正7bは、上記イ(ア)で述べたように特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当することは明らかである。

c 訂正7cは、訂正前の請求項7が引用していた訂正前の請求項1に、「Ar_(2)」の選択肢として式(1)で表される含窒素多環基の化学構造式が記載されていたため、訂正前の請求項7では、式(1)の化学構造式を記載していなかったものを、訂正後の請求項7では、請求項1を引用しないものとする訂正(訂正7a)がされたため、同じ式(1)の化学構造式を記載するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。

d まとめ
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当する。

(イ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正7aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。
また、訂正7bは、上記イ(イ)で述べたように実質上の特許請求の範囲の拡張・変更とはいえない。
さらに、訂正7cは、訂正前に引用していた請求項1に記載されていた化学構造式と同じ化学構造式を記載する訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

(ウ)新規事項の追加について
a 訂正7aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

b 訂正7bは、上記イ(ウ)で述べたとおり願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

c 訂正7cは、訂正前に引用していた請求項1に記載されていた化学構造式と同じ化学構造式を記載する訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

d まとめ
したがって、訂正事項7は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

ク 訂正事項8について
訂正事項8は、以下の訂正からなるものである。
a 請求項4の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正(以下「訂正8a」という。)。

b 引用していた訂正前の請求項4が引用していた訂正前の請求項1における式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物を、訂正事項1のうち、上記イで示した訂正1a?1f、1h?1jとする訂正(以下「訂正8b」という。)。

c 「Ar_(2)」が、「式(1a)であ」ったものを、「下記式(1a)で表される含窒素多環基(式(1a)の記載は省略する。)である」とする訂正(以下「訂正8c」という。)。

(ア)訂正の目的について
a 訂正8aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当することは明らかである。

b 訂正8bは、上記イ(ア)で述べたように特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当することは明らかである。

c 訂正8cは、訂正前の請求項8が引用していた訂正前の請求項4に、「Ar_(2)」の選択肢として式(1a)で表される含窒素多環基の化学構造式が記載されていたため、訂正前の請求項8では、式(1a)の化学構造式を記載していなかったものを、訂正後の請求項8では、請求項4を引用しないものとする訂正(訂正8a)がされたため、同じ式(1a)の化学構造式を記載するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。

d まとめ
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当する。

(イ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正8aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。
また、訂正8bは、上記イ(イ)で述べたように実質上の特許請求の範囲の拡張・変更とはいえない。
さらに、訂正8cは、訂正前に引用していた請求項4に記載されていた化学構造式と同じ化学構造式を記載する訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

(ウ)新規事項の追加について
a 訂正8aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

b 訂正8bは、上記イ(ウ)で述べたとおり願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

c 訂正8cは、訂正前に引用していた請求項4に記載されていた化学構造式と同じ化学構造式を記載する訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

d まとめ
したがって、訂正事項8は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

ケ 訂正事項10について
訂正事項10は、以下の訂正からなるものである。
a 請求項1?9の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正(以下「訂正10a」という。)。

b 引用していた訂正前の請求項1における式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物を、訂正事項1のうち、上記イで示した訂正1a、1d?1jとする訂正(以下「訂正10b」という。)。

c 「Ar_(1)」が、置換基を有する場合に特定されていなかった置換基を、「無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり」とする訂正(以下「訂正10c」という。)。

(ア)訂正の目的について
a 訂正10aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当することは明らかである。

b 訂正10bは、上記イ(ア)で述べたように特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当することは明らかである。

c 訂正10cは、上記イで示した訂正1cと同じであるから、上記イ(ア)で述べたように特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当することは明らかである。

d まとめ
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当する。

(イ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正10aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。
また、訂正10b及び10cは、上記イ(イ)で述べたように実質上の特許請求の範囲の拡張・変更とはいえない。
のではない。

(ウ)新規事項の追加について
a 訂正10aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

b 訂正10b及び10cは、上記イ(ウ)で述べたとおり願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

c まとめ
したがって、訂正事項10は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

コ 訂正事項11について
訂正事項11は、以下の訂正からなるものである。
a 請求項1?10の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正(以下「訂正11a」という。)。

b 引用していた訂正前の請求項1における式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物を、訂正事項1のうち、上記イで示した訂正1a、1d?1jとする訂正(以下「訂正11b」という。)。

c 「Ar_(1)」が、置換基を有する場合に特定されていなかった置換基を、「無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり」とする訂正(以下「訂正11c」という。)。

(ア)訂正の目的について
a 訂正11aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当することは明らかである。

b 訂正11bは、上記イ(ア)で述べたように特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当することは明らかである。

c 訂正11cは、上記イで示した訂正1cと同じであるから、上記イ(ア)で述べたように特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当することは明らかである。

d まとめ
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正に該当する。

(イ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正11aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。
また、訂正11b及び11cは、上記イ(イ)で述べたように実質上の特許請求の範囲の拡張・変更とはいえない。
のではない。

(ウ)新規事項の追加について
a 訂正11aは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

b 訂正11b及び11cは、上記イ(ウ)で述べたとおり願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

c まとめ
したがって、訂正事項11は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

サ 訂正事項12について
(ア)訂正の目的について
訂正事項12は、「請求項1?11のいずれかに記載の含窒素ヘテロ芳香族環化合物を含む」を「請求項1に記載の含窒素ヘテロ芳香族環化合物を含む」とする訂正であり、これは、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当することは明らかである。

(イ)実質上の特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項12は特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

(ウ)新規事項の追加について
訂正事項12は、特許請求の範囲の記載を減縮する訂正であるから、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であることは明らかである。

(5)小括及び引用関係の解消の求めについて
以上のとおりであるから、本件訂正の請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
そして、特許権者から、訂正後の請求項4?8、10、11について訂正が認められるときは、他の請求項とは別途訂正することの求めがあったことから、訂正後の請求項4?8、10、11について請求項ごとに訂正することを認める。
よって、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3、9、12?16〕、4?8、10、11について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6148982号の請求項1?16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明16」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化1】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化2】

(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化30】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化5】

(式(1a)?(5a)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項5】
下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化31】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化32】

(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’、R’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。]
【請求項6】
下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化33】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、下記式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化34】

(式(1a)?(5a)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項7】
下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化35】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、下記式(1)で表される含窒素多環基である。
【化36】

(式(1)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項8】
下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化37】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、下記式(1a)で表される含窒素多環基である。
【化38】


(式(1a)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
R’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項9】(削除)
【請求項10】
下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化39】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、置換もしくは無置換のカルバゾール環基、又は置換もしくは無置換のアザカルバゾール環基であり、 Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化40】

(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項11】
下記式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物。
【化41】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、9位でL_(1)と結合する置換もしくは無置換のカルバゾール環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化42】

(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項12】
請求項1に記載の含窒素ヘテロ芳香族環化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項13】
陰極と陽極の間に発光層を含む1層以上の有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層のうち少なくとも1層が請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記発光層が前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料をホスト材料として含む請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
前記発光層が燐光発光材料を含有し、燐光発光材料がイリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、及び白金(Pt)から選択される金属原子のオルトメタル化錯体である請求項13又は14に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
前記陰極と前記発光層の間に有機薄膜層を有し、該有機薄膜層が前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む請求項13?15のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。」

第4 特許異議申立書で申立てられた取消理由の概要
1 訂正前の請求項1?6、9、12?16に係る発明は、本件優先日前に頒布された刊行物である下記の甲第1?5号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、訂正前の請求項1?6、9、12?16に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
なお、特許異議申立書の第3頁第3?5行、第9頁第2?3行及び第110?112頁に記載の「(5)むすび」の項目では、訂正前の請求項1?16に係る発明に対して特許法第29条第1項第3号の取消理由がある旨の記載をしているが、特許異議申立書第3?8頁に記載の請求項と証拠との対応表、及び、第70?95頁の「ウ.本件特許発明と証拠に記載された発明との対比」の項目において実質的に記載された内容からみて、特許異議申立人は、訂正前の請求項1?6、9、12?16に係る発明に対して特許法第29条第1項第3号の理由を申し立てたと解釈した。

2 訂正前の請求項1?16に係る発明は、本件優先日前に頒布された刊行物である下記の甲第1?10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、訂正前の請求項1?16に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

甲第1号証:特開2010-40830号公報
甲第2号証:特開2008-303150号公報
甲第3号証:特開2007-243101号公報
甲第4号証:米国特許出願公開2009/0111799号明細書
甲第5号証:Gregory R.Bebernitz 外12名著、The Effect of 1,3-Diaryl-[1H]-pyrazole-4-acetamides on Glucose Utilization in ob/ob Mice、Journal of Medicinal Chemistry、Vol.44、No.16、2001年発行、第2601?2611頁
甲第6号証:国際公開第2009/085344号
甲第7号証:国際公開第2011/106344号
甲第8号証:国際公開第2011/057706号
甲第9号証:特開2009-21336号公報
甲第10号証:米国特許第6229012号明細書

3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された特許を受けようとする発明は、下記の点で明確とはいえないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
よって、本件訂正前の請求項1及び請求項1を直接及び間接に引用する請求項2?16に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

本件訂正前の請求項1に係る発明は、式(A)の窒素含有ヘテロ芳香族化合物に関するが、この化合物中の可変基を表す符号には置換基の種類が定義されていないから、本件訂正前の請求項1に係る発明の化合物の構造が明確でない。

4 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された特許を受けようとする発明は、下記の点で、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1及び請求項1を直接及び間接に引用する請求項2?16に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

本件訂正前の請求項1に係る発明の課題は「有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動電圧を低くできる化合物の提供」であるところ、本件訂正前の請求項1に係る発明における式(A)の窒素含有ヘテロ芳香族化合物のうち、具体的に実施例で記載された化合物の可変基以外の場合については、本件特許明細書には具体的に記載されておらず、また、本件特許出願時の技術常識に照らし、当業者であっても本件特許の課題を解決できると認識できる範囲にあるとはいえない。

5 発明の詳細な説明は、下記の点で、当業者が本件訂正前の請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
よって、本件の訂正前の請求項1及び請求項1を直接及び間接に引用する請求項2?16に係る発明の特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

本件訂正前の請求項1に係る発明における式(A)の窒素含有ヘテロ芳香族化合物のうち、具体的に実施例で記載された化合物の可変基以外の場合については、本件特許出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく当業者が製造できることができない。

第5 取消理由通知の概要
当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下の1?5に示すとおりである。

1 本件訂正前の請求項1?6、9、10に係る発明は、本件優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である甲第1?5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?6、9、10に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

2 本件訂正前の請求項1、3、4、9、10、12?16に係る発明は、本件優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である甲第1、3、8及び10号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1、3、4、9、10、12?16に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2010-40830号公報
甲第2号証:特開2008-303150号公報
甲第3号証:特開2007-243101号公報
甲第4号証:米国特許出願公開2009/0111799号明細書
甲第5号証:Gregory R.Bebernitz 外12名著、The Effect of 1,3-Diaryl-[1H]-pyrazole-4-acetamides on Glucose Utilization in ob/ob Mice、Journal of Medicinal Chemistry、Vol.44、No.16、2001年発行、第2601?2611頁
甲第8号証:国際公開第2011/057706号
甲第10号証:米国特許第6229012号明細書

3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?16に記載された特許を受けようとする発明は、下記の点で明確とはいえないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
よって、本件訂正前の請求項1?16に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

本件訂正前の請求項1に係る発明は、式(A)の窒素含有ヘテロ芳香族化合物に関するが、この化合物中の可変基を表す符号には置換基の種類が定義されていないから、本件訂正前の請求項1に係る発明の化合物の構造が明確でない。

4 本件訂正前の請求項1?16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許請求の範囲の記載が、下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものでなく、本件特許は同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

本件訂正前の請求項1?11に係る発明の課題は、有機エレクトロルミネッセンスに用いる材料として有用で新規な含窒素へテロ芳香族環化合物を提供すること、本件訂正前の請求項12に係る発明の課題は、本件訂正前の請求項1?11の含窒素へテロ芳香族環化合物を含み、素子の駆動電圧を下げ、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を提供すること、本件訂正前の請求項13?16に係る発明の課題は、本件訂正前の請求項1?11の含窒素へテロ芳香族環化合物を含み、素子の駆動電圧を下げ、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することであると認める。
ここで、発明の詳細な説明には、実施例に記載された化合物は、上記課題を解決できたことが記載されているが、本件訂正前の請求項1に係る発明で特定される化合物の全体にわたり、ここに記載された実施例で示された物性と同等の性質を有するということはいえず、発明の詳細な説明の記載から当業者が課題を解決できると認識できるとはいえない。また、記載や示唆がなくとも当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲であるとする技術常識もない。

5 本件訂正前の請求項1?16について、下記の点について、当業者がその発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されてなく、本件特許の発明の詳細な説明の記載は不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、本件特許は同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

本件訂正前の請求項1に係る発明における式(A)の窒素含有ヘテロ芳香族化合物のうち、その全般にわたり、本願出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく作ることができるとはいえない。

第6 当審の判断
当審は、請求項2、3及び9に係る特許については、特許異議申立を却下することとし、また、当審が通知した取消理由、特許異議申立人が申し立てた取消理由によっては、いずれも、本件発明1、4?8、10?16に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 申立ての却下
上記第2及び第3で示したとおり、請求項2、3及び9は、本件訂正により削除されているので、請求項2、3及び9についての申立てを却下する。

2 取消理由通知の理由について
(1)理由1及び2について
ア 甲第1?5、8及び10号証の記載事項について
(ア)甲第1号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】
陽極と陰極により挟まれた少なくとも1層の発光層を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該発光層が、下記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される部分構造を含む化合物を少なくとも1つ含有し、かつ下記一般式(5)で表される部分構造を1分子内に2つ以上有する有機化合物を少なくとも1つ含有する有機層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(一般式(1)?(4)の記載は省略する。)
【化2】

〔式中、Czは、カルバゾリル基を表す。Z_(0)は、任意の連結基を表す。Cz、およびZ_(0)は、置換基を有していてもよい。
一般式(5)で表される部分構造を1分子内に複数有する有機化合物において、1分子中に存在する複数個のCzは、同一であっても異なっていてもよい。
また、1分子中に存在する複数個のZ_(0)は、同一であっても異なっていてもよい。
Qは、下記一般式(6)のGにつながる直接結合を表す。〕
【化3】

〔式中、環B^(1)は、ヘテロ原子としてN原子をn個有する6員環の芳香族複素環である。
nは、1?3の整数である。
Gは、Qにつながる場合は、Qにつながる直接結合または任意の連結基を表す。
またGは、mが2以上でありQにつながらないGの場合は、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
Gは、環B^(1)のN原子から見てオルト位あるいはパラ位にあるC原子に結合する。
mは、3?4の整数である。
1分子中に存在する複数個のGは、同一であっても異なっていてもよい。
環B^(1)は、G以外にも置換基を有していてもよい。
また、環B^(1)中のN原子同士を除き、1分子中に存在するN原子同士は共役しない。また、1分子中に存在するピリジン環は1つのみである。〕
・・・
【請求項16】
構成層として、前記一般式(5)で表される部分構造を1分子内に2つ以上有する有機化合物を少なくとも1種含有する有機層が発光層であることを特徴とする請求項1?15のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。」

(1b)「【0025】
従来から、カルバゾール環を分子内に複数有する化合物は良好なホスト化合物として知られている。」

(1c)「【0201】
本発明の一般式(1)、(2)、(3)、または(4)で表される部分構造を含む遷移金属錯体化合物と併用するのに最適なホスト化合物の検討を行った結果、本発明の一般式(5)で表される部分構造を1分子内に2つ以上有する有機化合物をホスト化合物とすることで正孔移動と電子移動のバランスを完全に合わせることができ、それによって、特異的に短波な発光が見られ、高い発光効率を示し、且つ発光寿命の長い有機EL素子を提供することができた。さらに、予想外の効果として素子駆動開始時の初期劣化を大幅に低減することができたうえ、さらには発光素子のダークスポットも大幅に低減させることに成功し、有用な有機EL素子を提供することができた。」

(1d)「【0341】
以下、本発明に係る一般式(5)で表される部分構造を1分子内に2つ以上有する有機化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
・・・
【0343】
【化99】

・・・
【0344】
【化100】
・・・

・・・
【0349】
【化105】
・・・

・・・
【0354】
【化110】
・・・

・・・
【0364】
【化120】
・・・

・・・
【0365】
【化121】
・・・

【0366】
【化122】
・・・



(イ)甲第2号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物とを反応させることを特徴とする下記一般式(3)で表されるイミダゾール化合物の合成方法。
【化1】

〔式中、Z_(1)は炭化水素環基または複素環基を形成するのに必要な原子群を表し、R_(1)は水素原子または置換基を表す。X_(1)は水素原子またはハロゲン原子を表す。R_(2)は水素原子または芳香族炭化水素基を表し、lは1または2を表す。〕
【化2】

〔式中、Z_(2)はC-Cと共に5員?6員の炭化水素環または5員?6員の複素環を形成するのに必要な原子群を表す。R_(3)は水素原子または置換基を表し、mは1?5の整数を表す。X_(2)はハロゲン原子または-B(OR_(12))(OR_(13))基(ここで、R_(12)、R_(13)は、各々水素原子、アルキル基または芳香族炭化水素基を表し、同一でもよく異なっていてもよい、また、互いに連結して環を形成しても良い。)を表す。〕
【化3】

〔式中、Z_(1)、R_(1)、R_(2)、lは、前記一般式(1)における、Z_(1)、R_(1)、R_(2)、lと各々同義である。Z_(2)、R_(3)、mは、前記一般式(2)における、Z_(2)、R_(3)、mと各々同義である。〕」

(2b)「【0124】
以下に、一般式(3)で表される化合物の好ましい例を挙げる。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0125】
【化25】
・・・

・・・
【0128】
【化28】
・・・

・・・
【0129】
【化29】
・・・

・・・
【0131】
【化31】

・・・

・・・
【0132】
【化32】
・・・

・・・

・・・
【0134】
【化34】

・・・

・・・」

(2c)「【0198】
(一般式(3)で表されるイミダゾールを部分構造として有する有機金属錯体)
一般式(3)で表されるイミダゾール化合物の部分構造を有する有機金属錯体の構造には特に制限はないが、有機金属錯体の好ましい形態は下記一般式(7)で表される。
【0199】
【化51】



(2d)「【0271】
《有機EL素子材料の有機EL素子への適用》
本発明の有機金属錯体を用いて有機EL素子を作製する場合、有機EL素子の構成層の中で、発光層または電子阻止層に本発明の有機金属化合物を用いることが好ましい。また、発光層中では、後述する発光ドーパントとして好ましく用いられる。」

(2e)「【0319】
実施例3
《例示化合物121の合成》:本発明の合成例4
9.6g(60.3ミリモル)の2,4-ジフルオロフェニルボロン酸、8.0g(30.2ミリモル)の2-ブロモ-1-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1H-イミダゾール、1.62gのビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、1.62gの1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン及びエチレングリコールジメチルエーテル90ml、9.6gの炭酸カリウムを用い、実施例1の本発明の合成例1に記載と同様にして24時間反応させた。」

(ウ)甲第3号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(3a)「【請求項2】
発光ホストまたは正孔阻止材料が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子材料。
【化2】

(式中、Arは芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表し、R_(21)、R_(22)、R_(23)は水素原子または置換基を表すが、R_(21)、R_(22)、R_(23)の組み合わせが同一でなくともよく、またR_(22)、R_(23)が互いに結合して芳香環を形成することはない。mは0または1の整数を表し、nは2?6の整数を表す。Lはnが2のとき単なる結合手、または2価の連結基を表し、nが3以上のときn価の連結基を表す。)
・・・
【請求項11】
構成層として発光層を有し、該発光層が請求項1?8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子材料を含有することを特徴とする請求項9または10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
構成層として正孔阻止層を有し、該正孔阻止層が請求項1?8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子材料を含有することを特徴とする請求項9または10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。」

(3b)「【0052】
以下、本発明に係る一般式(1)、(2)で表される化合物を具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
・・・
【0053】
【化5】


・・・
【0056】
【化8】
・・・

・・・」

(3c)「【0071】
本発明に係る化合物の合成例を下記に示す。
【0072】
化合物(1)の合成
500ml四つ口フラスコに1,3-フェニレンジボロン酸を3.4g、2-ブロモ-1-フェニルイミダゾールを10.0g、更にTHF300mlを入れ、これに炭酸カリウム7.0g、水25mlの溶液を加え、室温で攪拌下約30分窒素吹き込みを行った。Pd(Pph_(3))_(4)1.0gを加えて、徐々に加熱して5時間煮沸還流して反応終了とした。これを食塩水で洗って、硫酸マグネシウムで脱水後濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、化合物(1)を4.2g得た。構造は1H-NMRとMassにて確認した。
【0073】
他の本発明に係る化合物も上記に準じて、合成することができる。」

(エ)甲第4号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の事項が記載されている。訳文で示す。
(4a)「1. 化学式Iの化合物

式中、Xは、-CF_(3)であり、Arは、

から選択される基であり、
及びRは、

から選択される基であり、
R’は、L-Lys,D-Lys,β-Ala,L-Leu,L-Ile,Phe,SO_(2)CH_(2)CH_(2)NH_(2),SO_(2)NH_(2),Asn,Glu,又はGylであり、
R’’は、メチル,エチル,アリル,CH_(2)CH_(2)OH,CH_(2)CN,CH_(2)CH_(2)CN,CH_(2)CONH_(2),

である、
又はその代謝物もしくは薬学的に許容される塩。
・・・
6. 化学式XIの構造を有する

請求項1の化合物又はその代謝物もしくは薬学的に許容される塩」(CLAIM 1.及び6.)

(4b)「[0005]
・・・
発明の概要
[0006]
提供されるのは、オートファジーを誘導し、及び/又は宿主を細胞内病原体から守る、式I

(式中、Xは、アルキル及びハロアルキルから選択され;Arは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル及びフルオレニルからなる群から選択され、;Rは、-CN、-CH_(2)CN、-CH_(2)CH_(2)CN、-CH_(2)CH_(2)CH_(2)CN-CONH_(2)

からなる群から選択される)
の化合物である。
式Iはまた、その医薬として許容される塩、代謝産物、及びそのプロドラッグも含む。また、提供されるのは、オートファジーを誘導し、及び/又は宿主細胞内病原体から守る式IIからXIVの化合物である。式IIからXIVはまた、その医薬として許容される塩、代謝産物、及びそのプロドラックも含む。」

(4c)「[0072]
・・・
化合物37?60の一般的な製造方法
[0073]
特に述べられていない限り、化学試薬及び有機溶媒はすべてAldrich(・・・)から購入した。スキーム1(スキーム中、Arはそれぞれの芳香族環構造を表す。)に記載の2ステップの一般的な手順にしたがって化合物1?24を合成した。
スキーム1


ここでは、化合物の群の合成を示す一例として化合物59が用いられている(スキーム2)。他の化合物も、前駆体及び異なる芳香族環構造を持つそれぞれの中間体(化合物I及びII)を経由して同じ手順にしたがった。
スキーム2



(オ)甲第5号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証には、以下の事項が記載されている。訳文で示す
(5a)「ob/obマウスにおけるグルコース利用に関する1,3-ジアリール-[1H]-ピラゾール-4-アセトアミドの作用」(第2601頁の表題)

(5b)「本論文では、初めに、脂肪細胞および筋肉細胞株においてグルコース輸送を増加させるその能力によって確認され、最終的に、糖尿病動物モデルであるob/obマウスにおいて劇的な血糖降下を示す新しいクラスの化合物、1,3-ジアリール-[1H]-ピラゾール-4-アセトアミドの証拠を示す。・・・したがって、潜在的に糖尿病の治療のための新しいクラスの薬剤である。」(2601頁の要約の第1?13行)

(5c)「化学
ピラゾール環の1位および3位の変更は、一般に、所望の各テンプレートを個々に合成する必要がある。スキーム1に示すように、幾分重複している2つの方法(方法AおよびB)を利用してピラゾール環を合成した。・・・方法Bでは、ビルスマイヤー-ハック反応の前に酢酸の側鎖をテンプレートに取り込めたため、合成の2?3ステップだけ反応スキームが短縮された。方法Aと比較して反応順序は簡素化されたが、その有用性は、エステル生成物14の精製の容易さに左右される。

スキーム1.ピラゾールの調整のための合成法

各種ヒドラジンおよびメチルケトンはすべて市販されている。ただし、標準的なフリーデル・クラフツアシル化条件下で調整した2kを除く。ヨウ化メチルおよびKHMDSを用いて徹底的にアルキル化することにより、フルオレンから13oを調製した。加えて、方法Bで使用した伸長したエステル14j、o、s、t、u、xおよびyは、標準条件下、4-クロロ-4-オキソブタン酸メチルを用いて対応する芳香族前駆体13を直接フリーデル・クラフツアシル化して調製した。」(第2602頁右欄第18行?第2603頁左欄第8行及び第2603頁スキーム1)

(5d)「第2表 Ar2位置での置換

・・・
第2表の続き

」 (第2605?2606頁の図2)

(カ)甲第8号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第8号証には、以下の事項が記載されている。訳文で示す。訳文は、甲第8号証のパテントファミリーである特表2013-510803号公報に基づいて作成した。
(8a)「1. 式(I)または式(II)の化合物。
【化1】

(式中、出現する記号と添え字は、以下のとおり定義される。
Ar^(1)、Ar^(2)、Ar^(3)は、出現毎に同一であるか異なり、随意に、1以上の基R^(1)で置換されてよい5?60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、
C_(z)は、出現毎に同一であるか異なり、式(A)の基であり、
【化2】

式中、破線は、Ar^(1)もしくはXまたは中央のカルバゾール誘導体への可能な結合位置であり、窒素が好ましい結合位置であり、
Aは、NまたはPであり、
Xは、出現毎に同一であるか異なり、-B(R^(1))-、-N(R^(1))-、-P(R^(1))-、-P(R^(1))_(3)-、-P(=O)(R^(1))-、-C(R^(1))_(2)-、-Si(R^(1))_(2)-、C=O、C=NR^(1)、C=C(R^(1))_(2)、-O-、-S-、-Se-、-S(=O)-および-S(=O)_(2)-から選ばれ、
Yは、出現毎に同一であるか異なり、CR^(Cz)もしくはNであり、または、基XもしくはAr^(1)もしくはAr^(3)もしくはC_(z)がこの基に結合するならば、Cであり、
Zは、出現毎に同一であるか異なり、CR^(HetAr)またはNであり、ここで、六員環毎に少なくとも一つのZは、Nであり、
qは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、q=0の場合、問題の基Ar^(1)もしくはAr^(3)に結合する二個の基は、互い直接結合し、
sは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ただし、少なくとも一つの添え字sは1であり、
xは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、x=0の場合、問題の基Xに結合する二個の基は、互いに直接結合し、
R^(1)、R^(HetAr)、R^(Cz)は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R^(2))_(2)、CN、NO_(2)、Si(R^(2))_(3)、B(OR^(2))_(2)、C(=O)R^(2)、P(=O)(R^(2))_(2)、S(=O)R^(2)、S(=O)_(2)R^(2)、OSO_(2)R^(2)、1?40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2?40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、3?40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基R^(2)により置換されてよく、1以上のCH_(2)基は、-R^(2)C=CR^(2)-、-Si(R^(2))_(2)-、-Ge(R^(2))_(2)-、-Sn(R^(2))_(2)-、C=O、C=S、C=Se、C=NR^(2)、-P(=O)(R^(2))-、-S=(O)-、-S(=O)_(2)-、-N(R^(2))-、-O-、-S-、-C(=O)O-もしくは-C(=O)NR^(2)-で置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基R^(2)により置換されてよい5?60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基R^(2)で置換されてよい5?60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、各場合に、1以上の基R^(2)で置換されてよい5?60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基であり;ここで、2個以上の置換基R^(1)、R^(HetAr)もしくはR^(Cz)は、互いに結合して、随意にモノ-あるいはポリ環状脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を形成してもよく;
R^(2)は、出現毎に同一であるか異なり、H、Dまたは1?20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族有機基であり、加えて、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく;ここで、2個以上の基R^(2)は、互いに結合して、随意に、モノ-あるいはポリ環状、脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を形成してもよい。)
・・・
11. 以下の工程を含むことを特徴とする、請求項1?10何れか1項記載の化合物の製造方法:
a)随意にハロゲン置換基を導入した、置換カルバゾール誘導体の合成;
b)カルバゾール誘導体の窒素原子の、有機金属カップリング反応または求核芳香族置換反応でのアリールもしくはヘテロアリール基へのカップリング;
c)カルバゾール基の一または二個の芳香族六員環上のアリールもしくはヘテロアリール基の導入のための有機金属カップリング反応。
・・・
15. 請求項1?10何れか1項記載の少なくとも一つの化合物または請求項12記載の少なくとも一つのオリゴマー、デンドリマーまたはポリマーを含む、電子素子、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)有機レーザーダイオード(O-laser)または有機光受容器から選ばれる、電子素子。
16. 請求項1?10何れか1項記載の化合物または請求項12記載の一以上のオリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーが、マトリックス材料として、好ましくは、燐光ドーパントのためのマトリックス材料としてまたは電子輸送材料として使用されることを特徴とする、請求項15記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。」

(8b)「 以下の好ましい具体例が、Ar^(1)、Ar^(2)およびAr^(3)に適用される。
Ar^(1)は、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、随意に、1以上の基R^(1)で置換されてよい5?30個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造である。
Ar^(2)は、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、随意に、1以上の基R^(1)で置換されてよい6?30個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造であり、特に、好ましくは、随意に、1以上の基R^(1)で置換されてよい6?18個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造である。
Ar^(3)は、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、随意に、1以上の基R^(1)で置換されてよい5?30個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造であり、特に、好ましくは、随意に、1以上の基R^(1)で置換されてよい5?18個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造である。」(第11頁第14行?第12頁第6行)

(8c)「 本発明による化合物の例は、以下の表に示される。
・・・

・・・

」(第22頁下から2行?第52頁)

(8d)「 本発明による化合物は、たとえば、ハロゲン化、好ましくは、臭素化および引き続く有機金属カップリング反応、たとえば、スズキカップリング、ヘックカップリングまたはハートウイッグ-ブフバルトカップリング等の当業者に知られる合成方法により調製することができる。
本発明による化合物の合成例は、以下の二つのスキームにより示される。
スキーム1

示された図の合成は、置換あるいは非置換カルバゾール誘導体(Synthesis 2005, 10, 1619-1624)から出発して、ブフバルトカップリングで一以上のハロゲン置換基を有するN-フェニルスルホニル保護カルバゾール誘導体と反応する(Org. Biomol. Chem. 2004, 2, 1476-1483)。フェニルスルホニル基は、KOHの元で切断され、カルバゾールの遊離芳香族アミノ官能基は、求核芳香族置換反応でトリアジン誘導体と反応することができる。こうして、ここに示されない置換パターンを有する他のカルバゾール誘導体も合成することができる。

スキーム2


示される合成は、ブロモカルバゾール誘導体から出発し、ヨードアリール化合物(ここでは、フェニルヨード誘導体の例による)とウルマンカップリングで反応する。臭素官能基は、引き続きボロン酸官能基に変換され、クロロジフェニルトリアジンへのスズキカップリングが起こることを可能とする。こうして、カルバゾール基の一個または二個の芳香族環上でアリールもしくはヘテロアリール基で置換されたカルバゾール誘導体を調製することができる。ここに示されない異なる置換パターンを有するカルバゾール誘導体も、示されたスキームにしたがって合成することができる。
当業者は、発明性を要することなく、上記示された合成スキームを変更し、本発明による関連した構造種の合成のために示されたプロセスを使用することができるだろう。
したがって、本発明は、さらに、以下の工程を含む式(I)または式(II)の化合物の製造方法に関する。
a)随意にハロゲン置換基を導入した、置換カルバゾール誘導体の合成;
b)カルバゾール誘導体の窒素原子の、有機金属カップリング反応または求核芳香族置換反応でのアリールもしくはヘテロアリール基へのカップリング;
c)カルバゾール基の一または二個の芳香族六員環上のアリールもしくはヘテロアリール基の導入のための有機金属カップリング反応。
ここで、工程b)およびc)は、反対の順序で起こることもでき、さらに、保護基の導入あるいは除去も必要でもあり得る。」(第53頁下から5行?第56頁第10行)

(キ)甲第10号証
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第10号証には、以下の事項が記載されている。訳文で示す。
(10a)「背景技術
本発明は有機電子材料を対象とし、さらに具体的には、新規トリアジン化合物からなる有機電子輸送材料または発光材料を対象とし、この化合物は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、および光導電素子などを含む他の光電子素子のために選択され得る。」(第1欄第20?27行)

(10b)「発明の概要
本発明の特徴は、有機EL素子のために選択され得るトリアジン化合物の一クラスを提供することである。
本発明の別の特徴は、光電子材料、すなわち、例えば、有機電子輸送材料または蛍光材料に有用なトリアジン化合物の一クラスを提供することである。
・・・
本発明の概要は、下記式に示されるトリアジン化合物又は下記式に包含される。

ここで、Ar^(1)、Ar^(2)(「A^(2)」は、Ar^(2)の誤記であると認める。)、Ar^(3)及びAr^(4)は、それぞれアリ-ル基・・・であって、ここで、アリ-ル基は、例えば、約6?約60個の炭素原子、好ましくは約6?約30個の炭素原子を含み、より具体的には、フェニル、スチルベニル、ビフェニリル、ナフチルなどからなる群から独立して選択される。・・・また、ここで、アリール基・・・は、例えば、水素、例えば1?6個の炭素原子を有するアルキル基、6個?30個の炭素原子を有するアリール基、例えば1?6個の炭素原子を有するアルコキシ基、約1?約3個の炭素原子を有するジアルキルアミノ基、ハロゲン、シアノ基等の適切な置換基を含む場合がある。」(第2欄第36行?第3欄33行)

(10c)「発明を実施するための形態
本発明のトリアジン化合物は、式

(式中、各置換基は本明細書に示すとおりであり、例えばAr^(1)、Ar^(2)、Ar^(3)およびAr^(4)は、それぞれアリール基または複素環式芳香族基であり、アリールは、例えば約6個?約60個の炭素原子、好ましくは約6個?約30個の炭素原子を含み、例えば、フェニル、スチルベニル、ビフェニリル、ナフチルなどからなる群から独立して選択されてもよく;複素環式芳香族基は、約2個?約30個の炭素原子を含んでもよく、ピリジル、キノリル、チエニル、1,3,5-オキサジアゾリルなどからなる群から独立して選択されてもよく;アリール基または複素環式芳香族基は、水素、例えば1個?約12個の炭素原子を持つアルキル基、約6個?約30個の炭素原子を持つアリール基、例えば約2個?約20個の炭素原子を持つアルコキシ基、約1個?約3個の炭素原子を持つジアルキルアミノ基、ハロゲン、シアノ基などからなる群から選択される置換基をさらに含んでもよく;R^(1)およびR^(2)は、水素、例えば1個?約6個の炭素原子を有するアルキル基、1個?約6個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン、シアノ基などからなる群から選択される置換基であり;Lは二価の基であり、好ましくは、メチレンまたはエチレンなどのアルキレン、ビニレン、-Si(R’R’’)-、酸素原子、硫黄原子などからなる群から選択されてもよく、好ましくは、Lは、-C(R’R’’)-(式中、R’およびR’’は、水素原子、1個?約10個の炭素原子を含むアルキル基、または1個?約10個の炭素原子を含むアルコキシル基である。)の二価の基であり、Lは、L(n)であり、式中、nは10ゼロ、または1である。)
により示すことができる。」(第4欄第50行?第5欄第30行)

(10d)「本発明のトリアジン化合物の具体例には以下が含まれる:4,4’-ビス-[2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジニル)]-1,1’-ビフェニル(II-1)・・・4,9-ビス-[2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジニル)]ジベンゾフラン(III-6)、・・・など。
・・・

・・・

」(第6欄第61行?第10欄上から2つめの化合物)

(10e)「例1
4,4’-ビス-[2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジニル)]-1,1’-ビフェニルの合成
100mlの丸底フラスコに、4,4’-ビフェニルジカルボニル塩化物(5.14g)、1,2-ジクロロベンゼン(15.0mg(ミリメートルはmgの誤記であると認める。))、塩化チオニル(2.0mg(ミリメートルはmgの誤記であると認める。))、塩化アルミニウム(5.5g)を加えた。撹拌しながら、ベンゾニトリル(7.6g)を15分かけて加え、得られた反応混合物をアルゴン下で約150℃で0.5時間加熱した。反応混合物の温度が120℃に低下した後、塩化アンモニウム(3.5g)を一度に加えた。反応混合物は120℃のこの温度で更に20時間撹拌された。反応フラスコを加熱器から移し、全体を通して23?25℃の室温に冷却した。反応混合物に600ml(ミリメートルはmlの誤記であると認める。)のメタノールを注ぎ、20分混合した。沈殿物を濾過により集め、真空オーブンで乾燥し、2.7gの粗生成物を得、更に昇華により精製した。約99.5%の精製した4,4’-ビス-[2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジニル)]-1,1’-ビフェニル生成物は、以下の性質を示した。融点は362℃、IR(KBr)ピーク、1588、1564、1525、1445、1368、842、827、765、690、645cm^(-1)、
H-NMR(CDCl_(3)-CF3COOD):δ7.76(t,J=7.8Hz)、7.92(t,J=7.8Hz)、8.10(d,J=8.6Hz)、8.63(d,J=8.4Hz)、8.84(d,J=8.6Hz)
^(13)C-NMR(CDCl_(3)-CF3COOD):δ 129.1,129.3,130.3,130.4,130.9,131.9,137.8,147.8,169.1,169.4」(第16欄第37行?第17欄第2行)

イ 甲第1?5、8及び10号証に記載された発明
(ア)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の請求項1には、発光層と下記一般式(5)で表される部分構造を1分子内に2つ以上有する有機化合物を少なくとも1つ含有する有機層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子

〔式中、Czは、カルバゾリル基を表す。Z_(0)は、任意の連結基を表す。Cz、およびZ_(0)は、置換基を有していてもよい。
一般式(5)で表される部分構造を1分子内に複数有する有機化合物において、1分子中に存在する複数個のCzは、同一であっても異なっていてもよい。
また、1分子中に存在する複数個のZ_(0)は、同一であっても異なっていてもよい。
Qは、下記一般式(6)のGにつながる直接結合を表す。〕
【化3】

〔式中、環B^(1)は、ヘテロ原子としてN原子をn個有する6員環の芳香族複素環である。
nは、1?3の整数である。
Gは、Qにつながる場合は、Qにつながる直接結合または任意の連結基を表す。
またGは、mが2以上でありQにつながらないGの場合は、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
Gは、環B^(1)のN原子から見てオルト位あるいはパラ位にあるC原子に結合する。
mは、3?4の整数である。
1分子中に存在する複数個のGは、同一であっても異なっていてもよい。
環B^(1)は、G以外にも置換基を有していてもよい。
また、環B^(1)中のN原子同士を除き、1分子中に存在するN原子同士は共役しない。また、1分子中に存在するピリジン環は1つのみである。〕」が記載され(摘記(1a))、従来から、カルバゾール環を分子内に複数有する化合物は良好なホスト化合物として知られていることが記載され(摘記(1b))、この一般式(5)の具体例として、以下の化合物が記載され(摘記(1d))、それらの構造から製造できるものと認められる。


」、


」、


」、


」、


」、


」、




そうすると、甲第1号証には、以下の化合物発明が記載されていると認める。


」(以下「甲1発明A」という。)、


」(以下「甲1発明B」という。)、


」(以下「甲1発明C」という。)、


」(以下「甲1発明D」という。)、


」(以下「甲1発明E」という。)、


」(以下「甲1発明F」という。)、


」(以下「甲1発明G」という。)。

(イ)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の請求項1には、「一般式(1)で表される化合物(一般式(1)の記載は省略する。)と下記一般式(2)で表される化合物(一般式(2)の記載は省略する。)とを反応させることを特徴とする下記一般式(3)で表されるイミダゾール化合物の合成方法。

〔式中、Z_(1)、R_(1)、R_(2)、lは、前記一般式(1)における、Z_(1)、R_(1)、R_(2)、lと各々同義である。Z_(2)、R_(3)、mは、前記一般式(2)における、Z_(2)、R_(3)、mと各々同義である。〕」が記載され(摘記(2a))、Z_(1)は炭化水素環基または複素環基を形成するのに必要な原子群を表し、R_(1)は水素原子または置換基を表す。X_(1)は水素原子またはハロゲン原子を表す。R_(2)は水素原子または芳香族炭化水素基を表し、lは1または2を表し、また、Z_(2)はC-Cと共に5員?6員の炭化水素環または5員?6員の複素環を形成するのに必要な原子群を表す。R_(3)は水素原子または置換基を表し、mは1?5の整数を表す。X_(2)はハロゲン原子または-B(OR_(12))(OR_(13))基(ここで、R_(12)、R_(13)は、各々水素原子、アルキル基または芳香族炭化水素基を表し、同一でもよく異なっていてもよい、また、互いに連結して環を形成しても良い。)を表すものである(摘記(2a)参照)。
そして、この一般式(3)の具体例として、以下の化合物が記載され(摘記(2b))、それらの構造から製造できるものと認められる。


」、


」、


」、


」、


」、


」、


」、


」、




そうすると、甲第2号証には、以下の化合物発明が記載されていると認める。


」(以下「甲2発明A」という。)、


」(以下「甲2発明B」という。)、


」(以下「甲2発明C」という。)、


」(以下「甲2発明D」という。)


」(以下「甲2発明E」という。)、


」(以下「甲2発明F」という。)、


」(以下「甲2発明G」という。)、


」(以下「甲2発明H」という。)、


」(以下「甲2発明I」という。)

(ウ)甲第3号証に記載された発明
甲第3号証の請求項2には、「発光ホストまたは正孔阻止材料が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子材料。
【化2】


(式中、Arは芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表し、R_(21)、R_(22)、R_(23)は水素原子または置換基を表すが、R_(21)、R_(22)、R_(23)の組み合わせが同一でなくともよく、またR_(22)、R_(23)が互いに結合して芳香環を形成することはない。mは0または1の整数を表し、nは2?6の整数を表す。Lはnが2のとき単なる結合手、または2価の連結基を表し、nが3以上のときn価の連結基を表す。)」が記載され(摘記(3a))、この一般式(2)で表される化合物の具体例として、以下の化合物が記載され(摘記(3b))、それらの構造から製造できるものと認められる。




そうすると、甲第3号証には、以下の化合物発明が記載されていると認める。


」(以下「甲3発明」という。)

(エ)甲第4号証に記載された発明
甲第4号証のCLAIMS 1.には、「化学式Iの化合物

式中、Xは、-CF_(3)であり、Arは、

から選択される基であり、
及びRは、

から選択される基であり、
R’は、L-Lys,D-Lys,β-Ala,L-Leu,L-Ile,Phe,SO_(2)CH_(2)CH_(2)NH_(2),SO_(2)NH_(2),Asn,Glu,又はGylであり、
R’’は、メチル,エチル,アリル,CH_(2)CH_(2)OH,CH_(2)CN,CH_(2)CH_(2)CN,CH_(2)CONH_(2 ),

である、
又はその代謝物もしくは薬学的に許容される塩。」が記載され(摘記(4a))、同じくCLAIMS 6.には、その具体例として、「化学式XIの構造を有する

の化合物又はその代謝物もしくは薬学的に許容される塩。」が記載され(摘記(4a))、発明の詳細な説明にも、CLAIMSの6に記載された化合物と同じ化合物が記載されている(摘記(4b))。この一般式XIで表される化合物は、R’が、Glyの場合と、β-Alaの場合と、L-Lysの場合と、D-Lysの場合と、Asnの場合と、Gluの場合が記載され(摘記(4b))、それらの構造から製造できるものと認められる。

そうすると、甲第4号証には、以下の化合物発明が記載されていると認める。
「化学式XIの構造を有する

の化合物であって、R’が、Gly、β-Ala、L-Lys、D-Lys、Asn、またはGluの化合物」(以下「甲4発明」という。)

(オ)甲第5号証に記載された発明
甲第5号証は、「ob/obマウスにおけるグルコース利用に関する1,3-ジアリール-[1H]-ピラゾール-4-アセトアミドの作用」を表題とする論文であって(摘記(5a))、具体的な1,3-ジアリール-[1H]-ピラゾール-4-アセトアミド化合物として、以下の化合物11sが製造方法を伴って記載されている(摘記(5d))。

であって、Ar2が以下の構造を有する

化合物。

そうすると、甲第5号証には、以下の化合物発明が記載されていると認める。


であって、Ar2が

の化合物」(以下「甲5発明」という。)

(カ)甲第8号証に記載された発明
甲第8号証のCLAIMSの1のうち、式(II)の化合物は
「【化1】

(式中、出現する記号と添え字は、以下のとおり定義される。
Ar^(1)、Ar^(2)、Ar^(3)は、出現毎に同一であるか異なり、随意に、1以上の基R^(1)で置換されてよい5?60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、
C_(z)は、出現毎に同一であるか異なり、式(A)の基であり、
【化2】

式中、破線は、Ar^(1)もしくはXまたは中央のカルバゾール誘導体への可能な結合位置であり、窒素が好ましい結合位置であり、
Aは、NまたはPであり、
Xは、出現毎に同一であるか異なり、-B(R^(1))-、-N(R^(1))-、-P(R^(1))-、-P(R^(1))_(3)-、-P(=O)(R^(1))-、-C(R^(1))_(2)-、-Si(R^(1))_(2)-、C=O、C=NR^(1)、C=C(R^(1))_(2)、-O-、-S-、-Se-、-S(=O)-および-S(=O)_(2)-から選ばれ、
Yは、出現毎に同一であるか異なり、CR^(Cz)もしくはNであり、または、基XもしくはAr^(1)もしくはAr^(3)もしくはC_(z)がこの基に結合するならば、Cであり、
Zは、出現毎に同一であるか異なり、CR^(HetAr)またはNであり、ここで、六員環毎に少なくとも一つのZは、Nであり、
qは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、q=0の場合、問題の基Ar^(1)もしくはAr^(3)に結合する二個の基は、互い直接結合し、
sは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ただし、少なくとも一つの添え字sは1であり、
xは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、ここで、x=0の場合、問題の基Xに結合する二個の基は、互いに直接結合し、
R^(1)、R^(HetAr)、R^(Cz)は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R^(2))_(2)、CN、NO_(2)、Si(R^(2))_(3)、B(OR^(2))_(2)、C(=O)R^(2)、P(=O)(R^(2))_(2)、S(=O)R^(2)、S(=O)_(2)R^(2)、OSO_(2)R^(2)、1?40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2?40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、3?40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基R^(2)により置換されてよく、1以上のCH_(2)基は、-R^(2)C=CR^(2)-、-Si(R^(2))_(2)-、-Ge(R^(2))_(2)-、-Sn(R^(2))_(2)-、C=O、C=S、C=Se、C=NR^(2)、-P(=O)(R^(2))-、-S=(O)-、-S(=O)_(2)-、-N(R^(2))-、-O-、-S-、-C(=O)O-もしくは-C(=O)NR^(2)-で置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基R^(2)により置換されてよい5?60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基R^(2)で置換されてよい5?60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、各場合に、1以上の基R^(2)で置換されてよい5?60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基であり;ここで、2個以上の置換基R^(1)、R^(HetAr)もしくはR^(Cz)は、互いに結合して、随意にモノ-あるいはポリ環状脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を形成してもよく;
R^(2)は、出現毎に同一であるか異なり、H、Dまたは1?20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族有機基であり、加えて、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく;ここで、2個以上の基R^(2)は、互いに結合して、随意に、モノ-あるいはポリ環状、脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を形成してもよい。)」と記載され(摘記(8a))、発明の詳細な説明には、その具体例として、以下に示される化合物173が記載され(摘記(8c))、

また、以下に示される化合物195が記載され(摘記(8c))、これらの化合物は、発明の詳細な説明の一般的な製造方法の記載から、製造できるものと認められる。


そうすると、甲第8号証には、以下の化合物発明が記載されていると認める。


」(以下「甲8発明A」という。)、



」(以下「甲8発明B」という。)

(キ)甲第10号証に記載された発明
甲第10号証には、有機EL素子のため、式

(式中、各置換基は本明細書に示すとおりであり、例えばAr^(1)、Ar^(2)、Ar^(3)およびAr^(4)は、それぞれアリール基または複素環式芳香族基であり、アリールは、例えば約6個?約60個の炭素原子、好ましくは約6個?約30個の炭素原子を含み、例えば、フェニル、スチルベニル、ビフェニリル、ナフチルなどからなる群から独立して選択されてもよく;複素環式芳香族基は、約2個?約30個の炭素原子を含んでもよく、ピリジル、キノリル、チエニル、1,3,5-オキサジアゾリルなどからなる群から独立して選択されてもよく;アリール基または複素環式芳香族基は、水素、例えば1個?約12個の炭素原子を持つアルキル基、約6個?約30個の炭素原子を持つアリール基、例えば約2個?約20個の炭素原子を持つアルコキシ基、約1個?約3個の炭素原子を持つジアルキルアミノ基、ハロゲン、シアノ基などからなる群から選択される置換基をさらに含んでもよく;R^(1)およびR^(2)は、水素、例えば1個?約6個の炭素原子を有するアルキル基、1個?約6個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン、シアノ基などからなる群から選択される置換基であり;Lは二価の基であり、好ましくは、メチレンまたはエチレンなどのアルキレン、ビニレン、-Si(R’R’’)-、酸素原子、硫黄原子などからなる群から選択されてもよく、好ましくは、Lは、-C(R’R’’)-(式中、R’およびR’’は、水素原子、1個?約10個の炭素原子を含むアルキル基、または1個?約10個の炭素原子を含むアルコキシル基である。)の二価の基であり、Lは、L(n)であり、式中、nは10ゼロ、または1である。)により示されるトリアジン化合物が記載されており(摘記(10a)(10c))、その具体例として、以下に示される化合物が記載され(摘記(10d))、その構造から製造できるものと認められる。


そうすると、甲第10号証には、以下の化合物が記載されていると認める。


」(以下「甲10発明」という。)

ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 特許法第29条第1項第3号について
本件発明1と甲1発明A?G、甲2発明A?I、甲3発明、甲4発明、甲5発明とを対比する。
(a)甲1発明A?G
i 対比
本件発明1と甲1発明A?Gとは、少なくとも「ジベンゾフラン構造-M」という基本構造を有する化合物である限りにおいて一致しているが、以下の点で相違することは明らかである。
(i)甲1発明A
(相違点1-1A-1)
Mが置換基を有する場合の置換基について、本件発明1では、無置換のフェニル基であるのに対して、甲1発明Aでは、カルバゾリル基置換のフェニル基で置換されたフェニル基であって、フェニル基が無置換でない点
(相違点1-1A-2)
本件発明1では、Ar_(1)が、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族基である(Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基の定義は省略する。)のに対して、甲1発明Aでは、フェニル基であって、ヘテロ芳香族基でない点

(ii)甲1発明B
(相違点1-1B-1)
Mが置換基を有する場合の置換基について、本件発明1では、無置換のフェニル基であるのに対して、甲1発明Bでは、カルバゾリル基で置換されたフェニル基であって、フェニル基が無置換でない点
(相違点1-1B-2)
本件発明1では、Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であるのに対して、甲1発明Bは、カルバゾリル基置換のフェニル基で置換されたピリミジン環であって、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基が無置換のフェニル基でない点

(iii)甲1発明C
(相違点1-1C-1)
Mが置換基を有する場合の置換基について、本件発明1では、無置換のフェニル基であるのに対して、甲1発明Cでは、カルバゾリル基置換のフェニル基で置換されたフェニル基であって、フェニル基が無置換でない点

(iv)甲1発明D
(相違点1-1D-1)
本件発明1では、Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1)?(5)の記載は省略する。)であるのに対して、甲1発明Dは、フェニル置換のカルバゾリル基で置換されたフェニル基であって、カルバゾリル基が無置換でない点
(相違点1-1D-2)
Mが置換基を有する場合の置換基について、本件発明1では、無置換のフェニル基であるのに対して、甲1発明Dでは、フェニル置換のカルバゾリル基で置換されたフェニル基であって、フェニル基が無置換でない点

(v)甲1発明E
(相違点1-1E-1)
本件発明1では、Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1)?(5)の記載は省略する。)であるのに対して、甲1発明Eは、ブテニル基置換のカルバゾリル基で置換されたビフェニル基であって、カルバゾリル基が無置換でない点
(相違点1-1E-2)
本件発明1では、Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基である(Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基の定義は省略する。)のに対して、甲1発明Eは、ブテニル基で置換されたフェニル基であって、ヘテロ芳香族環基でない点
(相違点1-1E-3)
Mが置換基を有する場合の置換基について、本件発明1では、無置換のフェニル基であるのに対して、甲1発明Eでは、ブチル置換のカルバゾリル置換のフェニル基で置換されたフェニル基であって、フェニル基が無置換でない点

(vi)甲1発明F
(相違点1-1F-1)
本件発明1では、Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1)?(5)の記載は省略する。)であるのに対して、甲1発明Fは、ブテニル基置換のカルバゾリル基で置換されたビフェニル基であって、カルバゾリル基が無置換でない点
(相違点1-1F-2)
本件発明1では、Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であるのに対して、甲1発明Fは、ブテニル基及びフェニル基で置換されたカルバゾリル基であって、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基が異なる点
(相違点1-1F-3)
Mが置換基を有する場合の置換基について、本件発明1では、無置換のフェニル基であるのに対して、甲1発明Fでは、ブテニル基置換のカルバゾリル基置換のフェニル基で置換されたフェニル基であって、フェニル基が無置換でない点

(vii)甲1発明G
(相違点1-1G-1)
本件発明1では、Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1)?(5)の記載は省略する。)であるのに対して、甲1発明Gは、プロペニル基置換のフェニル基で置換されたカルバゾリル基で置換されたフェニル基であって、カルバゾリル基が無置換でない点
(相違点1-1G-2)
本件発明1では、Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であるのに対して、甲1発明Gは、プロペニル基置換のフェニル基で置換されたカルバゾリル基であって、フェニル基が無置換でない点
(相違点1-1G-3)
Mが置換基を有する場合の置換基について、本件発明1では、無置換のフェニル基であるのに対して、甲1発明Gでは、プロペニル基置換のフェニル基置換のカルバゾリル基で置換されたフェニル基であって、フェニル基が無置換でない点

ii 判断
上記i(i)?(vii)で示した相違点は、明らかに実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。

(b)甲2発明A?I
i 対比
本件発明1と甲2発明A?Iとは、少なくとも「ジベンゾフラン構造」という基本構造を有する化合物である限りにおいて一致しているが、少なくとも以下の点で相違することは明らかである。

(相違点1-2-1)
Mについて、本件発明1では、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基である(Mが置換基を有する場合の置換基の定義は省略する。)のに対して、甲2発明A?Iでは、イミダゾール環(2つの窒素原子を含有する5員環)であって、6員環の含窒素ヘテロ芳香族環でない点

ii 判断
上記iで示した相違点は、明らかに実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明とはいえない。

(c)甲3発明
i 対比
本件発明1と甲3発明とは、少なくとも「ジベンゾフラン構造」という基本構造を有する化合物である限りにおいて一致しているが、少なくとも以下の点で相違することは明らかである。

(相違点1-3-1)
Mについて、本件発明1では、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基である(Mが置換基を有する場合の置換基の定義は省略する。)のに対して、甲3発明では、イミダゾール環(2つの窒素原子を含有する5員環)であって、6員環の含窒素ヘテロ芳香族環でない点

ii 判断
上記iで示した相違点は、明らかに実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明とはいえない。

(d)甲4発明
i 対比
本件発明1と甲4発明とは、少なくとも「ジベンゾフラン構造」という基本構造を有する化合物である限りにおいて一致しているが、少なくとも以下の点で相違することは明らかである。

(相違点1-4-1)
Mについて、本件発明1では、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基である(Mが置換基を有する場合の置換基の定義は省略する。)のに対して、甲4発明では、ピラゾール環(2つの窒素原子を含有する5員環)であって、6員環の含窒素ヘテロ芳香族環でない点

ii 判断
上記iで示した相違点は、明らかに実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明とはいえない。

(e)甲5発明
i 対比
本件発明1と甲5発明とは、少なくとも「ジベンゾフラン構造」という基本構造を有する化合物である限りにおいて一致しているが、少なくとも以下の点で相違することは明らかである。

(相違点1-5-1)
Mについて、本件発明1では、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基である(Mが置換基を有する場合の置換基の定義は省略する。)のに対して、甲5発明では、ピラゾール環(2つの窒素原子を含有する5員環)であって、6員環の含窒素ヘテロ芳香族環でない点

ii 判断
上記iで示した相違点は、明らかに実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明とはいえない。

b 特許法第29条第2項について
(a)甲8発明A
i 対比
甲8発明Aのトリアジン基は、本件発明1のMに相当し、このトリアジン基に結合したジベンゾフラン環基は、本件発明1のジベンゾフラン環基に相当する。また、甲8発明Aのジベンゾフラン環基に結合したフェニル基で置換されたカルバゾール基は、本件発明1のL_(1)-Ar_(1)に相当する。

そうすると、本件発明1と甲8発明Aとでは、「Ar_(1)-L_(1)-ジベンゾフラン構造-M」という基本構造を有する化合物である限りにおいて一致しており、以下の点で相違する。
(相違点1-8A-1)
本件発明1では、Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である(式(1)?(5)の記載は省略する。)であるのに対して、甲8発明Aでは、フェニル基であり、無置換のカルバゾリル基で置換されていない点

ii 判断
甲第8号証には、その特許請求の範囲の請求項1に、式(II)の化合物の一般式が以下のように記載され、

その請求項16には、その請求項1に記載の式(II)で表される化合物が、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の燐光ドーパントのためのマトリックス材料として使用できる旨の記載がされている(摘記(8a))。
ここで、甲8発明Aは式(II)で表される化合物の具体例であって、摘記(8b)によれば、Ar^(3)が、1以上の基R^(1)で置換されてよい5?18個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造と記載されているから、甲8発明Aのジベンゾフラン構造に対応し、また、甲第8号証の請求項1に記載の式(II)の中心の3つの縮合環が甲8発明Aのカルバゾール構造に対応し、さらに、式(II)の右端の構造が甲8発明Aのトリアジン環に対応する構造であって、右端の構造中のZがCR^(HetAr)である場合に、R^(HetAr)が、甲8発明Aのフェニル基に対応するものではある。
そして、甲第8号証には、R^(HetAr)は、置換基R^(2)により置換されていてもよいと記載されている(摘記(8a))ものの、具体的に置換されていてもよい置換基としては複素環式芳香族有機基との記載にとどまり、本願発明1で特定される無置換のカルバゾリル基は明記されていない。
上記したとおり、甲8発明Aは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の燐光ドーパントのためのマトリックス材料として使用できる具体的に示された複数の芳香族環を有する化合物であり、この分子構造中に複数の芳香族環基を有する化合物に対して、更に芳香族環基等を結合させるなどして新たなマトリックス材料を開発することは、当業者が通常行っていることであるといえる場合があるとしても、甲第8号証には、相違点1-8A-1に係るフェニル基に無置換のカルバゾリル基を置換させることの記載がないのであるから、当業者であっても、甲8発明Aにおいて、フェニル基にさらに無置換のカルバゾリル基を導入することは容易に想到できたとはいえない。

iii 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、平成30年8月6日付け意見書(第19頁第14行?第21頁第6行)において、概略、甲第8号証に記載された化合物173において、フェニル基をカルバゾール基で置換されることがあり得るとし、格別の効果を奏することも記載されていない旨を主張する。

iv 特許異議申立人の主張の検討
上記iiで述べたように、甲第8号証には、甲8発明Aにおいて、相違点1-8A-1に係る置換基について明示されていないから、当業者であっても、相違点1-8A-1に関して動機付けもなく、本件発明1の構成とすることが容易に想到できたとはいえず、当業者が適宜なし得る化合物の変形にすぎないとはいえない。
よって、効果について検討するまでもなく、特許異議申立人の主張は採用できない。

(b)甲8発明B
i 対比
甲8発明Bのジアジン基は、本件発明1のMに相当し、ジアジン環に置換する一方のフェニル基は、本件発明1のAr_(2)の環形成炭素数6の芳香族炭化水素環基である限りにおいて相当する。また、甲8発明Bの2つのフェニル基置換のフェニル基で置換されたカルバゾリル基は、本件発明1のAr_(1)において、フェニル基で置換された環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基である限りにおいて一致する。そして、甲8発明Bのジベンゾチオフェン環は、ジベンゾ3縮合環である限りにおいて本件発明1に相当する。
そうすると、本件発明1と甲8発明Bとでは、「フェニル基で置換された環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基-L_(1)-ジベンゾ3縮合環-M-環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基」という基本構造を有する化合物である限りにおいて一致しており、以下の点で相違する。
(相違点1-8B-1)
本件発明1では、ジベンゾ3縮合環がジベンゾフラン環であるのに対して、甲8発明Bでは、ジベンゾチオフェン環である点
(相違点1-8B-2)
Ar_(2)における環形成炭素数6の芳香族炭化水素環基の置換基について、本件発明1では、無置換のカルバゾリル基としているのに対して、甲8発明Bでは、フェニル基である点
(相違点1-8B-3)
Ar_(1)におけるフェニル基で置換された環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基について、本件発明1では、無置換のフェニル基としているのに対して、甲8発明Bでは、2つのフェニル基で置換されたフェニル基であって、フェニル基が無置換でない点
(相違点1-8B-4)
Mが置換基を有する場合の置換基について、本件発明1では、無置換のフェニル基であるのに対して、甲8発明Bでは、2つのフェニル基で置換されたフェニル基であって、フェニル基が無置換でない点

ii 判断
(i)相違点1-8B-1について
甲第8号証には、その特許請求の範囲の請求項1に、式(II)の化合物の一般式が以下のように記載され、

その請求項16には、その請求項1に記載の式(II)で表される化合物が、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の燐光ドーパントのためのマトリックス材料として使用できる旨の記載がされている(摘記(8a))。
ここで、甲8発明Bは式(II)で表される化合物の具体例であって、摘記(8b)によれば、Ar^(3)が、1以上の基R^(1)で置換されてよい5?18個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造と記載されているから、甲8発明Bのジベンゾチオフェン構造に対応し、また、甲第8号証の請求項1に記載の式(II)の中心の3つの縮合環が甲8発明Bのカルバゾール構造に対応し、さらに、式(II)の右端の構造が甲8発明Bのジアジン環に対応する構造であって、右端の構造中のZがCR^(HetAr)である場合に、R^(HetAr)が、甲8発明Bのジフェニル置換基を有するフェニル基に対応するものである。
そして、相違点1-8B-1に対応する部分は、甲第8号証に記載された式(II)では、Ar^(3)であって、Ar^(3)が、1以上の基R^(1)で置換されてよい5?18個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造と記載されているところ、上記(a)で述べた甲8発明A(化合物173)では、Ar^(3)がジベンゾフラン環であるということができる。
しかしながら、甲8発明Bは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の燐光ドーパントのためのマトリックス材料として使用できる具体的な化合物であり、化合物の化学構造の一部を他の化学構造と代えた場合には、有機ELに使用する化合物としての物性が同等に維持できるとまではいえないので、甲8発明Bにおいて、化合物における一部の化学構造を特段の理由なく他の化学構造に代える動機付けがあるとはいえない。仮に、化合物の化学構造の一部を他の化学構造に代えようとしたとしても、構造を代える部位として、甲8発明Bにおけるジベンゾチオフェン環とすることについては、甲第8号証に何も記載も示唆もないから、前記した甲8発明Bの一般式である式(II)におけるAr^(3)の具体的な構造としてたまたまジベンゾフラン環を有する化合物が記載されていたとしても、この記載はあくまでAr^(3)の具体的な化学構造の一つとしてジベンゾフラン環を有する化合物が記載されているだけであって、この具体的な化合物の記載のみから、化合物の一部の化学構造であるジベンゾチオフェン環に代えてジベンゾフラン環とする動機付けがあるとまではいえず、たとえ当業者であっても容易に想到できたとはいえない。

(ii)相違点1-8B-2?相違点1-8B-4について
上記(i)で述べたように、甲8発明Bは、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の燐光ドーパントのためのマトリックス材料として使用できる具体的な化合物であり、化合物の化学構造の一部を他の化学構造に代えた場合には、有機ELに使用する化合物としての物性が同等に維持できるとまではいえないので、甲8発明Bにおいて、化合物における一部の化学構造を特段の理由なく他の化学構造に代える動機付けがあるとはいえない。仮に、化合物における一部の化学構造を他の化学構造に代えようとしたとしても、甲第8号証には、化学構造を代える部位や他の化学構造として、相違点1-8B-2?相違点1-8B-4で示した部位及び化学構造とすることについては何も動機付ける記載も示唆もないから、当業者であっても容易に想到できたとはいえない。

(c)甲10発明
i 対比
甲10発明の一つのトリアジン環は、本件発明1のMに相当し、このトリアジン環に結合したジベンゾフラン環基は、本件発明1のジベンゾフラン環基に相当する。また、甲10発明のジベンゾフラン環基に結合したもう一つの2つのフェニル基に置換されたトリアジン環は、本件発明1のL_(1)-Ar_(1)に相当する。

そうすると、本件発明1と甲10発明とでは、「Ar_(1)-L_(1)-ジベンゾフラン構造-M」という基本構造を有する化合物である限りにおいて一致しており、以下の点で相違する。
(相違点1-10-1)
本件発明1では、Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である(式(1)?(5)の記載は省略する。)であるのに対して、甲10発明では、フェニル基であり、無置換のカルバゾリル基で置換されていない点

ii 判断
甲第10号証には、有機EL素子の有機電子輸送材料または蛍光材料に有用な化合物が記載されている(摘記(10a)(10b))。そして、甲10発明は、摘記10cで記載される以下の一般式

で示される化合物の具体例であって、相違点1-10-1に対応する部分は、Ar_(1)又はAr_(2)か、それとも、Ar_(3)又はAr_(4)で示される部分である。そして、Ar_(1)?Ar_(4)がアリール基の場合には、以下のような置換基(例えば、水素、例えば1?6個の炭素原子を有するアルキル基、6個?30個の炭素原子を有するアリール基、例えば1?6個の炭素原子を有するアルコキシ基、約1?約3個の炭素原子を有するジアルキルアミノ基、ハロゲン、シアノ基等)を含む場合があると記載されている(摘記(10b))が、本願発明1で特定される無置換のカルバゾリル基は明記されていない。
上記したとおり、甲10発明は、有機EL素子の有機電子輸送材料または蛍光材料に有用な複数の芳香族環を有する化合物であり、その分子構造中に複数の芳香族環基を有する化合物に対して、更に芳香族環基等を結合させるなどして新たなマトリックス材料を開発することは、当業者が通常行っていることであるといえる場合があるとしても、甲第10号証には、相違点1-10-1に係るフェニル基に、無置換のカルバゾリル基を置換させることは記載も示唆もされていないから、当業者であっても、甲10発明において、フェニル基にさらに無置換のカルバゾリル基を導入することは容易に想到できたとはいえない。

(イ)本件発明4について
本件発明4と本件発明1とを対比すると、本件発明4は、本件発明1と比べて、さらにAr_(2)を、式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基である(式(1a)?(5a)の記載は省略する。)と限定した化合物の発明である。
a 特許法第29条第1項第3号について
本件発明4と甲1発明A?G、甲2発明A?I、甲3発明、甲4発明、甲5発明とを対比すると、少なくとも、上記(ア)aの各(a)?(e)のiで示した相違点と同じ相違点を有することは明らかであり、これらの相違点は、明らかに実質的な相違点である。
したがって、本件発明4は、甲第1?5号証に記載された発明とはいえない。

b 特許法第29条第2項について
本件発明4と甲8発明A及びB並びに甲10発明とを対比すると、少なくとも、上記(ア)bの各(a)?(c)のiで示した相違点と同じ相違点を有することは明らかであり、これらの相違点は、上記(ア)bの各(a)?(c)のiiで示した理由と同じ理由により、当業者が容易に想到できたものとはいえない。

(ウ)本件発明5について
本件発明5と本件発明1とを対比すると、本件発明5は、本件発明1と比べて、さらにAr_(2)の化学構造を、式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1)?(5)の記載は省略する。)のみに限定した化合物の発明である。
a 特許法第29条第1項第3号について
本件発明5と甲1発明D、甲2発明Bとを対比すると、少なくとも、上記(ア)aの各(a)?(b)のiで示した相違点と同じ相違点を有することは明らかであり、これらの相違点は、明らかに実質的な相違点である。
したがって、本件発明5は、甲第1及び2号証に記載された発明とはいえない。

(エ)本件発明6について
本件発明6と本件発明1とを対比すると、本件発明6は、本件発明1と比べて、さらにAr_(2)の化学構造を、式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1a)?(5a)の記載は省略する。)のみに限定した化合物の発明である。
a 特許法第29条第1項第3号について
本件発明6と甲1発明D、甲2発明Bとを対比すると、少なくとも、上記(ア)aの各(a)?(b)のiで示した相違点と同じ相違点を有することは明らかであり、これらの相違点は、明らかに実質的な相違点である。
したがって、本件発明6は、甲第1及び2号証に記載された発明とはいえない。

(オ)本件発明10について
本件発明10と本件発明1とを対比すると、本件発明10は、本件発明1と比べて、さらにAr_(1)の化学構造を、無置換か特定の置換基を有するカルバゾール環基かアザカルバゾール環基に限定した化合物の発明である。
a 特許法第29条第1項第3号について
本件発明10と甲1発明C、F及びGとを対比すると、少なくとも、上記(ア)a(a)iで示した相違点と同じ相違点を有することは明らかであり、これらの相違点は、明らかに実質的な相違点である。
したがって、本件発明10は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。

b 特許法第29条第2項について
本件発明10と甲8発明A及びB並びに甲10発明とを対比すると、少なくとも、上記(ア)bの各(a)?(c)のiで示した相違点と同じ相違点を有することは明らかであり、これらの相違点は、上記(ア)bの各(a)?(c)のiiで示した理由と同じ理由により、当業者が容易に想到できたものとはいえない。

(カ)本件発明12?16について
本件発明12?16は、それぞれ、本件発明1の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料または有機エレクトロルミネッセンス素子の発明である。
a 特許法第29条第2項について
(a)甲1発明A?G、甲3発明、甲8発明A及びB並びに甲10発明
本件発明12?16と甲1発明A?G、甲3発明、甲8発明A及びB並びに甲10発明とを対比すると、取消理由通知で通知した相違点に加えて、少なくとも、上記(ア)aの各(a)?(e)のi及び(ア)bの各(a)?(c)のiで示した相違点を有することは明らかである。
そうすると、本件発明12?16は、取消理由通知で通知した理由によっては当業者が容易に想到できたとはいえない。

(2)理由3について
本件発明1は、式(A)で表される含窒素へテロ芳香族環化合物の発明である。発明が化合物の場合には、特許請求の範囲にこの化合物を化学構造式により特定して記載することで、その化合物の発明を明確に記載する必要がある。
ここで、訂正特許請求の範囲の記載をみてみると、請求項1には、式(A)中の「Ar_(1)」には、「置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基」と記載され、また、「M」には、「置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基」と記載がされ、「置換」された場合の部分構造を含む形で特定して記載されている。
しかしながら、請求項1には、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、「無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり」と具体的に化学構造により特定されており、また、Mが置換基を有する場合の置換基は、「無置換のフェニル基であり」と具体的に化学構造により特定されている。
そうすると、本件発明1の含窒素ヘテロ芳香族環化合物は化学構造式により特定されているといえるから、不明確であるとはいえない。

請求項4?8、10及び11にも、同じく「置換」という記載があるが、上記と同じく化学構造により特定されているから、本件発明4?8、10及び11の含窒素ヘテロ芳香族環化合物が、不明確であるとはいえない。

(3)理由4について
ア 特許法第36条第6項第1号の考え方について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。

イ 特許請求の範囲の記載
上記「第3」に記載したとおりである。

ウ 発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には、本件発明の繰り返し記載を除くと、以下の事項が記載されている。
(a)「【0001】
本発明は、含窒素へテロ芳香族環化合物、それを含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、及び有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。」

(b)「【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、新規な有機EL素子材料を提供することである。
【0010】
本発明者は、アジン環(含窒素ヘテロ芳香族環)と、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環又はこれらに類似する環を結合させた構造を有する化合物を、燐光型有機EL素子に使用することにより、素子の駆動電圧を低くできることを見出し、本発明を完成させた。」

(c)「【0033】
本発明の含窒素へテロ芳香族環化合物は、有機EL素子を構成する有機薄膜層の材料として好適に使用できる。
本発明の有機EL素子用材料は、燐光型有機EL素子の材料、特に青色燐光発光素子の材料として好ましく用いることができ、燐光発光する有機EL素子の発光層や、発光層に隣接する層、例えば、正孔障壁層や電子障壁層の材料等として特に好ましい。」

(d)「【実施例】
【0065】
[含窒素へテロ芳香族環化合物]
合成例1[化合物Aの合成]
(1)中間体Aの合成
以下の工程により中間体Aを合成した。
【化17】

【0066】
アルゴン雰囲気下、カルバゾール16.7g(100mmol)、2,6-ジブロモピリジン23.7g(100mmol)、ヨウ化銅19.0g(100mmol)、trans-1,2-シクロヘキサンジアミン11.4g(100mmol)、リン酸三カリウム42.4g(200mmol)を脱水1,4-ジオキサン200mlに加えて、72時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン500mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン=4/1)で精製することにより、中間体A9.7g(収率30%)を白色固体として得た。
【0067】
(2)中間体Cの合成
以下の工程により中間体Cを合成した。
【化18】

【0068】
アルゴン雰囲気下、国際公開第2009-008100号パンフレットに記載の方法に従って合成した中間体B4.1g(10mmol)に脱水THF50mlを加え、-70℃で攪拌した。次いで、1.6Mのn-ブチルリチウムn-ヘキサン溶液6.25mlを滴下装入した。-70℃で1時間攪拌した後、ホウ酸トリイソプロピル5.6g(30mmol)を加え、-70℃で1時間攪拌した後、室温で5時間攪拌した。反応液を濃縮後、ジクロロメタン400mlと1N塩酸50mlを加えて、氷水浴下で、1時間攪拌した。有機相を分取して、無水硫酸マグネシウムで乾燥してから、濾液を濃縮した。得られた固体をヘキサン-トルエンの混合溶媒で懸濁洗浄することにより、中間体C2.3g(収率60%)を白色固体として得た。
【0069】
(3)化合物Aの合成
以下の工程により化合物Aを合成した。
【化19】

【0070】
アルゴン雰囲気下、中間体A3.2g(10mmol)、中間体C3.8g(10mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液10ml、1,2-ジメトキシエタン(DME)10ml、トルエン30mlを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.34g(0.30mmol)を加えて、8時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン500mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=3/1)で精製することにより、化合物A4.3g(収率75%)を白色固体として得た。
FD-MS分析の結果、分子量575に対してm/e=575であった。
【0071】
合成例2[化合物Bの合成]
(1)中間体Dの合成
以下の工程により中間体Dを合成した。
【化20】

【0072】
アルゴン雰囲気下、カルバゾール16.7g(100mmol)、3,5-ジブロモピリジン23.7g(100mmol)、ヨウ化銅19.0g(100mmol)、trans-1,2-シクロヘキサンジアミン11.4g(100mmol)、リン酸三カリウム42.4g(200mmol)を脱水1,4-ジオキサン200mlに加えて、96時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン500mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン=4/1)で精製することにより、中間体D6.8g(収率21%)を白色固体として得た。
【0073】
(2)化合物Bの合成
以下の工程により化合物Bを合成した。
【化21】

【0074】
アルゴン雰囲気下、中間体D3.2g(10mmol)、実施例1(2)で得た中間体C3.8g(10mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液10ml、1,2-ジメトキシエタン(DME)10ml、トルエン30mlを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.34g(0.30mmol)を加えて、24時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン500mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=2/1)で精製することにより、化合物B3.2g(収率55%)を白色固体として得た。
FD-MS分析の結果、分子量575に対してm/e=575であった。
また、^(1)H-NMRの測定結果を以下に示す。
・^(1)H-NMR(400MHz、CDCl_(3))δ7.28-7.35(4H、m)、7.37-7.46(8H、m)、7.68(1H、dd、J=2.0Hz、8.4Hz)、7.78-7.84(3H、m)8.15-8.18(6H、m)、8.21-8.22(1H、m)、8.89(1H、d、J=2.0Hz)、9.03(1H、d、J=2.0Hz)
【0075】
合成例3[化合物Cの合成]
(1)中間体Eの合成
以下の工程により中間体Eを合成した。
【化22】

【0076】
アルゴン雰囲気下、ジベンゾフラン-2-ボロン酸21.2g(100mmol)、3,5-ジブロモピリジン23.7g(100mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液100ml、1,2-ジメトキシエタン(DME)100ml、トルエン200mlを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム3.5g(3mmol)を加えて、48時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン1000mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=2/1)で精製することにより、中間体E13.9g(収率43%)を白色固体として得た。
【0077】
(2)化合物Cの合成
以下の工程により化合物Cを合成した。
【化23】

【0078】
アルゴン雰囲気下、中間体E3.2g(10mmol)、中間体C3.8g(10mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液10ml、1,2-ジメトキシエタン(DME)10ml、トルエン30mlを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.34g(0.30mmol)を加えて、48時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン500mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=3/2)で精製することにより、化合物C2.6g(収率45%)を白色固体として得た。
FD-MS分析の結果、分子量576に対してm/e=576であった。
【0079】
合成例4[化合物Dの合成]
(1)中間体Fの合成
【化24】

アルゴン雰囲気下、3-(N-カルバゾリル)フェニルボロン酸28.7g(100mmol)、3,5-ジブロモピリジン23.7g(100mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液100ml、1,2-ジメトキシエタン(DME)100ml、トルエン200mlを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム3.5g(3mmol)を加えて、36時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン1000mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製することにより、中間体F20.8g(収率52%)を白色固体として得た。
【0080】
(2)化合物Dの合成
【化25】

アルゴン雰囲気下、中間体F3.9g(10mmol)、中間体C3.8g(10mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液10ml、1,2-ジメトキシエタン(DME)10ml、トルエン30mlを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.34g(0.30mmol)を加えて、24時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン500mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製することにより、化合物D4.6g(収率71%)を白色固体として得た。
FD-MS分析の結果、分子量651に対してm/e=651であった。
また、^(1)H-NMRの測定結果を以下に示す。
・^(1)H-NMR(400MHz、CDCl_(3))δ7.28-7.32(4H、m)、7.36-7.47(8H、m)、7.62-7.66(2H、m)、7.71-7.82(5H、m)、7.85-7.87(1H、m)、8.12-8.17(7H、m)、8.92(2H、dd、J=2.0Hz、8.0Hz)
【0081】
合成例5[化合物Eの合成]
(1)中間体Gの合成
【化26】

アルゴン雰囲気下、2,4-ジクロロ-6-フェニル-ピリミジン(J.Org.Chem.7125ページ、2001年に記載の方法に従って合成した。)9.0g(40mmol)、カルバゾール6.7g(40mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.37g(0.4mmol)、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩0.46g(1.6mmol)、t-ブトキシナトリウム5.4g(56mmol)、無水トルエン100mlを順次加えて12時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=3/2)で精製することにより、中間体G5.0g(収率35%)を白色固体として得た。
【0082】
(2)化合物Eの合成
【化27】

アルゴン雰囲気下、中間体G3.6g(10mmol)、中間体C3.8g(10mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液10ml、1,2-ジメトキシエタン(DME)10ml、トルエン30mlを加え、次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.34g(0.30mmol)を加えて、24時間加熱還流攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して得られた残渣に、トルエン500mlを加えて120℃に加熱し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン=2/1)で精製し、さらにトルエン溶媒で再結晶することにより、化合物E1.6g(収率25%)を白色固体として得た。
FD-MS分析の結果、分子量652に対してm/e=652であった。
【0083】
[有機EL素子]
実施例1
25mm×75mm×1.1mmのITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)に、イソプロピルアルコール中での5分間の超音波洗浄を施し、さらに、30分間のUV(Ultraviolet)オゾン洗浄を施した。
このようにして洗浄した透明電極付きガラス基板を、真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず、ガラス基板の透明電極ラインが形成されている側の面上に、透明電極を覆うようにして、下記化合物Iを厚さ20nmで蒸着し、正孔注入層を得た。次いで、この膜上に、下記化合物IIを厚さ60nmで蒸着し、正孔輸送層を得た。
【0084】
この正孔輸送層上に、燐光ホスト材料として合成例1で得た化合物Aと燐光発光材料である下記化合物D-1を厚さ50nmで共蒸着し、燐光発光層を得た。燐光発光層内における化合物Aの濃度は80質量%、化合物D-1の濃度は20質量%であった。
【0085】
続いて、この燐光発光層上に、下記化合物H-1を厚さ10nmで蒸着し、電子輸送層を得た。さらに、下記化合物IIIを厚さ10nmで蒸着し、電子輸送層を得た後、厚さ1nmのLiF、厚さ80nmの金属Alを順次積層し、陰極を得た。尚、電子注入性電極であるLiFについては、1Å/minの速度で形成した。
【0086】
【化28】

【0087】
[有機EL素子の発光性能評価]
作製した有機EL素子を直流電流駆動により発光させ、輝度、電流密度を測定し、電流密度1mA/cm^(2)における電圧及び発光効率(外部量子効率)を求めた。さらに初期輝度3,000cd/m^(2)における輝度70%寿命(輝度が70%まで低下する時間)を求めた。これら発光性能の評価結果を表1に示す。
【0088】
実施例2
電子輸送層として、化合物H-1の代わりに化合物Aを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製、評価した。結果を表1に示す。
【0089】
実施例3
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに合成例2で得た化合物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製、評価した。結果を表1に示す。
【0090】
実施例4
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物Bを用い、電子輸送層に化合物H-1の代わりに化合物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製、評価した。結果を表1に示す。
【0091】
実施例5
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物H-1を用い、電子輸送層に化合物H-1の代わりに化合物Aを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製、評価した。結果を表1に示す。
【0092】
実施例6
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物H-1を用い、電子輸送層に化合物H-1の代わりに化合物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製、評価した。結果を表1に示す。
【0093】
実施例7
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物H-1を用い、電子輸送層に化合物H-1の代わりに化合物Dを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製、評価した。結果を表1に示す。
【0094】
比較例1
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに上記化合物H-2を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製、評価した。結果を表1に示す。
【0095】
比較例2
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに上記化合物H-3を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製、評価した。しかし、燐光発光材料である化合物D-1からの青色発光波長が観測されず、比較すべき電圧、外部量子効率が測定できなかった。比較例2の素子では、ドーパントとのエキサイプレックスを生成していることが考えられる。
【0096】
比較例3
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに上記化合物H-4を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製、評価した。しかし、燐光発光材料である化合物D-1からの青色発光波長が観測されず、比較すべき電圧、外部量子効率が測定できなかった。比較例3の素子では、エキサイプレックスが生成していることが考えられる。
【0097】
比較例4
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに上記化合物H-5を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製、評価した。結果を表1に示す。
【0098】
比較例5
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物H-1を用い、電子輸送層に化合物H-1の代わりに化合物H-4を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製、評価した。結果を表1に示す。
【0099】
比較例6
燐光ホスト材料として化合物Aの代わりに化合物H-1を用い、電子輸送層に化合物H-1の代わりに化合物H-5を用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製、評価した。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
本発明化合物を発光層に用いた実施例1?4の素子は、発光層への電子注入性が向上することにより、発光層内のキャリアバランスが良くなったため、アジン環を有さない化合物H-2を用いた比較例1の素子より大幅に低電圧化・長寿命化し、また、対称形のためHOMO-LUMOの偏りが少なくキャリア注入性が低い化合物H-5を用いた比較例4の素子に比べ、大幅に長寿命化した。化合物H-3を用いた比較例2の素子及び化合物H-4を用いた比較例3の素子は、エキサイプレックスを形成し、アジン環への置換基が青色燐光発光には適切ではないホスト材料であることが分かった。
本発明化合物を電子輸送層に用いた実施例5?7の素子は、電子注入性・電子輸送性が向上したため、低電圧化・長寿命化した。比較例5の素子は、比較例3でエキサイプレックスを形成していると考えられる化合物H-4を用いているため、界面で三重項エネルギーが閉じ込めきれず、効率が大きく低下した。比較例6の素子は、対称形のためHOMO-LUMOの偏りが少なくキャリア注入性が低い化合物H-5を用いているため、キャリアバランスが悪化し、寿命が短くなった。
アジン環とジベンゾフラン環を結合させることによりLUMOを広げた本発明の化合物は、優れた電子注入性・輸送性を保ちつつ、エキサイプレックスの生成を抑制して目的の青色燐光発光を得るために有用であることが分かる。」

エ 本件発明の課題について
発明の詳細な説明の段落【0001】、【0009】、【0010】、【0033】及び明細書全体の記載からみて、本件発明1、4?8、10及び11の課題は、有機エレクトロルミネッセンスに用いる材料として有用で新規な含窒素へテロ芳香族環化合物を提供すること、本件発明12の課題は、本件発明1の含窒素へテロ芳香族環化合物を含み、素子の駆動電圧を下げ、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を提供すること、本件発明13?16の課題は、本件発明1の含窒素へテロ芳香族環化合物を含み、素子の駆動電圧を下げ、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することであると認める。

オ 判断
(ア)本件発明1について
a 判断
本件発明1は、式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物の発明であるところ、発明の詳細な説明には、この発明に含まれる具体的な化合物の化学構造式が多数例示されている。また、段落【0010】には、「アジン環(含窒素ヘテロ芳香族環)と、ジベンゾフラン環・・・を結合させた構造を有する化合物を、燐光型有機EL素子に使用することにより、素子の駆動電圧を低くできることを見出し」たことが記載され、同【0065】以降の合成例では、本件発明1の具体的な化合物である化合物A、B、D及びEが製造され、同【0083】以降では、有機エレクトロルミネッセンスとして、化合物A、B及びDが用いられた実施例1?7は、これらの化合物が用いられなかった比較例1?6と対比して、電流密度1mA/cm^(3)における電圧が低く、外部量子効率(発光効率)が高く、初期輝度3,000cd/m^(2)における輝度70%寿命(輝度が70%まで低下する時間)が長いことが具体的なデータとともに示されている。そして、同【0101】には、「本発明化合物を発光層に用いた実施例1?4の素子は、発光層への電子注入性が向上することにより、発光層内のキャリアバランスが良くなったため、アジン環を有さない化合物H-2を用いた比較例1の素子より大幅に低電圧化・長寿命化し、また、対称形のためHOMO-LUMOの偏りが少なくキャリア注入性が低い化合物H-5を用いた比較例4の素子に比べ、大幅に長寿命化した。化合物H-3を用いた比較例2の素子及び化合物H-4を用いた比較例3の素子は、エキサイプレックスを形成し、アジン環への置換基が青色燐光発光には適切ではないホスト材料であることが分かった。
本発明化合物を電子輸送層に用いた実施例5?7の素子は、電子注入性・電子輸送性が向上したため、低電圧化・長寿命化した。比較例5の素子は、比較例3でエキサイプレックスを形成していると考えられる化合物H-4を用いているため、界面で三重項エネルギーが閉じ込めきれず、効率が大きく低下した。比較例6の素子は、対称形のためHOMO-LUMOの偏りが少なくキャリア注入性が低い化合物H-5を用いているため、キャリアバランスが悪化し、寿命が短くなった。
アジン環とジベンゾフラン環を結合させることによりLUMOを広げた本発明の化合物は、優れた電子注入性・輸送性を保ちつつ、エキサイプレックスの生成を抑制して目的の青色燐光発光を得るために有用であることが分かる。」ことが記載されている。

このように、本件発明の詳細な説明の化合物A、B及びDが用いられた実施例1?7をみると、新規で電圧が低く長寿命化した有機EL材料に有用であることがデータと共に記載されており、本件発明1の課題を解決できたことが記載されている。
また、発明の詳細な説明には、含窒素ヘテロ芳香族環(本件発明1の式(A)で示される化合物中の「M」で示される構造)とジベンゾフラン環を結合させた構造を有する化合物は、燐光型有機EL素子に使用すると素子の駆動電圧を低くできることが記載されており、このことは、本件発明1に含まれる化合物A、B及びDが用いられた実施例1?7が、ジベンゾフラン環に含窒素ヘテロ芳香族環が結合していない化合物である化合物H-1及びH-2を用いた比較例よりも低電圧化、長寿命化していることからも理解できる。
さらに、含窒素ヘテロ芳香族環(本件発明1の式(A)で示される化合物中の「M」で示される構造)とジベンゾフラン環に加えて、Ar_(2)の構造を有する化合物A、B及びDを用いた実施例が、Ar_(2)の構造を有さない化合物H-4を用いた比較例3及び比較例5と比較して、青色燐光の発光に適切であること及び外部量子効率が向上することが示されていることからみても、当業者であれば、本件発明1の式(A)で示される化合物のうちジベンゾフラン環-M-Ar_(2)で示される構造を有することにより、本件発明1の課題を解決できると認識できるといえる。
そして、このことは、平成30年5月28日付けの特許権者の意見書(第17頁第17?22行)「具体的には、上記骨格を採用した上で、さらにアジン環側に特定の置換基(Ar_(2))を適用した[Yを含む縮合環]-[M]-[Ar_(2)]構造により、上記効果を確保したものです。実施例5?7(化合物A、B、D)と比較例5(化合物H-4)の比較によりAr_(2)部位の寄与が大きいことが分かります(段落0101)。」の主張と合致する。
以上のとおり、本件発明1の含窒素ヘテロ芳香族環化合物は、化合物中に「ジベンゾフラン環-M-Ar_(2)で示される構造」を有しており、当業者が本件発明の詳細な説明の記載をみれば、電圧が低く長寿命化でき有機EL材料に有用であると認識できるといえる

よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明ではないとすることはできない。

(イ)本件特許4?8、10及び11について
本件発明4?8、10及び11は、本件発明1よりも化学構造を限定し、かつ、具体例を含む化合物の発明であるから、上記(ア)で示した理由と同じ理由により、本件特許4?8、10及び11は、発明の詳細な説明に記載された発明ではないとすることはできない。

(ウ)本件特許12?16について
本件発明12の課題は、本件発明1の含窒素へテロ芳香族環化合物を含み、素子の駆動電圧を下げ、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を提供すること、本件発明13?16の課題は、本件発明1の含窒素へテロ芳香族環化合物を含み、素子の駆動電圧を下げ、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することであると認められるところ、上記(ア)で述べたように、本件発明1の含窒素ヘテロ芳香族環化合物は、電圧が低く長寿命化でき有機EL材料に有用であると当業者が認識できるといえるから、本件発明1の含窒素へテロ芳香族環化合物を含んだ有機エレクトロルミネッセンス素子用材料である本件発明12、及び本件発明1の含窒素へテロ芳香族環化合物を含んだ有機エレクトロルミネッセンス素子である本件発明13?16も、当業者であればこれらの発明の課題を解決できると認識できるということができる。
よって、本件発明12?16は、発明の詳細な説明に記載された発明ではないとすることはできない。

(エ)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、平成30年8月6日付け意見書(第21頁第7行?第23頁第20行)において、概略、「一般に『化学物質の発明の有用性をその化学構造から予測することは困難であり、試験してみなければ判明しないことは当業者の広く認識しているところである。したがって、化学物質の発明の有用性を知るには、実際に試験を行い、その試験結果から、当業者にその有用性が認識できることを必要とする。』とされている。」とし、訂正後の特許請求の範囲の記載により特定される化合物は、未だ極めて広範であり、実施例で開示した化合物と化学構造の異なる化合物の全てが、実施例と同等の性質を有すると当業者が類推して認識できるとはいえない、という旨の主張をしている(以下「主張a」という。)。
また、訂正後の特許請求の範囲の記載により特定される化合物は、極めて低い三重項エネルギーを有する芳香族炭化水素基で置換された化合物または電子欠損ヘテロ芳香族基Ar_(2)で置換された化合物を含むなど、電子特性に大きな差異が生じる化合物を含むから、試験結果を参酌することなく電子特性を類推できない旨を主張する(以下「主張b」という。)。

(オ)特許異議申立人の主張の検討
a 主張aについて
本件発明1の式(A)で示される化合物が、全般にわたり本件発明の詳細な説明に記載された実施例と同等の作用効果を奏するか否かはさておき、有機ELの技術分野は、一定の範囲で共通の化学構造式を有していれば、一定の作用効果を奏することが予測される技術分野であるといえ、また、上記(ア)aで述べたように当業者であれば本件発明1の化合物は、一定程度電圧が低く長寿命化でき有機EL材料として有用であると認識できるといえる。
これに対して、特許異議申立人は、化合物の有用性に関する一般論としての認識を示しただけであり、そして、特許異議申立人のこの認識を裏付ける具体的なデータや技術常識を挙げているわけでもない。
よって、特許異議申立人の主張aを採用することはできない。

b 主張bについて
特許異議申立人の主張は、置換基の種類により、化合物の電子状態が異なることを一般論として述べているだけで、本件発明1の式(A)で示される化合物における電子状態の違いを具体的に示しているわけはない。また、本件発明1の式(A)で示される化合物における電子状態に差異が生じることにより、本件発明1の課題が解決できると認識できないとする具体的な理由は何も示していない。
よって、特許異議申立人の主張bも採用することはできない。

(4)理由5について
ア 特許法第36条第4項第1号について
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。

イ 特許請求の範囲の記載について
上記「第3」に記載したとおりである。

ウ 発明の詳細な説明の記載について
本件の発明の詳細な説明には、上記「(3)ウ」で示した事項が記載されている。

エ 判断
(ア)本件発明1、4?8、10及び11について
本件発明1、4?8、10及び11は、その特許請求の範囲の請求項1、4?8、10及び11に記載された事項により特定される含窒素ヘテロ芳香族環化合物の発明であるといえるところ、化合物は一般にその物の構造や名称からその物をどのように作るのかを理解することが比較的困難な技術分野に属する発明であることから、当業者が本件発明1、4?8、10及び11を実施することができるように発明の詳細な説明を記載するためには、出願時の技術常識から、当業者が本件発明1、4?8、10及び11で特定して記載される化合物を製造することができることを記載する必要があるといえる。

そこで、発明の詳細な説明の記載をみてみると、この含窒素ヘテロ芳香族環化合物の製造方法について、一般的な記載はされていないが、具体的に、実施例において化合物A、B、D及びEを製造する方法が記載されている。

ここで、本件発明1、4?8、10及び11は、上記(2)で述べたように、含窒素ヘテロ芳香族環化合物が明確に特定されており、当業者であれば、本願の発明の詳細な説明に記載された実施例の製造方法に準じて、同じ官能基を有する原料材料を入手でき、同じ反応条件によりカップリング反応をさせることにより、本件発明1、4?8、10及び11に含まれる含窒素ヘテロ芳香族環化合物を製造することができるということがいえる。
一方、特許異議申立人からは、この判断に反する技術常識等は何も挙げられていない。

よって、本件の発明の詳細な説明には、本件発明1、4?8、10及び11について、当業者が容易に実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであるといえる。

(イ)本件発明12?16について
本件発明の詳細な説明には、本件発明1の含窒素ヘテロ芳香族環化合物について当業者が容易に実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであるのであるから、本件発明12?16についても、当業者が容易に実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであるといえる。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立人が申し立てた取消理由について
(1)採用した証拠(甲第1?5号証、甲第8号証、甲第10号証)に関する特許異議申立人が申し立てた理由について
ア 本件発明1に対する進歩性について
(ア)甲第1号証について
a 対比
本件発明1と甲1発明A?Gとを対比すると、上記2(1)ウ(ア)a(a)で述べたように、少なくとも「ジベンゾフラン構造-M」という基本構造を有する化合物である限りにおいて一致しているが、以下の点で相違することは明らかである。
そこで、まず、甲1発明Aとの相違点を以下に再掲し、相違点に関する判断を示す。

(a)甲1発明A
i 相違点
(相違点1-1A-1)
Mが置換基を有する場合の置換基について、本件発明1では、無置換のフェニル基であるのに対して、甲1発明Aでは、カルバゾリル基置換のフェニル基で置換されたフェニル基であって、フェニル基が無置換でない点
(相違点1-1A-2)
本件発明1では、Ar_(1)が、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族基である(Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基の定義は省略する。)のに対して、甲1発明Aでは、フェニル基であって、ヘテロ芳香族基でない点

ii 判断
(i)相違点1-1A-1について
甲第1号証の請求項1には、発光層と下記一般式(5)で表される部分構造を1分子内に2つ以上有する有機化合物を少なくとも1つ含有する有機層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子

〔式中、Czは、カルバゾリル基を表す。Z_(0)は、任意の連結基を表す。Cz、およびZ_(0)は、置換基を有していてもよい。
一般式(5)で表される部分構造を1分子内に複数有する有機化合物において、1分子中に存在する複数個のCzは、同一であっても異なっていてもよい。
また、1分子中に存在する複数個のZ_(0)は、同一であっても異なっていてもよい。
Qは、下記一般式(6)のGにつながる直接結合を表す。〕
【化3】

〔式中、環B^(1)は、ヘテロ原子としてN原子をn個有する6員環の芳香族複素環である。
nは、1?3の整数である。
Gは、Qにつながる場合は、Qにつながる直接結合または任意の連結基を表す。
またGは、mが2以上でありQにつながらないGの場合は、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
Gは、環B^(1)のN原子から見てオルト位あるいはパラ位にあるC原子に結合する。
mは、3?4の整数である。
1分子中に存在する複数個のGは、同一であっても異なっていてもよい。
環B^(1)は、G以外にも置換基を有していてもよい。
また、環B^(1)中のN原子同士を除き、1分子中に存在するN原子同士は共役しない。また、1分子中に存在するピリジン環は1つのみである。〕」が記載され(摘記(1a))、従来から、カルバゾール環を分子内に複数有する化合物は良好なホスト化合物として知られていることが記載され(摘記(1b))、この一般式(5)の具体例として、上記甲1発明Aが記載されている(摘記(1d))。

このように、甲1発明Aは、有機ELに使用される良好なホスト材料である一般式で示される化合物から、具体的に特定された化合物の発明であって、この化合物自体で良好なホスト材料として使用されるものである。そして、化合物の部分構造の一部を他の部分構造に変更してしまうと、化合物の物性等が維持されず変わってしまうことが技術常識であるといえるから、そもそも、この化合物自体の一部の化学構造を他の化学構造に代えて別な化合物を調製する動機付けがあるとはいえない。
仮に、甲1発明Aにおいて、相違点1-1A-1に係る化学構造に着目して、この化学構造を他の化学構造に代えようとしたとしても、相違点1-1A-1に係る置換基について、甲第1号証には、フェニル基が無置換であることは明示されていないから、当業者であっても、相違点1-1A-1に関して本件発明1の構成とすることが容易に想到できたとはいえない。

(ii)相違点1-1A-2について
相違点1-1A-2においても、上記(i)で述べたとおり、そもそも、この化合物自体の一部の化学構造を他の化学構造に代えて別な化合物を調製する動機付けがあるとはいえない。
仮に、甲1発明Aにおいて、相違点1-1A-2に係る化学構造に着目しても、甲第1号証には、Ar_(1)が、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族基である(Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は省略する。)であることは明示されていないから、当業者であっても、相違点1-1A-2に関してAr_(1)を変更して本件発明1の構成とすることが容易に想到できたとはいえない。

(b)甲1発明B?G
i 相違点
本件発明1と甲1発明B?Gとの相違点は、上記2(1)ウ(ア)a(a)iで示したとおり、相違点1-1B-1?相違点1-1G-3である(これらの相違点は、再掲せず省略する。)。

ii 判断
上記(a)ii(i)で述べたとおり、甲第1号証の請求項1には、有機ELに使用される良好なホスト材料を一般式で示した化合物が記載され、甲1発明B?Gは、この化合物として具体的に特定した化合物の発明であって、この化合物自体で良好なホスト材料として使用されるものである。そして、化合物の部分構造の一部を他の部分構造に変更してしまうと、化合物の物性等が維持されず変わってしまうことが技術常識であるといえるから、そもそも、この化合物自体の一部の化学構造を他の化学構造に代えて別な化合物を調製する動機付けがあるとはいえない。
仮に、甲1発明B?Gにおいて、相違点1-1B-1?相違点1-1G-3に係る化学構造に着目して、この化学構造を他の化学構造に代えようとしたとしても、相違点1-1B-1?相違点1-1G-3に係る置換基について、甲第1号証には、それぞれ明示されていないから、当業者であっても、相違点1-1B-1?相違点1-1G-3に関して本件発明1の構成とすることが容易に想到できたとはいえない。

(c)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、平成30年8月6日付け意見書(第15頁第8行?第19頁第13行)において、概略、甲第1号証に記載された化合物は、有機EL素子においてホスト材料として使用される化合物である。本件発明1と対比すると置換基が相違するだけであり、この置換基を代えることは当業者が適宜なし得る化合物の変形にすぎない。そして、格別の効果を奏することも記載されていない旨を主張する。

(d)特許異議申立人の主張の検討
上記(a)ii及び(b)iiで述べたように、甲1発明A?Gにおいて、これらの化合物自体の一部の化学構造を他の化学構造に代えて別な化合物を調製する動機付けがあるとはいえないし、また、甲第1号証には、相違点1-1A-1?相違点1-1G-3に係る置換基についてそれぞれ明示されていないから、当業者であっても、相違点1-1A-1?相違点1-1G-3に関して本件発明1の置換基とすることが容易に想到できたとはいえず、当業者が適宜なし得る化合物の変形にすぎないとは到底いえない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(イ)甲第2号証について
a 対比
本件発明1と甲2発明A?Iとを対比すると、上記2(1)ウ(ア)a(b)で述べたように、少なくとも「ジベンゾフラン構造」という基本構造を有する化合物である限りにおいて一致しているが、少なくとも以下の点で相違することは明らかである。

(相違点1-2-1)
Mについて、本件発明1では、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基である(Mが置換基を有する場合の置換基の定義は省略する。)のに対して、甲2発明A?Iでは、イミダゾール環(2つの窒素原子を含有する5員環)であって、6員環の含窒素ヘテロ芳香族環でない点

b 判断
甲第2号証の請求項1には、下記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(2)で表される化合物とを反応させることを特徴とする下記一般式(3)で表されるイミダゾール化合物の合成方法。
【化1】

(式中の符号の定義は省略する。)が記載され(摘記(2a))、この一般式(3)で表される化合物は、有機金属錯体の前駆体である旨が記載されている(摘記(2c))。そして、この一般式(3)の具体例として、甲2発明A?Iの化合物が記載されている。

甲第2号証には、有機ELに使用される良好な発光材料の前駆体として上記で示した化合物が記載され(摘記(2c)(2d))、甲2発明A?Iは、この化合物として具体的に特定した化合物の発明である。そして、上記(ア)a(a)ii(i)で述べたように、化合物の部分構造の一部を他の部分構造に変更してしまうと、化合物の物性等が維持されず変わってしまうことが技術常識であるといえるから、そもそも、この化合物自体の一部の化学構造を他の化学構造に代えて別な化合物を調製する動機付けがあるとはいえない。
仮に、甲2発明A?Iにおいて、相違点1-2-1に係る化学構造に着目して、イミダゾール環を6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基に代えようとしたとしても、甲第2号証には、イミダゾール環を含有する化合物が記載されているだけであって、6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基を有する化合物は何も記載も示唆もされていないから、当業者であっても、相違点1-2-1に関して本件発明1の構成とすることが容易に想到できたとはいえない。

(ウ)甲第3号証について
a 対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、上記2(1)ウ(ア)a(c)で述べたように、少なくとも「ジベンゾフラン構造」という基本構造を有する化合物である限りにおいて一致しているが、少なくとも以下の点で相違することは明らかである。

(相違点1-3-1)
Mについて、本件発明1では、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基である(Mが置換基を有する場合の置換基の定義は省略する。)のに対して、甲3発明では、イミダゾール環(2つの窒素原子を含有する5員環)であって、6員環の含窒素ヘテロ芳香族環でない点

b 判断
甲第3号証の請求項2には、「発光ホストまたは正孔阻止材料が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子材料。
【化2】

(式中の符号の定義は省略する。)が記載され(摘記(3a))、この一般式(2)で表される化合物の具体例として、甲3発明の化合物が記載されている(摘記(3b))。

甲第3号証には、有機ELに使用される良好なホスト材料として上記で示した化合物が記載され、甲3発明は、この化合物として具体的に特定した化合物の発明である。そして、上記(ア)a(a)ii(i)で述べたように、化合物の部分構造の一部を他の部分構造に変更してしまうと、化合物の物性等が維持されず変わってしまうことが技術常識であるといえるから、そもそも、この化合物自体の一部の化学構造を他の化学構造に代えて別な化合物を調製する動機付けがあるとはいえない。
仮に、甲3発明において、相違点1-3-1に係る化学構造に着目して、イミダゾール環を6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基に代えようとしたとしても、甲第3号証には、イミダゾール環を含有する化合物が記載されているだけであって、6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基を有する化合物は何も記載も示唆もされていないから、当業者であっても、相違点1-3-1に関して本件発明1の構成とすることが容易に想到できたとはいえない。

イ 本件発明4?8、10及び11に対する進歩性について
本件発明4?8、10及び11と本件発明1とを対比すると、本件発明4?8、10及び11は、本件発明1と比べて、さらに化学構造を限定した化合物の発明である。
そうすると、少なくとも、上記ア(ア)?ア(ウ)で述べた相違点があり、同じ理由により、甲1発明A?甲3発明から当業者であっても容易に想到できたとはいえない。

ウ 本件発明12?16に対する新規性及び進歩性について
本件発明12?16は、それぞれ、本件発明1の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料または有機エレクトロルミネッセンス素子の発明である。
そうすると、少なくとも、上記(ア)?(ウ)で述べた相違点があり、そして、同じ理由により、甲1発明A?甲3発明から当業者であっても容易に想到できたとはいえない。

(2)採用しなかった証拠について
ア 甲第1号証に記載された化合物HA-10、HC-7、HC-8、HC-15及びHC-19について
甲第1号証の第128、140、141、144及び146頁には、化合物HA-10、HC-7、HC-8、HC-15及びHC-19が記載されている(特許異議申立書第72頁、76?79頁参照。)。
そこで、本件発明1とこれらの化合物とを対比すると、本件発明1では、「-Ar_(2)」が無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基(式(1)?(5)の記載は省略する。)であるのに対して、上記化合物は、ジベンゾフラン環でありその化学構造が相違し、この相違点は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、新規性を有する。
また、この相違点は、上記(1)ア(ア)a(a)iiで述べた理由と同じ理由で、当業者が容易に想到できたとする動機付けはない。

イ 甲第6号証について
甲第6号証の第25頁には、化合物27及び化合物28が記載されている(特許異議申立書第96頁参照。)。
本件発明1とこれらの化合物とを対比すると、本件発明1では、特許請求の範囲で記載される「-Ar_(2)」を有するが、上記化合物では、この構造に対応する部分がジベンゾフラン環又はジベンゾチオフェン環である点で相違する。
そこで、この相違点について検討するが、甲第6号証には、この相違点に関してジベンゾフラン環又はジベンゾチオフェン環を本件発明1の「Ar_(2)」とすることを動機付ける記載はないから、当業者であっても、容易に想到できたとはいえない。
したがって、本件発明4?8、10?16も、当業者が容易に想到できたとはいえない。

ウ 甲第7号証について
甲第7号証の第60頁中段右には、特許異議申立書第99頁に記載された化合物が記載されている。
本件発明1とこの化合物とを対比すると、本件発明1では、特許請求の範囲で記載される「-M-Ar_(2)」を有するが、上記化合物では、この構造に対応する部分がフェニル基を有するイミダゾール環である点で相違する。
そこで、この相違点について検討するが、甲第7号証には、この相違点に関してフェニル基を有するイミダゾール環を本件発明1の「-M-Ar_(2)」とすることを動機付ける記載はないから、当業者であっても、容易に想到できたとはいえない。
したがって、本件発明4?8、10?16も、当業者が容易に想到できたとはいえない。

エ 甲第9号証について
甲第9号証の68?70、72頁には、化合物HB-38、HB-46、HB-54及びHB-62が記載されている(特許異議申立書第102頁参照。)。
本件発明1とこれらの化合物とを対比すると、本件発明1では、特許請求の範囲で記載される「-Ar_(2)」を有するが、上記化合物では、この構造に対応する部分がフェニル基である点で相違する。
そこで、この相違点について検討するが、甲第9号証には、この相違点に関してフェニル基を本件発明1の「-Ar_(2)」とすることを動機付ける記載はないから、当業者であっても、容易に想到できたとはいえない。
したがって、本件発明4?8、10?16も、当業者が容易に想到できたとはいえない。

第7 むすび
したがって、当審が通知した取消理由及び特許異議申立の理由によっては、本件発明1、4?8、10?16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、4?8、10?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2、3及び9に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項2、3及び9に対して特許異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物。
【化1】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化2】

(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
下記式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物。
【化30】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化5】

(式(1a)?(5a)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項5】
下記式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物。
【化31】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化32】

(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項6】
下記式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物。
【化33】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合しMが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、下記式(1a)?(5a)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化34】

(式(1a)?(5a)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項7】
下記式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物。
【化35】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、下記式(1)で表される含窒素多環基である。
【化36】

(式(1)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’は、前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項8】
下記式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物。
【化37】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、水素原子、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5?18のヘテロ芳香族環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環のA窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、下記式(1a)で表される含窒素多環基である。
【化38】

(式(1a)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
R’は、前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項9】(削除)
【請求項10】
下記式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物。
【化39】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、置換もしくは無置換のカルバゾール環基、又は置換もしくは無置換のアザカルバゾール環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化40】

(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項11】
下記式(A)で表される含窒素ヘテロ芳香族環化合物。
【化41】

[式(A)中、A_(1)?A_(3)及びA_(6)?A_(8)は、それぞれCR^(1)であり、
R^(1)は、それぞれ水素原子、無置換の炭素数1?20のアルキル基、又は無置換の環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基であり、
Yは、酸素原子であり、
Ar_(1)は、9位でL_(1)と結合する置換もしくは無置換のカルバゾール環基であり、Ar_(1)が置換基を有する場合の置換基は、無置換のメチル基、無置換のエチル基、無置換のプロピル基、無置換のイソプロピル基、無置換のn-ブチル基、無置換のsec-ブチル基、無置換のtert-ブチル基、無置換のフェニル基、無置換のビフェニルイル基、無置換のターフェニル基、無置換のトリル基、無置換のキシリル基、又は無置換のナフチル基であり、
L_(1)は、単結合であって、A_(1)?A_(3)のいずれか1つと結合し、
Mは、置換もしくは無置換の6員環の単環の含窒素ヘテロ芳香族環基であって、A_(6)?A_(8)のいずれか1つと結合し、Mが置換基を有する場合の置換基は、無置換のフェニル基であり、
Ar_(2)は、無置換のカルバゾリル基で置換された環形成炭素数6?18の芳香族炭化水素環基、又は下記式(1)?(5)のいずれかで表される含窒素多環基である。
【化42】

(式(1)?(5)中、X_(1)?X_(8)は、それぞれ、CR’又は窒素原子であり、
Zは、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、
R’及びR’’は、それぞれ前記R^(1)と同じ基である。R’が複数存在する場合、複数のR’はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
*は、Mとの結合位置を示す。)]
【請求項12】
請求項1に記載の含窒素ヘテロ芳香族環化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項13】
陰極と陽極の間に発光層を含む1層以上の有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層のうち少なくとも1層が請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記発光層が前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料をホスト材料として含む請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
前記発光層が燐光発光材料を含有し、燐光発光材料がイリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、及び白金(Pt)から選択される金属原子のオルトメタル化錯体である請求項13又は14に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
前記陰極と前記発光層の間に有機薄膜層を有し、該有機薄膜層が前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む請求項13?15のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-09-11 
出願番号 特願2013-532424(P2013-532424)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C07D)
P 1 651・ 536- YAA (C07D)
P 1 651・ 113- YAA (C07D)
P 1 651・ 853- YAA (C07D)
P 1 651・ 537- YAA (C07D)
P 1 651・ 851- YAA (C07D)
P 1 651・ 857- YAA (C07D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 谷尾 忍  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 佐藤 健史
関 美祝
登録日 2017-05-26 
登録番号 特許第6148982号(P6148982)
権利者 出光興産株式会社
発明の名称 含窒素へテロ芳香族環化合物  
代理人 河野 直樹  
代理人 佐藤 猛  
代理人 渡邊 喜平  
代理人 峰 隆司  
代理人 田中 有子  
代理人 佐藤 猛  
代理人 特許業務法人平和国際特許事務所  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 田中 有子  
代理人 鵜飼 健  
代理人 渡邊 喜平  
代理人 特許業務法人平和国際特許事務所  
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